説明

口腔用麻酔ゲル

本発明は、味も良く粘膜表面上に用いることができる、ゲル基剤の麻酔薬である。これは、苦味抑制剤と共に香味料を添加した経皮ゲル基剤中に麻酔薬を含む、口腔用麻酔ゲルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、局所麻酔または知覚鈍麻の分野に関する。詳しくは、粘膜上に用いるために適応され、他の応用もあるが歯科分野に有用に応用できる局所麻酔薬に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
局所麻酔薬は長年、クリーム剤および軟膏剤で用いられている。しかし、薬物およびそれが用いられる基剤の両方の生理化学的性質により、通常、薬物または化学薬品の浸透力には問題がある。
【0003】
さらに、非粘液性膜上に局所的に用いられる製品の一つにクリーム剤があり、口腔中などの粘膜上に用いるのには適さない。口腔に用いることができる別の製品にペースト剤(paste)があり、これは口腔用に処方されているが、残念ながら歯科のために用いる場合歯肉または口腔に特に良好に付着するわけではない。
【0004】
口腔中で付着させるためにゲル基剤が使用し得ると提案されてきたが、現在のところ、必要とされる麻酔効果をもたらすことができるものは存在せず、さらに全く味が悪く、したがって口腔用麻酔の使用には不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概略
本発明の目的は、上記に概説した問題を呈さない、粘膜表面上に使用するための局所麻酔薬を提供することである。本発明の更なる目的は、十分に味が良く、歯科の用途に容易に用いることのできるような局所麻酔薬を提供することである。
【0006】
本発明は、苦味抑制剤と共に香味料を添加した経皮ゲル基剤中に麻酔薬を含む、口腔用麻酔ゲルである。
【0007】
用いられるゲル基剤はプルロニック レシチン オルガノゲル(Pluronic Lecithin Organogel)(PLOすなわちプルロニック ゲル(Pluronic Gel))が好ましく、その粘度を適切な増粘剤の添加により必要に応じて調節することが好ましい。PLOの濃度範囲が2%から20%であることが、さらに好ましい。
【0008】
有効物質もしくは有効成分は、あるいは別の呼び方で有効医薬成分(API)とされるものは、リグノカイン塩基USP、またはその代わりにHCL塩であるのがさらに好ましい。また、好ましくは他の有効成分が、塩としての、テトラカイン、ベンゾカイン、アメソカイン(amethocaine)、またはプリロカイン(prilocaine)であってもよい。
【0009】
本発明をより容易に理解できるように、我々は、本発明の特定の実施形態を非限定的な実施例により説明する。
本発明の実施形態の実施例
本発明の第一に好ましい応用は歯科分野においてであり、ここに記載する。
【0010】
本発明のこの実施形態は、大変迅速に粘膜中に吸収されるゲル製剤である。吸収が速いので、歯科医は、30秒ほどの短時間または最高2分で注射部位の痛みを大幅に軽減して、麻酔薬を患者の歯肉中に注射することができる。
【0011】
ゲル中に、麻酔薬として用いられる鎮痛性物質の通例の苦味をマスクする味の良い香味料が存在することにより、外傷は心理的にさらに軽減される。
【0012】
ここに記載する本発明の実施例は、リグノカインを有し、調味されているPLOゲル製剤である。
【0013】
歯科用麻酔ゲル
歯科用の麻酔ゲルに好ましい製剤は、以下の通りである。
リグノカインUSP 10.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム 0.1g
エトキシジグリコール試薬 10ml
レシチン パルミチン酸/ミリスチン酸 イソプロピル溶液 22ml
香味料 12ml
サッカリンナトリウム 0.20g
ステビア粉末抽出物 1g
シメチコン 0.02ml
