説明

取り外し可能な配線等の固定具

【課題】被取付部材の取付側から容易に取り外すことが可能な固定具を提供する。
【解決手段】配線2等を取付板3に固定する固定具1において、保持部4の第1、第2保持部分4a,4bの隣接間隔が外圧により縮小可能なように、第1、第2保持部分4a,4bの隣接間に設けられた台座部4dを第1、第2台座部分4da,4dbが互いに咬み合う状態で係合する構成とした。これにより、保持部4の第1、第2保持部分4a,4bを手指で左右から摘むと第1、第2台座部4da,4dbも互いに近づく方向に連動し、第1、第2保持部分4a,4bの各々に接続されている第1、第2取付部分5a,5bを互いに近づく方向に連動させることができる。この状態で、固定具1を取付板3から引き抜くことで、固定具1を取付板3の取付側から取り外すことができるので、固定具1の取り外し作業を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具に関し、更に詳しくは、シャーシ、パネルまたは壁等のような被取付部材に配線や配管等を固定する固定具を被取付部材の取付側から容易に取り外すことが可能な固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電子機器等の配線経路においては、例えば配線同士のかさばりや配線から配線基板等への電気的干渉を防止する等の観点から、配線等を保持してシャーシやパネル等の被取付部材の所望の位置に固定する様々な合成樹脂製の固定具が使用されている。
【0003】
この固定具は、配線等を保持する保持部と、その保持部の底面に垂設されたシャーシ等への取付部とを備えており、その取付部を被取付部材の孔内に挿入し係止させることにより被取付部材に取り付けている。
【0004】
ところで、近年、固定具においては、メンテナンスおよび解体作業の容易化の要求等が高まっており、固定具を被取付部材の取付側から容易に取り外すことが可能なように様々な工夫がなされている。
【0005】
例えば固定具の取付部に、固定具を取り外すための操作部を接続し、これを保持部の底面と被取付部材の取付側との間から左右の両側または片側から引き出し、その操作部を手指で左右から摘んだり押したりすることで取付部の幅を縮めて固定具を被取付部材の取付面側から取り外せるようにした構造がある(例えば特許文献1,2,3参照)。
【0006】
しかしながら、これら特許文献1〜3の場合、固定具を取り外すための操作部が極めて小さい上、固定具の底部に設けられているので、固定具の上側の保持部や隣接部材(他の配線、電子機器または壁等)に邪魔されて、操作部を手指で摘んだり押したりすることが難しい。このため、取付部に上手く力を伝えることができないので、取付部が充分に縮小変形しない場合があり、その状態で固定具を引き抜こうとすると、固定具の取付部が被取付部材の孔に引っ掛かり固定具を上手く抜くことができない場合がある。また、操作部を摘むことができたとしても、安定性を欠くので片手では固定具を取り外すことができず、一方の手指で操作部を摘みながら、他方の手指で固定具を引き抜くというように両手を使って作業をしなければならない場合もある。また、作業者が作業手袋をしている時には、操作部が小さすぎて上手く摘めない場合もある。このように固定具の取り外し作業に支障をきたす場合がある、という問題がある。
【0007】
また、特許文献1〜3とは異なる構造の固定具として、ケーブルタイと、これを固定するヘッド部とを備え、そのヘッド部の底面に取付部を設けて固定具を被取付部材に着脱自在に取り付けた固定具がある。その中には、取り外し操作部をヘッド部の底面から側面に沿って折り曲げ上部まで引き出してヘッド部に接続している構造もある(例えば特許文献4参照)。
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1〜3を含め特許文献4では、固定具の外形が複雑になり過ぎて成型が難しい、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−275967号公報
【特許文献2】実開平7−10518号公報
【特許文献3】特開2007−10140号公報
