可変領域におけるグリコシル化を有するアミロイドβ4に対する抗体
本発明は、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする、精製された抗体分子調製物に関する。より具体的には、β-A4ペプチド/Aβ4を特異的に認識可能である、該抗体分子及び抗体混合物を含む医薬組成物及び診断組成物が提供される。本発明は特に、重鎖の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を有する1つ又は2つのグリコシル化抗原結合部位を含む抗体混合物、すなわち、重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化Asnを含む抗体アイソフォーム混合物に関する。特異的にグリコシル化された抗体アイソフォームを含む組成物及び抗体調製物もまた開示される。さらに、これらの抗体の医薬使用及び診断使用が提供される。抗体アイソフォームは例えば、アミロイド形成若しくはアミロイドプラーク形成の医薬介入及び/又はアミロイド形成若しくはアミロイドプラーク形成の診断に使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする精製された抗体分子調製物に関する。より具体的には、β-A4ペプチド/Aβ4を特異的に認識可能であり、重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化を含む精製された抗体分子が提供される。本発明は、重鎖の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を有する1つ又は2つのグリコシル化抗原結合部位を含む抗体混合物、すなわち、重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化Asnを含む抗体アイソフォーム混合物に関する。特異的にグリコシル化された抗体アイソフォームを含む組成物又は抗体調製物も開示される。さらに、これらの抗体の医薬使用及び診断使用が提供される。抗体アイソフォームは例えば、アミロイド形成若しくはアミロイドプラーク形成の医薬介入及び/又はアミロイド形成若しくはアミロイドプラーク形成の診断に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
痴呆の全症例の約70%は、認識に重要な脳領域及び神経回路の選択的損傷と関連するアルツハイマー病のためである。アルツハイマー病は、特に海馬の錐体神経における神経原線維錯綜及び有芯のアミロイド沈着及び拡散した輪状を含む多くのアミロイドプラークによって特徴付けられる。
【0003】
細胞外神経炎性プラークは、「アミロイドβ」、「A-β」、「Aβ4」、「β-A4」又は「Aβ」と呼ばれる、多量の繊維状ペプチドを主に含む;Selkoe (1994), Ann. Rev. Cell Biol. 10, 373-403, Koo (1999), PNAS Vol. 96, pp. 9989-9990, US 4,666,829 又はGlenner (1984), BBRC 12, 1131を参照。このアミロイドβは「アルツハイマー前駆体タンパク質/β−アミロイド前駆体タンパク質」(APP)に由来する。APPは内在性糖タンパク質であり(Sisodia (1992), PNAS Vol. 89, pp. 6075を参照)、細胞膜プロテアーゼであるα−セクレターゼによってAβ配列内でエンドプロテアーゼ切断される(Sisodia (1992), 上記引用を参照)。さらに、更なるセクレターゼ活性、特にβ−セクレターゼ活性及びγ−セクレターゼ活性は、39アミノ酸(Aβ39)、40アミノ酸(Aβ40)、42アミノ酸(Aβ42)又は43アミノ酸(Aβ43)のいずれかを含むアミロイド−β(Aβ)の細胞外放出をもたらす;Sinha (1999), PNAS 96, 11094-1053; Price (1998), Science 282, 1078 〜 1083; WO 00/72880 又は Hardy (1997), TINS 20, 154を参照。
【0004】
Aβはいくつかの天然形態を有し、ヒト形態は上記のAβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42 及びAβ43と呼ばれることに注目する。最も主要な形態であるAβ42は(N末端から始まる)アミノ酸配列
を有する。Aβ41、Aβ40、Aβ39において、C末端アミノ酸であるA、IA及びVIAがそれぞれ欠損している。Aβ43形態において、更なるトレオニン残基が上記配列(配列番号3)のC末端に含まれる。
【0005】
Aβ40原線維の核化に要する時間はAβ42原線維の核化に要する時間よりも有意に長いことが示された;Koo, 上記引用 and Harper (1997), Ann. Rev. Biochem. 66, 385-407を参照。Wagner (1999), J. Clin. Invest. 104, 1239-1332に概説されるように、Aβ42は神経炎性プラークと関連してより頻繁に見出されており、インビトロでより原線維状であると考えられる。Aβ42は秩序立った非結晶化Aβペプチドの核化依存性重合における「種」として働くことも提案された; Jarrett (1993), Cell 93, 1055-1058。
【0006】
修飾APPプロセシング及び/又はタンパク質沈着を含む細胞外プラークの発生は、アルツハイマー病だけでなく、他の神経学的障害及び/又は神経変性障害を患う被験体からも公知である。これらの障害は、特に、ダウン症候群、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、クロイツフェルトヤコブ病、HIV関連痴呆及び運動神経障害を含む。
【0007】
現在まで、アミロイド関連疾患のための限定された医学介入計画だけが記載されている。例えば、ガランタミン、リバスチグミン又はドネペジルのようなコリンエステラーゼインヒビターが軽度から中度な疾患のみを有するアルツハイマー病患者に有益であると議論されている。しかしながら、これらの薬物のコリン作動性作用のために有害な事象もまた報告されている。これらのコリン作動性増強処置はいくつかの症状の有益性をもたらすが、治療応答は処置される大半の患者について満足ではない。有意な認知改善は処置された患者の約5%のみで生じると推定されており、処置が有意にこの進行性疾患の経過を変更するという証拠はほとんど無い。結果として、より有効な処置及び特に疾患の進行を止める又は遅らせることができる処置のための大きな臨床的必要性がある。メマンチンのようなNMDAレセプターアンタゴニストはまた、より最近使用されている。しかし、薬理学的活性のために有害な事象が報告されている。さらに、これらのNMDAレセプターアンタゴニストを用いたかかる処置は、疾患を改変するアプローチではなく、症候的アプローチとして単に考慮され得る。
【0008】
アミロイド関連障害の処置のための免疫モジュレーションアプローチがまた、提案されている。WO 99/27944は、Aβペプチドの部分及び免疫応答を高める担体分子を含む結合体を開示している。別の能動免疫アプローチは、Aβ断片が免疫応答を誘導するために使用されるWO 00/72880に言及されている。
【0009】
一般的な抗Aβ抗体を用いる受動免疫アプローチはまた、WO 99/27944又はWO 01/62801に提案されており、Aβの部分に対して指向された特異的ヒト化抗体がWO 02/46237、WO 02/088306 及びWO 02/088307に記載されている。WO 00/77178は、加水分解中のβ−アミロイドがとる移行状態の抗体結合を記載している。WO 03/070760は、Aβペプチド上の2つの不連続なアミノ酸配列を認識する抗体分子を開示している。
【0010】
抗体の可変領域におけるグリコシル化がWallick (1988) J. Exp. Med. 168, 1099-1109に仮定されて以来、WO 03/016466が、重鎖における任意の潜在的なグリコシル化を回避するために修飾されたヒト化抗Aβ抗体を記載している。
【0011】
本発明の基礎となる技術課題は、アミロイド障害の医学管理における有効な手段及び方法、特に(対応する)医学介入を必要とする患者の有害なアミロイドプラークの減少のための手段及び方法を提供することである。
【0012】
第一の局面において、本発明は、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする精製された抗体分子を提供する。本明細書に提供される発明の精製された抗体又は抗体組成物は特にAβ及び/又はAβの断片に対して指向される。本明細書に提供される精製された抗体分子及び特に本発明の抗体組成物又は抗体調製物はアミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患の処置、緩和及び予防のための医薬組成物又は診断組成物の調製に有用である。かかる疾患の例はアルツハイマー病である。
【0013】
本発明の文脈において、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖の可変領域におけるN結合グリコシル化を含む精製された抗体分子が例えば、アミロイドプラークの減少に特に有用であると見出されたことは驚きであった。さらに、本明細書に提供されるグリコシル化抗体又は抗体組成物が、非常に効果的なプラーク結合によって例示されるようなインビボでの血液脳関門/血管脳境界を横断する点で特に有用及び有効であることが本発明の文脈において見出されている。
【0014】
これは先行技術の教示と全く対比される。WO 03/016466は、重鎖のN-グリコシル化部位を欠くように特別に設計された抗体を開示しており、可変領域フレームワークにおけるグリコシル化は抗体結合親和性に対してネガティブな効果があると教示する。重鎖可変CDR2領域の脱グリコシル化形態の記載される抗−Aβ抗体がインビトロで合成及び精製されたAβペプチドに顕著に高い親和性を有することが先行技術に教示されている。
【0015】
従って、本発明は、改善された、精製された抗体分子、又は抗体調製物、特にAβ4/Aβペプチド(アミロイドβ)に対して指向され、かつインビボで非常に有効な抗体分子調製物に関する。本抗体分子/抗体調製物の改善は、重鎖の可変領域の少なくとも1つにおいて、例えば該重鎖の可変領域のCDR2領域において、N-グリコシル化を含む、精製された抗体分子の提供によるものである。上記のように、これは、かかるN-グリコシル化が例えばAβに対して指向される抗体において回避されなければならないことを教示するWO 03/016466のような先行技術と対比される。
【0016】
本発明の抗体分子の例は、免疫グロブリン、例えばIgG分子である。IgGは2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むことを特徴とし(例えば図14に例示される)、これらの分子は2つの抗原結合部位を含む。前記抗原結合部位は重鎖(VH)の部分及び軽鎖(VL)の部分から構成される「可変領域」を含む。抗原結合部位はVHドメイン及びVLドメインの並列によって形成される。抗体分子又は免疫グロブリン分子の一般情報について、Abbas “Cellular and Molecular Immunology”, W.B. Sounders Company (2003)のような一般の教科書も参照されたい。
【0017】
1つの局面において、例えば、本発明において特徴付けられる免疫グロブリン分子の提供において、1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の対応する可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含む抗体が記載される。前記抗体は以下「モノグリコシル化抗体」と呼ばれる;図14も参照。
【0018】
別の局面において、両方の抗原結合部位が対応する重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含む免疫グロブリン分子が提供される。前記抗体分子は以下「二重グリコシル化抗体」と呼ばれる;図14を参照。
【0019】
抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含まない免疫グロブリンは、以下「非グリコシル化抗体」と呼ばれる。
【0020】
モノグリコシル化抗体、二重グリコシル化抗体、及び非グリコシル化抗体は、同一のアミノ酸配列又は異なるアミノ酸配列を含み得る。用語「抗体」は、従って、抗体分子、特に免疫グロブリンのような組み換え生成された抗体分子を含む。しかし、以下で議論されるように、用語「抗体分子」はまた、単鎖抗体、又は単鎖Fv断片(scAB/scFv)又は二重特異的抗体構築物のような、公知の免疫グロブリンのアイソフォーム及び修飾物を含み、該アイソフォーム及び修飾物は、本明細書に定義される少なくとも1つのグリコシル化VH領域を含むように特徴付けられる。かかるアイソフォーム又は修飾物の具体例はVH-VL又はVL-VH形式のsc(単鎖)抗体であり得、該VHは、本明細書に記載されるグリコシル化を含む。また、二重特異的scFvが、例えば、VH-VL-VH-VL、VL-VH-VH-VL、VH-VL-VL-VH形式で提供され、CDR2領域中に本明細書に記載されるグリコシル化を含む。
【0021】
本発明の文脈において、用語「抗体」(大文字のANTIBODY)はより明確さを提供するために使用される。しかし、小文字(antibody)で使用される用語「抗体」もまた、本出願の文脈において使用される。抗体(「ANTIBODY」/「ANTIBODIES」/「antibody」及び「antibodies」)は互換的に使用される。
【0022】
モノグリコシル化抗体及び二重グリコシル化抗体は本明細書で「グリコシル化抗体アイソフォーム」と呼ばれる。少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする精製された抗体分子は、二重グリコシル化抗体及び非グリコシル化抗体から選択されるアイソフォームを含まないか、あるいは非常に低い程度でアイソフォームと関連するモノグリコシル化抗体、すなわち、「精製されたモノグリコシル化抗体」である。本発明の文脈において、二重グリコシル化抗体は、モノグリコシル化抗体及び非グリコシル化抗体から選択されるアイソフォームを含まないか、あるいは非常に低い程度でアイソフォームと関連し、すなわち、「精製された二重グリコシル化抗体」である。
【0023】
用語「〜を含まないか、あるいは非常に低い程度で」は、個々の他の(グリコシル化)アイソフォームの完全な非存在又は多くとも10%、例えば、多くとも5%、例えば、多くとも4%、例えば、多くとも3%、例えば、多くとも2%、例えば、多くとも1%、例えば、多くとも0.5%、例えば、多くとも0.3%、例えば、多くとも0.2%の濃度の、別の(グリコシル化)アイソフォームの存在を意味する。これに関する更なる情報は以下及び添付の実施例に提供される。
【0024】
本発明の文脈において、用語「モノグリコシル化抗体」は、個々の抗体分子、例えば、免疫グロブリン、例えば、IgG、例えば、IgG1の1つの(VH)領域におけるN-グリコシル化を含む抗体分子に関する。例えば、前記「モノグリコシル化形態」は、以下に定義されるように重鎖の1つの可変領域、例えば、位置アスパラギン「Asn 52」にグリコシル化を含む。この「モノグリコシル化IgG1形態又はモノグリコシル化アイソフォーム」はまた、本明細書に例示されるように、Fc-部分の十分に保存されたグリコシル化部位、例えば、非可変Fc-部分のアスパラギンAsn 306にグリコシル化を含み得る。
【0025】
本発明の意味において、用語「二重グリコシル化抗体」は、重鎖(VH)領域の両方の可変領域に本明細書に定義されるグリコシル化を含む。また、この「二重グリコシル化形態」は、以下に詳しく説明され、添付の実施例に例示するように、両方の重鎖の可変領域、特に位置アスパラギンAsn 52にグリコシル化を含む。この「二重グリコシル化IgG1形態又は二重グリコシル化アイソフォーム」はまた、本明細書に例示されるように、非可変/定常Fc-部分の十分に保存されたグリコシル化部位、特に例示される免疫グロブリンの位置306に、グリコシル化を含み得る。添付の図14が対応する抗体分子を例示する。
【0026】
可変領域、例えば、重鎖の両方の可変領域(両方の(VH)-領域)におけるかかる翻訳後修飾がない抗体は、本発明の文脈において、重鎖の可変領域におけるグリコシル化を含まない「非グリコシル化形態」とみなされる。なお、この「非グリコシル化形態」は、それにも関らず抗体の定常領域(C-領域)、例えば、最も一般的にFc-部分の十分に保存されたグリコシル化部位、特に本明細書に定義されるように非可変/定常Fc-部分におけるアスパラギン(Asn)306にグリコシル化を含み得、配列番号6も参照。
【0027】
重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)は、相補性決定領域2(CDR2 領域)に存在し得る。前記重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)は、以下に定義され、配列番号2に示されるように可変領域の52位(又は本明細書に開示されるような抗体重鎖のFc-部分も含む配列番号6の52位)に存在し得る。
【0028】
抗体アイソフォームはまた、抗体分子の定常/可変領域部分に、例えばIgGのFc-部分に、例えばIgG1のFc-部分に更なるグリコシル化を含み得る。前記Fc-部分のグリコシル化は、十分に保存されたグリコシル化に関し、例えば、以下の配列:
による重鎖の位置Asn306に位置することを特徴とする。
【0029】
この配列はまた、以下で明細書に記載され、CDR、CH-領域、重鎖及び2つのN−グリコシル化部位(N52及びN306)が示される。
【0030】
本発明の抗体のIgG-Fc領域は、鎖間ジスルフィド結合ヒンジ領域、グリコシル化CH2ドメイン、CH2のアスパラギン306(Asn-306)の支持N−結合オリゴ糖、及び非共有対のCH3ドメインから構成されるホモダイマーであり得る。オリゴ糖のAsn-306のグリコシル化はバイアンテナ複合型であり、外腕糖の様々な付加を有する核(core)七糖骨格構造を含み得る。
【0031】
オリゴ糖はFc構造及び機能に影響するか、あるいは決定する(Jefferis(1998)
Immunol Rev. 163, 50-76)。エフェクター機能、ナンバリングされる特定のIgG-Fc/エフェクターリガンド相互反応が議論されている(Jefferis (2002) Immunol Lett. 82(1-2), 57-65 及び Krapp (2003) J Mol Biol. 325(5), 979-89)。この保存されたFc-位置Asn-306は、Kabat-system (Kabat (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda MD.)の「Asn-297」に対応する。
【0032】
例示される重鎖は、以下の配列:
によってコードされ得る。
【0033】
前記重鎖はまた、(特に組み換え生成における)「リーダー配列」のような、更なる配列を含み得る。対応する例は以下の配列:
によってコードされる。
【0034】
対応するアミノ酸配列は、
である。
【0035】
上記配列はまた、「シグナルぺプチド」を含み、該シグナルペプチドは、CHO細胞のような、宿主細胞における本発明の抗体分子の産生中の分泌経路中の宿主シグナルペプチダーゼによってタンパク質切断される。
【0036】
あるいは、前記重鎖は以下の配列:
に例示される組み換え生成に最適化した核酸配列によってコードされ得る。
【0037】
配列番号23として上記に示される「代替的」タンパク質配列は、更なるイントロン及び少し異なる「リーダー配列」/「シグナル配列」のような少し異なるゲノム組織化においてではあるが、第一代替物と同じコード配列を含む。前記「リーダー配列」はまた、上記に示されるように(更なる)イントロンを含み得る。当業者は容易に、従来の方法によって対応するエキソン/イントロン構造を本明細書に示すような配列中に推定する立場にある。
【0038】
本明細書に記載され、例示される抗体はまた、軽鎖を含み得、該軽鎖は以下のアミノ酸配列
を含み得るか、あるいは有し得、
以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0039】
本明細書に記載され、例示される抗体の「軽鎖」はまた、技術的生成において特に有用な「リーダー配列」を含み得る。対応する配列は以下の配列:
であり得る(又は例えば、ベクター系に含まれ得る)。
【0040】
前記配列は以下のアミノ酸配列
をコードする。
【0041】
あるいは、前記軽鎖はまた、以下の配列:
に例示される組み換え生成に最適化した核酸配列によってコードされ得る。
【0042】
例示される軽鎖のための上記「配列」はまた、少し異なるゲノム構造を有する。この「代替的配列」は異なるイントロン及び/又は更なるイントロンを含む。従って、「重鎖」を記載する態様は、本明細書で必要な変更を加えて適用する。
【0043】
本発明の文脈において、用語「抗体分子」は、全長免疫グロブリン分子、例えば、IgM、IgD、IgE、IgA、若しくはIgG1、IgG2、IgG2b、IgG3若しくはIgG4のようなIgG及びFab-断片、Fab’-断片、F(ab)2-断片、キメラF(ab)2断片若しくはキメラFab’ 断片、キメラFab-断片若しくは単離VH-領域若しくはCDR-領域(該単離VH-領域若しくはCDR-領域は、例えば、対応する「フレームワーク」に統合される又は設計される)のようなかかる免疫グロブリン分子の部分に関する。少なくとも1つの抗原結合部分/ペプチド、例えば WO 00/24782に記載されるペプチド体に結合したビヒクルとしての抗体Fcドメインを含む二抗体分子が用語「抗体分子」にも含まれる。従って、本発明の文脈において、用語「重鎖(VH)の可変領域」は、全長免疫グロブリンの可変領域に限定されないだけでなく、CDR1、2、及び/若しくは3単独又はこれらを組み合わせてのいずれかのようなCDR、該重鎖(VH)の可変領域の対応する部分又は可変領域の対応する「フレームワーク」に関する。従って、本発明の抗体分子はまた、抗原結合部位として、CDR又はグリコシル化重鎖(VH)の所定の可変領域の少なくとも1つのCDRを含む、抗体構築物であり得る。本発明の抗体構築物において該重鎖(VH)の可変領域の対応する部分は本明細書で定義されるようにグリコシル化され、例えば、抗原結合部位のグリコシル化アスパラギン(Asn)を含む。重鎖(VH)の可変領域のかかる「単離部分」の例は、配列番号12に含まれ (又は配列番号11に示される核酸配列によってコードされる)、本明細書に例示されるCDR2領域である。さらに、用語「抗体分子」は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト化抗体のような、修飾抗体分子及び/又は改変抗体分子に関する。
【0044】
前記「完全ヒト化抗体」分子はまた、「完全にヒト」の抗体として特徴付けられ、記載される。これら全ての抗体は、先行技術で公知の方法によって作製され得る。例えば、ファージディスプレイ技術によって、組み換え抗体分子は、Knappik(2000) J Mol Biol. 296(1), 57-86. 及び Rauchenberger(2003) J Biol Chem. 278(40), 38194-205に記載されるように完全ヒト免疫グロブリンγ、サブクラス1フレームワーク(IgG1)を使用する、インビトロ変異の使用によって作製され得る。
【0045】
添付の実施例に記載されるように、用語「抗体」は、例えば、IgG分子及びIgG1に関する。該用語はまた、修飾又は改変のモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体並びに組み換え又は合成的に作製/合成された抗体に関する。該用語はまた、インタクト抗体、並びに別々にされた軽鎖及び重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab’、F(ab’)2のような、その抗体断片/部分に関する。用語「抗体分子」はまた、単鎖Fv(scFv)又は抗体融合タンパク質のような、抗体派生物、二官能性抗体及び抗体構築物を含む。本明細書に定義されるようなグリコシル化VH ドメイン、例えばグリコシル化VH-CDRを含む、触媒抗体及び/又はタンパク質分解抗体も提供される。用語「抗体分子」はまた、(例えば、Aβ/Aβに対する)1つの特性の他に、別の特性又は更なる特性を含み得る組み換え生成された抗体分子/抗体構築物に関する。かかる構築物は、「二重特異的」構築物又は「三重特異的」構築物を含み得るが、これに限定されない。本発明の用語「抗体分子」についての更なる詳細が以下の明細書に提供される。
【0046】
上記に指摘したように、少なくとも1つの抗原結合部位、例えば、本明細書に定義され、グリコシル化されている重鎖の少なくとも1つの可変領域に本明細書に定義されるグリコシル化を含む単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二価抗体構築物、抗体融合タンパク質、交差クローン抗体又は合成抗体も提供される。例えば、単鎖抗体が作製される場合、本明細書に定義される「重鎖の可変領域」は、重鎖自体に限定されないが、例えば、IgGのような全長免疫グロブリンの、全長抗体の重鎖に由来する対応部分に関することも意味する。かかる部分は、対応するCDR単独又はその対応するフレームワークの部分と共に、のいずれかであり得る。さらに、免疫グロブリン遺伝子の遺伝子バリアントがまた、本発明の文脈において提供される。例えば、免疫グロブリン重鎖Gサブクラス1(IgG1)の遺伝子バリアントは、CH1ドメインのG1m(17)又はG1m(3)アロタイプマーカー、又はCH3ドメインのG1m(1)又はG1m(非−1)アロタイプマーカーを含み得る。ここで、好ましくは、Gm(17)(z)及びGm(1)(a)アロタイプのIgGが使用される。本発明の抗体分子はまた、向上した又は減衰したFcレセプター結合又は補体活性化を有する変異IgGのような修飾抗体又は変異抗体を含む。1つの態様において、本発明によって提供される抗体は、完全ヒト化抗体又は「完全にヒト」の抗体である。従って、本発明の抗体はまた、交差クローン抗体、すなわち、本明細書に記載されるような1つ以上の親抗体又は親和性最適化抗体からの異なる抗体領域(例えば、CDR領域)を含む抗体を含み得る。これらの交差クローン抗体はいくつかの異なるフレームワーク、例えば、IgG-フレームワーク、例えば、(ヒト)IgG1-フレームワーク、IgG2aフレームワーク又はIgG2b-フレームワークの抗体であり得る。例えば、前記抗体フレームワークは、哺乳動物、例えば、ヒトフレームワークである。軽鎖及び重鎖上のドメインは、同じ一般構造を有し、各ドメインは4つのフレームワーク領域を含み、これらの配列は相対的に保存され、相補性決定領域(CDR1〜3)として公知の3つの超可変ドメインと結合されている。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ヒトフレームワーク領域」は、天然ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域に実質的に同一(約85%以上、通常、90〜95%以上)であるフレームワーク領域に関する。抗体のフレームワーク領域(例えば、構成性軽鎖及び重鎖が組み合わされたフレームワーク領域)はCDRを位置づけ及び整列するために役立つ。CDRは、抗原のエピトープに結合するために主に重要である。本明細書に記載される交差クローン抗体が好ましい(ヒト)抗体フレームワークに存在し得るだけなく、本明細書に記載される抗体からのCDRを含む抗体分子が免疫グロブリンフレームワークに導入され得ることに注意されたい。フレームワークのための例は、IgG1、IgG2a及びIgG2bを含む。特に配列番号6に示されるような抗体の重鎖のような、ヒトフレームワーク及びヒトIgG1フレームワークが最も好ましい。
【0048】
1つの態様において、抗体アイソフォームは、以下のアミノ酸:
を含むCDR1領域を重鎖可変領域に含み得る。
【0049】
前記CDR1は、以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0050】
抗体アイソフォームは重鎖の可変領域に以下のCDR2:
を含み得る。
【0051】
前記CDR2は以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0052】
本発明によるN-グリコシル化は、例えば前記CDR2領域に含まれ、重鎖の可変領域の対応するAsn52に位置し、該可変領域(VH)は配列番号1に示される核酸分子によってコードされ、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する。
【0053】
さらに、抗体アイソフォームは、以下のアミノ酸配列:
を含むCDR3を重鎖可変領域に含み得る。
【0054】
前記CDR3は、以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0055】
抗体アイソフォームは以下のCDR:
によって特徴付けられ得る軽鎖(L)を含み得る。
【0056】
抗体アイソフォームは、抗体の重鎖のアミノ酸配列に、例えば、(Kabat (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Bethesda, Md.: National Center for Biotechnology Information, National Library of MedicineのKabat-systemにおいて、「Asn297」に対応する)非可変Fc部分のAsn306の十分に保存されたグリコシル化部位に(Asn-X-Ser/Thrモチーフを含む先行技術で公知の)更なる潜在的なグリコシル化部位を含み得、該重鎖は、上記、つまりは(配列番号5によってコードされる)配列番号6に提供される配列であるか又は含む。
【0057】
本発明の一態様において、抗体アイソフォームは、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含み、該VHは
(a) 配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子:
(b) 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子
(c) (a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子;
(d) (a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子であって、該β-A4ペプチドAβ4又はその断片上の少なくとも2つの領域が、配列番号3の3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、核酸分子;又は
(e) (a)〜(d)いずれかに定義される核酸配列に縮重である核酸配列
によってコードされることを特徴とする。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「(a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする、核酸分子」は、二重鎖核酸分子のコーディング鎖に関し、非コーディング鎖が(a)及び(b)の上記で同定される核酸分子にハイブリダイズするという事実を当業者は認識する。
【0059】
上記に指摘するように、本明細書に定義されるAsn-グリコシル化を含む精製された抗体分子は特に、グリコシル化Asnを含む可変領域が:
(a) 配列番号5、23又は25に示される核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチド;
(b) 配列番号6又は26に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド;
(c) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチド;又は
(d) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリぺプチドであって、該β-A4ペプチドAβ4又はその断片上の2つの領域は3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、重鎖ポリぺプチド
からなる群より選択される重鎖に含まれる抗体分子として特徴付けられ得、記載され得る。
【0060】
上記に同定される抗体(例えば、本発明の例示される抗体)はまた、以下のアミノ酸配列:
を有するL鎖
又は例えば、以下の核酸配列:
によってコードされるL鎖を含み得る。
【0061】
上記に記載するように、重鎖における本明細書に定義されるAsn-グリコシル化を含む精製された抗体分子はさらに:
(a) 配列番号7、21、24又は27に示される核酸分子によってコードされる軽鎖ポリペプチド;
(b) 配列番号8、22又は28に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチド;
(c) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる軽鎖ポリペプチド; 又は
(d) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる軽鎖ポリぺプチド
からなる群より選択される軽鎖を含み得る。
【0062】
核酸分子/DNA配列と関連して本明細書で使用される用語「ハイブリダイゼーション」又は「ハイブリダイズする」は、ストリンジェント又は非ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションに関し得る。さらに特定されない場合、条件は好ましくは非ストリンジェントである。前記ハイブリダイゼーション条件は例えば、Sambrook, Russell "Molecular Cloning, A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (2001); Ausubel, "Current Protocols in Molecular Biology", Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989), 又は Higgins and Hames (編) "Nucleic acid hybridization, a practical approach" IRL Press Oxford, Washington DC, (1985)に記載される従来のプロトコールに従って確立され得る。条件の設定は十分に、当業者の範囲内であり、当該分野で記載されるプロトコールに従って決定され得る。従って、特異的にハイブリダイズする配列のみの検出は通常、65°Cでの0.1xSSC、0.1%SDSのようなストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件を必要とする。相同配列又は正確に相補的でない配列の検出のための非ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は65℃の6xSSC、1% SDSに設定され得る。周知のように、プローブの長さ及び決定される核酸組成がさらにハイブリダイゼーション条件のパラメーターを構成する。上記条件におけるバリエーションはハイブリダイゼーション実験におけるバックグラウンドを抑制するために使用される代替ブロッキング試薬の含有及び/又は置換によって達成され得ることに注意されたい。典型的なブロッキング試薬としては、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、及び市販で入手可能な専売製剤が挙げられる。特定のブロッキング試薬の含有は、適合性の問題のために、上記ハイブリダイゼーション条件の改変を必要とし得る。ハイブリダイズする核酸分子はまた、上記分子の断片を含む。かかる断片は、本明細書中に定義される非機能的抗体分子又はその非機能的断片又はCDRをコードし、かつ少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも21ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも60ヌクレオチドの長さを有する核酸配列を表し得る。さらに、前記核酸分子のいずれかとハイブリダイズする核酸分子はまた、これら分子の相補的な断片、派生物及び対立バリアントを含む。さらに、ハイブリダイゼーション複合体とは、相補的G塩基及びC塩基間並びに相補的A塩基及びT塩基間での水素結合の形成による2つの核酸配列間の複合体のことをいう;これらの水素結合は塩基スタッキング相互作用によってさらに安定化される。2つの相補的核酸配列はアンチパラレルな配向で水素結合する。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中(例えば、Cot分析又はRot分析)又は溶液中に存在する核酸配列及び固相支持体(例えば、膜、フィルター、チップ、ピン、又は例えば細胞が固定されたスライドガラス)に固定された別の核酸配列間で形成され得る。用語相補的又は相補性とは、許容な塩及び温度条件下で塩基対形成するポリヌクレオチドの天然結合のことをいう。例えば、配列「A-G-T」は、相補的配列「T-C-A」に結合する。2つの単鎖分子間の相補性は、いくつかの核酸だけが結合する「部分的」であり得るか、あるいは全相補性が単鎖分子間に存在する場合に完全であり得る。核酸鎖間の相補性の程度は核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に対して有意な効果がある。これは、核酸鎖間の結合に依存する、増幅反応において特に重要である。
【0063】
用語「ハイブリダイズする配列」は、好ましくは抗体分子をコードする上記記載の核酸配列と、少なくとも40%の配列同一性、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは60%、さらにより好ましくは70%、特に好ましくは少なくとも80%、より特に好ましくは少なくとも90%、さらにより特に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは97%同一性を示す配列のことをいう。さらに、用語「ハイブリダイズする配列」は、好ましくは上記の本明細書に記載される抗体分子のアミノ酸配列と、少なくとも40%の配列同一性、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、より特に好ましくは少なくとも90%、よりさらに特に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%の同一性を有する抗体分子をコードする配列のことをいう。
【0064】
本発明によれば、2つ以上の核酸配列又はアミノ酸配列の文脈において用語「同一」又は「パーセント同一性」とは、比較のウインドウ若しくは当該分野で公知の配列比較アルゴリズムを用いて測定される指定領域に対して又はマニュアルのアライメント及び目視検査によって、最大一致を比較及び整列する場合に、同じであるか、あるいは同じであるアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定のパーセンテージ(例えば、60%又は65%同一性、好ましくは70〜95%同一性、より好ましくは少なくとも95%同一性)を有する2つ以上の配列又はサブ配列のことをいう。例えば、60%〜95%以上の配列同一性を有する配列は実質的に同一であるとみなされる。かかる定義はまた、相補試験配列に適用される。好ましくは記載される同一性は少なくとも約15〜25のアミノ酸又はヌクレオチドの長さである領域に対して、より好ましくは、約50〜100のアミノ酸又はヌクレオチドの長さである領域に対して存在する。当業者は、例えば、当該分野で公知のCLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)又はFASTDB (Brutlag Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)に基づくもののようなアルゴリズムを用いて配列の間/中でパーセント同一性をいかに決定するかを知っている。
【0065】
FASTDBアルゴリズムは計算において、典型的に配列における内部非適合欠損又は付加、すなわちギャップを考慮しないが、これは%同一性の過大評価を回避するためにマニュアルで補正され得る。しかしCLUSTALWは、同一性計算に配列ギャップを取り入れる。BLAST及びBLAST2.0アルゴリズム(Altschul, Nucl. Acids Res. 25 (1997), 3389-3402; Altschul, J. Mol. Evol. 36 (1993), 290-300; Altschul, J. Mol. Biol. 215 (1990), 403-410)が当業者に利用可能である。核酸配列のためのBLASTNプログラムはデフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長(W)、及び10の期待値(E)を使用する。BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89, (1989), 10915)は、50のアライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。
【0066】
さらに、本発明はまた、上記のハイブリダイズ分子の配列と比較して縮重である配列の核酸分子に関する。本発明によって使用される場合、用語「遺伝子コードの結果として縮重である」は遺伝子コードの重複によって異なるヌクレオチド配列が同じアミノ酸をコードすることを意味する。
【0067】
所定の抗体配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチド残基が、例えば、配列番号1、5、23及び25のいずれかのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列の特定の位置に対応するかどうかを決定するために、当業者は、当該分野で周知の手段及び方法、例えば、手動又は用語「ハイブリダイゼーション」の定義及びホモロジーの程度と共に以下でさらに言及されるようなコンピュータープログラムの使用によるいずれかのアライメントを使用し得る。
【0068】
例えば、ベーシックローカルアライメントサーチツールBLAST(Altschul (1997), 上記引用; Altschul (1993), 上記引用; Altschul (1990), 上記引用)を表わすBLAST 2.0は、部分配列アライメントをサーチするために使用され得る。上記に議論されるように、BLASTは、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の両方のアライメントを生じ、配列類似性を決定する。アライメントの部分性質のため、BLASTは正確なマッチを決定する又は類似の配列を同定することに特に有用である。BLASTアルゴリズムアウトプットの基本ユニットは、ハイスコアリングセグメントペア(HSP)である。HSPは、任意であるが、アライメントが部分的に最大であり、アライメントスコアがユーザーが設定した閾値又はカットオフスコアを満たす又は超える等しい長さの2つの配列断片から構成される。BLASTアプローチは、クエリー配列及びデータベース配列間でのHSPを見ること、見出される任意のマッチの統計的有意さを評価すること、及びユーザー選択閾値の有意さを満たすマッチだけを報告することである。パラメーターEはデータベース配列マッチを報告する統計的に有意な閾値を確立する。Eは全データベースサーチの文脈内でHSP(又はHSPセット)の機会発生の期待頻度の上限境界として注釈される。マッチがEを満たす任意のデータベース配列がプログラムアウトプットで報告される。
【0069】
BLAST(Altschul (1997), 上記引用; Altschul (1993), 上記引用; Altschul (1990), 上記引用)を用いるアナログコンピューター技術はGenBank又はEMBLのようなヌクレオチドデータベースにおける同一分子又は関連分子を検索するために使用される。この分析は複数メンブレンベースハイブリダーゼーションよりもかなり早い。また、コンピューター検索の感度は、任意の特定マッチが正確又は類似なものとして分類されるかどうかを決定するために改変され得る。検索の基礎は:
として定義されるプロダクトスコアであり、2つの配列間の類似の程度及び配列マッチの長さの両方を考慮する。例えば、40のプロダクトスコアと共に、マッチは1-2% 誤差範囲内で正確であり、70でマッチは正確である。より低いスコアが関連分子を同定し得るが、類似の分子は通常15〜40のプロダクトスコアを示すものを選択して同定される。配列アライメントを生じる得るプログラムの別の例は当該分野で公知な、CLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson, Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)又はFASTDB(Brutlag Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)である。
【0070】
1つの態様において、本発明は、VH領域におけるAsn のグリコシル化が
(a) 核のフコシル化がないバイアンテナ複合型の糖構造;
(b) バイアンテナハイブリッド型の糖構造;
(c) バイアンテナオリゴマンノース型の糖構造; 及び
(d) 添付の図5又は添付の図27に提供されるいずれかのバイアンテナ構造
からなる群より選択される、グリコシル化抗体アイソフォームを提供する。
【0071】
本発明の抗体の一態様において、対応する糖構造は核のフコシル化を含まない。対応するNグリコシル化は、核のフコシル化がなく80%までのアンテナが非常にシアリダーゼ化される、バイアンテナ複合型(≧75%; 主に80-90%)の糖構造から主に構成され得る。マイナーな糖構造はそれぞれバイアンテナハイブリッド型及びオリゴマンノース型(≦25%)に属し、添付の図5及び27にも示される。可変領域のグリコシル化構造はタンパク質(アミノ酸ポリペプチド)からのNグリコシダーゼFによる切断に耐性である。
【0072】
1つの態様において、ドミナント複合バイアンテナ糖構造はさらに、
- 1つのアンテナ若しくは他のアンテナ又は両方のアンテナのいずれかに結合した1つ又は2つのシアル酸を含むこと。該シアル酸はN-アセチルノイラミン酸型であり、β1,4結合ガラクトース末端にα 2,3 結合で最も結合しやすい。
- 核のフコシル化を欠くこと、すなわち、糖鎖の還元末端の最も内部のN-アセチルグルコサミンへのα1,6結合で結合するフコース残基を欠くこと
によって特徴付けられる。
【0073】
1つの態様において、ハイブリッド糖構造はさらに、
-バイアンテナ構造の1つの腕として複合型アンテナ(核糖構造に結合するラクトサミニルユニット(GlcNAc-Gal))を含むこと、この腕は主にβ 1,4 結合ガラクトース末端に結合するN-アセチルノイラミン酸を含む
-他のアンテナとして核糖構造に結合する1から3までの更なるマンノースサブユニットを有すること
-核のフコシル化を欠くこと、すなわち、糖鎖の還元末端の最も内部のN-アセチル-グルコサミンへのα1,6結合で結合するフコース残基を欠くこと、
によって特徴付けられる。
【0074】
1つの態様において、オリゴマンノース型糖構造はさらに、
-完全な糖構造に4(Man4→GlcNAc2)、5(Man5→GlcNAc2)又は6(Man6→GlcNAc2)マンノースサブユニットを含むこと、すなわち、典型的なN-結合核糖構造に存在する3分枝マンノースサブユニットを含むこと
-核のフコシル化を欠くこと、すなわち、糖鎖の還元末端の最も内側の部分のN-アセチル-グルコサミンへのα1→6結合で結合するフコース残基を欠くこと
によって特徴付けられる。
【0075】
本発明の別の態様において、1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子及び2つの抗原結合部位が重鎖の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子を含む組成物、すなわち、モノグリコシル化抗体及び二重グリコシル化抗体を含む組成物が提供され、以下抗体組成物と呼ぶ。用語抗体組成物はまた、本明細書に定義される少なくとも1つのグリコシル化VH 領域、又は該VH 領域の少なくとも1つのグリコシル化CDRを含む分子を含む組成物に関し、該分子は特に、上記のような免疫グロブリン又は免疫グロブリンアイソフォーム及び修飾物であり得る。例えば、該組成物はまた、グリコシル化、VH-派生CDR領域を含む単鎖抗体(scFv)又は二重特異的分子を含み得る。本発明の抗体組成物の更なる定義が以下に提供される。
【0076】
抗体組成物は、「VH非グリコシル化」抗体分子、すなわち、可変領域、特に重鎖(VH)の可変部分における本明細書に定義されるグリコシル化を含まない抗体を、含まないか又は非常に低い程度で単に含む。
【0077】
本発明の文脈において、特に本明細書に提供される抗体混合物の文脈において、用語「非グリコシル化抗体分子を含まない又は非常に低い程度で単に含む」は、抗体組成物が、10%未満、例えば、5%未満、例えば、4%未満、例えば、3%未満、例えば、2%未満、例えば、1%未満、例えば、0.5%以下の本明細書に記載される非グリコシル化アイソフォームを含むことを意味する。
