説明

可搬型放射線固体検出器

【課題】可搬型のFPDであって、CR用のカセッテとの互換性を有する薄型であるとともに、通常の使用状態で外部から圧力がかかってもシンチレータが破壊されることがなく、かつ、放射線の散乱によるグレアの発生を防止可能な可搬型放射線固体検出器を提供する。
【解決手段】可搬型放射線固体検出器1は、213基板上に形成された複数の光電変換手段152と、光電変換手段152上に対向して設けられ、入射した放射線を光に変換するシンチレータ211とを備えるセンサパネル21と、センサパネル21に対向する面と反対側の面に光電変換手段152に関連する回路23が設けられた基台24とをハウジング3内に内蔵し、さらに、センサパネル21と基台24との間に緩衝部材25を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型放射線固体検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病気診断等を目的として、X線画像に代表される、放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。こうした医療用の放射線画像は、従来スクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、近年は、放射線画像のデジタル化が実現されており、例えば、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体層が形成された輝尽性蛍光体シートに蓄積させた後、この輝尽性蛍光体シートをレーザ光で走査し、これにより輝尽性蛍光体シートから発光される輝尽光を光電変換して画像データを得るCR(Computed Radiography)装置が広く普及している(例えば特許文献1、2等参照)。
【0003】
放射線画像撮影では、スクリーンフィルムや輝尽性蛍光体シート等の記録媒体を内部に収納したカセッテ(例えば特許文献1、2等参照)が用いられる。なお、CR装置での撮影に用いられるCR用のカセッテは、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテに適合するものとして導入された既存の設備、例えばカセッテホルダーやブッキーテーブルを継続して使用可能となるように、当該スクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに倣って、設計・製造されている。言い換えると、カセッテのサイズの互換性が維持され、施設の有効活用と画像データのデジタル化が達成されている。
【0004】
また、最近では、医療用の放射線画像を得る手段として、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器としてフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector。以下「FPD」と称する。)が知られている(例えば特許文献3等参照)。
【0005】
さらに、このFPDをハウジング(筐体)に収納した可搬型の撮影装置(可搬型放射線固体検出器)も実用化されるようになってきた(例えば特許文献4、5等参照)。このような可搬型放射線固体検出器は、持ち運びが可能であるために患者の病室等に行って撮影を行うこと等も可能であり、また、撮影部位の位置や角度等に応じて自在に位置や角度を調整することが可能であるため、広く活用されることが期待されている。
【0006】
ところで、前述したように、現在普及しているCR用のカセッテは従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに従ったサイズとなっており、ブッキーテーブル等もJIS規格サイズに合わせて作られている。このため、可搬型のFPDである可搬型放射線固体検出器についても、このJIS規格サイズに従ったカセッテに収納した形で用いることができれば、施設に設置されている既存の設備をFPDを用いた撮影に利用することができ、撮影手段としてFPDを導入する際の設備投資を最小限度に抑えることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献4や特許文献5に記載された従来のハウジング(筐体)に収納された可搬型放射線固体検出器は、上記JIS規格サイズに従ったものではなく、既存の設備を利用することのできない形状のものである。
【0008】
一方、可搬型放射線固体検出器を上記JIS規格サイズに従って形成した場合、全体的に薄い平板状のものとなることから、荷重が加わった場合でも、内部のガラス基板や電気部品等に負荷がかからないように、ハウジングの変形を抑制できる全体的な強度向上が必要となる。
【0009】
特に、可搬型放射線固体検出器に患者の体重(荷重)が加わる場合には、ハウジングの放射線入射面に撓みが生じやすくなる。そして、可搬型放射線固体検出器では、入射した放射線を光に変換するシンチレータを、CsI等の母体材料内に発光中心物質が付活された蛍光体を蒸着により柱状結晶として形成するものが多いが、このようなシンチレータは一般的にフォトダイオード等の光電変換手段やガラス基板等よりも外力により破壊されやすい。
【0010】
そのため、特許文献6や特許文献7に記載された可搬型放射線固体検出器では、ハウジングの放射線入射面と光電変換手段との間に緩衝部材を設けることが提案されている。
【特許文献1】特開2005−121783号公報
【特許文献2】特開2005−114944号公報
【特許文献3】特開平9−73144号公報
【特許文献4】特開2002−311527号公報
【特許文献5】米国特許第7,189,972号明細書
【特許文献6】特許第3815792号公報
【特許文献7】特許第4012182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献6や特許文献7に記載された手法では、可搬型放射線固体検出器のハウジングの放射線入射面上に載置された患者の身体等の被写体とシンチレータとの距離が遠くなるため、放射線が被写体で散乱されてグレアが発生し、検出される放射線画像の画像劣化が発生する。
【0012】
また、特許文献6では、可搬型放射線固体検出器のハウジングの放射線入射面と光電変換手段との間に、内部に空気等の気体を封入した容器を緩衝部材として複数並べて配置することが提案されているが、複数の容器が入射した放射線を散乱させかねず、放射線画像への悪影響が生じないとは言い切れない。
【0013】
