説明

口腔ケア組成物

【課題】使用直後の口臭の消臭効果が高く、更にその消臭効果を持続させることができ、かつ使用感も良好な口腔ケア組成物を提供する。
【解決手段】(A)カチオン性を示す官能基を分子中に2個以上有するポリカチオン性物質、及び(B)ラッカーゼを含有してなることを特徴とする口腔ケア組成物。更に、上記組成物に(C)シソ科植物又はその抽出物を配合する。更に、上記組成物に(D)デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アクチニジン、パパイン、ブロメラインから選ばれる1種以上の酵素を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用直後の口臭の消臭効果が高く、更にその消臭効果を持続させることができ、かつ使用感も良好な口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口臭は、口腔の汚れ(食物残渣、剥離粘膜など)が口臭の原因菌により分解されて発生するメチルメルカプタンや硫化水素等によるものである。
【0003】
従来の口臭を抑制する技術としては、(1)メチルメルカプタンを捕捉・消臭、(2)口臭原因菌の除去、(3)口臭原因菌の悪臭発生に働く酵素の阻害(菌代謝阻害)、(4)唾液分泌を促進することによる汚れの除去等の方法があり、特に重要な原因とされる(1)に対して有効な消臭剤が数多く報告されてきた。その中でも消臭力が強く、かつ安全性や環境面を考慮した消臭剤の組み合わせとして、シソ科植物とポリフェノールオキシダーゼ等のフェノール性化合物を酸化する酸化還元酵素を併用することにより、その消臭効果が相乗的に高められることが知られている(特許文献1〜5:特開2008−029221号公報、特開2004−321077号公報、特開2003−175095号公報、特公平10−212221号公報、特公平7−53174号公報)。しかし、これらの方法では口臭の消臭効果の持続性が不十分であった。
【0004】
また、出願人は、シソ科の植物又はその抽出物の口臭補足とミカン科サンショウ属植物又は抽出物による口臭原因菌代謝阻害の併用効果による口臭抑制効果の持続性を提案している(特許文献6〜8:特開2005−289918号公報、特開平01−016713号公報、特開昭63−309269号公報)が、この場合は植物抽出物の配合量が多くなると製剤の変色や異味の原因となる場合があり、高い口臭抑制効果を良好な使用感を維持して発揮させ難く、未だ改善の余地があった。ローズマリー又はその抽出物と酸化還元酵素とを併用した消臭作用を有するチューインガム組成物も提案している(特許文献9:特開2009−136240号公報)。
【0005】
一方、ポリグルタミン酸又はその塩は、唾液分泌効果を有することが知られており(特許文献10:国際公開第2005/049050号パンフレット)、また、ポリグルタミン酸又はその塩の唾液分泌促進効果により口腔内の汚れや口臭原因菌を除去する口腔衛生用可食性フィルムが提案されている(特許文献11:特開2007−326808号公報)。しかし、上記口腔衛生用可食性フィルムは、唾液分泌が促進されることで口臭を抑制できるものの、その口臭抑制効果は公知の消臭成分を有する組成物に比べて低く、唾液で汚れを流した後に発生する口臭に対する効果もないなど、口臭抑制効果は不十分であった。
【0006】
従って、高い口臭抑制効果が持続的に発揮され、使用感も良好な製剤を与える新たな技術が望まれる。
【0007】
なお、酵素やポリカチオン性物質を配合した技術として、特許文献12(特開昭61−76411号公報)には、陰イオン性界面活性剤を含むチューインガムで、デキストラナーゼが不活化されることなく、酵素活性を長期にわたって保持する方法として、ポリ陽イオン性安定剤が、特許文献13(特開2002−370957号公報)には、塩基性ペプチドとグルカン分解酵素とアネトールにより、歯垢分解除去効果が向上することが開示されている。
ポリカチオン性物質について特許文献14,15(特開平5−310544号公報、特開平10−298048号公報)には、ε−ポリ−L−リシンもしくはその塩がう蝕又は歯周病原因菌に対し抗菌作用を有すること、ポリリジンに歯周病細菌内毒素の中和作用、歯周病原因菌の付着抑制効果があることが開示されている。また、酵素含有キャンディの製造法として特許文献16,17(国際公開第2007/105661号パンフレット、特開平2−86731号公報)が提案されている。
しかしながら、これら技術から口腔内でポリカチオン性物質によりラッカーゼの滞留性が向上し優れた消臭効果を持続できることは予想し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−029221号公報
【特許文献2】特開2004−321077号公報
【特許文献3】特開2003−175095号公報
【特許文献4】特公平10−212221号公報
【特許文献5】特公平7−53174号公報
【特許文献6】特開2005−289918号公報
【特許文献7】特開平01−016713号公報
【特許文献8】特開昭63−309269号公報
【特許文献9】特開2009−136240号公報
【特許文献10】国際公開第2005/049050号パンフレット
【特許文献11】特開2007−326808号公報
【特許文献12】特開昭61−76411号公報
【特許文献13】特開2002−370957号公報
【特許文献14】特開平5−310544号公報
【特許文献15】特開平10−298048号公報
【特許文献16】国際公開第2007/105661号パンフレット
