説明

可搬式給油装置

【課題】地震等の災害発生時等に給油装置が使用できない場合でも、安全かつ迅速に車両へ燃料油を給油することができ、取り扱いも容易な可搬式給油装置を提供する。
【解決手段】燃料油を吸入する吸入口24に通じる管路20に、給油ポンプ22及び流量パルス発信器を連結した流量計23を順次配設し、管路の先端に、給油ノズル7を有する給油ホース6を接続し、流量パルス発信器からの給油量に関するデータを含む給油データを受信して表示する表示装置9と、装置全体を制御する制御装置とを備える可搬式給油装置において、外部より可搬式給油装置に給電して可搬式給油装置を駆動する。感震センサ又は傾きセンサを設け、可搬式給油装置によって給油をしている際に、感震センサ又は傾きセンサが、所定の振動又は傾きを検知したときに、可搬式給油装置による給油を停止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等の災害発生時等に給油装置が損傷した場合に、車両等に燃料油を給油する可搬式給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等にガソリン等の燃料油を供給する給油所には、燃料油を貯留する地下タンクが埋設され、この地下タンクと地上に設けた給油装置とを給油管で接続し、給油装置で車両等へ燃料油を給油する。このような給油所で、例えば、地震等の災害が発生した場合には、給油管又は給油装置が損傷して地下タンク内の燃料油が給油できなくなる虞がある。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1に、災害時に給油装置での給油作業が不能となったときに、地下タンク内の燃料油を車両等に供給することができると同時に、正確な給油量を把握できる可搬式給油装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−114400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の可搬式給油装置は、給油装置での給油作業が不能になっても、正確な給油量を把握しながら地下タンク内の燃料油を供給することができて有効であるが、この可搬式給油装置を駆動する原動機に予め給油していないと、原動機を実際に使用する際に地下タンクから原動機そのものへ燃料油を供給することができず、給油作業を行えない虞がある。また、この可搬式給油装置は、原動機等を備えるために重量が大きく、給油対象となる車両等の近傍へ移動させるのが面倒であるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の可搬式給油装置における問題点に鑑みてなされたものであって、地震等の災害発生時に給油装置が給油不可となった際にも安全かつ迅速に車両等へ燃料油を給油することができ、取り扱いも容易な可搬式給油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、燃料油を吸入する吸入口に通じる管路に、給油ポンプ及び流量パルス発信器を連結した流量計を順次配設し、前記管路の先端に、給油ノズルを有する給油ホースを接続し、前記流量パルス発信器からの給油量に関するデータを含む給油データを受信して表示する表示装置と、装置全体を制御する制御装置とを備える可搬式給油装置において、外部より該可搬式給油装置に給電して該可搬式給油装置を駆動することを特徴とする。
【0008】
そして、本発明によれば、外部より該可搬式給油装置に給電して該可搬式給油装置を駆動することができるため、地震等の災害発生時に給油装置が使用できない場合でも、安全かつ迅速に車両等へ燃料油を給油することができる。また、原動機等を備える必要もないため、軽量で取り扱いも容易な可搬式給油装置を提供することができる。
【0009】
上記可搬式給油装置に、さらに感震センサ又は傾きセンサを設け、該可搬式給油装置によって給油をしている際に、該感震センサ又は傾きセンサが、所定の振動又は傾きを検知したときに、該可搬式給油装置による給油を停止することができる。これによって、給油中に地震が起きたような場合や、被災地等で地面が傾斜して不安定な姿勢となったり、給油中の車両等が移動して可搬式給油装置が車両等に引きづられた場合などに給油を停止し、可搬式給油装置が倒壊して燃料油が周囲に流出するのを回避することができる。
【0010】
