説明

口内炎治療のための口腔用組成物

【課題】
本発明は、口内炎治療効果の優れた口腔用組成物を提供する。
【解決手段】
本発明は、アラントイン又はその誘導体、及びパンテノールなどのビタミンB又はその誘導体を含有してなる口内炎治療のための口腔用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口内炎治療のための口腔用組成物に関する
【背景技術】
【0002】
口内炎は、口腔粘膜に生じた粘膜炎がびまん性あるいは散在性に広がった口腔粘膜の炎症の総称であり、罹患部位によって口唇炎、頬粘膜炎、歯肉炎、舌炎などに、また臨床形態学的にはアフタ性、カタル性、びらん性、潰瘍性、壊疽性などに分類される。日常診療においてよく遭遇する口内炎はアフタ性であり、しばしば再発を繰り返し、再発性アフタ性口内炎とも呼ばれる。この再発性アフタ性口内炎では粘膜潰瘍が形成され、患者は疼痛、特に接触痛のために摂食障害や嚥下・発語障害に悩まされる。
再発性アフタ性口内炎の治療は、発症原因が明らかな場合はその治療が行なわれる。しかしながら、発症原因は放射線照射やう歯・義歯の接触などの機械的・化学的刺激、細菌・真菌・ウイルスの感染、ベーチェット病、ビタミン欠乏など様々であり不明なものが多く、従来の治療法のみでは完治させることは難しい。
【0003】
また、多くの抗癌剤には難治性の口内炎を頻発させるという副作用があることもよく知られている。抗癌剤による治療を受けている患者における難治性口内炎の問題は、患者の食事の摂取時に激しい痛みを伴い患者の食欲を大きく減退させ、抗癌剤治療における大きな障害となってきている。
口内炎の治療薬としては、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド等のステロイド系抗炎症剤が軟膏、局所用錠剤、局所噴霧剤等の形態で使用されてきていたが、これらステロイド系抗炎症剤含有口内炎治療薬の使用によっても治癒力は高くなく、当該ステロイド系抗炎症剤とプロスタグランジン類とを併用した薬剤(特許文献1参照)、スルホデヒドロアビエチン酸(化学名:(+)−(1R,4aS,10aR)−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−1,4a−ジメチル−7−(1−メチルエチル)−6−スルホ−1−フェナンスレンカルボン酸)を有効成分とする薬剤(特許文献2参照)、L−カルノシン亜鉛塩、又はL−カルノシン亜鉛塩とアルギン酸ナトリウムを有効成分とする薬剤(特許文献3参照)、殺菌剤と消炎剤とを含有し、さらに粘膜吸収性の局所麻酔剤を含有してなる薬剤(特許文献4参照)、アセチルサリチル酸リジン塩などの鎮痛剤と増粘剤とを含有してなる薬剤(特許文献5参照)などが報告されてきている。
【0004】
また、塩化セチルピリジニウムやヒノキチオールなどの抗菌成分、グリチルリチン酸ニカリウムなどの抗炎症成分、及びアラントインなどの創傷治癒作用を有する成分を配合した製剤の塗布などによる局所療法等も行なわれてきている。
一方、ビタミンBやパンテノール等のプロビタミンBは、創傷治癒作用を有することが知られており(非特許文献1参照)、内服薬としての口内炎治療薬を初めとして眼科用薬、毛髪用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎薬及び皮膚軟化薬等に用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−226644号
【特許文献2】特開2003−2828号
【特許文献3】特開平10−17490号
【特許文献4】特開平9−95456号
【特許文献5】特開平8−295637号
【非特許文献1】Weiser H., et. Al., Cosmet. Toiletries, 103(10), 79(1988).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、口内炎治療効果の優れた口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく医薬成分の配合について鋭意検討した結果、アラントイン又はその誘導体と、ビタミンB又はその誘導体とを配合することにより、口腔内の創傷治癒作用が相乗的に向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、アラントイン又はその誘導体、及びビタミンB又はその誘導体とを含有してなる口腔用組成物、より詳細には、アラントイン又はその誘導体、及びビタミンB又はその誘導体、並びに製薬上許容される担体を含有してなる口腔用組成物、さらに詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
また、本発明は、アラントイン又はその誘導体、ビタミンB又はその誘導体、及び抗菌作用を有する成分を含有してなる口腔用組成物、より詳細には、アラントイン又はその誘導体、ビタミンB又はその誘導体、及び抗菌作用を有する成分、並びに製薬上許容される担体を含有してなる口腔用組成物、さらに詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