【0078】
従って、1つの態様において、本発明は (該グリコシル化は重鎖の可変領域に位置する)モノグリコシル化及び/又は二重グリコシル化抗体を含み、可変領域のグリコシル化がない抗体分子を含まない抗体調製物を提供する。
【0079】
さらに、用語「可変領域のグリコシル化がない抗体分子を含まない」は、多くとも10%、例えば、多くとも5%、例えば、多くとも4%、例えば、多くとも3%、例えば、多くとも2%、例えば、多くとも1%、例えば、多くとも0.5%、例えば、多くとも4%、例えば、多くとも3%、例えば、多くとも2%、例えば、多くとも1%、例えば、多くとも0.5%、例えば、多くとも0.3%、例えば、多くとも0.2%の本明細書に記載される非グリコシル化アイソフォームを含む、抗体調製物/抗体混合物/抗体プールに関する。
【0080】
1つの態様において、本発明は、可変領域で非グリコシル化される、例えば、重鎖の可変領域で非グリコシル化される抗体アイソフォームを0.5%を超えて含まない、組成物を提供する。
【0081】
上記に指摘したように、本発明の一態様において、モノ及び二重グリコシル化抗体、例えば免疫グロブリンの混合物が提供され、該混合物は可変領域のグリコシル化がない抗体分子を含まない。可変領域、例えば、重鎖の両方の可変領域(両方の(VH)-領域)におけるかかる翻訳後修飾がない抗体は、本発明の文脈において重鎖の可変領域におけるグリコシル化を含まない「非グリコシル化形態」とみなされる。しかし、この「非グリコシル化形態」はそれにも関わらず抗体の定常領域(C領域)、例えば最も共通してFc部分の十分に保存されたグリコシル化部位、特に本明細書に定義される非可変/定常Fc部分におけるアスパラギン(Asn)306にグリコシル化を含み得る。
【0082】
グリコシル化抗体アイソフォーム自体又はモノグリコシル化アイソフォーム及び二重グリコシル化アイソフォームの組み合わせとしてのグリコシル化抗体アイソフォームは、アルツハイマー病(AD)、並びにダウン症候群、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、クロイツフェルトヤコブ病、HIV関連痴呆及び運動神経障害のような他のアミロイド関連障害の処置のための非常に有用で有利な治療抗体調製物である。グリコシル化抗体アイソフォーム自体又はモノグリコシル化アイソフォーム及び二重グリコシル化アイソフォームの組み合わせとしてのグリコシル化抗体アイソフォームはまた、独自の診断ツールである。
【0083】
本明細書に記載される両方のグリコシル化アイソフォームはインビボで改善され、かつ非常に効率的な脳浸透を示す。効率的な脳浸透及びアミロイド−βプラークへの特異的結合は、PS2APPマウス、AD関連アミロイド症のマウスモデルで示され得る。
【0084】
さらに、有意に減少した非特異的な粘着性と共にインビトロでの免疫組織化学染色による真のヒトアミロイド−βプラークのための改善された特異性が検出され得る。ヒトアミロイド−βプラークの統一染色のための最小有効濃度は添付の実施例に記載されるように、10ng/mlと決定された。
【0085】
添付の実施例に記載されるように、異なってグリコシル化された抗体、例えば、免疫グロブリンの分離及び特徴付けによって、重鎖の可変領域のグリコシル化によってAβペプチドへの抗原結合、診断値、薬理学的プロフィール及び機能活性に驚くべき影響を与えることが明らかになった。精製された抗体分子はMS-分析、可溶性Aβに結合する結合試験(Biacore)及びエピトープマッピング(Pepspot分析)、凝集Aβの解離並びにインビボ及びインビトロでのβ-アミロイドプラークへの結合の顕微鏡分析に提示される。
【0086】
本発明の一態様において、精製された抗体又は抗体組成物は、β-A4ペプチド/Aβ4を特異的に認識可能である。
【0087】
従って、本明細書に記載されるように、精製された抗体又は抗体組成物は、特定の態様において、Aβ/Aβ4の2つの領域(N-末端領域及び中央/真ん中部分)を特異的に認識可能である抗体又は抗体組成物に関する。
【0088】
用語「特異的に認識する」は、本発明によれば、抗体分子が本明細書に定義されるβ-A4の2つの領域のそれぞれの少なくとも2つのアミノ酸と特異的に相互作用可能である及び/又は結合可能であることを意味する。該用語は、抗体分子の特異性すなわち、本明細書に定義されるβ-A4ペプチドの特定の領域と、β-A4ペプチドの関連領域ではない別のもの、又はAPP関連タンパク質/ペプチド/(非関連)試験ペプチドではない別のものとを区別する能力に関する。従って、特異性は、当該分野で公知の方法、及び本明細書に開示され、かつ記載される方法によって実験で決定され得る。かかる方法は、ウェスタンブロット、ELISA-試験、RIA-試験、ECL-試験、IRMA-試験及びペプチドスキャンを含むが、これらに限定されない。かかる方法はまた、特に添付の実施例に例示されるKD-値の測定を含む。ペプチドスキャン(pepspotアッセイ)は、ポリペプチド抗原の線形エピトープをマップ化するために慣例的に使用される。ポリペプチドの一次配列は、互いに重複するペプチドを用いて活性化セルロース上で首尾よく合成される。特異的抗原/エピトープを検出又は認識する能力を試験する抗体による特定ペプチドの認識は、当該分野で公知の化学発光反応又は類似の手段によって、慣例の色発色(ホースラディッシュペルオキシダーゼ又は4-クロロナフトール又は過酸化水素のような、酵素又は色素を用いる二次抗体)によってスコア化される。特に化学発光反応又は二次蛍光抗体を使用する場合、反応は定量され得る。抗体が特定セットの重複ぺプチドと反応する場合、反応に必要なアミノ酸の最小配列を演繹し得、本発明によって提供される例示的な実施例を参照。
【0089】
同じアッセイにより、反応性ペプチドの2つの異なるクラスターが明らかにされ得、これは、抗原ポリペプチド内の不連続な、すなわちコンホメーションエピトープの認識を示す(Geysen (1986)、Mol. Immunol. 23、709-715)。
【0090】
ペプスポット(pepspot)アッセイに加え、標準的なELISAアッセイが行なわれ得る。添付の実施例に示されるように、小さなヘキサペプチドがタンパク質に連結され、免疫プレートにコートされ、試験される抗体と反応され得る。標準的な発色(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼを有する二次抗体および過酸化水素を有するテトラメチルベンジジン)によってスコアリングが行なわれ得る。特定のウェル内での反応を例えば450nmでの光学密度によってスコア化する。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は0.10Dであり得、典型的な陽性反応は10Dであり得る。これは、陽性/陰性の差(比)が10倍を超え得ることを意味する。さらなる詳細を添付の実施例に示す。特異性および本明細書に規定されるβ-A4ペプチドの2つの領域を「特異的に認識する」能力を測定するためのさらなる定量的方法を以下に示す。
【0091】
用語「β-A4ペプチドの2つの領域」は、例えば、配列番号3 (β-A4ペプチド)のN末端アミノ酸3〜6およびアミノ酸18〜24位の中心/中央エピトープに関する2つの領域に関する。添付の実施例に示されるように、特に、本明細書に提供され、例示される(添付の実施例参照)二重グリコシル化抗体Aアイソフォームは、Aβ(配列番号3に示される)のN末端のアミノ酸1〜10を含む第1の部分および中心/中央部分のアミノ酸17〜26を含む第2の部分のAβ分子の2つの部分を検出する。したがって、本明細書に提供され、本明細書に提供される抗体のモノおよび二重グリコシル化アイソフォームを含む抗体混合物において、2つの領域はまた、いくぶんより広がり得、そのため、例えば、アミノ酸1〜10(もしくは〜11もしくは〜12)、またはそのより短い部分を含むおよびアミノ酸17〜26(もしくはアミノ酸16〜27)または例えば、アミノ酸19〜26もしくは20〜26)などのアミノ酸17〜26を含むより短い部分を含む。用語「β-A4ペプチド」は、本発明の状況において、本明細書において上記のAβ39、Aβ41、Aβ43、特にAβ40およびAβ42に関する。Aβ42はまた添付の配列番号:3に示される。用語「β-A4ペプチドの2つの領域」はまた、本明細書に規定されるβ-A4ペプチドの2つの領域またはその部分を含む「エピトープ」および/または「抗原決定基」に関することは注目すべきである。本発明によれば、前記β-A4ペプチドの2つの領域は、β-A4ペプチドの一次構造において(アミノ酸配列レベルで)少なくとも1つのアミノ酸、例えば少なくとも2つのアミノ酸、例えば少なくとも3つのアミノ酸、例えば少なくとも4つのアミノ酸、例えば少なくとも5つのアミノ酸、例えば少なくとも6つのアミノ酸隔てている。本明細書に示され、添付の実施例に示されるように、本発明の抗体/抗体分子は、本明細書に規定されるβ-A4ペプチドの2つの領域を検出する/と相互作用するおよび/または該領域と結合し、ここで、前記2つの領域は、(アミノ酸配列の一次構造レベルで)少なくとも1つのアミノ酸隔てており、前記2つの領域/「エピトープ」を隔てる配列は、7個より多くのアミノ酸、8個より多くのアミノ酸、10個より多くのアミノ酸または約14個より多くのアミノ酸さえ含み得る。
【0092】
用語「β-A4ペプチドの2つの領域」はまた、前記2つの領域またはその部分からなるコンホメーションエピトープまたは不連続なエピトープに関する。また、Geysen (1986)、上記引用文中を参照。本発明の状況において、コンホメーションエピトープは、ポリペプチドが天然タンパク質にフォールディングされる場合に表面上で一緒になり、一次配列で隔てた2つ以上の別々のアミノ酸配列によって規定される(Sela、(1969)Science 166、1365およびLaver、(1990)Cell 61、553-6)。本発明の抗体分子は、本明細書に記載のβ-A4の2つの領域または本明細書において以下に開示するその部分で構成される、および/またはこれらを含むコンホメーションエピトープ(1つまたは複数)と特異的に結合/相互作用すると考えられる。本発明の「抗体分子」は、(a) β-A4のアミノ酸1〜11(またはその部分(1つもしくは複数))を含むアミノ酸鎖、および(b) β-A4(配列番号3)のアミノ酸16〜27(またはその部分(1つもしくは複数))を含むアミノ酸鎖に対して、同時および独立した二重特異性を含むと考えられる。これらの鎖の断片または部分は、少なくとも2つ、ほとんどの場合で少なくとも3つのアミノ酸を含む。
【0093】
抗体分子、例えば、免疫グロブリンは、とりわけ、3つの系:a)エプスタインバーウイルス核抗原を含有する一過的にトランスフェクトされたヒト胚性腎臓細胞(HEK 293 EBNA、Invitrogen)、b)一過的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣細胞 (CHO)、ならびにc)安定にトランスフェクトされたCHO細胞株(CHO K1およびCHO K1 SV、Lonza Biologies)で発現され得る。3つの異なる抗体分子(非、モノまたは二重グリコシル化)は、以下に詳細に示すプロテインA精製、陽イオン交換クロマトグラフィーならびにサイズカラム分離を含む、特定の精製工程によって分離され得る。
【0094】
本発明の一態様において、抗体分子は、例えば、CHO細胞またはHEK 293細胞、好ましくはCHO細胞において組換えにより生成される。特定の態様において、上記同定されたグリコシル化パターンは、CHO細胞における発現後に得られ得る。CHO細胞は、当該技術分野で非常によく知られており、とりわけ、CHO K1細胞またはCHO K1 SV細胞などの実験部分に使用されるCHO細胞を含む。一般に使用されるHEK 293細胞はHEK 293 EBNAである。
【0095】
グリコシル化された本発明の抗体の組換え発現は、真核生物発現系、特に、CHO細胞において実施例に示すようにして行なわれる。しかしながら、さらなる発現細胞、すなわち、真核生物細胞が構想され得る。真核生物細胞は、例えば、真菌または動物細胞を含む。適当な真菌細胞の例は、酵母細胞、例えば、Saccharomyces属のもの、例えば、Saccharomyces cerevisiae種のものである。適当な動物細胞は、例えば、NSO、MDCK、U2-OSHela、NIH3T3、M0LT-4、Jurkat、PC-12、PC-3、IMR、NT2N、Sk-n-sh、CaSki、C33Aなどの、例えば昆虫細胞、脊椎動物細胞、例えば哺乳動物細胞である。また、ヒト細胞株が構想される。これらの宿主細胞、例えばCHO細胞は、本発明の抗体分子に、リーダーペプチドまたはシグナル配列除去、フォールディングおよびH(重)鎖およびL(軽)鎖の合成、ならびに最も重要には正確な側鎖、つまり重鎖の可変領域における分子のグリコシル化を含む翻訳後修飾を提供する。かかるシグナルペプチドまたはリーダー配列は、例えば、CHO細胞におけるその組換え産生中の分泌経路中に宿主シグナルペプチダーゼによってタンパク質分解的に切断される。当該技術分野で公知のさらに適当な細胞株は、American Type Culture Collection (ATCC)などの細胞株寄託所から得られ得る。本発明によれば、一次細胞/細胞培養物が宿主細胞としての機能を果たし得ることがさらに構想される。前記細胞は、特に、昆虫(DrosophilaもしくはBlatta種の昆虫など)または哺乳動物(ヒト、ブタ、マウスもしくはラットなど)から由来する。前記宿主細胞はまた、神経芽細胞腫細胞株などの細胞株由来の細胞および/または細胞株から誘導された細胞を含み得る。
【0096】
したがって、本発明の抗体分子は、組換え発現系を用いて調製される。かかる系の一例は、上記に指摘されるように、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた哺乳動物発現系である。これらは、グルタミンシンセターゼ(GS)系 (WO 87/04462;WO 89/01036;Bebbington、1992、Biotechnology (N Y)、10、169-75)とともに使用され得る。この系は、GS酵素をコードする遺伝子および所望の抗体遺伝子でのCHO細胞のトランスフェクションを含む。次いで、無グルタミン培地で成長するCHO細胞が選択され、また、メチオニンスルホキシイミン(MSX)を用いたGS酵素の阻害に供される。生存するため、細胞は、GS酵素発現および同時にmAbの発現を増幅する。
【0097】
別の可能な発現系は、CHO細胞が、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr-)を欠損し、成長に関してチミジンおよびヒポキサンチンに依存性であるCHO dhfr-系である。親CHO dhfr-細胞株は、抗体およびdhfr遺伝子でトランスフェクトされ、したがって、dhfr+表現型のCHO細胞形質転換体の選択が可能になる。選択は、チミジンおよびヒポキサンチンの非存在下で行なわれる。抗体遺伝子の発現は、メトトレキサート(MTX)を用いた増幅によって増大され得る。この薬物は、dhfr酵素の直接インヒビターであり、そのdhfr遺伝子コピー数を増幅する耐性コロニーの単離を可能にし、したがって、これらの条件下で抗体遺伝子が充分に働くことを可能にする。
【0098】
精製された抗体分子、例えば、免疫グロブリンは、
(a)哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞またはHEK 293細胞中で、本明細書において上記規定の抗体分子をコードする異種核酸分子を組み換え発現させる工程;ならびに
(b)前記組み換え発現された抗体分子を、
(b1)プロテインAカラム精製工程;
(b2)イオン交換カラム精製工程、例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー工程;ならびに
任意に、
(b3)サイズ排除カラム精製工程
を含む方法によって精製する工程
を含む方法によって調製され得る。
【0099】
精製プロトコルは、さらなる濃縮工程、例えば、分析カラムを伴う例えば、透析濾過または解析工程などのさらなる工程を含み得る。該方法/プロセスはまた、例えば、濾過/ナノ濾過によるウイルス不活化工程および/またはウイルス除去工程を含み得る。また、特定のある工程が繰返される(例えば、2回のイオン交換クロマトグラフィー工程が行なわれ得る)こと、またはある工程(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)が省略され得ることが構想され、実現可能である。
【0100】
プロテインAは、ほとんどのIgG1アイソタイプのFc領域に結合する特異的リガンドの群である。これは、いくつかのStaphylococcus aureus菌株によって合成され、それから単離され得、クロマトグラフィービーズに連結され得る。いくつかの型のゲル調製物が市販されている。
【0101】
使用され得るプロテインAカラムの一例は、MabSelect(商標)カラムである。理想的には、カラムは25mM Tris/HCl、25mM NaCl、5mM EDTAで平衡化され、細胞培養上清をカラムに適用し、カラムを1M Tris/HCl pH7.2で洗浄し、100mM酢酸を用いてpH3.2で抗体が溶出される。
【0102】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、固定相の正帯電基および移動相にある試料間の相互作用を利用する。弱い陽イオン交換体(例えば、CM Toyopearl 650(登録商標))が使用される場合、以下のクロマトグラフィー工程が行なわれる。100mM酢酸pH4での予備平衡化、プロテインA溶出液の負荷および100mM酢酸pH4での洗浄後、抗体が溶出され、250mM酢酸ナトリウム(pH7.8〜8.5)および500mM酢酸ナトリウム(pH7.8〜8.5)工程を適用することにより分画される。最初の工程では、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分の混合物が通常溶出され、第2の工程を用いて、非グリコシル化アイソフォーム画分が通常溶出される。
【0103】
強力な陽イオン交換体(例えば、SP Toyopearl 650)からは、抗体は塩工程によって溶出され得る。50mM酢酸pH5.0でのカラムの平衡化、プロテインA溶出液のpH4での負荷後に、50mM酢酸および210mM塩化ナトリウムを用いた最初の溶出工程が行なわれる。次いで、50mM酢酸および350mM塩化ナトリウムの第2の溶出工程が適用される。最初の塩工程により、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分の混合物が通常溶出され、第2の塩工程により、非グリコシル化アイソフォームが通常溶出される。
【0104】
また、抗体は、塩勾配によって強力な陽イオン交換体カラム(例えば、SP-Sepharose(登録商標))から溶出され得る。予備平衡化、負荷およびpH4.5でカラム洗浄後、50mM MES pH5.8から50mM MES/1M塩化ナトリウムpH5.8の塩勾配が適用される。ここで、二重グリコシル化アイソフォーム、モノグリコシル化アイソフォームおよび非グリコシル化アイソフォーム画分は、通常、別々に溶出される。以下において、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分は、生成物プールおよび/または所望の抗体混合物がもたらされるようにプールされ得る。
【0105】
二重-およびモノグリコシル化抗体分子、例えば、免疫グロブリンの混合物のさらなる精製は、サイズ排除クロマトグラフィーによって行なわれ得る。有用なカラムの一例はSuperdex 200(登録商標)カラムである。流出(running)バッファーの例としては、ヒスチジン/塩化ナトリウム、例えば、10mMヒスチジン/125mM塩化ナトリウム/pH6、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。
【0106】
フロースルーモードにおける陰イオン交換クロマトグラフィーの後、濃縮/透析濾過は、代替的精製工程である。Q Sepharose(登録商標)は、アニオン交換工程のための樹脂の一例である。例えば、SPクロマトグラフィーからの溶出液は、37.5mM Tris/HCl pH7.9で3倍に希釈され得、25mM Tris/83mM酢酸ナトリウムで予備平衡化されたQ-Sepharoseカラムに通過され得る。フロースルーが回収され、pH5.5に調整され、例えば、Hydrosart 30kD(登録商標)膜を用いた限外濾過によって濃縮される。以下において、濃縮物は、例えば、10容量の20mMヒスチジン/HCl pH5.5に対して透析濾過され得る。
【0107】
上記の精製プロトコルはまた、さらなる工程(c)として、Mono-S HR5/5カラムなどを使用する分析クロマトグラフィー工程を含み得る。しかしながら、また、例えば、抗体分子の濃縮のための透析濾過などのさらなる工程が構想される。
【0108】
本発明の一態様において、本明細書に記載の抗体分子または上記に提供される方法によって調製される抗体分子を含む組成物、抗体調製物または抗体プールが提供される。本発明のこの態様において、前記組成物は、モノまたは二重グリコシル化抗体を含む。別の態様において、前記組成物は、モノおよび二重グリコシル化された(重鎖(1つまたは複数)の可変領域(1つまたは複数)において)抗体を含み、前記組成物は、可変領域においてグリコシル化を欠く抗体分子に由来する。この態様の状況において、用語「抗体プール」は、個々に単離され得、次いで1つの混合物に合わされるモノおよび二重グリコシル化(重鎖(1つまたは複数)の可変領域(1つまたは複数)において)抗体の混合物に関する。本明細書に提供される抗体混合物または抗体プールは、本明細書に規定される50%のモノグリコシル化抗体および50%の二重グリコシル化抗体を含み得る。しかしながら、また、30/70〜70/30比も構想される。しかし、当業者は本発明の抗体混合物において他の比もまた構想されることを承知している。例えば、10/90または90/10、20/80または80/20ならびに40/60または60/40もまた、本発明の状況において使用され得る。また、実施例に記載されるように、本明細書において上記規定の二重グリコシル化およびモノグリコシル化抗体を含む本発明の抗体混合物における特定の有用な比は、40/60〜45/55の比である。
【0109】
本明細書に提供される組成物は、診断組成物または医薬組成物において特に有用である。
【0110】
したがって、本発明は、
(a)グリコシル化Asnを有する1つの抗原結合部位を含む上記規定の抗体分子;
(b)グリコシル化Asnを有する2つの抗原結合部位を含む上記規定の抗体分子;または、最も好ましくは、
(c)抗体分子(a)〜(b)の組合せ
を含む診断組成物または医薬組成物を提供する。
【0111】
グリコシル化Asnを有する1つの抗原結合部位を含む抗体分子(1つまたは複数)およびグリコシル化Asnを有する2つの抗原結合部位を含む抗体分子(1つまたは複数)を含む本明細書に提供される組合せ(c)は、非グリコシル化(重鎖の可変領域に関して)アイソフォームを欠く。上記に示されるように、用語「非グリコシル化(重鎖の可変領域に関して)アイソフォームを欠く」は、前記組合せにおいて5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、1%未満または0.5%未満すらの抗体種が重鎖の可変領域において非グリコシル化である組合せ/抗体プール/抗体調製物に関する。実施例に示されるように、前記組合せ/抗体プール/抗体調製物は、非グリコシル化アイソフォームをほとんど含み得ない(0.5%未満)。所定の抗体組成物内の所定のグリコシル化アイソフォームのパーセンテージおよび/または量(本明細書に規定されるように、例えば、重鎖の可変領域におけるグリコシル化、とりわけ添付の図14参照)は、当該技術分野で公知の方法によって容易に測定され得る。これらの方法は、限定されないが、質量分析、SDS-PAGE分析イオン交換、HPLL、ELISAなどを含む。
【0112】
添付の実施例に示すように、AD患者由来のヒト脳組織の凍結切片を用いた免疫組織化学的染色実験で、本発明の抗体による真性アルツハイマー病のβ-アミロイドプラークの特異的および感受性の免疫修飾がインビトロで示される。また、Aβをワクチン注射された患者由来のヒト抗Aβ抗体でも脳薄片のβ-アミロイドプラークの有効な染色が示された(Hock、2002、Nature Medicine、8、1270-1275)。さらに、免疫修飾もまた、ヒトβ-アミロイドプラーク負荷を特徴とするトランスジェニック動物モデルにおいて示される(Richards、2003、J. Neuroscience、23、8989-9003)。類似の動物モデルにおいて、このプラーク結合により、その除去、続いて疾患関連症状の改善がもたされることが示されたが、Fc依存性プロセスの関与が考察された(Bard、2000、Nature Medicine、6、916-919;Wilcock、2003、Neurobiology Disease、15、11-20;Wilcock、2004、J. Neuroscience、24、6144-6151)。さらに、β-アミロイドプラークへの抗Aβ抗体の有効な結合は、遅い疾患進行に相関すると報告された(Hock、2002、Nature Medicine、8、1270-1275;Hock、2003、Neuron、38、547-554)。ヒト脳組織のこの分析および死後分析により、小グリア細胞の食作用がヒトにおけるプラーク除去に機械的に関与していることが示される(Nicoll、2003、Nature Medicine、9、448-452)。したがって、本発明の抗体、または特に、医薬組成物に含まれる抗体は、主にヒトのFcR依存性プロセスの原因となるヒトIgG1である。本発明の抗体/本発明の混合物の効率的なβ-アミロイドプラーク免疫修飾は、薬物がヒトにおけるβ-アミロイドプラークの存在を除去し、形成を予防するための受動免疫に有効であることを示唆する。
【0113】
また、抗体は、好ましくは、血液脳関門を越えてその目的の場所に達するべきである。ヒトIgGのようなサイズの大きな分子では、このプロセスは劇的に減少し、約0.1〜0.2%の血漿の抗体濃度でやっとCSF中で達成され得る。Aβペプチドに対する末梢効果を伴い得るプラーク除去の機構は、なお、論議の的となっている主題である(Dodart、2002、Nature Neuroscience、5:452-457)。したがって、作製された本発明の治療抗体または対応する本発明のモノおよび二重グリコシル化(重鎖可変領域において)の混合物はまた、可溶性単量体AβペプチドまたはオリゴマーAβペプチド(例えば、凝集中間体) の中和もまた全体的なアミロイド減少効果に寄与し得るため、Fc依存性プロセスの関与がなくAβ多量体をインビトロで解重合し、かつCSF中の可溶性Aβ単量体およびオリゴマーに結合する性質を有する(Du、2003、Brain、126:1-5)。
【0114】
本発明の組成物は、固体または液体形態で、とりわけ、粉末(1種類または複数種類)、錠剤(1種類または複数種類)、溶液(1種類または複数種類)またはエーロゾル(1種類または複数種類)の形態で投与され得る。前記組成物は、1種類以上の本発明の抗体/抗体分子、最も好ましくは、本明細書に提供されるモノおよび二重グリコシル化抗体の混合物を含み得る。
【0115】
前記医薬組成物は、任意に薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤を含むことが好ましい。本明細書に開示する医薬組成物は、神経障害および/または神経変性障害の処置に特に有用であり得る。前記障害としては、限定されないが、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(amyothrophic lateral sclerosis)(ALS)、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、ダウン症候群、HIV-痴呆、パーキンソン病および老化関連神経障害が挙げられる。本発明の医薬組成物は、とりわけ、アミロイドプラーク形成の強力なインヒビターとして、またはアミロイドプラークの解重合の強力な刺激因子として構想される。したがって、本発明は、アミロイド形成(amyloidogenic)疾患/障害の処置に使用される本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。用語「アミロイド形成疾患/障害」には、アミロイド原線維の形成もしくは沈着および/または病原性APPタンパク質分解と関連するか、またはそれに引き起こされる任意の疾患が含まれる。例示的なアミロイド形成疾患としては、限定されないが、アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群、レヴィー小体形成関連痴呆、痴呆を有するパーキンソン病、軽度の認知障害、脳アミロイド血管障害および血管性痴呆が挙げられる。種々のアミロイド形成疾患は、アミロイド沈着物のポリペプチド成分の性質によって規定および/または特徴付けられる。例えば、アミロイドβタンパク質は、アルツハイマー病を有する被験体に見られるアミロイド沈着物に特徴的である。
【0116】
適当な医薬用担体、賦形剤および/または希釈剤の例は当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、種々の型の湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。かかる担体を含む組成物は周知の従来の方法によって製剤化され得る。適当な担体は、賦形剤、界面活性剤、張度剤などを含む、抗Aβ特異的結合剤または抗体と合わされた場合、Aβの高い親和性結合を保持し、被験体の免疫系と非反応性である任意の材料を含み得る。Remington's Pharmaceutical Sciences (1980)第16版、Osol、A.編を参照のこと。これらの医薬組成物は、被験体に適当な用量で投与され得る。適当な組成物の投与は、異なる方法、例えば、非経口、皮下、腹腔内、局所、気管支内、肺内および鼻腔内投与ならびに、局所処置に所望される場合は、病変内投与によって行なわれ得る。非経口投与としては、腹腔内、筋肉内、皮内、皮下静脈内または動脈内投与が挙げられる。前記投与は、例えば、脳動脈内への部位または脳組織への直接の注射および/または送達によって行なわれることが特に好ましい。本発明の組成物はまた、例えば、脳などの標的部位の外部または内部にバイオリスティック(biolistic)送達によって標的部位に直接投与され得る。
【0117】
本明細書に記載のグリコシル化抗体を含む医薬組成物は、所望の程度の純度を有する抗体を任意の生理的に許容され得る担体、賦形剤、安定剤、界面活性剤、バッファーおよび/または張度剤と混合することにより調製される。許容され得る担体、賦形剤および/または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸、グルタチオン、システイン、メチオニンおよびクエン酸を含む酸化防止剤;保存剤(エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロル-m-クレゾール、メチルもしくはプロピルパラベン、塩化ベンズアルコニウムまたはその組合せなど);アルギニン、グリシン、オルニチン、リシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、プロリンおよびその組合せなどのアミノ酸;単糖類、二糖類および他の炭水化物;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;ゼラチンまたは血清アルブミンなどのタンパク質;EDTAなどのキレート化剤;トレハロース、スクロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、グルコサミン、N-メチルグルコサミン(いわゆる「メグルミン」)、ガラクトサミンおよびノイラミン酸などの糖類;および/またはTween、Brij プルロニック、Triton-Xもしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0118】
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態または凍結乾燥形態から再構成される液体形態であり得、ここで、凍結乾燥調製物は投与前に滅菌溶液で再構成される。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的な手順は、ある容量の純水(典型的に凍結乾燥中に除去された容量と等量)を添加し戻すことであるが、非経口投与用の医薬組成物の作製には、抗菌剤を含む溶液が使用され得る。Chen (1992)Drug Dev Ind Pharm 18、1311-54もまた参照。
【0119】
医薬組成物における例示的な抗体濃度は、約1mg/mL〜約200mg/mlもしくは約50mg/mL〜約200mg/mL、または約150mg/mL〜約200mg/mLの範囲であり得る。明白な理由のため、本明細書に示す濃度は、液体または固体形態から正確に再構成される液体中の濃度に関することが強調される。
【0120】
抗体の水性製剤は、例えば、約4.0〜約7.0、または約5.0〜約6.0の範囲、あるいは約5.5のpHのpH緩衝溶液中で調製され得る。この範囲内のpHに適当なバッファーの例としては、リン酸-、ヒスチジン-、クエン酸-、コハク酸-、酢酸-バッファーおよび他の有機酸バッファーが挙げられる。バッファー濃度は、例えば、バッファーおよび製剤の所望の張度に応じて約1mM〜約100mM、または約5mM〜約50mMであり得る。
【0121】
張度剤は、製剤の張度を調節するために抗体製剤に含まれ得る。例示的な張度剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリンおよびアミノ酸、糖類の群からの任意の成分ならびにその組合せが挙げられる。
【0122】
好ましくは、水性製剤は等張性であるが、高張性または低張性溶液が適当であり得る。用語「等張性」は、生理学的塩溶液および血清などの比較されるいくつかの他の溶液と同じ張度を有する溶液を表す。張度剤は、約5mM〜約350mMの量で、特に105mM〜305nMの量で使用され得る。
【0123】
界面活性剤はまた、製剤化された抗体の凝集を低下させるため、および/または製剤中での微粒子の形成を最小限にするため、および/または吸着を低下させるために抗体製剤に添加され得る。例示的な界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー (Poloxamer、プルロニック)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。好ましいポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルはポリソルベート20(商標Tween 20TMで販売)およびポリソルベート80(商標Tween 80TMで販売)である。好ましいポリエチレンポリプロピレンコポリマーは、名称プルロニック(登録商標)F68またはポロキサマー188TMで販売されているものである。好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルは、商標BrijTMで販売されているものである。界面活性剤の例示的な濃度は約0.001%〜約1%w/vの範囲であり得る。
【0124】
また、凍結乾燥プロセス中の不安定化条件に対して不安定な活性成分(例えば、タンパク質)を保護するために溶解保護剤(lyoprotectant)が添加され得る。例えば、公知の溶解保護剤としては、糖類(グルコースおよびスクロースを含む);ポリオール(マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールを含む);ならびにアミノ酸(アラニン、グリシンおよびグルタミン酸を含む)が挙げられる。溶解保護剤は、一般的に約10mM〜500nMの量で使用される。
【0125】
一態様において、製剤は、上記の薬剤(すなわち、グリコシル化抗体、界面活性剤、バッファー、安定剤および/または張度剤)を含み、本質的に、エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロル-m-クレゾール、メチルもしくはプロピルパラベン、塩化ベンズアルコニウムならびにその組合せなどの1種類以上の保存剤を含まない。別の態様において、保存剤は、例えば約0.001〜約2%(w/v)の範囲の濃度で製剤中に含まれ得る。
【0126】
一態様において、本発明の抗体製剤は、
− 約1〜約200mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 約0.001〜約1%の少なくとも1種類の界面活性剤;
− 約1〜約100mMのバッファー;
− 任意に約10〜約500mMの安定剤および/または約5〜約305mMの張度剤;
を含み得る、
− 約4.0〜約7.0のpHの
非経口投与に適当な液体または凍結乾燥製剤である。
【0127】
好ましい態様において、本発明の非経口製剤は、
− 約1〜約200mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の
液体または凍結乾燥製剤である。
【0128】
より好ましい態様において、本発明による非経口製剤はまた、
− 15mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の
凍結乾燥製剤を含む。
【0129】
別のより好ましい態様において、本発明による非経口製剤はまた、
− 7.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.022% Tween 20 w/v、
− 120mM L-ヒスチジン、
− 250 125mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMスクロース、
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mM マンニトール
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の;
または
− 150mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の、
または
− 150mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mM マンニトール
を含み、
− pH5.5の、
または
− 150mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の、
または
− 10mg/mL Aβ抗体、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の
液体製剤を含む。
【0130】
一態様において、本発明の医薬組成物は、
− 10mg/mL Aβ抗体、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の
液体製剤である。
【0131】
別の態様において、本発明の医薬組成物は、
− 75mg/mL Aβ抗体、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の
凍結乾燥製剤である。
【0132】
例示された製剤と関連する用語「本明細書に記載のグリコシル化抗体」は、本発明において、本明細書に規定されるモノグリコシル化抗体、本明細書に規定される二重グリコシル化抗体ならびにその混合物を含み得る。
【0133】
投薬計画は、担当医師および臨床因子によって決定される。医薬技術分野において周知のように、任意の一人の患者に対する投薬量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与の期間および経路、一般健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物を含む多くの因子に依存する。タンパク質性医薬活性物質は、投与あたり1ng〜20mg/体重1kg、例えば、0.1mg〜10mg/体重1kg、例えば、0.5mg〜5mg/体重1kgの量で存在し得る。しかしながら、特に前述の因子を考慮すると、この例示的な範囲より下または上の投与量が構想される。また、該計画が連続注入である場合、1μg〜10mg/体重1キログラム/分の範囲であるべきである。
【0134】
本明細書に記載の医薬組成物は、短期作用性、高速放出、長期作用性または持続放出性であるように製剤化され得る。したがって、医薬組成物はまた、低速放出または制御放出に適当であり得る。
【0135】
持続放出調製物は、当該技術分野で周知の方法を用いて調製され得る。持続放出調製物の適当な例としては、マトリックスが成形された物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられる。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、L-グルタミン酸およびエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、ヒドロゲル、ポリラクチド、分解性乳酸-グリコール酸コポリマーならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。持続放出調製物中に含まれる抗体の生物学的活性のありうる損失および免疫原性のありうる変化は、適切な添加剤を使用すること、含水率を制御すること、および特異的ポリマーマトリックス組成物を開発することにより妨げられ得る。
【0136】
進行は、定期的な評価によりモニターされ得る。組成物、すなわち、本発明のモノおよび/または二重グリコシル化抗体またはその混合物は、局所または全身に投与され得る。末梢に投与される抗体は中枢神経系に入り得ることに注意されたい。とりわけ、Bard (2000)、Nature Med. 6、916-919を参照のこと。非経口投与用の調製物としては、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体としては、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル液、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補給物、電解質補給物(リンゲルのデキストロースに基づくなど)などが挙げられる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化薬剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加剤もまた存在し得る。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図される使用に応じてさらなる薬剤を含み得る。前記薬剤は、神経保護因子、コリンエステラーゼインヒビター、M1ムスカリン性受容体のアゴニスト、ホルモン、酸化防止剤、炎症のインヒビターなどの中枢神経系に作用する薬物であり得る。前記医薬組成物は、例えば、神経伝達物質および/または神経伝達物質の代用分子、ビタミンEまたはα-リポ酸などのさらなる薬剤を含むことが特に好ましい。
【0137】
当業者、特に、限定されないが、生化学者、生物学者、化学者、製薬者および前記専門家のグループは、容易に上記の医薬組成物を操作および作製する立場にある。担当医師などの医薬分野の当業者は、どのようにしてかかる医薬組成物が本明細書に規定される医薬組成物での処置を必要とする患者に投与され得るかに精通している。かかる投与は、例えば、注入および/または注射による全身投与を含み得る。しかしながら、また脳への本発明の化合物および/または化合物混合物の直接投与が構想される。例えば、化合物または化合物混合物または化合物製剤は、脳への直接脳室内または鞘内注射、好ましくは脳実質組織に対する影響を最小限にするために低速注入によって投与され得る。また、脳内への低速放出移植物が使用され得る。また、例えば、本明細書に規定される抗体を産生する移植された組換え細胞の使用による遺伝子療法アプローチが使用されることが構想される。これらの「組換え細胞」は、本明細書に記載の抗体、特に、本発明の抗Aβ抗体の可変領域/部分に本明細書に規定されるグリコシル化を提供し得るべきである。しかし、上記に指摘のように、本発明の抗体/抗体混合物の1つの利点は、血液脳関門を超え、アミロイドプラークに結合するその能力である。以下に記載する本発明の医薬組成物は、未知または病原性APP凝集もしくは病原性APPプロセッシングと関連もしくは依存するこれまでのすべての疾患の処置のために使用され得る。これらは、アルツハイマー病およびアミロイド-βの細胞外沈着物が役割を果たしていると思われる他の疾患の処置に特に有用であり得る。これらは、ヒトに望ましく使用され得るが、動物処置もまた本明細書に記載の方法、使用および組成物に包含される。
【0138】
本発明の好ましい態様において、本明細書において上記に開示する本発明の組成物は、任意に、適当な検出のための手段をさらに含む診断組成物である。診断組成物は、前述の本発明の化合物、すなわち本明細書に記載のグリコシル化抗体の少なくとも1つを含む。
【0139】
前記診断組成物は、本発明の化合物、特に、本発明のグリコシル化抗体分子、可溶性形態/液相を含み得るが、前記化合物は固相支持体に結合/付着および/または連結されることもまた構想される。
【0140】
固相支持体は、本明細書に規定される診断組成物と組み合せて使用され得るか、または本発明の化合物は、前記固相支持体に直接結合され得る。かかる支持体は当該技術分野で周知であり、とりわけ、市販のカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、ウェルおよび反応トレイの壁、プラスチックチューブなどを含む。本発明の化合物(1つまたは複数)、特に、本発明の抗体は、多くの異なる担体に結合され得る。周知の担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、本発明の目的のために可溶性または非可溶性のいずれかであり得る。適切な標識および標識方法は上記に示し、さらに本明細書において以下に示す。本発明の前記化合物(1つまたは複数)を固定/固定化するための適当な方法は周知であり、限定されないが、イオン、疎水性、共有結合相互作用などが挙げられる。
【0141】
本発明の診断組成物はアミロイド-βなどのAPPおよび/またはAPP-プロセッシング産物の検出および/または定量のために、あるいは、病理学的および/または(遺伝的)修飾APP-切断サイドを検出および/または定量のために使用されることが特に好ましい。
【0142】
添付の実施例に示すように、本発明のグリコシル化抗体分子は、間接免疫蛍光によるアルツハイマー病患者の脳切片内の真性ヒトアミロイドプラークの検出における診断試薬として特に有用である。
【0143】
診断組成物に使用される本発明の前記化合物は、検出可能に標識されることが好ましい。さまざまな技術が生体分子の標識に利用可能であり、当業者に周知であり、本発明の範囲内とみなされる。当業者に公知の多くの異なる標識および標識方法がある。本発明に使用され得る標識の型の例としては、酵素、放射性同位体、コロイド金属、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物が挙げられる。
【0144】
一般に使用される標識は、とりわけ、蛍光色素(フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)、酵素 (ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、放射性同位体(32Pまたは125Iなど)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド金属、化学-または生物発光化合物(ジオキセタン、ルミノールもしくはアクリジニウムなど)を含む。酵素またはビオチニル基、ヨード化、リン酸化、ビオチン化などの共有結合などの標識手順は当該技術分野で周知である。
【0145】
検出方法は、限定されないが、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡検査、直接および間接酵素反応などを含む。一般に使用される検出アッセイは、ラジオアイソトープ法または非ラジオアイソトープ法を含む。これらは、とりわけ、ウエスタンブロッティング、オーバーレイ-アッセイ、RIA (ラジオイムノアッセイ)およびIRMA (免疫放射免疫測定アッセイ)、EIA (酵素イムノアッセイ)、ELISA (酵素結合イムノソルベント検定法)、FIA (蛍光イムノアッセイ)、ならびにCLIA (化学発光免疫アッセイ) を含む。
【0146】
さらに、本発明は、アミロイド形成および/またはアミロイド-プラーク形成と関連する疾患の予防、処置および/または診断のための医薬組成物または診断組成物の調製のための、本発明のグリコシル化抗体分子、または本発明の方法によって作製される抗体分子、または本明細書に提供されるモノおよび二重グリコシル化抗体の混合物の使用を提供する。本明細書に記載の化合物、特に、本発明の抗体分子は、修飾または異常なAPP-プロセッシングおよび/またはアミロイド形成と関連する神経系の病気の予防および/または処置に使用されることがさらに好ましい。例えば、IgGフレームワーク、特にIgG1フレームワーク内の抗体などの(操作された)免疫グロブリンの型の抗体分子、またはキメラ抗体(特に、完全ヒト化抗体または完全抗体)、二重特異性抗体、単鎖Fv(scFv)もしくは二重特異性scFvなどの型の抗体が、本明細書に提供される医薬組成物の調製に使用される。また、本明細書に提供される抗体分子および混合物は、本発明の抗体分子が特異的にAβ4および/またはアミロイド沈着物/プラークと相互作用し/これらを検出するため、添付の実施例に示すような診断状況においても有用である。
