説明

口栓及び該口栓を取り付けた液体用紙容器

【課題】紙容器への融着時に環状切り込みが切れたり、注出筒とキャップが融着することのない口栓及びこの口栓を取り付けた液体用紙容器を提供する。
【解決手段】キャップ(20)は、天板(21)の下面にスパウト(10)の注出筒先端部(141)近傍の内周面に外周面が密接するインナー封止リング(22)が設けられ、キャップの周壁の内周面には注出筒(14)の外周面に設けられた螺合部(13)と螺着可能なキャップ螺合部(27)が形成された構造からなり、インナー封止リングの外周面の先端部近傍は、外方に緩やかに突起した隆起部(26)が周設された形状とすると共に、インナー封止リングに密接する注出筒部分の肉厚をインナー封止リングの肉厚に比較して同等又は薄くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器頂部に超音波シール法により熱融着して突設されるスパウトとそのスパウトに螺着されるキャップとからなる液体用紙容器の口栓と該口栓を取り付けた液体用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や非食品の液体内容物に使用される液体用紙容器には、使用時の使い易さ等を考慮して、例えば、図5に示すように、胴部(3)が四角柱状で、切り妻屋根型の頂部の傾斜板(4)の注出位置に、スパウト(10)とキャップ(20)とからなる口栓(1)を突設させた液体用紙容器(2)が広く使用されている。
【0003】
この口栓(1)のキャップ(20)としては、特に密封性が要求される場合には、例えば、図4に示すように、キャップ(20)の天板(21)下面に、外周面をスパウト(10)の注出筒(14)の先端部内周面に密接するインナー封止リング(22)と、このインナー封止リングの外側に、スパウトの注出筒(14)の先端上面に先端を密接するコンタクト封止リング(23)とを垂設し、また、内周面をスパウトの注出筒の先端部外周面に密接するアウター封止リング(25)をキャップの周壁(24)の上端部内周面に内側へ突設して、スパウトの注出筒(14)の上端部の三箇所を封止するものが使用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2004−051126号公報。
【0005】
しかし、インナー封止リング(22)が比較的短くて太いために、キャッピングの際、注出筒の先端部分(141)が外側に広げられ、その反作用でスパウトの閉鎖板(15)がキャップ(20)により押し下げられて、注出筒(14)が内側に曲げられる。このため気密性は非常に高いが残留応力が高いため、紙容器傾斜板(4)への融着時に環状切り込み(16)が切れたり、注出筒(14)とキャップ(20)が融着することがあった。
【0006】
この融着による問題を回避するような構造も使われているが、上述の場合と同様に注出筒が外側にクリープ変形し融着による問題は減るものの液シール性が劣るという問題が残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、容器頂部に超音波シール法により熱融着して突設されるスパウトとそのスパウトに螺着されるキャップとからなる液体用紙容器の口栓に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、紙容器への融着時に環状切り込みが切れたり、注出筒とキャップが融着することのない口栓及び該口栓を取り付けた液体用紙容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の発明は、液体用紙容器の口栓取り付け孔に突設されるスパウトと該スパウトに螺合させて装着されるキャップとからなる口栓において、
前記スパウトが、下端外周面に貼着リングが周設された台座リングの上面の内周縁部にキャップとの螺合部を外周面に有する注出筒が立設され、該注出筒の下方内面には閉鎖板
が設けられて内側が封止され、該閉鎖板の所定位置に環状切り込みが設けられて環状薄肉脆弱線が形成され、該環状薄肉脆弱線の内側近傍の上面の一側に、先端にプルリングを有する支柱が立設された構造からなり、
前記キャップが、天板の下面に前記スパウトの注出筒先端部近傍の内周面に外周面が密接するインナー封止リングが設けられ、キャップの周壁の内周面には、注出筒の外周面に設けられた螺合部と螺着可能なキャップ螺合部が形成された構造からなり、
前記インナー封止リングの外周面の先端部近傍は、外方に緩やかに突起した隆起部が周設された形状とすると共に、インナー封止リングに密接する注出筒部分の肉厚をインナー封止リングの肉厚に比較して同等又は薄くしたことを特徴とする、口栓である。
【0009】
このように請求項1記載の発明によれば、液体用紙容器の口栓取り付け孔に突設されるスパウトと該スパウトに螺合させて装着されるキャップとからなる口栓において、前記スパウトが、下端外周面に貼着リングが周設された台座リングの上面の内周縁部にキャップとの螺合部を外周面に有する注出筒が立設され、該注出筒の下方内面には閉鎖板が設けられて内側が封止され、該閉鎖板の所定位置に環状切り込みが設けられて環状薄肉脆弱線が形成され、該環状薄肉脆弱線の内側近傍の上面の一側に、先端にプルリングを有する支柱が立設された構造からなり、前記キャップが、天板の下面に前記スパウトの注出筒先端部近傍の内周面に外周面が密接するインナー封止リングが設けられ、キャップの周壁の内周面には、注出筒の外周面に設けられた螺合部と螺着可能なキャップ螺合部が形成された構造からなり、前記インナー封止リングの外周面の先端部近傍は、外方に緩やかに突起した隆起部が周設された形状とすると共に、インナー封止リングに密接する注出筒部分の肉厚をインナー封止リングの肉厚に比較して同等又は薄くしてあるので、インナー封止リングのみが外側に広がろうとすることで応力が他の部分に影響を及ぼすことがなくなり、また、インナー封止リングの先端部でシールを行うことでインナー封止リングが内側に撓み易くなり、キャップ樹脂の剛性が高いため、クリープ変形しにくくなり、口部も部分的に変形することでシール性も悪くならない。