説明

可変型フラッシュライト用LED装置

【課題】カメラ付き携帯機器のレンズユニットとフラッシュライト用LEDユニットを被写体方向に連動して遠近に移動する簡易な機構を実現する。
【解決手段】一対の外直径が異なるレンズユニット駆動カム110とLEDユニット駆動カム109を同軸上に一体化してカム107を形成し、該カム107の回転角に対して前記レンズユニット駆動カム110とLEDユニット駆動カム109の上面に螺旋状の傾斜面109a、110aを夫々設け、該螺旋状の傾斜面109a、110aと前記レンズユニット111とLEDユニット103の短柄上の駆動部に形成した接触子105a、118aを当接して遠近方向の移動機構を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付き携帯機器例えば携帯電話に搭載され、被写体に対して照射光の指向性が可変できる可動型フラッシュライト用LED装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯機器例えば携帯電話の技術的発展は目を見張るものがあり、カメラが搭載された機種が多くなって来ている。焦点合わせやズーム機構の取り入れ、CCDやC−MOSによる数100万に達する画素数のセンサを有する製品が次々と市場に提供されている。そしてLEDを用いたフラッシュライト機構の配設された製品も現れており、機能はデジタルカメラのそれに近づいている。
【0003】
しかしながら、現状の製品では、オートフォーカス機構とフラッシュライト用LED装置を被写体に向けて連動させて、更に照射光に指向性を持たせることができて小型化薄型化が可能な構成は実現されていない。その問題の一つは通常フラッシュライト用のLED装置は、カメラモジュールの近傍のマザーボードに固定して配設されている場合が多く、このため遠近の被写体に対して,フラッシュライト用LEDは小型で低消費電力という長所はあるものの、キセノン管を用いたフラッシュライトと比べて光量がはるかに少ないだけではなく、そのままでは照射光に指向性がなく十分な撮像を得るのが困難ことである。このため、指向性を勘案した装置によってLEDによる光量不足を改善する取り組みが必要になっている。また、もう一つの問題は、例えばオートフォーカスが可能なレンズ機構と連動できる可動型のフラッシュライト用LED装置の構成が簡単な機構で提案されていないことである。
【0004】
従来の代表的なカメラ用のストロボのフラッシュライトをオンオフする実施例の一つとして特開2003−91036号公報(以下引用文献Aと称す)がある。引用文献Aは、レンズ鏡筒の駆動力によって、照明ユニットを突出あるいは収納する際の駆動源と、照明ユニットを搭載するカメラを小型化することを目的とするもので、その構成は明細書の段落(0037)以下、図1〜図7に基いて記載されている。「メインスイッチ10には、ストロボボックス4の底面部と対向する位置に、突出する突出部に永久磁石(第2の磁性体)10aが設けられている。この永久磁石の上側の磁極は、ストロボボックス4に設けられている永久磁石4eにおける内側の磁極と同じ(外部部分の磁極と異なる磁極、例えばS極)。」また、図6の(a)、(b)に基いて説明されているように、メインスイッチ10に設けられた永久磁石10aはストロボボックス4に設けられた永久磁石4eの磁極N、Sがメインスイッチ10aのスライドによって対向する磁極の極性が変わって吸引反撥する磁気的な力が生じることを利用してストロボケースのカメラ本体への収納、突出を測る構成である。
【0005】
また、公開特許公報・昭63−2030号公報には、明細書の第1図に基いて以下のような技術が開示されている。ズームモータ5による鏡筒ブロック1の遠近移動と、それに併せて鏡筒1上のギヤ15と係合するピニオン50を経由する歯車群51,52によってラック53bを鏡筒ブロック1を遠近に移動するカム板53に設けられたストロボカム溝57および変倍カム溝55によって変倍ファインダ光学8と可変ストロボ装置9を動かす。
【特許文献A】特開2003−91036号公報
【特許文献B】特開昭63−2030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の説明から明らかなように、文献Aの図1〜図7に示すような従来例は、そのまま携帯機器用に適用するには、以下のような欠点があった。(1)カメラ用であって携帯機器特に携帯電話用とするには形状が大き過ぎる。(2)遠近の被写体に合わせて照射装置の遠近移動がないために照射光の照射角度を可変にできない。(3)構造上、ますます小型化薄型化が要求される携帯電話に適応するのは困難。また、文献Bで開示されている技術は、ズーミングに連動して、ファインダ光学系およびストロボ光学系を変倍ファインダ光学系及び照射角可変のストロボ装置として構成したものである。文献Bによれば、ズーム機構とフラッシュ機構とを連動させてはいるが、その機構は歯車群、ラック、遠近移動カム、遠近移動カム溝等々から構成されており、複雑で形状が大きく到底携帯電話に収納できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の欠点を除去して、課題を解決するためになされた本発明の可動型フラッシュライト用LED装置の請求項1に係わる基本的な手段は、オートフォーカス機能を有するレンズユニットと照射光に指向性を与えるLEDユニットと、前記レンズユニットと前記LEDユニットを同時に被写体方向に遠近移動可能な機構を有するフラッシュライト用LED装置において、
