説明

可動体案内構造

【課題】
搭載対象物の荷重を十分に負荷することが可能であり、もって枠体に対する箱体のがたつきを抑えることができ、更に、枠体に対する箱体の円滑な運動を達成することが可能な可動体案内構造を提供する。
【解決手段】
第一構造体に対して第二構造体を円弧状に案内するものであり、前記第一構造体に設けられると共に一定の曲率で円弧状に形成された軌道部材と、多数の転動体を介して前記軌道部材に組み付けられて当該軌道部材に沿って運動すると共に前記第二構造体に対して回転自在に取り付けられた支持案内機構と、前記軌道部材に対する支持案内機構の移動を許容しつつ、前記第一構造体に対する第二構造体の姿勢変化を防止する周り止め機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一構造体に対して第二構造体を円弧状に案内する可動体案内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機や高速鉄道等の輸送機の客室には、機内に持ち込み可能な手荷物を収納するための可動式収納棚が設けられており、この可動式収納棚は客室の天井、且つ乗客の座席の上方に配置されていることが多い。
【0003】
上記可動式収納棚の構成としては、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1に記載された可動式収納棚は、航空機の客室の天井に固定される枠体と、この枠体内に収納されると共に荷物が搭載される箱体とから構成されており、前記箱体が該箱体と枠体との間に設けられたリンク機構によって枠体に対して水平方向、且つ上下方向に移動するように構成されている。前記リンク機構は、前記枠体に緩衝器を介して固定されたトルクチューブと、一端が前記トルクチューブに嵌合すると共に他端が前記箱体に固定される一対の上方リンク部材と、これら一対の上方リンク部材にガススプリングを介して固定されると共に前記箱体の両側面に固定された一対の下方リンク部材とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4275942号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の可動式収納棚の構成では、前記枠体と箱体との間に設けられたリンク機構によって枠体に対する箱体の水平方向、且つ上下方向の運動を実現しているため、前記リンク機構の軸方向と垂直な方向の荷重が作用している状態で前記箱体を枠体から引き出す場合、又は箱体を枠体に引き込む場合、その箱体にがたつきが発生してしまい、該箱体の円滑な運動が阻害されてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、搭載対象物の荷重を十分に負荷することが可能であり、もって枠体に対する箱体のがたつきを抑えることができ、更に、枠体に対する箱体の円滑な運動を達成することが可能な可動体案内構造を提供することにある。
【0007】
このような目的を達成する本発明の可動体案内構造は、第一構造体に対して第二構造体を円弧状に案内するものであり、前記第一構造体に設けられると共に一定の曲率で円弧状に形成された軌道部材と、多数の転動体を介して前記軌道部材に組み付けられて当該軌道部材に沿って運動すると共に前記第二構造体に対して回転自在に取り付けられた支持案内機構と、前記軌道部材に対する支持案内機構の移動を許容しつつ、前記第一構造体に対する第二構造体の姿勢変化を防止する周り止め機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明の可動体案内構造では、前記第一構造体に設けられた軌道部材及びこの軌道部材に多数の転動体を介して組み付けられる支持案内機構の構成により、前記収納体に作用する荷重を負荷している。このため、第一構造体に対する第二構造体のがたつきを抑えることができ、もって第一構造体に対する第二構造体の円滑な運動を達成することができる。また、前記周り止め機構は軌道部材に対する支持案内機構の移動を許容しつつ、前記第一構造体に対する第二構造体の姿勢変化を防止するように構成されている。このため、前記第二構造体の水平状態を維持したまま、かかる第二構造体を第一構造体から引き出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の可動体案内構造が適用可能な可動式収納棚の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態である可動体案内構造を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態である可動体案内構造の一部を示す正面半断面図である。
