可変速エレベータ
【課題】エレベータの昇降速度変更の自由度を高めた可変速エレベータを提供する。
【解決手段】可変速エレベータ1は、昇降路2内に配置された乗籠3と、昇降路2内に配置された釣合いおもり4と、乗籠2に一端部が連結されるとともに、釣合いおもり4に他端部が連結されたメインロープ11と、メインロープ11が巻き掛けられるメインシーブ9を備えた巻上機8と、巻上機8の駆動を制御する制御装置12とを具備する。釣合いおもり4は、エレベータ1の運転時に当該釣合いおもり4の質量を機械的に増減させる質量増減機構16を備え、この釣合いおもり4は、質量を変化させることで機械的にオーバーバランスを任意に変更可能である。制御装置12は、釣合いおもり4の質量変化に応じて乗籠3の昇降速度を変化させる。
【解決手段】可変速エレベータ1は、昇降路2内に配置された乗籠3と、昇降路2内に配置された釣合いおもり4と、乗籠2に一端部が連結されるとともに、釣合いおもり4に他端部が連結されたメインロープ11と、メインロープ11が巻き掛けられるメインシーブ9を備えた巻上機8と、巻上機8の駆動を制御する制御装置12とを具備する。釣合いおもり4は、エレベータ1の運転時に当該釣合いおもり4の質量を機械的に増減させる質量増減機構16を備え、この釣合いおもり4は、質量を変化させることで機械的にオーバーバランスを任意に変更可能である。制御装置12は、釣合いおもり4の質量変化に応じて乗籠3の昇降速度を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣合いおもりを備えたトラクション式の可変速エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクション式のエレベータは、機械室等に設置された巻上機と、その巻上機のシーブに巻き掛けられたメインロープとを備える。このメインロープの一端部には、乗籠が吊り下げられている。メインロープの他端部には、乗籠とバランスを取るための釣合いおもりが吊り下げられている。巻上機のシーブが駆動されると、乗籠および釣合いおもりは、昇降路内において互いに反対方向に昇降動作する。
【0003】
特許文献1には、着脱自在な複数枚のウエイトを備えた釣合いおもりが開示されている。この釣合いおもりは、上記ウエイトの積み込み枚数を変えることにより、当該釣合いおもりの質量を増減させてオーバーバランスを調整することができるようになっている。
【0004】
この複数枚のウエイトは、エレベータ機種毎に定められたオーバーバランスを満足するように釣合いおもりの質量調整を行うために搭載されている。そして一旦オーバーバランスの調整が完了すれば、その後ウエイトが増減されることはない。
【0005】
一方、乗籠と釣合いおもりとの質量バランスが取れている状態で昇降速度を上げ、質量バランスが悪い状態では昇降速度を下げて運転する可変速エレベータがある。つまりこの可変速エレベータは、乗籠内の乗客を質量変動要素として積極的に利用し、乗籠自体の質量と積載質量とを合わせた値を乗籠側の質量として制御系統にフィードバックする。そしてこの可変速エレベータは、そのフィードバックされた値に基づいて昇降速度を変更する。
【特許文献1】特開2000−238980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記可変速エレベータでは、昇降速度の変更の可否は乗籠内の乗客に依存する。そのため、例えば建物の用途に合わせて、時間帯により上昇速度や下降速度などを任意に設定することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、エレベータの昇降速度変更の自由度を高めた可変速エレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態に係る可変速エレベータは、昇降路と、上記昇降路内に配置された乗籠と、上記昇降路内に配置された釣合いおもりと、上記乗籠に一端部が連結されるとともに、上記釣合いおもりに他端部が連結されたメインロープと、上記メインロープが巻き掛けられるメインシーブを備えた巻上機と、上記巻上機の駆動を制御する制御装置とを具備する。上記釣合いおもりは、エレベータの運転時に当該釣合いおもりの質量を機械的に増減させる質量増減機構を備え、この釣合いおもりは、質量を変化させることで機械的にオーバーバランスを任意に変更可能である。上記制御装置は、上記釣合いおもりの質量変化に応じて上記乗籠の昇降速度を変化させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乗籠内の乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータの昇降速度変更の自由度が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図1ないし図4を参照して説明する。図1は、本実施形態および後述する第2ないし第4の実施形態に係る可変速エレベータ1の全体を概略的に示す。
【0011】
図1に示すように、可変速エレベータ1は、昇降路2と、乗籠3および釣合いおもり4とを備える。乗籠3および釣合いおもり4は、それぞれ昇降路2内に配置されている。昇降路2内には、乗籠3を案内するガイドレールと、釣合いおもり4を案内するガイドレール5a,5b(図2参照)とがそれぞれ鉛直方向に延設されている。
【0012】
昇降路2の上方には機械室7が設けられている。この機械室7には、巻上機8が設置されている。巻上機8は、メインシーブ9と、このメインシーブ9を回転駆動するモータ10と備える。メインシーブ9には、メインロープ11が巻き掛けられている。このメインロープ11の一端部には、乗籠3が連結されている。またメインロープ11の他端部には、釣合いおもり4が連結されている。これにより巻上機8を駆動すると、乗籠3および釣合いおもり4が昇降路2内を互いに反対方向に昇降動作する。
【0013】
機械室7には、エレベータ1の全体を制御する制御装置12が設けられている。この制御装置12は、巻上機8の駆動を制御し、任意に設定された走行速度で乗籠3を昇降動作させることができる。なお巻上機8および制御装置12は、必ずしも機械室7に設置されたものに限らず、昇降路2内の上部や下部などに設置されたものでもよい。
【0014】
図1に示すように、釣合いおもり4は、本体部15と、質量増減機構16とを備える。図2に示すように、本体部15は、釣合いおもり枠である枠部材21、この枠部材21に搭載される複数のウエイト22(以下、本体ウエイト22)、および例えばガイドローラであるガイド部23a,23bを有する。枠部材21は、一対のガイドレール5a,5bの間に配置されるとともに、メインロープ11に連結されている。枠部材21は、鉛直方向に延びる一対の縦材21a,21bと、この一対の縦材21a,21bの下端部同士の間に水平方向に渡された下梁21cとを備える。枠部材21は、これら縦材21a,21bと下梁21cとが組み立てられ、その内側に本体ウエイト22が搭載可能な積載部を形成している。
【0015】
本体ウエイト22は、枠部材21に着脱自在に搭載される。釣合いおもり4は、枠部材21に対する本体ウエイト22の搭載枚数を変えることにより、当該釣合いおもり4の質量を調整し、オーバーバランスを調整することができる。この本体ウエイト22は、エレベータ機種毎に定められたオーバーバランスを満足するように、質量調整を行うために用いられるものである。そのためこの本体ウエイト22は、エレベータ1の運転時には増減されるものではない。
【0016】
質量増減機構16は、エレベータ1の運転時に釣合いおもり4の質量を機械的に増減させる機構である。本実施形態に係る釣合いおもり4は、この質量増減機構16により当該釣合いおもり4の質量を変化させることで、エレベータ1の運転時に機械的にオーバーバランスを任意に変更可能である。なお本発明でいう「運転時」とは、エレベータの据え付け時や保守点検時ではない時を指し、つまり乗客を運搬する運転中の時間帯を指す。なおこの「運転時」には、乗客不在のために停止している待機時も含まれる。
【0017】
図2に示すように、質量増減機構16は、増量ウエイト31と、増量ウエイト取付機構32とを備える。増量ウエイト31は、釣合いおもり4の質量を機械的に増減させるための錘である。増量ウエイト31は、例えば昇降路2のピット34内に配置されるとともに、例えば釣合いおもり4の本体部15の下部に任意に連結され、釣合いおもり4の下部に位置する。この増量ウエイト31が本体部15に対して着脱されることで、釣合いおもり4の質量が変わる。すなわち釣合いおもり4のオーバーバランスが変更される。
【0018】
図2は、本体部15との連結が解除された状態の増量ウエイト31を示す。図2に示すように、ピット34の底部には、緩衝器台座35と、この緩衝器台座35の上に据え付けられ、非常時に落下した釣合いおもり4を受け止める緩衝器36とが設けられている。そしてこの緩衝器台座35には、増量ウエイト台座37が設けられている。増量ウエイト31は、増量ウエイト台座37の上に載置され、増量ウエイト台座37によって支持されている。
【0019】
図2に示すように、緩衝器36は、釣合いおもり4の下方において鉛直方向に延びている。増量ウエイト31は、緩衝器36に対向する領域に、緩衝器との干渉(すなわち平面干渉)を避けるように開口した貫通孔38を備える。
【0020】
