説明

可動性部材を備えている拡張可能な外科手術用接近装置

拡張可能な接近装置は、可動性部材(7)によって接続された接近部(3)と拡張可能部(5)を有し、外科手術装置か診断装置を使って、または、指を使って、或いは、それらを使って、接近部が拡張可能部に相関的に並進させ、または、回転させ、或いは、並進させて回転させられるように図っている。接近部は断面が一定であってもよいし、拡張可能であってもよい。接近装置の中の通路(9)を通して挿入される各種器具が拡張可能部を拡張させる。拡張可能部を未拡張状態にしたままで、接近装置を外科手術部位に挿入してから、拡張可能部を拡張させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2005年3月4日出願の米国仮出願第60/659,050号の優先権を主張するものであり、この出願の全体的内容は、ここに援用することにより、本件の一部を成すものであるのは明らかである。
【0002】
本発明は体内の外科手術部位に接近するための装置に関するものであり、特に、可動性を向上させた拡張可能な接近装置に関連している。
【背景技術】
【0003】
カニューレを使用して、または、開創器を使用して、或いは、カニューレおよび開創器を使用して、患者体内の外科手術部位に接近用侵入口を医者に供与することは当該技術では周知である。このような装置は、観血を最小限に抑えた処置では特に有用であり、この場合、全処置は患者に設けられた1個以上の小さい切開部を通して実施される。観血を最小限に抑えた処置は、一般に、肉体への外傷の量を低減し、従って、術後の痛みを緩和するとともに回復時間を低減することができる。特に、カニューレ開創器を使って、または、開創器を使って、或いは、カニューレおよび開創器を使って、椎間板切除術、椎弓切除術、脊椎関節突起切除術、椎弓根ネジ固定術などの各種脊椎手術を実施することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、従来公知のカニューレには、直径が一定のカニューレと拡張式のカニューレがある。直径が一定のカニューレは、中空の管部材の直径が、その一方の端から他方の端まで、一定のままである形状を呈している。使用に際し、医者は外科手術処置の一部、または、その全体を実施するのに十分に大きい寸法のカニューレを選ぶのが一般的である。このように、患者の体組織を貫いて小さな切開部が設けられる。直径が一定のカニューレは、外科手術器具を動かしたり、外科部位を視認するのに限られた範囲しか医者に供与しない。
【0005】
拡張可能なカニューレは、その一端を外科部位の近位で張出させることにより肉体の内部の組織を伸ばすことができる。拡張可能なカニューレの他方端は大抵は肉体から外に突出しており、従って、外科手術器具を体内に挿入するときに通る固定直径の接近用侵入口を医者に供与する。拡張可能なカニューレは、外科手術器具を操作する空間をより広くして医者に供与すると同時に、医者が組織を貫いて小さい切開部を設けるだけで済むようにしている。更に、拡張可能なカニューレは外科部位の視界を広げることができる。
【0006】
更に、開創器は、外科手術器具を動かすのに十分な空間を医者に供与するのは元より、外科手術部位の視認性も高めはするが、皮膚から外科手術部位に至るまでの組織を伸ばす傾向があるために、一般に、拡張可能なカニューレよりも肉体に与える外傷が酷くなる。
【0007】
従って、外科手術器具を動かすことができる最大限の能力と外科手術部位を視認することができる最大限の能力を医者に供与すると同時に、肉体に対する外傷の量を最小限にする拡張可能な装置を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、接近部、拡張可能部、接近部と拡張可能部とを接続している可動性部材、および、接近部と拡張可能部とを通って延びている通路を備えている拡張可能な接近装置に関するものである。接近部は長手方向軸線、近位端、および、遠位端を備えている。接近具の近位端は患者体外に設置され、遠位端は患者体内に設置される。接近部は、外科手術器具や診断器具、または、外科手術装置や診断装置、或いは、それらを体内に挿入する時に通す侵入口を医者に供与することができる。一実施形態では、接近部は所定の一定断面積を有している。例えば、接近部は直径が一定の中空の管部材であって、円形、楕円形、正方形、矩形、三角形、それ例外の多角形などの形状を呈しているとよい。
【0009】
或る実施形態では、接近部は拡張可能である。例えば、接近部は、変形することができるように可撓性の素材(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、シート状金属など)から作成されているとよい。接近部は外科手術処置中は一時的に変形させることができるようになっていてもよいし(例えば、医者の指で、または、外科手術器具または診断器具などの医療装置によって)、或いは、例えば開創器などのような器具を使って変形状態のまま維持されるようにしてもよい。また別な実施形態では、接近部は多数部材片の集成体であって(すなわち、2個以上の部材片から形成されている)、剛性の素材から構成されており、多様な拡張を示しながら所望の位置で固定することができる。例えば、接近部は、収縮位置・未拡張位置と、完全に拡張した位置との間で段階的に移動して固定することができる。
【0010】
拡張可能部は接近部に動作可能に取付けられる。拡張可能部には長手方向軸線、第1(近位)端、および、第2(遠位)端が設けられている。拡張可能部の第1端は接近部の近位に置かれ、第2端は外科手術部位の近位に設置することができるようにするとよい。一実施形態では、拡張可能部は未拡張位置と拡張位置を呈することができるが、この場合、拡張可能部は、拡張位置にある場合には、その第2端の断面積は未拡張位置にある場合よりも大きくなる。外科手術器具や診断器具、または、外科手術装置や診断装置、或いは、それらは、拡張可能部を通過することにより、外科手術部位まで挿入することができるようになる。
【0011】
可動性部材は接近部と拡張可能部とを結びつけて、接近部が拡張可能部に対して多様な自由度を有することができるように図っている。例えば、接近部は拡張可能部に対して6種の自由度を示すことができ、すなわち、接近部はx軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つに沿って並進し、z軸を中心として(すなわち、接近部の長手方向軸線を中心として)回転し、接近部、または、拡張可能部、又は、その両方の長手方向軸線を横断する平面上の2本以上の軸線を中心として(例えば、x軸、y軸のうちの少なくとも1つを中心として)角度付けされる。z軸は、接近部、または、拡張可能部、又は、その両方の長手方向軸線と一線に整列していてもよい。操作者は並進、回転、および、角度付けを如何様にでも組合わせて、個別に、または、同時に実施することができる。外科手術器具・外科手術装置、または、診断器具・診断装置、或いは、それらを使って、医者は、拡張可能部の内外へ接近部を移動させることができ、または、拡張可能部に相対的に左右前後に接近部を移動させることができ、或いは、拡張可能部の内外へ接近部を移動させ、かつ、拡張可能部に相対的に左右前後に接近部を移動させることができる。接近部をz軸沿いに並進させることで、医者は外科手術処置中に患者の解剖学的構造を手で触診する(すなわち、感触で、または、触感で試す)ことができるようになる。拡張可能部が拡張位置まで移動すると可動性部材は拡張し、拡張可能部が未拡張位置まで移動すると可動性部材は収縮する。
【0012】
接近部が拡張可能部に相対的に移動することができる範囲で、可動性部材は接近部と拡張可能部を何らかの態様で接続することができる。一実施形態では、可動性部材は接近部と拡張可能部の周囲に設置することができる。特に、可動性部材は接近部の1点の周囲で、かつ、拡張可能部の第1端の1点の周囲に設置される。また別な実施形態では、可動性部材は拡張可能部の第2端に向けて伸張し、可動性部材は拡張可能部の大半を被覆することができるように図っている。
【0013】
拡張可能部の拡張時に、可動性部材は拡張可能部を被覆するよう伸展する。このような構造は、拡張可能部が2個以上の部材片から作成されている場合には有益となる。部材片が互いから分離するように移動すると、部材片と部材片の間に開口部が設けられることで、拡張可能な接近装置の周囲の組織は拡張可能な接近装置の通路に進入することができるようになる。例えば、拡張可能部が1枚以上の刃を備えている実施形態では、刃にはエッジが設けられており、未拡張位置では互いに隣接し合う刃のエッジが互いに近位に来るが、拡張位置では互いに隣接し合う刃のエッジは互いから或る距離を置くことで、刃と刃の間に開口部を設ける。可動性部材は障壁として作用し、拡張可能部の開口部を通って組織(例えば、部分的に切除されていない組織)が通路に進入するのを阻止することができる。
【0014】
