説明

受口形成装置及び抜枠鋳型造型装置

【課題】 受口及び湯口への砂粒の混入を防止しつつ、造型時に受口を形成する受口形成装置及び抜枠鋳型造型装置を提供する。
【解決手段】 抜枠鋳型造型装置に用いられ受口を形成する受口形成装置において、上スクイズプレートと一体化するための取付部と、取付部から下方側に向けて取付部と一体に設けられ、受口の斜面を形成する先端先細り状の斜面形成部と、斜面形成部の先端から取付部の端面まで貫通するように形成され、湯口を形成する湯口棒を挿通可能とする挿通部と、斜面形成部の基端側で、且つこの基端の外側に位置して立ち上がり形成されるとともに、壁面が外側に向くようにされた周壁部とを備え、斜面形成部と、周壁部との間には、周方向に形成された溝部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜枠鋳型造型装置に用いられ、鋳型を造型する際に受口を形成する受口形成装置及びこれを用いた抜枠鋳型造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抜枠鋳型造型装置として、例えば特許文献1に記載されたような装置が知られている。このような抜枠鋳型造型装置は、上下鋳型を鋳枠内で造型した後に、上下鋳型を型合わせして抜枠を行う。また、抜枠鋳型造型装置には、上下鋳型を造型する際に、上鋳型に受口及び湯口を形成することが行われる。この受口及び湯口に、砂粒が混入すると、溶湯に巻き込まれて砂かみ不良が発生して問題となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4281799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、受口及び湯口への砂粒の混入を防止しつつ、造型時に受口を形成する受口形成装置及び抜枠鋳型造型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る受口形成装置は、マッチプレートを挟持する上下鋳枠と、該上下鋳枠の開口部に挿入され造型空間を形成する上下スクイズプレートとにより形成された造型空間に充填された鋳型砂を圧縮して上下鋳型を造型する抜枠鋳型造型装置に用いられるとともに、上スクイズプレートに取り付けられて上鋳型に受口を形成する受口形成装置において、前記上スクイズプレートと一体化するための取付部と、前記取付部から下方側に向けて前記取付部と一体に設けられ、前記受口の斜面を形成する先端先細り状の斜面形成部と、前記斜面形成部の先端から前記取付部の端面まで貫通するように形成され、湯口を形成する湯口棒を挿通可能とする挿通部と、前記斜面形成部の基端側で、且つこの基端の外側に位置して立ち上がり形成されるとともに、壁面が外側に向くようにされた周壁部とを備え、前記斜面形成部と、前記周壁部との間には、周方向に形成された溝部が形成されている。
【0006】
また、本発明に係る抜枠鋳型造型装置は、上述の受口形成装置を備えるとともに、さらに、マッチプレートを挟持する上下鋳枠と、該上下鋳枠の開口部に挿入され造型空間を形成する上下スクイズプレートとを備え、前記造型空間に充填された鋳型砂を圧縮して上下鋳型を造型するとともに、該造型と同時に上鋳型に受口を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、受口形成装置が斜面形成部及び周壁部を備え、これらの間に溝部が形成されているので、造型時に受口を形成するとともに、受口及び湯口への砂粒の混入を防止することを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明が適用された抜枠鋳型造型装置の抜枠工程を示す断面図である。
【図2】抜枠鋳型造型装置の上スクイズプレートに設けられる受口形成装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明及び以下の説明において、湯口とは、溶湯を鋳型内に導く最初の流路を意味し、該湯口は、一般的には垂直に設けられ湯道に接続される。受口とは、湯口上部に溶湯が注ぎこまれる部分を意味する。この受口は、注湯しやすいように形成されており、例えばろうと(漏斗)形に成形されることがある。湯口棒とは、鋳型に湯口を作る棒状の模型である。せき(堰)とは、湯口系を構成する部分の一つで、湯道と鋳物部を結ぶ溶湯の流路を意味する。円錐状とは、円錐面を有する形状や、円錐面を底面と平行な平面で切り取った形状を含むものとする。
【0010】
