可動式ホーム柵の操作盤装置
【課題】 複数配置される可動式ホーム柵へアクセスする利用客の動向を監視しながら、しかも円滑にして安全な可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアの操作を遂行することができる可動式ホーム柵の操作盤装置及びその操作方法を提供する。
【解決手段】 可動式ホーム柵の操作盤装置において、操作盤装置本体2の上部及び下部に傾斜面3,4が形成され、この下部の傾斜面4に配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチ5と、この上部の傾斜面3に配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチ6と、前記操作盤装置本体2の中央部に配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチ7とを備える。
【解決手段】 可動式ホーム柵の操作盤装置において、操作盤装置本体2の上部及び下部に傾斜面3,4が形成され、この下部の傾斜面4に配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチ5と、この上部の傾斜面3に配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチ6と、前記操作盤装置本体2の中央部に配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチ7とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式ホーム柵の操作盤装置及びその操作方法に係り、特に、鉄道用可動式ホーム柵に配置される操作盤装置(スイッチ装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームからの転落を防止する有効な手段として、ホームドア(車両上部まで覆うもの)やホーム柵(腰高さ程度のもの)がある。従来のホーム柵の開閉方式としては、大きく分けて、ホーム柵のドアの開閉操作と車両ドアの開閉操作が連動するもの(連動タイプ)と、ホーム柵のドアの開閉操作と車両ドアの開閉操作とは連動せず別に操作するもの(非連動タイプ)がある。
【0003】
連動型鉄道用ホーム柵は、新設の鉄道用システムにおいて、1つの操作盤装置の操作によって可動式ホーム柵のドアの開閉を車両ドアの開閉と連動させることができる理想的な制御システムを構築することができる利点がある。ホームドア・ホーム柵の導入当初は、ワンマン運転の支援の側面も強く、この連動タイプが主流であった。連動タイプでは運転士が運転室内で車両ドアの開閉操作をすると、これと連動してホーム柵のドアが動く。このタイプでは、ドア開閉信号の通信のため列車の停止位置に高い精度が要求されるので、自動列車運転装置(Automatic Train Operation,ATO)や定位置停止装置(Train Automatic Stop Control,TASC)など車両側・地上側の設備が必要である(特許文献1参照)。
【0004】
これに対し、非連動タイプはこれらの設備が不要であるため、ホーム柵が備えられていない既存の鉄道システムに追加的に可動式ホーム柵を配置する場合に適用し易く、既存線区にも比較的安価に早期に導入できると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−300462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可動式ホーム柵の操作盤装置を操作する際、複数配置される可動式ホーム柵へアクセスする利用客の動向を監視しながら、円滑にして安全に可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアの開閉を遂行することが求められる。
したがって、特に、車両ドアと非連動タイプのホーム柵のドアを操作する操作盤装置は、ホーム監視中の車掌が車掌スイッチと一緒に操作するため、ホームからの視線を外さずに操作できることが求められる。しかしながら、従来タイプの操作盤装置は、スイッチの並びや操作方向に問題があり、視線を外さずに操作することはできなかったため、安全上問題があった。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、ホーム監視から視線をはずすことなく、円滑にして安全に可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアの操作を遂行することができる可動式ホーム柵の操作盤装置を提供することを目的とする。
なお、本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置は、非連動タイプと連動タイプの両方のタイプに適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕可動式ホーム柵の操作盤装置において、操作盤装置本体の上部及び下部に傾斜面が形成され、該下部の傾斜面に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチと、該上部の傾斜面に凸形状となるように配置される前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチと、前記操作盤装置本体の中央部に配置される非常時に前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチとを備え、操作方向が上下逆向きであることを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置を前記可動式ホーム柵の鉄道線路側の側面に出っ張るように配置するようにしたことを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部は視覚により認識し難い表示部を有することを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔3〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には触知により認識される形状が施されることを特徴とする。
〔5〕上記〔4〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には点状のマーカを付すようにしたことを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記閉スイッチをガード付きの平型スイッチとしたことを特徴とする。
【0011】
〔7〕上記〔1〕から〔5〕記載の何れか一項記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記可動式ホーム柵のドアと前記車両ドアとを連動して開閉させるようにしたことを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記車両ドアの開閉動作と連動させることなく、前記可動式ホーム柵のドアの開閉動作のみを行うようにしたことを特徴とする。
【0012】
〔9〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動することなく個別に動作するように構成したことを特徴とする。
〔10〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動して動作するようにしたことを特徴とする。
【0013】
〔11〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記可動式ホーム柵から出っ張る操作盤装置の前記傾斜面により操作盤本体の位置を確認し、上部の操作ボタンに辿り着き、手探りで操作盤装置を操作可能にしたことを特徴とする。
〔12〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチと前記開スイッチの組み合わせで、前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホーム監視から視線をはずさなくても操作しやすく、間違え難い可動式ホーム柵の操作盤装置を提供することができる。
すなわち、開閉スイッチを操作盤本体の上部に閉スイッチ、下部に開スイッチを配置する上下配置となし、操作方向を上下向きとしたので、操作者が開と閉を間違え難く、とっさの事態でも操作しやすい。
【0015】
また、本発明の操作盤装置は、可動式ホーム柵の線路側の側面から出っ張る形状(丘付け)となし、開閉スイッチを凸形状としたので、手探りで操作盤装置及び開閉スイッチの位置を確認し、操作することができる。
