説明

口腔スプレー用組成物及び口腔用製剤

【解決手段】(A)ポリグルタミン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を0.05〜5質量%、(B)クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、コハク酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸及びその塩を2〜6質量%、(C)グリセリンを10〜50質量%とを、(C)/(B)の質量比が3以上20未満で配合して口腔スプレー用組成物を得る。
この口腔スプレー用組成物をスプレー容器に収容して口腔用製剤とする。
【効果】本発明の口腔スプレー用組成物及び口腔用製剤は、使用者が、口中の乾燥が気になったとき口腔内にスプレーするだけで、口腔粘膜など口腔組織に対する刺激性やベタツキ感なしに適用直後から長時間にわたって口中を潤わせることができ、口腔乾燥を有効に抑制することができ、経時安定性や使用時のスプレーによる噴霧性にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔乾燥症などによる口中の乾燥感を、使用直後から長時間に亘り持続的に改善することができ、かつ口腔粘膜等の口腔組織に対する刺激やベタツキ感を与えることもなく、経時での保存安定性が良好で、使用時のスプレーによる噴霧性に優れた口腔スプレー用組成物及び口腔用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内の乾燥は日常生活において経験され、不快感、口臭の発生等を伴い、更にはう蝕、歯周疾患を引き起こす場合もある。これら口腔内の乾燥は、口腔機能低下による唾液分泌量の減少に起因する場合が多い。
【0003】
唾液分泌を促進する技術としては、梅干や梅酢、有機酸など酸の刺激により唾液分泌が促進されることが知られている(特許文献1;特開昭56−22719号公報、特許文献2;特開平7−101856号公報参照)。しかし、酸による刺激は一次的なものであり、抜本的な改善に繋がらず、更に酸を頻繁に適用した場合、歯牙の溶解や口腔粘膜に対する刺激など口腔組織への影響が危惧される。
【0004】
また、ヒアルロン酸等の保湿成分により、口腔内の非乾燥感を持続させ、乾燥感を抑制する方法も提案されているが(特許文献3;国際公開第00/56344号パンフレット参照)、これは唾液の分泌を促進するものではなく、効果の持続性や使用性が十分とは言い難かった。
【0005】
一方、特許文献4(国際公開第05/049050号パンフレット)には、口腔組織に対して刺激性無しに唾液分泌を促進する手段としてポリグルタミン酸(PGA)又はその塩の利用が提案されており、ポリグルタミン酸ナトリウム又はカリウムを配合した洗口液及び口中清涼剤、ポリグルタミン酸アンモニウム、クエン酸などを配合したうがい用錠剤、ポリグルタミン酸エタノールアミン塩、グリセリンなどを配合した給水吸引機能付き口腔ケアシステム用溶液などが開示されている。
【0006】
また、特許文献5(特開2005−015347号公報)には、皮膚の最外層に存在する角質層の保湿環境にかかわるフィラグリンの合成促進剤の有効成分としてポリ−γ−グルタミン酸又はその誘導体が有効であることが提案され、ポリ−γ−グルタミン酸又はその誘導体を有効成分とする外用組成物が各種剤型の化粧料に調製され、具体的に口中清涼剤の組成などが開示されている。
【0007】
しかし、かかるポリグルタミン酸又はその塩を配合した製剤について、出願人が更に検討したところ、口腔内への適用においては、使用直後から長時間に亘る効果の持続性が十分とは言えず、口中に潤い実感を与えるという点において改善の余地があった。
【0008】
従って、このような従来の技術では口腔乾燥症などによる口中の乾燥感を持続的かつ有効に改善することは難しく、上記課題が解消され、使用直後より継続して口中の乾燥感を長時間に亘って抑制可能であり、かつ口腔組織に対する刺激性やベタツキ感がなく良好な使用感で保存安定性も良く、携帯性や簡便性にも優れた口腔用組成物の開発が望まれる。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−22719号公報
【特許文献2】特開平7−101856号公報
【特許文献3】国際公開第00/56344号パンフレット
【特許文献4】国際公開第05/049050号パンフレット
【特許文献5】特開2005−015347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、口腔乾燥症などによる口中の乾燥感を適用直後から長時間に亘って持続的に改善することができ、かつ使用時に口腔粘膜等の口腔組織に対する刺激やベタツキ感を与えることがなく、経時での保存安定性に優れ、使用時のスプレーによる噴霧性に優れる口腔スプレー用組成物及びこれを用いた口腔用製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)ポリグルタミン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を0.05〜5%(質量%、以下同様。)、(B)クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、コハク酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸及びその塩を合計で2〜6%、(C)グリセリンを10〜50%配合し、(B)成分に対する(C)成分の配合比率((C)/(B))を3以上20未満とすることにより、これをスプレー用容器等に収容し、使用時に口腔内に噴霧することで、使用直後より長時間に亘って唾液分泌を促進することができ、口腔内の乾燥感を改善して優れた潤い実感を与える上、使用者の口腔粘膜などの口腔組織に対する刺激性もほとんどなく、使用時のベタツキ感を与えることもなく、使用感が良好であり、保存安定性も良好で、かつ携帯性に優れ、必要なときに簡単に適用できる口腔スプレー用組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
