受信時間の検出方法
【課題】信号の振幅が異なっていても、受信信号の所定の角度位置を検出点とすることができる、受信時間の検出方法を得る。
【解決手段】受信した信号を1周期の4倍以上の整数倍のサンプリング周波数でサンプリングする。隣接する角度位置にある2つのサンプリング位置におけるサンプリング値を比較して、信号の波形の立上り部分を検出する。立上り部分における2つのサンプリング値の差の絶対値を比較して、最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出する。
【解決手段】受信した信号を1周期の4倍以上の整数倍のサンプリング周波数でサンプリングする。隣接する角度位置にある2つのサンプリング位置におけるサンプリング値を比較して、信号の波形の立上り部分を検出する。立上り部分における2つのサンプリング値の差の絶対値を比較して、最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信時間の検出方法に関し、特にたとえば、超音波を受信して3次元位置を確定する際に超音波の受信時間を正確に検出するための受信時間の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、室内における3次元位置を検出するために、超音波を利用した3次元位置確定方法がある。このような3次元位置確定方法では、室内に複数の音波発信器が設置され、これらの音波発信器から一定の時間間隔で超音波が発信される。そして、発信された超音波が室内の音波センサで検出され、音波センサで検出された超音波の時間間隔から、室内における音波センサの3次元位置を算出している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、音波センサで検出した超音波のピーク値を検出することにより、超音波の受信時間を求めることが示されているが、実際に超音波のピーク値を検出することは難しい。そこで、超音波が到達したときの音波センサの出力電圧を検出することにより、超音波の受信時間が測定されている。ここで、図11に示すように、超音波による出力電圧とノイズによる出力電圧とを区別するために閾値が設けられ、音波センサの出力電圧が閾値を超えたときを検出して受信時間が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−139264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11に示されているように、超音波の受信による音波センサの出力電圧とノイズの受信による音波センサの出力電圧とを区別するための閾値が設けられているため、実際の超音波の受信時間と検出された受信時間との間に誤差が生じる。複数の音波発信器からの超音波を検出する場合、受信される全ての超音波の振幅が一定であれば、音波センサの出力電圧の検出点も同じ角度位置となり、音波センサの3次元位置を正確に把握することができる。
【0006】
しかしながら、図11に点線で示すように、超音波の振幅に差があると、音波センサの出力電圧の振幅にも差が生じ、閾値による出力電圧の検出点が異なる角度位置となる。このように、超音波の振幅によって、音波センサの出力電圧の検出点が異なるため、実際の超音波の受信時間と検出される超音波の受信時間との間の誤差が、出力電圧の振幅によって異なる。さらに、センサ動作時にはエネルギーが必要であるため、図12に示すように、音波センサの出力電圧において、最初の立上り部分の波形は受信した超音波と同じ波形とならず、かなり振幅の小さい波形となる。そのため、出力電圧が閾値を超える時点の角度位置がさらにずれて、検出される受信時間の誤差が大きくなり、正確な3次元位置の検出が困難になる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、信号の振幅が異なっていても、受信信号の所定の角度位置を検出点とすることができる、受信時間の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、信号の1周期の4倍以上の整数倍のサンプリング周波数で信号の値をサンプリングするステップ(A)と、サンプリングによって得られたサンプリング値のうちの隣接する角度位置における2つの数値を比較するステップ(B)と、隣接する角度位置におけるサンプリング値を比較して後の角度位置における数値のほうが大きいサンプリング値の組を選択するステップ(C)と、選択されたサンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値の差を求めるステップ(D)と、ステップ(D)で求められた2つのサンプリング値の差の絶対値が最も大きいサンプリング値の組を選択するステップ(E)と、ステップ(E)で選択されたサンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値に最も近いゼロクロス位置を求めるステップ(F)とを含む、受信時間の検出方法である。
信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数で信号の値をサンプリングすることにより、複数周期の信号を同じ角度位置でサンプリングすることができる。ここで、1周期の信号には立上り部分と立下り部分が合計4つあるため、全ての立上り部分と立下り部分とを検出するための最低のサンプル数が4となる。隣接する角度位置におけるサンプリング値の組のうち、後のサンプリング位置における数値が大きい組は、信号の立上り部分であることを示している。この信号の立上り部分において、隣接する角度位置における2つのサンプリング値の差をとると、最も振幅の大きい部分におけるサンプリング値の差の絶対値が最大となる。この最も振幅の大きい部分におけるサンプリング値から、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することができる。
【0009】
このような受信時間の検出方法において、例えば、信号とノイズとを区別するために設定された閾値を超えた後に信号のサンプリングが開始される。
信号とノイズとを区別するための閾値を設け、信号が閾値を超えたのちにサンプリングを開始することにより、確実に受信信号のみをサンプリングして、受信信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することができる。
