説明

可搬型コンクリート圧縮試験装置。

【課題】 従来の可搬型圧縮試験機は門形に構える二本の反力支柱によって荷重載荷手段を保持する構成としているため、大重量であるため運搬が容易ではなく、コンクリート供試体の静弾性係数も計測できなかった。
【解決手段】 荷重載荷手段(電動油圧ポンプ)Aと、荷重検出表示手段(歪みゲージ:ロードセル)Bと、前記荷重載荷手段A及び荷重検出表示手段Bを円筒状機枠内の一つの垂直中心軸線上に直列配置して構成した供試体保持手段Cとからなり、軽量・小型化し、狭隘な場所へも搬入が容易に行え、供試体の静弾性係数も計測できる、可搬型コンクリート圧縮試験装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングしたあらゆるコンクリート供試体の圧縮強度及び静弾性係数を現場で簡便に計測できるようにした可搬型コンクリート圧縮試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリートの可搬型圧縮試験機は、上下の反力フレームを左右二本の支柱で固定し、反力支柱に支持された加圧部材を手動油圧装置により動作するようにした試験機がある。(たとえば、非特許文献1参照。)
【0003】
また、コンクリート供試体に作用する圧力の載荷表示手段として高荷重と低荷重の夫々のブルドン管式圧力計で表示している。(同前非特許文献1参照。)
【0004】
次に上記従来例について図2により更に詳細に説明する。
下部台座fによって支持される左右2本の反力支柱b、b’と反力支柱b、b’上端の上部反力部材gとの間にあって手動油圧装置eによりコンクリート供試体aを加圧するようにしており、しかも高荷重と低荷重の何れかを切り替え表示可能にブルドン管式圧力計c、c’を設置している。
【0005】
上記可搬型圧縮試験機は、大きく別けて下部台座fと、上部反力部材gと、左右2本の反力支柱b、b’と、手動油圧装置eと、加圧盤dとの6部分に分割できるが、総重量は約400(kg)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】 可搬型圧縮試験機 SS−C−544〜545(篠原製作所:カタログ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来例に示すコンクリートの可搬型圧縮試験機は、総重量が約400(kg)であり、このような重量物を狭隘な場所や任意の都市部の建設現場、或いは山岳地などに搬入することは容易ではなかった。
また、例えこのような嵩高い可搬型圧縮試験機を現場へ持ち込むとしても、搬送するには6部分に分解して移送しなければならず、しかも重量物であるため設置のための基礎造りが必要であり、移送後は再び現場で組み立てる必要があり、こうした作業は多くの人手や労力を要する。
【0008】
また、上記圧縮試験機は加圧動作するにあたり油圧装置を手動で行っているためコンクリート供試体に一定速度で荷重を与えることができず、JIS A 1149で要求されているコンクリート供試体の静弾性係数を測定することが不可能である。
【0009】
更に荷重の計測をブルドン管式圧力計で行っており、1000(kN)の最大荷重に対して高荷重用ブルドン管式圧力計では4(kN)、低荷重用ブルドン管式圧力計を使用しても1(kN)の測定分解能しか保持していない。
【0010】
また、従来例の設置スペースは、最もはみ出した部分を含めると3000(cm)程度となり、それに作業空間を考慮すると、狭隘な場所には持ち込みが容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、最大荷重1000(kN)と高荷重であるにもかかわらず、二本の反力支柱を使用せず、荷重載荷手段(電動油圧ポンプ)Aと、荷重検出表示手段(歪みゲージ:ロードセル)Bと、前記荷重載荷手段A及び荷重検出表示手段Bを円筒状機枠内(φ200×800(mm))の一つの垂直中心軸線上に供試体保持手段Cとともに直列に配置し、軽量・小型化し、狭隘な場所へも搬入が容易に行えるばかりでなく、コンクリート供試体の静弾性係数も計測できることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように試験装置本体を円筒状に構成した荷重載荷手段と、荷重検出表示手段と、供試体とを直列配置したことにより、従来例で必要としていた二本の反力支柱が不要となり試験装置の軽量且つ小型化が可能となり、その結果、狭隘な場所や任意の都市部の建設現場或いは山岳地などへも搬入ができ、現場でのコンクリート構造物からサンプリングした様々な強度を持つコンクリート供試体の圧縮試験がその場で行える。
【0013】
また、本発明では供試体に圧力を載荷する際、荷重載荷手段、荷重検出表示手段、供試体等を一つの圧力の作用線上に直列配置したことにより、供試体に作用する応力が分散せず効果的に供試体へ荷重を載荷できる。
【0014】
更に電動油圧ポンプによって加圧部を駆動させるので、従来の手動油圧装置によるときのような左右の荷重バランスが悪くなることがなく、しかも荷重載荷速度も安定し、最大圧縮荷重の測定やコンクリート供試体の静弾性係数も精度良く測定できる。
【0015】
荷重の計測はロードセルで行うために、最大荷重1000(kN)に対して0.1(kN)の測定分解能を保持しており、これまでのようなブルドン管式圧力計での測定に比べて10倍乃至40倍の分解能を保持しており、正確な圧縮試験が可能である。
【0016】
試験装置の台座1の部分は設置スペースが40(cm)・40(cm)の1600(cm)で、従来例の約半分の面積で済み狭隘な場所への持ち込みが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】 本発明装置の要部縦断面正面図
