説明

受信装置および周波数偏差計測ユニットおよび測位測距システム

【課題】信号の到達時間差を計測して測位を行うシステムにおいて、高精度な時間差計測を、低消費電力、小型かつ低コストの装置で行う。
【解決手段】本発明は、測位信号を送信する(被測位)ノードと、基準信号を送信する基準局と、上記測位信号および上記基準信号を受信する複数の基地局と、上記複数の基地局とネットワークでつながったサーバと、を有するシステムにおいて、上記複数の基地局が、クロック信号と、該クロック信号をシフトさせる信号とを用いて、上記測位信号と上記基準信号とを受信した時間差および上記基準局との周波数偏差を計測し、上記計測時間差および上記周波数偏差をもとに、上記サーバが上記ノードの位置を算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能を持つ端末ノードの位置を測定するのに適した受信装置および周波数偏差計測ユニットおよびそれらを用いた測位測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
センシング機能を持った装置が周辺のいたるところに設置されてセンシング装置が無線によりネットワークを構成することで、現実世界の情報を効率的にインターネット等の情報ネットワークに取り込むワイヤレス・センサ・ネットワーク(以下「センサネット」と略称する)が注目を集めている。このセンサネットとは、センサ、マイコン、無線通信機、電源を備えた無数のノード(端末)が、センサによって人や物や環境などの状況を計測し、自律的にネットワークを構成するという概念である。流通、自動車、農業など様々な分野への適用が検討されている。
【0003】
センサネット実現のためには、ノードを対象物に設置し、長時間かつ継続的に状態を検知する必要がある。そのため、ノードには小型かつ低消費電力であることが要求される。また、多数のノードを分散配置するため、ノードの管理が重要技術となる。
【0004】
一方、センサネット向け無線としても、やはり低電力な通信技術が求められている。超広帯域ウルトラワイドバンド(Ultra Wide Band)(以下「UWB」と略称する)通信機は低消費電力で小型となる可能性を持ち、センサネット向け通信機として期待されている。UWB無線通信とは、帯域幅が500MHz以上、または中心周波数に対する帯域幅の比率が20%以上あるような電波を用いる方式と定義されている。UWB通信はデータを極めて広い周波数帯に拡散して送受信を行なうものであり、単位周波数帯域当たりの信号エネルギーは極めて小さい。従って、他の通信システムに干渉を与えることなく通信が可能となり、周波数帯域の共有が可能になる。
【0005】
UWB通信の一例として、ガウシアンモノパルスをパルス位置変調PPM(Pulse Position Modulation)方式で変調するUWB−IR(Ultra Band - Impulse Radio)通信システムが非特許文献1に開示されている。このようなパルス信号との同期を実現する方法として、例えば、テンプレート・パルスの発生タイミングを所定の間隔でシフトさせ相関を取る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
UWBではパルス信号を用いることが可能なため、高精度な位置測定が可能な技術としても知られている。例えば、特許文献2には、二つの無線機間でのパケット送信およびその応答手続きを利用して測距・測位をする測距・測位システムが開示されている。特許文献3には、受信パルス波形とテンプレート波形の相関をとって同期を獲得する際のタイミング調整量に基づいて送受信機間の距離の変化を検出する受信機を具備する位置検出システムが開示されている。
【0007】
また、ノードの位置測定システムとして、ノードからの信号を複数の基地局で受信し、その到達時間差TDOA(Time Difference of Arrival)を利用してノードの位置を算出する技術が知られている。例えば、特許文献4には、複数の基地局が、ノードからの測位信号と基準局からの基準信号の受信時間差を測定し、その受信時間差を元にTDOAを利用して測位する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−241927号公報
【特許文献2】特開2004−258009号公報
【特許文献3】特開2004−254076号公報
【特許文献4】特開2005−140617号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】モエ・ゼット・ウィン(Moe Z. Win)他著、「インパルスラジオ:その動作(Impulse Radio: How It Works)」、米国文献アイ・イー・イー・イー・コミュニケーションズ・レターズ(IEEE Communications Letters)第2巻第2号、pp.36−38(1998年2月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
測位測距システムにおける課題のひとつは、測位精度の向上である。特許文献2に記載のシステムでは、測距精度の向上のために高速な発振器と高速なカウンタが必要となる。また、送受信機がそれぞれ所定周波数のクロックを発生する別個のクロック発生器を備えているが、測距精度は、送受信機の各クロック発生器の精度および安定性に影響される。すなわち、送受信機の各発振器の周波数偏差は、測距精度の誤差要因となる。
【0011】
特許文献3に記載のシステムでは、送受信機間の距離の変化を検出することが可能となるが、送信機の位置を特定することはできない。また、送受信機がそれぞれ所定周波数のクロックを発生する別個のクロック発生器を備えているが、距離の変化を特定する精度は、送受信機の各クロック発生器の精度および安定性に影響される。すなわち、送受信機の各発振器の周波数偏差は、測距精度の誤差要因となる。
【0012】
特許文献4に記載のTDOAを利用して測位するシステムでも、到達時間差の計測精度が測位精度に影響する。一般に、高精度な時間差計測には、高速な発振器と高速なカウンタが必要となり、消費電力、回路規模が増大してしまう。また、時間差計測の精度は、発振器の周波数精度および安定性に依存する。すなわち、発振器の周波数偏差は、時間差計測の誤差要因となる。しかしながら、高精度かつ安定な発振器は高額であり、装置のコストが増大してしまう。
【0013】
一方で、測位測距システムには、装置の低消費電力化、小型化、低コスト化が求められている。従って、高精度な時間差計測のために、高速、高精度かつ安定な発振器および高速なカウンタを用いる方法は好ましくない。
【0014】
本発明の目的は、時間差を計測して測位を行うものにおいて、高精度な時間差計測を、低消費電力、小型かつ低コストの装置で行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
本発明は、送信装置からの伝送信号を受信する受信装置であって、
上記伝送信号を受信する受信部と、上記伝送信号をアナログデジタル変換するA/D変換部と、上記A/D変換部がアナログデジタル変換するタイミングの位相をシフトさせる位相シフト部と、上記位相シフト部にて位相シフトさせた値を用いて、第1の伝送信号と第2の伝送信号との受信時間差を計測する時間差計測ユニット、とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、低速なクロック、制御信号およびカウンタを用いて高精度な時間差計測を行うことが可能となり、高速なクロックおよびカウンタを使用することなく、低消費電力、小型かつ低コストの装置で、高精度な測位が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例に係る測位システムの構成図。
【図2A】第1の実施例のノード(NOD)の構成例を示すブロック図である。
【図2B】第1の実施例の基準局(RS)の構成例を示すブロック図である。