【図4】本発明の一実施形態である可動体案内構造に適用可能な曲線案内装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態である可動体案内構造に適用可能な走行輪を示す斜視図である。
【図6】図1に示す可動式収納棚において、支持枠体から収納体が引き出された状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態である可動体案内構造に適用可能な減衰部材を示す側面図である。
【図8】図7に示す減衰部材の作動状態を示す側面図である。
【図9】前記軌道部材の第二実施形態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を用いて本発明の可動体案内構造を可動式収納棚に適用した実施形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の可動体案内構造が適用可能な可動式収納棚の概要を示すものである。この可動式収納棚は、例えば輸送機の天井等の構造物に固定される支持枠体1と、この支持枠体1に組み付けられると共に荷物等の搭載対象物が収納される収納体2とから構成されている。このように構成された可動式収納棚では前記支持枠体1によって保持された収納体2が点線にて示された位置に向けて、すなわち前記支持枠体1に対して水平方向且つ上下方向に移動する一方で、収納体2が支持枠体1内に戻ることが可能となっている。前記収納体2は荷物等の搭載対象物を収納するための収納空間21を備えると共に一対の側板22を有する箱体として形成される一方、前記支持枠体1は前記収納体2が有する各側板22を挟むようにして配置された一対の支持板11を有している。
【0012】
図2及び図3は本発明を適用した可動体案内構造を示すものであり、図2は可動体案内構造の側面図、図3は可動体案内構造の一部を示す正面半断面図である。この可動体案内構造は上記支持枠体1の支持板11と収納体2の側板22との間に設けられており、前記支持枠体1の支持板11に設けられた軌道部材としての軌道レール31と、この軌道レール31に組み付けられる移動ブロック32と、前記軌道レール31に対する移動ブロック32の移動を許容しつつ、前記支持枠体1に対する収納体2の姿勢変化を防止する周り止め機構4とを備えている。すなわち、本実施形態にかかる支持枠体1は本発明が備える第一構造体に、収納体2は第二構造体に相当する構成である。
【0013】
前記移動ブロック32は図3に示すように、連結部材5を介して前記収納体2の側板22に固定されている。この連結部材5は、前記移動ブロック32に形成された取付面34に固定ボルト51aによって固定される固定プレート51と、前記側板22に形成された連結孔に嵌合する円筒部52aを有すると共に前記側板22に固定されるケーシング部材52と、このケーシング部材52を貫通すると共に前記移動ブロック32に固定された固定プレート51に螺合するピン部材53とから構成されている。この連結部材5の構成により、前記移動ブロック32は前記固定プレート51を介して固定されたピン部材53を支軸として前記収納体2の側板22に対して回転自在に組み付けられている。すなわち、本実施形態に係る連結部材5及び移動ブロック32が本発明が備える支持案内機構に相当するものである。
【0014】
図4は前記軌道レール31及び移動ブロック32の構成を詳細に示す斜視図である。前記軌道レール31は前記側板22との支持板11の対向面に敷設されている。また、この軌道レール31は所定の曲率半径で略円弧状に形成されており、該軌道レール31の円弧は収納体2の水平線Lを接線としてこれに接するように配置されている(図2参照)。更に、この軌道レール31の内周側面及び外周側面には長手方向に沿って二条のボール転走面31aが夫々形成されており、計四条のボール転走面31aが形成されている。また、軌道レール31には該軌道レール31を支持枠体1の支持板11に固定するための取付け孔31bが長手方向に沿って所定の間隔で形成されている。