さらに、可搬型放射線固体検出器を上記のようにJIS規格サイズに従って形成する場合には、ハウジングの放射線入射面と光電変換手段との間に大きな緩衝部材を挿入する構造とすることは事実上困難である。
【0014】
そこで、本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、可搬型のFPDであって、CR用のカセッテとの互換性を有する薄型であるとともに、通常の使用状態で外部から圧力がかかってもシンチレータが破壊されることがなく、かつ、放射線の散乱によるグレアの発生を防止可能な可搬型放射線固体検出器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、
基板上に形成された複数の光電変換手段と、前記光電変換手段上に対向して設けられ、入射した放射線を光に変換するシンチレータとを備えるセンサパネルと、
前記センサパネルに対向する面と反対側の面に前記光電変換手段に関連する回路が設けられた基台と、
をハウジング内に内蔵し、
さらに、前記センサパネルと前記基台との間に緩衝部材を設けたことを特徴とする可搬型放射線固体検出器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のような方式の可搬型放射線固体検出器によれば、ハウジングの放射線入射方向の厚さを例えば16mm以下とすることで、CR用のカセッテ用に設けられているブッキーテーブル等、既存の装置、設備を利用することができる。また、センサパネルと基台との間に緩衝部材を設けたため、通常の使用状態で外部から圧力がかかっても、緩衝部材がシンチレータにかかる圧力を分散して効果的に吸収するため、シンチレータにおける圧力感度を有効に減少させることが可能となり、シンチレータが破壊されることを有効に防止することが可能となる。
【0017】
また、緩衝部材をセンサパネルと基台との間に設けることでこのような有利な効果が得られるため、ハウジングの放射線入射面とセンサパネルとの間に緩衝部材を設ける必要がない。そのため、放射線入射面上に載置された患者の身体等の被写体とシンチレータとの距離が遠くならず、放射線が被写体で散乱されることによるグレアの発生を防止することが可能となる。さらに、緩衝部材がシンチレータや光電変換素子の放射線入射方向下流側に設けられるため、仮に緩衝部材により放射線が散乱されたとしても、シンチレータや光電変換素子を透過した後の放射線を散乱するだけであるから、放射線画像への悪影響はまったく生じず、検出される放射線画像の画像劣化を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る可搬型放射線固体検出器の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0019】
図1は、本実施形態における可搬型放射線固体検出器の斜視図である。本実施形態における可搬型放射線固体検出器1は、カセッテ型のFPDであり、可搬型放射線固体検出器1は、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器ユニット2(図5等参照)と、この検出器ユニット2を内部に収納するハウジング3とを備えている。
【0020】
本実施形態では、ハウジング3は、前述したCR用のカセッテや従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズにあうように、その放射線入射方向の厚さが16mm以下になるように形成されている。
【0021】
図2は、本実施形態におけるハウジング3の分解斜視図である。図2に示すように、ハウジング3は、両端部に開口部311,312を有する中空の角筒状に形成されたハウジング本体部31と、ハウジング本体部31の各開口部311,312を覆い、閉塞する第1の蓋部材32および第2の蓋部材33とを備えている。
【0022】
なお、本実施形態では、上記のように、ハウジング本体部31が角筒状に形成されたハウジング3の場合について説明するが、ハウジング3の構成はこれに限定されず、例えば図3に示すように、ハウジング3を、可搬型放射線固体検出器の放射線入射側に配置されるフロント部材3Aや、バック部材3B、蓋部材3C等で略箱型に形成することも可能であり、このような場合にも本発明は適用される。
【0023】
本実施形態では、図2に示すように、第1の蓋部材32および第2の蓋部材33は、蓋本体部321,331と、挿入部322,332とを備えており、例えば非導電性のプラスチック等の非導電性の材料によって形成されている。
【0024】
蓋本体部321,331は、その外周がハウジング本体部31の各開口部311,312の外周の寸法とほぼ等しい寸法となるように形成されている。また、蓋本体部321,331の、開口部311,312に対する挿入方向における寸法は、本実施形態では8mmとなっている。なお、蓋本体部321,331の上記寸法をどの程度とするかは特に限定されないが、後述するアンテナ装置9が設けられている蓋本体部321については、上記寸法を6mm以上とすることが好ましく、8mm以上であればさらに好ましい。
【0025】
また、挿入部322,332は、開口部311,312に対する挿入側に開口部を有する枠状となっており、挿入部322,332の外周は、ハウジング本体部31の各開口部311,312の内周の寸法よりもわずかに小さい寸法となるように形成されている。
【0026】
挿入部322,332の内部には、検出器ユニット2に対して外部から伝達される外力を緩和することのできる緩衝部材323,333(図5等参照)が設けられている。緩衝部材323,333は、外力を緩和できるものであれば特に限定はされず、例えば、発泡ウレタン、シリコン等を適用することができる。
【0027】
また、特に、挿入部332に設けられる緩衝部材333は、図4(a)に示すように、検出器ユニット2の端部が緩衝部材333の端部の傾斜に沿って水平位置に案内されるように、断面形状がほぼV字状となっている。また、緩衝部材333は、弾性体、粘性体、粘弾性体(viscoelatic等)のような変形可能な材料で形成されていれば、図4(b)、(c)に示すように、第2の蓋部材33がハウジング本体部31に押し込まれる際、緩衝部材333の形状が検出器ユニット2の端部の形状に合わせて変形し、検出器ユニット2の端部が緩衝部材333によって保持される。このように、緩衝部材333は、検出器ユニット2をハウジング3の内部の適正位置に保持する保持部材としても機能する。
【0028】