【図2C】第1の実施例の基地局(AP)の構成例を示すブロック図である。
【図2D】第1の実施例の測位サーバの構成例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施例の測位・測距システムにおける信号の送受信の概要を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る受信装置の回路ブロック図。
【図5】本発明の第1の実施例に係る受信装置の時間差計測機能を持つベースバンド部の構成を示す回路ブロック図。
【図6】図5の時間差計測部の構成を示す回路ブロック図。
【図7】本発明に係る測位システムの原理を説明する図。
【図8】本発明に係るノードから送信される測位信号および基準局から送信される基準信号の構成図。
【図9】本発明に係る同期捕捉方法を説明する図。
【図10】本発明に係る同期追跡方法を説明する図。
【図11】本発明に係る時間差計測の方法を説明する図。
【図12】本発明の第1の実施例による測位測距処理の全体のフローチャートを示す図。
【図13】本発明の第2の実施例に係る偏差計測の方法を説明する図。
【図14】本発明の第2の実施例に係る受信装置の偏差計測機能を持つベースバンド部の構成を示す回路ブロック図。
【図15】本発明の第2の実施例に係る偏差計測部の構成を示す回路ブロック図。
【図16】本発明の第3の実施例に係る受信装置の時間差および偏差計測機能を持つベースバンド部の構成を示す回路ブロック図。
【図17】本発明の第3の実施例に係る時間差および偏差計測部の構成を示す回路ブロック図。
【図18】第3の実施例の測位・測距システムにおける信号の送受信の概要を示すシーケンス図である。
【図19】本発明の第3の実施例による測位測距処理の全体のフローチャートを示す図。
【図20】本発明の第4の実施例に係る送受信装置の回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る受信装置や測位測距システムの実施例を、以下添付図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施例に係る受信装置及びそれを用いた測位測距システムに関して、図1ないし図12で説明する。まず、実施例1のシステムの構成及び動作の概要について、図1ないし図3で説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る測位測距システムの構成である。測位測距システムは、測位信号を送信する(被測位対象である)複数のノード(NOD)100(100a,100b,…)、基準信号を送信する基準局(RS)110、測位信号および基準信号を受信する複数の基地局(AP)120(120a,120b,120c)、測位サーバ(PS)130、各基地局120および測位サーバ130をつなぐネットワーク(INT)140、から構成される。なお、参照符号の添え字a,b,cは、同じ構成要素であることを示し、添え字を省略する場合は、その同一構成要素を指すものとする。また、NOD、RS、AP及びPSは、いずれも送受信の機能を備えているが、ここでは説明を簡単にするために、本発明の実施例に関して必要な送受信機能を主体にして説明する。
【0021】
実施例1のシステムを構成する各要素の構成例の概要を図2(図2A〜図2D)で説明する。
図2Aは、ノード(NOD)100の構成例を示すブロック図である。各ノードは、信号送信制御部101、信号作成部102及びアンテナ103を備えている。信号送信制御部101は、ノード自体に内蔵又は接続されているセンサやタイマからの情報等に基づいて、そのノードが信号送信制御部101からの命令を受けて測位信号S101を作成し、アンテナ103から送信する。この測位信号は、ノード毎に固有に割り当てられた波形となっており、各ノードが送信した測位信号を識別可能になっている。
【0022】
図2Bは、基準局(RS)110の構成例を示すブロック図である。基準局は、ベースバンド部(BBM)111、アナログデジタル変換部(以下「A/D変換部」と略称する)(ADM)112、RFフロントエンド部(RFF)113、送信受信切替スイッチ(SWT)115、アンテナ(ANT)117、信号送受信制御部118、送信信号生成部119から構成される。ADM112及びRFF113は、同期をとるべきクロック信号の発生源としてSCG114やCLK116を有している。基準局は、ノード100が送信した測位信号S101を受信し、その後に、送信信号生成部119で作成された固有の波形の基準信号S111を送信する機能を備えている。
【0023】
図2Cは、基地局(AP)120の構成例を示すブロック図である。基地局は、ベースバンド部(BBM)121、アナログデジタル変換部(ADM)125、RFフロントエンド部(RFF)127及びアンテナ(ANT)129から構成される。ADM125及びRFF127は、同期をとるべきクロック信号の発生源SCG126、CLK128を有している。ベースバンド部121は、受信した信号に含まれる送信局を特定可能な情報に基づいて、該信号を送信したノード又は基準局を特定する機能を備えている。ベースバンド部121は、さらに、SCGで生成されたクロック信号の位相を変化させるシフト信号を生成してクロック信号の位相を変化させ伝送信号と上記クロック信号との同期捕捉を行う同期捕捉部(TRPM)122、クロック信号およびシフト信号とを用いて測位信号と基準信号とを受信した時間差を計測する時間差計測部(TDMM)123も備えている。
【0024】
なお、図2Bに示すように、基準局(RS)110を構成する通信装置にも、基地局(AP)120と同様に、同期捕捉部(TRPM)や時間差計測部(TDMM)を備えるようにしても良い。また、基地局(AP)120にも、基準局(RS)110と同様な送信機能を持たせても良い。
【0025】
図2Dは、測位サーバ130(PS)の構成例を示すブロック図である。測位サーバは、通信部131、測位・測距部132の各機能及びシステム情報データベース133を備えている。通信部131は、測位サーバをネットワーク140に接続するインターフェースとして機能し、基地局から送られる測位情報通知を受けて、測位・測距部132に送る。測位・測距部132は、測位情報通知に含まれる各基地局における信号受信時刻差の情報及びシステム情報データベース133から得た各基地局及び基準局の位置等の情報に基づいてノード100の位置を算出する。
【0026】
図3は、第1の実施例の測位・測距システムにおける信号の送受信の概要を示すシーケンス図である。
【0027】
ノード100は、位置計算を希望する任意の時刻、例えば、定期的に、又は、ノードに設けられたセンサが異常を検出したときに、周辺の基準局110と基地局120に対して測位信号S101を含む伝送信号を送信する。基準局110は、測位信号を含む伝送信号を受信した後、基準信号S111を含む伝送信号を送信する。各基地局は、測位情報、例えば測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻との時間差及び基地局を識別するためのIDその他の情報を、ネットワークを経由してサーバ130に送付する。
【0028】
ここで、各基地局120は、伝送信号を受信した際、この伝送信号例えば測位信号とサンプリングクロックとの同期捕捉を行う。同期捕捉が確立された後、伝送信号の復調・同期追跡を行う。各基地局は、同期捕捉、復調・同期追跡などの伝送信号の受信処理と並行して、測位信号と基準信号の受信時間差の計測処理を行い、その結果に基づく情報をサーバ130に送付する。
【0029】
サーバ130は、これらの情報と、サーバが持つデータベースに記録されている情報とから、ノードの座標を算出して測位・測距を行う。
【0030】
次に、実施例1のシステムの具体的な構成、動作原理、作用及び効果について、図4ないし図12で説明する。
【0031】