【0010】
また、ステップ(F)で選択されたサンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値を結ぶ直線からゼロクロス位置を近似的に求めることができる。
受信信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分にある2つのサンプリング値を直線的に結び、2つのサンプリング値の間で直線を多分割することにより、近似的にゼロクロス位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、信号の振幅の大小にかかわらず、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することができる。したがって、この受信時間の検出方法を超音波を用いた3次元位置確定方法に用いれば、全ての受信信号について、信号の同じ角度位置を検出点とすることができる。そのため、複数の音波発信器と1つの音波センサとの位置関係を正確に知ることができ、正確に音波センサの3次元位置を検出することができる。
【0012】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の受信時間の検出方法が適用される3次元位置確認システムの一例を示す図解図である。
【図2】図1に示す3次元位置確認システムの各部における信号を示す図解図である。
【図3】図1に示す3次元位置確認システムに用いられる波形処理回路の一例を示す回路図である。
【図4】図3に示す波形処理回路にパルスの立上り部が入力されたときの動作を示す図解図である。
【図5】図3に示す波形処理回路にパルスの立下り部が入力されたときの動作を示す図解図である。
【図6】信号のサンプリング開始時と検出しようとするゼロクロスとを示す図解図である。
【図7】(A)(B)は信号のゼロクロスを検出するためのサンプリング状態を示す図解図である。
【図8】信号の最も大きい振幅部分におけるサンプリング値からゼロクロス位置を検出する方法を示す図解図である。
【図9】信号の1周期の整数倍でないサンプリング周波数でサンプリングを行った例を示す図解図である。
【図10】同じ波形で振幅の異なる信号のゼロクロス位置を示す図解図である。
【図11】従来の信号の検出点を示す図解図である。
【図12】音波センサの出力電圧の例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、この発明の受信時間の検出方法を用いた3次元位置確定システムの一例を示す図解図である。3次元位置確定システム10は、演算処理装置12を含む。演算処理装置12としては、例えばパーソナルコンピュータなどを用いることができる。演算処理装置12のI/Oポートには、波形処理回路14が接続される。さらに、波形処理回路14には、複数の音波発信器が接続される。この実施形態においては、3つの音波発信器16a,16b,16cが波形処理装置12に接続される。
【0015】
さらに、演算処理装置12には、A/Dコンバータ18が接続される。このA/Dコンバータ18には、受信器20が接続される。受信器20は、後述の移動体から送られてくるアナログ信号を受信する。そして、受信器20で受信したアナログ信号がA/Dコンバータ18に送られる。A/Dコンバータ18では、受信器20から送られてきたアナログ信号がデジタル信号に変換される。A/Dコンバータ18で得られたデジタル信号は、演算処理装置12に送られる。また、演算処理装置12には、演算処理装置12から送られる信号に基づいて、移動体の3次元位置を表示するモニター22が接続される。
【0016】
また、3次元位置確定システム10は、例えば室内で移動する移動体30を含む。移動体30としては、例えば、室内の3次元位置を確定するための3次元マウスなどが想定される。移動体30は、音波センサ32を含む。音波センサ32は、音波発信器16a,16b,16cから発信される超音波を受信する。そして、音波センサ32は、受信した超音波に対応する信号を出力する。音波センサ32の出力信号は、増幅器34で増幅される。増幅器34で増幅された信号は、バンドパスフィルタ36に送られる。バンドパスフィルタ36では、音波発信器16a,16b,16cから送られてくる超音波に対応する周波数の信号が出力される。バンドパスフィルタ36から出力される信号は、送信器38に送られる。送信機38では、バンドパスフィルタ36から送られてきた信号が、受信器20に送信される。
【0017】
この3次元位置確定システム10では、図2に示すように、演算処理装置12から波形処理回路14に、音波発信器16a,16b,16cから超音波を発信させるためのパルスが送られる。ここで、音波発信器16a,16b,16cが一定の時間差で超音波を発信するように、時間差をもって波形処理回路14にパルスが送られる。また、それぞれの音波発信器16a,16b,16cにおいて一定の間隔で超音波が発信されるように、演算処理装置12から波形処理回路14にパルスが送られる。したがって、音波発信器16a,16b,16cからは、一定の間隔で、所定の時間差を有するパルスが発信される。
【0018】
波形処理回路14としては、たとえば、図3に示すような回路が用いられる。波形処理回路14は、オペアンプ40を含む。オペアンプ40の2つの電源端子には、正の電圧+Vおよび負の電圧−Vが接続される。さらに、オペアンプ40の反転入力端子には、抵抗42とダイオード44の並列回路が接続される。ここで、ダイオード44のカソード側がオペアンプ40の反転入力端子に接続される。そして、ダイオード44のアノード側は、コンデンサ46を介して演算処理装置12のI/Oポートに接続される。さらに、オペアンプ40の反転入力端子は、コンデンサ48を介して、負の電圧−Vが接続された電源端子に接続される。なお、オペアンプ40の非反転入力端子は、基準電位に接続される。
【0019】
また、オペアンプ40の反転入力端子は、コンデンサ50と抵抗52の並列回路を介してオペアンプ40の出力端子に接続される。オペアンプ40の出力端子は、抵抗54を介して音波発信器16a,16b,16cに接続される。各音波発信器16a,16b,16cには、個別に波形処理回路14が接続される。
【0020】
