説明

可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置、及び、車両用空調システム

【課題】車両の仕様に容易に適応させられ汎用性が高い可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置、及び、当該装置を備える車両用空調システムを提供する。
【解決手段】駆動トルク演算装置は、放熱器(24)の入口での冷媒の圧力を検知するための放熱器入口冷媒圧力センサ(46)と、放熱器(24)の出口での冷媒の圧力を検知するための放熱器出口冷媒圧力センサ(48)と、可変容量圧縮機(100)の回転速度を検知するための回転速度検知手段と、圧縮機(100)に吸入される冷媒の吸入圧力を検知するための吸入圧力検知手段と、放熱器(24)の入口及び出口での冷媒の圧力、可変容量圧縮機(100)の回転速度、及び、冷媒の吸入圧力に基づいて、可変容量圧縮機(100)の駆動トルクを演算する演算手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置及び車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調システムは、冷凍サイクルを実行するシステム(冷凍サイクルシステム)を有する。冷凍サイクルシステムは、作動流体としての冷媒が循環する循環路を有し、循環路には、圧縮機、放熱器(凝縮器)、膨張器(膨張弁)及び蒸発器が順次介挿される。
圧縮機の動力(駆動トルク)は、エンジンからベルトを介して伝達される。このため、車両のエンジンの制御という観点からみれば、圧縮機は負荷となり、特に外気温度が高いときに、加速性能を含む車両のドライバビリティや、燃費に影響を及ぼす。
【0003】
一方、車両用空調システムの制御という観点からみれば、エンジンの回転速度の変化は、圧縮機の回転速度の変化をもたらし、冷凍サイクルを不安定にし、車室温度のばらつきをもたらす。
そこで、圧縮機の駆動トルクを演算し、演算した駆動トルクをエンジンの制御に利用することが行われている。例えば、特許文献1が開示する可変容量コンプレッサの駆動トルク算出装置は、コンプレッサ吐出側圧力に応じて複数のコンプレッサ駆動トルクマップを有する。この算出装置は、コンプレッサ吐出側圧力に応じて最適のコンプレッサ駆動トルクマップを選択し、選択したコンプレッサ駆動トルクマップにてコンプレッサ駆動回転速度により比例特性を特定し、そして、この比例特性と冷媒流量によりコンプレッサ駆動トルクを算出する。
【0004】
なお、可変容量の圧縮機としては、例えば、ピストンタイプの外部制御式の可変容量圧縮機が広く利用されている。
この種の可変容量圧縮機には、容量制御弁が備え付けられ、容量制御弁に供給される駆動電流は、外部の制御装置によって制御される。制御装置は、冷凍サイクルシステムにおける吸入圧力、若しくは、所定の2点間の圧力差(例えば、吐出圧力と吸入圧力との圧力差)が目標値に近付くように駆動電流を調整する。駆動電流に応じて容量制御弁の開度が変化するのに伴い、圧縮機のクランク室の圧力が増減され、これによって吐出容量が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−278663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する可変容量コンプレッサの駆動トルク算出装置を車両に適用するにあたっては、フロントグリルの形状等の車両の仕様に応じて放熱器の放熱能力が変わるため、複数のコンプレッサ駆動トルクマップを準備しなければならない。そしてそのために、新しい車両を開発するたびに、実際の車両を用いて、100又はそれ以上の条件で車両用空調システムを動作させ、駆動トルク及び種々のパラメータの値を測定する必要がある。
【0007】
このようなコンプレッサ駆動トルクマップの準備作業は、煩雑であるのみならず、多くの工数と費用を要するため、車両用空調システム及び車両の原価低減の妨げとなっていた。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、車両の仕様に容易に適応させられ汎用性が高い可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置、及び、当該装置を備える車両用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、車両に設けられた冷媒が循環する循環路に順次介挿された、可変容量圧縮機、放熱器、膨張弁及び蒸発器と、前記可変容量圧縮機の吐出容量を調整するための容量制御弁と、前記容量制御弁に供給する駆動電流を調整して前記容量制御弁の開度を調整し、これにより前記可変容量圧縮機の吐出容量を制御する容量制御手段とを備える車両用の冷凍サイクルシステムに適用され、前記可変容量圧縮機の駆動トルクを演算する可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置において、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力を検知するための放熱器入口冷媒圧力センサと、前記放熱器の出口での前記冷媒の圧力を検知するための放熱器出口冷媒圧力センサと、前記可変容量圧縮機の回転速度を検知するための回転速度検知手段と、前記可変容量圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入圧力を検知するための吸入圧力検知手段と、前記放熱器の入口及び出口での前記冷媒の圧力、前記可変容量圧縮機の回転速度、及び、前記冷媒の吸入圧力に基づいて、前記可変容量圧縮機の駆動トルクを演算する演算手段とを備えることを特徴とする可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置が提供される(請求項1)。