なお、本発明においては、後述する実施例からも明らかなように、(A)ポリグルタミン酸塩と、(B)有機酸及びその塩と、(C)グリセリンとを特定量かつ割合で組み合わせて配合することにより、スプレーで噴霧して適用することで、上記優れた口腔内乾燥感の改善効果を有し、使用感及び製剤安定性も良好な口腔スプレー用組成物及び口腔用製剤を得ることができるもので、このような本発明の作用効果は、上記必須要件のいずれかを欠く場合には達成できない。
【0013】
従って、本発明は、
(A)ポリグルタミン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を0.05〜5%、
(B)クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、コハク酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸及びその塩を2〜6%、
(C)グリセリンを10〜50%
を含有し、(B)成分に対する(C)成分の質量比((C)/(B))が3以上20未満であることを特徴とする口腔スプレー用組成物、及びこの口腔スプレー用組成物を、スプレー容器に収容してなる口腔用製剤
を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の口腔スプレー用組成物及び口腔用製剤は、使用者が、口中の乾燥が気になったとき口腔内にスプレーするだけで、口腔粘膜など口腔組織に対する刺激性やベタツキ感なしに適用直後から長時間にわたって口中を潤わせることができ、口腔乾燥を有効に抑制することができ、経時安定性や使用時のスプレーによる噴霧性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の口腔スプレー用組成物は、(A)ポリグルタミン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、(B)クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、コハク酸及びその塩から選ばれる有機酸及びその塩、(C)グリセリンを含有する。
【0016】
本発明においては、唾液分泌促進の有効成分としてポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩が配合される。
上記ポリグルタミン酸塩としては、化学的に合成されるα又はγ−ポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩、あるいは各種菌株からの発酵生産物として得られる天然のα又はγ−ポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩が使用できるが、口腔用として使用することから天然のポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩が好ましく、特に原料としての生産性が高いγ−ポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩がより好適である。
【0017】
ポリグルタミン酸塩の粘度は、特に限定されず、製品の種類に応じて各種粘度のものを使用できるが、後述する方法により測定される4%水溶液の粘度が10〜200mPa・s、特に30〜120mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度が10mPa・s未満であると唾液分泌促進作用が不十分になる場合がある。200mPa・sを超えると製剤の粘度が高くなり、使用時のスプレーの噴霧性が悪くなる場合がある。
【0018】
粘度測定法
200mLビーカーに水96gをとり、スターラーで撹拌しながらこれにポリグルタミン酸又はその塩を4.0g加えて完全に溶解させる。次に、25℃恒温水槽中に1時間静置後、下記のBL型粘度計を用いて正確に1分後の粘度を測定する。
BL型粘度計:東京計器 B型粘度計 型式BL
ローター:No.2 回転数:60rpm 測定温度:25℃
【0019】
上記ポリグルタミン酸塩としては市販品を利用でき、例えばγ−ポリグルタミン酸ナトリウムとしては明治フードマテリアル社製の明治ポリグルタミン酸などを用いることができる。
【0020】
ポリグルタミン酸のナトリウム塩又はカリウム塩の配合量は、組成全体の0.05〜5%であり、好ましくは0.1〜2%である。0.05%未満では唾液分泌促進効果が十分発現せず、5%を超えると粘度が高くなり、噴霧できなかったり、口中での拡散性が悪くベタツキ感が生じる。
【0021】
(B)成分は、有機酸とその塩であり、本発明によれば、(B)有機酸とその塩と(C)グリセリンとを併用することで、口腔粘膜等の口腔組織に刺激を与えることなしに適用直後から口中に潤いを与えることができる。