上記可搬式給油装置に、さらに前記吸入口の近傍に水検知センサを設け、該可搬式給油装置によって給油をしている際に、該水検知センサが水分を検知したときに、該可搬式給油装置による給油を停止することができる。これによって、地震等で地下タンクが破損して周りの水が地下タンクに侵入した場合でも、燃料油に水が混入したことを検知することができ、水が混入した燃料油を使用することによる車両トラブルを未然に防止することができる。
【0011】
上記可搬式給油装置に、さらに前記給油ポンプに空気検知センサを設け、該可搬式給油装置によって給油をしている際に、前記空気検知センサが空気を検知したときに、該可搬式給油装置による給油を停止することができる。これによって、災害時の配管損傷等によるポンプへの空気の混入を検知することができ、燃料油の正確な計量及び円滑な給油動作を継続することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、地震等の災害発生時等に給油装置が使用できない場合でも、安全かつ迅速に車両へ燃料油を給油することができ、取り扱いも容易な可搬式給油装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る可搬式給油装置の一実施の形態を示す外観図であって、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図2】図1に示す可搬式給油装置の内部構造を示す図であって、(a)は正面断面図、(b)は上部ケースの斜面を示す外観図、(c)は左側断面図、(d)は右側面図(外観図)である。
【図3】図1に示す可搬式給油装置の表示部及び各スイッチを示す概略図である。
【図4】図1に示す可搬式給油装置の使用方法を説明するための概略図である。
【図5】本発明に係る可搬式給油装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る可搬式給油装置の他の実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る可搬式給油装置の基本構成を示し、この可搬式給油装置1は、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油等を給油する地上設置型の装置であり、表示装置9、操作スイッチ12、装置全体を制御する制御装置(不図示)等が配置された上部ケース2と、吸入ホース4、電源ケーブル5、先端に給油ノズル7を有する吐出ホース6、接地用のケーブルリール8、検尺棒13等を保持する下部ケース3等で構成される。下部ケース3の底部には、脚部10とキャスター11とが装着され、下部ケース3の上部には運搬用取手14が装着されている。
【0016】
図2に示すように、下部ケース3の内部には、モータ21で駆動される給油ポンプ22と、流量パルス発信器を有する流量計23とが順次、吸入口24を下端部に備えた給油管20に接続される。給油ポンプ22は、空気検知センサを備え、給油ポンプ22内に混入した空気を検知する。モータ21と給油ポンプ22との間にはVベルト25が架設される。また、モータ21は、ワンウェイベアリング21aを備え、手動でも回転可能である。
【0017】
吸入口24は、カップリング4bを介して吸入ホース4に接続可能であり、流量計23の吐出口26は、カップリング6aを介して吐出ホース6に接続可能に構成される。
【0018】
上部ケース2の正面側には、図2(a)に示すように、電子カウンタ(基板)27が配置され、その上に、図2(b)に示すように、表示装置9と操作スイッチ12等が配置される。
【0019】
接地用のケーブルリール8に巻回されているケーブルの一端は、給油ポンプ22のフレームに固定される。尚、接地用のケーブルリール8に代えて、単に接地用のコードを下部ケース3に巻いておくだけでもよい。
【0020】
図3に示すように、表示装置9は、給油量を表示する表示部9aと、リモコンの受光部9bとを備え、リモコンで1回の給油量を60L又は70Lに設定したり、給油積算量を読み出すことができる。
【0021】
操作スイッチ12は、左から、可搬式給油装置1の電源スイッチ12aと、給油量を満タンと20L等の定量給油のいずれかに切り換える切換スイッチ12bと、給油を開始するスタートスイッチ12cと、給油を停止する停止スイッチ12dとで構成される。
【0022】
次に、上記構成を有する可搬式給油装置1の使用方法について、図4を中心に参照しながら説明する。