また、本発明によれば、利用者側から開スイッチに手が届く恐れがなく、安全である。
更に、閉スイッチはガード付き平型スイッチとしたので、乗務員の身体、カバンなどが接触した際の誤操作を回避することができる。なお、接触の可能性が低い開スイッチは操作性を考慮して枠なし突型スイッチとするようにしてもよい。
【0016】
また、強制開スイッチは、2つのスイッチ(強制開スイッチと開スイッチの組み合わせ)を押さないと動作しないようにしたので、誤操作を防止できるとともに、第三者による悪戯な開閉操作を防止することができる。
更に、強制開スイッチの操作部は視覚により認識し難い隠しスイッチとすることにより、第三者による悪戯な強制開スイッチの操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置の外観図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置の配置を示す図である。
【図3】本発明にかかる第1実施例の変形例を示す強制開スイッチの第1の悪戯防止対策を施した可動式ホーム柵の操作盤装置の正面図である。
【図4】本発明にかかる第1実施例の更なる変形例を示す強制開スイッチの第2の悪戯防止対策を施した可動式ホーム柵の操作盤装置の正面図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置の外観図である。
【図6】車掌スイッチ及び可動式ホーム柵の操作盤装置の取付位置を示す図である。
【図7】評価のために試作した可動式ホーム柵の操作盤装置を示す図である。
【図8】駅に停車中の車掌の作業を示す図である。
【図9】実験装置と操作風景を示す図である。
【図10】画面の表示例を示す図である。
【図11】最も良い可動式ホーム柵の操作盤装置の選択率を示す図である。
【図12】操作しやすさの平均値を示す図である。
【図13】開と閉の間違い難さの平均値を示す図である。
【図14】とっさの際の開けやすさの平均値を示す図である。
【図15】見ないでの操作しやすさを示す図である。
【図16】誤操作と迷いの数を示す図である。
【図17】業務で使用した時の想定の疲れにくさの平均値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置は、操作盤装置本体の上部及び下部に傾斜面が形成され、該下部の傾斜面に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチと、該上部の傾斜面に凸形状となるように配置される前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチと、前記操作盤装置本体の中央部に配置される非常時に前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチとを備え、操作方向が上下逆向きである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す鉄道用可動式ホーム柵の操作盤装置の外観図であり、図1(a)はその斜視図、図1(b)はその正面図、図2はその鉄道用可動式ホーム柵への配置態様を示す図である。
これらの図において、1は操作盤装置、2は操作盤装置本体、3は操作盤装置本体2の上部の傾斜面、4は操作盤装置本体2の下部の傾斜面、5はその下部の傾斜面4に配置される開スイッチ、6はその上部の傾斜面3に配置される閉スイッチ、7は操作盤装置本体2の中央部に配置される強制開スイッチ、8はその強制開スイッチ7の操作部の表示部、9は鉄道用可動式ホーム柵(ドア開状態)、10は線路、11は線路10のホームである。
【0020】
この実施例では、操作盤装置本体2の上部及び下部に傾斜面3,4が形成され、この下部の傾斜面4に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチ5と、この上部の傾斜面3に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチ6と、前記操作盤装置本体2の中央部に配置される強制開スイッチ7とを備えるようにしている。なお、傾斜面3,4は開閉スイッチ5,6の操作をしやすくするために形成されている。
【0021】
さらに、本発明の操作盤装置の仕様例について説明する。
表1はその仕様例一覧である。
【0022】
【表1】
(1)閉スイッチ6は黒色であり、可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを閉める時に使用する。
乗務員の乗降時に身体やカバンなどの意図しない接触で誤って操作しないよう、ガード付き平型スイッチ(ガード上部の操作面から押し込むスイッチ)を採用する。このようなスイッチとすることで手探りでも位置が分かりやすく、指で押し込まれなければスイッチが入らないため、誤操作も防止できる。
【0023】
(2)強制開スイッチ7は黄色(照光式)であり、停止位置を外れて停車した場合や車体検知センサが故障した場合など、車体検知センサが正常に機能しない条件(非常時)で可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを開けたい場合に、強制開スイッチ7を押すとスイッチが照光し、照光している間に開スイッチ5を押すと可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアが開く。
【0024】
照光時間は強制開スイッチ7を押してから数秒経過すると消灯するものとし、照光時間は約3〜5秒で仮設定して実物で試験することで、より良い設定時間に調整する。なお、消灯後に開スイッチ5を押しても無効とする。
(3)開スイッチ5は緑色であり、可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを開く時に使用する(車体検知センサが正常に機能する通常時)。
【0025】
列車到着時及び再開閉時など、早急に開けるタイミングでの使用が想定されるため、手探りでも位置が分かりやすく、操作しやすい突型スイッチ(突出している操作部を押すスイッチ)を採用する。
なお、各種スイッチの操作力は、閉スイッチ6は8.2N〜9.4N、強制開スイッチ7は3,7N〜4.6N、開スイッチ5は8.2N〜9.4Nであり、操作盤装置1の形状寸法は幅110×高さ185×厚さ70mm、取付中心高さはホーム上面より1000mmである。
【0026】
このように、本発明によると、操作盤装置がホーム柵の線路側の側面から出っ張るように配置されているので、手探りで装置の位置が分かるとともに、凸形状のスイッチとしているので、手探りでも操作することができる。また、開と閉を間違えにくいスイッチの配置を採用するとともに、誤操作も防げるようにしている。
操作盤装置1は可動式ホーム柵9の線路10側の側面から出っ張るように配置され、車掌又は運転士によって操作される。
【0027】
さらに、第1実施例の変形例として、この操作盤装置1の強制開スイッチ7の操作部8を第三者によりいたずらに操作されることを防止するために、この操作盤装置1の強制開スイッチ7の操作部を、視覚により認識し難い表示部を有する隠しスイッチとすることができる。たとえば、強制開スイッチの操作部は、視覚による表示を行うのではなく、図3に示すように、視覚によっては認識できず、触知により認識される形状、例えば凹凸による粗面部12が施されるようにしたり、図4に示すように、前記強制開スイッチの操作部に点状のマーカ13を付すようにする。なお、図3,図4では、「強制開スイッチ」との文字表記を残した例を示しているが、当然この文字表記を削除してより認識しにくくするようにしてもよい。
【0028】
また、ここでは、開スイッチ5と閉スイッチ6とは連動されることはなく、両者は単独の操作(プッシュ動作)ができるように構成されている。
図5は本発明の第2実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置1の外観図であり、図5(a)はその開スイッチの操作状態を示す正面図、図5(b)は閉スイッチの操作状態を示す正面図である。
【0029】
この図において、21は可動式ホーム柵、22はその操作盤装置、23は開スイッチ、24は閉スイッチ、25は一本の操作棒、25Aは操作棒25の下端部、25Bは操作棒25の上端部である。
この実施例では、開スイッチ23と閉スイッチ24とは連動する一本の操作棒25によって互いに連動して動作するように構成している。つまり、図5(a)に示すように、操作盤装置22の開スイッチ23(操作棒25の下端部25A)が上に押し込まれると、可動式ホーム柵21のドア及び/又は車両ドアが開き、操作棒25の上端部25Bは閉スイッチ24として突出された状態となる。逆に、閉スイッチ24が上から押し込まれると、可動式ホーム柵21のドア及び/又は車両ドアが閉まり、操作棒25の下端部25Aは開スイッチ23として突出された状態となる。このような構成とすることにより、操作盤装置22を見ずに操作をしてもスイッチの押し間違いを防ぐことができる。