また、本発明は、アラントイン又はその誘導体、ビタミンB又はその誘導体、及び抗炎症作用を有する成分を含有してなる口腔用組成物、より詳細には、アラントイン又はその誘導体、ビタミンB又はその誘導体、及び抗炎症作用を有する成分、並びに製薬上許容される担体を含有してなる口腔用組成物、さらに詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
さらに、本発明は、アラントイン又はその誘導体、ビタミンB又はその誘導体、抗菌作用を有する成分、及び抗炎症作用を有する成分を含有してなる口腔用組成物、より詳細には、アラントイン又はその誘導体、ビタミンB又はその誘導体、抗菌作用を有する成分、及び抗炎症作用を有する成分、並びに製薬上許容される担体を含有してなる口腔用組成物、さらに詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
【0008】
より具体的には、本発明は、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインヒドロキシアルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、並びにパントテン酸若しくはその塩、パントテニルエチルエーテル、及びパンテノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有してなる口腔用組成物、より詳細には、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインヒドロキシアルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、パントテン酸若しくはその塩、パントテニルエチルエーテル、及びパンテノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、並びに製薬上許容される担体を含有してなる口腔用組成物、さらに詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
また、本発明は、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインヒドロキシアルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、パントテン酸若しくはその塩、パントテニルエチルエーテル、及びパンテノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、並びに塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオール、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、チモール、ヨウ化カリウム、ヨウ素、及びアクリノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の抗菌作用を有する成分を含有してなる口腔用組成物、より詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインヒドロキシアルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、パントテン酸若しくはその塩、パントテニルエチルエーテル、及びパンテノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、並びにグリチルリチン酸二カリウム、グルチルレチン酸、アズレン、及びアズレンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の抗炎症作用を有する成分を含有してなる口腔用組成物、より詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
さらに、本発明は、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインヒドロキシアルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、パントテン酸若しくはその塩、パントテニルエチルエーテル、及びパンテノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分、塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオール、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、チモール、ヨウ化カリウム、ヨウ素、及びアクリノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の抗菌作用を有する成分、並びにグリチルリチン酸二カリウム、グルチルレチン酸、アズレン、及びアズレンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の抗炎症作用を有する成分を含有してなる口腔用組成物、より詳細には、口内炎治療のための口腔用組成物を提供する。
【0010】
本発明におけるビタミンB又はその誘導体としては、これらの生理学的に許容される塩も含まれ、例えば、パントテン酸若しくはその塩、パントテニルエチルエーテル、パンテノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明におけるビタミンB又はその誘導体としては、特にパンテノールが好ましい。
