説明

口腔用組成物

【課題】すでに成熟したバイオフィルムに対してもバイオフィルム内部構造を変化させることで物理化学的作用によるバイオフィルムの除去を促進することによって、う触、歯周病口臭等の口腔疾患の原因となる細菌の生育・繁殖の場を壊し除去することができる口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】エリスリトールを有効成分として含有し、塩基性アミノ酸を含まない、すでに成熟したバイオフィルムの除去促進用口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルムを形成する細菌の共凝集を抑制またはすでに形成された細菌の付着体や共凝集体を分解することにより、バイオフィルムの形成を阻害し、すなわち、う蝕、歯周病、口臭等の口腔疾患の原因となる細菌の生育する場の形成を抑制すること、歯や義歯などの硬組織、舌や頬などの軟組織、歯周ポケットなどの硬組織と軟組織の隙間に形成された歯垢、舌苔、デンチャープラークなどの成熟したバイオフィルムの除去を促進することで、う蝕、歯周病、口臭等の口腔疾患の予防をすることができる口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕、歯周病、口臭等の口腔疾患を予防するには、バイオフィルムの形成を阻害し、口腔内にすでに形成されたバイオフィルムを除去することが重要である。
従来、バイオフィルムの形成を抑制するには、殺菌剤、抗菌剤、抗生物質などによるバイオフィルムを形成する細菌を殺菌する方法や、バイオフィルムの形成過程において細菌の付着、あるいは細菌の凝集体の形成を阻害する方法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、アミノ糖を抗歯垢剤として含む口腔衛生組成物が開示され、N−ヘプチルガラクトシルアミン、N−ヘプチルラクトシルアミン、N−デシルラクトシルアミン等のアミノ糖が細菌凝集の阻害活性を示すことが示されている。
【0003】
しかしながら、これらの方法は唾液などに浮遊している細菌に対して作用させるためのものであり、すでに細菌が付着や凝集することによって形成された付着体や凝集体(例えば、マイクロコロニーなど)には作用させることが困難であった。また、特定の殺菌剤や抗菌剤の長期使用や高濃度で口腔内に適用することは生体組織に対し菌交代症や為害作用を示すなどの問題点がある。
【0004】
一方、成熟したバイオフィルムを除去するには、歯ブラシなどによるブラッシングや超音波などの物理的作用に加え、歯磨剤に配合されている研磨剤や発泡剤、さらに酵素、殺菌剤などの薬効剤を併用することにより、口腔内に形成されたバイオフィルム、例えば歯垢や舌苔の分解や除去をしていた。
【0005】
しかしながら、すでに成熟したバイオフィルムは、細菌によって分泌される不溶性グルカンなどの菌体外多糖でフィルム状に覆われており、酵素や殺菌剤などの薬効剤をバイオフィルムの深部まで効率的に作用させることが困難であった。また歯ブラシなどによるブラッシングは、歯ブラシなどの毛先の先端が到達できない歯と歯の隙間や歯周ポケットなどの隙間に形成されたバイオフィルムを完全に除去することは困難であり、さらに過剰なブラッシング圧や超音波などの物理力は、歯や粘膜などを傷つけるなどの口腔組織に対し為害作用があるなどの問題があった。
【0006】
ここで、バイオフィルムは、病原細菌を含む細菌の共凝集体と菌体外多糖とからなるものである。バイオフィルムの形成や成熟には、歯や粘膜などの生体組織表面に唾液などに浮遊している細菌の付着や細菌同士の共凝集体の形成が深く関与していると推定されている。特にPorphyromonas gingivalis、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Prevotell intermediaなど歯周病関連細菌は、生体組織などに直接定着できず、細菌同士のアドヘシン−レセプターによる凝集反応を介してバイオフィルム中に定着すると推定されている(非特許文献1)。
【0007】
また、成熟したバイオフィルムの構造上の特徴として、バイオフィルム中には原始的な導管様の水の循環系が存在し、この循環系を通してバイオフィルムを構成している細菌同士のネットワークが構築されている。つまり、ある細菌の老廃物は他の細菌の栄養になるなど、限られた栄養の環境下で多種の細菌が効率よく生息していくためには、水の循環系の存在が必要であると推定されている(非特許文献2)。しかしながら、従来このようなバイオフィルムの形成過程や形成されたバイオフィルムの内部構造に着目した口腔用組成物の開発は行なわれていない。
【0008】
一方、特許文献2の段落0001には、エリスリトールの抗う蝕性が開示され、特許文献3の段落0002には、キシリトールにう蝕予防効果があることが開示されている。そして、「キシリトールのう蝕予防効果については学会誌等で多数報告されている。キシリトールの効果は、う蝕の原因菌であるS .mutans の発育を抑制するためであることが通説とされる」(段落0004)ことが開示されている。
【0009】
また、特許文献4の段落0010には、「う蝕は、S .mutansが砂糖を栄養源として、酵素グルコシルトランスフェラーゼの作用により、非水溶性のグルカンをつくることから始まる」ことが開示されている。