【0015】
一方、前記移動ブロック32は多数の転動体としてのボール33を介して前記軌道レール31に組み付けられており、前記連結部材5の取付面34を備えるブロック本体32aと、このブロック本体32aの移動方向の両端面に固定された一対の蓋体32bとから構成されている。前記ブロック本体32aには、前記軌道レール31のボール転走面31aと対向する負荷ボール転走面と、ボール33を循環させるためのボール戻し通路35が形成されている。また、前記取付面34にはボルト孔34aが形成されており、このボルト孔34aに前記固定ボルト51aを螺合させることで移動ブロック32が前記連結部材5に連結されるようになっている。
【0016】
各蓋体32bには、前記軌道レール31のボール転走面31a上を転動してきたボール33を掬い上げ、前記ブロック本体32aのボール戻し通路35に送り込む一方、かかるボール戻し通路35を転動してきたボール33を前記ボール転走面31aに送り込む方向転換路(図示せず)が形成されている。そして、固定ボルトを用いて前記一対の蓋体32bが前記ブロック本体32aに固定されることにより、前記移動ブロック32にボール33の無限循環路が具備されるようになっている。この移動ブロック32に設けられた無限循環路内をボール33が循環することによって前記移動ブロック32が軌道レール31に沿って往復運動するように構成されている。すなわち、前記軌道レール31及び移動ブロック32は所謂曲線案内装置3を構成している。
【0017】
次に、上記周り止め機構4について説明する。この周り止め機構4は図2及び図3に示すように、前記支持枠体1の支持板11に形成された案内溝41と、この案内溝41内を走行する走行輪とから構成されており、この走行輪としては例えばカムフォロア42を適用することが可能である。前記案内溝41は両端が閉塞して略円弧状に形成されると共に前記支持板11に固定された軌道レール31と同一円心上に設けられている。
【0018】
図5は前記周り止め機構4を構成するカムフォロア42を示す斜視図である。このカムフォロア42は、断面円形状に形成されると共に一端に雌ねじ部43aが形成されたスタッド43と、このスタッド43の先端に該スタッド43と一体的に設けられた固定内輪部44と、多数のニードルローラ45を介して前記固定内輪部44の周囲に組み付けられた外輪46とを備えており、かかる外輪46が固定内輪部44の周囲で自在に回転するように構成されている。
【0019】
前記固定内輪部44は断面円形状に形成され、その直径は前記スタッド43よりも大きく形成されている。また、固定内輪部44の外周面には前記ニードルローラ45の転走する軌道面44aが設けられている。一方、前記外輪46は略円筒状に形成され、その内周面には前記ニードルローラ45が転走する軌道面46aが設けられる一方、外周面には前記支持板11に設けられた案内溝41上を摺動する案内面46bが形成されている。この外輪46の軌道面46aは前記固定内輪部44の軌道面44aと対向し、前記ニードルローラ45の転動する環状軌道を形成している。従って、ニードルローラ45は外輪46の軌道面46a及び固定内輪部44の軌道面44aを転動して前記環状軌道を循環し、これによって外輪46が固定内輪部44に対して自在に回転し得るようになっている。
【0020】
このように構成されたカムフォロア42において、前記固定内輪部44の先端面、すなわちこのカムフォロア42の頭部の中央には六角孔47が形成されており、この六角孔47に六角レンチを嵌合させることにより、図3に示すように、前記スタッド43の雌ねじ部43aを固定部材42aのタップ孔42bに対して螺合させることができるようになっている。そして、前記タップ孔42bに螺合したカムフォロア42は固定ナット48によって固定部材42aに固定され、ひいては該固定部材42aを介して収納体2の側板22に固定されるようになっている。このようにスタッド43が収納体2に固定されている状態では、前記外輪46が前記支持枠体1の支持板11に形成された案内溝41内に回転自在に遊嵌するようになっている。
【0021】