増量ウエイト31は、本体部15との連結が解除されているとき、緩衝器36を貫通孔38に挿通させるようにしてピット34内に配置される。これにより、増量ウエイト31は、緩衝器36と干渉することなく、釣合いおもり4の下方でピット34内に収容される。また増量ウエイト31は、貫通孔38を緩衝器36に貫通させ、この緩衝器36を地震等による外力に対する外れ止めとして利用する。すなわち緩衝器36が外れ止めとしての役割を果たすことで、外力が作用したときの増量ウエイト31の平面移動や崩れ、または落下などが防止される。
【0021】
図2に示すように、緩衝器36は、ピット34に固定された固定部36aと、この固定部36aから上方に突出するとともに固定部36aに対して進退自在な可動部36bとを備える。図4は、緩衝器36の作動時の状態を示す。この図4では、可動部36bが固定部36aの中に入り込み、緩衝器36が全圧縮された状態にある。
【0022】
図4に示すように、増量ウエイト31の高さは、緩衝器36の固定部36aの高さよりも低く形成されている。すなわち増量ウエイト台座37の上に載せられた増量ウエイト31の上端が、緩衝器36を全圧縮した釣合いおもり4に衝突しないようになっている。換言すれば、増量ウエイト31がピット34内にあるときは、増量ウエイト31は常に緩衝器36よりも高さが低くなる。これにより緩衝器36が外れ止めとして効果的に機能する。
【0023】
図2に示すように、増量ウエイト取付機構32は、本体部15の枠部材21に設けられるとともに、本体部15に対して増量ウエイト31を着脱自在に連結する機構である。増量ウエイト取付機構32は、エレベータ1の運転時において釣合いおもり4が最下階に到着したとき、本体部15に対して増量ウエイト31を任意に着脱する。
【0024】
図2に示すように、増量ウエイト31の上端部には、ピン41a,41bが設けられている。ピン41a,41bは、増量ウエイト31の左右の側端部から、増量ウエイト31の水平方向の外側に突出している。
【0025】
一方、増量ウエイト取付機構32は、増量ウエイト31のピン41a,41bに係合可能な連結シャフト42a,42bと、この連結シャフト42a,42bを駆動する制御モータ43a,43bとを有する。制御モータ43a,43bは、連結シャフト42a,42bを駆動してこれら連結シャフト42a,42bを増量ウエイト31のピン41a,41bにそれぞれ係合させる。
【0026】
図3は、本体部15と連結された状態の増量ウエイト31を示す。図3に示すように、連結シャフト42a,42bは、鉛直方向に延びた延伸部45と、この延伸部45の下端部において適宜角度に折れ曲った折曲部46とを有する。延伸部45は、釣合いおもり4が最下階にあるときにピット34の底部に載置された増量ウエイト31に届くように、釣合いおもり4の本体部15から下方に向いて比較的長く延びている。
【0027】
折曲部46は、例えばピン41a,41bの下方に入り込み、ピン41a,41bに引っ掛るように水平方向に折れ曲がっている。連結シャフト42a,42bは、増量ウエイト31の吊り下げに必要な強度を有する。なお連結シャフト43a,43bの個数および形状は、本実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、種々の個数や形状を採用することができる。
【0028】
制御モータ43a,43bは、連結シャフト42a,42bをその周方向に例えば90度回動させる。これにより、連結シャフト42a,42bは、当該連結シャフト42a,42bがピン41a,41bに係合する連結状態(図3参照)と、当該連結シャフト42a,42bとピン41a,41bとの係合が解除される解除状態(図2参照)との間で回動される。
【0029】
上記連結状態では、折曲部46がピン41a,41bの下方に位置し、本体部15が昇降動作するとき、増量ウエイト31は本体部15に伴って昇降路2内を昇降動作する。一方、上記解除状態では、折曲部46がピン41a,41bの下方から外れ、本体部15が昇降動作するとき、増量ウエイト31はピット34に残されることになる。
【0030】
図3に示すように、増量ウエイト31は、連結シャフト42a,42bの下方に鉛直方向に延びる溝48a,48bを備える。この溝48a,48bは、連結シャフト42a,42bを逃げるために形成された溝であり、連結シャフト42a,42bよりも大きな幅を有する。この溝48a,48bは、増量ウエイト31の上下方向全体に形成されている。
【0031】
これにより、図4に示すように緩衝器36が全圧縮される状態にまで釣合いおもり4が下がった場合においても、連結シャフト42a,42bは溝48a,48bを通過するため、緩衝器36の緩衝動作に影響を与えない。
【0032】
制御装置12は、例えば図示しないケーブルを介して釣合いおもり4に電気的に接続されている。制御装置12は、制御モータ43a,43bに対して連結シャフト42a,42bの駆動に関する指令を与える。また制御装置12は、例えば制御モータ43a,43bの動きなどから、本体部15に対する増量ウエイト31の連結の有無を認識する。制御装置12は、釣合いおもり4の質量変化に応じて乗籠3の昇降速度を変化させる。
【0033】
次に、可変速エレベータ1の作用について説明する。
増量ウエイト31の連結および取り外しは、乗籠3が最上階に到着した際、つまり釣合いおもり4が最下階に到着した際に行われる。連結時においては、制御装置12が制御モータ43a,43bに指示を与え、制御モータ43a,43bが回転し、連結シャフト42a,42bの折曲部46が増量ウエイト31のピン41a,41bに引っ掛る。これにより、増量ウエイト31が枠部材21に連結され、釣合いおもり4の質量が増量される。
【0034】
一方、増量ウエイト31の取り外し過程は前記と逆である。すなわち、制御モータ43a,43bを逆回転させ、連結シャフト42a,42bの折曲部46を増量ウエイト31のピン41a,41bから外す。これにより、取り外し動作を完了する。
【0035】
増量ウエイト31を連結すると、釣合いおもり4の下降バランスが改善され、釣合いおもり4の下降速度を増すことができる。そのため制御装置12は、増量ウエイト31が取り外されている状態に比べて、乗籠3の上昇速度を速く設定し、その速い上昇速度で乗籠3を走行させることができる。
【0036】
一方、増量ウエイト31が取り外されると、釣合いおもり4が軽い状態になり、乗籠3が相対的に重くなる。これにより、乗籠3の下降バランスが改善され、乗籠3の下降速度を増すことができる。そのため制御装置12は、増量ウエイト31が連結されている状態に比べて、乗籠3の下降速度を速く設定し、その速い下降速度で乗籠3を走行させることができる。
【0037】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗籠3内の乗客に依存せずにエレベータ1の昇降速度変更の自由度を高くすることができる。すなわちエレベータ1の運転時に釣合いおもり4の質量を機械的に増減させる質量増減機構16を備えると、この釣合いおもり4は、質量を変化させることで、エレベータ1の運転時に乗客に依存せずにオーバーバランスを任意に変更することができる。
【0038】
制御装置12は、釣合いおもり4の質量変化(すなわち任意に変更されるオーバーバランス)に応じて乗籠3の昇降動作の設定速度(すなわち定格速度)を任意に変更することができる。これにより、例えば建物の用途に合わせ、時間帯により昇り速度や降り速度を変化させることができる可変速エレベータ1を提供することができる。
【0039】
上記質量増減機構16が増量ウエイト31と、この増量ウエイト32を取り付ける増量ウエイト取付機構32とを備え、増量ウエイト31が昇降路2のピット34内に配置され、増量ウエイト取付機構32が釣合いおもり4が最下階に到着したときに増量ウエイト31を着脱すると、比較的余裕のあるピット34内の空間を利用して増量ウエイト31を配置することができ、エレベータ1の小型化に寄与する。また比較的重い増量ウエイト31が昇降路2内の最下部に配置されるので安全性の観点からも好ましい。
【0040】
増量ウエイト取付機構32が、増量ウエイト31に係合可能な連結シャフト42a,42bと、この連結シャフト42a,42bを駆動する制御モータ43a,43bとを有すると、比較的簡単な構成により増量ウエイト取付機構32を構成することができる。また、緩衝器36が全圧縮される非常時において、緩衝器36に影響しない増量ウエイト取付機構32を構成することができる。
【0041】
増量ウエイト31が緩衝器36との干渉を避けるように開口した貫通孔38を備え、この増量ウエイト31が緩衝器36を外力に対する外れ止めとして利用すると、すなわち緩衝器36が外れ止めとしての役割を果たすことで、外力が作用したときの増量ウエイト31の平面移動や崩れ、または落下などが防止される。なおこの増量ウエイト31の貫通孔38と緩衝器36の構成、作用、および効果は、後述する第2ないし第4の実施形態においても同じである。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図5ないし図7を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図5および図6に示すように、ピット34には、せり上げ装置51が設けられている。せり上げ装置51は、本体部15に対する増量ウエイト31の取り付け時に、昇降路2のピット34内に配置された増量ウエイト31を本体部へ向けてせり上げる(すなわち持ち上げる)。せり上げ装置51は、例えば緩衝器台座35に設けられ、例えば油圧ジャッキ(図示しない)などにより動作する。増量ウエイト31は、せり上げ装置51の上に載置される。