すなわち、従来技術におけるう蝕の防止はS .mutans等の細菌の生育を阻害することによるう蝕防止を意味するものである。
しかし、細菌の生育を阻害するのみでは、形成されつつあるバイオフィルムには大きな影響を及ぼすことができない。また、細菌の生育が阻害されるとはいっても、細菌細菌の付着・凝集が起これば、う触、歯周病、口臭等の口腔疾患の原因となる細菌の生息・繁殖の場であるバイオフィルムは形成されるため、効果的なう触予防を図ることが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−24948号公報
【特許文献2】特開平10−33138号公報
【特許文献3】特開平11−12143号公報
【特許文献4】特開2002−325557号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】P.E.Korenbrander. J. Bacteriol 175(11):3247-52. p.3247〜3252 1993
【非特許文献2】http://www.lion.co.jp/press/2002073.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、バイオフィルムを形成する細菌の共凝集を抑制することにより、バイオフィルムの形成を阻害し、すなわち、う触、歯周病等の原因となる細菌の生育する場の形成を抑制する。また、すでに形成され細菌の付着体や共凝集体を分解する。さらに、すでに成熟したバイオフィルムに対してもバイオフィルム内部構造を変化させることで物理化学的作用によるバイオフィルムの除去を促進することによって、う触、歯周病口臭等の口腔疾患の原因となる細菌の生育・繁殖の場を壊し除去することができる口腔用組成物を提供することにより、う蝕、歯周病、口臭などの口腔疾患の予防を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、エリスリトールを有効成分として含有し、塩基性アミノ酸を含まない、すでに成熟したバイオフィルムの除去促進用口腔用組成物を提供するものである。
【0014】
本発明は、糖アルコールおよび/またはアミノ酸を含むバイオフィルム形成阻害用またはバイオフィルム除去促進用口腔用組成物である。つまり、本発明は、口腔用組成物に糖アルコールおよび/またはアミノ酸を配合することにより、歯や義歯などの硬組織、舌や頬などの軟組織、歯周ポケットなどの硬組織と軟組織の隙間に形成されるバイオフィルムの形成過程において細菌の付着や凝集などを抑制またはすでに形成した付着体や共凝集体を分解することによってバイオフィルムの形成を阻害し、かつすでに成熟したバイオフィルムにおいてもバイオフィルム内部構造を変化させることでバイオフィルムの除去を促進することを可能にしたものである。
【0015】
本発明に係る口腔用組成物は、糖アルコールおよび/またはアミノ酸の作用により、電気的、ファンデルワールスカ、アドヘシン−レセプターなどの細菌の付着や共凝集に関わる相互作用を変化させ、細菌同士の凝集反応を抑制または解離することでバイオフィルムの形成を阻害することを可能にした。また、糖アルコールおよび/またはアミノ酸の凝集反応により、成熟したバイオフィルム外部の浸透圧を高めることで、バイオフィルム中の水分活性を低下させる、いわゆる脱水作用等の物理化学的作用によって、バイオフィルムにおける水の循環系を遮断し、バイオフィルム中のネットワーク構造を崩壊させることで、歯と歯や歯周ポケットなどの隙間に形成されたバイオフィルムの除去をも同時に促進することを可能にした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る口腔用組成物に糖アルコールおよび/またはアミノ酸を配合することにより、歯や義歯などの硬組織、舌や頬などの軟組織、歯周ポケットなどの硬組織と軟組織の隙間に形成される歯垢、舌苔、デンチャープラークなどのバイオフィルムの形成過程において細菌の付着や凝集などを抑制または形成した付着体や共凝集体を分解することによってバイオフィルムの形成を阻害し、かつすでに成熟したバイオフィルムにおいてもバイオフィルム内部構造を変化させることでバイオフィルムの除去を促進することで、効果的なう蝕、歯周病、口臭等の口腔疾患の予防を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において使用される糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、グルコピラノシルソルビトール、グルコピラノシルマンニトールが挙げられる。またアミノ酸としては、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン等の塩基性アミノ酸が挙げられ、コストや保存安定性の観点から、リジン、アルギニンがより好ましい。
【0018】
糖アルコールの含有量は、バイオフィムル除去促進および形成阻害効果の点から、本発明口腔用組成物中0.1〜80質量%、さらに1〜60質量%、特に10〜50質量%であることが好ましい。アミノ酸の含有量は、バイオフィルム除去促進および形成阻害効果、並びに嗜好性の観点から、本発明口腔用組成物中0.01〜10質量%、さらに0.05〜5質量%、特に0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明において糖アルコールとアミノ酸は、バイオフィルム除去促進および形成阻害効果の観点から、併用するのが特に好ましい。この場合、糖アルコール対アミノ酸の配合比(質量比)は、0.01:1〜500:1、さらに0.1:1〜200:1、特に1:1〜100:1であることが好ましい。
