説明

収納具開閉部構造

【課題】構成及び組立が簡単であり、低コストを実現でき、かつ把手のロック機構を、開閉部の把手を設ける端縁の任意の位置に設けることができる収納具開閉部構造を得る。
【解決手段】収納具開閉部構造において、ラッチ機構11を、ラッチベースプレート13に突設した枢軸14の周りに、ばね負荷の下に回動自在に取り付けて一方をラッチフック16A、他方を把手連係レバー16BとしたL字状二股レバー16と、把手12に固定したカバープレート18を枢支し得る把手枢支軸17とによって構成する。フルスパンの把手12をE字状断面にし、E字断面の上下1対の横方向突起で囲まれる開口空間にラッチ機構の把手連係レバー16Bが突入し、ばね15のばね負荷の下に開閉部外面側の横方向突起16Bに圧着し、ラッチ掛合と把手の初期位置復帰を生ずるようにする。この構成により、ロック機構は、フルスパン開き把手12の任意の位置に設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納具本体に摺動可能または回動可能に設ける開閉部と、収納具本体に設けたラッチ受けにラッチ掛合可能なラッチを有して前記開閉部に設けたラッチ機構と、このラッチ機構に連係動作してラッチ解除するよう前記開閉部に対して回動自在に連結しかつ開閉部の所定端縁全体にわたって延在するフルスパン開き把手とを具えた収納具開閉部構造に関するものである。摺動可能な開閉部とは、引き扉または引出しを意味し、回動可能な開閉部とは、観音開き扉または片開き扉を意味するものと理解されたい。
【背景技術】
【0002】
このようなフルスパン開き把手を設けた開閉部構造を有する収納具として、従来、ラッチ機構の一部を構成するラッチ解除伝達部材を開閉部に把手をねじ連結するものがある。(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)
【特許文献1】特開2004‐89217号公報(特に、段落[0023]〜[0024])
【特許文献2】特開2004‐89219号公報(特に、段落[0020]〜[0023])
【特許文献3】特開2004‐92022号公報(特に、段落[0027]〜[0028])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら特許文献1〜3に記載のラッチ機構を有する構造は、開閉部の把手を設ける所定端縁の両側の端部近傍にそれぞれベース部材を設け、これら1対のベース部材に、それぞれ連係レバー付きばね負荷ラッチ部材と、ラッチ部材の連結レバーに掛合するラッチ解除伝達部材とを、それぞれ回動自在に取り付けている。
【0004】
さらに、特許文献1及び3における収納具開閉部のロック機構は、把手及び把手に関連するラッチ機構とは独立した個別のロック機構を設けるものであったり、または特許文献2に記載されているように、把手に関連するラッチ機構のラッチ解除を阻止するために設けるロック機構は、1対のベース部材のうちの一方に近接させて設け、施錠時にラッチ機構のラッチ解除伝達部材の回動を阻止するロック作用部材を有するものであったりする。
【0005】
しかし、これら従来の収納具開閉部構造は、ラッチ機構は、開閉部の所定端縁の両側の端部近傍にそれぞれ1対のベース部材を設け、また、各ベース部材にはそれぞれ連係レバー付きばね負荷ラッチ部材と、ラッチ解除伝達部材と、このラッチ解除伝達部材をベース部材に回動自在に支持する枢支軸を個別に必要とし、したがって、部品点数が多く、組み立ても面倒であり、製造に時間とコストがかかる欠点があった。
【0006】
さらに、従来の収納具開閉部構造は、把手及びラッチ機構とは独立した別個のロック機構を個別に設けたり、ラッチ機構に関連するロック機構の場合、ベース部材の近傍に設けるため設ける位置の選択肢が限定されるという問題があった。さらにまた、ラッチ機構に関連するロック機構の場合、ラッチ機構のラッチ解除伝達部材に設けた溝孔に連係するため、特別な構造なロック機構を必要としていた。
【0007】
したがって、本発明の目的は、構成及び組立が簡単であり、低コストを実現でき、かつ把手に関連してラッチ機構のラッチ解除を阻止するロック機構を、開閉部の把手を設ける端縁の任意の位置に設けることができる収納具開閉部構造を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明による収納具開閉部構造は、
前記ラッチ機構を、前記開閉部の前記把手を設ける端縁に直交する端縁にそれぞれ連結するラッチベースプレートと、このラッチベースプレートの一方の側面に突設した枢軸と、この枢軸の周りにばね負荷の下に回動自在に取り付けたL字状二股レバーであって、一方のレバーをラッチフック、他方のレバーを把手連係レバーとした該L字状二股レバーと、前記枢軸から所定距離離れてこの枢軸を設けるのと同一側面に突設して前記把手を枢支し得る把手枢支軸とにより構成し、
