取引処理装置および取引処理方法
【課題】2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を簡単な取引媒体のハンドリングで行うことのできる取引処理装置および当該装置における取引処理方法を提供する。
【解決手段】カード挿入口22から挿入される非接触型の第1カード1は、搬送手段により装置の筐体20の内部に取り込まれ、内部アンテナ11の上方で停止する。非接触型の第2カード2は、外部アンテナ12の前面のカードポケット23に収納・保持される。取引処理の進行に従って、内部アンテナ11と外部アンテナ12とが順次切り換えられ、内部アンテナ11を用いて第1カード1と通信を行うことで第1カード1に対する処理が行われ、外部アンテナ12を用いて第2カード2と通信を行うことで第2カード2に対する処理が行われる。
【解決手段】カード挿入口22から挿入される非接触型の第1カード1は、搬送手段により装置の筐体20の内部に取り込まれ、内部アンテナ11の上方で停止する。非接触型の第2カード2は、外部アンテナ12の前面のカードポケット23に収納・保持される。取引処理の進行に従って、内部アンテナ11と外部アンテナ12とが順次切り換えられ、内部アンテナ11を用いて第1カード1と通信を行うことで第1カード1に対する処理が行われ、外部アンテナ12を用いて第2カード2と通信を行うことで第2カード2に対する処理が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型の取引媒体に対する取引処理を行う取引処理装置および当該装置における取引処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通信によってカードに記録された情報のリード/ライトが可能な非接触カードが定期券や取引カードとして普及しつつあり、自動改札機や取引処理装置(自動現金預入装置など)で利用されている。取引処理装置においては、非接触カードのセキュリティが高いことから、今後、第1の非接触型の電子マネーカードから第2の非接触型の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動するバリュー移動処理などの取引処理が行われる。また、このような取引処理に用いられる非接触カードのカードリーダ(リーダ/ライタともいう)として以下のものが知られている。
【0003】
下記の特許文献1に示されるカードリーダは、非接触カードとの通信に用いる第1通信コイルと第2通信コイルとを備える。第1通信コイルは、カード挿入口とカード挿入口の内側のシャッタとの間に取り付けられており、カード挿入口から挿入されたカードが非接触通信の可能なカードであるか否かを検出する。そのカードが非接触通信の可能なカードである場合は、シャッタが開き、カードがカードリーダの内部に取り込まれ、第2通信コイルによって非接触カードに対するリード/ライトなどの処理が行われる。一方、カード挿入口から挿入されたものが非接触通信の不可能なカードや異物の場合は、シャッタが開かない。このようにして、非接触通信の不可能なカードや異物がカードリーダ内に取り込まれるのを防止している。
【0004】
下記の特許文献2に示されるカードリーダは、カードリーダの筐体の上面の内側に1つのアンテナを備えており、このアンテナでカードリーダの上面に翳された非接触カード、またはカード挿入口から挿入され、カードリーダの内部に取り込まれた非接触カードに対してリード/ライトを行う。また、このカードリーダの内部には、磁気カードや磁気ストライプ付きの非接触カードに対してリード/ライトを行うための磁気ヘッドも設けられている。
【0005】
尚、2つの非接触カードに対する取引処理を行う装置ではないが、下記の特許文献3には、第1アンテナと第2アンテナとを備えた自動改札機が示されている。自動改札機の本体の上面に設けられた第1アンテナは、当該アンテナに翳された非接触券および非接触トークンを読み取り、トークン投入口の近くに設けられた第2アンテナは、トークン投入口に投入された非接触トークンを読み取る。また、複数のアンテナをハードウエア的にアンテナ切り換え部で切り換えることが下記の特許文献4に示されている。また、非接触カードとカードリーダとの通信手順などについては、下記の特許文献5に示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−118035号公報(段落0009〜0018)
【特許文献2】特開平11−161751号公報(要約、段落0065〜0070)
【特許文献3】特開2002−342799号公報(段落0011〜0039)
【特許文献4】特開平6−333097号公報(要約)
【特許文献5】特開2000−123138号公報(段落0012〜0024)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のカードリーダを用いた取引処理装置で、非接触型の第1の電子マネーカードから非接触型の第2の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動するバリュー移動処理を行う場合、第1の電子マネーカードをカードリーダ内に取り込み、当該カードに対して移動バリューの減額処理を行った後に当該カードを排出し、その後、第2の電子マネーカードをカードリーダ内に取り込み、当該カードに対して移動バリューの増額処理を行った後に当該カードを排出することになる。このとき、カード利用者は取引処理装置に表示される案内メッセージを見て、2枚のカードの出し入れをしなければならないので、カードのハンドリングに手間がかかり、取引処理の時間が長くなるという問題がある。また、2つの非接触型の電子マネーカードに対して連続して減額処理と増額処理とを行うことができないので、第1の電子マネーカードが排出された後にカード利用者が第2の電子マネーを挿入しないような場合などを考えると、取引処理装置のエラー処理が非常に複雑になるという問題もある。
【0008】
また、特許文献2のカードリーダを用いた取引処理装置で上述のバリュー移動処理を行う場合、カードリーダ内に取り込まれた非接触型の電子マネーカードとカードリーダの上面に翳された非接触型の電子マネーカードとを1つのアンテナで読み取ることになり、移動バリューの増額処理をするカードと減額処理をするカードとを識別することができず、バリュー移動処理などを行うことができないという問題がある。また、このカードリーダでは、カード挿入口はカードリーダに前面に配置され、非接触型のカードを翳す部分はカードリーダの奥側の上面に配置されるので、略鉛直の前面パネルにカード挿入口が配置される自動現金預入装置などでは、非接触型のカードをアンテナに翳すことができないという問題もある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を簡単な取引媒体のハンドリングで行うことのできる取引処理装置および当該装置における取引処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明では、搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナと、第1アンテナまたは第2アンテナを用いて第1取引媒体または第2取引媒体と通信を行う非接触通信手段と、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を指示する指示手段と、搬送手段を制御すると共に非接触通信手段と通信を行う制御手段と、を備える。そして、制御手段は、指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、非接触通信手段に第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行わせることにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を行う。
【0011】
上記のようにすることで、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入し、第2取引媒体を装置の所定位置に配置するといった簡単な取引媒体のハンドリングで行うことができ、取引処理の処理時間を短縮することができる。また、2つのアンテナを備えているので、2つの非接触型の取引媒体に対する処理(例えば、実施形態に示すバリュー移動処理における第2カードのバリューの増額処理および第1カードのバリューの減額処理)を連続して自動的に行うことができ、取引処理の途中で2つの取引媒体を出し入れすることによって起きる上述の問題が発生しない。さらに、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入することで、または第2取引媒体を装置の所定位置に配置することで1つの非接触型の取引媒体に対する取引処理も行うことができる。
【0012】
第1の発明の実施形態においては、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えるアンテナ切り換え部を備え、制御手段は、アンテナ切り換え部を制御することにより、非接触通信手段に第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかと通信を行わせる。上記のようにすることで、1つの非接触通信部で2つの取引媒体と通信を行うことができるので、装置の部品点数の増加を抑制することができる。
【0013】
また、第1の発明の実施形態においては、第2取引媒体を収納する収納部と、当該収納部に収納された第2取引媒体を固定する固定手段とを備える。上記の固定手段で収納部に収納された第2取引媒体を固定することで、取引処理の途中で取引媒体利用者が第2取引媒体を収納部から抜き取ることができなくなるので、取引処理を安全・確実に行うことができる。
【0014】
さらに、第1の発明の実施形態においては、搬送手段が第1取引媒体を取り込む搬送路には、接触型の取引媒体と接触する接触アクセス手段が設けられ、装置の内部に取り込まれた第1取引媒体が接触型の取引媒体である場合には、制御手段は、接触アクセス手段を介して第1取引媒体と通信を行う。上記のようにすることで、接触アクセス手段(例えば、磁気ヘッドや接点型のカードの接点と接触するためのプローブ)を介して接触型の第1取引媒体(例えば、磁気カードや接点型のカード)と通信を行うことができるので、第1取引媒体が接触型の取引媒体であっても、1つまたは2つの取引媒体に対する取引処理を行うことができる。
【0015】
第2の発明は、搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナとを備え、指示手段によって指示された取引処理を行う取引処理装置における取引処理方法であって、指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、第1アンテナおよび/または第2アンテナを用いて第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を行う。
【0016】
上記のようにすることで、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入し、第2取引媒体を装置の所定位置に配置するといった簡単な取引媒体のハンドリングで行うことができ、取引処理の処理時間を短縮することができる。また、2つのアンテナを用いるので、2つの非接触型の取引媒体に対する処理(例えば、実施形態に示すバリュー移動処理における第2カードのバリューの増額処理および第1カードのバリューの減額処理)を連続して自動的に行うことができ、取引処理の途中で2つの取引媒体を出し入れすることによって起きる上述の問題が発生しない。さらに、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入することで、または第2取引媒体を装置の所定位置に配置することで1つの非接触型の取引媒体に対する取引処理も行うことができる。
【0017】
第2の発明の実施形態においては、指示手段で指示された取引処理が2つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体および第2取引媒体が共に存在することを確認した後に、取引処理の内容に基づいて、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理とを所定の順序で行う。上記のように、第1取引媒体および第2取引媒体が共に存在することを確認した後に、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理を行うので、2つの取引媒体に対する取引処理を安全・確実に行うことができる。
【0018】
また、第2の発明の実施形態においては、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理を行う場合、2つの処理の一方の処理の処理結果に基づいて他方の処理を行う。上記のようにすることで、一方の非接触型の電子マネーカードから他方の非接触型の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動するバリュー移動処理や、非接触型のキャッシュカードの口座から減額した金額を非接触型の電子マネーカードのバリューへ加算して増額する口座からのチャージ処理などを行うことができる。
【0019】
さらに、第2の発明の実施形態においては、第1取引媒体との通信で得られた第1取引媒体の属性と、第2取引媒体との通信で得られた第2取引媒体の属性とに基づいて、取引処理における各処理の対象となる取引媒体を決定する。上記のようにすることで、例えば、キャッシュカードの口座から減額した金額を電子マネーカードのバリューへ加算して増額する口座からのチャージ処理では、第1取引媒体がキャッシュカードまたは電子マネーカードのいずれであっても、口座からのチャージ処理を行うことができる。つまり、カード利用者はキャッシュカードを挿入口から挿入しても、装置の所定位置に配置してもよいので、キャッシュカードを第1取引媒体と規定しているような場合に起きる取引媒体のハンドリングミス(カード利用者がキャッシュカードを第2取引媒体とすること、すなわちキャッシュカードを装置の所定位置に配置すること)が発生しないようにすることができる。
【0020】
さらに、第2の発明の実施形態においては、指示手段で指示された取引処理が1つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかが存在することを確認した後に、該当するアンテナを用いて存在が確認された取引媒体と通信を行うことにより、当該取引媒体に対する取引処理を行う。上記のようにすることで、カード利用者は取引媒体を挿入口から挿入しても、装置の所定位置に配置しても1つの取引媒体に対する取引処理を行うことができるので、取引処理を行う取引媒体を第1取引媒体と規定しているような場合に起きる取引媒体のハンドリングミス(取引媒体利用者が取引処理を行う取引媒体を第2取引媒体とすること、すなわち当該取引媒体を装置の所定位置に配置すること)が発生しないようにすることができる。
