受信装置
【課題】CN比が低い環境下においても受信特性を向上したい。
【解決手段】UW相関部32は、予めUWを保持しており、受信帯域制限フィルタ30から出力された受信信号とUWとの相関処理を実行する。シンボルデータ抽出部34は、順次入力した相関値のピークをバーストタイミングとして検出する。変調成分除去部36は、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボルのうち、UWが含まれた区間の系列から、UWの成分を除去する。周波数オフセット補正部38は、無変調化UWシンボルを使用することによって、周波数オフセットを推定する。搬送波再生部40は、周波数オフセット補正部38において補正した無変調化UWシンボルをもとに搬送波を再生する。復調部60は、搬送波再生部40において再生した搬送波によって、周波数オフセット補正部38において補正した抽出シンボルを復調する。
【解決手段】UW相関部32は、予めUWを保持しており、受信帯域制限フィルタ30から出力された受信信号とUWとの相関処理を実行する。シンボルデータ抽出部34は、順次入力した相関値のピークをバーストタイミングとして検出する。変調成分除去部36は、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボルのうち、UWが含まれた区間の系列から、UWの成分を除去する。周波数オフセット補正部38は、無変調化UWシンボルを使用することによって、周波数オフセットを推定する。搬送波再生部40は、周波数オフセット補正部38において補正した無変調化UWシンボルをもとに搬送波を再生する。復調部60は、搬送波再生部40において再生した搬送波によって、周波数オフセット補正部38において補正した抽出シンボルを復調する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関し、特に受信信号を処理する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル無線通信の受信装置は、信号を受信すると、一般的に、受信した信号から、タイミングの検出、周波数オフセットの推定、搬送波再生等を実行する。また、受信装置は、検出したタイミングによるシンボルの特定、周波数オフセットの補正、再生した搬送波による復調等を実行することによって、受信した信号に含まれたデータを抽出する(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−145921号公報
【非特許文献1】山本平一、加藤修三、TDMA通信、日本、電子情報通信学会、平成元年4月、p.76−89
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
受信装置における受信特性は、タイミングの検出精度、周波数オフセットの推定精度、搬送波の再生精度等によって決定される。また、ディジタル無線通信が衛星通信に適用される場合、受信装置において受信される信号のCN比は、一般的に低く、雑音成分の大きい環境下において、タイミングの検出、周波数オフセットの推定、搬送波再生等が実行される。そのため、CN比の低い環境下においても、タイミングの検出精度、周波数オフセットの推定精度、搬送波の再生精度等が高いことが必要とされる。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、CN比が低い環境下においても受信特性を向上する受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の受信装置は、複数のタイムスロットによって形成されたフレームが連続しており、割り当てられたタイムスロットの信号を受信する受信装置であって、割り当てられたタイムスロットにおいて、搬送波を再生する第1の搬送波再生部と、割り当てられたタイムスロット以外も含むようなフレームにおいて、搬送波を再生する第2の搬送波再生部と、第2の搬送波再生部において再生される搬送波あるいは第1の搬送波再生部において再生される搬送波を受信のために選択する選択部と、を備える。
【0006】
「搬送波を再生する」ことには、「搬送波に含まれた周波数オフセットを推定する」ことと、「搬送波に含まれた位相誤差を推定する」こととが含まれるが、ここでは、いずれか一方であってもよく、両方であってもよい。この態様によると、搬送波を再生するための期間を選択でき、柔軟な処理が実行可能であるので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。
【0007】
無線伝送路の変化の程度を測定する測定部をさらに備えてもよい。選択部は、測定部において測定した変化の程度に応じて、選択を実行してもよい。この場合、測定した変化の程度に応じて、搬送波を再生するための期間を変更するので、変化の程度に適した処理を実行できる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CN比が低い環境下においても受信特性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、基地局装置、衛星中継装置、端末装置にて構成される通信システムに関する。このような構成において、Forward Linkの信号は、基地局装置から送信され、衛星中継装置を経由して、端末装置に受信される。一方、Return Linkの信号は、端末装置から送信され、衛星中継装置を経由して、基地局装置に受信される。受信特性を向上させるためには、シンボルタイミングの推定精度、周波数オフセットの推定精度、搬送波の再生精度を向上させる必要がある。一方、前述のような通信システムにおいては、受信信号の強度が一般的に小さいので、精度の向上は困難である。このような課題に対して、本実施例に係る基地局装置や端末装置の受信部(以下、「受信装置」という)は、以下の処理を実行する。
【0011】
受信した信号は、前方部分に既知信号として、ユニークワード(UW)が含まれている。シンボルタイミングは、受信した信号とUWとの相関値に対して検出されたピークにもとづいて推定される。ここでは、受信した信号とUWとの相関値だけではなく、受信した信号と当該信号の遅延信号の差動値と、UWとUWの遅延信号の差動値との相関値も導出する。さらに遅延量を変えながら、複数種類の相関値も導出される。受信装置は、これらの相関値を合成することによって、信号強度を増加させた後に、合成した相関値のピークを検出する。
【0012】
また、周波数オフセットは、受信した信号と当該信号の遅延信号の差動値にもとづいて推定される。ここでは、遅延量を変えながら複数種類の差動値を導出し、それらを合成することによって、信号強度を増加させる。なお、受信装置は、合成する際の重み係数を調節する。
【0013】
搬送波は、ループフィルタにて、受信した信号に含まれた位相誤差が小さくなるように推定される。ここでは、受信した信号を記憶し、受信した信号の順方向に沿って位相誤差の制御を実行する後に、受信した信号の逆方向に沿っても位相誤差の制御を実行する。このような処理によって、制御期間を長くでき、かつループフィルタの帯域幅を狭くできるので、位相誤差の推定精度が向上される。
【0014】
以上の特徴に加えて、本実施例は、受信装置が端末装置に適用される場合に、端末装置の受信特性を向上させる。なお、受信装置は、基地局装置にも適用可能である。前述のバースト信号が複数連続することによってフレームが形成されており、このようなフレームが連続して配置されている。また、端末装置は、複数のバースト信号のうち、所定のバースト信号(以下、「対象バースト信号」という)を受信しなければならない。ここで、受信装置は、対象バースト信号のみにおいて搬送波を再生してもよいし、対象バースト信号以外のバースト信号を含むようなフレーム全体において搬送波を再生してもよい。後者では、搬送波再生のための観測期間が長くなるので、雑音の影響を低減できる。一方、伝送路特性の急激な変動が生じた場合、後者では、過去の伝送路特性が反映されるので追従できない。しかしながら、前者では、伝送路特性の急激な変動に追従可能であるが、雑音の影響の低減効果が小さい。そのため、本実施例に係る端末装置は、伝送路特性の変動の程度に応じて、搬送波再生期間を切りかえる。
【0015】
本実施例の説明を明瞭にするために、ここでは、1.全体構成、2.タイミング検出、3.周波数オフセット補正、4.搬送波再生、5.動作、6.端末装置での処理の順に説明を行う。
【0016】
1.全体構成
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、基地局装置10、衛星中継装置12、端末装置14と総称される第1端末装置14a、第2端末装置14bを含む。
【0017】
基地局装置10と端末装置14は、衛星中継装置12を介して通信を実行する。前述のごとく、基地局装置10から衛星中継装置12を介して端末装置14へ至る経路がForward Linkであり、端末装置14から衛星中継装置12を介して基地局装置10へ至る経路がReturn Linkである。なお、Forward LinkとReturn Linkとは、異なった周波数を使用しているので、通信システム100では、FDD(Frequency Division Duplex)が使用される。さらに、基地局装置10と衛星中継装置12との間の無線回線は、Feeder Linkと呼ばれ、衛星中継装置12と端末装置14との間の無線回線は、Service Linkと呼ばれている。また、両者には、異なる周波数が使用される。また、基地局装置10は、複数の端末装置14のそれぞれに対してタイムスロットを割り当てることによって、複数の端末装置14との通信を実行する。
【0018】
つまり、通信システム100では、TDMA(Time Division Multiple Access)が使用される。衛星中継装置12は、基地局装置10と端末装置14との通信を中継する。つまり、衛星中継装置12は、基地局装置10から受信した信号に対して、増幅および周波数変換を実行した後に端末装置14へ送信する。また、衛星中継装置12は、端末装置14から受信した信号に対して、増幅および周波数変換を実行した後に基地局装置10へ送信する。このような通信システム100において、無線伝送路の距離が長いので、基地局装置10および端末装置14において受信される信号の強度は小さくなる。
【0019】
図2(a)−(d)は、通信システム100において使用されるフレームの構成を示す。図2(a)は、Forward LinkおよびReturn Linkでの複数のフレームの構成を示す。図示の「Frame#n−1」、「Frame#n」、「Frame#n+1」のごとく、複数のフレームが連続して配置されている。図2(b)は、ひとつのフレームの構成を示す。図示の「Slot#0」、「Slot#1」、「Slot#m−1」のごとく、複数のタイムスロットが連続して配置されている。つまり、フレームは、複数のタイムスロットによって構成されている。
【0020】
図2(c)は、Forward Linkの場合のスロット構成を示す。スロットの先頭部分に「UW」が配置され、それに続いて「情報データ」が配置される。図2(d)は、Return Linkの場合のスロット構成を示す。スロットの先頭部分に「Guard Time」、「UW」が配置され、それらに続いて「情報データ」が配置されるバースト信号となる。つまり、タイミング同期や周波数同期用のためのプリアンブルが配置されない。なお、図示しないが、図2(c)および(d)の「情報データ」の領域には、「PILOT」シンボルが挿入される。「PILOT」シンボルは、固定シンボル周期あたりに1シンボル挿入される。
【0021】
図3は、本発明の実施例に係る受信装置20の構成を示す。受信装置20は、RF部22、ベースバンド部24、制御部26を含む。受信装置20は、基地局装置10および端末装置14に備えられた受信機能の部分に相当する。
【0022】
RF部22は、アンテナを介して図示しない衛星中継装置12にて中継された図示しない基地局装置10からの送信信号を受信する。ここで、受信する信号のスロット構成は、図2(c)あるいは(d)に示されている。RF部22は、受信した信号の周波数を無線周波数から中間周波数へ変換する。また、RF部22は、中間周波数の信号に対して、直交検波を実行することによって、ベースバンドの信号を生成する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分とを含むので、ふたつの信号線によって示されるべきであるが、ここでは、図面を明瞭にするためにひとつの信号線によって示されるものとする。また、RF部22は、ベースバンドの信号に対して、アナログ−デジタル変換を実行し、変換したデジタル信号をベースバンド部24に出力する。以下では、説明の便宜上、変換されたデジタル信号も受信信号というものとする。
【0023】
ベースバンド部24は、RF部22から受けつけた受信信号に対して、復調および復号を実行する。また、ベースバンド部24は、復調および復号に付随した処理も実行する。以下では、付随した処理として、特に、タイミング検出、周波数オフセット補正、搬送波再生を後述する。また、端末装置14における搬送波再生の処理も後述する。制御部26は、受信装置20におけるタイミング等を制御する。
【0024】
図4は、ベースバンド部24の構成を示す。ベースバンド部24は、受信帯域制限フィルタ30、UW相関部32、シンボルデータ抽出部34、変調成分除去部36、周波数オフセット補正部38、搬送波再生部40、UW識別部42、フレーム同期処理部44、シンボル軟判定部46、Turbo復号部48、デスクランブル部50、CRCチェック部54、CNR測定部58、復調部60を含む。
【0025】
受信帯域制限フィルタ30には、図2(c)および(d)のごとく、一部の区間に既知信号としてのUWが含まれた信号が入力される。ここでは、受信帯域制限フィルタ30は、低域通過特性を有しており、低域通過特性の遮断周波数よりも高い周波数の成分を低減する。UW相関部32は、予めUWパターンを保持しており、受信帯域制限フィルタ30から出力された受信信号とUWとの相関処理を実行する。UW相関部32は、例えば、マッチドフィルタの構成を有している。UW相関部32は、相関処理によって導出した相関値を順次出力する。
【0026】