この波形処理回路14に演算処理装置12からパルスが入力されると、図4に示すように、パルスの立上りのとき、コンデンサ48に正電圧が蓄えられると同時に、オペアンプ40の反転入力端子にゆっくりと正電圧が与えられる。オペアンプ40の出力端子には、反転入力端子に与えられる正電圧が反転増幅されて表れるため、負の半波信号が出力される。次に、パルスが立下りに転じると、図5に示すように、コンデンサ48に蓄えられていた電圧が、コンデンサ46に向かって放電される。この放電電流は、抵抗42を通して流れるので、オペアンプ42の反転入力端子にゆっくりと負電圧が与えられる。オペアンプ42の反転入力端子に与えられた負電圧は反転増幅されて、オペアンプ42の出力端子には正の半波信号が出力される。このようにして、1つのパルスの入力により、波形処理回路14から1周期の正弦波信号が出力される。なお、コンデンサ50と抵抗52はローパスフィルタの役割を果たすものであり、抵抗54は出力信号を正弦波に丸める役割を果たす。
【0021】
波形処理回路14の出力信号により、音波発信器16a,16b,16cから超音波が発信される。このとき、入力信号は1周期の正弦波であるが、音波発信器16a,16b,16cの振動体が慣性で振動するため、音波発信器16a,16b,16cからは複数周期の超音波が発信される。しかしながら、入力信号が1周期の正弦波であるため、音波発信器16a,16b,16cから発信される超音波は短時間で終息する。そのため、各音波発信器16a,16b,16cにおいて、発信する間隔を短くすることができ、単位時間当たりの発信数を多くすることができる。
【0022】
音波発信器16a,16b,16cから発信された超音波は、移動体30の音波センサ32で受信される。音波センサ32からは、受信した超音波に対応する波形の出力信号が出力され、増幅器34で増幅されて、バンドパスフィルタ36により超音波に対応した周波数の信号が送信器38に送られる。このようにして得られた信号が、送信器38から受信器20に送信される。
【0023】
受信器20で受信された信号は、A/Dコンバータ18でアナログ−デジタル変換される。ここで、図6に示すように、超音波に対応した信号とノイズとを区別するための閾値が設けられ、信号が閾値を超えたときに、超音波に対応した信号であると判断してサンプリングが開始される。この3次元位置確定システム10では、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロスを検出することにより、音波発信器16a,16b,16cからの超音波の発信から音波センサ32での超音波の受信までの時間の検出を行う。
【0024】
A/Dコンバータ18では、受信器20で受信した信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数で、信号値がサンプリングされる。ここで、信号の最も大きい振幅を検出するために、隣接する角度位置におけるサンプリング値の差が比較される。このとき、図7(A)(B)に示すように、信号のサンプリング位置にかかわらず、複数周期の波形が対応する角度位置でサンプリングされることにより、複数周期の対応する角度位置におけるサンプリング値の差を比較することができる。このように、複数周期の波形が対応する角度位置でサンプリングされるためには、信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数であることが必要となる。なお、信号の1周期には、立上り部分と立下り部分とが合計4つあるため、これらの部分で隣接する角度位置におけるサンプリング値の比較を行うために、サンプリング周波数は信号の1周期の4倍以上の整数倍である必要がある。
【0025】
図7(A)(B)には、信号の1周期の5倍のサンプリング周波数でサンプリングを行う場合が例示されている。したがって、信号の最初の1周期がa,b,c,d,eの5箇所でサンプリングされ、次の1周期がf,g,h,i,jの5箇所でサンプリングされる。図7(A)(B)には、信号の異なる角度位置でサンプリングが行われている例が示されている。しかしながら、それぞれのサンプリングの例において、これらのサンプリング位置a〜fとサンプリング位置f〜jとは、信号の2つの周期の対応する角度位置となっている。そして、得られたサンプリング値は、演算処理装置12に送られる。
【0026】
演算処理装置12では、隣接する角度位置におけるサンプリング値が比較され、後の角度位置におけるサンプリング値のほうが大きいサンプリング値の組が選択される。図7(A)では、サンプリング位置b,cにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置c,dにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置d,eにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置g,hにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置h,iにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置i,jにおけるサンプリング値の組が選択される。また、図7(B)では、サンプリング位置c,dにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置d,eにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置h,iにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置i,jにおけるサンプリング値の組が選択される。このように、後の角度位置におけるサンプリング値が大きい部分は、信号の立上り部分であることを示している。
【0027】
これらの選択されたサンプリング値の組のそれぞれにおいて、2つのサンプリング値の差が計算され、その絶対値が比較される。この絶対値が最大となる部分に、信号の振幅が最も大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置が存在する。図7(A)(B)では、2つのサンプリング位置c,dの組におけるサンプリング値の差が最大となり、サンプリング位置c,dの間にゼロクロス位置が存在している。