【0021】
さらに、第2の発明の実施形態においては、指示手段が取引処理を指示した直後に、搬送手段が装置の挿入口から挿入される第1取引媒体を装置の内部に取り込めるようにすると共に、第2アンテナに切り換える。上記のようにすることで、第1取引媒体が第1アンテナと通信可能な位置に搬送されるまでは第2アンテナを用いて第2取引媒体と通信することができる。また、第1取引媒体が挿入口から挿入されると、第1取引媒体を第1アンテナと通信可能な位置に自動的に搬送することができるので、第1取引媒体が当該位置にあるときに第1アンテナに切り換えれば、直ちに第1取引媒体との通信を行うことができる。これにより、取引処理の処理時間を短縮することができる。
【0022】
さらに、第2の発明の実施形態においては、第2取引媒体が指示手段で指示された取引処理の対象となる場合には、取引処理の所定の期間において、第2取引媒体を所定位置に固定する。上記のようにすることで、取引処理の途中で取引媒体利用者が第2取引媒体を収納部から抜き取ることができなくなるので、取引処理を安全・確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を簡単な取引媒体のハンドリングで行うことができ、取引処理の処理時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る取引処理装置(以下、装置という)について説明する。図1は装置の外観を示す斜視図である。図2はカードポケット内のカードを固定する機構を示す断面図である。図3はカードリーダユニットの概略機構を示す図である。図4は装置の電気的構成を示す図である。
【0025】
図1において、20は装置の筐体、21は筐体20の前面パネル、22はカード1を挿入するカード挿入口、23はカード2を収納・保持するカードポケットである。24は装置で行われた処理内容などを印刷した帳票を発行する帳票発行口、25は装置の操作ガイダンスやエラーメッセージなどを表示する表示部、26はテンキーや取り消しキーなどを備えたキーボードである。表示部25がタッチパネルを備えている場合は、キーボード26の機能を表示部25に持たせることができる。27は現金を投入したり、装置が放出した現金を取り出すための入出金口、28は入出金口27を開閉する入出金口扉である。
【0026】
11はカード挿入口22から挿入されたカード1との非接触通信に用いられる第1アンテナであり、後述のカードリーダユニット30(図3)の内部に設けられている。12はカード2との非接触通信に用いられる第2アンテナであり、前面パネル21の背面側に設けられている。以下では、カード挿入口22から挿入されるカード1を第1カード1、カードポケット23に収納されるカード2を第2カード2という。また、上記の帳票の発行は本発明の直接的事項ではないので、帳票を印刷するプリンタや帳票の発行方法などについては説明を省略する。
【0027】
図2はカードポケット23の中央部における縦断面図であり、カードポケット23内の第2カード2の位置を固定するためのカード固定手段29の構造を示す。通常、カード固定手段29の押さえ部材29aの前面は前面パネル21の前面と同一平面上にある。制御部40(図4)で第2カード2が取引処理の対象となるカードであると判定されてから取引処理が終了するまでの間、制御部40からの信号でカード固定手段29のソレノイド29bが駆動され、前方に移動した押さえ部材29aが第2カード2をカードポケット23の内壁に押さえつける。このようにして第2カード2を固定することで、取引処理の途中でカード利用者がカードポケット23から第2カード2を取り出せないようにしている。尚、カード固定手段29は、別の構造のものであってもよい。
【0028】
ここで、本装置で使用される取引媒体であるカードについて説明する。第2カード2として使用できるのは非接触カード(非接触型のカード)だけである。第1カード1として使用できるのは、非接触カードおよび接点カード(接点型のカード)や磁気カードなどの接触型のカードである。非接触カードは、アンテナ、送受信回路、制御回路、不揮発性メモリ、電源回路などを内蔵したカードであり、アンテナを貫通する磁界の変動を利用してカードリーダと非接触通信を行う。この非接触通信によって、不揮発性メモリから読み出したデータをカードリーダへ送信したり、不揮発性メモリへ書き込むデータをカードリーダから受信する。接点カードは、表面にカードリーダ側の接点(プローブ)と接触する複数の接点を備え、送受信回路、制御回路、不揮発性メモリなどを内蔵したカードであり、接点を介してカードリーダと通信を行う点を除けば、非接触カードと略同等の機能を備える。
【0029】
次に、図3を参照してカードリーダユニット30について説明する。カードリーダユニット30には、第1カード1を内部に取り込むカード取り込み許可状態と、第1カード1を内部に取り込まないカード取り込み禁止状態とがあり、2つの状態は制御部40によって設定される。取り込み許可状態のときに、筐体31の前面のカード挿入口22から第1カード1が挿入され、第1カード1の先端がカード検出センサ34aで検出されると、シャッタ32が開いてローラ33が正転し、第1カード1はカードリーダユニット30内に取り込まれる。第1カード1がローラ33によって搬送され、第1カード1の先端がカード検出センサ34cで検出されると、ローラ33の回転が停止し、第1カード1も停止する。実線で示す第1カード1が停止している位置をカード停止位置という。
【0030】
上記のカード停止位置においては、第1カード1が非接触カードであれば、第1アンテナ11を用いて第1カード1と非接触通信を行うことができる。また、第1カード1が接点カードであれば、プローブユニット36を下降させ、プローブユニット36のプローブ36aを第1カード1の接点に接触させることで、第1カード1と通信を行うことができる。第1カード1に対する取引処理が終了すると、第1カード1の排出が行われる。まず、プローブユニット36が下降位置にあるときはプローブユニット36が上昇した後に、ローラ33が逆転し、第1カード1をカード挿入口22側に搬送する。
【0031】
そして、第1カード1の後端がカード検出センサ34bで検出されると、シャッタ32が開き、さらに第1カード1が抜き取られ、第1カード1の後端がカード検出センサ34aで検出されると、シャッタ32が閉じる。このようにして、第1カード1の排出が完了する。尚、上記のローラ33の正転・逆転・停止は、カード検出センサ34a〜34cの検出信号に基づいて、制御部40がローラ33を回転させるモータ(不図示)を制御することによって行われる。また、シャッタ32の開閉、プローブユニット36の昇降なども、制御部40によって制御される。また、第1カード1が磁気カードあれば、第1カード1の取り込み時に磁気ヘッド35で磁気カードのデータを読み取り、排出時に磁気カードにデータを書き込むことができる。
【0032】
図4に示す制御部40は、CPUやメモリなどから構成され、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで装置の各部を制御する。制御部40には、上述のキーボード26などに加えて非接触カード通信部41なども接続されている。非接触カード通信部41は、送信回路、受信回路、制御回路などから構成される。送信回路は、送信データで搬送波を変調し、変調信号で第1または第2アンテナ11,12を駆動することで送信データを非接触カードに送信する。受信回路は、第1または第2アンテナ11,12が受信した非接触カードからの信号を復調することで受信データを生成する。制御回路は、制御部40と送信回路および受信回路との間で送受信データの中継を行うと共に、非接触カードとの通信の制御を行う。このように、実際に非接触カードと通信を行うのは非接触カード通信部41であるが、以下では、説明の都合上、制御部40が送信する、または受信すると記すこともある。
【0033】
アンテナ切り換え部42は、制御部40からの信号に基づいて、非接触カード通信部41に接続されるアンテナを切り換える。すなわち、第1カード1と非接触通信をする場合には第1アンテナ11(以下、内部アンテナ11ともいう)に切り換え、第2カード2と非接触通信をする場合には第2アンテナ12(以下、外部アンテナ12ともいう)に切り換える。以上のことから、第1アンテナ11とアンテナ切り換え部42と非接触カード通信部41とで第1カード1に対するカードリーダが構成され、第2アンテナ12とアンテナ切り換え部42と非接触カード通信部41とで第2カード2に対するカードリーダが構成されることになる。
【0034】
接点カード通信部43は、送信回路、受信回路、制御回路などから構成され、プローブユニット36のプローブ36aが接点カードの接点に接触した状態で、接点カードと通信を行う。磁気カードRW部44は、制御部40から渡された書き込みデータに信号処理を施して磁気ヘッド35の書き込み信号を生成する。また、磁気ヘッド35の読み取り信号に対して信号処理を施して生成した読み取りデータを制御部40に渡す。ホスト通信部45は、制御部40と上位装置50(例えば、銀行のホストコンピュータ)との間でデータの送受信を行う。メカ機構駆動部46は、上述の固定手段29のソレノイド29b、ローラ33を回転させるモータ、シャッタ32を開閉させるソレノイド、プローブユニット36を昇降させるモータ、入出金口扉28を開閉させるモータなどの駆動部と、各駆動部を制御する回路とから構成される。そして、制御部40からのコマンドや信号に基づいて、ローラ33などのメカ機構の制御および駆動を行う。
【0035】
次に、フローチャートを用いて本発明にかかる装置の動作を説明する。図5はメイン処理のフローチャートである。装置に電源が投入されると、制御部40は、実行可能な取引処理を表示部25に表示する(S1)。実行可能な取引処理として各取引処理の名称、各取引処理の内容などが表示される。例えば、一方の電子マネーカードから他方の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動させるバリュー移動処理では、バリューの移動元の電子マネーカードをカード挿入口22に挿入し、バリューの移動先の電子マネーカードをカードポケット23に入れる旨、およびバリュー移動処理を行うためのキーボード26の操作手順などが表示される。この状態でキーボード26が操作され、実行する取引処理が指示されると(S2:YES)、制御部40は、バリュー移動処理、口座からのチャージ処理および現金チャージ処理のうちで、指示された取引処理を呼び出す(S3〜S5)。以下、上記の取引処理について順番に説明する。
【0036】
まず、図6および図7を参照してバリュー移動処理について説明する。バリュー移動処理では、まず、バリュー移動処理に適合する第1カード1がカード挿入口22から挿入され、且つバリュー移動処理に適合する第2カード2がカードポケット23にセットされたかを確認するために、制御部40は図7に示すカード2枚確認処理を呼び出す(S11)。バリュー移動処理を行うためには、第2カード2は非接触カードでなければならないが、ここでは第1カード1も非接触カードでなければならないとしている。また、バリュー移動処理に適合するカードの意味については後述する。
【0037】
カード2枚確認処理では、制御部40は、第1カード1の取り込みを許可する(S31)。すなわち、カードリーダユニット30を上述のカード取り込み許可状態に設定する。この結果、カード検出センサ34aが第1カード1の挿入を検出すると、シャッタ32が開くと共にローラ33が正転し、第1カード1はカードリーダユニット30の内部に搬送され、上述のカード停止位置で停止する。上記の動作は、バリュー移動処理と並行して制御部40が実行する不図示のプログラムでメカ機構駆動部46を制御することによって実現される。
【0038】
次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることによってアンテナを外部アンテナ12に切り換える(S32)。この結果、外部アンテナ12と非接触カード通信部41とが接続され、制御部40はカードポケット23にセットされた第2カード2と非接触通信を行うことが可能となる。アンテナを外部アンテナ12に切り換えた後、制御部40は、カード属性を返すことを促すポーリングコマンドを、第2カード2からレスポンスを受信するまで繰返し第2カード2に送信する(S33〜S34)。このレスポンスには、カード事業者やカード種別、口座番号等のカード固有の番号(ID番号)などのデータが含まれる。
【0039】
第2カード2からレスポンスを受信すると(S34:YES)、すなわち非接触型の第2カード2がカードポケット23にセットされると、制御部40は、レスポンス中のデータを調べることによって第2カード2が適合カードであるか否かを判定する(S35)。適合カードとは、この装置でのバリュー移動処理の対象となりうるカードのことであり、例えば、所定のカード事業者が発行した電子マネーカードである。第2カード2が適合カードではない場合は(S35:NO)、制御部40は、第2カード2が適合カードでない旨を示すエラーメッセージを表示部25に表示し(S36)、エラー終了を示す0を戻り値として、処理を呼び出し元に戻す(S37)。S37の括弧内の数字が戻り値である。
【0040】
一方、第2カード2が適合カードである場合は(S35:YES)、制御部40は、第1カード1がカード挿入口22から挿入され、カード停止位置で停止するまで待つ(S38)。第1カード1がカード停止位置で停止したことが検出されると(S38:YES)、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることによってアンテナを内部アンテナ11に切り換える(S39)。この結果、内部アンテナ11と非接触カード通信部41が接続され、制御部40は第1カード1と非接触通信を行うことが可能となる。アンテナを内部アンテナ11に切り換えた後、制御部40は、第1カード1にカード属性を返すことを促すポーリングコマンドを送信する(S40)。この状況では、第1カード1は第1アンテナ11と通信可能な位置にあるので、第1カード1が非接触カードであれば、制御部40は直ちに第1カード1からのレスポンスを受信する。
【0041】
第1カード1からレスポンスを受信した場合は(S41:YES)、上述の第2カード2の場合と同様にして、第1カード1が適合カードであるか否かを判定する(S42)。第1カード1が適合カードである場合は(S42:YES)、制御部40は、正常終了を示す1を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S43)。一方、第1カード1からレスポンスを受信しない場合(S41:NO)、すなわち第1カード1が非接触カードではない場合、または第1カード1が適合カードではない場合は(S42:NO)、制御部40は、メカ機構駆動部46を制御することにより第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S44)。さらに、第1カード1が非接触カードではない旨、または第1カード1が適合カードではない旨のメッセージを表示部25に表示し(S45)、エラー終了を示す0を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S46)。