使用にあたり、拡張可能部が未拡張位置に置かれている間は、拡張可能な接近装置は体内に挿入することができる。拡張可能部は拡張位置まで移動させることができ、1個以上の外科手術器具や診断器具、または、外科手術装置や診断装置、或いは、それらを通路に挿入して外科手術処置を実施することができる。次に、拡張可能部に相対的に接近部を並進させること、拡張可能部に相対的に接近部を回転させること、および、拡張可能部に相対的に接近部を角度付けすることのうち、少なくとも1つの作業を医者が実施することができる。一実施形態では、接近部の長手方向軸線と拡張可能部の長手方向軸線を互いに相対的に回転させること、接近部の長手方向軸線と拡張可能部の長手方向軸線を互いに相対的に並進させること、接近部の長手方向軸線と拡張可能部の長手方向軸線を互いに相対的に角度付けすることのうち、少なくとも1つの作業を医者が実施することができる。角度付けは、多軸角度付け(例えば、x平面とy平面上のいずれかの軸線を中心とした角度付け)であってもよい。外科手術が完了した後で、拡張可能部は未拡張位置に移動させられて、体内から取り出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は添付の図面を参照することによりより良好な理解が得られるが、これら図面では、同一参照番号は同一構成部材を示している。図面は、単独で採用される機能部または他の機能部と組合わせて採用される機能部を例示している具体例にすぎず、当然のことながら本発明は例示の実施形態に制限されるものではない。
【0016】
一般に、図1に例示されているように、本発明の拡張可能な接近装置1は、接近部3、拡張可能部5、接近部3と拡張可能部5とを接続する可動性部材7、および、接近部3と拡張可能部5の中を通って延びており、外科手術器具や診断器具、または、外科手術装置や診断装置、或いは、それらを受け入れる管路・通路9を備えている。しかしながら、本発明の多様な構成要素に対して施すことが出来る多数の修正および代用を当業者なら気づくものと理解するべきである。
【0017】
拡張可能な接近装置1は、脊椎に外科手術処置を実施するための観血を最小限に抑えた進入システムとして使用される。例えば、拡張可能な接近装置1は、前から、横から、前・横から、後から、腰椎、胸椎、頚椎の各々の領域に進入するために使用される。拡張可能な接近装置1を使って、例えば、椎弓根ネジ固定術、椎間板切除術、脊椎関節突起切除術、椎弓切除術などを実施することができるうえに、椎弓根ネジ、安定化ロッド、それ以外の各種装置の設置などの1段階、または、多段階の後減圧・癒合の処置も同様に実施することができる。更に、拡張可能な接近装置1はまた、非癒合性減圧術や運動能力保存外科手術処置を目的として使用することもできる。拡張可能な接近装置1は脊椎外科手術処置と関連づけて使用されるものとして、ここに記載されているが、どのような外科手術処置を実施するのであれ、或いは、別途、体外から生体の内部に接近することができるようにするために(例えば、解剖学的構造を観察する目的で)上記以外の肉体のいずれの部分においても装置1を使用することができることを、当業者なら容易に認識するだろう。従って、位置、または、外科手術処置、或いは、その両方は、どのような態様であれそれに限定するものと解釈するべきではない。更に、1個以上の拡張可能な接近装置1を1種類の処置を実施するのに使うこともできることを当業者なら認識するだろう。例えば、左右両側処置において、第2の拡張可能な接近装置1を第2の拡張可能な接近装置1と平行して使用してもよい。
【0018】
接近部3と拡張可能部5は、当該技術で周知の生体適合性素材から作成され、いかなる態様であれそれに限定するとの意図はない。例えば、接近部3と拡張可能部5は、スチール、チタニウム、アルミニウム、合金、複合物、可塑材、ラバー、重合体などから作成される。当業者なら容易に認識することであるが、接近部3と拡張可能部5は同一素材から作成されていてもよいし、それぞれ異なる素材から作成されていてもよく、また、放射線透過性でも放射線不透過性でもよい。接近部3、拡張可能部5のうちの少なくとも一方が、放射線透過性である実施形態では、放射線不透過性マーカー(図示せず)が、接近部3、拡張可能部5のうちの少なくとも一方に組み込まれるか、または、これら部材に装着されるとよい。放射線不透過性マーカーは、医者が、接近部3、拡張可能部5のうちの少なくとも一方を患者の解剖学的構造と相対的に適切に整列させるのを支援することができる。拡張可能部5に関して、このような構造はX線で解剖学的構造の標識を視認する能力を医者に供与すると同時に、体内における拡張可能部5の視覚的表示(すなわち、放射線不透過性マーカー)を医者に供与する。接近部3と拡張可能部5を作成するために使用される素材を決定する際には、多様な要因が考えられるが、その具体例として、殺菌耐性、重量、耐久性、汚れにくさ、装置1を把持するにあたり、特にラテックス手袋を使った場合の握り易さ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
接近部3は、皮膚に形成された切開部を通る外科手術用進入路を供与している。接近部3は直径が一定の中空の管(断面積が一定)であって、近位端3aと遠位端3b(図2A)が設けられており、近位端3aは体外の皮膚切開部SIより上位に設置され、遠位端3bは体内の皮膚切開部SIより下位に設置されるとよい。接近部3は当該技術で従来公知の形状のどのようなものであってもよく、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形、三角形、多角形などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、接近部3は実質的に剛性の管(例えば、ステンレス管)であって、肉厚が約0.4 mmから約0.6 mmの間であり、外側寸法Dが約10 mmから約50 mmの間であるとよいが、後者の寸法は約20 mmから約40 mmの間であるのが好ましい。当業者なら容易に認識することであるが、接近部3の寸法Dの大きさは実施される外科手術処置の因子となることがある。しかしながら、接近部3は拡張可能である場合もある点に注目するべきである。
【0020】
例えば、接近部3は寸法Dに沿って可変的に拡張可能である(すなわち、接近部3の寸法は可変であり、または、断面積を場所ごとに異ならせることができる)。一実施形態では、接近部3は可撓性素材から作成されており(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、シート状金属など)、寸法Dを引き伸ばすように変形させることができる。接近部3は外科手術処置中に一時的に変形させることができるようにしてもよいし(例えば、医者の指で、または、外科手術器具または診断器具を使って)、または、例えば開創器などのような器具を使って変形状態に維持されるようにしてもよい。
【0021】
また別な実施形態では、例えば図1Aに例示されているように、接近部3は多数部材片の集成体であり、剛性素材から構成されているとともに、所望の位置で可変拡張して固定される。例えば、接近部3はその第1部分20が第2部分22に作動自在に接続されており、第2部分にハンドル24が設けられているようにするとよい。或る実施形態では、接近部3はハンドル24を備えていない。ハンドル24は接近部3を手術台に取付けるために利用することができ、結果的には、拡張可能な接近装置を手術台に取付けることができる。特に、台座(例えば、剛性ロッドまたは可撓性ロッド)(図示せず)の一方端はハンドル24に取付けられ、台座の他方端は手術台に取付けられるようにするとよい。更に、外科手術装置(例えば、軽量の神経根開創器)を接近部3の上部32に装着することができる。
【0022】
接近部3の第1部分20は1個以上のラチェット機構26がそこに取付けられる。ラチェット機構26は第2部分の受け入れ部28に受け入れられ、受け入れ部28の内側を滑動することができるようになっている。図1Aに例示されているように、ロック機構30はラチェット機構26と作動可能に関与しているようにしてもよい。ロック機構30はロック固定位置とロック解除位置の間で移動させることができるが、ロック固定位置(例えば、ハンドル24から離隔する位置)ではラチェット機構26を移動させ、したがって、第1部分20を第2部分22に相関的に固定することができ、ロック解除位置(例えば、ハンドル24に向かう位置)ではラチェット機構26を移動させ、したがって、第1部分20を第2部分22と相関的に移動させることができる。
【0023】
接近部3は拡張位置と収縮・未拡張位置との間で漸増的に移動させることができる。一実施形態では、接近部3の収縮・未拡張寸法Dは約30 mmであり、これは約2 mmずつ漸増しながら約44 mmの拡張寸法Dまで拡張させることができる。接近部3は漸増移動しながら適所に固定され、その範囲で外科手術処置が実施される。図1Aの実施形態では、これらの増分はラチェット機構26の歯と歯34の間に間隔を設定する因子となる。
【0024】
拡張可能な接近部3は、外科手術部位を視認することができるし、または、外科手術部位に接近する支援を行うことができるし、或いは、外科手術部位を視認して、外科手術部位に接近する支援を行うことができる。更に、拡張可能な接近部3は、他の方法では直径が一定の接近部3に挿入することができないかもしれない恐れ、または、直径が一定の接近部3に嵌合させることができない恐れ、或いは、それらの両方の恐れがある外科手術器具または診断器具(例えば、特大寸法または寸法が一定でない外科手術器具または診断器具)を使用することができるようにする。更に、拡張可能な接近部3により医者はより複雑な外科手術処置(3段階癒合や4段階癒合など)を実施することができるようになる。拡張可能な接近部3は、観血を最小限に抑えた処置を実施中の医者の学習曲線および安逸レベルに適合させることもできる。例えば、観血を最小限に抑えた技術の経験が浅い医者は、接近部3を拡張位置にした状態で(例えば、接近部3を拡張させて、寸法Dを約44 mmにすることができるようにして)前半の各種処置を実施することができる。後半の各種処置では、医者は、観血を最小限に押さえた技術の経験を積んでから、または、自己の習熟度が高まると、或いは、観血を最小限に押さえた技術の経験を積み、かつ、自己の習熟度が高まると、内部が処置を実施する場となる接近部の寸法Dを減じることができるようになる。