【0023】
運搬用取手14及びキャスター11(図1参照)を利用し、燃料油を供給する車両28の近傍に可搬式給油装置1を移動させ、吸入ホース4の先端部4a(図1参照)を検尺口29を介して地下タンクの内部に挿入し、燃料油レベルの下方に保持する。一方、電源ケーブル5の端子5aを電源供給車両30のバッテリ30aに接続し、バッテリ30aから可搬式給油装置1へ給電可能とする。この際、電源供給車両30は、可搬式給油装置1から安全な距離を有する場所に停車させる。また、ケーブルリール8を用いて可搬式給油装置1の近傍に位置する給油装置の枠体や、タンクローリーから燃料油を供給する注油管等に接地する。
【0024】
次に、可搬式給油装置1の電源スイッチ12a(図3参照)をオンし、リモコンによる初期設定を行う。リモコンを操作して受光部9bに信号を送り、1回の給油量を60L又は70Lに設定する。
【0025】
その後、通常の給油装置と同様に、給油ノズル7のノズル部7aを給油対象車両28の給油口に挿入し、切換スイッチ12b(図3参照)を満タンと20L定量給油のいずれかに切り換え、スタートスイッチ12cを押下する。これにより、モータ21の制御スイッチがオンして給油ポンプ22の運転が開始され、流量計23の流量パルス発信器から出力される流量パルス信号を積算して表示装置9の表示部9aに給油量として表示し、停止スイッチ12dが押下されると給油停止信号によりモータ21の制御スイッチがオフし、一連の給電動作が完了する。尚、停止スイッチ12dは、通常の給油動作を停止する場合に加え、可搬式給油装置1を緊急停止する場合にも用いられる。
【0026】
また、上記可搬式給油装置1による給油中に、給油ポンプ22の空気検知センサが空気を検知したときには、可搬式給油装置1による給油を停止し、その旨を表示装置9の表示部9aに表示したり、別途設けた警告灯等により使用者に通知する。
【0027】
上記給油が複数回行われ、給油積算量を知りたい場合には、リモコンを用い表示装置9の受光部9bに指令を送り、表示部9aに表示させることができる。また、給油が完了し、可搬式給油装置1を保管する際には、防水梱包を行って津波の影響を回避する。
【0028】
次に、上記可搬式給油装置1の基本構成に、種々の災害関連機能を設けた可搬式給油装置について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0029】
図5に示す可搬式給油装置1は、図1乃至図3に示した基本構成に、さらに、上部ケース2と下部ケース3の間に板状のソリッドべーパーバリア31を介在させ、ソリッドべーパーバリア31の上方に感震センサ32を配し、給油ポンプ22の吸入口に磁石34、35を備えたストレーナー33を設け、吸入口24の近傍にT字管36を介して水検知センサ37を備える。
【0030】
ソリッドべーパーバリア31は、電気部品への引火を防止するために備えられ、地面からの距離Lが600mm以上の箇所に配設される。このソリッドべーパーバリア31によって給油に伴って発生する、モータ21、給油ポンプ22、流量計23等からなる給油機構からのベーパの上昇を抑え、上部ケース2の内部に存在する表示装置9や制御装置等にベーパが浸入しないようにする。また、ソリッドべーパーバリア31を貫通する各ケーブルはパッキンによりシールされ、上部ケース2へのベーパの浸入を防いでいる。
【0031】
感震センサ32は、地震等によって発生する振動を検知するために備えられ、ボール32aの移動に伴う接点32bのオン、オフが所定時間繰り返されることを検知して振動の有無を判断すると共に、可搬式給油装置1が傾いてボール32aが移動したままとなり、接点32bが所定時間以上オフになった場合に可搬式給油装置1の傾斜を検知する。この感震センサ32の代わりに、ジャイロセンサ(電子式傾斜センサ)等を使用することもできる。
【0032】
ストレーナー33は、地震で揺られて落下した配管やタンク内部のさびを燃料油から取り除くために設けられ、落下したさびが燃料油に混入した場合でも、磁石34、35によって除去することができる。
【0033】
水検知センサ37は、地震による地下タンクの損傷、津波による浸水等により地下タンクに水が入っていることがあるため、吸い上げた燃料油中に水が混入していることを検知する。
【0034】