まず、本発明に係る基地局120における受信装置は、例えば図4に示すような、間欠的なインパルス列を受信するUWB−IR受信装置で構成される。
【0032】
空間を隔てて別個に存在する送信装置において、例えば、BPSK変調(Binary Phase Shift Keying:2値のデジタル位相変調)および直接拡散されたパルス列を空間に送信し、本受信装置のアンテナで、空間を伝搬してきたパルス列信号を受信する。空間を伝搬する信号は、例えば、幅が約2nsのパルスが、間隔約30nsで送信されるインパルス列である。インパルスの形状は例えば1次ガウシアン波形となっており、さらに約4GHzの搬送波によりアップコンバートされた波形が用いられる。
【0033】
受信装置は、アンテナ(ANT)410、RFフロントエンド部(RFF)420、アナログデジタル変換部(以下「A/D変換部」と略称する)(ADM)430、ベースバンド部(BBM)440から構成される。
【0034】
RFフロントエンド部420は、ローノイズアンプ(LNA)421、ミキサ(MIX)422i,422q、π/2位相シフタ(QPS)423、クロック発生器(CLK)424、ローパスフィルタ(LPF)425i,425q、及び可変ゲインアンプ(VGA)426i,426qから構成される。
【0035】
なお、添え字i,qは、それぞれI信号成分(同相信号:In Phase)、Q信号成分(直交信号:Quadrature)用を示しており、以下の説明では、特に必要でない限りi,qの添え字は省略する。
【0036】
アンテナ410から受信されたパルス信号(間欠的なパルス列)はローノイズアンプ421で増幅された後、ミキサ422に与えられる。ミキサ422にはクロック発生器424が生成する約4GHzのクロック信号が与えられ、その結果ミキサ422の出力は4GHz帯の搬送波と、パルス幅が約2nsのガウシアン波形のインパルス信号とに分離される。この時、ミキサ422iにはクロック発生器424の出力信号が直接与えられて同相の出力信号であるI信号が出力される。一方、ミキサ422qには、クロック発生器424のクロック信号がπ/2位相シフタ(QPS)423を経て位相がπ/2遅延されたクロック信号が供給されるため、出力信号は直交成分であるQ信号となる。
【0037】
ミキサ422で分離された信号は、ローパスフィルタ425で弁別され、周波数の高い4GHzの搬送波は遮断される。従って、ガウシアンのインパルス波形だけがローパスフィルタ425から出力される。これらインパルス信号は、可変ゲインアンプ426で増幅され、RFフロントエンド部420からそれぞれI信号S427i、Q信号S427qとして出力される。
【0038】
A/D変換部430は、A/D変換器(ADC)431とサンプリングクロック生成部(SCG)433から構成され、RFフロントエンド部の出力信号であるI信号S427iとQ信号S427qのガウシアン波形インパルス信号が入力され、A/D変換器ADC431によりデジタル信号に変換され出力される。
【0039】
入力信号S427i,S427qはそれぞれ複数に分割されて、内部の個々のA/D変換器431に与えられ、デジタル信号S432に変換される。各A/D変換器431において、入力信号S427をデジタル値に変換するためのサンプリングタイミングは、サンプリングクロックS435により制御される。サンプリングクロックS435は、サンプリングクロック生成部433から与えられ、その周期は、受信インパルス列のパルス繰返し周期と等しい。すなわち、インパルス列のパルスと同期したタイミングで、サンプリングを行う。
【0040】
しかしながら、送信装置と受信装置は空間を隔てて別個に存在し、それぞれ同期を取っているわけではない。そのため、受信インパルス列とサンプリングクロックの位相は一致しない。従って、受信インパルス列とサンプリングクロックの位相を一致させる、同期捕捉という動作が必要となる。
【0041】
ここで、同期をとるべきクロック信号に2種類あることを説明する。一つ目は、図4のRFフロントエンド部RFF420で用いられる4GHz周波数のクロック信号であり、二つ目は、A/D変換部430で用いられる、インパルス列が約30ns間隔で送られることに対応した約32MHz周波数のクロック信号である。
【0042】
4GHz信号成分は、RFフロントエンド部RFF420において受信された信号をI成分とQ成分に分割し、ベースバンド部BBMで信号を復元しているが、この方法により位相差に関して同期をとらなくても対応可能となっている。
【0043】
一方で、約32MHz間隔のインパルス列については、以下に説明する同期捕捉や同期追跡を行なう必要がある。
【0044】
図5に、ベースバンド部440のブロック図を示す。ベースバンド部440は、マッチトフィルタ部(MFM)510、同期捕捉部(TRPM)520、データ保持タイミング制御部(DLTCTL)530、データ保持部(DLM)540、復調部(DEMM)550、同期追跡部(TRCKM)560、サンプリングタイミング制御部(STCTL)570、時間差計測部(TDMM)580から構成される。
【0045】
A/D変換部430から与えられる複数のデジタル化されたI、Q信号S432ia〜cとS432qa〜cは、マッチトフィルタ部510において期待される拡散符号とのマッチング(整合)度合いを検出し、測定結果を信号S511として出力する。
【0046】
同期捕捉部520は、信号S511iaおよびS511qaを用いて受信信号(インパルス列)の同期捕捉を行なう。同期捕捉が確立されていない間は信号S522をサンプリングタイミング制御部570へ出力し、サンプリングタイミング制御信号S441,S442を用いてA/D変換部430が受信信号をデジタル変換するタイミングを変えていく。同期捕捉が確立すると、同期タイミングの情報が信号S521を経てデータ保持タイミング制御部530に伝えられる。
【0047】
データ保持タイミング制御部530は、受信信号S511と同期の取れたタイミングで制御信号S531をデータ保持部540に与え、データ保持部540はそのタイミングに合ったデータだけを信号S541として復調部550および同期追跡部560に伝える。復調部550ではデータ保持部540によって選ばれた信号S541をもとにデータを復調し、デジタルデータS443を出力する。
【0048】
また、同期追跡部560では、データ保持部540によって選ばれた信号S541をもとに、受信信号S427との同期ずれがおきていないかを検出し、同期ずれが起きている場合にはサンプリングタイミング制御部570を介してサンプリングタイミング制御信号S441,S442によりA/D変換部430のデジタル変換タイミングを調整する。
【0049】
サンプリングタイミング制御部570では、同期捕捉部520および同期追跡部560からの信号をもとに、A/D変換部430のデジタル変換タイミングを調整する。同期捕捉部520から信号S522が出力された場合、サンプリングタイミング制御部570を介してサンプリングタイミング制御信号S441が出力され、デジタル変換タイミングを通常よりも微小時間、例えば0.5ns程度、遅らせる。すなわち、通常のデジタル変換の周期(Tckとする)はインパルス間隔と等しいが、当該信号S441が出力された場合は、デジタル変換の間隔がTck+Tsとなる。ただし、Tsは当該信号S441が出力された場合のデジタル変換のタイミングシフト時間である。
【0050】
また、デジタル変換のタイミングは、同期追跡部560の出力信号S561に応じて調整される。A/D変換部430に入力されるアナログ信号S427に対してデジタル変換タイミングが進んでいる場合、同期追跡部520が検知し、サンプリングタイミング制御部に伝えられ、制御信号S441が出力されて、デジタル変換タイミングを通常よりもTs遅らせる。逆にアナログ信号S427に対してデジタル変換タイミングが遅れている場合、制御信号S442が出力されて、デジタル変換タイミングを通常よりもTs進ませる。
【0051】