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の口栓を熱融着により取り付けた液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明の口栓は、容器頂部に熱融着する際の問題がなくなり、超音波シール性の高い口栓とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の口栓は、例えば、図5に示すように、液体用紙容器(2)の口栓取り付け孔に突設されるスパウト(10)と、このスパウトに螺合させて装着されるキャップ(20)とからなる口栓(1)である。スパウト(10)や口栓(20)は、ポリプロピレンなどの適度の剛性を有する熱可塑性樹脂を用いて射出成形法により作製される。
【0013】
そしてスパウト(10)の構造はつぎの通りである。すなわち、下端外周面に貼着リング(11)が周設された台座リング(12)の上面の内周縁部にキャップ(20)との螺合部(13)を外周面に有する注出筒(14)が立設されている。
【0014】
注出筒(14)の下方内面には閉鎖板(15)が設けられて内側が封止され、この閉鎖板(15)の所定位置に、断面逆V字状又は断面V字状の環状切り込み(16)が設けられ、対向面側に環状薄肉脆弱線(17)が形成されている。
【0015】
この環状薄肉脆弱線(17)の内側近傍の上面の一側に、先端に一般的には円形状又は
楕円形状のプルリング(18)を有する支柱(19)が立設された構造からなるものである(図2参照)。
【0016】
キャップ(20)の構造はつぎの通りである。すなわち、天板(21)の下面にスパウト(10)の注出筒先端部(141)近傍の内周面に外周面が密接するインナー封止リング(22)が設けられている。
【0017】
キャップの周壁(24)の内周面には、注出筒の外周面に設けられた螺合部(13)と螺着可能なキャップ螺合部(27)が形成された構造からなるものである。
【0018】
そして、インナー封止リング(22)の外周面の先端部近傍は、外方に緩やかに突起した隆起部(26)が周設された形状とすると共に、インナー封止リング(22)に密接する注出筒(14)の肉厚をインナー封止リング(22)の肉厚に比較して同等又は薄くしたことを特徴としている(図1参照)。
【0019】
より具体的な一例を記すと、キャップ外径(a);24.7mm、注出筒口径(b);18.4mmの場合で、インナー封止リングの高さ(c);5mm、インナー封止リングの最大肉厚(d);0.7mm(インナー封止リングの先端縁より1mm内側のライン(e)で)、注出筒の肉厚(f);0.6mmとした(図3参照)。
【0020】
このような構造とすることにより、口栓を超音波シール法により紙容器の頂部に熱融着する際、閉鎖板の環状切り込みが切れたり、注出筒とキャップが融着するようなことがなくなり、シール性能の高い口栓とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の口栓を液体用紙容器の口栓取り付け孔に突設した時の一実施例を示す、断面説明図である。
【図2】本発明の口栓のスパウトの一実施例を示す、断面説明図である。
【図3】本発明のキャップのインナー封止リングとスパウトの注出筒との肉厚の関係の一実施例を示す、口栓の要部断面説図である。
【図4】従来の口栓を液体用紙容器の口栓取り付け孔に突設した時の一実施例を示す、断面説明図である。
【図5】口栓を頂部傾斜板に熱融着により取り付けた一例の液体用紙容器の斜視説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1‥‥口栓
2‥‥液体紙容器
3‥‥胴部
4‥‥傾斜板
10‥‥スパウト
11‥‥貼着リング
12‥‥台座リング
13‥‥螺合部
14‥‥注出筒
15‥‥閉鎖板
16‥‥環状切り込み
17‥‥環状薄肉脆弱線
18‥‥プルリング
19‥‥支柱
20‥‥キャップ
21‥‥天板
22‥‥インナー封止リング
23‥‥コンタクト封止リング
24‥‥周壁
25‥‥アウター封止リング
26‥‥隆起部
27‥‥キャップ螺合部
141‥‥注出筒先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体用紙容器の口栓取り付け孔に突設されるスパウトと該スパウトに螺合させて装着するキャップとからなる口栓において、
前記スパウトが、下端外周面に貼着リングが周設された台座リングの上面の内周縁部にキャップとの螺合部を外周面に有する注出筒が立設され、該注出筒の下方内面には閉鎖板が設けられて内側が封止され、該閉鎖板の所定位置に環状切り込みが設けられて環状薄肉脆弱線が形成され、該環状薄肉脆弱線の内側近傍の上面の一側に、先端にプルリングを有する支柱が立設された構造からなり、
前記キャップが、天板の下面に前記スパウトの注出筒先端部近傍の内周面に外周面が密接するインナー封止リングが設けられ、キャップの周壁の内周面には、注出筒の外周面に設けられた螺合部と螺着可能なキャップ螺合部が形成された構造からなり、
前記インナー封止リングの外周面の先端部近傍は、外方に緩やかに突起した隆起部が周設された形状とすると共に、インナー封止リングに密接する注出筒部分の肉厚をインナー封止リングの肉厚に比較して同等又は薄くしたことを特徴とする口栓。
【請求項2】
請求項1記載の口栓を熱融着により取り付けた液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−13239(P2008−13239A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188947(P2006−188947)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】