【特許文献17】特開平2−86731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願人は、シソ科植物又はその抽出物、及びラッカーゼと、分子中にアミノ基を1個有するポリグルタミン酸又はその塩を配合することで、口臭の消臭効果とその持続性が高い口中ケア組成物を特願2009−281351号に提案したが、この技術について更に検討したところ、保存中にポリグルタミン酸又はその塩が吸湿してべたつきを生じると、それに伴い保存後のラッカーゼ活性が低下する場合があることが判明したため、新たな代替技術が求められていた。また、シソ科植物抽出物、ラッカーゼ及びラクトフェリンを配合した口臭の消臭効果及びその持続性が高い口中ケア組成物を特願2010−087731号に提案した。この技術は、ラクトフェリンの抗菌効果と、シソ科植物抽出物とラッカーゼによる相乗効果で消臭効果の持続を実現しているが、ラクトフェリンが高価な物質であることから、新たな代替技術が求められる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、使用直後の口臭の消臭効果が高く、更にその消臭効果を持続させることができ、かつ使用感も良好な口腔ケア組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、口腔内を清潔にしたり歯周疾患等のトラブルを解消するなどしてケアし、QOL(Quality of Life、クオリティーオブライフ)を向上するのに有用な口腔ケア組成物に、(A)カチオン性を示す官能基を分子中に2個以上有するポリカチオン性物質と、(B)ラッカーゼとを併用して配合することで、(A)ポリカチオン性物質が(B)ラッカーゼの口腔内での滞留性を向上し、ラッカーゼに由来する口臭の消臭効果が有効に持続して発揮されることを見出し、本発明をなすに至った。本発明によれば、口臭の消臭効果の速効性及び持続性に優れ、高い口臭の消臭効果が持続的に発揮される上、異味が発現することがなく使用感も良好である。更には、製剤外観も良好となる。
本発明では、更に(C)シソ科植物又はその抽出物を配合することでより高い消臭効果が発揮される。(A)成分のポリカチオン性物質を(B)ラッカーゼと併用し、かつ(C)シソ科植物又はその抽出物を配合することで、ラッカーゼがシソ科植物又はその抽出物に由来する消臭効果が相乗的に高まり、より高い消臭効果を速効かつ持続的に発揮させることができる。
また、本発明では、更に(D)デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アクチニジン、パパイン、ブロメラインから選ばれる1種以上の酵素を配合でき、これら酵素を組成物中で安定化し、口腔内で十分に滞留させかつ保存時の活性低下を抑制できる。
【0011】
従って、本発明は、下記の口腔ケア組成物を提供する。
請求項1:
(A)カチオン性を示す官能基を分子中に2個以上有するポリカチオン性物質、及び(B)ラッカーゼを含有してなることを特徴とする口腔ケア組成物。
請求項2:
ポリカチオン性物質が、塩基性ペプチドである請求項1記載の口腔ケア組成物。
請求項3:
塩基性ペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリヒスチジンから選ばれる1種以上である請求項2記載の口腔ケア組成物。
請求項4:
更に、(C)シソ科植物又はその抽出物を含有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の口腔ケア組成物。
請求項5:
シソ科植物が、ローズマリー、セージ、シソ、ミント、タイム及びメリッサから選ばれる1種以上である請求項4記載の口腔ケア組成物。
請求項6:
(A)成分を0.001〜5質量%、(B)成分を0.001〜3質量%、(C)成分を0.001〜5質量%含有する請求項4又は5記載の口腔ケア組成物。
請求項7:
更に、(D)デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アクチニジン、パパイン、ブロメラインから選ばれる1種以上の酵素を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載の口腔ケア組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の口腔ケア組成物は、口臭が気になった時に食したり、口腔内に適用するだけで、適用直後から口臭の消臭効果が速効的にかつ持続的に発揮され、口臭を有効に抑制することができ、かつ使用時の味も良好である。更には、良好な製剤外観とすることができ、携帯性に優れ、必要な時に簡単に適用できるもので、口臭の予防又は抑制に有効である。更に、本発明組成物は、デキストラナーゼ等の酵素を安定に配合でき、保存時の活性を良好に維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の口腔ケア組成物は、(A)カチオン性を示す官能基を分子中に2個以上有するポリカチオン性物質、及び(B)ラッカーゼを含有し、更に好ましくは(C)シソ科植物又はその抽出物を含有する。
【0014】
(A)ポリカチオン性物質としては、カチオン性を示す官能基を一分子中に2個以上有するものが用いられる。このポリカチオン性物質を配合することで、ラッカーゼの口腔内での滞留性が高まり、口臭の消臭効果の持続性が向上する。
【0015】
ここで、カチオン性を示す官能基としては、具体的にアミノ基、アンモニウム基、イミダゾイル基、グアニジル基等が挙げられる。
カチオン性を示す官能基は分子中に2個以上有すればよいが、特に20〜420個有するものが好ましい。
【0016】
ポリカチオン性物質としては、0.1%水溶液のpHが5.0〜9.0を示す塩基性ペプチド、塩基性タンパク、塩基性多糖類、側鎖にアミド基を有するポリオレフィン等が挙げられるが、中でも塩基性ペプチドが好ましい。具体的には、塩基性ペプチドとしてポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、塩基性タンパクとしてリゾチーム、塩基性多糖類としてキトサン、カチオン化ヒアルロン酸、カチオン化セルロースなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジンが、口臭の消臭効果の持続性が高く、長期保存時のべたつきのなさが優れていることからより好適である。なお、吸湿性の高い物質の場合、長期保存でべたつきや、ラッカーゼの活性低下を生じる場合があるので、なるべく吸湿性の低い物質が好適である。