【0147】
したがって、本発明の化合物の本発明の使用は、例えば、β-アミロイドプラークの分解、アミロイド(プラーク)除去またはβ-アミロイドプラーク形成に対する受動免疫による改善が要求される神経障害のための医薬組成物の調製のための使用である。添付の実施例に示されるように、本発明の抗体分子は、Aβ凝集の予防および既に形成されたアミロイド凝集塊の解重合に特に有用である。したがって、本明細書に記載の本発明のグリコシル化抗体またはモノおよび二重グリコシル化抗体の混合物は、病原性アミロイド沈着物/プラークの減少、アミロイドプラーク/プラーク前駆体の除去ならびにニューロン保護に使用される。特に、本発明の抗体分子は、アミロイドプラークのインビボ予防ならびに既に存在するアミロイドプラーク/沈着物のインビボ除去に使用されることが構想される。さらに、本発明の抗体分子または混合物は、AβペプチドおよびAβの凝集塊、すなわちアミロイド-βプラークに対する受動免疫アプローチに使用され得る。Aβ4/Aβ4沈着物の除去は、とりわけ、Fc部分を含む本発明の抗体の医学的使用によって達成され得る。前記抗体のFc部分は、Fc-受容体媒介免疫応答、例えば、マクロファージ(食細胞および/または小グリア)および/またはヘルパー細胞の誘引に特に有用であり得る。Fc部分関連免疫応答の介在のため、本発明の抗体分子は、好ましくは(ヒト)IgG1フレームワークにおけるものである。本明細書において論じられるように、本発明の抗体分子または抗体混合物で処置される好ましい被験体はヒト被験体である。本発明の抗体分子のためのIgG2a-またはIgG2b-フレームワークなどの他のフレームワークもまた構想される。IgG2aおよび(und)IgG2b型の免疫グロブリンフレームワークが、マウスの状況、例えば、(ヒト)野生型または変異APP、APP-断片および/またはAβ4を発現するトランスジェニックマウスの試験において、例えば、本発明の抗体分子の科学的使用において特に構想される。
【0148】
アミロイド形成および/またはアミロイド-プラーク形成と関連する上記の疾患は、限定されないが、痴呆、アルツハイマー病、運動神経障害、パーキンソン病、ALS (筋萎縮性側索硬化症)、スクラピー、HIV関連痴呆ならびにクロイツフェルト‐ヤコブ病、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、ダウン症候群および老化関連神経障害を含む。本明細書に提供される本発明の抗体分子および組成物はまた、アミロイド形成および/またはアミロイドプラーク形成に関連する炎症過程の改善およびまたは予防に有用であり得る。
【0149】
したがって、本発明はまた、前記神経障害および/または神経変性障害を患う被験体および/または前記神経障害および/または神経変性障害に罹患し易い被験体に、本明細書に提供される抗Aβ抗体分子もしくは本発明のモノおよび/または二重-グリコシル化Aβ抗体の混合物および/または本明細書において上記規定の組成物の有効量を投与する工程を含む、神経障害および/または神経変性障害を処置、予防および/または遅延するための方法を提供する。本明細書に提供される処置は、本発明の化合物/組成物単独または同時療法処置の形態、すなわち、他の薬物もしくは医薬との組合せの投与を含み得る。本発明の特に好ましい態様において、対応する医学的介在を必要とする患者に、Aβに指向され、本明細書に提供されるモノおよび二重グリコシル化抗体を含む抗体混合物を投与する工程を含む、神経障害および/または神経変性障害を処置、予防および/または遅延するための方法が提供される。
【0150】
本明細書に使用される用語「処置」は、その必要がある患者への本明細書に記載のモノおよび/または二重グリコシル化抗体(もしくはその混合物)の投与が構想される。前記患者はヒト患者であり得、一態様において、病原性APPプロセッシングに関連する障害を患うか、または罹患しやすいヒトである。したがって、本明細書に使用される用語「処置」は、本明細書に提供される化合物または化合物の混合物の予防的ならびに治癒的投与を含む。
【0151】
本明細書に提供される化合物および組成物によって処置される障害は、アルツハイマー病である。おそらくアルツハイマー病であるという診断を有する患者は、この診断のNational Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke/Alzheimer’s Disease and Related Disorders Associationの基準(NINCDS/ADRDA基準) Mckhann et al.、1984に基づいた。
【0152】
また、本発明の状況において、「同時療法」状況における、例えば、アルツハイマー病などのAPP関連障害の場合での本明細書に提供される化合物および/または組成物の医学的使用が構想される。前記の場合において、メマンチン、ドネプレジン、リバスチグミンまたはガランタミンなどの認可された医薬を用いる同時療法が構想される。
【0153】
また別の態様において、本発明は、本明細書に規定される少なくとも1つのグリコシル化抗体分子、あるいは本明細書に提供される本発明のモノおよび/または二重グリコシル化方法の混合物を含むキットを提供する。有利にも、本発明のキットは、任意に、バッファー(1種または複数種)、保存溶液および/または残留試薬あるいは医学的、科学的もしくは診断アッセイの実施および目的に必要とされる材料をさらに含む。さらに、本発明のキットの部分はバイアルもしくはボトル内に個々に、または容器内に組合せて、または多容器ユニットにパッケージングされ得る。
【0154】
本発明のキットは、とりわけ、本発明の方法を行なうために有利に使用され得、本明細書に言及する種々の適用に、例えば、診断キット、研究手段または医学的手段として使用され得る。さらに、本発明のキットは、科学的、医学的および/または診断目的に適当な検出のための手段を含み得る。キットの製造は、好ましくは、当業者に公知の標準的な手順に従う。
【実施例】
【0155】
以下の非限定的な実施例は本発明を例示する。
【0156】
実施例1:クローニング技術による抗体Aの作製
本発明によって、IgG1分子は、一般的なクローニング技術により作製された。抗体Aは、そのコード配列およびその発現されるアミノ酸配列において、その重鎖の可変領域(VH)を特徴とする。DNA配列にコードされる重鎖(heavy)の対応する例は以下のとおりであり、
以下の免疫グロブリンH-鎖:
をコードする。
【0157】
同じ重鎖はまた、以下の配列
に示されるさらなる「リーダー配列」を含む配列にコードされ得る。
【0158】
対応するアミノ酸配列は、
であり得る。
【0159】
同様に、抗体Aの軽鎖は、以下のヌクレオチド配列:
にコードされ、以下のアミノ酸配列 (L-鎖):
をコードする。
【0160】
さらにまた、「リーダー配列」が使用され得、対応する配列は、
であり得る。
【0161】
この配列は、以下のアミノ酸配列
をコードする。
【0162】
上記のこれらの配列は、WO 03/070760に開示されたMAB31から公知である。
【0163】
しかしながら、例示された抗体A重鎖および軽鎖はまた、以下に示す:
a)重鎖
b)軽鎖
配列にコードされ得る。
【0164】
実施例1.1 ベクター構築
合成ファージディスプレイライブラリーであるMorphoSys HuCAL Libraryの一次スクリーニング後、第2回目の変異から生じた抗体Aの配列。抗体AのDNAは、最初にMorphoSys、GermanyのベクターpMorphに提供され、WO 03/070760の図2の付表p 6/43のFab発現ベクターに相当する。本発明の目的のためのベクター構築において、ベクターpEE6.1およびpEE 14.4 (ともに、Lonza Biologiesから市販)は、1つのベクターに両方の鎖を有する構築物が得られるようにコードされている。添付の図1参照; WO 87/04462またはWO 89/01036参照。以下のクローニングストラテジーを適用した。
【0165】
プライマーACGTAAGCTTGCCGCCACCATGGTGTTGCAG (センス、HindIII;配列番号29)およびプライマーACGTGAATTCCTAACACTCTCCCCTGTT (アンチセンス、EcoRI;配列番号30)を用いるPCRによって、Ig κ鎖をベクターMS-Roche #7.9.H7_Ig_κ鎖(WO 03/070760に記載) から単離し、pCR 2.1 Topo TA内に挿入し、挿入物を完全に配列決定した。HinDIII/EcoRI消化によってpCR Topo 2.1 からIg κ鎖挿入物を除去し、HindIII/EcoRI挿入物としてベクターpEE14.4内にライゲートした。
【0166】
プライマーACGTAAGCTTGCCGCCACCATGAAACACCTG (センス、HindIII;配列番号:31)およびプライマーACGTGAATTCTCATTTACCCGGAGACAG (アンチセンス、EcoRI;配列番号:32)を用いるPCRによって、Ig γ1重鎖をベクターpMorph MS-Roche #7.9.H7_IgG1からクローニングし、pCR 2.1 Topo TA内に挿入し、挿入物を完全に配列決定した。HindIII/EcoRI消化によってpCR Topo 2.1からIg γ1重鎖挿入物を除去し、HindIII/EcoRI挿入物としてベクターpEE 6.4内にライゲートした。Notl/SalI消化によってPEE 6.4 IgG1から重鎖発現カセットを除去し、単離された断片をSalI/Notl消化pEE14.4κ内に挿入し、最終の二重遺伝子構築物pEE 14.4 mAb-31がもたらされた。
【0167】
実施例1.2:CHO細胞のトランスフェクションおよび抗体Aの発現
標準的プロトコルに従いトランスフェクションを行なった。宿主細胞株CHO K1はLonza Biologics working cell bank (WCB) # 028-W2(Lonza, 2002, 1-179)由来であり、宿主細胞株CHO K1 SVは Lonza Biologics master cell bank (MCB) #269-M(Lonza, 2003, 1-87)由来であった。
【0168】
WCB # 028-W2由来の接着CHO K1細胞に、リポソームトランスフェクション(Fugene, Roche Diagnostics)により、重鎖およびκ軽鎖遺伝子の両方を含むベクターpEE 14.4 MAb31をトランスフェクトした。トランスフェクション単離物をDMEM、GS補充(共にJRH Biosciences)、10%透析FCS(PAA Laboratories, CoS#R0-CEP 2001-083-Rev 00)および50μMメチオニンスルフォキシミン(SigmaのMSX)中で選択した。2週間後、コロニーを選別して96ウェルプレートに移し、抗体産生についてELISAで試験した。抗体Aの最も高い発現を有する4つのコロニーを連続的限界希釈によりクローン化して単一細胞由来培養物を得、一週間後82クローンが派生し拡大培養した。
【0169】
これらのクローンのうちの1つを、接着状態で48pg/細胞/日の最高特異的産生速度を有するものとして選択した。さらに、限界希釈によりサブクローニングし、高い安定性で抗体Aを発現する良好な産生体を得た(Pu, (1998) Mol Biotechnol, 10, 17-25)。さらに、CHO K1細胞、MCB #269-M由来のCHO K1 SV細胞の異なる懸濁液にベクターpEE 14.4 MAb31を、エレクトロポレーションによりトランスフェクトした。トランスフェクト体を先述と同様に選択して得られたクローンを、限界希釈により単一細胞クローニングにかけ、抗体Aのいくつかの高い産生体クローンを得た。
【0170】
実施例1.3: 抗体Aを発現するクローンの懸濁培養への適合
CHO K1クローンの最大成長特性を、種々のタンパク質加水分解物を添加したDHI培地中で決定した:以下の改変:ダイズおよびコメ加水分解解物: 0.2%ダイズHyPep 1510および0.2%コメHyPep 5603(Kerry Bioscience)、0.03%Pluronic F68(Invitrogen)、25μM MSX(Sigma)および5%透析FCS(PAA Laboratories)を加えて、DMEM、Ham’s F12およびIMDMそれぞれ1:1:2(v:v:v)の割合の混合物である(Schlaeger and Schumpp, 1992, J Immunol Methods, 146, 111-20)、グルタミン無しDHI培地(Invitrogen)に細胞を、最終的に適合した。FCS濃度を、細胞が無血清DHI培地中で指数関数的に増加するまで徐々に減少した。無血清DHI培地中の一次シードバンクを数種類の組換え細胞クローン用に凍結した。
【0171】
CHO K1 SVクローンを、ツーステップ手順(Lonza)で、10%透析FCSを含有するDMEMから25μM MSX(Gibco-Invitrogen)を有する化学的に規定されたCD-CHO培地中の懸濁培養に適合させた。CD-CHOにおけるセルバンクを作製した。任意に、懸濁培養のためにおよび抗体を発現するための基盤として、CHO細胞用の任意の他の無血清培地および無タンパク質培地を使用した。
【0172】
実施例2: 抗体Aの産生
(流加発酵による)抗体Aの産生
振盪フラスコまたはスピナー培養のいずれかにおけるストック培養物からの発酵のためにCHOクローンを以下のように調製した:
個々のクローンの冷凍バイアルを、100ml振盪フラスコまたは50〜75mlの名目容積を有するスピナー中、25μM MSXを含有するそれぞれの培地中で溶かした。
【0173】
次いで、振盪フラスコまたはスピナーのいずれかで400〜500ml容積のストック培養物に達するように、細胞を1:5の連続的分割で拡大培養した。発酵物の接種に用いた細胞は、溶かした後90日までのストック培養物に由来した。シード手順は、2L振盪フラスコまたはスピナーにおける2x 1000mlの工程からなり、その後さらなる容器として10L発酵槽の接種を続ける。あるいは、10L発酵槽は、流加容器自体または100L流加発酵槽用の接種として機能し得た。10L発酵槽の接種まで選択培養培地中にMSXを存在させ、その後排除した。
【0174】
発酵プロセス:
0日目:3〜4x105/ml細胞で開始(シード培養物から1:4〜1:5スプリット)
2〜3日目:播種の開始、細胞密度は1.5x106/mlより高くすべきである。
播種:2%/日で連続またはボーラス(bolus)播種
抗体Aアイソフォームの組成は発酵を通してイオン交換クロマトグラフィーによりモニターされた(下記参照)。
【0175】
14〜18日目:細胞の生存が落ち始め(50%)および期待されたタイターに達した際に、遠心分離および/または濾過により細胞上清を回収し、濾過滅菌した。それを無菌的に保存し、さらに次のセクションに記載されるように処理した。
【0176】
標準的プロトコルに従って発酵を実施した、例えばWerner, (1993), Arzneimittelforschung, 43, 1242-9またはRendall, (2003). Proceedings of the 18th ESACT meeting, May 11-14, 2003, 1, 701-704)を参照のこと。
【0177】
実施例3: 抗体Aの精製
精製プロセスは3回のクロマトグラフィー工程および1回の透析濾過に基づく:プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび100kDメンブレンを使用した透析濾過。ゲルの種類およびカラムサイズは1l MabSelect(GE Healthcare, Art. 17-5199, カラム直径9cm、床長さ18+/-2cm)、0.4l CM-Toyopearl 650M(Toso Bioscience, Art. 007972, 小イオン容量=85マイクロ等価/ml、直径5.0cm、床長さ20+/-2cm)、1.3l Q-Sepharose FF(GE Healthcare, Art.17-0510-04)、直径9cm、床長さ20+/-2cmであった。カラムは室温で作動させた。画分を2〜8℃で保存した。検出は280nmであった。0.1 m2の面積を有するBiomax 100ウルトラフィルトレーションモジュール(Millipore Corp. Art. P2B100A01)を、濃縮および透析濾過に使用した。
【0178】
プロテインAクロマトグラフィー
純水を使用して以下の溶液を調製した:
溶液A(平衡化バッファ):25mM Tris、25mM NaCl、5mM EDTA、HClでpH 7.1+/0.1に調整した
溶液B(洗浄バッファ1):100mM酢酸をNaOHでpH 4.5+/-0.1に調整した
溶液C(溶出バッファ):100mM酢酸をNaOHでpH 3.2+/-0.1に調整した
溶液D(洗浄バッファ2):100mM酢酸、75mM NaCl、pH 3+/-0.1
溶液E(再生バッファ):2M塩酸グアニジン、100mM Tris、HClでpH7.5+/-0.1に調整した
溶液F(保存バッファ):200mMベンジルアルコール、100mM酢酸、水酸化ナトリウムでpH 5.0+/-0.1に調整した
【0179】
カラムをまず3床容量の溶液Aで平衡化した。
【0180】
その後、カラムに清浄した細胞培養上清を充填し(45 l, 386mg/l抗体)
5床容量の溶液Aで洗浄し、
3床容量の溶液Bで洗浄し、
3.5床容量の溶液Cで溶出して溶出物を回収し、
3カラム容量の溶液Dで洗浄し、
2カラム容量の溶液Eで再生し、
3床容量のバッファAで平衡化し、
保存のために床容量バッファFで洗浄した。
【0181】
全クロマトグラフィー工程には線形的流速100cm/hを用いた。
【0182】
カラム負荷は17.4g抗体/l Mabselectゲルであり、全アイソフォーム混合物の収率は96%であった。
【0183】
ウイルス不活性化
純水を用いて以下の溶液を調製した:
溶液G(調整溶液):2M酢酸ナトリウム
【0184】
プロテインA溶出物のpHを濃縮酢酸または2M酢酸ナトリウム(溶液G)の添加によりpH 3.5〜3.7に調整した。15分間攪拌し、その後(than)2M酢酸ナトリウム(溶液G)を添加してpH 4+/-0.1に調整した。
【0185】
陽イオン交換クロマトグラフィー
純水を用いて以下の溶液を調製した:
溶液H(平衡化バッファ):100mM酢酸、NaOHでpH 4.0+/-0.1に調整した
溶液I(溶出バッファ1):250mM酢酸ナトリウム、pHを調整せずにpH 7.8〜8.5
溶液J(溶出バッファ2):500mM酢酸ナトリウム、pHを調整せずにpH 7.8〜8.5
溶液K(再生溶液):0.5M水酸化ナトリウム
溶液L(保存バッファ):0.01M水酸化ナトリウム
【0186】
まずカラムを2床容量の溶液Kで再生して、次いで5床容量の溶液Hで平衡化した。
【0187】
次に、カラムにプロテインA溶出物のアリコートを充填して1床容量の溶液Hで洗浄した。
【0188】
6床容量の溶液Iでカラムを溶出した。この工程で二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームの混合物を溶出した。次の工程で、3床容量の溶液Jを用いて非グリコシル化アイソフォームを溶出した。
【0189】
使用後カラムを2床容量の溶液Kで再生し、このバッファ中で24時間保存し、次いで、2床容量の溶液Kで再度洗浄した。保存のためにカラムを3床容量の溶液Lで洗浄した。
【0190】
例示クロマトグラムを図3に示す。
【0191】
クロマトグラフィーの画分を下記の解析IEXで解析した。
【0192】
線形的流速100cm/hを、全てのクロマトグラフィー工程に使用した。
【0193】
カラム負荷は14.3g抗体/l CM-Toyopearl 650Mであり、二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームの混合物の収率は79%であり、非グリコシル化アイソフォームの収率は6.2%であった。
【0194】
Q-Sepharose FFを用いたフロースルークロマトグラフィー
純水中に以下の溶液を調製した:
溶液M(希釈バッファ):37,5mM Tris、酢酸でpH 7.9+/-0.1に調整した
溶液N(調整溶液):2M Tris
溶液O(平衡化バッファ):83mM酢酸ナトリウム、25mM Tris、pH 7.5+/-0.1
溶液P(再生バッファ1):0.5M NaOH/1M NaCl
溶液Q(再生バッファ2):0.2M酢酸/1M NaCl
溶液R(保存バッファ):0.01M NaOH
【0195】
まずCMTカラムからの溶出物(酸性)を、溶液Mで1:3に希釈し、次いで溶液NでpH 7.5に調整した。
【0196】
まずカラムを2床容量の溶液Oで平衡化して、次にCMTカラムの希釈した溶出物を、カラムに通して処理しフロースルーを回収した。280nmの吸光度が0.1未満になるまで溶液Oを有する溶液で生成物をカラムから洗い落とした(フロースルー回収)。
【0197】
1.5床容量の溶液Pでカラムを再生して1時間保存し、次いで別の1.5床容量の溶液Pで再生した。その後、2床容量の溶液Qでカラムを再生し3床容量の溶液Rで洗浄して保存した。
【0198】
線形的流速100cm/hを、全てのクロマトグラフィー工程に使用した。
【0199】
カラム負荷は3.5g抗体/l Q Sepharose FFであり、二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームの混合物の収率は91%であった。
【0200】
透析濾過
純水を使用して以下の溶液を調製した:
溶液S(透析濾過バッファ):20mMヒスチジン、HClでpH 5.5に調整した
【0201】
フィルターホルダーPellicon 2(Millipore Corp.)を、1ウルトラフィルトレーションモジュール型Biomax 100(Millipore Corp.、面積=0.1m2、Art.P2B100A01)に備えた。シリコンチューブを備えたWATSON-MARLOW 501 Uポンプをポンピングのために使用した。バッファOでシステムをすすぎ、次いで3.8リットル(1.1g抗体/l)のQSクロマトグラフィーのフロースルー(濃縮酢酸でpH 5.5に調整)を、4〜11℃の1時間以内で250〜300mlに濃縮した。次に、3リットルのバッファS(約10倍量)に対して透析濾過(V=一定)を行なった(4〜11℃)。最終的に生成物をMillipac 20フィルター(Millipore Corp.)を用いて濾過滅菌した。ウルトラフィルトレーション/透析濾過工程の収率は91%であった。生成物の濃度は15mg/mlであった。生成物を−70℃で凍結し得た。
【0202】
画分解析のための解析IEX法
カラム:Mono-S HR 5/5(GE Healthcare, Art. 17-0547-01)
バッファ1:50mMモルフォリノエタンスルホン酸、水酸化ナトリウムでpH 5.8に調整
バッファ2:50mMモルフォリノエタンスルホン酸、1M NaCl、水酸化ナトリウムでpH 5.8に調整
流速:1ml/分
検出:280nm
試料負荷:36〜72μ
勾配:時間 %バッファ2
0分 0
1 0
25 63
27 63
28 0
35 0
【0203】
例示的クロマトグラムを図2に示す
【0204】
【0205】
実施例4:SDS-PAGEによる抗体Aアイソフォームの特徴づけ
4〜12% NuPage勾配Bis-Trisゲル(Invitrogen)および対照としてマーカーMARK12(Invitrogen)と共に標準的プロトコルを用いてSDS-PAGE解析を行なった。発酵物(Prod 01, 02, 03)またはスピナー培養物(他全てのレーン)からの1〜3μgのプロテインA精製上清をウェルごとに流した。還元条件下での解析により、重鎖の分子量範囲中でピーク1について一本のバンド(二重グリコシル化抗体A)、ピーク2について二本のバンド(モノグリコシル化抗体A)およびピーク3について一本のバンド(非グリコシル化抗体A)が生じた。ピーク2の二本のバンドの分子量はピーク1およびピーク2それぞれの分子量に相当した。
【0206】
HEK 293 EBNA細胞における一過的トランスフェクション、CHO細胞における一過的トランスフェクション、およびCHO細胞における安定発現などの数種類の発現系を用いて同様の結果が得られた。
【0207】
実施例5:質量分光(MS)分析による抗体Aアイソフォームの特徴づけ
全抗体Aアイソフォームの完全抗体質量プロファイルをエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により決定した。
【0208】
このために、抗体Aの試料を非還元条件下で調製した。試料を、G25ゲル濾過により2%蟻酸および40%アセトニトリル中で脱塩し、WatersのQ-Tof2またはLCT-質量分析装置のESI-MS分析に使用した。
【0209】
分子質量による分離により非グリコシル化抗体Aとモノグリコシル化抗体A間に1623の違いがあることが得られた。アミノ酸配列からの非グリコシル化抗体Aについての予想質量は145,987Daであり、実験で測定した質量145,979Daと良く合致している。同様に、モノおよび二重グリコシル化抗体Aアイソフォームは、図4に示すように1624Da異なっている。分子質量に見られた違いは本明細書の以下により詳細に示すN-グリコシル化パターンと適合する。
【0210】
実施例6: 抗体AのAsn-52グリコシル化構造
Asn52は、重鎖可変部分の配列aaa-aaa-Asn-Ala-Ser-aaa-aaaの一部であり、N-グリコシル化コンセンサス配列Asn-aaa-Ser/Thrに相当する。Asn52のN-結合グリコシル化は、抗体AアイソフォームのトリプシンペプチドマッピングおよびAsn52を含むペプチドHC/T4質量分析評価により確認された。非グリコシル化抗体Aのトリプシンペプチドマップにおいて、質量で非グリコシル化HC/T4ペプチドに対応するペプチドが独占的に存在し、Asn52がグリコシル化されていないことを示すが、モノまたは二重グリコシル化抗体Aにおいてペプチドは質量でN-結合糖構造を含有するHC/T4に対応することが検出された。
【0211】
トリプシンによる重鎖のペプチドHC/T4におけるコンセンサス配列のグリコシル化をさらに確認するために、グリコシル化HC/T4ペプチドを、グリコシル化抗体Aアイソフォームのペプチドマップから単離して、N-グリコシダーゼFとのインキュベーションの前後でのMALDI-質量分析により解析した。N-グリコシダーゼF処理の前、N-結合糖構造を含むHC/T4ペプチドに対応する質量が得られた。しかし、N-グリコシダーゼF処理したHC/T4ペプチドの質量は、N-グリコシダーゼFによりアスパラギンから糖鎖が除去された場合(AsnからAspへの転換)に予想されるような非グリコシル化HC/T4に対して予想された質量+1Daに相当した。
【0212】
Asn52に結合する糖構造におけるN-アセチル-ノイラミン酸の存在は、N-結合複合体およびハイブリッド型糖構造の存在をさらに示す。このためにグリコシル化抗体AアイソフォームをN-グリコシダーゼFで処理することでノイラミニダーゼの有無でAsn52でなく、Asn306のN-糖が除去され、変性および還元および脱塩によるHCおよびLCの分離後に解析した。両アプローチからHCについて得られた質量は、1つまたは2つのシアル酸に対応する約291Daまたは582Da異なっていた。このことから、複合体および/またはハイブリッド型のN-結合糖はAsn52に結合していることも結論付けられた。
【0213】
このAsn-52グリコシル化、N-グリコシル化は、主に、核フコシル化を有さず、N-アセチル-ノイラミン酸を含むバイアンテナ複合型の80%までが高度にシアリダーゼ化(sialidated)されるバイアンテナ複合型の糖構造(≧75%;主に80〜90%)からなった。少数の糖構造はバイアンテナハイブリッドおよびオリゴマンノース型(≦25%)のそれぞれに属した(図5または図27)。全てのAsn52グリコシル化構造に共通するのは、N-グリコシダーゼによる完全な抗体Aからの切断に対する耐性であった。
【0214】
実施例7: 抗体AのAsn306グリコシル化構造
上記で指摘されるように、抗体Aは重鎖(HC)のFc部分のアスパラギン306(Asn306)に結合する、バイアンテナ複合型オリゴ糖鎖からなる抗体型グリコシル化を含んだ。抗体が、末端ガラクトシル化、シアリル化の程度および核フコシル化の程度において異なるかかるバイアンテナ複合型オリゴ糖鎖の異なるアイソフォームを含むことは周知である。また、核フコシル化の程度により抗体のエフェクター機能が調節されることが広く受け入れられるように、Fcに位置する糖鎖における核フコシル化を欠損する程度が抗体のインビボ効果に重要であることも知られている。
【0215】
抗体Aについて、Asn306に結合するFcに位置する糖鎖中の主要な抗体の典型的なバリエーション(Routier (1997), Glyoconjugate 14(2), 201-207; Raju (2003), BioProcess International, 44-52)は、末端ガラクトシル化および核フコシル化に関係することが見出された。
【0216】
末端ガラクトシル化(G0 : G1 : G2構造)の程度における不均一性は、約35〜40%G0-構造、約45%G1-構造および約15〜20%G2-構造であることが決定された(構造の模式的説明については図6または図27参照)。
【0217】
核フコシル化を欠損するFc糖構造の含有量、即ち核糖構造の最内部のN-アセチル-グルコサミンに結合するフコースユニットを欠損することは、おそらく抗体に重要であり、このフコースユニットの有無がエフェクター細胞のFcレセプターへの抗体の結合を調節し、これらの細胞の活性化に影響を及ぼし得る。
【0218】
抗体Aについて、Asn306における核フコシル化を欠損する糖鎖アイソフォームの相対含有量は、以下に記載される2つの異なる方法により測定された:
【0219】
A) 完全グリコシル化HCの質量分析:
抗体Aの試料を、6M塩酸グアニジンおよび250mM TCEPの存在下で軽鎖(LC)に変性、還元させ、HCをグリコシル化させた。還元した試料を2%蟻酸および40%アセトニトリル中で脱塩し、WatersのQ-Tof2またはLCT質量分析装置のESI-MS分析のために使用した。得られたm/zスペクトルから個々のオリゴ糖アイソフォームの相対含有量を、選択された単一m/z状態から個々のオリゴ糖アイソフォームを含むグリコシル化HCのピーク高さにより計算した。核フコシル化を欠損する糖構造の相対含有量の計算のために、核フコースを欠くG0構造(G0-Fuc)のピーク高さをG0+(G0-Fuc)の合計と関連付けた。
【0220】
オリゴ糖構造が対照実験におけるMS分析の前のN-グリコシダーゼFとのインキュベーションにより除去されたそれぞれの炭化水素構造を、グリコシル化HCについておよびHCについて得られた質量の差に従って整列させた。
【0221】
B) HPEAC-PADによる放出されたオリゴ糖のクロマトグラフィー解析:
抗体Aの試料を、Asn306からオリゴ糖鎖を放出させるために、pH 7.2のリン酸ナトリウムバッファ中のN-グリコシダーゼFとインキュベートした(Asn52の糖構造は、使用された条件下で完全な非変性抗体からは除去されない)。放出された糖鎖を、遠心分離濾過により抗体Aタンパク質から分離し、強アルカリpH(pH 13)の酢酸ナトリウム勾配を使用して、BioLCシステムのDionexのCarbo Pac PA200カラムで解析した。使用したカラムは、フコシル化オリゴ糖鎖から非フコシル化体を溶解することができた。それぞれの炭化水素構造に対して得られた個々のピークの割当は、Carbo Pac PA200カラムで解析された適切なオリゴ糖標準の1つに対する保持時間を比較すること、およびMALDI質量分析により分離され回収されたピークのモル質量を測定することのそれぞれによりなされた。核フコシル化を欠損する糖構造の相対含有量の計算のために、核フコースを欠損する全構造中の面積%の合計を作った。
【0222】
数種類のバッチ(二重およびモノグリコシル化抗体Aアイソフォームの組合せ)および精製された抗体Aアイソフォームのそれぞれの解析により、オリゴ糖鎖と結合した非フコシル化Asn306の含有量は約14%〜27%(MSにより測定)および6%〜26%(HPAEC−PADにより測定)のそれぞれの範囲にあることが明らかとなった。
【0223】
実施例8:表面プラズモン共鳴(SPR)によるインビトロでの抗体A組成物ならびにAβ1-40およびAβ1-42繊維に結合するアイソフォーム(例えば本発明の非、モノ、二重グリコシル化抗体)についてのKD値の測定
抗体Aの原繊維Aβへの結合は、オンラインで、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定され、分子相互作用の親和性は以下のように測定された:これらの測定にはBiocore2000およびBiocore3000装置が使用された。Aβ1-40およびAβ1-42繊維は、インビトロで、10mM酢酸Naバッファ(pH 4.0)中200μg/mlの濃度の合成ペプチドを3日間37℃でインキュベーションすることで生成された。電子顕微鏡分析により両ペプチドについて原繊維構造が確認され、Aβ1-40は主に短く(<1ミクロン)、Aβ1-42は主に長い(>1ミクロン)繊維を示した。これらの繊維は、不定形の凝集物および構造をとらない沈殿物の不明確な混合物よりもさらに密接してヒトAD脳中で凝集したAβペプチドを提示すると推定された。該繊維を1:10に希釈し、製造業者の指示マニュアル(BIAapplication Handbook, version AB, Biacore AB, Uppsala, 1998)に記載されるようにCM5に対して直接カップリングさせた。
【0224】
このカップリング手順は、表面をN-ヒドロキシスクシニミドおよび塩酸1-エチル-1-(3-ジアミノプロピル)-カルボジイミドの水性混合物と接触させることにより、表面のカルボン酸基が化学的に反応性のスクシニミドエステル基に移行される際の、活性化工程および、200〜350共鳴ユニット(1共鳴ユニット(RU)はおよそ1ピコグラム/mm2の表面負荷に相当する)の10mM酢酸バッファ(pH4.5)に溶解させた繊維と活性化表面を接触させる際の、固定化工程を含んだ。次いで、該繊維負荷表面を、200nM≧C≧0.15nMの濃度範囲の抗体溶液と接触させた。会合相(バッファと接触している間)および解離相(バッファと接触した後)の間にモニターされた典型的な時間依存性応答曲線(=センサグラム(sensogram))を図7に示す。
【0225】
抗体AアイソフォームのAβ1-40およびAβ1-42繊維への結合に対するKD値を以下の表に示す。簡潔に、KD値は濃度依存平衡結合応答を用いたスキャッチャード型解析により計算した。これらの平衡結合定数は2種類の方法で得られた。
【0226】
低抗体濃度における非常に遅い会合プロセスのために、平衡に達する接触間隔は非常に長かった(図7)。にもかかわらず、かかる接触間隔はBiacore装置で実現され得、実験平衡応答はスキャッチャード解析に供され得た。
【0227】
平衡結合データもまた、短い時間に依存する会合曲線を無限大に外挿することで得られた。次いで、これらの理論的に得られた平衡結合レベルは、KD値の測定のために再度使用された。
【0228】
平衡センサー応答を測定する方法とは独立して、曲線スキャッチャードプロットを得た。曲線スキャッチャードプロットから、高い(二価)および低い(一価)親和性相互作用が、二次親和性成熟サイクル由来の抗体Aアイソフォームについて導き出された。これら2つの親和性は、以下の表に示される範囲の下限および上限KD値を示す:
【0229】
【0230】
上記の表は、表面プラズモン共鳴によって測定されるように、抗体AアイソフォームとAβ1-40繊維の相互作用によって形成される、低い親和性複合体(一価)および高い親和性複合体(二価)のKD値を示す。外挿された平衡応答(「外挿」と記される)を用いて測定されるKD、および実験的に測定された平衡応答(「実験的」と示す)を用いて測定されるKD値が提供される。外挿値は少なくとも6回で測定され、標準偏差が提供される。実験的および外挿平衡センサー応答を基にしたKDはこれらの標準偏差によって与えられた範囲内で等しい。
【0231】
実施例9:デカペプチドを用いたペプスポット分析による抗体A組成物およびアイソフォーム(例えば本発明の非、モノまたは二重グリコシル化抗体)のエピトープマッピング
エピトープ(抗原決定基)は線形または立体的であり得る。本明細書に記載される二重エピトープ特異性は、抗体と2つの非連続的線形的ペプチドとの反応性により規定された。
【0232】
特異的なエピトープ認識の規定に使用されたエピトープマッピングアプローチは、マイクロプレート上にコートされたヘキサペプチドコンジュゲートによるELISA技術またはペプスポット技術に基づく。後者の技術により、タンパク質のPVDF膜へのウェスタンブロットについて一般公知のプロトコルによる抗体の検出および定量が可能になる。
【0233】
適用されたエピトープマッピング技術は線形的エピトープを特異的に検出するように設計されるが、不連続または立体構造的エピトープのような、より空間的に複雑なエピトープのマッピングには適用できない。ドメインスキャンおよびコンビナトリアルペプチドアレイのような立体構造的または不連続的エピトープマッピングに利用可能な技術は、36アミノ酸(ドメイン)までの長いペプチドまたはそれぞれが12アミノ酸からなる組み合わされたペプチドを要する。
【0234】
従って、適用される技術は、不連続的または不連続的に分散したエピトープのいずれかの立体構造的エピトープが含まれることを除いて、線形的エピトープに対して特異的であると考えられる。
【0235】
まとめると、示されたデータは、本明細書中に規定されたAβペプチド中の2つの領域は、単一の6量体または10量体Aβペプチドに対して調べた抗体の独特な二重エピトープの特異性に基づいて同時に認識した独立した線形エピトープに類似することを示す。
【0236】
以下のAβ(1-42)を包含するアミノ酸配列を、1アミノ酸のフレームシフトを有する43の重複するデカペプチドに分割した。この数字は、抗体の最適な結合のためにデカペプチド中に存在しなくてはならないAβ1-40配列由来の必須アミノ酸のことをいう。
【0237】
ISEVKM1DAEF RHDSGYEVHH QKLVFFAEDV GSNKGAIIGL MVGGVVI42ATV IV(配列番号:4)。従って、DAEF RHDSGYEVHH QKLVFFAEDV GSNKGAIIGL MVGGVVIA(配列番号:3)はAβ4/β-A4ペプチドのアミノ酸1〜42を表す。
【0238】
43のデカペプチドを、N末端アセチル化および市販の供給者(Jerini BioTools, Berlin)によるセルロースシートへのC末端共有結合(「ペプスポット」)により合成した。セルロースシートを、ロッキングプラットフォーム上で、ブロッキングバッファ(50mM Tris.HCl、140mM NaCl、5mM NaEDTA、0.05%NP40(Fluka)、0.25%ゼラチン(Sigma)、1%ウシ血清アルブミン第V因子(Sigma)、pH 7.4)中のモノクローナル抗体(1μg/ml)で2時間インキュベートした。シートをロッキングプラットフォーム上で、TBS(10mM Tris.HCl、150mM NaCl、pH 7.5)で3分間、3回洗浄した。次いで、フィルターペーパー上に押し付け、カソードバッファ(25mM Tris塩基、40mM 6-アミノヘキサン酸、0.01%SDS、20%メタノール)で湿らせ、ペプチド面を同じ大きさのPVDF膜(Biorad)に対面するように、セミドライブロッティングスタックに転写した。
【0239】
セミドライブロッティングスタックは、ペプチドシートよりもわずかに大きい新しく湿らせたフィルターペーパー(Whatman No.3):
カソードバッファで湿らせた3枚のペーパー
ペプチドシート
メタノールで湿らせたPVDF膜のシート
アノードバッファ1(30mM Tris塩基、20%メタノール)で湿らせた3枚のペーパー
アノードバッファ2(0.3mM Tris塩基、20%メタノール)で湿らせた3枚のペーパー
で構成された。
【0240】
0.8mA/cm2のカソードとアノード間の電流密度で、セルロースシートから抗体が完全に溶出し、PVDF膜に転写されるのに十分なように、転写を1時間行なった。PVDF膜をブロッキングバッファに10分間浸漬した。フルオロクロームIRdye800(Rocklandコード番号609-132-123)で標識したヤギ抗ヒトIgG(H+L)を、Odysseyブロッキングバッファ(Li-Cor)中に1:10,000に希釈して添加し、さらにPBS、0.05%Tween20で1:1に希釈した。膜をロッキングプラットフォーム上で1時間インキュベートした。これをTBST(0.005%Tween20添加TBS)で3x10分間洗浄した。図8に示すように、膜を乾燥させ、長波長蛍光スキャナー(Odyssey)を用いて、800nm蛍光でスキャンした。
【0241】
抗体反応スポットの正確な割当を、PVDF膜を針で穿刺してマーキングすることで達成した。問題の抗体のエピトープは反応性ペプチド中の最小アミノ酸配列として規定した。各スポット上の蛍光強度を統合して相対蛍光単位(RFU)として記録した。比較のために、2つのマウスモノクローナル抗体(N-末端ドメインに対する特異性を有する抗体6E10(Kim (1998).,)と同等であるBAP-1、および中間ドメインに対する特異性を有する抗体4G8 (Kim (1998),)と同等であるBAP-44)を、検出のための抗ヒトIgの代わりに抗マウスIgを用いる以外は同じ方法で解析した。
【0242】
通常、親和性成熟度および一価のFabフラグメントの完全長IgG1抗体への転換により、ペプスポットおよびELISA解析で示される場合のエピトープ認識配列の何らかの広がりが生じることを示しておく。これは、親和性成熟の結果として抗体抗原相互作用領域におけるより多くの接点の介入、または最小エピトープへのより強い結合に関連し得、隣接するアミノ酸との弱い相互作用も検出され得る。後者は、Aβ由来ペプチドが全長IgG抗体でプローブされる場合であり得る。以下の表に示すように、N末端および中間エピトープの認識配列は、親(parent)Fabと対応する完全に成熟したIgG抗体を比較した場合、3アミノ酸まで伸長された。しかしながら、デカペプチドはC末端アミノ酸で共有結合のために修飾され、そのためにこのアミノ酸は立体障害のために完全長抗体に容易には接近し得ないことを留意しなければならない。これがあてはまる場合、最後のC末端アミノ酸がエピトープ認識配列に有意に寄与せず、C末端における1アミノ酸による最小認識配列の潜在的な減少が、本発明において使用される、ペプスポット解析で考慮されなければならない。
【0243】
【0244】
上記の表は、完全長IgG抗体の、セルロースシート上のデカペプチドへの結合のペプスポット解析に関する。数字は、抗体の結合のためのデカペプチド中に存在しなければならないAβ1-40配列のアミノ酸位置を表す。最大限の結合を達成するために必要なフランキングアミノ酸を示すために、エピトープに対するさらなる伸長が()内に示される。
【0245】
実施例10:凝集したAβからビオチン化Aβの放出を誘導する抗体Aアイソフォーム(例えば、本発明の非-、モノ-、または二重-グリコシル化抗体)を使用した脱重合アッセイ
抗体Aアイソフォームの凝集Aβの解離を誘導する能力を試験するための実験設定は以下の通りとした。
【0246】
抗体Aアイソフォーム処理前に、ビオチン化Aβ1-40をまず、前形態Aβ1-40/Aβ1-42繊維に組み込んだ。下記のようなストレプトアビジン-PODコンジュゲートを採用するアッセイを用いて、ビオチン化Aβの遊離を測定した。
【0247】
水性バッファ中で数日間インキュベートした際、合成Aβは自発的に凝集して、アルツハイマー病患者の脳におけるアミロイド沈着に見られるものと同様の線維性の構造を形成する。抗Aβ抗体および、アルブミンなどの他のAβ結合タンパク質のAβ中和能力を解析するために、以下のインビトロアッセイがビオチン化Aβの前形成Aβ凝集物への取り込みまたは遊離の測定に適している(Bohrmann (1999) J. Biol. Chem. 274, 15990-15995)。取り込まれたビオチン化Aβ1-40の放出により測定した際に、抗体Aアイソフォームは凝集Aβの脱重合を誘導した。
【0248】
実験手順:
NUNC Maxisorbマイクロタイタープレート(MTP)を、37℃で3日間、Aβ1-40およびAβ1-42の1:1混合物(各2μM、100μl/ウェル)でコーティングした。これらの条件下で、高度に凝集した線維性Aβは吸着され、ウェルの表面に固定化された。次いで、コーティング溶液を除去してプレートを室温で2〜4時間で乾燥した。乾燥させたプレートを−20℃に保存した。ビオチン化Aβの取り込みのために、コートされたプレートを、0.05%NaN3含有TBS中200μl/ウェル 20nMビオチン化Aβ1-40で、37℃で一晩インキュベートした。プレートを3x300μl/ウェルT-PBSで洗浄後、0.05%NaN3含有TBS中に連続希釈した抗体を添加して37℃で3時間インキュベートした。プレートを洗浄して、ビオチン化Aβ1-40の存在について解析した。300μl T-PBSで3回洗浄後、1%BSA含有T-PBS中に1:1000希釈したストレプトアビジン-PODコンジュゲート(Roche Molecular Biochemicals)を添加して(100μl/ウェル)、室温で2時間インキュベートした。ウェルをT-PBSで3回洗浄し、100μl/ウェルの新しく調製したテトラメチルベンジジン(TMB)溶液を添加した。[TMB溶液の調製:10ml、30mMクエン酸pH 4.1(KOHで調整)+0.5ml TMB(1mlアセトン+9mlメタノール中12mg TMB)+0.01ml 35%H2O2]。100μl/ウェルの1N H2SO4を添加して反応を停止して、マイクロタイタープレートリーダー中450nmの吸光度を読んだ。
【0249】
添付の図9に示すように、取り込まれたビオチン化Aβ1-40の放出により測定した際に、抗体Aアイソフォームは凝集Aβの解離を誘導した。抗体Aアイソフォームおよびマウスモノクローナル抗体BAP-1は同様に活性であったが(図9)、BAP-2、BAP-17および4G8抗体は固定化Aβのバルク由来の遊離ビオチン化Aβにおいて明らかに効果が低かった(データ示さず)。細胞表面完全長APPとの反応性により、BAP-1はグリコシル化抗体Aアイソフォームとは明らかに異なっていた。かかる特性を有するBAP-1のような抗体は、潜在的な自己免疫反応が誘導され得るので、治療応用には有用ではない。BAP-2は、凝集Aβ中で曝露されたそのアミノ酸残基4〜6の特異性にもかかわらず、このアッセイにおいて明らかに低い活性を有し、全てのN末端特異的抗体が、論理的に前形成凝集物からのAβの放出において同等に効果的ではないことを示していることを示すのは興味深い。このアッセイにおけるBAP-17(C末端特異的)および4G8(アミノ酸残基16〜24特異的)の比較的低い効果は、凝集Aβにおけるこれら2つのエピトープの潜在的性質のためであった。ここで使用した濃度のBSAは凝集Aβに効果を示さなかった。
【0250】
インビボにおいても関連性があり得るモノグリコシル化アイソフォームは、二重グリコシル化アイソフォームと比較して、インビトロにおいて凝集Aβペプチドを脱重合するより高い能力を示した。
【0251】
実施例11:抗体A組成物およびアイソフォーム(本発明のモノおよび二重グリコシル化抗体)を含む抗体Aは、ヒト脳脊髄液(CSF)から可溶性Aβを捕捉する
ヒトCSF試料から可溶性Aβを捕捉する能力を免疫沈降(IP)および半定量的ウェスタンブロット(WB)解析により測定した。実験手順:
【0252】
ヒトCSF試料の免疫沈降は以下の計画に従い行なった:
70μl ヒトCSF
20μl インキュベーションバッファ(50mM Tris、140mM NaCl、5mM EDTA、0.05%NP-40、1%BSA、0.25%ゼラチン、0.25%粉乳、pH 7.2
10μl ストック溶液由来の抗体Aアイソフォーム(1000〜10μg/ml)
100μl
【0253】
溶液を4℃で1時間保持した。40μlのプロテインGセファロースビーズ(Amersham Biosciences #17-0618-01;PBSで洗浄、50%スラリー)を添加して4℃で2時間ローター上でインキュベートした。500g、4℃で3分間の遠心分離後、上清を除去してビーズに200μlのPBSを添加し、Milliporeフィルターチューブ0.45μm(Millipore #UFC3OHVNB)に移し、500g、4℃で3分間遠心分離した。さらなる200μlのPBSをビーズに添加し、ボルテックスにかけ2000g、4℃で3分間、遠心分離した。45μlの試料バッファDTT含有1xNuPageを添加して70℃で10分間保持し、次いで2000g、4℃で、3分間遠心分離した。
【0254】
SDS-PAGEのために、18μlのプロテインG溶出物を標準として試料バッファ中のNuPageゲル10%Bis-Trisゲルに内部標準としてAβ1-42(Bachem)と共に直接充填し、MESバッファ系で作動させた。
【0255】
ゲルをHybond Cエクストラメンブレン(semi-dry system Novex)に移して、室温で3'膜を乾燥させた。膜を予備加熱したPBSに移し、電子レンジ中600Wで3分間加熱した。SuperBlock Solution(Pierce)で1時間ブロッキングを行ない、T-PBS(PBS中0.1%Tween20)中5%粉乳(Bio Rad)でさらに1時間ブロッキングした。
【0256】