【特許文献4】特開2004−274073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、被取付部材の取付側から容易に取り外すことが可能な固定具を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、成型を容易にすることが可能な固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の固定具は、被固定物を保持する保持部と、該保持部を被取付部材に着脱自在の状態で取り付ける取付部とを一体的に備える固定具において、前記保持部は、第1間隔を保って対向する一対の保持部分と、該一対の保持部分の間に設けられた台座部とを備えており、前記台座部は、前記一対の保持部分の隣接間隔が外圧により縮小可能なように、前記一対の保持部分の各々から向かい側の保持部分に向かって突出された一対の台座部分が互いに隣接して部分的に重なった状態で係合されて構成されており、前記取付部は、前記台座部の下方に設けられ、前記第1間隔よりも狭い第2間隔を保って対向する一対の取付部分と、該一対の取付部分の各々の外周に突設された係止部とを備えており、前記一対の取付部は、前記取付部の先端において接続されているとともに、前記取付部の後端側において前記一対の保持部分の隣接間隔を外圧により縮小すると互いに近づく方向に連動するように前記一対の保持部分の各々に接続されている。
【0013】
また、上記の固定具は、前記台座部は、一対の台座部分の各々が、その厚さ方向にずれて重ねられて配置されており、2段構成とされている。これにより、被固定物を受ける台座部の強度を向上させることができる。
【0014】
また、上記の固定具は、前記台座部は、一対の台座部分の各々が、その幅方向にずれて重ねられて配置されており、2列構成とされている。これにより、台座部において幅方向から加わる力に対する強度を向上させることができる。
【0015】
また、上記の固定具は、前記台座部は、一対の台座部分の各々が、その厚さ方向および幅方向にずれて重ねられて配置されており、2段2列構成とされている。これにより、台座部において厚さ方向および幅方向から加わる力に対する強度を向上させることができる。
【0016】
また、上記の固定具は、前記一対の取付部分の間に、前記一対の保持部分の隣接間隔が外圧により縮小可能なように弾性変形し、かつ、その外圧を解除すると前記一対の保持部分を外圧を加える前の状態に戻すように弾性復元する弾性体を一体的に備えている。これにより、一対の取付部分の外側に向かう付勢力を、弾性体の反発力によって高めることができるので、固定具の取り付け後および取り外し後における保持部および取付部の隣接間隔の復元力を向上させることができる。
【0017】
また、上記の固定具は、前記保持部を前記被取付部材に取り付けた場合に前記被取付部材を押さえる押さえ部を一体的に設けている。これにより、固定具を安定して固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の固定具によれば、固定具を構成する保持部の一対の保持部分の隣接間隔が外圧により縮小可能なように、一対の保持部分の隣接間に設けられた台座部を一対の台座部分が互いに隣接して部分的に重なった状態で係合される構成としたことにより、保持部の一対の保持部分を手指で左右から摘むと一対の台座部も互いに近づく方向に連動し、一対の保持部分の各々に接続されている一対の取付部分を互いに近づく方向に連動させることができる。この状態で、固定具を被取付部材から引き抜くことで、固定具を被取付部材の取付側から取り外すことができる。すなわち、比較的大きくて安定して摘むことが可能な一対の保持部分を摘むことで固定具を取り外せるので、固定具を容易に取り外すことができる。このため、メンテナンスや解体作業の作業性を向上させることができる。
【0019】
また、固定具を取り外すための操作部を別個に設ける必要が無いので、固定具の外形を簡単化することができる。このため、固定具の成型を容易にすることができるので、固定具の歩留まりを向上させることができ、固定具の量産性を向上させることができる。このため、固定具のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の固定具の全体斜視図である。
【図2】図1の固定具の正面図である。
【図3】図1の固定具の全体斜視図である。
【図4】図1の固定具の全体斜視図である。
【図5】図1の固定具の正面図である。
【図6】図5の固定具の背面図である。
【図7】図5の固定具の左側部分の斜視図である。
【図8】図5の固定具の右側部分の斜視図である。
