説明

可撓容器を充填する充填方法および可撓容器

【課題】希釈液と薬剤を一緒に貯蔵及び混合する可撓容器(10)を提供する。
【解決手段】本容器は優先剥離式シール(24、26)によって分離された多数のコンパートメント(18、20、22)を組み込んでおり、希釈液と薬剤がそこに保存される。本容器は高酸素及び水分障壁特性を有する熱可塑性材料から構成されており、内容を劣化させることなく容器を長期間保存することができる。剥離式シールは容器の操作によって断裂し、標準IV装置を通じて患者に供給するため内容を混合することができる。本容器は液体の動きまたは乱流の影響を受けやすい単一成分液体薬剤を充填できる。乱流は、まずヘリウムのような低分子量ガスで頭隙を形成し内部ガス頭隙を除去することによって最小化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌環境で液体薬物及び液体希釈液を保存及び混合し、それらの混合物を投薬するために使用される、可撓無菌性容器に関する。さらに詳しく言えば、出口ポートでの液体薬剤塊の形成を最小化しつつ、液体二元成分の混合を促進するよう構成された剥離式シールを備える容器が製造される。容器は充填されると、低分子量ガスで非ブロック化され、頭隙を除去し液体の動きを防止する。
【背景技術】
【0002】
様々な薬剤(薬品)溶液は通例静脈注射(intravenously、IV)によって無菌性容器から患者に投与される。多くの場合、この溶液は、液体希釈液、例えばブドウ糖水溶液またはNaCl溶液と液体薬剤の混合された組合せを含む。最終製品の劣化を防止するため、薬剤と希釈液は無菌条件下の容器内で別に保存され、使用の直前まで混合されないことが望ましい。液体の形態であるため、光または酸素にさらされることによる劣化と共に、容器への流体圧の影響を受けやすいことがある薬剤の特性によって、希釈液と薬剤の一般的な包装はさらに複雑になることが多い。
【0003】
従って、溶液中で時間と共に不安定になる様々なこの種の薬剤は通常、使用前にガス不透過性バイアル瓶、容器等に個別に保存されてきた。患者に投与する前に、この方式で保存された薬剤は、やはり個別に保存された生理的溶液または希釈液中で混合または希釈する必要がある。薬剤の無菌性と有効性とを維持することはできるが、個別に成分を保管することは煩わしく、取扱い、混合及びその後の患者への投与中に細菌感染する危険を伴う。従って、不安定な薬剤を保存するコンパートメントと希釈液を収容するコンパートメントとを含む医用容器が開発された。患者にIV投与する直前に、成分は互いに流通するように配置されるので、内容物は無菌的に混合される。
【0004】
希釈液と薬剤とを個別に保管できる多数コンパートメント容器は周知である。この種の容器は、例えば、ラーキン(Larkin)の特許文献1、スミス(Smith)他の特許文献2、及びバーニー(Barney)他の特許文献3で開示されている。特許文献1〜特許文献3は特にその全体を参照することによって本明細書の記載に代える。上記の特許で開示された容器のコンパートメントは、剥離式または破断式ヒートシールによって互いに分離されている。シールは容器の操作によって断裂し、コンパートメントの内容物が混合され、標準IV装置を通じて患者に供給される溶液を形成する。
【0005】
現在市販されている溶液容器は一般にPVCプラスチックを含む材料から製造されている。PVC材料は一般に外観がかなり暗色なので、この材料で製造された容器の内容を検査することは困難である。従って、この種の容器の漏れや水分汚染を検査することは、患者に投与する前に薬剤と希釈液との完全な混合が行われたかを検査するのと同様非常に困難である。さらに、PVC材料の製造では様々な有害化学物質が使用されるが、これらを環境に安全な方法で処理する必要がある。PVCを焼却する際有毒ガスが放出され、容器を埋立地に埋める場合周囲環境に浸出しうる有毒可塑剤を含むので、PVC容器は使用後注意深く処理する必要がある。この有毒可塑剤はIV溶液にも浸出しうるので、PVC容器はいくつかの種類の薬品、特に液体薬品と共に使用するのに適さないものとなっている。
【0006】
この種の多数コンパートメント容器の薬剤コンパートメントは、収容された薬剤の劣化を避けるため、紫外線及び周囲放射線への露出ならびに大気ガスから保護されることが望ましい。薬剤コンパートメントを例えば水分及び酸素の汚染から保護する1つの周知の方法が、イノウエ(Inouye)他の特許文献4で開示されているが、そこでは薬剤コンパートメントは乾燥剤及び酸素吸収剤を収容する二次コンパートメントによって取り囲まれている。自由な酸素及び水蒸気は二次コンパートメントの材料に浸透し、薬剤に作用する前に乾燥剤及び酸素スクラバによって吸収される。この方法は自由な酸素及び水蒸気に対して薬剤コンパートメントをある程度保護することができるが、材料の追加層(二次コンパートメント)を薬剤の周囲に提供する必要があるため、薬剤を希釈する前に薬剤容器の内容を検査することはさらに困難になる。さらに、紫外線及び周囲光の作用による薬剤コンパートメントの内容の劣化に対する保護は提供されない。
【0007】
スミス(Smith)他に対する特許文献2は、容器の外部に手動で圧力を加えることによって断裂する剥離式シールによって分離された多数コンパートメントを有する医用容器を開示する。この容器は、外周に沿って互いに密封された可撓材料の2枚のシートから形成されている。個別の希釈液及び薬剤のコンパートメントが容器の側面にわたる破断式ヒートシールによって容器内に形成され個別のコンパートメントに分割される。後部シートは水蒸気不透過性で、ポリプロピレンの内部層、アルミニウム箔の中央層及びポリエステル・フィルムの外部層を有する積層材料から構成されている。後部シートの蒸気不透過性によって、薬剤コンパートメントへの容器からの希釈液蒸気の浸透と、大気からの蒸気の浸透を半減させることで、製品の貯蔵寿命が延長される。薬剤コンパートメントの領域の容器の前部シートの上に、後部シートと同一の積層材料の第3シートを剥離式に貼付することで、薬剤コンパートメントの蒸気透過性はさらに低減される。積層材料のこの第3シートは薬剤コンパートメントを覆う寸法であり、後部シートと共に、薬剤コンパートメントを取り囲む蒸気不透過性囲壁を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4608043号明細書
【特許文献2】米国特許第5176634号明細書
【特許文献3】米国特許第5462526号明細書
【特許文献4】米国特許第5267646号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、蒸気不透過性第3シートを薬剤コンパートメントから剥離してしまうと、薬剤コンパートメントはもはや密閉されていないので、大気からの蒸気浸透の影響を受けやすくなる。さらに、希釈液蒸気は希釈液コンパートメントと薬剤コンパートメントを分離する剥離式材料を通じて希釈液コンパートメントから薬剤コンパートメントに移動できる。蒸気不透過性被覆は普通病院の納入品検査処置の際薬剤コンパートメントから剥離されるので、この種の容器の長期保管は問題である。薬剤が液体であり、水蒸気による劣化の影響を非常に受けやすい場合、蒸気不透過性被覆を取り外された容器の貯蔵寿命はせいぜい数日である。