【0028】
このように、信号の立上り部分の隣接する角度位置にあるサンプリング位置におけるサンプリング値の差の絶対値が最大となる部分において、2つのサンプリング位置の間に、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置が存在する。このゼロクロス位置を検出するために、図8に示すように、サンプリング位置c,dが直線で結ばれ、この直線を多数分割することにより、近似的にゼロクロス位置を探すことができる。なお、2つのサンプリング位置を直線で結んでゼロクロス位置を検出する場合、2つのサンプリング位置がゼロクロス位置に近いほど、実際のゼロクロス位置に近似した位置を検出することができる。そのため、サンプリング周波数を高くするほど、隣接するサンプリング位置を近づけることができ、正確なゼロクロス位置に近似した位置を検出することができる。
【0029】
信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数でサンプリングを行うことにより、複数の周期の波形における対応する角度位置でサンプリングが行われるため、信号の立上り部分のゼロクロス位置でサンプリングが行われる場合、全ての周期の波形の立上り部分のゼロクロス位置でサンプリングが行われる。したがって、ゼロクロス位置におけるサンプリング値「0」とそれに隣接する角度位置にあるサンプリング位置におけるサンプリング値との差をとると、その絶対値は信号の振幅が最も大きい部分で最大となる。したがって、信号の振幅が最も大きい部分におけるサンプリング値「0」の位置が、目的とするゼロクロス位置であることがわかる。
【0030】
なお、サンプリング周波数が信号の1周期の整数倍でない場合、図9に示すように、隣接する周期の波形の異なる角度位置でサンプリングが行われる。図9の場合、振幅の小さい波形のサンプリング位置h,iのほぼ中央部にゼロクロス位置が存在し、振幅の大きい波形のサンプリング位置c,dの間では、サンプリング位置cに近いところにゼロクロス位置が存在する。このような場合、振幅の小さい波形のサンプリング位置h,iにおけるサンプリング値の差の絶対値のほうが、振幅の大きい波形のサンプリング位置c,dにおけるサンプリング値の差の絶対値より大きくなる。このように、サンプリング周波数が信号の1周期の整数倍でない場合、異なる周期の波形において、異なる角度位置でサンプリングが行われ、正確な比較を行うことができない。
【0031】
このようにして検出された信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を超音波信号の受信時とみなして、図2に示すように、超音波の発信時から受信信号の検出されたゼロクロス位置までの時間を測定することにより、各音波発信器16a,16b,16cから音波センサ32までの距離を検出することができる。そして、各音波発信器16a,16b,16cから音波センサ32までの距離により、移動体30の3次元位置を確定することができる。確定した移動体30の3次元位置は、モニター22に表示される。
【0032】
このように、音波発信器16a,16b,16cから発信された超音波を音波センサ32で受信し、最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することにより、全ての超音波を同じ角度位置で検出して、超音波の受信時間を得ることができる。このようなゼロクロス位置は、信号の振幅が変わっても変化することはない。つまり、信号の振幅の大小により、ゼロクロス位置が変わらない。たとえば、図10に示すように、信号レベルが小さい場合でも、ピークがオーバーフローするくらい信号レベルが大きくても、ゼロクロス位置は変わらない。そのため、信号の振幅に関係なく、同じ角度位置で受信時間を検出することができる。したがって、この3次元位置確定システム10を用いることにより、音波発信器16a,16b,16cから移動体30までの距離の誤差を小さくすることができ、移動体30の3次元位置を正確に把握することができる。
【0033】
また、この3次元位置確定システム10では、超音波の発信と受信との間の時間を測定しているため、各音波発信器16a,16b,16cと音波センサ32との間の距離を直接求めることができる。そのため、特許文献1のように、複数の受信波の時間間隔によって目的物の3次元位置を算出する場合に比べて、簡単な計算で移動体30の3次元位置を検出することができる。このように、簡単な計算で移動体30の3次元位置を検出することができるため、低速なコンピュータを使用しても処理が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 3次元位置確定システム
12 演算処理装置
14 波形処理装置
16a,16b,16c 音波発信器
18 ADコンバータ
20 受信器
22 モニター
30 移動体
32 音波センサ
34 増幅器
36 バンドパスフィルタ
38 送信器
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信時間の検出方法に関し、特にたとえば、超音波を受信して3次元位置を確定する際に超音波の受信時間を正確に検出するための受信時間の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、室内における3次元位置を検出するために、超音波を利用した3次元位置確定方法がある。このような3次元位置確定方法では、室内に複数の音波発信器が設置され、これらの音波発信器から一定の時間間隔で超音波が発信される。そして、発信された超音波が室内の音波センサで検出され、音波センサで検出された超音波の時間間隔から、室内における音波センサの3次元位置を算出している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、音波センサで検出した超音波のピーク値を検出することにより、超音波の受信時間を求めることが示されているが、実際に超音波のピーク値を検出することは難しい。そこで、超音波が到達したときの音波センサの出力電圧を検出することにより、超音波の受信時間が測定されている。ここで、図11に示すように、超音波による出力電圧とノイズによる出力電圧とを区別するために閾値が設けられ、音波センサの出力電圧が閾値を超えたときを検出して受信時間が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−139264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11に示されているように、超音波の受信による音波センサの出力電圧とノイズの受信による音波センサの出力電圧とを区別するための閾値が設けられているため、実際の超音波の受信時間と検出された受信時間との間に誤差が生じる。複数の音波発信器からの超音波を検出する場合、受信される全ての超音波の振幅が一定であれば、音波センサの出力電圧の検出点も同じ角度位置となり、音波センサの3次元位置を正確に把握することができる。