前記フルスパン開き把手は、長さ全体にわたり、ほぼE字状の断面を有するアルミ押し出し成形体により構成し、E字断面の上下1対の横方向突起を連結するウェブ部の外側面に指を引っ掛け易くする窪みを設け、E字断面の上下1対の横方向突起で囲まれる開口空間に前記ラッチ機構の把手連係レバーが突入し、前記ばね負荷の下に前記上下1対の横方向突起のうちの一方の横方向突起に圧着する構成とし、
前記把手の軸線方向に関する両側の端面をそれぞれカバーするようこの端面に固着する樹脂成形カバープレートであって、前記把手のE字断面の上下1対の横方向突起のうち他方の横方向突起と短い中間横方向突起との間に設けた第1規制窪みに圧嵌する固着ピンを突設し、この固着ピンを突設するのと同じプレート側面に、前記ラッチ機構の把手枢支軸を回動可能に収容する枢支孔を有する把手枢支軸収容突起を突設し、この把手枢支軸収容突起を前記一方の横方向突起と前記中間横方向突起との間に設けた第2規制窪みに圧嵌させるカバープレートを設けた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明収納具開閉部構造によれば、把手自体におけるほぼE字状断面形状の上下1対の横方向突起のうちの一方が、ラッチ解除伝達部を構成しているため、個別のラッチ解除用の伝達部材を個別に設ける必要がなく、部品点数が少なく、したがって、構成及び組立体が簡単となる。
また、ラッチ機構のラッチベースプレートに、ラッチ部材をなすL字状二股レバーの枢軸と、把手を枢支し得る把手枢支軸とを一体に設けたため、部品点数が少なく、したがって、構成及び組立体が簡単となる。
さらにまた、把手自体におけるほぼE字状断面形状の上下1対の横方向突起のうちの一方は、ラッチ解除伝達部を構成するだけでなく、ロック機構の錠止部が掛合する受け部を構成するため、ロック機構を、必要に応じた任意の位置に自由に設置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好適な実施例においては、把手を設ける前記所定端縁の中間部分に固着する中間支持ブラケットを設け、この中間支持ブラケットの遊端に前記第2規制窪みに摺動自在に嵌合する形状の玉縁を設け、前記中間支持ブラケット遊端のこの玉縁と前記把手の第2規制窪みとの嵌合により前記開閉部に把手を確実に保持し得るようにする。この構成によれば、フルスパンの把手を、開閉部の所定端縁に確実に回動自在に取り付けることができる。
【0011】
さらに、本発明の好適な実施例によれば、把手のラッチ解除方向の回動を阻止して開閉部の施錠を行うよう開閉部における前記所定端縁の任意の位置にロック機構を設け、施錠時に前記ロック機構の錠止部が前記一方の横方向突起に掛合し得るようにする。
また、開閉部を回動自在の開き扉とした場合、把手を設ける側の扉とは反対側の扉における把手に対向する側の端縁は、指を挿入し易くした傾斜付きまたは直角のL字状断面にすると好適である。
【0012】
次に、図面につき、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1に本発明による収納具開閉部構造の開閉部を示す。この開閉部は、収納具本体に片側端縁をヒンジ連結する開き扉、または、収納具本体に対しガイドレールを介して引出し可能なスライド引出しとすることができる。図1に示す収納具開閉部構造の実施例では、開閉部10を開き扉とする。
【0014】
この実施例の収納具開閉部構造は、収納具本体1(図1に一部のみ示す)に設けた、図2に示すようなラッチ受け2にラッチ掛合可能なラッチを有して開閉部10に設けたラッチ機構11と、このラッチ機構11に連係動作してラッチ解除するよう開閉部10に対して回動自在に連結しかつ開閉部の所定端縁(ヒンジ連結する側とは反対側の端縁)全体にわたって延在するフルスパン開き把手(以下場合により「把手」と略称する)12とを具える。また、ラッチ機構11は、把手12を取り付ける開閉部枠体の所定端縁10aの両側端部の近傍にそれぞれ設ける。
【0015】
本発明収納具開閉部構造によれば、各ラッチ機構11は、図1の左方に拡大して示すように、開閉部10の把手12を設ける所定端縁10aに直交する端縁10bにそれぞれ連結するラッチベースプレート13を有する。
【0016】