有機酸及びその塩としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸及びコハク酸から選ばれる1種又は2種以上の有機酸とこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が使用され、具体的にはクエン酸とその塩、リンゴ酸とその塩、酒石酸とその塩、コハク酸とその塩を組み合わせて配合する。中でもクエン酸とクエン酸ナトリウム、リンゴ酸とリンゴ酸ナトリウムの組み合わせが使用時の刺激性及び口中の潤い実感(5分後)の点から好ましい。
【0022】
有機酸及び有機酸塩の合計配合量は、組成全体の2〜6%、好ましくは2.5〜5%である。2%未満では製剤適用直後の潤い感が満足に得られず、6%を超えて配合しても更なる効果は得られず、口腔粘膜に対し刺激を与えたり、経時保存安定性に問題が生じる。
【0023】
更に、有機酸の配合量は0.005〜1.5%であり、特に0.05〜0.5%が好ましい。0.005%未満では製剤適用直後の口中の潤い感が十分に得られず、1.5%を超えると歯牙の溶解や口腔粘膜に刺激を与える。
有機酸塩の配合量は1.5〜5.9%であり、特に1.8〜5%が好ましい。1.5%未満では製剤適用直後の口中の潤い感などの効果に劣り、5.9%を超えると口腔粘膜に対し刺激を与えたり、経時安定性に劣る。
【0024】
また、有機酸及び有機酸塩を組み合わせた(B)成分の配合量は、製剤の25℃におけるpHが5〜8になる範囲に調整することが好ましく、製剤のpHが5未満の場合、歯の溶解するリスクが顕著に高くなり、pHが8を超えた場合、口腔粘膜が刺激を受ける可能性がある。
【0025】
(C)グリセリンの配合量は、組成全体の10〜50%であり、好ましくは15〜40%である。10%未満では製剤の安定性が低下したり、口腔粘膜に対し刺激を与え、50%を超えるとベタツキなど使用感が悪くなる。
【0026】
(B)成分に対する(C)成分の質量比((C)/(B))は、3以上20未満であり、好ましくは3以上15以下、より好ましくは3.5以上15以下である。(C)/(B)の比率が3未満の場合には製剤の安定性に劣ったり、口腔粘膜に対し刺激を与え、20以上では、使用直後の口中の潤い感や、ベタツキ等により使用感に劣る。
【0027】
本発明の口腔スプレー用組成物は、液体又は液状に調製されるが、上記成分に加え、必要に応じて本発明の効果を妨げない範囲で、保湿成分、湿潤剤、水溶性高分子物質、界面活性剤、溶剤、防腐成分、香料、有効成分等を配合可能である。
【0028】
具体的には、ヒアルロン酸塩などの保湿成分や、湿潤剤として、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、還元乳糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリセリン以外の多価アルコール、更には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウムなどの水溶性高分子物質などを併用できる。
【0029】
上記任意成分を配合する場合、保湿成分の配合量は0.001〜1%、糖アルコール類の配合量は0.1〜20%、多価アルコールの配合量は0.1〜10%、水溶性高分子物質の配合量は0.01〜1%が好ましい。
【0030】
また、有効成分として抗う蝕成分のフッ化物(フッ化ナトリウムなど)、デキストラナーゼ、ムタナーゼなどの酵素、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、ピロクトンオラミンなどの知覚過敏の予防又は抑制成分や、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノールやl−メントールなどの殺菌・口臭抑制成分、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ε−アミノカプロン酸などの抗炎症成分、その他、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどの水溶性ポリリン酸塩、アスコルビン酸又はその塩、酢酸トコフェロール、ローズマリー、チョウジ、タイムなどの生薬抽出物などを有効量配合することができる。
【0031】
更に、溶剤に不溶な成分の可溶化等の目的で、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤を配合できる。
この場合、アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルポリオキシエチレン(POE)硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム、サーファクチンナトリウム等が用いられる。
【0032】
ノニオン界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられ、特にエチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、平均付加モル数が20〜50のポリオキシエチレンアルキルエーテル、平均付加モル数が10〜30のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがより好ましい。
【0033】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0034】
これら界面活性剤の配合は任意であるが、配合する場合、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤の配合量は0.001〜3%、非イオン界面活性剤の配合量は0.1〜10%が好ましい。界面活性剤の総配合量は0.001〜10%が好ましい。