20%プルロニック ゲル 全量が100mlになる量
製剤を製造するための手順は以下の通りである。
ビーカーを最終体積に目盛り合わせをする。
粉末成分の重量を量る。
リグノカイン、サッカリン、メタ重亜硫酸ナトリウムを、香味料およびエトキシジグリコール試薬と共にビーカーに加える。
磁気撹拌子を加え、混合物を十分に撹拌する。
撹拌子でうずを作り、ステビアをゆっくりと加えて塊の発生を防止する。
レシチンミリスチン酸イソプロピル溶液を加え、リグノカインを溶解させる。
撹拌子を除き、20%のプルロニック ゲルを加えて容量にする。
混合物を適当な大きさのアンギュエータージャー(unguator jar)に注ぎ、過剰分を除く。
ミキシングブレードを設置して緊密に蓋を閉め、空気を全て追い出し、数分間混合する。
【0014】
所望により、ゲルは、過剰の空気を除去してシリンジ中に貯蔵してもよく、またはその他の場合は所望通りに貯蔵してもよい。空気の除去は、シリンジを逆さにし、空気を除去する前にプランジャー上にゲルを静置させることにより実現することが好ましい。
【0015】
混合に用いられる力がミセルの形成を促進し得るので、混ぜ合わせる手順はこのプロセスの重要な部分である。したがって、プロセスにおいて手助けとなることが可能な、シリンジからシリンジへの技術、ミキシングブレード付ドレメル(Dremel)ツール、電気モーターおよび軟膏ミルを用いることにより、これを減少させることが好ましい。
【0016】
生歯ゲル
生歯ゲルに好ましい製剤は以下の通りである。
リグノカインUSP 2.0g
5%酢酸クロルヘキシジン溶液 0.7ml
塩酸フェニレフリンUSP 0.25g
メタ重亜硫酸ナトリウム 0.1g
エトキシジグリコール試薬 10m
レシチンパルミチン酸/ミリスチン酸イソプロピル溶液 22ml
香味料 12ml
20%プルロニック ゲル 全量が100mlになる量
製剤を製造するための手順は以下の通りである。
リグノカイン、塩酸フェニレフリン、メタ重亜硫酸ナトリウムの重量を量り、適切に最終体積に目盛り合わせをしたビーカーに加える。
エトキシジグリコール試薬、レシチンパルミチン酸イソプロピル溶液、クロルヘキシジン溶液を量り、磁気撹拌子入りのビーカーに加える。
ビーカーを撹拌プレート上に置き、成分が混合するまで撹拌する。
撹拌中に、香味料、甘味料、苦味抑制剤、および必要であれば着色料を加える。
撹拌子を除き、20%のプルロニック ゲルを加えて容量にする。
混合物を適当な大きさのアンギュエータージャーに注ぎ、過剰分を除く。
ミキシングブレードを設置して緊密に蓋を閉め、空気を全て追い出し、数分間混合する。
所望により、ゲルは、あらゆる過剰の空気を除去してシリンジ中に貯蔵してもよく、またはその他の場合は所望通りに貯蔵してもよい。空気の除去は、シリンジを逆さにし、空気を除去する前にプランジャー上にゲルを静置させることにより実現することが好ましい。
【0017】
混合に用いられる力がミセルの形成を促進し得るので、混ぜ合わせる手順はこのプロセスの重要な部分である。したがって、シリンジからシリンジへの技術、ミキシングブレード付ドレメル(Dremel)ツール、プロセスにおいて手助けとなり得る電気モーターおよび軟膏ミルを用いることにより、これを減少させることが好ましい。
【0018】
様々な香味料を使用してもよいが、それらは以下を含んでもよい。
ピナコラーダ(PINA COLADA)100mlあたり
苦味抑制剤2.5ml、パイナップル3ml、ピナコラーダ2.5ml、ピーチオイル0.5ml、ココナッツ1ml、黄色0.2ml
カラメル(CARAMEL)100mlあたり
苦味抑制剤2.5ml、シナモンオイル1ml、カラメル8ml
ストロベリー(STRAWBERRY)100mlあたり
苦味抑制剤2.5ml、イチゴ4ml、ブラックベリーオイル1ml、スイカ2.5ml、増粘用クリス(Kris)ゲル、赤色0.1ml
オレンジ(ORANGE)100mlあたり