【0020】
本発明口腔用組成物においては、糖アルコールおよび/またはアミノ酸に、さらにアミノ糖、単糖類、オリゴ糖、リン酸化糖およびこれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上を併用することでバイオフィルムの除去を促進する効果、またはバイオフィルムの形成を阻害する効果を高めることができる。これらの成分は、その吸水作用、キレート作用、電気的作用や凝集拮抗作用などの物理化学的作用がバイオフィルムの構造をより変化させやすくし、糖アルコールおよび/またはアミノ酸の作用を高めるものと推定される。
【0021】
アミノ糖としては、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルマンノサミン、ポリーN−アセチルグルコサミンなどの重合体、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸などのグリコサミノグリカンなどが挙げられ、配合安定性の観点からN−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸が好ましい。
【0022】
単糖類としては、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどが挙げられ、配合安定性の観点からガラクトース、フルクトースが好ましい。オリゴ糖としては、ショ糖、ラクトース、マルトース、キシロース、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キトオリゴ糖などが挙げられ、配合安定性の観点からラクトース、マルトースが好ましい。
【0023】
リン酸化糖としては、グリセロリン酸、リン酸化エリスリトール、リン酸化グルコース、リン酸化ガラクトース、リン酸化イノシトール、リン酸化フルクトース、リン酸化マンノース、リン酸化ショ糖、リン酸化マルトース、リン酸化でんぷん、リン酸化マンナン等が挙げられ、配合安定性の観点からグリセロリン酸、エリスリトールモノリン酸、グルコースモノリン酸、ガラクトースモノリン酸、イノシトールモノリン酸、フルクトースモノリン酸、リン酸化でんぷん、リン酸化マンナンが好ましい。また、これらの化合物は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどの塩として用いることもできる。
【0024】
糖アルコールまたはアミノ酸対アミノ糖の配合比(質量比)は、0.001:1〜50:1、さらに0.01:1〜20:1、特に0.1:1〜10:1であることが好ましい。糖アルコールまたはアミノ酸対単糖類またはオリゴ糖の配合比(質量比)は、0.01:1〜500:1、さらに0.1:1〜200:1、特に1:1〜100:1であることが好ましい。糖アルコールまたはアミノ酸対リン酸化糖の配合比(質量比)は、0.001:1〜50:1、さらに0.01:1〜20:1、特に0.1:1〜10:1であることが好ましい。さらに、糖アルコールまたはアミノ酸対アミノ糖、単糖類、オリゴ糖およびリン酸化糖の任意の2種または3種以上の合計の配合比(質量比)は、0.005:1〜500:1、さらに0.05:1〜200:1、特に0.5:1〜100:1が好ましい。
【0025】
本発明の口腔用組成物には、前記成分の他、例えば発泡剤、発泡助剤、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、増量剤、甘味剤、保存料、pH調整剤、殺菌剤、フッ化物、血行促進剤、消炎剤、酵素、粘着剤、顔料、色素、香料等を適宜含有させることができる。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、例えば溶液状、ゲル状、ペースト状といった剤形に調製することができる。また、本発明に係る口腔用組成物は、粉歯磨剤、練り歯磨剤、液状歯磨剤、液体歯磨剤、洗口液、マウススプレー剤、義歯洗浄剤等として用いることができ、或いは、トローチやキャンディー、チューインガムとして用いることもできる。
【実施例】
【0027】
<実施例A>
(評価方法)
ヒト口腔内バイオフィルム(歯垢および舌苔)の除去効果について、下記の方法に従い調べた。被験者10名の歯面および歯周ポケット並びに舌に形成された歯垢や舌苔をPMTCなどの歯科清掃により完全に取り除いた後、ブラッシングなどの口腔清掃を36時間以上中止させ、口腔内に歯垢および舌苔を形成させた。その後、実施例または比較例として示した組成物をそれぞれ使用させた。
歯垢量の評価は、歯垢染色液にて歯垢を染め出した後、歯垢染色面を平滑面および歯間部に分け、歯肉辺縁からの高さ(mm)で測定した。また舌苔量の評価は、舌中部付近の一定面積から擦過によって採取された湿重量にて測定した。歯垢除去率および舌苔除去率は、組成物の適用前後での歯垢量および舌苔量から算出した。また、実施例または比較例として示した組成物は、以下の方法で使用した。
【0028】
(使用方法)