【図9】図5の固定具を下から見た底面図である。
【図10】図5の固定具を上から見た平面図である。
【図11】固定具の取り付け作業時の正面図である。
【図12】図11に続く固定具の取り付け作業時の正面図である。
【図13】固定具の取り外し作業時の正面図である。
【図14】図13に続く固定具の取り外し作業時の正面図である。
【図15】第2の実施の形態の固定具の正面図である。
【図16】図15の固定具の斜視図である。
【図17】図15の固定具の取り付け作業時の正面図である。
【図18】図17に続く固定具の取り付け作業時の正面図である。
【図19】第3の実施の形態の固定具の正面図である。
【図20】第4の実施の形態の固定具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の固定具について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
[固定具の全体構成]
図1は本実施の形態の固定具1の斜視図、図2は図1の固定具1の正面図、図3および図4は図1の固定具1の全体斜視図、図5は図1の固定具1の正面図、図6は図5の固定具1の背面図、図7は図5の固定具1の左側部分の斜視図、図8は図5の固定具1の右側部分の斜視図、図9は図5の固定具1を下から見た底面図、図10は図5の固定具1を上から見た平面図をそれぞれ示している。
【0023】
図1および図2に示すように、固定具1は、例えば家電製品、複写機等の情報機器、自動販売機および自動車の配線経路において、複数本の配線(被固定物)2等を保持し、シャーシ、パネルまたは壁面等の取付板(被取付部材)3の取付側の所望の位置に固定する道具である。
【0024】
この固定具1は、例えば弾性を有するプラスチックによって一体成型されており、配線2等を保持する保持部4と、その下部に設けられて保持部4を取付板3に取り付ける取付部5と、取り付けられた固定具1から取付板3に対して突っ張り力を与える押さえ部6とを備えている。
【0025】
配線2は、固定具1の保持部4の枠内に保持される。この保持部4の底面側には、取付部5が垂設されている。固定具1は、取付部5を取付板3の孔3a内に挿入して係止することで着脱自在の状態で取り付けられる。
【0026】
[保持部の構成]
図1〜図6に示すように、保持部4は、その縦枠を形成する一対の第1、第2保持部分(一対の保持部分)4a,4bと、上横枠を形成する閉止部4cと、下横枠を形成する台座部4dとを備えている。
【0027】
第1、第2保持部分4a,4bは、第1間隔を保って対向するように配置されている。第1保持部分4aは、薄肉部4eを介して閉止部4cに一体的に接続されている。この閉止部4cの先端には、鉤状の係合部4fが設けられている。一方、第2保持部分4bの端部には、閉止部4cの鉤状の係合部4fが係合する被係合部4gが設けられている。この被係合部4gは、係合部4fが挿入される挿入孔4ghと、挿入された係合部4fを固定する係合片4gpとを備えている。
【0028】
また、図1〜図10に示すように、第1、第2保持部分4a,4bの間には、台座部4dが一体的に設けられている。
【0029】
この台座部4dは、第1保持部分4aから向かい側の第2保持部分4bに向かって突出された第1台座部分4daと、第2保持部分4bから向かい側の第1保持部分4aに向かって突出された第2台座部分4dbとの一対の台座部分が互いに隣接して部分的に重なった状態で係合されて構成されている。
【0030】
一対の台座部分のうちの第1台座部分4daは、さらに2つの枝部4da1,4da2を一体的に備えている。この2つの枝部4da1,4da2は、その突出方向の長さは一致しているが、その厚さ(高さ)方向の位置がずれた状態で並設されている。
【0031】
一方、一対の台座部分のうちの第2台座部分4dbは、さらに2つの枝部4db1,4db2を一体的に備えている。この2つの枝部4db1,4db2も、突出方向の長さは一致しているが、その厚さ(高さ)方向の位置がずれた状態で並設されている。
【0032】
そして、これら第1台座部分4daの枝部4da1,4da2と第2台座部分4dbの枝部4db1,4db2とは、互いに隣接して部分的に重なるように、第1、第2台座部分4da,4dbの厚さ(高さ)方向および幅方向にずれて配置されており、2段2列構成とされている。なお、ここで言う幅方向は、水平面内において第1、第2台座部分4da,4dbの突出方向に直交する方向(例えば図10の上下方向)をいう。また、台座部分4da,4dbを幅方向に分割しない2段構成や厚さ方向に分割しない2列構成も可能である。