【0035】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油及び、l−カルボン、1,8−シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール等の上記天然精油中に含まれる香料成分、また、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール−l−メンチルカーボネート等の香料成分、さらには、いくつかの香料成分や天然精油を組み合わせてなる、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバーの1種又は2種以上を、本発明の効果を妨げない範囲で組成中0.00001〜3%配合することができる。
【0036】
更に、安息香酸及びそのナトリウム塩、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類(パラオキシ安息香酸エステル)を防腐成分として、赤色3号、赤色104号、赤色106号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、キシリトール、サッカリン及びそのナトリウム塩、スクラロース、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。
【0037】
本発明の口腔スプレー用組成物は、上記成分を含有する液体又は液状の口腔用組成物が容器に収容され、使用時に口腔内に噴霧して適用される。この場合、収容容器としては、薬剤を噴霧できる構造を有しているものであれば特に制限されない。具体的には、内容物を収容するプラスチックボトル等の容器本体と、ポンプディスペンサー等の噴霧機構を有するスプレー部とを備え、容器本体の上部開口部に密着して装着されたスプレー部の押圧部を押圧することで、容器本体に収容された内容物が、スプレー部の内容物排出機構によって内容物排出口(ノズル)から噴霧、排出されるもの(以下、スプレー容器と略す。)が使用できる。
このようなスプレー容器は、市販品を使用してもよく、例えばスプレー容器のディスペンサー部分は吉野工業所製のY−20(1プッシュ約0.2mL排出)、Y−70(1プッシュ約0.07mL排出)、Y−150(1プッシュ約0.15mL排出)等や、三谷バルブ社製Z−155(1プッシュ0.15mL排出)などのディスペンサーが、またボトル部については吉野工業所製の前記ディスペンサーに対応したポリエチレンテレフタレート製のボトルや竹本容器製PEI−30ボトル等が市販品として入手できる。スプレー容器のディスペンサー部については実公昭55−373号公報、実公昭56−21476号公報、特開昭60−32505号公報などが開示されている。
【0038】
図1は、本発明に使用し得るスプレー容器の一実施例を示す概略断面図である。このスプレー容器のディスペンサー部はY−70、ボトル部はY−70に対応したポリエチレンテレフタレート製ボトル(いずれも吉野工業所製)として市販されている。
図1の容器は、内容物を収容する容器本体1と噴霧機構を有するスプレー部2とを備え、容器本体1の上部開口部に、スプレー部2がパッキン3を備えたキャップ4によって密着して装着され、かつスプレー部2は、その内容物排出機構5の内容物流入路となるシリンダー6の下部突出部が、その先端開口部にチューブ7が備えられて容器本体1内に挿入されている。この容器は、スプレー部2の押圧部8を押圧することで、ピストン9がシリンダー6内をシリンダーガイド10に沿って上下することによって、容器本体1内の内容物が、チューブ7の下部開口部から、シリンダー6内の流量を調節するボール11を介して吸い上げられ、頭部シリンダー12を通って内容物排出口のノズル13から噴霧、排出されるものである。なお、必要に応じて、スプレー部2にオーバーキャップ14を被せることができる。
【0039】
上記スプレー容器を構成するスプレー部の形状や、内容物排出機構、ノズル等の口径や形状などは、一般に使用されているものであれば自由に使用でき、特に限定されるものではないが、内容物が排出されるノズル孔の口径は0.1〜1mm、特に0.3〜0.8mmが好適である。スプレーによる噴霧量は、1プッシュあたり0.01〜0.5mLであることが好ましい。また、容器本体は、高さが40〜100mm、幅が15〜50mmのものが好ましく、容量は5〜50mL程度が好適である。
このような容器を使用することは、より優れた噴霧性や口中への潤い感付与効果を発揮させるのに有効である。
【0040】
スプレー容器の材質は特に限定されないが、スプレー部の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール等が好適であり、容器本体の材質は、ポリエチレンテレフタレート等が好適である。
【0041】
図1のスプレー容器の各部の材質は、例えば下記の通りとすることができる。
容器本体1(ボトル)(ポリエチレンテレフタレート)、
パッキン3(発泡ポリエチレン両面ポリプロピレン貼り)
キャップ4(ポリプロピレン)
シリンダー6、シリンダーガイド10、頭部シリンダー12(ポリプロピレン)
チューブ7(ポリエチレン)
押圧部8(ポリエチレン)
ピストン9(ポリエチレン)
ボール11(SUS304 ステンレス鋼材)
ノズル13(ポリアセタール)
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0043】
〔実施例1〜10、比較例1〜11〕