【0006】
しかしながら、図11に点線で示すように、超音波の振幅に差があると、音波センサの出力電圧の振幅にも差が生じ、閾値による出力電圧の検出点が異なる角度位置となる。このように、超音波の振幅によって、音波センサの出力電圧の検出点が異なるため、実際の超音波の受信時間と検出される超音波の受信時間との間の誤差が、出力電圧の振幅によって異なる。さらに、センサ動作時にはエネルギーが必要であるため、図12に示すように、音波センサの出力電圧において、最初の立上り部分の波形は受信した超音波と同じ波形とならず、かなり振幅の小さい波形となる。そのため、出力電圧が閾値を超える時点の角度位置がさらにずれて、検出される受信時間の誤差が大きくなり、正確な3次元位置の検出が困難になる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、信号の振幅が異なっていても、受信信号の所定の角度位置を検出点とすることができる、受信時間の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、信号の1周期の4倍以上の整数倍のサンプリング周波数で信号の値をサンプリングするステップ(A)と、サンプリングによって得られたサンプリング値のうちの隣接する角度位置における2つの数値を比較するステップ(B)と、隣接する角度位置におけるサンプリング値を比較して後の角度位置における数値のほうが大きいサンプリング値の組を選択するステップ(C)と、選択されたサンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値の差を求めるステップ(D)と、ステップ(D)で求められた2つのサンプリング値の差の絶対値が最も大きいサンプリング値の組を選択するステップ(E)と、ステップ(E)で選択されたサンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値に最も近いゼロクロス位置を求めるステップ(F)とを含む、受信時間の検出方法である。
信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数で信号の値をサンプリングすることにより、複数周期の信号を同じ角度位置でサンプリングすることができる。ここで、1周期の信号には立上り部分と立下り部分が合計4つあるため、全ての立上り部分と立下り部分とを検出するための最低のサンプル数が4となる。隣接する角度位置におけるサンプリング値の組のうち、後のサンプリング位置における数値が大きい組は、信号の立上り部分であることを示している。この信号の立上り部分において、隣接する角度位置における2つのサンプリング値の差をとると、最も振幅の大きい部分におけるサンプリング値の差の絶対値が最大となる。この最も振幅の大きい部分におけるサンプリング値から、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することができる。
【0009】
このような受信時間の検出方法において、例えば、信号とノイズとを区別するために設定された閾値を超えた後に信号のサンプリングが開始される。
信号とノイズとを区別するための閾値を設け、信号が閾値を超えたのちにサンプリングを開始することにより、確実に受信信号のみをサンプリングして、受信信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することができる。
【0010】
また、ステップ(F)で選択されたサンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値を結ぶ直線からゼロクロス位置を近似的に求めることができる。
受信信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分にある2つのサンプリング値を直線的に結び、2つのサンプリング値の間で直線を多分割することにより、近似的にゼロクロス位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、信号の振幅の大小にかかわらず、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することができる。したがって、この受信時間の検出方法を超音波を用いた3次元位置確定方法に用いれば、全ての受信信号について、信号の同じ角度位置を検出点とすることができる。そのため、複数の音波発信器と1つの音波センサとの位置関係を正確に知ることができ、正確に音波センサの3次元位置を検出することができる。
【0012】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の受信時間の検出方法が適用される3次元位置確認システムの一例を示す図解図である。
【図2】図1に示す3次元位置確認システムの各部における信号を示す図解図である。
【図3】図1に示す3次元位置確認システムに用いられる波形処理回路の一例を示す回路図である。
【図4】図3に示す波形処理回路にパルスの立上り部が入力されたときの動作を示す図解図である。
【図5】図3に示す波形処理回路にパルスの立下り部が入力されたときの動作を示す図解図である。
【図6】信号のサンプリング開始時と検出しようとするゼロクロスとを示す図解図である。
【図7】(A)(B)は信号のゼロクロスを検出するためのサンプリング状態を示す図解図である。
【図8】信号の最も大きい振幅部分におけるサンプリング値からゼロクロス位置を検出する方法を示す図解図である。