【0033】
このような構成にすることにより、第1、第2保持部分4a,4bの隣接間隔を外圧により縮小させることができる。すなわち、第1、第2保持部分4a,4bを手指で左右から摘むと、第1、第2台座部分4da,4dbが枝部4da1,4da2,4db1,4db2にガイドされながら互いに近づく方向に移動するので、第1、第2保持部分4a,4bを互いに近づける方向に動かすことができる。
【0034】
また、第1、第2台座部分4da,4dbを厚さ方向にずれて重ねられていることにより、配線2等を受ける台座部4dの強度を向上させることができる。このため、配線2等が台座部4dの下方に落ちることが無い構造にすることができる。
【0035】
また、第1、第2台座部分4da,4dbを幅方向にずれて重ねられていることにより、台座部4dにおいて幅方向から加わる力に対する強度を向上させることができる。このため、例えば第1、第2保持部分4a,4bを手指で左右から摘んだ時に、第1、第2保持部分4a,4bが幅方向において互いに逆方向にずれてしまうこともない。このため、第1、第2保持部分4a,4bを安定した状態で近づけることができる。
【0036】
[取付部の構成]
図1〜図10に示すように、取付部5は、台座部4dの下方に設けられており、支柱を形成する一対の第1、第2取付部分(一対の取付部分)5a,5bと、その各々の先端側外周に突設された係止部5cとを備えている。
【0037】
第1、第2取付部分5a,5bは、上記した第1間隔よりも狭い第2間隔を保って対向するように設けられている。第1、第2取付部分5a,5bは、取付部5の後端側(保持部4側)において、第1、第2台座部4da,4dbの各々を介して第1、第2保持部分4a,4bの各々に接続されている。これにより、本実施の形態の固定具1においては、保持部4の第1、第2保持部分4a,4bを互いに近づく方向に押圧すると、取付部5の第1、第2取付部分5a,5bも互いに近づく方向に連動する。すなわち、第1、第2保持部分4a,4bを手指で左右から摘むと、第1、第2取付部分5a,5bも互いに近づく方向に連動し、その隣接間隔を縮小させることができるので、取付部5を取付板3の孔3aから容易に取り外すことができる。
【0038】
また、固定具1を取り外すための操作部を無くせるので、台座部4dの上面から取付板3の上面までの距離d1(図2参照)を短くすることができる。このため、電波障害を減衰させることができる。
【0039】
また、固定具1を取り外すための操作部を無くせるので、固定具1の取り付け時に、固定具1を取り外すための操作部が障害になるという不具合を無くせる。このため、固定具1の取り付け作業性を向上させることができる。
【0040】
さらに、固定具1を取り外すための操作部を無くせるので、固定具1の外形(構造)を簡単化することができる。また、固定具1の場合、第1、第2台座部分4da,4dbが係合されているだけで接合されている訳ではないので左右に引き離すことができ、固定具1を左右に開いた比較的平らな状態で金型成型することができる。これらにより、固定具1の金型成型を容易にすることができるので、歩留まりを向上させることができ、量産性を向上させることができる。また、金型のコストを低減できる。したがって、固定具1のコストを低減することができる。
【0041】
また、第1、第2取付部分5a,5bは、取付部5の先端において互いに接続されている。すなわち、取付部5は先端を中心に左右に折り曲げられており、第1、第2取付部5a,5bには外側に向かう付勢力が働いている。これにより、第1、第2保持部分4a,4bを手指で左右から摘んで第1、第2取付部分5a,5bを互いに近づけて固定具1を取り外した後に手指からの押圧を解除すると、第1、第2取付部分5a,5bの付勢力によって第1、第2保持部分4a,4bおよび第1、第2取付部分5a,5bの各々の隣接間隔を押圧前の状態に戻すことができる。
【0042】
このような取付部5の先端は、その径が先端に向かって次第に小さくなるように矢尻状に形成されている。すなわち、第1、第2取付部分5a,5bの先端側外周は、係止部5cから先端に向かって傾斜している。これにより、取付部5を取付板3の孔3aに挿入し易くなっている。なお、取付部5の先端面は、図9に示すように、第1、第2取付部分5a,5bの隣接方向の長さの方が、これに直交する方向よりも長く、取付板3の孔3aの直径よりも大きくなっている。