すなわち、サンプリングタイミング制御部570から制御信号S441が出力された場合、サンプリングクロックS435の周期は1周期だけTck+Tsとなり、制御信号S442が出力された場合、S435の周期は1周期だけTck-Tsとなる。このようにサンプリングクロックS435の周期を制御することで、同期捕捉、同期追跡が可能となる。
【0052】
パルス信号を受信するUWB−IR通信の受信装置の基本動作は、次のとおりである。すなわち、パルス信号をアンテナ410で受け取り、RFフロントエンド部420で必要な周波数の整形された波形を抽出し、A/D変換部430でデジタル信号に変換し、ベースバンド部440でデジタル信号処理を行なうことで通信データS443を取り出して出力する。
【0053】
本実施例のUWB−IR受信装置におけるベースバンド部440には、測位用に、時間差計測部580が追加されている。本時間差計測部580は高精度な計測を低消費電力で実現するものであり、受信装置に元々備えている機能と比較的低速のカウンタを使用して高精度な時間差計測を行う。
【0054】
この時間差計測を行う時間差計測部の具体的な構成例を図6に示す。時間差計測部580は、カウンタ(CNT)610、レジスタ(REG)620、遅延部(D)630、時間差計算部(TDCAL)640から構成される。なお、時間差計測部580の詳細については、後で説明する。
【0055】
この実施例の測位システムの仕組みを、ノード100aの位置測定を行う場合の例を用いて、図7ないし図8を参照しながら、より詳細に説明する。
【0056】
まず、図7により、本発明に係る測位システムの原理を説明する。
図7において、Txは送信、Rxは受信を示す。ノード100aが送信した測位信号S101は、時間TNR後に基準局110に受信され、TNA,a後に基地局120aに受信される。基準局110は、測位信号S101を受信してからTRP後に、基準信号S111を送信する。基準信号S111は、送信されてからTRA,a後に、基地局120aに受信される。基地局120aは、測位信号S101を受信してから基準信号S111を受信するまでの時間Tmeas,aを計測する。この時、以下の式が成立する。
TNR + TRP + TRA,a = TNA,a + Tmeas,a …… (1a)
また、測位信号S101および基準信号S111は、基地局120b,120cにも受信され、
TNR + TRP + TRA,b = TNA,b + Tmeas,b …… (1b)
TNR + TRP + TRA,c = TNA,c + Tmeas,c …… (1c)
が成立する。ここで、
TNR:ノード100aが測位信号S101を送信してから、基準局110が測位信号S101を受信するまでの時間
TRP:基準局110が測位信号S101を受信してから、基準信号S111を送信するまでの時間
TRA,a,TRA,b,TRA,c:基準局110が基準信号S111を送信してから、基地局120a,120b,120cが基準信号S111を受信するまでの時間
TNA,a,TNA,b,TNA,c:ノード100aが測位信号S101を送信してから、基地局120a,120b,120cが測位信号S101を受信するまでの時間
Tmeas,a,Tmeas,b,Tmeas,c:基地局120a,120b,120cが、測位信号S101を受信してから、基準信号S111を受信するまでの時間
である。
【0057】
式(1a)および式(1b)から以下の式が導かれる。
TNA,a - TNA,b = (TRA,a - TRA,b) - (Tmeas,a - Tmeas,b) …… (2)
ここで、TRA,a,TRA,bはそれぞれ基準局110と基地局120a,120bとの間の距離を光速で除した値に等しい。また、Tmeas,a,Tmeas,bは基地局120a,120bがそれぞれ計測した値であるため、式(2)の右辺は既知の値となる。
【0058】
従って、測位信号S101が基地局120a,120bに到達した時間差TNA,a - TNA,bを算出することができる。同様にして、3基の基地局120への到達時間差TDOAを知ることができ、ノード100aの位置測定が可能となる。なお、本説明では、基地局の数を3基としているが、これに限るものではない。
【0059】
図8は、ノード100から送信される測位信号S101および基準局110から送信される基準信号S111の構成例を示す。当該信号S101,S111は、プリアンブル310、フレーム開始部(Start Frame Delimiter、以下「SFD」と略称する)320、ヘッダ330、データ340から構成される。ヘッダ内やデータ内には誤り検出用のCRC符号等が含まれていてもよい。
【0060】
プリアンブル310は、当該信号S101,S111を受信した装置において同期の捕捉に使用される。SFD320は、プリアンブル310の終了およびヘッダ330の始まりを示す特定のビットパターンである。ヘッダ330には、当該信号S101,S111の送信元の識別子および受信先の識別子などの情報等が格納される。データ340には当該信号S101,S111の送信元からの情報が格納される。
【0061】
当該信号S101,S111を通信用の信号とすることで、通信と同時に測位を行うことが可能となる。また、ノード100、基準局110において測位用の特別な信号を生成する必要がなくなり、装置が簡易化される。
【0062】
当該信号S101,S111の送信時刻あるいは受信時刻は、ある特定の部分を送信あるいは受信した時刻と定める。例えば、当該信号S101,S111のSFD320を送信し終えた時刻を送信時刻と定め、受信し終えた時刻を受信時刻と定める。
【0063】
本測位システムにおいて、測定されるノード100の位置精度は、到達時間差TDOAの精度、すなわち、基地局120で計測する時間Tmeasの精度に依存する。さらに、複数基地局120a、120b、120c間の計測時間誤差に依存する。例えば、30cmの位置精度を得るには、約1nsの時間精度が必要となる。精度1nsで時間差を計測する場合、通常、1GHzの発振器と1GHzで動作するカウンタを用いる。しかし、このような高速な発振器、カウンタを使用すると消費電力、回路規模が増大してしまう。
【0064】
本実施形態では、比較的低速の発振器と低速のカウンタを使用して、高精度な時間差計測を行い、消費電力、回路規模を低減する。
【0065】
以下、その詳細を図9から図11を用いて説明する。
まず、図9を用いて、同期捕捉の方法を説明する。A/D変換部430に入力されるインパルス列S427と、サンプリングクロックS435の位相が一致していない場合、A/D変換されたデジタル信号S432は、ノイズレベルの値となる。インパルス列S427とサンプリングクロックS435の位相が一致している場合、パルスをサンプリングした出力がデジタル信号S432に出力される。
【0066】
デジタル信号S432はベースバンド部440に入力され、当該信号S432のレベルから位相の一致/不一致の判定を行う。位相が一致していない場合、シフト信号(タイミングシフト時間=Ts)を生成して位相の調整を行う。
【0067】
すなわち、サンプリングタイミング制御信号S441を出力し、サンプリングクロックS435の周期を一定時間(Ts)長くあるいは短くシフトすることで、サンプリングタイミングをシフトさせる。この処理を、インパルス列S427とサンプリングクロックS435の位相が一致するまで繰返す。このように、サンプリングタイミング制御信号S441により、サンプリングクロックS435の位相をずらすことで、インパルス列S427との同期捕捉を行う。
【0068】
A/D変換部430のA/D変換器431ia、431ib、431icには、例えば、それぞれ0.5nsの遅延差を持つサンプリングクロックが与えられる。すなわち、ガウシアンインパルス信号が2nsの幅を持つ場合に、このインパルス信号を0.5nsずつ異なる位置でデジタル値に変換し、出力する。これらの、異なる位置でデジタル値に変換された値は、同期追跡に用いられる。
【0069】