上記曲線案内装置3及び周り止め機構4からなる本発明の可動体案内構造は収納体2の各側板22と前記支持枠体1を構成する各支持板11との間に設けられている。すなわち、本実施形態に係る可動式収納棚では前記収納体2の両側各々に本発明を適用した可動体案内構造が設けられている。
【0022】
このような本発明を適用した可動体案内構造には図2に示すように、前記支持枠体1に対する収納体2の引き出し及び引き込み操作を行うための駆動機構6が設けられている。この駆動機構6は、前記支持枠体1の支持板11に揺動自在に固定されると共に一端に固定ギア61aを有する可動レバー61と、前記固定ギア61aに噛み合わさる従動ギア62aを有する第一リンク62と、この第一リンク62に接続されてリンク機構を構成すると共に前記連結部材5の固定プレート51に連結された第二リンク63とから構成されている。
【0023】
上記構成からなる駆動機構6において、前記可動レバー61は前記収納体2の一側面にのみ設けられており、該可動レバー61はボールプランジャ61bを介して前記支持枠体1の支持板11に係合するように構成されている。その一方で、前記第一リンク62及び第二リンク63からなるリンク機構は前記収納体2の両側に設けられており、該収納体2の両側に設けられた第一リンク62は単一のロッド部材(図示せず)によって連結されている。つまり、一方の第一リンク62の回転運動は前記ロッド部材を介して他方の第一リンク62に伝達されるようになっている。
【0024】
ここで、前記可動レバー61に設けられた固定ギア61aの外周面及び第一リンク62に設けられた従動ギア62aの外周面には夫々歯列が形成されているが、図面の複雑化を防ぐため、本実施形態に係る駆動機構6の説明に用いる図面において、各部材に設けられた歯列を省略している。
【0025】
以上のように構成された本発明の可動体案内構造を適用した可動式収納棚では図2に示すように、前記支持枠体1に対して収納体2が完全に収納されている状態では、前記移動ブロック32が収納体2の水平線Lに接する位置に配置されている。かかる状態では、前記曲線案内装置3に対する荷重負荷により移動ブロック32が軌道レール31上を移動することがなく、前記収納体2が支持枠体1から引き出されないようになっている。
【0026】
一方で、図6に示すように、前記可動レバー61を揺動させると、かかる可動レバー61の揺動に伴って該可動レバー61に設けられた固定ギア61aが図6紙面上反時計回りに回転駆動することになる。この固定ギア61aに噛み合わされた前記従動ギア62aは、該固定ギア61aの回転駆動に同期して図6紙面上時計周りに回転駆動することになる。この従動ギア62aの回転駆動によって第一リンク62が図6紙面上時計周りに回転駆動すると、かかる第一リンク62とリンク機構を構成する前記第二リンク63は一端が前記連結部材5に連結されているため、前記第一リンク62との接続点を支点として揺動運動することとなる。
【0027】
前記第二リンク63は前記連結部材5を介して前記移動ブロック32に固定されているため、前記可動レバー61の揺動に追従して前記第二リンク63が揺動すると、前記移動ブロック32が支持枠体1の支持板11に固定された軌道レール31に沿って曲線移動することになる。この移動ブロック32が軌道レール31に沿って曲線上に移動することで、前記収納体2は支持枠体1に対して可動体案内構造の前方方向且つ下方向に、すなわち円弧状に引き出されることとなる。
【0028】
このように収納体2が支持枠体1から引き出される際には、これによって収納体2に作用するあらゆる方向の荷重が前記移動ブロック32の負荷ボール転走面と軌道レール31のボール転走面31aとからなる負荷通路内を転動するボール列によって負荷されるようになっている。また、本実施形態に係る可動体案内構造では、前記収納体2が支持枠体1から引き出される際、前記収納体2には可動式収納棚の下方向への荷重が作用するため、かかるカムフォロア42を構成する外輪46は前記案内溝41の下側周壁に沿って回転しながら走行するようになっている。
【0029】
上述したように、本実施形態に係る可動式収納棚では前記移動ブロック2及び連結部材5からなる支持案内機構の構成により、前記移動ブロック32は前記ピン部材53を支軸として前記収納体2の側板22に対して回転自在に組み付けられている。換言すれば、前記収納体2は支持枠体移動ブロック32と同様にピン部材53を支軸として回転自在に支持枠体1に固定されている。このため、前記収納体2を支持枠体1から引き出すと、かかる収納体2は可動式収納棚の下方向を向きながら引き出されることになる。