練り歯磨き、液状歯磨き:歯磨き約0.5gを歯ブラシに付け、約2分間歯面のみをブラッシングした後、イオン交換水10mlにて2回漱がせた。
洗口剤:洗口液約15mlを約30秒間含嗽させ、約2分間歯面のみをブラッシングした後、イオン交換水10mlにて2回漱がせた。
【0029】
(結果)
表1に本発明に係る糖アルコール、アミノ酸、アミノ糖、オリゴ糖、リン酸化糖等が配合されている各種口腔用組成物の歯垢除去率および舌苔除去率の結果を示した。ただし、結果は被験者10名平均値で示した。糖アルコールであるエリスリトールとグルコピラノシルソルビトールを配合している実施例1、アミノ酸であるリジンを配合している実施例3は、糖アルコールおよびアミノ酸を配合していない比較例1より歯垢除去率および舌苔除去率が高かった。また、実施例1にリン酸化糖であるグルコース−6−リン酸ナトリウムを配合した実施例2、実施例3にオリゴ糖であるマルトースを配合した実施例4は、実施例1および実施例3の歯垢および舌苔除去率を向上させた。糖アルコールであるキシリトール、アミノ酸であるアルギニン、さらにアミノ糖であるコンドロイチン硫酸を配合した実施例5は全ての比較例および実施例の中で最も歯垢および舌苔除去率が高かった。
【0030】
【表1】

【0031】
以上の結果は、糖アルコールまたはアミノ酸がバイオフィルム中のネットワーク構造を変化させることによってブラッシングなどの物理的作用がおよびにくい歯間や舌などの粘膜に形成された歯垢や舌苔などのバイオフィルムの除去を促進したものと推定され、アミノ糖、オリゴ糖、リン酸化糖等を併用することで、その機能がさらに向上するものと考えられる。
【0032】
<実施例B>
(評価方法)
ヒト口腔内バイオフィルム(歯垢および舌苔)の形成阻害効果について、下記の方法によって調べた。被験者10名の歯面および歯周ポケットに形成された歯垢および舌苔をPMTCなどの歯科清掃により完全に取り除いた後、後述の実施例および比較例に示した組成物を使用させた後、24時間ブラッシングなどの口腔清掃を中止し、歯垢および舌苔の形成量を測定した。歯垢量の評価は、歯垢染色液にて歯垢を染め出した後、歯垢染色面を歯肉辺縁からの高さ(mm)で測定し、平滑面および歯間部の平均値を歯垢量とした。また舌苔量の評価は、舌中部付近の一定面積から擦過によって採取された湿重量にて測定した。また、実施例または比較例に示した組成物は、以下の方法で使用した。
【0033】
(使用方法)
1.練り歯磨き、液状歯磨き:歯磨き約0.5gを歯ブラシに付け、約2分間歯面のみをブラッシングした後、イオン交換水10mlにて2回漱がせた。
2.洗口剤:洗口液約15mlを約30秒間含嗽させた。
【0034】
(結果)
表2に本発明に係る糖アルコール、アミノ酸、アミノ糖、オリゴ糖、リン酸化糖等が配合されている各種口腔用組成物の歯垢形成量および舌苔形成量の結果を示した。ただし、結果は被験者10名平均値で示した。糖アルコールであるエリスリトールとグルコピラノシルソルビトールを配合している実施例1、アミノ酸であるリジンを配合している実施例3は、糖アルコールおよびアミノ酸を配合していない比較例1より歯垢および舌苔形成量が低かった。また、実施例1にリン酸化糖であるグルコース−6−リン酸ナトリウムを配合した実施例2、実施例3にオリゴ糖であるマルトースを配合した実施例4は、実施例1および実施例3の歯垢および舌苔形成量をさらに低下させた。糖アルコールであるキシリトール、アミノ酸であるアルギニン、さらにアミノ糖であるコンドロイチン硫酸を配合した実施例5は全ての比較例および実施例の中で最も歯垢および舌苔形成量が低かった。
【0035】
【表2】

【0036】
以上の結果は、糖アルコールまたはアミノ酸がバイオフィルムの形成過程において細菌の付着や凝集などを抑制することによって歯垢および舌苔などのバイオフィルムの形成を阻害したものと推定され、アミノ糖、オリゴ糖、リン酸化糖等を併用することで、その機能がさらに向上するものと考えられる。
【0037】
以上のことから、糖アルコールまたはアミノ酸はバイオフィルムの形成過程において、細菌の付着や凝集などを抑制することによって、バイオフィルムの除去を促進し、また形成を阻害することを可能にしたものであり、リン酸化糖などをさらに併用することで、その機能が向上するものと考えられる。
【0038】
[比較例1]練り歯磨き
ソルビトール 20
グリセリン 15
プロピレングリコール 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1
増粘性シリカ 8
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.4
研磨性シリカ 15
フッ化ナトリウム 0.21
塩化トリクロサン 0.02
香料 1
精製水 バランス
100質量%
【0039】
[比較例2]練り歯磨き
グルコース−6−リン酸ナトリウム 5
ソルビトール 20
グリセリン 15
プロピレングリコール 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1
増粘性シリカ 6
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.4
研磨性シリカ 15
フッ化ナトリウム 0.21
塩化セチルピリジニウム 0.02
酢酸dl−α−トコフェロール 0.1
香料 1
精製水 バランス
100質量%
【0040】