抗Aβ抗体W02抗体(1:1500〜1:2000、The Genetics, Inc. Zurich, Switzerland)で、ローター上で4℃で一晩かけてインキュベーションを行ない、次いでT-PBSで5分間3回洗浄し、T-PBS中の抗マウスIgG-HRP(Dako)1:5000でRTで2時間インキュベートした。さらにT-PBSで5分間3回洗浄し、次いで、LumiLight PlusでRTで5分間インキュベートした。ウェスタンブロットをデジタル化し、Alpha Innotech Digital Camera Systemを有するデンソメトリー(densometry)により解析した。
【0257】
図10に示すように、免疫沈降およびウェスタンブロッティング実験により示されるように、抗体A組成物(モノおよび二重グリコシル化抗体Aアイソフォームを含む)は、ヒトCSF中の可溶性Aβに効率的に結合した。注意すべきことに、このアッセイにおいて、モノグリコシル化抗体Aは、二重グリコシル化抗体Aよりも効率的に可溶性Aβを捕捉した(図10)。
【0258】
実施例12:インビトロにおける抗体A組成物およびアイソフォーム(例えば、本発明の非、モノまたは二重グリコシル化抗体)によるヒトアミロイドプラークの免疫染色
間接的免疫蛍光法を用いた免疫組織化学分析により、重度のアルツハイマー病患者の脳切片から得られた真性のヒトβアミロイドプラークを染色する能力について、グリコシル化抗体Aアイソフォームを試験した。真性のヒトβアミロイドプラークの特異的で感受性がある染色を示した。
【0259】
アルツハイマー病であると陽性に診断された患者の死体から得た側頭皮質の、非固定組織のクリオスタット切片を、間接的免疫蛍光により標識した。連続的2工程インキュベーションを用いて、Cy3(# 109-165-003, lot 49353, Jackson Immuno Research)をコンジュゲートしたアフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)により明らかとなった、結合した抗体Aアイソフォームを検出した。対照には、どれもネガティブな結果を生じる関連のないヒトIgG1抗体(Sigma)および二次抗体のみを含んだ。
【0260】
全ての種類のβアミロイドプラークは感度良く、特異的に検出され、一貫して10ng/mlの濃度の抗体Aで明らかにされた(図11)。
【0261】
真性ヒトアミロイドβプラークの特異的および感受性染色は、1μg/mlまでの濃度のグリコシル化抗体Aアイソフォームを示している。
【0262】
10μg/mlの濃度で、バックグラウンド染色が見られ、非グリコシル化抗体Aアイソフォームで最も顕著であった。非グリコシル化アイソフォームでは、スライドガラス表面およびインビトロにおける切片プロセス後に曝露されたほとんど全ての組織成分に観察されるかなり非特異的なべたつきが現れた。これはイオン性および/または疎水性相互作用を含む非特異的な結合のために見られた。
【0263】
実施例13:アルツハイマー病のマウスモデルにおける抗体 Aによるインビボβアミロイドプラーク修飾
グリコシル化抗体Aアイソフォームを、インビボでβアミロイドプラークを免疫修飾する能力についてPS2APPダブルトランスジェニックマウス(Richards (2003), J. Neuroscience, 23, 8989-9003)の1回投与試験で試験した。グリコシル化抗体Aアイソフォームを投与し、即ち1mg/マウスの投与を行ない、3日後動物をリン酸緩衝化生理食塩水で灌流し、ドライアイスで脳を凍らせて、凍結切片を調製した。
【0264】
インビボにおいて、両方のグリコシル化アイソフォームが、改善され、かつ高度に効率的な脳の浸透を示した(非グリコシル化形態と比較して)。効果的な脳の浸透およびアミロイドβプラークに対する特異的な結合がAD関連アミロイド症のマウスモデルであるPS2APPマウスで示された。
【0265】
βアミロイドプラークに結合する抗体の存在は、未固定クリオスタット切片を用いて、図12に示すヤギ抗ヒトIgG(H+L)コンジュゲートCy3(#109-165-003, Jackson Immuno Research)による単一標識間接免疫蛍光またはその後BAP-2-Alexa488免疫コンジュゲートでの対比染色のいずれかで評価し、組織に存在する全てのβアミロイドプラークの位置および分布を視覚化した。
【0266】
免疫蛍光染色アプローチを用いて結合した抗体Aを検出した。予備冷却したスライドガラスに固定させた後、切片をPBSで水和し、−20℃に予備冷却した100%アセトンで2分間処理した。PBSで2分間、2回洗浄した。1%BSA含有PBSにより、またはUltra V block(LabVision)で5分間のインキュベーション後にPBS洗浄および10%標準ヒツジ血清を有するパワーブロック溶液(BioGenex)中で20分間の連続インキュベーションのいずれかで非特異的結合部位をブロッキングした。10%標準ヒツジ血清含有PBSでの洗浄後、スライドを、15μg/mlの濃度のアフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)コンジュゲートCy3(# 109-165-003, lot 49353, Jackson Immuno Research)で、室温、1時間インキュベートした。BAP-2、Abに対するAlexa488をコンジュゲートしたマウスモノクローナル抗体を0.5μg/ml濃度で用いて、室温、1時間でのインキュベーションによりアミロイドプラークについて対比染色を行った。リポフスチンの自己蛍光を50mM酢酸アンモニウム中の4mM CuSO4でインキュベートすることでクエンチングした。スライドを再蒸留(bidistilled)水ですすいだ後2 x 500μl/スライドのPBSで洗浄して、スライドを蛍光マウンティングメディウム(S3023 Dako)で封入した。
【0267】
共焦点レーザー顕微鏡で画像化し、IMARISおよびCOLOCALIZATIONソフトウェア(Bitplane, Switzerland)により、共局在の定量的解析のために画像処理をした。
【0268】
マウス当り1mgの一回投与後、グリコシル化抗体Aアイソフォームは血液脳関門を通過して浸透し、インビボにおいて、3日後、全てのβアミロイドプラークに効果的な免疫修飾/結合することが見られた。代表的な画像を図12に示す。これはアミロイドプラークを検出できない非グリコシル化形態についての明確な対比である。
【0269】
実施例14: 抗体AアイソフォームのHEK293細胞の表面で発現されるアミロイド前駆体タンパク質(APP)への結合の調査:
フローサイトメトリーの方法は、当該技術分野で周知である。フローサイトメトリーで測定される蛍光の相対ユニット(例えば、FL1-H)は、それぞれの抗体の細胞表面への結合を示した。トランスフェクトされていないHEK293細胞と比較してAPPをトランスフェクトされたHEK293の蛍光シフトは、細胞表面APPとの好ましくない反応を示した。例示として、N末端ドメインに対する抗体BAP-1およびBAP-2は、トランスフェクトされていないHEK293細胞(図13、点線、右パネル)と比較して、HEK293/APP(図13、太線、右パネル)のFL-1シグナルの有意なシフトを示した。同様に、BAP-44抗体(中間Aβエピトープに特異的)は、同様のサイズシフトを示した。対照的に、全ての抗体Aアイソフォーム(図13左パネル)(N末端および中間Aβエピトープに特異的)は、蛍光の有意なシフトを示さなかった。トランスフェクトされていないHEK293細胞は、異なる細胞の大きさおよび表面特性のために、APPトランスフェクト細胞よりも高い基底蛍光を有した。FACScan装置は、Cellquest Proソフトウェアパッケージ(共にBecton Dickinson)と組み合わせて使用した。
【0270】
抗体Aアイソフォームは細胞表面APPに対して反応性を全く欠いていた(図13)。
【0271】
実施例15:アルツハイマー病マウスモデルにおけるAβプラーク沈着の形態測定解析
インビボにおける抗体A組成物または抗体Aアイソフォームのアミロイド症を低減する能力を、抗体A組成物または抗体Aアイソフォームで5ヶ月間処理されたPS2APPマウスの脳の定量的コンピューター補助画像解析を用いて、種々の脳領域(視床、新皮質、海馬および鉤状回)で試験した。
【0272】
そのために、PS2APPトランスジェニック雄マウスに抗体A組成物または抗体Aアイソフォームおよびビヒクルをi.v.注射した。75匹の5〜6月齢PS2APPマウスを、15匹ずつからなる5つのグループ(A〜E)に分けた。0日目に開始し、尾の静脈を介したボーラスi.v.注射により、それぞれのマウスに0.1mLのビヒクル(0mg/kg)、または抗体 A調製物(20mg/kg)を与えた。グループA、B、C、DおよびEのPS2APPマウスにビヒクル(ヒスチジン緩衝化生理食塩水)、上記のようなモノグリコシル化抗体Aおよび二重グリコシル化抗体Aを含み非グリコシル化抗体Aを完全に欠いた抗体A組成物、二重グリコシル化抗体A、モノグリコシル化抗体Aおよび非グリコシル化抗体Aそれぞれを与えた。
【0273】
抗CD-4抗体(ATCCから市販されるハイブリドーマクローンGK 1.5)を注射して、投与されたヒト抗Aβ抗体に対する免疫寛容を誘導した。抗薬物抗体のモニタリングにより、抗体処理された動物のみが処理の16週より以降に中位の免疫応答を発生したこと、および検出可能抗体は低親和性であるかまたは少量でのみ産生される(データ示さず)ことが示された。
【0274】
処理5ヶ月後にマウスを屠殺した。視床、海馬形成および皮質領域を含む未固定の脳を矢状面方向に切片化した。以下のように各脳半球から50枚の切片を作製した:側面レベル(lateral level)約1.92で開始し、5つの連続的シリーズの5x 10μmおよび5x20μmの切片を得た。連続切片の間に隙間はなく、全体で750μmの組織使用量を生じた。そのため、連続切片シリーズはおよそ側面レベル1.20で終了する(PaxinosおよびFranklin, 2003)。定量的形態計測解析のために10枚目毎の切片を使用した。
【0275】
アミロイド沈着について切片を、5μg/mlの濃度の二重グリコシル化抗体Aアイソフォームで染色した。マウスモノクローナル抗体(BAP-2)コンジュゲートAlexa-488フルオロフォアを5μg/mlで使用したAβに対する染色により、同等の結果が示されたが有意な細胞内染色および下記の画像処理作業を阻害するニューロンのバックグラウンド染色を伴った。検出のために、アフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)コンジュゲートCy3(# 109-165-003、lot 49353、Jackson Immuno Research)を15μg/mlの濃度で、室温、1時間で適用した。2x 500μl PBS/スライドでの洗浄後、スライドを蛍光マウンティングメディウム(S3023, Dako)で封入した。
【0276】
画像にはGenePix Personal 4100Aマイクロアレイスキャナー(Axon Instruments, 現在Molecular Devices, CA, USA)の使用を要した。アミロイドβプラークの負荷および数を、2つのパラメーター、つまりアミロイドβプラークで覆われた面積のパーセントおよびアミロイドβプラークの数を用いて、コンピューター補助画像化解析の手段による偏りのない形態計測法を使用して測定した。プラーク負荷およびプラーク数の定量には、MCID M7 Eliteソフトウェア(Imaging Research Inc., St. Catherines / Ontario, Canada)を用いて行なった。スキャンした画像を細部抽出フィルター、次いで標的アクセントフィルターにより強調した。次いで、得られた画像を二値化して、染色強度に従い閾値を調整した。人工的構造、血管およびエッジ効果を、オリジナル参照画像上で同定し、次いで二値化した画像から取り除いた。参照画像上で目的の領域の輪郭を形成した。最終定量のために、二値化した画像中でこれらの領域の面積およびプラークで占められた面積、ならびにプラーク数を測定した。シングルピクセルを無視した。一般的なスプレッドシートソフトウェア(Microsoft Excel, Redmond / WA, U.S.A.)で計算した。プラークの大きさを<100〜>1000μm2の範囲で11のグループに分けた。両側異分散t検定を用いて統計的評価を行なった。
【0277】
比較および統計的評価のために、未処理6月齢PS2APPマウスのコホート(15匹)で試験を開始して、アミロイド症(アミロイドβプラーク病理)の基準を測定した。有意水準(*:p≦0.05;**:p≦0.01;***:p≦0.001)を伴う結果を図15〜18に示す。
【0278】
視床領域においてアミロイドプラークの減少が最も顕著であった(図15)。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について64%、二重グリコシル化抗体Aについて70%、モノグリコシル化抗体Aについて81%および非グリコシル化抗体Aについて44%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について70%、二重グリコシル化抗体Aについて78%、モノグリコシル化抗体Aについて82%および非グリコシル化抗体Aについて36%であることがわかった。非グリコシル化抗体Aについての有意さは低く、観察されたバリエーションは多かったことを記す。
【0279】
脳梁と共に新皮質領域におけるアミロイドプラークの減少を図16に示す。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について19%、二重グリコシル化抗体Aについて27%、モノグリコシル化抗体Aについて30%および非グリコシル化抗体Aについて10%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について40%、二重グリコシル化抗体Aについて46%、モノグリコシル化抗体Aについて42%および非グリコシル化抗体Aについて11%であることが分かった。
【0280】
海馬領域全体におけるアミロイドプラーク減少を図17に示す。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について12%、二重グリコシル化抗体Aについて24%、モノグリコシル化抗体Aについて24%および非グリコシル化抗体Aについて6%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について36%、二重グリコシル化抗体Aについて46%、モノグリコシル化抗体Aについて37%および非グリコシル化抗体Aについて3%であることが分かった。
【0281】
アミロイド症について高い罹患性領域である鉤状回におけるアミロイドプラーク減少を図18に示す。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について2%、二重グリコシル化抗体Aについて12%、モノグリコシル化抗体Aについて5%および非グリコシル化抗体Aについて1%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について22%、二重グリコシル化抗体Aについて36%、モノグリコシル化抗体Aについて13%および非グリコシル化抗体Aについて1%であることが分かった。抗体A組成物および主要なN-グリコシル化アイソフォーム(二重グリコシル化抗体Aおよびモノグリコシル化抗体A)はアミロイドβプラーク負荷およびプラーク数を減少するような同等の有効性を示した。プラーク負荷の減少は、低または中位アミロイド症を伴う領域で最も顕著であり、統計学的に有意であった。
【0282】
全体的に、測定した全ての脳領域においてアミロイドβプラーク数の減少は抗体A組成物および抗体AのAsn52グリコシル化アイソフォームを含む両方の処理後に統計的に有意であることが分かった。それとは対照的に、視床においてはアミロイドβプラーク数に対する小さな効果のみが見られ他の調査された脳領域では、抗体Aの非グリコシル化アイソフォームでの処理後にアミロイドβプラーク数に対する有意な効果は見られず、本発明において詳述されるように精製後の抗体A組成物から除去される。
【0283】
発明者らはまた、プラークの大きさに関してプラーク除去の能力を調べた。一般的に、試験されたヒト抗Aβ抗体の有効性は、小アミロイドβプラークの除去について最も顕著であることが分かった。このことは全ての脳領域で観察された(図15C、16C、17Cおよび18C)。対照的に、非グリコシル化抗体Aアイソフォームについては最小限の傾向または非有意な傾向のみが観察された。
【0284】
抗体Aおよび主要なAsn52グリコシル化アイソフォームの比較解析により、プラーク負荷を低減する同等の能力が示されるが、非グリコシル化アイソフォームはプラーク低減に関して有意な効果を示さない。
【0285】
実施例16:インビボにおける抗体A組成物のアミロイドβプラークへの結合の薬理動態学
上記のようなモノグリコシル化抗体Aおよび二重グリコシル化抗体Aを含み、非グリコシル化抗体Aを完全に欠く、抗体A組成物の結合動態を調べるために、2種類の投与頻度を比較した。
【0286】
そのために、PS2APPトランスジェニック雄マウスに、尾の静脈を介して隔週毎の間隔で0.05、0.1および0.3mg/kgを4回または月毎の間隔で0.075、0.15および0.45mg/kgを3回のいずれかでの抗体A組成物を、i.v.注射した。比較のために、隔週間隔で0.1mg/kgを1度および2度投与し、1ヶ月間隔で0.15 mg/kgを2回投与した。投与の後、最後の投薬から2週間後全てのマウスを屠殺した。視床、海馬形成および皮質領域を含む未固定のPS2APPの脳組織を、PaxinosおよびFranklinに従って、側面約1.92 〜1.2mmで、矢状面方向の切片化のために調製した。クリオスタットを用いて40μmで脳を切片化した。
【0287】
結合した抗体A組成物抗体を検出するために、免疫蛍光エクスビボ免疫染色アプローチを使用した。そのため、脳を切片化して、検出抗体、アフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)コンジュゲートCy3(# 109-165-003, lot 49353, Jackson Immuno Research)を15μg/mlの濃度で用いて、室温で、1時間インキュベートした。BAP-2、Aβに対するマウスモノクローナル抗体コンジュゲートAlexa488フルオロフォアを0.5μg/mlの濃度で、室温で、1時間インキュベートして、アミロイドβプラークについての対比染色を行なった。
【0288】
上述のように、Leica TCS SP2 AOBS共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、小脳に近い後頭部皮質の画像を記録した。IMARISソフトウェア(Bitplane, Switzerland)を用いてコンピューター補助画像処理を行なった。まず、線形的シグナル記録について異なるゲイン設定を要した2種類の最大投薬量0.3および0.45mg/kgを除いたより低い投与量について、ソフトウェアのトリミング機能を用いてプラークの画像を選択した。アミロイドβプラークの部位における結合GAH-Cy3についての読出しとして、SURPASS機能を用いて、閾値(T)処理後の陽性3D画素を選択した。低投薬群および高投薬群それぞれについて、閾値設定を19および12とした。アミロイドβプラーク特異性の対照として、GAH-Cy3染色の画像を、マウスモノクローナルBAP2コンジュゲートAlexa488によって二重標識した後の染色プラーク画像と比較し、異なるチャネルに記録した。
【0289】
全ての画像の定量的記載に対する説明的統計は、IMARIS MeasurementProソフトウェアモジュールを用いてなされた。平均3D画素蛍光強度(MVI)値は、低投薬群の選択されたアミロイドβプラークまたは高投薬群の画像からの全シグナルから決定された。基準MVI(B)は装置のノイズ、組織分散シグナルおよびリポフスチンの自家蛍光のためである。バックグラウンド補正のために、アミロイドβプラークとは別の領域での平均シグナル強度を測定してBを決定し、その後全ての測定された画像のMVIから引いた(MVI-B=S)。プラークの平均強度に類似するシグナル強度(S)値は、マウスおよび投薬群当りそれぞれ一枚の脳切片から3〜4枚の画像を得た。比較のために、シグナル強度を、以前の試験から得られた参照試料に対して標準化した。参照として、発明者らは0.25mg/kgの単一用量投与後のPS2APPマウスの脳切片を使用した。測定の終点は投薬の1週間後であった。
【0290】
全ての測定された強度の値を、投薬の1週間後に測定された、0.25mg/kgでの抗体A組成物の単一用量投与後に得られたアミロイドβプラークでの平均強度に対して標準化した(以下の表参照)。免疫陽性アミロイドβプラークの平均相対蛍光強度についての標準値は、免疫染色後のCLSMおよび投薬群当り3匹の動物から平均されたシグナル強度測定により得られた。検出可能な抗体A組成物由来の抗体Aを有さないプラークは、低投薬群のみで観察されたが、これは切片化処理の際に失われたプラーク表面における限定または部分的な抗体A組成物由来抗体Aの占有のためであると思われる。そのため、免疫陽性プラークのみが、比較解析に含まれた。
【0291】
PS2APPトランスジェニックマウスにおける抗体A組成物の複数回i.v.(ボーラス)投与後の投薬群当りの平均相対蛍光強度を以下の表に示す:
【0292】
図19は、0.1mg/kgでの連続的な隔週投薬の数に関する抗体A組成物の結合を示す。免疫染色の程度はかなり変動し、そのために有意さに達しなかったが2回適用後、平均強度は増加したように見えた。4回注射後、より均一にアミロイドβプラークを免疫染色したが、平均強度はわずかに増加しただけある。全体的に、隔週適用のデータは、適用の回数に関連するプラーク結合の増加の傾向を明らかに示す。
【0293】
図20は、0.15mg/kgでの連続的な月投薬の回数に関する抗体A組成物の結合を示す。興味深いことに、2回および3回の適用後に同等のレベルが得られる。これは必ずしも予測されることではなく、遅延型ミクログリア細胞の活性化のような、除去機構における時間依存的な差異に寄与する早期の効果の開始を示し得た。
【0294】
投与投薬に関する抗体A組成物の結合効率を図21および22に示す。0.05、0.1および0.3mg/kgでの隔週投薬(図21)および0.075、0.15および0.45mg/kgの月投薬(図22)は、投薬量の関係を明確に示した。応答が線形的でなく、ミクログリア細胞の時間的遅延型活性化のようなさらなる因子が観察された非線形性について寄与し得ることも明らかである。
【0295】
従って、マウスAβプラークに対する抗体A組成物結合は、複数回投薬が累積的であるという指標を伴って、用量依存的であると結論付けることができる。
【0296】
実施例17:抗原依存的な細胞の貪食作用の解析
抗体A組成物媒介性の貪食作用を測定するために、AD脳スライスからの真のAβプラークを、上記のようなモノグリコシル化抗体Aおよび二重グリコシル化抗体Aを含み、非グリコシル化抗体Aを完全に欠く異なる濃度の抗体A組成物とプレインキュベートし、生きたヒト一次単核細胞に曝露した。
【0297】
後頭部皮質領域由来の未固定ヒトAD脳組織切片を重度のAD症例(Braak段階IV)から調製した。生きた細胞を添加する前に切片をPBSで5分間再水和した。PBS中の規定濃度で1時間インキュベートして抗体A組成物抗体を適用した。PBSで洗浄後、生きた細胞を添加した。予備刺激したヒト一次単核細胞を、10,000U/mlペニシリンおよび10,000mg/mlストレプトマイシン(Gibco # 15140-122)を含有するストック溶液由来の1%抗生物質溶液を含むRPMI 1640(Gibco # 61870-044)メディウム中0.8および1.5 x 106/mlで使用し、5%二酸化炭素で2〜4日間37℃でインキュベートした。例えば、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)のような刺激因子の使用による予備刺激したヒト一次単核細胞の調製方法は当該技術分野に周知である。
【0298】
インキュベーション後、培養メディウムをゆっくりと除去して、PBS中2%ホルムアルデヒドを用いた10分間の化学的固定により切片を保存した。残余Aβプラーク負荷の染色を、10mg/mlの濃度のBAP-2、Aβに対するマウスモノクローナル抗体コンジュゲートAlexa488フルオロフォア(Molecular Probes: A-20181, モノクローナル抗体標識キット)と、室温で1時間のインキュベーションにより行なった。
【0299】
残余染色Aβプラークの免疫蛍光を測定することによりプラーク除去の定量を測定した。Leica TCS SP2 AOBS共焦点レーザー走査型顕微鏡で画像を記録した。3のピンホールセッティングのHCPL Fluotar 10x/0.30対物レンズを代わりに使用した一回の実験以外は、4 Airyのピンホールセッティングの、HCX PL FL 20x/0.40補正対物レンズを使用して、1つの光学層を488nmの励起波長で記録した。全ての画像についての装置設定を一定にすることで、関連する定量比較を可能にした。特に、レーザー出力、ゲインおよびオフセットを、ダイナミックレンジ内でのシグナル強度モニタリングを可能にするように調整した。それぞれの抗体A組成物濃度について、プラーク負荷の解剖的差異から生じる可能性のある変動を最小限にするために、灰白質領域を連続切片の同等の位置で記録した。抗体A組成物の潜在的な競合的結合および検出抗体BAP-2を、細胞非存在下の抗体A組成物濃度で全て測定した。関連のないヒトIgG1(Serotec, PHP010)抗体をさらなる対照として使用した。IMARISソフトウェア(Bitplane, Switzerland)を使用して画像解析を実行した。プラークに結合したBAP-2の標的を示すBAP-2陽性ピクセルの同等表面(isosurface)を強度閾値化によって作製した。表面積および全蛍光強度値を、SurpassProソフトウェアモジュールの「iso表面機能(iso surface function)」を使用して計算した。データを、一枚の脳切片中の5つの灰白質領域から得られた平均染色面積および全体染色強度値として表した。シグナル基準値は装置ノイズから構成され、組織分散シグナルは無視し得ることが分かったので全体強度シグナルから引かなかった。
【0300】
図23に示すように、抗体A組成物の定性効果は、ヒトAD脳切片由来のAβプラークの貪食作用の増加を示す、Aβプラーク染色の減少により視覚化された。100ng/mlの抗体A組成物でプレインキュベーションした後の40時間後に明確に視覚化される免疫組織化学により、染色可能Aβプラークにおける減少が明らかにされた。該効果は、1および5mg/mlの抗体A組成物濃度で非常に顕著であった。5mg/mlでいくつかの大きなAβプラークだけが残り、Aβプラークは実質的に、かつ徐々に細胞の貪食作用により除去される。同じ実験の面積および強度で表される免疫反応シグナルに基づく定量的測定を図24に示す。
【0301】
あるいは、抗体A組成物媒介性貪食作用はAβコンジュゲート蛍光ポリスチレンビーズを用いて測定された。そのため、蛍光ビーズ(3mm、FluoresbriteカルボキシYG, Polysciences Inc.)をAβとカップリングした。簡潔に、ビーズを、カップリングバッファ(50mM MESバッファ、pH 5.2, 1%DMSO)に懸濁および遠心分離して2回洗浄した。ペレット(およそ10μl)を200μlのカップリングバッファに懸濁し、20μlのカップリングバッファ中20%EDC(エチル-ジアミノプロピル-カルボジイミド、Pierce)溶液の添加により活性化した。20μgのAβ(1-40)またはAβ(1-42)(0.1%水酸化アンモニウム中、Bachem)の直接の添加によりカップリング反応が開始した。一晩のインキュベーション後、ビーズを3x 0.5mlの10mM Tris.HCl pH 8.0および3x 0.5ml保存バッファ(10mm Tris.HCl pH 8.0、0.05%BSA、0.05%NaN3)で洗浄した。1%懸濁液を使用するまで4℃で保存した。陰性対照としてFluoresbriteカルボキシNYO(赤色蛍光)ビーズを全てのDアミノ酸Aβ(1-40)とカップリングした。(0.1%水酸化アンモニウム中、Bachem)。
【0302】
マウス単核細胞/マクロファージ(細胞株P388D1)を、C24透明組織培養クラスターまたはC96黒色マイクロプレート中でおよそ50%コンフルエントまで増殖させた。培地は、5%FBS、グルタミンおよび抗生物質を含むIMEMであった。非特異的スカベンジャーレセプターをブロッキングするために、10mlのフコイダン(Fluka、水中の10mg/ml)を200mlの培養容量に添加し、2時間インキュベートした。抗体A組成物を連続希釈で添加して30分間プレインキュベートした。蛍光Aβビーズ懸濁液(20μl)を添加し、3時間インキュベートして貪食させた。細胞表面から接着凝集物を除去するために、接着した細胞を氷冷EDTAで1回およびPBSで2回激しく洗浄した。残ったビーズを、Zeiss Axiovert 405視覚検査によってモニタリングしたか、または444nm(Exc)および485nm(Em)フィルターセッティングを有するマイクロプレート蛍光計(Fluoroscan, Labsystems)の使用による定量のいずれかを行なった。
【0303】
蛍光フルオロビーズにカップリングした合成Aβ凝集物のP388D1細胞による貪食作用に対する抗体A組成物の定性的効果を図25に示す。抗体A組成物の用量応答の定量的な測定を図26に示す。2つの独立した実験により、EC50について30〜200ng/mlおよびMECについて10〜60ng/mlの範囲が明らかになった。観察された変動は、インキュベーションの化学量の差、即ちビーズ対細胞の比率によって生じると思われる。200ng/mlより高い濃度で観察されたビーズ貪食の減少は、一価の抗体と限定された抗原との相互作用のためである。
【0304】
従って、抗体A組成物は、AD脳組織切片由来のAβプラークの貪食作用を用量依存的な様式で、効率的に誘導すると結論付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0305】
【図1A】図1Aは、重鎖および軽鎖配列の挿入部位を示すプラスミドマップを示す。
【図1B】図1Bは、重鎖および軽鎖配列の挿入部位を示すプラスミドマップを示す。
【図1C】図1Cは、重鎖および軽鎖配列の挿入部位を示すプラスミドマップを示す。
【図2】図2は、解析クロマトグラム例を示す。
【図3】図3は、本文に記載のCMTカラムクロマトグラムを示す。二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームは二重ピーク1に溶出されており、非グリコシル化アイソフォームはピーク2に溶出されている。
【図4A】図4Aは、抗体Aアイソフォームの全IgG ESI-MS分析を示す。主要ピークの分子質量をDaで示す。A:非グリコシル化抗体A。
【図4B】図4Bは、抗体Aアイソフォームの全IgG ESI-MS分析を示す。主要ピークの分子質量をDaで示す。B:モノグリコシル化抗体A。
【図4C】図4Cは、抗体Aアイソフォームの全IgG ESI-MS分析を示す。主要ピークの分子質量をDaで示す。C:二重グリコシル化抗体A。
【図5】図5は、推定抗体N-グリコシル化パターンのスキームを示す。一部のみ生じた構造を括弧で示す。A:複合型;B:ハイブリッド型;C:オリゴマンノース 型;GlcNAc=N-アセチル-グルコサミン、Man=マンノース;Gal=ガラクトース;Fuc=フコース;NeuAc=N-アセチル-ノイラミン酸。
【図6】図6は、MSおよびHPAEC-PAD分析から推定される抗体AのAsn306の炭水化物構造の概略図を示す。一部のみ生じた構造を括弧で示す。GlcNAc=N-アセチル-グルコサミン、Man=マンノース;Gal=ガラクトース;Fuc=フコース;NeuAc=N-アセチル-ノイラミン酸。
【図7】図7は、固定化原線維のAβ40 (Biacoreセンサーチップ)への抗体Aアイソフォームの結合を示す。抗体濃度60nM。すべてのアイソフォームの混合物、すなわち精製前の結合曲線もまた示す。
【図8A】図8Aは、ペプスポット分析による抗体A組成物のエピトープマッピングを示す。A)示された単一の重複デカペプチドスポットのペプスポットシグナル。
【図8B】図8Bは、ペプスポット分析による抗体A組成物のエピトープマッピングを示す。B)単一の重複デカペプチドスポットのシグナル強度の濃度計分析。
【図9】図9は、解重合アッセイを示す。抗体A組成物および抗体Aアイソフォームは、凝集Aβからのビオチン化Aβの放出を誘導する。
【図10】図10は、ヒト脳脊髄液(CSF)由来の抗体Aアイソフォーム捕捉可溶性Aβを含む抗体A組成物を示す。2つのプールにおいて解析されたアルツハイマー病患者由来4つのCSF試料の平均。2回の免疫沈降後、プールごとにウエスタンブロットを行ない、ウエスタンブロットのデンシトメトリーにより捕捉されたAβを定量した。所定の一連のウエスタンブロットの最大Aβ値を100%とした。
【図11】図11は、抗体Aアイソフォームでのヒトアミロイドプラークのインビトロでの間接免疫蛍光染色を示す。10ng/mlの抗体A濃度での染色後の真性エキソビボヒトβ-アミロイドプラークの非常に感受性で特異的な検出。結合された抗体Aは、(A)抗体A組成物;(B)二重グリコシル化抗体A;(C)モノグリコシル化抗体A;および(D)非グリコシル化抗体Aについてヤギ抗ヒト(H+L)-Cy3によって示された。スケールバー=80μm
【図12】図12は、共焦点顕微鏡検査によって示されたグリコシル化抗体AアイソフォームでのPS2APPトランスジェニックマウスプラークのインビボ免疫修飾を示す。免疫修飾により、抗体Aアイソフォームの1mgの単回投与の3日後の抗体Aアイソフォームのインビボ結合が示される。抗体Aアイソフォームの分布の代表的な画像は、二重-(A)、モノ(B)、および非グリコシル化(C)抗体Aアイソフォームについて示される。スケールバー=80μm。
【図13】図13は、細胞表面APPへの抗Aβ抗体の結合分析を示す。ヒトAPP-トランスフェクトHEK293細胞および非トランスフェクトコントロール細胞への抗体結合をフローサイトメトリーによって解析した。
【図14】図14は、抗体A非、モノおよび二重グリコシル化抗体分子(免疫グロブリン)のスキームを示す。
【図15A】図15Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、視床領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図15B】図15Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、プラーク総数(B)を示す。
【図15C】図15Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、プラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図16A】図16Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、皮質および脳梁領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図16B】図16Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、皮質および脳梁領域におけるプラーク総数(B)を示す。
【図16C】図16Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、皮質および脳梁領域におけるプラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図17A】図17Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、海馬領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図17B】図17Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、海馬領域におけるプラーク総数(B)を示す。
【図17C】図17Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、海馬領域におけるプラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図18A】図18Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、鉤状回領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図18B】図18Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、鉤状回領域におけるプラーク総数(B)を示す。
【図18C】図18Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、鉤状回領域におけるプラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図19】図19は、PS2APPマウスに1、2および4回のi.v.適用で0.1mg/kgを2週間ごとに投与した後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図20】図20は、PS2APPマウスに2および3回のi.v.適用で0.15mg/kgを毎月投与した後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図21】図21は、PS2APPマウスに、0.05、0.1および0.30mg/kgを4回の2週間ごとの注射後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示し、用量依存アミロイド-プラーク結合を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図22】図22は、PS2APPマウスに、0.075、0.15および0.45mg/kgを3回の毎月の注射後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示し、用量依存アミロイド-プラーク結合を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図23】図23は、分化した生ヒト一次マクロファージ(80万細胞/ml)とともに示された濃度の抗体A組成物との40時間のインキュベーション後の、抗Aβマウスモノクローナル抗体(BAP-2)を用いて、Aβに対して染色されたヒトAD脳切片を示す。結果は、アミロイド-βプラークに対する抗体A組成物の抗原依存性細胞食作用効果を示すアミロイド負荷の減少を示す。スケールバー=300μm。
【図24A】図24Aは、80万細胞/mlとともにインキュベートした場合のヒトAD脳切片由来のアミロイド-βプラークの抗体A組成物の用量応答を示す。(A)はプラーク総面積を示す。
【図24B】図24Bは、80万細胞/mlとともにインキュベートした場合のヒトAD脳切片由来のアミロイド-βプラークの抗体A組成物の用量応答を示す。(B)は染色強度を示す。
【図25】図25は、0、0.1、1および10μg/mlの抗体A組成物(それぞれA〜D)とともにインキュベートしたP388D1細胞の蛍光顕微鏡検査を示す。
【図26】図26は、AβコンジュゲートフルオロビーズおよびP3881D1細胞を用いて抗体A組成物の用量応答の定量的測定を示す(相対蛍光単位RFUで示す)。2つの独立した実験は、抗体A組成物に対する相当な範囲の有効性を示す。
【図27】図27は、重鎖の定常領域(Asn 306;最初の2つのカラム)および重鎖の可変領域(Asn 52;3番目および4番目のカラム)における抗体Aの異なるグリカン構造を示す表を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする精製された抗体分子調製物に関する。より具体的には、β-A4ペプチド/Aβ4を特異的に認識可能であり、重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化を含む精製された抗体分子が提供される。本発明は、重鎖の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を有する1つ又は2つのグリコシル化抗原結合部位を含む抗体混合物、すなわち、重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化Asnを含む抗体アイソフォーム混合物に関する。特異的にグリコシル化された抗体アイソフォームを含む組成物又は抗体調製物も開示される。さらに、これらの抗体の医薬使用及び診断使用が提供される。抗体アイソフォームは例えば、アミロイド形成若しくはアミロイドプラーク形成の医薬介入及び/又はアミロイド形成若しくはアミロイドプラーク形成の診断に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
痴呆の全症例の約70%は、認識に重要な脳領域及び神経回路の選択的損傷と関連するアルツハイマー病のためである。アルツハイマー病は、特に海馬の錐体神経における神経原線維錯綜及び有芯のアミロイド沈着及び拡散した輪状を含む多くのアミロイドプラークによって特徴付けられる。
【0003】
細胞外神経炎性プラークは、「アミロイドβ」、「A-β」、「Aβ4」、「β-A4」又は「Aβ」と呼ばれる、多量の繊維状ペプチドを主に含む;Selkoe (1994), Ann. Rev. Cell Biol. 10, 373-403, Koo (1999), PNAS Vol. 96, pp. 9989-9990, US 4,666,829 又はGlenner (1984), BBRC 12, 1131を参照。このアミロイドβは「アルツハイマー前駆体タンパク質/β−アミロイド前駆体タンパク質」(APP)に由来する。APPは内在性糖タンパク質であり(Sisodia (1992), PNAS Vol. 89, pp. 6075を参照)、細胞膜プロテアーゼであるα−セクレターゼによってAβ配列内でエンドプロテアーゼ切断される(Sisodia (1992), 上記引用を参照)。さらに、更なるセクレターゼ活性、特にβ−セクレターゼ活性及びγ−セクレターゼ活性は、39アミノ酸(Aβ39)、40アミノ酸(Aβ40)、42アミノ酸(Aβ42)又は43アミノ酸(Aβ43)のいずれかを含むアミロイド−β(Aβ)の細胞外放出をもたらす;Sinha (1999), PNAS 96, 11094-1053; Price (1998), Science 282, 1078 〜 1083; WO 00/72880 又は Hardy (1997), TINS 20, 154を参照。
【0004】
Aβはいくつかの天然形態を有し、ヒト形態は上記のAβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42 及びAβ43と呼ばれることに注目する。最も主要な形態であるAβ42は(N末端から始まる)アミノ酸配列
を有する。Aβ41、Aβ40、Aβ39において、C末端アミノ酸であるA、IA及びVIAがそれぞれ欠損している。Aβ43形態において、更なるトレオニン残基が上記配列(配列番号3)のC末端に含まれる。
【0005】
Aβ40原線維の核化に要する時間はAβ42原線維の核化に要する時間よりも有意に長いことが示された;Koo, 上記引用 and Harper (1997), Ann. Rev. Biochem. 66, 385-407を参照。Wagner (1999), J. Clin. Invest. 104, 1239-1332に概説されるように、Aβ42は神経炎性プラークと関連してより頻繁に見出されており、インビトロでより原線維状であると考えられる。Aβ42は秩序立った非結晶化Aβペプチドの核化依存性重合における「種」として働くことも提案された; Jarrett (1993), Cell 93, 1055-1058。
【0006】
修飾APPプロセシング及び/又はタンパク質沈着を含む細胞外プラークの発生は、アルツハイマー病だけでなく、他の神経学的障害及び/又は神経変性障害を患う被験体からも公知である。これらの障害は、特に、ダウン症候群、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、クロイツフェルトヤコブ病、HIV関連痴呆及び運動神経障害を含む。
【0007】
現在まで、アミロイド関連疾患のための限定された医学介入計画だけが記載されている。例えば、ガランタミン、リバスチグミン又はドネペジルのようなコリンエステラーゼインヒビターが軽度から中度な疾患のみを有するアルツハイマー病患者に有益であると議論されている。しかしながら、これらの薬物のコリン作動性作用のために有害な事象もまた報告されている。これらのコリン作動性増強処置はいくつかの症状の有益性をもたらすが、治療応答は処置される大半の患者について満足ではない。有意な認知改善は処置された患者の約5%のみで生じると推定されており、処置が有意にこの進行性疾患の経過を変更するという証拠はほとんど無い。結果として、より有効な処置及び特に疾患の進行を止める又は遅らせることができる処置のための大きな臨床的必要性がある。メマンチンのようなNMDAレセプターアンタゴニストはまた、より最近使用されている。しかし、薬理学的活性のために有害な事象が報告されている。さらに、これらのNMDAレセプターアンタゴニストを用いたかかる処置は、疾患を改変するアプローチではなく、症候的アプローチとして単に考慮され得る。
【0008】
アミロイド関連障害の処置のための免疫モジュレーションアプローチがまた、提案されている。WO 99/27944は、Aβペプチドの部分及び免疫応答を高める担体分子を含む結合体を開示している。別の能動免疫アプローチは、Aβ断片が免疫応答を誘導するために使用されるWO 00/72880に言及されている。
【0009】
一般的な抗Aβ抗体を用いる受動免疫アプローチはまた、WO 99/27944又はWO 01/62801に提案されており、Aβの部分に対して指向された特異的ヒト化抗体がWO 02/46237、WO 02/088306 及びWO 02/088307に記載されている。WO 00/77178は、加水分解中のβ−アミロイドがとる移行状態の抗体結合を記載している。WO 03/070760は、Aβペプチド上の2つの不連続なアミノ酸配列を認識する抗体分子を開示している。
【0010】
抗体の可変領域におけるグリコシル化がWallick (1988) J. Exp. Med. 168, 1099-1109に仮定されて以来、WO 03/016466が、重鎖における任意の潜在的なグリコシル化を回避するために修飾されたヒト化抗Aβ抗体を記載している。
【0011】
本発明の基礎となる技術課題は、アミロイド障害の医学管理における有効な手段及び方法、特に(対応する)医学介入を必要とする患者の有害なアミロイドプラークの減少のための手段及び方法を提供することである。
【0012】
第一の局面において、本発明は、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする精製された抗体分子を提供する。本明細書に提供される発明の精製された抗体又は抗体組成物は特にAβ及び/又はAβの断片に対して指向される。本明細書に提供される精製された抗体分子及び特に本発明の抗体組成物又は抗体調製物はアミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患の処置、緩和及び予防のための医薬組成物又は診断組成物の調製に有用である。かかる疾患の例はアルツハイマー病である。
【0013】
本発明の文脈において、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖の可変領域におけるN結合グリコシル化を含む精製された抗体分子が例えば、アミロイドプラークの減少に特に有用であると見出されたことは驚きであった。さらに、本明細書に提供されるグリコシル化抗体又は抗体組成物が、非常に効果的なプラーク結合によって例示されるようなインビボでの血液脳関門/血管脳境界を横断する点で特に有用及び有効であることが本発明の文脈において見出されている。
【0014】
これは先行技術の教示と全く対比される。WO 03/016466は、重鎖のN-グリコシル化部位を欠くように特別に設計された抗体を開示しており、可変領域フレームワークにおけるグリコシル化は抗体結合親和性に対してネガティブな効果があると教示する。重鎖可変CDR2領域の脱グリコシル化形態の記載される抗−Aβ抗体がインビトロで合成及び精製されたAβペプチドに顕著に高い親和性を有することが先行技術に教示されている。
【0015】
従って、本発明は、改善された、精製された抗体分子、又は抗体調製物、特にAβ4/Aβペプチド(アミロイドβ)に対して指向され、かつインビボで非常に有効な抗体分子調製物に関する。本抗体分子/抗体調製物の改善は、重鎖の可変領域の少なくとも1つにおいて、例えば該重鎖の可変領域のCDR2領域において、N-グリコシル化を含む、精製された抗体分子の提供によるものである。上記のように、これは、かかるN-グリコシル化が例えばAβに対して指向される抗体において回避されなければならないことを教示するWO 03/016466のような先行技術と対比される。
【0016】