【0043】
係止部5cは、取付板3の孔3aに挿入された取付部5を係止する部分である。係止部5cには、第1、第2取付部分5a,5bの側面に直交するように係止面(段差面)5csが形成されている。取付部5を取付板3の孔3aに挿入すると、この係止面5csが取付板3の裏面(固定具1の取付側の裏側)の孔3aの周辺部分に接触した状態で引っ掛かることで、取付部5は取付板3に係止される。
【0044】
[押さえ部の構成]
図1〜図10に示すように、押さえ部6は、固定具1を取付板3に取り付けた時に取付板3を押さえる部材であり、固定具1の左右において、第1、第2保持部分4a,4bと、第1、第2取付部分5a,5bとの外側交差部から取付板3に向かって弾性を持つように延在した状態で形成されている。取付板3は、押さえ部6と係止部5cとで挟持される。この押さえ部6により、振動等が生じても、固定具1が取付板3から簡単に外れないようになっている。
【0045】
また、上記した特許文献1〜4の場合、固定具1を取り外すための操作部を押さえ部の横に設けるため、押さえ部の幅が短くなる。これに対して、本実施の形態の固定具1においては、固定具1を取り外すための操作部を無くせるので、この押さえ部6の幅を広くすることができる。このため、固定具1を取付板3に取り付けた時の安定性を向上させることができるので、配線2等をしっかりと固定することができる。
【0046】
[固定具の取り付け方法]
次に、固定具1の取り付け方法について図11および図12を参照して説明する。なお、図11および図12は固定具1の取り付け作業時の正面図を示している。また、ここでは、固定具1を取付板3に取り付けてから固定具1で配線2等を保持する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、配線2等を保持した固定具1を取付板3の取付側に取り付けても良い。
【0047】
まず、図11に示すように、固定具1の取付部5を取付板3の孔3aに当てて差し込む。この時、取付部5の第1、第2取付部分5a,5bの隣接方向の長さが、孔3aの直径より大きいので、取付部5の係止部5cが孔3aを通過するまでは、第1、第2取付部分5a,5bが互いに近づく方向に撓む。この時、第1、第2台座部分4da,4dbも互いに近づく方向に連動する。
【0048】
続いて、図12に示すように、固定具1の取付部5の係止部5cが孔3aを通過すると、取付部5の第1、第2取り付け部分5a,5bの弾性復元力により、第1、第2保持部分4a,4b、第1、第2取付部分5a,5bおよび第1、第2台座部分4da,4dbは、取り付け前の元の状態に戻る。同時に、押さえ部6が取付板3を押さえる。これにより、固定具1を取付板3にしっかりと取り付けることができる。また、固定具1の取り付け作業に際しては、背景技術で説明した特許文献1〜3に記載の固定具を取り外すための操作部が無いので、その操作部が固定具1の取り付け時の障害になるという不具合を無くせる。このため、固定具1の取り付け作業性を向上させることができる。
【0049】
なお、この後、配線2等を、保持部4の枠内に収めてから薄肉部4eを起点として閉止部4cを折り曲げて、閉止部4cの先端の係合部4fを第2保持部4bの先端の被係合部4gに嵌めることにより配線2等を保持する。
【0050】
[固定具の取り外し方法]
次に、固定具1の取り外し方法について図13および図14を参照して説明する。なお、図13および図14は、固定具1の取り外し作業時の正面図を示している。また、図13および図14では図面を見易くするため配線2を破線で示している。また、ここでは、保持部4に配線2が保持された状態で固定具1を取り外す場合について説明するが、これに限定されるものではなく、配線2を保持部4から外した後に、固定具1を取り外しても良い。
【0051】
まず、図13に示すように、固定具1の第1、第2保持部分4a,4bを片方の手指で左右から摘み、第1、第2保持部分4a,4bを互いに近づく方向に押圧する。このため、固定具1の第1、第2台座部分4da,4dbが互いに近づく方向に連動するとともに、取付部5の第1、第2取付部分5a,5bも互いに近づく方向に連動する。これにより、取付部5の第1、第2取付部分5a,5bの隣接方向の長さを取付板3の孔3aの径よりも小さくする。
【0052】