図2に示すように、挿入部322,332の各側面からは、ハウジング本体部31と蓋部材32,33とを係合する係合手段としての係合片324,334が、開口部311,312に対する挿入方向に向かって延出されている。係合片324,334の外側面には、それぞれ係合凸部325,335が設けられている。
【0029】
なお、挿入部322,332の外周面には、ゴム等で形成された図示しない防水用のリングが設けられることが好ましい。防水用のリングを設けた場合には、ハウジング本体部31と各蓋部材32,33との密着性が増し、粉塵、患者の汗、消毒液等の水分や異物がハウジング3の内部に浸入するのを防ぐことができる。
【0030】
第1の蓋部材32の蓋本体部321の一側面であって、可搬型放射線固体検出器1の放射線入射面X(図1参照)と直交する面には、可搬型放射線固体検出器1と外部の機器との間で無線により情報の送受信を行うためのアンテナ装置9が埋め込まれている。
【0031】
アンテナ装置9には、金属からなる平板状の一対の放射板91,92と、一対の放射板91,92を連結し、当該一対の放射板91,92に対して給電する給電部93とが設けられている。本実施形態において、一対の放射板91,92のうち、一方の放射板91は、正面視形状が台形となるように形成されており、他方の放射板92は、正面視形状がほぼ円形となるように形成されている。そして、給電部93は、一方の放射板91の上底部の略中央に接続されるとともに、他方の放射板92の一部と接続されている。給電部93によって連結されることで、一対の放射板91,92の間には、所定の間隙が形成されている。
【0032】
なお、アンテナ装置9の種類・形状は、ここに例示したものに限定されない。また、アンテナ装置9は蓋本体部321に埋め込まれている場合に限定されず、蓋本体部321の外側や内側に貼付されていてもよい。ただし、アンテナ装置9は、金属やカーボン等の導電性材料からなる導電性部材に近接した位置に設けると受信感度、受信利得が低下することから、カーボン等の導電性材料で形成されているハウジング本体部31や金属等で形成されている各種電子部品22(図5等参照)からできるだけ離れた位置に設けることが好ましく、少なくとも6mm以上離れていることが好ましく、8mm以上離れていればさらに好ましい。
【0033】
この点、本実施形態では、前述のように、アンテナ装置9は非導電性の材料で形成された蓋本体部321に設けられており、蓋本体部321の開口部311に対する挿入方向における寸法は、8mmとなっている。このため、アンテナ装置9は、カーボン繊維等の導電性材料を含んで形成されているハウジング本体部31から8mm離れた位置に配置されることなり、受信感度、受信利得を維持する上で好ましい。
【0034】
また、蓋本体部321の一面であって、アンテナ装置9が形成されている面と同一面上には、図1および図2に示すように、ハウジング3の内部に設けられた充電池26(図5等参照)を充電する際に外部の電源等と接続される充電用端子45が形成されており、また、可搬型放射線固体検出器1の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ46が配置されている。さらに、アンテナ装置9が形成されている面と放射線入射面Xとによって形成される角部には、例えばLED等で構成され充電池26の充電状況や各種の操作状況等を表示するインジケータ47が設けられている。
【0035】
なお、本実施形態では、アンテナ装置9や充電用端子45等が全て第1の蓋部材32に設けられている場合が例示されているが、これらの全部または一部が第2の蓋部材33等に設けられる構成としてもよい。また、アンテナ装置9や充電用端子45等のインターフェース用部品は、ここに例示したものに限定されず、他の部品が含まれていてもよいし、これらのうちの一部を備えない構成としてもよい。
【0036】
ハウジング本体部31は、例えば、心材(型)の上にカーボン繊維を巻回して所望の厚み(例えば、1mm〜2mm)とした上で形状を整え、巻回したカーボン繊維の上に熱硬化性樹脂を流した上で、高温高圧で焼き固めることにより成型し、その後心材を抜き取ることによって形成する。
【0037】
このような手法によってハウジング本体部31を形成した場合には、ハウジング本体部31の内周の寸法が心材(型)の外周の寸法により正確に決定されるため、寸法にばらつきのないハウジング本体部31を簡易に形成することができる。また、ハウジング本体部31を継ぎ目のない一体的な構造として形成することができるため、外から衝撃等が加わった場合に、その外力・外圧を分散させることができる。なお、ハウジング本体部31を、例えば、図示しない板状カーボン繊維を心材(型)の周りに巻回し、高温高圧で焼き固めて形成してもよい。
【0038】
ハウジング本体部31の内側であって、各蓋部材32,33の係合片324,334の係合凸部325,335に対応する位置には、図2および図5に示すように、係合凸部325,335に係合する係合凹部315,316が形成されている。
【0039】
ハウジング3は、ハウジング本体部31の一方側端部の開口部311に第1の蓋部材32の挿入部322を挿入し、他方側端部の開口部312に第2の蓋部材33の挿入部332を挿入して、係合凹部315,316にそれぞれ係合凸部325,335を係合させることにより、両開口部311,312が閉塞され、内部が密閉されて、一体となるようになっている。なお、ハウジング本体部31と各蓋部材32,33とを接合する手段は、ここに例示したものに限定されず、例えばねじ止めすることにより接合してもよいし、接着固定してもよい。
【0040】
なお、本実施形態においては、一旦組み立てを行った後は、第1の蓋部材32および第2の蓋部材33はハウジング本体部31に固着され、取り外すことができない構成となっている。このように構成することにより、ハウジング3内部の密閉性を高めることができる。このため、例えば充電池26の交換が必要になった際等には、蓋部材32,33を破壊して可搬型放射線固体検出器1を分解することとなるが、樹脂等で形成されている蓋部材32,33は比較的安価なものであり、破壊しても損失が少ない一方、内部の検出器ユニット2については再利用可能に取り出すことができる。
【0041】
図5は、検出器ユニット2がハウジング3に収納された状態を下側(撮影時の放射線入射側とは反対側)から見た平面図であり、図6は、図5におけるA−A断面図、図7は、図5におけるB−B断面図である。なお、図5では、説明の便宜上ハウジング本体部31の底面がない状態でハウジング3の内部の状態を示している。
【0042】