液体薬剤と液体希釈液の二元組合せのために開発された容器はまた、容器を圧迫することや、容器を硬い表面の上に落とすことで発生するような衝撃による内部流体圧の影響を非常に受けやすい。このような内部流体圧が発生すると、希釈液および薬剤のコンパートメントを分離する剥離式または破断式シール、または出口コンパートメントから薬剤を分離するシールが不注意によって剥離開放し、容器の二元成分の早すぎる混合が発生したり、液体薬剤の塊が出口コンパートメントに進入することがある。
【0010】
様々な先行技術の多数コンパートメント容器では、簡単な破断式または剥離式シールが使用されて薬剤および希釈液のコンパートメントを分割し、混合前の成分の不注意による供給を防止する。こうした簡単なシールは幅方向に容器全体にわたって形成され、一般にシール全体を通じて均一な断面厚さと長さとを有する。シールを断裂し、供給前に薬剤と希釈液とを混合するために容器を操作するときに、シールの或る部分が断裂するやいなやシールに対する液体希釈液の機械的圧力が開放される。これにより希釈液は薬剤コンパートメントに進入できる。直線シールのこうした部分的な断裂によっては、希釈液コンパートメントの流体内容の薬剤への完全な供給ができないことが多い。かなりの量の希釈液が、コンパートメントの側壁とシールの左右端によって画定される角に捕らえられて希釈液コンパートメントに残ることがある。こうした部分的断裂の結果、薬剤と希釈液の不完全な混合や、混合生成物の患者への不完全な供給が起こることもある。
【0011】
さらに、薬剤が液体である場合、出口コンパートメントから液体コンパートメントを分離する剥離式シールが、希釈液コンパートメントから液体薬剤を分離するシールの前に優先的に断裂することがある。従って、IVセット薬品スパイクをセットポートに突き刺すときに液体薬剤の希釈されない部分が出口コンパートメントに存在し、比較的希釈されない薬剤の塊が患者へのIVラインに進入することがある。この状況では患者に対する危険は最小化できない。
【0012】
従って、内容物の完全な組み合わせと混合とのために全長さ部分にわたってほぼ完全に断裂し、出口コンパートメントに至るシールが断裂する前に容器の二元成分がほぼ混合されることを保証するため、薬剤と希釈液との間で優先断裂式になるように構成された、コンパートメントを分割する剥離式シールを有する、液体希釈剤と薬剤を1つの包装内に貯蔵する多数コンパートメントを有するIV容器を提供することが望ましい。こうしたシール構成は、薬剤塊形成の可能性を最小にしつつ、最終混合生成物の全量の供給を保証する。すなわち、容器装置は混合前の何れかの成分の不注意による供給を防止することが望ましいが、容器の不適切な機械的操作があった場合には、希釈されていない液体薬剤の不注意による供給を防止する必要がある。容器はさらに、病院の薬剤サービスによる容器の受け入れ後、貯蔵とそれに続く投薬の前に、成分の状態の検証が可能である必要がある。
【0013】
希釈液が、乳剤、リポソーム等の場合のように、二元混合物の有効薬剤成分であるいくつかの場合では、さらに、希釈液コンパートメント内にガス頭隙が残らないように、容器が液体で満たされることが望ましい。例えば、乳剤及びリポソームは、物質を劣化させて無効にしうる液体の動きの影響を特に受けやすい。
容器がこうした材料で満たされている場合、形成されたフィルム・ウェブが乾燥窒素または濾過空気の噴射によって吹かれて開かれ、ある容積を画定し、そこに測定された量の液体が導入される。多くの場合、この容器に収容される液体の量は約100分の1以内に管理されなければならない。容器が液体で満たされた後濾過空気または窒素を容器から排出するのは極めて困難である。空気が充填ポートを通じて排出されるまで、但し何らかの液体が流出する前に、容器壁をゆっくりと圧迫する必要がある。
【0014】
ある程度有効ではあるが、容器のガス頭隙を最小化するこの方法は、充填処理にかなりの時間を追加し、結果として最終製品の容積を減少させる。さらに、充填装置は、追加工程(頭隙除去工程)と、その工程を遂行する費用がかかり複雑な追加装置を含まなければならない。
従って、処理工程または別個の装置の追加なしに、充填工程中に形成された頭隙が最終製品からほぼ除去されるような方法で、容器が製造及び充填されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、容器の外部に手動で圧力を印加することによって断裂する優先剥離式シールによって分離された多数コンパートメントを有する容器を提供する。容器は、外周に沿って密封された可撓積層材料の2枚のシートから形成される。容器内の別個のコンパートメントは優先剥離式ヒートシールによって形成される。本発明の第1実施形態では、容器内に3つのコンパートメントが形成されるが、第1のコンパートメントは液体希釈液を収容し、第2のコンパートメントは、2つのコンパートメントを分割する第1優先剥離式シールを分離することで液体希釈液と混合される液体薬剤を収容し、第3のコンパートメントは出口コンパートメントであって、そこから混合された薬剤溶液が投薬される。
【0016】
本発明の1つの態様では、優先剥離式シールは異なった幅で構成されるので、希釈液と薬剤のコンパートメントの間の第1優先剥離式シールは、希釈液または薬剤どちらのコンパートメントに流体圧が発生したのとは無関係に、容器の操作によって発生する流体圧に応答して優先的に断裂する。第2優先剥離式シールは第1のシールよりかなり幅広いので、第1優先剥離式シールが開いて希釈液と薬剤を混合しない限り、またそれまでは断裂することが防止される。本発明の1つの実施形態では、第1及び第2優先剥離式シールはほぼ矩形の形状を有し、コンパートメント全体にわたって延びて、何れかの側面で永久シールに重なり合うように構成される。
【0017】
本発明のもう1つの態様では、第1優先剥離式シールは複合曲線として形成されるが、第2優先剥離式シールは容器の共通周辺エッジの2つの側面にわたって延び、ほぼ矩形の形状である。第1及び第2優先剥離式シールは各々幅寸法を特徴とするが、そこでは第1優先剥離式シールの幅は第2優先剥離式シールの幅よりかなり小さい。第1優先剥離式シールの複合曲線は、希釈液コンパートメントの方向を向いた凸状外形を有する屈曲点を特徴とする少なくとも1つの応力ライザを画定する。さらに、第2優先剥離式シールには、薬剤コンパートメントの方向を向いた凸状外形を有する屈曲点を特徴とする少なくとも1つの第2応力ライザが含まれる。応力ライザの屈曲点は、第1シールが流体圧に応答して優先的に断裂する開始点を画定する。断裂は、流体圧の発生元であるコンパートメントの方向を向いた応力ライザの屈曲点で開始される。
【0018】
本発明のまたもう1つの態様では、希釈液コンパートメントと出口コンパートメントの間に圧力等化チャネルが形成され、希釈液は薬剤コンパートメントの3つの側面に沿って流れることができる。圧力等化チャネルは、第1優先剥離式シールだけが流体圧によって断裂できるように、出口と希釈液のコンパートメントの間のΔPの等化を維持する。さらに、第2優先剥離式シールと容器の出口ポートとの間に安全シールが形成され、希釈液と混合されることなしに液体薬剤を作動することに対する安全の追加要素を提供する。
【0019】