その状態で、固定具1を取付板3から離れる方向に引き、取付板3の取付側から取り外す。その後、図14に示すように、手指からの押圧を解除すると、取付部5の第1、第2取付部分5a,5bの弾性復元力により、固定具1の第1、第2保持部分4a,4bおよび第1、第2取付部分5a,5bの各々の間隔が、手指による押圧前の元の状態に戻る。
【0053】
このように、本実施の形態の固定具1においては、第1、第2保持部分4a,4bを手指で左右から摘むことで固定具1を取付板3の取付側から取り外すことができる。この際、固定具1の保持部4の第1、第2保持部分4a,4bは、背景技術で説明した特許文献1〜3の固定具を取り外すための操作部よりも大きいので、片方の手指でも、また、作業手袋をしている場合でも、しっかりと安定して摘むことができる。
【0054】
また、固定具1の保持部4は、特許文献1〜3の固定具を取り外すための操作部より上方(取付板3から離れた位置)にあるので、第1、第2保持部分4a,4bを摘む時に、保持部4自体に邪魔されることはないし、他の配線や電子部品あるいは壁面に邪魔され難い。
【0055】
したがって、固定具1を取付板3の取付側から容易に取り外すことができる。このため、固定具1を用いている自動車や機器等のメンテナンスや解体作業の作業性を向上させることができる。例えば自動車や機器等の解体作業に際して、固定具1を力任せに引き抜くと、取付板3の取付側の裏側に固定具1の矢尻状の先端部分が残されてしまい、解体作業やリサイクル作業の作業性を損なう場合がある。これに対して、本実施の形態の固定具1の場合は、固定具1を取付板3の取付側から容易に取り外すことができ、取付板3の裏側に固定具1の矢尻状の先端部が残らないので、解体作業およびリサイクル作業の作業性を向上させることができる。
【0056】
[第2の実施の形態]
図15は第2の実施の形態の固定具1の正面図、図16は図15の固定具1の斜視図を示している。
【0057】
第2の実施の形態の固定具1においては、第1、第2取付部分5a,5bの間に一対の弾性枝部(弾性体)7a,7bが左右対称な状態で一体的に形成されている。この弾性枝部7a,7bは、第1、第2取付部分5a,5bの各々の内壁側面(対向面)から保持部4に向かって湾曲状に延在し、第1、第2取付部分5a,5bの隣接間中央で互いに接した状態で終端されている。
【0058】
この場合、第1、第2取付部分5a,5bの外側に向かう付勢力を、弾性枝部7a,7bの反発力によって前記第1の実施の形態の場合よりも高めることができる。このため、固定具1の取り付け後および取り外し後における保持部4および取付部5の隣接間隔の復元力を向上させることができる。これ以外の構成および効果は、前記第1の実施の形態と同じである。
【0059】
次に、このような固定具1の取り付け方法について図17および図18を参照して説明する。なお、図17および図18は、図15の固定具1の取り付け作業中の正面図を示している。
【0060】
まず、図17に示すように、固定具1の取付部5を取付板3の孔3aに当てて差し込む。取付部5の係止部5cが孔3aを貫通する前は、上記と同様に、第1、第2取付部分5a,5bが互いに近づく方向に撓む。この時、弾性枝部7a,7bも弾性変形するので、第1、第2取付部分5a,5bの動きを邪魔することはないが、この弾性枝部7a,7bの弾性変形によって第1、第2取付部分5a,5bを外側に向かわせる付勢力が高められている。
【0061】
続いて、図18に示すように、取付部5の係止部5cが孔3aを通過すると、第1、第2取り付け部分5a,5bおよび弾性枝部7a,7bの弾性復元によって第1、第2保持部分4a,4b、第1、第2取付部分5a,5bおよび第1、第2台座部分4da,4dbが固定具1の取り付け前の元の状態に戻る。
【0062】
この時、第2の実施の形態の固定具1においては、弾性枝部7a,7bの付勢力によって第1、第2取付部分5a,5bが外側に向かう付勢力を前記第1の実施の形態の場合よりも高めることができる。このため、取付板3に取り付け後の固定具1を、よりしっかりと固定することができる。
【0063】
[第3の実施の形態]
図19は、第3の実施の形態の固定具1の正面図を示している。第3の実施の形態の固定具1においては、第1、第2取付部分5a,5bの間に一対の弾性枝部(弾性体)7c,7dが左右対称な状態で一体的に形成されている。
【0064】