シンボルデータ抽出部34は、一方において、UW相関部32から相関値を順次入力し、他方において、受信帯域制限フィルタ30から出力された信号とを入力する。また、シンボルデータ抽出部34は、順次入力した相関値のピークをスロットタイミングとして検出する。ここで、スロットタイミングとは、図2(c)および(d)に示されたUWの先頭タイミングに相当する。また、シンボルデータ抽出部34は、検出したバーストタイミングをもとに、受信帯域制限フィルタ30から出力された信号より、シンボルを抽出する。つまり、シンボルデータ抽出部34は、UW相関部32において導出した相関値をもとに検出したタイミングによって、ベースバンド部24に入力した信号からシンボルを抽出する。
【0027】
変調成分除去部36は、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボルであって、かつ受信信号のうち、UWが含まれた区間の系列から、予め記憶されているUWパターンで逆変調することで、変調成分を除去する。つまり変調成分除去部36は、受信信号のうちのUWの部分から変調成分を除去する。ここで、UWは、π/4シフトQPSKによって変調されているものとする。そのため、変調成分除去部36は、シンボルからπ/4シフトを除去した後に、QPSKの変調成分を除去する。以上の処理によって、変調成分除去部36から出力される信号は、位相誤差の成分に相当する。
【0028】
周波数オフセット補正部38は、変調成分除去部36において無変調化されたUWシンボル(以下、「無変調化UWシンボル」という)を使用することによって、周波数オフセットを推定する。なお、周波数オフセットの推定方法についての詳細は後述する。周波数オフセット補正部38は、推定した周波数オフセットによって、変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルを補正するとともに、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボル(以下、「抽出シンボル」という)を補正する。ここで、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボルは、スロット内の全体を対象とする。周波数オフセット補正部38は、補正した無変調化UWシンボルを搬送波再生部40に出力し、補正された抽出シンボルを復調部60に出力する。
【0029】
搬送波再生部40は、周波数オフセット補正部38において補正した無変調化UWシンボルをもとに搬送波を再生する。なお、搬送波再生方法についての詳細は後述するが、搬送波再生部40は、ループフィルタを含んだ構成となっている。また、搬送波再生部40は、UWの期間の終了後、PILOTシンボルを使用しながら搬送波を再生する。搬送波再生部40は、再生した搬送波を復調部60に出力する。復調部60は、搬送波再生部40において再生された搬送波によって、周波数オフセット補正部38において補正した抽出シンボルを復調する。復調には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、復調部60は、復調したシンボルをUW識別部42およびシンボル軟判定部46に出力する。
【0030】
UW識別部42は、復調部60からの復調されたシンボルから、受信信号中のUWの部分を識別する。フレーム同期処理部44は、UW識別部42においてUWの部分が識別された場合に、そのタイミングをフレーム同期タイミングとして、図示しない制御部26に出力する。制御部26は、フレーム同期タイミングを上位レイヤの処理に使用する。シンボル軟判定部46は、復調部60からの復調されたシンボルを軟判定し、Turbo復号部48は、軟判定されたシンボルを使って復号する。ここで、図示しない送信装置においてTurbo符号化がなされているものとする。デスクランブル部50は、復号されたシンボルをデスクランブルする。デスクランブル部50は、デスクランブルの結果を図示しない制御部26に出力する。
【0031】
CNR測定部58は、シンボル軟判定部46おいて軟判定されたシンボルをもとに、CNRを測定する。CNR測定部58は、測定したCNRを図示しない制御部26に出力する。CRCチェック部54は、Turbo復号部48において復号されたシンボルに対して、CRCチェックを実行する。
【0032】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0033】
2.タイミング検出
前述のごとく、ベースバンド部24は、UW相関部32において導出した相関値をもとに、シンボルデータ抽出部34においてシンボルタイミングを検出する。このようなタイミング検出の精度の悪化要因は、ノイズおよび周波数オフセットによって、相関値に誤差が含まれることである。そのため、ここでは、周波数オフセットを伴う低C/Nの受信時のタイミング検出精度を向上させることを目的とする。
【0034】
図5は、UW相関部32の構成を示す。UW相関部32は、CNR測定部80、周波数オフセット推定部82、基本相関器84と総称される第1基本相関器84a、第2基本相関器84b、第Z基本相関器84z、積算部86、差動相関器88と総称される第1差動相関器88a、第2差動相関器88b、第K差動相関器88k、合成部90を含む。
【0035】
基本相関器84は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号と、予め記憶したUWパターンとの相関処理を実行することによって、相関値を導出する。一般的に、相関処理は、UW全体に対して実行されており、タイミング検出は、相関値の最大値をしきい値と比較することによって実現される。しかしながら、本実施例では、UWが含まれた区間を複数の部分区間に分割し、複数の部分区間のそれぞれに対応するように基本相関器84が複数配置される。つまり、各基本相関器84は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号と、対応した部分区間でのUWとの部分的な相関値を導出する。ここで、UWのシンボル数が「N」である場合に、「N」シンボルを「D」個の部分区間に分割すると、分割された各部分区間の相関長は「L」シンボルになるとする。
【0036】
積算部86は、複数の基本相関器84のそれぞれにおいて導出した部分的な相関値を積算することによって、相関値を導出する。一般的に相関器の構成のように相関長が長ければ、周波数オフセットの影響によって、相関長の間にわたって受信信号とUWシンボルとの乗算結果が位相回転し、位相回転による相関値の低下を招く。一方、本実施例の構成のように、ひとつの基本相関器84における相関長を短くすることにより、相関長あたりの位相回転量を小さくすることができるので、相関長あたりの相関値の低下を抑えることができる。
【0037】
差動相関器88は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号と、当該受信信号を遅延させた信号との差動値(以下、「差動信号」という)を導出する。また、差動相関器88は、UWと、遅延させたUWとの差動値(以下、「差動UW」という)を予め保持する。ここで、差動信号と差動UWとの遅延量は同一である。また、差動相関器88は、差動信号と差動UWとの相関値を導出する。ここで、図示のごとく、第1差動相関器88aから第K差動相関器88kまで、差動相関器88はK個備えられており、各差動相関器88の遅延量は、互いに異なっている。例えば、第1差動相関器88aは、1シンボル遅延であるが、第2差動相関器88bは、2シンボル遅延である。
【0038】
つまり、第1差動相関器88aは、受信信号を1シンボル差動検波した後にシフトレジスタに逐次格納し、UWを1シンボル差動検波した結果との相関処理を実行する。このように複数の差動相関器88は、遅延量を変えながら、複数種類の相関値を導出する。このように、差動相関器88による相関処理は、差動検波結果の積分を実行するので、周波数オフセットによる相関値の低下を抑制できる。
【0039】
合成部90は、差動相関器88において導出した複数種類の相関値と、基本相関器84および積算部86において導出した相関値とを合成する。つまり、UW相関部32は、複数の相関値を組み合わせることによって、信号強度を増加させる。その結果、受信信号のC/Nが低い場合であっても、相関値に含まれる誤差は低減される。また、合成部90での相関値は、異なる相関特性の和として得られるので、相関ピーク位置以外で高い相関値を生じるような自己相関特性を有するUWシンボルパターンの場合であっても、相関ピーク位置以外での誤検出確率の抑制が可能になる。合成部90は、合成した相関値を図示しないシンボルデータ抽出部34に出力する。
【0040】
周波数オフセット推定部82は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号に対する周波数オフセットを推定する。周波数オフセットの推定には、公知の技術や、後述する技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。また、基本相関器84は、周波数オフセット推定部82において推定した周波数オフセットの値に応じて、部分区間の長さ、つまり相関処理の際の相関長を調節する。つまり、基本相関器84は、推定された周波数オフセット量に応じた周波数オフセット耐性を与えるために、分割数Dを可変制御する。例えば、周波数オフセットの値が大きくなれば、分割数Dが大きくなり、周波数オフセットの値が小さくなれば、分割数Dが小さくなる。
【0041】
CNR測定部80は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号の強度を測定する。信号強度の測定には公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。合成部90は、CNR測定部80において測定した強度の値に応じて、積算部86と差動相関器88からの相関値のうち、合成の対象とする相関値の数を調節する。例えば、測定した信号強度が大きければ、合成部90は、積算部86からの相関値のみを選択する。また、測定した信号強度が小さくなるほど、合成部90は、合成の対象とすべき相関値の数を増加させる。
【0042】
図6は、基本相関器84の構成を示す。基本相関器84は、受信信号遅延部140、乗算部142、UW保持部144、加算部146、変換部148を含む。ここで、ひとつのシンボルあたりのサンプル数、つまりサンプリングレートは「M」とされる。
【0043】
受信信号遅延部140は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号を遅延させるシフトレジスタである。前述のごとく、受信信号のサンプリングレートは「M」であるので、受信信号遅延部140は、サンプリングレート「M」に対応するように配置されている。UW保持部144は、対応した部分期間におけるUWの部分を記憶する。乗算部142は、受信信号遅延部140にて遅延されたシンボルと、UW保持部144に保持されたUWのシンボルとを複素乗算する。加算部146は、乗算結果を加算する。変換部148は、加算部146での加算結果の大きさを部分的な相関値として導出する具体的には、加算結果の同相成分の2乗値と、加算結果の直交成分の2乗値とが加算される。
【0044】
図7は、第1差動相関器88aの構成を示す。第1差動相関器88aは、差動用遅延部110、UW遅延部112、乗算部114、乗算部116、受信信号遅延部118、差動UW保持部120、乗算部122、加算部124、変換部126を含む。なお、他の差動相関器88は、差動信号や差動UWを生成する際の遅延量が異なっているが、図7と同様の構成を有する。
【0045】
差動用遅延部110は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号を遅延させる。ここでは、Mサンプル遅延させる。なお、サンプリングレートは、シンボルレートよりも高速であるので、ひとつのシンボルに対応すべき複数のサンプルが差動用遅延部110にて遅延される。乗算部114は、差動用遅延部110において遅延された受信信号と、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号とを複素乗算する。その際、差動用遅延部110において遅延された受信信号に対して、複素共役演算がなされた後に乗算が実行されるので、乗算部114での乗算は、両者の差異を導出することに相当する。なお、ここでの差異が、前述の差動信号である。受信信号遅延部118は、乗算部114において導出した差動信号を遅延させる。ここで、受信信号遅延部118は、M(N−1)サンプルにわたって遅延を行う。
【0046】
UW遅延部112は、UWを1シンボル遅延させる。乗算部116は、UWとUW遅延部112において遅延されたUWとを複素乗算する。その際、UW遅延部112において遅延されたUWに対して、複素共役演算がなされた後に乗算が実行されるので、乗算部116での乗算は、両者の差異を導出することに相当する。なお、ここでの差異が、前述の差動UWである。差動UW保持部120は、乗算部116において導出した差動UWを遅延させる。ここで、差動UW保持部120は、N−1シンボルにわたって遅延を行う。乗算部122は、受信信号遅延部118にて遅延された差動信号と、差動UW保持部120に保持された差動UWとを複素乗算する。加算部124は、乗算結果を加算する。変換部126は、加算部124での加算結果の大きさを部分的な相関値として導出する具体的には、加算結果の同相成分の2乗値と、加算結果の直交成分の2乗値とが加算される。
【0047】
3.周波数オフセット補正
周波数オフセット補正部38は、周波数オフセットを導出するが、一般的に受信信号のC/Nが低い場合、雑音の影響が大きくなるので、周波数オフセットの推定精度が低くなる。また、周波数オフセットの推定精度が低くなると、受信装置20の受信特性が悪化する。そのため、ここでは、低C/N受信時の周波数オフセット推定性能の向上を目的とする。
【0048】
図8は、周波数オフセット補正部38の構成を示す。周波数オフセット補正部38は、第1オフセット推定部230、第2オフセット推定部232、第j+1オフセット推定部234、第Jオフセット推定部236、CNR測定部200、ウエイト制御部202、合成部204、回転部206、乗算部208、乗算部210を含む。また、第1オフセット推定部230は、第1遅延部160、第1乗算部162、第1加算部164、第1変換部166、第1調節部168を含み、第2オフセット推定部232は、第2遅延部170、第2乗算部172、第2加算部174、第2変換部176、第2調節部178を含み、第j+1オフセット推定部234は、第j+1遅延部180、第j+1乗算部182、第j+1加算部184、第j+1変換部186、第j+1調節部188を含み、第Jオフセット推定部236は、第J遅延部190、第J乗算部192、第J加算部194、第J変換部196、第J調節部198を含む。