本発明の追加実施形態では、乱流の影響を受けやすいことのある薬剤液体を複合貯蔵及び投与する可撓容器が提供される。可撓容器は、共通周辺エッジに沿って互いに密封された可撓前部及び後部シートから構成されている。剥離式シールが共通周辺エッジの2つの側面の間に延び、前部及び後部シートを分離式に接合して薬剤液体を収容するコンパートメントと出口コンパートメントを画定する。薬剤コンパートメントは乱流の影響を受けやすい液体で満たされ、頭隙はヘリウムのような低分子量ガスの噴射で調整される。容器が満たされ低分子量ガスが導入された後、薬剤コンパートメントが密封される。低分子量ガスと空気の選択的透過性によって、低分子量ガスは、等量の空気に置換されることなく容器の頭隙を離れるので、薬剤の投与量に影響することなく頭隙を大きく減少またはほぼ除去する。
本発明の実施形態の追加態様では、出口コンパートメントは空気または窒素といったある量の第2ガスを収容するので、容器の操作によって剥離式シールが断裂すると、第2ガスは液体薬剤の表面を上昇させてメニスカスを形成する。このメニスカスによって、薬剤コンパートメント内の薬剤の流体レベルが、容器材料内に形成された目盛に対して視覚的に確認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンパートメントの配置を示す、本発明の実行によって提供される容器の1つの例示実施形態の半概略前面図である。
【図2】わかりやすくするためシート内の層の厚さを誇張した、容器内に形成される可撓シートを示す、図1の線2−2に沿って見た半概略側面断面図である。
【図3】本発明の容器の第1実施形態の可撓シートの構成を示す、図2の線3−3に沿って見た半概略断片断面図である。
【図4】必要に応じて提供される、透明高障壁中間フィルムを示す、本発明の第1実施形態の可撓シートの構成の半概略断片断面図である。
【図5】必要に応じて提供される、透明高障壁中間フィルムを示す、本発明の容器の第2実施形態の可撓シートの積層構成を示す、半概略断片断面図である。
【図6】混合及び使用前の液体薬剤の検査のために除去される剥離式薬剤コンパートメントカバーを示す半概略実体図である。
【図7】第1選択剥離式シールを分離して希釈液と薬剤液体を混合する容器の操作を実証する半概略実体破断図である。
【図8】第2優先剥離式シールを分離して薬剤溶液を投薬する容器の操作を実証する半概略実体破断図である。
【図9】優先断裂式シールの第1配置を示す、本発明によって提供された容器の1つの例示実施形態の半概略前面図である。
【図10】開始点を伴う構成の優先断裂式シールの追加実施形態を示す容器の半概略前面図である。
【図11】特定の開始点と圧力等化流れ経路を有する優先断裂式シールのさらに別の実施形態を示す容器の半概略前面図である。
【図12】液体薬品塊の作動開放を防止する安全シールと組み合わされた優先断裂式シールのまたさらに別の実施形態を示す、本発明による容器の半概略前面図である。
【図13】液体で満たされ、大きく縮小された頭隙を含む、本発明による容器の半概略前面図である。
【図14】本発明による容器の第1実施形態のための無菌充填及び頭隙縮小処理の例示流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2を参照すると、本発明の原理の実行によって提供される可撓無菌性容器10の好適実施形態の、それぞれ概略前面図及び断面側面図が示される。容器はどの方向からも見られるが、説明のため、容器のコンパートメントの相対的な位置が図1及び図2の方向に関連して記述される。容器10は前部シート12と背面または後部シート14(図2にのみ示される)から形成されている。前部及び後部シートは、以下さらに詳細に説明されるように、可撓材料の単一層または可撓材料の多層積層物から構成されている。容器を形成するシートは別個に提供されて共通周辺エッジに沿って密封され、永久エッジ・シール16が容器の全周囲に沿って形成される。この周辺シールの構成と幅とは変化することがある。図1の上部シール位置16aと底部シール位置16bに示されるようなパターン付きシールが使用され、臨床人員による容器の取扱いを可能にし、容器を例えばIV支持台に取り付けられるようにする把握範囲を画定する。また、前部及び後部シートは、略折り重ねられ、容器フィルムの折り重ねられた部分の周囲に沿って延びるヒートシールによって密封された単一フィルム・シートから形成されることもある。そのように形成されたものではあるが、密封されたシートはここでは容器の「シェル」または「本体」と呼ぶ。
【0022】
例示実施形態では、容器10は、上部コンパートメント18、中間コンパートメント20及び下部コンパートメント22の3つの別個のコンパートメントに分割され、それらは各々無菌である。上部及び中間コンパートメント18及び20は第1剥離式シール24によって互いに分離され、中間及び下部コンパートメント、20及び22は第2剥離式シール26によって互いに分離されている。剥離式シール24及び26は容器の2つの側面にわたって、すなわち、容器の右側面10aの永久周辺シールから容器の左側面10bの永久周辺シールまで延びている。剥離式シール24及び26はシールの領域で前部及び後部シートの内面を互いに接合する。「剥離式」シールとは、ここで使用される術語としては、容器の正常な取扱いを可能にする十分な耐久性を有すると共に、容器の操作によって印加される流体圧によって剥離開放し、シールの領域で前部シートと後部シートの分離を可能にすることで、容器の内容物の混合及び投薬を可能にするシールである。剥離式シールは、前部及び背面シートの隣接する内面に存在するポリマー材料を部分的に溶融することによって形成される。シールはヒートシール処理によって得られるが、これは熱と圧力とが、時間と温度または圧力とを変えてシール範囲に加えられるものであり、以下さらに詳細に説明される。逆に、周辺エッジ・シール16は「剥離式」シールよりかなり強力であり、剥離式シールを分離するために発生する流体圧によって断裂しない。各剥離式シール24及び26は個別に、液体薬剤と液体希釈液とが優先的に最初に混合し、次に混合された成分が投薬されるような方法で剥離開放するように構成される。
【0023】
本発明の容器10の通常の適用業務では、上部コンパートメント18は液体希釈液で満たされ、中間コンパートメント20は、通常液体の形態で提供される薬剤で満たされている。下部コンパートメント22は出口ポート30の安全確保境界の役目を果たし、容器が使用されるまでは空である。出口ポート30は下向きに延び、本体部分38と、標準IV投与装置に取り付けるよう構成されたノズル40とを備えている。キャップ(図示せず)が提供されノズルを覆って無菌状態を維持する。キャップはIVセットを出口ポートに取り付ける直前に取り外される。リブ39が出口ポート30の本体部分38に沿って間隔を空けた関係で提供され、IVセットを容器に取り付ける際容易に把握できる表面を提供する。例示実施形態では、4つのリブ39が本体部分38の円周に沿って均等な間隔をおいて配置され、本体部分の表面に沿って長手方向に延びる。4つの長手方向のリブが示されているが、当業者は、ポートを容易に把握できるようにする様々な他の種類の表面接合部が提供されうることを認識するだろう。この種の接合部には円周リブ、横向きリブ、本体部分表面のローレットまたは網目模様等が含まれる。