一対の外直径が異なるレンズユニット駆動カムとLEDユニット駆動カムを同軸上に一体化してカムを形成し、該カムの回転角に対して前記レンズユニット駆動カムとLEDユニット駆動カムの上面に螺旋状の傾斜面を設け、該螺旋状の傾斜面と前記レンズユニットとLEDユニットの短柄状の駆動部に形成した接触子を当接して遠近方向の移動機構を構成したことを特徴とするものである。
【0008】
課題を解決するためになされた本発明の可動型フラッシュライト用LED装置の請求項2に係わる基本的な手段の前記LEDユニットは、前記LEDユニットは、回路基板に実装されたLEDチップを、該LEDチップから照射される反射面が放物面形状となるカップ状に形成されたLEDユニットの中央部に配設し、前記LEDユニットの駆動部に接触子とLEDユニット支持軸を設け、前記カム上の前記LED駆動カムの螺旋状の傾斜面と前記LEDユニットの短柄状の駆動部に形成した接触子を当接して前記カムの回転に応じて前記レンズユニットと連動して遠近方向に移動する機構を形成し、前記LEDユニットの反射光の指向性が可変することを特徴とするものである。
【0009】
課題を解決するためになされた本発明の可動型フラッシュライト用LED装置の請求項3に係わる基本的な手段の前記レンズユニットは、前記レンズユニットは、前記レンズユニットの短柄状の駆動部に接触子とレンズユニット支持軸を有し、前記カム上の前記レンズ駆動カムの螺旋状の傾斜面と前記レンズユニットの駆動部に形成した接触子を当接して前記カムの回転に応じて前記レンズユニットと連動して遠近方向に移動する機構を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
課題を解決するためになされた本発明の可動型フラッシュライト用LED装置の請求項4に係わる基本的な手段の前記カムは、該カムの同軸上に外直径が異なり、回転角に対して高さが直線的に変化する傾斜面を有する前記LED駆動カムと前記レンズ駆動カムとを厚み方向に積層して構成したしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、携帯機器とりわけ携帯電話に搭載された可動型フラッシュライト用LED装置を用いて、近接撮影時には指向性の少ない広がりのあるLEDフラッシュライトを、また望遠撮影時には指向性の鋭いLEDフラッシュライトが得られるので撮影の高品質化が図られることである。
【0012】
また、本発明の可動型フラッシュライト用LED装置によれば、簡単な機構でレンズユニットとLEDユニットを連動して被写体方向に遠近移動できるので優れたコスト/パフォーマンスが達成できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の基本的な構成のポイントは、一対の外直径が異なるレンズユニット駆動カムとLEDユニット駆動カムを同軸上に重ねて一体化してカムを形成して前記カムの回転角に対して螺旋状の傾斜面を設け、該螺旋状の傾斜面と前記レンズユニットとLEDユニットの短柄状の駆動部に形成した接触子を当接して遠近方向の移動機構を形成したことを特徴とするものである。
【実施例】
【0014】
以下では、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置付きカメラユニットの外観図である。図2本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置の構成概観図である。図3は本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置の各部品展開図である。図4は、図2の構成部品の作用説明図である。図5は、本発明の実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のレンズユニット主要構成図である。図6は、図5のAA線断面図である。本発明実施例の近接撮影時の主要断面図である。図7は、本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のLEDユニット斜視図である。図8は、本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のカムの斜視図である。図9は、本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のLEDユニット斜視図、図10は図9のBB線断面図でLEDユニットの反射光の説明図である。図11は本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置の反射光説明図である。