【0049】
第1オフセット推定部230は、図示しない変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルを受けつける。第1遅延部160は、受けつけた無変調化UWシンボルを1シンボル遅延する。第1乗算部162は、受けつけた無変調化UWシンボルと、第1遅延部160において遅延した無変調化UWシンボルとを複素乗算する。その際、遅延した無変調化UWシンボルの複素共役演算が実行される。第1乗算部162での乗算によって、1シンボルにわたる位相差が導出される。第1加算部164は、位相差を加算する。なお、ここでの加算は、ベクトル加算であるので、位相差の平均値の導出に相当する。第1変換部166は、第1加算部164での加算結果を複素数値から位相値に変換する。第1調節部168は、第1変換部166において変換した位相値を1シンボルにわたる位相回転量に変換する。当該位相回転量が、周波数オフセット量に相当する。
【0050】
第2オフセット推定部232、第j+1オフセット推定部234、第Jオフセット推定部236は、第1オフセット推定部230と同様の処理を実行する。しかしながら、第1オフセット推定部230における遅延量は、1シンボルであったのに対して、第2オフセット推定部232、第j+1オフセット推定部234、第Jオフセット推定部236のそれぞれにおける遅延量は、2シンボル、j+1シンボル、Jシンボルである。つまり、第1オフセット推定部230から第Jオフセット推定部236は、位相差を遅延量を変えながら複数種類導出する。
【0051】
なお、「J」の値は、シンボルレートに対する最大周波数オフセット量と想定される値から適切に設定されるべきである。第2遅延部170、第j+1遅延部180、第J遅延部190は、第1遅延部160に相当し、第2乗算部172、第j+1乗算部182、第J乗算部192は、第1乗算部162に相当し、第2加算部174、第j+1加算部184、第J加算部194は、第1加算部164に相当し、第2変換部176、第j+1変換部186、第J変換部196は、第1変換部166に相当し、第2調節部178、第j+1調節部188、第J調節部198は、第1調節部168に相当する。
【0052】
合成部204は、第1オフセット推定部230から第Mオフセット推定部236において導出した複数種類の周波数オフセット量を重みづけながら合成する。ここで、重みづけの際の重み係数は、後述するウエイト制御部202から受けつける。以上の処理によって、合成部204は、受信信号に含まれた周波数オフセットを推定する。つまり、第1オフセット推定部230から第Mオフセット推定部236は、位相回転量を検出するためのシンボル間隔を複数種類設定しながら、複数種類の周波数オフセットを推定し、合成部204は、推定した複数種類の周波数オフセット量に重み係数を乗じて合成する。
【0053】
以上の処理の結果、最終的な周波数オフセットが推定される。複数の周波数オフセットを合成することによって、最終的な周波数オフセットが導出される。位相回転量検出のための遅延時間が異なると、雑音によるランダム成分の振る舞いが異なるので、それぞれの推定精度が向上する。特に受信信号のC/Nが低い場合にはその効果が大きい。
【0054】
CNR測定部200は、図示しない変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルの強度を測定する。ここで、信号強度の測定には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。なお、CNR測定部200と同様の機能を有する構成要素が、受信装置20に含まれる場合、CNR測定部200は備えられなくてもよい。
【0055】
ウエイト制御部202は、第1オフセット推定部230から第Mオフセット推定部236より出力された複数の周波数オフセットを重みづける際の重み係数を導出する。ここで、ウエイト制御部202は、次のふたつの処理結果の組合せによって重み係数を導出する。ひとつの目の処理のために、ウエイト制御部202は、合成部204において既に推定した周波数オフセット量を受けつける。また、ウエイト制御部202は、受けつけた周波数オフセット量に近い遅延量のオフセット補正部を特定する。さらに、ウエイト制御部202は、特定したオフセット補正部から出力される周波数オフセットに対して、重みづけの際の重み係数の大きさを大きくする。
【0056】
ここで、既に推定した周波数オフセット量とは、例えば、前回のスロットのUW部に対して推定された周波数オフセット量に相当する。なお、初回の受信スロットのように、既に推定した周波数オフセット量が存在しない場合、ウエイト制御部202は、すべての周波数オフセットに対する重み係数の大きさを等しくする。ふたつ目の処理として、ウエイト制御部202は、CNR測定部200において測定した強度に応じて、複数種類の周波数オフセットにわたる重み係数の大きさの分布を調節する。
【0057】
例えば、CNR測定部200において測定したC/Nが大きければ、合成すべき周波数オフセットの数が少なくてもよいので、ウエイト制御部202は、ひとつの周波数オフセットに対する重み係数の大きさだけを大きくする。一方、CNR測定部200において測定したC/Nが小さければ、合成すべき周波数オフセットの数を大きくする必要があるので、ウエイト制御部202は、複数の周波数オフセットに対する重み係数の大きさを大きくする。
【0058】
回転部206は、合成部204において導出した周波数オフセットに応じて位相回転する信号を生成する。なお、回転部206では、受信信号に含まれた周波数オフセットが打ち消されるように、つまり逆回転になるように信号が生成される。乗算部208は、回転部206において生成された信号によって、図示しない変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルを位相回転させる。当該位相回転が、周波数オフセットの補正に相当する。また、乗算部210は、回転部206において生成された信号によって、図示しないシンボルデータ抽出部34からの抽出シンボルを位相回転させる。
【0059】
4.搬送波再生
前述の図2(c)−(d)のごとく、プリアンブルが配置されないスロット構成なので、情報データ部の受信特性を悪化させないためには、搬送波再生において、UW部での搬送波位相推定に十分な精度が必要になる。しかしながら、これまでの搬送波再生では、入力されるデータに対して逐次的に位相誤差が検出され、その誤差に応じてNCO(Numerically Controlled Oscillator)が制御される。そのため、ある程度処理が進んだ時刻において、再生された搬送波の精度が高くなっているが、Forward Linkの端末受信処理の開始時点である初回スロットにおいて、または、Return Linkの基地局受信処理における毎スロットのバースト信号先頭部分において、再生された搬送波の位相推定精度は高くない。ここでは、低C/N受信時の受信信号の先頭部分における搬送波再生の精度を向上させることを目的とする。
【0060】
図9は、搬送波再生部40の構成を示す。搬送波再生部40は、記憶部220、乗算部222、変換部224、ループフィルタ226、NCO228を含む。記憶部220は、図示しない周波数オフセット補正部38において補正した無変調化UWシンボルを受けつけ、それを記憶する。
【0061】
乗算部222は、記憶部220に記憶された無変調化UWシンボルと、NCO228からの再生搬送波とを複素乗算する。ここで、NCO228からの搬送波に対して、複素共役演算が乗算前になされる。乗算部222は、乗算結果を出力する。当該乗算結果が、搬送波に含まれる位相誤差に相当する。変換部224は、乗算部222から出力された乗算結果を複素数値から位相値に変換する。ループフィルタ226は、LPFの機能を有しており、変換部224からの信号を平滑化する役割を果たす。ループフィルタ226によって平滑化された位相誤差信号の大小に応じて、NCO228の位相回転量が制御される。これは、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルに含まれる位相誤差を小さくするように制御することに相当する。NCO228は、ループフィルタ226の制御にしたがって搬送波を再生し、出力する。
【0062】
図示しない制御部26は、搬送波再生時に、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルを順方向に使用した後に、逆方向にも使用するように命令を出力する。ここで、順方向とは、図2(c)−(d)のスロット構成において、先頭部分から後方部分へ向かう方向であり、逆方向とは、順方向とは反対に向かう方向である。具体的に、制御部26は、記憶部220に記憶された無変調化UWシンボルを先頭から順方向に読み出していき、乗算部222に出力する。無変調化UWシンボルの最後まで読み出すと、制御部26は、無変調化UWシンボルの最後から逆方向に読み出していく。以上の処理によって、搬送波を再生するために使用可能な無変調化UWシンボルの長さが長くなる。
【0063】
図10は、搬送波再生部40の動作概要を示す。縦軸が、再生された搬送波に含まれる位相誤差の量を示し、横軸が、無変調化UWシンボルの系列に相当する。左側が無変調化UWシンボルの先頭に近く、右側が無変調化UWシンボルの最後部に近い。つまり、左から右に向かう方向が、順方向であり、右から左に向かう方向が、逆方向である。まず、順方向の処理によって、UWの先頭時点での位相誤差θe0が、UWの最終シンボルの時点においてθe1になったとする。次に、NCO228の位相をθe1に保持したまま、残留周波数オフセット推定値も保持し、UWの最終シンボルからUWの先頭の方向に、処理が実行される。この時間的に反復した搬送波再生処理を実行することによって、UWの先頭部分の搬送波が推定される。
【0064】
ここでは、搬送波再生処理について、別の動作内容も説明する。受信信号のC/Nが十分に高い場合には、前記処理を一度実行すれば、十分な精度の搬送波が再生される。しかしながら、受信信号のC/Nが低い場合、ループフィルタ226の帯域を十分に狭くしなければ、十分な推定精度を得られない。この場合に、十分な推定精度を得るには、予め決められたUWのシンボル数では不足することが考えられる。
【0065】
ループフィルタ226の帯域が狭くなったことによるUWのシンボル数の不足は、反復処理の回数を増加させることによって補う。搬送波の位相が十分に推定できていない場合には、推定誤差に応じた位相誤差情報が得られるので、ループフィルタ226の帯域を十分に狭くして信頼性の高い位相誤差情報が抽出され、さらに反復処理を繰り返し行えば、低C/N時においてもUWの先頭における搬送波位相が高精度に推定される。つまり、制御部26は、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルを順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理を複数回繰り返し実行する。
【0066】
図11は、搬送波再生部40の別の動作概要を示す。図11は、図10と同様に示されているが、反復処理が複数回数実行されている。また、反復処理の実行回数に応じて、位相誤差がθe0、θe1、θe2、θe3の順に段階的に小さくなっている。
【0067】
5.動作
以上の構成による受信装置20の動作を説明する。送信側から送信された信号が受信されると、UW相関部32は、受信信号とUWとの相関処理を実行する。その際、UW相関部32は、基本相関器84および積算部86において相関値を導出するとともに、差動相関器88においても相関値を導出し、それらを合成部90において合成して最終的な相関値とする。なお、CNR測定部80および周波数オフセット推定部82での処理結果をもとに、基本相関器84での相関長および合成部90での合成数が調節される。
【0068】
シンボルデータ抽出部34は、UW相関部32から順次入力した相関値のピークをUW先頭タイミングとして検出する。変調成分除去部36は、UW先頭タイミングの検出後、UWの変調成分を除去し、無変調化UWシンボルを出力する。周波数オフセット補正部38は、無変調化UWシンボルをもとに周波数オフセットを導出する。その際、周波数オフセット補正部38は、第1オフセット推定部230から第Jオフセット推定部236のそれぞれにおいて周波数オフセットを導出し、それらを合成部204において重みづけしながら合成することによって、周波数オフセット値を推定する。また、CNR測定部200とウエイト制御部202によって重み係数が設定される。さらに、周波数オフセット補正部38は、推定した周波数オフセットによって、無変調化UWシンボルおよび受信信号シンボルデータを補正する。
【0069】
搬送波再生部40は、無変調化UWシンボルを記憶部220に記憶し、記憶した無変調化UWシンボルを順方向と逆方向に使用することによって、ループフィルタ226、NCO228に搬送波を再生させる。復調部60は、搬送波再生部40において再生した搬送波によって、周波数オフセット補正部38において補正された受信信号を復調する。
【0070】
6.端末装置での処理
通信システム100は、TDMA通信を実行しており、図2(b)に示されたように、複数の端末装置14間においてタイムスロットを排他的に使用する。また、各端末装置14は、基地局装置10からの送信信号を連続して受信する。この性質を利用して、端末装置14は、ループフィルタ226での処理期間を長くするために、割り当てられたタイムスロットと他のタイムスロットが含まれたフレーム全体のUWを使用して周波数オフセットを推定し、ループフィルタ226による搬送波再生処理を実行する。
【0071】
このような場合には、NCO228の周波数や位相が、タイムスロット間にわたって引き継がれる。また、ループフィルタ226の時定数は非常に大きな値に設定される。それら結果、フェージングや雑音等の影響により、搬送波の同期が外れた場合に、同期外れを検出する時間、もしくは再同期に要する期間が長くなってしまう。ここでは、TDMA通信におけるForward Linkの受信性能の改善を目的とする。つまり、フレーム全体にわたった搬送波再生処理だけではなく、タイムスロットに限定した搬送波再生処理も実行することによって、フェージング等で同期が外れた場合に、同期外れの早期検出と再同期とが実現される。
【0072】