本発明の抗体分子の例は、免疫グロブリン、例えばIgG分子である。IgGは2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むことを特徴とし(例えば図14に例示される)、これらの分子は2つの抗原結合部位を含む。前記抗原結合部位は重鎖(VH)の部分及び軽鎖(VL)の部分から構成される「可変領域」を含む。抗原結合部位はVHドメイン及びVLドメインの並列によって形成される。抗体分子又は免疫グロブリン分子の一般情報について、Abbas “Cellular and Molecular Immunology”, W.B. Sounders Company (2003)のような一般の教科書も参照されたい。
【0017】
1つの局面において、例えば、本発明において特徴付けられる免疫グロブリン分子の提供において、1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の対応する可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含む抗体が記載される。前記抗体は以下「モノグリコシル化抗体」と呼ばれる;図14も参照。
【0018】
別の局面において、両方の抗原結合部位が対応する重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含む免疫グロブリン分子が提供される。前記抗体分子は以下「二重グリコシル化抗体」と呼ばれる;図14を参照。
【0019】
抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含まない免疫グロブリンは、以下「非グリコシル化抗体」と呼ばれる。
【0020】
モノグリコシル化抗体、二重グリコシル化抗体、及び非グリコシル化抗体は、同一のアミノ酸配列又は異なるアミノ酸配列を含み得る。用語「抗体」は、従って、抗体分子、特に免疫グロブリンのような組み換え生成された抗体分子を含む。しかし、以下で議論されるように、用語「抗体分子」はまた、単鎖抗体、又は単鎖Fv断片(scAB/scFv)又は二重特異的抗体構築物のような、公知の免疫グロブリンのアイソフォーム及び修飾物を含み、該アイソフォーム及び修飾物は、本明細書に定義される少なくとも1つのグリコシル化VH領域を含むように特徴付けられる。かかるアイソフォーム又は修飾物の具体例はVH-VL又はVL-VH形式のsc(単鎖)抗体であり得、該VHは、本明細書に記載されるグリコシル化を含む。また、二重特異的scFvが、例えば、VH-VL-VH-VL、VL-VH-VH-VL、VH-VL-VL-VH形式で提供され、CDR2領域中に本明細書に記載されるグリコシル化を含む。
【0021】
本発明の文脈において、用語「抗体」(大文字のANTIBODY)はより明確さを提供するために使用される。しかし、小文字(antibody)で使用される用語「抗体」もまた、本出願の文脈において使用される。抗体(「ANTIBODY」/「ANTIBODIES」/「antibody」及び「antibodies」)は互換的に使用される。
【0022】
モノグリコシル化抗体及び二重グリコシル化抗体は本明細書で「グリコシル化抗体アイソフォーム」と呼ばれる。少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする精製された抗体分子は、二重グリコシル化抗体及び非グリコシル化抗体から選択されるアイソフォームを含まないか、あるいは非常に低い程度でアイソフォームと関連するモノグリコシル化抗体、すなわち、「精製されたモノグリコシル化抗体」である。本発明の文脈において、二重グリコシル化抗体は、モノグリコシル化抗体及び非グリコシル化抗体から選択されるアイソフォームを含まないか、あるいは非常に低い程度でアイソフォームと関連し、すなわち、「精製された二重グリコシル化抗体」である。
【0023】
用語「〜を含まないか、あるいは非常に低い程度で」は、個々の他の(グリコシル化)アイソフォームの完全な非存在又は多くとも10%、例えば、多くとも5%、例えば、多くとも4%、例えば、多くとも3%、例えば、多くとも2%、例えば、多くとも1%、例えば、多くとも0.5%、例えば、多くとも0.3%、例えば、多くとも0.2%の濃度の、別の(グリコシル化)アイソフォームの存在を意味する。これに関する更なる情報は以下及び添付の実施例に提供される。
【0024】
本発明の文脈において、用語「モノグリコシル化抗体」は、個々の抗体分子、例えば、免疫グロブリン、例えば、IgG、例えば、IgG1の1つの(VH)領域におけるN-グリコシル化を含む抗体分子に関する。例えば、前記「モノグリコシル化形態」は、以下に定義されるように重鎖の1つの可変領域、例えば、位置アスパラギン「Asn 52」にグリコシル化を含む。この「モノグリコシル化IgG1形態又はモノグリコシル化アイソフォーム」はまた、本明細書に例示されるように、Fc-部分の十分に保存されたグリコシル化部位、例えば、非可変Fc-部分のアスパラギンAsn 306にグリコシル化を含み得る。
【0025】
本発明の意味において、用語「二重グリコシル化抗体」は、重鎖(VH)領域の両方の可変領域に本明細書に定義されるグリコシル化を含む。また、この「二重グリコシル化形態」は、以下に詳しく説明され、添付の実施例に例示するように、両方の重鎖の可変領域、特に位置アスパラギンAsn 52にグリコシル化を含む。この「二重グリコシル化IgG1形態又は二重グリコシル化アイソフォーム」はまた、本明細書に例示されるように、非可変/定常Fc-部分の十分に保存されたグリコシル化部位、特に例示される免疫グロブリンの位置306に、グリコシル化を含み得る。添付の図14が対応する抗体分子を例示する。
【0026】
可変領域、例えば、重鎖の両方の可変領域(両方の(VH)-領域)におけるかかる翻訳後修飾がない抗体は、本発明の文脈において、重鎖の可変領域におけるグリコシル化を含まない「非グリコシル化形態」とみなされる。なお、この「非グリコシル化形態」は、それにも関らず抗体の定常領域(C-領域)、例えば、最も一般的にFc-部分の十分に保存されたグリコシル化部位、特に本明細書に定義されるように非可変/定常Fc-部分におけるアスパラギン(Asn)306にグリコシル化を含み得、配列番号6も参照。
【0027】
重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)は、相補性決定領域2(CDR2 領域)に存在し得る。前記重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)は、以下に定義され、配列番号2に示されるように可変領域の52位(又は本明細書に開示されるような抗体重鎖のFc-部分も含む配列番号6の52位)に存在し得る。
【0028】
抗体アイソフォームはまた、抗体分子の定常/可変領域部分に、例えばIgGのFc-部分に、例えばIgG1のFc-部分に更なるグリコシル化を含み得る。前記Fc-部分のグリコシル化は、十分に保存されたグリコシル化に関し、例えば、以下の配列:
による重鎖の位置Asn306に位置することを特徴とする。
【0029】
この配列はまた、以下で明細書に記載され、CDR、CH-領域、重鎖及び2つのN−グリコシル化部位(N52及びN306)が示される。
【0030】
本発明の抗体のIgG-Fc領域は、鎖間ジスルフィド結合ヒンジ領域、グリコシル化CH2ドメイン、CH2のアスパラギン306(Asn-306)の支持N−結合オリゴ糖、及び非共有対のCH3ドメインから構成されるホモダイマーであり得る。オリゴ糖のAsn-306のグリコシル化はバイアンテナ複合型であり、外腕糖の様々な付加を有する核(core)七糖骨格構造を含み得る。
【0031】
オリゴ糖はFc構造及び機能に影響するか、あるいは決定する(Jefferis(1998)
Immunol Rev. 163, 50-76)。エフェクター機能、ナンバリングされる特定のIgG-Fc/エフェクターリガンド相互反応が議論されている(Jefferis (2002) Immunol Lett. 82(1-2), 57-65 及び Krapp (2003) J Mol Biol. 325(5), 979-89)。この保存されたFc-位置Asn-306は、Kabat-system (Kabat (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda MD.)の「Asn-297」に対応する。
【0032】
例示される重鎖は、以下の配列:
によってコードされ得る。
【0033】
前記重鎖はまた、(特に組み換え生成における)「リーダー配列」のような、更なる配列を含み得る。対応する例は以下の配列:
によってコードされる。
【0034】
対応するアミノ酸配列は、
である。
【0035】
上記配列はまた、「シグナルぺプチド」を含み、該シグナルペプチドは、CHO細胞のような、宿主細胞における本発明の抗体分子の産生中の分泌経路中の宿主シグナルペプチダーゼによってタンパク質切断される。
【0036】
あるいは、前記重鎖は以下の配列:
に例示される組み換え生成に最適化した核酸配列によってコードされ得る。
【0037】
配列番号23として上記に示される「代替的」タンパク質配列は、更なるイントロン及び少し異なる「リーダー配列」/「シグナル配列」のような少し異なるゲノム組織化においてではあるが、第一代替物と同じコード配列を含む。前記「リーダー配列」はまた、上記に示されるように(更なる)イントロンを含み得る。当業者は容易に、従来の方法によって対応するエキソン/イントロン構造を本明細書に示すような配列中に推定する立場にある。
【0038】
本明細書に記載され、例示される抗体はまた、軽鎖を含み得、該軽鎖は以下のアミノ酸配列
を含み得るか、あるいは有し得、
以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0039】
本明細書に記載され、例示される抗体の「軽鎖」はまた、技術的生成において特に有用な「リーダー配列」を含み得る。対応する配列は以下の配列:
であり得る(又は例えば、ベクター系に含まれ得る)。
【0040】
前記配列は以下のアミノ酸配列
をコードする。
【0041】
あるいは、前記軽鎖はまた、以下の配列:
に例示される組み換え生成に最適化した核酸配列によってコードされ得る。
【0042】
例示される軽鎖のための上記「配列」はまた、少し異なるゲノム構造を有する。この「代替的配列」は異なるイントロン及び/又は更なるイントロンを含む。従って、「重鎖」を記載する態様は、本明細書で必要な変更を加えて適用する。
【0043】
本発明の文脈において、用語「抗体分子」は、全長免疫グロブリン分子、例えば、IgM、IgD、IgE、IgA、若しくはIgG1、IgG2、IgG2b、IgG3若しくはIgG4のようなIgG及びFab-断片、Fab’-断片、F(ab)2-断片、キメラF(ab)2断片若しくはキメラFab’ 断片、キメラFab-断片若しくは単離VH-領域若しくはCDR-領域(該単離VH-領域若しくはCDR-領域は、例えば、対応する「フレームワーク」に統合される又は設計される)のようなかかる免疫グロブリン分子の部分に関する。少なくとも1つの抗原結合部分/ペプチド、例えば WO 00/24782に記載されるペプチド体に結合したビヒクルとしての抗体Fcドメインを含む二抗体分子が用語「抗体分子」にも含まれる。従って、本発明の文脈において、用語「重鎖(VH)の可変領域」は、全長免疫グロブリンの可変領域に限定されないだけでなく、CDR1、2、及び/若しくは3単独又はこれらを組み合わせてのいずれかのようなCDR、該重鎖(VH)の可変領域の対応する部分又は可変領域の対応する「フレームワーク」に関する。従って、本発明の抗体分子はまた、抗原結合部位として、CDR又はグリコシル化重鎖(VH)の所定の可変領域の少なくとも1つのCDRを含む、抗体構築物であり得る。本発明の抗体構築物において該重鎖(VH)の可変領域の対応する部分は本明細書で定義されるようにグリコシル化され、例えば、抗原結合部位のグリコシル化アスパラギン(Asn)を含む。重鎖(VH)の可変領域のかかる「単離部分」の例は、配列番号12に含まれ (又は配列番号11に示される核酸配列によってコードされる)、本明細書に例示されるCDR2領域である。さらに、用語「抗体分子」は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト化抗体のような、修飾抗体分子及び/又は改変抗体分子に関する。
【0044】
前記「完全ヒト化抗体」分子はまた、「完全にヒト」の抗体として特徴付けられ、記載される。これら全ての抗体は、先行技術で公知の方法によって作製され得る。例えば、ファージディスプレイ技術によって、組み換え抗体分子は、Knappik(2000) J Mol Biol. 296(1), 57-86. 及び Rauchenberger(2003) J Biol Chem. 278(40), 38194-205に記載されるように完全ヒト免疫グロブリンγ、サブクラス1フレームワーク(IgG1)を使用する、インビトロ変異の使用によって作製され得る。
【0045】
添付の実施例に記載されるように、用語「抗体」は、例えば、IgG分子及びIgG1に関する。該用語はまた、修飾又は改変のモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体並びに組み換え又は合成的に作製/合成された抗体に関する。該用語はまた、インタクト抗体、並びに別々にされた軽鎖及び重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab’、F(ab’)2のような、その抗体断片/部分に関する。用語「抗体分子」はまた、単鎖Fv(scFv)又は抗体融合タンパク質のような、抗体派生物、二官能性抗体及び抗体構築物を含む。本明細書に定義されるようなグリコシル化VH ドメイン、例えばグリコシル化VH-CDRを含む、触媒抗体及び/又はタンパク質分解抗体も提供される。用語「抗体分子」はまた、(例えば、Aβ/Aβに対する)1つの特性の他に、別の特性又は更なる特性を含み得る組み換え生成された抗体分子/抗体構築物に関する。かかる構築物は、「二重特異的」構築物又は「三重特異的」構築物を含み得るが、これに限定されない。本発明の用語「抗体分子」についての更なる詳細が以下の明細書に提供される。
【0046】
上記に指摘したように、少なくとも1つの抗原結合部位、例えば、本明細書に定義され、グリコシル化されている重鎖の少なくとも1つの可変領域に本明細書に定義されるグリコシル化を含む単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二価抗体構築物、抗体融合タンパク質、交差クローン抗体又は合成抗体も提供される。例えば、単鎖抗体が作製される場合、本明細書に定義される「重鎖の可変領域」は、重鎖自体に限定されないが、例えば、IgGのような全長免疫グロブリンの、全長抗体の重鎖に由来する対応部分に関することも意味する。かかる部分は、対応するCDR単独又はその対応するフレームワークの部分と共に、のいずれかであり得る。さらに、免疫グロブリン遺伝子の遺伝子バリアントがまた、本発明の文脈において提供される。例えば、免疫グロブリン重鎖Gサブクラス1(IgG1)の遺伝子バリアントは、CH1ドメインのG1m(17)又はG1m(3)アロタイプマーカー、又はCH3ドメインのG1m(1)又はG1m(非−1)アロタイプマーカーを含み得る。ここで、好ましくは、Gm(17)(z)及びGm(1)(a)アロタイプのIgGが使用される。本発明の抗体分子はまた、向上した又は減衰したFcレセプター結合又は補体活性化を有する変異IgGのような修飾抗体又は変異抗体を含む。1つの態様において、本発明によって提供される抗体は、完全ヒト化抗体又は「完全にヒト」の抗体である。従って、本発明の抗体はまた、交差クローン抗体、すなわち、本明細書に記載されるような1つ以上の親抗体又は親和性最適化抗体からの異なる抗体領域(例えば、CDR領域)を含む抗体を含み得る。これらの交差クローン抗体はいくつかの異なるフレームワーク、例えば、IgG-フレームワーク、例えば、(ヒト)IgG1-フレームワーク、IgG2aフレームワーク又はIgG2b-フレームワークの抗体であり得る。例えば、前記抗体フレームワークは、哺乳動物、例えば、ヒトフレームワークである。軽鎖及び重鎖上のドメインは、同じ一般構造を有し、各ドメインは4つのフレームワーク領域を含み、これらの配列は相対的に保存され、相補性決定領域(CDR1〜3)として公知の3つの超可変ドメインと結合されている。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ヒトフレームワーク領域」は、天然ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域に実質的に同一(約85%以上、通常、90〜95%以上)であるフレームワーク領域に関する。抗体のフレームワーク領域(例えば、構成性軽鎖及び重鎖が組み合わされたフレームワーク領域)はCDRを位置づけ及び整列するために役立つ。CDRは、抗原のエピトープに結合するために主に重要である。本明細書に記載される交差クローン抗体が好ましい(ヒト)抗体フレームワークに存在し得るだけなく、本明細書に記載される抗体からのCDRを含む抗体分子が免疫グロブリンフレームワークに導入され得ることに注意されたい。フレームワークのための例は、IgG1、IgG2a及びIgG2bを含む。特に配列番号6に示されるような抗体の重鎖のような、ヒトフレームワーク及びヒトIgG1フレームワークが最も好ましい。
【0048】
1つの態様において、抗体アイソフォームは、以下のアミノ酸:
を含むCDR1領域を重鎖可変領域に含み得る。
【0049】
前記CDR1は、以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0050】
抗体アイソフォームは重鎖の可変領域に以下のCDR2:
を含み得る。
【0051】
前記CDR2は以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0052】
本発明によるN-グリコシル化は、例えば前記CDR2領域に含まれ、重鎖の可変領域の対応するAsn52に位置し、該可変領域(VH)は配列番号1に示される核酸分子によってコードされ、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する。
【0053】
さらに、抗体アイソフォームは、以下のアミノ酸配列:
を含むCDR3を重鎖可変領域に含み得る。
【0054】
前記CDR3は、以下の核酸配列:
によってコードされ得る。
【0055】
抗体アイソフォームは以下のCDR:
によって特徴付けられ得る軽鎖(L)を含み得る。
【0056】
抗体アイソフォームは、抗体の重鎖のアミノ酸配列に、例えば、(Kabat (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Bethesda, Md.: National Center for Biotechnology Information, National Library of MedicineのKabat-systemにおいて、「Asn297」に対応する)非可変Fc部分のAsn306の十分に保存されたグリコシル化部位に(Asn-X-Ser/Thrモチーフを含む先行技術で公知の)更なる潜在的なグリコシル化部位を含み得、該重鎖は、上記、つまりは(配列番号5によってコードされる)配列番号6に提供される配列であるか又は含む。
【0057】
本発明の一態様において、抗体アイソフォームは、少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含み、該VHは
(a) 配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子:
(b) 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子
(c) (a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子;
(d) (a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子であって、該β-A4ペプチドAβ4又はその断片上の少なくとも2つの領域が、配列番号3の3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、核酸分子;又は
(e) (a)〜(d)いずれかに定義される核酸配列に縮重である核酸配列
によってコードされることを特徴とする。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「(a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする、核酸分子」は、二重鎖核酸分子のコーディング鎖に関し、非コーディング鎖が(a)及び(b)の上記で同定される核酸分子にハイブリダイズするという事実を当業者は認識する。
【0059】
上記に指摘するように、本明細書に定義されるAsn-グリコシル化を含む精製された抗体分子は特に、グリコシル化Asnを含む可変領域が:
(a) 配列番号5、23又は25に示される核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチド;
(b) 配列番号6又は26に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド;
(c) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチド;又は
(d) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリぺプチドであって、該β-A4ペプチドAβ4又はその断片上の2つの領域は3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、重鎖ポリぺプチド
からなる群より選択される重鎖に含まれる抗体分子として特徴付けられ得、記載され得る。
【0060】
上記に同定される抗体(例えば、本発明の例示される抗体)はまた、以下のアミノ酸配列:
を有するL鎖
又は例えば、以下の核酸配列:
によってコードされるL鎖を含み得る。
【0061】
上記に記載するように、重鎖における本明細書に定義されるAsn-グリコシル化を含む精製された抗体分子はさらに:
(a) 配列番号7、21、24又は27に示される核酸分子によってコードされる軽鎖ポリペプチド;
(b) 配列番号8、22又は28に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチド;
(c) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる軽鎖ポリペプチド; 又は
(d) (a)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる軽鎖ポリぺプチド
からなる群より選択される軽鎖を含み得る。
【0062】
核酸分子/DNA配列と関連して本明細書で使用される用語「ハイブリダイゼーション」又は「ハイブリダイズする」は、ストリンジェント又は非ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションに関し得る。さらに特定されない場合、条件は好ましくは非ストリンジェントである。前記ハイブリダイゼーション条件は例えば、Sambrook, Russell "Molecular Cloning, A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (2001); Ausubel, "Current Protocols in Molecular Biology", Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989), 又は Higgins and Hames (編) "Nucleic acid hybridization, a practical approach" IRL Press Oxford, Washington DC, (1985)に記載される従来のプロトコールに従って確立され得る。条件の設定は十分に、当業者の範囲内であり、当該分野で記載されるプロトコールに従って決定され得る。従って、特異的にハイブリダイズする配列のみの検出は通常、65°Cでの0.1xSSC、0.1%SDSのようなストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件を必要とする。相同配列又は正確に相補的でない配列の検出のための非ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は65℃の6xSSC、1% SDSに設定され得る。周知のように、プローブの長さ及び決定される核酸組成がさらにハイブリダイゼーション条件のパラメーターを構成する。上記条件におけるバリエーションはハイブリダイゼーション実験におけるバックグラウンドを抑制するために使用される代替ブロッキング試薬の含有及び/又は置換によって達成され得ることに注意されたい。典型的なブロッキング試薬としては、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、及び市販で入手可能な専売製剤が挙げられる。特定のブロッキング試薬の含有は、適合性の問題のために、上記ハイブリダイゼーション条件の改変を必要とし得る。ハイブリダイズする核酸分子はまた、上記分子の断片を含む。かかる断片は、本明細書中に定義される非機能的抗体分子又はその非機能的断片又はCDRをコードし、かつ少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも21ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも60ヌクレオチドの長さを有する核酸配列を表し得る。さらに、前記核酸分子のいずれかとハイブリダイズする核酸分子はまた、これら分子の相補的な断片、派生物及び対立バリアントを含む。さらに、ハイブリダイゼーション複合体とは、相補的G塩基及びC塩基間並びに相補的A塩基及びT塩基間での水素結合の形成による2つの核酸配列間の複合体のことをいう;これらの水素結合は塩基スタッキング相互作用によってさらに安定化される。2つの相補的核酸配列はアンチパラレルな配向で水素結合する。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中(例えば、Cot分析又はRot分析)又は溶液中に存在する核酸配列及び固相支持体(例えば、膜、フィルター、チップ、ピン、又は例えば細胞が固定されたスライドガラス)に固定された別の核酸配列間で形成され得る。用語相補的又は相補性とは、許容な塩及び温度条件下で塩基対形成するポリヌクレオチドの天然結合のことをいう。例えば、配列「A-G-T」は、相補的配列「T-C-A」に結合する。2つの単鎖分子間の相補性は、いくつかの核酸だけが結合する「部分的」であり得るか、あるいは全相補性が単鎖分子間に存在する場合に完全であり得る。核酸鎖間の相補性の程度は核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に対して有意な効果がある。これは、核酸鎖間の結合に依存する、増幅反応において特に重要である。
【0063】
用語「ハイブリダイズする配列」は、好ましくは抗体分子をコードする上記記載の核酸配列と、少なくとも40%の配列同一性、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは60%、さらにより好ましくは70%、特に好ましくは少なくとも80%、より特に好ましくは少なくとも90%、さらにより特に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは97%同一性を示す配列のことをいう。さらに、用語「ハイブリダイズする配列」は、好ましくは上記の本明細書に記載される抗体分子のアミノ酸配列と、少なくとも40%の配列同一性、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、より特に好ましくは少なくとも90%、よりさらに特に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%の同一性を有する抗体分子をコードする配列のことをいう。
【0064】
本発明によれば、2つ以上の核酸配列又はアミノ酸配列の文脈において用語「同一」又は「パーセント同一性」とは、比較のウインドウ若しくは当該分野で公知の配列比較アルゴリズムを用いて測定される指定領域に対して又はマニュアルのアライメント及び目視検査によって、最大一致を比較及び整列する場合に、同じであるか、あるいは同じであるアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定のパーセンテージ(例えば、60%又は65%同一性、好ましくは70〜95%同一性、より好ましくは少なくとも95%同一性)を有する2つ以上の配列又はサブ配列のことをいう。例えば、60%〜95%以上の配列同一性を有する配列は実質的に同一であるとみなされる。かかる定義はまた、相補試験配列に適用される。好ましくは記載される同一性は少なくとも約15〜25のアミノ酸又はヌクレオチドの長さである領域に対して、より好ましくは、約50〜100のアミノ酸又はヌクレオチドの長さである領域に対して存在する。当業者は、例えば、当該分野で公知のCLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)又はFASTDB (Brutlag Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)に基づくもののようなアルゴリズムを用いて配列の間/中でパーセント同一性をいかに決定するかを知っている。
【0065】
FASTDBアルゴリズムは計算において、典型的に配列における内部非適合欠損又は付加、すなわちギャップを考慮しないが、これは%同一性の過大評価を回避するためにマニュアルで補正され得る。しかしCLUSTALWは、同一性計算に配列ギャップを取り入れる。BLAST及びBLAST2.0アルゴリズム(Altschul, Nucl. Acids Res. 25 (1997), 3389-3402; Altschul, J. Mol. Evol. 36 (1993), 290-300; Altschul, J. Mol. Biol. 215 (1990), 403-410)が当業者に利用可能である。核酸配列のためのBLASTNプログラムはデフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長(W)、及び10の期待値(E)を使用する。BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89, (1989), 10915)は、50のアライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。
【0066】
さらに、本発明はまた、上記のハイブリダイズ分子の配列と比較して縮重である配列の核酸分子に関する。本発明によって使用される場合、用語「遺伝子コードの結果として縮重である」は遺伝子コードの重複によって異なるヌクレオチド配列が同じアミノ酸をコードすることを意味する。
【0067】
所定の抗体配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチド残基が、例えば、配列番号1、5、23及び25のいずれかのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列の特定の位置に対応するかどうかを決定するために、当業者は、当該分野で周知の手段及び方法、例えば、手動又は用語「ハイブリダイゼーション」の定義及びホモロジーの程度と共に以下でさらに言及されるようなコンピュータープログラムの使用によるいずれかのアライメントを使用し得る。
【0068】
例えば、ベーシックローカルアライメントサーチツールBLAST(Altschul (1997), 上記引用; Altschul (1993), 上記引用; Altschul (1990), 上記引用)を表わすBLAST 2.0は、部分配列アライメントをサーチするために使用され得る。上記に議論されるように、BLASTは、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の両方のアライメントを生じ、配列類似性を決定する。アライメントの部分性質のため、BLASTは正確なマッチを決定する又は類似の配列を同定することに特に有用である。BLASTアルゴリズムアウトプットの基本ユニットは、ハイスコアリングセグメントペア(HSP)である。HSPは、任意であるが、アライメントが部分的に最大であり、アライメントスコアがユーザーが設定した閾値又はカットオフスコアを満たす又は超える等しい長さの2つの配列断片から構成される。BLASTアプローチは、クエリー配列及びデータベース配列間でのHSPを見ること、見出される任意のマッチの統計的有意さを評価すること、及びユーザー選択閾値の有意さを満たすマッチだけを報告することである。パラメーターEはデータベース配列マッチを報告する統計的に有意な閾値を確立する。Eは全データベースサーチの文脈内でHSP(又はHSPセット)の機会発生の期待頻度の上限境界として注釈される。マッチがEを満たす任意のデータベース配列がプログラムアウトプットで報告される。
【0069】
BLAST(Altschul (1997), 上記引用; Altschul (1993), 上記引用; Altschul (1990), 上記引用)を用いるアナログコンピューター技術はGenBank又はEMBLのようなヌクレオチドデータベースにおける同一分子又は関連分子を検索するために使用される。この分析は複数メンブレンベースハイブリダーゼーションよりもかなり早い。また、コンピューター検索の感度は、任意の特定マッチが正確又は類似なものとして分類されるかどうかを決定するために改変され得る。検索の基礎は:
として定義されるプロダクトスコアであり、2つの配列間の類似の程度及び配列マッチの長さの両方を考慮する。例えば、40のプロダクトスコアと共に、マッチは1-2% 誤差範囲内で正確であり、70でマッチは正確である。より低いスコアが関連分子を同定し得るが、類似の分子は通常15〜40のプロダクトスコアを示すものを選択して同定される。配列アライメントを生じる得るプログラムの別の例は当該分野で公知な、CLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson, Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)又はFASTDB(Brutlag Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)である。
【0070】
1つの態様において、本発明は、VH領域におけるAsn のグリコシル化が
(a) 核のフコシル化がないバイアンテナ複合型の糖構造;
(b) バイアンテナハイブリッド型の糖構造;
(c) バイアンテナオリゴマンノース型の糖構造; 及び
(d) 添付の図5又は添付の図27に提供されるいずれかのバイアンテナ構造
からなる群より選択される、グリコシル化抗体アイソフォームを提供する。
【0071】
本発明の抗体の一態様において、対応する糖構造は核のフコシル化を含まない。対応するNグリコシル化は、核のフコシル化がなく80%までのアンテナが非常にシアリダーゼ化される、バイアンテナ複合型(≧75%; 主に80-90%)の糖構造から主に構成され得る。マイナーな糖構造はそれぞれバイアンテナハイブリッド型及びオリゴマンノース型(≦25%)に属し、添付の図5及び27にも示される。可変領域のグリコシル化構造はタンパク質(アミノ酸ポリペプチド)からのNグリコシダーゼFによる切断に耐性である。
【0072】
1つの態様において、ドミナント複合バイアンテナ糖構造はさらに、
- 1つのアンテナ若しくは他のアンテナ又は両方のアンテナのいずれかに結合した1つ又は2つのシアル酸を含むこと。該シアル酸はN-アセチルノイラミン酸型であり、β1,4結合ガラクトース末端にα 2,3 結合で最も結合しやすい。
- 核のフコシル化を欠くこと、すなわち、糖鎖の還元末端の最も内部のN-アセチルグルコサミンへのα1,6結合で結合するフコース残基を欠くこと
によって特徴付けられる。
【0073】
1つの態様において、ハイブリッド糖構造はさらに、
-バイアンテナ構造の1つの腕として複合型アンテナ(核糖構造に結合するラクトサミニルユニット(GlcNAc-Gal))を含むこと、この腕は主にβ 1,4 結合ガラクトース末端に結合するN-アセチルノイラミン酸を含む
-他のアンテナとして核糖構造に結合する1から3までの更なるマンノースサブユニットを有すること
-核のフコシル化を欠くこと、すなわち、糖鎖の還元末端の最も内部のN-アセチル-グルコサミンへのα1,6結合で結合するフコース残基を欠くこと、
によって特徴付けられる。
【0074】
1つの態様において、オリゴマンノース型糖構造はさらに、
-完全な糖構造に4(Man4→GlcNAc2)、5(Man5→GlcNAc2)又は6(Man6→GlcNAc2)マンノースサブユニットを含むこと、すなわち、典型的なN-結合核糖構造に存在する3分枝マンノースサブユニットを含むこと
-核のフコシル化を欠くこと、すなわち、糖鎖の還元末端の最も内側の部分のN-アセチル-グルコサミンへのα1→6結合で結合するフコース残基を欠くこと
によって特徴付けられる。
【0075】
本発明の別の態様において、1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子及び2つの抗原結合部位が重鎖の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子を含む組成物、すなわち、モノグリコシル化抗体及び二重グリコシル化抗体を含む組成物が提供され、以下抗体組成物と呼ぶ。用語抗体組成物はまた、本明細書に定義される少なくとも1つのグリコシル化VH 領域、又は該VH 領域の少なくとも1つのグリコシル化CDRを含む分子を含む組成物に関し、該分子は特に、上記のような免疫グロブリン又は免疫グロブリンアイソフォーム及び修飾物であり得る。例えば、該組成物はまた、グリコシル化、VH-派生CDR領域を含む単鎖抗体(scFv)又は二重特異的分子を含み得る。本発明の抗体組成物の更なる定義が以下に提供される。
【0076】
抗体組成物は、「VH非グリコシル化」抗体分子、すなわち、可変領域、特に重鎖(VH)の可変部分における本明細書に定義されるグリコシル化を含まない抗体を、含まないか又は非常に低い程度で単に含む。
【0077】
本発明の文脈において、特に本明細書に提供される抗体混合物の文脈において、用語「非グリコシル化抗体分子を含まない又は非常に低い程度で単に含む」は、抗体組成物が、10%未満、例えば、5%未満、例えば、4%未満、例えば、3%未満、例えば、2%未満、例えば、1%未満、例えば、0.5%以下の本明細書に記載される非グリコシル化アイソフォームを含むことを意味する。
【0078】
従って、1つの態様において、本発明は (該グリコシル化は重鎖の可変領域に位置する)モノグリコシル化及び/又は二重グリコシル化抗体を含み、可変領域のグリコシル化がない抗体分子を含まない抗体調製物を提供する。
【0079】
さらに、用語「可変領域のグリコシル化がない抗体分子を含まない」は、多くとも10%、例えば、多くとも5%、例えば、多くとも4%、例えば、多くとも3%、例えば、多くとも2%、例えば、多くとも1%、例えば、多くとも0.5%、例えば、多くとも4%、例えば、多くとも3%、例えば、多くとも2%、例えば、多くとも1%、例えば、多くとも0.5%、例えば、多くとも0.3%、例えば、多くとも0.2%の本明細書に記載される非グリコシル化アイソフォームを含む、抗体調製物/抗体混合物/抗体プールに関する。
【0080】
1つの態様において、本発明は、可変領域で非グリコシル化される、例えば、重鎖の可変領域で非グリコシル化される抗体アイソフォームを0.5%を超えて含まない、組成物を提供する。
【0081】
上記に指摘したように、本発明の一態様において、モノ及び二重グリコシル化抗体、例えば免疫グロブリンの混合物が提供され、該混合物は可変領域のグリコシル化がない抗体分子を含まない。可変領域、例えば、重鎖の両方の可変領域(両方の(VH)-領域)におけるかかる翻訳後修飾がない抗体は、本発明の文脈において重鎖の可変領域におけるグリコシル化を含まない「非グリコシル化形態」とみなされる。しかし、この「非グリコシル化形態」はそれにも関わらず抗体の定常領域(C領域)、例えば最も共通してFc部分の十分に保存されたグリコシル化部位、特に本明細書に定義される非可変/定常Fc部分におけるアスパラギン(Asn)306にグリコシル化を含み得る。
【0082】
グリコシル化抗体アイソフォーム自体又はモノグリコシル化アイソフォーム及び二重グリコシル化アイソフォームの組み合わせとしてのグリコシル化抗体アイソフォームは、アルツハイマー病(AD)、並びにダウン症候群、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、クロイツフェルトヤコブ病、HIV関連痴呆及び運動神経障害のような他のアミロイド関連障害の処置のための非常に有用で有利な治療抗体調製物である。グリコシル化抗体アイソフォーム自体又はモノグリコシル化アイソフォーム及び二重グリコシル化アイソフォームの組み合わせとしてのグリコシル化抗体アイソフォームはまた、独自の診断ツールである。
【0083】
本明細書に記載される両方のグリコシル化アイソフォームはインビボで改善され、かつ非常に効率的な脳浸透を示す。効率的な脳浸透及びアミロイド−βプラークへの特異的結合は、PS2APPマウス、AD関連アミロイド症のマウスモデルで示され得る。
【0084】
さらに、有意に減少した非特異的な粘着性と共にインビトロでの免疫組織化学染色による真のヒトアミロイド−βプラークのための改善された特異性が検出され得る。ヒトアミロイド−βプラークの統一染色のための最小有効濃度は添付の実施例に記載されるように、10ng/mlと決定された。
【0085】
添付の実施例に記載されるように、異なってグリコシル化された抗体、例えば、免疫グロブリンの分離及び特徴付けによって、重鎖の可変領域のグリコシル化によってAβペプチドへの抗原結合、診断値、薬理学的プロフィール及び機能活性に驚くべき影響を与えることが明らかになった。精製された抗体分子はMS-分析、可溶性Aβに結合する結合試験(Biacore)及びエピトープマッピング(Pepspot分析)、凝集Aβの解離並びにインビボ及びインビトロでのβ-アミロイドプラークへの結合の顕微鏡分析に提示される。
【0086】
本発明の一態様において、精製された抗体又は抗体組成物は、β-A4ペプチド/Aβ4を特異的に認識可能である。
【0087】
従って、本明細書に記載されるように、精製された抗体又は抗体組成物は、特定の態様において、Aβ/Aβ4の2つの領域(N-末端領域及び中央/真ん中部分)を特異的に認識可能である抗体又は抗体組成物に関する。
【0088】
用語「特異的に認識する」は、本発明によれば、抗体分子が本明細書に定義されるβ-A4の2つの領域のそれぞれの少なくとも2つのアミノ酸と特異的に相互作用可能である及び/又は結合可能であることを意味する。該用語は、抗体分子の特異性すなわち、本明細書に定義されるβ-A4ペプチドの特定の領域と、β-A4ペプチドの関連領域ではない別のもの、又はAPP関連タンパク質/ペプチド/(非関連)試験ペプチドではない別のものとを区別する能力に関する。従って、特異性は、当該分野で公知の方法、及び本明細書に開示され、かつ記載される方法によって実験で決定され得る。かかる方法は、ウェスタンブロット、ELISA-試験、RIA-試験、ECL-試験、IRMA-試験及びペプチドスキャンを含むが、これらに限定されない。かかる方法はまた、特に添付の実施例に例示されるKD-値の測定を含む。ペプチドスキャン(pepspotアッセイ)は、ポリペプチド抗原の線形エピトープをマップ化するために慣例的に使用される。ポリペプチドの一次配列は、互いに重複するペプチドを用いて活性化セルロース上で首尾よく合成される。特異的抗原/エピトープを検出又は認識する能力を試験する抗体による特定ペプチドの認識は、当該分野で公知の化学発光反応又は類似の手段によって、慣例の色発色(ホースラディッシュペルオキシダーゼ又は4-クロロナフトール又は過酸化水素のような、酵素又は色素を用いる二次抗体)によってスコア化される。特に化学発光反応又は二次蛍光抗体を使用する場合、反応は定量され得る。抗体が特定セットの重複ぺプチドと反応する場合、反応に必要なアミノ酸の最小配列を演繹し得、本発明によって提供される例示的な実施例を参照。
【0089】
同じアッセイにより、反応性ペプチドの2つの異なるクラスターが明らかにされ得、これは、抗原ポリペプチド内の不連続な、すなわちコンホメーションエピトープの認識を示す(Geysen (1986)、Mol. Immunol. 23、709-715)。
【0090】
ペプスポット(pepspot)アッセイに加え、標準的なELISAアッセイが行なわれ得る。添付の実施例に示されるように、小さなヘキサペプチドがタンパク質に連結され、免疫プレートにコートされ、試験される抗体と反応され得る。標準的な発色(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼを有する二次抗体および過酸化水素を有するテトラメチルベンジジン)によってスコアリングが行なわれ得る。特定のウェル内での反応を例えば450nmでの光学密度によってスコア化する。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は0.10Dであり得、典型的な陽性反応は10Dであり得る。これは、陽性/陰性の差(比)が10倍を超え得ることを意味する。さらなる詳細を添付の実施例に示す。特異性および本明細書に規定されるβ-A4ペプチドの2つの領域を「特異的に認識する」能力を測定するためのさらなる定量的方法を以下に示す。
【0091】
用語「β-A4ペプチドの2つの領域」は、例えば、配列番号3 (β-A4ペプチド)のN末端アミノ酸3〜6およびアミノ酸18〜24位の中心/中央エピトープに関する2つの領域に関する。添付の実施例に示されるように、特に、本明細書に提供され、例示される(添付の実施例参照)二重グリコシル化抗体Aアイソフォームは、Aβ(配列番号3に示される)のN末端のアミノ酸1〜10を含む第1の部分および中心/中央部分のアミノ酸17〜26を含む第2の部分のAβ分子の2つの部分を検出する。したがって、本明細書に提供され、本明細書に提供される抗体のモノおよび二重グリコシル化アイソフォームを含む抗体混合物において、2つの領域はまた、いくぶんより広がり得、そのため、例えば、アミノ酸1〜10(もしくは〜11もしくは〜12)、またはそのより短い部分を含むおよびアミノ酸17〜26(もしくはアミノ酸16〜27)または例えば、アミノ酸19〜26もしくは20〜26)などのアミノ酸17〜26を含むより短い部分を含む。用語「β-A4ペプチド」は、本発明の状況において、本明細書において上記のAβ39、Aβ41、Aβ43、特にAβ40およびAβ42に関する。Aβ42はまた添付の配列番号:3に示される。用語「β-A4ペプチドの2つの領域」はまた、本明細書に規定されるβ-A4ペプチドの2つの領域またはその部分を含む「エピトープ」および/または「抗原決定基」に関することは注目すべきである。本発明によれば、前記β-A4ペプチドの2つの領域は、β-A4ペプチドの一次構造において(アミノ酸配列レベルで)少なくとも1つのアミノ酸、例えば少なくとも2つのアミノ酸、例えば少なくとも3つのアミノ酸、例えば少なくとも4つのアミノ酸、例えば少なくとも5つのアミノ酸、例えば少なくとも6つのアミノ酸隔てている。本明細書に示され、添付の実施例に示されるように、本発明の抗体/抗体分子は、本明細書に規定されるβ-A4ペプチドの2つの領域を検出する/と相互作用するおよび/または該領域と結合し、ここで、前記2つの領域は、(アミノ酸配列の一次構造レベルで)少なくとも1つのアミノ酸隔てており、前記2つの領域/「エピトープ」を隔てる配列は、7個より多くのアミノ酸、8個より多くのアミノ酸、10個より多くのアミノ酸または約14個より多くのアミノ酸さえ含み得る。
【0092】
用語「β-A4ペプチドの2つの領域」はまた、前記2つの領域またはその部分からなるコンホメーションエピトープまたは不連続なエピトープに関する。また、Geysen (1986)、上記引用文中を参照。本発明の状況において、コンホメーションエピトープは、ポリペプチドが天然タンパク質にフォールディングされる場合に表面上で一緒になり、一次配列で隔てた2つ以上の別々のアミノ酸配列によって規定される(Sela、(1969)Science 166、1365およびLaver、(1990)Cell 61、553-6)。本発明の抗体分子は、本明細書に記載のβ-A4の2つの領域または本明細書において以下に開示するその部分で構成される、および/またはこれらを含むコンホメーションエピトープ(1つまたは複数)と特異的に結合/相互作用すると考えられる。本発明の「抗体分子」は、(a) β-A4のアミノ酸1〜11(またはその部分(1つもしくは複数))を含むアミノ酸鎖、および(b) β-A4(配列番号3)のアミノ酸16〜27(またはその部分(1つもしくは複数))を含むアミノ酸鎖に対して、同時および独立した二重特異性を含むと考えられる。これらの鎖の断片または部分は、少なくとも2つ、ほとんどの場合で少なくとも3つのアミノ酸を含む。
【0093】
抗体分子、例えば、免疫グロブリンは、とりわけ、3つの系:a)エプスタインバーウイルス核抗原を含有する一過的にトランスフェクトされたヒト胚性腎臓細胞(HEK 293 EBNA、Invitrogen)、b)一過的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣細胞 (CHO)、ならびにc)安定にトランスフェクトされたCHO細胞株(CHO K1およびCHO K1 SV、Lonza Biologies)で発現され得る。3つの異なる抗体分子(非、モノまたは二重グリコシル化)は、以下に詳細に示すプロテインA精製、陽イオン交換クロマトグラフィーならびにサイズカラム分離を含む、特定の精製工程によって分離され得る。