【図9】信号の1周期の整数倍でないサンプリング周波数でサンプリングを行った例を示す図解図である。
【図10】同じ波形で振幅の異なる信号のゼロクロス位置を示す図解図である。
【図11】従来の信号の検出点を示す図解図である。
【図12】音波センサの出力電圧の例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、この発明の受信時間の検出方法を用いた3次元位置確定システムの一例を示す図解図である。3次元位置確定システム10は、演算処理装置12を含む。演算処理装置12としては、例えばパーソナルコンピュータなどを用いることができる。演算処理装置12のI/Oポートには、波形処理回路14が接続される。さらに、波形処理回路14には、複数の音波発信器が接続される。この実施形態においては、3つの音波発信器16a,16b,16cが波形処理装置12に接続される。
【0015】
さらに、演算処理装置12には、A/Dコンバータ18が接続される。このA/Dコンバータ18には、受信器20が接続される。受信器20は、後述の移動体から送られてくるアナログ信号を受信する。そして、受信器20で受信したアナログ信号がA/Dコンバータ18に送られる。A/Dコンバータ18では、受信器20から送られてきたアナログ信号がデジタル信号に変換される。A/Dコンバータ18で得られたデジタル信号は、演算処理装置12に送られる。また、演算処理装置12には、演算処理装置12から送られる信号に基づいて、移動体の3次元位置を表示するモニター22が接続される。
【0016】
また、3次元位置確定システム10は、例えば室内で移動する移動体30を含む。移動体30としては、例えば、室内の3次元位置を確定するための3次元マウスなどが想定される。移動体30は、音波センサ32を含む。音波センサ32は、音波発信器16a,16b,16cから発信される超音波を受信する。そして、音波センサ32は、受信した超音波に対応する信号を出力する。音波センサ32の出力信号は、増幅器34で増幅される。増幅器34で増幅された信号は、バンドパスフィルタ36に送られる。バンドパスフィルタ36では、音波発信器16a,16b,16cから送られてくる超音波に対応する周波数の信号が出力される。バンドパスフィルタ36から出力される信号は、送信器38に送られる。送信機38では、バンドパスフィルタ36から送られてきた信号が、受信器20に送信される。
【0017】
この3次元位置確定システム10では、図2に示すように、演算処理装置12から波形処理回路14に、音波発信器16a,16b,16cから超音波を発信させるためのパルスが送られる。ここで、音波発信器16a,16b,16cが一定の時間差で超音波を発信するように、時間差をもって波形処理回路14にパルスが送られる。また、それぞれの音波発信器16a,16b,16cにおいて一定の間隔で超音波が発信されるように、演算処理装置12から波形処理回路14にパルスが送られる。したがって、音波発信器16a,16b,16cからは、一定の間隔で、所定の時間差を有するパルスが発信される。
【0018】
波形処理回路14としては、たとえば、図3に示すような回路が用いられる。波形処理回路14は、オペアンプ40を含む。オペアンプ40の2つの電源端子には、正の電圧+Vおよび負の電圧−Vが接続される。さらに、オペアンプ40の反転入力端子には、抵抗42とダイオード44の並列回路が接続される。ここで、ダイオード44のカソード側がオペアンプ40の反転入力端子に接続される。そして、ダイオード44のアノード側は、コンデンサ46を介して演算処理装置12のI/Oポートに接続される。さらに、オペアンプ40の反転入力端子は、コンデンサ48を介して、負の電圧−Vが接続された電源端子に接続される。なお、オペアンプ40の非反転入力端子は、基準電位に接続される。
【0019】
また、オペアンプ40の反転入力端子は、コンデンサ50と抵抗52の並列回路を介してオペアンプ40の出力端子に接続される。オペアンプ40の出力端子は、抵抗54を介して音波発信器16a,16b,16cに接続される。各音波発信器16a,16b,16cには、個別に波形処理回路14が接続される。
【0020】
この波形処理回路14に演算処理装置12からパルスが入力されると、図4に示すように、パルスの立上りのとき、コンデンサ48に正電圧が蓄えられると同時に、オペアンプ40の反転入力端子にゆっくりと正電圧が与えられる。オペアンプ40の出力端子には、反転入力端子に与えられる正電圧が反転増幅されて表れるため、負の半波信号が出力される。次に、パルスが立下りに転じると、図5に示すように、コンデンサ48に蓄えられていた電圧が、コンデンサ46に向かって放電される。この放電電流は、抵抗42を通して流れるので、オペアンプ42の反転入力端子にゆっくりと負電圧が与えられる。オペアンプ42の反転入力端子に与えられた負電圧は反転増幅されて、オペアンプ42の出力端子には正の半波信号が出力される。このようにして、1つのパルスの入力により、波形処理回路14から1周期の正弦波信号が出力される。なお、コンデンサ50と抵抗52はローパスフィルタの役割を果たすものであり、抵抗54は出力信号を正弦波に丸める役割を果たす。
【0021】
波形処理回路14の出力信号により、音波発信器16a,16b,16cから超音波が発信される。このとき、入力信号は1周期の正弦波であるが、音波発信器16a,16b,16cの振動体が慣性で振動するため、音波発信器16a,16b,16cからは複数周期の超音波が発信される。しかしながら、入力信号が1周期の正弦波であるため、音波発信器16a,16b,16cから発信される超音波は短時間で終息する。そのため、各音波発信器16a,16b,16cにおいて、発信する間隔を短くすることができ、単位時間当たりの発信数を多くすることができる。
【0022】
音波発信器16a,16b,16cから発信された超音波は、移動体30の音波センサ32で受信される。音波センサ32からは、受信した超音波に対応する波形の出力信号が出力され、増幅器34で増幅されて、バンドパスフィルタ36により超音波に対応した周波数の信号が送信器38に送られる。このようにして得られた信号が、送信器38から受信器20に送信される。
【0023】