【0024】
容器10の前部及び後部シートで利用される材料は、内部に保存される材料に基づいて選択される。好適には、少なくとも1枚のシートは、容器の内容物を視覚的に検査し、投薬の際容器中の溶液のレベルを視覚的に確認できるよう透明である。透明シートの製造に適した材料は通常、単一層または多層積層ポリマー・フィルムである。
【0025】
すなわち、単一層または多層どちらのポリマーフィルムから構成されるにせよ、容器10の前部シート12及び後部シート14のシートを構成する材料は、明瞭度と透明度に関して選択される。従来のポリ塩化ビニル(PVC)容器材料は一般に外観が非常に暗色なので、容器の内部を十分に見て、内部に収容される流体のレベルや粒子状物質の存在を判定するのは困難である。これは薬剤を静脈注射で投与する場合特に危険な状況である。看護婦または臨床作業員が、医用容器から投与されている薬剤に粒子状物質がないことを一目で見分けられることは絶対必要である。
【0026】
図3の断片概略断面図で示される、本発明の容器の第1実施形態では、前部シート12は透明単一層熱可塑性ポリマー・フィルム44から構成されている。例示実施形態では、透明フィルム44は適切には、Z9450の商品名を有し、テキサス州ディアパークのフィナ石油化学会社(Fina Oil and Chemical Company)から入手可能なポリプロピレン−ポリエチレン共重合体約80重量%と、G1652の商品名を有し、登録商標クラトン(KRATON)でシェル石油株式会社(Shell Chemical Corporation)から入手可能なスチレン・エチレン−ブチレン・スチレン熱可塑性エラストマー約20重量%の混合物である。G1652熱可塑性エラストマーは弾性ポリ(エチレン−ブチレン)マトリックス中のポリスチレン領域(エンドブロック)を伴う二相ポリマーで、通常クラム形態で提供される。実際には、フィルムはZ9450共重合体樹脂とG1652熱可塑性エラストマーのペレットを、クラム形態で、80%/20%の重量比で高剪断混合機内で混合し、混合物を溶融及び再ペレット化することで製造される。G1652クラムを高剪断装置で混合すると温度が上昇するので、温度が約摂氏260度(500°F)を越えないよう注意が必要である。次に、市販の押出し装置で混合されたペレットから透明フィルム44が形成される。前部シート12を構成する透明ポリマー・フィルム44は容器の用途と個々の適用業務で要求される耐久性に応じて異なった厚さで構成される。前部シート12を構成する材料の適切な厚さは約76.2μm(3ミル)〜約381μm(15ミル)の範囲であるが、例示される容器の実施形態では、前部シート12を構成する透明ポリマー・フィルム44は好適には約304.8μm(12ミル)厚である。
【0027】
透明ポリマー・フィルム44を形成するために選択された複合材料(代替的に「80:20フィルム」とも呼ばれる)は明瞭度と透明度に基づいて選択されたが、このフィルムは、「剥離式」シールと容器10の周囲に沿った永久エッジ・シールとの両方を形成するにも特に適している。以下さらに詳細に説明されるように、本発明による80:20フィルムは、材料の完全性または有効な剥離式シールを提供する能力に影響することなく、低温剥離式シール及び高温永久シールの両方の形成処理に対応することができる。
【0028】
希釈液と薬剤のいくつかの組合せの場合、後部シート14は前部シート12と同じ単一層の組成と構成とで形成することができる。また、水分と光とに対して不透過性で、充填容器の貯蔵寿命を延長することのできる層を含む多層フィルムが、後部シートを構成する好適なフィルムであることもある。図3に例示される容器の実施形態では、二元成分(混合されていない薬剤および希釈液)の有効性と活性とを維持し、それによって充填容器の貯蔵寿命を増大させて水蒸気と光とに対して不透過性である三層積層式後部シート14が利用される。
【0029】
例示実施形態では、後部シート14には、重量比80%/20%のポリプロピレン−ポリエチレン共重合体とスチレン・エチレン−ブチレン・スチレン熱可塑性エラストマーの混合物から構成された、内向き表面の内部シール層46が含まれるが、この混合物は約76.2μm(3ミル)〜152.4μm(6ミル)の厚さを有する(80:20フィルム)。1つの例示実施形態では、内部シール層(80:20フィルム層)46は152.4μm(6ミル)厚の構成であり、それが適切な透明接着剤48によって、約17.78μm(0.7ミル)〜33.02μm(1.3ミル)、好適には約25.4μm(1.0ミル)の高障壁のアルミニウム箔層50に接着されている。外部高溶融温度層54が、後部シートの外向き表面に提供され、適切な透明接着剤52によって高障壁アルミニウム箔層50に接着されている。図3の実施形態では、内部接着層48は、タイセル7909(TYCEL7909)の商品名で、ノースカロライナ州ケアリーのリオフォール株式会社(Liofol Company)から入手可能な改質脂肪族ポリエステル・ポリウレタン接着剤を含んでいる。外部接着層52は、タイセル7900(TYCEL7900)の商品名で、やはりノースカロライナ州ケアリーのリオフォール株式会社から入手可能な改質芳香族ポリエステル・ポリウレタン接着剤を含んでいる。内部接着層48を構成する脂肪族接着剤は外部接着層52にも使用できるが、逆は不可である。芳香族の接着剤52は、脂肪族のものより強力な接合を提供するが、きわめて望ましくない芳香族化合物を80:20フィルム層を通じて液体希釈液または液体薬剤に導入する可能性を有している。従って、芳香族の接着剤52は、使用される場合、アルミニウム箔層50が接着剤と容器内部との間の障壁として挿入されるときにのみ使用される。アルミニウム箔層50は適切には、ケンタッキー州ルーイヴィルのアルカンロールドプロダクツ株式会社(Alcan Rolled Products Company)から入手可能なアルカン1145(ALCAN1145)のような市販の25.4μm(1.0ミル)アルミニウム箔から構成されている。
【0030】
アルミニウム箔層50が後部シートの外部層として露出したままである場合、周囲エッジ・シール及び横向き剥離式シールの両方を形成するために使用されるヒートシール処理によって箔層が損傷し、その完全性と障壁を提供する能力とを低下させることがある。比較的高融点のポリマーから構成された外部高温層54はアルミニウム箔上で保護層の役目を果たし、箔層と、ヒートシール装置の高温プラテンとの間の接触を防止する。さらに、高温層54は、シール形成処理中に使用される温度で材料が溶融してヒートシール・プラテンに膠着することがないためヒートシール・リリース(モールド・リリースとも呼ばれる)層の役目を果たす。従って、プラテンに特殊な被覆をする必要なしに容器の外部に圧力と温度とを加えることができる。
【0031】
外部高温層54は好適には、約10.16μm(0.4ミル)〜約15.24μm(0.6ミル)の範囲内の厚さを有し、テルファン10.21(TERPHANE10.21)の商品名でロンポーランク(Rhone−Poulanc)から入手可能なポリエチレンテレフタレート(ここではPETと呼ぶ)である。例示実施形態では、多層積層フィルム14の構成要素の厚さ寸法は好適には、ポリエステルの外部高温層54が約12.19μm(0.48ミル)、高障壁アルミニウム箔層50が約25.4μm(1.0ミル)、及び80:20内部シール層46のフィルムが約152.4μm(6.0ミル)である。