【0015】
図1、図2、図3、において、本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置付きカメラユニット100は、樹脂または金属材による凸型の方形状に形成されたカバー120内に、レンズユニット111、LEDユニット受台122に搭載されるLEDユニット103、カム107、LED101が実装された回路基板102と複数の接続線が形成されているFPC119を包含してイメージセンサユニット115上に積層組み立てられて構成される。カム107の回転に伴ってレンズユニット支持軸112方向に直進するレンズユニット111にはボス状のレンズユニット回転止め114が機械的に係合している。同様に、カム107の回転に伴ってLEDユニット支持軸106方向に直進するLEDユニット103にはボス状のLEDユニット回転止め113が機械的に係合している。
【0016】
図4、図5、図6、において、レンズユニット111は、オートフォーカスが可能な複数組のレンズからなり、レンズユニット111の外延部に設けた短柄状のレンズユニット駆動部118には、レンズユニット支持軸112と係合するレンズユニット支持軸孔118aが配設され、レンズユニット駆動部118の先端部にはレンズユニット接触子118bが形成されている。
【0017】
図4、図7、図9、図10及び図11において、LEDユニット103は、カップ状のLEDユニットは放物面状の反射面104を有し、LEDユニット103の外延部に設けた短柄状のLEDユニット駆動部105には、LEDユニット支持軸106と係合するLEDユニット支持軸孔105bが配設され、LEDユニット駆動部105の先端部にはLEDユニット接触子105aが形成されている。そして、前記回路基板102には、レンズユニット111のオートフォーカスを制御するIC回路が実装されている。(図は省略)
【0018】
図4、図8において、カム107は、外直径が異なるLEDユニット駆動カム109とレンズユニット駆動カム110とを厚み方向に積層して形成される。LEDユニット駆動カム109は、この場合レンズユニット駆動カムより外直径が小さく回転角に対して傾斜面の高さが直線的に変化するLEDユニット駆動カム傾斜面109aを有し、同様にレンズユニット駆動カム110は、この場合LEDユニット駆動カム109より外直径が大きく回転角に対して傾斜面の高さが直線的に変化するレンズユニット駆動カム傾斜面110aを有している。カム107がカム支持軸108に関して駆動モータ例えばステッピングモータ121(詳細図省略)を介して回転すると、レンズユニット111はレンズユニット支持軸112で支持されて軸方向に遠近移動し、同時にLEDユニット103はLEDユニット支持軸106で支持されて軸方向に遠近移動する。
【0019】
図9、図10において、近接した被写体を撮像するときは、カム107は軸方向に伸びる方向に回転して図10に示す回路基板102とLEDユニット103の間隙aは広がり、反射光116の広がり角度は大きくなる。
【0020】
図11において、望遠被写体を撮像するときは、カム107は軸方向に縮小する方向に回転して回路基板102とLEDユニット103の間隙bは狭まり反射光117の広がり角度は小さくなって照射光は大きくなる。この場合、LEDユニット103の湾曲したLEDユニット反射面104は、LEDユニット103の中央底部に配設されているLED101に対して放物面状の焦点となるように配設される。
【0021】
次に、本願発明の作動を説明する。カム107が係合しているモータによって指示された回転角度だけカム107が回転すると、LEDユニット駆動カム傾斜面109aと当接しているLEDユニット接触子105a、レンズユニット駆動カム傾斜面110aと当接しているレンズユニット接触子118aは夫々LEDユニット支持軸106、レンズユニット支持軸112に沿って、遠近に移動する。このとき、レンズユニット111をオートフォーカスに整合するように円起因で2焦点制御することができる。それに対応してLEDユニット103の被写体への照射光の指向性を2段階で変更する。このようにすることで、撮像の品質を向上させることが可能である。
【0022】
本願発明では、レンズユニット111は、遠近の2焦点のオートフォーカス機能をLEDの可動型フラッシュライトと連動させているが、更にズーム機能をレンズユニットの他に追加してもよいことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、携帯機器一般に使用が可能で携帯電話はもとより、PDAや複合AV機器等々に幅広い利用分野を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置付きカメラユニットの外観図である。
