説明

受光素子の対塵性能検査方法及びそれを用いた受光素子の製造方法

【課題】本発明は、実使用環境中に存在する粉塵に対する受光素子の対塵性能を検査する受光素子の対塵性能検査方法及びそれを用いた受光素子の製造方法に関し、実使用環境中に存在する粉塵に対する受光素子の対塵性能を検査する受光素子の対塵性能検査方法及びそれを用いた受光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】多数の粉体25を混入した液体23を受光素子1の受光面2上方に滴下し、受光面2上方を乾燥して受光面2上方に粉体25を残留させ、受光面2上方の粉体25の残留量に基づいて受光素子1の対塵性能を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実使用環境中に存在する粉塵に対する受光素子の対塵性能を検査する受光素子の対塵性能検査方法及びそれを用いた受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光の光量を電気信号に変換する受光素子は、例えば光ヘッドに用いられている。光ヘッドに用いられる受光素子は、受光部が形成されたシリコン基板と、当該シリコン基板を配置する回路基板とを有している。また、受光素子は、シリコン基板上に形成された電極パッドと、回路基板上に形成された電極端子と、電極パッドと電極端子とを接続する配線とで構成されたボンディング部を有している。さらに受光素子は、受光部及びボンディング部上を覆うように両基板に跨って配置されたカバー層を有している。カバー層は、水分による腐食や空気中の粉塵による短絡不良がボンディング部で発生するのを防止する保護部材として機能する。
【0003】
カバー層は透明樹脂で形成されており、受光部が光記録媒体で反射した光を受光できるようになっている。受光素子は、受光部で受光した光の光量を光電変換して、ボンディング部から電気信号を出力するようになっている。当該電気信号に基づいて、光記録媒体に記録された情報を含む再生信号や光ヘッドの焦点誤差又はトラッキング誤差の調整に用いられる誤差検出信号が生成される。
【0004】
ところで、光ヘッドが長期間使用環境下に置かれると、受光素子のカバー層に空気中に存在する塵及び埃等の粉塵が堆積することがある。空気中の粉塵が受光素子のカバー層に堆積すると、光記録媒体で反射した光は当該粉塵に遮られて受光部に到達し難くなる。これにより、受光素子で受光される光の光量は低下する。そうすると、受光光の光量を光電変換して得られる電気信号の電圧値が低下するので、高品質な再生信号や誤差検出信号が得られ難くなる。
【特許文献1】特開2005−5363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受光素子の対塵性能は、例えばJIS規格D0207で定められている粉塵環境試験機を用いて受光素子に付着する粉塵量に基づいて検査する方法が考えられる。しかし、粉塵環境試験機は受光素子が設置される試験層内に粉塵を噴射して落下させるので、試験槽内の至る場所で粉塵の存在率等を均一にできない。このため、粉塵環境試験機を用いた受光素子の対塵性能検査方法は、試験層内の受光素子の配置位置に基づく粉塵量のばらつきに起因する誤差が含まれてしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、実使用環境中に存在する粉塵に対する受光素子の対塵性能を検査する受光素子の対塵性能検査方法及びそれを用いた受光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、粉体を混入した液体を受光素子の受光面上方に滴下し、前記受光面上方を乾燥して前記受光面上方に前記粉体を残留させ、前記受光面上方の前記粉体の残留量に基づいて前記受光素子の対塵性能を検査することを特徴とする受光素子の対塵性能検査方法よって達成される。
【0008】
上記本発明の受光素子の対塵性能検査方法であって、前記粉体は、前記受光素子の実使用環境中に存在する粉塵とほぼ同じ粒径を有していることを特徴とする。
【0009】
上記本発明の受光素子の対塵性能検査方法であって、前記粒径は、5μm〜30μmであることを特徴とする。
【0010】
