説明

可変ピッチアレイスポッタ

【課題】より効率よく、溶液を基板上にアレイ状に分注する。
【解決手段】複数の分注ヘッドが縦m個、横n個のm×nのアレイ(m、n≧1)を形成し、複数の分注ヘッドの縦方向と横方向の配列ピッチを変えることのできる機構を備え、この機構は、分注位置に対応する配列で孔を有する板と該配列に対して相似な配列で孔を有する板とを間隔をもって上下に配置し、該複数の分注ヘッドを該二枚の板の相似対称な位置関係にある孔を貫通することによって摺動自在に保持し、該二枚の板の間隔を狭めたり拡げたりすることにより、複数の分注ヘッドの相対的な傾斜角度を変えて、注出口のピッチを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体溶:液を複数の検体容器から分取し複数の分注位.置に同時にアレイ状に分注するピッチ可変の複数の分注ヘッドを備えた分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類のDNAやタンパク質を載せたアレイチップの開発では、スライドなどの基板等上の数センチ四方という領域にそれぞれの検体溶液をアレイ状に分注する必要がある。この目的で分注を行うために現在様々な自動分注装置が開発されている。この自動分注装置は、分注ヘッドとしてピンやピペットチップなどの注出部を備えた分注ヘッドを複数用いて、検体容器から検体溶液を分取し、基板上の所定の位.置にその溶液を分注し、その後注出部を洗浄もしくは廃棄して未使用の注出部に交換するという工程を自動で行うものである。検体容器として96ないし384ないし1536穴のマイクロタイタープレートが良く用いられている。これらマイクロタイタープレートは各穴が9mmないし4.5mmないし2.25mmの配列ピッチで並んでいる。一方、基板上への分注の場合、分注間隔が数十μmから数百μmであることが多い。そのためマイクロタイタープレートを始めとする検体容器から基板上へ分注する際には、何らかの方法で分注ヘッドの配列ピッチの変換を行う必要がある。
【0003】
従来の自動分注装置は、大別すると次の2つのグループに分けられる。一直線上に並んだ配列ピッチ可変の複数の分注ヘッドを有するグループとアレイ状に並んだ配列ピッチ不可変の複数の分注ヘッドを有するグループである。前者の場合には、分注ヘッドの注出部としてピペットチップやニードルを使用しており、分注ヘッドの配列ピッチの最小値は分注ヘッドの外形の大きさにより制約を受けるため、ピッチ可変機構は異なる配列ピッチのマイクロタイタープレートを始めとする検体容器間(特許文献1、2、3、4)での検体溶液の分取・分注での使用に限られており、それよりも狭いピッチでの分注は分注ヘッドをずらしながら行うことで対応している。基板上に直接分注する場合には1本の分注ヘッドを用いて1種類ずつ検体溶液を分注して対応しており、装置本来の性能を生かしきれていない。後者の場合には、分注ヘッドの注出部としてピンを使用しており、分注ヘッドの配列ピッチが可変ではないため、分注ヘッドの配列ピッチはマイクロタイタープレートのそれに合わせて作り込まれ、分取した検体溶液を単にピッチをずらしながら分注位置に分注することで対応している(特許文献5、6)。
【0004】
このように従来の自動分注装置は、検体溶液を検体容器から分取し基板上に直接分注する目的には設計されておらず、1枚の基板への分注に多くの時間が掛かり、また総分注数が多くなるに従って全分注位畳への分注を完了するまでに必要な時間が増加していくという問題がある。この問題は、複数の基板へ同時に分注して同じ分注配列の基板を複数作製する場合には、1枚当たりに掛かる時間は相対的に減少するため幾分解決されているかに見えるが、小ロットで基板を作製したい場合や頻繁に分注配列を変更したい場合などではメリットはなく、該問題が本質的に解決されていないことが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−318636号公報
【特許文献2】特表平10−48100号公報
【特許文献3】特開2003−315352号公報
【特許文献4】特開2005−91339号公報
【特許文献5】国際公開第95/35505号公報