【0030】
本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置の操作は、車両ドアの動作とは連動しない動作を行うように構成する場合には、つまり非連動タイプのホーム柵に用いる場合は、既設の鉄道システムに追加的に簡単に構築することができので、その需要を満たすのに好適である。
また、本発明の可動式ホーム柵に配置される操作盤装置の操作は、車両ドアの動作と連動する動作を行うように構成する場合には、新設される鉄道用システムなどで、その需要を満たすことができる(上記特許文献1参照)。
【0031】
次に、本発明の可動用ホーム柵の操作盤装置の構成を決定するのに重要なその操作盤装置の開閉ボタンの配置による操作性の違いについて検討を行ったので説明する。
車掌が操作する非連動型のホーム柵について、操作盤装置の開閉スイッチの配置を検討した。開閉スイッチの並びが上下か左右か、プッシュ方向が上下方向かホーム柵垂直方向かが異なる4種類の操作盤装置を製作し、乗務員58名による評価試験を実施した。その結果、上下並びである車両ドアの開閉スイッチと同時期に扱うものとして、左右並びより上下並びの評価が高く、プッシュ方向はホーム柵垂直方向より上下方向が疲れにくいと評価された。すなわち、後述されるように、上下並び、上下方向プッシュの組み合わせの操作盤装置は、他の配置の操作盤装置より操作しやすく、間違い難いと評価された。
【0032】
以下、その検討結果について詳細に説明する。
上記した〔背景技術〕においても説明したが、運転士は厳密な停止位置コントロールを求められ、車掌は車両ドアの開閉操作に加えてホーム柵のドアの開閉操作もしなくてはならない。社会的にホーム柵の導入が急がれる中で、非連動タイプは既存線区への導入が増えると予想されるが、車両とホーム柵の二つのドアを同時期に操作することは従来の作業には見られないため、操作しやすい操作盤装置の条件は明らかにされていなかった。
【0033】
そこで、ここでは、非連動タイプのホーム柵について、開閉操作が行いやすい操作盤装置の条件を明らかにするようにした。
ホーム柵の操作盤装置と同時期に操作する車両ドアの操作盤装置である車掌スイッチおよび可動式ホーム柵の操作盤装置の取付位置を図6に示す。車掌スイッチは、車両最後部の車掌室内側に設置されており、可動式ホーム柵の操作盤装置はホーム柵最後端に設置されている。
【0034】
図6に示すように、上下方向、線路方向、ホーム柵垂直方向を定めた。
参考例として既存の開閉ボタンの配置をとりあげると、エレベータ(左右に並んでおり、どちらが開かは決まっていない)、多目的トイレ(上下に並んでいる場合上が開、下が閉)、既存の非連動タイプの可動式ホーム柵(左右に並んでおり、左が開、右が閉)、上述の車掌スイッチ(上下に並んでおり、上が閉、下が開)などがある。これらを整理すると、配置の要素として、A:開閉の並び(上下・左右)、B:プッシュ方向(上下方向・ホーム柵垂直方向)、C:プッシュ方向の開閉同異(同じ・逆)、D:開閉ボタンの大きさ、E:開閉ボタン間の距離などがあげられる。D,Eはある程度大きい方が良いことが自明であるため、A〜Cをとりあげた。
【0035】
下記表2に示すA・B・Cの組み合わせのうち、押しボタンによって実現可能性が高い配置として、(1)〜(4)の4種類を比較することとした。試作した操作盤装置を図7に、ホーム柵への取付状況を図6に示す。押しボタンは全て同一(直径30mm、操作力6N、動作量5mm、押した場合にランプ点灯、閉が橙色、開が緑色)とした。
【0036】
【表2】
以下、評価試験について説明する。
ホーム柵の操作経験のない乗務員が操作盤装置(1)〜(4)を評価した。駅に停車中の車掌の作業を図8に示す。この作業を模擬するため、会議室に、模擬車掌室、車掌スイッチ、模擬ホーム柵、ホーム柵の操作盤装置、乗降監視のイメージを持たせ操作の指示やドアの開閉状態を提示するためのディスプレイ、ホーム柵の全閉状態を示す「ホーム柵全閉表示灯」を設置した。
【0037】
実験装置と操作風景を図9に示す。車両およびホーム柵のドアは設置せず、ディスプレイ上の画像、および乗務員に経験がなく想定し難いホーム柵の開閉状態については,図8、図9に示す表示灯で示した。
ホームが車両の右側にある場合と左側にある場合があること、車両が停止位置からずれて停車する場合もあることから、ホーム柵の操作盤装置と車掌スイッチの相対位置は以下の3種類を設定し、実験日ごとに1種類ずつ割り振った。
【0038】
R0:右側ホーム、停車位置のズレ0mm
L0:左側ホーム、停車位置のズレ0mm
L590:左側ホーム、停車位置のズレ590mm
L590はもっとも操作しにくい状況として、ホーム監視と操作盤装置の視認を同時に行えない、操作盤装置が進行方向後方になる状態(オーバーラン)で、停止位置が最大にずれた場合(ホーム柵開口部を2480mmとしてドア幅1300mmに対する余裕代の1/2)とした。
【0039】
操作盤装置の設置高さは、開閉の中央を床から950mmとした。
乗務員は、ディスプレイの指示にタイミングをあわせて開閉操作を行なった。1回分の指示内容および乗務員の動作内容を表3に、操作順序7の画面例を図10(a)に示す。表3に示す操作を4回繰り返した。4回のうちのランダムな1回において、「乗降完了」から1秒もしくは2秒後に図10 (b) が表示され、この場合はできるだけ速やかに両ドアを開けるよう指示した。これを「緊急操作」、その他を「通常操作」と呼ぶ。4回の操作後にアンケートに回答した。
【0040】
【表3】
評価においては、旅客の安全の観点から、ユーザビリティ評価指標における、効果性(正確さ、完全さ)を最も重視し、次いで満足度を重視した。ユーザビリティの総合評価として「操作しやすさ」を各操作盤装置に対し7段階で、「良い点・悪い点」を自由記述で尋ね、4つの操作盤装置終了後に、最もよい操作盤装置とその理由を尋ねた。効果性に関する指標として、操作盤装置ごとに、「開と閉の間違いにくさ」、「とっさの際の開けやすさ」、ホーム監視の中断時間減少に結びつく「見ないでの操作しやすさ」を尋ねた。操作風景をビデオで記録し、この映像より、必要な操作をしない場合や開と閉を間違えた場合を「誤操作」、誤ったボタンに手が伸びたが押さなかった場合を「迷い」として数えた。満足度について、「業務で使用したときの想定の疲れにくさ」を尋ねた。効率性に関する指標として操作時間を計測したが、有意な差が見られなかったためここでは省略する。
【0041】
最後に、操作盤装置(1)〜(4)の細部に拘束されない、プッシュ方向等の個別の評価として、「開閉の並び(上下・左右)」、「プッシュ方向(下向き・柵向き)」、「プッシュ方向の開閉同異(同じ・逆)」の意向、「車掌スイッチと同一のスイッチを使用することについての賛否」を、図示しながら7段階で尋ねた。
以下、評価結果について説明する。
【0042】
最も良い操作盤装置の選択率(以降、支持率とする)を図11に示す。操作盤装置(1)が65.5%、操作盤装置(2)が20.7%、操作盤装置(4)が10.3%、操作盤装置(3)が3.4%であった。
「操作しやすさ」の平均値を図12に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は操作盤装置(3)より有意に評価が高かった。
【0043】
「開と閉の間違い難さ」の平均値を図13に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は他のすべての操作盤装置より有意に評価が高かった。
「とっさの際の開けやすさ」の平均値を図14に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は、他の全ての操作盤装置より有意に評価が高かった。
【0044】
「見ないでの操作しやすさ」を図15に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は他のすべての操作盤装置より有意に評価が高く、操作盤装置(3)は他のすべての操作盤装置より有意に評価が低かった。
「誤操作」と「迷い」の数を図16に示す。「通常操作」の操作盤装置(1)でこれらが少ない傾向を示した。
【0045】
「業務で使用した時の想定の疲れにくさ」の平均値を図17に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は操作盤装置(3)・(4)より有意に評価が高く、操作盤装置(2)は操作盤装置(3)より有意に評価が高かった.