本発明においてアラントイン又はその誘導体としては、アラントイン(N−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル−尿素)、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明におけるアラントイン又はその誘導体としては、特にアラントインが好ましい。
【0011】
本発明においては、上記成分以外に、さらに抗菌作用を有する成分、抗炎症作用を有する成分を配合することができる。
抗菌作用を有する成分としては、塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオール、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、チモール、ヨウ化カリウム、ヨウ素、アクリノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明における抗菌成分としては、特に塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオール、又は塩化セチルピリジニウム及びヒノキチオールの組み合わせが好ましい。
抗炎症作用を有する成分としては、グリチルリチン酸二カリウム、グルチルレチン酸、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明における抗炎症成分としては、特にグリチルリチン酸二カリウムが好ましい。
【0012】
本発明におけるアラントイン又はその誘導体とビタミンB又はその誘導体、さらに任意に配合することができる抗菌作用を有する成分及び抗炎症作用を有する成分の配合比率は特に限定されず、そのような比率は本明細書の実施例に具体的に示した試験方法により当業者が適宜選択可能である。好ましい配合比率としては、ビタミンB又はその誘導体1重量部に対してアラントイン又はその誘導体を0.1〜5.0重量部、好ましくは0.4〜3.0重量部とするのが好ましい。さらに配合される抗菌作用を有する成分は、ビタミンB又はその誘導体1重量部に対して0.1〜3.0重量部、好ましくは0.3〜2.5重量部、抗炎症作用を有する成分は0.01〜3.0重量部、好ましくは0.04〜2.5重量部配合することができる。特に好ましい配合例としては、抗菌作用を有する成分として塩化セチルピリジニウム及び/又はヒノキチオールを用いて、ビタミンB又はその誘導体としてのパンテノール1重量部に対して、アラントイン又はその誘導体としてのアラントイン0.5〜2.0重量部、好ましくは0.6〜1.7重量部、抗菌作用を有する成分としての塩化セチルピリジニウムを0.1〜2.0重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部、抗菌作用を有する成分としてのヒノキチオールを0.1〜1.0重量部、好ましくは0.2〜0.5重量部、及び抗炎症作用を有する成分としてのグリチルリチン酸二カリウムを0.5〜2.5重量部、好ましくは0.8〜1.5重量部の範囲で配合される場合が挙げられる。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、例えば軟膏剤、クリーム剤、液剤、貼付剤、パッチ等として調製、適用されるが、軟膏剤やクリーム剤が局所への付着による効果の持続や使用感の観点より特に好ましい。
本発明の口腔用組成物の調製には、必要に応じて、製剤化において通常用いられる製剤用の添加物を1種又は2種以上用いてもよい。このような製剤用の添加物としては、例えば、水、増粘剤、乳化剤、中和剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、香料及び油脂類等の基剤成分を配合することが可能であるが、必ずしも配合されていなくてもよく、また配合可能なものとしてこれらに限定されるものではない。
【0014】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ローカストビーンガム、グアーガム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
乳化剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリオキシエチレン、ラウロマクロゴール、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルリン酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−アシルザルコシン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド類、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルベタイン類等が挙げられる。
中和剤としては、塩酸などの無機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等などの水酸化アルカリ、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどのアミン類等が挙げられる。
【0015】