以下、本発明を適用した抜枠鋳型造型装置(以下、「鋳型造型装置1」という。)について、図1を参照して説明する。図1(a)は、マッチプレートから抜型された後に上下鋳型が型合わせされた状態を示す図である。図1(b)は、抜枠途中を示し、上スクイズプレートにより上下鋳型が押し下げられている状態を示す図である。図1(c)は、下スクイズプレートにより上下鋳型が下降されるとともに、上下鋳型から上スクイズプレートが離間した状態を示す図である。
【0011】
図1に示すように、鋳型造型装置1は、少なくとも、図示しないマッチプレートを挟持する上下鋳枠(上鋳枠2及び下鋳枠3)と、該上下鋳枠の開口部に挿入され造型空間を形成する上下スクイズプレート(上スクイズプレート4及び下スクイズプレート5)とを備える。この鋳型造型装置1は、造型空間に充填された鋳型砂を圧縮して上下鋳型(上鋳型6及び下鋳型7)を造型する。
【0012】
また、鋳型造型装置1は、上スクイズプレート4に取り付けられて上鋳型6に受口8を形成する受口形成装置として、例えば図2(a)に示すような受口形成装置10又は図2(b)に示すような受口形成装置20を有している。鋳型造型装置1は、上述の造型と同時に上鋳型6に受口8を形成する装置である。
【0013】
図2で示した受口形成装置10,20は、本発明を適用した受口形成装置である。該受口形成装置10,20の説明に先立ち、鋳型造型装置1の抜型動作について説明するとともに、この抜型動作に関連して従来の受口形成装置の問題点を説明する。
【0014】
まず、図1を用いて鋳型造型装置1の抜枠工程について説明する。図1の前工程では、スクイズ、抜型、型合わせが行われる。図1(a)では、図示しない昇降手段で上昇された下スクイズプレート5と、図示しない昇降手段で下降された上スクイズプレート4とで上下鋳型6,7が挟まれる。このとき、下スクイズプレート5は、モールド受けとして機能する。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、上スクイズプレート4が下降されるとともに、下スクイズプレート5がこれに同調して下降されることにより、上下鋳型6,7が下降される。この際、上下鋳型6,7は、上下鋳枠2,3から拘束を解かれ、すなわち、上下鋳枠2,3からの保持力が開放された状態とされている。
【0016】
この状態で、上スクイズプレート4が上昇されるとともに、下スクイズプレート5は、上下鋳型6,7を載置させた状態で下降される。この際に、上鋳型6の上面から上スクイズプレートが離間するときに、上鋳型6の上面と上スクイズプレート4の下面との間が負圧となり、外周部から中心部に向けて気流が発生する。本発明者達は、この気流発生の現象を見出し、この気流により、上鋳型6の上面及び外周部の砂粒が中心部に吹き寄せられ、従来の受口形成装置を用いた場合では、上鋳型6に形成された溶湯を受ける受口8から湯口9に砂粒が混入するおそれがある点に着目し、これを解決するために、本発明に係る受口形成装置を見出した。
【0017】
尚、混入した砂粒は、溶湯に巻き込まれ、砂かみ不良の原因となることがある。このような不良対策のため、湯道、堰等の形状を工夫することが考えられるが、完全に防止することができず、また、ストレーナー使用という対策も考えられるが、該ストレーナーをセットする煩雑な作業が必要となり、ストレーナーの購入費用も必要になる等の問題点があった。さらに、気流を抑えるため、上スクイズプレート4の上昇速度を極めて低速にすることも考えられるが、造型速度が遅くなり生産効率の低下を招く。
【0018】
この現象が生じた後に、図1(c)で示すように、上鋳枠1と上スクイズプレート4が上昇し、モールド受けとして機能する下スクイズプレート5が上下鋳型6,7を載せた状態で下降されて抜枠工程が完了する。
【0019】
次に、図2(a)を用いて、上述の問題を解消する本発明を適用した受口形成装置10について具体的に説明する。受口形成装置10は、上スクイズプレート4に取り付けられて上鋳型6に受口8を形成する受口形成装置である。
【0020】
該受口形成装置10は、上スクイズプレート4と一体化するための取付部11と、取付部11から下方側に向けて取付部11と一体に設けられ、受口8の斜面を形成する先端先細り状の斜面形成部12と、斜面形成部12の先端12aから取付部11の端面11aまで貫通するように形成され、湯口9を形成する湯口棒16を挿通可能とする挿通部13と、斜面形成部12の基端12b側で、且つこの基端12bの外側に位置して立ち上がり形成されるとともに、壁面14aが外側に向くようにされた周壁部14とを備える。斜面形成部12と、周壁部14との間には、周方向に形成された溝部15が形成されている。