【0017】
ポリカチオン性物質の分子量は特に制限されないが、数平均分子量300〜300,000、特に2,000〜30,000のものが好ましい。数平均分子量が300に満たないとラッカーゼの滞留性が低いため、消臭効果の持続性が低下する場合がある。300,000を超えると異味の原因となったり、製造工程や唾液中でラッカーゼとの複合体を形成し、析出して、製造直後及び保存後のラッカーゼの活性が低下したり、摂取直後の消臭効果やその持続性が低下する場合がある。
【0018】
なお、ここで数平均分子量とは、分子量Miの分子がNi個存在するとき、数平均分子量MnはMn=ΣMiNi/ΣNiで与えられる平均分子量である。測定法としては浸透圧法、沸点上昇法、凝固降下法やGPC(Gel Permeation Chromatography)法などが挙げられる。
GPC法は分子量分布を測定するが、分子量をポリスチレンなどの標準物質に換算する方法と低角度光散乱法(LALLS:Low Angle Laser Light Scattering)や多角度光散乱法(MALLS:Multi Angle Las er Light Scattering)により測定するGPC−LALLS法、GPC−MALLS法がある。また、GPCはSEC(Size Exclusion Chromatography)とも呼ばれる。本発明で用いられる数平均分子量の測定法は特に限定されないが、GPC−LALLS法ではたとえば下記条件で測定することができ、(A)ポリカチオン性物質の数平均分子量は下記条件での測定値である。
GPC−LALLS法
カラム:Tosoh Biosep G5000 PWXL、7.8mm×30cm
移動層:0.1mol/L リン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)
流量 :0.5mL/min
カラム温度:40℃
【0019】
ポリカチオン性物質は市販品を使用できる。ポリリジンとしてはサンキーパーNo.381(商品名、数平均分子量:2,600、三栄原エフ・エフ・アイ(株)製)、ポリ−L−リジン塩酸塩(商品名、数平均分子量:30,000、シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製)、0.1%ポリ−L−リジン水溶液(商品名、数平均分子量:300,000、シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製)、ポリアルギニンとしてはポリ−L−アルギニン塩酸塩(商品名、数平均分子量15,000、シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製)、ポリヒスチジンとしてはポリ−L−ヒスチジン(商品名、数平均分子量10,000)、リゾチームとしてはサンキーパーNo.657(商品名、数平均分子量14,300、三栄原エフ・エフ・アイ(株)製)、キトサンオリゴ糖としてはCOS−YS(商品名、数平均分子量680、焼津水産化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0020】
ポリカチオン性物質の配合量は、組成全体の0.001〜5%(質量%、以下同様)、特に0.001〜2%が好ましい。0.001%未満では口臭の消臭効果の持続性が満足に発現しない場合がある。5%を超えると異味の原因となったり、製造工程や、唾液中でラッカーゼとの複合体を形成し、析出して、製造直後及び保存後のラッカーゼの活性が低下したり、摂取直後の消臭効果とその持続性が低下する場合がある。
【0021】
(B)成分のラッカーゼは、E.C.1.10.3.2に分類される酸化酵素であり、代表的な酵素反応例として、漆樹液中のラッカーゼによってウルシオールが酸化され、漆が形成されることが知られている。ラッカーゼは、漆以外にも多くの植物、微生物中に広く存在し、芳香族化合物の酸化反応を触媒する酵素であり、本発明において、ラッカーゼは、その起源に関わりなく使用することができ、口臭の消臭成分として配合される。
また、ラッカーゼは、安定化のためカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等でコーティングしたものを使用できる。
ラッカーゼとしては、市販品、例えば天野エンザイム(株)製のラッカーゼダイワ等が用いられる。これは、360,000単位/gの純分80%を20%のデキストリンで賦形したものである。
【0022】
ラッカーゼの配合量は、3〜10,000単位/g、特に30〜10,000単位/g、とりわけ30〜3,500単位/gが好ましい。3単位/g未満では、酵素活性が低く消臭効果が不十分であったり、持続性に劣ることがあり、また、製造時、保存時にも活性が低下し易くなる場合がある。10,000単位/gを超えると異味の原因になることがあり、更にキャンディでは外観の均一性に劣る場合がある。
360,000単位/g品を基準とした場合、ラッカーゼの配合量は、純分換算で組成全体の0.001〜3%、好ましくは0.01〜3%、より好ましくは0.01〜1%である。0.001%未満では、酵素活性が低く消臭効果が不十分であったり、持続性に劣ることがあり、また、製造時、保存時にも活性が低下し易くなる場合がある。3%を超えると異味の原因になることがあり、キャンディでは外観の均一性が悪くなる場合がある。
なお、4−アミノアンチピリンとフェノールにpH4.5、30℃で作用するとき、ラッカーゼが触媒する酸化縮合反応により生成するキノンイミン色素の505nmにおける吸光度を、反応初期1分間に0.1増加させるのに必要な酵素量を1単位とする。
【0023】
(A)ポリカチオン性物質と(B)ラッカーゼの配合比率は特に限定されないが、(A)/(B)の質量比で0.005〜100、特に0.01〜50が好ましい。0.005未満では口臭の消臭効果の持続性が満足に発現しない場合がある。100を超えると、複合体が形成されて唾液中やキャンディ製造時の濃縮過程で析出し、製造直後及び保存後のラッカーゼの活性が低下して摂取直後の口臭の消臭効果とその持続性が低下する場合がある。更に、キャンディでは、外観の均一性が劣る場合がある。