【特許文献6】特表平10−503841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明は、複数種類の溶液を基板上に同時にアレイ状に分注することを、より効率的に実施することができる自動分注装畳を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動分注装畳は、複数の分注ヘッドをアレイ状に並べて複数種類の検体溶液を基板上に同時に直接分注できる機構を備えた自動分注装置であり、具体的には、溶液の分取時と分注時のピッチの異なる2種類の状態に対応した、分注ヘッド間のピッチを変えるための機構を有する特徴を持つものである。この機構によれば、複数種類の検体溶液を基板上に同時に直接分注することが可能となり、そのため、分注ヘッドの数を増やして同時分注数を増やすことで、総分注数が多くなったとしても1回の分取・分注操作で基板作製作業を完了することができる。同時に、総分注数増加に伴いハンドリング数が増加し分注量が減少することで生じる分注毎の再現性および信頼性の低下を、同時に一度にアレイ状に分注することで再現性および信頼性を高めることができる。また、分注間隔数十μmから数百μmに対応するため、分注ヘッドとして微細管を使用する。
【0008】
請求項1に記載の発明は、先端部に注出部を有する複数の分注ヘッドを有する分注装置で、複数の分注ヘッドが縦m個、横n個のm×n.のアレイ(m、n≧1)を形成し、複数の分注ヘッドの縦方向と横方向の配列ピッチを変えることのできる機構を装備するという構成を採っている。上記の構成では、複数の分注ヘッドがアレイを形成し、分取時と分注時で配列ピッチを変えることで、直接検体容器から基板上への分注を可能にする。
【0009】
他の発明は、請求項1に記載の発明であって、分注ヘッドを注出口のみならず分注ヘッド全体をキャピラリーやニードル、ガラス管などの微細管で構成することにより、複数の分注ヘッドの配列ピッチを微細管の外形にまで縮小できる機構を装備するという構成を採っている。この機構により、分注間隔数十μmから数百μmに対応することができる。
【0010】
他の発明は、複数の分注ヘッドの縦方向と横方向のピッチを変えることのできる機構が、複数の分注ヘッドを分注ヘッドに固定された支持具と分注ヘッド上を摺動自在に往復運動可能な支持具とによって保持し、対をなす二本のシャフトをX字状に中点で回転自在に連結した単位リンクを各シャフトの端部で回転自在にこれら二種の支持具に縦横交互に連結することでパンタグラフを構成している。そしてこの機構が、複数の分注ヘッドのピッチが調整されて、均等に配設された複数の検体容器の配列ピッチと一致すると共に、検体溶液の分注位置の配列ピッチに一致するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが複数の検体溶液を同時にアレイ状に分注するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが広いピッチの時には該分注ヘッド同士の距離が等間隔であり狭いピッチの時には分注ヘッド同士が隣接でき、両ピッチの場合で複数の分注ヘッドの注出部が同一平面状に保持することのできる機構であってよい。他の発明は、複数の分注ヘッドの縦方向と横方向のピッチを変えることのできる機構が、伸縮自在な軸でかつ軸に対して垂直に棒状のガイドロッドを備えた軸二本が縦横直交することで構成された該軸ないしガイドロッドによる格子の各格子点に、複数の分注ヘッドを上下方向に支持具により固定し、複数の分注ヘッドが支持具を通じてガイドロッド上を摺動自在に往復移動する機構を装備するという構成を採っている。そしてこの機構が、複数の分注ヘッドのピッチが調整されて、均等に配設された複数の検体容器の配列ピッチと一致すると共に、検体溶液の分注位置の配列ピッチに一致するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが複数の検体溶液を同時にアレイ状に分注するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが広いピッチの時には該分注ヘッド同士の距離が等間隔であり狭いピッチの時には分注ヘッド同士が隣接でき、両ピッチの場合で複数の分注ヘッドの注出部が同一平面状に保持することのできる機構であってよい。
【0011】
他の発明は、複数の分注ヘッドの縦方向と横方向のピッチを変えることのできる機構が、伸縮自在な軸でかつ軸に対して垂直に棒状のガイドロッドを備えた軸二本が縦横直交することで構成された該軸ないしガイドロッドによる格子の各格子点に、複数の分注ヘッドを上下方向に支持具により固定し、複数の分注ヘッドが支持具を通じてガイドロッド上を摺動自在に往復移動する機構を装備するという構成を採っている。そしてこの機構が、複数の分注ヘッドのピッチが調整されて、均等に配設された複数の検体容器の配列ピッチと一致すると共に、検体溶液の分注位置の配列ピッチに一致するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが複数の検体溶液を同時にアレイ状に分注するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが広いピッチの時には該分注ヘッド同士の距離が等間隔であり狭いピッチの時には分注ヘッド同士が隣接でき、両ピッチの場合で複数の分注ヘッドの注出部が同一平面状に保持することのできる機構であってよい。