図5から図7に示すように、検出器ユニット2は、センサパネル21、各種の電子部品22が実装され後述する光電変換素子としてのフォトダイオード152に関連する回路が設けられた回路基板23等を備えて構成されている。本実施形態では、回路基板23は、樹脂等で形成された基台24の、センサパネル21に対向する面と反対側の面に固定されている。
【0043】
また、センサパネル21と基台24との間には、緩衝部材25が設けられている。緩衝部材25は、発泡ポリプロピレンやポリウレタン、不織布、ゴム、エラストマ等の可撓性を有する公知の材料が用いられる。また、緩衝部材25の厚さは、後述するように厚くするほどセンサパネル21やその中の後述するシンチレータとしてシンチレータ層(発光層)211にかかる応力を低減することができるが、ハウジング3の放射線入射方向の厚さ等を考慮して適宜決定される。
【0044】
さらに、本実施形態では、図6や図7では図示を省略するが、回路基板23の電子部品22等に放射線が照射されないように、緩衝部材25と基台24との間に、鉛の薄板(厚さは例えば0.1mm程度)が介在するように設けられている。また、回路基板23や電子部品22、基台24等とハウジング本体部31の底面との間に緩衝部材を設けてもよい。
【0045】
ここで、ハウジング3内部に収納された検出器ユニット2の後述するシンチレータ層211(CsIシンチレータ)に、外部からの荷重(患者の体重等)の影響が及ばないようにするため、当該外部からの荷重を、後述するように柱状結晶を有するCsIシンチレータの許容限界応力以下にする必要がある。
【0046】
患者(被写体)は、実際の患者撮影時においては、可搬型放射線固体検出器1のハウジング3の放射線入射面X上で種々の姿勢をとるが、その際、CsIシンチレータ(シンチレータ層211)に作用する外部荷重[kg]は、図8に示すように、患者(例えば90kg)の撮影姿勢に応じて変化する。
【0047】
なお、このCsIシンチレータに作用する外部荷重の測定および下記の実験において、可搬型放射線固体検出器1として、ハウジング本体部31は、カーボン繊維として引張弾性率790Gpaのピッチ系カーボン繊維を使用し、ハウジング3の側面部分の高さが16mm、ハウジング本体部31の板厚が2mmの構造である可搬型放射線固体検出器1を用いた。また、そのサイズとしては、最も撓みを生じやすい半切サイズ(14インチ×17インチのサイズ)のものを用いた。さらに、可搬型放射線固体検出器1をブッキーテーブル等の比較的剛性が高いものの上に載置して測定した。
【0048】
また、実際の患者撮影時に想定される可搬型放射線固体検出器1の柱状結晶を有するCsIシンチレータに作用する外部荷重について行った実験についてデータを示しつつ説明する。この実験においても、ハウジング本体部31の構成やサイズ等の条件は上記と同様である。また、可搬型放射線固体検出器1に対する荷重は、図9に示す装置により、ブッキーテーブル等に載置された可搬型放射線固体検出器1の放射線入射面Xの中央部分を押圧する例えば直径80mmの円柱体Mの上部に乗せる重りWの質量を種々変え、放射線入力面Xにかかる荷重を変化させることによって変化させた。
【0049】
また、CsIシンチレータ(シンチレータ層211)に作用する力(応力)は圧力測定装置7を用いて測定される。圧力測定装置7は、例えば、図10に示すように、外部から加わる圧力の変化を感圧素子にて電気信号に変換し出力するセンサシート71と、センサシート71から出力された電気信号をセンサコネクタ72を介して受信するコンピュータ73とを備えるものであり、具体的には、ニッタ株式会社製 I−SCANシステムを用いて測定を行った。
【0050】
本実験において圧力測定装置7で測定されるCsIシンチレータにおける応力P[kg/cm]は、例えば図11に示すように、CsIシンチレータの各部分でそれぞれ異なる値となる。そのため、重りWによる荷重[kg/φ80]を種々変化させた場合に測定されるCsIシンチレータにかかる応力Pのうち最大値Pmaxと、重りWの各荷重との関係を示す実験結果を図12に示す。
【0051】
なお、図12では、上記のようにセンサパネル21と基台24との間に発泡ポリプロピレン製の緩衝部材25(厚さ1mm)を設けた本実施形態の可搬型放射線固体検出器1における実験結果(図12中のA)と、対照実験として行った緩衝部材を設けない可搬型放射線固体検出器における実験結果(図12中のB)とが記載されている。
【0052】
図12に示すように、センサパネル21と基台24との間に緩衝部材25を設けた場合と緩衝部材25を設けない場合とでは、CsIシンチレータ(シンチレータ層211)に作用する外部荷重に有意差が生じる。このように、本実施形態のようにセンサパネル21と基台24との間に緩衝部材25を設けると、緩衝部材を設けない場合に比べてCsIシンチレータ(シンチレータ層211)に作用する外部荷重を低減することが可能となる。
【0053】
一方、図5に示すように、本実施形態では、電子部品22を搭載する回路基板23が4つに分割されており、それぞれセンサパネル21や基台24の各角部近傍に寄せて配置されている。また、電子部品22は、回路基板23上にセンサパネル21の外周に沿って配置されている。電子部品22は、できるだけセンサパネル21の各角部に近い位置に配置されることが好ましい。
【0054】
電子部品22を回路基板23上にこのように配置することによって、検出器ユニット2をハウジング3に収納した際に電子部品22がハウジング3の角部近傍およびハウジング本体部31の周縁部の、外力に対して変形し難い(高強度の)領域に沿って配置される。なお、回路基板23や電子部品22の数、配置等はここに例示したものに限定されない。
【0055】
本実施形態において、回路基板23上に配置される電子部品22としては、例えば各部の制御を行う制御部27(図18参照)を構成するCPU(central processing unit)や、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる記憶部(以上図示省略)、走査駆動回路16(図18参照)、信号読出し回路17(図18参照)等がある。なお、ROM、RAMとは別に、フラッシュメモリなどの書き換え可能な読出し専用メモリ等からなりセンサパネル21から出力された画像信号を記憶する画像記憶部を備えていてもよい。
【0056】
また、検出器ユニット2には、外部装置との間で各種信号の送受信を行う図示しない通信部が設けられている。通信部は、例えば、センサパネル21から出力された画像信号を前述のアンテナ装置9を介して外部装置に転送したり、外部装置から送信される撮影開始信号等をアンテナ装置9を介して受信するようになっている。