【0094】
本発明の一態様において、抗体分子は、例えば、CHO細胞またはHEK 293細胞、好ましくはCHO細胞において組換えにより生成される。特定の態様において、上記同定されたグリコシル化パターンは、CHO細胞における発現後に得られ得る。CHO細胞は、当該技術分野で非常によく知られており、とりわけ、CHO K1細胞またはCHO K1 SV細胞などの実験部分に使用されるCHO細胞を含む。一般に使用されるHEK 293細胞はHEK 293 EBNAである。
【0095】
グリコシル化された本発明の抗体の組換え発現は、真核生物発現系、特に、CHO細胞において実施例に示すようにして行なわれる。しかしながら、さらなる発現細胞、すなわち、真核生物細胞が構想され得る。真核生物細胞は、例えば、真菌または動物細胞を含む。適当な真菌細胞の例は、酵母細胞、例えば、Saccharomyces属のもの、例えば、Saccharomyces cerevisiae種のものである。適当な動物細胞は、例えば、NSO、MDCK、U2-OSHela、NIH3T3、M0LT-4、Jurkat、PC-12、PC-3、IMR、NT2N、Sk-n-sh、CaSki、C33Aなどの、例えば昆虫細胞、脊椎動物細胞、例えば哺乳動物細胞である。また、ヒト細胞株が構想される。これらの宿主細胞、例えばCHO細胞は、本発明の抗体分子に、リーダーペプチドまたはシグナル配列除去、フォールディングおよびH(重)鎖およびL(軽)鎖の合成、ならびに最も重要には正確な側鎖、つまり重鎖の可変領域における分子のグリコシル化を含む翻訳後修飾を提供する。かかるシグナルペプチドまたはリーダー配列は、例えば、CHO細胞におけるその組換え産生中の分泌経路中に宿主シグナルペプチダーゼによってタンパク質分解的に切断される。当該技術分野で公知のさらに適当な細胞株は、American Type Culture Collection (ATCC)などの細胞株寄託所から得られ得る。本発明によれば、一次細胞/細胞培養物が宿主細胞としての機能を果たし得ることがさらに構想される。前記細胞は、特に、昆虫(DrosophilaもしくはBlatta種の昆虫など)または哺乳動物(ヒト、ブタ、マウスもしくはラットなど)から由来する。前記宿主細胞はまた、神経芽細胞腫細胞株などの細胞株由来の細胞および/または細胞株から誘導された細胞を含み得る。
【0096】
したがって、本発明の抗体分子は、組換え発現系を用いて調製される。かかる系の一例は、上記に指摘されるように、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた哺乳動物発現系である。これらは、グルタミンシンセターゼ(GS)系 (WO 87/04462;WO 89/01036;Bebbington、1992、Biotechnology (N Y)、10、169-75)とともに使用され得る。この系は、GS酵素をコードする遺伝子および所望の抗体遺伝子でのCHO細胞のトランスフェクションを含む。次いで、無グルタミン培地で成長するCHO細胞が選択され、また、メチオニンスルホキシイミン(MSX)を用いたGS酵素の阻害に供される。生存するため、細胞は、GS酵素発現および同時にmAbの発現を増幅する。
【0097】
別の可能な発現系は、CHO細胞が、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr-)を欠損し、成長に関してチミジンおよびヒポキサンチンに依存性であるCHO dhfr-系である。親CHO dhfr-細胞株は、抗体およびdhfr遺伝子でトランスフェクトされ、したがって、dhfr+表現型のCHO細胞形質転換体の選択が可能になる。選択は、チミジンおよびヒポキサンチンの非存在下で行なわれる。抗体遺伝子の発現は、メトトレキサート(MTX)を用いた増幅によって増大され得る。この薬物は、dhfr酵素の直接インヒビターであり、そのdhfr遺伝子コピー数を増幅する耐性コロニーの単離を可能にし、したがって、これらの条件下で抗体遺伝子が充分に働くことを可能にする。
【0098】
精製された抗体分子、例えば、免疫グロブリンは、
(a)哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞またはHEK 293細胞中で、本明細書において上記規定の抗体分子をコードする異種核酸分子を組み換え発現させる工程;ならびに
(b)前記組み換え発現された抗体分子を、
(b1)プロテインAカラム精製工程;
(b2)イオン交換カラム精製工程、例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー工程;ならびに
任意に、
(b3)サイズ排除カラム精製工程
を含む方法によって精製する工程
を含む方法によって調製され得る。
【0099】
精製プロトコルは、さらなる濃縮工程、例えば、分析カラムを伴う例えば、透析濾過または解析工程などのさらなる工程を含み得る。該方法/プロセスはまた、例えば、濾過/ナノ濾過によるウイルス不活化工程および/またはウイルス除去工程を含み得る。また、特定のある工程が繰返される(例えば、2回のイオン交換クロマトグラフィー工程が行なわれ得る)こと、またはある工程(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)が省略され得ることが構想され、実現可能である。
【0100】
プロテインAは、ほとんどのIgG1アイソタイプのFc領域に結合する特異的リガンドの群である。これは、いくつかのStaphylococcus aureus菌株によって合成され、それから単離され得、クロマトグラフィービーズに連結され得る。いくつかの型のゲル調製物が市販されている。
【0101】
使用され得るプロテインAカラムの一例は、MabSelect(商標)カラムである。理想的には、カラムは25mM Tris/HCl、25mM NaCl、5mM EDTAで平衡化され、細胞培養上清をカラムに適用し、カラムを1M Tris/HCl pH7.2で洗浄し、100mM酢酸を用いてpH3.2で抗体が溶出される。
【0102】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、固定相の正帯電基および移動相にある試料間の相互作用を利用する。弱い陽イオン交換体(例えば、CM Toyopearl 650(登録商標))が使用される場合、以下のクロマトグラフィー工程が行なわれる。100mM酢酸pH4での予備平衡化、プロテインA溶出液の負荷および100mM酢酸pH4での洗浄後、抗体が溶出され、250mM酢酸ナトリウム(pH7.8〜8.5)および500mM酢酸ナトリウム(pH7.8〜8.5)工程を適用することにより分画される。最初の工程では、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分の混合物が通常溶出され、第2の工程を用いて、非グリコシル化アイソフォーム画分が通常溶出される。
【0103】
強力な陽イオン交換体(例えば、SP Toyopearl 650)からは、抗体は塩工程によって溶出され得る。50mM酢酸pH5.0でのカラムの平衡化、プロテインA溶出液のpH4での負荷後に、50mM酢酸および210mM塩化ナトリウムを用いた最初の溶出工程が行なわれる。次いで、50mM酢酸および350mM塩化ナトリウムの第2の溶出工程が適用される。最初の塩工程により、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分の混合物が通常溶出され、第2の塩工程により、非グリコシル化アイソフォームが通常溶出される。
【0104】
また、抗体は、塩勾配によって強力な陽イオン交換体カラム(例えば、SP-Sepharose(登録商標))から溶出され得る。予備平衡化、負荷およびpH4.5でカラム洗浄後、50mM MES pH5.8から50mM MES/1M塩化ナトリウムpH5.8の塩勾配が適用される。ここで、二重グリコシル化アイソフォーム、モノグリコシル化アイソフォームおよび非グリコシル化アイソフォーム画分は、通常、別々に溶出される。以下において、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分は、生成物プールおよび/または所望の抗体混合物がもたらされるようにプールされ得る。
【0105】
二重-およびモノグリコシル化抗体分子、例えば、免疫グロブリンの混合物のさらなる精製は、サイズ排除クロマトグラフィーによって行なわれ得る。有用なカラムの一例はSuperdex 200(登録商標)カラムである。流出(running)バッファーの例としては、ヒスチジン/塩化ナトリウム、例えば、10mMヒスチジン/125mM塩化ナトリウム/pH6、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。
【0106】
フロースルーモードにおける陰イオン交換クロマトグラフィーの後、濃縮/透析濾過は、代替的精製工程である。Q Sepharose(登録商標)は、アニオン交換工程のための樹脂の一例である。例えば、SPクロマトグラフィーからの溶出液は、37.5mM Tris/HCl pH7.9で3倍に希釈され得、25mM Tris/83mM酢酸ナトリウムで予備平衡化されたQ-Sepharoseカラムに通過され得る。フロースルーが回収され、pH5.5に調整され、例えば、Hydrosart 30kD(登録商標)膜を用いた限外濾過によって濃縮される。以下において、濃縮物は、例えば、10容量の20mMヒスチジン/HCl pH5.5に対して透析濾過され得る。
【0107】
上記の精製プロトコルはまた、さらなる工程(c)として、Mono-S HR5/5カラムなどを使用する分析クロマトグラフィー工程を含み得る。しかしながら、また、例えば、抗体分子の濃縮のための透析濾過などのさらなる工程が構想される。
【0108】
本発明の一態様において、本明細書に記載の抗体分子または上記に提供される方法によって調製される抗体分子を含む組成物、抗体調製物または抗体プールが提供される。本発明のこの態様において、前記組成物は、モノまたは二重グリコシル化抗体を含む。別の態様において、前記組成物は、モノおよび二重グリコシル化された(重鎖(1つまたは複数)の可変領域(1つまたは複数)において)抗体を含み、前記組成物は、可変領域においてグリコシル化を欠く抗体分子に由来する。この態様の状況において、用語「抗体プール」は、個々に単離され得、次いで1つの混合物に合わされるモノおよび二重グリコシル化(重鎖(1つまたは複数)の可変領域(1つまたは複数)において)抗体の混合物に関する。本明細書に提供される抗体混合物または抗体プールは、本明細書に規定される50%のモノグリコシル化抗体および50%の二重グリコシル化抗体を含み得る。しかしながら、また、30/70〜70/30比も構想される。しかし、当業者は本発明の抗体混合物において他の比もまた構想されることを承知している。例えば、10/90または90/10、20/80または80/20ならびに40/60または60/40もまた、本発明の状況において使用され得る。また、実施例に記載されるように、本明細書において上記規定の二重グリコシル化およびモノグリコシル化抗体を含む本発明の抗体混合物における特定の有用な比は、40/60〜45/55の比である。
【0109】
本明細書に提供される組成物は、診断組成物または医薬組成物において特に有用である。
【0110】
したがって、本発明は、
(a)グリコシル化Asnを有する1つの抗原結合部位を含む上記規定の抗体分子;
(b)グリコシル化Asnを有する2つの抗原結合部位を含む上記規定の抗体分子;または、最も好ましくは、
(c)抗体分子(a)〜(b)の組合せ
を含む診断組成物または医薬組成物を提供する。
【0111】
グリコシル化Asnを有する1つの抗原結合部位を含む抗体分子(1つまたは複数)およびグリコシル化Asnを有する2つの抗原結合部位を含む抗体分子(1つまたは複数)を含む本明細書に提供される組合せ(c)は、非グリコシル化(重鎖の可変領域に関して)アイソフォームを欠く。上記に示されるように、用語「非グリコシル化(重鎖の可変領域に関して)アイソフォームを欠く」は、前記組合せにおいて5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、1%未満または0.5%未満すらの抗体種が重鎖の可変領域において非グリコシル化である組合せ/抗体プール/抗体調製物に関する。実施例に示されるように、前記組合せ/抗体プール/抗体調製物は、非グリコシル化アイソフォームをほとんど含み得ない(0.5%未満)。所定の抗体組成物内の所定のグリコシル化アイソフォームのパーセンテージおよび/または量(本明細書に規定されるように、例えば、重鎖の可変領域におけるグリコシル化、とりわけ添付の図14参照)は、当該技術分野で公知の方法によって容易に測定され得る。これらの方法は、限定されないが、質量分析、SDS-PAGE分析イオン交換、HPLL、ELISAなどを含む。
【0112】
添付の実施例に示すように、AD患者由来のヒト脳組織の凍結切片を用いた免疫組織化学的染色実験で、本発明の抗体による真性アルツハイマー病のβ-アミロイドプラークの特異的および感受性の免疫修飾がインビトロで示される。また、Aβをワクチン注射された患者由来のヒト抗Aβ抗体でも脳薄片のβ-アミロイドプラークの有効な染色が示された(Hock、2002、Nature Medicine、8、1270-1275)。さらに、免疫修飾もまた、ヒトβ-アミロイドプラーク負荷を特徴とするトランスジェニック動物モデルにおいて示される(Richards、2003、J. Neuroscience、23、8989-9003)。類似の動物モデルにおいて、このプラーク結合により、その除去、続いて疾患関連症状の改善がもたされることが示されたが、Fc依存性プロセスの関与が考察された(Bard、2000、Nature Medicine、6、916-919;Wilcock、2003、Neurobiology Disease、15、11-20;Wilcock、2004、J. Neuroscience、24、6144-6151)。さらに、β-アミロイドプラークへの抗Aβ抗体の有効な結合は、遅い疾患進行に相関すると報告された(Hock、2002、Nature Medicine、8、1270-1275;Hock、2003、Neuron、38、547-554)。ヒト脳組織のこの分析および死後分析により、小グリア細胞の食作用がヒトにおけるプラーク除去に機械的に関与していることが示される(Nicoll、2003、Nature Medicine、9、448-452)。したがって、本発明の抗体、または特に、医薬組成物に含まれる抗体は、主にヒトのFcR依存性プロセスの原因となるヒトIgG1である。本発明の抗体/本発明の混合物の効率的なβ-アミロイドプラーク免疫修飾は、薬物がヒトにおけるβ-アミロイドプラークの存在を除去し、形成を予防するための受動免疫に有効であることを示唆する。
【0113】
また、抗体は、好ましくは、血液脳関門を越えてその目的の場所に達するべきである。ヒトIgGのようなサイズの大きな分子では、このプロセスは劇的に減少し、約0.1〜0.2%の血漿の抗体濃度でやっとCSF中で達成され得る。Aβペプチドに対する末梢効果を伴い得るプラーク除去の機構は、なお、論議の的となっている主題である(Dodart、2002、Nature Neuroscience、5:452-457)。したがって、作製された本発明の治療抗体または対応する本発明のモノおよび二重グリコシル化(重鎖可変領域において)の混合物はまた、可溶性単量体AβペプチドまたはオリゴマーAβペプチド(例えば、凝集中間体) の中和もまた全体的なアミロイド減少効果に寄与し得るため、Fc依存性プロセスの関与がなくAβ多量体をインビトロで解重合し、かつCSF中の可溶性Aβ単量体およびオリゴマーに結合する性質を有する(Du、2003、Brain、126:1-5)。
【0114】
本発明の組成物は、固体または液体形態で、とりわけ、粉末(1種類または複数種類)、錠剤(1種類または複数種類)、溶液(1種類または複数種類)またはエーロゾル(1種類または複数種類)の形態で投与され得る。前記組成物は、1種類以上の本発明の抗体/抗体分子、最も好ましくは、本明細書に提供されるモノおよび二重グリコシル化抗体の混合物を含み得る。
【0115】
前記医薬組成物は、任意に薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤を含むことが好ましい。本明細書に開示する医薬組成物は、神経障害および/または神経変性障害の処置に特に有用であり得る。前記障害としては、限定されないが、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(amyothrophic lateral sclerosis)(ALS)、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、ダウン症候群、HIV-痴呆、パーキンソン病および老化関連神経障害が挙げられる。本発明の医薬組成物は、とりわけ、アミロイドプラーク形成の強力なインヒビターとして、またはアミロイドプラークの解重合の強力な刺激因子として構想される。したがって、本発明は、アミロイド形成(amyloidogenic)疾患/障害の処置に使用される本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。用語「アミロイド形成疾患/障害」には、アミロイド原線維の形成もしくは沈着および/または病原性APPタンパク質分解と関連するか、またはそれに引き起こされる任意の疾患が含まれる。例示的なアミロイド形成疾患としては、限定されないが、アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群、レヴィー小体形成関連痴呆、痴呆を有するパーキンソン病、軽度の認知障害、脳アミロイド血管障害および血管性痴呆が挙げられる。種々のアミロイド形成疾患は、アミロイド沈着物のポリペプチド成分の性質によって規定および/または特徴付けられる。例えば、アミロイドβタンパク質は、アルツハイマー病を有する被験体に見られるアミロイド沈着物に特徴的である。
【0116】
適当な医薬用担体、賦形剤および/または希釈剤の例は当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、種々の型の湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。かかる担体を含む組成物は周知の従来の方法によって製剤化され得る。適当な担体は、賦形剤、界面活性剤、張度剤などを含む、抗Aβ特異的結合剤または抗体と合わされた場合、Aβの高い親和性結合を保持し、被験体の免疫系と非反応性である任意の材料を含み得る。Remington's Pharmaceutical Sciences (1980)第16版、Osol、A.編を参照のこと。これらの医薬組成物は、被験体に適当な用量で投与され得る。適当な組成物の投与は、異なる方法、例えば、非経口、皮下、腹腔内、局所、気管支内、肺内および鼻腔内投与ならびに、局所処置に所望される場合は、病変内投与によって行なわれ得る。非経口投与としては、腹腔内、筋肉内、皮内、皮下静脈内または動脈内投与が挙げられる。前記投与は、例えば、脳動脈内への部位または脳組織への直接の注射および/または送達によって行なわれることが特に好ましい。本発明の組成物はまた、例えば、脳などの標的部位の外部または内部にバイオリスティック(biolistic)送達によって標的部位に直接投与され得る。
【0117】
本明細書に記載のグリコシル化抗体を含む医薬組成物は、所望の程度の純度を有する抗体を任意の生理的に許容され得る担体、賦形剤、安定剤、界面活性剤、バッファーおよび/または張度剤と混合することにより調製される。許容され得る担体、賦形剤および/または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸、グルタチオン、システイン、メチオニンおよびクエン酸を含む酸化防止剤;保存剤(エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロル-m-クレゾール、メチルもしくはプロピルパラベン、塩化ベンズアルコニウムまたはその組合せなど);アルギニン、グリシン、オルニチン、リシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、プロリンおよびその組合せなどのアミノ酸;単糖類、二糖類および他の炭水化物;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;ゼラチンまたは血清アルブミンなどのタンパク質;EDTAなどのキレート化剤;トレハロース、スクロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、グルコサミン、N-メチルグルコサミン(いわゆる「メグルミン」)、ガラクトサミンおよびノイラミン酸などの糖類;および/またはTween、Brij プルロニック、Triton-Xもしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0118】
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態または凍結乾燥形態から再構成される液体形態であり得、ここで、凍結乾燥調製物は投与前に滅菌溶液で再構成される。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的な手順は、ある容量の純水(典型的に凍結乾燥中に除去された容量と等量)を添加し戻すことであるが、非経口投与用の医薬組成物の作製には、抗菌剤を含む溶液が使用され得る。Chen (1992)Drug Dev Ind Pharm 18、1311-54もまた参照。
【0119】
医薬組成物における例示的な抗体濃度は、約1mg/mL〜約200mg/mlもしくは約50mg/mL〜約200mg/mL、または約150mg/mL〜約200mg/mLの範囲であり得る。明白な理由のため、本明細書に示す濃度は、液体または固体形態から正確に再構成される液体中の濃度に関することが強調される。
【0120】
抗体の水性製剤は、例えば、約4.0〜約7.0、または約5.0〜約6.0の範囲、あるいは約5.5のpHのpH緩衝溶液中で調製され得る。この範囲内のpHに適当なバッファーの例としては、リン酸-、ヒスチジン-、クエン酸-、コハク酸-、酢酸-バッファーおよび他の有機酸バッファーが挙げられる。バッファー濃度は、例えば、バッファーおよび製剤の所望の張度に応じて約1mM〜約100mM、または約5mM〜約50mMであり得る。
【0121】
張度剤は、製剤の張度を調節するために抗体製剤に含まれ得る。例示的な張度剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリンおよびアミノ酸、糖類の群からの任意の成分ならびにその組合せが挙げられる。
【0122】
好ましくは、水性製剤は等張性であるが、高張性または低張性溶液が適当であり得る。用語「等張性」は、生理学的塩溶液および血清などの比較されるいくつかの他の溶液と同じ張度を有する溶液を表す。張度剤は、約5mM〜約350mMの量で、特に105mM〜305nMの量で使用され得る。
【0123】
界面活性剤はまた、製剤化された抗体の凝集を低下させるため、および/または製剤中での微粒子の形成を最小限にするため、および/または吸着を低下させるために抗体製剤に添加され得る。例示的な界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー (Poloxamer、プルロニック)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。好ましいポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルはポリソルベート20(商標Tween 20TMで販売)およびポリソルベート80(商標Tween 80TMで販売)である。好ましいポリエチレンポリプロピレンコポリマーは、名称プルロニック(登録商標)F68またはポロキサマー188TMで販売されているものである。好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルは、商標BrijTMで販売されているものである。界面活性剤の例示的な濃度は約0.001%〜約1%w/vの範囲であり得る。
【0124】
また、凍結乾燥プロセス中の不安定化条件に対して不安定な活性成分(例えば、タンパク質)を保護するために溶解保護剤(lyoprotectant)が添加され得る。例えば、公知の溶解保護剤としては、糖類(グルコースおよびスクロースを含む);ポリオール(マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールを含む);ならびにアミノ酸(アラニン、グリシンおよびグルタミン酸を含む)が挙げられる。溶解保護剤は、一般的に約10mM〜500nMの量で使用される。
【0125】
一態様において、製剤は、上記の薬剤(すなわち、グリコシル化抗体、界面活性剤、バッファー、安定剤および/または張度剤)を含み、本質的に、エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロル-m-クレゾール、メチルもしくはプロピルパラベン、塩化ベンズアルコニウムならびにその組合せなどの1種類以上の保存剤を含まない。別の態様において、保存剤は、例えば約0.001〜約2%(w/v)の範囲の濃度で製剤中に含まれ得る。
【0126】
一態様において、本発明の抗体製剤は、
− 約1〜約200mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 約0.001〜約1%の少なくとも1種類の界面活性剤;
− 約1〜約100mMのバッファー;
− 任意に約10〜約500mMの安定剤および/または約5〜約305mMの張度剤;
を含み得る、
− 約4.0〜約7.0のpHの
非経口投与に適当な液体または凍結乾燥製剤である。
【0127】
好ましい態様において、本発明の非経口製剤は、
− 約1〜約200mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の
液体または凍結乾燥製剤である。
【0128】
より好ましい態様において、本発明による非経口製剤はまた、
− 15mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の
凍結乾燥製剤を含む。
【0129】
別のより好ましい態様において、本発明による非経口製剤はまた、
− 7.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.022% Tween 20 w/v、
− 120mM L-ヒスチジン、
− 250 125mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMスクロース、
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMスクロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 37.5mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 10mM L-ヒスチジン、
− 125mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mM マンニトール
を含み、
− pH5.5の;
または
− 75mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の;
または
− 150mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMトレハロース
を含み、
− pH5.5の、
または
− 150mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mM マンニトール
を含み、
− pH5.5の、
または
− 150mg/mLの本明細書に記載のグリコシル化抗体もしくは抗体組成物、
− 0.02% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の、
または
− 10mg/mL Aβ抗体、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の
液体製剤を含む。
【0130】
一態様において、本発明の医薬組成物は、
− 10mg/mL Aβ抗体、
− 0.01% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 140mM塩化ナトリウム
を含み、
− pH5.5の
液体製剤である。
【0131】
別の態様において、本発明の医薬組成物は、
− 75mg/mL Aβ抗体、
− 0.04% Tween 20 w/v、
− 20mM L-ヒスチジン、
− 250mMスクロース
を含み、
− pH5.5の
凍結乾燥製剤である。
【0132】
例示された製剤と関連する用語「本明細書に記載のグリコシル化抗体」は、本発明において、本明細書に規定されるモノグリコシル化抗体、本明細書に規定される二重グリコシル化抗体ならびにその混合物を含み得る。
【0133】
投薬計画は、担当医師および臨床因子によって決定される。医薬技術分野において周知のように、任意の一人の患者に対する投薬量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与の期間および経路、一般健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物を含む多くの因子に依存する。タンパク質性医薬活性物質は、投与あたり1ng〜20mg/体重1kg、例えば、0.1mg〜10mg/体重1kg、例えば、0.5mg〜5mg/体重1kgの量で存在し得る。しかしながら、特に前述の因子を考慮すると、この例示的な範囲より下または上の投与量が構想される。また、該計画が連続注入である場合、1μg〜10mg/体重1キログラム/分の範囲であるべきである。
【0134】
本明細書に記載の医薬組成物は、短期作用性、高速放出、長期作用性または持続放出性であるように製剤化され得る。したがって、医薬組成物はまた、低速放出または制御放出に適当であり得る。
【0135】
持続放出調製物は、当該技術分野で周知の方法を用いて調製され得る。持続放出調製物の適当な例としては、マトリックスが成形された物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられる。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、L-グルタミン酸およびエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、ヒドロゲル、ポリラクチド、分解性乳酸-グリコール酸コポリマーならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。持続放出調製物中に含まれる抗体の生物学的活性のありうる損失および免疫原性のありうる変化は、適切な添加剤を使用すること、含水率を制御すること、および特異的ポリマーマトリックス組成物を開発することにより妨げられ得る。
【0136】
進行は、定期的な評価によりモニターされ得る。組成物、すなわち、本発明のモノおよび/または二重グリコシル化抗体またはその混合物は、局所または全身に投与され得る。末梢に投与される抗体は中枢神経系に入り得ることに注意されたい。とりわけ、Bard (2000)、Nature Med. 6、916-919を参照のこと。非経口投与用の調製物としては、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体としては、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル液、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補給物、電解質補給物(リンゲルのデキストロースに基づくなど)などが挙げられる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化薬剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加剤もまた存在し得る。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図される使用に応じてさらなる薬剤を含み得る。前記薬剤は、神経保護因子、コリンエステラーゼインヒビター、M1ムスカリン性受容体のアゴニスト、ホルモン、酸化防止剤、炎症のインヒビターなどの中枢神経系に作用する薬物であり得る。前記医薬組成物は、例えば、神経伝達物質および/または神経伝達物質の代用分子、ビタミンEまたはα-リポ酸などのさらなる薬剤を含むことが特に好ましい。
【0137】
当業者、特に、限定されないが、生化学者、生物学者、化学者、製薬者および前記専門家のグループは、容易に上記の医薬組成物を操作および作製する立場にある。担当医師などの医薬分野の当業者は、どのようにしてかかる医薬組成物が本明細書に規定される医薬組成物での処置を必要とする患者に投与され得るかに精通している。かかる投与は、例えば、注入および/または注射による全身投与を含み得る。しかしながら、また脳への本発明の化合物および/または化合物混合物の直接投与が構想される。例えば、化合物または化合物混合物または化合物製剤は、脳への直接脳室内または鞘内注射、好ましくは脳実質組織に対する影響を最小限にするために低速注入によって投与され得る。また、脳内への低速放出移植物が使用され得る。また、例えば、本明細書に規定される抗体を産生する移植された組換え細胞の使用による遺伝子療法アプローチが使用されることが構想される。これらの「組換え細胞」は、本明細書に記載の抗体、特に、本発明の抗Aβ抗体の可変領域/部分に本明細書に規定されるグリコシル化を提供し得るべきである。しかし、上記に指摘のように、本発明の抗体/抗体混合物の1つの利点は、血液脳関門を超え、アミロイドプラークに結合するその能力である。以下に記載する本発明の医薬組成物は、未知または病原性APP凝集もしくは病原性APPプロセッシングと関連もしくは依存するこれまでのすべての疾患の処置のために使用され得る。これらは、アルツハイマー病およびアミロイド-βの細胞外沈着物が役割を果たしていると思われる他の疾患の処置に特に有用であり得る。これらは、ヒトに望ましく使用され得るが、動物処置もまた本明細書に記載の方法、使用および組成物に包含される。
【0138】
本発明の好ましい態様において、本明細書において上記に開示する本発明の組成物は、任意に、適当な検出のための手段をさらに含む診断組成物である。診断組成物は、前述の本発明の化合物、すなわち本明細書に記載のグリコシル化抗体の少なくとも1つを含む。
【0139】
前記診断組成物は、本発明の化合物、特に、本発明のグリコシル化抗体分子、可溶性形態/液相を含み得るが、前記化合物は固相支持体に結合/付着および/または連結されることもまた構想される。
【0140】
固相支持体は、本明細書に規定される診断組成物と組み合せて使用され得るか、または本発明の化合物は、前記固相支持体に直接結合され得る。かかる支持体は当該技術分野で周知であり、とりわけ、市販のカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、ウェルおよび反応トレイの壁、プラスチックチューブなどを含む。本発明の化合物(1つまたは複数)、特に、本発明の抗体は、多くの異なる担体に結合され得る。周知の担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、本発明の目的のために可溶性または非可溶性のいずれかであり得る。適切な標識および標識方法は上記に示し、さらに本明細書において以下に示す。本発明の前記化合物(1つまたは複数)を固定/固定化するための適当な方法は周知であり、限定されないが、イオン、疎水性、共有結合相互作用などが挙げられる。
【0141】
本発明の診断組成物はアミロイド-βなどのAPPおよび/またはAPP-プロセッシング産物の検出および/または定量のために、あるいは、病理学的および/または(遺伝的)修飾APP-切断サイドを検出および/または定量のために使用されることが特に好ましい。
【0142】
添付の実施例に示すように、本発明のグリコシル化抗体分子は、間接免疫蛍光によるアルツハイマー病患者の脳切片内の真性ヒトアミロイドプラークの検出における診断試薬として特に有用である。
【0143】
診断組成物に使用される本発明の前記化合物は、検出可能に標識されることが好ましい。さまざまな技術が生体分子の標識に利用可能であり、当業者に周知であり、本発明の範囲内とみなされる。当業者に公知の多くの異なる標識および標識方法がある。本発明に使用され得る標識の型の例としては、酵素、放射性同位体、コロイド金属、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物が挙げられる。
【0144】
一般に使用される標識は、とりわけ、蛍光色素(フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)、酵素 (ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、放射性同位体(32Pまたは125Iなど)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド金属、化学-または生物発光化合物(ジオキセタン、ルミノールもしくはアクリジニウムなど)を含む。酵素またはビオチニル基、ヨード化、リン酸化、ビオチン化などの共有結合などの標識手順は当該技術分野で周知である。
【0145】
検出方法は、限定されないが、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡検査、直接および間接酵素反応などを含む。一般に使用される検出アッセイは、ラジオアイソトープ法または非ラジオアイソトープ法を含む。これらは、とりわけ、ウエスタンブロッティング、オーバーレイ-アッセイ、RIA (ラジオイムノアッセイ)およびIRMA (免疫放射免疫測定アッセイ)、EIA (酵素イムノアッセイ)、ELISA (酵素結合イムノソルベント検定法)、FIA (蛍光イムノアッセイ)、ならびにCLIA (化学発光免疫アッセイ) を含む。
【0146】
さらに、本発明は、アミロイド形成および/またはアミロイド-プラーク形成と関連する疾患の予防、処置および/または診断のための医薬組成物または診断組成物の調製のための、本発明のグリコシル化抗体分子、または本発明の方法によって作製される抗体分子、または本明細書に提供されるモノおよび二重グリコシル化抗体の混合物の使用を提供する。本明細書に記載の化合物、特に、本発明の抗体分子は、修飾または異常なAPP-プロセッシングおよび/またはアミロイド形成と関連する神経系の病気の予防および/または処置に使用されることがさらに好ましい。例えば、IgGフレームワーク、特にIgG1フレームワーク内の抗体などの(操作された)免疫グロブリンの型の抗体分子、またはキメラ抗体(特に、完全ヒト化抗体または完全抗体)、二重特異性抗体、単鎖Fv(scFv)もしくは二重特異性scFvなどの型の抗体が、本明細書に提供される医薬組成物の調製に使用される。また、本明細書に提供される抗体分子および混合物は、本発明の抗体分子が特異的にAβ4および/またはアミロイド沈着物/プラークと相互作用し/これらを検出するため、添付の実施例に示すような診断状況においても有用である。
【0147】
したがって、本発明の化合物の本発明の使用は、例えば、β-アミロイドプラークの分解、アミロイド(プラーク)除去またはβ-アミロイドプラーク形成に対する受動免疫による改善が要求される神経障害のための医薬組成物の調製のための使用である。添付の実施例に示されるように、本発明の抗体分子は、Aβ凝集の予防および既に形成されたアミロイド凝集塊の解重合に特に有用である。したがって、本明細書に記載の本発明のグリコシル化抗体またはモノおよび二重グリコシル化抗体の混合物は、病原性アミロイド沈着物/プラークの減少、アミロイドプラーク/プラーク前駆体の除去ならびにニューロン保護に使用される。特に、本発明の抗体分子は、アミロイドプラークのインビボ予防ならびに既に存在するアミロイドプラーク/沈着物のインビボ除去に使用されることが構想される。さらに、本発明の抗体分子または混合物は、AβペプチドおよびAβの凝集塊、すなわちアミロイド-βプラークに対する受動免疫アプローチに使用され得る。Aβ4/Aβ4沈着物の除去は、とりわけ、Fc部分を含む本発明の抗体の医学的使用によって達成され得る。前記抗体のFc部分は、Fc-受容体媒介免疫応答、例えば、マクロファージ(食細胞および/または小グリア)および/またはヘルパー細胞の誘引に特に有用であり得る。Fc部分関連免疫応答の介在のため、本発明の抗体分子は、好ましくは(ヒト)IgG1フレームワークにおけるものである。本明細書において論じられるように、本発明の抗体分子または抗体混合物で処置される好ましい被験体はヒト被験体である。本発明の抗体分子のためのIgG2a-またはIgG2b-フレームワークなどの他のフレームワークもまた構想される。IgG2aおよび(und)IgG2b型の免疫グロブリンフレームワークが、マウスの状況、例えば、(ヒト)野生型または変異APP、APP-断片および/またはAβ4を発現するトランスジェニックマウスの試験において、例えば、本発明の抗体分子の科学的使用において特に構想される。
【0148】
アミロイド形成および/またはアミロイド-プラーク形成と関連する上記の疾患は、限定されないが、痴呆、アルツハイマー病、運動神経障害、パーキンソン病、ALS (筋萎縮性側索硬化症)、スクラピー、HIV関連痴呆ならびにクロイツフェルト‐ヤコブ病、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、ダウン症候群および老化関連神経障害を含む。本明細書に提供される本発明の抗体分子および組成物はまた、アミロイド形成および/またはアミロイドプラーク形成に関連する炎症過程の改善およびまたは予防に有用であり得る。
【0149】
したがって、本発明はまた、前記神経障害および/または神経変性障害を患う被験体および/または前記神経障害および/または神経変性障害に罹患し易い被験体に、本明細書に提供される抗Aβ抗体分子もしくは本発明のモノおよび/または二重-グリコシル化Aβ抗体の混合物および/または本明細書において上記規定の組成物の有効量を投与する工程を含む、神経障害および/または神経変性障害を処置、予防および/または遅延するための方法を提供する。本明細書に提供される処置は、本発明の化合物/組成物単独または同時療法処置の形態、すなわち、他の薬物もしくは医薬との組合せの投与を含み得る。本発明の特に好ましい態様において、対応する医学的介在を必要とする患者に、Aβに指向され、本明細書に提供されるモノおよび二重グリコシル化抗体を含む抗体混合物を投与する工程を含む、神経障害および/または神経変性障害を処置、予防および/または遅延するための方法が提供される。
【0150】
本明細書に使用される用語「処置」は、その必要がある患者への本明細書に記載のモノおよび/または二重グリコシル化抗体(もしくはその混合物)の投与が構想される。前記患者はヒト患者であり得、一態様において、病原性APPプロセッシングに関連する障害を患うか、または罹患しやすいヒトである。したがって、本明細書に使用される用語「処置」は、本明細書に提供される化合物または化合物の混合物の予防的ならびに治癒的投与を含む。
【0151】
本明細書に提供される化合物および組成物によって処置される障害は、アルツハイマー病である。おそらくアルツハイマー病であるという診断を有する患者は、この診断のNational Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke/Alzheimer’s Disease and Related Disorders Associationの基準(NINCDS/ADRDA基準) Mckhann et al.、1984に基づいた。
【0152】
また、本発明の状況において、「同時療法」状況における、例えば、アルツハイマー病などのAPP関連障害の場合での本明細書に提供される化合物および/または組成物の医学的使用が構想される。前記の場合において、メマンチン、ドネプレジン、リバスチグミンまたはガランタミンなどの認可された医薬を用いる同時療法が構想される。
【0153】
また別の態様において、本発明は、本明細書に規定される少なくとも1つのグリコシル化抗体分子、あるいは本明細書に提供される本発明のモノおよび/または二重グリコシル化方法の混合物を含むキットを提供する。有利にも、本発明のキットは、任意に、バッファー(1種または複数種)、保存溶液および/または残留試薬あるいは医学的、科学的もしくは診断アッセイの実施および目的に必要とされる材料をさらに含む。さらに、本発明のキットの部分はバイアルもしくはボトル内に個々に、または容器内に組合せて、または多容器ユニットにパッケージングされ得る。
【0154】
本発明のキットは、とりわけ、本発明の方法を行なうために有利に使用され得、本明細書に言及する種々の適用に、例えば、診断キット、研究手段または医学的手段として使用され得る。さらに、本発明のキットは、科学的、医学的および/または診断目的に適当な検出のための手段を含み得る。キットの製造は、好ましくは、当業者に公知の標準的な手順に従う。
【実施例】
【0155】
以下の非限定的な実施例は本発明を例示する。
【0156】
実施例1:クローニング技術による抗体Aの作製
本発明によって、IgG1分子は、一般的なクローニング技術により作製された。抗体Aは、そのコード配列およびその発現されるアミノ酸配列において、その重鎖の可変領域(VH)を特徴とする。DNA配列にコードされる重鎖(heavy)の対応する例は以下のとおりであり、
以下の免疫グロブリンH-鎖:
をコードする。
【0157】
同じ重鎖はまた、以下の配列
に示されるさらなる「リーダー配列」を含む配列にコードされ得る。
【0158】
対応するアミノ酸配列は、
であり得る。
【0159】
同様に、抗体Aの軽鎖は、以下のヌクレオチド配列:
にコードされ、以下のアミノ酸配列 (L-鎖):
をコードする。
【0160】
さらにまた、「リーダー配列」が使用され得、対応する配列は、
であり得る。
【0161】
この配列は、以下のアミノ酸配列
をコードする。
【0162】
上記のこれらの配列は、WO 03/070760に開示されたMAB31から公知である。
【0163】
しかしながら、例示された抗体A重鎖および軽鎖はまた、以下に示す:
a)重鎖
b)軽鎖
配列にコードされ得る。
【0164】
実施例1.1 ベクター構築
合成ファージディスプレイライブラリーであるMorphoSys HuCAL Libraryの一次スクリーニング後、第2回目の変異から生じた抗体Aの配列。抗体AのDNAは、最初にMorphoSys、GermanyのベクターpMorphに提供され、WO 03/070760の図2の付表p 6/43のFab発現ベクターに相当する。本発明の目的のためのベクター構築において、ベクターpEE6.1およびpEE 14.4 (ともに、Lonza Biologiesから市販)は、1つのベクターに両方の鎖を有する構築物が得られるようにコードされている。添付の図1参照; WO 87/04462またはWO 89/01036参照。以下のクローニングストラテジーを適用した。
【0165】
プライマーACGTAAGCTTGCCGCCACCATGGTGTTGCAG (センス、HindIII;配列番号29)およびプライマーACGTGAATTCCTAACACTCTCCCCTGTT (アンチセンス、EcoRI;配列番号30)を用いるPCRによって、Ig κ鎖をベクターMS-Roche #7.9.H7_Ig_κ鎖(WO 03/070760に記載) から単離し、pCR 2.1 Topo TA内に挿入し、挿入物を完全に配列決定した。HinDIII/EcoRI消化によってpCR Topo 2.1 からIg κ鎖挿入物を除去し、HindIII/EcoRI挿入物としてベクターpEE14.4内にライゲートした。
【0166】
プライマーACGTAAGCTTGCCGCCACCATGAAACACCTG (センス、HindIII;配列番号:31)およびプライマーACGTGAATTCTCATTTACCCGGAGACAG (アンチセンス、EcoRI;配列番号:32)を用いるPCRによって、Ig γ1重鎖をベクターpMorph MS-Roche #7.9.H7_IgG1からクローニングし、pCR 2.1 Topo TA内に挿入し、挿入物を完全に配列決定した。HindIII/EcoRI消化によってpCR Topo 2.1からIg γ1重鎖挿入物を除去し、HindIII/EcoRI挿入物としてベクターpEE 6.4内にライゲートした。Notl/SalI消化によってPEE 6.4 IgG1から重鎖発現カセットを除去し、単離された断片をSalI/Notl消化pEE14.4κ内に挿入し、最終の二重遺伝子構築物pEE 14.4 mAb-31がもたらされた。
【0167】
実施例1.2:CHO細胞のトランスフェクションおよび抗体Aの発現
標準的プロトコルに従いトランスフェクションを行なった。宿主細胞株CHO K1はLonza Biologics working cell bank (WCB) # 028-W2(Lonza, 2002, 1-179)由来であり、宿主細胞株CHO K1 SVは Lonza Biologics master cell bank (MCB) #269-M(Lonza, 2003, 1-87)由来であった。