【0024】
(C)シソ科植物又はその抽出物は口臭の消臭成分として配合され、例えばローズマリー、セージ、シソ、ミント、タイム、メリッサ、セージ、マジョラム、オレガノ、バジル、ナギナタ、コウジュ、ラベンダー、ベルガモット等、特にローズマリー、セージ、シソ、ミント、タイム、メリッサから選ばれるシソ科植物又はその抽出物が使用できる。中でもローズマリー及び/又はセージの植物又はその抽出物が口臭の消臭効果が特に高く、より好ましい。これらは1種単独でも2種以上を混合してもよい。
【0025】
シソ科植物又はその抽出物は、公知のものが使用できる。例えばローズマリー、セージ、シソ、ミント、タイム、メリッサ等の葉及び茎を原料としたものを粉砕し、粉状にしたものが使用でき、上記シソ科植物を極性溶媒及び/又は非極性溶媒(例えば、水、エチルエーテル、エチレンクロライド、ジオキサン、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、プロピレングリコール等の極性溶媒、あるいはn−ヘキサン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、トルエン、ベンゼン等の非極性溶媒、又はこれらの混合溶媒)で抽出することにより得られた抽出エキス及びその抽出残渣から選ばれる原料に対し、溶媒抽出処理を行って得られた抽出物、並びに、上記植物より単離されるカルノソール、カルノジン酸、7,11,12−トリヒドロキシ−6,10−(エポキシメタノ)アビエタ−8,11,13−トリエン−20−オン(ロズマノール)、及びこれらの塩等の消臭有効成分(特開昭59−203445号公報、特開昭57−204278号公報、特開昭59−1033665号公報参照)である。また、抽出物を乾燥させて粉末にし、デキストリン等の賦形剤を加えて粉末化したものを用いてもよい。
【0026】
なお、上記溶媒抽出処理に用いる溶媒は、上記公報に記載されているように、有機溶媒でも無機溶媒でも差し支えなく、また有機溶媒と無機溶媒との混合溶媒でもよく、1種単独でも2種以上を併用してもよい。有機溶媒の具体例としては、エチルエーテル、エチレンクロライド、ジオキサン、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、プロピレングリコール、n−ヘキサン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。また、無機溶媒としては水、それに酸、アルカリ又はこれらの塩の水溶液が使用でき、具体的には塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。なお、これらの酸、アルカリ、塩は2モル以下の濃度で使用することが好ましい。好ましい溶媒は、水、炭素数1〜3の低級1価アルコール、多価アルコールである。また、以上に挙げた溶媒の使用量は、原料に対し等容量以上とすることが好ましい。
シソ科植物又はその抽出物としては、豊玉香料(株)製などの市販品を使用できる。
【0027】
シソ科植物又はその抽出物を配合する場合、その配合量は、純分換算で組成全体の0.001〜5%、好ましくは0.01〜3%、より好ましくは0.01〜2%である。0.001%未満では消臭効果が相乗的に向上しないことがあり、5%を超えると異味の原因となる場合がある。
【0028】
(B)ラッカーゼと(C)シソ科植物又はその抽出物の配合比率は特に制限されないが、(B)/(C)の質量比が0.001〜100,特に0.01〜10が好ましい。0.001未満ではシソ科植物又はその抽出物をラッカーゼに併用したことによる相乗効果が十分に発現せず、口臭の消臭効果が相乗的に向上しない場合がある。100を超えると、シソ科植物又はその抽出物の酸化速度が速くなり過ぎて、口臭の消臭効果の持続性が低下する場合がある。
【0029】
本発明組成物は、更に(D)成分としてラッカーゼ以外の酵素を配合することができる。本発明組成物では、(A)成分のポリカチオン性物質により酵素が安定化され、また、口腔内での(D)成分の滞留性が向上し、優れた消臭効果及びその持続性を発揮することができる。更に、長期保存時の活性低下を抑制できる。
(D)成分の酵素として具体的には、多糖分解酵素、タンパク分解酵素等が挙げられ、特にデキストラナーゼ、ムタナーゼ、パパイン、アクチニジン、ブロメライン等から選ばれる1種又は2種以上が好適に使用できる。
【0030】
(D)成分の酵素を配合する場合、その配合量は、酵素の種類と力価に応じた有効量とすることができる。例えば、デキストラナーゼは12,000単位品を基準とした場合、組成全体の0.01〜5%、ムタナーゼは6,000単位品を基準とした場合、組成全体の0.01〜5%とすることができる。なお、上記デキストラナーゼ、ムタナーゼの1単位とは、ともにデキストラン、ムタンを基質として40℃、pH5で反応を行った場合に、1分間当たりにグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じる各酵素の量である。
【0031】
本発明組成物は、口腔内を清潔にしたり歯周疾患等のトラブルを解消するなどしてケアし、QOLを向上するのに有用な口腔ケア組成物であり、口腔内をケア可能であれば各種製剤に調製できる。この場合、本発明組成物は、口腔内でかみ砕いたり唾液で溶かすなどして溶解させて使用したり、咀嚼して使用するなどして、口腔内に一定時間、例えば1分間以上、特に3〜10分間程度滞留する剤型が好ましい。更に、ラッカーゼ等の酵素が酸素と接触することが少なく、酸素との接触を極力防止できる剤型や形状に調製することがより望ましい。
具体的には、菓子、健康食品等の食品、口腔用製剤等として調製でき、例えば錠菓、グミ,ゼリー,キャラメル等の菓子、健康食品、キャンディ、チューインガム、トローチ,チュアブル錠,バッカル錠等の嚥下せず口腔内で溶解させて使用する口腔用錠剤などが挙げられる。中でも、キャンディ、錠菓、口腔用錠剤、又はチューインガム、特にキャンディ又はチューインガムとして調製されることが、保存後も高いラッカーゼ活性を維持できることから好適である。なお、形状は特に制限されず、例えば粒状、顆粒状、錠剤状、板状、フィルム状、カプセル状などの形態に調製できる。