一度同期捕捉が確立した後でも、送信装置と受信装置のクロックに周波数偏差が存在する場合、次第に同期ずれが生じる。UWB−IR方式では、間隔の短い2ns程度のインパルスに対して同期を行なう必要がある。送信装置および受信装置のクロック発生に用いられる水晶発振子の周波数精度が高ければ同期追跡は不要であるが、精度の高い水晶発振子は高額になる。低コスト化を目指すためには、精度の悪い水晶発振子を用いても受信できるシステムでなければならない。そのために、同期追跡という動作が必要となる。
【0070】
この同期追跡について、図10ないし図11で説明する。図10に同期追跡の概念図を示し、図11は、時間差計測の原理を示す。
まず、図10において、パルスのピークをサンプリングしている状態830から、周波数偏差のため、状態810,820に示すように、パルスのピークとサンプリングタイミングにずれが生じる。
【0071】
ベースバンド部440では、A/D変換された3点のデジタル信号S432を用いてこのずれを検出し、制御信号S441,S442を通じてサンプリングクロックS435の周期を調整する。すなわち、状態810に示すように、サンプリングクロックS435がインパルスに対して進んでいる場合、シフト信号によりサンプリングクロックS435の周期を一定時間(Ts)長くする。また、状態820に示すように、サンプリングクロックS435がインパルスに対して遅れている場合、シフト信号によりサンプリングクロックS435の周期を一定時間(Ts)短くする。
【0072】
サンプリングクロック生成部433は、上述のように、ベースバンド部440から与えられるサンプリングタイミング制御信号S441,S442に応じて、A/D変換器431のサンプリングタイミングを決定するサンプリングクロックS435ia〜c、S435qa〜cを生成する。
【0073】
ベースバンド部440は、デジタル値に変換された受信信号S432を用いて同期捕捉、同期確認、信号復調、同期追跡、時間差計測といった信号処理、およびA/D変換部430のサンプリングタイミング制御を行なう。復調されたデータS443および測位データS444はベースバンド部から出力されて上位レイヤに伝えられ、上位レイヤでデータ処理が行なわれる。
【0074】
次に、時間差計測の原理を、図11を参照しながら説明する。図11は、測位信号S101および基準信号S111受信時の、基地局120の受信装置のタイミングチャートである。測位信号S101との同期捕捉が確立されていない間は、サンプリングタイミング制御信号S441により、サンプリングクロックS435の周期を変え、同期の捕捉を行う。測位信号S101を受信し、同期捕捉が確立されると、復調および同期追跡を開始する。
【0075】
送信装置と受信装置のクロックに周波数偏差が存在するため、一度同期が確立した後でも、次第に同期ずれが生じる。同期追跡部560でそのずれを検知し、制御信号S441,S442を介してサンプリングクロックS435の周期を調整する。
【0076】
受信装置は、測位信号S101のデータ340を受信し終えると、同期捕捉を行う。基準信号S111との同期捕捉が確立された後、復調・同期追跡を行う。
【0077】
基地局120は、測位信号S101を受信してから、基準信号S111を受信するまでの時間Tmeasを計測する。ここでは、当該信号S101,S111の受信時刻を、SFD320を受信し終えた時刻とする。
【0078】
サンプリングクロックS435の周期は、通常はTckであり、制御信号S441,S442が出力された場合はそれぞれTck+Ts,Tck-Tsとなる。これを利用すると、測位信号S101と基準信号S111の受信時間差Tmeasは以下の式で与えられる。
Tmeas = Tck・Nck + Ts・(Np - Nm) ……(3)
ただし、
Tck:通常のサンプリングクロック周期
Ts:タイミングシフト時間
Nck:パルスサンプリング用クロックのカウント数
Np,Nm:+Ts,-Tsのサンプリングタイミング制御信号のカウント数
である。
【0079】
すなわち、該受信時間差Tmeasは、サンプリングクロックS435およびその制御信号S441,S442の数をカウントすることで算出される。
【0080】
この受信時間差の算出は、時間差計測部(TDMM)580(図6参照)でなされる。次に、この時間差計測部580の動作を説明する。時間差計測部580には、サンプリングクロックS435D、サンプリングタイミング制御信号S441,S442、およびSFD検出信号S551が入力される。クロックS435D、および制御信号S441,S442がそれぞれカウンタ610a〜cに入力され、そのカウント値を信号S611a〜cとして出力する。
【0081】
SFD検出信号S551は、SFD320が検出されたタイミングで復調部550から出力される。カウント値S611a〜cは、SFD検出タイミングでレジスタ620a〜cに記憶される。また、SFD検出信号S551は、遅延部630にて遅延され、カウンタ610のカウント値をリセットする。
【0082】
時間差計算部640では、レジスタ620に記憶された値を用い、式(3)に従って受信時間差Tmeasを計算する。当該時間差Tmeasは、信号S444aとして上位レイヤに出力される。上位レイヤでは、復調されたデータS443からノード100のIDなどを識別し、必要な情報と該受信時間差Tmeasを測位サーバに送信する。測位サーバでは基地局からのデータをもとにノード100の位置を算出する。
【0083】
該受信時間差Tmeasの計算は、時間差計測部580でなく、上位レイヤ、測位サーバなどで行ってもよい。
【0084】
また、Tmeasの計測開始時および終了時はSFD検出時でなくてもよい。例えば、測位信号S101のデータ終了時から計測を開始してもよい。この場合、前述した例と比較して計測時間が短縮され、カウンタのビット数削減が可能となり、回路規模が削減される。
【0085】
同期捕捉が確立されていない間は、サンプリングタイミング制御信号S441が周期的に出力される。同期が捕捉されたかを判定するのに一定時間を要するためである。これを利用すると、この間のサンプリングクロックS435dの数は、サンプリングタイミング制御信号S441のカウント数から算出することができる。
【0086】
以上が、受信時間差Tmeasを高精度、かつ低消費電力で計測する方法および回路である。すなわち、サンプリングクロックS435およびサンプリングタイミング制御信号S441,S442の数をカウントし、式(3)に従い該受信時間差Tmeasを算出する。
【0087】
図12に、本実施例による測位測距処理の全体のフローチャートを示す。
ノードは、位置計算を希望する任意の時刻に、周辺の基準局110と基地局120に対して測位信号S101を含む伝送信号を送信する(S1201)。基準局110は、測位信号を受信した後、基準信号S111含む伝送信号を送信する(S1202)。基準局および各基地局は、それぞれ伝送信号、例えば測位信号の受信時刻、基準信号の受信時刻及び基地局を識別するためのIDその他の情報をネットワークを経由してサーバ130に送付する。
【0088】
ここで、各基地局120は、伝送信号例えば測位信号S101を受信したとき、この測位信号とサンプリングクロックとの同期捕捉を行う。同期捕捉が確立された後、復調・同期追跡を行う。各基地局は、同期捕捉、復調・同期追跡などの伝送信号の受信処理と並行して、式(3)に従って測位信号S101と基準信号S111の受信時間差Tmeasの計測処理を行い(S1203)、その結果に基づく情報をサーバ130に送付する(S1204)。サーバ130は、これらの情報と、サーバが持つデータベースに記録されている情報とから、ノードの座標を算出して測位・測距を行う(S1205)。
【0089】
このように、同期捕捉、同期追跡、受信時間差計測等の機能を備えた本実施例のシステムを用いることで、比較的低速なクロック、制御信号およびカウンタを用いたとしても、高精度な時間差計測が可能となる。カウンタの動作周波数は、パルス繰返し周波数(1/Tck)と同じであり、例えば約32MHzである。カウンタの動作周波数が低いため、消費電力、回路規模を低減することができる。さらに、Tmeasの計測開始/終了を示すSFD検出信号S551がサンプリングクロックに同期しているため、設計が容易となる。