【0025】
再度、図1を参照すると、拡張可能部5は接近部3と作動可能に関係付けられるとともに、未拡張位置と拡張位置の間で移動させることができるのであれば、どのような構造であってもよいが、そのような構造の具体例として、後述するような実施形態や、米国特許第6,312,443号に例示されているものが挙げられる。拡張可能部5には第1端11と第2端13が設けられており、第1端11は接近部3の遠位端3b(図2A)より近位に設置され、第2端13は接近部3の遠位端3bより遠位で尚且つ外科手術作業面SWLに隣接している位置に設置される。更に、拡張可能部5の第1端11の付近における断面積、または、拡張可能部5の第2端の付近における断面積、或いは、その両方は、拡張可能部5が未拡張位置から拡張位置に移動させられるにつれて、寸法を増していくことができる。このようにして、拡張可能部5の中の通路9の寸法は作業面積9aを大きくするように増大させることができる。更に、拡張可能部5の第1端11の付近における断面積、または、拡張可能部5の第2端の付近における断面積、或いは、その両方は、拡張可能部5が拡張位置から未拡張位置に移動させられるにつれて、寸法を低減していくことができる。1個以上の器具(図示せず)を拡張可能部と併用して、拡張可能部を拡張位置と未拡張位置の間で移動させることができるようにすることもできることを、当業者なら認識するだろう。
【0026】
接近部3と同様に、拡張可能部5は、拡張位置、または、未拡張位置、或いは、その両方で、どのような形状であってもよいが、例えば、円形、円錐形、楕円形、正方形、矩形、三角形、多角形などがある。一実施形態では、拡張可能部5は、未拡張位置にある時には、接近部3と同じ形状を呈する。拡張可能部5は、未拡張位置にある場合、その外側寸法が、例えば、約10 mmと約50 mmの間であり、約20 mmと約40 mmの間であるのが好ましい。拡張可能部5は、拡張位置にある場合、その第1端11の寸法は、例えば、約10 mmと約100 mmの間であり、約40 mmと約60 mmの間であるのが好ましい。更に、拡張可能部5は、拡張位置にある場合、その第2端13の大きいほうの寸法Mは、例えば、約30 mmから約100 mmの間であり、約80 mmから約90 mmの間であるのが好ましい。拡張可能部5の寸法は、接近部3の寸法Dよりも大きくなるか、等しくなるか、または、小さくなるように設定することができる点に注目するべきである。当業者なら容易に認識することであるが、拡張可能部5の第1端11の付近の領域の寸法、または、拡張可能部5の第2端13の付近の領域の寸法、或いは、その両方は、実施されている外科手術処置の因子となる。
【0027】
更に、拡張可能部5は適所にロック固定することができるような構成になっているとよい。一実施形態では、拡張可能部5は完全に拡張した位置まで開かされてから適所で固定される。別な実施形態では、拡張可能部5は可変的に拡張され、収縮・未拡張位置と完全に拡張した位置との間の1箇所以上の中間位置でロック固定される。例えば、拡張可能部5の第2端13の未拡張寸法Mが約30 mmで拡張寸法Mが約85 mmである実施形態では、拡張可能部5は、第2端13の寸法が約45 mm、55 mm、65 mm、75 mm、85 mmのうちの少なくとも1つとなる各種増分で適所にロック固定される。或るロック位置から次のロック位置までの増分にどのような値でも採用できることを、当業者なら認識するだろう。例えば、拡張可能部5は、拡張位置と未拡張位置の間で移動した際の、ロック固定される増分として、5 mmきざみ、10 mmきざみ、15 mmきざみ、20 mmきざみなどが挙げられる。或る実施形態では、拡張可能部は場所ごとに複数の異なる増分で動かすこともできる(例えば、第2端13の寸法Mは45 mm、50 mm、60 mm、および、85 mmでロック固定される)。可変的に拡張する拡張可能部5により、実施される外科手術処置と患者の解剖学的構造に基づいて、医者が組織の開創寸法を最小限に留めることができるようにすることで、外科手術処置中の組織外傷を最小限に抑えることができる。
【0028】
接近部3および拡張可能部5は可動性部材7によって相互接続されるが、この可動性部材は拡張可能部5に対して接近部3を緩く圧迫することで、接近部3が拡張可能部5に相関的に移動することができるようにする。一実施形態では、可動性部材7はエラストマー材の薄いシートである。可動性部材7は1個以上の構成要素から作成されており、また、拡張可能部5に相対的な所定位置(すなわち、静止位置)に接近部3を保持することができる。図1に最も良好に例示されているように、可動性部材7は接近部3と拡張可能部5の両方の周囲に設置される。例えば、可動性部材7は接近部3の一部(例えば、遠位端3b)の周囲で尚且つ拡張可能部5の第1端11の周囲に設置され、拡張可能部5の第2端13に向けて下方向に延在している。これに代わる例として、可動性部材7は、接近部3の内側に設置されていてもよいし、または、拡張可能部5の内側に設置されていてもよいし、或いは、接近部3の内側で、拡張可能部5の内側に設置されていてもよい。例えば、可動性部材7は接近部3の周囲で、且つ、拡張可能5の内側に設置されてもよいし、または、拡張可能5の周囲で、且つ、接近部の内側に設置されてもよい。しかしながら、接近部3が拡張可能部5に相対的に移動することができる限り、可動性部材7はどのような態様で接近部3と拡張可能部5とを接続するものであってもよい。更に、可動性部材7は、接近部3に接続され、または、拡張可能部5に接続され、或いは、その両方に接続されるが、その接続手段は当該技術で従来公知であれば如何なる方法であってもよく、例えば、粘着、粘着性接着、クリップ留め、ピン留め、重畳成形/重畳接着などが挙げられる。
【0029】
可動性部材7は、外科手術器具または診断器具、外科手術装置、医者の指(1本または複数本)のうちの少なくとも1つによって伸ばされる能力、または、操作される能力、或いは、その両方の能力を備えているため、接近部3は拡張可能部5に相関的に多数種類の自由度を呈することができる。例えば、可動性部材7により接近部3は拡張可能部5に関して3次元領域を移動することができる。すなわち、可動性部材7により接近部3は拡張可能部5に関しては横方向に、拡張可能部5に関しては縦方向に、拡張可能部5に関しては内外に移動することができるようになる。可動性部材7により接近部3が自由度6を示すことができるようにするのがより好ましいが、6種類の自由度の例として、x軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つに沿った(例えば、上、下、左、右、前、後の各方向への)並進、z軸を中心とした(すなわち、接近部3の長手方向軸線を中心とする)回転、または、接近部3、または、拡張可能部5、或いは、それらの長手方向軸線を横断する平面内の2本以上の軸線を中心とした(例えば、x平面、または、y平面のうちの少なくとも1ついずれかの軸線を中心とした)角度付け、或るは、それらの両方が挙げられる。操作者は拡張可能部5に相関的に2本以上の軸線を中心として同時に接近部3を角度付けすることができる(すなわち、多軸角度付け)。更に、操作者は、並進、回転、および、角度付けを組合せたものを同時に実施することができる。
【0030】
接近部3は静止位置から並進して、例えば、y軸およびz軸に沿って約±15 mmから約±30 mmの範囲を移動し、接近部3がy軸とz軸に沿って並進することのできる総合距離が約30 mmから約60 mmの範囲になるようにすることができる。接近部3は静止位置から並進して、例えば、x軸に沿って約±10 mmから約±20 mmの範囲を移動し、接近部3がx軸に沿って並進することのできる総合距離が約20 mmから約40 mmの範囲になるようにすることができる。更に、接近部3は静止位置を起点に回転して、例えば、z軸を中心として約±30度から約±90度の範囲を移動し、接近部3がz軸を中心として回転することのできる総合角度が約60度から約180度の範囲になるようにすることができる。接近部3はまた静止位置を起点として回転し、例えば、x軸を中心として約±45度から約±60度の範囲を移動し、接近部3がx軸を中心として回転することのできる総合角度が約90度から約120度の範囲になるようにすることができる。更に、接近部3は静止位置を起点に回転し、例えば、y軸を中心として約±20度から約±45度の範囲を移動し、接近部3がy軸を中心として回転することのできる総合角度が約40度から約90度の範囲になるようにすることができる。接近部3は、個別に、または、同時に、x軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つを中心として回転され、角度付けされ、更に、これらの軸に沿って並進させられる。しかしながら、接近部3の回転、角度付け、および、並進の何らかの組合せが構想されることを、当業者なら認識するだろう。
【0031】
x軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つに沿った並進、z軸を中心とした回転、または、x軸、y軸のうちの少なくとも1つを中心とした角度付けのうちの少なくとも1つにより、医者は外科手術器具または診断器具、または、外科手術装置または診断装置、或いは、それらを操作することができるようになり、例えば、椎弓根ネジや癒合装置などを挿入する際に、適切な軌跡を達成することができるようになる。z軸沿いの並進によって、外科手術処置中に解剖学的構造を手で触診することができるようになる(すなわち、医者が接近部3を自分の1本または複数本の指で拡張可能部5に相関的に上下動させることができるようになる)点に注目するべきである。