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類等が挙げられる。
安定化剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸或いはその塩類等が挙げられる。
湿潤剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
香料としては、スペアミント油、ペパーミント油、リナロール、ウインダーグリーン油、サッサフラス油、チョウジ油、ハッカ油、タイム油、セージ油、ユーカリ油、マヨナラ油、肉桂油、ライム油、レモン油及びオレンジ油等の天然香料及びl-メントール、dl-カンフル等が挙げられる。
油脂類としてはラノリン、鯨ロウ、カルナウバロウ等のワックス類、脂肪酸類、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸ヘキサデシル、オレイン酸デシル等のエステル化合物、スクワラン、スクワレン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、流動パラフィン、シリコン等が挙げられる。
【0016】
本発明の口腔用組成物の投与量は特に限定されず、口腔用組成物の形態、投与回数、投与期間、患者の年齢等の種々の条件に応じて適宜選択可能である。通常の場合、成人に対してビタミンB又はその誘導体を基準にして1.0〜5.0mg/日程度、特に1.5〜4.5mg/日程度を投与すればよく、係る投与量に応じて上述した割合によりアラントイン又はその誘導体、抗菌作用を有する成分、抗炎症作用を有する成分の投与量を決定することが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の口内炎治療のための口腔用組成物は、アラントイン又はその誘導体とビタミンB又はその誘導体とを含むことにより、びらんや潰瘍等の口腔内の創傷の治癒を介して口内炎の治療効果を飛躍的に向上させることができる。また、上記口腔用組成物にさらに抗菌作用を有する成分を含むことにより、特に細菌・真菌・ウイルスの感染を原因とする口内炎の治療に有用な口腔用組成物を提供することができる。また、抗炎症作用を有する成分を含むことによりびらんや潰瘍等の口腔内の創傷部位における過剰の炎症反応が抑えられ、アラントイン又はその誘導体とビタミンB又はその誘導体によるびらんや潰瘍等の口腔内の創傷の治癒を更に向上させることができ、口内炎の治療に有用な口腔用組成物を提供することができる。
【0018】
以下に製剤例、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
(製剤例1)(パンテノール入り製剤)
パンテノール0.3g、グリチルリチン酸二カリウム0.4g、アラントイン0.3g、塩化セチルピリジニウム0.05g、濃グリセリン25g及びマクロゴール6000 0.1gを精製水45gに加え、室温で溶解した。この溶液にカルボキシビニルポリマー0.7gを加えて室温でよく攪拌・混合した(調製液A)。
一方、ヒノキチオール0.1g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油601.4g、モノステアリン酸ソルビタン0.6g、セタノール2g、ワセリン3g、パラオキシ安息香酸エチル0.1g及びパラオキシ安息香酸プロピル0.05gを軽質流動パラフィン13gに加え、加温して溶解した(調製液B)。
調製液Aに調製液Bを加え、加温してよく撹拌・混合して乳化した後に冷却し、中和剤である水酸化ナトリウム0.089gを加えてpH5.5とした後、精製水を加えて全量100gとしてよく攪拌・混合して製剤を得た。
【0020】
(比較製剤例1)(パンテノール抜き製剤)
グリチルリチン酸二カリウム0.4g、アラントイン0.3g、塩化セチルピリジニウム0.05g、濃グリセリン25g及びマクロゴール6000 0.1gを精製水45gに加え、室温で溶解した。この溶液にカルボキシビニルポリマー0.7gを加えて室温でよく攪拌・混合した(調製液A)。
一方、ヒノキチオール0.1g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油601.4g、モノステアリン酸ソルビタン0.6g、セタノール2g、ワセリン3g、パラオキシ安息香酸エチル0.1g及びパラオキシ安息香酸プロピル0.05gを軽質流動パラフィン13gに加え、加温して溶解した(調製液B)。調製液Aに調製液Bを加え、加温してよく撹拌・混合して乳化した後に冷却し、中和剤である水酸化ナトリウム0.089gを加えてpH5.5とした後、精製水を加えて全量100gとしてよく攪拌・混合し製剤を得た。
【0021】
(比較製剤例2)(パンテノール0.3%)
パンテノール0.3gを精製水99.7gに加え室温で溶解し製剤を得た。
【実施例2】
【0022】
(試験例1)
8週齢のシリアン(Syrian)系雌性ハムスターを用いた。口腔内潰瘍は、動物をペントバルビタール腹腔内投与にて麻酔した後、左側頬袋を引き出してその粘膜表面に直径4mmの円筒を押し当て、100%酢酸0.1mLを注入して30秒間接触させることにより作製した。また潰瘍面積は、潰瘍作製日を1日目として以後2、3及び5日目に潰瘍の長径と短径(mm)を測定し、算出した。なお被験物質には、製剤例1の塩化セチルピリジニウム0.05%、ヒノキチオール0.1%、グルチルリチン酸ニカリウム0.4%及びアラントイン0.3%にパンテノール0.3%を含有する製剤(パンテノール入り製剤)、比較製剤例1のパンテノールを含有しない製剤(パンテノール抜き製剤)、及び比較製剤例2のパンテノール0.3%を用い、それらの50mgを潰瘍作製日から1日1回、潰瘍作製部位に塗布した。