【0032】
剥離式シールの最適な性能に帰結する前部及び後部シートの好適な材料を選択することを、80:20フィルムを含む各シートの上に二面にはさまれたシール層に組み入れることが発見された。また、前部及び後部シートの内向きシール層は、異なった相対割合を有するポリプロピレン−ポリエチレン共重合体とスチレン・エチレン−ブチレン・スチレン熱可塑性エラストマーの混合物とを含むこともある。使用される相対割合は、個々の医用容器に関連する用途と、シール形成処理の温度及び圧力のパラメータを考慮した様々なシールの特性に応じて定まる。本発明の容器10のシェルの前部及び後部シート及び、両方のシートの内向きシール層を構成する際有用な他の種類の可撓フィルムは、米国特許第4803102号、第4910085号、第5176634号及び第5462526号に開示されており、その開示全体を参照することによって本明細書の記載に代える。
【0033】
いくつかの適用業務、特に薬剤が水蒸気による汚染またはスペクトルの可視または紫外線部分の放射によって発生する劣化作用の影響を受けやすい場合には、容器10の中間(薬剤)コンパートメント20の追加保護が好適である。薬剤の周囲に囲いを形成し劣化から薬剤を保護するためこのような追加保護部が提供され、薬剤コンパートメントの前部を構成するフィルムを通る水分、酸素及び/または光の伝達を妨げる。この追加保護部によって、容器10は薬効を失うことなくかなりの期間保存できるようになる。
【0034】
特に図2及び図3を参照すると、高障壁特性を有する不透明フィルム55が利用され、中間または薬剤コンパートメント20を覆う。不透明フィルム55は、薬剤コンパートメントへの水蒸気及び自由酸素の浸透に対する障壁を介在させ、例示実施形態では、高障壁アルミニウム箔層を含む多層積層構造を備えている。不透明アルミニウム箔積層物の使用は、中間コンパートメント20に収容される薬剤が不可視光線及び紫外線の放射によって劣化するのを防止する。すなわち、本実施形態では、保護用フィルム55と後部シート14との両方を構成する不透明アルミニウム箔が薬剤コンパートメントを囲い、どちらの方向からも薬剤コンパートメント20への紫外線不可視スペクトル光線の透過を防止する。
【0035】
高障壁保護用フィルム55は、内向き表面の内部シール層56から構成された多層積層物である。例示実施形態では、シール層56は、約5.08μm(0.2ミル)〜約10.16μm(0.4ミル)の厚さで提供される、アピール1181(APPEEL1181)の商品名でデュポンケミカル株式会社(Dupont Chemical Company)から入手可能な改質エチレン酢酸ビニル重合体を含む軟質同時押出し成形被覆樹脂である。約17.78μm(0.7ミル)〜約33.02μm(1.3ミル)、好適には約25.4μm(1.0ミル)厚の、アルカン1145(ALCAN1145)のようなアルミニウム箔層が、適切な透明接着剤57によって内部シール層に接合される。厚さ約12.19μm(0.48ミル)の、テルファン10.21(TERPHANE10.21)のようなポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを含む外部ヒートシール・リリース層60が、高障壁保護用フィルム55の外向き表面を形成する。ヒートシール・リリース層60は、適切な透明接着剤59によってアルミニウム箔層58上に接着される。本実施形態の接着層57及び59は適切には、タイセル7909(TYCEL7909)の商品名でリオフォール株式会社から入手可能な改質脂肪族ポリエステル・ポリウレタン接着剤を含んでいる。また、外部透明接着剤59は、タイセル7900(TYCEL7900)の商品名でやはりリオフォール株式会社から入手可能な改質芳香族ポリエステル・ポリウレタン接着剤を含むこともある。芳香族化合物に付随する、液体希釈液または液体薬剤の何れかに浸出する危険があるため、芳香族の接着剤はアルミニウム箔層の外側でだけ使用される。内部接着層57は好適には脂肪族接着剤を含む。
【0036】
高障壁保護用フィルム55の内部シール層56は同時押出し成形被覆樹脂であるので、多数の異なった材料に適用されるときに広範な温度範囲にわたって剥離式シールを形成することができる。この同時押出し成形被覆樹脂に対して剥離式シールを形成できる材料には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及び容器の前部シート12を構成する80:20フィルムが含まれる。すなわち、高障壁保護用フィルム55は、中間または薬剤コンパートメント20を覆う前部シート12の外面に取り外し式(剥離式または分離式)に貼り付けられる。
【0037】
好適には、高障壁保護用フィルム55は使用前に容器10から取り外し(剥離または分離)できるので、薬剤コンパートメント20内の薬剤の状態の目視検査が可能である。図1に関連して最もよく見られる例示実施形態では、保護フィルム55には、保護フィルム55を透明前部シート12から剥離するために把握できる延長タブ62が含まれる。それによって薬剤コンパートメント20の内容は、簡単な目視検査のために露出状態にされる。
【0038】
図1を参照することで理解されるように、高障壁保護用フィルム55は、フィルムの表面積全体にわたるシールを形成することにより容器に貼り付けられるのではない。むしろ、フィルム55はその表面積の一部でだけ下方に位置する材料にシールされる。高障壁保護フィルムの下方に位置する材料にシールされていない部分は一般に円形の高くなった凹部からなる規則的な配列またはパターンを画定するが、これは、穴の矩形の配列が空けられたヒートシール・バーの触覚残余である。ヒートシール・バーが高障壁保護用フィルム55の上に押しつけられると、ヒートシールはヒートシール・バーの表面接触領域の上にだけ提供され、バー材料が除去された領域(穴)には提供されない。処理中には熱と共に圧力も加えられるので、高障壁保護用フィルム55はヒートシール・ヘッドから反転した圧痕を受け入れ、模様の付いた高くなった凹部表面を生じる。凹部51によって、高障壁保護用フィルム55は医用容器の下方に位置する材料(前部シート)に充分に密封されるようになるが、同時に、フィルム55は過度の力を加えることなく容易に取り外しできるようになる。保護層55全体が容器の表面にヒートシールされた場合、比較的強い結合が生じるので、それを剥離するために望ましい量よりも大きな力が必要になることがある。シールの表面積を縮小することで、剥離式アルミニウム・ストリップを取り外すために必要な力は(シール面積に比例して)小さくなる。上記の説明から明らかなように、剥離式アルミニウム・ストリップを取り外すために必要な力の量は、フィルム55に形成される凹部(図1の51)の数に反比例する。医用容器の用途に応じて、ヒートシール処理の際、層に形成される凹部の数を増減するだけで、取外しの容易さが大きかったり小さかったりする高障壁保護層を容易に形成することができる。しかし、高障壁のフィルム55は、タブ62を例外として、その周囲全体が容器の下にある材料にヒートシールされていることに注意すべきである。高障壁のフィルム55の全周囲にシールを形成することで、フィルムの障壁特性が薬剤コンパートメント20全体に完全に及ぶことが保証される。