【0012】
他の発明は、複数の分注ヘッドの縦方向と横方向のピッチを変えることのできる機構が、分注位置に対応する配列で孔を有する板とこの配列に対して相似な配列で孔を有する板とを適切な間隔で上下平行に配畳し、複数の分注ヘッドをこの二枚の板の相似対称な位置関係にある孔を貫通することによって摺動自在に保持し、この二枚の板の間隔を狭めたり拡げたりすることで複数の分注ヘッドのピッチを大小可変に規制し、ピッチ規制時に複数の分注ヘッドの注出口が同一平面状に来るように複数の分注ヘッドにストッパを装備するという構成を採っている。そしてこの機構が、複数の分注ヘッドのピッチが調整されて、均等に配設された複数の検体容器の配列ピッチと一致すると共に、検体溶液の分注位置の配列ピッチに一致するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが複数の検体溶液を同時にアレイ状に分注するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが広いピッチの時には該分注ヘッド同士の距離が等間隔であり狭いピッチの時には分注ヘッド同士が隣接でき、両ピッチの場合で複数の分注ヘッドの注出部が同一平面状に保持することのできる機構であってよい。
【0013】
他の発明は、複数の分注ヘッドの縦方向と横方向のピッチを変えることのできる機構が、一端が分注前のピッチで他端が分注後のピッチで並ぶ複数の開口溝を有する二枚の板を、この板上の各溝が縦横直交するように間隔をもって上下平行に配置し、複数の分注ヘッドをこの二枚の板の各溝が縦横直交することで構成された格了孔を貫通することによって溝上を摺動自在に保持し、この二枚の板を往復移動することで複数の分注ヘッドのピッチを大小可変にする機構を装備するという構成を採っている。そしてこの機構が、複数の分注ヘッドのピッチが調整されて、均等に配設された複数の検体容器の配列ピッチと一致すると共に、検体溶液の分注位畳の配列ピッチに一致するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが複数の検体溶液を同時にアレイ状に分注するようにする機構であってよく、複数の分注ヘッドが広いピッチの時には該分注ヘッド同士の距離が等間隔であり狭いピッチの時には分注ヘッド同士が隣接でき、両ピッチの場合で複数の分注ヘッドの注出部が同一平面状に保持することのできる機構であってよい。
【0014】
本発明では、上述した各構成によって前述した課題を解決しようとするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上に説明したような機構により、複数種類の溶液を基板上に同時に分注することが可能となり、そのため、分注ヘッドの数を増やして同時分注数を増やすことで、総分注数が多くなったとしても短時間で作業を完了することを可能とする。すなわち、一度の分注操作で、1枚のマイクロタイタープレート上の全ての溶液を基板上に分注することが可能となり、遺伝了診断等に使用されるDNAマイクロアレイ等や質量分析器等で使用されるターゲットプレートを素早くしかも簡便に作製することが可能となるため、これらの手法に基づく多検体同時検出の効率が大幅に向上するものと思われる。同時に、総分注数増加に伴いハンドリング数が増加し分注量が減少することで生じる分注毎の再現性および信頼性の低下を、同時に一度にアレイ状に分注することで再現性および信頼性を高めることができる。また本発明は、タンパク質や核酸などの劣化しやすい生体物質や細胞や大腸菌などの生きた材料を取り扱う場合など、短時間で分注を完了させたい場合非常に大きなメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例としての、パンタグラフ式の分注ヘッドピッチ可変装置の一例を示す図である。
【図2】同実施例の他の態様を示す図である。
【図3】本発明の第2実施例としての、伸縮ロッド式の分注ヘッドピッチ可変装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の第3実施例としての、孔開き板式の分注ヘッドピッチ可変装置の一例を示す図である。
【図5】同実施例の下板可動機構の説明図である。
【図6】同実施例においてストッパを用いた態様を示す図である。