【図2】 従来例の外観正面略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。
図において、本発明は大きく分けて荷重載荷手段Aと、荷重検出表示手段Bと、供試体保持手段Cとからなる。
先ず、荷重載荷手段Aは台座1上に載荷荷重に対して充分な耐力を有する寸法φ200×800(mm)の反力外筒2の下部を固着し、反力外筒2内に加圧シリンダー(スプリングリターンシリンダー)3を水密的に密嵌して、別に設置した電動油圧ポンプ11からの油圧を受けて上下動するように構成している。
【0019】
また、荷重検出表示手段Bは、前記加圧シリンダー3の上部にあって反力外筒2の内周との間に一定の間隙を保ってロードセル4を定置し、当該ロードセル4からの検出値を電気的にデータロガー12へ導き演算表示するようにしている。
【0020】
供試体保持手段Cは、前記反力外筒2内における加圧盤5と球座付耐圧盤6との間に供試体13を介在させ、球座付耐圧盤6の上面中央の球体7を介して反力外筒2上端のセッティング用螺子蓋8により螺着してなる。符号10はセッティング用螺子蓋8のハンドルである。
【0021】
尚、上記圧縮試験装置は、40(cm)・40(cm)の台座1上に取り付けたもので、載荷装置本体は約60(kg)、総重量は約80(kg)である。
更に、ロードセル4上に載置した加圧盤5には上面に直径100(mm)の刻線を施してあり、直径100(mm)、長さ200(mm)の供試体13を加圧盤5の中心位置に正しく保持するようにしている。
また、上記とは異なるサイズの加圧盤には上面に直径80(mm)の刻線を施したものもあり、これに直径80(mm)、長さ160(mm)の供試体に対応できる加圧盤も用意されている。
【0022】
次に一連動作について述べると、当該供試体13をロードセル4上の加圧盤5に施された夫々の直径100(mm)又は80(mm)の位置決め刻線にサイズを合わせて設置し、供試体13の上端に載置した球座付耐圧盤6上の球体7を介して球座付耐圧盤6を反力外筒2に螺着することにより供試体13のセットは終了する。この状態でロードセル4から歪み値を反力外筒2の側面に形成したスリット9を経てリード線により外部に取り出し、データロガー12へ入力する。
【0023】
電動油圧ポンプ11はリモートスイッチで始動、停止及び流量調整バルブを制御して、加圧速度を調整可能にしており、予想される最大荷重の3分の1における歪みを容易に計測が可能であることから、当該供試体13の静弾性係数が得られる構造となっている。供試体13に対する荷重載荷方法は、反力外筒2の上端に螺着された球座付耐圧盤6と加圧シリンダー3と荷重計測用のロードセル4のみのシンプルな構成であり、これまでのような支柱が無くなりコンパクト化できる。
【0024】
セッティング用螺子蓋8を反力外筒2にしっかりと螺着し、ロードセル4の出力ケーブルと、供試体13に貼付した歪みゲージのリード線を、市販のデータロガー12等に接続し、スタンバイ状態にしておく。
【0025】
電動油圧ポンプ11のスイッチをON状態にし、載荷並びに歪みの計測を開始し、供試体13が破壊すると同時に、載荷動作は自動的に終了する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は可搬型であるため、コンクリート圧縮試験が必要な場所はもとより、前述したようなあらゆる場所でコンクリートのみならず岩石等の圧縮試験が可能であり汎用性の高い装置である。
【符号の説明】
【0027】
1 台座
2 反力外筒
3 加圧シリンダー
4 ロードセル
5 下部耐圧盤
6 球座付耐圧盤
7 球体
8 セッティング用螺子蓋
9 スリット
10 セッティング用ハンドル
11 電動油圧ポンプ
12 データロガー
13 供試体
A 荷重載荷手段
B 荷重検出表示手段
C 供試体保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、反力支持部材と、下部耐圧盤と、球座付耐圧盤と、加圧シリンダーと、球体と、上部反力部材と、油圧ポンプを有する、供試体に圧縮力を加えることができる装置であって、
前記反力支持部材は、円筒の反力外筒であり、下部が前記台座に固着され、最大荷重1000(kN)を越える耐力を有し、
前記上部反力部材は、螺子蓋であり、前記反力外筒の上端に螺着され、
前記加圧シリンダーと前記下部加圧盤と前記球座付加圧盤と前記球体とは、前記反力外筒内に設置され、
前記球体は、前記球座付耐圧盤の上面中央かつ前記螺子蓋の下部に設置され、供試体を、前記下部加圧盤と前記球座付耐圧盤との間に介在させ、前記裸子蓋を前記反力外筒に螺着することにより前記球体を介して保持することが可能な、装置。
【請求項2】
前記油圧ポンプは、一定速度で自動載荷でき、
前記加圧シリンダーと前記供試体との間に定置したロードセルの検出値と、前記供試体に貼り付けた歪みゲージの検出値とを、電気的に前記反力外筒の外部にあるデータロガーへ導くことができ、
前記ロードセルの検出値と前記歪みゲージの検出値とにより前記供試体の静弾性係数を得ることが可能な、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−11575(P2013−11575A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157142(P2011−157142)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(500370702)株式会社マルイ (11)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(591151808)株式会社環境総合テクノス (23)
【Fターム(参考)】