この弾性枝部7c,7dは、取付部5の内壁底面中央から第1、第2取付部分5a,5bの内壁側面(対向面)に向かって湾曲状に延在し、第1、第2取付部分5a,5bの内壁側面に接した状態で終端されている。これ以外の構成や効果は前記第1、第2の実施の形態と同じである。
【0065】
[第4の実施の形態]
図20は、第4の実施の形態の固定具1の正面図を示している。第4の実施の形態の固定具1においては、第1、第2取付部分5a,5bの間に一対の弾性枠部(弾性体)7e,7fが左右対称な状態で一体的に形成されている。
【0066】
この弾性枠部7e,7fは、正面から見た形状が略円弧状に形成されており、その各々の弧の最も高い部分が第1、第2取付部分5a,5bの隣接間中央で接した状態とされている。これ以外の構成や効果は前記第1、第2の実施の形態と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の固定具は、固定具を被取付部材の取付側から容易に取り外すことができるので、例えば家電製品、複写機等のような情報機器、自動販売機あるいは自動車の配線、配管または電子部品等を被取付部材に固定する固定具に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 固定具
2 配線(被固定物)
3 取付板(被取付部材)
3a 孔
4 保持部
4a 第1保持部分(一対の保持部分)
4b 第2保持部分(一対の保持部分)
4d 台座部
4da 第1台座部分(一対の台座部分)
4da1,4da2 枝部
4db 第2台座部分(一対の台座部分)
4db1,4db2 枝部
5 取付部
5a 第1取付部分(一対の取付部分)
5b 第2取付部分(一対の取付部分)
5c 係止部
5cs 係止面
6 押さえ部
7a,7b,7c,7d 弾性枝部(弾性体)
7e,7f 弾性枠部(弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定物を保持する保持部と、該保持部を被取付部材に着脱自在の状態で取り付ける取付部とを一体的に備える固定具において、
前記保持部は、第1間隔を保って対向する一対の保持部分と、該一対の保持部分の間に設けられた台座部とを備えており、
前記台座部は、前記一対の保持部分の隣接間隔が外圧により縮小可能なように、前記一対の保持部分の各々から向かい側の保持部分に向かって突出された一対の台座部分が互いに隣接して部分的に重なった状態で係合されて構成されており、
前記取付部は、前記台座部の下方に設けられ、前記第1間隔よりも狭い第2間隔を保って対向する一対の取付部分と、該一対の取付部分の各々の外周に突設された係止部とを備えており、
前記一対の取付部は、前記取付部の先端において接続されているとともに、前記取付部の後端側において前記一対の保持部分の隣接間隔を外圧により縮小すると互いに近づく方向に連動するように前記一対の保持部分の各々に接続されている固定具。
【請求項2】
前記台座部は、一対の台座部分の各々が、その厚さ方向にずれて重ねられて配置されており、2段構成とされている請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記台座部は、一対の台座部分の各々が、その幅方向にずれて重ねられて配置されており、2列構成とされている請求項1に記載の固定具。
【請求項4】
前記台座部は、一対の台座部分の各々が、その厚さ方向および幅方向にずれて重ねられて配置されており、2段2列構成とされている請求項1に記載の固定具。
【請求項5】
前記一対の取付部分の間に、前記一対の保持部分の隣接間隔が外圧により縮小可能なように弾性変形し、かつ、その外圧を解除すると前記一対の保持部分を外圧を加える前の状態に戻すように弾性復元する弾性体を一体的に備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項6】
前記保持部を前記被取付部材に取り付けた場合に前記被取付部材を押さえる押さえ部を一体的に設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−202781(P2011−202781A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73067(P2010−73067)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000127938)株式会社エスケイ工機 (20)
【Fターム(参考)】