【0044】
図5は、せり上げ装置51が畳まれた状態を示す。この状態では、せり上げ装置51の上に載置された増量ウエイト31の高さは、緩衝器36の固定部36aよりも低い。すなわち図7に示すように、せり上げ装置51の上に載せられた増量ウエイト31の上端が、緩衝器36を全圧縮した釣合いおもり4に衝突しないようになっている。
【0045】
図6は、せり上げ装置51の作動時の状態を示す。この状態では、増量ウエイト31は、せり上げ装置51により釣合いおもり4の枠部材21の直下まで持ち上げる。この状態で本体部15に対する増量ウエイト31の連結および取り外しが行われる。
【0046】
本実施形態に係る連結シャフト42a,42bの延伸部45は、持ち上げられた増量ウエイト31に届く程度に比較的短く延びている。これにより図7に示すように、緩衝器36が全圧縮される状態にまで釣合いおもり4が下がった場合においても、連結シャフト42a,42bが比較的短いので、緩衝器36の緩衝動作に影響を与えない。
【0047】
制御装置12は、せり上げ装置51に電気的に接続されており、せり上げ装置51に上昇および下降の指令を与える。制御装置12より増量ウエイト31連結の指示が出ると、釣合いおもり4が最下階に到着した時に、或いは到着する寸前に、せり上げ装置51が上昇を開始し、連結シャフト42a,42bに増量ウエイト31が連結できる位置までせり上げ装置51が上昇して停止する。
【0048】
釣合いおもり4が最下階に到着すると、第1の実施形態と同様に、制御モータ43a,43bが回転し、増量ウエイト31の連結動作が完了する。取り外し時の動作は、前記と逆である。上記説明した以外の可変速エレベータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0049】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗籠3内の乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータ1の昇降速度変更の自由度が高くなる。
【0050】
ピット34内に配置された増量ウエイト31を本体部15へ向けてせり上げるためのせり上げ装置51を備えると、上記第1の実施形態に比べて連結シャフト42a,42bの長さを短くすることができる。これは、ピット深さが浅い場合など緩衝器36の全圧縮時における制限がある場合に有効である。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図8ないし図10を参照して説明する。なお上記第1および第2の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図8に示すように、本実施形態では、互いに独立する複数の増量ウエイト31a,31b,31cが配置されている。複数の増量ウエイト31a,31b,31cは、例えば互いに同じ形状に形成されている。複数の増量ウエイト31a,31b,31cは、ピット34内に配置されるとき、せり上げ装置51の上に積層して載置される。
【0053】
例えば第1および第2の実施形態に係るような一体式の増量ウエイト31を複数に分割したものが本実施形態に係る分割式の増量ウエイト31a,31b,31cである。なお増量ウエイト31a,31b,31cの数は、3つに限られない。各増量ウエイト31a,31b,31cには、連結シャフト42a,42bに係合可能なピン41a,41bがそれぞれ設けられている。
【0054】
図8は、せり上げ装置51が畳まれた状態を示す。この状態では、最も上方に位置する増量ウエイト31aの高さは、緩衝器36の固定部36aよりも低い。すなわち図10に示すように、最上位に位置する増量ウエイト31aの上端が、緩衝器36を全圧縮した釣合いおもり4に衝突しないようになっている。
【0055】
図9は、せり上げ装置51の作動時の状態を示す。この状態では、増量ウエイト31は、せり上げ装置51により釣合いおもり4の枠部材21に向けて持ち上げる。この状態で本体部15に対する増量ウエイト31a,31b,31cの連結および取り外しが行われる。本実施形態に係る連結シャフト42a,42bの延伸部45はせり上げ装置51が最大限上昇したときに最下位に位置する増量ウエイト31cに届くように比較的長く延びている。
【0056】
制御装置12は、せり上げ装置51に電気的に接続されており、せり上げ装置51に上昇および下降の指令を与える。本実施形態では、せり上げ装置51の上昇高さを変化させることで、本体部15に連結される増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量を変化させる。
【0057】
制御装置12により指示される増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量により、せり上げ装置51の上昇高さが適宜変動する。制御装置12は、増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量をnとするとき、積層された増量ウエイト31a,31b,31cの上からn番目に位置する増量ウエイトのピン41a,41bが連結シャフト42a,42bに係合する高さになるようにせり上げ装置51を上昇させる。これにより、増量ウエイト取付機構32は、任意の数の増量ウエイト31a,31b,31cを本体部15に連結する。搭載不要分の増量ウエイト31a,31b,31cは、せり上げ装置51に残される。
【0058】
また制御装置12は、搭載される増量ウエイト31a,31b,31cの数に応じて乗籠3の昇降速度の設定を変更する。上記説明した以外の可変速エレベータ1の構成は上記第2の実施形態と同じである。
【0059】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータ1の昇降速度変更の自由度が高くなる。
【0060】
互いに独立する複数の増量ウエイト31a,31b,31cが配置され、増量ウエイト取付機構32が任意の数の増量ウエイト31a,31b,31cを本体部15に連結すると、増量ウエイト31a,31b,31cの数に応じて釣合いおもり4のオーバーバランスを複数設定することができる。すなわち本実施形態に係る可変速エレベータ1は、第1および第2の実施形態に係るエレベータ1に比べて、オーバーバランスを小刻みに調整可能である。そのため制御装置12は、搭載される増量ウエイト31a,31b,31cの数に応じて乗籠3の昇降速度の設定を小刻みに変更することができる。これにより、エレベータ1の昇降速度変更の自由度がさらに高くなる。
【0061】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図11および図17を参照して説明する。なお上記第1ないし第3の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図11に一方の連結シャフト42aを代表して示すように、本実施形態に係る連結シャフト42a,42bは、鍵部61a,61b,61cを備える。鍵部61a,61b,61cは、例えば増量ウエイト31a,31b,31cに対応して複数設けられている。図12に示すように、鍵部61a,61b,61cは、連結シャフト42a,42bの径方向に突出する一対の突起62を有し、連結シャフト42a,42bの周方向に形状が変化する。複数の鍵部61a,61b,61cにおいて、その形状は互いに同じである。
【0063】
一方、図13は、複数の増量ウエイト31a,31b,31cのそれぞれの水平断面を示す。図13に示すように、複数の増量ウエイト31a,31b,31cは、それぞれ上記鍵部61a,61b,61cが挿通される鍵穴部64a,64b,64cを有する。この鍵穴部64a,64b,64cは、複数の増量ウエイト31a,31b,31cにおいて互いに周方向に異なる形状を有する。
【0064】
増量ウエイト取付機構32は、制御モータ43a,43bにより連結シャフト42a,42bを周方向に回転させ、その回転角度により増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を任意に変更する。図14ないし図17を参照して具体的な一例を示す。図14は、挿通時の状態(すなわち連結シャフト42a,42bの回転角度0度)を示す。
【0065】
図15は、挿通時に対して連結シャフト42a,42bの回転角度が30度の状態を示す。この状態では、鍵部61aの突起62のみが増量ウエイト31aに引っかかり、最上位に位置する増量ウエイト31aのみが本体部15に連結される。図16は、挿通時に対して連結シャフト42a,42bの回転角度が60度の状態を示す。
【0066】
この状態では、鍵部61a,61bの突起62が増量ウエイト31a,31bに引っかかり、上位二つの増量ウエイト31a,31bが本体部15に連結される。図17は、挿通時に対して連結シャフト42a,42bの回転角度が90度の状態を示す。この状態では、鍵部61a,61b,61cの突起62が増量ウエイト31a,31b,31cに引っかかり、全ての増量ウエイト31a,31b,31cが本体部15に連結される。