【0009】
好ましくは、前記演算手段は、式:
【0010】
【数1】

【0011】
(ただし、式中、Trは可変容量圧縮機の駆動トルク、Ncは可変容量圧縮機の回転速度、hdは可変容量圧縮機から吐出される冷媒のエンタルピ、hsは可変容量圧縮機に吸入される冷媒のエンタルピ、ηmは可変容量圧縮機における機械効率、Grは循環路における冷媒の流量である。)
に基づいて、前記駆動トルクを演算する(請求項2)。
【0012】
好ましくは、前記演算手段は、前記放熱器の入口及び出口での前記冷媒の圧力に基づいて前記循環路における前記冷媒の流量を演算する冷媒流量演算部を有する(請求項3)。
好ましくは、前記演算手段は、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記吸入圧力、前記冷媒の流量、及び、前記可変容量圧縮機の回転速度に基づいて前記可変容量圧縮機から吐出される冷媒のエンタルピと前記可変容量圧縮機に吸入される冷媒のエンタルピとの差を演算するエンタルピ差演算部を有する(請求項4)。
【0013】
好ましくは、前記演算手段は、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記吸入圧力、及び、前記可変容量圧縮機の回転速度に基づいて前記機械効率を演算する機械効率演算部を有する(請求項5)。
好ましくは、前記演算手段は、前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているか否かを判定する吐出容量判定部を有し、前記吐出容量判定部によって前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作していると判定されたときに、前記機械効率演算部は、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記吸入圧力、前記可変容量圧縮機の回転速度、及び、前記循環路における前記冷媒の流量に基づいて前記機械効率を演算する(請求項6)。
【0014】
好ましくは、前記容量制御手段は、前記吸入圧力が目標値に近付くように前記駆動電流を調整し、前記演算手段は、前記駆動電流に基づいて前記吸入圧力を演算する吸入圧力演算部を有する(請求項7)。
好ましくは、前記演算手段は、前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているか否かを判定する吐出容量判定部を有し、前記吐出容量判定部によって前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作していると判定されたときに、前記吸入圧力演算部は、前記駆動電流に代えて、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記可変容量圧縮機の回転速度、及び、前記循環路における前記冷媒の流量に基づいて前記吸入圧力を演算する(請求項8)。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、上述した何れかの可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置を備えたことを特徴とする車両用空調システムが提供される(請求項9)。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、演算手段が、放熱器の入口及び出口での冷媒の圧力、可変容量圧縮機の回転速度、及び、冷媒の吸入圧力に基づいて、可変容量圧縮機の駆動トルクを演算しており、マップデータを必要としていない。このため、マップデータを準備するために、車両に搭載された車両用空調システムを極めて多数の条件で作動させ、駆動トルク及び種々のパラメータの測定を行う必要がない。この結果として、この駆動トルク演算装置は、仕様の異なる車両に容易に適用され、車両用空調システム及び車両の価格低減が図られる。
【0017】
請求項2の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、演算手段が所定の式によって駆動トルクを演算することによって、駆動トルクが正確に演算される。
請求項3の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、冷媒流量演算部によって、循環路における冷媒の流量が正確に演算され、この結果として、駆動トルクが正確に演算される。
【0018】
請求項4の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、エンタルピ差演算部によって可変容量圧縮機から吐出される冷媒のエンタルピと可変容量圧縮機に吸入される冷媒のエンタルピとの差が正確に演算され、この結果として、駆動トルクが正確に演算される。
請求項5の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、機械効率演算部によって、機械効率が正確に演算され、この結果として、駆動トルクが正確に演算される。
【0019】
請求項6の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、機械効率演算部によって機械効率が正確に演算され、この結果として、駆動トルクが正確に演算される。
請求項7の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、吸入圧力演算部によって吸入圧力が正確に演算され、この結果として、駆動トルクが正確に演算される。
【0020】