開閉の並びやプッシュ方向の個別の評価で,上下並びを良いとする割合は72.4%、左右並びを良いとする割合は17.2%であった。「プッシュ方向」について、下向きが良いとする割合が77.6%、ホーム柵向きが良いとする割合が19.0%であった。「プッシュ方向の開閉同異」について、「逆が良い」とする割合が66.7%、「同じが良い」とする割合が15.8%であった。
【0046】
上記から得られた結果を、開閉の並び、プッシュ方向について表4に整理する。
【0047】
【表4】
(i)開閉の並び
開閉の並び(左右・上下)のみが異なる操作盤装置(4)と(3)の間で有意な差がみられた項目は、「見ないでの操作しやすさ」であり、左右並びである操作盤装置(3)の評価が低かった。配置について直接尋ねた質問でも、72.4%が上下並びを支持した。
【0048】
上下並びで「見ないで操作できる」の評価が高かった理由として、開と閉を床からの高さとして絶対的に弁別でき、操作盤装置と操作者の位置関係の影響を受け難いことも一因と考えられる。左右並びでは、操作者が操作盤装置より左側にいれば、左側押しボタンが操作者の右側となるように、押しボタンの位置が、操作盤装置と操作者の位置関係の影響を受ける。実験では左右ホームが混在する状況を設定しなかったが、ホームの左右が入れ替わる場合にも同様の問題が起こる。例えば、線路方向前側を「開」とすると、「開」が操作盤装置の左側となるか右側となるかはホームの左右によって変わり、操作盤装置の左側を「開」とすれば、ホームの左右によって線路方向における前後関係が変わる。上下並びでは、ホームの左右が混在してもそのような問題が生じない。
【0049】
その一方で、上下並びでは操作盤装置の上下寸法が長くなる。ホーム柵では、柵より高い場所に操作盤装置を設置できないため、下側のスイッチを低くせざるを得ない。これについては、「操作しやすさ」が特に低下していないことから、今回の高さは許容範囲内であると考えられる。
なお、プッシュ方向も異なるため並びだけの比較はできないが、上下並びである操作盤装置(1)の「見ない(ブラインドタッチ)での操作しやすさ」も、左右並びである操作盤装置(2)より有意に高かった。
(ii)プッシュ方向
プッシュ方向(上下方向・ホーム柵垂直方向)のみが異なった操作盤装置(2)と(3)について有意差がみられたのは「疲れにくさ」と「見ない(ブラインドタッチ)での操作しやすさ」で、いずれも下向きにプッシュする操作盤装置(2)の評価が高かった。
【0050】
操作者がホーム監視のために線路方向前方を向くと、ホーム柵に手の甲が向くので、ホーム柵向きにボタンを押すには手首をひねらなくてはならない。これが「疲れにくさ」の評価に現れたものと考えられた。
なお、プッシュ方向が下向きの場合、落下物の衝撃による予期しない動作の可能性があるが、ホーム柵においては、列車が存在しない時には開閉操作を受け付けないようインターロックがかかっているものとする。
【0051】
開閉が上下並びである操作盤装置(2)と(4)においても、プッシュ方向が上下方向の操作盤装置(1)の「疲れにくさ」の評価が、プッシュ方向が柵向きの操作盤装置(4)より有意に高かった。
(iii )プッシュ方向の開閉同異
プッシュ方向の開閉同異のみを比較できる操作盤装置の組み合わせはなかった。プッシュ方向の開閉同異について直接尋ねた問では、65.5%が「開閉で逆」を支持した。プッシュ方向が異なれば、間違ったボタンに手が触れても操作しないですむためであると考えられた。
(iv)もっともよい配置
上下並びが左右並びより「見ないでの操作しやすさ」評価が高いこと、プッシュ方向が上下の方が柵向きより「疲れにくい」ことが明らかになった。上下並びと上下方向プッシュの2つを兼ねた操作盤装置(1)は、操作盤装置(2)・(3)・(4)より「間違いにくさ」、「とっさの際の開けやすさ」、「見ないでの操作しやすさ」が有意に高く、支持率が最も高く、「通常操作」における誤操作の数も少ない傾向を示した。
【0052】
以上のように、開閉ボタンの配置を変えた4種類のホーム柵の操作盤装置を乗務員58名が操作した結果、以下が明らかになった。
(A)車掌スイッチ(車両ドアの開閉スイッチ)とともに操作する機器として、開閉ボタンを上下に並べる方が、左右に並べるより見ないで操作しやすく、上下方向にプッシュする方が、ホーム柵向きにプッシュするより疲労の予想が低い。
【0053】
(B)開閉が上下に並び、閉は下向きに、開は上向きにプッシュする操作盤装置(1)は、「間違えにくさ」や「見ないでの操作しやすさ」などが操作盤装置(2)・(3)・(4)より有意に高く評価された。
以上のような評価結果に基づいて、本発明にかかる操作盤装置の構成を決定した。
上記したように、本発明によれば、
(1)操作盤本体の上部に閉スイッチ、下部に開スイッチの上下配置となし、操作方向は上下向きとして、開と閉を間違え難い配置にしている。
【0054】
(2)操作盤装置を可動式ホーム柵の側面から出っ張る形状(丘付け)となし、操作ボタンを凸形状としたので、手探りで位置を確認して、操作することができる。
(3)乗務員の身体やカバンなどが接触した際の誤操作を回避するため、閉スイッチはガード付き平型スイッチとした。なお、接触の可能性が低い開スイッチには操作性を考慮して枠なし突型スイッチとするようにしてもよい。
【0055】
(4)強制開スイッチは、安全対策(誤操作や慎重に操作する手段)として、2つのボタン(強制開スイッチと開スイッチの組み合わせ)を押さないと動作しないようにした。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置は、複数配置される可動式ホーム柵へアクセスする利用客の動向を監視しながら、しかも円滑にして安全な可動式ホーム柵及び/又は車両ドアの操作を遂行することができる可動式ホーム柵の操作盤装置として利用可能である。また、本発明は、上記実施例では、鉄道車両システムを主に説明したが、監視をしながら機械などを操作する場合であれば対応可能であり、例えば、遊園地等で操作員がゲートと乗り物のドアを同時に開閉するような場合にも適用でき、汎用性を有する。
【符号の説明】
【0057】
1,22 操作盤装置
2 操作盤装置本体
3 操作盤装置本体の上部の傾斜面
4 操作盤装置本体の下部の傾斜面
5,23 下部の傾斜面に配置される開スイッチ
6,24 上部の傾斜面に配置される閉スイッチ
7 操作盤装置本体の中央部に配置される強制開スイッチ
8 強制開スイッチの操作部の表示部
9,21 可動式ホーム柵(ドア開状態)
10 線路
11 線路のホーム
25 操作棒
25A 操作棒の下端部
25B 操作棒の上端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式ホーム柵の操作盤装置及びその操作方法に係り、特に、鉄道用可動式ホーム柵に配置される操作盤装置(スイッチ装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームからの転落を防止する有効な手段として、ホームドア(車両上部まで覆うもの)やホーム柵(腰高さ程度のもの)がある。従来のホーム柵の開閉方式としては、大きく分けて、ホーム柵のドアの開閉操作と車両ドアの開閉操作が連動するもの(連動タイプ)と、ホーム柵のドアの開閉操作と車両ドアの開閉操作とは連動せず別に操作するもの(非連動タイプ)がある。
【0003】
連動型鉄道用ホーム柵は、新設の鉄道用システムにおいて、1つの操作盤装置の操作によって可動式ホーム柵のドアの開閉を車両ドアの開閉と連動させることができる理想的な制御システムを構築することができる利点がある。ホームドア・ホーム柵の導入当初は、ワンマン運転の支援の側面も強く、この連動タイプが主流であった。連動タイプでは運転士が運転室内で車両ドアの開閉操作をすると、これと連動してホーム柵のドアが動く。このタイプでは、ドア開閉信号の通信のため列車の停止位置に高い精度が要求されるので、自動列車運転装置(Automatic Train Operation,ATO)や定位置停止装置(Train Automatic Stop Control,TASC)など車両側・地上側の設備が必要である(特許文献1参照)。
【0004】
これに対し、非連動タイプはこれらの設備が不要であるため、ホーム柵が備えられていない既存の鉄道システムに追加的に可動式ホーム柵を配置する場合に適用し易く、既存線区にも比較的安価に早期に導入できると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−300462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可動式ホーム柵の操作盤装置を操作する際、複数配置される可動式ホーム柵へアクセスする利用客の動向を監視しながら、円滑にして安全に可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアの開閉を遂行することが求められる。