【0057】
また、基台24上であって、検出器ユニット2をハウジング3の内部に収納した際に第1の蓋部材32に設けられている充電用端子45の近傍となる位置には、可搬型放射線固体検出器1を構成する複数の駆動部(例えば、後述する走査駆動回路16(図18参照)、信号読出し回路17(図18参照)、通信部、記憶部、図示しない充電量検出部、インジケータ47、センサパネル21等)に電力を供給する電力供給部として充電池26が設けられている。
【0058】
充電池26としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛電池、鉛蓄電池等の充電自在な電池を適用することができる。また、充電池26に代えて、燃料電池等を適用してもよい。なお、電力供給部としての充電池26の形状、大きさ、個数、配置等は、図5等に例示したものに限定されない。
【0059】
充電池26は、基台24上の所定の位置に設置することにより前述の充電用端子45と電気的に接続されるようになっており、例えば、可搬型放射線固体検出器1を外部電源と接続されるクレードル等の図示しない充電用装置に装着することによって充電用装置側の端子とハウジング3側の充電用端子45とが接続されて充電池26の充電が行われるようになっている。
【0060】
各種電子部品22、充電池26と接続されている回路基板23の端部には、柔軟性のある材料で構成されたフレキシブルハーネス327が設けられている。回路基板23等は、このフレキシブルハーネス327によって、第1の蓋部材32に設けられている充電用端子45、電源スイッチ46、インジケータ47、およびアンテナ装置9と電気的に接続されている。なお、フレキシブルハーネス327を第1の蓋部材32の充電用端子45等と接続する手法は、コネクタによってもよいし、半田付けによってもよい。
【0061】
図13は、センサパネル21の平面図であり、図14は、センサパネル21を図13における矢視F方向から見た側面図であり、図15は、センサパネル21の図13におけるG−G断面図である。
【0062】
センサパネル21は、入射した放射線を光に変換するシンチレータとしてシンチレータ層(発光層)211が一方の面に形成された第1のガラス基板214、シンチレータ層211の下側に積層されシンチレータ層211により変換された光を検出して電気信号に変換する信号検出部151(図18参照)が一方の面に形成された第2のガラス基板213等を備えて構成されており、これらが積層された積層構造となっている。
【0063】
シンチレータ層211は、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力するようになっている。
【0064】
このシンチレータ層211で用いられる蛍光体は、例えば、CaWO等を母体材料とするものや、CsI:TlやCdS:Tb、ZnS:Ag等の母体材料内に発光中心物質が付活されたものを用いることができる。また、希土類元素をMとしたとき、(Gd,M,Eu)の一般式で示される蛍光体を用いることができる。特に、放射線吸収および発光効率が高いことよりCsI:TlやCdS:Tbが好ましく、これらを用いることで、ノイズの低い高画質の画像を得ることができる。
【0065】
シンチレータ層211は、図16の拡大図に示すように、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料(ポリマー)により形成された支持体211bの上に、例えば気相成長法により蛍光体211aを層状に形成したものであり、蛍光体211aの層は、蛍光体211aの柱状結晶からなっている。気相成長法としては、蒸着法、スパッタ法、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法等が好ましく用いられる。いずれの手法においても、蛍光体211aの層を支持体211b上に独立した細長い柱状結晶に気相成長させることができる。
【0066】
シンチレータ層211は、第1のガラス基板214の下側(撮影時に放射線が入射する側と反対側)に貼付されており、第1のガラス基板214の上側(撮影時に放射線が入射する側)にはガラス保護フィルム215がさらに積層されている。また、シンチレータ層211の下側(撮影時に放射線が入射する側とは反対側)には、第2のガラス基板213が積層されており、第2のガラス基板213の下側にはガラス保護フィルム216がさらに積層されている。
【0067】
第1のガラス基板214および第2のガラス基板213は、ともに厚みが0.6mm程度のものが用いられている。なお、第1のガラス基板214および第2のガラス基板213の厚みは0.6mmに限定されない。また、第1のガラス基板214と第2のガラス基板213とで厚みが異なるようにしてもよい。
【0068】
また、第1のガラス基板214および第2のガラス基板213(図14等参照)は、レーザにより端面を切断することにより、端面、すなわち、切断面と、この切断面とガラス基板の上面との稜線部分、および切断面とガラス基板の下面との稜線部分を平滑化する平滑化処理を施されている。
【0069】
ここで、レーザで第1のガラス基板214および第2のガラス基板213の端面を切断することによる平滑化処理について説明する。
【0070】
ガラスを切断する場合、まずガラス表面に硬く鋭いもので筋(傷)をつけてガラスの厚さ方向に垂直クラックを形成し(スクライブ作業)、このクラックを伸ばすように応力をかけて割る(分断作業)という二つの作業工程を経るのが一般である。そして、従来は、ガラス表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を超硬合金、電着ダイヤモンド、焼結ダイヤモンド等を用いて行っていた。しかし、ガラス表面に超硬合金やダイヤモンド等で傷を付けた場合には、切断(分断)されたガラスの端面に微細な凹凸ができ、曲げ等の負荷をガラスにかけた場合に、この凹凸部分に応力が集中するため、割れやすいという問題があった。
【0071】
この点、本実施形態では、レーザを用いて第1のガラス基板214および第2のガラス基板213の表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を行う。このようにレーザを用いた場合には、切断(分断)後のガラスの端面が平滑化されるので、曲げ等の負荷に対するガラスの強度を高めることができる。
【0072】