【0032】
可動性部材7は、組織が通路9に侵入するのを阻止するような寸法および形状に設定されている。すなわち、可動性部材7は、拡張可能部の手術領域9aの一部にでも柔組織が侵入するのを阻むのが好ましい。可動性部材7は当該技術で従来公知の素材から作成されるが、具体例として、可塑材、ラバー、金属、複合材などが挙げられるが、これらに限定されない。可動性部材7は放射線透過性であってもよいし、放射線不透過性であってもよく、また、透明または不透明である素材から作成される。可動性部材7を作成するために使用される素材を決める際には多様な因子が考えられるが、その具体例としては、素材が伸ばされた後で元の寸法に戻る能力、殺菌処理に耐える能力、重量、耐久性、汚れにくさ、装置1を把持するにあたり、特に、外科手術中に広く使用されるラテックス手袋を使った場合の握り易さなどが挙げられるが、これらに限定されない。可動性部材7は可撓性に富むエラストマー材(天然または合成)または重合体から作成される。例えば、可動性部材7はシリコーンゴムまたはウレタンから作成される。可動性部材に適した素材を選択する際には多様な因子が考えられるが、例えば、生体適合性、拡張可能部5に相対的に、接近部3の並進、回転の少なくとも1つを行うことができるようにする能力などがある。
【0033】
接近部3と可動性部材7は、多数の互いに異なる寸法で異なる形状の拡張可能部のうちのいずれか1個に係合するような寸法と形状に設定された1個の予備組立てユニットとして供与される。接近部3と可動性部材7は使い捨てできる組立体として製造されるが、拡張可能部5は再利用可能な組立体として製造される。一実施形態では、拡張可能な接近装置1は全体が使い捨てできる装置として製造される。これに代わる例として、拡張可能な接近装置1は全体が再利用可能な装置として製造され、この場合、構成要素は、各々が滅菌処理することができる。
【0034】
図2Aから図2Cは、拡張可能な接近装置100の具体的な実施形態を例示している。拡張可能な接近装置100は接近部3、拡張可能部105、および、可動性部材7を備えている。前述のように、可動性部材7は接近部3を拡張可能部105と相互接続し、接近部3が拡張可能部105おり、拡張可能部105を閉じた形状に維持するのを助ける。
【0035】
図3Aから図3Cに例示されているように、拡張可能部105は第1部材102と第2部材104を備えており、これら部材は旋回点Hで旋回自在に接続される。図示のように、第1部材102は第1の刃106と第1のハンドル部108を備えている。同様に、第2部材104は第2の刃110と第2のハンドル部112を備えている。第1の刃106と第2の刃110は湾曲しており(例えば、U字型や半円形など)、長さLが、例えば、約25 mmから約70 mmの間であるが、約40 mmと約50 mmの間であるのが好ましい。刃106と刃110はどのような形状であってもよい(例えば、真直ぐ)ことを、当業者なら認識するだろう。更に、当業者なら容易に分かることであるが、長さLは、装置100を使って外科手術処置を実施する場合の体内の位置の因子である。図3Aおよび図3Bで最もよく分かるように、拡張可能部105は、未拡張位置にある場合は、その外径が、例えば、約10 mmから約50 mmの間であるとよいが、約20 mmから約40 mmの間であるのが好ましい。
【0036】
使用にあたり、拡張可能な接近装置100の拡張可能部105は、患者の組織に設けられた切開部を通して患者の体内に挿入することができる。拡張可能部105は未拡張位置で患者に挿入することができるようにするのが好ましい。その後、医者がハンドル部108、112を絞ることにより、刃106、110を互いから離れる方向に移動させ、拡張可能部105が拡張位置に来るようにする。拡張可能部105は可変ロック固定機構114を備えており、この機構が第1ハンドル部108と第2ハンドル部112とを接続して、刃106と刃110が互いに相関的に運動し、選択された増分で固定されるようにする。
【0037】
図3Cで最もよく分かるが、拡張可能部105は、拡張位置にある場合は、その上位寸法UDが、例えば、約10 mmから約100 mmの間であるとよいが、約40 mmから約60 mmの間であるのが好ましい。拡張可能部105は下位寸法が、例えば、約30 mmから約100 mmの間であるとよいが、約80 mmから約90 mmの間であるのが好ましい。このような構成により、外科手術作業平面SWLに接近できるようになる。当業者なら容易に分かることであるが、上位寸法UD、下位寸法LD、或いは」、その両方は、実施される外科手術処置の因子である。
【0038】
図3Aで最もよく分かるが、第1ハンドル部108には上位ハンドル部108aが、第2ハンドル部112には上位ハンドル部112aがそれぞれ設けられており、上位ハンドル部108aは下位ハンドル部108bに、上位ハンドル部112aは下位ハンドル部112bにそれぞれ着脱自在に取付けられている。上位ハンドル部108a、112aが下位ハンドル部108b、112bにそれぞれ接続される態様は当該技術で従来公知であればどのようなものでもよく、例えば、ボルト、ネジ、クリップなどがあるが、これらに限定されない。下位ハンドル部108b、112bはピンを備えており、このピンはそれぞれの下位ハンドル部の端部から延びて、上位ハンドル部108a、112aに形成されている孔と組になって嵌合するようになっている。これに代わる例として、上位ハンドル部108a、112aはピンを組み込んでおり、下位ハンドル部108b、112bが穿孔を組入れているようにしてもよい。使用にあたり、拡張可能な接近装置100が体内に挿入完了して拡張状態になってしまえば、着脱自在なハンドルにより上位ハンドル部108a、112aを下位ハンドル部108b、112bからそれぞれ取外すことができるようにするとよい。このように、上位ハンドル部108a、112aは、拡張可能な接近装置100の中で外科手術処置を医者が実施するのを妨げることがない。処置が完了した後で、上位ハンドル部108a、112aはそれぞれに下位ハンドル部108b、112bに再度取付けることができるため、拡張可能部105を収縮させて未拡張位置に戻し、体外へ取り出すことができるようになっている。
【0039】
図4Aは、拡張可能部のまた別な具体的な実施形態、すなわち、拡張可能部205を例示している。図示のように、拡張可能部205は第1の刃202、第2の刃204、および、第3の刃206を備えている。刃202、204、206は湾曲していてもよいし(例えば、U字型や半円形など)、または、真直ぐでもよい。刃202、刃204、刃206のうちの少なくとも1つは、柔組組織の侵入に対する改良された障壁を供与する。第2の刃204と第3の刃206は第1の刃202に旋回自在に接続される。図4Aに例示されているように、第2の刃204と第3の刃206は独立した旋回点Pで第1の刃202に旋回自在に接続されているが、これら旋回点の軸線は互いに対して平行な軸線または或る角度を成している軸線であってもよい(例えば、直角、斜角など)(すなわち、これら軸線は互いに交差している)。旋回点Pの軸線が互いに平行である実施形態では、第2の刃204と第3の刃206を開かせて互いから離散させると、第1の刃202は静止状態に保たれる。旋回点Pの軸線が互いに角度を成している実施形態では、第2の刃204と第3の刃206が開いて離れると、第1の刃202は第2の刃204および第3の刃206から離れる方向に移動することができる。これに代わる例として、第2の刃204と第3の刃206は1個の旋回点で第1の刃202に旋回自在に接続される。使用にあたり、1個以上の器具(図示せず)が手術領域9aに挿入され、未拡張位置と拡張位置の間で拡張可能部205を移動させるために使用される。当業者なら容易に分かることだが、拡張可能部205が備えている刃の個数は何枚でもよい。
【0040】
例えば、図4Bは、拡張可能な接近装置200aが4枚の刃を備えているのを例示している。図示のように、拡張可能な接近装置200aは接近部207と拡張可能部205aを備えている。可動性部材(図示せず)は接近部207と拡張可能部205aとを相互接続し、接近部207がx軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つを中心として自由に回転し、それらの軸を中心として自由に角度付けすることができ、または、それらの軸に沿って自由に並進することができ、或いは、その両方を行うことができるようにしている。接近部207には張出し部207aが設けられており、この張出し部は表面積を増やして可動性部材と係合することができるようにするとともに、接近部207が拡張可能部205aに相対的に移動させられる場合に、可動性部材を移動させるのを支援することができる。
【0041】