【0090】
この方法の時間計測精度は±Ts(タイミングシフト時間)である。例えば、Tsを0.5nsとすると、1GHzの発振器とカウンタを用いて計測した場合と同じ精度となり、約30cmの測位精度が得られる。
【0091】
以上述べたとおり、本実施例に係る基地局の受信装置では、測位信号と基準信号の受信時間差の計測に、低速なクロックおよび該クロックの位相をシフトさせる制御信号を使用できる。そして、このクロックおよび該制御信号の数を、低速なカウンタでカウントし、受信時間差を算出する。算出された受信時間差の精度は、一回の制御信号発生によりシフトさせる時間で決まる。このため、高精度な時間差計測が可能となる。この方法を用いて受信時間差の計測を行うことで、高速なクロックおよび高速なカウンタが必要なく、消費電力、回路規模が低減される。
【0092】
以上の位置検出システムにおいて、基地局の情報をサーバに伝えるネットワークは有線でも無線でもよい。また、基準局やサーバの機能を基地局が兼ねることも可能である。
【0093】
例えば、測位測距システムを、測位信号を送信する第1の通信装置と、測位信号を受信した後基準信号を第1の通信装置に送信する第2の通信装置で構成し、第1の通信装置が、クロック信号の位相を変化させるシフト信号を生成して基準信号とクロック信号との同期捕捉を行う同期捕捉ユニットと、測位信号を送信してから基準信号を受信するまでの時間差を計測しこの時間差を用いて第1の通信装置と第2の通信装置との距離を算出する位置計算ユニットとを具備するように構成しても良い。
【0094】
本実施例によれば、低速なクロック、制御信号およびカウンタを用いて高精度な時間差計測を行うことが可能となり、高速なクロックおよびカウンタを使用することなく、低消費電力、小型かつ低コストの装置で、高精度な測位が実現される。
【実施例2】
【0095】
本発明の第2の実施例として、基地局相互のクロック誤差を計測、低減する周波数偏差計測ユニットに関して、図13ないし図15で説明する。
【0096】
上記本発明の第1の実施例において、基地局120が計測した該受信時間差Tmeasは、クロックの周波数精度に起因する誤差を含んでいる。
【0097】
測位サーバでは、複数の基地局120で計測されたTmeasを用いて、式(2)に従いノード100の位置を算出する。クロックの誤差を考慮した場合、式(2)の右辺第2項は
Tmeas,a - Tmeas,b = Treal,a・(1 + δa) Treal,b・(1 + δb)
= Treal,a Treal,b + (Treal,a・δa - Treal,b・δb)
…… (4)
となり、誤差(Treal,a・δa + Treal,b・δb)が生じる。ここで、
Treal,a,Treal,b:基地局120a,120bがそれぞれ計測すべき実際の時間
δa,δb:基地局120a,120bのクロックの偏差である。
【0098】
誤差(Treal,a・δa + Treal,b・δb)は、
Treal,a・δa - Treal,b・δb = (Treal,a - Treal,b)・δa + Treal,b・(δa - δb)
…… (5)
と変形される。
【0099】
(Treal,a - Treal,b)は、ノード100と基地局120との距離および基準局110と基地局120との距離に依存し、例えば、30m四方の広さの測位システムを考えると、その値は高々100ns程度となる。これに対し、Treal,bは基準局110での信号処理時間、測位信号S101のデータ長、基準信号S111のプリアンブル長などに依存し、例えば、伝送速度が250kbpsでプリアンブル長が20バイトとした場合、その値は少なくとも0.6ms以上となる。この場合、例えば基地局間のクロックの偏差(δa - δb)が20ppmとすると、約13nsの時間誤差が生じる。これは距離に直すと約4mの誤差となる。
【0100】
従って、式(5)で表される誤差のうち、支配的となるのは第2項である。言い換えると、主な誤差要因となるのは、クロックの絶対的な偏差(実際の時間との偏差)ではなく、基地局間のクロックの相対的な偏差である。従って、基地局間のクロックの相対的な偏差を低減すれば、誤差が低減される。
【0101】
本実施形態の周波数偏差計測ユニットでは、送信装置と受信装置のクロックの周波数偏差を計測し、測位誤差の低減を行う。すなわち、送信装置のクロック周波数を基準として、基地局相互のクロック誤差を計測、低減する。図13を用いて、周波数偏差計測ユニットの動作原理を説明する。
【0102】
図13は、基準信号S111受信時における、基地局120aのA/D変換部430のタイミングチャートである。基準信号S111との同期が確立した後の状態を示している。この状態では、A/D変換部430に入力されるアナログ信号S432とサンプリングクロックS435が同期している。言い換えると、サンプリングタイミング制御信号S441,S442により、サンプリングクロックS435の周期を、該アナログ信号S432と同期するように制御している。
【0103】
また、基準信号S111は基準局110により生成されるため、該アナログ信号S432は、基準局110のクロックの周波数偏差を反映する。従って、制御信号S441が出力される周期は、基地局120aのクロックと基準局110のクロックとの偏差に対応する。その偏差は、
δa - δr = Ts・(Np - Nm) / Tck・Nck …… (6)
と表される。ここで、δrは基準局110のクロックの偏差である。
【0104】
すなわち、該偏差(δa - δr)は、サンプリングクロックS435およびサンプリングタイミング制御信号S441,S442をカウントすることで算出される。この方法により、それぞれの基地局120の基準局110に対する偏差を算出し、補正を行うことで、クロックの周波数偏差に起因する誤差が低減される。
【0105】
次に、図14、図15で周波数偏差計測ユニットの構成について説明する。周波数偏差計測ユニットは、図14に示すように、ベースバンド部BBM440に偏差計測部(FDMM)1110を備えている。図15に偏差計測部1110の具体的な構成例を示している。
【0106】
偏差計測部1110は、カウンタ610、レジスタ620、偏差計算部(FDCAL)1240から構成される。偏差計測部1110にはサンプリングクロックS435D、サンプリングタイミング制御信号S441,S442、SFD検出信号S551およびデータ終了信号S552が入力され、計測された偏差S444bが出力される。データ終了信号S552は受信した信号のデータ340が終了した時点で復調部から出力される。
【0107】
クロックS435D、および制御信号S441,S442は、それぞれカウンタ610a〜cに入力され、そのカウント値を信号S611a〜cとして出力する。該カウント値S611a〜cはSFD検出タイミングにてリセットされ、データ終了タイミングでレジスタ620d〜fに記憶される。偏差計算部1240では、式(6)に従い、レジスタ620の値を用いて偏差を算出し、上位レイヤに出力する。
【0108】
ここでは、基準信号S111を用いて偏差の補正を行うとしたが、これに限定されるものではなく、ノードからの測位信号S101、他の送信装置からの信号などを用いてもよい。また、偏差の計測を行うタイミングは、測位を行うタイミングに限らず、設置時点、定期的に、あるいは温度変化が生じた時、など適当な時に計測してもよい。該偏差のデータは基地局120あるいは測位サーバ130のデータベースなどに記憶しておく。このように、あらかじめ基地局間のクロック周波数偏差を計測しておくのであれば、測位信号の到達時間そのものを用いて基地局間の時間差を計測し、位置検出を行なうことも可能である。
【0109】