このラッチベースプレート13の一方の側面には、枢軸14を突設し、この枢軸14の周りにばね15のばね負荷の下にL字状二股レバー16を回動自在に取り付ける。このL字状二股レバー16の一方のレバーをラッチフック16A、他方のレバーを把手連係レバー16Bとする。ばね15は、収納具本体に設けたラッチ受け2にラッチフック16Aがラッチ掛合するよう、L字状二股レバー16にばね負荷を与える。さらに、ラッチベースプレート13には、枢軸14から所定距離離れてこの枢軸14を設けるのと同一側面に、把手12を枢支し得る把手枢支軸17を突設する。
【0017】
フルスパン開き把手12は、図2に示すように、長さ全体にわたり、ほぼE字状の断面を有するアルミ押し出し成形体により構成する。また、左右どちらの手でも指を引っ掛けることができるようにするため、E字断面の上下1対の横方向突起12A、12Bを連結するウェブ部12Cの外側面に指を引っ掛け易くする窪み12Dを設ける。開閉部10を回動自在の開き扉とした場合、把手12を設ける側の扉とは反対側の扉における把手に対向する側の端縁は、図2に示すような指を挿入し易くした傾斜付きL字状断面にする、または図示しないが、指を挿入し易くした直角のL字状断面にすると好適である。
【0018】
E字断面の上下1対の横方向突起12A、12Bで囲まれる開口空間には。ラッチ機構11の把手連係レバー16Bが突入し、ばね15のばね負荷の下に上下1対の横方向突起12A、12Bのうちの一方の横方向突起12B(開閉部10の外面側に位置する)に圧着する構成とする。これにより、把手12に対して手による力を加えない限り、横方向突起12B側の外面は開閉部の外面にほぼ面一になる。この開閉部10の外面側に位置する横方向突起12Bは、開閉部10の内面側に位置する他方の横方向突起12Aよりも長くする。
【0019】
把手12の軸線方向に関する両側の端面を、この端面に固着する樹脂成形体であるカバープレート18によりカバーする。カバープレート18には、図1の左方に拡大して示すように、固着ピン19を突設する。固着ピン19は、把手12における開閉部10の外面側に位置する横方向突起12Aと、短い中間横方向突起12Eとの間に設けた第1規制窪み20に圧嵌する。さらに、カバープレート18には、固着ピン19を突設するのと同じプレート側面に、把手枢支軸収容突起21を設ける。
【0020】
この把手枢支軸収容突起21は、ラッチ機構の把手枢支軸17を回動可能に収容する枢支孔22を有する。この把手枢支軸収容突起21を、開閉部10の外面側に位置する横方向突起12Bと中間横方向突起12Eとの間に設けた第2規制窪み23に圧嵌させる。
【0021】
この構成により、フルスパン開き把手12の窪み12Dにおける任意の位置に手を引っ掛けても、開閉部10開く方向に力を加えると、把手12は、ラッチ機構における把手枢支軸17の周りに回動してラッチ機構11の把手連係レバー16Bを介してL字状二股レバー16を回動させ、ラッチフック16Aが収納具本体(図示せず)に設けたラッチ受け2とのラッチ掛合が釈放され、開閉部10を開放することができるようになる。
【0022】
図示の好適な実施例においては、開閉部10における把手12の支持を確実にするために、図1の左方及び図3に拡大して示すように、開閉部10の把手12を設ける所定端縁の中間部分に、中間支持ブラケット24を固着する。この中間支持ブラケット24の遊端には、把手12の第2規制窪み23に摺動自在に嵌合する形状の玉縁25を設け、中間支持ブラケット遊端のこの玉縁25と把手の第2規制窪み23とを嵌合させ、中間支持ブラケット24によって開閉部10に対して把手12を確実に保持し得るようにする。
【0023】
さらに、必要であれば、開閉部の把手12を設ける所定端縁の任意の位置に、図4に示すように、把手12のラッチ解除方向の回動を阻止して開閉部10の施錠を行うロック機構26を設けると好適である。このロック機構26は、施錠時に、ロック機構26の錠止部26Aが把手12における開閉部10の外面側の横方向突起12Bに掛合し得るようにする。
【0024】
このロック機構26を施錠するとき、把手12における任意の位置で窪み12Dに手を引っ掛けて開閉部10開く方向に力を加えても、把手12は、ラッチ機構11における把手枢支軸17の周りに回動してラッチ機構11の把手連係レバー16Bを介してL字状二股レバー16を回動させることはできずに、収納具本体(図示せず)に設けたラッチ受けにラッチフック16Aがラッチ掛合した状態を保持する。
【0025】
本発明収納具開閉部構造によれば、ロック機構を、開閉部の把手を設ける端縁の任意の位置に設けることができ、ロック機構を設ける位置に関して自由度が広がる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ロッカー、引き出し等の収納具製品の開閉部構造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明収納具の開閉部構造の線図的斜視図である。