受信器20で受信された信号は、A/Dコンバータ18でアナログ−デジタル変換される。ここで、図6に示すように、超音波に対応した信号とノイズとを区別するための閾値が設けられ、信号が閾値を超えたときに、超音波に対応した信号であると判断してサンプリングが開始される。この3次元位置確定システム10では、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロスを検出することにより、音波発信器16a,16b,16cからの超音波の発信から音波センサ32での超音波の受信までの時間の検出を行う。
【0024】
A/Dコンバータ18では、受信器20で受信した信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数で、信号値がサンプリングされる。ここで、信号の最も大きい振幅を検出するために、隣接する角度位置におけるサンプリング値の差が比較される。このとき、図7(A)(B)に示すように、信号のサンプリング位置にかかわらず、複数周期の波形が対応する角度位置でサンプリングされることにより、複数周期の対応する角度位置におけるサンプリング値の差を比較することができる。このように、複数周期の波形が対応する角度位置でサンプリングされるためには、信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数であることが必要となる。なお、信号の1周期には、立上り部分と立下り部分とが合計4つあるため、これらの部分で隣接する角度位置におけるサンプリング値の比較を行うために、サンプリング周波数は信号の1周期の4倍以上の整数倍である必要がある。
【0025】
図7(A)(B)には、信号の1周期の5倍のサンプリング周波数でサンプリングを行う場合が例示されている。したがって、信号の最初の1周期がa,b,c,d,eの5箇所でサンプリングされ、次の1周期がf,g,h,i,jの5箇所でサンプリングされる。図7(A)(B)には、信号の異なる角度位置でサンプリングが行われている例が示されている。しかしながら、それぞれのサンプリングの例において、これらのサンプリング位置a〜fとサンプリング位置f〜jとは、信号の2つの周期の対応する角度位置となっている。そして、得られたサンプリング値は、演算処理装置12に送られる。
【0026】
演算処理装置12では、隣接する角度位置におけるサンプリング値が比較され、後の角度位置におけるサンプリング値のほうが大きいサンプリング値の組が選択される。図7(A)では、サンプリング位置b,cにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置c,dにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置d,eにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置g,hにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置h,iにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置i,jにおけるサンプリング値の組が選択される。また、図7(B)では、サンプリング位置c,dにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置d,eにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置h,iにおけるサンプリング値の組、サンプリング位置i,jにおけるサンプリング値の組が選択される。このように、後の角度位置におけるサンプリング値が大きい部分は、信号の立上り部分であることを示している。
【0027】
これらの選択されたサンプリング値の組のそれぞれにおいて、2つのサンプリング値の差が計算され、その絶対値が比較される。この絶対値が最大となる部分に、信号の振幅が最も大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置が存在する。図7(A)(B)では、2つのサンプリング位置c,dの組におけるサンプリング値の差が最大となり、サンプリング位置c,dの間にゼロクロス位置が存在している。
【0028】
このように、信号の立上り部分の隣接する角度位置にあるサンプリング位置におけるサンプリング値の差の絶対値が最大となる部分において、2つのサンプリング位置の間に、信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置が存在する。このゼロクロス位置を検出するために、図8に示すように、サンプリング位置c,dが直線で結ばれ、この直線を多数分割することにより、近似的にゼロクロス位置を探すことができる。なお、2つのサンプリング位置を直線で結んでゼロクロス位置を検出する場合、2つのサンプリング位置がゼロクロス位置に近いほど、実際のゼロクロス位置に近似した位置を検出することができる。そのため、サンプリング周波数を高くするほど、隣接するサンプリング位置を近づけることができ、正確なゼロクロス位置に近似した位置を検出することができる。
【0029】
信号の1周期の整数倍のサンプリング周波数でサンプリングを行うことにより、複数の周期の波形における対応する角度位置でサンプリングが行われるため、信号の立上り部分のゼロクロス位置でサンプリングが行われる場合、全ての周期の波形の立上り部分のゼロクロス位置でサンプリングが行われる。したがって、ゼロクロス位置におけるサンプリング値「0」とそれに隣接する角度位置にあるサンプリング位置におけるサンプリング値との差をとると、その絶対値は信号の振幅が最も大きい部分で最大となる。したがって、信号の振幅が最も大きい部分におけるサンプリング値「0」の位置が、目的とするゼロクロス位置であることがわかる。
【0030】
なお、サンプリング周波数が信号の1周期の整数倍でない場合、図9に示すように、隣接する周期の波形の異なる角度位置でサンプリングが行われる。図9の場合、振幅の小さい波形のサンプリング位置h,iのほぼ中央部にゼロクロス位置が存在し、振幅の大きい波形のサンプリング位置c,dの間では、サンプリング位置cに近いところにゼロクロス位置が存在する。このような場合、振幅の小さい波形のサンプリング位置h,iにおけるサンプリング値の差の絶対値のほうが、振幅の大きい波形のサンプリング位置c,dにおけるサンプリング値の差の絶対値より大きくなる。このように、サンプリング周波数が信号の1周期の整数倍でない場合、異なる周期の波形において、異なる角度位置でサンプリングが行われ、正確な比較を行うことができない。