以上のように、同期捕捉確立後に制御信号S441,S442が出力される周期を計測することで、偏差の補正が可能となり、測位精度が向上される。また、偏差の補正が可能になれば、測位可能な範囲が拡大される。測位可能な範囲を拡大するためには、通信距離が長い低い伝送速度での通信が必要となる。低い伝送速度では、プリアンブル長が長いため、計測する時間差Tmeasが長くなり、周波数偏差に起因する誤差が増す。偏差の補正により、この誤差を低減でき、低い伝送速度での測位が可能となり、測位範囲を拡大することができる。また、周波数偏差の大きい安価な水晶発振子の使用が可能となり、コストが削減される。
【0110】
さらに、この実施例の周波数偏差計測ユニットは、測位測距システムのみならず、周波数偏差の計測結果を利用した送受信装置の構成機器のメンテナンスにも使用することができる。
【実施例3】
【0111】
次に、本発明の第3の実施例について、図16ないし図19で説明する。この実施例の受信装置は、第1の実施例に第2の実施例の周波数偏差計測ユニットの機能を追加したものである。図16は、時間差計測機能および偏差計測機能を備えたベースバンド部440の構成を示す図である。図17は、時間差・偏差計測部(TD&FDMM)1310の一例の構成を示す図である。
【0112】
図16、図17において、時間差および偏差計測部(TD&FDMM)1310には、サンプリングクロックS435D、サンプリングタイミング制御信号S441,S442、SFD検出信号S551およびデータ終了信号S552が入力され、測定された時間差S444aおよび偏差S444bが出力される。
【0113】
時間差・偏差計測部1310はカウンタ610、レジスタ620、遅延部630、時間差計算部640、偏差計算部1240から構成される。SFD検出信号S551により、カウンタ610a〜cのカウント値をレジスタ652a〜cに記憶し、カウント値をリセットする。また、データ終了信号S552により、レジスタ652d〜fにカウント値を記憶する。
【0114】
時間差計算部640では、式(3)に従い、レジスタ652a〜cの値を用いて時間差Tmeasが計算される。偏差計算部では、式(6)に従い、レジスタR52d〜fの値を用いてクロックの偏差が算出され、それぞれ上位レイヤに出力される。
【0115】
上位レイヤあるいは測位サーバは、受信時間差Tmeasのクロック偏差による誤差の補正を行うクロック偏差補正ユニットを備えている。測位サーバでは、各基地局120が計測した受信時間差Tmeasを用いてノード100の位置を算出する。
【0116】
図18は、この実施例の測位・測距システムにおける信号の送受信の概要を示すシーケンス図であり、図19は測位測距処理の全体のフローチャートを示す図である。
【0117】
ノードは、位置計算を希望する任意の時刻に、周辺の基準局110と基地局120に対して測位信号S101を含む伝送信号を送信する(S1901)。基準局110は、測位信号を受信した後、基準信号S111含む伝送信号を送信する(S1902)。各基地局120は、伝送信号例えば測位信号S101を受信したとき、この測位信号とサンプリングクロックとの同期捕捉を行う。同期捕捉が確立された後、復調・同期追跡を行う。各基地局は、同期捕捉、復調・同期追跡などの伝送信号の受信処理と並行して、式(3)に従って測位信号S101と基準信号S111の受信時間差Tmeasの計測処理を行い、さらに、式(6)に従い、クロックの偏差を算出する(S1903)。これらの計測処理の結果に基づく受信時間差Tmeasとクロックの偏差を各基地局からサーバ130へ送信する(S1904、S1905)。サーバ130は、これらの情報と、サーバが持つデータベースに記録されている情報とから、各基地局の受信時間差Tmeasの偏差を補正し(S1906)、ノードの座標を算出して測位・測距を行う(S1907)。
【0118】
以上のように、受信時間差Tmeasおよび偏差を、サンプリングクロックS435Dおよびサンプリングタイミング制御信号S441,S442のカウント数から算出する。これにより、高精度な時間差計測および測位を、低消費電力、小型かつ低コストな装置で行うことができる。
【0119】
また、受信装置に標準で測位機能を搭載することが可能となる。すなわち、受信機能を持つ全てノードが測位用基地局になることができ、柔軟な測位システムが形成される。
【0120】
このように、第3の実施例によれば、基地局相互のクロック偏差の補正を行うことにより、時間差計測の誤差を低減でき、低い伝送速度での測位が可能となり、測位範囲を拡大することができる。また、周波数偏差の大きい安価な水晶発振子の使用が可能となり、コストが削減される。
【0121】
ここまでは、図1に示すような、ノード100、基準局110、基地局120、測位サーバ130から構成されるシステムについて説明を行ったが、本発明に係る時間差計測方式および偏差計測方式は、構成の異なる他のシステムにおいても効果を発揮する。
【0122】
例えば、二つの通信装置間の距離を測る場合にも、本発明に係る方法が有効である。第1の通信装置が第2の通信装置に測位信号を送信し、測位信号を受信した第2の通信装置が応答信号を第1の通信装置に送信する場合に、第1の通信装置が測位信号を送信してから、応答信号を受信するまでの時間を計測することで距離は算出される。本発明に係る受信装置を用いれば、この時間差をクロックおよび該クロックの制御信号から計測することができ、二つの通信装置間の距離が高精度に算出される。
【0123】
また、上記のように計測した時間には、第2の通信装置での処理時間が含まれているため、二つの通信装置のクロックに偏差が存在する場合、距離算出時に誤差要因となる。本発明に係る方法で、偏差を計測し、補正することで、測定された距離の誤差は低減される。
【実施例4】
【0124】
また、基地局における受信装置の一例として、受信インパルス列をパルス繰返し周期でアナログデジタル変換する装置を用いて説明を行ってきたが、本発明に係る時間差計測方法および偏差計測方法はこの装置に限られるものではない。
【0125】
例えば、本発明の第4の実施例の測位測距システムとして、テンプレート波形と受信信号との相関をとり同期を捕捉する方式の通信システムに、第1の実施例ないし第3の実施例と同様な、時間差および偏差計測方式の受信装置を採用することは有効である。
【0126】
図20に、本発明の実施例に係る受信装置200の構成例を示す。受信装置は、テンプレート波形発生部202と、このテンプレート波形を発生させるタイミング(位相)をシフトさせるタイミングシフト部203と、このテンプレート波形とアンテナ210を介して受信した受信信号との相関をとる相関器204と、この相関部の出力信号をアナログデジタル変換するA/D変換器205と、このA/D変換のタイミングを与えるサンプリングクロック生成器201と、擬似ランダム符号生成部(図示略)を備えている。さらに、ベースバンド部(BBM)206は、同期捕捉、同期追跡機能207及び偏差計測部(TD&FDMM)208を備え、タイミングシフト機能により受信信号とテンプレート波形との同期の捕捉および同期の追跡を行い、さらにクロック偏差の補正を行ない、位置ないしは距離の計測を行う。
【0127】
テンプレート波形発生部202では、通信システムの送信側で信号の拡散に使用した擬似ランダム符号を用いて、テンプレート波形を生成する。相関器204にてこのテンプレート波形と受信信号との相関をとり、A/D変換器205を経てベースバンド部(BBM)206に送る。同期捕捉・同期追跡部207では、テンプレート波形の発生タイミングを制御しながら、受信信号とテンプレート波形との相関性が最も高い時間を検出する。以後、上記相関が高く維持されるように、テンプレート波形を発生させるタイミングを制御する。
【0128】
同期捕捉、同期追跡部207と時間差および偏差計測部(TD&FDMM)208は、実施例3で説明したような、テンプレート波形の位相をシフトさせる同期捕捉、同期追跡及び、受信時間差計測、あるいは偏差計測機能を有している。これにより、時間差および偏差計測部(TD&FDMM)208において、タイミングシフト部203を制御する信号およびA/D変換器のサンプリングクロックの数をカウントすることで、高精度な時間差計測および偏差計測が可能となる。