【0030】
しかし、本発明の可動体案内構造では、固定部材42aを介してカムフォロア42が収納体2の側板22に固定されており、このカムフォロア42が前記案内溝41の下側周壁に沿って走行するように構成されている。すなわち、本実施形態に係る可動式収納棚では前記収納体2が支持枠体1に対して四点支持されている。更に、前記支持板11に設けられた案内溝41は該支持板11に敷設された軌道レール31と同一円心上に形成されているため、前記収納体2が支持枠体1に対して移動する際、前記案内溝41内を摺動するカムフォロア42と軌道レール31に組み付けられた移動ブロック32との距離は常に一定に保たれている。このため、前記支持枠体1に対して収納体2が引き出される際、かかる収納体2は水平状態が維持されたまま、図6に示すように、点線位置から実線位置(以下、「下方位置」という。)へと支持枠体1から引き出されることになる。
【0031】
上述したように、前記支持枠体1の支持板11に設けられた軌道レール31は所定の曲率半径で円弧状に形成されており、該軌道レール31に沿った移動ブロック32の移動方向は図6に示すように可動体案内構造の下方向に向けて湾曲している。このため、収納体2が支持枠体1から引き出される際、前記収納体2の自重若しくは該収納体2に搭載される荷物の荷重によってかかる収納体2が下方位置に向けて急激に下降する可能性がある。
【0032】
ここで、本発明の可動体案内構造では、下方位置に設定された収納体2は前記第一リンク62及び第二リンク63によって構成されたリンク機構によって支持されている。それ故、収納体2が下方位置に向けて急激に下降すると、前記リンク機構に対して瞬間的に過大な荷重が作用してしまう可能性がある。又は、収納体2の急激な下降によって前記カムフォロア42が案内溝41の閉塞端に衝突してしまう可能性もある。
【0033】
この観点から、本発明の可動体案内構造には、前記可動レバー61の押圧に起因した前記第二リンク63の揺動運動ひいては移動ブロック32の曲線運動を減衰させるための減衰部材が設けられている。図7及び図8は、本発明の可動体案内構造に適用可能な減衰部材を示すものであり、図7は側面図、図8は減衰部材の作用状態を示す側面図である。この減衰部材は、一端に貫通孔を有するシリンダ71及びこのシリンダ71に軸方向に出入り自在なピストンロッド72からなる所謂ピストンダンパー7と、前記ピストンロッド72をシリンダ71の軸方向へ(図7及び図8の紙面右方向)移動させて減衰力を発生させるカム部材8とから構成されている。
【0034】
前記カム部材8は、上述した第一リンク62に設けられた従動ギア62aと同一軸心上に設けられており、かかる従動ギア62aと同期して回転駆動するように構成されている。このカム部材8は略円形状に形成される一方、その外周面には平坦面81が形成されている。
【0035】
前記可動レバー61が揺動せずにボールプランジャ61bを介して前記収納体11に固定されている状態では(図2参照)、図7に示すように、上記構成からなるカム部材8の平坦面81が前記ピストンダンパー7のピストンロッド72から離間した位置に設定されている。その一方で、前記可動レバー61が図6に示すように押圧されると、前記固定ギア61aの回転に同期して前記第一リンク62の従動ギア62aが時計回りに回転し、かかる従動ギア62aと同一軸心上に固定されたカム部材8も時計周りに回転することになる。
【0036】
このようにカム部材8が時計回りに回転すると、図8に示すように、かかるカム部材8の外周面に設けられた平坦面81が前記ピストンダンパー7のピストンロッド72を押圧し、該ピストンロッド72がシリンジ71内に挿入されることになる。その結果、前記第一リンク62及びこの第一リンク62とリンク機構を構成する第二リンク63の揺動運動に対する減衰抵抗が発生し、これにより前記第二リンク63が固定された移動ブロック32の曲線移動に対して減衰抵抗が作用して支持枠体1に対する収納体2の移動が制限されることになる。
【0037】
前記減衰部材の構成は、支持枠体1から収納体2が引き出される際に起こり得る前記案内溝41に対するカムフォロア42の衝突や前記リンク機構に対して荷重が過剰に負荷されるのを防ぐために設けられるものである一方、本発明の可動体案内構造では前記収納体2を支持枠体1内に完全に収納される際にかかる収納体2と支持枠体1とが衝突するのを防ぐ必要がある。