【0031】
このようにして検出された信号の最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を超音波信号の受信時とみなして、図2に示すように、超音波の発信時から受信信号の検出されたゼロクロス位置までの時間を測定することにより、各音波発信器16a,16b,16cから音波センサ32までの距離を検出することができる。そして、各音波発信器16a,16b,16cから音波センサ32までの距離により、移動体30の3次元位置を確定することができる。確定した移動体30の3次元位置は、モニター22に表示される。
【0032】
このように、音波発信器16a,16b,16cから発信された超音波を音波センサ32で受信し、最も振幅の大きい部分における立上り部分のゼロクロス位置を検出することにより、全ての超音波を同じ角度位置で検出して、超音波の受信時間を得ることができる。このようなゼロクロス位置は、信号の振幅が変わっても変化することはない。つまり、信号の振幅の大小により、ゼロクロス位置が変わらない。たとえば、図10に示すように、信号レベルが小さい場合でも、ピークがオーバーフローするくらい信号レベルが大きくても、ゼロクロス位置は変わらない。そのため、信号の振幅に関係なく、同じ角度位置で受信時間を検出することができる。したがって、この3次元位置確定システム10を用いることにより、音波発信器16a,16b,16cから移動体30までの距離の誤差を小さくすることができ、移動体30の3次元位置を正確に把握することができる。
【0033】
また、この3次元位置確定システム10では、超音波の発信と受信との間の時間を測定しているため、各音波発信器16a,16b,16cと音波センサ32との間の距離を直接求めることができる。そのため、特許文献1のように、複数の受信波の時間間隔によって目的物の3次元位置を算出する場合に比べて、簡単な計算で移動体30の3次元位置を検出することができる。このように、簡単な計算で移動体30の3次元位置を検出することができるため、低速なコンピュータを使用しても処理が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 3次元位置確定システム
12 演算処理装置
14 波形処理装置
16a,16b,16c 音波発信器
18 ADコンバータ
20 受信器
22 モニター
30 移動体
32 音波センサ
34 増幅器
36 バンドパスフィルタ
38 送信器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号の1周期の4倍以上の整数倍のサンプリング周波数で前記信号の値をサンプリングするステップ(A)、
前記サンプリングによって得られたサンプリング値のうちの隣接する角度位置における2つの数値を比較するステップ(B)、
隣接する角度位置における前記サンプリング値を比較して後の角度位置における数値のほうが大きいサンプリング値の組を選択するステップ(C)、
選択された前記サンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値の差を求めるステップ(D)、
前記ステップ(D)で求められた2つのサンプリング値の差の絶対値が最も大きい前記サンプリング値の組を選択するステップ(E)、および
前記ステップ(E)で選択された前記サンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値に最も近いゼロクロス位置を求めるステップ(F)を含む、受信時間の検出方法。
【請求項2】
前記信号とノイズとを区別するために設定された閾値を超えた後に前記信号のサンプリングが開始される、請求項1に記載の受信信号の検出方法。
【請求項3】
前記ステップ(F)で選択された前記サンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値を結ぶ直線から前記ゼロクロス位置が近似的に求められる、請求項1または請求項2に記載の受信信号の検出方法。
【請求項1】
信号の1周期の4倍以上の整数倍のサンプリング周波数で前記信号の値をサンプリングするステップ(A)、
前記サンプリングによって得られたサンプリング値のうちの隣接する角度位置における2つの数値を比較するステップ(B)、
隣接する角度位置における前記サンプリング値を比較して後の角度位置における数値のほうが大きいサンプリング値の組を選択するステップ(C)、
選択された前記サンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値の差を求めるステップ(D)、
前記ステップ(D)で求められた2つのサンプリング値の差の絶対値が最も大きい前記サンプリング値の組を選択するステップ(E)、および
前記ステップ(E)で選択された前記サンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値に最も近いゼロクロス位置を求めるステップ(F)を含む、受信時間の検出方法。
【請求項2】
前記信号とノイズとを区別するために設定された閾値を超えた後に前記信号のサンプリングが開始される、請求項1に記載の受信信号の検出方法。
【請求項3】
前記ステップ(F)で選択された前記サンプリング値の組に含まれる2つのサンプリング値を結ぶ直線から前記ゼロクロス位置が近似的に求められる、請求項1または請求項2に記載の受信信号の検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−167971(P2012−167971A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28082(P2011−28082)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(508036651)株式会社シンセサイズ (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(508036651)株式会社シンセサイズ (3)
【Fターム(参考)】
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