上記本発明の受光素子の対塵性能検査方法であって、前記粉体は、関東ロームであることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の受光素子の対塵性能検査方法であって、前記受光面内に設けられた受光部に入射する光の光量を光電変換した電気信号の電圧値に基づいて前記残留量を判定することを特徴とする。
【0012】
上記本発明の受光素子の対塵性能検査方法であって、前記液体中に前記粉体がほぼ均一に存在するようにしてから前記液体を前記受光素子の前記受光面上方に滴下することを特徴とする。
【0013】
上記本発明の受光素子の対塵性能検査方法であって、前記粉体の混入量は、予め求められた前記受光素子の使用年数に対する前記受光面上方への前記粉体の付着面積率に基づいて決定されることを特徴とする。
【0014】
また、上記目的は、光を受光する受光部を基板上に形成する工程と、前記基板上にカバー層を形成する工程と、実使用環境中に存在する粉塵に対する対塵性能を検査する工程とを有する受光素子の製造方法であって、前記対塵性能を検査する工程に上記本発明の受光素子の対塵性能検査方法を用いることを特徴とする受光素子の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、実使用環境中に存在する粉塵に対する受光素子の対塵性能が検査できる。さらに、本発明によれば、対塵性能に優れる受光素子を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法及びそれを用いた受光素子の製造方法について図1乃至図4を用いて説明する。本実施の形態では、光ヘッドに用いられる受光素子を例にとって説明する。まず、本実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法に用いられる受光素子の概略構成例について図1を用いて説明する。図1は、光ヘッドに用いられる2種類の受光素子1、10の外観斜視図である。
【0017】
図1(a)に示すように、受光素子1は、薄板形状の回路基板7と、薄板形状のカバー層3とを有し、全体として直方体形状を有している。回路基板7のほぼ中央には、薄板形状のシリコン基板9が実装されている。受光素子1は、シリコン基板9の基板面のほぼ中央に形成された受光部11を有している。受光部11は受光面2の平面内に設けられている。受光部11は、光ヘッドの焦点誤差及びトラッキング誤差の誤差検出信号を差動信号に基づいて生成したり、波長の異なる光を受光したりするように、例えば図中に破線で示すように6個の領域に電気的に分割されている。
【0018】
カバー層3はシリコン基板9及び回路基板7に跨って形成されている。カバー層3は、例えばエポキシ樹脂材料又はシリコーン樹脂材料の透明絶縁性材料で形成されている。
【0019】
シリコン基板9は、シリコン基板9の対向する一対の端辺に沿ってそれぞれ形成された複数の電極パッド13を有している。シリコン基板9の当該端辺に沿って、回路基板7の対向する一対の端辺には、例えば電極パッド13と同数の電極端子15が形成されている。受光素子1は、電極端子15を用いて受光素子1を実装する実装基板(不図示)と電気的に接続される。複数の電極パッド13は複数の配線17により複数の電極端子15にそれぞれ電気的に接続されている。受光素子1は受光した光の光量を受光部11で光電変換して電極パッド13から電気信号を出力する。当該電気信号は配線17及び電極端子15を介して受光素子1が実装された実装基板上の所定の回路に入力される。なお、シリコン基板9及び回路基板7により、COB(Chip On Board)基板が構成されている。
【0020】
カバー層3は、電極パッド13、配線17及び電極端子15によって構成されるボンディング部を覆って形成されている。このため、カバー層3は水分によるボンディング部の腐食や粉塵によるボンディング部の短絡を防止することができる。
【0021】
一方、図1(b)に示すように、受光素子10は、カバー層5の形状を除いて受光素子1と同様の形状を有している。受光素子10のカバー層5は、受光部11を露出する開口部4を有している。カバー層5は、受光素子10の外周囲側から開口部4側に向かって厚さが薄くなるように傾斜して、受光部11上がへこんだ形状を有している。カバー層5の開口部4近傍は曲面状に形成されている。
【0022】