【0042】
上記のように、バリュー移動処理の開始直後に、第1カード1の取り込みを許可すると共に、アンテナを外部アンテナ12に切り換えているので、第1カード1がカード停止位置で停止する前に外部アンテナ12を用いて第2カード2の適合性の確認を行うことができる。また、第1カード1がカード挿入口22から挿入されれば、第2カード2の適合性の確認が終了した後、アンテナを内部アンテナ11に切り換えることによって、直ちに第1カード1の適合性の確認を行うことができる。これにより、バリュー移動処理の処理時間を短縮することができる。
【0043】
また、図7に示すカード2枚確認処理に代えて、図8に示す第2のカード2枚確認処理を用いてもよい。図7では第2カード2の適合性を確認した後に第1カード1の適合性を確認したが、図8では第1および第2カード1,2の内、先に適合性を確認できる状態になったカードから適合性を確認するようにしている。具体的には、第2カード2からレスポンスがないときに(S54:NO)、第1カード1がカード停止位置で停止したことが検出されると(S63:YES)、第2カード2の適合性の確認(S55)が済んでいなくても、第1カード1の適合性の確認が行われる(S64)。これにより、バリュー移動処理のスループットを幾分高めることができる。
【0044】
尚、図7および図8のフローチャートでは、第2カード2がカードポケット23にセットされず、いつまで経っても第2カード2からレスポンスを受信しない場合(図7のS33〜S34、図8のS67〜S68)、または第1カード1がカード挿入口22から挿入されず、いつまで経っても第1カード1が停止位置にあることが検出されない場合には(図7のS38、図8のS56)、2枚のカードの確認処理が終了しないという問題が生じる。これに対しては、例えば、タイマーで経過時間を監視し、タイマーがタイムアップしたら、2枚のカードの確認処理を強制的に終了させることで上記の問題を解決することができる。
【0045】
ここで、図6の説明に戻る。カード2枚確認処理(S11)がエラー終了し、戻り値が0である場合は(S12:YES)、制御部40は処理を呼び出し元に戻す(S22)。一方、カード2枚確認処理(S11)が正常終了し、戻り値が1である場合(S12:NO)、すなわち第1および第2カード1,2が共に非接触型の適合カードである場合は、制御部40は第1カード1の暗証番号を確認する(S13)。この確認は、第1カード1の不揮発性メモリに記憶されている暗証番号(すなわち、上述の第1カード1からのレスポンスに含まれる暗証番号)とキーボード26から入力された番号とが一致するか否かを確認することによって行われる。または、ホスト通信部45を介して第1カード1のID番号を上位装置50に送信したときに上位装置50から返信される暗証番号が上記の確認に用いられる。ここでは、暗証番号は正しいものとする。また、バリューが減額される第1カード1の暗証番号だけを確認したが、第2カード2の暗証番号も確認するようにしてもよい。
【0046】
暗証番号の確認が終了すると、制御部40は、第1カード1から第2カード2に移動する移動バリュー、すなわち第1カード1から第2カード2に移す金額の入力を促すメッセージを表示部25に表示し、カード利用者にキーボード26から上記の移動バリューを入力させる(S14)。次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることにより、アンテナを外部アンテナ12に切り換え(S15)、さらに、上記の移動バリューを第2カード2のバリュー(現在残高)に加算することによって、第2カード2のバリューを増額する(S16)。
【0047】
このバリューの増額の処理は、以下のように行われる。第1に、制御部40が第2カード2にポーリングコマンドを送信する。第2に、第2カード2と制御部40とがカードリーダおよび第2カード2の相互認証を行う。ここでは、相互認証は正しく行われたものとする。第3に、第2カード2が不揮発性メモリからバリューを読み出し、制御部40へ送信する。第4に、制御部40が受信したバリューに上記の移動バリューを加算し、加算した結果(増額されたバリュー)を第2カード2へ送信し、第2カード2は増額されたバリューで不揮発性メモリ中のバリューを書き換える。第5に、制御部40が第2カード2の不揮発性メモリから読み出された増額後のバリューを受信し、送信した増額されたバリューとのベリファイを行う。ここでは、両バリューの値は等しいものとする。
【0048】
次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることにより、アンテナを内部アンテナ11に切り換える(S17)。さらに、上記の移動バリューを第1カード1のバリューから減算することによって、第1カード1のバリューを減額する(S18)。このバリューの減額の処理は、上記のバリューの増額の処理(S16)と同様の手順で行われる。その後、制御部40は、装置内部に取り込んでいる第1カード1をローラ33の回転などを制御することによってカードリーダユニット30から排出する(S19)。さらに、制御部40は、「第1カードから第2カードへ1万円を移動しました」といった終了メッセージを表示部25に表示し(S20)、処理を呼び出し元に戻す(S21)。
【0049】
以上説明したように、2枚のカード、すなわち第1および第2カード1,2に対する取引処理の1つであるバリュー移動処理では、カード利用者が第1カード1をカード挿入口22から挿入し、第2カードをカードポケット23にセットするといった簡単なカードのハンドリングで、取引処理を行うことができるので、取引処理の処理時間を短縮することができる。また、第1および第2アンテナ11,12を備えているので、取引処理の途中で第1および第2カード1,2の出し入れなどを行わなくても、非接触型の第1および第2カード1,2に対する処理(例えば、上述の移動バリューによる減額処理や移動バリューによる増額処理)を連続して自動的に行うことができる。
【0050】
さらに、取引処理の進行状況に従って、すなわち制御部40のCPUが実行するプログラムのシーケンスに従って、アンテナ切り換え部42で内部アンテナ11または外部アンテナ12に順次切り換えるようにしているので、制御部40は、1つの非接触カード通信部41で第1および第2カード1,2に対する処理を行うことができる。尚、上述のバリュー移動処理では、第1カード1から第2カード2へバリューを移動するように予め規定されていたが、移動バリューをキーボード26から入力するときに(図6のS14)、バリューの移動方向(すなわち、バリューの移動元のカードおよびバリューの移動先のカード)をカード利用者が指定できるようにしてもよい。
【0051】
次に、第1カード1として非接触カードと接点カードとを用いることのできるバリュー移動処理について説明する。本実施形態では、図6のS11で、図9に示す第3のカード2枚確認処理が呼び出される。以下、図9と図7との相違点について説明する。図7では第1カード1からレスポンスがない場合は(S41:NO)、エラー終了としていた。それに対し、図9では第1カード1からレスポンスがない場合は(S91:NO)、制御部40は、プローブユニット36のプローブ36aを介して、すなわち当該プローブ36aと接点カードの接点とを接触させて、カード属性を返すことを促すコマンドを第1カード1に送信し(S94)、第1カード1からレスポンスを受信したか否かを判定する(S95)。尚、非接触カードと接点カードとに対するデータやコマンドの送受信手順の相違は非接触カード通信部41と接点カード通信部43とで吸収され、制御部40は非接触カードと接点カードとに対して略同じ送受信手順でデータやコマンドを送受信できるものとして、以下の説明を行う。
【0052】
第1カード1からレスポンスを受信した場合(S95:YES)、すなわち第1カード1が接点カードである場合は、制御部40は、第1カード1が適合カードであるか否かを判定する(S96)。第1カード1が適合カードである場合は(S96:YES)、制御部40は、第1カード1が接点カードであることを示す2を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S97)。一方、第1カード1からレスポンスを受信しなかった場合(S95:NO)、または第1カード1が適合カードではない場合は(S96:NO)、制御部40はエラー処理(S98〜S100)を行う。尚、制御部40は、接点カードにコマンドを送信する前にプローブユニット36を下降させてプローブ36aを接点カードの接点に接触させる。また、第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(図6のS19、図9のS98)前に、プローブユニット36を上昇させて、第1カード1の排出を妨げないようにする。
【0053】
本実施形態のバリュー移動処理では、図9の第2のカード2枚確認処理からの戻り値が2である場合、すなわち第1カード1が接点カードである場合は、制御部40は、図6のステップS17をスキップし、さらにステップS18の非接触型の第1カード1に対するバリューの増額の処理に代えて、接点カードに対するバリューの増額の処理を行う。尚、ここでは第1カード1が非接触カードまたは接点カードである場合について説明したが、セキュリティ上の問題があるものの、第1カード1が磁気カードであっても、磁気ヘッド35を用いて同様な処理を行うことができる。
【0054】
次に、図10を参照して口座からのチャージ処理(図5のS4)について説明する。口座からのチャージ処理とは、第1カード1、例えばキャッシュカードの銀行口座から引き出した金額を、第2カード2、例えば電子マネーカードのバリューにチャージ(増額)する処理である。まず、図7のカード2枚確認処理を呼び出す(S201)。この場合、図7のS42の第1カード1が適合カードであるか否かの判定は、第1カード1の属性がキャッシュカードのように口座から現金を引き出すことのできるカードであるか否かによって行われる。
【0055】
カード2枚確認処理がエラー終了し、戻り値が0である場合は(S202:YES)、制御部40は処理を呼び出し元に戻す(S211)。一方、カード2枚確認処理が正常終了し、戻り値が1である場合(S202:NO)、すなわち第1および第2カード1,2が共に非接触型の適合カードである場合は、図6のS13と同様にして、制御部40は第1カード1の暗証番号を確認する(S203)。次に、図6のS14と同様にして、制御部40は、第1カード1の口座から引き出して第2カード2のバリューにチャージするチャージ金額をキーボード26からカード利用者に入力させる(204)。チャージ金額が入力されると、制御部40は、第1カード1の口座から上記のチャージ金額を減額するために、ホスト通信部45を介して口座番号とチャージ金額とを上位装置50に送信する(S205)。上位装置50では、受信した口座番号の口座からチャージ金額が減額される。
【0056】
次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることにより、アンテナを外部アンテナ12に切り換え(S206)、図6のS16と同様にして、チャージ金額を第2カード2のバリュー(現在残高)に加算することによって、第2カード2のバリューを増額する(S207)。その後、制御部40は、ローラ33の回転などを制御することで第1カード1をカードリーダユニット30から排出し(S208)、さらに、終了メッセージを表示部25に表示し(S209)、処理を呼び出し元に戻す(S210)。また、図10のS201で図9に示す第3のカード2枚確認処理を呼び出すようにすれば、第1カード1が接点カードであっても口座からのチャージ処理を行うことができる。さらに、第1カード1が磁気カードであっても口座からのチャージ処理を行うようにしてもよい。
【0057】
尚、上述の口座からのチャージ処理では、第1カード1(キャッシュカード)の口座から第2カード2(電子マネーカード)へバリューをチャージするように予め規定されていた。しかし、このようにすると、カード挿入口22から電子マネーカード(第1カード1)が挿入されると、第1カード1が不適合なカードとして扱われる。すなわち、カード利用者のカードのハンドリングミスが発生する。そこで、上記の規定を行わずに、第1および第2カード1,2の属性(すなわち、キャッシュカードまたは電子マネーカードのいずれであるか)を制御部40が判断し、一方がキャッシュカードで、他方が電子マネーカードであれば、第1および第2カード1,2を適合カードとして扱うことで、口座からのチャージ処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、カード利用者はキャッシュカードをカード挿入口22から挿入しても、カードポケット23にセットしてもよいので、上記のハンドリングミスが発生しなくなる。
【0058】
次に、1枚のカード、すなわち第1または第2カード1,2に対する取引処理の例として現金チャージ処理(図5のS5)を説明する。現金チャージ処理とは、第1または第2カード1,2のいずれか一方のバリューに入出金口27から投入された現金の金額、すなわちチャージ金額をチャージする処理である。ここでは、第1および第2カード1,2は、電子マネーカードのようにチャージ金額をチャージできるカードである。また、第1カード1として、非接触カードおよび接点カードを用いることができる。
【0059】
以下、図11および図12を参照して現金チャージ処理について説明する。まず、制御部40は図12に示すカード1枚確認処理を呼び出す(S301)。以下、カード1枚確認処理について簡単に説明する。まず、制御部40は、第1カード1の取り込みを許可する(S401)。これにより、第1カード1がカード挿入口22から挿入されると、ローラ33などの搬送手段によりカード停止位置まで搬送される。さらに、制御部40は、アンテナを外部アンテナ12に切り換えて(S402)、第2カード2にカード属性を返すことを促すポーリングコマンドを送信する(S403)。
【0060】
ポーリングコマンドを送信した結果、第2カード2からレスポンスを受信した場合は(S404:YES)、レスポンス中のデータを調べることによって第2カード2が適合カード、例えば、電子マネーカードであるか否かを判定する(S405)。第2カード2が適合カードである場合は(S405:YES)、制御部40は、第2カード2が適合カードであることを示す2を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S408)。第2カード2が適合カードではない場合は(S405:NO)、制御部40は、エラーメッセージを表示部25に表示し(S406)、エラー終了を示す0を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S407)。
【0061】