なお、製剤中の水分量は少ないほうが望ましく、組成全体の5%以下、特に3%以下が好ましく、0%でもよい。5%を超えると保存時にラッカーゼの活性が低下し易くなり、保存後のラッカーゼの活性が低下する場合がある。
【0032】
キャンディは、キャラメル、ヌガー等のソフトキャンディ、ドロップ、タフィ等のハードキャンディ等があり、特に限定されないが、保存後のラッカーゼの活性低下を抑制できる点でハードキャンディが好ましい。
キャンディは常法で製造することができ、例えば下記方法で製造できる。
【0033】
キャンディの製法:
上記(A)成分、(B)成分、必要により(C)成分の機能成分、(D)成分の酵素、香料などの非耐熱性成分を除く各成分に組成物全体の約半量の水を加え、混合釜中で加熱溶解し、更に180℃になるまで加熱、濃縮し、キャンディベースを作製する。その後、ゆっくりとかき混ぜながら放冷し、90〜130℃の間で非耐熱性成分を添加して均一に混合し、更に冷却、成型し作製される。この場合、非耐熱性成分添加後の冷却は冷却板等に移して行うことが望ましい。なお、ラッカーゼ等の酵素は熱に非常に弱いため、冷却板での冷却工程中に70〜120℃の間で投入し、冷却板上で撹拌混合する方が、混合釜中で冷却するよりも、酵素の活性と、高い消臭効果を維持する上で好ましい。この場合の冷却板へのラッカーゼ等の酵素を含む粉体投入量は組成物全体の5%以下が好ましく、更に好ましくは3%以下である。5%を超えると、粉体が均一に混合されず外観均一性が悪くなる場合がある。
【0034】
錠菓とは、糖質を主原料とし、打錠機等で圧縮成型したものであり、糖衣してあってもよい。錠菓の製造方法は特に限定されず公知の方法で調製でき、具体的には各成分を混合し、打錠機等で5〜20kNで圧縮することにより製造できる。
【0035】
キャンディ及び錠菓の主原料は、賦形剤、甘味剤等であり、更には、必要により、後述の香料、酸味料、増粘剤、ゲル化剤、着色剤、保存剤、果汁、果実加工品、塩味料、苦味剤等を添加することができる。錠菓には、更に乳化剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤、除電剤等を添加することができる。
【0036】
賦形剤としては、スクロース、グルコース、デキストロース、転化糖、フラクトース等の糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元水飴等の糖アルコール、パラチノース、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン等が挙げられ、中でも非う蝕性を有する糖アルコール、パラチノース、トレハロースが好ましい。特に、錠菓では成型性、風味の点からソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノースから選ばれるものが好ましく、キャンディでは低吸湿性の点から還元パラチノース、還元水飴が好ましい。
これら賦形剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて配合でき、その配合量は組成全体の50〜99%、特に70〜99%が望ましい。
【0037】
錠菓及びキャンディの甘味剤としては、上記賦形剤に加えてステビア、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等を含有することができる。これら甘味剤の配合量は、通常0.001〜3%である。
【0038】
チューインガムは、味ガム、風船ガム及び糖衣ガムのうちのいずれであってもよい。常法によって製造することができ、例えばチューインガム主体はガムベースに、甘味剤、更には後述のような香料、有効成分、着色料等が配合され、糖衣層を形成する場合は、糖衣層の主成分はマルチトール等の甘味剤であり、更に食用ガム質等の結合剤、他の有効成分や甘味剤、色素、酸味料、香料等を配合することができる。
【0039】
ガムベースとしては、通常用いられている重合度100〜1,000のポリ酢酸ビニル樹脂、天然樹脂類(チクル、ジェルトン、ソルバ等)、ポリイソブチレン、ポリブデン、エステルガム等の基礎剤、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク等の充填剤、また、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、グリセリルトリアセテート、グリセリン等の可塑剤又は軟化剤、並びに天然ワックス、石油ワックス、パラフィンワックス等もガムベース中に配合できる。ガムベースの配合量は、組成物全体の10〜50%、特に15〜35%が好ましい。
【0040】
チューインガムに配合される甘味剤としては、通常用いられる甘味料を使用でき、例えばスクロース、グルコース、デキストロース、転化糖、フラクトース等の糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、パラチノース、還元パラチノース、トレハロース、オリゴ糖、還元水飴、ステビア、スクラロース、サッカリン、アスパルテームから選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましく、特に風味の点でキシリトール、マルチトール、スクラロースから選ばれるものを、テクスチャー向上の点で還元パラチノースを含有するのが好ましい。甘味剤の配合量は、組成全体の10〜75%、特に15〜70%が望ましい。
【0041】
本発明の口腔ケア組成物には、上記成分に加えて、必要により剤型等に応じたその他の公知の添加剤、例えば香料、乳化剤、酸味剤、着色剤、pH調整剤、保存剤、光沢剤、除電剤、流動化剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加してもよい。更に、必要により上記酵素やシソ科植物及びその抽出物以外の有効成分、増粘剤、ゲル化剤、果汁、果実加工品、塩味料、苦味剤等を添加してもよい。