受信装置20は、これまでと同様に、図2(a)−(d)のごとく、複数のタイムスロットによって形成されたフレームが連続しており、割り当てられたタイムスロットを受信する。図3の制御部26は、受信したスロット信号をもとに、無線伝送路の変化の程度を測定する。制御部26は、無線伝送路の変化の程度として、ドップラー周波数を測定する。ドップラー周波数の測定には、公知の技術が使用されればよい。なお、無線伝送路の推定は、割り当てられていないタイムスロットにおいてなされてもよい。
【0073】
搬送波再生部40は、割り当てられたタイムスロットにおいて、搬送波を再生する。搬送波再生は、図9から図11にて説明したとおりになされればよいので、ここでは、説明を省略する。なお、搬送波再生部40は、スロットの開始タイミングにおいて、搬送波を新たに推定する。なお、周波数オフセット補正部38が、同様の処理を実行してもよい。つまり、ここでは、タイムスロットにて得られる周波数オフセット推定および搬送波位相推定結果のうち、割り当てられたタイムスロットにおいて得られる推定結果のみを搬送波再生部40や周波数オフセット補正部38の初期値に使用する。
【0074】
そのため、ループフィルタ226は、NCO228での過去の周波数、過去の位相情報を引き継がずに搬送波再生処理を実行する。その結果、同期外れの検出は、タイムスロットごとのCRCを確認することによって、直ちに実行される。また、同期外れ影響は後続のタイムスロットには伝搬しないので、次に割り当てられたタイムスロットでの再同期が可能である。以下では、説明の便宜上、このような処理を「スロット処理」という。
【0075】
また、搬送波再生部40は、割り当てられたタイムスロット以外も含むようなフレームにおいて、搬送波を再生する。ここで、ループフィルタ226は、NCO228での過去の周波数、位相情報を引き継ぎながら搬送波再生処理を実行する。以下では、説明の便宜上、このような処理を「フレーム処理」という。
【0076】
制御部26は、測定した変化の程度、例えば、ドップラー周波数に応じて、搬送波再生部40における処理として、「スロット処理」あるいは「フレーム処理」を受信のために選択する。ここで、制御部26は、しきい値を予め保持しており、しきい値とドップラー周波数とを比較する。例えば、ドップラー周波数がしきい値よりも大きければ、制御部26は、「スロット処理」を選択し、ドップラー周波数がしきい値以下であれば、制御部26は、「フレーム処理」を選択する。
【0077】
本発明の実施例によれば、組合せを変えながら複数種類の相関値を導出し、導出した複数種類の相関値を合成して、最終的な相関値を生成するので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、相関長を短くした部分的な相関値を合成することによって、相関値を導出するので、相関値に対する周波数オフセットの影響を小さくできる。また、差動信号に対する相関値を導出するので、相関値に対する周波数オフセットの影響を小さくできる。また、周波数オフセットの値に応じて、部分区間の長さを調節するので、相関値に含まれる誤差を低減できる。
【0078】
また、周波数オフセットの値が大きければ、部分区間の長さを短くするので、周波数オフセットの影響を小さくできる。また、周波数オフセットの値が小さければ、部分区間の長さを長くするので、より信頼性の高い相関結果が得られる。また、測定した強度の値に応じて、合成の対象とする相関値の数を調節するので、測定した強度の値において、相関値に含まれる誤差を低減できる。また、測定した強度の値が小さければ、合成の対象とする相関値の数を増加させるので、相関器出力の信頼性を向上できる。
【0079】
また、遅延量を変えながら複数種類の位相差を導出し、導出した複数種類の位相差を合成することによって、周波数オフセットを推定するので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、複数種類の位相差を合成するので、信号強度を増加できる。また、既に推定した周波数オフセット量に近い遅延時間に対応した重み係数を大きくするので、確からしい周波数オフセットの重みづけを大きくできる。また、確からしい周波数オフセットの重みづけを大きくするので、重み係数の精度を向上できる。また、測定した強度に応じて、複数種類の位相差にわたる重み係数の大きさの分布を調節するので、測定した強度に適した重み係数を決定できる。また、測定した強度が小さければ、多くの位相差を使用するように重み係数を制御するので、信号強度を増加できる。
【0080】
また、既知信号の変調成分を除去した系列を記憶した後に、当該系列を順方向および逆方向に使用しながら、位相誤差を小さくするための制御を実行するので、位相誤差を小さくするための制御の期間を長くでき、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、系列を順方向および逆方向に使用する処理を複数回繰り返すので、位相誤差を小さくするための制御の期間をさらに長くできる。また、搬送波を再生するための期間として、「フレーム処理」あるいは「スロット処理」を選択でき、柔軟な処理が実行可能であるので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、測定した変化の程度に応じて、搬送波を再生するための期間を変更するので、変化の程度に適した処理を実行できる。また、ドップラー周波数が大きければ、「スロット処理」を使用するので、同期が外れた場合でも再同期を容易に実行できる。また、ドップラー周波数が小さければ、「フレーム処理」を使用するので、処理期間を長くできる。
【0081】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0082】
本発明の実施例において、基本相関器84は、周波数オフセット推定部82において推定された周波数オフセットに応じて、分割数を変更するような制御を実行している。しかしながらこれに限らず例えば、基本相関器84は、受信処理の開始時点から経過した期間をもとに、分割数を変更してもよい。例えば、分割数が少なくなっていくような制御が実行される。通信システム100における受信装置20において、受信処理の開始直後から周波数同期処理が実行される場合、所定の期間が経過した後では、受信処理の開始時に比べて周波数オフセット量が小さくなることが予想される。周波数オフセット量が小さくなると、それに起因した位相回転量が小さくなるので、基本相関器84は、受信処理開始直後よりも分割数を小さくする。本変形例によれば、自動的に分割数が変更されるので、処理を簡易にできる。
【0083】
本発明の実施例において、搬送波再生部40は、ループフィルタ226を使用することによって、位相誤差を小さくするための制御を実行しており、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルを順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理を実行している。しかしながらこれに限らず例えば、無変調化UWシンボルを順方向および逆方向に使用した回数に応じて、ループフィルタ226の帯域を変更してもよい。例えば、搬送波再生部40は、回数が多くなるにしたがって、ループフィルタ226の帯域を狭くするように制御する。また、ループフィルタ226の時定数は、(1)UW部での反復処理、(2)反復処理後のUW部における順方向搬送波再生処理、(3)PILOTシンボル部のそれぞれに対して切りかえられてもよい。本変形例によれば、無変調化UWシンボルを順方向および逆方向に使用する処理の回数に応じて、ループフィルタの帯域を変更するので、位相誤差の収束の程度に適した帯域を使用できる。
【0084】
本発明の実施例において、受信装置20には、UW相関部32、周波数オフセット補正部38、搬送波再生部40の組合せが備えられている。しかしながらこれに限らず例えば、UW相関部32、周波数オフセット補正部38、搬送波再生部40のいずれかあるいは任意の組合せが、受信装置20に備えられていてもよい。その場合、備えられていない部分に対して、公知の技術が使用されればよい。本変形例によれば、受信装置20の構成の自由度を向上できる。
【0085】
実施例に記載された発明の特徴は、次の項目によって規定されてもよい。
(項目4−1)
一部の区間に既知信号が含まれた受信信号の系列を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列のうち、既知信号が含まれた区間の系列から、既知信号の変調成分を除去する除去部と、
前記除去部において既知信号の変調成分を除去した系列を記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶した系列に含まれる位相誤差を小さくするように制御することによって、搬送波を再生する搬送波再生部と、
前記搬送波再生部において再生した搬送波によって、前記入力部において入力した受信信号の系列を復調する復調部とを備え、
前記搬送波再生部は、前記記憶部において記憶した系列を順方向に使用した後に、逆方向にも使用しながら、位相誤差を小さくするための制御を実行することを特徴とする受信装置。
【0086】
(項目4−2)
前記搬送波再生部は、前記記憶部において記憶した系列を順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理を複数回繰り返し実行することを特徴とする(項目4−1)に記載の受信装置。
(項目4−3)
前記搬送波再生部は、ループフィルタを使用することによって、位相誤差を小さくするための制御を実行しており、前記記憶部において記憶した系列を順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理の回数に応じて、ループフィルタの帯域を変更することを特徴とする(項目4−2)に記載の受信装置。
【0087】
(項目2−1)
一部の区間に既知信号が含まれた受信信号の系列を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列と既知信号との相関処理を実行することによって、相関値を導出する第1の相関処理部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列と、当該系列を遅延させた系列との差動値と、既知信号と、遅延させた既知信号との差動値との相関処理を遅延量を変えながら実行することによって、別の相関値を複数種類導出する第2の相関処理部と、
前記第2の相関処理部において導出した複数種類の別の相関値と、前記第1の相関処理部において導出した相関値とを合成する合成部と、
前記合成部において合成した相関値をもとに検出したタイミングによって、前記入力部において入力した受信信号の系列を処理する処理部とを備え、
前記第1の相関処理部は、既知信号が含まれた区間を複数の部分区間に分割した場合に、複数の部分区間のそれぞれにおいて、受信信号の系列と、当該部分区間に対応した既知信号との部分的な相関値を導出した後に、導出した部分的な相関値を積算することによって、相関値を導出することを特徴とする受信装置。
【0088】
(項目2−2)
前記入力部において入力した受信信号の系列に対する周波数オフセットを推定する推定部をさらに備え、
前記第1の相関処理部は、前記推定部において推定した周波数オフセットの値に応じて、部分区間の長さを調節することを特徴とする(項目2−1)に記載の受信装置。
(項目2−3)
前記入力部において入力した受信信号の系列の強度を測定する測定部をさらに備え、
前記合成部は、前記測定部において測定した強度の値に応じて、相関値と複数種類の別の相関値のうち、合成の対象とする相関値の数を調節することを特徴とする(項目2−1)または(項目2−2)に記載の受信装置。
【0089】
(項目3−1)
一部の区間に既知信号が含まれた受信信号の系列を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列のうち、既知信号が含まれた区間の系列から、既知信号の変調成分を除去する除去部と、
前記除去部において既知信号の変調成分を除去した系列と、当該系列を遅延させた系列との位相差を遅延量を変えながら複数種類導出する導出部と、
前記導出部において導出した複数種類の位相差を重みづけながら合成することによって、前記入力部において入力した受信信号の系列に含まれた周波数オフセットを推定する推定部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【0090】
(項目3−2)
前記推定部は、既に推定した周波数オフセット量に近い遅延量の位相差に対して、重みづけの際の重み係数の大きさを大きくすることを特徴とする(項目3−1)に記載の受信装置。
(項目3−3)
前記入力部において入力した受信信号の系列の強度を測定する測定部をさらに備え、
前記推定部は、前記測定部において測定した強度に応じて、複数種類の位相差を重みづける際の複数種類の位相差にわたる重み係数の大きさの分布を調節することを特徴とする(項目3−1)または(項目3−2)に記載の受信装置。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】図2(a)−(d)は、図1の通信システムにおいて使用されるフレームの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る受信装置の構成を示す図である。
【図4】図3のベースバンド部の構成を示す図である。
【図5】図4のUW相関部の構成を示す図である。
【図6】図5の基本相関器の構成を示す図である。
【図7】図5の第1差動相関器の構成を示す図である。
【図8】図4の周波数オフセット補正部の構成を示す図である。
【図9】図4の搬送波再生部の構成を示す図である。
【図10】図9の搬送波再生部の動作概要を示す図である。
【図11】図9の搬送波再生部の別の動作概要を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