拡張可能部205aは第1の刃210、第2の刃212、第3の刃214、および、第4の刃216を備えている。刃210、刃212、刃214、刃216のうちの少なくとも1つは、柔組織が侵入するのに対する改良された障壁を設けている。第1の刃210と第2の刃212は同じ構造にすることができる(例えば、同じ寸法、同じ形状、同じ配置など)。更に、第3の刃214と第4の刃216が同じ構造にすることができる。第3の刃214と第4の刃216は第1の刃219と第2の刃212の各々に旋回自在に接続される。詳細に説明すると、第3の刃214は旋回点218で第1の刃210に旋回自在に接続され、旋回点220で第2の刃212に旋回自在に接続される。更に、第4の刃216は旋回点222で第1の刃210に旋回自在に接続され、別な旋回点(図示せず)で第2の刃212に接続されている。旋回点218、222は、互いに平行であるか、または、互いに関して或る角度付けされているか(例えば、直角、斜角など)(すなわち、軸線は互いに交差している)、いずれかである軸線を有している。同様に、旋回点220と第2の刃212の旋回点(図示せず)は、互いに平行であるか、または、互いに関して或る角度付けされているか(例えば、直角、斜角など)(すなわち、軸線は互いに交差している)、いずれかである軸線を有している。旋回点の軸線が互いに平行である実施形態では、第3の刃214および第4の刃216が開いて互いから離散すると、第1の刃210、第2の刃212のうちの少なくとも1つは、静止状態に保たれる。旋回点の軸線が互いに関して或る角度付けをされる実施形態では、第3の刃214と第4の刃216が開いて離れると、第1の刃210と第2の刃212は互いから離れる方向に移動することができる。このような構成では、第1の刃210の遠位端210aと第2の刃212の遠位端212aはそれぞれ、互いから離れる方向に移動し、第3の刃214の遠位端214aと第4の刃216の遠位端216aはそれぞれ、互いから離れる方向に移動する。
【0042】
第1の刃210と第2の刃212が離散する方向に移動すると、または、第3の刃214と第4の刃216が離散する方向に移動すると、或いは、第1の刃210と第2の刃212が離散する方向に移動し、かつ第3の刃214と第4の刃216が離散する方向に移動すると、手術領域9aの寸法は拡大される。使用にあたり、1個以上の器具(図示せず)が通路9を通して挿入されてから手術領域9aに進入させられ、未拡張位置と拡張位置の間で拡張可能部205aを移動させるために使用される。
【0043】
図4Bに例示されているように、ハンドル部材250は接近部207に取付けられる。ハンドル部材250は別個の部材片であってもよいし、または、接近部207と一体に形成されていてもよい(ハンドル部材250と接近部207は、例えば、図1Aに例示されているように、単体部材である)。更に、ハンドル部材250を使って接近部207を手術台に接続し、手術中に拡張可能な接近装置200aが患者の肉体に関して適所に保持されるようにしてもよい。ハンドル部材250はリング252と、このリング252から張出している突縁254とを備えている。リング252は接近部207に接続されるか、その周囲に設置され、台座(図示せず)(例えば、剛性ロッドまたは可撓性ロッドなど)は突縁254に取付けられて、ハンドル部材250を手術台に固定することができるように図っている。拡張可能な接近装置を手術台に接続するのに、ハンドル部材250は拡張可能な接近装置の実施形態のいずれのものと併用されてもよい。更に、ハンドル部材250の寸法と形状は、外科手術器具または診断器具(例えば、軽量の神経根開創器など)をそこに装着することができるように設定されている。
【0044】
図5は、拡張可能な接近装置の代替の実施形態、すなわち、拡張可能な接近装置300を例示している。図示のように、拡張可能な接近装置300は接近部3、拡張可能部305、および、可動性部材7を備えており、可動性部材は、前述のように、接近部3を拡張可能部305に接続して、接近部3が拡張可能部305に関して自由に移動することができるようにしている。装置300には、その中を通って延びる通路9が更に設けられている。
【0045】
図6Aに例示されているように、拡張可能部305は第1部材302と第2部材304を備えており、これらは同じ構成であってもよい。第1部材302と第2部材304は可撓性に富み、例えば、これらは可撓性の生体適合性重合体(ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレンなど)から、または、1枚の薄いシート金属片から作成されて、第1部材302と第2部材304の輪郭を自由に合わせることができるようにするとよい。図6Aおよび図6Bに最もうまく例示されているが、第1部材302は受け入れ部310とフラップ306を、第2部材304は受け入れ部310aとフラップ306aを備えており、フラップは配備用通路308、308aを定めている。第1部材302と第2部材304の寸法と形状は、第1部材302のフラップ306が第2部材304の受け入れ部310aに挿入されるように設定されているとよい。同様に、第2部材304のフラップ306aは第1部材302の受け入れ部310に挿入される。フラップ306、306aは複数の歯312が形成されており、受け入れ部310a、310とそれぞれに組になって噛合して、使用時には、受け入れ部310、310aが配備用通路308a、308に沿ってそれぞれに移動させることができるようになっているとともに、配備用通路の長尺部に沿って選択的に固定することができるようになっている。配備用通路308、308aは湾曲しており、最適な配備運動学に備えている。このような構成により、拡張可能部305が拡張位置と未拡張位置の間で移動すると、第1部材302と第2部材304は互いに相関的に並進(滑動)および回転することができる。使用時には、1個以上の器具が通路9に挿入されて、拡張可能部305を拡張させることができ、または、拡張可能部305を収縮させることができ、または、拡張可能部305を拡張させて収縮させることができる。
【0046】
図7は、拡張可能部305が未拡張状態にあって、第1部材302および第2部材304の可撓性の側面が中央の管状の幾何学的構造から離れる方向に延びているのを例示している。第1部材302と第2部材304の可撓性の側面は自らを包み込むように設定され、更に、可動性部材7により実質的に管状の幾何学的形状に保たれる。拡張可能部305は未拡張位置まで収縮し、その外側寸法が接近部3の外側寸法Dと同じ程度になるようにすることができる。拡張可能部305は、図5および図6Aに最もうまく例示されているように、拡張位置にある場合は、張出して楕円形状を呈する。拡張可能部305は、拡張位置にある時は、その大きいほうの寸法Mが少なくとも約85 mmになるようにするとよい。寸法Mの大きさは、主として、部位と実施される外科手術処置に基づいて定めるとよい。
【0047】
図8Aは、本発明の拡張可能な接近装置のまた別な実施形態を例示している。図示のように、拡張可能な接近装置400は接近部3、拡張可能部405、および、接近部3と拡張可能部405を接続して接近部3が拡張可能部405に関して自由に移動することができるようにした可動性部材7を備えている。拡張可能な接近装置400には、その中を延びる通路9も設けられている。
【0048】
当業者なら容易に認識することであるが、拡張可能部405の構造は、自らの上に折畳まれることで(例えば、拡張可能部405が平坦になったり、円筒状になったりするように)収縮して未拡張位置に至る構造ならどのようなものでもよい。例えば、装置400の一実施形態では、拡張可能部405は1個以上の「一体ヒンジ(蝶番)」を有している。このような構成では、拡張可能部405は生体適合性素材からなる単一部材片から構成されており、この中に1個以上のヒンジ407が形成され、成形され、または、切り込まれている。拡張可能部405は当該技術で従来公知の何らかの素材から作成されていればよいが、例えば、生体適合性で可撓性に富む重合体(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレンなど)が挙げられる。ヒンジ407は厚みが小さくされた部分が素材中に形成されたものでもよく、従って、可撓性に富んでいる。ヒンジ407はバネとして作用することもあり、このようなバネ作用により、拡張可能部405は撓むことができるうえに、拡張位置に向けて偏倚することもできる。「一体ヒンジ」配置で、別個のヒンジ部材片によって2個の素材部材片が一緒に接合される必要を排除することもできる。しかしながら、拡張可能部405の別な実施形態には1個以上の別個のヒンジが設けられて、2個以上の素材部材片を接合することができることに注目するべきである。更に、「一体ヒンジ」配置により、拡張可能部405は拡張および収縮しながらも、拡張可能部405に開口、空隙、または、孔を設けることがない。
【0049】
拡張可能部405は第1壁部409、第2壁部411、第3壁部412を有している。同じ一組の壁部(図示せず)が拡張可能部450の残余の部分を形成し、ヒンジ407によって第2壁部411および第3壁部412に接続されている。ヒンジ407は第1壁部409と第2壁部411と第3壁部412の隣接するいずれか2つの間に配置されている。ヒンジ407は拡張可能部405の複数の異なる位置に設置されていることを、当業者なら認識するだろう。例えば、図8Bに例示されているように、ヒンジ407は、第1壁部414が第2壁部415と第3壁部416の間に位置決めされるように設置されてもよい。
【0050】
使用にあたり、拡張可能部405の形状は、図示していない管(例えば、カニューレ)の内側に嵌め込まれて、拡張可能な接近装置400が体内に挿入されるように設定される。拡張可能部405は自らの上に折畳まれて、外側の寸法または外径が、例えば、少なくとも30 mmになるようにしてもよい。拡張可能な接近装置400を体内に挿入するために、拡張可能部405、又は、接近部3、又は、その両方は、管の内側に設置されて、拡張可能部405が未拡張位置に来るようにするとよい。しかしながら、拡張可能部405を未拡張位置に維持することができる構造であれば、上記以外の如何なる構造を利用してもよいことが分かる。管および拡張可能部405が体内の外科手術部位の近位に設置されると、管は体内から引き出され、それにより、拡張可能部405を拡張位置へ移動させることができるようにする。外科手術処置は拡張した装置の中で実施される。