【0038】
このため、本発明の可動体案内構造では、図2に示すように前記曲線案内装置3の移動ブロック32が収納体2の水平線Lに接する位置にまで軌道レール31上を移動してくると、前記軌道レール31の一端で、且つ水平線L上に設けられたピストンダンパー9が作用するように構成されている。該ピストンダンパー9は上述したピストンダンパー7と同様の構成であり、前記移動ブロック32が収納体2の水平線Lに接する位置にまで移動してくると、かかる移動ブロック32がピストンダンパー9のピストンロッドを押圧し、減衰力が発生するようになっている。
【0039】
以上のように構成された本発明の可動体案内構造を適用した可動式収納棚によれば、前記収納体2を支持枠体1から引き出す際、又は収納体2を支持枠体1に引き込む際、前記移動ブロック32と軌道レール31との間を転動するボール列によってあらゆる方向の荷重が負荷される。それ故、支持枠体1に対する収納体2のがたつきを防止することができ、もって前記支持枠体1に対する収納体2の円滑な運動を達成することができる。また、本発明の可動体案内構造を適用した可動式収納棚では、前記移動ブロック32が固定された連結部材5を介して収納体2が支持枠体1に支承されると共にかかる収納体2に固定されたカムフォロア42が前記案内溝41の下側周壁に沿って走行するように構成されている。すなわち当該可動式収納棚では前記収納体2が支持枠体1に対して各連結部材5及び各周り止め機構4の四点で支持されており、加えて前記案内溝42と軌道レール31は同一円心上に形成されている。このため、前記案内溝41に遊嵌するカムフォロア42と移動ブロック32との距離、つまり収納体2の支持点である連結部材5と周り止め機構4との距離が常に一定に保たれている。その結果前記軌道レール31、移動ブロック32及び連結部材5からなる支持案内機構の構成により収納体2を可動体案内構造の前方方向且つ下方向に引き出しつつも、周り止め機構4の構成により収納体2の水平姿勢を維持させることが可能となる。また、前記収納体2を下方位置から支持枠体1に引き入れる際にも同様に収納体2の水平姿勢を維持させることが可能となる。
【0040】
また、本発明の可動体案内構造を適用した可動式収納棚によれば、前記移動ブロック32と軌道レール31との間を転動するボール列によってあらゆる方向の荷重が負荷されるように構成されていることから、前記周り止め機構4が可動体案内構造に作用する荷重を負荷する必要がなく、その分周り止め機構4の構成を例えば案内溝41内を走行輪が走行するといった簡易な構成にすることが可能である。
【0041】
更に、本発明の可動体案内構造を適用した可動式収納棚によれば、ピストンダンパー7及びカム部材8からなる減衰部材が設けられており、この減衰部材の構成により第一リンク62及び第二リンク63とからなるリンク機構の揺動運動に対して減衰抵抗が作用するように構成されている。このため、前記移動ブロック32の曲線移動に対して減衰抵抗が作用して支持枠体1に対する収納体2の移動が制限され、支持枠体1に対する収納体2の急激な下降を防ぐことができ、その結果前記案内溝41に対するカムフォロア42の衝突や第一リンク62及び第二リンク63とからなるリンク機構への過大な荷重の作用を防ぐことが可能となっている。
【0042】
尚、上記実施形態に係る可動体案内構造では、曲線案内装置3における移動ブロック32の曲線運動を可動レバー61、第一リンク62及び第二リンク63からなる駆動機構6によって実現しているが、かかる駆動機構6の構成はこれに限定されず、前記曲線案内装置3を駆動させる手段としては例えばモータ等を用いても差し支えない。
【0043】
また、上記実施形態に係る可動体案内構造では図6に示すように、前記軌道レール31が所定の曲率半径で円弧状に形成され、可動体案内構造の下方向に湾曲している。また、前記駆動機構6を構成する可動レバー61がボールプランジャ61bを介して前記支持枠体1の支持板11に係合するように構成されている。このため、何らかの衝撃等によりかかるボールプランジャ61aの係合状態が解除されると、前記収納体2の自重或いは収納体2の搭載対象物の荷重により意図せずしてかかる収納体2が下方位置へと支持枠体1から引き出されてしまう可能性がある。