次に、本実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法について図2乃至図4を用いて説明する。図2は、受光素子の対塵性能検査方法を模式的に示している。図2では、受光素子1が例示されているが、受光素子10も同様にして対塵性能が検査される。本実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法は、図2(a)に示すように、まず受光面2を液体滴下装置21に向けて、受光素子1を液体滴下装置21の鉛直下方に配置する。液体滴下装置21は、筐体31と、試験用の多数の粉体25が混入された液体23を収納する液体収納容器27と、筐体31の鉛直下方に配置されて液体23を滴下するノズル29とを有している。液体23には、例えば水道水や純水が用いられる。液体23は粉体25を受光面2上方に安定に付着させるためのバインダー(接合剤)として機能する。次いで、液体23中に多数の粉体25がほぼ均一に存在するように、例えば液体収納容器27内の液体23を攪拌する。液体23は常に攪拌されていてもよいし、あるいは滴下する直前に攪拌されてもよい。次いで、液体23を液体収納容器27から筐体31に流入してノズル29から受光素子1の受光面2上方のカバー層3上に滴下する。
【0023】
ここで、本実施の形態に使用する試験用の粉体25について説明する。受光素子1を備えた光ヘッドは、一般に室内で使用される。室内の空気中に存在する塵埃を調べたところ、綿埃と砂埃とに大別できることがわかった。綿埃は砂埃に比べると大きいので光ヘッドの内部にほとんど入り込まない。このため、綿埃の受光素子1の対塵性能への影響は無視できる。これに対し、砂埃は相対的に小さいので光ヘッド内部にまで入り込んで、受光素子1の対塵性能に影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施の形態では、室内に存在する砂埃とほぼ同じ粒径の粉体が用いられている。具体的には、粒径が5μm〜30μmの粉体が用いられ、例えば粒径が約10μmの粉体が用いられる。本実施の形態では、例えばJIS規格Z8901で定められた試験用粉体8種(関東ローム)が用いられる。
【0024】
次に、液体23に混入される粉体25の混入量について図3を用いて説明する。粉体25の混入量は、受光素子の使用年数と受光面上方に付着した粉体の付着面積率との関係と、粉体の付着面積率と液体に混入される粉体の混入量との関係とを用い、受光素子の使用年数に対する粉体の混入量から決定される。これらの関係は、例えば受光素子の対塵性能が検査される前に予め求められる。
【0025】
図3(a)は、受光素子の使用年数に対する受光面上方に付着した粉体の付着面積率の特性を例示している。横軸は、受光素子の使用年数(年)を表し、縦軸は粉体の付着面積率を表している。付着面積率とは、受光面内に設けられた受光部を含むカバー層表面の所定領域の面積に対する当該所定領域内に付着した粉体の面積の比率をいう。図3(b)は、粉体の付着面積率と、液体の体積に対する粉体の混入量との関係を例示している。横軸は、粉体の付着面積率(%)を表し、縦軸は液体の体積に対する粉体の混入量(mg/ml)を表している。
【0026】
図3(a)に示す特性は、例えば上記の粉塵環境試験機の試験槽内に噴射する粉体の量に基づいて得られる。例えばIEC60721−3−3規格を基準として試験槽内に所定年数に相当する粉体を噴射して、受光素子の受光面上方に粉体を付着させる。次いで、受光素子の受光面上方に付着した粉体の面積を例えば輝度ヒストグラムを用いた画像処理により算出する。試験槽内に噴射する粉体の量を変えながら、受光面上方の付着面積率を算出することにより、図3(a)に示す特性が得られる。
【0027】
図3(b)に示す特性は、例えば図2(a)に示す液体滴下装置21を用いて求められる。例えば、所定量の液体中に対塵性能検査に用いるのと同様の粉体を混入して、例えばカバー層と同じ材料で形成された基板上に液体を滴下して当該基板を乾燥させて粉体を残留する。粉体の付着面積率を図3(a)と同様の手法により求める。これにより、粉体の付着面積率と液体の体積に対する粉体の混入量との関係が得られる。液体の体積を一定として混入する粉体の量を変えて、上記測定を繰り返すことにより、図3(b)に示す特性が得られる。なお、付着面積率の算出時に基準とする領域の面積は、図3(a)の縦軸の付着面積率を算出したのと同じ面積とする。これにより、図3(a)の縦軸と図3(b)の横軸とを共通化できるので、両特性に基づいて、検査対象とする使用年数に対して混入すべき粉体の混入量を容易に求めることがきる。