この結果を図1に示す。図1の白丸印(○)はコントロール(未処置)を示し、黒三角印(▲)は本発明の製剤例1の場合を示し、黒丸印(●)は比較製剤1の場合を示し、白三角印(△)は比較製剤2の場合をそれぞれ示す。図1中の*はp<0.05で有意差があったことを示し、**はp<0.01で有意差があったことを示し、***はp<0.001で有意差があったことを示す(ダネットタイプ(Dunnett type)の多重比較)。
潰瘍面積は、潰瘍作製日において各群ともほぼ同じであり、被験物質投与により治癒効果が確認され、治癒効果の強度はパンテノール入り製剤(製剤例1)が、パンテノール抜き製剤(比較製剤例1)及びパンテノール(比較製剤例2)に比べて相乗的にすぐれていることがわかった(図1)。
【0023】
また、各測定日のコントロールの潰瘍面積を1.000とした時の薬剤投与群の潰瘍面積の比を計算した。この結果を以下の表1に示す。この結果、製剤例1のパンテノール入り製剤の潰瘍面積比は、いずれの測定日においても、比較製剤例1のパンテノール抜き製剤及び比較製剤例2のパンテノールの潰瘍面積比の積に比べて小さく、バルジの方法により相乗効果ありと判定された(表1)。
【0024】
【表1】

【0025】
なお、表1中の*印は、比較製剤例1のパンテノール抜き製剤の潰瘍面積比と、比較製剤例2のパンテノールの潰瘍面積比の積を示し、これらの値は本発明の製剤例1の潰瘍面積比の値よりも大きく、本発明の製剤が相乗的な作用を示していることがわかった。
上記の結果より、本発明の口腔用組成物は、口腔内の創傷に対しアラントイン又はその誘導体とビタミンB又はその誘導体との組み合わせによる相乗的な治癒効果を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、口内炎治療効果の優れた新規な口腔用組成物を提供するものであり、産業上の利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、潰瘍面積の経時変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラントイン又はその誘導体と、ビタミンB又はその誘導体とを含有してなる口腔用組成物。
【請求項2】
口腔用組成物が、口内炎治療のための口腔用組成物である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
ビタミンB又はその誘導体が、パンテノールである請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
アラントイン又はその誘導体が、アラントインである請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
口腔用組成物が、軟膏剤である請求項1〜4に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
口腔用組成物が、さらに抗菌作用を有する成分を含有するものである請求項1〜5に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
抗菌作用を有する成分が、塩化セチルピリジ二ウムである請求項6に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
抗菌作用を有する成分が、ヒノキチオールである請求項6に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
抗菌作用を有する成分が、塩化セチルピリジ二ウムとヒノキチオールの組み合わせである請求項6に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
口腔用組成物が、さらに抗炎症作用を有する成分を含有するものである請求項1〜9に記載の口腔用組成物。
【請求項11】
抗炎症作用を有する成分が、グリチルリチン酸二カリウムである請求項10に記載の口腔用組成物。
【請求項12】
ビタミンB又はその誘導体1重量部に対して、アラントイン又はその誘導体を0.1〜5.0重量部、抗菌作用を有する成分を0.1〜3.0重量部、及び抗炎症作用を有する成分を0.01〜3.0重量部含有してなる口腔用組成物。
【請求項13】
パンテノール1重量部に対してアラントインを0.5〜2.0重量部、塩化セチルピリジニウムを0.1〜2.0重量部、ヒノキチオールを0.1〜1.0重量部、グリチルリチン酸二カリウムを0.5〜2.5重量部含有してなる口腔用組成物。
【請求項14】
口腔用組成物が、口内炎治療のための口腔組成物である請求項12又は13に記載の口腔用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−8831(P2007−8831A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188968(P2005−188968)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】