【0168】
WCB # 028-W2由来の接着CHO K1細胞に、リポソームトランスフェクション(Fugene, Roche Diagnostics)により、重鎖およびκ軽鎖遺伝子の両方を含むベクターpEE 14.4 MAb31をトランスフェクトした。トランスフェクション単離物をDMEM、GS補充(共にJRH Biosciences)、10%透析FCS(PAA Laboratories, CoS#R0-CEP 2001-083-Rev 00)および50μMメチオニンスルフォキシミン(SigmaのMSX)中で選択した。2週間後、コロニーを選別して96ウェルプレートに移し、抗体産生についてELISAで試験した。抗体Aの最も高い発現を有する4つのコロニーを連続的限界希釈によりクローン化して単一細胞由来培養物を得、一週間後82クローンが派生し拡大培養した。
【0169】
これらのクローンのうちの1つを、接着状態で48pg/細胞/日の最高特異的産生速度を有するものとして選択した。さらに、限界希釈によりサブクローニングし、高い安定性で抗体Aを発現する良好な産生体を得た(Pu, (1998) Mol Biotechnol, 10, 17-25)。さらに、CHO K1細胞、MCB #269-M由来のCHO K1 SV細胞の異なる懸濁液にベクターpEE 14.4 MAb31を、エレクトロポレーションによりトランスフェクトした。トランスフェクト体を先述と同様に選択して得られたクローンを、限界希釈により単一細胞クローニングにかけ、抗体Aのいくつかの高い産生体クローンを得た。
【0170】
実施例1.3: 抗体Aを発現するクローンの懸濁培養への適合
CHO K1クローンの最大成長特性を、種々のタンパク質加水分解物を添加したDHI培地中で決定した:以下の改変:ダイズおよびコメ加水分解解物: 0.2%ダイズHyPep 1510および0.2%コメHyPep 5603(Kerry Bioscience)、0.03%Pluronic F68(Invitrogen)、25μM MSX(Sigma)および5%透析FCS(PAA Laboratories)を加えて、DMEM、Ham’s F12およびIMDMそれぞれ1:1:2(v:v:v)の割合の混合物である(Schlaeger and Schumpp, 1992, J Immunol Methods, 146, 111-20)、グルタミン無しDHI培地(Invitrogen)に細胞を、最終的に適合した。FCS濃度を、細胞が無血清DHI培地中で指数関数的に増加するまで徐々に減少した。無血清DHI培地中の一次シードバンクを数種類の組換え細胞クローン用に凍結した。
【0171】
CHO K1 SVクローンを、ツーステップ手順(Lonza)で、10%透析FCSを含有するDMEMから25μM MSX(Gibco-Invitrogen)を有する化学的に規定されたCD-CHO培地中の懸濁培養に適合させた。CD-CHOにおけるセルバンクを作製した。任意に、懸濁培養のためにおよび抗体を発現するための基盤として、CHO細胞用の任意の他の無血清培地および無タンパク質培地を使用した。
【0172】
実施例2: 抗体Aの産生
(流加発酵による)抗体Aの産生
振盪フラスコまたはスピナー培養のいずれかにおけるストック培養物からの発酵のためにCHOクローンを以下のように調製した:
個々のクローンの冷凍バイアルを、100ml振盪フラスコまたは50〜75mlの名目容積を有するスピナー中、25μM MSXを含有するそれぞれの培地中で溶かした。
【0173】
次いで、振盪フラスコまたはスピナーのいずれかで400〜500ml容積のストック培養物に達するように、細胞を1:5の連続的分割で拡大培養した。発酵物の接種に用いた細胞は、溶かした後90日までのストック培養物に由来した。シード手順は、2L振盪フラスコまたはスピナーにおける2x 1000mlの工程からなり、その後さらなる容器として10L発酵槽の接種を続ける。あるいは、10L発酵槽は、流加容器自体または100L流加発酵槽用の接種として機能し得た。10L発酵槽の接種まで選択培養培地中にMSXを存在させ、その後排除した。
【0174】
発酵プロセス:
0日目:3〜4x105/ml細胞で開始(シード培養物から1:4〜1:5スプリット)
2〜3日目:播種の開始、細胞密度は1.5x106/mlより高くすべきである。
播種:2%/日で連続またはボーラス(bolus)播種
抗体Aアイソフォームの組成は発酵を通してイオン交換クロマトグラフィーによりモニターされた(下記参照)。
【0175】
14〜18日目:細胞の生存が落ち始め(50%)および期待されたタイターに達した際に、遠心分離および/または濾過により細胞上清を回収し、濾過滅菌した。それを無菌的に保存し、さらに次のセクションに記載されるように処理した。
【0176】
標準的プロトコルに従って発酵を実施した、例えばWerner, (1993), Arzneimittelforschung, 43, 1242-9またはRendall, (2003). Proceedings of the 18th ESACT meeting, May 11-14, 2003, 1, 701-704)を参照のこと。
【0177】
実施例3: 抗体Aの精製
精製プロセスは3回のクロマトグラフィー工程および1回の透析濾過に基づく:プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび100kDメンブレンを使用した透析濾過。ゲルの種類およびカラムサイズは1l MabSelect(GE Healthcare, Art. 17-5199, カラム直径9cm、床長さ18+/-2cm)、0.4l CM-Toyopearl 650M(Toso Bioscience, Art. 007972, 小イオン容量=85マイクロ等価/ml、直径5.0cm、床長さ20+/-2cm)、1.3l Q-Sepharose FF(GE Healthcare, Art.17-0510-04)、直径9cm、床長さ20+/-2cmであった。カラムは室温で作動させた。画分を2〜8℃で保存した。検出は280nmであった。0.1 m2の面積を有するBiomax 100ウルトラフィルトレーションモジュール(Millipore Corp. Art. P2B100A01)を、濃縮および透析濾過に使用した。
【0178】
プロテインAクロマトグラフィー
純水を使用して以下の溶液を調製した:
溶液A(平衡化バッファ):25mM Tris、25mM NaCl、5mM EDTA、HClでpH 7.1+/0.1に調整した
溶液B(洗浄バッファ1):100mM酢酸をNaOHでpH 4.5+/-0.1に調整した
溶液C(溶出バッファ):100mM酢酸をNaOHでpH 3.2+/-0.1に調整した
溶液D(洗浄バッファ2):100mM酢酸、75mM NaCl、pH 3+/-0.1
溶液E(再生バッファ):2M塩酸グアニジン、100mM Tris、HClでpH7.5+/-0.1に調整した
溶液F(保存バッファ):200mMベンジルアルコール、100mM酢酸、水酸化ナトリウムでpH 5.0+/-0.1に調整した
【0179】
カラムをまず3床容量の溶液Aで平衡化した。
【0180】
その後、カラムに清浄した細胞培養上清を充填し(45 l, 386mg/l抗体)
5床容量の溶液Aで洗浄し、
3床容量の溶液Bで洗浄し、
3.5床容量の溶液Cで溶出して溶出物を回収し、
3カラム容量の溶液Dで洗浄し、
2カラム容量の溶液Eで再生し、
3床容量のバッファAで平衡化し、
保存のために床容量バッファFで洗浄した。
【0181】
全クロマトグラフィー工程には線形的流速100cm/hを用いた。
【0182】
カラム負荷は17.4g抗体/l Mabselectゲルであり、全アイソフォーム混合物の収率は96%であった。
【0183】
ウイルス不活性化
純水を用いて以下の溶液を調製した:
溶液G(調整溶液):2M酢酸ナトリウム
【0184】
プロテインA溶出物のpHを濃縮酢酸または2M酢酸ナトリウム(溶液G)の添加によりpH 3.5〜3.7に調整した。15分間攪拌し、その後(than)2M酢酸ナトリウム(溶液G)を添加してpH 4+/-0.1に調整した。
【0185】
陽イオン交換クロマトグラフィー
純水を用いて以下の溶液を調製した:
溶液H(平衡化バッファ):100mM酢酸、NaOHでpH 4.0+/-0.1に調整した
溶液I(溶出バッファ1):250mM酢酸ナトリウム、pHを調整せずにpH 7.8〜8.5
溶液J(溶出バッファ2):500mM酢酸ナトリウム、pHを調整せずにpH 7.8〜8.5
溶液K(再生溶液):0.5M水酸化ナトリウム
溶液L(保存バッファ):0.01M水酸化ナトリウム
【0186】
まずカラムを2床容量の溶液Kで再生して、次いで5床容量の溶液Hで平衡化した。
【0187】
次に、カラムにプロテインA溶出物のアリコートを充填して1床容量の溶液Hで洗浄した。
【0188】
6床容量の溶液Iでカラムを溶出した。この工程で二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームの混合物を溶出した。次の工程で、3床容量の溶液Jを用いて非グリコシル化アイソフォームを溶出した。
【0189】
使用後カラムを2床容量の溶液Kで再生し、このバッファ中で24時間保存し、次いで、2床容量の溶液Kで再度洗浄した。保存のためにカラムを3床容量の溶液Lで洗浄した。
【0190】
例示クロマトグラムを図3に示す。
【0191】
クロマトグラフィーの画分を下記の解析IEXで解析した。
【0192】
線形的流速100cm/hを、全てのクロマトグラフィー工程に使用した。
【0193】
カラム負荷は14.3g抗体/l CM-Toyopearl 650Mであり、二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームの混合物の収率は79%であり、非グリコシル化アイソフォームの収率は6.2%であった。
【0194】
Q-Sepharose FFを用いたフロースルークロマトグラフィー
純水中に以下の溶液を調製した:
溶液M(希釈バッファ):37,5mM Tris、酢酸でpH 7.9+/-0.1に調整した
溶液N(調整溶液):2M Tris
溶液O(平衡化バッファ):83mM酢酸ナトリウム、25mM Tris、pH 7.5+/-0.1
溶液P(再生バッファ1):0.5M NaOH/1M NaCl
溶液Q(再生バッファ2):0.2M酢酸/1M NaCl
溶液R(保存バッファ):0.01M NaOH
【0195】
まずCMTカラムからの溶出物(酸性)を、溶液Mで1:3に希釈し、次いで溶液NでpH 7.5に調整した。
【0196】
まずカラムを2床容量の溶液Oで平衡化して、次にCMTカラムの希釈した溶出物を、カラムに通して処理しフロースルーを回収した。280nmの吸光度が0.1未満になるまで溶液Oを有する溶液で生成物をカラムから洗い落とした(フロースルー回収)。
【0197】
1.5床容量の溶液Pでカラムを再生して1時間保存し、次いで別の1.5床容量の溶液Pで再生した。その後、2床容量の溶液Qでカラムを再生し3床容量の溶液Rで洗浄して保存した。
【0198】
線形的流速100cm/hを、全てのクロマトグラフィー工程に使用した。
【0199】
カラム負荷は3.5g抗体/l Q Sepharose FFであり、二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームの混合物の収率は91%であった。
【0200】
透析濾過
純水を使用して以下の溶液を調製した:
溶液S(透析濾過バッファ):20mMヒスチジン、HClでpH 5.5に調整した
【0201】
フィルターホルダーPellicon 2(Millipore Corp.)を、1ウルトラフィルトレーションモジュール型Biomax 100(Millipore Corp.、面積=0.1m2、Art.P2B100A01)に備えた。シリコンチューブを備えたWATSON-MARLOW 501 Uポンプをポンピングのために使用した。バッファOでシステムをすすぎ、次いで3.8リットル(1.1g抗体/l)のQSクロマトグラフィーのフロースルー(濃縮酢酸でpH 5.5に調整)を、4〜11℃の1時間以内で250〜300mlに濃縮した。次に、3リットルのバッファS(約10倍量)に対して透析濾過(V=一定)を行なった(4〜11℃)。最終的に生成物をMillipac 20フィルター(Millipore Corp.)を用いて濾過滅菌した。ウルトラフィルトレーション/透析濾過工程の収率は91%であった。生成物の濃度は15mg/mlであった。生成物を−70℃で凍結し得た。
【0202】
画分解析のための解析IEX法
カラム:Mono-S HR 5/5(GE Healthcare, Art. 17-0547-01)
バッファ1:50mMモルフォリノエタンスルホン酸、水酸化ナトリウムでpH 5.8に調整
バッファ2:50mMモルフォリノエタンスルホン酸、1M NaCl、水酸化ナトリウムでpH 5.8に調整
流速:1ml/分
検出:280nm
試料負荷:36〜72μ
勾配:時間 %バッファ2
0分 0
1 0
25 63
27 63
28 0
35 0
【0203】
例示的クロマトグラムを図2に示す
【0204】
【0205】
実施例4:SDS-PAGEによる抗体Aアイソフォームの特徴づけ
4〜12% NuPage勾配Bis-Trisゲル(Invitrogen)および対照としてマーカーMARK12(Invitrogen)と共に標準的プロトコルを用いてSDS-PAGE解析を行なった。発酵物(Prod 01, 02, 03)またはスピナー培養物(他全てのレーン)からの1〜3μgのプロテインA精製上清をウェルごとに流した。還元条件下での解析により、重鎖の分子量範囲中でピーク1について一本のバンド(二重グリコシル化抗体A)、ピーク2について二本のバンド(モノグリコシル化抗体A)およびピーク3について一本のバンド(非グリコシル化抗体A)が生じた。ピーク2の二本のバンドの分子量はピーク1およびピーク2それぞれの分子量に相当した。
【0206】
HEK 293 EBNA細胞における一過的トランスフェクション、CHO細胞における一過的トランスフェクション、およびCHO細胞における安定発現などの数種類の発現系を用いて同様の結果が得られた。
【0207】
実施例5:質量分光(MS)分析による抗体Aアイソフォームの特徴づけ
全抗体Aアイソフォームの完全抗体質量プロファイルをエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により決定した。
【0208】
このために、抗体Aの試料を非還元条件下で調製した。試料を、G25ゲル濾過により2%蟻酸および40%アセトニトリル中で脱塩し、WatersのQ-Tof2またはLCT-質量分析装置のESI-MS分析に使用した。
【0209】
分子質量による分離により非グリコシル化抗体Aとモノグリコシル化抗体A間に1623の違いがあることが得られた。アミノ酸配列からの非グリコシル化抗体Aについての予想質量は145,987Daであり、実験で測定した質量145,979Daと良く合致している。同様に、モノおよび二重グリコシル化抗体Aアイソフォームは、図4に示すように1624Da異なっている。分子質量に見られた違いは本明細書の以下により詳細に示すN-グリコシル化パターンと適合する。
【0210】
実施例6: 抗体AのAsn-52グリコシル化構造
Asn52は、重鎖可変部分の配列aaa-aaa-Asn-Ala-Ser-aaa-aaaの一部であり、N-グリコシル化コンセンサス配列Asn-aaa-Ser/Thrに相当する。Asn52のN-結合グリコシル化は、抗体AアイソフォームのトリプシンペプチドマッピングおよびAsn52を含むペプチドHC/T4質量分析評価により確認された。非グリコシル化抗体Aのトリプシンペプチドマップにおいて、質量で非グリコシル化HC/T4ペプチドに対応するペプチドが独占的に存在し、Asn52がグリコシル化されていないことを示すが、モノまたは二重グリコシル化抗体Aにおいてペプチドは質量でN-結合糖構造を含有するHC/T4に対応することが検出された。
【0211】
トリプシンによる重鎖のペプチドHC/T4におけるコンセンサス配列のグリコシル化をさらに確認するために、グリコシル化HC/T4ペプチドを、グリコシル化抗体Aアイソフォームのペプチドマップから単離して、N-グリコシダーゼFとのインキュベーションの前後でのMALDI-質量分析により解析した。N-グリコシダーゼF処理の前、N-結合糖構造を含むHC/T4ペプチドに対応する質量が得られた。しかし、N-グリコシダーゼF処理したHC/T4ペプチドの質量は、N-グリコシダーゼFによりアスパラギンから糖鎖が除去された場合(AsnからAspへの転換)に予想されるような非グリコシル化HC/T4に対して予想された質量+1Daに相当した。
【0212】
Asn52に結合する糖構造におけるN-アセチル-ノイラミン酸の存在は、N-結合複合体およびハイブリッド型糖構造の存在をさらに示す。このためにグリコシル化抗体AアイソフォームをN-グリコシダーゼFで処理することでノイラミニダーゼの有無でAsn52でなく、Asn306のN-糖が除去され、変性および還元および脱塩によるHCおよびLCの分離後に解析した。両アプローチからHCについて得られた質量は、1つまたは2つのシアル酸に対応する約291Daまたは582Da異なっていた。このことから、複合体および/またはハイブリッド型のN-結合糖はAsn52に結合していることも結論付けられた。
【0213】
このAsn-52グリコシル化、N-グリコシル化は、主に、核フコシル化を有さず、N-アセチル-ノイラミン酸を含むバイアンテナ複合型の80%までが高度にシアリダーゼ化(sialidated)されるバイアンテナ複合型の糖構造(≧75%;主に80〜90%)からなった。少数の糖構造はバイアンテナハイブリッドおよびオリゴマンノース型(≦25%)のそれぞれに属した(図5または図27)。全てのAsn52グリコシル化構造に共通するのは、N-グリコシダーゼによる完全な抗体Aからの切断に対する耐性であった。
【0214】
実施例7: 抗体AのAsn306グリコシル化構造
上記で指摘されるように、抗体Aは重鎖(HC)のFc部分のアスパラギン306(Asn306)に結合する、バイアンテナ複合型オリゴ糖鎖からなる抗体型グリコシル化を含んだ。抗体が、末端ガラクトシル化、シアリル化の程度および核フコシル化の程度において異なるかかるバイアンテナ複合型オリゴ糖鎖の異なるアイソフォームを含むことは周知である。また、核フコシル化の程度により抗体のエフェクター機能が調節されることが広く受け入れられるように、Fcに位置する糖鎖における核フコシル化を欠損する程度が抗体のインビボ効果に重要であることも知られている。
【0215】
抗体Aについて、Asn306に結合するFcに位置する糖鎖中の主要な抗体の典型的なバリエーション(Routier (1997), Glyoconjugate 14(2), 201-207; Raju (2003), BioProcess International, 44-52)は、末端ガラクトシル化および核フコシル化に関係することが見出された。
【0216】
末端ガラクトシル化(G0 : G1 : G2構造)の程度における不均一性は、約35〜40%G0-構造、約45%G1-構造および約15〜20%G2-構造であることが決定された(構造の模式的説明については図6または図27参照)。
【0217】
核フコシル化を欠損するFc糖構造の含有量、即ち核糖構造の最内部のN-アセチル-グルコサミンに結合するフコースユニットを欠損することは、おそらく抗体に重要であり、このフコースユニットの有無がエフェクター細胞のFcレセプターへの抗体の結合を調節し、これらの細胞の活性化に影響を及ぼし得る。
【0218】
抗体Aについて、Asn306における核フコシル化を欠損する糖鎖アイソフォームの相対含有量は、以下に記載される2つの異なる方法により測定された:
【0219】
A) 完全グリコシル化HCの質量分析:
抗体Aの試料を、6M塩酸グアニジンおよび250mM TCEPの存在下で軽鎖(LC)に変性、還元させ、HCをグリコシル化させた。還元した試料を2%蟻酸および40%アセトニトリル中で脱塩し、WatersのQ-Tof2またはLCT質量分析装置のESI-MS分析のために使用した。得られたm/zスペクトルから個々のオリゴ糖アイソフォームの相対含有量を、選択された単一m/z状態から個々のオリゴ糖アイソフォームを含むグリコシル化HCのピーク高さにより計算した。核フコシル化を欠損する糖構造の相対含有量の計算のために、核フコースを欠くG0構造(G0-Fuc)のピーク高さをG0+(G0-Fuc)の合計と関連付けた。
【0220】
オリゴ糖構造が対照実験におけるMS分析の前のN-グリコシダーゼFとのインキュベーションにより除去されたそれぞれの炭化水素構造を、グリコシル化HCについておよびHCについて得られた質量の差に従って整列させた。
【0221】
B) HPEAC-PADによる放出されたオリゴ糖のクロマトグラフィー解析:
抗体Aの試料を、Asn306からオリゴ糖鎖を放出させるために、pH 7.2のリン酸ナトリウムバッファ中のN-グリコシダーゼFとインキュベートした(Asn52の糖構造は、使用された条件下で完全な非変性抗体からは除去されない)。放出された糖鎖を、遠心分離濾過により抗体Aタンパク質から分離し、強アルカリpH(pH 13)の酢酸ナトリウム勾配を使用して、BioLCシステムのDionexのCarbo Pac PA200カラムで解析した。使用したカラムは、フコシル化オリゴ糖鎖から非フコシル化体を溶解することができた。それぞれの炭化水素構造に対して得られた個々のピークの割当は、Carbo Pac PA200カラムで解析された適切なオリゴ糖標準の1つに対する保持時間を比較すること、およびMALDI質量分析により分離され回収されたピークのモル質量を測定することのそれぞれによりなされた。核フコシル化を欠損する糖構造の相対含有量の計算のために、核フコースを欠損する全構造中の面積%の合計を作った。
【0222】
数種類のバッチ(二重およびモノグリコシル化抗体Aアイソフォームの組合せ)および精製された抗体Aアイソフォームのそれぞれの解析により、オリゴ糖鎖と結合した非フコシル化Asn306の含有量は約14%〜27%(MSにより測定)および6%〜26%(HPAEC−PADにより測定)のそれぞれの範囲にあることが明らかとなった。
【0223】
実施例8:表面プラズモン共鳴(SPR)によるインビトロでの抗体A組成物ならびにAβ1-40およびAβ1-42繊維に結合するアイソフォーム(例えば本発明の非、モノ、二重グリコシル化抗体)についてのKD値の測定
抗体Aの原繊維Aβへの結合は、オンラインで、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定され、分子相互作用の親和性は以下のように測定された:これらの測定にはBiocore2000およびBiocore3000装置が使用された。Aβ1-40およびAβ1-42繊維は、インビトロで、10mM酢酸Naバッファ(pH 4.0)中200μg/mlの濃度の合成ペプチドを3日間37℃でインキュベーションすることで生成された。電子顕微鏡分析により両ペプチドについて原繊維構造が確認され、Aβ1-40は主に短く(<1ミクロン)、Aβ1-42は主に長い(>1ミクロン)繊維を示した。これらの繊維は、不定形の凝集物および構造をとらない沈殿物の不明確な混合物よりもさらに密接してヒトAD脳中で凝集したAβペプチドを提示すると推定された。該繊維を1:10に希釈し、製造業者の指示マニュアル(BIAapplication Handbook, version AB, Biacore AB, Uppsala, 1998)に記載されるようにCM5に対して直接カップリングさせた。
【0224】
このカップリング手順は、表面をN-ヒドロキシスクシニミドおよび塩酸1-エチル-1-(3-ジアミノプロピル)-カルボジイミドの水性混合物と接触させることにより、表面のカルボン酸基が化学的に反応性のスクシニミドエステル基に移行される際の、活性化工程および、200〜350共鳴ユニット(1共鳴ユニット(RU)はおよそ1ピコグラム/mm2の表面負荷に相当する)の10mM酢酸バッファ(pH4.5)に溶解させた繊維と活性化表面を接触させる際の、固定化工程を含んだ。次いで、該繊維負荷表面を、200nM≧C≧0.15nMの濃度範囲の抗体溶液と接触させた。会合相(バッファと接触している間)および解離相(バッファと接触した後)の間にモニターされた典型的な時間依存性応答曲線(=センサグラム(sensogram))を図7に示す。
【0225】
抗体AアイソフォームのAβ1-40およびAβ1-42繊維への結合に対するKD値を以下の表に示す。簡潔に、KD値は濃度依存平衡結合応答を用いたスキャッチャード型解析により計算した。これらの平衡結合定数は2種類の方法で得られた。
【0226】
低抗体濃度における非常に遅い会合プロセスのために、平衡に達する接触間隔は非常に長かった(図7)。にもかかわらず、かかる接触間隔はBiacore装置で実現され得、実験平衡応答はスキャッチャード解析に供され得た。
【0227】
平衡結合データもまた、短い時間に依存する会合曲線を無限大に外挿することで得られた。次いで、これらの理論的に得られた平衡結合レベルは、KD値の測定のために再度使用された。
【0228】
平衡センサー応答を測定する方法とは独立して、曲線スキャッチャードプロットを得た。曲線スキャッチャードプロットから、高い(二価)および低い(一価)親和性相互作用が、二次親和性成熟サイクル由来の抗体Aアイソフォームについて導き出された。これら2つの親和性は、以下の表に示される範囲の下限および上限KD値を示す:
【0229】
【0230】
上記の表は、表面プラズモン共鳴によって測定されるように、抗体AアイソフォームとAβ1-40繊維の相互作用によって形成される、低い親和性複合体(一価)および高い親和性複合体(二価)のKD値を示す。外挿された平衡応答(「外挿」と記される)を用いて測定されるKD、および実験的に測定された平衡応答(「実験的」と示す)を用いて測定されるKD値が提供される。外挿値は少なくとも6回で測定され、標準偏差が提供される。実験的および外挿平衡センサー応答を基にしたKDはこれらの標準偏差によって与えられた範囲内で等しい。
【0231】
実施例9:デカペプチドを用いたペプスポット分析による抗体A組成物およびアイソフォーム(例えば本発明の非、モノまたは二重グリコシル化抗体)のエピトープマッピング
エピトープ(抗原決定基)は線形または立体的であり得る。本明細書に記載される二重エピトープ特異性は、抗体と2つの非連続的線形的ペプチドとの反応性により規定された。
【0232】
特異的なエピトープ認識の規定に使用されたエピトープマッピングアプローチは、マイクロプレート上にコートされたヘキサペプチドコンジュゲートによるELISA技術またはペプスポット技術に基づく。後者の技術により、タンパク質のPVDF膜へのウェスタンブロットについて一般公知のプロトコルによる抗体の検出および定量が可能になる。
【0233】
適用されたエピトープマッピング技術は線形的エピトープを特異的に検出するように設計されるが、不連続または立体構造的エピトープのような、より空間的に複雑なエピトープのマッピングには適用できない。ドメインスキャンおよびコンビナトリアルペプチドアレイのような立体構造的または不連続的エピトープマッピングに利用可能な技術は、36アミノ酸(ドメイン)までの長いペプチドまたはそれぞれが12アミノ酸からなる組み合わされたペプチドを要する。
【0234】
従って、適用される技術は、不連続的または不連続的に分散したエピトープのいずれかの立体構造的エピトープが含まれることを除いて、線形的エピトープに対して特異的であると考えられる。
【0235】
まとめると、示されたデータは、本明細書中に規定されたAβペプチド中の2つの領域は、単一の6量体または10量体Aβペプチドに対して調べた抗体の独特な二重エピトープの特異性に基づいて同時に認識した独立した線形エピトープに類似することを示す。
【0236】
以下のAβ(1-42)を包含するアミノ酸配列を、1アミノ酸のフレームシフトを有する43の重複するデカペプチドに分割した。この数字は、抗体の最適な結合のためにデカペプチド中に存在しなくてはならないAβ1-40配列由来の必須アミノ酸のことをいう。
【0237】
ISEVKM1DAEF RHDSGYEVHH QKLVFFAEDV GSNKGAIIGL MVGGVVI42ATV IV(配列番号:4)。従って、DAEF RHDSGYEVHH QKLVFFAEDV GSNKGAIIGL MVGGVVIA(配列番号:3)はAβ4/β-A4ペプチドのアミノ酸1〜42を表す。
【0238】
43のデカペプチドを、N末端アセチル化および市販の供給者(Jerini BioTools, Berlin)によるセルロースシートへのC末端共有結合(「ペプスポット」)により合成した。セルロースシートを、ロッキングプラットフォーム上で、ブロッキングバッファ(50mM Tris.HCl、140mM NaCl、5mM NaEDTA、0.05%NP40(Fluka)、0.25%ゼラチン(Sigma)、1%ウシ血清アルブミン第V因子(Sigma)、pH 7.4)中のモノクローナル抗体(1μg/ml)で2時間インキュベートした。シートをロッキングプラットフォーム上で、TBS(10mM Tris.HCl、150mM NaCl、pH 7.5)で3分間、3回洗浄した。次いで、フィルターペーパー上に押し付け、カソードバッファ(25mM Tris塩基、40mM 6-アミノヘキサン酸、0.01%SDS、20%メタノール)で湿らせ、ペプチド面を同じ大きさのPVDF膜(Biorad)に対面するように、セミドライブロッティングスタックに転写した。
【0239】
セミドライブロッティングスタックは、ペプチドシートよりもわずかに大きい新しく湿らせたフィルターペーパー(Whatman No.3):
カソードバッファで湿らせた3枚のペーパー
ペプチドシート
メタノールで湿らせたPVDF膜のシート
アノードバッファ1(30mM Tris塩基、20%メタノール)で湿らせた3枚のペーパー
アノードバッファ2(0.3mM Tris塩基、20%メタノール)で湿らせた3枚のペーパー
で構成された。
【0240】
0.8mA/cm2のカソードとアノード間の電流密度で、セルロースシートから抗体が完全に溶出し、PVDF膜に転写されるのに十分なように、転写を1時間行なった。PVDF膜をブロッキングバッファに10分間浸漬した。フルオロクロームIRdye800(Rocklandコード番号609-132-123)で標識したヤギ抗ヒトIgG(H+L)を、Odysseyブロッキングバッファ(Li-Cor)中に1:10,000に希釈して添加し、さらにPBS、0.05%Tween20で1:1に希釈した。膜をロッキングプラットフォーム上で1時間インキュベートした。これをTBST(0.005%Tween20添加TBS)で3x10分間洗浄した。図8に示すように、膜を乾燥させ、長波長蛍光スキャナー(Odyssey)を用いて、800nm蛍光でスキャンした。
【0241】
抗体反応スポットの正確な割当を、PVDF膜を針で穿刺してマーキングすることで達成した。問題の抗体のエピトープは反応性ペプチド中の最小アミノ酸配列として規定した。各スポット上の蛍光強度を統合して相対蛍光単位(RFU)として記録した。比較のために、2つのマウスモノクローナル抗体(N-末端ドメインに対する特異性を有する抗体6E10(Kim (1998).,)と同等であるBAP-1、および中間ドメインに対する特異性を有する抗体4G8 (Kim (1998),)と同等であるBAP-44)を、検出のための抗ヒトIgの代わりに抗マウスIgを用いる以外は同じ方法で解析した。
【0242】
通常、親和性成熟度および一価のFabフラグメントの完全長IgG1抗体への転換により、ペプスポットおよびELISA解析で示される場合のエピトープ認識配列の何らかの広がりが生じることを示しておく。これは、親和性成熟の結果として抗体抗原相互作用領域におけるより多くの接点の介入、または最小エピトープへのより強い結合に関連し得、隣接するアミノ酸との弱い相互作用も検出され得る。後者は、Aβ由来ペプチドが全長IgG抗体でプローブされる場合であり得る。以下の表に示すように、N末端および中間エピトープの認識配列は、親(parent)Fabと対応する完全に成熟したIgG抗体を比較した場合、3アミノ酸まで伸長された。しかしながら、デカペプチドはC末端アミノ酸で共有結合のために修飾され、そのためにこのアミノ酸は立体障害のために完全長抗体に容易には接近し得ないことを留意しなければならない。これがあてはまる場合、最後のC末端アミノ酸がエピトープ認識配列に有意に寄与せず、C末端における1アミノ酸による最小認識配列の潜在的な減少が、本発明において使用される、ペプスポット解析で考慮されなければならない。
【0243】
【0244】
上記の表は、完全長IgG抗体の、セルロースシート上のデカペプチドへの結合のペプスポット解析に関する。数字は、抗体の結合のためのデカペプチド中に存在しなければならないAβ1-40配列のアミノ酸位置を表す。最大限の結合を達成するために必要なフランキングアミノ酸を示すために、エピトープに対するさらなる伸長が()内に示される。
【0245】
実施例10:凝集したAβからビオチン化Aβの放出を誘導する抗体Aアイソフォーム(例えば、本発明の非-、モノ-、または二重-グリコシル化抗体)を使用した脱重合アッセイ
抗体Aアイソフォームの凝集Aβの解離を誘導する能力を試験するための実験設定は以下の通りとした。
【0246】
抗体Aアイソフォーム処理前に、ビオチン化Aβ1-40をまず、前形態Aβ1-40/Aβ1-42繊維に組み込んだ。下記のようなストレプトアビジン-PODコンジュゲートを採用するアッセイを用いて、ビオチン化Aβの遊離を測定した。
【0247】
水性バッファ中で数日間インキュベートした際、合成Aβは自発的に凝集して、アルツハイマー病患者の脳におけるアミロイド沈着に見られるものと同様の線維性の構造を形成する。抗Aβ抗体および、アルブミンなどの他のAβ結合タンパク質のAβ中和能力を解析するために、以下のインビトロアッセイがビオチン化Aβの前形成Aβ凝集物への取り込みまたは遊離の測定に適している(Bohrmann (1999) J. Biol. Chem. 274, 15990-15995)。取り込まれたビオチン化Aβ1-40の放出により測定した際に、抗体Aアイソフォームは凝集Aβの脱重合を誘導した。
【0248】
実験手順:
NUNC Maxisorbマイクロタイタープレート(MTP)を、37℃で3日間、Aβ1-40およびAβ1-42の1:1混合物(各2μM、100μl/ウェル)でコーティングした。これらの条件下で、高度に凝集した線維性Aβは吸着され、ウェルの表面に固定化された。次いで、コーティング溶液を除去してプレートを室温で2〜4時間で乾燥した。乾燥させたプレートを−20℃に保存した。ビオチン化Aβの取り込みのために、コートされたプレートを、0.05%NaN3含有TBS中200μl/ウェル 20nMビオチン化Aβ1-40で、37℃で一晩インキュベートした。プレートを3x300μl/ウェルT-PBSで洗浄後、0.05%NaN3含有TBS中に連続希釈した抗体を添加して37℃で3時間インキュベートした。プレートを洗浄して、ビオチン化Aβ1-40の存在について解析した。300μl T-PBSで3回洗浄後、1%BSA含有T-PBS中に1:1000希釈したストレプトアビジン-PODコンジュゲート(Roche Molecular Biochemicals)を添加して(100μl/ウェル)、室温で2時間インキュベートした。ウェルをT-PBSで3回洗浄し、100μl/ウェルの新しく調製したテトラメチルベンジジン(TMB)溶液を添加した。[TMB溶液の調製:10ml、30mMクエン酸pH 4.1(KOHで調整)+0.5ml TMB(1mlアセトン+9mlメタノール中12mg TMB)+0.01ml 35%H2O2]。100μl/ウェルの1N H2SO4を添加して反応を停止して、マイクロタイタープレートリーダー中450nmの吸光度を読んだ。
【0249】
添付の図9に示すように、取り込まれたビオチン化Aβ1-40の放出により測定した際に、抗体Aアイソフォームは凝集Aβの解離を誘導した。抗体Aアイソフォームおよびマウスモノクローナル抗体BAP-1は同様に活性であったが(図9)、BAP-2、BAP-17および4G8抗体は固定化Aβのバルク由来の遊離ビオチン化Aβにおいて明らかに効果が低かった(データ示さず)。細胞表面完全長APPとの反応性により、BAP-1はグリコシル化抗体Aアイソフォームとは明らかに異なっていた。かかる特性を有するBAP-1のような抗体は、潜在的な自己免疫反応が誘導され得るので、治療応用には有用ではない。BAP-2は、凝集Aβ中で曝露されたそのアミノ酸残基4〜6の特異性にもかかわらず、このアッセイにおいて明らかに低い活性を有し、全てのN末端特異的抗体が、論理的に前形成凝集物からのAβの放出において同等に効果的ではないことを示していることを示すのは興味深い。このアッセイにおけるBAP-17(C末端特異的)および4G8(アミノ酸残基16〜24特異的)の比較的低い効果は、凝集Aβにおけるこれら2つのエピトープの潜在的性質のためであった。ここで使用した濃度のBSAは凝集Aβに効果を示さなかった。
【0250】
インビボにおいても関連性があり得るモノグリコシル化アイソフォームは、二重グリコシル化アイソフォームと比較して、インビトロにおいて凝集Aβペプチドを脱重合するより高い能力を示した。
【0251】
実施例11:抗体A組成物およびアイソフォーム(本発明のモノおよび二重グリコシル化抗体)を含む抗体Aは、ヒト脳脊髄液(CSF)から可溶性Aβを捕捉する
ヒトCSF試料から可溶性Aβを捕捉する能力を免疫沈降(IP)および半定量的ウェスタンブロット(WB)解析により測定した。実験手順:
【0252】
ヒトCSF試料の免疫沈降は以下の計画に従い行なった:
70μl ヒトCSF
20μl インキュベーションバッファ(50mM Tris、140mM NaCl、5mM EDTA、0.05%NP-40、1%BSA、0.25%ゼラチン、0.25%粉乳、pH 7.2
10μl ストック溶液由来の抗体Aアイソフォーム(1000〜10μg/ml)
100μl
【0253】
溶液を4℃で1時間保持した。40μlのプロテインGセファロースビーズ(Amersham Biosciences #17-0618-01;PBSで洗浄、50%スラリー)を添加して4℃で2時間ローター上でインキュベートした。500g、4℃で3分間の遠心分離後、上清を除去してビーズに200μlのPBSを添加し、Milliporeフィルターチューブ0.45μm(Millipore #UFC3OHVNB)に移し、500g、4℃で3分間遠心分離した。さらなる200μlのPBSをビーズに添加し、ボルテックスにかけ2000g、4℃で3分間、遠心分離した。45μlの試料バッファDTT含有1xNuPageを添加して70℃で10分間保持し、次いで2000g、4℃で、3分間遠心分離した。
【0254】
SDS-PAGEのために、18μlのプロテインG溶出物を標準として試料バッファ中のNuPageゲル10%Bis-Trisゲルに内部標準としてAβ1-42(Bachem)と共に直接充填し、MESバッファ系で作動させた。
【0255】
ゲルをHybond Cエクストラメンブレン(semi-dry system Novex)に移して、室温で3'膜を乾燥させた。膜を予備加熱したPBSに移し、電子レンジ中600Wで3分間加熱した。SuperBlock Solution(Pierce)で1時間ブロッキングを行ない、T-PBS(PBS中0.1%Tween20)中5%粉乳(Bio Rad)でさらに1時間ブロッキングした。
【0256】
抗Aβ抗体W02抗体(1:1500〜1:2000、The Genetics, Inc. Zurich, Switzerland)で、ローター上で4℃で一晩かけてインキュベーションを行ない、次いでT-PBSで5分間3回洗浄し、T-PBS中の抗マウスIgG-HRP(Dako)1:5000でRTで2時間インキュベートした。さらにT-PBSで5分間3回洗浄し、次いで、LumiLight PlusでRTで5分間インキュベートした。ウェスタンブロットをデジタル化し、Alpha Innotech Digital Camera Systemを有するデンソメトリー(densometry)により解析した。
【0257】
図10に示すように、免疫沈降およびウェスタンブロッティング実験により示されるように、抗体A組成物(モノおよび二重グリコシル化抗体Aアイソフォームを含む)は、ヒトCSF中の可溶性Aβに効率的に結合した。注意すべきことに、このアッセイにおいて、モノグリコシル化抗体Aは、二重グリコシル化抗体Aよりも効率的に可溶性Aβを捕捉した(図10)。
【0258】
実施例12:インビトロにおける抗体A組成物およびアイソフォーム(例えば、本発明の非、モノまたは二重グリコシル化抗体)によるヒトアミロイドプラークの免疫染色
間接的免疫蛍光法を用いた免疫組織化学分析により、重度のアルツハイマー病患者の脳切片から得られた真性のヒトβアミロイドプラークを染色する能力について、グリコシル化抗体Aアイソフォームを試験した。真性のヒトβアミロイドプラークの特異的で感受性がある染色を示した。
【0259】
アルツハイマー病であると陽性に診断された患者の死体から得た側頭皮質の、非固定組織のクリオスタット切片を、間接的免疫蛍光により標識した。連続的2工程インキュベーションを用いて、Cy3(# 109-165-003, lot 49353, Jackson Immuno Research)をコンジュゲートしたアフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)により明らかとなった、結合した抗体Aアイソフォームを検出した。対照には、どれもネガティブな結果を生じる関連のないヒトIgG1抗体(Sigma)および二次抗体のみを含んだ。
【0260】
全ての種類のβアミロイドプラークは感度良く、特異的に検出され、一貫して10ng/mlの濃度の抗体Aで明らかにされた(図11)。
【0261】
真性ヒトアミロイドβプラークの特異的および感受性染色は、1μg/mlまでの濃度のグリコシル化抗体Aアイソフォームを示している。
【0262】
10μg/mlの濃度で、バックグラウンド染色が見られ、非グリコシル化抗体Aアイソフォームで最も顕著であった。非グリコシル化アイソフォームでは、スライドガラス表面およびインビトロにおける切片プロセス後に曝露されたほとんど全ての組織成分に観察されるかなり非特異的なべたつきが現れた。これはイオン性および/または疎水性相互作用を含む非特異的な結合のために見られた。
【0263】
実施例13:アルツハイマー病のマウスモデルにおける抗体 Aによるインビボβアミロイドプラーク修飾
グリコシル化抗体Aアイソフォームを、インビボでβアミロイドプラークを免疫修飾する能力についてPS2APPダブルトランスジェニックマウス(Richards (2003), J. Neuroscience, 23, 8989-9003)の1回投与試験で試験した。グリコシル化抗体Aアイソフォームを投与し、即ち1mg/マウスの投与を行ない、3日後動物をリン酸緩衝化生理食塩水で灌流し、ドライアイスで脳を凍らせて、凍結切片を調製した。
【0264】
インビボにおいて、両方のグリコシル化アイソフォームが、改善され、かつ高度に効率的な脳の浸透を示した(非グリコシル化形態と比較して)。効果的な脳の浸透およびアミロイドβプラークに対する特異的な結合がAD関連アミロイド症のマウスモデルであるPS2APPマウスで示された。
【0265】
βアミロイドプラークに結合する抗体の存在は、未固定クリオスタット切片を用いて、図12に示すヤギ抗ヒトIgG(H+L)コンジュゲートCy3(#109-165-003, Jackson Immuno Research)による単一標識間接免疫蛍光またはその後BAP-2-Alexa488免疫コンジュゲートでの対比染色のいずれかで評価し、組織に存在する全てのβアミロイドプラークの位置および分布を視覚化した。
【0266】
免疫蛍光染色アプローチを用いて結合した抗体Aを検出した。予備冷却したスライドガラスに固定させた後、切片をPBSで水和し、−20℃に予備冷却した100%アセトンで2分間処理した。PBSで2分間、2回洗浄した。1%BSA含有PBSにより、またはUltra V block(LabVision)で5分間のインキュベーション後にPBS洗浄および10%標準ヒツジ血清を有するパワーブロック溶液(BioGenex)中で20分間の連続インキュベーションのいずれかで非特異的結合部位をブロッキングした。10%標準ヒツジ血清含有PBSでの洗浄後、スライドを、15μg/mlの濃度のアフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)コンジュゲートCy3(# 109-165-003, lot 49353, Jackson Immuno Research)で、室温、1時間インキュベートした。BAP-2、Abに対するAlexa488をコンジュゲートしたマウスモノクローナル抗体を0.5μg/ml濃度で用いて、室温、1時間でのインキュベーションによりアミロイドプラークについて対比染色を行った。リポフスチンの自己蛍光を50mM酢酸アンモニウム中の4mM CuSO4でインキュベートすることでクエンチングした。スライドを再蒸留(bidistilled)水ですすいだ後2 x 500μl/スライドのPBSで洗浄して、スライドを蛍光マウンティングメディウム(S3023 Dako)で封入した。
【0267】
共焦点レーザー顕微鏡で画像化し、IMARISおよびCOLOCALIZATIONソフトウェア(Bitplane, Switzerland)により、共局在の定量的解析のために画像処理をした。
【0268】
マウス当り1mgの一回投与後、グリコシル化抗体Aアイソフォームは血液脳関門を通過して浸透し、インビボにおいて、3日後、全てのβアミロイドプラークに効果的な免疫修飾/結合することが見られた。代表的な画像を図12に示す。これはアミロイドプラークを検出できない非グリコシル化形態についての明確な対比である。
【0269】
実施例14: 抗体AアイソフォームのHEK293細胞の表面で発現されるアミロイド前駆体タンパク質(APP)への結合の調査:
フローサイトメトリーの方法は、当該技術分野で周知である。フローサイトメトリーで測定される蛍光の相対ユニット(例えば、FL1-H)は、それぞれの抗体の細胞表面への結合を示した。トランスフェクトされていないHEK293細胞と比較してAPPをトランスフェクトされたHEK293の蛍光シフトは、細胞表面APPとの好ましくない反応を示した。例示として、N末端ドメインに対する抗体BAP-1およびBAP-2は、トランスフェクトされていないHEK293細胞(図13、点線、右パネル)と比較して、HEK293/APP(図13、太線、右パネル)のFL-1シグナルの有意なシフトを示した。同様に、BAP-44抗体(中間Aβエピトープに特異的)は、同様のサイズシフトを示した。対照的に、全ての抗体Aアイソフォーム(図13左パネル)(N末端および中間Aβエピトープに特異的)は、蛍光の有意なシフトを示さなかった。トランスフェクトされていないHEK293細胞は、異なる細胞の大きさおよび表面特性のために、APPトランスフェクト細胞よりも高い基底蛍光を有した。FACScan装置は、Cellquest Proソフトウェアパッケージ(共にBecton Dickinson)と組み合わせて使用した。
【0270】
抗体Aアイソフォームは細胞表面APPに対して反応性を全く欠いていた(図13)。
【0271】
実施例15:アルツハイマー病マウスモデルにおけるAβプラーク沈着の形態測定解析
インビボにおける抗体A組成物または抗体Aアイソフォームのアミロイド症を低減する能力を、抗体A組成物または抗体Aアイソフォームで5ヶ月間処理されたPS2APPマウスの脳の定量的コンピューター補助画像解析を用いて、種々の脳領域(視床、新皮質、海馬および鉤状回)で試験した。
【0272】
そのために、PS2APPトランスジェニック雄マウスに抗体A組成物または抗体Aアイソフォームおよびビヒクルをi.v.注射した。75匹の5〜6月齢PS2APPマウスを、15匹ずつからなる5つのグループ(A〜E)に分けた。0日目に開始し、尾の静脈を介したボーラスi.v.注射により、それぞれのマウスに0.1mLのビヒクル(0mg/kg)、または抗体 A調製物(20mg/kg)を与えた。グループA、B、C、DおよびEのPS2APPマウスにビヒクル(ヒスチジン緩衝化生理食塩水)、上記のようなモノグリコシル化抗体Aおよび二重グリコシル化抗体Aを含み非グリコシル化抗体Aを完全に欠いた抗体A組成物、二重グリコシル化抗体A、モノグリコシル化抗体Aおよび非グリコシル化抗体Aそれぞれを与えた。
【0273】
抗CD-4抗体(ATCCから市販されるハイブリドーマクローンGK 1.5)を注射して、投与されたヒト抗Aβ抗体に対する免疫寛容を誘導した。抗薬物抗体のモニタリングにより、抗体処理された動物のみが処理の16週より以降に中位の免疫応答を発生したこと、および検出可能抗体は低親和性であるかまたは少量でのみ産生される(データ示さず)ことが示された。
【0274】
処理5ヶ月後にマウスを屠殺した。視床、海馬形成および皮質領域を含む未固定の脳を矢状面方向に切片化した。以下のように各脳半球から50枚の切片を作製した:側面レベル(lateral level)約1.92で開始し、5つの連続的シリーズの5x 10μmおよび5x20μmの切片を得た。連続切片の間に隙間はなく、全体で750μmの組織使用量を生じた。そのため、連続切片シリーズはおよそ側面レベル1.20で終了する(PaxinosおよびFranklin, 2003)。定量的形態計測解析のために10枚目毎の切片を使用した。
【0275】