【図7】本発明の第4実施例としての、上下の平板に設けたピッチが変化する縦横の溝を備えた分注ヘッドピッチ可変装畳の一例の概要を示す斜視図である。
【図8】同実施例のフレームを含めた断面図である。
【図9】同実施例のピッチ変更状態を示す平面図である。
【図10】同実施例に用いるガイドパイプの例を示す図である。
【図11】アレイスポットの配列形状を変換する形式を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、複数種類の溶液を基板上に同時にアレイ状に分注することを、より効率的に実施することができる自動分注装畳を提供する、という課題を、先端部に注出部を有する複数の分注ヘッドを有する分注装置であって、該複数の分注ヘッドが縦m個、横n個のm×nのアレイ(m、n≧1)を形成し、該複数の分注ヘッドの縦方向と横方向の配列ピッチを変えることのできる機構を備えることにより実現した。
【0018】
図1〜図10は本発明の各種実施の形態に関わる分注装置のピッチ可変機構の構成を示している。これらの実施形態は、一般に医療検査等に使用されるアレイチップ作製機の内部に装備され、アレイチップ作製機の内部で、一度に複数の検体をマイクロタイタープレート等の検体容器から分取し、一度に基板上に分注を行う自動分注装畳を示している。なお、これらの図においては、本発明の内容がわかりやすいように、細部を省略した概要図として示している。
【実施例1】
【0019】
図1には格了状に構成されたパンタグラフ格了を構成する単位リンクとしてのパンタグラフ1の各格子点2に、パンタグラフ格子に対して垂直にキャピラリー3が保持され、パンタグラフ格了の拡大縮小に伴い隣接するキャピラリー3の間隔が拡大縮小する機構を用いた例を示している。パンタグラフ1は、格了点となる支持具としての輪4、5とその輪同士を連結するシャフト6とより構成されており、交わった2本のシャフトの端に取り付けた上下2つの輪4、5によってキャピラリー3が支えられている。2本のシャフトは交点7で自由に回転するように固定している。図示実施例では下方の輪5はキャピラリー3の本体に固定して固定輪とされているが、上方の輪4はパンタグラフ1の伸縮に連係して自由にキャピラリー3の軸線方向上下に移動する可動輪としている。格子間隔の伸縮はパンタグラフ1上の任意の格了点における可動輪を上下に往復運動することで実現することができ、図示実施例では上方の輪4の1つを、固定ロッド8内で図示されないモータ等により上下動する可動ロッド9に固定した例を示している。
【0020】
このようなパンタグラフ1の機構を用いることにより、全てのキャピラリーは平行移動を行うことから全キャピラリー末端は常に同一平面上に保持されることになる。このパンタグラフ格子は図1(b)(c)のような平行四辺形、もしくは図2(a)(b)に示すような平行六辺形で構成され、好ましくは図示するように正方形もしくは正六角形で構成される。図2に示す正六角形のパンタグラフ格了ではキャピラリーは最密充填型に集散する。このような機構によって複数の分注ヘッドのピッチが調整されて、均等に配設された複数の検体容器の配列ピッチと一致すると共に、検体溶液の分注位置の配列ピッチに一致するようにすることができる。
【実施例2】
【0021】
図3に示す実施の形態においては、各段が次段の内部に収納される伸縮式の軸を支柱10に2本直交させて、これを上下2段設けてキャピラリーを支持した例を示している。軸11、12の各段にガイドロッドホルダ60を設置し、そこから図示されない対向する他軸に対して平行な細い棒からなるガイドロッド13を伸ばし、このようにしてできた軸11、12ないしガイドロッド13による格子の各格子点に設けたホルダ14にキャピラリー15が保持され、図3(b)(c)に示すように伸縮式の軸11、12の伸縮に伴い格了の大きさが拡大縮小することで、キャピラリー間隔が拡大縮小する機構としている。キャピラリー15を保持するホルダ14は、図3(d)に示すように、ガイドロッド13上を自由に移動できるような貫通孔16とキャピラリーを保持するための垂直孔17とが開けられている。ホルダ14上の各孔は、内部で交わらないように、上下左右にずらして設けるのが望ましい。ピッチを拡大縮小する機構は伸縮式の軸を用いる他に、図3(e)(f)に示すように、モータ62を取り付けたねじ付きの軸61とそのねじに噛み合うような雌ねじの付いたガイドロッドホルダ60との組み合わせを用いたり実施例1に示したパンタグラフを用いたりしても良い。一部のキャピラリーはホルダ14ではなくガイドロッドホルダ60上に設けても良い。また、各軸上の各段は等間隔であるのが望ましい。
【実施例3】
【0022】