苦味抑制剤2.5ml、オレンジクリーム3.5ml、オレンジ天然濃縮物3.5ml、タンジェリンオイル1ml、赤色0.1ml、黄色0.1ml
バブルガム(BUBBLEGUM)100mlあたり
甘味70滴、苦味50滴、バブル70滴、バナナ60滴、グレープ40滴
トロピカルフレーバー(TROPICAL FLAVOUR)100mlあたり
甘味90滴、苦味50滴、イチゴ80滴、ピーチオイル20滴、パイナップル10滴、ピナコラーダ40滴、ココナッツ10滴、バナナ10滴
ワイルドベリー(WILD BERRY)100mlあたり
甘味90滴、苦味50滴、イチゴ80滴、ブラックベリーオイル20滴、スイカ40滴、および増粘用2%クリス(Kris)ゲル
上記は、本発明のゲル製剤の実施例であり、特定の用途に応じて選択される実際の成分にしたがって、成分の実際の濃度が変化することがあると予想される。
【0019】
例えば、歯科用ゲルに用いる鎮痛薬の濃度は、上記に記載したように典型的には10%までのリグノカインであることができるが、生歯ゲルのような相応するタイプの薬剤について1%または2%を用いることができる。
【0020】
さらに一般に特定の効果を達成するためには、先に提案した麻酔薬なら最高10%を用いることができるが、ベンゾカインでは最高20%を用いることができる。
【0021】
また、提案されているように、ゲル製剤のあらゆるバッチの粘度は、適当な増粘剤を加えることにより調節することができる。
【0022】
明らかにこの概念は、様々な方法で実現することができ、本発明の特別の実施形態は本明細書に記載されているが、記載されている特徴における変形した形態および修正した形態は、依然、本発明の範囲内にあることが可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦味抑制剤と共に香味料を添加した経皮ゲル基剤中に麻酔薬を含む、口腔用麻酔ゲル。
【請求項2】
前記基剤が1%から30%の範囲のプルロニック ゲルである、請求項1に記載の口腔用麻酔ゲル。
【請求項3】
前記基剤が20%プルロニック ゲルである、請求項2に記載の口腔用麻酔ゲル。
【請求項4】
前記麻酔薬が0.1%から20%の範囲のリグノカインである、請求項1から3のいずれか一項に記載の口腔用麻酔ゲル。
【請求項5】
リグノカインUSP 2g、5%酢酸クロルヘキシジン溶液0.7ml、塩酸フェニレフリンUSP 0.25g、メタ重亜硫酸ナトリウム0.1g、エトキシジグリコール試薬10ml、レシチンパルミチン酸/ミリスチン酸イソプロピル溶液、香味料12ml、20%プルロニック
ゲルを全量が100mlになる量、を比例的に含む、生歯ゲルとして用いるための請求項4に記載の口腔用麻酔ゲル。
【請求項6】
リグノカインUSP 10g、メタ重亜硫酸ナトリウム0.1g、エトキシジグリコール試薬10ml、レシチンパルミチン酸/ミリスチン酸イソプロピル溶液22ml、香味料12ml、サッカリンナトリウム0.2g、ステビア粉末抽出物1g、シメチコン0.02ml、20%プルロニック ゲルを全量が100mlになる量、を比例的に含む、歯科で使用するための請求項4に記載の口腔用麻酔ゲル。

【公表番号】特表2007−517806(P2007−517806A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548032(P2006−548032)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001817
【国際公開番号】WO2005/067865
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506245039)オーラル バイオサイエンス ピーティーワイ. リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ORAL BIOSCIENCE PTY. LIMITED
【Fターム(参考)】