【0028】
図2に戻って、図2(b)に示すように、受光素子1上に液体23を滴下したら、受光素子1の受光面2上方のカバー層3を例えば自然乾燥して液体23を蒸発させ、受光面2上方に粉体25を残留する。粉体25を残留するために、自然乾燥ではなく受光素子1を加熱して乾燥してもよい。
【0029】
次に、受光面2上方の粉体25の残留量に基づいて受光素子1の対塵性能を検査する。粉体25の残留量は、受光面2内に設けられた受光部11に入射する光の光量を光電変換した電気信号の電圧値に基づいて判定される。液体23滴下前の受光素子1のカバー層3表面には、粉体25が付着していない。このため、受光素子1に入射した光は光量がほとんど減衰せずに受光部11で受光される。従って、光の光量を光電変換した電気信号の電圧値は設計値にほぼ等しくなる。これに対し、図2(c)に示すように、液体23を滴下して乾燥した後の受光素子1のカバー層3表面には、粉体25が残留している。このため、受光素子1に入射した光L1は粉体25に妨げられるので、受光部11に入射する光L2の光量は光L1の光量より低くなる。このため、液体23滴下前後で同じ光量の光L1を受光素子1に入射したとしても、液体23滴下後の受光素子1が出力する電気信号は液体23滴下前の受光素子1が出力する電気信号より電圧値が低くなる。
【0030】
一方、受光部11の電気的特性である光電変換特性は粉体25の付着の有無で変わらない。また、粉体25の残留量は図3(a)、及び、図3(b)から求めた実使用期間における粉塵の付着量であるので、液体23滴下前後で同じ光量の光を受光素子1に入射し、当該光量を光電変換した電気信号の電圧値の差は受光素子1を当該の期間で実使用した場合の光電変換特性の劣化を示す。そこで、受光素子の対塵性能は、光電変換により得られた電気信号の電圧値を液体滴下前後で比較して検査される。当該電気信号の電圧値の低下量が所定値以下であれば、受光素子1の対塵性能が高いという検査結果が得られる。一方、当該電気信号の電圧値の低下量が所定値以上であれば、受光素子1は対塵性能に劣るという検査結果が得られる。
【0031】
図4は、光電変換により得られた電気信号の電圧値を液体滴下前後で比較した結果を示している。図4(a)は、受光素子の使用年数が5年相当の結果を示し、図4(b)は、受光素子の使用年数が10年相当の結果を示している。図4に示すように、本実施の形態では、受光素子1と同一形状の2個の被検体SPL1−1、SPL1−2及び受光素子10と同一形状の2個の被検体SPL10−1、SPL10−2の対塵性能が検査されている。受光素子の使用年数5年及び10年に相当する粉体の混入量は、図3(a)及び図3(b)に基づいて決定される。例えば、使用年数5年の場合には、粉体の付着面積率は約3%(=付着面積:10000μm/所定領域面積:341000μm)となり、液体の体積に対する粉体の混入量は約0.3(mg/ml)となる。例えば液体23としての水道水の体積が20mlとすると、約6mgの粉体25が液体23に混入される。また、受光素子の使用年数10年の場合には、粉体の付着面積率は約12%(=付着面積:40000μm/所定領域面積:341000μm)となり、液体の体積に対する粉体の混入量は約0.5(mg/ml)となる。例えば液体23としての水道水の体積が20mlとすると、約10mgの粉体25が液体23に混入される。
【0032】
受光素子の対塵性能は、液体滴下前後の電気信号の電圧低下率に基づいて粉体の残留量が判定されて検査される。ここで、光電変換により得られる電気信号の電圧値を、液体滴下前をV1とし、液体滴下後をV2とすると、電圧値V1に対する電圧値V2の電圧低下率ΔV(%)は、以下の式(1)のように表すことができる。
【0033】
ΔV=(V2−V1)/V1×100 ・・・(1)
【0034】
本実施の形態では、6分割された受光部11の領域毎に電圧低下率ΔVが算出される。図4(a)及び図4(b)の最左欄の最小値とは、6分割された受光部11の領域のうちの液体滴下前後で電圧値が最も低下した領域での電圧低下率ΔVをいい、最大値とは、6分割された受光部11の領域のうちの液体滴下前後で電圧値が最も低下しなかった領域での電圧低下率ΔVをいい、平均値とは、6分割された受光部11の領域での電圧低下率ΔVを平均した値をいう。
【0035】