したがって、特に、車両ドアと非連動タイプのホーム柵のドアを操作する操作盤装置は、ホーム監視中の車掌が車掌スイッチと一緒に操作するため、ホームからの視線を外さずに操作できることが求められる。しかしながら、従来タイプの操作盤装置は、スイッチの並びや操作方向に問題があり、視線を外さずに操作することはできなかったため、安全上問題があった。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、ホーム監視から視線をはずすことなく、円滑にして安全に可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアの操作を遂行することができる可動式ホーム柵の操作盤装置を提供することを目的とする。
なお、本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置は、非連動タイプと連動タイプの両方のタイプに適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕可動式ホーム柵の操作盤装置において、操作盤装置本体の上部及び下部に傾斜面が形成され、該下部の傾斜面に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチと、該上部の傾斜面に凸形状となるように配置される前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチと、前記操作盤装置本体の中央部に配置される非常時に前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチとを備え、操作方向が上下逆向きであることを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置を前記可動式ホーム柵の鉄道線路側の側面に出っ張るように配置するようにしたことを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部は視覚により認識し難い表示部を有することを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔3〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には触知により認識される形状が施されることを特徴とする。
〔5〕上記〔4〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には点状のマーカを付すようにしたことを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記閉スイッチをガード付きの平型スイッチとしたことを特徴とする。
【0011】
〔7〕上記〔1〕から〔5〕記載の何れか一項記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記可動式ホーム柵のドアと前記車両ドアとを連動して開閉させるようにしたことを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記車両ドアの開閉動作と連動させることなく、前記可動式ホーム柵のドアの開閉動作のみを行うようにしたことを特徴とする。
【0012】
〔9〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動することなく個別に動作するように構成したことを特徴とする。
〔10〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動して動作するようにしたことを特徴とする。
【0013】
〔11〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記可動式ホーム柵から出っ張る操作盤装置の前記傾斜面により操作盤本体の位置を確認し、上部の操作ボタンに辿り着き、手探りで操作盤装置を操作可能にしたことを特徴とする。
〔12〕上記〔1〕又は〔2〕記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチと前記開スイッチの組み合わせで、前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホーム監視から視線をはずさなくても操作しやすく、間違え難い可動式ホーム柵の操作盤装置を提供することができる。
すなわち、開閉スイッチを操作盤本体の上部に閉スイッチ、下部に開スイッチを配置する上下配置となし、操作方向を上下向きとしたので、操作者が開と閉を間違え難く、とっさの事態でも操作しやすい。
【0015】
また、本発明の操作盤装置は、可動式ホーム柵の線路側の側面から出っ張る形状(丘付け)となし、開閉スイッチを凸形状としたので、手探りで操作盤装置及び開閉スイッチの位置を確認し、操作することができる。
また、本発明によれば、利用者側から開スイッチに手が届く恐れがなく、安全である。
更に、閉スイッチはガード付き平型スイッチとしたので、乗務員の身体、カバンなどが接触した際の誤操作を回避することができる。なお、接触の可能性が低い開スイッチは操作性を考慮して枠なし突型スイッチとするようにしてもよい。
【0016】
また、強制開スイッチは、2つのスイッチ(強制開スイッチと開スイッチの組み合わせ)を押さないと動作しないようにしたので、誤操作を防止できるとともに、第三者による悪戯な開閉操作を防止することができる。
更に、強制開スイッチの操作部は視覚により認識し難い隠しスイッチとすることにより、第三者による悪戯な強制開スイッチの操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置の外観図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置の配置を示す図である。
【図3】本発明にかかる第1実施例の変形例を示す強制開スイッチの第1の悪戯防止対策を施した可動式ホーム柵の操作盤装置の正面図である。
【図4】本発明にかかる第1実施例の更なる変形例を示す強制開スイッチの第2の悪戯防止対策を施した可動式ホーム柵の操作盤装置の正面図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置の外観図である。
【図6】車掌スイッチ及び可動式ホーム柵の操作盤装置の取付位置を示す図である。
【図7】評価のために試作した可動式ホーム柵の操作盤装置を示す図である。
【図8】駅に停車中の車掌の作業を示す図である。
【図9】実験装置と操作風景を示す図である。
【図10】画面の表示例を示す図である。
【図11】最も良い可動式ホーム柵の操作盤装置の選択率を示す図である。
【図12】操作しやすさの平均値を示す図である。
【図13】開と閉の間違い難さの平均値を示す図である。
【図14】とっさの際の開けやすさの平均値を示す図である。
【図15】見ないでの操作しやすさを示す図である。
【図16】誤操作と迷いの数を示す図である。
【図17】業務で使用した時の想定の疲れにくさの平均値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置は、操作盤装置本体の上部及び下部に傾斜面が形成され、該下部の傾斜面に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチと、該上部の傾斜面に凸形状となるように配置される前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチと、前記操作盤装置本体の中央部に配置される非常時に前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチとを備え、操作方向が上下逆向きである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す鉄道用可動式ホーム柵の操作盤装置の外観図であり、図1(a)はその斜視図、図1(b)はその正面図、図2はその鉄道用可動式ホーム柵への配置態様を示す図である。
これらの図において、1は操作盤装置、2は操作盤装置本体、3は操作盤装置本体2の上部の傾斜面、4は操作盤装置本体2の下部の傾斜面、5はその下部の傾斜面4に配置される開スイッチ、6はその上部の傾斜面3に配置される閉スイッチ、7は操作盤装置本体2の中央部に配置される強制開スイッチ、8はその強制開スイッチ7の操作部の表示部、9は鉄道用可動式ホーム柵(ドア開状態)、10は線路、11は線路10のホームである。
【0020】
この実施例では、操作盤装置本体2の上部及び下部に傾斜面3,4が形成され、この下部の傾斜面4に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチ5と、この上部の傾斜面3に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチ6と、前記操作盤装置本体2の中央部に配置される強制開スイッチ7とを備えるようにしている。なお、傾斜面3,4は開閉スイッチ5,6の操作をしやすくするために形成されている。
【0021】
さらに、本発明の操作盤装置の仕様例について説明する。
表1はその仕様例一覧である。
【0022】
【表1】
(1)閉スイッチ6は黒色であり、可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを閉める時に使用する。
乗務員の乗降時に身体やカバンなどの意図しない接触で誤って操作しないよう、ガード付き平型スイッチ(ガード上部の操作面から押し込むスイッチ)を採用する。このようなスイッチとすることで手探りでも位置が分かりやすく、指で押し込まれなければスイッチが入らないため、誤操作も防止できる。