表1〜4に示す組成の口腔用組成物を下記方法で調製し、下記の評価を行った。結果を表1〜4に併記する。
製剤の調製:
各成分を量り採り、撹拌機で混合して調製した。調製した液30gを、スプレー容器(吉野工業所製Y−70ディスペンサー、ノズル孔0.55mm、1プッシュの噴霧量は約0.07mL、容量30mLポリエチレンテレフタレート製ボトル)に充填し、試験用製剤を得た。
なお、表1〜4中のγ−ポリグルタミン酸ナトリウムとしては、(株)明治フードマテリア製の天然品(明治ポリグルタミン酸)を使用した。
【0044】
<使用時の口中の潤い実感>
日常生活において口腔乾燥が気になるパネラー10名が使用した。試験用製剤を5プッシュ(約0.35mL)口中に噴霧して、使用5分後、30分後の口中の潤い実感及び使用直後の刺激感、ベタツキを下記の基準にて評価した。
【0045】
口中の潤い実感:
7点:非常に感じる
6点:かなり感じる
5点:やや感じる
4点:どちらともいえない
3点:あまり感じない
2点:ほとんど感じない
1点:全く感じない
パネラーの平均点を算出し、下記の通り評価した。
◎:6.0点以上 ○:5.0点以上6.0点未満
△:4.0点以上5.0点未満 ×:4.0点未満
【0046】
<使用直後の刺激感>
比較例7を標準品として、以下の基準で評価を行った。
5点:標準品より明らかに刺激が弱い
4点:標準品よりやや刺激が弱い
3点:標準品と同等レベル
2点:標準品よりやや刺激が強い
1点:標準品より顕著に刺激が強い
パネラーの平均点を算出し、下記の通り評価した。
◎:4.5点以上 ○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満 ×:2.5点未満
【0047】
<使用直後のベタツキ>
比較例8を標準品として以下の基準で評価を行った。
5点:標準品に比べ明らかにベタツキがない
4点:標準品に比べややベタツキがない
3点:標準品と同等
2点:標準品に比べややベタツキがある
1点:標準品に比べ顕著にベタツキがある
パネラーの平均点を算出し、下記の通り評価した。
◎:4.5点以上 ○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満 ×:2.5点未満
【0048】
<製剤の安定性評価、噴霧性評価>
調製した製剤を容量30mLのスプレー容器に充填し、−5℃、50℃の温度条件下に一ヶ月放置し、外観、性状を以下の基準で目視評価して製剤の安定性を評価した。
○:無色透明で析出物は認められない
△:僅かにオリが認められる
×:顕著に析出物もしくは濁りが認められる
【0049】
また、噴霧性は、スプレー容器を正立させて、20℃の温度下で5cmの距離からろ紙(No.5A)に1プッシュスプレーしたときのスプレーパターンを測定し、そのパターンの長径を以下の基準で評価した。
噴霧性評価基準
◎:4.0cm以上 ○:3.0cm以上4.0cm未満
△:2.0cm以上3.0cm未満 ×:2.0cm未満
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
表1〜4の結果により、本発明の口腔用スプレー組成物は投与直後から長時間にわたって、口中に潤いを与えることができ、口腔組織に安全で、経時での劣化が少なく、噴霧性など使用性に優れたものであることが確認できた。
【0055】
前述の製法にて下記実施例11〜16の製剤を調製し、上記と同様のスプレー容器に充填し、上記の評価法に準じて評価した。なお、γ−ポリグルタミン酸ナトリウム、γ−ポリグルタミン酸カリウムとしては、(株)明治フードマテリア製の天然品を使用した。
【0056】
〔実施例11〕
A成分 γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 2.0%
(4%水溶液粘度:12mPa・s)
B成分 クエン酸 0.32
B成分 クエン酸ナトリウム 3.68
C成分 グリセリン 20
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3
エタノール 15
キシリトール 5
還元乳糖 5
l−メントール 0.2
香料B 0.3
精製水 残
計 100%
pH:6.1 B成分の合計配合量:4.0% C成分/B成分の質量比:5.0
潤い実感(5分後、30分後共)◎、刺激感のなさ◎、ベタツキのなさ:◎、保存安定性(−5℃、50℃共)○、噴霧性◎であった。
【0057】
〔実施例12〕
A成分 γ−ポリグルタミン酸カリウム 0.5%
(4%水溶液粘度:45mPa・s)
B成分 クエン酸 0.5
B成分 クエン酸ナトリウム 3.5
C成分 グリセリン 25
モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 3
ポリビニルピロリドン(K90) 0.3
エタノール 10
ソルビトール 5
エリスリトール 5
フッ化ナトリウム 0.05
安息香酸ナトリウム 0.1
香料C 0.3
精製水 残
計 100%
pH:5.8 B成分の合計配合量:4.0% C成分/B成分の質量比:6.25
潤い実感(5分後、30分後共)◎、刺激感のなさ◎、ベタツキのなさ:◎、保存安定性(−5℃、50℃共)○、噴霧性◎であった。
【0058】
〔実施例13〕
A成分 γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 0.5%
(4%水溶液粘度:84.5mPa・s)
B成分 クエン酸 0.2
B成分 クエン酸ナトリウム 3.8
C成分 グリセリン 25