ガラス基板の割れは、外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基板断裁時に応力集中の元となる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因しているため、このように断裁後の端面を平滑化する処理をすることにより、かなりの外力(応力)に対してもガラス基板の割れ等の発生を防止することができる。
【0073】
なお、レーザにより第1のガラス基板214および第2のガラス基板213の端面を切断する切断装置としては、例えばレーザ発振部において、YAG(Yttrium Aluminum Garnet イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)をレーザ光学媒体として用いるYAGレーザ等が好適に用いられるが、切断に用いられる切断装置はこれに限定されない。
【0074】
第2のガラス基板213の上側(前述したシンチレータ層211に対向する側)には、シンチレータ層211から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う検出部である信号検出部151(図18参照)が形成されている。
【0075】
このように、本実施形態においては、信号検出部151が、シンチレータ層211の下側に積層されており、信号検出部151の下側に配置された第2のガラス基板213と、シンチレータ層211の上側に配置された第1のガラス基板214との間に、信号検出部151とシンチレータ層211とが対向した状態で挟み込まれる構成となっている。
【0076】
従来は、ハウジングを通じて内部のガラス基板に作用する応力を抑制しなければ、ガラス基板の割れは防止できないと考えられていたため、前述したように、ハウジングとガラス基板との間にスペースを設け、当該スペースに外力を緩和/減少せしめる緩衝部材を多用していた。このためハウジングが一層大型化するものであった。
【0077】
この点、本発明者等は、ガラス基板の割れは、当該ガラス基板に作用する外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基板断裁時に応力集中の元となる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因していることを見出した。そこで、上記の応力集中の元となる前記のバリや、凸凹部を除去すべく、断裁後の端面を平滑化する処理を行い、これにより、前述のような構成のハウジング3に作用する患者の体重等に起因する荷重や撓みに対して、ガラス基板213,214の割れ等の発生を防止することが可能となった。
【0078】
また、第1のガラス基板214と第2のガラス基板213との外周縁に沿って封止部材217が設けられており、この封止部材217によって第1のガラス基板214と第2のガラス基板213とが接着され、結合されている。これにより、曲げ等の負荷に対してより強度を高めることができる。
【0079】
さらに、第1のガラス基板214と第2のガラス基板213とを接着する際は、第1のガラス基板214と第2のガラス基板213との間の空間から空気を吸引する等により脱気した後に封止部材217による接着、結合を行うようになっており、これにより、空気に含まれる湿気がシンチレータ層211等に影響を及ぼすのを防ぐことができ、シンチレータ層211等の長寿命化を図ることができる。
【0080】
また、センサパネル21の各角部および角部同士の中間近傍にはセンサパネル21を外部からの衝撃等から保護するための緩衝部材218が設けられている。
【0081】
ここで、センサパネル21の回路構成について説明する。図17は、信号検出部151を構成する1画素分の光電変換部の等価回路図である。
【0082】
図17に示すように、1画素分の光電変換部の構成は、光電変換素子としてのフォトダイオード152と、フォトダイオード152で蓄積された電気エネルギーをスイッチングにより電気信号として取り出す薄膜トランジスタ(以下「TFT」と称する。)153とから構成されている。フォトダイオード152は、電荷を生成し蓄積する撮像素子である。フォトダイオード152から取り出された電気信号は、増幅器154により信号読出し回路17が検出可能なレベルにまで電気信号を増幅するようになっている。
【0083】
具体的には、光の照射を受けるとフォトダイオード152で電荷が発生し、TFT153のゲートGに信号読出し用の電圧が印加されると、TFT153のソースSに接続されたフォトダイオード152から電荷がTFT153のドレインD側に流れ、増幅器154に並列に接続されたコンデンサ154aに蓄積される。そして、増幅器154から、コンデンサ154aに蓄積された電荷に比例して増幅された電気信号が出力されるようになっている。
【0084】
また、増幅器154から増幅された電気信号が出力されて電気信号が取り出されると、増幅器154やコンデンサ154aに並列に接続されたスイッチ154bがオンされてコンデンサ154aに蓄積された電荷が放出されて、増幅器154がリセットされるようになっている。なお、フォトダイオード152は、単に規制キャパシタンスを有した光ダイオードでもよいし、フォトダイオード152と光電変換部のダイナミックレンジを改良するように追加コンデンサを並列に含んでいるものでもよい。
【0085】
図18は、このような光電変換部を二次元に配列した等価回路図であり、画素間には、走査線Llと信号線Lrが直交するように配設されている。TFT153のソースSには前述のフォトダイオード152の一端側が接続されており、TFT153のドレインDは信号線Lrに接続されている。一方、フォトダイオード152の他端側は、各行に配された隣接するフォトダイオード152の他端側と接続されて共通のバイアス線Lbを通じてバイアス電源155に接続されている。
【0086】
このバイアス電源155は制御部27に接続され、制御部27からの指示によりバイアス線Lbを通じてフォトダイオード152に電圧がかかるようになっている。また各行に配されたTFT153のゲートGは、共通の走査線Llに接続されており、走査線Llは走査駆動回路16を介して制御部27に接続されている。同様に、各列に配されたTFT153のドレインDは、共通の信号線Lrに接続されて制御部27に制御される信号読出し回路17に接続されている。
【0087】