10 基地局装置、 12 衛星中継装置、 14 端末装置、 20 受信装置、 22 RF部、 24 ベースバンド部、 26 制御部、 30 受信帯域制限フィルタ、 32 UW相関部、 34 シンボルデータ抽出部、 36 変調成分除去部、 38 周波数オフセット補正部、 40 搬送波再生部、 42 UW識別部、 44 フレーム同期処理部、 46 シンボル軟判定部、 48 Turbo復号部、 50 デスクランブル部、 54 CRCチェック部、 58 CNR測定部、60 復調部、 100 通信システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関し、特に受信信号を処理する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル無線通信の受信装置は、信号を受信すると、一般的に、受信した信号から、タイミングの検出、周波数オフセットの推定、搬送波再生等を実行する。また、受信装置は、検出したタイミングによるシンボルの特定、周波数オフセットの補正、再生した搬送波による復調等を実行することによって、受信した信号に含まれたデータを抽出する(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−145921号公報
【非特許文献1】山本平一、加藤修三、TDMA通信、日本、電子情報通信学会、平成元年4月、p.76−89
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
受信装置における受信特性は、タイミングの検出精度、周波数オフセットの推定精度、搬送波の再生精度等によって決定される。また、ディジタル無線通信が衛星通信に適用される場合、受信装置において受信される信号のCN比は、一般的に低く、雑音成分の大きい環境下において、タイミングの検出、周波数オフセットの推定、搬送波再生等が実行される。そのため、CN比の低い環境下においても、タイミングの検出精度、周波数オフセットの推定精度、搬送波の再生精度等が高いことが必要とされる。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、CN比が低い環境下においても受信特性を向上する受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の受信装置は、複数のタイムスロットによって形成されたフレームが連続しており、割り当てられたタイムスロットの信号を受信する受信装置であって、割り当てられたタイムスロットにおいて、搬送波を再生する第1の搬送波再生部と、割り当てられたタイムスロット以外も含むようなフレームにおいて、搬送波を再生する第2の搬送波再生部と、第2の搬送波再生部において再生される搬送波あるいは第1の搬送波再生部において再生される搬送波を受信のために選択する選択部と、を備える。
【0006】
「搬送波を再生する」ことには、「搬送波に含まれた周波数オフセットを推定する」ことと、「搬送波に含まれた位相誤差を推定する」こととが含まれるが、ここでは、いずれか一方であってもよく、両方であってもよい。この態様によると、搬送波を再生するための期間を選択でき、柔軟な処理が実行可能であるので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。
【0007】
無線伝送路の変化の程度を測定する測定部をさらに備えてもよい。選択部は、測定部において測定した変化の程度に応じて、選択を実行してもよい。この場合、測定した変化の程度に応じて、搬送波を再生するための期間を変更するので、変化の程度に適した処理を実行できる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CN比が低い環境下においても受信特性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、基地局装置、衛星中継装置、端末装置にて構成される通信システムに関する。このような構成において、Forward Linkの信号は、基地局装置から送信され、衛星中継装置を経由して、端末装置に受信される。一方、Return Linkの信号は、端末装置から送信され、衛星中継装置を経由して、基地局装置に受信される。受信特性を向上させるためには、シンボルタイミングの推定精度、周波数オフセットの推定精度、搬送波の再生精度を向上させる必要がある。一方、前述のような通信システムにおいては、受信信号の強度が一般的に小さいので、精度の向上は困難である。このような課題に対して、本実施例に係る基地局装置や端末装置の受信部(以下、「受信装置」という)は、以下の処理を実行する。
【0011】
受信した信号は、前方部分に既知信号として、ユニークワード(UW)が含まれている。シンボルタイミングは、受信した信号とUWとの相関値に対して検出されたピークにもとづいて推定される。ここでは、受信した信号とUWとの相関値だけではなく、受信した信号と当該信号の遅延信号の差動値と、UWとUWの遅延信号の差動値との相関値も導出する。さらに遅延量を変えながら、複数種類の相関値も導出される。受信装置は、これらの相関値を合成することによって、信号強度を増加させた後に、合成した相関値のピークを検出する。
【0012】
また、周波数オフセットは、受信した信号と当該信号の遅延信号の差動値にもとづいて推定される。ここでは、遅延量を変えながら複数種類の差動値を導出し、それらを合成することによって、信号強度を増加させる。なお、受信装置は、合成する際の重み係数を調節する。
【0013】
搬送波は、ループフィルタにて、受信した信号に含まれた位相誤差が小さくなるように推定される。ここでは、受信した信号を記憶し、受信した信号の順方向に沿って位相誤差の制御を実行する後に、受信した信号の逆方向に沿っても位相誤差の制御を実行する。このような処理によって、制御期間を長くでき、かつループフィルタの帯域幅を狭くできるので、位相誤差の推定精度が向上される。
【0014】
以上の特徴に加えて、本実施例は、受信装置が端末装置に適用される場合に、端末装置の受信特性を向上させる。なお、受信装置は、基地局装置にも適用可能である。前述のバースト信号が複数連続することによってフレームが形成されており、このようなフレームが連続して配置されている。また、端末装置は、複数のバースト信号のうち、所定のバースト信号(以下、「対象バースト信号」という)を受信しなければならない。ここで、受信装置は、対象バースト信号のみにおいて搬送波を再生してもよいし、対象バースト信号以外のバースト信号を含むようなフレーム全体において搬送波を再生してもよい。後者では、搬送波再生のための観測期間が長くなるので、雑音の影響を低減できる。一方、伝送路特性の急激な変動が生じた場合、後者では、過去の伝送路特性が反映されるので追従できない。しかしながら、前者では、伝送路特性の急激な変動に追従可能であるが、雑音の影響の低減効果が小さい。そのため、本実施例に係る端末装置は、伝送路特性の変動の程度に応じて、搬送波再生期間を切りかえる。
【0015】
本実施例の説明を明瞭にするために、ここでは、1.全体構成、2.タイミング検出、3.周波数オフセット補正、4.搬送波再生、5.動作、6.端末装置での処理の順に説明を行う。
【0016】
1.全体構成
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、基地局装置10、衛星中継装置12、端末装置14と総称される第1端末装置14a、第2端末装置14bを含む。
【0017】
基地局装置10と端末装置14は、衛星中継装置12を介して通信を実行する。前述のごとく、基地局装置10から衛星中継装置12を介して端末装置14へ至る経路がForward Linkであり、端末装置14から衛星中継装置12を介して基地局装置10へ至る経路がReturn Linkである。なお、Forward LinkとReturn Linkとは、異なった周波数を使用しているので、通信システム100では、FDD(Frequency Division Duplex)が使用される。さらに、基地局装置10と衛星中継装置12との間の無線回線は、Feeder Linkと呼ばれ、衛星中継装置12と端末装置14との間の無線回線は、Service Linkと呼ばれている。また、両者には、異なる周波数が使用される。また、基地局装置10は、複数の端末装置14のそれぞれに対してタイムスロットを割り当てることによって、複数の端末装置14との通信を実行する。
【0018】
つまり、通信システム100では、TDMA(Time Division Multiple Access)が使用される。衛星中継装置12は、基地局装置10と端末装置14との通信を中継する。つまり、衛星中継装置12は、基地局装置10から受信した信号に対して、増幅および周波数変換を実行した後に端末装置14へ送信する。また、衛星中継装置12は、端末装置14から受信した信号に対して、増幅および周波数変換を実行した後に基地局装置10へ送信する。このような通信システム100において、無線伝送路の距離が長いので、基地局装置10および端末装置14において受信される信号の強度は小さくなる。
【0019】
図2(a)−(d)は、通信システム100において使用されるフレームの構成を示す。図2(a)は、Forward LinkおよびReturn Linkでの複数のフレームの構成を示す。図示の「Frame#n−1」、「Frame#n」、「Frame#n+1」のごとく、複数のフレームが連続して配置されている。図2(b)は、ひとつのフレームの構成を示す。図示の「Slot#0」、「Slot#1」、「Slot#m−1」のごとく、複数のタイムスロットが連続して配置されている。つまり、フレームは、複数のタイムスロットによって構成されている。
【0020】
図2(c)は、Forward Linkの場合のスロット構成を示す。スロットの先頭部分に「UW」が配置され、それに続いて「情報データ」が配置される。図2(d)は、Return Linkの場合のスロット構成を示す。スロットの先頭部分に「Guard Time」、「UW」が配置され、それらに続いて「情報データ」が配置されるバースト信号となる。つまり、タイミング同期や周波数同期用のためのプリアンブルが配置されない。なお、図示しないが、図2(c)および(d)の「情報データ」の領域には、「PILOT」シンボルが挿入される。「PILOT」シンボルは、固定シンボル周期あたりに1シンボル挿入される。
【0021】
図3は、本発明の実施例に係る受信装置20の構成を示す。受信装置20は、RF部22、ベースバンド部24、制御部26を含む。受信装置20は、基地局装置10および端末装置14に備えられた受信機能の部分に相当する。
【0022】
RF部22は、アンテナを介して図示しない衛星中継装置12にて中継された図示しない基地局装置10からの送信信号を受信する。ここで、受信する信号のスロット構成は、図2(c)あるいは(d)に示されている。RF部22は、受信した信号の周波数を無線周波数から中間周波数へ変換する。また、RF部22は、中間周波数の信号に対して、直交検波を実行することによって、ベースバンドの信号を生成する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分とを含むので、ふたつの信号線によって示されるべきであるが、ここでは、図面を明瞭にするためにひとつの信号線によって示されるものとする。また、RF部22は、ベースバンドの信号に対して、アナログ−デジタル変換を実行し、変換したデジタル信号をベースバンド部24に出力する。以下では、説明の便宜上、変換されたデジタル信号も受信信号というものとする。
【0023】
ベースバンド部24は、RF部22から受けつけた受信信号に対して、復調および復号を実行する。また、ベースバンド部24は、復調および復号に付随した処理も実行する。以下では、付随した処理として、特に、タイミング検出、周波数オフセット補正、搬送波再生を後述する。また、端末装置14における搬送波再生の処理も後述する。制御部26は、受信装置20におけるタイミング等を制御する。
【0024】
図4は、ベースバンド部24の構成を示す。ベースバンド部24は、受信帯域制限フィルタ30、UW相関部32、シンボルデータ抽出部34、変調成分除去部36、周波数オフセット補正部38、搬送波再生部40、UW識別部42、フレーム同期処理部44、シンボル軟判定部46、Turbo復号部48、デスクランブル部50、CRCチェック部54、CNR測定部58、復調部60を含む。
【0025】
受信帯域制限フィルタ30には、図2(c)および(d)のごとく、一部の区間に既知信号としてのUWが含まれた信号が入力される。ここでは、受信帯域制限フィルタ30は、低域通過特性を有しており、低域通過特性の遮断周波数よりも高い周波数の成分を低減する。UW相関部32は、予めUWパターンを保持しており、受信帯域制限フィルタ30から出力された受信信号とUWとの相関処理を実行する。UW相関部32は、例えば、マッチドフィルタの構成を有している。UW相関部32は、相関処理によって導出した相関値を順次出力する。
【0026】
シンボルデータ抽出部34は、一方において、UW相関部32から相関値を順次入力し、他方において、受信帯域制限フィルタ30から出力された信号とを入力する。また、シンボルデータ抽出部34は、順次入力した相関値のピークをスロットタイミングとして検出する。ここで、スロットタイミングとは、図2(c)および(d)に示されたUWの先頭タイミングに相当する。また、シンボルデータ抽出部34は、検出したバーストタイミングをもとに、受信帯域制限フィルタ30から出力された信号より、シンボルを抽出する。つまり、シンボルデータ抽出部34は、UW相関部32において導出した相関値をもとに検出したタイミングによって、ベースバンド部24に入力した信号からシンボルを抽出する。
【0027】
変調成分除去部36は、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボルであって、かつ受信信号のうち、UWが含まれた区間の系列から、予め記憶されているUWパターンで逆変調することで、変調成分を除去する。つまり変調成分除去部36は、受信信号のうちのUWの部分から変調成分を除去する。ここで、UWは、π/4シフトQPSKによって変調されているものとする。そのため、変調成分除去部36は、シンボルからπ/4シフトを除去した後に、QPSKの変調成分を除去する。以上の処理によって、変調成分除去部36から出力される信号は、位相誤差の成分に相当する。
【0028】
周波数オフセット補正部38は、変調成分除去部36において無変調化されたUWシンボル(以下、「無変調化UWシンボル」という)を使用することによって、周波数オフセットを推定する。なお、周波数オフセットの推定方法についての詳細は後述する。周波数オフセット補正部38は、推定した周波数オフセットによって、変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルを補正するとともに、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボル(以下、「抽出シンボル」という)を補正する。ここで、シンボルデータ抽出部34において抽出したシンボルは、スロット内の全体を対象とする。周波数オフセット補正部38は、補正した無変調化UWシンボルを搬送波再生部40に出力し、補正された抽出シンボルを復調部60に出力する。