請求項8の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によれば、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、吸入圧力演算部によって吸入圧力が正確に演算され、この結果として、駆動トルクが正確に演算される。
請求項9の車両用空調システムを適用した車両では、可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置によって演算された可変容量圧縮機の駆動トルクの値を用いてエンジンを制御することによって、エンジン制御の最適化が図られる。この結果として、エンジン及び車両用空調システムの動作が安定になり、車両のドライバビリティ、燃費及び車室の快適性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態の車両用空調システムが適用された車両の概略構成を示す図である。
【図2】図1の車両用空調システムに適用された冷凍サイクルシステムの概略構成を、圧縮機の縦断面とともに示す図である。
【図3】図2の圧縮機に適用された容量制御弁の接続状態を、容量制御弁の断面とともに示す図である。
【図4】図1の車両用空調システムにおける、容量制御弁の駆動電流と吸入圧力との関係を示すグラフである。
【図5】図1の車両における信号の入出力関係を示す図である。
【図6】図1の車両用空調システムに適用された駆動トルク演算装置が実行するプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、実施形態に係る車両用空調システムを適用した車両の概略を示し、この車両用空調システムによれば車室10内を所望の設定温度にて冷房可能である。
車両用空調システムは冷凍サイクルを実行する冷凍サイクルシステム12を備え、冷凍サイクルシステム12は、作動流体としての冷媒を循環させる循環路14を有する。
循環路14は、エンジンルーム16から隔壁17を貫通して機器スペース18に渡っている。機器スペース18は、車室10の前方部分にインストルメントパネル20により区画されている。エンジンルーム16内を延びる循環路14の部分には、圧縮機100、放熱器(凝縮器)24、レシーバ・ドライヤ25及び膨張弁26が、冷媒が流れる方向にて順次介挿される。機器スペース18内を延びる循環路14の部分には、蒸発器28が介挿されている。なお、レシーバ・ドライヤ25は省略してもよい。
【0023】
圧縮機100は、エンジン29と機械的に連結され、エンジン29から供給される動力によって作動させられる。圧縮機100は、例えばピストンタイプ(往復動式)の可変容量圧縮機であり、図2に示したように、容量制御弁200を内蔵している。
より詳しくは、圧縮機100は、例えば斜板式のクラッチレス圧縮機である。圧縮機100はシリンダーブロック101を備え、シリンダーブロック101には、複数のシリンダボア101aが形成されている。シリンダーブロック101の一端にはフロントハウジング(クランクケース)102が連結され、シリンダーブロック101の他端には、バルブプレート103を介してリアハウジング(シリンダヘッド)104が連結されている。
【0024】
シリンダーブロック101及びフロントハウジング102はクランク室105を規定し、クランク室105内を縦断して駆動軸106が延びている。駆動軸106は、クランク室105内に配置された環形状の斜板107を貫通し、斜板107は、駆動軸106に固定されたロータ108と連結部109を介してヒンジ結合されている。従って、斜板107は、駆動軸106に沿って移動しながら傾動可能である。
【0025】
ロータ108と斜板107との間を延びる駆動軸106の部分には、斜板107を最小傾角に向けて付勢するコイルばね110が装着されている。斜板107を挟んで反対側の駆動軸106の部分、即ち斜板107とシリンダーブロック101との間を延びる駆動軸106の部分には、斜板107を最大傾角に向けて付勢するコイルばね111が装着されている。
【0026】
駆動軸106は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通し、駆動軸106の外端は、動力伝達装置としてのプーリ112に連結されている。プーリ112は、ボール軸受113を介してボス部102aによって回転自在に支持され、外部駆動源としてのエンジン29のプーリとの間にベルト115が架け回される。
ボス部102aの内側には軸封装置116が配置され、軸封装置116は、フロントハウジング102の内部と外部とを遮断している。駆動軸106はラジアル方向及びスラスト方向にベアリング117,118,119,120によって回転自在に支持され、エンジン29からの動力がプーリ112に伝達され、プーリ112の回転と同期して回転可能である。
【0027】
シリンダボア101a内にはピストン130が配置され、ピストン130には、クランク室105内に突出したテール部が一体に形成されている。テール部に形成された凹所130a内には一対のシュー132が配置され、シュー132は斜板107の外周部に対し挟み込むように摺接している。従って、シュー132を介して、ピストン130と斜板107とは互いに連動し、駆動軸106の回転によりピストン130がシリンダボア101a内を往復動する。
【0028】
リアハウジング104の内部には、吸入室140及び吐出室142が区画形成され、吸入室140は、バルブプレート103に設けられた吸入孔103aを介してシリンダボア101aと連通可能である。吐出室142は、バルブプレート103に設けられた吐出孔103bを介してシリンダボア101aと連通可能である。なお、吸入孔103a及び吐出孔103bは、図示しない吸入弁及び吐出弁によってそれぞれ開閉される。
【0029】