図4に示す実施の形態においては、等間隔に孔21の開いた上板22と、その下方においてこの間隔を縦横等倍で拡大した間隔に孔23の開いた下板24を平行に位畳させ、板22及び板23上の対称な位畳関係にある孔同士を貫通するようにキャピラリー25を差し込み、下板24の上下によって下板24側より下方に突き出したキャピラリー25の末端の間隔が拡大縮小する機構を用いている。図示の例においては、支柱27で支持される上板22の孔21は、例えば孔21内において弾性体等により充分な力でキャピラリー25を保持し、且つ孔23内でキャピラリー25を揺動可能とする。
【0023】
下板24を上下動させるため、例えば図5に示すように下板24に固定したモータ28により、ギア29を回転駆動し、支柱27に設けたラックギア30と噛み合わせることにより、任意の位置に上下動させることができる。また、図4に示すようにマイクロアレイ32はX、Y、Z方向に移動可能に支持されているので、下板24の位置に応じたキャピラリー先端の高さ変化に応じて、マイクロアレイ32の高さ調整を行う。
【0024】
また、他の態様として図6に示すように、キャピラリー25に上ストッパ33及び下ストッパ34を固定し、上板22の下面の固定具に上端部を固定したばね35の下端部を上ストッパ33の固定具で固定してキャピラリー25を保持し、上ストッパ33と下ストッパ34との間で下板24が移動できるようにしても良い。それにより、例えば同図(a)に示すような、下板24が上ストッパ33に当接している位畳から、下板24を同図(b)に示すような下方の位置まで押し下げるとき、キャピラリー25が摩擦によって下方に押し下げられそうになると、ばね35によって所定の位置に戻す力が働き、多数のキャピラリー25の下端部が不揃いになることを防止し、平面状態を維持することができる。
【実施例4】
【0025】
図7に示す実施の形態においては、両端で分注前のピッチと分注後のピッチの間隔で配置された開口溝42の列が設けられている上板40、下板41を上下に直交させ、それにより得られる格子状に構成された孔にキャピラリー46を支持した例を示している。図7(a)(b)に示すように上板40、下板41の往復移動により格了の大きさが拡大縮小することで、キャピラリー間隔が拡大縮小する機構としている。キャピラリー46が分注前のピッチと分注後のピッチとの間を滑らかに移動するため、開口溝42は途中適当な傾斜や曲線区間を有する。
【0026】
図7に示す例においては、上板40及び下板41の移動方向に沿った側部にラックギア44を設け、このラックギア44に対して機体のフレーム等に設けたピニオンギア45をかみ合わせ、上板40用及び下板41用の両ピニオンギア45を連動してモータM等で駆動する。その際には例えば図8に示すように、両側のフレーム50の上部に間隔をもつて設けた上板ガイド51、52の間で上板40を摺動可能とし、フレーム50に固定したモータ43で駆動するピニオンギア45を上板40のラックギア44に噛み合わせる。同様に上板40と直角方向に摺動する下板41をフレームの下部に間隔をもつて設けた下板ガイド51、52の間に配置する。この下板41も上板40と同様に、図示されないフレームに設けたモータで駆動する。このような構成により、図8(a)(b)に示すように、分注前のピッチと分注後のピッチとすることができる。このときの分注前のピッチと分注後のピッチの格了の拡大縮小状態は、図9(a)(b)に更に示している。
【0027】
上記のような作動において、格子の拡大縮小時にキャピラリーがねじれるのを防ぐため、図10(a)(b)に示すように、キャピラリー46を保持するのに十分な強度と内径を持ち上板40と下板41を摺動自在に貫通するガイドパイプ47を設けてもよい。このガイドパイプにはフランジ48を設けることにより、より安定した作動が可能となる。
【0028】
なお、前記各実施例において、複数の分注ヘッドが縦m個、横n個のm×nのアレイ(m、n≧1)を形成したものであり、したがつてm或いはnのいずれかが1の場合を含み、縦或いは横が1列であっても、本発明を実施することができる。
【0029】
本発明は前記実施例のほか、更に種々の態様で実施することができる。各実施例において分取時と分注時との間で、等間隔に分注ヘッドのピッチを変更する例を示したが、これらは単に通常行われる態様として示したものである。その他の態様としては、分取時の配列が分注時の配列に対して、例えばピッチを変えずにアレイスポットの配列形状全体の回転のみが施された状態では、複数の分注ヘッドを支持する装畳または基板を搭載するステージの回転を行うことによって対応することができる。この回転によるアレイスポットの配列形状の変換は、分取時と分注時との間で分注ヘッドのピッチを変更する場合にも対応することができる。
【0030】