【0129】
本実施例によれば、低消費電力、小型かつ低コストな装置で、高精度な時間差計測およびクロック偏差の補正が可能となり、高精度な測位が実現される。
【実施例5】
【0130】
なお、ここまで、異なる送信装置からの伝送信号の時間差計測方法の説明を行なってきたが、本発明に係る時間差計測方法はこれに限るものではない。例えば、第1の伝送信号と第2の伝送信号が同一の送信装置から送信された場合に、第1の実施例ないし第3の実施例と同様な、時間差および偏差計測方式の受信装置を採用することは有効である。
【0131】
この場合、受信装置において計測した時間差は、送信装置が第1の伝送信号を送信した後、第2の伝送信号を送信するまでに移動した距離に対応する。すなわち、同一の送信装置から送信された第1の伝送信号と第2の伝送信号を本発明に係る受信装置で受信することで相対的な距離の変化ないし位置の変化を計測することが可能となる。さらに、本発明に係る偏差計測方式によってクロックの周波数偏差の補正を行なうことで、高精度な計測が可能となる。
【符号の説明】
【0132】
100 …… ノード(NOD)
110 …… 基準局(RS)
120 …… 基地局(AP)
130 …… 測位サーバ(PS)
140 …… インターネット(INT)
S101 …… 測位信号
S111 …… 基準信号
310 …… プリアンブル
320 …… フレーム開始部(SFD)
330 …… ヘッダ
340 …… データ
410 …… アンテナ(ANT)
420 …… RFフロントエンド部(RFF)
430 …… A/D変換部(ADM)
440 …… ベースバンド部(BBM)
S443 …… 受信データ
S444 …… 測位データ
421 …… ローノイズアンプ(LNA)
422 …… ミキサ(MIX)
423 …… π/2位相シフタ(QPS)
424 …… クロック発生器(CLK)
425 …… ローパスフィルタ(LPF)
426 …… 可変ゲインアンプ(VGA)
431 …… A/D変換器(ADC)
433 …… サンプリングクロック生成部(SCG)
S435 …… サンプリングクロック
510 …… マッチトフィルタ部(MFM)
520 …… 同期捕捉部(TRPM)
530 …… データ保持タイミング制御部(DLTCTL)
540 …… データ保持部(DLM)
550 …… 復調部(DEMM)
560 …… 同期追跡部(TRCKM)
570 …… サンプリングタイミング制御部(STCTL)
580 …… 時間差計測部(TDMM)
S551 …… SFD検出信号
S444a …… 測定時間差Tmeas
610 …… カウンタ(CNT)
620 …… レジスタ(REG)
630 …… 遅延部(D)
640 …… 時間差計算部(TDCAL)
810 …… サンプリングクロックがパルスのピークよりも進んでいる状態
820 …… サンプリングクロックがパルスのピークよりも遅れている状態
830 …… サンプリングクロックがパルスのピークと一致している状態
1110 …… 偏差計測部(FDMM)
S552 …… データ終了信号
S444b …… 測定偏差
1240 …… 周波数偏差計算部(FDCAL)
1310 …… 時間差&偏差計測部(TD&FDMM)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信装置が送信した伝送信号を第2の通信装置で受信する場合に、
上記第2の通信装置のクロック信号の位相を変化させるシフト信号を生成して上記伝送信号と上記クロック信号との同期追跡を行い、上記クロック信号と上記シフト信号を用いて、上記第1の通信装置のクロックと上記第2の通信装置のクロックとの周波数偏差を計測する機能を備えたことを特徴とする周波数偏差計測ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の周波数偏差計測ユニットを備え、送信装置からの伝送信号を受信する受信装置であって、
上記伝送信号を受信する受信部と、
上記伝送信号をアナログデジタル変換するA/D変換部と、
上記A/D変換部がアナログデジタル変換するタイミングの位相をシフトさせる位相シフト部と、
周波数偏差計測ユニットとを有し、
上記周波数偏差計測ユニットにおいて、上記位相シフト部にて位相シフトさせた値を用いて、第1の伝送信号と第2の伝送信号との受信時間差を計測する、ことを特徴とする受信装置。
【請求項3】
請求項2記載の受信装置により構成される基地局と、測位信号を含む伝送信号を送信するノードと、基準信号を含む伝送信号を送信する少なくとも1つの基準局とを備え、上記基地局で上記伝送信号を受信する測位測距システムであって、
上記第1の通信装置が基準信号を送信する基準局であり、上記第2の通信装置が上記基準信号を受信する複数の基地局であり、
上記第2の通信装置が、
上記基準局のクロックと、上記複数の基地局のクロックの周波数偏差をそれぞれ計測し、
上記複数の基地局間のクロックの周波数偏差を補正する、ことを特徴とする測位測距システム。
【請求項4】
請求項3において、
上記第1の通信装置は、上記ノードが送信した上記測位信号を受信した後、上記基準信号を上記第2の通信装置に送信するように構成されており、
上記第2の通信装置が、上記測位信号を受信してから上記基準信号を受信するまでの時間差、および、上記第1の通信装置と上記第2の通信装置のクロックの周波数偏差を計測し、該時間差、該周波数偏差および上記第1の通信装置と上記第2の通信装置との位置情報から、上記ノードの位置情報を算出するように構成されていることを特徴とする測位測距システム。
【請求項5】
請求項3において、
上記伝送信号を受信する複数の基地局と、上記複数の基地局とネットワークで接続されたサーバとを有する測位測距システムであって、
上記各基地局が、
クロック信号の発生源と、上記クロック信号の位相を変化させるシフト信号を生成して上記伝送信号と上記クロック信号の同期捕捉を行う同期捕捉ユニットと、上記クロック信号と上記シフト信号とを用いて上記測位信号と上記基準信号とを受信した時間差を計測する時間差計測ユニットと、
上記クロック信号の位相を変化させるシフト信号を生成制せ死して上記伝送信号と上記クロック信号の同期追跡を行う同期追跡ユニットと、上記クロック信号と上記シフト信号とを用いて上記基準信号と上記クロック信号との周波数偏差を計測する周波数偏差計測ユニットとを有し、
上記サーバが、上記複数の基地局が計測した上記時間差および上記周波数偏差を用いて上記ノードの位置を算出する位置計算ユニットを有することを特徴とする測位測距システム。
【請求項6】
請求項2に記載の受信装置を備える第1の通信装置と、第1の通信装置が送信した測位信号を受信した後、基準信号を第1の通信装置に送信する第2の通信装置を有し、
上記第1の通信装置が、上記測位信号を送信してから上記基準信号を受信するまでの時間差、および、上記第1の通信装置と上記第2の通信装置のクロックの周波数偏差を計測し、
該時間差および該周波数偏差を用いて上記第1の通信装置と上記第2の通信装置との距離を算出する位置計算ユニット、とを有することを特徴とする測位測距システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−180148(P2011−180148A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100768(P2011−100768)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2005−261852(P2005−261852)の分割
【原出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】