【0044】
この観点からすると、図2のように前記軌道レール31の一端が収納体2の水平線Lと合致するように配置するのではなく、図9に示すように軌道レール31の一端が収納体2の水平線Lよりも可動式収納棚の下方向に向くように配置することが好ましい。
【0045】
このような構成によれば、支持枠体1に対して収納体2が収納される際、前記移動ブロック32が収納体2の水平線Lと接する位置にまで移動してきた後は前記収納体2の自重或いは該収納体2に搭載された荷物等の荷重によって自ずと移動ブロック32が軌道レール31の端部に向けて移動する。その後、移動ブロック32の曲線移動は前記軌道レール31の一端に対応して設けられたピストンダンパー9によって減衰され、最終的には収納体2が自ら支持枠体1内に収納されることになる。このように、前記収納体2は、自重或いは該収納体2に搭載された荷物等の荷重によって支持枠体1に収納されているため、意図せずしてかかる収納体2が下方位置へと支持枠体1から引き出される事象を防ぐことが可能となる。
【0046】
上述した実施形態では曲線案内装置を用いた本発明の可動体案内構造を説明したが、本発明の可動体案内構造の構成がこれに限られず、前記軌道レール31及び移動ブロック32の構成により可動体案内構造に作用する荷重を負荷することが可能であれば、例えばこれら軌道レール31と移動ブロック32との間に転動体が介在しない所謂すべり案内装置を適用することも可能である。また、可動体案内構造に作用する荷重を負荷することが可能であれば、例えば一対のカムフォロアを軌道レール31の両側面を挟むようにして配置し、これら一対のカムフォロアが荷重を負荷するような構成としても差し支えない。
【0047】
また、上述した実施形態では、収納体の両側に対して本発明を適用した可動体案内構造が一対配置された可動式収納棚の例を説明したが、本発明の可動体案内構造は第一構造体に対して第二構造体を円弧状に案内する用途品であれば可動式収納棚に限らず適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…第一構造体(支持枠体)、2…第二構造体(収納体)、4…周り止め機構、5…連結部材(支持案内機構)、32…移動ブロック(支持案内機構)、33…ボール(転動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一構造体に対して第二構造体を円弧状に案内する可動体案内構造であって、
前記第一構造体に設けられると共に一定の曲率で円弧状に形成された軌道部材と、
多数の転動体を介して前記軌道部材に組み付けられて当該軌道部材に沿って運動すると共に前記第二構造体に対して回転自在に取り付けられた支持案内機構と、
前記軌道部材に対する支持案内機構の移動を許容しつつ、前記第一構造体に対する第二構造体の姿勢変化を防止する周り止め機構と、を備えたことを特徴とする可動体案内構造。
【請求項2】
前記周り止め機構は、前記第一構造体に対して前記軌道部材と同一円心の円弧状に設けられた案内溝と、前記第二構造体に設けられると共に前記案内溝内の周壁に沿って走行する走行輪と、から構成されることを特徴とする請求項1記載の可動体案内構造。
【請求項3】
揺動するリンクを含むと共に前記支持案内機構を軌道部材に沿って往復運動させる駆動機構と、前記リンクの揺動範囲の端部において当該リンクの動きを減速させる減衰部材と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の可動体案内構造。
【請求項4】
搭載対象物の収納空間を有する収納体と、この収納体を挟むように配置された一対の支持板を有する支持枠体と、前記収納体と各支持板との間に設けられて前記支持板に対して前記収納体を円弧状に案内する請求項1記載の可動体案内構造とを備えたことを特徴とする可動式収納棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86549(P2013−86549A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226021(P2011−226021)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】