ポーリングコマンドを送信しても第2カード2からレスポンスを受信しなかった場合(S404:NO)、例えば非接触型の第2カード2がカードポケット23にセットされていない場合は、カード挿入口22から挿入された第1カード1がカード停止位置で停止しているか否かが判定される(S409)。第1カード1がカード停止位置で停止していない場合は(S409:NO)、制御部40は第2カード2に再びポーリングコマンドを送信する(S403)。第1カード1がカード停止位置で停止している場合は(S409:YES)、制御部40は、アンテナを内部アンテナ11に切り換えてから(S410)、第1カード1にカード属性を返すことを促すポーリングコマンドを送信する(S411)。
【0062】
ポーリングコマンドを送信した結果、第1カード1からレスポンスを受信した場合は(S412:YES)、レスポンス中のデータを調べることによって第1カード1が適合カード、例えば、電子マネーカードであるか否かを判定する(S413)。第1カード1が適合カードである場合は(S413:YES)、制御部40は、第1カード1が非接触型の適合カードであることを示す1を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S414)。第1カード1が適合カードではない場合は(S413:NO)、制御部40は、ローラ33の回転などを制御することで第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S419)と共に、エラーメッセージを表示部25に表示し(S420)、エラー終了を示す0を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S421)。
【0063】
ポーリングコマンドを送信しても第1カード1からレスポンスを受信しなかった場合は(S412:NO)、第1カード1が接点カードである可能性があるので、制御部40は、プローブユニット36のプローブ36aを介して、すなわち当該プローブ36aと接点カードの接点とを接触させて、カード属性を返すことを促すコマンドを第1カード1に送信し(S415)、第1カード1からレスポンスを受信したか否かを判定する(S416)。レスポンスを受信した場合(S416:YES)、すなわち第1カード1が接点カードである場合は、制御部40は、第1カード1が適合カードであるか否かを判定する(S417)。第1カード1が適合カードである場合は(S417:YES)、制御部40は、第1カード1が接点型の適合カードであることを示す3を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S418)。一方、第1カード1からレスポンスを受信しなかった場合(S416:NO)、または第1カード1が適合カードではない場合は(S417:NO)、制御部40は上述のエラー処理(S419〜S421)を行う。
【0064】
ここで、図11の説明に戻る。カード1枚確認処理(S301)がエラー終了し、戻り値が0である場合は(S302:YES)、制御部40は処理を呼び出し元に戻す(S317)。一方、カード1枚確認処理(S301)が正常終了し、戻り値が1〜3である場合は(S302:NO)、制御部40は、入出金口扉28を開け、第1または第2カード1,2にチャージするチャージ金額分の現金を入出金口27に投入することを促すメッセージを表示部25に表示し、カード利用者に現金を投入させる(S303)。
【0065】
現金が投入されると、不図示の貨幣処理部で投入された現金の金額が求められる。制御部40は、求められた金額、すなわちチャージ金額を表示部25に表示し、カード利用者にチャージ金額の確認を行わせる(S304)。この状態で、カード利用者がキーボード26の取り消しキーを押して、現金チャージ処理の取り消しを指示した場合は(S305:YES)、制御部40は、不図示の貨幣処理部を制御することで投入された現金を入出金口27に放出させる(S318)。さらに、上記の戻り値が1または3である場合(S319:YES)、すなわち第1カード1がカードリーダユニット30内に取り込まれている場合は、制御部40は第1カード1を排出して(S320)、処理を呼び出し元に戻す(S321)。
【0066】
現金チャージ処理の取り消しが指示されなかった場合は(S305:NO)、制御部40は、上記の戻り値が1〜3のいずれであるかを調べ(S306,S312)、戻り値に応じた処理を行う。戻り値が1である場合(S306:YES)、すなわち非接触型の第1カード1がカードリーダユニット30内に取り込まれた場合は、制御部40は、アンテナを内部アンテナ11に切り換え(S307)、図6のS16と同様の手順によりチャージ金額を第1カード1のバリューに加算することによって、第1カード1のバリューを増額し(S308)、さらに第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S309)。
【0067】
戻り値が2である場合(S312:YES)、すなわち非接触型の第2カード2がカードポケット23にセットされた場合は、制御部40は、アンテナを外部アンテナ12に切り換え(S313)、図6のS16と同様の手順によりチャージ金額を第2カード2のバリューに加算することによって、第2カード2のバリューを増額する(S314)。戻り値が3である場合(S312:NO)、すなわち接点型の第1カード1がカードリーダユニット30内に取り込まれた場合は、制御部40は、プローブユニット36のプローブ36aを介して、すなわち当該プローブ36aと第1カード1の接点とを接触させて、チャージ金額を第1カード1のバリューに加算することによって、第1カード1のバリューを増額し(S315)、さらに第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S316)。上記の戻り値ごとの処理が終了すると、制御部40は終了メッセージを表示部25に表示し(S310)、処理を呼び出し元に戻す(S311)。
【0068】
また、小売店などに設置される取引処理装置では、上記の現金チャージ処理と同様に1枚のカードに対する支払い処理が行われる。支払い処理では、購入した商品の支払いが第1または第2カード1,2で行われる。第1または第2カード1,2が電子マネーカードであれば、第1または第2カード1,2のバリューが支払額だけ減額される。一方、第1または第2カード1,2がキャッシュカードであれば、第1または第2カード1,2の口座残高が支払額だけ減額される。尚、現金チャージ処理や支払い処理の第1カード1として、磁気カードを用いることもできる。
【0069】
以上説明したように、本装置は、現金チャージ処理や支払い処理などの1枚のカードに対する取引処理も行うことができる。1枚のカードに対する取引処理では、外部アンテナ12を用いた通信によりカードポケット23にセットされた非接触型の第2カード2の存在が確認された場合には、第2カード2に対して取引処理が行われる。一方、内部アンテナ11を用いた通信によりカードリーダユニット30内に取り込まれた非接触型の第1カード1の存在が確認された場合には、第1カード1に対して取引処理が行われる。つまり、カード利用者がカードをカード挿入口22から挿入しても、カードポケット23にセットしても取引処理が行われるので、第1カード1だけが利用可能と規定したときに起きるカードのハンドリングミス(すなわち、カード利用者がカードをカードポケットにセットすること)が発生しない。また、アンテナ切り換え部42で内部アンテナ11と外部アンテナ12とを切り換えるので、1つの非接触カード通信部41で第1または第2カード1,2のいずれに対しても通信を行うことができる。
【0070】
以上述べた実施形態においては、2枚のカードに対する取引処理の例としてバリュー移動処理と口座からのチャージ処理とを説明し、1枚のカードに対する取引処理の例として現金チャージ処理と支払い処理とを説明したが、2枚のカードに対する取引処理および1枚のカードに対する取引処理は、上記のものに限定されるものではない。また、上記実施形態では、アンテナ切り換え部42で第1アンテナ11と第2アンテナ12とを切り換えるようにしたが、アンテナ切り換え部42を設けずに第1および第2アンテナ11,12ごとに非接触カード通信部を設け、第1の非接触カード通信部で第1カード1と通信し、第2の非接触カード通信部で第2カード2と通信するようにしても本発明を実施することができる。
【0071】
さらに、上記実施形態では、取引媒体としてカードを例に挙げたが、本発明を適用できる取引媒体であれば、取引媒体はカード以外の媒体であってもよい。さらに、上記実施形態では、第1または第2カード1,2と制御部40(または、非接触カード通信部41および接点カード通信部43)との通信手順についても簡単に説明したが、通信手順は本発明の直接的事項ではなく、カードの種類や規格に応じて他の通信手順を用いても本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】取引処理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】カードポケット内のカードを固定する機構を示す断面図である。
【図3】カードリーダユニットの概略機構を示す図である。
【図4】取引処理装置の電気的構成を示す図である。
【図5】メイン処理のフローチャートである。
【図6】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図7】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図8】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図9】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図10】口座からのチャージ処理のフローチャートである。
【図11】現金チャージ処理のフローチャートである。
【図12】現金チャージ処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 第1カード(第1取引媒体)
2 第2カード(第2取引媒体)
11 第1アンテナ(内部アンテナ)
12 第2アンテナ(外部アンテナ)
22 カード挿入口
23 カードポケット(収納部)
26 キーボード(指示手段)
29 カード固定手段
33 ローラ(搬送手段)
35 磁気ヘッド
36 プローブユニット
36a プローブ
40 制御部
41 非接触カード通信部
42 アンテナ切り換え部
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型の取引媒体に対する取引処理を行う取引処理装置および当該装置における取引処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通信によってカードに記録された情報のリード/ライトが可能な非接触カードが定期券や取引カードとして普及しつつあり、自動改札機や取引処理装置(自動現金預入装置など)で利用されている。取引処理装置においては、非接触カードのセキュリティが高いことから、今後、第1の非接触型の電子マネーカードから第2の非接触型の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動するバリュー移動処理などの取引処理が行われる。また、このような取引処理に用いられる非接触カードのカードリーダ(リーダ/ライタともいう)として以下のものが知られている。
【0003】
下記の特許文献1に示されるカードリーダは、非接触カードとの通信に用いる第1通信コイルと第2通信コイルとを備える。第1通信コイルは、カード挿入口とカード挿入口の内側のシャッタとの間に取り付けられており、カード挿入口から挿入されたカードが非接触通信の可能なカードであるか否かを検出する。そのカードが非接触通信の可能なカードである場合は、シャッタが開き、カードがカードリーダの内部に取り込まれ、第2通信コイルによって非接触カードに対するリード/ライトなどの処理が行われる。一方、カード挿入口から挿入されたものが非接触通信の不可能なカードや異物の場合は、シャッタが開かない。このようにして、非接触通信の不可能なカードや異物がカードリーダ内に取り込まれるのを防止している。
【0004】
下記の特許文献2に示されるカードリーダは、カードリーダの筐体の上面の内側に1つのアンテナを備えており、このアンテナでカードリーダの上面に翳された非接触カード、またはカード挿入口から挿入され、カードリーダの内部に取り込まれた非接触カードに対してリード/ライトを行う。また、このカードリーダの内部には、磁気カードや磁気ストライプ付きの非接触カードに対してリード/ライトを行うための磁気ヘッドも設けられている。
【0005】
尚、2つの非接触カードに対する取引処理を行う装置ではないが、下記の特許文献3には、第1アンテナと第2アンテナとを備えた自動改札機が示されている。自動改札機の本体の上面に設けられた第1アンテナは、当該アンテナに翳された非接触券および非接触トークンを読み取り、トークン投入口の近くに設けられた第2アンテナは、トークン投入口に投入された非接触トークンを読み取る。また、複数のアンテナをハードウエア的にアンテナ切り換え部で切り換えることが下記の特許文献4に示されている。また、非接触カードとカードリーダとの通信手順などについては、下記の特許文献5に示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−118035号公報(段落0009〜0018)
【特許文献2】特開平11−161751号公報(要約、段落0065〜0070)
【特許文献3】特開2002−342799号公報(段落0011〜0039)
【特許文献4】特開平6−333097号公報(要約)
【特許文献5】特開2000−123138号公報(段落0012〜0024)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のカードリーダを用いた取引処理装置で、非接触型の第1の電子マネーカードから非接触型の第2の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動するバリュー移動処理を行う場合、第1の電子マネーカードをカードリーダ内に取り込み、当該カードに対して移動バリューの減額処理を行った後に当該カードを排出し、その後、第2の電子マネーカードをカードリーダ内に取り込み、当該カードに対して移動バリューの増額処理を行った後に当該カードを排出することになる。このとき、カード利用者は取引処理装置に表示される案内メッセージを見て、2枚のカードの出し入れをしなければならないので、カードのハンドリングに手間がかかり、取引処理の時間が長くなるという問題がある。また、2つの非接触型の電子マネーカードに対して連続して減額処理と増額処理とを行うことができないので、第1の電子マネーカードが排出された後にカード利用者が第2の電子マネーを挿入しないような場合などを考えると、取引処理装置のエラー処理が非常に複雑になるという問題もある。
【0008】