【0029】
搬送波再生部40は、周波数オフセット補正部38において補正した無変調化UWシンボルをもとに搬送波を再生する。なお、搬送波再生方法についての詳細は後述するが、搬送波再生部40は、ループフィルタを含んだ構成となっている。また、搬送波再生部40は、UWの期間の終了後、PILOTシンボルを使用しながら搬送波を再生する。搬送波再生部40は、再生した搬送波を復調部60に出力する。復調部60は、搬送波再生部40において再生された搬送波によって、周波数オフセット補正部38において補正した抽出シンボルを復調する。復調には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、復調部60は、復調したシンボルをUW識別部42およびシンボル軟判定部46に出力する。
【0030】
UW識別部42は、復調部60からの復調されたシンボルから、受信信号中のUWの部分を識別する。フレーム同期処理部44は、UW識別部42においてUWの部分が識別された場合に、そのタイミングをフレーム同期タイミングとして、図示しない制御部26に出力する。制御部26は、フレーム同期タイミングを上位レイヤの処理に使用する。シンボル軟判定部46は、復調部60からの復調されたシンボルを軟判定し、Turbo復号部48は、軟判定されたシンボルを使って復号する。ここで、図示しない送信装置においてTurbo符号化がなされているものとする。デスクランブル部50は、復号されたシンボルをデスクランブルする。デスクランブル部50は、デスクランブルの結果を図示しない制御部26に出力する。
【0031】
CNR測定部58は、シンボル軟判定部46おいて軟判定されたシンボルをもとに、CNRを測定する。CNR測定部58は、測定したCNRを図示しない制御部26に出力する。CRCチェック部54は、Turbo復号部48において復号されたシンボルに対して、CRCチェックを実行する。
【0032】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0033】
2.タイミング検出
前述のごとく、ベースバンド部24は、UW相関部32において導出した相関値をもとに、シンボルデータ抽出部34においてシンボルタイミングを検出する。このようなタイミング検出の精度の悪化要因は、ノイズおよび周波数オフセットによって、相関値に誤差が含まれることである。そのため、ここでは、周波数オフセットを伴う低C/Nの受信時のタイミング検出精度を向上させることを目的とする。
【0034】
図5は、UW相関部32の構成を示す。UW相関部32は、CNR測定部80、周波数オフセット推定部82、基本相関器84と総称される第1基本相関器84a、第2基本相関器84b、第Z基本相関器84z、積算部86、差動相関器88と総称される第1差動相関器88a、第2差動相関器88b、第K差動相関器88k、合成部90を含む。
【0035】
基本相関器84は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号と、予め記憶したUWパターンとの相関処理を実行することによって、相関値を導出する。一般的に、相関処理は、UW全体に対して実行されており、タイミング検出は、相関値の最大値をしきい値と比較することによって実現される。しかしながら、本実施例では、UWが含まれた区間を複数の部分区間に分割し、複数の部分区間のそれぞれに対応するように基本相関器84が複数配置される。つまり、各基本相関器84は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号と、対応した部分区間でのUWとの部分的な相関値を導出する。ここで、UWのシンボル数が「N」である場合に、「N」シンボルを「D」個の部分区間に分割すると、分割された各部分区間の相関長は「L」シンボルになるとする。
【0036】
積算部86は、複数の基本相関器84のそれぞれにおいて導出した部分的な相関値を積算することによって、相関値を導出する。一般的に相関器の構成のように相関長が長ければ、周波数オフセットの影響によって、相関長の間にわたって受信信号とUWシンボルとの乗算結果が位相回転し、位相回転による相関値の低下を招く。一方、本実施例の構成のように、ひとつの基本相関器84における相関長を短くすることにより、相関長あたりの位相回転量を小さくすることができるので、相関長あたりの相関値の低下を抑えることができる。
【0037】
差動相関器88は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号と、当該受信信号を遅延させた信号との差動値(以下、「差動信号」という)を導出する。また、差動相関器88は、UWと、遅延させたUWとの差動値(以下、「差動UW」という)を予め保持する。ここで、差動信号と差動UWとの遅延量は同一である。また、差動相関器88は、差動信号と差動UWとの相関値を導出する。ここで、図示のごとく、第1差動相関器88aから第K差動相関器88kまで、差動相関器88はK個備えられており、各差動相関器88の遅延量は、互いに異なっている。例えば、第1差動相関器88aは、1シンボル遅延であるが、第2差動相関器88bは、2シンボル遅延である。
【0038】
つまり、第1差動相関器88aは、受信信号を1シンボル差動検波した後にシフトレジスタに逐次格納し、UWを1シンボル差動検波した結果との相関処理を実行する。このように複数の差動相関器88は、遅延量を変えながら、複数種類の相関値を導出する。このように、差動相関器88による相関処理は、差動検波結果の積分を実行するので、周波数オフセットによる相関値の低下を抑制できる。
【0039】
合成部90は、差動相関器88において導出した複数種類の相関値と、基本相関器84および積算部86において導出した相関値とを合成する。つまり、UW相関部32は、複数の相関値を組み合わせることによって、信号強度を増加させる。その結果、受信信号のC/Nが低い場合であっても、相関値に含まれる誤差は低減される。また、合成部90での相関値は、異なる相関特性の和として得られるので、相関ピーク位置以外で高い相関値を生じるような自己相関特性を有するUWシンボルパターンの場合であっても、相関ピーク位置以外での誤検出確率の抑制が可能になる。合成部90は、合成した相関値を図示しないシンボルデータ抽出部34に出力する。
【0040】
周波数オフセット推定部82は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号に対する周波数オフセットを推定する。周波数オフセットの推定には、公知の技術や、後述する技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。また、基本相関器84は、周波数オフセット推定部82において推定した周波数オフセットの値に応じて、部分区間の長さ、つまり相関処理の際の相関長を調節する。つまり、基本相関器84は、推定された周波数オフセット量に応じた周波数オフセット耐性を与えるために、分割数Dを可変制御する。例えば、周波数オフセットの値が大きくなれば、分割数Dが大きくなり、周波数オフセットの値が小さくなれば、分割数Dが小さくなる。
【0041】
CNR測定部80は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号の強度を測定する。信号強度の測定には公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。合成部90は、CNR測定部80において測定した強度の値に応じて、積算部86と差動相関器88からの相関値のうち、合成の対象とする相関値の数を調節する。例えば、測定した信号強度が大きければ、合成部90は、積算部86からの相関値のみを選択する。また、測定した信号強度が小さくなるほど、合成部90は、合成の対象とすべき相関値の数を増加させる。
【0042】
図6は、基本相関器84の構成を示す。基本相関器84は、受信信号遅延部140、乗算部142、UW保持部144、加算部146、変換部148を含む。ここで、ひとつのシンボルあたりのサンプル数、つまりサンプリングレートは「M」とされる。
【0043】
受信信号遅延部140は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号を遅延させるシフトレジスタである。前述のごとく、受信信号のサンプリングレートは「M」であるので、受信信号遅延部140は、サンプリングレート「M」に対応するように配置されている。UW保持部144は、対応した部分期間におけるUWの部分を記憶する。乗算部142は、受信信号遅延部140にて遅延されたシンボルと、UW保持部144に保持されたUWのシンボルとを複素乗算する。加算部146は、乗算結果を加算する。変換部148は、加算部146での加算結果の大きさを部分的な相関値として導出する具体的には、加算結果の同相成分の2乗値と、加算結果の直交成分の2乗値とが加算される。
【0044】
図7は、第1差動相関器88aの構成を示す。第1差動相関器88aは、差動用遅延部110、UW遅延部112、乗算部114、乗算部116、受信信号遅延部118、差動UW保持部120、乗算部122、加算部124、変換部126を含む。なお、他の差動相関器88は、差動信号や差動UWを生成する際の遅延量が異なっているが、図7と同様の構成を有する。
【0045】
差動用遅延部110は、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号を遅延させる。ここでは、Mサンプル遅延させる。なお、サンプリングレートは、シンボルレートよりも高速であるので、ひとつのシンボルに対応すべき複数のサンプルが差動用遅延部110にて遅延される。乗算部114は、差動用遅延部110において遅延された受信信号と、図示しない受信帯域制限フィルタ30からの受信信号とを複素乗算する。その際、差動用遅延部110において遅延された受信信号に対して、複素共役演算がなされた後に乗算が実行されるので、乗算部114での乗算は、両者の差異を導出することに相当する。なお、ここでの差異が、前述の差動信号である。受信信号遅延部118は、乗算部114において導出した差動信号を遅延させる。ここで、受信信号遅延部118は、M(N−1)サンプルにわたって遅延を行う。
【0046】
UW遅延部112は、UWを1シンボル遅延させる。乗算部116は、UWとUW遅延部112において遅延されたUWとを複素乗算する。その際、UW遅延部112において遅延されたUWに対して、複素共役演算がなされた後に乗算が実行されるので、乗算部116での乗算は、両者の差異を導出することに相当する。なお、ここでの差異が、前述の差動UWである。差動UW保持部120は、乗算部116において導出した差動UWを遅延させる。ここで、差動UW保持部120は、N−1シンボルにわたって遅延を行う。乗算部122は、受信信号遅延部118にて遅延された差動信号と、差動UW保持部120に保持された差動UWとを複素乗算する。加算部124は、乗算結果を加算する。変換部126は、加算部124での加算結果の大きさを部分的な相関値として導出する具体的には、加算結果の同相成分の2乗値と、加算結果の直交成分の2乗値とが加算される。
【0047】
3.周波数オフセット補正
周波数オフセット補正部38は、周波数オフセットを導出するが、一般的に受信信号のC/Nが低い場合、雑音の影響が大きくなるので、周波数オフセットの推定精度が低くなる。また、周波数オフセットの推定精度が低くなると、受信装置20の受信特性が悪化する。そのため、ここでは、低C/N受信時の周波数オフセット推定性能の向上を目的とする。
【0048】
図8は、周波数オフセット補正部38の構成を示す。周波数オフセット補正部38は、第1オフセット推定部230、第2オフセット推定部232、第j+1オフセット推定部234、第Jオフセット推定部236、CNR測定部200、ウエイト制御部202、合成部204、回転部206、乗算部208、乗算部210を含む。また、第1オフセット推定部230は、第1遅延部160、第1乗算部162、第1加算部164、第1変換部166、第1調節部168を含み、第2オフセット推定部232は、第2遅延部170、第2乗算部172、第2加算部174、第2変換部176、第2調節部178を含み、第j+1オフセット推定部234は、第j+1遅延部180、第j+1乗算部182、第j+1加算部184、第j+1変換部186、第j+1調節部188を含み、第Jオフセット推定部236は、第J遅延部190、第J乗算部192、第J加算部194、第J変換部196、第J調節部198を含む。
【0049】
第1オフセット推定部230は、図示しない変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルを受けつける。第1遅延部160は、受けつけた無変調化UWシンボルを1シンボル遅延する。第1乗算部162は、受けつけた無変調化UWシンボルと、第1遅延部160において遅延した無変調化UWシンボルとを複素乗算する。その際、遅延した無変調化UWシンボルの複素共役演算が実行される。第1乗算部162での乗算によって、1シンボルにわたる位相差が導出される。第1加算部164は、位相差を加算する。なお、ここでの加算は、ベクトル加算であるので、位相差の平均値の導出に相当する。第1変換部166は、第1加算部164での加算結果を複素数値から位相値に変換する。第1調節部168は、第1変換部166において変換した位相値を1シンボルにわたる位相回転量に変換する。当該位相回転量が、周波数オフセット量に相当する。
【0050】
第2オフセット推定部232、第j+1オフセット推定部234、第Jオフセット推定部236は、第1オフセット推定部230と同様の処理を実行する。しかしながら、第1オフセット推定部230における遅延量は、1シンボルであったのに対して、第2オフセット推定部232、第j+1オフセット推定部234、第Jオフセット推定部236のそれぞれにおける遅延量は、2シンボル、j+1シンボル、Jシンボルである。つまり、第1オフセット推定部230から第Jオフセット推定部236は、位相差を遅延量を変えながら複数種類導出する。
【0051】
