説明

可動部位置検出システム

【課題】異なる位置にもたらされる可動部の移動位置を、高精度に検出可能な可動部位置検出システムを提供する。
【解決手段】検出対象としての可動部の異なる移動位置を検出する検出手段を備え、この検出手段は、互いに対向配置した発光素子と受光素子と、これら発光素子と受光素子との間に配置して可動部に連動する遮光板とを備え、この遮光板には、可動部の移動位置に対応して異なる開口面積の透過開口部を連設すると共に、これら移動位置に対応する透過開口部間に、透過開口部とは異なる所定の開口面積の基準開口部を設けて、可動部と共に遮光板を透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる位置にもたらされる可動部の移動位置を、高精度に検出可能な可動部位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用コンビネーションスイッチのように、複数、多段に組合わせたスイッチから構成され、多数の機械的切換接点を有することから、多くは、構造が複雑、且つ部品点数も多い。そのために、接点部分の摩耗、接触不良などに、絶えず留意する必要がある。
そこで、このような機構的構造からくる不都合を解決するために、最近では、機械的接点を少なくし、無接点非接触型のコンビネーションスイッチが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示するコンビネーションスイッチでは、フォトセンサの前面に発光素子の光を遮る遮蔽板を取付け、レバーの動きに合わせて、遮蔽板が移動することにより、フォトセンサの値を読み取ることで、レバーの位置を検出するようにしている。
すなわち、レバー先端に配設された遮蔽板が、レバーの回動角度に応じた角度で回動することから、遮蔽板によって遮断される光量が多段階に変化し、これにより、フォトセンサからの出力が多段階に変化し、多値スイッチングがなされるとしている。
【0004】
一方、特許文献2では、導光板と遮蔽板で光の経路を変えることにより、複数設けられた光センサへの出力を切換え組合せにより、レバーの位置を検出するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−273492号公報
【特許文献2】特開平11−306925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、
(1)遮蔽板によって光量を変化させているため、検出位置を多数設けると、光量の変化が小さくなり、検出精度が低下する。すなわち、図6に示すように、検知幅が狭いと、ノイズの影響や、温度特性により精度が低下し、誤作動の要因となる。
(2)光検出素子の温度特性により、検出精度が変動し、検出位置を多数設けることができない。なお、光検出素子の温度特性を、発光側、受光側で揃えることは可能ではあるが、コストアップは避けられない。
さらに、特許文献2では、多数の受光素子を必要とする。
本発明は、以上のような課題を改善するために提案されたものであって、新たな遮光方法を採用することで、多数の検出位置が存在することによって、隣接する検出位置での遮光する光量の差が小さくなることに起因する検出精度の低下がなく、高精度に検出できるようにした、可動部位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、検出対象としての可動部の異なる移動位置を検出する検出手段を備え、この検出手段は、互いに対向配置した発光素子と受光素子と、これら発光素子と受光素子との間に配置して可動部に連動する遮光板とを備え、この遮光板には、可動部の移動位置に対応して異なる開口面積の透過開口部を連設すると共に、これら移動位置に対応する透過開口部間に、透過開口部とは異なる所定の開口面積の基準開口部を設けて、可動部と共に遮光板を透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させる構成としたことを特徴とする。
【0008】
これにより、可動部と共に遮光板を透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させることで、各基準開口部を基準とすることができ、各透過開口部において、対応する可動部の各移動位置を確実に捉えることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、検出対象としての可動部の異なる移動位置を検出する検出手段を備え、この検出手段は、互いに対向すると共に、可動部に連動するように配置した発光素子と受光素子と、これら発光素子と受光素子との間に配置した遮光板とを備え、この遮光板には、可動部の移動位置に対応して異なる開口面積の透過開口部を連設すると共に、これら移動位置に対応する透過開口部間に、透過開口部とは異なる所定の開口面積の基準開口部を設けて、可動部と共に発光素子と受光素子とを、透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させる構成としたことを特徴とする。
【0010】