【0067】
このように上位にある増量ウエイト31a,31b,31cほど、小さな回転角度で鍵部61a,61b,61cに引っ掛るように鍵穴部64a,64b,64cを形成すると、連結シャフト42a,42b回転角度を変更することで増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を変更することができる。なお鍵部61a,61b,61cと鍵穴部64a,64b,64cの形状は、上記具体例に限定されるものではなく、種々の形状を用いることができる。
【0068】
制御装置12は、制御モータ43a,43bに電気的に接続されており、制御モータ43a,43bに回転角度に関する指令を与える。せり上げ装置51は、連結シャフト42a,42bに連結できる位置まで増量ウエイト31a,31b,31cを上昇させる。制御装置12により指示される増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量により、連結シャフト42a,42bの回転角度が決まり、連結シャフト42a,42bが回転する。
【0069】
これにより、連結シャフト42a,42bの鍵部61a,61b,61cの突起62に引っ掛る数量の増量ウエイト31a,31b,31cのみが枠部材21に連結される。引っ掛らない増量ウエイト31a,31b,31cは、せり上げ装置51に残されたままとなる。取り外しは連結シャフト42a,42bの回転角度を元に戻すことで行われる。上記説明した以外の可変速エレベータ1の構成は上記第3の実施形態と同じである。
【0070】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータ1の昇降速度変更の自由度が高くなる。
【0071】
連結シャフト42a,42bが鍵部61a,61b,61cを備え、複数の増量ウエイト31a,31b,31cがそれぞれ鍵部61a,61b,61cが挿通される鍵穴部64a,64b,64cを有し、この鍵穴部64a,64b,64cが複数の増量ウエイト31a,31b,31cにおいて互いに周方向に異なる形状を有すると、連結シャフト42a,42bの回転角度により増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を任意に変更することができる。すなわち上記第3の実施形態のようにせり上げ装置51の上昇高さを変更しなくても増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を変更することができる。
【0072】
以上、本発明の一つの実施形態に係る可変速エレベータ1について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。この発明は実施段階においてその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記第1ないし第4の実施形態に係る各構成要素は、適宜組み合わせて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る可変速エレベータの全体を模式的に示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る増量ウエイトの非連結状態を示す正面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る増量ウエイトの連結状態を示す正面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る釣合いおもり側の緩衝器の全圧縮状態を示す正面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る増量ウエイトの非連結状態を示す正面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る増量ウエイトの連結状態を示す正面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る釣合いおもり側の緩衝器の全圧縮状態を示す正面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る増量ウエイトの非連結状態を示す正面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る増量ウエイトの連結状態を示す正面図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る釣合いおもり側の緩衝器の全圧縮状態を示す正面図。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る連結シャフトの正面図。
【図12】図11中に示された連結シャフトのF12−F12線に沿う断面図。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る増量ウエイトの断面図。
【図14】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト挿通時の断面図。
【図15】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト30度回転時の断面図。
【図16】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト60度回転時の断面図。
【図17】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト90度回転時の断面図。
【符号の説明】
【0074】
1…可変速エレベータ、2…昇降路、3…乗籠、4…釣合いおもり、8…巻上機、9…メインシーブ、11…メインロープ、12…制御装置、15…本体部、16…質量増減機構、22…ウエイト、31,31a,31b,31c…増量ウエイト、32…増量ウエイト取付機構、34…ピット、38…貫通孔、42a,42b…連結シャフト、43a,43b…制御モータ、51…せり上げ装置、61a,61b,61c…鍵部、64a,64b,64c…鍵穴部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣合いおもりを備えたトラクション式の可変速エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクション式のエレベータは、機械室等に設置された巻上機と、その巻上機のシーブに巻き掛けられたメインロープとを備える。このメインロープの一端部には、乗籠が吊り下げられている。メインロープの他端部には、乗籠とバランスを取るための釣合いおもりが吊り下げられている。巻上機のシーブが駆動されると、乗籠および釣合いおもりは、昇降路内において互いに反対方向に昇降動作する。
【0003】
特許文献1には、着脱自在な複数枚のウエイトを備えた釣合いおもりが開示されている。この釣合いおもりは、上記ウエイトの積み込み枚数を変えることにより、当該釣合いおもりの質量を増減させてオーバーバランスを調整することができるようになっている。
【0004】
この複数枚のウエイトは、エレベータ機種毎に定められたオーバーバランスを満足するように釣合いおもりの質量調整を行うために搭載されている。そして一旦オーバーバランスの調整が完了すれば、その後ウエイトが増減されることはない。
【0005】
一方、乗籠と釣合いおもりとの質量バランスが取れている状態で昇降速度を上げ、質量バランスが悪い状態では昇降速度を下げて運転する可変速エレベータがある。つまりこの可変速エレベータは、乗籠内の乗客を質量変動要素として積極的に利用し、乗籠自体の質量と積載質量とを合わせた値を乗籠側の質量として制御系統にフィードバックする。そしてこの可変速エレベータは、そのフィードバックされた値に基づいて昇降速度を変更する。
【特許文献1】特開2000−238980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記可変速エレベータでは、昇降速度の変更の可否は乗籠内の乗客に依存する。そのため、例えば建物の用途に合わせて、時間帯により上昇速度や下降速度などを任意に設定することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、エレベータの昇降速度変更の自由度を高めた可変速エレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態に係る可変速エレベータは、昇降路と、上記昇降路内に配置された乗籠と、上記昇降路内に配置された釣合いおもりと、上記乗籠に一端部が連結されるとともに、上記釣合いおもりに他端部が連結されたメインロープと、上記メインロープが巻き掛けられるメインシーブを備えた巻上機と、上記巻上機の駆動を制御する制御装置とを具備する。上記釣合いおもりは、エレベータの運転時に当該釣合いおもりの質量を機械的に増減させる質量増減機構を備え、この釣合いおもりは、質量を変化させることで機械的にオーバーバランスを任意に変更可能である。上記制御装置は、上記釣合いおもりの質量変化に応じて上記乗籠の昇降速度を変化させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乗籠内の乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータの昇降速度変更の自由度が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図1ないし図4を参照して説明する。図1は、本実施形態および後述する第2ないし第4の実施形態に係る可変速エレベータ1の全体を概略的に示す。