図4(a)に示すように、受光素子の使用期間が5年相当では、被検体SPL1−1、SPL1−2の電圧低下率ΔVは、−9%〜1%の範囲に含まれている。また、被検体SPL10−1、SPL10−2の電圧低下率ΔVは、−6%〜5%の範囲に含まれている。被検体SPL1−1、SPL1−2、SPL10−1、SPL10−2の最大値は、いずれも正になり、液体滴下前より液体滴下後の方が電気信号の電圧値が高くなっている。電圧低下率ΔVが正の値になるのは、使用した測定器が2〜5%程度の測定誤差を有していることが原因であり、見方を変えれば、光電変換により得られた電気信号の電圧値が液体滴下前後でほとんど変化していないこと示す。
【0036】
例えば、受光素子の対塵性能の良否を判定するための閾値を電圧低下率ΔVの平均値=−10%とする。被検体SPL1−1、SPL1−2、SPL10−1、SPL10−2の電圧低下率ΔVの平均値は全て−10%以上である。被検体SPL1−1、SPL1−2、SPL10−1、SPL10−2は液体23滴下後の電気信号の電圧値の低下が小さく、粉体25の影響が少ないと判定される。従って、受光素子1、10は、5年程度の実使用期間に対して、対塵性能に優れているという検査結果を得ることができる。
【0037】
また、図4(a)に示すように、被検体SPL1−1、SPL1−2の電圧低下率ΔVと、被検体SPL10−1、SPL10−2の電圧低下化率ΔVとの間に顕著な差はない。従って、受光素子1、10は、実使用期間5年相当では、ほぼ同じ対塵性能を有しているという検査結果を得ることができる。
【0038】
図4(b)に示すように、受光素子の使用期間が10年相当では、被検体SPL1−1、SPL1−2の電圧低下率ΔVは、液体滴下後に電気信号の電圧値が最も低下したことを示す最小値がそれぞれ−40.62%、−53.29%となる。また、被検体SPL1−1、SPL1−2の電圧低下率ΔVの平均値はそれぞれ−11.92%、−18.31%となり上記の閾値以下になる。被検体SPL1−1、SPL1−2は液体23滴下後の電気信号の電圧値の低下が大きく、受光素子1は、10年程度の実使用期間に対し、対塵性能が劣っているという検査結果を得ることができる。
【0039】
これに対し、被検体SPL10−1、SPL10−2の電圧低下率ΔVは、−2%〜4%の範囲に含まれる。被検体SPL10−1、SPL10−2の電圧低下率ΔVの平均値は上記の閾値以上になる。被検体SPL10−1、SPL10−2は液体23滴下後の電気信号の電圧値の低下が少なく、受光素子10は、10年程度の実使用期間に対し、優れた対塵性能を有しているという検査結果を得ることができる。さらに、受光素子10は受光素子1に比べて対塵性能に優れていることも判定できる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態によれば、粉体が混入された液体を受光素子の受光面上方に直接滴下するので、検査装置に依存する誤差が極めて低減された受光素子の対塵性能の検査が可能になる。これにより、カバー層の形状が異なる受光素子間の対塵性能の比較検査を高精度に行うことができる。また、実使用環境中に存在する粉塵とほぼ同じ粒径の粉体を用い、さらに実使用期間に応じて液体中の粉体量を変えることにより、実使用環境中に存在する粉塵に対する受光素子の対塵性能を検査できる。さらに、本実施の形態によれば、受光素子に付着する粉体の付着量を光電変換特性によって数値化して判定できるので、受光素子の対塵性能を客観的に検査できる。さらに、受光素子の対塵性能の検査結果に基づいて、対塵性能の優れた受光素子を選別して出荷できる。
【0041】
次に、本実施の形態による受光素子の製造方法について図1を参照しつつ説明する。本実施の形態による受光素子1、10の製造方法は、光を受光する受光部11や電極パッド13をシリコン基板9上に形成する工程と、シリコン基板9を電極端子15や不図示の回路パターンが形成された回路基板7上に実装する工程と、電極パッド13と電極端子15とを配線17で接続する工程と、シリコン基板9及び回路基板7上にカバー層3、5を形成する工程と、実使用環境中に存在する粉塵に対する対塵性能を検査する工程とを有している。受光素子1、10の対塵性能を検査する工程には、上記の受光素子の対塵性能検査方法が用いられる。従って、本実施の形態によれば、対塵性能に優れる受光素子を製造することができる。