また、特許文献2のカードリーダを用いた取引処理装置で上述のバリュー移動処理を行う場合、カードリーダ内に取り込まれた非接触型の電子マネーカードとカードリーダの上面に翳された非接触型の電子マネーカードとを1つのアンテナで読み取ることになり、移動バリューの増額処理をするカードと減額処理をするカードとを識別することができず、バリュー移動処理などを行うことができないという問題がある。また、このカードリーダでは、カード挿入口はカードリーダに前面に配置され、非接触型のカードを翳す部分はカードリーダの奥側の上面に配置されるので、略鉛直の前面パネルにカード挿入口が配置される自動現金預入装置などでは、非接触型のカードをアンテナに翳すことができないという問題もある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を簡単な取引媒体のハンドリングで行うことのできる取引処理装置および当該装置における取引処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明では、搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナと、第1アンテナまたは第2アンテナを用いて第1取引媒体または第2取引媒体と通信を行う非接触通信手段と、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を指示する指示手段と、搬送手段を制御すると共に非接触通信手段と通信を行う制御手段と、を備える。そして、制御手段は、指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、非接触通信手段に第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行わせることにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を行う。
【0011】
上記のようにすることで、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入し、第2取引媒体を装置の所定位置に配置するといった簡単な取引媒体のハンドリングで行うことができ、取引処理の処理時間を短縮することができる。また、2つのアンテナを備えているので、2つの非接触型の取引媒体に対する処理(例えば、実施形態に示すバリュー移動処理における第2カードのバリューの増額処理および第1カードのバリューの減額処理)を連続して自動的に行うことができ、取引処理の途中で2つの取引媒体を出し入れすることによって起きる上述の問題が発生しない。さらに、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入することで、または第2取引媒体を装置の所定位置に配置することで1つの非接触型の取引媒体に対する取引処理も行うことができる。
【0012】
第1の発明の実施形態においては、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えるアンテナ切り換え部を備え、制御手段は、アンテナ切り換え部を制御することにより、非接触通信手段に第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかと通信を行わせる。上記のようにすることで、1つの非接触通信部で2つの取引媒体と通信を行うことができるので、装置の部品点数の増加を抑制することができる。
【0013】
また、第1の発明の実施形態においては、第2取引媒体を収納する収納部と、当該収納部に収納された第2取引媒体を固定する固定手段とを備える。上記の固定手段で収納部に収納された第2取引媒体を固定することで、取引処理の途中で取引媒体利用者が第2取引媒体を収納部から抜き取ることができなくなるので、取引処理を安全・確実に行うことができる。
【0014】
さらに、第1の発明の実施形態においては、搬送手段が第1取引媒体を取り込む搬送路には、接触型の取引媒体と接触する接触アクセス手段が設けられ、装置の内部に取り込まれた第1取引媒体が接触型の取引媒体である場合には、制御手段は、接触アクセス手段を介して第1取引媒体と通信を行う。上記のようにすることで、接触アクセス手段(例えば、磁気ヘッドや接点型のカードの接点と接触するためのプローブ)を介して接触型の第1取引媒体(例えば、磁気カードや接点型のカード)と通信を行うことができるので、第1取引媒体が接触型の取引媒体であっても、1つまたは2つの取引媒体に対する取引処理を行うことができる。
【0015】
第2の発明は、搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナとを備え、指示手段によって指示された取引処理を行う取引処理装置における取引処理方法であって、指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、第1アンテナおよび/または第2アンテナを用いて第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を行う。
【0016】
上記のようにすることで、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入し、第2取引媒体を装置の所定位置に配置するといった簡単な取引媒体のハンドリングで行うことができ、取引処理の処理時間を短縮することができる。また、2つのアンテナを用いるので、2つの非接触型の取引媒体に対する処理(例えば、実施形態に示すバリュー移動処理における第2カードのバリューの増額処理および第1カードのバリューの減額処理)を連続して自動的に行うことができ、取引処理の途中で2つの取引媒体を出し入れすることによって起きる上述の問題が発生しない。さらに、取引媒体利用者が第1取引媒体を挿入口から挿入することで、または第2取引媒体を装置の所定位置に配置することで1つの非接触型の取引媒体に対する取引処理も行うことができる。
【0017】
第2の発明の実施形態においては、指示手段で指示された取引処理が2つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体および第2取引媒体が共に存在することを確認した後に、取引処理の内容に基づいて、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理とを所定の順序で行う。上記のように、第1取引媒体および第2取引媒体が共に存在することを確認した後に、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理を行うので、2つの取引媒体に対する取引処理を安全・確実に行うことができる。
【0018】
また、第2の発明の実施形態においては、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理を行う場合、2つの処理の一方の処理の処理結果に基づいて他方の処理を行う。上記のようにすることで、一方の非接触型の電子マネーカードから他方の非接触型の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動するバリュー移動処理や、非接触型のキャッシュカードの口座から減額した金額を非接触型の電子マネーカードのバリューへ加算して増額する口座からのチャージ処理などを行うことができる。
【0019】
さらに、第2の発明の実施形態においては、第1取引媒体との通信で得られた第1取引媒体の属性と、第2取引媒体との通信で得られた第2取引媒体の属性とに基づいて、取引処理における各処理の対象となる取引媒体を決定する。上記のようにすることで、例えば、キャッシュカードの口座から減額した金額を電子マネーカードのバリューへ加算して増額する口座からのチャージ処理では、第1取引媒体がキャッシュカードまたは電子マネーカードのいずれであっても、口座からのチャージ処理を行うことができる。つまり、カード利用者はキャッシュカードを挿入口から挿入しても、装置の所定位置に配置してもよいので、キャッシュカードを第1取引媒体と規定しているような場合に起きる取引媒体のハンドリングミス(カード利用者がキャッシュカードを第2取引媒体とすること、すなわちキャッシュカードを装置の所定位置に配置すること)が発生しないようにすることができる。
【0020】
さらに、第2の発明の実施形態においては、指示手段で指示された取引処理が1つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかが存在することを確認した後に、該当するアンテナを用いて存在が確認された取引媒体と通信を行うことにより、当該取引媒体に対する取引処理を行う。上記のようにすることで、カード利用者は取引媒体を挿入口から挿入しても、装置の所定位置に配置しても1つの取引媒体に対する取引処理を行うことができるので、取引処理を行う取引媒体を第1取引媒体と規定しているような場合に起きる取引媒体のハンドリングミス(取引媒体利用者が取引処理を行う取引媒体を第2取引媒体とすること、すなわち当該取引媒体を装置の所定位置に配置すること)が発生しないようにすることができる。
【0021】
さらに、第2の発明の実施形態においては、指示手段が取引処理を指示した直後に、搬送手段が装置の挿入口から挿入される第1取引媒体を装置の内部に取り込めるようにすると共に、第2アンテナに切り換える。上記のようにすることで、第1取引媒体が第1アンテナと通信可能な位置に搬送されるまでは第2アンテナを用いて第2取引媒体と通信することができる。また、第1取引媒体が挿入口から挿入されると、第1取引媒体を第1アンテナと通信可能な位置に自動的に搬送することができるので、第1取引媒体が当該位置にあるときに第1アンテナに切り換えれば、直ちに第1取引媒体との通信を行うことができる。これにより、取引処理の処理時間を短縮することができる。
【0022】
さらに、第2の発明の実施形態においては、第2取引媒体が指示手段で指示された取引処理の対象となる場合には、取引処理の所定の期間において、第2取引媒体を所定位置に固定する。上記のようにすることで、取引処理の途中で取引媒体利用者が第2取引媒体を収納部から抜き取ることができなくなるので、取引処理を安全・確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2つの非接触型の取引媒体に対する取引処理を簡単な取引媒体のハンドリングで行うことができ、取引処理の処理時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る取引処理装置(以下、装置という)について説明する。図1は装置の外観を示す斜視図である。図2はカードポケット内のカードを固定する機構を示す断面図である。図3はカードリーダユニットの概略機構を示す図である。図4は装置の電気的構成を示す図である。
【0025】
図1において、20は装置の筐体、21は筐体20の前面パネル、22はカード1を挿入するカード挿入口、23はカード2を収納・保持するカードポケットである。24は装置で行われた処理内容などを印刷した帳票を発行する帳票発行口、25は装置の操作ガイダンスやエラーメッセージなどを表示する表示部、26はテンキーや取り消しキーなどを備えたキーボードである。表示部25がタッチパネルを備えている場合は、キーボード26の機能を表示部25に持たせることができる。27は現金を投入したり、装置が放出した現金を取り出すための入出金口、28は入出金口27を開閉する入出金口扉である。
【0026】
11はカード挿入口22から挿入されたカード1との非接触通信に用いられる第1アンテナであり、後述のカードリーダユニット30(図3)の内部に設けられている。12はカード2との非接触通信に用いられる第2アンテナであり、前面パネル21の背面側に設けられている。以下では、カード挿入口22から挿入されるカード1を第1カード1、カードポケット23に収納されるカード2を第2カード2という。また、上記の帳票の発行は本発明の直接的事項ではないので、帳票を印刷するプリンタや帳票の発行方法などについては説明を省略する。
【0027】
図2はカードポケット23の中央部における縦断面図であり、カードポケット23内の第2カード2の位置を固定するためのカード固定手段29の構造を示す。通常、カード固定手段29の押さえ部材29aの前面は前面パネル21の前面と同一平面上にある。制御部40(図4)で第2カード2が取引処理の対象となるカードであると判定されてから取引処理が終了するまでの間、制御部40からの信号でカード固定手段29のソレノイド29bが駆動され、前方に移動した押さえ部材29aが第2カード2をカードポケット23の内壁に押さえつける。このようにして第2カード2を固定することで、取引処理の途中でカード利用者がカードポケット23から第2カード2を取り出せないようにしている。尚、カード固定手段29は、別の構造のものであってもよい。
【0028】
ここで、本装置で使用される取引媒体であるカードについて説明する。第2カード2として使用できるのは非接触カード(非接触型のカード)だけである。第1カード1として使用できるのは、非接触カードおよび接点カード(接点型のカード)や磁気カードなどの接触型のカードである。非接触カードは、アンテナ、送受信回路、制御回路、不揮発性メモリ、電源回路などを内蔵したカードであり、アンテナを貫通する磁界の変動を利用してカードリーダと非接触通信を行う。この非接触通信によって、不揮発性メモリから読み出したデータをカードリーダへ送信したり、不揮発性メモリへ書き込むデータをカードリーダから受信する。接点カードは、表面にカードリーダ側の接点(プローブ)と接触する複数の接点を備え、送受信回路、制御回路、不揮発性メモリなどを内蔵したカードであり、接点を介してカードリーダと通信を行う点を除けば、非接触カードと略同等の機能を備える。
【0029】
次に、図3を参照してカードリーダユニット30について説明する。カードリーダユニット30には、第1カード1を内部に取り込むカード取り込み許可状態と、第1カード1を内部に取り込まないカード取り込み禁止状態とがあり、2つの状態は制御部40によって設定される。取り込み許可状態のときに、筐体31の前面のカード挿入口22から第1カード1が挿入され、第1カード1の先端がカード検出センサ34aで検出されると、シャッタ32が開いてローラ33が正転し、第1カード1はカードリーダユニット30内に取り込まれる。第1カード1がローラ33によって搬送され、第1カード1の先端がカード検出センサ34cで検出されると、ローラ33の回転が停止し、第1カード1も停止する。実線で示す第1カード1が停止している位置をカード停止位置という。
【0030】
上記のカード停止位置においては、第1カード1が非接触カードであれば、第1アンテナ11を用いて第1カード1と非接触通信を行うことができる。また、第1カード1が接点カードであれば、プローブユニット36を下降させ、プローブユニット36のプローブ36aを第1カード1の接点に接触させることで、第1カード1と通信を行うことができる。第1カード1に対する取引処理が終了すると、第1カード1の排出が行われる。まず、プローブユニット36が下降位置にあるときはプローブユニット36が上昇した後に、ローラ33が逆転し、第1カード1をカード挿入口22側に搬送する。