【0051】
拡張可能部405を体内から取り出すために、管は接近部3と拡張可能部405の上を伝って体内に挿入し直される。管が拡張可能部405の上を伝って移動するにつれて、拡張可能部405は未拡張位置に移動する。拡張可能部405が未拡張位置まで移動完了してしまうと、または、管の中に収められてしまうと、或いは、未拡張位置まで移動完了して管の中に収められてしまうと、管と拡張可能な接近装置400が体内から取り出される。また別な実施形態では、拡張可能部405は、体内への挿入を行うために、または、体内からの取出しを行うために、或いは、体内への挿入と、体内からの取出しの両方を行うために、平坦にされる。1個以上の器具を使って拡張可能部405を、拡張位置、または、未拡張位置、或いは、その両方の位置へ移動させることができることを、当業者なら認識するだろう。
【0052】
図9から図13は、拡張可能な接近装置のまた別な実施形態、すなわち、拡張可能な接近装置500を例示している。拡張可能な接近装置500は接近部3、拡張可能部505、および、可動性部材7を備えており、可動性部材は接近部3と拡張可能部505を接続して、接近部3が拡張可能部505に関して自由に移動することができるように図っている。拡張可能な接近装置505には、その中に延在する通路9も設けられている。
【0053】
拡張可能な接近装置500は、図9に最も良好に例示されている未拡張位置と図10および図11に最も良好に例示されている拡張位置との間を移動することができる。拡張可能部505が拡張すると、可動性部材7が伸びる。可動性部材7は、図10に例示されているように、拡張可能部505の大半の部分を被覆し、または、図11に例示されているように、拡張可能部505のわずかな部分を被覆する。可動性部材7の寸法は、作業領域9aに柔組織が侵入するのを制限する必要性で決まる。
【0054】
図12に例示されているように、拡張可能部505には第1部分510と第2部分520が設けられており、ここでは、拡張可能部505の第1部分510と第2部分520は1個以上のヒンジ部材によって相互接続されている。ヒンジ部材の寸法と形状は、拡張可能部が可動性部材7の荷重の元で、配備を行えるように設定されるとよいし、または、収縮を行えるように設定されるとよいし、或いは、配備して収縮を行えるように設定されるとよい。より詳細に説明すると、拡張可能部505に設けられている第1部分510と第2部分520は、2個以上のヒンジ514によって取付けられている。図12は4個のヒンジ514を有している実施形態を例示している。ヒンジ514は第1ヒンジ部材514aと第2ヒンジ部材514bを含み、これら両部材は旋回接続部516で互いに旋回自在に接続されているとともに、第1ヒンジ部材は第1部分510に、第2ヒンジ部材は第2部分520に旋回自在に接続されている。1個以上のヒンジ514は、例えば、第1ヒンジ部材514aと第2ヒンジ部材514bが互いに関して約180度、または、それ未満の角度αになるまで拡張可能部505を開くことにより、選択的に固定される。しかしながら、1個以上のヒンジ514を選択的に固定する上述以外の手段を構想してもよい点に注目するべきである。通路9を通して第1部分510と第2部分520の中間点に挿入することができる装置(図示せず)によって、ヒンジ514はロック固定されたりロック解除され、拡張可能部505は拡張されたり収縮されたりする。
【0055】
図13に例示された未拡張位置では、第1ヒンジ部材514a、514bは、第1部分510に形成されている窪み518の内側と第2部分520に形成されている窪み522の内側の第1部分と第2部分520の間に設置される。このようにして、拡張可能部505は未拡張位置では形状が管状であり、第1部分510と第2部分520は互いに関して実質的に同一平面上にくるようになる。更に、拡張可能部505は、未拡張位置にある場合に、寸法および形状が管(例えば、カニューレなど)の内側に嵌合するように設定することができるが、管の寸法または直径は、例えば、少なくとも約30 mmである。この管を使って、拡張可能な接近装置500を体内に挿入することができ、または、拡張可能な接近装置500を体内から取出すことができ、或いは、拡張可能な接近装置500を体内に挿入し、体内から取出すことができるが、これは、装置400を挿入及び取出しするための上述の方法に類似している。
【0056】
図14Aは、代替の拡張可能な接近装置600を例示している。図14Aに例示されているように、拡張可能な装置600は接近部3、拡張可能部605、および、可動性部材7を備えているが、可動性部材7は接近部3を拡張可能部605に相互接続し、接近部3が拡張可能部605に関して移動することができるようにしている(例えば、接近部3はx軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つに沿って並進し、これらの軸を中心として角度付けされることができ、または、これらの軸を中心として回転することができ、或いは、その両方を行うことができる)。拡張可能な接近装置600には、その中を延びて通路9が設けられている。
【0057】
拡張可能部605は第1部分610および第2部分620を有しており、この場合、拡張可能部605の第1部分610と第2部分620は1個以上のヒンジ部材によって相互接続されているとよい。例えば、第1部分610はその遠位端610aの近位で、第2部分620はその遠位端620aの近位で、ヒンジ614によって取付けられている。ヒンジ614は旋回点616で第1部分610に取付けられており、旋回点618で第2部分620に取付けられている。旋回点616、618は、第1部分610と第2部分620を回転させるための旋回点の機能を果たしている。第1部分610の近位端610bと第2部分620の近位端620bはそれぞれに接近部3に隣接して設置され、第1部分610と第2部分620が接近部3を押圧して載置されるように図っている。このような構成では、拡張可能部605は接近部3に対して半圧迫状態にすることができる。
【0058】
図14Bに例示されているような代替の実施形態では、接近部3と拡張可能部605は繋ぎ紐606によって取付けられている。一実施形態では、繋ぎ紐606はエラストマー帯であってもよい。可動性部材7と同様に、繋ぎ紐606により、接近部3はx軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つに沿って並進することができるようになり、これらの軸を中心として角度付けすることができるようになり、または、これらの軸を中心として回転することができるようになり、或いは、その両方を行うことができるようになる。更に、繋ぎ紐606は接近部3に対して拡張可能部605を半圧迫状態にすることができる。繋ぎ紐606は当該技術で従来公知の何らかの素材から作成され、例えば、可塑材、ラバー、金属、複合材などが挙げられるが、これらに限定されない。繋ぎ紐606は、第1部分610および第2部分620に接続することのできる保持部材607の中に設置される。繋ぎ紐606は第1部分610および第2部分620に力を及ぼすことができるような弾性に富み、これにより、第1部分610の近位端610bと第2部分620の近位端620bをそれぞれに接近部3と接触状態に保つことができるようにしている。拡張可能部605を接近部3に対して半圧迫状態にする上述以外の手段を構想してもよいことを、当業者なら認識するだろう。
【0059】
図14Aおよび図14Bの実施形態を利用すれば、接近部3をy軸に沿って並進させることで第1部分610が旋回点616を中心として回転し、第2部分620が旋回点618を中心として回転する結果となる(第1部分610と第2部分620は前後に揺動する)。旋回点616と旋回点618は外科手術作業面SWLに固定状態に維持され、それにより、作業領域9aを保つことができる。更に、第1部分610の近位端610bと第2部分620の近位端620bはそれぞれに接近部3と接触状態に留まりことができるとともに、接近部3に沿って滑動することもできる。
【0060】
外科手術処置を実施するために、医者は患者の体に切開部を設けるが、この切開部は、例えば、約10 mmから約50 mmの間であるとよいが、約20 mmから約40 mmの間であるのが好ましい。一実施形態では、一連の拡張器を切開部に挿入することにより、切開部は連続して拡張させることができる。その後で、最大の拡張器の上を伝ってカニューレを設置してから、拡張器を取出し、切開部にカニューレだけを残存させるとよい。その後、拡張可能な接近装置1、100、200a、300、400、500、600がカニューレを上を伝って設置され、または、カニューレの中に設置され、切開部を通して挿入されて外科手術部位に達する。拡張可能な装置1、100、200、200a、300、400、500、600が適所に達すると、カニューレが取出され、それにより、装置1、100、200、200a、300、400、500、600を体内に残存させることができる。
【0061】