【0023】
(2)強制開スイッチ7は黄色(照光式)であり、停止位置を外れて停車した場合や車体検知センサが故障した場合など、車体検知センサが正常に機能しない条件(非常時)で可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを開けたい場合に、強制開スイッチ7を押すとスイッチが照光し、照光している間に開スイッチ5を押すと可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアが開く。
【0024】
照光時間は強制開スイッチ7を押してから数秒経過すると消灯するものとし、照光時間は約3〜5秒で仮設定して実物で試験することで、より良い設定時間に調整する。なお、消灯後に開スイッチ5を押しても無効とする。
(3)開スイッチ5は緑色であり、可動式ホーム柵9のドア及び/又は車両ドアを開く時に使用する(車体検知センサが正常に機能する通常時)。
【0025】
列車到着時及び再開閉時など、早急に開けるタイミングでの使用が想定されるため、手探りでも位置が分かりやすく、操作しやすい突型スイッチ(突出している操作部を押すスイッチ)を採用する。
なお、各種スイッチの操作力は、閉スイッチ6は8.2N〜9.4N、強制開スイッチ7は3,7N〜4.6N、開スイッチ5は8.2N〜9.4Nであり、操作盤装置1の形状寸法は幅110×高さ185×厚さ70mm、取付中心高さはホーム上面より1000mmである。
【0026】
このように、本発明によると、操作盤装置がホーム柵の線路側の側面から出っ張るように配置されているので、手探りで装置の位置が分かるとともに、凸形状のスイッチとしているので、手探りでも操作することができる。また、開と閉を間違えにくいスイッチの配置を採用するとともに、誤操作も防げるようにしている。
操作盤装置1は可動式ホーム柵9の線路10側の側面から出っ張るように配置され、車掌又は運転士によって操作される。
【0027】
さらに、第1実施例の変形例として、この操作盤装置1の強制開スイッチ7の操作部8を第三者によりいたずらに操作されることを防止するために、この操作盤装置1の強制開スイッチ7の操作部を、視覚により認識し難い表示部を有する隠しスイッチとすることができる。たとえば、強制開スイッチの操作部は、視覚による表示を行うのではなく、図3に示すように、視覚によっては認識できず、触知により認識される形状、例えば凹凸による粗面部12が施されるようにしたり、図4に示すように、前記強制開スイッチの操作部に点状のマーカ13を付すようにする。なお、図3,図4では、「強制開スイッチ」との文字表記を残した例を示しているが、当然この文字表記を削除してより認識しにくくするようにしてもよい。
【0028】
また、ここでは、開スイッチ5と閉スイッチ6とは連動されることはなく、両者は単独の操作(プッシュ動作)ができるように構成されている。
図5は本発明の第2実施例を示す可動式ホーム柵の操作盤装置1の外観図であり、図5(a)はその開スイッチの操作状態を示す正面図、図5(b)は閉スイッチの操作状態を示す正面図である。
【0029】
この図において、21は可動式ホーム柵、22はその操作盤装置、23は開スイッチ、24は閉スイッチ、25は一本の操作棒、25Aは操作棒25の下端部、25Bは操作棒25の上端部である。
この実施例では、開スイッチ23と閉スイッチ24とは連動する一本の操作棒25によって互いに連動して動作するように構成している。つまり、図5(a)に示すように、操作盤装置22の開スイッチ23(操作棒25の下端部25A)が上に押し込まれると、可動式ホーム柵21のドア及び/又は車両ドアが開き、操作棒25の上端部25Bは閉スイッチ24として突出された状態となる。逆に、閉スイッチ24が上から押し込まれると、可動式ホーム柵21のドア及び/又は車両ドアが閉まり、操作棒25の下端部25Aは開スイッチ23として突出された状態となる。このような構成とすることにより、操作盤装置22を見ずに操作をしてもスイッチの押し間違いを防ぐことができる。
【0030】
本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置の操作は、車両ドアの動作とは連動しない動作を行うように構成する場合には、つまり非連動タイプのホーム柵に用いる場合は、既設の鉄道システムに追加的に簡単に構築することができので、その需要を満たすのに好適である。
また、本発明の可動式ホーム柵に配置される操作盤装置の操作は、車両ドアの動作と連動する動作を行うように構成する場合には、新設される鉄道用システムなどで、その需要を満たすことができる(上記特許文献1参照)。
【0031】
次に、本発明の可動用ホーム柵の操作盤装置の構成を決定するのに重要なその操作盤装置の開閉ボタンの配置による操作性の違いについて検討を行ったので説明する。
車掌が操作する非連動型のホーム柵について、操作盤装置の開閉スイッチの配置を検討した。開閉スイッチの並びが上下か左右か、プッシュ方向が上下方向かホーム柵垂直方向かが異なる4種類の操作盤装置を製作し、乗務員58名による評価試験を実施した。その結果、上下並びである車両ドアの開閉スイッチと同時期に扱うものとして、左右並びより上下並びの評価が高く、プッシュ方向はホーム柵垂直方向より上下方向が疲れにくいと評価された。すなわち、後述されるように、上下並び、上下方向プッシュの組み合わせの操作盤装置は、他の配置の操作盤装置より操作しやすく、間違い難いと評価された。
【0032】
以下、その検討結果について詳細に説明する。
上記した〔背景技術〕においても説明したが、運転士は厳密な停止位置コントロールを求められ、車掌は車両ドアの開閉操作に加えてホーム柵のドアの開閉操作もしなくてはならない。社会的にホーム柵の導入が急がれる中で、非連動タイプは既存線区への導入が増えると予想されるが、車両とホーム柵の二つのドアを同時期に操作することは従来の作業には見られないため、操作しやすい操作盤装置の条件は明らかにされていなかった。
【0033】
そこで、ここでは、非連動タイプのホーム柵について、開閉操作が行いやすい操作盤装置の条件を明らかにするようにした。
ホーム柵の操作盤装置と同時期に操作する車両ドアの操作盤装置である車掌スイッチおよび可動式ホーム柵の操作盤装置の取付位置を図6に示す。車掌スイッチは、車両最後部の車掌室内側に設置されており、可動式ホーム柵の操作盤装置はホーム柵最後端に設置されている。
【0034】
図6に示すように、上下方向、線路方向、ホーム柵垂直方向を定めた。
参考例として既存の開閉ボタンの配置をとりあげると、エレベータ(左右に並んでおり、どちらが開かは決まっていない)、多目的トイレ(上下に並んでいる場合上が開、下が閉)、既存の非連動タイプの可動式ホーム柵(左右に並んでおり、左が開、右が閉)、上述の車掌スイッチ(上下に並んでおり、上が閉、下が開)などがある。これらを整理すると、配置の要素として、A:開閉の並び(上下・左右)、B:プッシュ方向(上下方向・ホーム柵垂直方向)、C:プッシュ方向の開閉同異(同じ・逆)、D:開閉ボタンの大きさ、E:開閉ボタン間の距離などがあげられる。D,Eはある程度大きい方が良いことが自明であるため、A〜Cをとりあげた。
【0035】
下記表2に示すA・B・Cの組み合わせのうち、押しボタンによって実現可能性が高い配置として、(1)〜(4)の4種類を比較することとした。試作した操作盤装置を図7に、ホーム柵への取付状況を図6に示す。押しボタンは全て同一(直径30mm、操作力6N、動作量5mm、押した場合にランプ点灯、閉が橙色、開が緑色)とした。
【0036】
【表2】
以下、評価試験について説明する。
ホーム柵の操作経験のない乗務員が操作盤装置(1)〜(4)を評価した。駅に停車中の車掌の作業を図8に示す。この作業を模擬するため、会議室に、模擬車掌室、車掌スイッチ、模擬ホーム柵、ホーム柵の操作盤装置、乗降監視のイメージを持たせ操作の指示やドアの開閉状態を提示するためのディスプレイ、ホーム柵の全閉状態を示す「ホーム柵全閉表示灯」を設置した。
【0037】
実験装置と操作風景を図9に示す。車両およびホーム柵のドアは設置せず、ディスプレイ上の画像、および乗務員に経験がなく想定し難いホーム柵の開閉状態については,図8、図9に示す表示灯で示した。
ホームが車両の右側にある場合と左側にある場合があること、車両が停止位置からずれて停車する場合もあることから、ホーム柵の操作盤装置と車掌スイッチの相対位置は以下の3種類を設定し、実験日ごとに1種類ずつ割り振った。
【0038】
R0:右側ホーム、停車位置のズレ0mm
L0:左側ホーム、停車位置のズレ0mm
L590:左側ホーム、停車位置のズレ590mm
L590はもっとも操作しにくい状況として、ホーム監視と操作盤装置の視認を同時に行えない、操作盤装置が進行方向後方になる状態(オーバーラン)で、停止位置が最大にずれた場合(ホーム柵開口部を2480mmとしてドア幅1300mmに対する余裕代の1/2)とした。
【0039】
操作盤装置の設置高さは、開閉の中央を床から950mmとした。