【図2】本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置の構成概観図である。
【図3】本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置の各部品展開図である。
【図4】図2の構成部品の作用説明図である。
【図5】本発明の実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のレンズユニット主要構成図である。
【図6】図5のAA線断面図で、本発明実施例の近接撮影時の主要断面図である。
【図7】本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のLEDユニット斜視図である。
【図8】本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のカムの斜視図である。
【図9】本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置のLEDユニット斜視図である。
【図10】図9のBB線断面図でLEDユニットの反射光の説明図である。
【図11】本発明実施例の可動型フラッシュライト用LED装置の反射光の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
100 可動型フラッシュライト用LED装置付きカメラユニット
101 LED
102 回路基板
103 LEDユニット
104 LEDユニット反射面
105 LEDユニット駆動部
105a LEDユニット接触子
105b LEDユニット支持軸孔
106 LEDユニット支持軸
107 カム
108 カム支持軸
109 LEDユニット駆動カム
109a LEDユニット駆動カム傾斜面
110 レンズユニット駆動カム
110a レンズユニット駆動カム傾斜面
111 レンズユニット
112 レンズユニット支持軸
113 LEDユニット回転止
114 レンズユニット回転止
115 イメージセンサユニット
116,117 反射光
118 レンズユニット駆動部
118a レンズユニット接触子
118b レンズユニット支持軸孔
119 FPC
120 カバー
121 ステッピングモータ
122 LEDユニット受け台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートフォーカス機能を有するレンズユニットと照射光に指向性を与えるLEDユニットと、前記レンズユニットと前記LEDユニットを同時に被写体方向に遠近移動可能な機構を有するフラッシュライト用LED装置において、
一対の外直径が異なるレンズユニット駆動カムとLEDユニット駆動カムを同軸上に一体化してカムを形成し、該カムの回転角に対して前記レンズユニット駆動カムとLEDユニット駆動カムの上面に螺旋状の傾斜面を設け、該螺旋状の傾斜面と前記レンズユニットとLEDユニットの短柄状の駆動部に形成した接触子を当接して遠近方向の移動機構を構成したことを特徴とする可動型フラッシュライト用LED装置。
【請求項2】
前記LEDユニットは、回路基板に実装されたLEDチップを、該LEDチップから照射される反射面が放物面形状となるカップ状に形成されたLEDユニットの中央部に配設し、前記LEDユニットの駆動部に接触子とLEDユニット支持軸を設け、前記カム上の前記LED駆動カムの螺旋状の傾斜面と前記LEDユニットの短柄状の駆動部に形成した接触子を当接して前記カムの回転に応じて前記レンズユニットと連動して遠近方向に移動する機構を形成し、前記LEDユニットの反射光の指向性が可変することを特徴とする請求項1に記載の可動型フラッシュライト用LED装置。
【請求項3】
前記レンズユニットは、前記レンズユニットの短柄状の駆動部に接触子とレンズユニット支持軸を有し、前記カム上の前記レンズ駆動カムの螺旋状の傾斜面と前記レンズユニットの駆動部に形成した接触子を当接して前記カムの回転に応じて前記レンズユニットと連動して遠近方向に移動する機構を形成したことを特徴とする請求項1に記載の可動型フラッシュライト用LED装置。
【請求項4】
前記カムは、該カムの同軸上に外直径が異なり、回転角に対して高さが変化する傾斜面を有する前記LED駆動カムと前記レンズ駆動カムとを厚み方向に積層して構成したことを特徴とする請求項1に記載の可動型フラッシュライト用LED装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−185816(P2008−185816A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19687(P2007−19687)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】