【図2】本発明収納具の開閉部構造における把手とラッチ機構との関係を示す線図的説明図である。
【図3】本発明収納具の開閉部構造における把手と中間支持ブラケットとの関係を示す線図的説明図である。
【図4】本発明収納具の開閉部構造における把手とロック機構の錠止部との関係を示す線図的説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 収納具本体
2 ラッチ受け
10 開閉部
11 ラッチ機構
12 フルスパン開き把手
12A 横方向突起(開閉部10の内面側)
12B 横方向突起(開閉部10の外面側)
12C ウェブ部
12D 窪み
12E 中間横方向突起
13 ラッチベースプレート
14 枢軸
15 ばね
16 L字状二股レバー
16A ラッチフック
16B 把手連係レバー
17 把手枢支軸
18 カバープレート
19 固着ピン
20 第1規制窪み
21 把手枢支軸収容突起
22 枢支孔
23 第2規制窪み
24 中間支持ブラケット
25 玉縁
26 ロック機構
26A 錠止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納具本体に摺動可能または回動可能に設ける開閉部と、収納具本体に設けたラッチ受けにラッチ掛合可能なラッチを有して前記開閉部に設けたラッチ機構と、
このラッチ機構に連係動作してラッチ解除するよう前記開閉部に対して回動自在に連結しかつ開閉部の所定端縁全体にわたって延在するフルスパン開き把手と
を具えた収納具開閉部構造において、
前記ラッチ機構を、前記開閉部の前記把手を設ける端縁に直交する端縁にそれぞれ連結するラッチベースプレートと、このラッチベースプレートの一方の側面に突設した枢軸と、この枢軸の周りにばね負荷の下に回動自在に取り付けたL字状二股レバーであって、一方のレバーをラッチフック、他方のレバーを把手連係レバーとした該L字状二股レバーと、前記枢軸から所定距離離れてこの枢軸を設けるのと同一側面に突設して前記把手を枢支し得る把手枢支軸とにより構成し、
前記フルスパン開き把手は、長さ全体にわたり、ほぼE字状の断面を有するアルミ押し出し成形体により構成し、E字断面の上下1対の横方向突起を連結するウェブ部の外側面に指を引っ掛け易くする窪みを設け、E字断面の上下1対の横方向突起で囲まれる開口空間に前記ラッチ機構の把手連係レバーが突入し、前記ばね負荷の下に前記上下1対の横方向突起のうちの一方の横方向突起に圧着する構成とし、
前記把手の軸線方向に関する両側の端面をそれぞれカバーするようこの端面に固着する樹脂成形カバープレートであって、前記把手のE字断面の上下1対の横方向突起のうち他方の横方向突起と短い中間横方向突起との間に設けた第1規制窪みに圧嵌する固着ピンを突設し、この固着ピンを突設するのと同じプレート側面に、前記ラッチ機構の把手枢支軸を回動可能に収容する枢支孔を有する把手枢支軸収容突起を突設し、この把手枢支軸収容突起を前記一方の横方向突起と前記中間横方向突起との間に設けた第2規制窪みに圧嵌させるカバープレートを設けた
ことを特徴とする収納具開閉部構造。
【請求項2】
前記把手を設ける前記所定端縁の中間部分に固着する中間支持ブラケットを設け、この中間支持ブラケットの遊端に前記第2規制窪みに摺動自在に嵌合する形状の玉縁を設け、前記中間支持ブラケット遊端のこの玉縁と前記把手の第2規制窪みとの嵌合により前記開閉部に把手を確実に保持し得るようにした請求項1記載の収納具開閉部構造。
【請求項3】
前記把手のラッチ解除方向の回動を阻止して開閉部の施錠を行うよう開閉部における前記所定端縁の任意の位置にロック機構を設け、施錠時に前記ロック機構の錠止部が前記一方の横方向突起に掛合し得るようにした請求項1または2記載の収納具開閉部構造。
【請求項4】
開閉部を回動自在の開き扉とし、前記把手を設ける側の扉とは反対側の扉における前記把手に対向する側の端縁は、指を挿入し易くした傾斜付きまたは直角のL字状断面にした請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の収納具開閉部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−169984(P2007−169984A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367358(P2005−367358)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000153904)株式会社飯田製作所 (3)