これにより、可動部と共に発光素子と受光素子とを透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させることで、各基準開口部を基準とすることができ、各透過開口部において、対応する可動部の各移動位置を確実に捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る可動部位置検出システムについて、好適な実施形態を示し、添付の図面に基づき、説明する。
図1に、可動部位置検出システムにおける検出手段1を、模式的に示す。検出手段1は、検出対象としての可動部(図示省略)の異なる移動位置を検出するものである。
なお、可動部は、周知の節度機構を備えた、例えばコンビネーションスイッチの操作レバーや、多段的に位置決めすることで、それぞれ状態信号を出力し、動作制御に供する操作手段を想定している。
検出手段1は、互いに対向配置した発光素子2と受光素子3と、これら発光素子2と受光素子3との間に、可動部に連動する遮光板4を配置する構成としている。
そしてこの遮光板4には、可動部のそれぞれの位置に対応して透過光量が変動するように、開口面積の異なる透過開口部5を連設している。すなわち遮光板4には、可動部のそれぞれの位置(a,b,c,d,e,f,g,h,i,j)に開口面積の異なる矩形状の透過開口部5を連設している(図3参照)。
【0012】
互いに対向配置した発光素子2と受光素子3とは、発光素子2(LED2)から出射された光を、遮光板4の透過開口部5を透過させ、この透過した光を受光素子3(フォトトランジスタ3)で受けて、対応する検出電圧信号として出力する、周知のフォトセンサ回路PC(図2参照)を構成している。
そして、フォトセンサ回路PCで得られた検出電圧信号を、後述するように所定の信号処理を施して、図4に示すように、図3において示している遮光板4に形成した透過開口部5の位置(a,b,c,d,e,f,g,h,i,j)に対応して、出力電圧波形を得ている。
このことはすなわち、透過開口部5の開口面積を適切に設定すれば、透過光量を調節することができ、検出位置を特定する出力電圧が得られることを意味している。
ここでは、例えばaの位置では、出力電圧Vaが最大(透過光量が最大)、隣接するbの位置では、aの位置における出力電圧Vaに対して格段に異なる出力電圧Vbとなるようにしている。また、検出位置aと隣接する検出位置bとの間に、所定の開口面積の基準開口部Hoを設けて、所定の出力電圧Voが得られるようにしている。
また、以降の遮光板4に形成した透過開口部5の位置(c,d,e,f,g,h,i,j)においても、隣り合う位置における出力電圧が離散的となるように、且つそれぞれの検出位置間においても、所定の開口面積の基準開口部Hoを設けて、所定の出力電圧Voが得られるように設定している。
【0013】
そして、遮光板4は、節度機構を設けた可動部に、透過開口部5間の基準開口部Hoの位置で、節度的に停止/移動するように、位置決め連結している。
【0014】
次に、図5に本発明にかかる可動部位置検出システムの概略構成をブロック的に示す。
すなわち、この可動部位置検出システムでは、フォトセンサ回路PCで得られた、透過光量にかかる検出電圧信号に、信号処理(検出電圧のフィルタリング、電圧増幅or減衰、アナログデジタル変換)を行って得られた出力電圧Va〜Vjを基に、判定回路において後述する判定処理を行い、検出位置にかかる信号を出力する。なお、この検出位置にかかる出力信号の形態は、シリアル、アナログ、パラレル出力いずれもでもよい。
【0015】
判定回路において、具体的な構成の説明は省略するが、図4に示す出力電圧を基に、以下のようなステップで行うことが考えられる。
先ず、各検出位置における出力電圧Va〜Vjと、各検出位置間の基準開口部Hoにおける出力電圧Voとから、基準開口部Hoにおける出力電圧Voを基準として、出力電圧が高いか低いかで検出位置の判定と、それぞれの電圧値を判定基準として検出位置の特定が可能である。なお、図4に示すそれぞれの出力電圧は、フォトセンサ回路PCにおける受光素子であるフォトトランジスタ3に対する温度や使用環境の影響を考慮して、各出力電圧の判定値を調整するようにしている。
例えば、検出位置aで本来、出力電圧Vaが出力されるべきところ、環境により、例えばVcが出力されたとしても、可動部が停止した状態で出力電圧Vo´が得られることで、検出位置aであると見なす、検出電圧をVa´(=Vc)に補正するようにしている。
そして、出力値が高いから低い(例えば検出位置aから検出位置b)、あるいは出力値が低いから高い(例えば検出位置dから検出位置e)のような変化により、検出位置が一つ変化したと判定することが可能である。
【0016】
以上のような可動部位置検出システムにおいて、スイッチ操作によって可動部(操作レバー)が移動すると、遮光板4が連動する。遮光板4は、可動部に設けた節度機構により、透過開口部5間の基準開口部Hoの位置で、節度的に停止/移動する。
これにより、フォトセンサ回路PCにおける発光素子2から受光素子3に向かう光路中に遮光板4の検出位置aから検出位置eにかかる透過開口部5が、それぞれ基準開口部Hoを挟んでもたらされ、受光素子3には、その遮光板4の透過開口部5の位置に応じた、透過光が入射する。
すると、フォトセンサ回路PCにおいて、その透過光の光量に応じた検出電圧信号を出力することができる。
【0017】
フォトセンサ回路PCからの検出電圧信号は、可動部位置検出システムにおいて、信号処理(出力電圧のフィルタリング、電圧増幅or減衰、アナログデジタル変換)を行い、図4に示すように、透過光量にかかる出力電圧Va〜Vjが得られる。