【0021】
取付部11は、円筒状に形成されるとともに外周部にはネジ部11bが形成されている。受口形成装置10は、この取付部11のネジ部11bにより、上スクイズプレート4のネジ部が形成された取付孔部4aに取り付け固定される。
【0022】
斜面形成部12は、例えば円錐状に形成されているとともに、径が小さい方の端部が上述の先端12aとなり、径が大きい方の端部が上述の基端12bとなり、この基端12b側で取付部11と一体になるように構成されている。ここでは、取付部11及び斜面形成部12は、構成を簡素化するため一体部材である。
【0023】
斜面形成部12と、周壁部14とは、別体の部材であり、溝部15を形成するような状態で接合されている。ここで、斜面形成部12と周壁部14とは、接着剤等により一体となるようにしてもよいが、ここでは、斜面形成部12と一体にされた取付部11を上スクイズプレート4に固定する際に、周壁部14を斜面形成部12の基端12bと上スクイズプレート4の下端との間で挟持して一体化している。斜面形成部12及び後述の斜面形成部22は、例えばポリエチレン等の樹脂からなり、周壁部14は、例えば、鉄等の金属からなる。
【0024】
周壁部14には、挟持するための板状部分14cと、この板状部分14cの外周に沿って立ち上げられるリング状部分14bとが設けられる。リング状部分14bの外側には、壁面14aが形成される板状部分14cには、内側に取付部11を挿通するための挿通孔14dが形成される。
【0025】
以上のように構成される受口形成装置10は、前記気流により上鋳型6の上面及び外周部の砂粒が矢印S1で示すように吹き寄せられたときに、吹き寄せられた砂粒17を、衝立部材として機能する周壁部14の壁面14aで止めることができる。これにより、受口8及び湯口9への砂粒混入を防止できる。
【0026】
さらに、受口形成装置10は、抜枠工程が進んだときに、周壁部14で止められた砂粒17が吹き寄せされてしまった場合にも、周壁部14及び溝部15により受口8の外周に形成された混入防止溝18により、この砂粒17を収容して受口8及び湯口9への砂粒混入を防止できる。すなわち、混入防止溝18は、周壁部14及び溝部15により、受口8形成時に同時に形成され、衝立としての壁面14aで止めた砂が落下した場合に留める機能を有する。
【0027】
尚、周壁部14の高さは、10mm〜25mm程度とされており、この周壁部14の高さ分だけ上スクイズプレート4が上昇したときには、上鋳型6の上面の周囲と中央部の圧力差が小さくなっている。この状態で、砂粒17が吹き寄せられた場合には、上述の混入防止溝18の機能により、混入を防止している。この混入防止溝18で壁面14aで止めた砂粒17を収容した状態よりさらに、上スクイズプレート4が上昇したときには、上スクイズボード4と上鋳型6の上面の隙間がかなり広くなっており、鋳型上面の周囲と中央部の圧力差が小さく、さらに砂粒が吹き寄せられることはない。
【0028】
続いて、図2(b)を用いて、上述の問題を解消する本発明を適用した受口形成装置20について具体的に説明する。受口形成装置20は、上スクイズプレート4に取り付けられて上鋳型6に受口8を形成する受口形成装置である。
【0029】
該受口形成装置20は、上スクイズプレート4と一体化するための取付部21と、取付部21から下方側に向けて取付部21と一体に設けられ、受口8の斜面を形成する先端先細り状の斜面形成部22と、斜面形成部22の先端22aから取付部21の端面21aまで貫通するように形成され、湯口9を形成する湯口棒16を挿通可能とする挿通部23と、斜面形成部22の基端22b側で、且つこの基端22bの外側に位置して立ち上がり形成されるとともに、壁面24aが外側に向くようにされた周壁部24とを備える。斜面形成部22と、周壁部24との間には、周方向に形成された溝部25が形成されている。
【0030】
取付部21は、円筒状に形成されるとともに外周部にはネジ部21bが形成されている。受口形成装置20は、この取付部21のネジ部21bにより、上スクイズプレート4のネジ部が形成された取付孔部4aに取り付け固定される。
【0031】
斜面形成部22は、例えば円錐状に形成されているとともに、径が小さい方の端部が上述の先端22aとなり、径が大きい方の端部が上述の基端22bとなり、この基端22b側で取付部21と一体になるように構成されている。ここでは、取付部21及び斜面形成部22は、構成を簡素化するため一体部材である。
【0032】