【0011】
図1に示すように、可変速エレベータ1は、昇降路2と、乗籠3および釣合いおもり4とを備える。乗籠3および釣合いおもり4は、それぞれ昇降路2内に配置されている。昇降路2内には、乗籠3を案内するガイドレールと、釣合いおもり4を案内するガイドレール5a,5b(図2参照)とがそれぞれ鉛直方向に延設されている。
【0012】
昇降路2の上方には機械室7が設けられている。この機械室7には、巻上機8が設置されている。巻上機8は、メインシーブ9と、このメインシーブ9を回転駆動するモータ10と備える。メインシーブ9には、メインロープ11が巻き掛けられている。このメインロープ11の一端部には、乗籠3が連結されている。またメインロープ11の他端部には、釣合いおもり4が連結されている。これにより巻上機8を駆動すると、乗籠3および釣合いおもり4が昇降路2内を互いに反対方向に昇降動作する。
【0013】
機械室7には、エレベータ1の全体を制御する制御装置12が設けられている。この制御装置12は、巻上機8の駆動を制御し、任意に設定された走行速度で乗籠3を昇降動作させることができる。なお巻上機8および制御装置12は、必ずしも機械室7に設置されたものに限らず、昇降路2内の上部や下部などに設置されたものでもよい。
【0014】
図1に示すように、釣合いおもり4は、本体部15と、質量増減機構16とを備える。図2に示すように、本体部15は、釣合いおもり枠である枠部材21、この枠部材21に搭載される複数のウエイト22(以下、本体ウエイト22)、および例えばガイドローラであるガイド部23a,23bを有する。枠部材21は、一対のガイドレール5a,5bの間に配置されるとともに、メインロープ11に連結されている。枠部材21は、鉛直方向に延びる一対の縦材21a,21bと、この一対の縦材21a,21bの下端部同士の間に水平方向に渡された下梁21cとを備える。枠部材21は、これら縦材21a,21bと下梁21cとが組み立てられ、その内側に本体ウエイト22が搭載可能な積載部を形成している。
【0015】
本体ウエイト22は、枠部材21に着脱自在に搭載される。釣合いおもり4は、枠部材21に対する本体ウエイト22の搭載枚数を変えることにより、当該釣合いおもり4の質量を調整し、オーバーバランスを調整することができる。この本体ウエイト22は、エレベータ機種毎に定められたオーバーバランスを満足するように、質量調整を行うために用いられるものである。そのためこの本体ウエイト22は、エレベータ1の運転時には増減されるものではない。
【0016】
質量増減機構16は、エレベータ1の運転時に釣合いおもり4の質量を機械的に増減させる機構である。本実施形態に係る釣合いおもり4は、この質量増減機構16により当該釣合いおもり4の質量を変化させることで、エレベータ1の運転時に機械的にオーバーバランスを任意に変更可能である。なお本発明でいう「運転時」とは、エレベータの据え付け時や保守点検時ではない時を指し、つまり乗客を運搬する運転中の時間帯を指す。なおこの「運転時」には、乗客不在のために停止している待機時も含まれる。
【0017】
図2に示すように、質量増減機構16は、増量ウエイト31と、増量ウエイト取付機構32とを備える。増量ウエイト31は、釣合いおもり4の質量を機械的に増減させるための錘である。増量ウエイト31は、例えば昇降路2のピット34内に配置されるとともに、例えば釣合いおもり4の本体部15の下部に任意に連結され、釣合いおもり4の下部に位置する。この増量ウエイト31が本体部15に対して着脱されることで、釣合いおもり4の質量が変わる。すなわち釣合いおもり4のオーバーバランスが変更される。
【0018】
図2は、本体部15との連結が解除された状態の増量ウエイト31を示す。図2に示すように、ピット34の底部には、緩衝器台座35と、この緩衝器台座35の上に据え付けられ、非常時に落下した釣合いおもり4を受け止める緩衝器36とが設けられている。そしてこの緩衝器台座35には、増量ウエイト台座37が設けられている。増量ウエイト31は、増量ウエイト台座37の上に載置され、増量ウエイト台座37によって支持されている。
【0019】
図2に示すように、緩衝器36は、釣合いおもり4の下方において鉛直方向に延びている。増量ウエイト31は、緩衝器36に対向する領域に、緩衝器との干渉(すなわち平面干渉)を避けるように開口した貫通孔38を備える。
【0020】
増量ウエイト31は、本体部15との連結が解除されているとき、緩衝器36を貫通孔38に挿通させるようにしてピット34内に配置される。これにより、増量ウエイト31は、緩衝器36と干渉することなく、釣合いおもり4の下方でピット34内に収容される。また増量ウエイト31は、貫通孔38を緩衝器36に貫通させ、この緩衝器36を地震等による外力に対する外れ止めとして利用する。すなわち緩衝器36が外れ止めとしての役割を果たすことで、外力が作用したときの増量ウエイト31の平面移動や崩れ、または落下などが防止される。
【0021】
図2に示すように、緩衝器36は、ピット34に固定された固定部36aと、この固定部36aから上方に突出するとともに固定部36aに対して進退自在な可動部36bとを備える。図4は、緩衝器36の作動時の状態を示す。この図4では、可動部36bが固定部36aの中に入り込み、緩衝器36が全圧縮された状態にある。
【0022】
図4に示すように、増量ウエイト31の高さは、緩衝器36の固定部36aの高さよりも低く形成されている。すなわち増量ウエイト台座37の上に載せられた増量ウエイト31の上端が、緩衝器36を全圧縮した釣合いおもり4に衝突しないようになっている。換言すれば、増量ウエイト31がピット34内にあるときは、増量ウエイト31は常に緩衝器36よりも高さが低くなる。これにより緩衝器36が外れ止めとして効果的に機能する。
【0023】
図2に示すように、増量ウエイト取付機構32は、本体部15の枠部材21に設けられるとともに、本体部15に対して増量ウエイト31を着脱自在に連結する機構である。増量ウエイト取付機構32は、エレベータ1の運転時において釣合いおもり4が最下階に到着したとき、本体部15に対して増量ウエイト31を任意に着脱する。
【0024】
図2に示すように、増量ウエイト31の上端部には、ピン41a,41bが設けられている。ピン41a,41bは、増量ウエイト31の左右の側端部から、増量ウエイト31の水平方向の外側に突出している。
【0025】
一方、増量ウエイト取付機構32は、増量ウエイト31のピン41a,41bに係合可能な連結シャフト42a,42bと、この連結シャフト42a,42bを駆動する制御モータ43a,43bとを有する。制御モータ43a,43bは、連結シャフト42a,42bを駆動してこれら連結シャフト42a,42bを増量ウエイト31のピン41a,41bにそれぞれ係合させる。
【0026】
図3は、本体部15と連結された状態の増量ウエイト31を示す。図3に示すように、連結シャフト42a,42bは、鉛直方向に延びた延伸部45と、この延伸部45の下端部において適宜角度に折れ曲った折曲部46とを有する。延伸部45は、釣合いおもり4が最下階にあるときにピット34の底部に載置された増量ウエイト31に届くように、釣合いおもり4の本体部15から下方に向いて比較的長く延びている。
【0027】
折曲部46は、例えばピン41a,41bの下方に入り込み、ピン41a,41bに引っ掛るように水平方向に折れ曲がっている。連結シャフト42a,42bは、増量ウエイト31の吊り下げに必要な強度を有する。なお連結シャフト43a,43bの個数および形状は、本実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、種々の個数や形状を採用することができる。
【0028】
制御モータ43a,43bは、連結シャフト42a,42bをその周方向に例えば90度回動させる。これにより、連結シャフト42a,42bは、当該連結シャフト42a,42bがピン41a,41bに係合する連結状態(図3参照)と、当該連結シャフト42a,42bとピン41a,41bとの係合が解除される解除状態(図2参照)との間で回動される。
【0029】
上記連結状態では、折曲部46がピン41a,41bの下方に位置し、本体部15が昇降動作するとき、増量ウエイト31は本体部15に伴って昇降路2内を昇降動作する。一方、上記解除状態では、折曲部46がピン41a,41bの下方から外れ、本体部15が昇降動作するとき、増量ウエイト31はピット34に残されることになる。
【0030】
図3に示すように、増量ウエイト31は、連結シャフト42a,42bの下方に鉛直方向に延びる溝48a,48bを備える。この溝48a,48bは、連結シャフト42a,42bを逃げるために形成された溝であり、連結シャフト42a,42bよりも大きな幅を有する。この溝48a,48bは、増量ウエイト31の上下方向全体に形成されている。
【0031】