シリンダーブロック101の外側にはマフラ150が設けられ、マフラケーシング152は、シリンダーブロック101に一体に形成されたマフラベース101bに図示しないシール部材を介して接合されている。マフラケーシング152及びマフラベース101bはマフラ空間154を規定し、マフラ空間154は、リアハウジング104、バルブプレート103及びマフラベース101bを貫通する吐出通路156を介して吐出室142と連通している。
【0030】
マフラケーシング152には吐出ポート152aが形成され、マフラ空間154には、吐出通路156と吐出ポート152aとの間を遮るように逆止弁170が配置されている。逆止弁170は、吐出通路156側の圧力とマフラ空間154側の圧力との圧力差に応じて開閉する。具体的には、圧力差が所定値より小さい場合閉作動し、圧力差が所定値より大きい場合開作動する。
【0031】
したがって吐出室142は、吐出通路156、マフラ空間154及び吐出ポート152aを介して循環路14の往路部分と連通可能であり、マフラ空間154は逆止弁170によって断続される。一方、吸入室140は、リアハウジング104に形成された吸入ポート104aを介して循環路14の復路部分と連通している。
リアハウジング104には、容量制御弁(電磁制御弁)200が収容され、容量制御弁200は給気通路160に介挿されている。給気通路160は、吐出室142とクランク室105との間を連通するようにリアハウジング104からバルブプレート103を経てシリンダーブロック101にまで亘っている。
【0032】
一方、吸入室140は、クランク室105と抽気通路162を介して連通している。抽気通路162は、駆動軸106とベアリング119,120との隙間、空間164及びバルブプレート103に形成された固定オリフィス103cからなる。
また、吸入室140は、リアハウジング104に形成された感圧通路166を通じて、給気通路160とは独立して容量制御弁200に接続されている。
【0033】
容量制御弁200は、図3に示すように、弁ユニットとソレノイドユニットとからなる。弁ユニットは、略円筒形状の弁ハウジング202を有し、弁ハウジング202の内部には弁孔204が形成されている。弁孔204は、弁ハウジング202の軸線方向に延び、弁孔204の一端は出口ポート206に繋がっている。出口ポート206は、弁ハウジング202を径方向に貫通しており、弁孔204は出口ポート206及び給気通路160の下流側部分を介してクランク室105と連通している。
【0034】
弁ハウジング202のソレノイドユニット側には弁室208が区画され、弁孔204の他端は弁室208の端壁にて開口している。弁室208内には、略円柱形状の弁体210が収容され、弁体210は、弁室208内を弁ハウジング202の軸線方向に移動可能である。弁体210の一端が弁室208の端壁に当接することにより、弁体210は弁孔204を閉塞可能であり、弁室208の端壁は弁座として機能する。
【0035】
また、弁ハウジング202には入口ポート212が形成され、入口ポート212も弁ハウジング202を径方向に貫通している。入口ポート212は、給気通路160の上流側部分を介して吐出室142と連通している。入口ポート212は、弁室208の周壁にて開口しており、入口ポート212、弁室208、弁孔204及び出口ポート206を通じて、吐出室142とクランク室105とは連通可能となっている。
【0036】
更に、弁ハウジング202には、ソレノイドユニットと反対側に感圧室214が区画され、感圧室214の周壁には感圧ポート216が形成されている。感圧ポート216及び感圧通路166を通じて、感圧室214は吸入室140と連通している。また、感圧室214と弁孔204との間には軸方向孔218が設けられ、軸方向孔218は、弁孔204と同軸上を延びている。
【0037】
弁体210の他端には、感圧ロッド220が一体且つ同軸に連結されている。感圧ロッド220は、弁孔204及び軸方向孔218内を延び、感圧ロッド220の先端部は、感圧室214内に突出している。感圧ロッド220は先端側に大径部を有しており、感圧ロッド220の大径部は、軸方向孔218の内周面によって摺動可能に支持されている。従って、感圧ロッド220の大径部によって、感圧室214と弁孔204との間の気密性が確保されている。
【0038】
感圧室214の端壁は、弁ハウジング202の端部に圧入されたキャップ222により形成され、キャップ222は段付きの有底円筒状をなす。キャップ222の小径部には、支持部材224の筒部が摺動自在に嵌合され、キャップ222の底壁と支持部材224との間には強制開放ばね226が配置されている。
感圧室214内には感圧器228が収容され、感圧器228の一端が支持部材224に固定されている。従って、キャップ222は、支持部材224を介して感圧器228を支持している。
【0039】
感圧器228はベローズ230を有し、ベローズ230は、弁ハウジング202の軸線方向に伸縮可能である。ベローズ230の両端はキャップ232,234によって気密に閉塞され、ベローズ230の内部は、真空状態(減圧状態)に保たれている。また、ベローズ230の内部には、圧縮コイルばね236が配置され、圧縮コイルばね236は、ベローズ230が伸長するように、キャップ232,234を相互に離間する方向に付勢している。
【0040】
感圧器228のキャップ234は、アダプタ238を介して感圧ロッド220に当接可能であり、感圧室214内の圧力が低下して感圧器228が伸長した場合、感圧ロッド220を介して弁体210が開弁方向に付勢される。
なお、弁ハウジング202に対するキャップ222の圧入量は、容量制御弁200が所定の動作をするように調整される。
【0041】
一方、ソレノイドユニットは、弁ハウジング202に同軸的に連結された略円筒形状のソレノイドハウジング240を有し、ソレノイドハウジング240内には、略円筒形状の固定コア242が同心上に配置されている。固定コア242の一端部は、弁ハウジング202の端部に嵌合して弁室208を区画するとともに、弁体210を摺動自在に支持している。