【0031】
そして、第1カード1の後端がカード検出センサ34bで検出されると、シャッタ32が開き、さらに第1カード1が抜き取られ、第1カード1の後端がカード検出センサ34aで検出されると、シャッタ32が閉じる。このようにして、第1カード1の排出が完了する。尚、上記のローラ33の正転・逆転・停止は、カード検出センサ34a〜34cの検出信号に基づいて、制御部40がローラ33を回転させるモータ(不図示)を制御することによって行われる。また、シャッタ32の開閉、プローブユニット36の昇降なども、制御部40によって制御される。また、第1カード1が磁気カードあれば、第1カード1の取り込み時に磁気ヘッド35で磁気カードのデータを読み取り、排出時に磁気カードにデータを書き込むことができる。
【0032】
図4に示す制御部40は、CPUやメモリなどから構成され、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで装置の各部を制御する。制御部40には、上述のキーボード26などに加えて非接触カード通信部41なども接続されている。非接触カード通信部41は、送信回路、受信回路、制御回路などから構成される。送信回路は、送信データで搬送波を変調し、変調信号で第1または第2アンテナ11,12を駆動することで送信データを非接触カードに送信する。受信回路は、第1または第2アンテナ11,12が受信した非接触カードからの信号を復調することで受信データを生成する。制御回路は、制御部40と送信回路および受信回路との間で送受信データの中継を行うと共に、非接触カードとの通信の制御を行う。このように、実際に非接触カードと通信を行うのは非接触カード通信部41であるが、以下では、説明の都合上、制御部40が送信する、または受信すると記すこともある。
【0033】
アンテナ切り換え部42は、制御部40からの信号に基づいて、非接触カード通信部41に接続されるアンテナを切り換える。すなわち、第1カード1と非接触通信をする場合には第1アンテナ11(以下、内部アンテナ11ともいう)に切り換え、第2カード2と非接触通信をする場合には第2アンテナ12(以下、外部アンテナ12ともいう)に切り換える。以上のことから、第1アンテナ11とアンテナ切り換え部42と非接触カード通信部41とで第1カード1に対するカードリーダが構成され、第2アンテナ12とアンテナ切り換え部42と非接触カード通信部41とで第2カード2に対するカードリーダが構成されることになる。
【0034】
接点カード通信部43は、送信回路、受信回路、制御回路などから構成され、プローブユニット36のプローブ36aが接点カードの接点に接触した状態で、接点カードと通信を行う。磁気カードRW部44は、制御部40から渡された書き込みデータに信号処理を施して磁気ヘッド35の書き込み信号を生成する。また、磁気ヘッド35の読み取り信号に対して信号処理を施して生成した読み取りデータを制御部40に渡す。ホスト通信部45は、制御部40と上位装置50(例えば、銀行のホストコンピュータ)との間でデータの送受信を行う。メカ機構駆動部46は、上述の固定手段29のソレノイド29b、ローラ33を回転させるモータ、シャッタ32を開閉させるソレノイド、プローブユニット36を昇降させるモータ、入出金口扉28を開閉させるモータなどの駆動部と、各駆動部を制御する回路とから構成される。そして、制御部40からのコマンドや信号に基づいて、ローラ33などのメカ機構の制御および駆動を行う。
【0035】
次に、フローチャートを用いて本発明にかかる装置の動作を説明する。図5はメイン処理のフローチャートである。装置に電源が投入されると、制御部40は、実行可能な取引処理を表示部25に表示する(S1)。実行可能な取引処理として各取引処理の名称、各取引処理の内容などが表示される。例えば、一方の電子マネーカードから他方の電子マネーカードへ現金に相当するバリューを移動させるバリュー移動処理では、バリューの移動元の電子マネーカードをカード挿入口22に挿入し、バリューの移動先の電子マネーカードをカードポケット23に入れる旨、およびバリュー移動処理を行うためのキーボード26の操作手順などが表示される。この状態でキーボード26が操作され、実行する取引処理が指示されると(S2:YES)、制御部40は、バリュー移動処理、口座からのチャージ処理および現金チャージ処理のうちで、指示された取引処理を呼び出す(S3〜S5)。以下、上記の取引処理について順番に説明する。
【0036】
まず、図6および図7を参照してバリュー移動処理について説明する。バリュー移動処理では、まず、バリュー移動処理に適合する第1カード1がカード挿入口22から挿入され、且つバリュー移動処理に適合する第2カード2がカードポケット23にセットされたかを確認するために、制御部40は図7に示すカード2枚確認処理を呼び出す(S11)。バリュー移動処理を行うためには、第2カード2は非接触カードでなければならないが、ここでは第1カード1も非接触カードでなければならないとしている。また、バリュー移動処理に適合するカードの意味については後述する。
【0037】
カード2枚確認処理では、制御部40は、第1カード1の取り込みを許可する(S31)。すなわち、カードリーダユニット30を上述のカード取り込み許可状態に設定する。この結果、カード検出センサ34aが第1カード1の挿入を検出すると、シャッタ32が開くと共にローラ33が正転し、第1カード1はカードリーダユニット30の内部に搬送され、上述のカード停止位置で停止する。上記の動作は、バリュー移動処理と並行して制御部40が実行する不図示のプログラムでメカ機構駆動部46を制御することによって実現される。
【0038】
次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることによってアンテナを外部アンテナ12に切り換える(S32)。この結果、外部アンテナ12と非接触カード通信部41とが接続され、制御部40はカードポケット23にセットされた第2カード2と非接触通信を行うことが可能となる。アンテナを外部アンテナ12に切り換えた後、制御部40は、カード属性を返すことを促すポーリングコマンドを、第2カード2からレスポンスを受信するまで繰返し第2カード2に送信する(S33〜S34)。このレスポンスには、カード事業者やカード種別、口座番号等のカード固有の番号(ID番号)などのデータが含まれる。
【0039】
第2カード2からレスポンスを受信すると(S34:YES)、すなわち非接触型の第2カード2がカードポケット23にセットされると、制御部40は、レスポンス中のデータを調べることによって第2カード2が適合カードであるか否かを判定する(S35)。適合カードとは、この装置でのバリュー移動処理の対象となりうるカードのことであり、例えば、所定のカード事業者が発行した電子マネーカードである。第2カード2が適合カードではない場合は(S35:NO)、制御部40は、第2カード2が適合カードでない旨を示すエラーメッセージを表示部25に表示し(S36)、エラー終了を示す0を戻り値として、処理を呼び出し元に戻す(S37)。S37の括弧内の数字が戻り値である。
【0040】
一方、第2カード2が適合カードである場合は(S35:YES)、制御部40は、第1カード1がカード挿入口22から挿入され、カード停止位置で停止するまで待つ(S38)。第1カード1がカード停止位置で停止したことが検出されると(S38:YES)、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることによってアンテナを内部アンテナ11に切り換える(S39)。この結果、内部アンテナ11と非接触カード通信部41が接続され、制御部40は第1カード1と非接触通信を行うことが可能となる。アンテナを内部アンテナ11に切り換えた後、制御部40は、第1カード1にカード属性を返すことを促すポーリングコマンドを送信する(S40)。この状況では、第1カード1は第1アンテナ11と通信可能な位置にあるので、第1カード1が非接触カードであれば、制御部40は直ちに第1カード1からのレスポンスを受信する。
【0041】
第1カード1からレスポンスを受信した場合は(S41:YES)、上述の第2カード2の場合と同様にして、第1カード1が適合カードであるか否かを判定する(S42)。第1カード1が適合カードである場合は(S42:YES)、制御部40は、正常終了を示す1を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S43)。一方、第1カード1からレスポンスを受信しない場合(S41:NO)、すなわち第1カード1が非接触カードではない場合、または第1カード1が適合カードではない場合は(S42:NO)、制御部40は、メカ機構駆動部46を制御することにより第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S44)。さらに、第1カード1が非接触カードではない旨、または第1カード1が適合カードではない旨のメッセージを表示部25に表示し(S45)、エラー終了を示す0を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S46)。
【0042】
上記のように、バリュー移動処理の開始直後に、第1カード1の取り込みを許可すると共に、アンテナを外部アンテナ12に切り換えているので、第1カード1がカード停止位置で停止する前に外部アンテナ12を用いて第2カード2の適合性の確認を行うことができる。また、第1カード1がカード挿入口22から挿入されれば、第2カード2の適合性の確認が終了した後、アンテナを内部アンテナ11に切り換えることによって、直ちに第1カード1の適合性の確認を行うことができる。これにより、バリュー移動処理の処理時間を短縮することができる。
【0043】
また、図7に示すカード2枚確認処理に代えて、図8に示す第2のカード2枚確認処理を用いてもよい。図7では第2カード2の適合性を確認した後に第1カード1の適合性を確認したが、図8では第1および第2カード1,2の内、先に適合性を確認できる状態になったカードから適合性を確認するようにしている。具体的には、第2カード2からレスポンスがないときに(S54:NO)、第1カード1がカード停止位置で停止したことが検出されると(S63:YES)、第2カード2の適合性の確認(S55)が済んでいなくても、第1カード1の適合性の確認が行われる(S64)。これにより、バリュー移動処理のスループットを幾分高めることができる。
【0044】
尚、図7および図8のフローチャートでは、第2カード2がカードポケット23にセットされず、いつまで経っても第2カード2からレスポンスを受信しない場合(図7のS33〜S34、図8のS67〜S68)、または第1カード1がカード挿入口22から挿入されず、いつまで経っても第1カード1が停止位置にあることが検出されない場合には(図7のS38、図8のS56)、2枚のカードの確認処理が終了しないという問題が生じる。これに対しては、例えば、タイマーで経過時間を監視し、タイマーがタイムアップしたら、2枚のカードの確認処理を強制的に終了させることで上記の問題を解決することができる。
【0045】
ここで、図6の説明に戻る。カード2枚確認処理(S11)がエラー終了し、戻り値が0である場合は(S12:YES)、制御部40は処理を呼び出し元に戻す(S22)。一方、カード2枚確認処理(S11)が正常終了し、戻り値が1である場合(S12:NO)、すなわち第1および第2カード1,2が共に非接触型の適合カードである場合は、制御部40は第1カード1の暗証番号を確認する(S13)。この確認は、第1カード1の不揮発性メモリに記憶されている暗証番号(すなわち、上述の第1カード1からのレスポンスに含まれる暗証番号)とキーボード26から入力された番号とが一致するか否かを確認することによって行われる。または、ホスト通信部45を介して第1カード1のID番号を上位装置50に送信したときに上位装置50から返信される暗証番号が上記の確認に用いられる。ここでは、暗証番号は正しいものとする。また、バリューが減額される第1カード1の暗証番号だけを確認したが、第2カード2の暗証番号も確認するようにしてもよい。
【0046】
暗証番号の確認が終了すると、制御部40は、第1カード1から第2カード2に移動する移動バリュー、すなわち第1カード1から第2カード2に移す金額の入力を促すメッセージを表示部25に表示し、カード利用者にキーボード26から上記の移動バリューを入力させる(S14)。次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることにより、アンテナを外部アンテナ12に切り換え(S15)、さらに、上記の移動バリューを第2カード2のバリュー(現在残高)に加算することによって、第2カード2のバリューを増額する(S16)。
【0047】
このバリューの増額の処理は、以下のように行われる。第1に、制御部40が第2カード2にポーリングコマンドを送信する。第2に、第2カード2と制御部40とがカードリーダおよび第2カード2の相互認証を行う。ここでは、相互認証は正しく行われたものとする。第3に、第2カード2が不揮発性メモリからバリューを読み出し、制御部40へ送信する。第4に、制御部40が受信したバリューに上記の移動バリューを加算し、加算した結果(増額されたバリュー)を第2カード2へ送信し、第2カード2は増額されたバリューで不揮発性メモリ中のバリューを書き換える。第5に、制御部40が第2カード2の不揮発性メモリから読み出された増額後のバリューを受信し、送信した増額されたバリューとのベリファイを行う。ここでは、両バリューの値は等しいものとする。
【0048】
次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることにより、アンテナを内部アンテナ11に切り換える(S17)。さらに、上記の移動バリューを第1カード1のバリューから減算することによって、第1カード1のバリューを減額する(S18)。このバリューの減額の処理は、上記のバリューの増額の処理(S16)と同様の手順で行われる。その後、制御部40は、装置内部に取り込んでいる第1カード1をローラ33の回転などを制御することによってカードリーダユニット30から排出する(S19)。さらに、制御部40は、「第1カードから第2カードへ1万円を移動しました」といった終了メッセージを表示部25に表示し(S20)、処理を呼び出し元に戻す(S21)。
【0049】
以上説明したように、2枚のカード、すなわち第1および第2カード1,2に対する取引処理の1つであるバリュー移動処理では、カード利用者が第1カード1をカード挿入口22から挿入し、第2カードをカードポケット23にセットするといった簡単なカードのハンドリングで、取引処理を行うことができるので、取引処理の処理時間を短縮することができる。また、第1および第2アンテナ11,12を備えているので、取引処理の途中で第1および第2カード1,2の出し入れなどを行わなくても、非接触型の第1および第2カード1,2に対する処理(例えば、上述の移動バリューによる減額処理や移動バリューによる増額処理)を連続して自動的に行うことができる。