上記可搬式給油装置1による給油中に、感震センサ32が振動や傾きを検知したり、水検知センサ37が吸い上げた燃料油中に水が混入していることを検知した場合には、可搬式給油装置1による給油を停止し、その旨を表示装置9の表示部9aに表示したり、別途設けた警告灯等により使用者に報知する。
【0035】
図6に示す可搬式給油装置1は、図1乃至図3に示した基本構成に、さらに、水準器41と、レベルアジャスター42とを備え、常に水平にて給油作業ができるように構成される。
【0036】
水準器41は、可搬式給油装置1の地面に対する傾斜を確認するために備えられ、水準器41によって可搬式給油装置1が傾斜していることが確認された場合には、レベルアジャスター42で可搬式給油装置1の姿勢を修正する。
【0037】
レベルアジャスター42は、傾斜面や災害により損傷を受けた地盤面でも安全な姿勢で可搬式給油装置1を設置し、可搬式給油装置1による給油を可能とするために備えられ、図6(a)に示すように、凹凸の激しい地面43であっても、レベルアジャスター42の長さを調整することで可搬式給油装置1の姿勢を安定化することができる。
【0038】
尚、上記実施の形態では、電源供給車両30のバッテリ30aから可搬式給油装置1に給電する場合について説明したが、車両以外にも種々の装置等から可搬式給油装置1に給電することができ、外部より可搬式給油装置1に給電して駆動することができるいかなる物を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 可搬式給油装置
2 上部ケース
3 下部ケース
4 吸入ホース
4a 先端部
4b カップリング
5 電源ケーブル
5a 端子
6 吐出ホース
6a カップリング
7 給油ノズル
7a ノズル部
8 ケーブルリール
9 表示装置
9a 表示部
9b 受光部
10 脚部
11 キャスター
12 操作スイッチ
12a 電源スイッチ
12b 切換スイッチ
12c スタートスイッチ
12d 停止スイッチ
13 検尺棒
14 運搬用取手
20 給油管
21 モータ
21a ワンウェイベアリング
22 給油ポンプ
23 流量計
24 吸入口
25 Vベルト
26 吐出口
27 電子カウンタ
28 (燃料油を供給する)車両
29 検尺口
30 電源供給車両
30a バッテリ
31 ソリッドべーパーバリア
32 感震センサ
32a ボール
32b 接点
33 ストレーナー
34、35 磁石
36 T字管
37 水検知センサ
41 水準器
42 レベルアジャスター
43 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油を吸入する吸入口に通じる管路に、給油ポンプ及び流量パルス発信器を連結した流量計を順次配設し、前記管路の先端に、給油ノズルを有する給油ホースを接続し、前記流量パルス発信器からの給油量に関するデータを含む給油データを受信して表示する表示装置と、装置全体を制御する制御装置とを備える可搬式給油装置において、
外部より該可搬式給油装置に給電して該可搬式給油装置を駆動することを特徴とする可搬式給油装置。
【請求項2】
さらに感震センサ又は傾きセンサを備え、該可搬式給油装置によって給油をしている際に、該感震センサ又は傾きセンサが、所定の振動又は傾きを検知したときに、該可搬式給油装置による給油を停止することを特徴とする請求項1に記載の可搬式給油装置。
【請求項3】
さらに前記吸入口の近傍に水検知センサを備え、該可搬式給油装置によって給油をしている際に、該水検知センサが水分を検知したときに、該可搬式給油装置による給油を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬式給油装置。
【請求項4】
さらに前記給油ポンプに空気検知センサを備え、該可搬式給油装置によって給油をしている際に、前記空気検知センサが空気を検知したときに、該可搬式給油装置による給油を停止することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の可搬式給油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56674(P2013−56674A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194778(P2011−194778)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ (167)
【Fターム(参考)】