【0042】
本発明の口腔ケア組成物に配合される香料としては、天然香料、合成香料などの油脂香料や粉末香料の1種又は2種以上を使用できる。例えば天然香料として、マスティック油、パセリ油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、メントール油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、コリアンダー油、オレンジ油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローレル油、カモミール油、カルダモン油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、シトラス油、ミックスフルーツ油、ストロベリー油、シナモン油、クローブ油、グレープ油等が挙げられる。
【0043】
単品香料としては、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルアンスラニレート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチノンアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルフェイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等が挙げられる。単品香料及び/又は天然香料も含む調合香料として、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、フルーツミックスフレーバー、ハーブミントフレーバー等が挙げられる。また、香料の形態は、精油、抽出物、固形物、又はこれらを噴霧乾燥した粉体でも構わない。香料の配合量は、組成物全体の0.001〜15%、特に0.001〜10%とすることが好ましく、0.001%未満では十分な嗜好性が得られない場合があり、15%を超えると組成物の香味やテクスチャーを損なう場合がある。
【0044】
乳化剤としては非イオン性界面活性剤として、糖又は糖アルコールの脂肪酸エステルであるショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、マルトトリイトール脂肪酸エステル、マルトテトレイトール脂肪酸エステル、マルトペンタイトール脂肪酸エステル、マルトヘキサイトール脂肪酸エステル、マルトヘプタイトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等が挙げられる。その他、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が使用可能である。脂肪酸は炭素数12〜18のものを用いることが好ましい。更に、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルメチルアミノ酢酸ベタイン等、アニオン性界面活性剤としてN−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウム等のN−メチル−N−アシルタウリンナトリウムなどを配合することが可能である。これらのうち非イオン性界面活性剤が好ましく、糖又は糖アルコールの脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
これら界面活性剤の配合は任意であるが、配合する場合、その配合量は0.01〜3%が好ましい。
【0045】
また、酸味剤としてクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸を配合することができ、配合量は通常0.001〜5%である。
【0046】
更に、着色剤としてベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、クマリンド色素等の天然色素や赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等の法定色素、リボフラビン、銅クロロフィンナトリウム等、pH調整剤としてクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸とそのナトリウム塩又はカリウム塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩が挙げられる。
保存剤としては、安息香酸又はその塩、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類(パラオキシ安息香酸エステル)、ソルビン酸又はその塩等が挙げられる。光沢剤としては、シェラック、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のワックス類及びステアリン酸カルシウム等を、除電剤、流動化剤としては、微粒子二酸化ケイ素等を配合することができる。
これらの配合は任意であるが、配合する場合、着色剤は0.00001〜3%、その他の成分はそれぞれ0.01〜5%が好ましい。
【0047】
更に、錠菓においては、崩壊剤としてアルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、クロスポピドン、カルボキシメチルセルロース等、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カラヤガム等を配合することができる。これらを配合する場合、配合量はそれぞれ0.1〜10%が好ましい。
また、滑沢剤としてはグリセリン脂肪酸エステル等を配合できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。なお、以下に示す%は特に記述していない限りいずれも質量%を意味し、成分の配合比は質量比である。
また、ポリカチオン性物質の数平均分子量は、GPC−LALLS法により上記と同様の条件での測定値である。
【0049】