【0050】
さらに、取引処理の進行状況に従って、すなわち制御部40のCPUが実行するプログラムのシーケンスに従って、アンテナ切り換え部42で内部アンテナ11または外部アンテナ12に順次切り換えるようにしているので、制御部40は、1つの非接触カード通信部41で第1および第2カード1,2に対する処理を行うことができる。尚、上述のバリュー移動処理では、第1カード1から第2カード2へバリューを移動するように予め規定されていたが、移動バリューをキーボード26から入力するときに(図6のS14)、バリューの移動方向(すなわち、バリューの移動元のカードおよびバリューの移動先のカード)をカード利用者が指定できるようにしてもよい。
【0051】
次に、第1カード1として非接触カードと接点カードとを用いることのできるバリュー移動処理について説明する。本実施形態では、図6のS11で、図9に示す第3のカード2枚確認処理が呼び出される。以下、図9と図7との相違点について説明する。図7では第1カード1からレスポンスがない場合は(S41:NO)、エラー終了としていた。それに対し、図9では第1カード1からレスポンスがない場合は(S91:NO)、制御部40は、プローブユニット36のプローブ36aを介して、すなわち当該プローブ36aと接点カードの接点とを接触させて、カード属性を返すことを促すコマンドを第1カード1に送信し(S94)、第1カード1からレスポンスを受信したか否かを判定する(S95)。尚、非接触カードと接点カードとに対するデータやコマンドの送受信手順の相違は非接触カード通信部41と接点カード通信部43とで吸収され、制御部40は非接触カードと接点カードとに対して略同じ送受信手順でデータやコマンドを送受信できるものとして、以下の説明を行う。
【0052】
第1カード1からレスポンスを受信した場合(S95:YES)、すなわち第1カード1が接点カードである場合は、制御部40は、第1カード1が適合カードであるか否かを判定する(S96)。第1カード1が適合カードである場合は(S96:YES)、制御部40は、第1カード1が接点カードであることを示す2を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S97)。一方、第1カード1からレスポンスを受信しなかった場合(S95:NO)、または第1カード1が適合カードではない場合は(S96:NO)、制御部40はエラー処理(S98〜S100)を行う。尚、制御部40は、接点カードにコマンドを送信する前にプローブユニット36を下降させてプローブ36aを接点カードの接点に接触させる。また、第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(図6のS19、図9のS98)前に、プローブユニット36を上昇させて、第1カード1の排出を妨げないようにする。
【0053】
本実施形態のバリュー移動処理では、図9の第2のカード2枚確認処理からの戻り値が2である場合、すなわち第1カード1が接点カードである場合は、制御部40は、図6のステップS17をスキップし、さらにステップS18の非接触型の第1カード1に対するバリューの増額の処理に代えて、接点カードに対するバリューの増額の処理を行う。尚、ここでは第1カード1が非接触カードまたは接点カードである場合について説明したが、セキュリティ上の問題があるものの、第1カード1が磁気カードであっても、磁気ヘッド35を用いて同様な処理を行うことができる。
【0054】
次に、図10を参照して口座からのチャージ処理(図5のS4)について説明する。口座からのチャージ処理とは、第1カード1、例えばキャッシュカードの銀行口座から引き出した金額を、第2カード2、例えば電子マネーカードのバリューにチャージ(増額)する処理である。まず、図7のカード2枚確認処理を呼び出す(S201)。この場合、図7のS42の第1カード1が適合カードであるか否かの判定は、第1カード1の属性がキャッシュカードのように口座から現金を引き出すことのできるカードであるか否かによって行われる。
【0055】
カード2枚確認処理がエラー終了し、戻り値が0である場合は(S202:YES)、制御部40は処理を呼び出し元に戻す(S211)。一方、カード2枚確認処理が正常終了し、戻り値が1である場合(S202:NO)、すなわち第1および第2カード1,2が共に非接触型の適合カードである場合は、図6のS13と同様にして、制御部40は第1カード1の暗証番号を確認する(S203)。次に、図6のS14と同様にして、制御部40は、第1カード1の口座から引き出して第2カード2のバリューにチャージするチャージ金額をキーボード26からカード利用者に入力させる(204)。チャージ金額が入力されると、制御部40は、第1カード1の口座から上記のチャージ金額を減額するために、ホスト通信部45を介して口座番号とチャージ金額とを上位装置50に送信する(S205)。上位装置50では、受信した口座番号の口座からチャージ金額が減額される。
【0056】
次に、制御部40は、アンテナ切り換え信号をアンテナ切り換え部42に送ることにより、アンテナを外部アンテナ12に切り換え(S206)、図6のS16と同様にして、チャージ金額を第2カード2のバリュー(現在残高)に加算することによって、第2カード2のバリューを増額する(S207)。その後、制御部40は、ローラ33の回転などを制御することで第1カード1をカードリーダユニット30から排出し(S208)、さらに、終了メッセージを表示部25に表示し(S209)、処理を呼び出し元に戻す(S210)。また、図10のS201で図9に示す第3のカード2枚確認処理を呼び出すようにすれば、第1カード1が接点カードであっても口座からのチャージ処理を行うことができる。さらに、第1カード1が磁気カードであっても口座からのチャージ処理を行うようにしてもよい。
【0057】
尚、上述の口座からのチャージ処理では、第1カード1(キャッシュカード)の口座から第2カード2(電子マネーカード)へバリューをチャージするように予め規定されていた。しかし、このようにすると、カード挿入口22から電子マネーカード(第1カード1)が挿入されると、第1カード1が不適合なカードとして扱われる。すなわち、カード利用者のカードのハンドリングミスが発生する。そこで、上記の規定を行わずに、第1および第2カード1,2の属性(すなわち、キャッシュカードまたは電子マネーカードのいずれであるか)を制御部40が判断し、一方がキャッシュカードで、他方が電子マネーカードであれば、第1および第2カード1,2を適合カードとして扱うことで、口座からのチャージ処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、カード利用者はキャッシュカードをカード挿入口22から挿入しても、カードポケット23にセットしてもよいので、上記のハンドリングミスが発生しなくなる。
【0058】
次に、1枚のカード、すなわち第1または第2カード1,2に対する取引処理の例として現金チャージ処理(図5のS5)を説明する。現金チャージ処理とは、第1または第2カード1,2のいずれか一方のバリューに入出金口27から投入された現金の金額、すなわちチャージ金額をチャージする処理である。ここでは、第1および第2カード1,2は、電子マネーカードのようにチャージ金額をチャージできるカードである。また、第1カード1として、非接触カードおよび接点カードを用いることができる。
【0059】
以下、図11および図12を参照して現金チャージ処理について説明する。まず、制御部40は図12に示すカード1枚確認処理を呼び出す(S301)。以下、カード1枚確認処理について簡単に説明する。まず、制御部40は、第1カード1の取り込みを許可する(S401)。これにより、第1カード1がカード挿入口22から挿入されると、ローラ33などの搬送手段によりカード停止位置まで搬送される。さらに、制御部40は、アンテナを外部アンテナ12に切り換えて(S402)、第2カード2にカード属性を返すことを促すポーリングコマンドを送信する(S403)。
【0060】
ポーリングコマンドを送信した結果、第2カード2からレスポンスを受信した場合は(S404:YES)、レスポンス中のデータを調べることによって第2カード2が適合カード、例えば、電子マネーカードであるか否かを判定する(S405)。第2カード2が適合カードである場合は(S405:YES)、制御部40は、第2カード2が適合カードであることを示す2を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S408)。第2カード2が適合カードではない場合は(S405:NO)、制御部40は、エラーメッセージを表示部25に表示し(S406)、エラー終了を示す0を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S407)。
【0061】
ポーリングコマンドを送信しても第2カード2からレスポンスを受信しなかった場合(S404:NO)、例えば非接触型の第2カード2がカードポケット23にセットされていない場合は、カード挿入口22から挿入された第1カード1がカード停止位置で停止しているか否かが判定される(S409)。第1カード1がカード停止位置で停止していない場合は(S409:NO)、制御部40は第2カード2に再びポーリングコマンドを送信する(S403)。第1カード1がカード停止位置で停止している場合は(S409:YES)、制御部40は、アンテナを内部アンテナ11に切り換えてから(S410)、第1カード1にカード属性を返すことを促すポーリングコマンドを送信する(S411)。
【0062】
ポーリングコマンドを送信した結果、第1カード1からレスポンスを受信した場合は(S412:YES)、レスポンス中のデータを調べることによって第1カード1が適合カード、例えば、電子マネーカードであるか否かを判定する(S413)。第1カード1が適合カードである場合は(S413:YES)、制御部40は、第1カード1が非接触型の適合カードであることを示す1を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S414)。第1カード1が適合カードではない場合は(S413:NO)、制御部40は、ローラ33の回転などを制御することで第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S419)と共に、エラーメッセージを表示部25に表示し(S420)、エラー終了を示す0を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S421)。
【0063】
ポーリングコマンドを送信しても第1カード1からレスポンスを受信しなかった場合は(S412:NO)、第1カード1が接点カードである可能性があるので、制御部40は、プローブユニット36のプローブ36aを介して、すなわち当該プローブ36aと接点カードの接点とを接触させて、カード属性を返すことを促すコマンドを第1カード1に送信し(S415)、第1カード1からレスポンスを受信したか否かを判定する(S416)。レスポンスを受信した場合(S416:YES)、すなわち第1カード1が接点カードである場合は、制御部40は、第1カード1が適合カードであるか否かを判定する(S417)。第1カード1が適合カードである場合は(S417:YES)、制御部40は、第1カード1が接点型の適合カードであることを示す3を戻り値として処理を呼び出し元に戻す(S418)。一方、第1カード1からレスポンスを受信しなかった場合(S416:NO)、または第1カード1が適合カードではない場合は(S417:NO)、制御部40は上述のエラー処理(S419〜S421)を行う。
【0064】
ここで、図11の説明に戻る。カード1枚確認処理(S301)がエラー終了し、戻り値が0である場合は(S302:YES)、制御部40は処理を呼び出し元に戻す(S317)。一方、カード1枚確認処理(S301)が正常終了し、戻り値が1〜3である場合は(S302:NO)、制御部40は、入出金口扉28を開け、第1または第2カード1,2にチャージするチャージ金額分の現金を入出金口27に投入することを促すメッセージを表示部25に表示し、カード利用者に現金を投入させる(S303)。
【0065】
現金が投入されると、不図示の貨幣処理部で投入された現金の金額が求められる。制御部40は、求められた金額、すなわちチャージ金額を表示部25に表示し、カード利用者にチャージ金額の確認を行わせる(S304)。この状態で、カード利用者がキーボード26の取り消しキーを押して、現金チャージ処理の取り消しを指示した場合は(S305:YES)、制御部40は、不図示の貨幣処理部を制御することで投入された現金を入出金口27に放出させる(S318)。さらに、上記の戻り値が1または3である場合(S319:YES)、すなわち第1カード1がカードリーダユニット30内に取り込まれている場合は、制御部40は第1カード1を排出して(S320)、処理を呼び出し元に戻す(S321)。
【0066】
現金チャージ処理の取り消しが指示されなかった場合は(S305:NO)、制御部40は、上記の戻り値が1〜3のいずれであるかを調べ(S306,S312)、戻り値に応じた処理を行う。戻り値が1である場合(S306:YES)、すなわち非接触型の第1カード1がカードリーダユニット30内に取り込まれた場合は、制御部40は、アンテナを内部アンテナ11に切り換え(S307)、図6のS16と同様の手順によりチャージ金額を第1カード1のバリューに加算することによって、第1カード1のバリューを増額し(S308)、さらに第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S309)。
【0067】
戻り値が2である場合(S312:YES)、すなわち非接触型の第2カード2がカードポケット23にセットされた場合は、制御部40は、アンテナを外部アンテナ12に切り換え(S313)、図6のS16と同様の手順によりチャージ金額を第2カード2のバリューに加算することによって、第2カード2のバリューを増額する(S314)。戻り値が3である場合(S312:NO)、すなわち接点型の第1カード1がカードリーダユニット30内に取り込まれた場合は、制御部40は、プローブユニット36のプローブ36aを介して、すなわち当該プローブ36aと第1カード1の接点とを接触させて、チャージ金額を第1カード1のバリューに加算することによって、第1カード1のバリューを増額し(S315)、さらに第1カード1をカードリーダユニット30から排出する(S316)。上記の戻り値ごとの処理が終了すると、制御部40は終了メッセージを表示部25に表示し(S310)、処理を呼び出し元に戻す(S311)。
【0068】
また、小売店などに設置される取引処理装置では、上記の現金チャージ処理と同様に1枚のカードに対する支払い処理が行われる。支払い処理では、購入した商品の支払いが第1または第2カード1,2で行われる。第1または第2カード1,2が電子マネーカードであれば、第1または第2カード1,2のバリューが支払額だけ減額される。一方、第1または第2カード1,2がキャッシュカードであれば、第1または第2カード1,2の口座残高が支払額だけ減額される。尚、現金チャージ処理や支払い処理の第1カード1として、磁気カードを用いることもできる。