これにより、図4に示すように緩衝器36が全圧縮される状態にまで釣合いおもり4が下がった場合においても、連結シャフト42a,42bは溝48a,48bを通過するため、緩衝器36の緩衝動作に影響を与えない。
【0032】
制御装置12は、例えば図示しないケーブルを介して釣合いおもり4に電気的に接続されている。制御装置12は、制御モータ43a,43bに対して連結シャフト42a,42bの駆動に関する指令を与える。また制御装置12は、例えば制御モータ43a,43bの動きなどから、本体部15に対する増量ウエイト31の連結の有無を認識する。制御装置12は、釣合いおもり4の質量変化に応じて乗籠3の昇降速度を変化させる。
【0033】
次に、可変速エレベータ1の作用について説明する。
増量ウエイト31の連結および取り外しは、乗籠3が最上階に到着した際、つまり釣合いおもり4が最下階に到着した際に行われる。連結時においては、制御装置12が制御モータ43a,43bに指示を与え、制御モータ43a,43bが回転し、連結シャフト42a,42bの折曲部46が増量ウエイト31のピン41a,41bに引っ掛る。これにより、増量ウエイト31が枠部材21に連結され、釣合いおもり4の質量が増量される。
【0034】
一方、増量ウエイト31の取り外し過程は前記と逆である。すなわち、制御モータ43a,43bを逆回転させ、連結シャフト42a,42bの折曲部46を増量ウエイト31のピン41a,41bから外す。これにより、取り外し動作を完了する。
【0035】
増量ウエイト31を連結すると、釣合いおもり4の下降バランスが改善され、釣合いおもり4の下降速度を増すことができる。そのため制御装置12は、増量ウエイト31が取り外されている状態に比べて、乗籠3の上昇速度を速く設定し、その速い上昇速度で乗籠3を走行させることができる。
【0036】
一方、増量ウエイト31が取り外されると、釣合いおもり4が軽い状態になり、乗籠3が相対的に重くなる。これにより、乗籠3の下降バランスが改善され、乗籠3の下降速度を増すことができる。そのため制御装置12は、増量ウエイト31が連結されている状態に比べて、乗籠3の下降速度を速く設定し、その速い下降速度で乗籠3を走行させることができる。
【0037】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗籠3内の乗客に依存せずにエレベータ1の昇降速度変更の自由度を高くすることができる。すなわちエレベータ1の運転時に釣合いおもり4の質量を機械的に増減させる質量増減機構16を備えると、この釣合いおもり4は、質量を変化させることで、エレベータ1の運転時に乗客に依存せずにオーバーバランスを任意に変更することができる。
【0038】
制御装置12は、釣合いおもり4の質量変化(すなわち任意に変更されるオーバーバランス)に応じて乗籠3の昇降動作の設定速度(すなわち定格速度)を任意に変更することができる。これにより、例えば建物の用途に合わせ、時間帯により昇り速度や降り速度を変化させることができる可変速エレベータ1を提供することができる。
【0039】
上記質量増減機構16が増量ウエイト31と、この増量ウエイト32を取り付ける増量ウエイト取付機構32とを備え、増量ウエイト31が昇降路2のピット34内に配置され、増量ウエイト取付機構32が釣合いおもり4が最下階に到着したときに増量ウエイト31を着脱すると、比較的余裕のあるピット34内の空間を利用して増量ウエイト31を配置することができ、エレベータ1の小型化に寄与する。また比較的重い増量ウエイト31が昇降路2内の最下部に配置されるので安全性の観点からも好ましい。
【0040】
増量ウエイト取付機構32が、増量ウエイト31に係合可能な連結シャフト42a,42bと、この連結シャフト42a,42bを駆動する制御モータ43a,43bとを有すると、比較的簡単な構成により増量ウエイト取付機構32を構成することができる。また、緩衝器36が全圧縮される非常時において、緩衝器36に影響しない増量ウエイト取付機構32を構成することができる。
【0041】
増量ウエイト31が緩衝器36との干渉を避けるように開口した貫通孔38を備え、この増量ウエイト31が緩衝器36を外力に対する外れ止めとして利用すると、すなわち緩衝器36が外れ止めとしての役割を果たすことで、外力が作用したときの増量ウエイト31の平面移動や崩れ、または落下などが防止される。なおこの増量ウエイト31の貫通孔38と緩衝器36の構成、作用、および効果は、後述する第2ないし第4の実施形態においても同じである。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図5ないし図7を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図5および図6に示すように、ピット34には、せり上げ装置51が設けられている。せり上げ装置51は、本体部15に対する増量ウエイト31の取り付け時に、昇降路2のピット34内に配置された増量ウエイト31を本体部へ向けてせり上げる(すなわち持ち上げる)。せり上げ装置51は、例えば緩衝器台座35に設けられ、例えば油圧ジャッキ(図示しない)などにより動作する。増量ウエイト31は、せり上げ装置51の上に載置される。
【0044】
図5は、せり上げ装置51が畳まれた状態を示す。この状態では、せり上げ装置51の上に載置された増量ウエイト31の高さは、緩衝器36の固定部36aよりも低い。すなわち図7に示すように、せり上げ装置51の上に載せられた増量ウエイト31の上端が、緩衝器36を全圧縮した釣合いおもり4に衝突しないようになっている。
【0045】
図6は、せり上げ装置51の作動時の状態を示す。この状態では、増量ウエイト31は、せり上げ装置51により釣合いおもり4の枠部材21の直下まで持ち上げる。この状態で本体部15に対する増量ウエイト31の連結および取り外しが行われる。
【0046】
本実施形態に係る連結シャフト42a,42bの延伸部45は、持ち上げられた増量ウエイト31に届く程度に比較的短く延びている。これにより図7に示すように、緩衝器36が全圧縮される状態にまで釣合いおもり4が下がった場合においても、連結シャフト42a,42bが比較的短いので、緩衝器36の緩衝動作に影響を与えない。
【0047】
制御装置12は、せり上げ装置51に電気的に接続されており、せり上げ装置51に上昇および下降の指令を与える。制御装置12より増量ウエイト31連結の指示が出ると、釣合いおもり4が最下階に到着した時に、或いは到着する寸前に、せり上げ装置51が上昇を開始し、連結シャフト42a,42bに増量ウエイト31が連結できる位置までせり上げ装置51が上昇して停止する。
【0048】
釣合いおもり4が最下階に到着すると、第1の実施形態と同様に、制御モータ43a,43bが回転し、増量ウエイト31の連結動作が完了する。取り外し時の動作は、前記と逆である。上記説明した以外の可変速エレベータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0049】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗籠3内の乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータ1の昇降速度変更の自由度が高くなる。
【0050】
ピット34内に配置された増量ウエイト31を本体部15へ向けてせり上げるためのせり上げ装置51を備えると、上記第1の実施形態に比べて連結シャフト42a,42bの長さを短くすることができる。これは、ピット深さが浅い場合など緩衝器36の全圧縮時における制限がある場合に有効である。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図8ないし図10を参照して説明する。なお上記第1および第2の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図8に示すように、本実施形態では、互いに独立する複数の増量ウエイト31a,31b,31cが配置されている。複数の増量ウエイト31a,31b,31cは、例えば互いに同じ形状に形成されている。複数の増量ウエイト31a,31b,31cは、ピット34内に配置されるとき、せり上げ装置51の上に積層して載置される。
【0053】
例えば第1および第2の実施形態に係るような一体式の増量ウエイト31を複数に分割したものが本実施形態に係る分割式の増量ウエイト31a,31b,31cである。なお増量ウエイト31a,31b,31cの数は、3つに限られない。各増量ウエイト31a,31b,31cには、連結シャフト42a,42bに係合可能なピン41a,41bがそれぞれ設けられている。
【0054】
図8は、せり上げ装置51が畳まれた状態を示す。この状態では、最も上方に位置する増量ウエイト31aの高さは、緩衝器36の固定部36aよりも低い。すなわち図10に示すように、最上位に位置する増量ウエイト31aの上端が、緩衝器36を全圧縮した釣合いおもり4に衝突しないようになっている。
【0055】
図9は、せり上げ装置51の作動時の状態を示す。この状態では、増量ウエイト31は、せり上げ装置51により釣合いおもり4の枠部材21に向けて持ち上げる。この状態で本体部15に対する増量ウエイト31a,31b,31cの連結および取り外しが行われる。本実施形態に係る連結シャフト42a,42bの延伸部45はせり上げ装置51が最大限上昇したときに最下位に位置する増量ウエイト31cに届くように比較的長く延びている。