【0039】
実際の使用では、充填された容器は病院の薬剤サービスに受け入れられた後、最終的な必要に備えてある期間保存される。通常、投薬の前に、薬剤師は容器の表面から高障壁箔層55を取り外し、薬剤コンパートメント20を露出させて、内容物の完全性を視覚的に確認する。容器がその時使用されない場合、容器は薬局に戻され、次に必要になったときに再び投薬される。薬剤コンパートメント20から剥離式高障壁のフィルム55を取り外すことで、薬剤コンパートメントの内容は水分、光及び浸透する酸素による劣化の影響を受けやすくなる。本発明による充填された容器は、高障壁保護フィルムが薬剤コンパートメントから取り外された後、薬剤が水分及び自由酸素にさらされることによって重大な劣化を受けることなく、使用前30日までの期間、薬剤サービスにおいて保存できることが望ましい。従って、図4で例示されるような本発明の1つの実施形態では、透明高障壁中間積層フィルム64が、薬剤コンパートメント20を構成する、高障壁アルミニウム箔含有保護用フィルム55と、容器の前部シートの80:20材料の間に必要に応じて挿入される。透明高障壁中間フィルム64は、剥離式保護用フィルム55が容器から取り外された後、薬剤20の内容物を覆って保護する。透明高障壁中間フィルムは、かなりの期間少なくとも水蒸気と酸素との浸透から薬剤を保護する障壁特性を示し、その期間は薬剤の個々の作用に応じて定まるが、30日程度のことがある。別言すれば、不透明高障壁保護用フィルム55は、透明高障壁中間フィルム64と組み合わされて、薬剤コンパートメントを覆う高障壁被覆を形成する。
【0040】
「高」障壁という保護被覆の特性に関しては、被覆の程度は保護被覆が様々な浸透剤ガスに対して不透過性であるものである。重合体は、浸透剤ガス、例えば酸素または水蒸気の通過を制限する度合いによって分類される。分類は「高」障壁(低透過性)から「低」障壁(高透過性)までの範囲である。ポリマーの分類は浸透剤ガスによって変化する。ここで使用される場合、「高」障壁という術語は、水蒸気の透過性に関しては、30℃、相対温度100%で約3.81g/μm/m /24hr/MPa(1.5g/mil/m /24hr/atm)の透過性のフィルムを意味する。ここで使用される場合、「高」障壁という術語は、酸素の透過性に関しては、25℃、相対温度100%で約127cc/μm/m /24hr/MPa(50cc/mil/m /24hr/atm)の透過性を有するフィルムを意味する。
【0041】
1つの例示実施形態では、透明高障壁中間フィルム64は、自由酸素と水蒸気との浸透に対してかなりの抵抗性を有し、薬剤コンパートメントの内容物を保護して二元容器の貯蔵寿命を増大する三層高障壁積層構造を備えている。例示実施形態では、中間フィルム層64には、テックバリヤH(TECH BARRIER H)の商品名で三菱化成(Mitsubishi Kasei)から入手可能なシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(ポリエステルまたはSiO 被覆PETとも呼ばれる)の外部層66が含まれる。高障壁保護用フィルム55のシーラント層56は、中間フィルム64の外部層66に接触して配置される。テックバリヤS(TECH BARRIER S)の商品名で三菱化成から入手可能なシリカ蒸着(Sio 被覆)ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを含む中間層が外部層66に結合される。その内向き表面では、透明高障壁中間フィルム64は適切には、ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体から形成された内部シール層70を備えている。共重合体は、スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン熱可塑性エラストマーと様々な割合で混合されることがあるが、100%ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体層が好適である。中間積層フィルム64の個々の層は互いに接着結合される。わかりやすくするために、こうした接着層は図示されていないが、タイセル7909(TYCEL7909)の商品名でリオフォール株式会社から入手可能な改質脂肪族ポリエステル・プリウレタン積層物を含んでいる。内部シール層70は、適当な永久熱または超音波シール、接着圧力シール等によって、容器の前部シート12の外部表面に確実に貼付される。透明高障壁中間積層フィルム64は、水平及び垂直に、薬剤コンパートメントの表面積全体を覆うような寸法であって、薬剤コンパートメントに隣接して形成された剥離式及び永久シールを覆うように延びる。
【0042】
容器本体の前部シート12を構成する可撓熱可塑性材料の場合のように、中間層64の三層積層構造はほぼ光学的に澄んでいて透明であるので、薬剤コンパートメント20の内容物の検査が可能である。すなわち、かなり曇っている(半透明の)ポリ塩化ビニル(PVC)及び他の同様の材料と異なって、本発明の中間層64は視覚的に透明である一方、水分及び自由酸素による劣化に対してかなりの保護を付与する。
【0043】
すなわち、透明高障壁中間積層フィルム64の障壁特性は、例えば水分及び酸素の透過性といった容器の機能にとって重要な分野で、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)またはこうした重合体の混合物といった従来のフィルムよりかなり大きい。中間層64の酸素透過性は約25.4cc/μm/m /24hr/MPa(10cc/mil/m /24hr/atm)である。逆に、EVA共重合体、LDPE及びMDPEの酸素浸透性はそれぞれ約6350cc/μm/m /24hr/MPa(2500cc/mil/m /24hr/atm)(EVA 5%)、21082cc/μm/m /24hr/MPa(8300cc/mil/m /24hr/atm)(LDPE)及び21590cc/μm/m /24hr/MPa(8500cc/mil/m /24hr/atm)(MDPE)である。LLDPEの酸素透過性はLDPEとほぼ同じかわずかに高い。従って、透明高障壁中間層64の酸素透過性は、二元医用容器を構成するために通常使用される重合体の酸素透過性より何桁も小さい。別言すれば、高障壁中間層64の障壁特性は、こうした容器を構成するために通常使用される重合体の障壁特性に対して何桁か改善される。
【0044】
中間積層フィルムの障壁特性のため、剥離式アルミニウム箔含有保護用フィルム55は投薬前に容器の内容物の目視検査を行うため薬剤師によって取り外されることがあるが、容器はその後酸素または水分によって誘発される劣化の危険なしに、適度な追加期間保存することができる。保護箔層が取り外された時、容器は約30日の貯蔵期間を有することが望ましい。アルミニウム箔層の取り外し後、透明高障壁積層フィルム64を含む容器の正確な貯蔵寿命は、当然のことながら薬剤コンパートメントに収容される薬品の水分及び酸素に対する感受性に応じて定まる。比較的低い水分感受性を有する薬品は、透明高障壁積層フィルム64によって保護されているため30日よりかなり長い期間有効性を保持することができる。さらに、極端な水分感受性を有する薬品、すなわち、アルミニウム箔層が取り外され、水蒸気にさらされると普通有効性を失い始める薬品は、薬剤コンパートメントの上方に位置する透明高障壁フィルムの水分障壁特性のため、有効性を失うことなく2週間までの期間保存できる。