信号読出し回路17には、前述した信号線Lrごとの増幅器154が設けられている。信号読出し時には、選択された走査線Llに信号読出し用の電圧が印加され、それによりその走査線Llに接続されている各TFT153のゲートGに電圧が印加され、各TFT153を介して各フォトダイオード152から各信号線Lrにそのフォトダイオード152で発生した電荷が流れる。そして、各増幅器154でフォトダイオード152ごとに電荷が増幅され、1行分のフォトダイオード152の情報が取り出される。そして、この操作を走査線Llをそれぞれ切り替えてすべての走査線Llについて行うことで、全フォトダイオード152から情報を取り出すようになっている。
【0088】
各増幅器154にはそれぞれサンプルホールド回路156が接続されている。各サンプルホールド回路156は信号読出し回路17に設けられたアナログマルチプレクサ157に接続されており、信号読出し回路17により読み出された信号は、アナログマルチプレクサ157からA/D変換器158を介して前述した制御部27に出力されるようになっている。
【0089】
なお、TFT153は、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のもの、有機半導体を用いたもののいずれであってもよい。また、本実施形態では、撮像素子として光電変換素子としてのフォトダイオード152を用いた場合を例示したが、光電変換素子はフォトダイオード以外の固体撮像素子を用いてもよい。
【0090】
この信号検出部151の側部には、各フォトダイオード(光電変換素子)152にパルスを送って当該各フォトダイオード152を走査・駆動させる走査駆動回路16と、各光電変換素子に蓄積された電気エネルギーを読み出す信号読出し回路17とが配されている。
【0091】
次に、本実施形態における可搬型放射線固体検出器1の作用について説明する。
【0092】
前述したように、本実施形態では、可搬型放射線固体検出器1の第1の蓋部材32および第2の蓋部材33(図2参照)は、ハウジング本体部31の一方側端部の開口部311に第1の蓋部材32の挿入部322が挿入され、他方側端部の開口部312に第2の蓋部材33の挿入部332が挿入されて、ハウジング本体部31の係合凹部315,316にそれぞれ係合凸部325,335が係合される。
【0093】
そして、その後、第1の蓋部材32および第2の蓋部材33をハウジング本体部31から取り外すことができないほど強固にハウジング本体部31に固着する。そのため、ハウジング本体部31や第1の蓋部材32、第2の蓋部材33を含むハウジング3全体が一体化される。
【0094】
ハウジング3を上記のように形成し、また、その内部においてセンサパネル21と緩衝部材25と基台24等を図6等に示したように重ね合わせた状態として、緩衝部材25の厚さTを種々変化させて、同一の圧力をかけた場合のセンサパネル21のシンチレータ層211における圧力感度(単位は[dB])がどのように変化するかを調べた実験結果を図19に示す。
【0095】
なお、緩衝部材25として発泡ポリプロピレンを用いる場合について実験を行った。また、図19で、緩衝部材25の厚さTが0mmとは、緩衝部材25を設けずに、前述した鉛の薄板を介してセンサパネル21の第2のガラス基板213と基台24とを直接固定した場合を表す。
【0096】
図19に示すように、緩衝部材25の厚さTが0mmの場合に比べて、厚さTが0.5mm、1mmと厚くなるに従ってシンチレータ層211における圧力感度は小さくなることがわかる。具体的には、この実験によれば、緩衝部材25の厚さTが0mmの場合に比べて、厚さTが0.5mmの場合には圧力感度が約2dB、厚さTが1mmの場合には圧力感度が約6dB小さくなる。言い換えると、緩衝部材25をシンチレータ層211に近い位置に配置した方が、荷重低減効果が大きいことを示している。
【0097】
この緩衝部材25の厚さTを厚くした場合の圧力感度の低下は、緩衝部材25を発泡ポリプロピレンで形成した場合に限らず、ポリウレタンや不織布、ゴム、エラストマ等の材料で形成する場合にも同様であった。一方、図示を省略するが、緩衝部材をハウジング本体部31のバック板Y(ハウジング本体部31の放射線入射面X(図6参照)と反対側の裏側の板)の内面側(バック板Yと基台24の間)に設けた場合、図19のグラフ右側に示すように、緩衝部材の効果は、本実施形態のように緩衝部材25をセンサパネル21と基台24との間に設けた場合に比べ、有意差が小さい。
【0098】
そして、可搬型放射線固体検出器1に患者の体重(荷重)が加わる場合のように、可搬型放射線固体検出器1のハウジング3の放射線入射面X(図1参照)に全体的に圧力が加わった場合、シンチレータ層211にもその応力がかかるが、本実施形態のようにセンサパネル21と基台24との間に緩衝部材25を設けたことにより、シンチレータ層211にかかる圧力が分散されて吸収されるため、その圧力感度が小さくなる。
【0099】
そのため、シンチレータ層211がCsI等の母体材料内に発光中心物質が付活された蛍光体を蒸着により柱状結晶として形成されている場合でも、外力により破壊され難くなる。実際に約0.5mmの厚さの発泡ポリプロピレンや不織布等を用いて緩衝部材25を形成し、可搬型放射線固体検出器1の通常の使用状況で使用したところ、シンチレータ層211の蛍光体の柱状結晶が損傷されることはなかった。
【0100】
以上のように、本実施形態に係る可搬型放射線固体検出器1によれば、ハウジング3の放射線入射方向の厚さが16mm以下であり、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズの範囲内に収まる寸法であるため、カセッテ型のFPDである可搬型放射線固体検出器1による撮影を行う場合でもCR用のカセッテ用に設けられているブッキーテーブル等、既存の装置、設備を利用することができる。
【0101】
また、センサパネル21と基台24との間に緩衝部材25を設けたため、通常の使用状態で外部から圧力がかかっても、緩衝部材25がシンチレータ(シンチレータ層211)にかかる圧力を分散して効果的に吸収するために、シンチレータにおける圧力感度を有効に減少させることが可能となり、シンチレータの蛍光体が柱状結晶で形成される場合にも柱状結晶が損傷、破壊されることを有効に防止することが可能となる。
【0102】
さらに、緩衝部材25をセンサパネル21と基台24との間に設けることで、上記のような有利な効果が得られるため、可搬型放射線固体検出器1のハウジング3の放射線入射面Xとセンサパネル21との間に緩衝部材を設ける必要がない。そのため、例えばハウジング3の放射線入射面Xとセンサパネル21との間に緩衝部材を設けた場合には放射線入射面X上に載置された患者の身体等の被写体とシンチレータとの距離が遠くなり、放射線が被写体で散乱されてグレアが発生して検出される放射線画像の画像劣化が発生するが、そのようなグレアの発生を防止することが可能となる。