[比較例3]洗口液
グリセリン 20
サッカリンナトリウム 0.02
変性エタノール 10
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
塩化ベンゼトニウム 0.01
香料 0.5
精製水 バランス
100質量%
【0041】
[比較例4]洗口液
マルトース 20
グリセリン 10
サッカリンナトリウム 0.02
変性エタノール 10
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
塩化ベンゼトニウム 0.01
香料 0.5
精製水 バランス
100質量%
【0042】
[比較例5]液状歯磨き
コンドロイチン硫酸 0.1
ソルビトール 10
グリセリン 20
プロピレングリコール 5
カルボキシメチルセルロースナトリム 0.8
増粘性シリカ 3
サッカリンナトリウム 0.15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
水酸化アルミニウム 20
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
β−グリチルレチン酸 0.01
香料 0.9
精製水 バランス
100質量%
【0043】
[実施例1]練り歯磨き
グルコピラノシルソルビトール 20
エリスリトール 20
グリセリン 15
プロピレングリコール 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1
増粘性シリカ 8
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.4
研磨性シリカ 15
フッ化ナトリウム 0.21
トリクロサン 0.02
香料 1
精製水 バランス
100質量%
【0044】
[実施例2]練り歯磨き
エリスリトール 40
グルコース−6−リン酸ナトリウム 5
グリセリン 15
プロピレングリコール 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1
増粘性シリカ 8
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.4
研磨性シリカ 15
フッ化ナトリウム 0.21
塩化セチルピリジニウム 0.02
酢酸dl−α−トコフェロール 0.1
香料 1
精製水 バランス
100質量%
【0045】
[実施例3]洗口液
リジン 2
グリセリン 20
サッカリンナトリウム 0.02
変性エタノール 10
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
塩化ベンゼトニウム 0.01
香料 0.5
精製水 バランス
100質量%
【0046】
[実施例4]洗口液
リジン 2
マルトース 20
グリセリン 10
サッカリンナトリウム 0.02
変性エタノール 10
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
塩化ベンゼトニウム 0.01
香料 0.5
精製水 バランス
100質量%
【0047】
[実施例5]液状歯磨き
キシリトール 10
エリスリトール 10
アルギニン 1
コンドロイチン硫酸 0.1
グリセリン 10
プロピレングリコール 5
カルボキシメチルセルロースナトリム 0.8
増粘性シリカ 3
サッカリンナトリウム 0.15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
水酸化アルミニウム 15
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
β−グリチルレチン酸 0.01
香料 0.9
精製水 バランス
100質量%
【0048】
[実施例6]練り歯磨き
キシリトール 10
エリスリトール 10
アルギニン 1
コンドロイチン硫酸 0.1
グリセリン 10
プロピレングリコール 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1
増粘性シリカ 8
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.4
研磨性シリカ 15
フッ化ナトリウム 0.21
塩化セチルピリジニウム 0.02
香料 1
精製水 バランス
100質量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスリトールを有効成分として含有し、塩基性アミノ酸を含まない、すでに成熟したバイオフィルムの除去促進用口腔用組成物。
【請求項2】
エリスリトールを有効成分として10〜50質量%含有する、請求項1記載の口腔用組成物。

【公開番号】特開2011−225621(P2011−225621A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173112(P2011−173112)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2007−70082(P2007−70082)の分割
【原出願日】平成15年7月9日(2003.7.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】