【0045】
中間フィルム64は例示実施形態で薬剤コンパートメントの外部表面に貼付されるものとして説明されたが、当業者には、中間層は望ましい場合薬剤及び希釈液両方のコンパートメントを覆う寸法でもよいことが明らかであろう。中間層を容器の外部表面に取り付ける方法も、本発明の精神及び範囲から離れることなく変化することがある。中間層64は永久熱または超音波シールと共に、適切な接着剤によって容器の外部表面に永久に固定されることがある。また、中間フィルム64は、ヒートシールの温度及び圧力特性を調整しシールを剥離式にすることで、容器の表面に取り外し式に提供されることもある。この場合、フィルム64は、不透明高障壁積層式フィルム55の場合のように、容器10から剥離できる。
【0046】
例示実施形態では、薬剤は液体の形態であるものとして説明されていることに注意されたい。薬剤はコロイド、晶質、濃縮液、乳剤等の形態のこともある。さらに、薬剤は、セフィゾリン、セフロキシム、セフォタキシム、セフォキシチン、アンピシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、セフトリアクソン、メトクロプラシド及びチカール/クラブ(ticar/clav)を制限されない例とする、抗生物質成分または制吐剤成分のような乾燥粉末として提供されることもある。薬剤コンパートメント自体は薬品で満たされる必要はない。凍結乾燥血液画分、血液第8因子、第9因子、プロトロンビン複合体といった他の医用成分は、本発明による容器から投薬するのに特に適している。単一の薬剤及び希釈液コンパートメントを有する本発明の容器が説明されたが、異なった希釈液及び/または異なった薬剤で満たされた多数のコンパートメントを有する容器が本発明によって提供されることもある。
【0047】
図5の概略断面図で示される、本発明の追加例示実施形態では、薬剤コンパートメントを覆う透明高障壁中間積層フィルム(図4の64)の代替構造が提供される。
図2、図3及び図4で示される第1例示実施形態の場合のように、透明高障壁中間積層フィルム(図5の71)は、中間フィルム71の上、すなわち容器の薬剤コンパートメントの上に配置された不透明高障壁アルミニウム箔含有保護フィルム(図2及び図3の55)と組み合わせて提供される。従って、不透明高障壁保護フィルムと組み合わされた透明高障壁中間フィルム71は、薬剤コンパートメントの上に配置される高障壁保護被覆を構成する。以下さらに詳細に説明されるように、高障壁保護被覆には、高水分障壁層、高酸素障壁層、またはこれら両方が含まれる。不透明アルミニウム箔含有保護用フィルム55は、保護が望ましい場合、容器の薬剤コンパートメントへの紫外線及び可視スペクトル光線の透過を防止するために提供される。
【0048】
代替高障壁中間積層フィルムは、一般に71で示される、透明多層熱可塑性重合体積層物から構成されている。このフィルムは高水分障壁及び高酸素障壁特性を示すよう構成されている。図5の例示実施形態では、透明多層高障壁フィルム71は、その内向き表面に、好適には約0.0762mm(3.0ミル)の厚さを有する100%ポリプロピレンで構成されたシーラント層72を備えている。酸素障壁層74は、活性化プライマーと組み合わされた市販の低密度ポリエチレン(LDPE)エクストラダイト(extradite)を含む第1結合層76によってシーラント層72に積層される。結合層76は、酸素障壁層74とシーラント層72の間に挿入される。いくつかの可撓ポリマー・フィルムは、以下さらに説明されるように、酸素透過性に対する適切な障壁を提供できるように決定されたが、多層高障壁フィルム71の酸素障壁層74は好適には、約0.0139mm(0.55ミル)のフィルム厚さを有する市販のエチレンビニルアルコール(EVOH)から構成される。
【0049】
エチレンビニルアルコールは主として、酸素透過性に対する障壁特性が注目される。すなわち、その酸素透過性障壁値は通常、エチレン酢酸ビニル(EVA)、スルリン(SURLYN)(登録商標)、中及び高密度ポリエチレン(MDPE、HDPE)といった従来の主要なバッグ・フィルムより4桁以上も大きい。しかし、酸素透過性に対してかなりの障壁を提供しているが、エチレンビニルアルコールだけでは水蒸気透過性に対する十分な保護を提供することはできない。従って、水分障壁層78が、第2低密度ポリエチレン(LDPE)結合層80によってエチレンビニルアルコール酸素障壁層74に積層される。水分障壁78は、モナックス(MONAX)、グレードHDの商品名でヴァージニア州リッチモンドのトリドガー株式会社(Tredegar Company)から入手可能な配向高密度ポリエチレン(oHDPE)重合体を含む透明可撓フィルムである。結果として得られる複合障壁構造には、外向き表面のポリエステル(PET)ヒートシール・リリース層82(TERPHANE 10.21)が含まれ、それは第3低密度ポリエチレンのエクストラダイト結合層84によって水分障壁78に積層される。
【0050】
図5に関連して説明される例示実施形態の多層高障壁重合体積層フィルム71は、医用容器の薬剤コンパートメント(図1の20)を覆う中間層(図1の64)を構成するのに適した高酸素障壁及び水分不透過性可撓フィルムである。積層物を構成する全ての材料はほぼ光学的に澄んでいて透明であり、ほとんど色を示さない。すなわち、図5の例示実施形態の複合フィルムは、内容物を一目で容易に検査できるので、医用容器の薬剤コンパートメントを覆うのに特に適している。
【0051】
図4のSio 含有積層フィルムとは対照的に、図5の多層積層フィルム71ではさらに高い透明度が得られる。すなわち、Sio 含有フィルムは透明ではあるが、わずかに黄色を示す。理論にしばられることなく、多層積層フィルム71の高い色温度(黄色を含まないこと)は、この積層フィルムの透明度が高い主要な理由と考えられる。さらに、Sio 含有材料は比較的剛性でもろく、初期の容器製造、充填及び/または取扱い処理中に亀裂が入ることがある。本質的に弾力性がないため、最初の面積から1%より多くSio 含有フィルムを引き伸ばした場合、Sio 含有フィルムの障壁特性は劣化する。Sio フィルムが、その弾性係数によって許容されるある特定の量を越えて引き伸ばされた場合、Sio フィルム基板には亀裂が入り、雰囲気から容器の前部シートへの透過経路が開くことになる。さらに、Sio 被覆技術の現状では、Sio フィルムの障壁特性はフィルムの表面上の場所によって変化する。これは現在利用可能なSio スパッタリング処理では一定の厚さおよび密度の平滑なフィルムを形成することができないからである。障壁特性のこの変動性は通常、押出し成形重合体材料が示す変動性より大きい。押出し成形重合体材料は、本質的に同質の特性を有しているので、厚さおよび密度の変化は小さい。同質重合体障壁フィルムの障壁特性は主としてフィルム厚さの関数であるが、これは製造処理中に非常に正確に管理できる。