【0042】
固定コア242の中央部から他端部に亘る部分には、有底のスリーブ244が嵌合されている。スリーブ244の底壁と固定コア242の他端との間には、コア収容空間246が区画され、コア収容空間246には可動コア248が配置されている。可動コア248は、スリーブ244によって摺動自在に支持され、ソレノイドハウジング240の軸線方向に往復動可能である。
【0043】
弁体210の他端には、固定コア242内を延びるソレノイドロッド250の一端が当接し、ソレノイドロッド250の他端部は、可動コア248と一体に固定されている。従って、弁体210は、可動コア248に連動して閉弁方向に移動する。可動コア248とスリーブ244の底壁との間には、圧縮コイルばね252が配置され、圧縮コイルばね252は、可動コア248及びソレノイドロッド250を介して弁体210を閉弁方向に常時付勢する。
【0044】
スリーブ244の周囲には、ボビン253に巻回された状態で円筒形のコイル(ソレノイドコイル)254が配置され、ボビン253及びコイル254は、一体に成型された樹脂部材255によって囲まれている。ソレノイドハウジング240、固定コア242及び可動コア248はいずれも磁性材料で形成されて磁気回路を構成し、一方、スリーブ244は非磁性のステンレス系材料で形成されている。
【0045】
ここで、固定コア242の先端部の根元には、径方向孔256が形成され、弁ハウジング202には、径方向孔256と感圧室214とを連通する連通孔258が形成されている。また、固定コア242の中央部及び他端部の内径は、弁体210及びソレノイドロッド250の外径よりも大きく、感圧室214とコア収容空間246との間は、固定コア242の中央部及び他端部の内側、径方向孔256及び連通孔258を介して連通している。
【0046】
従って、弁体210の一端面には、クランク室105の圧力(クランク圧力Pc)が開弁方向の力として作用し、一方、弁体210の他端面には吸入室140の圧力(吸入圧力Ps)が閉弁方向の力として作用する。
容量制御弁のソレノイド254には、車両用空調システムを制御するエアコン制御装置(A/C制御装置)32が電気的に接続され、エアコン制御装置32は、ソレノイド254に供給される駆動電流Iの電流量を調整することによって、圧縮機100の吐出容量を調整する。エアコン制御装置32は、例えば、ECU(電子制御装置)等の電気回路によって構成することができる。
【0047】
容量制御弁200を採用した場合、吐出容量の制御方式としては、圧縮機100が吸入する冷媒の圧力、すなわち吸入圧力Psを制御するPs制御方式が採用される。なお、容量制御弁の種類に応じて、圧縮機100の吐出室142の圧力、すなわち、圧縮機100が吐出する冷媒の圧力(吐出圧力Pd)と吸入圧力Psとの差(Pd−Ps差圧)を制御する差圧制御方式を採用することもできる。
【0048】
図4は、容量制御弁200に供給される駆動電流Iと吸入圧力Psとの関係を示している。Ps制御方式では、乗員によって設定された車室設定温度等の種々の情報から吸入圧力Psの目標値Pssが設定され、目標値Pssに対応する大きさの駆動電流Iがソレノイド254に供給される。これにより、容量制御弁200の開度は、吸入圧力Psが目標値Pssに近付くように設定される。この一方で、吸入圧力Psを検知する感圧器228が、吸入圧力Psに応じて伸長して開度を微調整し、吸入圧力Psの変動を補償する。
【0049】
再び図1を参照すると、放熱器24の近傍にはコンデンサファン33が配置され、車両の走行による車両前方からの風、コンデンサファン33からの風、又は、これらの両方によって、放熱器24を通過する冷媒は冷却される。
膨張弁26は自身を通過する冷媒を膨張させる。膨張弁26は、例えば感温式膨張弁であり、膨張弁26の開度は、蒸発器28の出口での冷媒の過熱度が所定値になるよう調整される。
【0050】
蒸発器28は、空調ユニットハウジング34内に配置され、空調ユニットハウジング34内には、ブロワファン36及びヒータコア(図示せず)も配置されている。また、空調ユニットハウジング34の入口には、内外気切換ダンパ38が配置され、空調ユニットハウジング34の出口には、吹出口切換ダンパ(図示せず)が配置されている。
蒸発器28を通過する冷媒は、ブロワファン36からの風によって加熱され、蒸発する。この一方で、ブロワファン36からの風は、蒸発器28によって冷却されて冷風になり、この冷風が車室10内に吹き出すことで、車室10が冷房される。
【0051】
また、車両用空調システムは、種々の情報を検知するセンサ群として、外気温度センサ42、蒸発器出口空気温度センサ44、放熱器入口冷媒圧力センサ46、及び、放熱器出口冷媒圧力センサ48を有する。これら外気温度センサ42、蒸発器出口空気温度センサ44、放熱器入口冷媒圧力センサ46、及び、放熱器出口冷媒圧力センサ48は、それぞれエアコン制御装置32と電気的に接続されている。
【0052】
一方、車両全体の動作を制御する車両制御システムは、車両制御装置(エンジン制御装置)50を備え、車両制御装置50も、ECU等の電子回路によって構成することができる。車両制御装置50は、主に、車室10に配置されたアクセルペダル52、図示しないブレーキペダル、及び、シフトレバー等を介した乗員による入力に基づいて、エンジン29の回転速度Neを適当に制御する。
【0053】
また、車両制御装置50は、例えば回転速度センサを用いてエンジン29の回転速度Neを検知して出力し、エンジン29の回転速度Neは、エアコン制御装置32に入力される。
図5は、上述した容量制御弁200のソレノイド254、エアコン制御装置32、車両制御装置50及びセンサ群の間における、信号の入出力を示している。