斜面形成部22と、周壁部24とは、溝部25が形成された一体部材からなる。換言すると、周壁部24及び溝部25は、斜面形成部22の周囲が段付き状にされていることで形成されている。
【0033】
以上のように構成される受口形成装置20は、前記気流により上鋳型6の上面及び外周部の砂粒が矢印S2で示すように吹き寄せられたときに、吹き寄せられた砂粒27を、衝立部材として機能する周壁部24の壁面24aで止めることができる。これにより、受口8及び湯口9への砂粒混入を防止できる。
【0034】
さらに、受口形成装置20は、抜枠工程が進んだときに、周壁部24で止められた砂粒27が吹き寄せされてしまった場合にも、周壁部24及び溝部25により受口8の外周に形成された混入防止溝28により、この砂粒27を収容して受口8及び湯口9への砂粒混入を防止できる。すなわち、混入防止溝28は、周壁部24及び溝部25により、受口8形成時に同時に形成され、衝立としての壁面24aで止めた砂が落下した場合に留める機能を有する。
【0035】
尚、周壁部24の高さは、周壁部14と同様に10mm〜25mm程度とされており、周壁部24を有する受口形成装置20は、周壁部14を有する受口形成装置10と同様の効果を有する。
【0036】
また、受口形成装置10,20を用いた鋳型造型装置及び方法は、鋳型の受口8を成型するカップ状の部材(斜面形成部12,22)の周囲にリング状の衝立(周壁部14,24)を設けたスクイズプレートで鋳型を造型して、鋳型の受口8の周囲に溝を成型することに特徴を有する。
【0037】
以上のように、本発明を適用した受口形成装置10,20及びこれを用いた鋳型造型装置や方法は、斜面形成部12,22及び周壁部14,24を備え、これらの間に溝部15,25が形成されているので、造型時に受口8を形成するとともに、受口8及び湯口9への砂粒の混入を防止することを実現する。
【0038】
すなわち、受口形成装置10,20等は、湯口部への砂粒の混入が回避でき、湯道、堰等の形状工夫の必要がなくすことができ、また、ストレーナーセットの煩雑な作業と購入費用も不要にでき、生産効率の低下を招くことを防止できる。
【符号の説明】
【0039】
1 鋳型造型装置
2 上鋳枠
3 下鋳枠
4 上スクイズプレート
5 下スクイズプレート
6 上鋳型
7 下鋳型
8 受口
9 湯口
20 受口形成装置
21 取付部
22 斜面形成部
23 挿通部
24 周壁部
25 溝部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッチプレートを挟持する上下鋳枠と、該上下鋳枠の開口部に挿入され造型空間を形成する上下スクイズプレートとにより形成された造型空間に充填された鋳型砂を圧縮して上下鋳型を造型する抜枠鋳型造型装置に用いられるとともに、上スクイズプレートに取り付けられて上鋳型に受口を形成する受口形成装置において、
前記上スクイズプレートと一体化するための取付部と、
前記取付部から下方側に向けて前記取付部と一体に設けられ、前記受口の斜面を形成する先端先細り状の斜面形成部と、
前記斜面形成部の先端から前記取付部の端面まで貫通するように形成され、湯口を形成する湯口棒を挿通可能とする挿通部と、
前記斜面形成部の基端側で、且つこの基端の外側に位置して立ち上がり形成されるとともに、壁面が外側に向くようにされた周壁部とを備え、
前記斜面形成部と、前記周壁部との間には、周方向に形成された溝部が形成されている受口形成装置。
【請求項2】
前記斜面形成部は、円錐状に形成されている請求項1記載の受口形成装置。
【請求項3】
前記斜面形成部と、前記周壁部とは、別体の部材であり、前記溝部を形成するような状態で接合されている請求項1記載の受口形成装置。
【請求項4】
前記斜面形成部と、前記周壁部とは、前記溝部が形成された一体の部材からなる請求項1記載の受口形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の内いずれか1項に記載の受口形成装置を備えるとともに、
さらに、マッチプレートを挟持する上下鋳枠と、該上下鋳枠の開口部に挿入され造型空間を形成する上下スクイズプレートとを備え、
前記造型空間に充填された鋳型砂を圧縮して上下鋳型を造型するとともに、該造型と同時に上鋳型に受口を形成する抜枠鋳型造型装置。


【図1】
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【図2】
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