また、例えば図3に示す実施例において、直交する第1の軸11と第2の軸12の両方を同一ピッチに伸縮させる例を示したが、その他の態様として、両軸11、12のピッチを異ならせることで、分取時では平面視正方形であった場合でも、分注時は所定の長方形の配列形状に変換することもできる。なお、その際も前記と同様に、分取時と分注時との間で配列形状の回転を行うこともできる。
【0031】
更に図7〜10に示した実施例において、分取時の配列形状とそれを相似に縮小した分注時の配列形状との2つの状態に変換する例を示したが、上板40と下板41について、分取時及び分注時の配列の各々で各開口溝42の間隔を異ならせることで、任意の間隔を有する任意の長方形の配列形状に対応することができる。また、分取時の配列と分注時の配列とを次第に間隔を変更する傾斜した溝で連結して案内を行った例を示したが、この傾斜した溝の長さを充分にとることにより、この傾斜した溝の位置で分注を行うことによって、分注時の配列形状を任意の四辺形に変換できるなど、更に異なつた態様で実施することができる。
【0032】
本発明は上記のように種々の態様で実施することができるものであるが、これらの態様をまとめたものが図11であり、分注ヘッドの各配置点が形成するアレイスポットの配列形状を第1の位畳(分取時)と第2の位畳(分注時)とで変換する態様をまとめた。同図(a)は第1の位置(1)と第2の位置(2)とでは配列形状が合同であり、回転のみ行う例を示している。同図(b)は相似形に変換し、必要に応じて回転も行う。同図(c)は第1の位畳(1)からアフィン変換により、第2の位畳(2)における例えば図示するような各種の形状に変換する。(d)は第1の位置(1)から射影変換により第2の位置(2)における図示するような各種の形状に変換する。更に必要に応じて同図(e)に示すように、その他の態様として平面配畳から曲面配畳に変換する位相変換型、分注ヘッドそのものの配置点を任意に入れ換える置換変換型等が考えられ、本発明においても必要に応じてこれらの任意の態様を実施することもできる。
【0033】
上記のような配列形状の各種変i換の態様において、1つの軸方向(X軸)のみ駆動装置により移動させ、後は連動機構により全体を連動して変換する形式、2つの軸方向(X軸及びY軸)を各々駆動装置により移動させて変換する形式、更には3軸方向(X軸、Y軸、Z軸)の移動により変換する形式等があり、本発明においても前記のような各種実施例、各種態様において適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1パンタグラフ
2各格了点
3、15、25、46キャピラリー
4、5輪
6シャフト
7交点
8固定ロッド
9可動ロッド
10、27支柱
11、12、61軸
13ガイドロッド
14ホルダ
16貫通孔
17垂直孔
21、23孔
22、40上板
24、41下板
28モータ
29、45ギア
30、44ラックギア
32マイクロアレイ
33上ストッパ
34下ストッパ
35ばね
42開口溝
43、62モータ
47ガイドパイプ
48フランジ
50フレーム
51、52ガイド
60ガイドロッドホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に注出部を有する複数の分注ヘッドを有する分注装置であって、該複数の分注ヘッドが縦m個、横n個のm×nのアレイ(m、n≧1)を形成し、該複数の分注ヘッドの縦方向と横方向の配列ピッチを変えることのできる機構を備え、
前記機構は、分注位置に対応する配列で孔を有する板と該配列に対して相似な配列で孔を有する板とを間隔をもって上下に配置し、該複数の分注ヘッドを該二枚の板の相似対称な位置関係にある孔を貫通することによって摺動自在に保持し、該二枚の板の間隔を狭めたり拡げたりすることにより、前記複数の分注ヘッドの相対的な傾斜角度を変えて、前記注出口のピッチを変更する、ことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記分注ヘッドを注出口を含め全体を微細管で構成した、ことを特徴とする請求項1に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−43519(P2011−43519A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267350(P2010−267350)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2008−524754(P2008−524754)の分割
【原出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】