なお、「J」の値は、シンボルレートに対する最大周波数オフセット量と想定される値から適切に設定されるべきである。第2遅延部170、第j+1遅延部180、第J遅延部190は、第1遅延部160に相当し、第2乗算部172、第j+1乗算部182、第J乗算部192は、第1乗算部162に相当し、第2加算部174、第j+1加算部184、第J加算部194は、第1加算部164に相当し、第2変換部176、第j+1変換部186、第J変換部196は、第1変換部166に相当し、第2調節部178、第j+1調節部188、第J調節部198は、第1調節部168に相当する。
【0052】
合成部204は、第1オフセット推定部230から第Mオフセット推定部236において導出した複数種類の周波数オフセット量を重みづけながら合成する。ここで、重みづけの際の重み係数は、後述するウエイト制御部202から受けつける。以上の処理によって、合成部204は、受信信号に含まれた周波数オフセットを推定する。つまり、第1オフセット推定部230から第Mオフセット推定部236は、位相回転量を検出するためのシンボル間隔を複数種類設定しながら、複数種類の周波数オフセットを推定し、合成部204は、推定した複数種類の周波数オフセット量に重み係数を乗じて合成する。
【0053】
以上の処理の結果、最終的な周波数オフセットが推定される。複数の周波数オフセットを合成することによって、最終的な周波数オフセットが導出される。位相回転量検出のための遅延時間が異なると、雑音によるランダム成分の振る舞いが異なるので、それぞれの推定精度が向上する。特に受信信号のC/Nが低い場合にはその効果が大きい。
【0054】
CNR測定部200は、図示しない変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルの強度を測定する。ここで、信号強度の測定には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。なお、CNR測定部200と同様の機能を有する構成要素が、受信装置20に含まれる場合、CNR測定部200は備えられなくてもよい。
【0055】
ウエイト制御部202は、第1オフセット推定部230から第Mオフセット推定部236より出力された複数の周波数オフセットを重みづける際の重み係数を導出する。ここで、ウエイト制御部202は、次のふたつの処理結果の組合せによって重み係数を導出する。ひとつの目の処理のために、ウエイト制御部202は、合成部204において既に推定した周波数オフセット量を受けつける。また、ウエイト制御部202は、受けつけた周波数オフセット量に近い遅延量のオフセット補正部を特定する。さらに、ウエイト制御部202は、特定したオフセット補正部から出力される周波数オフセットに対して、重みづけの際の重み係数の大きさを大きくする。
【0056】
ここで、既に推定した周波数オフセット量とは、例えば、前回のスロットのUW部に対して推定された周波数オフセット量に相当する。なお、初回の受信スロットのように、既に推定した周波数オフセット量が存在しない場合、ウエイト制御部202は、すべての周波数オフセットに対する重み係数の大きさを等しくする。ふたつ目の処理として、ウエイト制御部202は、CNR測定部200において測定した強度に応じて、複数種類の周波数オフセットにわたる重み係数の大きさの分布を調節する。
【0057】
例えば、CNR測定部200において測定したC/Nが大きければ、合成すべき周波数オフセットの数が少なくてもよいので、ウエイト制御部202は、ひとつの周波数オフセットに対する重み係数の大きさだけを大きくする。一方、CNR測定部200において測定したC/Nが小さければ、合成すべき周波数オフセットの数を大きくする必要があるので、ウエイト制御部202は、複数の周波数オフセットに対する重み係数の大きさを大きくする。
【0058】
回転部206は、合成部204において導出した周波数オフセットに応じて位相回転する信号を生成する。なお、回転部206では、受信信号に含まれた周波数オフセットが打ち消されるように、つまり逆回転になるように信号が生成される。乗算部208は、回転部206において生成された信号によって、図示しない変調成分除去部36からの無変調化UWシンボルを位相回転させる。当該位相回転が、周波数オフセットの補正に相当する。また、乗算部210は、回転部206において生成された信号によって、図示しないシンボルデータ抽出部34からの抽出シンボルを位相回転させる。
【0059】
4.搬送波再生
前述の図2(c)−(d)のごとく、プリアンブルが配置されないスロット構成なので、情報データ部の受信特性を悪化させないためには、搬送波再生において、UW部での搬送波位相推定に十分な精度が必要になる。しかしながら、これまでの搬送波再生では、入力されるデータに対して逐次的に位相誤差が検出され、その誤差に応じてNCO(Numerically Controlled Oscillator)が制御される。そのため、ある程度処理が進んだ時刻において、再生された搬送波の精度が高くなっているが、Forward Linkの端末受信処理の開始時点である初回スロットにおいて、または、Return Linkの基地局受信処理における毎スロットのバースト信号先頭部分において、再生された搬送波の位相推定精度は高くない。ここでは、低C/N受信時の受信信号の先頭部分における搬送波再生の精度を向上させることを目的とする。
【0060】
図9は、搬送波再生部40の構成を示す。搬送波再生部40は、記憶部220、乗算部222、変換部224、ループフィルタ226、NCO228を含む。記憶部220は、図示しない周波数オフセット補正部38において補正した無変調化UWシンボルを受けつけ、それを記憶する。
【0061】
乗算部222は、記憶部220に記憶された無変調化UWシンボルと、NCO228からの再生搬送波とを複素乗算する。ここで、NCO228からの搬送波に対して、複素共役演算が乗算前になされる。乗算部222は、乗算結果を出力する。当該乗算結果が、搬送波に含まれる位相誤差に相当する。変換部224は、乗算部222から出力された乗算結果を複素数値から位相値に変換する。ループフィルタ226は、LPFの機能を有しており、変換部224からの信号を平滑化する役割を果たす。ループフィルタ226によって平滑化された位相誤差信号の大小に応じて、NCO228の位相回転量が制御される。これは、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルに含まれる位相誤差を小さくするように制御することに相当する。NCO228は、ループフィルタ226の制御にしたがって搬送波を再生し、出力する。
【0062】
図示しない制御部26は、搬送波再生時に、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルを順方向に使用した後に、逆方向にも使用するように命令を出力する。ここで、順方向とは、図2(c)−(d)のスロット構成において、先頭部分から後方部分へ向かう方向であり、逆方向とは、順方向とは反対に向かう方向である。具体的に、制御部26は、記憶部220に記憶された無変調化UWシンボルを先頭から順方向に読み出していき、乗算部222に出力する。無変調化UWシンボルの最後まで読み出すと、制御部26は、無変調化UWシンボルの最後から逆方向に読み出していく。以上の処理によって、搬送波を再生するために使用可能な無変調化UWシンボルの長さが長くなる。
【0063】
図10は、搬送波再生部40の動作概要を示す。縦軸が、再生された搬送波に含まれる位相誤差の量を示し、横軸が、無変調化UWシンボルの系列に相当する。左側が無変調化UWシンボルの先頭に近く、右側が無変調化UWシンボルの最後部に近い。つまり、左から右に向かう方向が、順方向であり、右から左に向かう方向が、逆方向である。まず、順方向の処理によって、UWの先頭時点での位相誤差θe0が、UWの最終シンボルの時点においてθe1になったとする。次に、NCO228の位相をθe1に保持したまま、残留周波数オフセット推定値も保持し、UWの最終シンボルからUWの先頭の方向に、処理が実行される。この時間的に反復した搬送波再生処理を実行することによって、UWの先頭部分の搬送波が推定される。
【0064】
ここでは、搬送波再生処理について、別の動作内容も説明する。受信信号のC/Nが十分に高い場合には、前記処理を一度実行すれば、十分な精度の搬送波が再生される。しかしながら、受信信号のC/Nが低い場合、ループフィルタ226の帯域を十分に狭くしなければ、十分な推定精度を得られない。この場合に、十分な推定精度を得るには、予め決められたUWのシンボル数では不足することが考えられる。
【0065】
ループフィルタ226の帯域が狭くなったことによるUWのシンボル数の不足は、反復処理の回数を増加させることによって補う。搬送波の位相が十分に推定できていない場合には、推定誤差に応じた位相誤差情報が得られるので、ループフィルタ226の帯域を十分に狭くして信頼性の高い位相誤差情報が抽出され、さらに反復処理を繰り返し行えば、低C/N時においてもUWの先頭における搬送波位相が高精度に推定される。つまり、制御部26は、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルを順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理を複数回繰り返し実行する。
【0066】
図11は、搬送波再生部40の別の動作概要を示す。図11は、図10と同様に示されているが、反復処理が複数回数実行されている。また、反復処理の実行回数に応じて、位相誤差がθe0、θe1、θe2、θe3の順に段階的に小さくなっている。
【0067】
5.動作
以上の構成による受信装置20の動作を説明する。送信側から送信された信号が受信されると、UW相関部32は、受信信号とUWとの相関処理を実行する。その際、UW相関部32は、基本相関器84および積算部86において相関値を導出するとともに、差動相関器88においても相関値を導出し、それらを合成部90において合成して最終的な相関値とする。なお、CNR測定部80および周波数オフセット推定部82での処理結果をもとに、基本相関器84での相関長および合成部90での合成数が調節される。
【0068】
シンボルデータ抽出部34は、UW相関部32から順次入力した相関値のピークをUW先頭タイミングとして検出する。変調成分除去部36は、UW先頭タイミングの検出後、UWの変調成分を除去し、無変調化UWシンボルを出力する。周波数オフセット補正部38は、無変調化UWシンボルをもとに周波数オフセットを導出する。その際、周波数オフセット補正部38は、第1オフセット推定部230から第Jオフセット推定部236のそれぞれにおいて周波数オフセットを導出し、それらを合成部204において重みづけしながら合成することによって、周波数オフセット値を推定する。また、CNR測定部200とウエイト制御部202によって重み係数が設定される。さらに、周波数オフセット補正部38は、推定した周波数オフセットによって、無変調化UWシンボルおよび受信信号シンボルデータを補正する。
【0069】
搬送波再生部40は、無変調化UWシンボルを記憶部220に記憶し、記憶した無変調化UWシンボルを順方向と逆方向に使用することによって、ループフィルタ226、NCO228に搬送波を再生させる。復調部60は、搬送波再生部40において再生した搬送波によって、周波数オフセット補正部38において補正された受信信号を復調する。
【0070】
6.端末装置での処理
通信システム100は、TDMA通信を実行しており、図2(b)に示されたように、複数の端末装置14間においてタイムスロットを排他的に使用する。また、各端末装置14は、基地局装置10からの送信信号を連続して受信する。この性質を利用して、端末装置14は、ループフィルタ226での処理期間を長くするために、割り当てられたタイムスロットと他のタイムスロットが含まれたフレーム全体のUWを使用して周波数オフセットを推定し、ループフィルタ226による搬送波再生処理を実行する。
【0071】
このような場合には、NCO228の周波数や位相が、タイムスロット間にわたって引き継がれる。また、ループフィルタ226の時定数は非常に大きな値に設定される。それら結果、フェージングや雑音等の影響により、搬送波の同期が外れた場合に、同期外れを検出する時間、もしくは再同期に要する期間が長くなってしまう。ここでは、TDMA通信におけるForward Linkの受信性能の改善を目的とする。つまり、フレーム全体にわたった搬送波再生処理だけではなく、タイムスロットに限定した搬送波再生処理も実行することによって、フェージング等で同期が外れた場合に、同期外れの早期検出と再同期とが実現される。
【0072】
受信装置20は、これまでと同様に、図2(a)−(d)のごとく、複数のタイムスロットによって形成されたフレームが連続しており、割り当てられたタイムスロットを受信する。図3の制御部26は、受信したスロット信号をもとに、無線伝送路の変化の程度を測定する。制御部26は、無線伝送路の変化の程度として、ドップラー周波数を測定する。ドップラー周波数の測定には、公知の技術が使用されればよい。なお、無線伝送路の推定は、割り当てられていないタイムスロットにおいてなされてもよい。
【0073】
搬送波再生部40は、割り当てられたタイムスロットにおいて、搬送波を再生する。搬送波再生は、図9から図11にて説明したとおりになされればよいので、ここでは、説明を省略する。なお、搬送波再生部40は、スロットの開始タイミングにおいて、搬送波を新たに推定する。なお、周波数オフセット補正部38が、同様の処理を実行してもよい。つまり、ここでは、タイムスロットにて得られる周波数オフセット推定および搬送波位相推定結果のうち、割り当てられたタイムスロットにおいて得られる推定結果のみを搬送波再生部40や周波数オフセット補正部38の初期値に使用する。
【0074】
そのため、ループフィルタ226は、NCO228での過去の周波数、過去の位相情報を引き継がずに搬送波再生処理を実行する。その結果、同期外れの検出は、タイムスロットごとのCRCを確認することによって、直ちに実行される。また、同期外れ影響は後続のタイムスロットには伝搬しないので、次に割り当てられたタイムスロットでの再同期が可能である。以下では、説明の便宜上、このような処理を「スロット処理」という。
【0075】
また、搬送波再生部40は、割り当てられたタイムスロット以外も含むようなフレームにおいて、搬送波を再生する。ここで、ループフィルタ226は、NCO228での過去の周波数、位相情報を引き継ぎながら搬送波再生処理を実行する。以下では、説明の便宜上、このような処理を「フレーム処理」という。
【0076】