〔実施例、比較例〕
表1〜8に示す組成の口腔ケア組成物を下記方法でキャンディ、錠菓又はチューインガムの剤型に調製し、下記方法で評価した。結果を表1〜8に示す。
【0050】
<キャンディの調製(実施例1〜27、29〜46、比較例1〜3)>
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、香料を除く各成分に組成物全体の約半量の水を加え、混合釜中で加熱溶解し、更に180℃になるまで加熱、濃縮した。その後、ゆっくりとかき混ぜながら放冷し、90〜130℃の間で(A)成分及び香料、更に必要に応じて(C)成分を添加しよく撹拌した。均一に混合されたら、冷却板にキャンディベースを移動させた後、70〜120℃の間で(B)成分と必要に応じて(D)成分を加えて1分間混合後、成型し、約1g/粒のキャンディを作製した。各工程では常法により作製した。なお、比較例1〜3のキャンディは上記方法に準じて作製した。
【0051】
<キャンディの調製(実施例28)>
(A)成分、(B)成分、(C)成分、香料を除く各成分に組成物全体の約半量の水を加え、混合釜中で加熱溶解し、更に180℃になるまで加熱、濃縮した。その後、ゆっくりとかき混ぜながら放冷し、70〜120℃の間で(A)成分、(B)成分、(C)成分、香料を添加し1分間撹拌した。撹拌後、冷却板にキャンディベースを移動させた後、成型し、約1g/粒のキャンディを作製した。各工程では常法により作製した。
【0052】
<チューインガムの調製(実施例47〜51)>
ガムベース(ナチュラルベース(株)製)に、その他の全成分を加え、50℃前後にて1L容量ニーダー(株式会社トーシン製TKI−1型)を用いて均一に混練した。次いで板状に加工を施したガム約1gを作製した。
【0053】
<錠菓の調製(実施例52)>
全成分を加え、均一に混合した後、打錠機(株式会社富士薬品機会製)を用いて、約1,000kgの圧力で質量1g、直径13mmφの錠菓を作製した。
【0054】
<実験1> 製造直後及び保存後のラッカーゼの酵素活性
製造直後のサンプル約10gを容量50mLのアルミパウチに封入し、40℃、湿度75%で3ヶ月間保存した。
ラッカーゼ原体、製造直後及び保存後のサンプルについて、以下の方法でラッカーゼ活性を測定した。
室温に戻した原体及びサンプル約1粒を水30mLに溶解し、サンプル液を調製した。試験管に0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)1mLにサンプル液100μL、水900μLを入れ、よく混合し、30℃で5分間保温した後、0.1g/Lシリングアルダジン液100μLを添加後すぐに混和し、セルに移して吸光度計((株)島津製作所製 UV−160A)で測定された、反応開始直後から30秒後まで30秒間における530nmの吸光度変化から、以下の式で酵素活性を算出した。それをもとに以下の式でラッカーゼの製造直後及び保存後のラッカーゼの酵素活性を算出した。
【0055】
酵素の総活性(U/mL)
=ΔOD×2.1×60×0.001/0.065×0.05×30×D
=ΔOD×87.2×D
ΔOD:530nmにおける30秒間の吸光度変化
D:サンプル溶液の希釈倍数
製造直後のラッカーゼ活性の残存率(%)
={(製造直後の総活性値)/(原体の総活性値)}×100
保存後のラッカーゼ活性の残存率(%)
={(40℃75%3ヶ月後の総活性値)/(製造直後の総活性値)}×100
【0056】
以上の計算式にて算出したラッカーゼの活性残存率を以下の基準にて評価し、○以上を良好なレベルと判断した。
◎:ラッカーゼの活性残存率が70%以上
○:ラッカーゼの活性残存率が50%以上70%未満
△:ラッカーゼの活性残存率が30%以上50%未満
×:ラッカーゼの活性残存率が30%未満
【0057】
<実験2> 口臭の消臭効果とその持続性
健常な男女20名を対象に、サンプル摂取前に0.1%メチオニン水溶液で30秒間洗口した後、吐き出し、10分間安静にした。その後、サンプル1gを口中からなくなるまで噛まずに5分間程度口に含んで(ガムは5分間咀嚼)摂取した。洗口後のサンプル摂取前と、サンプルを摂取し口中からなくなった(ガムは5分間咀嚼した)直後、及び60分後について、それぞれ口を閉じた状態で1分後の口腔内の呼気をテドラーバックに200mL採取した。口臭の強さを専門評価者1名による臭気強度の比較と口臭の自覚で判定し、以下の基準で評価した。
【0058】
サンプル摂取前の呼気と、サンプル摂取直後及び摂取後60分経過後の呼気の臭気強度を比較し、摂取直後の消臭効果とその持続性を以下の基準で評価した。
5点:著しく消臭し、自覚的にも著しい消臭実感があった
4点:消臭し、自覚的にもかなり消臭実感があった
3点:やや消臭し、自覚的にもやや消臭実感があった
2点:わずかに消臭し、自覚的には消臭実感はなかった
1点:変わらなかった
以上の基準にて評価した結果より平均点を算出し、以下の基準にて評価し、○以上を良好なレベルと判断した。
◎:4.5点以上5点以下
○〜◎:4.0点以上4.5点未満
○:3.0点以上4.0点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:1.0点以上2.0点未満
【0059】
<実験3> 異味のなさ
サンプル1gを噛まずに5分間程度口に含んで(ガムは5分間咀嚼)摂取したときの味をパネル20名により以下の基準にて官能評価した。
5点:全く異味を感じなかった
4点:わずかに異味を感じたが問題ないレベル
3点:やや異味を感じた
2点:かなり異味を感じた
1点:非常に異味を感じ、食べられなかった
以上の基準にて評価した結果より平均点を算出し、下記の通り評価し、○以上を良好なレベルと判断した。
◎:4.5点以上5点以下
○:4.0点以上4.5点未満
△:3.0点以上4.0点未満
×:1.0点以上3.0点未満
【0060】
<実験4> キャンディの均一性(外観)
製造直後のキャンディサンプルの外観を目視評価し、均一性について以下の基準で評価した。○以上を良好なレベルとした。
◎:均一に分散されていた
○:ごくわずかにムラを認めるが、問題ないレベル