【0103】
また、ハウジング3の放射線入射面Xとセンサパネル21との間に緩衝部材を設けた場合には、緩衝部材により入射した放射線が散乱させる可能性が残るが、本発明によれば、そのような緩衝部材を設ける必要がなく、また、本発明の緩衝部材25はシンチレータや光電変換素子の放射線入射方向下流側に設けられるため、仮に緩衝部材25により放射線が散乱されたとしても、シンチレータや光電変換素子を透過した後の放射線を散乱するだけであるから、放射線画像への悪影響はまったく生じない。
【0104】
なお、上記の実施形態では、シンチレータであるシンチレータ層211を第1のガラス基板214の一方の面上に形成する場合について説明したが、シンチレータの形成手法はこれに限定されず、本発明もシンチレータの形成手法に限定されない。
【0105】
例えば、上記の実施形態と同様に、シンチレータを、例えばセルロースアセテートフィルム等の支持体の上に例えば蒸着法等の気相成長法により蛍光体の柱状結晶を形成することで層状に形成し、それをガラス基板の面に貼付する代わりに、例えば、上記の第1のガラス基板214と同様に厚みが0.6mm程度の、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)やポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等の樹脂フィルムの面に貼付して形成することも可能である。
【0106】
また、同様に、支持体上に蛍光体の柱状結晶を形成して層状に形成したシンチレータを第2のガラス基板213の面上に形成された光電変換素子(フォトダイオード152)を被覆する配置し、それらの上方から封止材で覆うようにして光電変換素子の上にシンチレータを配置するように構成することも可能である。
【0107】
この場合、封止材としては例えば熱融着性の樹脂が用いられて、一般に使用されるインパルスシーラーで融着される。熱融着性の樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0108】
なお、本発明が上記の実施形態やその変形例に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施形態に係る可搬型放射線固体検出器を示す斜視図である。
【図2】本実施形態におけるハウジングの分解斜視図である。
【図3】ハウジングの変形例の分解斜視図である。
【図4】(a)は断面形状がV字状に形成された第2の蓋部材の緩衝部材を示す図であり、(b)は検出器ユニットが案内されて水平位置に移動した状態を示す図であり、(c)は検出器ユニットが緩衝部材により保持された状態を示す図である。
【図5】図1に示す可搬型放射線固体検出器の内部構成を示す概略図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【図8】撮影姿勢ごとにシンチレータにかかる荷重を示すグラフである。
【図9】可搬型放射線固体検出器に荷重をかけるための装置の例を示す図である。
【図10】圧力測定装置の概略構成を示す図である。
【図11】圧力測定装置で測定されるシンチレータにおける応力の一例を示すグラフである。
【図12】シンチレータにかかる応力の最大値と各荷重との関係を示すグラフである。
【図13】本実施形態におけるセンサパネルを示す平面図である。
【図14】図13に示すセンサパネルを矢視F方向から見た側面図である。
【図15】図13に示すセンサパネルのG−G断面図である。
【図16】シンチレータ層の構成を示す拡大図である。
【図17】信号検出部を構成する光電変換部の1画素分の等価回路構成図である。
【図18】図17に示す光電変換部を二次元に配列した等価回路構成図である。
【図19】緩衝部材の厚さとシンチレータ層での圧力感度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0110】
1 可搬型放射線固体検出器
3 ハウジング
21 センサパネル
23 回路基板(回路)
24 基台
25 緩衝部材
152 フォトダイオード(光電変換素子)
211 シンチレータ層(シンチレータ)
211a 蛍光体
213 第2のガラス基板(基板)
214 第1のガラス基板(別体の基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された複数の光電変換手段と、前記光電変換手段上に対向して設けられ、入射した放射線を光に変換するシンチレータとを備えるセンサパネルと、
前記センサパネルに対向する面と反対側の面に前記光電変換手段に関連する回路が設けられた基台と、
をハウジング内に内蔵し、
さらに、前記センサパネルと前記基台との間に緩衝部材を設けたことを特徴とする可搬型放射線固体検出器。
【請求項2】
前記ハウジングは、その放射線入射方向の厚さが16mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の可搬型放射線固体検出器。
【請求項3】
前記シンチレータは、蒸着による蛍光体の柱状結晶からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可搬型放射線固体検出器。
【請求項4】
前記シンチレータは、前記基板とは別体の基板の一方側の面に蒸着形成されており、
前記基板と前記別体の基板は、前記複数の光電変換手段が設けられた前記基板の面と、前記シンチレータが蒸着形成された前記別体の基板の面とが対向するように一体化されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の可搬型放射線固体検出器。
【請求項5】
前記基板とは別体の基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項4に記載の可搬型放射線固体検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−128172(P2011−128172A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102047(P2008−102047)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】