【0056】
制御装置12は、せり上げ装置51に電気的に接続されており、せり上げ装置51に上昇および下降の指令を与える。本実施形態では、せり上げ装置51の上昇高さを変化させることで、本体部15に連結される増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量を変化させる。
【0057】
制御装置12により指示される増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量により、せり上げ装置51の上昇高さが適宜変動する。制御装置12は、増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量をnとするとき、積層された増量ウエイト31a,31b,31cの上からn番目に位置する増量ウエイトのピン41a,41bが連結シャフト42a,42bに係合する高さになるようにせり上げ装置51を上昇させる。これにより、増量ウエイト取付機構32は、任意の数の増量ウエイト31a,31b,31cを本体部15に連結する。搭載不要分の増量ウエイト31a,31b,31cは、せり上げ装置51に残される。
【0058】
また制御装置12は、搭載される増量ウエイト31a,31b,31cの数に応じて乗籠3の昇降速度の設定を変更する。上記説明した以外の可変速エレベータ1の構成は上記第2の実施形態と同じである。
【0059】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータ1の昇降速度変更の自由度が高くなる。
【0060】
互いに独立する複数の増量ウエイト31a,31b,31cが配置され、増量ウエイト取付機構32が任意の数の増量ウエイト31a,31b,31cを本体部15に連結すると、増量ウエイト31a,31b,31cの数に応じて釣合いおもり4のオーバーバランスを複数設定することができる。すなわち本実施形態に係る可変速エレベータ1は、第1および第2の実施形態に係るエレベータ1に比べて、オーバーバランスを小刻みに調整可能である。そのため制御装置12は、搭載される増量ウエイト31a,31b,31cの数に応じて乗籠3の昇降速度の設定を小刻みに変更することができる。これにより、エレベータ1の昇降速度変更の自由度がさらに高くなる。
【0061】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る可変速エレベータ1について、図11および図17を参照して説明する。なお上記第1ないし第3の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図11に一方の連結シャフト42aを代表して示すように、本実施形態に係る連結シャフト42a,42bは、鍵部61a,61b,61cを備える。鍵部61a,61b,61cは、例えば増量ウエイト31a,31b,31cに対応して複数設けられている。図12に示すように、鍵部61a,61b,61cは、連結シャフト42a,42bの径方向に突出する一対の突起62を有し、連結シャフト42a,42bの周方向に形状が変化する。複数の鍵部61a,61b,61cにおいて、その形状は互いに同じである。
【0063】
一方、図13は、複数の増量ウエイト31a,31b,31cのそれぞれの水平断面を示す。図13に示すように、複数の増量ウエイト31a,31b,31cは、それぞれ上記鍵部61a,61b,61cが挿通される鍵穴部64a,64b,64cを有する。この鍵穴部64a,64b,64cは、複数の増量ウエイト31a,31b,31cにおいて互いに周方向に異なる形状を有する。
【0064】
増量ウエイト取付機構32は、制御モータ43a,43bにより連結シャフト42a,42bを周方向に回転させ、その回転角度により増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を任意に変更する。図14ないし図17を参照して具体的な一例を示す。図14は、挿通時の状態(すなわち連結シャフト42a,42bの回転角度0度)を示す。
【0065】
図15は、挿通時に対して連結シャフト42a,42bの回転角度が30度の状態を示す。この状態では、鍵部61aの突起62のみが増量ウエイト31aに引っかかり、最上位に位置する増量ウエイト31aのみが本体部15に連結される。図16は、挿通時に対して連結シャフト42a,42bの回転角度が60度の状態を示す。
【0066】
この状態では、鍵部61a,61bの突起62が増量ウエイト31a,31bに引っかかり、上位二つの増量ウエイト31a,31bが本体部15に連結される。図17は、挿通時に対して連結シャフト42a,42bの回転角度が90度の状態を示す。この状態では、鍵部61a,61b,61cの突起62が増量ウエイト31a,31b,31cに引っかかり、全ての増量ウエイト31a,31b,31cが本体部15に連結される。
【0067】
このように上位にある増量ウエイト31a,31b,31cほど、小さな回転角度で鍵部61a,61b,61cに引っ掛るように鍵穴部64a,64b,64cを形成すると、連結シャフト42a,42b回転角度を変更することで増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を変更することができる。なお鍵部61a,61b,61cと鍵穴部64a,64b,64cの形状は、上記具体例に限定されるものではなく、種々の形状を用いることができる。
【0068】
制御装置12は、制御モータ43a,43bに電気的に接続されており、制御モータ43a,43bに回転角度に関する指令を与える。せり上げ装置51は、連結シャフト42a,42bに連結できる位置まで増量ウエイト31a,31b,31cを上昇させる。制御装置12により指示される増量ウエイト31a,31b,31cの搭載数量により、連結シャフト42a,42bの回転角度が決まり、連結シャフト42a,42bが回転する。
【0069】
これにより、連結シャフト42a,42bの鍵部61a,61b,61cの突起62に引っ掛る数量の増量ウエイト31a,31b,31cのみが枠部材21に連結される。引っ掛らない増量ウエイト31a,31b,31cは、せり上げ装置51に残されたままとなる。取り外しは連結シャフト42a,42bの回転角度を元に戻すことで行われる。上記説明した以外の可変速エレベータ1の構成は上記第3の実施形態と同じである。
【0070】
このような構成の可変速エレベータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、釣合いおもり4の質量を変化させることで乗客に依存せずにオーバーバランスを変更することができ、エレベータ1の昇降速度変更の自由度が高くなる。
【0071】
連結シャフト42a,42bが鍵部61a,61b,61cを備え、複数の増量ウエイト31a,31b,31cがそれぞれ鍵部61a,61b,61cが挿通される鍵穴部64a,64b,64cを有し、この鍵穴部64a,64b,64cが複数の増量ウエイト31a,31b,31cにおいて互いに周方向に異なる形状を有すると、連結シャフト42a,42bの回転角度により増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を任意に変更することができる。すなわち上記第3の実施形態のようにせり上げ装置51の上昇高さを変更しなくても増量ウエイト31a,31b,31cの搭載個数を変更することができる。
【0072】
以上、本発明の一つの実施形態に係る可変速エレベータ1について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。この発明は実施段階においてその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記第1ないし第4の実施形態に係る各構成要素は、適宜組み合わせて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る可変速エレベータの全体を模式的に示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る増量ウエイトの非連結状態を示す正面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る増量ウエイトの連結状態を示す正面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る釣合いおもり側の緩衝器の全圧縮状態を示す正面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る増量ウエイトの非連結状態を示す正面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る増量ウエイトの連結状態を示す正面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る釣合いおもり側の緩衝器の全圧縮状態を示す正面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る増量ウエイトの非連結状態を示す正面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る増量ウエイトの連結状態を示す正面図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る釣合いおもり側の緩衝器の全圧縮状態を示す正面図。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る連結シャフトの正面図。