アミロイド沈着について切片を、5μg/mlの濃度の二重グリコシル化抗体Aアイソフォームで染色した。マウスモノクローナル抗体(BAP-2)コンジュゲートAlexa-488フルオロフォアを5μg/mlで使用したAβに対する染色により、同等の結果が示されたが有意な細胞内染色および下記の画像処理作業を阻害するニューロンのバックグラウンド染色を伴った。検出のために、アフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)コンジュゲートCy3(# 109-165-003、lot 49353、Jackson Immuno Research)を15μg/mlの濃度で、室温、1時間で適用した。2x 500μl PBS/スライドでの洗浄後、スライドを蛍光マウンティングメディウム(S3023, Dako)で封入した。
【0276】
画像にはGenePix Personal 4100Aマイクロアレイスキャナー(Axon Instruments, 現在Molecular Devices, CA, USA)の使用を要した。アミロイドβプラークの負荷および数を、2つのパラメーター、つまりアミロイドβプラークで覆われた面積のパーセントおよびアミロイドβプラークの数を用いて、コンピューター補助画像化解析の手段による偏りのない形態計測法を使用して測定した。プラーク負荷およびプラーク数の定量には、MCID M7 Eliteソフトウェア(Imaging Research Inc., St. Catherines / Ontario, Canada)を用いて行なった。スキャンした画像を細部抽出フィルター、次いで標的アクセントフィルターにより強調した。次いで、得られた画像を二値化して、染色強度に従い閾値を調整した。人工的構造、血管およびエッジ効果を、オリジナル参照画像上で同定し、次いで二値化した画像から取り除いた。参照画像上で目的の領域の輪郭を形成した。最終定量のために、二値化した画像中でこれらの領域の面積およびプラークで占められた面積、ならびにプラーク数を測定した。シングルピクセルを無視した。一般的なスプレッドシートソフトウェア(Microsoft Excel, Redmond / WA, U.S.A.)で計算した。プラークの大きさを<100〜>1000μm2の範囲で11のグループに分けた。両側異分散t検定を用いて統計的評価を行なった。
【0277】
比較および統計的評価のために、未処理6月齢PS2APPマウスのコホート(15匹)で試験を開始して、アミロイド症(アミロイドβプラーク病理)の基準を測定した。有意水準(*:p≦0.05;**:p≦0.01;***:p≦0.001)を伴う結果を図15〜18に示す。
【0278】
視床領域においてアミロイドプラークの減少が最も顕著であった(図15)。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について64%、二重グリコシル化抗体Aについて70%、モノグリコシル化抗体Aについて81%および非グリコシル化抗体Aについて44%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について70%、二重グリコシル化抗体Aについて78%、モノグリコシル化抗体Aについて82%および非グリコシル化抗体Aについて36%であることがわかった。非グリコシル化抗体Aについての有意さは低く、観察されたバリエーションは多かったことを記す。
【0279】
脳梁と共に新皮質領域におけるアミロイドプラークの減少を図16に示す。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について19%、二重グリコシル化抗体Aについて27%、モノグリコシル化抗体Aについて30%および非グリコシル化抗体Aについて10%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について40%、二重グリコシル化抗体Aについて46%、モノグリコシル化抗体Aについて42%および非グリコシル化抗体Aについて11%であることが分かった。
【0280】
海馬領域全体におけるアミロイドプラーク減少を図17に示す。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について12%、二重グリコシル化抗体Aについて24%、モノグリコシル化抗体Aについて24%および非グリコシル化抗体Aについて6%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について36%、二重グリコシル化抗体Aについて46%、モノグリコシル化抗体Aについて37%および非グリコシル化抗体Aについて3%であることが分かった。
【0281】
アミロイド症について高い罹患性領域である鉤状回におけるアミロイドプラーク減少を図18に示す。全アミロイドβプラーク表面の平均減少を抗体処理グループについて測定した:抗体A組成物について2%、二重グリコシル化抗体Aについて12%、モノグリコシル化抗体Aについて5%および非グリコシル化抗体Aについて1%。全アミロイドβプラーク数の平均減少は、抗体A組成物について22%、二重グリコシル化抗体Aについて36%、モノグリコシル化抗体Aについて13%および非グリコシル化抗体Aについて1%であることが分かった。抗体A組成物および主要なN-グリコシル化アイソフォーム(二重グリコシル化抗体Aおよびモノグリコシル化抗体A)はアミロイドβプラーク負荷およびプラーク数を減少するような同等の有効性を示した。プラーク負荷の減少は、低または中位アミロイド症を伴う領域で最も顕著であり、統計学的に有意であった。
【0282】
全体的に、測定した全ての脳領域においてアミロイドβプラーク数の減少は抗体A組成物および抗体AのAsn52グリコシル化アイソフォームを含む両方の処理後に統計的に有意であることが分かった。それとは対照的に、視床においてはアミロイドβプラーク数に対する小さな効果のみが見られ他の調査された脳領域では、抗体Aの非グリコシル化アイソフォームでの処理後にアミロイドβプラーク数に対する有意な効果は見られず、本発明において詳述されるように精製後の抗体A組成物から除去される。
【0283】
発明者らはまた、プラークの大きさに関してプラーク除去の能力を調べた。一般的に、試験されたヒト抗Aβ抗体の有効性は、小アミロイドβプラークの除去について最も顕著であることが分かった。このことは全ての脳領域で観察された(図15C、16C、17Cおよび18C)。対照的に、非グリコシル化抗体Aアイソフォームについては最小限の傾向または非有意な傾向のみが観察された。
【0284】
抗体Aおよび主要なAsn52グリコシル化アイソフォームの比較解析により、プラーク負荷を低減する同等の能力が示されるが、非グリコシル化アイソフォームはプラーク低減に関して有意な効果を示さない。
【0285】
実施例16:インビボにおける抗体A組成物のアミロイドβプラークへの結合の薬理動態学
上記のようなモノグリコシル化抗体Aおよび二重グリコシル化抗体Aを含み、非グリコシル化抗体Aを完全に欠く、抗体A組成物の結合動態を調べるために、2種類の投与頻度を比較した。
【0286】
そのために、PS2APPトランスジェニック雄マウスに、尾の静脈を介して隔週毎の間隔で0.05、0.1および0.3mg/kgを4回または月毎の間隔で0.075、0.15および0.45mg/kgを3回のいずれかでの抗体A組成物を、i.v.注射した。比較のために、隔週間隔で0.1mg/kgを1度および2度投与し、1ヶ月間隔で0.15 mg/kgを2回投与した。投与の後、最後の投薬から2週間後全てのマウスを屠殺した。視床、海馬形成および皮質領域を含む未固定のPS2APPの脳組織を、PaxinosおよびFranklinに従って、側面約1.92 〜1.2mmで、矢状面方向の切片化のために調製した。クリオスタットを用いて40μmで脳を切片化した。
【0287】
結合した抗体A組成物抗体を検出するために、免疫蛍光エクスビボ免疫染色アプローチを使用した。そのため、脳を切片化して、検出抗体、アフィニティー精製ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(H+L)コンジュゲートCy3(# 109-165-003, lot 49353, Jackson Immuno Research)を15μg/mlの濃度で用いて、室温で、1時間インキュベートした。BAP-2、Aβに対するマウスモノクローナル抗体コンジュゲートAlexa488フルオロフォアを0.5μg/mlの濃度で、室温で、1時間インキュベートして、アミロイドβプラークについての対比染色を行なった。
【0288】
上述のように、Leica TCS SP2 AOBS共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、小脳に近い後頭部皮質の画像を記録した。IMARISソフトウェア(Bitplane, Switzerland)を用いてコンピューター補助画像処理を行なった。まず、線形的シグナル記録について異なるゲイン設定を要した2種類の最大投薬量0.3および0.45mg/kgを除いたより低い投与量について、ソフトウェアのトリミング機能を用いてプラークの画像を選択した。アミロイドβプラークの部位における結合GAH-Cy3についての読出しとして、SURPASS機能を用いて、閾値(T)処理後の陽性3D画素を選択した。低投薬群および高投薬群それぞれについて、閾値設定を19および12とした。アミロイドβプラーク特異性の対照として、GAH-Cy3染色の画像を、マウスモノクローナルBAP2コンジュゲートAlexa488によって二重標識した後の染色プラーク画像と比較し、異なるチャネルに記録した。
【0289】
全ての画像の定量的記載に対する説明的統計は、IMARIS MeasurementProソフトウェアモジュールを用いてなされた。平均3D画素蛍光強度(MVI)値は、低投薬群の選択されたアミロイドβプラークまたは高投薬群の画像からの全シグナルから決定された。基準MVI(B)は装置のノイズ、組織分散シグナルおよびリポフスチンの自家蛍光のためである。バックグラウンド補正のために、アミロイドβプラークとは別の領域での平均シグナル強度を測定してBを決定し、その後全ての測定された画像のMVIから引いた(MVI-B=S)。プラークの平均強度に類似するシグナル強度(S)値は、マウスおよび投薬群当りそれぞれ一枚の脳切片から3〜4枚の画像を得た。比較のために、シグナル強度を、以前の試験から得られた参照試料に対して標準化した。参照として、発明者らは0.25mg/kgの単一用量投与後のPS2APPマウスの脳切片を使用した。測定の終点は投薬の1週間後であった。
【0290】
全ての測定された強度の値を、投薬の1週間後に測定された、0.25mg/kgでの抗体A組成物の単一用量投与後に得られたアミロイドβプラークでの平均強度に対して標準化した(以下の表参照)。免疫陽性アミロイドβプラークの平均相対蛍光強度についての標準値は、免疫染色後のCLSMおよび投薬群当り3匹の動物から平均されたシグナル強度測定により得られた。検出可能な抗体A組成物由来の抗体Aを有さないプラークは、低投薬群のみで観察されたが、これは切片化処理の際に失われたプラーク表面における限定または部分的な抗体A組成物由来抗体Aの占有のためであると思われる。そのため、免疫陽性プラークのみが、比較解析に含まれた。
【0291】
PS2APPトランスジェニックマウスにおける抗体A組成物の複数回i.v.(ボーラス)投与後の投薬群当りの平均相対蛍光強度を以下の表に示す:
【0292】
図19は、0.1mg/kgでの連続的な隔週投薬の数に関する抗体A組成物の結合を示す。免疫染色の程度はかなり変動し、そのために有意さに達しなかったが2回適用後、平均強度は増加したように見えた。4回注射後、より均一にアミロイドβプラークを免疫染色したが、平均強度はわずかに増加しただけある。全体的に、隔週適用のデータは、適用の回数に関連するプラーク結合の増加の傾向を明らかに示す。
【0293】
図20は、0.15mg/kgでの連続的な月投薬の回数に関する抗体A組成物の結合を示す。興味深いことに、2回および3回の適用後に同等のレベルが得られる。これは必ずしも予測されることではなく、遅延型ミクログリア細胞の活性化のような、除去機構における時間依存的な差異に寄与する早期の効果の開始を示し得た。
【0294】
投与投薬に関する抗体A組成物の結合効率を図21および22に示す。0.05、0.1および0.3mg/kgでの隔週投薬(図21)および0.075、0.15および0.45mg/kgの月投薬(図22)は、投薬量の関係を明確に示した。応答が線形的でなく、ミクログリア細胞の時間的遅延型活性化のようなさらなる因子が観察された非線形性について寄与し得ることも明らかである。
【0295】
従って、マウスAβプラークに対する抗体A組成物結合は、複数回投薬が累積的であるという指標を伴って、用量依存的であると結論付けることができる。
【0296】
実施例17:抗原依存的な細胞の貪食作用の解析
抗体A組成物媒介性の貪食作用を測定するために、AD脳スライスからの真のAβプラークを、上記のようなモノグリコシル化抗体Aおよび二重グリコシル化抗体Aを含み、非グリコシル化抗体Aを完全に欠く異なる濃度の抗体A組成物とプレインキュベートし、生きたヒト一次単核細胞に曝露した。
【0297】
後頭部皮質領域由来の未固定ヒトAD脳組織切片を重度のAD症例(Braak段階IV)から調製した。生きた細胞を添加する前に切片をPBSで5分間再水和した。PBS中の規定濃度で1時間インキュベートして抗体A組成物抗体を適用した。PBSで洗浄後、生きた細胞を添加した。予備刺激したヒト一次単核細胞を、10,000U/mlペニシリンおよび10,000mg/mlストレプトマイシン(Gibco # 15140-122)を含有するストック溶液由来の1%抗生物質溶液を含むRPMI 1640(Gibco # 61870-044)メディウム中0.8および1.5 x 106/mlで使用し、5%二酸化炭素で2〜4日間37℃でインキュベートした。例えば、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)のような刺激因子の使用による予備刺激したヒト一次単核細胞の調製方法は当該技術分野に周知である。
【0298】
インキュベーション後、培養メディウムをゆっくりと除去して、PBS中2%ホルムアルデヒドを用いた10分間の化学的固定により切片を保存した。残余Aβプラーク負荷の染色を、10mg/mlの濃度のBAP-2、Aβに対するマウスモノクローナル抗体コンジュゲートAlexa488フルオロフォア(Molecular Probes: A-20181, モノクローナル抗体標識キット)と、室温で1時間のインキュベーションにより行なった。
【0299】
残余染色Aβプラークの免疫蛍光を測定することによりプラーク除去の定量を測定した。Leica TCS SP2 AOBS共焦点レーザー走査型顕微鏡で画像を記録した。3のピンホールセッティングのHCPL Fluotar 10x/0.30対物レンズを代わりに使用した一回の実験以外は、4 Airyのピンホールセッティングの、HCX PL FL 20x/0.40補正対物レンズを使用して、1つの光学層を488nmの励起波長で記録した。全ての画像についての装置設定を一定にすることで、関連する定量比較を可能にした。特に、レーザー出力、ゲインおよびオフセットを、ダイナミックレンジ内でのシグナル強度モニタリングを可能にするように調整した。それぞれの抗体A組成物濃度について、プラーク負荷の解剖的差異から生じる可能性のある変動を最小限にするために、灰白質領域を連続切片の同等の位置で記録した。抗体A組成物の潜在的な競合的結合および検出抗体BAP-2を、細胞非存在下の抗体A組成物濃度で全て測定した。関連のないヒトIgG1(Serotec, PHP010)抗体をさらなる対照として使用した。IMARISソフトウェア(Bitplane, Switzerland)を使用して画像解析を実行した。プラークに結合したBAP-2の標的を示すBAP-2陽性ピクセルの同等表面(isosurface)を強度閾値化によって作製した。表面積および全蛍光強度値を、SurpassProソフトウェアモジュールの「iso表面機能(iso surface function)」を使用して計算した。データを、一枚の脳切片中の5つの灰白質領域から得られた平均染色面積および全体染色強度値として表した。シグナル基準値は装置ノイズから構成され、組織分散シグナルは無視し得ることが分かったので全体強度シグナルから引かなかった。
【0300】
図23に示すように、抗体A組成物の定性効果は、ヒトAD脳切片由来のAβプラークの貪食作用の増加を示す、Aβプラーク染色の減少により視覚化された。100ng/mlの抗体A組成物でプレインキュベーションした後の40時間後に明確に視覚化される免疫組織化学により、染色可能Aβプラークにおける減少が明らかにされた。該効果は、1および5mg/mlの抗体A組成物濃度で非常に顕著であった。5mg/mlでいくつかの大きなAβプラークだけが残り、Aβプラークは実質的に、かつ徐々に細胞の貪食作用により除去される。同じ実験の面積および強度で表される免疫反応シグナルに基づく定量的測定を図24に示す。
【0301】
あるいは、抗体A組成物媒介性貪食作用はAβコンジュゲート蛍光ポリスチレンビーズを用いて測定された。そのため、蛍光ビーズ(3mm、FluoresbriteカルボキシYG, Polysciences Inc.)をAβとカップリングした。簡潔に、ビーズを、カップリングバッファ(50mM MESバッファ、pH 5.2, 1%DMSO)に懸濁および遠心分離して2回洗浄した。ペレット(およそ10μl)を200μlのカップリングバッファに懸濁し、20μlのカップリングバッファ中20%EDC(エチル-ジアミノプロピル-カルボジイミド、Pierce)溶液の添加により活性化した。20μgのAβ(1-40)またはAβ(1-42)(0.1%水酸化アンモニウム中、Bachem)の直接の添加によりカップリング反応が開始した。一晩のインキュベーション後、ビーズを3x 0.5mlの10mM Tris.HCl pH 8.0および3x 0.5ml保存バッファ(10mm Tris.HCl pH 8.0、0.05%BSA、0.05%NaN3)で洗浄した。1%懸濁液を使用するまで4℃で保存した。陰性対照としてFluoresbriteカルボキシNYO(赤色蛍光)ビーズを全てのDアミノ酸Aβ(1-40)とカップリングした。(0.1%水酸化アンモニウム中、Bachem)。
【0302】
マウス単核細胞/マクロファージ(細胞株P388D1)を、C24透明組織培養クラスターまたはC96黒色マイクロプレート中でおよそ50%コンフルエントまで増殖させた。培地は、5%FBS、グルタミンおよび抗生物質を含むIMEMであった。非特異的スカベンジャーレセプターをブロッキングするために、10mlのフコイダン(Fluka、水中の10mg/ml)を200mlの培養容量に添加し、2時間インキュベートした。抗体A組成物を連続希釈で添加して30分間プレインキュベートした。蛍光Aβビーズ懸濁液(20μl)を添加し、3時間インキュベートして貪食させた。細胞表面から接着凝集物を除去するために、接着した細胞を氷冷EDTAで1回およびPBSで2回激しく洗浄した。残ったビーズを、Zeiss Axiovert 405視覚検査によってモニタリングしたか、または444nm(Exc)および485nm(Em)フィルターセッティングを有するマイクロプレート蛍光計(Fluoroscan, Labsystems)の使用による定量のいずれかを行なった。
【0303】
蛍光フルオロビーズにカップリングした合成Aβ凝集物のP388D1細胞による貪食作用に対する抗体A組成物の定性的効果を図25に示す。抗体A組成物の用量応答の定量的な測定を図26に示す。2つの独立した実験により、EC50について30〜200ng/mlおよびMECについて10〜60ng/mlの範囲が明らかになった。観察された変動は、インキュベーションの化学量の差、即ちビーズ対細胞の比率によって生じると思われる。200ng/mlより高い濃度で観察されたビーズ貪食の減少は、一価の抗体と限定された抗原との相互作用のためである。
【0304】
従って、抗体A組成物は、AD脳組織切片由来のAβプラークの貪食作用を用量依存的な様式で、効率的に誘導すると結論付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0305】
【図1A】図1Aは、重鎖および軽鎖配列の挿入部位を示すプラスミドマップを示す。
【図1B】図1Bは、重鎖および軽鎖配列の挿入部位を示すプラスミドマップを示す。
【図1C】図1Cは、重鎖および軽鎖配列の挿入部位を示すプラスミドマップを示す。
【図2】図2は、解析クロマトグラム例を示す。
【図3】図3は、本文に記載のCMTカラムクロマトグラムを示す。二重グリコシル化およびモノグリコシル化アイソフォームは二重ピーク1に溶出されており、非グリコシル化アイソフォームはピーク2に溶出されている。
【図4A】図4Aは、抗体Aアイソフォームの全IgG ESI-MS分析を示す。主要ピークの分子質量をDaで示す。A:非グリコシル化抗体A。
【図4B】図4Bは、抗体Aアイソフォームの全IgG ESI-MS分析を示す。主要ピークの分子質量をDaで示す。B:モノグリコシル化抗体A。
【図4C】図4Cは、抗体Aアイソフォームの全IgG ESI-MS分析を示す。主要ピークの分子質量をDaで示す。C:二重グリコシル化抗体A。
【図5】図5は、推定抗体N-グリコシル化パターンのスキームを示す。一部のみ生じた構造を括弧で示す。A:複合型;B:ハイブリッド型;C:オリゴマンノース 型;GlcNAc=N-アセチル-グルコサミン、Man=マンノース;Gal=ガラクトース;Fuc=フコース;NeuAc=N-アセチル-ノイラミン酸。
【図6】図6は、MSおよびHPAEC-PAD分析から推定される抗体AのAsn306の炭水化物構造の概略図を示す。一部のみ生じた構造を括弧で示す。GlcNAc=N-アセチル-グルコサミン、Man=マンノース;Gal=ガラクトース;Fuc=フコース;NeuAc=N-アセチル-ノイラミン酸。
【図7】図7は、固定化原線維のAβ40 (Biacoreセンサーチップ)への抗体Aアイソフォームの結合を示す。抗体濃度60nM。すべてのアイソフォームの混合物、すなわち精製前の結合曲線もまた示す。
【図8A】図8Aは、ペプスポット分析による抗体A組成物のエピトープマッピングを示す。A)示された単一の重複デカペプチドスポットのペプスポットシグナル。
【図8B】図8Bは、ペプスポット分析による抗体A組成物のエピトープマッピングを示す。B)単一の重複デカペプチドスポットのシグナル強度の濃度計分析。
【図9】図9は、解重合アッセイを示す。抗体A組成物および抗体Aアイソフォームは、凝集Aβからのビオチン化Aβの放出を誘導する。
【図10】図10は、ヒト脳脊髄液(CSF)由来の抗体Aアイソフォーム捕捉可溶性Aβを含む抗体A組成物を示す。2つのプールにおいて解析されたアルツハイマー病患者由来4つのCSF試料の平均。2回の免疫沈降後、プールごとにウエスタンブロットを行ない、ウエスタンブロットのデンシトメトリーにより捕捉されたAβを定量した。所定の一連のウエスタンブロットの最大Aβ値を100%とした。
【図11】図11は、抗体Aアイソフォームでのヒトアミロイドプラークのインビトロでの間接免疫蛍光染色を示す。10ng/mlの抗体A濃度での染色後の真性エキソビボヒトβ-アミロイドプラークの非常に感受性で特異的な検出。結合された抗体Aは、(A)抗体A組成物;(B)二重グリコシル化抗体A;(C)モノグリコシル化抗体A;および(D)非グリコシル化抗体Aについてヤギ抗ヒト(H+L)-Cy3によって示された。スケールバー=80μm
【図12】図12は、共焦点顕微鏡検査によって示されたグリコシル化抗体AアイソフォームでのPS2APPトランスジェニックマウスプラークのインビボ免疫修飾を示す。免疫修飾により、抗体Aアイソフォームの1mgの単回投与の3日後の抗体Aアイソフォームのインビボ結合が示される。抗体Aアイソフォームの分布の代表的な画像は、二重-(A)、モノ(B)、および非グリコシル化(C)抗体Aアイソフォームについて示される。スケールバー=80μm。
【図13】図13は、細胞表面APPへの抗Aβ抗体の結合分析を示す。ヒトAPP-トランスフェクトHEK293細胞および非トランスフェクトコントロール細胞への抗体結合をフローサイトメトリーによって解析した。
【図14】図14は、抗体A非、モノおよび二重グリコシル化抗体分子(免疫グロブリン)のスキームを示す。
【図15A】図15Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、視床領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図15B】図15Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、プラーク総数(B)を示す。
【図15C】図15Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、プラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図16A】図16Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、皮質および脳梁領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図16B】図16Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、皮質および脳梁領域におけるプラーク総数(B)を示す。
【図16C】図16Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、皮質および脳梁領域におけるプラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図17A】図17Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、海馬領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図17B】図17Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、海馬領域におけるプラーク総数(B)を示す。
【図17C】図17Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、海馬領域におけるプラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図18A】図18Aは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、鉤状回領域におけるプラーク総表面(A)を示す。
【図18B】図18Bは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、鉤状回領域におけるプラーク総数(B)を示す。
【図18C】図18Cは、抗体A組成物(これはモノおよび二重グリコシル化抗体Aを含む)、二重グリコシル化ならびにモノグリコシル化抗体Aアイソフォーム(毎週20mg/kg、i.v.)またはビヒクルで処置の5ヶ月後、鉤状回領域におけるプラーク数およびサイズ分布(C)を示す。
【図19】図19は、PS2APPマウスに1、2および4回のi.v.適用で0.1mg/kgを2週間ごとに投与した後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図20】図20は、PS2APPマウスに2および3回のi.v.適用で0.15mg/kgを毎月投与した後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図21】図21は、PS2APPマウスに、0.05、0.1および0.30mg/kgを4回の2週間ごとの注射後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示し、用量依存アミロイド-プラーク結合を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図22】図22は、PS2APPマウスに、0.075、0.15および0.45mg/kgを3回の毎月の注射後のアミロイド-βプラークに結合された免疫染色された抗体A組成物の蛍光強度の測定を示し、用量依存アミロイド-プラーク結合を示す。分析は最後の注射の2週間後に行なった。
【図23】図23は、分化した生ヒト一次マクロファージ(80万細胞/ml)とともに示された濃度の抗体A組成物との40時間のインキュベーション後の、抗Aβマウスモノクローナル抗体(BAP-2)を用いて、Aβに対して染色されたヒトAD脳切片を示す。結果は、アミロイド-βプラークに対する抗体A組成物の抗原依存性細胞食作用効果を示すアミロイド負荷の減少を示す。スケールバー=300μm。
【図24A】図24Aは、80万細胞/mlとともにインキュベートした場合のヒトAD脳切片由来のアミロイド-βプラークの抗体A組成物の用量応答を示す。(A)はプラーク総面積を示す。
【図24B】図24Bは、80万細胞/mlとともにインキュベートした場合のヒトAD脳切片由来のアミロイド-βプラークの抗体A組成物の用量応答を示す。(B)は染色強度を示す。
【図25】図25は、0、0.1、1および10μg/mlの抗体A組成物(それぞれA〜D)とともにインキュベートしたP388D1細胞の蛍光顕微鏡検査を示す。
【図26】図26は、AβコンジュゲートフルオロビーズおよびP3881D1細胞を用いて抗体A組成物の用量応答の定量的測定を示す(相対蛍光単位RFUで示す)。2つの独立した実験は、抗体A組成物に対する相当な範囲の有効性を示す。
【図27】図27は、重鎖の定常領域(Asn 306;最初の2つのカラム)および重鎖の可変領域(Asn 52;3番目および4番目のカラム)における抗体Aの異なるグリカン構造を示す表を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体分子の少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする、精製された抗体分子。
【請求項2】
前記重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)がCDR2領域にある、請求項1記載の精製された抗体分子。
【請求項3】
前記重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)が配列番号2の52位又は配列番号6の52位にある、請求項1又は2記載の精製された抗体分子。
【請求項4】
前記抗体分子がβ-A4ペプチド/Aβ4を特異的に認識可能である、請求項1〜3いずれか記載の精製された抗体分子。
【請求項5】
前記β-A4ペプチド/Aβ4が以下の配列;
又は該配列の少なくとも15アミノ酸の部分を有する、請求項4記載の精製された抗体分子。
【請求項6】
前記抗体分子の少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含み、該VHは、
(a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子
(c)(a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列;
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子;
(d)(a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ぺプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子であって、該β-A4ぺプチド/Aβ4又はその断片上の2つの領域が3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、核酸分子又は
(e)(a)〜(d)のいずれかに定義される核酸配列に縮重である核酸配列
によってコードされることを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載の抗体分子。
【請求項7】
グリコシル化アスパラギン(Asn)を含む可変領域が
(a)配列番号5、23又は25に示される核酸分子によってコードされる重鎖ポリぺプチド;
(b)配列番号6又は26に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド;
(c)(a)に定義される核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列:
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチド;又は
(d)(a)に定義される核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域に又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチドであって、該β-A4ペプチドAβ4又はその断片上の2つの領域は3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、重鎖ポリペプチド
からなる群より選択される重鎖に含まれる、請求項1〜5いずれか記載の抗体分子。
【請求項8】
2つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化Asnを含む、請求項1〜7いずれか記載の抗体分子。
【請求項9】
重鎖(VH)のCDR2領域がグリコシル化Asnを含む、請求項8記載の抗体分子。
【請求項10】
前記Asnが配列番号2の52位又は配列番号6の52位のAsnである、請求項1〜9いずれか記載の抗体分子。
【請求項11】
前記VH領域におけるAsnのグリコシル化が、
(a)バイアンテナ複合型の糖構造、
(b)バイアンテナハイブリッド型の糖構造、
(c)バイアンテナオリゴマンノース型の糖構造、及び
(d)図5又は図27に提供される構造のいずれかのバイアンテナ糖構造
からなる群より選択される、請求項1〜10いずれか記載の抗体分子。
【請求項12】
前記糖構造が核のフコシル化を含まない、請求項11記載の抗体分子。
【請求項13】
前記CDR2領域が配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する、請求項2〜12いずれか記載の抗体分子。
【請求項14】
組み換え生成される、請求項1〜13いずれか記載の抗体分子。
【請求項15】
CHO細胞において生成される、請求項1〜14いずれか記載の抗体分子。
【請求項16】
前記CHO細胞がCHO K1又はCHO K1 SVである、請求項15記載の抗体分子。
【請求項17】
(a)哺乳動物の培養細胞中で請求項1〜13いずれか記載の抗体分子をコードする異種核酸分子を組み換え発現させる工程、
(b)(b1)プロテインAカラム精製、
(b2)イオン交換カラム精製、及び
(b3)サイズ排除カラム精製
の工程を含む方法によって該組み換え発現した抗体分子を精製する工程
を含む請求項1〜16いずれか記載の抗体分子の調製方法。
【請求項18】
前記イオン交換カラム精製が陽イオン交換クロマトグラフィーを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
さらなる工程(c)として分析クロマトグラフィー及び/又はさらなる濃縮工程をさらに含む、請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子を含み、かつ2つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子を含む組成物であって、抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含まないことを特徴とする5%未満の抗体分子を含む、組成物。
【請求項21】
請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項17〜19いずれか記載の方法によって調製される抗体分子を含む組成物。
【請求項22】
診断組成物又は医薬組成物である、請求項20又は21記載の組成物。
【請求項23】
アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患を予防及び/又は処置するための医薬の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項24】
アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患を検出するための診断キットの作製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項25】
βアミロイドプラークを分解するための医薬の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項26】
βアミロイドプラーク形成に対して受動免疫するための医薬組成物の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項27】
アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患に対して予防処置するための医薬組成物の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項28】
アミロイドβの既存プラーク又は凝集中間体が減少される、請求項27記載の使用。
【請求項29】
患者におけるアミロイド形成及び/若しくはアミロイドプラーク形成と関連する疾患を診断するための、又はアミロイド形成及び/若しくはアミロイドプラーク形成と関連する疾患の発症について患者の罹患性を診断するための、診断キットの作製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項30】
前記疾患が、痴呆、アルツハイマー病、運動神経障害、ダウン症候群、クロイツフェルトヤコブ病、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、レビィー小体形成関連痴呆、パーキンソン病、HIV-関連痴呆、ALS又は老化関連神経障害である、請求項23、24、又は27〜29いずれか記載の使用。
【請求項31】
請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項17〜19いずれか記載の方法によって調製される抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物を含むキット。
【請求項32】
請求項1〜16いずれか記載の抗体分子、又は請求項20〜22いずれか記載の組成物を、予防又は処置を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患の予防、処置又は軽減のための方法。
【請求項33】
前記疾患が、痴呆、アルツハイマー病、運動神経障害、ダウン症候群、クロイツフェルトヤコブ病、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、レビィー小体形成関連痴呆、パーキンソン病、HIV-関連痴呆、ALS又は老化関連神経障害である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項32又は33記載の方法。
【請求項1】
抗体分子の少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする、精製された抗体分子。
【請求項2】
前記重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)がCDR2領域にある、請求項1記載の精製された抗体分子。
【請求項3】
前記重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)が配列番号2の52位又は配列番号6の52位にある、請求項1又は2記載の精製された抗体分子。
【請求項4】
前記抗体分子がβ-A4ペプチド/Aβ4を特異的に認識可能である、請求項1〜3いずれか記載の精製された抗体分子。
【請求項5】
前記β-A4ペプチド/Aβ4が以下の配列;
又は該配列の少なくとも15アミノ酸の部分を有する、請求項4記載の精製された抗体分子。
【請求項6】
前記抗体分子の少なくとも1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含み、該VHは、
(a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子
(c)(a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列;
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子;
(d)(a)又は(b)の核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ぺプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子であって、該β-A4ぺプチド/Aβ4又はその断片上の2つの領域が3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、核酸分子又は
(e)(a)〜(d)のいずれかに定義される核酸配列に縮重である核酸配列
によってコードされることを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載の抗体分子。
【請求項7】
グリコシル化アスパラギン(Asn)を含む可変領域が
(a)配列番号5、23又は25に示される核酸分子によってコードされる重鎖ポリぺプチド;
(b)配列番号6又は26に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド;
(c)(a)に定義される核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列:
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4又は少なくとも15アミノ酸を含むその断片に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチド;又は
(d)(a)に定義される核酸分子にハイブリダイズし、かつ以下のアミノ酸配列
に示されるβ-A4ペプチド/Aβ4上の少なくとも2つの領域に又は少なくとも15アミノ酸を含む配列番号3の断片の少なくとも2つの領域に結合可能であるポリペプチドをコードする核酸分子によってコードされる重鎖ポリペプチドであって、該β-A4ペプチドAβ4又はその断片上の2つの領域は3〜6位及び18〜26位のアミノ酸を含む、重鎖ポリペプチド
からなる群より選択される重鎖に含まれる、請求項1〜5いずれか記載の抗体分子。
【請求項8】
2つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化Asnを含む、請求項1〜7いずれか記載の抗体分子。
【請求項9】
重鎖(VH)のCDR2領域がグリコシル化Asnを含む、請求項8記載の抗体分子。
【請求項10】
前記Asnが配列番号2の52位又は配列番号6の52位のAsnである、請求項1〜9いずれか記載の抗体分子。
【請求項11】
前記VH領域におけるAsnのグリコシル化が、
(a)バイアンテナ複合型の糖構造、
(b)バイアンテナハイブリッド型の糖構造、
(c)バイアンテナオリゴマンノース型の糖構造、及び
(d)図5又は図27に提供される構造のいずれかのバイアンテナ糖構造
からなる群より選択される、請求項1〜10いずれか記載の抗体分子。
【請求項12】
前記糖構造が核のフコシル化を含まない、請求項11記載の抗体分子。
【請求項13】
前記CDR2領域が配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する、請求項2〜12いずれか記載の抗体分子。
【請求項14】
組み換え生成される、請求項1〜13いずれか記載の抗体分子。
【請求項15】
CHO細胞において生成される、請求項1〜14いずれか記載の抗体分子。
【請求項16】
前記CHO細胞がCHO K1又はCHO K1 SVである、請求項15記載の抗体分子。
【請求項17】
(a)哺乳動物の培養細胞中で請求項1〜13いずれか記載の抗体分子をコードする異種核酸分子を組み換え発現させる工程、
(b)(b1)プロテインAカラム精製、
(b2)イオン交換カラム精製、及び
(b3)サイズ排除カラム精製
の工程を含む方法によって該組み換え発現した抗体分子を精製する工程
を含む請求項1〜16いずれか記載の抗体分子の調製方法。
【請求項18】
前記イオン交換カラム精製が陽イオン交換クロマトグラフィーを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
さらなる工程(c)として分析クロマトグラフィー及び/又はさらなる濃縮工程をさらに含む、請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
1つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子を含み、かつ2つの抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする抗体分子を含む組成物であって、抗原結合部位が重鎖(VH)の可変領域におけるグリコシル化アスパラギン(Asn)を含まないことを特徴とする5%未満の抗体分子を含む、組成物。
【請求項21】
請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項17〜19いずれか記載の方法によって調製される抗体分子を含む組成物。
【請求項22】
診断組成物又は医薬組成物である、請求項20又は21記載の組成物。
【請求項23】
アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患を予防及び/又は処置するための医薬の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項24】
アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患を検出するための診断キットの作製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項25】
βアミロイドプラークを分解するための医薬の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項26】
βアミロイドプラーク形成に対して受動免疫するための医薬組成物の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項27】
アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患に対して予防処置するための医薬組成物の調製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項28】
アミロイドβの既存プラーク又は凝集中間体が減少される、請求項27記載の使用。
【請求項29】
患者におけるアミロイド形成及び/若しくはアミロイドプラーク形成と関連する疾患を診断するための、又はアミロイド形成及び/若しくはアミロイドプラーク形成と関連する疾患の発症について患者の罹患性を診断するための、診断キットの作製のための、請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物の使用。
【請求項30】
前記疾患が、痴呆、アルツハイマー病、運動神経障害、ダウン症候群、クロイツフェルトヤコブ病、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、レビィー小体形成関連痴呆、パーキンソン病、HIV-関連痴呆、ALS又は老化関連神経障害である、請求項23、24、又は27〜29いずれか記載の使用。
【請求項31】
請求項1〜16いずれか記載の抗体分子又は請求項17〜19いずれか記載の方法によって調製される抗体分子又は請求項20〜22いずれか記載の組成物を含むキット。
【請求項32】
請求項1〜16いずれか記載の抗体分子、又は請求項20〜22いずれか記載の組成物を、予防又は処置を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、アミロイド形成及び/又はアミロイドプラーク形成と関連する疾患の予防、処置又は軽減のための方法。
【請求項33】
前記疾患が、痴呆、アルツハイマー病、運動神経障害、ダウン症候群、クロイツフェルトヤコブ病、オランダ人型アミロイド症を有する遺伝性脳出血、レビィー小体形成関連痴呆、パーキンソン病、HIV-関連痴呆、ALS又は老化関連神経障害である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項32又は33記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2009−520691(P2009−520691A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543748(P2008−543748)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011914
【国際公開番号】WO2007/068429
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011914
【国際公開番号】WO2007/068429
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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