制御部26は、測定した変化の程度、例えば、ドップラー周波数に応じて、搬送波再生部40における処理として、「スロット処理」あるいは「フレーム処理」を受信のために選択する。ここで、制御部26は、しきい値を予め保持しており、しきい値とドップラー周波数とを比較する。例えば、ドップラー周波数がしきい値よりも大きければ、制御部26は、「スロット処理」を選択し、ドップラー周波数がしきい値以下であれば、制御部26は、「フレーム処理」を選択する。
【0077】
本発明の実施例によれば、組合せを変えながら複数種類の相関値を導出し、導出した複数種類の相関値を合成して、最終的な相関値を生成するので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、相関長を短くした部分的な相関値を合成することによって、相関値を導出するので、相関値に対する周波数オフセットの影響を小さくできる。また、差動信号に対する相関値を導出するので、相関値に対する周波数オフセットの影響を小さくできる。また、周波数オフセットの値に応じて、部分区間の長さを調節するので、相関値に含まれる誤差を低減できる。
【0078】
また、周波数オフセットの値が大きければ、部分区間の長さを短くするので、周波数オフセットの影響を小さくできる。また、周波数オフセットの値が小さければ、部分区間の長さを長くするので、より信頼性の高い相関結果が得られる。また、測定した強度の値に応じて、合成の対象とする相関値の数を調節するので、測定した強度の値において、相関値に含まれる誤差を低減できる。また、測定した強度の値が小さければ、合成の対象とする相関値の数を増加させるので、相関器出力の信頼性を向上できる。
【0079】
また、遅延量を変えながら複数種類の位相差を導出し、導出した複数種類の位相差を合成することによって、周波数オフセットを推定するので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、複数種類の位相差を合成するので、信号強度を増加できる。また、既に推定した周波数オフセット量に近い遅延時間に対応した重み係数を大きくするので、確からしい周波数オフセットの重みづけを大きくできる。また、確からしい周波数オフセットの重みづけを大きくするので、重み係数の精度を向上できる。また、測定した強度に応じて、複数種類の位相差にわたる重み係数の大きさの分布を調節するので、測定した強度に適した重み係数を決定できる。また、測定した強度が小さければ、多くの位相差を使用するように重み係数を制御するので、信号強度を増加できる。
【0080】
また、既知信号の変調成分を除去した系列を記憶した後に、当該系列を順方向および逆方向に使用しながら、位相誤差を小さくするための制御を実行するので、位相誤差を小さくするための制御の期間を長くでき、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、系列を順方向および逆方向に使用する処理を複数回繰り返すので、位相誤差を小さくするための制御の期間をさらに長くできる。また、搬送波を再生するための期間として、「フレーム処理」あるいは「スロット処理」を選択でき、柔軟な処理が実行可能であるので、低CN比環境下での受信特性を向上できる。また、測定した変化の程度に応じて、搬送波を再生するための期間を変更するので、変化の程度に適した処理を実行できる。また、ドップラー周波数が大きければ、「スロット処理」を使用するので、同期が外れた場合でも再同期を容易に実行できる。また、ドップラー周波数が小さければ、「フレーム処理」を使用するので、処理期間を長くできる。
【0081】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0082】
本発明の実施例において、基本相関器84は、周波数オフセット推定部82において推定された周波数オフセットに応じて、分割数を変更するような制御を実行している。しかしながらこれに限らず例えば、基本相関器84は、受信処理の開始時点から経過した期間をもとに、分割数を変更してもよい。例えば、分割数が少なくなっていくような制御が実行される。通信システム100における受信装置20において、受信処理の開始直後から周波数同期処理が実行される場合、所定の期間が経過した後では、受信処理の開始時に比べて周波数オフセット量が小さくなることが予想される。周波数オフセット量が小さくなると、それに起因した位相回転量が小さくなるので、基本相関器84は、受信処理開始直後よりも分割数を小さくする。本変形例によれば、自動的に分割数が変更されるので、処理を簡易にできる。
【0083】
本発明の実施例において、搬送波再生部40は、ループフィルタ226を使用することによって、位相誤差を小さくするための制御を実行しており、記憶部220において記憶した無変調化UWシンボルを順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理を実行している。しかしながらこれに限らず例えば、無変調化UWシンボルを順方向および逆方向に使用した回数に応じて、ループフィルタ226の帯域を変更してもよい。例えば、搬送波再生部40は、回数が多くなるにしたがって、ループフィルタ226の帯域を狭くするように制御する。また、ループフィルタ226の時定数は、(1)UW部での反復処理、(2)反復処理後のUW部における順方向搬送波再生処理、(3)PILOTシンボル部のそれぞれに対して切りかえられてもよい。本変形例によれば、無変調化UWシンボルを順方向および逆方向に使用する処理の回数に応じて、ループフィルタの帯域を変更するので、位相誤差の収束の程度に適した帯域を使用できる。
【0084】
本発明の実施例において、受信装置20には、UW相関部32、周波数オフセット補正部38、搬送波再生部40の組合せが備えられている。しかしながらこれに限らず例えば、UW相関部32、周波数オフセット補正部38、搬送波再生部40のいずれかあるいは任意の組合せが、受信装置20に備えられていてもよい。その場合、備えられていない部分に対して、公知の技術が使用されればよい。本変形例によれば、受信装置20の構成の自由度を向上できる。
【0085】
実施例に記載された発明の特徴は、次の項目によって規定されてもよい。
(項目4−1)
一部の区間に既知信号が含まれた受信信号の系列を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列のうち、既知信号が含まれた区間の系列から、既知信号の変調成分を除去する除去部と、
前記除去部において既知信号の変調成分を除去した系列を記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶した系列に含まれる位相誤差を小さくするように制御することによって、搬送波を再生する搬送波再生部と、
前記搬送波再生部において再生した搬送波によって、前記入力部において入力した受信信号の系列を復調する復調部とを備え、
前記搬送波再生部は、前記記憶部において記憶した系列を順方向に使用した後に、逆方向にも使用しながら、位相誤差を小さくするための制御を実行することを特徴とする受信装置。
【0086】
(項目4−2)
前記搬送波再生部は、前記記憶部において記憶した系列を順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理を複数回繰り返し実行することを特徴とする(項目4−1)に記載の受信装置。
(項目4−3)
前記搬送波再生部は、ループフィルタを使用することによって、位相誤差を小さくするための制御を実行しており、前記記憶部において記憶した系列を順方向に使用した後に、逆方向にも使用する処理の回数に応じて、ループフィルタの帯域を変更することを特徴とする(項目4−2)に記載の受信装置。
【0087】
(項目2−1)
一部の区間に既知信号が含まれた受信信号の系列を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列と既知信号との相関処理を実行することによって、相関値を導出する第1の相関処理部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列と、当該系列を遅延させた系列との差動値と、既知信号と、遅延させた既知信号との差動値との相関処理を遅延量を変えながら実行することによって、別の相関値を複数種類導出する第2の相関処理部と、
前記第2の相関処理部において導出した複数種類の別の相関値と、前記第1の相関処理部において導出した相関値とを合成する合成部と、
前記合成部において合成した相関値をもとに検出したタイミングによって、前記入力部において入力した受信信号の系列を処理する処理部とを備え、
前記第1の相関処理部は、既知信号が含まれた区間を複数の部分区間に分割した場合に、複数の部分区間のそれぞれにおいて、受信信号の系列と、当該部分区間に対応した既知信号との部分的な相関値を導出した後に、導出した部分的な相関値を積算することによって、相関値を導出することを特徴とする受信装置。
【0088】
(項目2−2)
前記入力部において入力した受信信号の系列に対する周波数オフセットを推定する推定部をさらに備え、
前記第1の相関処理部は、前記推定部において推定した周波数オフセットの値に応じて、部分区間の長さを調節することを特徴とする(項目2−1)に記載の受信装置。
(項目2−3)
前記入力部において入力した受信信号の系列の強度を測定する測定部をさらに備え、
前記合成部は、前記測定部において測定した強度の値に応じて、相関値と複数種類の別の相関値のうち、合成の対象とする相関値の数を調節することを特徴とする(項目2−1)または(項目2−2)に記載の受信装置。
【0089】
(項目3−1)
一部の区間に既知信号が含まれた受信信号の系列を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信信号の系列のうち、既知信号が含まれた区間の系列から、既知信号の変調成分を除去する除去部と、
前記除去部において既知信号の変調成分を除去した系列と、当該系列を遅延させた系列との位相差を遅延量を変えながら複数種類導出する導出部と、
前記導出部において導出した複数種類の位相差を重みづけながら合成することによって、前記入力部において入力した受信信号の系列に含まれた周波数オフセットを推定する推定部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【0090】
(項目3−2)
前記推定部は、既に推定した周波数オフセット量に近い遅延量の位相差に対して、重みづけの際の重み係数の大きさを大きくすることを特徴とする(項目3−1)に記載の受信装置。
(項目3−3)
前記入力部において入力した受信信号の系列の強度を測定する測定部をさらに備え、
前記推定部は、前記測定部において測定した強度に応じて、複数種類の位相差を重みづける際の複数種類の位相差にわたる重み係数の大きさの分布を調節することを特徴とする(項目3−1)または(項目3−2)に記載の受信装置。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】図2(a)−(d)は、図1の通信システムにおいて使用されるフレームの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る受信装置の構成を示す図である。
【図4】図3のベースバンド部の構成を示す図である。
【図5】図4のUW相関部の構成を示す図である。
【図6】図5の基本相関器の構成を示す図である。
【図7】図5の第1差動相関器の構成を示す図である。
【図8】図4の周波数オフセット補正部の構成を示す図である。
【図9】図4の搬送波再生部の構成を示す図である。
【図10】図9の搬送波再生部の動作概要を示す図である。
【図11】図9の搬送波再生部の別の動作概要を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
10 基地局装置、 12 衛星中継装置、 14 端末装置、 20 受信装置、 22 RF部、 24 ベースバンド部、 26 制御部、 30 受信帯域制限フィルタ、 32 UW相関部、 34 シンボルデータ抽出部、 36 変調成分除去部、 38 周波数オフセット補正部、 40 搬送波再生部、 42 UW識別部、 44 フレーム同期処理部、 46 シンボル軟判定部、 48 Turbo復号部、 50 デスクランブル部、 54 CRCチェック部、 58 CNR測定部、60 復調部、 100 通信システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイムスロットによって形成されたフレームが連続しており、割り当てられたタイムスロットの信号を受信する受信装置であって、
割り当てられたタイムスロットにおいて、搬送波を再生する第1の搬送波再生部と、
割り当てられたタイムスロット以外も含むようなフレームにおいて、搬送波を再生する第2の搬送波再生部と、
前記第2の搬送波再生部において再生される搬送波あるいは前記第1の搬送波再生部において再生される搬送波を受信のために選択する選択部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
無線伝送路の変化の程度を測定する測定部をさらに備え、
前記選択部は、前記測定部において測定した変化の程度に応じて、選択を実行することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項1】
複数のタイムスロットによって形成されたフレームが連続しており、割り当てられたタイムスロットの信号を受信する受信装置であって、
割り当てられたタイムスロットにおいて、搬送波を再生する第1の搬送波再生部と、
割り当てられたタイムスロット以外も含むようなフレームにおいて、搬送波を再生する第2の搬送波再生部と、
前記第2の搬送波再生部において再生される搬送波あるいは前記第1の搬送波再生部において再生される搬送波を受信のために選択する選択部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
無線伝送路の変化の程度を測定する測定部をさらに備え、
前記選択部は、前記測定部において測定した変化の程度に応じて、選択を実行することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−187504(P2008−187504A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19805(P2007−19805)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]