乗務員は、ディスプレイの指示にタイミングをあわせて開閉操作を行なった。1回分の指示内容および乗務員の動作内容を表3に、操作順序7の画面例を図10(a)に示す。表3に示す操作を4回繰り返した。4回のうちのランダムな1回において、「乗降完了」から1秒もしくは2秒後に図10 (b) が表示され、この場合はできるだけ速やかに両ドアを開けるよう指示した。これを「緊急操作」、その他を「通常操作」と呼ぶ。4回の操作後にアンケートに回答した。
【0040】
【表3】
評価においては、旅客の安全の観点から、ユーザビリティ評価指標における、効果性(正確さ、完全さ)を最も重視し、次いで満足度を重視した。ユーザビリティの総合評価として「操作しやすさ」を各操作盤装置に対し7段階で、「良い点・悪い点」を自由記述で尋ね、4つの操作盤装置終了後に、最もよい操作盤装置とその理由を尋ねた。効果性に関する指標として、操作盤装置ごとに、「開と閉の間違いにくさ」、「とっさの際の開けやすさ」、ホーム監視の中断時間減少に結びつく「見ないでの操作しやすさ」を尋ねた。操作風景をビデオで記録し、この映像より、必要な操作をしない場合や開と閉を間違えた場合を「誤操作」、誤ったボタンに手が伸びたが押さなかった場合を「迷い」として数えた。満足度について、「業務で使用したときの想定の疲れにくさ」を尋ねた。効率性に関する指標として操作時間を計測したが、有意な差が見られなかったためここでは省略する。
【0041】
最後に、操作盤装置(1)〜(4)の細部に拘束されない、プッシュ方向等の個別の評価として、「開閉の並び(上下・左右)」、「プッシュ方向(下向き・柵向き)」、「プッシュ方向の開閉同異(同じ・逆)」の意向、「車掌スイッチと同一のスイッチを使用することについての賛否」を、図示しながら7段階で尋ねた。
以下、評価結果について説明する。
【0042】
最も良い操作盤装置の選択率(以降、支持率とする)を図11に示す。操作盤装置(1)が65.5%、操作盤装置(2)が20.7%、操作盤装置(4)が10.3%、操作盤装置(3)が3.4%であった。
「操作しやすさ」の平均値を図12に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は操作盤装置(3)より有意に評価が高かった。
【0043】
「開と閉の間違い難さ」の平均値を図13に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は他のすべての操作盤装置より有意に評価が高かった。
「とっさの際の開けやすさ」の平均値を図14に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は、他の全ての操作盤装置より有意に評価が高かった。
【0044】
「見ないでの操作しやすさ」を図15に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は他のすべての操作盤装置より有意に評価が高く、操作盤装置(3)は他のすべての操作盤装置より有意に評価が低かった。
「誤操作」と「迷い」の数を図16に示す。「通常操作」の操作盤装置(1)でこれらが少ない傾向を示した。
【0045】
「業務で使用した時の想定の疲れにくさ」の平均値を図17に示す。分散分析の結果、操作盤装置間の効果は有意であり、多重比較の結果、操作盤装置(1)は操作盤装置(3)・(4)より有意に評価が高く、操作盤装置(2)は操作盤装置(3)より有意に評価が高かった.
開閉の並びやプッシュ方向の個別の評価で,上下並びを良いとする割合は72.4%、左右並びを良いとする割合は17.2%であった。「プッシュ方向」について、下向きが良いとする割合が77.6%、ホーム柵向きが良いとする割合が19.0%であった。「プッシュ方向の開閉同異」について、「逆が良い」とする割合が66.7%、「同じが良い」とする割合が15.8%であった。
【0046】
上記から得られた結果を、開閉の並び、プッシュ方向について表4に整理する。
【0047】
【表4】
(i)開閉の並び
開閉の並び(左右・上下)のみが異なる操作盤装置(4)と(3)の間で有意な差がみられた項目は、「見ないでの操作しやすさ」であり、左右並びである操作盤装置(3)の評価が低かった。配置について直接尋ねた質問でも、72.4%が上下並びを支持した。
【0048】
上下並びで「見ないで操作できる」の評価が高かった理由として、開と閉を床からの高さとして絶対的に弁別でき、操作盤装置と操作者の位置関係の影響を受け難いことも一因と考えられる。左右並びでは、操作者が操作盤装置より左側にいれば、左側押しボタンが操作者の右側となるように、押しボタンの位置が、操作盤装置と操作者の位置関係の影響を受ける。実験では左右ホームが混在する状況を設定しなかったが、ホームの左右が入れ替わる場合にも同様の問題が起こる。例えば、線路方向前側を「開」とすると、「開」が操作盤装置の左側となるか右側となるかはホームの左右によって変わり、操作盤装置の左側を「開」とすれば、ホームの左右によって線路方向における前後関係が変わる。上下並びでは、ホームの左右が混在してもそのような問題が生じない。
【0049】
その一方で、上下並びでは操作盤装置の上下寸法が長くなる。ホーム柵では、柵より高い場所に操作盤装置を設置できないため、下側のスイッチを低くせざるを得ない。これについては、「操作しやすさ」が特に低下していないことから、今回の高さは許容範囲内であると考えられる。
なお、プッシュ方向も異なるため並びだけの比較はできないが、上下並びである操作盤装置(1)の「見ない(ブラインドタッチ)での操作しやすさ」も、左右並びである操作盤装置(2)より有意に高かった。
(ii)プッシュ方向
プッシュ方向(上下方向・ホーム柵垂直方向)のみが異なった操作盤装置(2)と(3)について有意差がみられたのは「疲れにくさ」と「見ない(ブラインドタッチ)での操作しやすさ」で、いずれも下向きにプッシュする操作盤装置(2)の評価が高かった。
【0050】
操作者がホーム監視のために線路方向前方を向くと、ホーム柵に手の甲が向くので、ホーム柵向きにボタンを押すには手首をひねらなくてはならない。これが「疲れにくさ」の評価に現れたものと考えられた。
なお、プッシュ方向が下向きの場合、落下物の衝撃による予期しない動作の可能性があるが、ホーム柵においては、列車が存在しない時には開閉操作を受け付けないようインターロックがかかっているものとする。
【0051】
開閉が上下並びである操作盤装置(2)と(4)においても、プッシュ方向が上下方向の操作盤装置(1)の「疲れにくさ」の評価が、プッシュ方向が柵向きの操作盤装置(4)より有意に高かった。
(iii )プッシュ方向の開閉同異
プッシュ方向の開閉同異のみを比較できる操作盤装置の組み合わせはなかった。プッシュ方向の開閉同異について直接尋ねた問では、65.5%が「開閉で逆」を支持した。プッシュ方向が異なれば、間違ったボタンに手が触れても操作しないですむためであると考えられた。
(iv)もっともよい配置
上下並びが左右並びより「見ないでの操作しやすさ」評価が高いこと、プッシュ方向が上下の方が柵向きより「疲れにくい」ことが明らかになった。上下並びと上下方向プッシュの2つを兼ねた操作盤装置(1)は、操作盤装置(2)・(3)・(4)より「間違いにくさ」、「とっさの際の開けやすさ」、「見ないでの操作しやすさ」が有意に高く、支持率が最も高く、「通常操作」における誤操作の数も少ない傾向を示した。
【0052】
以上のように、開閉ボタンの配置を変えた4種類のホーム柵の操作盤装置を乗務員58名が操作した結果、以下が明らかになった。
(A)車掌スイッチ(車両ドアの開閉スイッチ)とともに操作する機器として、開閉ボタンを上下に並べる方が、左右に並べるより見ないで操作しやすく、上下方向にプッシュする方が、ホーム柵向きにプッシュするより疲労の予想が低い。
【0053】
(B)開閉が上下に並び、閉は下向きに、開は上向きにプッシュする操作盤装置(1)は、「間違えにくさ」や「見ないでの操作しやすさ」などが操作盤装置(2)・(3)・(4)より有意に高く評価された。
以上のような評価結果に基づいて、本発明にかかる操作盤装置の構成を決定した。
上記したように、本発明によれば、
(1)操作盤本体の上部に閉スイッチ、下部に開スイッチの上下配置となし、操作方向は上下向きとして、開と閉を間違え難い配置にしている。
【0054】
(2)操作盤装置を可動式ホーム柵の側面から出っ張る形状(丘付け)となし、操作ボタンを凸形状としたので、手探りで位置を確認して、操作することができる。
(3)乗務員の身体やカバンなどが接触した際の誤操作を回避するため、閉スイッチはガード付き平型スイッチとした。なお、接触の可能性が低い開スイッチには操作性を考慮して枠なし突型スイッチとするようにしてもよい。
【0055】
(4)強制開スイッチは、安全対策(誤操作や慎重に操作する手段)として、2つのボタン(強制開スイッチと開スイッチの組み合わせ)を押さないと動作しないようにした。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の可動式ホーム柵の操作盤装置は、複数配置される可動式ホーム柵へアクセスする利用客の動向を監視しながら、しかも円滑にして安全な可動式ホーム柵及び/又は車両ドアの操作を遂行することができる可動式ホーム柵の操作盤装置として利用可能である。また、本発明は、上記実施例では、鉄道車両システムを主に説明したが、監視をしながら機械などを操作する場合であれば対応可能であり、例えば、遊園地等で操作員がゲートと乗り物のドアを同時に開閉するような場合にも適用でき、汎用性を有する。