【0054】
エアコン制御装置32には、操作パネルを介して、車室10の設定温度等が入力されるとともに、外気温度センサ42、及び、蒸発器出口空気温度センサ44によってそれぞれ検知された、外気温度Ta、及び、蒸発器出口空気温度Tcが入力される。これらの入力された情報等に基づいて、エアコン制御装置32は、容量制御弁200のソレノイド254に供給される駆動電流Iの目標値を設定し、この目標値に実際の値が近付くように駆動電流Iを調整する。これにより、可変容量圧縮機100の吐出容量が所定の値に調整される。
【0055】
一方、エアコン制御装置32は、可変容量圧縮機100の駆動トルクTrを演算する演算手段としての機能も有する。そのために、エアコン制御装置32には、エンジン29の回転速度Neとともに、放熱器入口冷媒圧力センサ46、及び、放熱器出口冷媒圧力センサ48によってそれぞれ検知された放熱器入口冷媒圧力Pin及び放熱器出口冷媒圧力Poutが入力される。
【0056】
つまり、エアコン制御装置32、エンジン回転速度検知手段、放熱器入口冷媒圧力センサ46、及び、放熱器出口冷媒圧力センサ48は、圧縮機100の駆動トルク演算装置を構成している。
具体的には、エアコン制御装置32は、圧縮機100の駆動トルクTrを演算するための回路(駆動トルク演算回路)300を有し、駆動トルク演算回路300は、圧縮機回転速度演算部301、冷媒流量演算部302、最大冷媒流量演算部304、吐出容量判定部305、吸入圧力演算部306、エンタルピ差演算部308、及び、機械効率演算部310を有する。
【0057】
図6は、駆動トルク演算回路300が所定の間隔で繰り返し実行する、圧縮機100の駆動トルクTrを演算するためのプログラムのフローチャートを例示している。
このプログラムをフローに則して説明すると、まず、放熱器入口冷媒圧力Pin、放熱器出口冷媒圧力Pout、エンジン回転速度Ne及び容量制御弁200に供給されている駆動電流Iが読み込まれる(S10)。
【0058】
この後、エンジン回転速度Neに基づいて圧縮機100の回転速度Ncが演算される(S11)。つまり、そのために、例えば関数F(Ne)=Ncを用いることができ、関数Fに含まれる係数は、エンジン29と圧縮機100のプーリ比に応じて予め決定可能である。
次に、放熱器入口冷媒圧力Pin、放熱器出口冷媒圧力Pout、圧縮機回転速度Nc及び容量制御弁200に供給されている駆動電流Iに基づいて、最大冷媒流量Grmaxが演算される(S12)。最大冷媒流量Grmaxは、圧縮機100の吐出容量が最大であると仮定したときの、循環路14における冷媒の流量である。そのために、例えば関数F(Pin,Pout,Nc,I)=Grmaxを用いることができ、関数Fは、車両用空調システムを車両に搭載する前の台上試験によって、予め決定可能である。換言すれば、関数Fに含まれる係数は、車両の仕様に依存することなく決定可能である。
【0059】
また一方、S12では、放熱器入口冷媒圧力Pin及び放熱器出口冷媒圧力Poutに基づいて冷媒流量Grが演算される。冷媒流量Grは、循環路14を実際に流れている冷媒の流量である。そのために、例えば関数F(Pin,Pout)=Grを用いることができる。
ここで、フロントグリルの形状、車両における放熱器14の配置等の車両の仕様に応じて、放熱器14の放熱能力は変化し、従って、関数Fに含まれる係数の値は変化する。このため、関数Fに含まれる係数は、車両用空調システムを車両に搭載した状態で、例えば10個程度の少数の条件で車両用空調システムを作動させ、各条件での変数、すなわち放熱器入口冷媒圧力Pin及び放熱器出口冷媒圧力Pout、並びに、冷媒流量Grを測定し、測定したこれらの値に基づいて決定される。
【0060】
この後、駆動トルク演算回路300は、演算された最大冷媒流量Grmaxと冷媒流量Grとを比較し、圧縮機100の吐出容量が最大であるか否かを判定する(S14)。このとき、冷媒流量Grが最大吐出容量Grmaxと等しいか、又は最大吐出容量Grmaxより大きければ(Gr≧Grmax)、圧縮機100の吐出容量は最大である(Yes)と判定され、冷媒流量Grが最大吐出容量Grmaxより小さければ(Gr<Grmax)、圧縮機100の吐出容量は最大ではない(No)と判定される。
【0061】
S14での判定結果がNoの場合、容量制御弁200に供給されている駆動電流Iに基づいて、圧縮機100に吸入される冷媒の圧力、即ち吸入圧力Psが演算される(S16)。そのために、例えば関数F(I)=Psを用いることができる。関数Fは、図4に例示されているけれども、車両用空調システムを車両に搭載する前の台上試験によって、予め決定可能である。換言すれば、関数Fに含まれる係数は、車両の仕様に依存することなく決定可能である。
【0062】
この後、放熱器入口冷媒圧力Pin、圧縮機回転速度Nc、冷媒流量Gr、及び、S14で演算された吸入圧力Psに基づいて、エンタルピ差Δhが演算される(S18)。このエンタルピ差Δhとは、圧縮機100から吐出される冷媒のエンタルピhdと圧縮機100に吸入される冷媒のエンタルピhsとの差(hd−hs)である。そのために、例えば関数F(Pin,Nc,Gr,Ps)=Δhを用いることができる。関数Fは、車両用空調システムを車両に搭載する前の台上試験によって、予め決定可能である。換言すれば、関数Fに含まれる係数は、車両の仕様に依存することなく決定可能である。
【0063】
また、S18では、放熱器入口冷媒圧力Pin、圧縮機回転速度Nc、及び、S14で演算された吸入圧力Psに基づいて、圧縮機100の機械効率ηmが演算される。そのために、例えば関数F(Pin,Nc,Ps)=ηmを用いることができる。関数Fは、車両用空調システムを車両に搭載する前の台上試験によって、予め決定可能である。換言すれば、関数Fに含まれる係数は、車両の仕様に依存することなく決定可能である。