【0069】
以上説明したように、本装置は、現金チャージ処理や支払い処理などの1枚のカードに対する取引処理も行うことができる。1枚のカードに対する取引処理では、外部アンテナ12を用いた通信によりカードポケット23にセットされた非接触型の第2カード2の存在が確認された場合には、第2カード2に対して取引処理が行われる。一方、内部アンテナ11を用いた通信によりカードリーダユニット30内に取り込まれた非接触型の第1カード1の存在が確認された場合には、第1カード1に対して取引処理が行われる。つまり、カード利用者がカードをカード挿入口22から挿入しても、カードポケット23にセットしても取引処理が行われるので、第1カード1だけが利用可能と規定したときに起きるカードのハンドリングミス(すなわち、カード利用者がカードをカードポケットにセットすること)が発生しない。また、アンテナ切り換え部42で内部アンテナ11と外部アンテナ12とを切り換えるので、1つの非接触カード通信部41で第1または第2カード1,2のいずれに対しても通信を行うことができる。
【0070】
以上述べた実施形態においては、2枚のカードに対する取引処理の例としてバリュー移動処理と口座からのチャージ処理とを説明し、1枚のカードに対する取引処理の例として現金チャージ処理と支払い処理とを説明したが、2枚のカードに対する取引処理および1枚のカードに対する取引処理は、上記のものに限定されるものではない。また、上記実施形態では、アンテナ切り換え部42で第1アンテナ11と第2アンテナ12とを切り換えるようにしたが、アンテナ切り換え部42を設けずに第1および第2アンテナ11,12ごとに非接触カード通信部を設け、第1の非接触カード通信部で第1カード1と通信し、第2の非接触カード通信部で第2カード2と通信するようにしても本発明を実施することができる。
【0071】
さらに、上記実施形態では、取引媒体としてカードを例に挙げたが、本発明を適用できる取引媒体であれば、取引媒体はカード以外の媒体であってもよい。さらに、上記実施形態では、第1または第2カード1,2と制御部40(または、非接触カード通信部41および接点カード通信部43)との通信手順についても簡単に説明したが、通信手順は本発明の直接的事項ではなく、カードの種類や規格に応じて他の通信手順を用いても本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】取引処理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】カードポケット内のカードを固定する機構を示す断面図である。
【図3】カードリーダユニットの概略機構を示す図である。
【図4】取引処理装置の電気的構成を示す図である。
【図5】メイン処理のフローチャートである。
【図6】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図7】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図8】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図9】バリュー移動処理のフローチャートである。
【図10】口座からのチャージ処理のフローチャートである。
【図11】現金チャージ処理のフローチャートである。
【図12】現金チャージ処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 第1カード(第1取引媒体)
2 第2カード(第2取引媒体)
11 第1アンテナ(内部アンテナ)
12 第2アンテナ(外部アンテナ)
22 カード挿入口
23 カードポケット(収納部)
26 キーボード(指示手段)
29 カード固定手段
33 ローラ(搬送手段)
35 磁気ヘッド
36 プローブユニット
36a プローブ
40 制御部
41 非接触カード通信部
42 アンテナ切り換え部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、
利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナと、
第1アンテナまたは第2アンテナを用いて第1取引媒体または第2取引媒体と通信を行う非接触通信手段と、
第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を指示する指示手段と、
前記搬送手段を制御すると共に前記非接触通信手段と通信を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、前記非接触通信手段に第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行わせることにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する前記取引処理を行うことを特徴とする取引処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の取引処理装置において、
第1アンテナと第2アンテナとを切り換えるアンテナ切り換え部を備え、
前記制御手段は、前記アンテナ切り換え部を制御することにより、前記非接触通信手段に第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかと通信を行わせることを特徴とする取引処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の取引処理装置において、
第2取引媒体を収納する収納部と、当該収納部に収納された第2取引媒体を固定する固定手段とを備えることを特徴とする取引処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の取引処理装置において、
前記搬送手段が第1取引媒体を取り込む搬送路には、接触型の取引媒体と接触する接触アクセス手段が設けられ、装置の内部に取り込まれた第1取引媒体が接触型の取引媒体である場合には、前記制御手段は、前記接触アクセス手段を介して第1取引媒体と通信を行うことを特徴とする取引処理装置。
【請求項5】
搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナとを備え、指示手段によって指示された取引処理を行う取引処理装置における取引処理方法であって、
前記指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、第1アンテナおよび/または第2アンテナを用いて第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する前記取引処理を行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の取引処理方法において、
前記指示手段で指示された取引処理が2つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体および第2取引媒体が共に存在することを確認した後に、前記取引処理の内容に基づいて、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理とを所定の順序で行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の取引処理方法において、
前記第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理を行う場合、前記2つの処理の一方の処理の処理結果に基づいて他方の処理を行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項8】
請求項5に記載の取引処理方法において、
第1取引媒体との通信で得られた第1取引媒体の属性と、第2取引媒体との通信で得られた第2取引媒体の属性とに基づいて、前記取引処理における各処理の対象となる取引媒体を決定することを特徴とする取引処理方法。
【請求項9】
請求項5に記載の取引処理方法において、
前記指示手段で指示された取引処理が1つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかが存在することを確認した後に、該当するアンテナを用いて存在が確認された取引媒体と通信を行うことにより、当該取引媒体に対する前記取引処理を行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項10】
請求項6または請求項9に記載の取引処理方法において、
前記指示手段が取引処理を指示した直後に、前記搬送手段が装置の挿入口から挿入される第1取引媒体を装置の内部に取り込めるようにすると共に、第2アンテナに切り換えることを特徴とする取引処理方法。
【請求項11】
請求項5ないし請求項10のいずれかに記載の取引処理方法において、
第2取引媒体が前記指示手段で指示された取引処理の対象となる場合には、前記取引処理の所定の期間において、第2取引媒体を前記所定位置に固定することを特徴とする取引処理方法。
【請求項1】
搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、
利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナと、
第1アンテナまたは第2アンテナを用いて第1取引媒体または第2取引媒体と通信を行う非接触通信手段と、
第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する取引処理を指示する指示手段と、
前記搬送手段を制御すると共に前記非接触通信手段と通信を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、前記非接触通信手段に第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行わせることにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する前記取引処理を行うことを特徴とする取引処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の取引処理装置において、
第1アンテナと第2アンテナとを切り換えるアンテナ切り換え部を備え、
前記制御手段は、前記アンテナ切り換え部を制御することにより、前記非接触通信手段に第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかと通信を行わせることを特徴とする取引処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の取引処理装置において、
第2取引媒体を収納する収納部と、当該収納部に収納された第2取引媒体を固定する固定手段とを備えることを特徴とする取引処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の取引処理装置において、
前記搬送手段が第1取引媒体を取り込む搬送路には、接触型の取引媒体と接触する接触アクセス手段が設けられ、装置の内部に取り込まれた第1取引媒体が接触型の取引媒体である場合には、前記制御手段は、前記接触アクセス手段を介して第1取引媒体と通信を行うことを特徴とする取引処理装置。
【請求項5】
搬送手段によって装置の内部に取り込まれた非接触型の第1取引媒体との通信に用いる第1アンテナと、利用者によって装置の所定位置に配置された非接触型の第2取引媒体との通信に用いる第2アンテナとを備え、指示手段によって指示された取引処理を行う取引処理装置における取引処理方法であって、
前記指示手段で指示された取引処理の内容に基づいて、第1アンテナおよび/または第2アンテナを用いて第1取引媒体および/または第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体および/または第2取引媒体に対する前記取引処理を行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の取引処理方法において、
前記指示手段で指示された取引処理が2つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体および第2取引媒体が共に存在することを確認した後に、前記取引処理の内容に基づいて、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信を行うことにより、第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理とを所定の順序で行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の取引処理方法において、
前記第1取引媒体に対する処理と第2取引媒体に対する処理を行う場合、前記2つの処理の一方の処理の処理結果に基づいて他方の処理を行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項8】
請求項5に記載の取引処理方法において、
第1取引媒体との通信で得られた第1取引媒体の属性と、第2取引媒体との通信で得られた第2取引媒体の属性とに基づいて、前記取引処理における各処理の対象となる取引媒体を決定することを特徴とする取引処理方法。
【請求項9】
請求項5に記載の取引処理方法において、
前記指示手段で指示された取引処理が1つの取引媒体に対する取引処理である場合、第1アンテナと第2アンテナとを切り換えて第1取引媒体および第2取引媒体と通信し、第1取引媒体または第2取引媒体のいずれかが存在することを確認した後に、該当するアンテナを用いて存在が確認された取引媒体と通信を行うことにより、当該取引媒体に対する前記取引処理を行うことを特徴とする取引処理方法。
【請求項10】
請求項6または請求項9に記載の取引処理方法において、
前記指示手段が取引処理を指示した直後に、前記搬送手段が装置の挿入口から挿入される第1取引媒体を装置の内部に取り込めるようにすると共に、第2アンテナに切り換えることを特徴とする取引処理方法。
【請求項11】
請求項5ないし請求項10のいずれかに記載の取引処理方法において、
第2取引媒体が前記指示手段で指示された取引処理の対象となる場合には、前記取引処理の所定の期間において、第2取引媒体を前記所定位置に固定することを特徴とする取引処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−72616(P2006−72616A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254225(P2004−254225)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]