そして、判定回路において、各検出位置における出力電圧Va〜Vjと、各検出位置間の基準開口部Hoにおける出力電圧Voとから、基準開口部Hoにおける出力電圧Voを基準として、出力電圧が高いか低いかで検出位置の判定と、それぞれの基準開口部Hoにおける出力電圧Voを判定基準として検出位置の特定が可能である。なお、図4に示すそれぞれの出力電圧は、フォトセンサ回路PCにおける受光素子であるフォトトランジスタ3に対する温度や使用環境の影響を考慮して、各出力電圧の判定値を調整することができる。
また判定回路では、出力値が高いから低い(例えば検出位置aから検出位置b)、あるいは出力値が低いから高い(例えば検出位置dから検出位置e)のような変化により、検出位置が一つ変化したと判定することが可能である。
【0018】
以上のように、本発明では、遮光板4には、可動部の移動位置に対応して、開口面積の異なる透過開口部5を連設し、その透過開口部5は、隣接する透過開口部5間で互いに開口面積を大きく異なるように形成したので、隣り合う検出位置であっても透過光量が離散的に変動するので、ノイズや、温度特性に左右されることなく、高精度な検出が可能である。
また、可動部と共に遮光板4は、透過開口部5間の基準開口部Hoで節度的に停止し、その基準開口部Hoでの検出電圧を基準として、特定位置であるとする検出電圧を補正することができるため、動作環境の如何によらず、誤動作を抑えることができる。
【0019】
以上、本発明にかかる可動部位置検出システムについて一例を挙げ、説明したが、本発明は、以下のように構成することもできる。
すなわち、遮光板4が、可動部に連動してフォトセンサ回路PCにおける発光素子2から受光素子3に向かう光路中に遮光板4が進退するのではなく、フォトセンサ回路PCにおける発光素子2および受光素子3側が可動部に連動させるようにしてもよい。
【0020】
本発明によれば、新たな遮光方法として、遮光板には、可動部の移動位置に対応して異なる開口面積の透過開口部を連設すると共に、これら移動位置に対応する透過開口部間に、透過開口部とは異なる所定の開口面積の基準開口部を設けて、可動部と共に遮光板を透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させる構成としたことにより、多数の検出位置が存在することによって、隣接する検出位置での遮光する光量の差が小さくなることに起因する検出精度の低下がなく、また、基準開口部での検出電圧を基準として、特定位置であるとみなす検出電圧を補正することができるため、動作環境の如何によらず、誤動作を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる可動部位置検出システムにおける検出手段の一例を示す模式的斜視図である。
【図2】図1に示す検出手段による検出信号を検出電圧信号として出力する回路図である。
【図3】図1に示す検出手段における受光素子と遮蔽板との配置関係を示した、模式的斜視図である。
【図4】可動部の検出位置とその検出位置に対応した出力電圧値の関係を示すグラフである。
【図5】本発明にかかる可動部位置検出システムの概略構成を示すブロック図である。
【図6】従来の検出方法によって、操作レバーの位置を検出する際の不都合を説明するための、操作レバーの検出位置と検出出力信号との関係の一例を示した、グラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 検出手段
2 発光素子
3 受光素子
4 遮光板
5 透過開口部
Ho 基準開口部
PC フォトセンサ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象としての可動部の異なる移動位置を検出する検出手段を備え、
この検出手段は、互いに対向配置した発光素子と受光素子と、これら発光素子と受光素子との間に配置して前記可動部に連動する遮光板とを備え、
この遮光板には、前記可動部の移動位置に対応して異なる開口面積の透過開口部を連設すると共に、
これら移動位置に対応する透過開口部間に、透過開口部とは異なる所定の開口面積の基準開口部を設けて、
前記可動部と共に前記遮光板を前記透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させる構成としたことを特徴とする可動部位置検出システム。
【請求項2】
検出対象としての可動部の異なる移動位置を検出する検出手段を備え、
この検出手段は、互いに対向すると共に、前記可動部に連動するように配置した発光素子と受光素子と、これら発光素子と受光素子との間に配置した遮光板とを備え、
この遮光板には、前記可動部の移動位置に対応して異なる開口面積の透過開口部を連設すると共に、
これら移動位置に対応する透過開口部間に、透過開口部とは異なる所定の開口面積の基準開口部を設けて、
前記可動部と共に前記発光素子と受光素子とを、前記透過開口部間の基準開口部の位置で節度的に停止/移動させる構成としたことを特徴とする可動部位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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