【符号の説明】
【0057】
1,22 操作盤装置
2 操作盤装置本体
3 操作盤装置本体の上部の傾斜面
4 操作盤装置本体の下部の傾斜面
5,23 下部の傾斜面に配置される開スイッチ
6,24 上部の傾斜面に配置される閉スイッチ
7 操作盤装置本体の中央部に配置される強制開スイッチ
8 強制開スイッチの操作部の表示部
9,21 可動式ホーム柵(ドア開状態)
10 線路
11 線路のホーム
25 操作棒
25A 操作棒の下端部
25B 操作棒の上端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作盤装置本体の上部及び下部に傾斜面が形成され、該下部の傾斜面に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチと、該上部の傾斜面に凸形状となるように配置される前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチと、前記操作盤装置本体の中央部に配置される非常時に前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチとを備え、操作方向が上下逆向きであることを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項2】
請求項1記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置を前記可動式ホーム柵の鉄道線路側の側面に出っ張るように配置するようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部は視覚により認識し難い表示部を有することを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項4】
請求項3記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には触知により認識される形状が施されることを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項5】
請求項4記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には点状のマーカを付すようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記閉スイッチをガード付きの平型スイッチとしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項7】
請求項1から5記載の何れか一項記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記可動式ホーム柵のドアと前記車両ドアとを連動して開閉させるようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記車両ドアの開閉動作と連動させることなく、前記可動式ホーム柵のドアの開閉動作のみを行うようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項9】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動することなく個別に動作するように構成したことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項10】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動して動作するようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項11】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記可動式ホーム柵から出っ張る操作盤装置の前記傾斜面により操作盤本体の位置を確認し、上部の操作ボタンに辿り着き、手探りで操作盤装置を操作可能にしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項12】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチと前記開スイッチの組み合わせで、前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項1】
操作盤装置本体の上部及び下部に傾斜面が形成され、該下部の傾斜面に凸形状となるように配置される可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開けるための開スイッチと、該上部の傾斜面に凸形状となるように配置される前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを閉じるための閉スイッチと、前記操作盤装置本体の中央部に配置される非常時に前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くための強制開スイッチとを備え、操作方向が上下逆向きであることを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項2】
請求項1記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置を前記可動式ホーム柵の鉄道線路側の側面に出っ張るように配置するようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部は視覚により認識し難い表示部を有することを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項4】
請求項3記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には触知により認識される形状が施されることを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項5】
請求項4記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチの操作部には点状のマーカを付すようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記閉スイッチをガード付きの平型スイッチとしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項7】
請求項1から5記載の何れか一項記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記可動式ホーム柵のドアと前記車両ドアとを連動して開閉させるようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記操作盤装置により、前記車両ドアの開閉動作と連動させることなく、前記可動式ホーム柵のドアの開閉動作のみを行うようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項9】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動することなく個別に動作するように構成したことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項10】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記開スイッチの操作部材と前記閉スイッチの操作部材とは連動して動作するようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項11】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記可動式ホーム柵から出っ張る操作盤装置の前記傾斜面により操作盤本体の位置を確認し、上部の操作ボタンに辿り着き、手探りで操作盤装置を操作可能にしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【請求項12】
請求項1又は2記載の可動式ホーム柵の操作盤装置において、前記強制開スイッチと前記開スイッチの組み合わせで、前記可動式ホーム柵のドア及び/又は車両ドアを開くようにしたことを特徴とする可動式ホーム柵の操作盤装置。
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【図6】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−75563(P2013−75563A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215495(P2011−215495)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)
【Fターム(参考)】
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