【0042】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施の形態では、光ヘッドに用いられる受光素子1、10を例にとって説明したが、本発明はこれに限られない。本実施の形態は、光ヘッド用途以外の受光素子にも適用できる。例えば、実使用環境雰囲気中に存在する粉塵とほぼ同じ粒径の試験用の粉体を選択し、受光素子が実使用環境で使用される状態が再現できるだけの粉体が混入された液体を受光素子の受光面上方に滴下することにより、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0043】
カバー層3、5と異なる形状のカバー層を有する受光素子であっても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法に用いられる受光素子1、10の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法であって、液体23中に混入される粉体量を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施の形態による受光素子の対塵性能検査方法であって、光電変換により得られた電気信号の電圧値を液体滴下前後で比較した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1、10 受光素子
2 受光面
3、5 カバー層
4 開口部
7 回路基板
9 シリコン基板
11 受光部
13 電極パッド
15 電極端子
17 配線
21 液体滴下装置
23 液体
25 粉体
27 液体収納容器
29 ノズル
31 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を混入した液体を受光素子の受光面上方に滴下し、
前記受光面上方を乾燥して前記受光面上方に前記粉体を残留させ、
前記受光面上方の前記粉体の残留量に基づいて前記受光素子の対塵性能を検査すること
を特徴とする受光素子の対塵性能検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の受光素子の対塵性能検査方法であって、
前記粉体は、前記受光素子の実使用環境中に存在する粉塵とほぼ同じ粒径を有していること
を特徴とする受光素子の対塵性能検査方法。
【請求項3】
請求項2記載の受光素子の対塵性能検査方法であって、
前記粒径は、5μm〜30μmであること
を特徴とする受光素子の対塵性能検査方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の受光素子の対塵性能検査方法であって、
前記粉体は、関東ロームであること
を特徴とする受光素子の対塵性能検査方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受光素子の対塵性能検査方法であって、
前記受光面内に設けられた受光部に入射する光の光量を光電変換した電気信号の電圧値に基づいて前記残留量を判定すること
を特徴とする受光素子の対塵性能検査方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の受光素子の対塵性能検査方法であって、
前記液体中に前記粉体がほぼ均一に存在するようにしてから前記液体を前記受光素子の前記受光面上方に滴下すること
を特徴とする受光素子の対塵性能検査方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受光素子の対塵性能検査方法であって、
前記粉体の混入量は、予め求められた前記受光素子の使用年数に対する前記受光面上方への前記粉体の付着面積率に基づいて決定されること
を特徴とする受光素子の対塵性能検査方法。
【請求項8】
光を受光する受光部を基板上に形成する工程と、前記基板上にカバー層を形成する工程と、実使用環境中に存在する粉塵に対する対塵性能を検査する工程とを有する受光素子の製造方法であって、
前記対塵性能を検査する工程に請求項1乃至7のいずれか1項に記載の受光素子の対塵性能検査方法を用いること
を特徴とする受光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−26119(P2008−26119A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198269(P2006−198269)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】