ポリオキシエチレン(30)セチルエーテル 3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
エタノール 10
マルチトール 5
キシリトール 5
塩化セチルピリジニウム 0.02
香料D 0.3
精製水 残
計 100%
pH:6.3 B成分の合計配合量:4.0% C成分/B成分の質量比:6.25
潤い実感(5分後、30分後共)◎、刺激感のなさ◎、ベタツキのなさ:◎、保存安定性(−5℃、50℃共)○、噴霧性◎であった。
【0059】
〔実施例14〕
A成分 γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 0.5%
(4%水溶液粘度:101mPa・s)
B成分 クエン酸 0.1
B成分 クエン酸ナトリウム 3.9
C成分 グリセリン 15
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3
プロピレングリコール 2
ポリエチレングリコール#400 3
カルボキシメチルセルロースナトリウム(アーネストガム) 0.1
エタノール 10
ソルビトール 5
キシリトール 5
塩化セチルピリジニウム 0.02
香料E 0.3
精製水 残
計 100%
pH:6.7 B成分の合計配合量:4.0% C成分/B成分の質量比:3.75
潤い実感(5分後、30分後共)◎、刺激感のなさ◎、ベタツキのなさ:◎、保存安定性(−5℃、50℃共)○、噴霧性◎であった。
【0060】
〔実施例15〕
A成分 γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 0.1%
(4%水溶液粘度:189mPa・s)
B成分 クエン酸 0.32
B成分 クエン酸ナトリウム 3.68
C成分 グリセリン 20
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3
エタノール 10
ソルビトール 15
キシリトール 1
カルボキシメチルセルロースナトリウム(アーネストガム) 0.2
l−メントール 0.2
香料F 0.3
精製水 残
計 100%
pH:6.1 B成分の合計配合量:4.0% C成分/B成分の質量比:5.0
潤い実感(5分後、30分後共)◎、刺激感のなさ◎、ベタツキのなさ:◎、保存安定性(−5℃、50℃共)○、噴霧性○であった。
【0061】
〔実施例16〕
A成分 γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 0.5%
(4%水溶液粘度:84.5mPa・s)
B成分 クエン酸 0.32
B成分 クエン酸ナトリウム 3.68
C成分 グリセリン 30
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3
エタノール 10
キシリトール 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム(アーネストガム) 0.1
l−メントール 0.1
レモン精油 0.1
香料A 0.1
精製水 残
計 100%
pH:6.1 B成分の合計配合量:4.0% C成分/B成分の質量比:7.5
潤い実感(5分後、30分後共)◎、刺激感のなさ◎、ベタツキのなさ:◎、保存安定性(−5℃、50℃共)○、噴霧性◎であった。
なお、香料A〜Fは下記の通りの組成である。
【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

なお、表中の配合量(部)は質量部である(以下、同様)。
【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
【表9】

【0067】
【表10】

【0068】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかわるスプレー容器の一実施例を示す概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 容器本体
2 スプレー部
3 パッキン
4 キャップ
5 内容物排出機構
6 シリンダー
7 チューブ
8 押圧部
9 ピストン
10 シリンダーガイド
11 ボール
12 頭部シリンダー
13 ノズル
14 オーバーキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリグルタミン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を0.05〜5質量%、
(B)クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、コハク酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸及びその塩を2〜6質量%、
(C)グリセリンを10〜50質量%
を含有し、(B)成分に対する(C)成分の質量比((C)/(B))が3以上20未満であることを特徴とする口腔スプレー用組成物。
【請求項2】
請求項1記載の口腔スプレー用組成物を、スプレー容器に収容してなる口腔用製剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−274967(P2009−274967A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125588(P2008−125588)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】