△:ややムラが認められた
×:著しいムラが認められた
【0061】
<実験5> (D)成分の酵素の保存安定性
製造直後のサンプル約10gを容量50mLのアルミパウチに封入し、40℃、湿度75%で3ヶ月間保存した。
各酵素において、常法により製造直後及び保存後の酵素活性を算出し、保存安定性を以下の基準にて評価し、○以上を良好なレベルと判断した。
◎:酵素の活性残存率が70%以上
○:酵素の活性残存率が50%以上70%未満
△:酵素の活性残存率が30%以上50%未満
×:酵素の活性残存率が30%未満
【0062】
なお、各酵素の酵素活性の測定についての詳細は下記のとおりである。
・デキストラナーゼ
1%デキストラン溶液に上記各被験液を加え、35℃で10分間反応させて、生じた還元糖量をソモギーネルソン法を用いて測定した。そして、1分間に1μgのグルコースに相当する還元糖を遊離する酵素量を1ユニット(U)とした。
・ムタナーゼ
ストレプトコッカス・ミュータンス菌より調製した1%ムタン溶液に上記各被験液を加え、35℃で10分間反応させて、生じた還元糖量を、ソモギーネルソン法を用いて測定した。そして、1分間に1μgのグルコースに相当する還元糖を遊離する酵素量を1ユニット(U)とした。
・プロテアーゼ(パパイン、アクチニジン、ブロメライン)
ペプチジルp−ニトロアニリンを基質とし、加水分解により放出されるp−ニトロアニリンの増加率を405nmの吸光度を測定して求めた。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
使用した原料は、以下の通りである。
・ポリリジンA(50%品):
サンキーパーNo.381(商品名、数平均分子量:2,600)
ポリリジン50%+デキストラン50%〔三栄原エフ・エフ・アイ(株)製〕
・ポリリジンB:
ポリ−L−リジン塩酸塩(商品名、数平均分子量:30,000)〔シグマ アルドリ
ッチ ジャパン(株)製〕
・ポリリジンC:
0.1%ポリ−L−リジン水溶液(商品名、数平均分子量:300,000)〔シグマ
アルドリッチ ジャパン(株)製〕
・ポリアルギニン:
ポリ−L−アルギニン塩酸塩(商品名、数平均分子量15,000)〔シグマ アルド
リッチ ジャパン(株)製〕
・ポリヒスチジン:
ポリ−L−ヒスチジン(商品名、数平均分子量10,000)
・リゾチーム:
サンキーパーNo.657(商品名、数平均分子量14,300)〔三栄原エフ・エフ
・アイ(株)製〕
・キトサンオリゴ糖:
COS−YS(商品名、数平均分子量680)〔焼津水産化学工業(株)製〕
・ラッカーゼ(80%品):
ラッカーゼダイワ(108,000単位品)360,000単位/gの固形純分80%
をデキストリンで賦形〔天野エンザイム(株)製〕
・ローズマリー抽出物(80%品):
水・エタノール抽出物で、デキストリンで賦形〔豊玉香料(株)製〕
・セージ抽出物(50%品):
水抽出物で、デキストリンで賦形〔豊玉香料(株)製〕
・シソ抽出物(50%品):
水抽出物で、デキストリンで賦形〔豊玉香料(株)製〕
・ミント抽出物(50%品):
ミントポリフェノール50(商品名) 水抽出物で、デキストリンで賦形〔小川香料(
株)製〕
・タイム抽出物(50%品):
水抽出物で、デキストリンで賦形〔豊玉香料(株)製〕
・メリッサ抽出物(50%品):
水抽出物で、デキストリンで賦形〔豊玉香料(株)製〕
・デキストラナーゼ:
12,000単位/g〔三菱化学フードテック(株)製〕
・ムタナーゼ:
6,000単位品〔天野エンザイム(株)製〕
・アクチニジン:
酵素活性9000単位品〔アサヒフードアンドヘルスケア(株)製〕
・パパイン:
パパインW−40(商品名)〔天野エンザイム(株)製〕
・ブロメライン:
ブロメラインF(商品名)〔天野エンザイム(株)製〕
・リジン(比較品):
L−リジン〔シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製〕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン性を示す官能基を分子中に2個以上有するポリカチオン性物質、及び(B)ラッカーゼを含有してなることを特徴とする口腔ケア組成物。
【請求項2】
ポリカチオン性物質が、塩基性ペプチドである請求項1記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
塩基性ペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリヒスチジンから選ばれる1種以上である請求項2記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
更に、(C)シソ科植物又はその抽出物を含有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
シソ科植物が、ローズマリー、セージ、シソ、ミント、タイム及びメリッサから選ばれる1種以上である請求項4記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
(A)成分を0.001〜5質量%、(B)成分を0.001〜3質量%、(C)成分を0.001〜5質量%含有する請求項4又は5記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
更に、(D)デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アクチニジン、パパイン、ブロメラインから選ばれる1種以上の酵素を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載の口腔ケア組成物。

【公開番号】特開2012−25695(P2012−25695A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165563(P2010−165563)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】