【0064】
かくして演算された圧縮機回転速度Nc、冷媒流量Gr、エンタルピ差Δh及び機械効率ηmに基づいて、圧縮機100の駆動トルクTrが演算される(S20)。そのために、関数F(Gr,Δh,ηm,Nc)=Trを用いることができる。より詳しくは、関数Fは、以下の演算式で表される。
【0065】
【数2】

【0066】
最後に、駆動トルク演算装置300は、演算された駆動トルクTrの値を外部に出力し、駆動トルクTrの値は車両制御装置50に入力される。
一方、S14の判定結果がYesであった場合、放熱器入口冷媒圧力Pin、圧縮機回転速度Nc、及び、冷媒流量Grに基づいて、吸入圧力Psが演算される(S22)。そのために、例えば関数F(Pin,Nc,Gr)=Psを用いることができる。関数Fは、車両用空調システムを車両に搭載する前の台上試験によって、予め決定可能である。換言すれば、関数Fに含まれる係数は、車両の仕様に依存することなく決定可能である。
【0067】
S22の後、放熱器入口冷媒圧力Pin、圧縮機回転速度Nc、冷媒流量Gr、及び、S22で演算された吸入圧力Psに基づいて、エンタルピ差Δhが演算される(S24)。そのために、例えば関数F(Pin,Nc,Gr,Ps)=Δhを用いることができる。関数Fは、車両用空調システムを車両に搭載する前の台上試験によって、予め決定可能である。換言すれば、関数Fに含まれる係数は、車両の仕様に依存することなく決定可能である。
【0068】
また、S24では、放熱器入口冷媒圧力Pin、圧縮機回転速度Nc、及び、S22で演算された吸入圧力Psに基づいて、圧縮機100の機械効率ηmが演算される。そのために、例えば関数F(Pin,Nc,Gr,Ps)=ηmを用いることができる。関数Fは、車両用空調システムを車両に搭載する前の台上試験によって、予め決定可能である。換言すれば、関数Fに含まれる係数は、車両の仕様に依存することなく決定可能である。
【0069】
この後、S20では、S24で演算されたエンタルピ差Δh及び機械効率ηmを用いること以外はS16及びS18を経由した場合と同様に、駆動トルクTrが演算され、そして、S22において演算された駆動トルクTrの値が出力される。
上述した可変容量圧縮機100の駆動トルク演算装置によれば、駆動トルク演算回路300が、放熱器24の入口及び出口での冷媒の圧力Pin,Pout、可変容量圧縮機100の回転速度Nc、及び、冷媒の吸入圧力Psに基づいて、可変容量圧縮機100の駆動トルクTrを演算し、マップデータを必要としていない。このため、マップデータを準備するために、車両に搭載された車両用空調システムを1000個にも達する極めて多数の条件で作動させ、駆動トルクTr及び種々のパラメータの測定を行う必要がない。この結果として、この駆動トルク演算装置は、仕様の異なる車両に容易に適用され、車両用空調システム及び車両の価格低減が図られる。
【0070】
上述した駆動トルク演算装置によれば、駆動トルク演算回路300が所定の式によって駆動トルクTrを演算することによって、駆動トルクTrが正確に演算される。
また、この駆動トルク演算装置によれば、冷媒流量演算部302によって、循環路14における冷媒の流量が正確に演算され、この結果として、駆動トルクTrが正確に演算される。
【0071】
上述した駆動トルク演算装置によれば、エンタルピ差演算部308によってエンタルピ差Δhが正確に演算され、この結果として、駆動トルクTrが正確に演算される。
また更に、この駆動トルク演算装置によれば、機械効率演算部310によって、機械効率が正確に演算され、この結果として、駆動トルクTrが正確に演算される。
上述した駆動トルク演算装置によれば、吸入圧力演算部306によって吸入圧力Psが正確に演算され、この結果として、駆動トルクTrが正確に演算される。
【0072】
上述した駆動トルク演算装置によれば、可変容量圧縮機100が最大吐出容量で動作しているときに、吸入圧力演算部306によって吸入圧力Psが正確に演算され、この結果として、駆動トルクTrが正確に演算される。
そして、上述した車両用空調システムを適用した車両では、駆動トルク演算装置によって演算された可変容量圧縮機100の駆動トルクTrの値を用いてエンジン29を制御することによって、エンジン制御の最適化が図られる。この結果として、エンジン29及び車両用空調システムの動作が安定になり、車両のドライバビリティ、燃費及び車室の快適性が向上する。
【0073】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、一実施形態では、好ましい態様として、S14で圧縮機100の吐出容量が最大であるか否かを判定し、判定結果に応じて吸入圧力Ps、エンタルピ差Δh及び機械効率ηmの演算方法を変更したが、S14、S22及びS24を削除してもよい。
一実施形態では、車両制御装置50から入力されたエンジン回転速度Neの信号に基づいて圧縮機回転速度Ncが演算されているが、圧縮機回転速度Ncを演算又は検知するための手段はこれに限定されず、回転速度センサによって、圧縮機回転速度Ncを直接検知してもよい。
【0074】
一実施形態では、吸入圧力制御方式の場合について説明したが、本発明は、Pd−Ps差圧を制御する差圧制御方式にも適用可能である。この場合、S16において、Pd−Ps差圧に対応する駆動電流Iと、吐出圧力Pdに対応する放熱器入口冷媒圧力Pinとから、吸入圧力Psを演算すればよい。
なお、熱負荷が高いときには、吐出圧力Pdと放熱器入口冷媒圧力Pinとの間に差が生じるが、この差を適宜補正することは可能である。このことからすれば、圧縮機100に取り付けられた吐出圧力センサを放熱器入口冷媒圧力検知センサとして用いることも可能である。
【0075】