【図12】図11中に示された連結シャフトのF12−F12線に沿う断面図。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る増量ウエイトの断面図。
【図14】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト挿通時の断面図。
【図15】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト30度回転時の断面図。
【図16】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト60度回転時の断面図。
【図17】図13に示された増量ウエイトの連結シャフト90度回転時の断面図。
【符号の説明】
【0074】
1…可変速エレベータ、2…昇降路、3…乗籠、4…釣合いおもり、8…巻上機、9…メインシーブ、11…メインロープ、12…制御装置、15…本体部、16…質量増減機構、22…ウエイト、31,31a,31b,31c…増量ウエイト、32…増量ウエイト取付機構、34…ピット、38…貫通孔、42a,42b…連結シャフト、43a,43b…制御モータ、51…せり上げ装置、61a,61b,61c…鍵部、64a,64b,64c…鍵穴部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路と、
上記昇降路内に配置された乗籠と、
上記昇降路内に配置された釣合いおもりと、
上記乗籠に一端部が連結されるとともに、上記釣合いおもりに他端部が連結されたメインロープと、
上記メインロープが巻き掛けられるメインシーブを備えた巻上機と、
上記巻上機の駆動を制御する制御装置と、を具備し、
上記釣合いおもりは、エレベータの運転時に当該釣合いおもりの質量を機械的に増減させる質量増減機構を備え、この釣合いおもりは、質量を変化させることで機械的にオーバーバランスを任意に変更可能であり、
上記制御装置は、上記釣合いおもりの質量変化に応じて上記乗籠の昇降速度を変化させることを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項2】
請求項1の記載において、
上記釣合いおもりは、上記メインロープに連結された枠部材と、この枠部材に搭載される複数のウエイトとを含む当該釣合いおもりの本体部を備え、
上記質量増減機構は、増量ウエイトと、この増量ウエイトを上記本体部に着脱自在に連結する増量ウエイト取付機構とを備え、
上記増量ウエイトは、上記昇降路のピット内に配置され、
上記増量ウエイト取付機構は、エレベータの運転時において上記釣合いおもりが最下階に到着したときに上記本体部に対して上記増量ウエイトを任意に着脱することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項3】
請求項2の記載において、
上記増量ウエイト取付機構は、上記本体部に設けられるとともに、上記増量ウエイトに係合可能な連結シャフトと、この連結シャフトを駆動して上記連結シャフトを上記増量ウエイトに係合させる制御モータとを有することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項4】
請求項3の記載において、
上記本体部に対する上記増量ウエイトの取り付け時に、上記昇降路のピット内に配置された上記増量ウエイトを上記本体部へ向けてせり上げるためのせり上げ装置を備えたことを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項5】
請求項4の記載において、
上記増量ウエイトは、互いに独立するものが複数配置され、
上記増量ウエイト取付機構は、任意の数の上記増量ウエイトを上記本体部に連結することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項6】
請求項5の記載において、
上記連結シャフトは、その周方向に形状が変化する鍵部を備え、
上記複数の増量ウエイトは、それぞれ上記鍵部が挿通される鍵穴部を有し、この鍵穴部は、上記複数の増量ウエイトにおいて互いに周方向に異なる形状を有し、
上記増量ウエイト取付機構は、上記制御モータにより上記連結シャフトを周方向に回転させ、その回転角度により上記増量ウエイトの搭載個数を任意に変更することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項7】
請求項2または6の記載において、
上記昇降路のピットには、鉛直方向に延びる緩衝器が設けられ、
上記増量ウエイトは、上記緩衝器との干渉を避けるように開口した貫通孔を備え、この増量ウエイトは、上記緩衝器を上記貫通孔に挿通させることで上記釣合いおもりの下方で上記ピット内に載置されるとともに、当該増量ウエイトは、上記緩衝器を外力に対する外れ止めとして利用することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項1】
昇降路と、
上記昇降路内に配置された乗籠と、
上記昇降路内に配置された釣合いおもりと、
上記乗籠に一端部が連結されるとともに、上記釣合いおもりに他端部が連結されたメインロープと、
上記メインロープが巻き掛けられるメインシーブを備えた巻上機と、
上記巻上機の駆動を制御する制御装置と、を具備し、
上記釣合いおもりは、エレベータの運転時に当該釣合いおもりの質量を機械的に増減させる質量増減機構を備え、この釣合いおもりは、質量を変化させることで機械的にオーバーバランスを任意に変更可能であり、
上記制御装置は、上記釣合いおもりの質量変化に応じて上記乗籠の昇降速度を変化させることを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項2】
請求項1の記載において、
上記釣合いおもりは、上記メインロープに連結された枠部材と、この枠部材に搭載される複数のウエイトとを含む当該釣合いおもりの本体部を備え、
上記質量増減機構は、増量ウエイトと、この増量ウエイトを上記本体部に着脱自在に連結する増量ウエイト取付機構とを備え、
上記増量ウエイトは、上記昇降路のピット内に配置され、
上記増量ウエイト取付機構は、エレベータの運転時において上記釣合いおもりが最下階に到着したときに上記本体部に対して上記増量ウエイトを任意に着脱することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項3】
請求項2の記載において、
上記増量ウエイト取付機構は、上記本体部に設けられるとともに、上記増量ウエイトに係合可能な連結シャフトと、この連結シャフトを駆動して上記連結シャフトを上記増量ウエイトに係合させる制御モータとを有することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項4】
請求項3の記載において、
上記本体部に対する上記増量ウエイトの取り付け時に、上記昇降路のピット内に配置された上記増量ウエイトを上記本体部へ向けてせり上げるためのせり上げ装置を備えたことを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項5】
請求項4の記載において、
上記増量ウエイトは、互いに独立するものが複数配置され、
上記増量ウエイト取付機構は、任意の数の上記増量ウエイトを上記本体部に連結することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項6】
請求項5の記載において、
上記連結シャフトは、その周方向に形状が変化する鍵部を備え、
上記複数の増量ウエイトは、それぞれ上記鍵部が挿通される鍵穴部を有し、この鍵穴部は、上記複数の増量ウエイトにおいて互いに周方向に異なる形状を有し、
上記増量ウエイト取付機構は、上記制御モータにより上記連結シャフトを周方向に回転させ、その回転角度により上記増量ウエイトの搭載個数を任意に変更することを特徴とする可変速エレベータ。
【請求項7】
請求項2または6の記載において、
上記昇降路のピットには、鉛直方向に延びる緩衝器が設けられ、
上記増量ウエイトは、上記緩衝器との干渉を避けるように開口した貫通孔を備え、この増量ウエイトは、上記緩衝器を上記貫通孔に挿通させることで上記釣合いおもりの下方で上記ピット内に載置されるとともに、当該増量ウエイトは、上記緩衝器を外力に対する外れ止めとして利用することを特徴とする可変速エレベータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−215049(P2009−215049A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63016(P2008−63016)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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