これに代わる例として、装置1、100、200a、300、400、500、600を体内に挿入するのに十分なだけ切開部が拡張されてしまうと、最大の拡張器のみを切開部に残して、他の拡張器を取出すとよい。その後、装置1、100、200a、300、400、500、600が最大の拡張器の上を伝って挿入され、または、最大の拡張器の中を通して挿入される。このような実施形態では、カニューレは不必要である。装置1、100、200a、300、400、500、600が体内に設置された後で、最大の拡張器も取出される。また別な実施形態では、装置1、100、200a、300、400、500、600の通路9の内部に閉塞具が設置される。閉塞具と装置1、100、200a、300、400、500、600とが単体として体内に挿入されるとよい。この段階は、切開部を連続拡張しながら実施されることもあれば、切開部を連続拡張せずに実施されることもある。装置1、100、200a、300、400、500、600を体内に挿入した後で、閉塞具が取出され、装置1、100、200a、300、400、500、600だけを体内に残存させることができる。また別な実施形態では、装置1、100、200a、300、400、500、600は管(例えば、カニューレ)の中に設置されて、単体として体内に挿入される。
【0062】
拡張可能部5、105、205、205a、305、405、505、605は外科手術部位に隣接して設置される。その後、拡張可能部5、105、205、205a、305、405、505、605が拡張状態まで移動させられることにより、可動性部材7を伸展させることができる。次に、外科手術処置が通路9の中を通して実施され、接近部3はx軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つに沿って並進させられ、これらの軸を中心として、角度付けされ、または、これらの軸を中心として回転させられ、或いは、角度付けされて回転させられる。この処置が完了してから、拡張可能部5、105、205、205a、305、405、505、605は未拡張位置まで移動させられ、体内から取出される。
【0063】
前述の説明と図面は本発明の好ましい実施形態を表しているが、これらの実施形態に多様な追加、修正、代用を施すのに、添付の特許請求の範囲に規定されているような本発明の真髄および範囲から逸脱せずに行うことができるものと理解するべきである。特に、本発明は特殊な形態、特殊な構造、特殊な配置、特殊な比率で、上述以外の各種構成要素、各種素材、および、各種構成部品を使って、本発明の真髄すなわち不可欠な特徴から逸脱せずに具体化することができることが、当業者には明らかである。本発明は多数の構造修正、配置修正、比率修正、素材修正、構成部材修正を行ったうえで利用することができること、また、そうでなければ、特殊な環境と特殊な手術要件に特に適うように本発明を実施するにあたり、本発明の原理から逸脱せずに利用することができることを、当業者なら正しく評価するだろう。よって、本件に開示されている各種実施形態はあらゆる点で具体例にすぎず、制限するものではないと解釈されるべきであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示されており、前段までの説明に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の装置の具体的な実施形態が拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図1A】本発明の接近部の具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図2A】本発明の装置のまた別な具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図2B】図2Aの装置が拡張位置にあるのを例示した側面図である。
【図2C】図2Aの装置が拡張位置にあるのを例示した底面図である。
【図3A】図2Aの装置の拡張可能部の具体的な実施形態が未拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図3B】図3Aの拡張可能部が未拡張位置にあるのを例示した背面図である。
【図3C】図3Aの拡張可能部が拡張位置にあるのを例示した背面図である。
【図4A】本発明の装置の拡張可能部のまた別な具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図4B】本発明の装置のまた別な具体的な実施形態が拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図5】本発明の装置のまた別な具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図6A】図5の装置の拡張可能部の具体的な実施形態が拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図6B】図5の装置の拡張可能部の一部の具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図7】図6Aの拡張可能部の具体的な実施形態が未拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図8A】本発明の装置のまた別な具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図8B】図8Aの装置のまた別な具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図9】本発明の装置のまた別な具体的な実施形態が未拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図10】図9の装置が拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図11】図9の装置が代替の具体的な可動性部材を使って拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図12】図9から図11の装置の拡張可能部の具体的な実施形態が拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図13】図12の拡張可能部の具体的な実施形態が未拡張位置にあるのを例示した斜視図である。
【図14A】本発明の装置のまた別な具体的な実施形態を例示した斜視図である。
【図14B】図14の装置の代替の実施形態を例示した斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の外部から内部へ接近するための拡張可能な接近装置であって、前記装置は、
近位端、遠位端、および、近位端から遠位端まで長手方向軸線沿いに延びる実質的に中空の通路が設けられている接近部と、
拡張可能部とを備え、前記拡張可能部には、近位端、遠位端、および、近位端から遠位端まで長手方向軸線沿いに延びる実質的に中空の通路が設けられており、前記遠位端は外科手術部位の近位に設置することができ、未拡張位置と拡張位置を示す拡張可能部であって、拡張位置にある場合の拡張可能部の遠位端の断面積は未拡張位置にある場合の断面積よりも大きいように構成されており、
さらに、接近部と拡張可能部とを作動可能に接続する可動性部材を備え、前記可動性部材は、拡張可能部に相関的に接近部を並進させるか、回転させるか、いずれか一方の動作を行うことができるように構成されており、
接近部の通路が拡張可能部の通路と連絡状態になる、
ことを特徴とする、拡張可能な接近装置。
【請求項2】
前記拡張可能部が前記拡張位置まで移動すると、前記可動性部材の少なくとも一部が拡張し、拡張可能部が前記未拡張位置まで移動すると、可動性部材の少なくとも一部が収縮することを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項3】
前記接近部は所定の一定の断面積を有していることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項4】
前記接近部は拡張可能であることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項5】
前記接近部は変形可能であることを特徴とする、請求項4に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項6】
前記可動性部材は、可塑材、ラバー、エラストマー、重合体、金属、複合材などを含んでいるグループから選択される素材のうちの少なくとも1種類から作成されることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項7】
前記素材は、シリコーンラバー、ウレタンなどを含んでいるグループのうちの少なくとも1種類から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項8】
前記可動性部材は、前記拡張可能部に相対的に前記接近部を角度付けすることができることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項9】
前記接近部の前記両端部と前記拡張可能部の前記両端部は外辺部を呈しており、可動性部材はエラストマー材の薄いシートであって、拡張可能部の両端部の少なくとも一方と接近部の両端部の少なくとも一方の外辺部を包囲していることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項10】
前記拡張可能部は前記拡張位置と前記未拡張位置の間を漸増しながら移動させられることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項11】
前記拡張可能部は第1部材と第2部材を有しており、第1部材と第2部材は各々に受け入れ部とフラップが設けられており、第1部材のフラップは第2部材の受け入れ部に受け入れられ、第2部材のフラップは第1部材の受け入れ部に受け入れられることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項12】