一実施形態では、関数F、F、F、F、F、F及びF、又は、関数F、F、F、F、F、F及びFを順次実行して駆動トルクTrを演算したけれども、関数が他の関数の変数になっているので、これらの関数を適宜組み合わせた関数を用いてもよいのは勿論である。すなわち、放熱器入口冷媒圧力Pin、放熱器出口冷媒圧力Pout、駆動電流I及び圧縮機回転速度Ncを直接検知するか又は演算により間接的に検知して駆動トルクTrを演算すればよく、好ましくは、関数Fを用いて駆動トルクTrを演算すればよい。
【符号の説明】
【0076】
24 放熱器
32 エアコン制御装置(容量制御手段、演算手段)
46 放熱器入口冷媒圧力センサ
48 放熱器出口冷媒圧力センサ
100 可変容量圧縮機
200 容量制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた冷媒が循環する循環路に順次介挿された、可変容量圧縮機、放熱器、膨張弁及び蒸発器と、前記可変容量圧縮機の吐出容量を調整するための容量制御弁と、前記容量制御弁に供給する駆動電流を調整して前記容量制御弁の開度を調整し、これにより前記可変容量圧縮機の吐出容量を制御する容量制御手段とを備える車両用の冷凍サイクルシステムに適用され、前記可変容量圧縮機の駆動トルクを演算する可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置において、
前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力を検知するための放熱器入口冷媒圧力センサと、
前記放熱器の出口での前記冷媒の圧力を検知するための放熱器出口冷媒圧力センサと、
前記可変容量圧縮機の回転速度を検知するための回転速度検知手段と、
前記可変容量圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入圧力を検知するための吸入圧力検知手段と、
前記放熱器の入口及び出口での前記冷媒の圧力、前記可変容量圧縮機の回転速度、及び、前記冷媒の吸入圧力に基づいて、前記可変容量圧縮機の駆動トルクを演算する演算手段とを備えることを特徴とする可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項2】
前記演算手段は、式:
【数3】

(ただし、式中、Trは可変容量圧縮機の駆動トルク、Ncは可変容量圧縮機の回転速度、hdは可変容量圧縮機から吐出される冷媒のエンタルピ、hsは可変容量圧縮機に吸入される冷媒のエンタルピ、ηmは可変容量圧縮機における機械効率、Grは循環路における冷媒の流量である。)
に基づいて、前記駆動トルクを演算する
ことを特徴とする請求項1記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記放熱器の入口及び出口での前記冷媒の圧力に基づいて前記循環路における前記冷媒の流量を演算する冷媒流量演算部を有することを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記吸入圧力、前記冷媒の流量、及び、前記可変容量圧縮機の回転速度に基づいて前記可変容量圧縮機から吐出される冷媒のエンタルピと前記可変容量圧縮機に吸入される冷媒のエンタルピとの差を演算するエンタルピ差演算部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記吸入圧力、及び、前記可変容量圧縮機の回転速度に基づいて前記機械効率を演算する機械効率演算部を有することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているか否かを判定する吐出容量判定部を有し、
前記吐出容量判定部によって前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作していると判定されたときに、前記機械効率演算部は、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記吸入圧力、前記可変容量圧縮機の回転速度、及び、前記循環路における前記冷媒の流量に基づいて前記機械効率を演算する
ことを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項7】
前記容量制御手段は、前記吸入圧力が目標値に近付くように前記駆動電流を調整し、
前記演算手段は、前記駆動電流に基づいて前記吸入圧力を演算する吸入圧力演算部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項8】
前記演算手段は、前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているか否かを判定する吐出容量判定部を有し、
前記吐出容量判定部によって前記可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作していると判定されたときに、前記吸入圧力演算部は、前記駆動電流に代えて、前記放熱器の入口での前記冷媒の圧力、前記可変容量圧縮機の回転速度、及び、前記循環路における前記冷媒の流量に基づいて前記吸入圧力を演算する
ことを特徴とする請求項7に記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の可変容量圧縮機の駆動トルク演算装置を備えたことを特徴とする車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−269652(P2010−269652A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121823(P2009−121823)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】