前記第1部材と前記第2部材のうちの少なくとも一方の前記フラップには複数の歯が設けられていることを特徴とする、請求項11に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項13】
前記拡張可能部は少なくとも1個のヒンジを有していることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項14】
前記拡張可能部は第1部分と第2部分を有しており、第1部分と第2部分は1個以上のヒンジ部材によって相互接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項15】
前記可動性部材には近位端と遠位端が設けられており、可動性部材の近位端は前記接近部上の一位置で接続されており、可動性部材の遠位端は前記拡張可能部の前記近位端の付近で接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項16】
前記可動性部材には近位端と遠位端が設けられており、可動性部材の近位端は前記接近部上の一位置で接続されており、可動性部材の遠位端は前記拡張可能部の前記遠位端の付近で接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項17】
前記拡張可能部には複数の刃が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項18】
前記複数の刃のうちの少なくとも2枚の形状は湾曲していることを特徴とする、請求項17に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項19】
前記湾曲形状の刃は、未拡張位置にある場合は、前記拡張部の中を通る通路を実質的に包囲し、外形を画定していることを特徴とする、請求項18に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項20】
前記複数の刃は端縁を有しており、前記未拡張位置にある場合は、互いに隣接し合う刃の端縁が互いの付近に位置し、前記拡張位置にある場合は、互いに隣接し合う刃の少なくとも遠位端縁が互いから或る距離を隔てた位置にくることにより、両方の刃の間に開口部を設けることを特徴とする、請求項19に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項21】
前記可動性部材は前記互いに隣接し合う刃の両端縁の間で延びて、前記拡張可能部の前記通路の少なくとも一部を包囲し、外形を画定することを特徴とする、請求項20に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項22】
前記互いに隣接し合う刃は旋回点で接続されていることを特徴とする、請求項17に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項23】
前記接近部は前記拡張可能部に相対的に運動する多数の自由度を有していることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項24】
前記接近部は、前記接近部の前記通路に垂直な第1寸法を有しており、前記拡張可能部は、前記拡張可能部の前記遠位端において、前記拡張可能部の前記通路に垂直な第2寸法を有しており、拡張可能部が前記未拡張位置にある場合は、第1寸法は第2寸法と実質的に同じであることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項25】
前記拡張可能部が前記拡張位置にある場合は、前記第1寸法は前記第2寸法とは異なっていることを特徴とする、請求項24に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項26】
生体の外部から内部へ接近するための拡張可能な接近装置であって、前記装置は、
近位端および遠位端が設けられている接近部と、
拡張可能部とを備え、前記拡張可能部には、第1端、第2端、および、少なくとも1個の保持部材が設けられており、前記保持部材は拡張可能部の少なくとも一部と作動可能に関与しており、第2端は外科手術部位の付近に設置することができ、未拡張位置と拡張位置とを示す拡張可能部であって、その第2端は、拡張位置にある場合には、未拡張位置にある場合よりも断面積が大きくなるように構成されており、
さらに、少なくとも1個の保持部材に作動可能に接続された繋ぎ紐を備え、前記繋ぎ紐と少なくとも1個の保持部材とが拡張可能部に相関的に接近部を並進させるか、回転させるか、少なくとも一方の動作を行うことができるようにするように構成される、
ことを特徴とする、拡張可能な接近装置。
【請求項27】
前記拡張可能部には、第1部分と第2部分が設けられており、第1部分と第2部分は各々が拡張可能部の前記第1端の付近に保持部材を有しており、前記繋ぎ紐が第1部分の保持部材と第2部分の保持部材とに接続されていることを特徴とする、請求項26に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項28】
前記繋ぎ紐は、可塑材、ラバー、重合体、エラストマー、金属、複合材などを含んでいるグループから選択される素材のうちの少なくとも1種類から作成されることを特徴とする、請求項26に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項29】
前記繋ぎ紐はエラストマー帯であることを特徴とする、請求項26に記載の拡張可能な接近装置。
【請求項30】
肉体の外部から肉体内の或る内部部位に至る接近用進入口を設け、医療器具による接近を行えるようにする方法であって、前記方法は、
拡張可能な接近装置を供与する段階であって、前記装置が、
(i)第1の長手方向軸線を有している接近部と、
(ii)拡張可能部とを備え、前記拡張可能部は、第2の長手方向軸線、近位端、遠位端、未拡張位置、および、拡張位置を有しており、拡張位置にある場合には、未拡張位置にある場合よりも遠位端の断面積が大きくなるように構成され、
(iii)さらに、接近部と拡張可能部とを作動可能に接続する接続部材とを備えており、
さらに、前記方法は、
拡張可能部が未拡張位置にある間に接近装置の拡張可能部の少なくとも一部を体内に挿入する段階と、
拡張可能部の遠位端を操作して、接近するべき体内の内部部位まで進入させる段階と、
接近具と拡張可能部との間で延びる通路を形成する段階と、
少なくとも1個の医療器具を体内の内部部位まで延びている通路に挿入する段階と、
第1の長手方向軸線と第2の長手方向軸線のうちの一方を中心として回転させること、および、第1の長手方向軸線と第2の長手方向軸線を互いに相関的に並進させることのうち、少なくとも一方の作業を実施する段階とを含んでいる、
ことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記接近部を前記拡張可能部に相関的に角度付けする段階を更に含んでいることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記接近部を前記拡張可能部に相関的に並進させること、回転させること、および、角度付けすることのうち、少なくとも2種類の作業を同時に実施する段階を更に含んでいることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記接近部を拡張させる段階を更に含んでいることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記拡張可能部を拡張させる段階を更に含んでいることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
指および1個以上の外科手術器具または診断器具のうち少なくとも一方を使って前記接近部を移動させ、患者の解剖学的構造を触診する段階を更に含んでいることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
拡張可能部を移動させる前記段階は、前記拡張位置と前記未拡張位置との間で拡張可能部を漸増しながら移動させることを含んでいることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記拡張可能部が前記拡張位置にある場合は、前記通路は接近用空間を定め、前記方法は接近用空間の少なくとも一部に切除されていない組織が進入するのを阻止することを更に含んでいることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記拡張可能部に相関的に前記接近部を多軸的に角度付けする段階を更に含んでいることを特徴とする、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【公表番号】特表2008−531219(P2008−531219A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558278(P2007−558278)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/007662
【国際公開番号】WO2006/096532
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】