【0052】
透明高障壁中間フィルムの好適な材料には酸素障壁層と水分障壁層との両方が含まれるが、様々な特定の用途に適合できる、薬剤コンパートメントカバーを提供する代替材料が使用されることがある。例えば、高障壁層の1つが省略され、水分障壁層のみ、または酸素障壁層のみを含む高障壁中間フィルムが与えられることがある。さらに、高障壁中間フィルム層には、上記で説明されたように、ある程度の酸素障壁特性をも示す高融点材料から構成されたヒートシール・リリース層と組み合わされた水分障壁層が含まれることもある。
【0053】
表1は、図5の例示フィルム71と、本発明による透明高障壁中間層の様々な実施形態の製造で有用な多層フィルムまたは積層物の4つの追加例を示す制限されるものではないリストである。リストを読む際わかりやすくするため、oHDPEとは、HDグレードモナックス(MONAX)のような配向高密度ポリエチレンを指し、ポリ塩化ビニリデン被覆PETとは、50M44の商品名でデュポンケミカル株式会社から入手可能な製品を指し、アクラル(ACLAR)とは、ULTRX 2000の商品名でも知られる、アライドシグナル株式会社(Allied Signal Corporation)から入手可能なポリクロロトリフルオロエチレン・フィルムを指す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
本発明の実行によれば、上記で論じられた各多層積層フィルムは、医用容器10の薬剤コンパートメント20の上を覆う透明高障壁被覆を形成するものとして考察される。好適には、各容器の後部シート14は、図3の実施形態に関連して説明されたように、高水分障壁アルミニウム箔含有フィルムを含み、内向き表面に重量比80%/20%のフィルムを備える多層積層物から構成される。
【0057】
不透明アルミニウム箔含有高障壁積層フィルムから容器の後部シート14を構成することで、容器の内容物は、内容物を劣化しうる紫外線及び可視スペクトル光線にさらされることから保護される。実際の使用では、薬剤コンパートメントを覆う剥離式アルミニウム箔含有フィルムは通常病院の薬剤サービスによって投薬前に取り外される。高障壁中間フィルムは光学的に透明で、光にさらされることに対する保護部を提供しないので、その後の容器貯蔵中に薬剤コンパートメントの内容物が不注意によって紫外線または強度の可視スペクトル光線にさらされることがないよう注意を払う必要がある。従って容器は、アルミニウム箔含有フィルム(または後部シート)が折り重ねられた容器の外向き表面を形成し、紫外線または強度の可視スペクトル光線から薬剤コンパートメントの内容を保護する助けとなるように折り重ねられる。
【0058】
容器の使用
完成した容器の使用は容器を製造するために使用されるフィルムとはほぼ無関係である。コンパートメントに分けられた容器10と混合システムは、図1及び図2に示された完全な構成で、健康管理人員、通常病院の薬剤サービス部門によって受け入れられる。ここで図6を参照すると、容器の使用を準備する際、アルミニウム箔含有保護層55のタブ62を把握して容器から保護層を剥離し、液体薬剤を収容する中間コンパートメント20の目視検査を可能にすることで液体薬剤が検査される。薬剤と薬剤コンパートメントが正常な状態であれば、すなわち、隔離式シールが損傷しておらず、正常な投与量の液体薬剤が存在し、その色と清澄度が正常である、等であれば、容器を操作して上部希釈液コンパートメント18の部分で前部及び後部シートを圧縮することで、図17に示されるように溶液が混合される。容器の操作によって発生した流体力による機械的圧力によって、希釈液及び薬剤のコンパートメント間の第1選択剥離式シールが断裂する(断裂した状態が24’で示される)。さらに容器を振る操作によって、希釈液と薬剤の液体とが混合される。完全な混合作用が得られたことの確認は、澄んだ透明な前部シートを通じて混合溶液を視覚的に観察することでなされる。混合作用の完了後、容器の前部及び後部シートを再び圧縮し、シールを断裂する流体圧を容器内に発生させることで、図18に示されるように、薬剤コンパートメントと下部安全確保コンパートメントとの間の第2選択剥離式シールが破れる(断裂した状態が26’で示される)。その後混合溶液は容器から出口ポート30を通じて、標準IV供給セットを使用して投薬される。
【0059】
容器10の配置は、以下さらに詳細に説明されるような様々な手段によって、非混合状態の希釈液が出口ポートを通じて供給されるのを防止している。さらに、希釈液コンパートメントと出口ポートとの間の中間コンパートメントの配置によって、完全な薬剤の混合と患者への供給の可能性が高められる。液体希釈液と粉末薬剤とを含む容器の場合、薬剤コンパートメント20と下部安全確保コンパートメント22との間の第2剥離式シールが断裂する前に希釈液コンパートメント18と薬剤コンパートメント20との間の第1剥離式シールが断裂することが本質的に保証されるが、これは、第1シールが断裂し希釈液と粉末との混合作用が開始されるまでは容器の操作によって発生した流体力が薬剤コンパートメントの粉末を通じて伝達されないからである。
【0060】
本発明によれば、液体薬剤が使用される場合、希釈液コンパートメントと薬剤コンパートメントの相対寸法差、及び大型の希釈液コンパートメントと下部または安全確保コンパートメントとの中間に小型の薬剤コンパートメントを配置することで、最小限の注意だけで安全確保コンパートメントに至る第2シールが断裂する前に希釈液と薬剤のコンパートメントとの間の第1シールを断裂する流体力の発生が確実になる。
【0061】
しかし、極度の注意をもってしても、液体薬剤を収容する中間コンパートメント内に大きな流体圧が発生し、安全確保コンパートメントに至る第2シールが偶発的に剥離開放することがありうる。こうした状況では、安全確保コンパートメントが液体薬剤の塊を含むことになるが、これは希釈されずに患者に供給されると、重大な健康障害を起こすことがある。従って、剥離式シール24及び26は、本発明によれば、液体薬剤と希釈液のコンパートメントの間の第1剥離式シール24がまず断裂するまで、かつ断裂しない場合は、液体薬剤と出口のコンパートメント(20及び22)との間の第2剥離式シール26が剥離開放することがないように、選択剥離式に製造される。本発明の原理の実行によれば、シールは操作圧力に対する均一で予測可能な応答を提供し、流体の操作圧力によって長さ部分に沿って完全に剥離開放するような方法で形成される。
【0062】
ここで図9を参照すると、最初に液体薬剤を希釈液と混合することなく、薬剤コンパートメントから出口コンパートメントまで液体活性薬品を作動開放することを防止する優先断裂式シールを含む容器の1つの例示実施形態の半概略前面図が示される。個々のシール構成は、こうした例示二元医用容器に関連して使用される剥離式または破断式シールに課される2つの相反する性能要求を解決するために提供される。剥離式または破断式シールに対する第1の性能要求は、正常取扱い時の不注意によるシールの断裂を避けるため、製品ユーザが加えることのできる、シールを破断または剥離する力に対する比較的強い抵抗を提供することである。第2の性能要求は、ユーザによる作動の際シールがほぼ完全に離れて剥離し、その後流通するチャンバ間の流れ経路が制限されることを回避することである。従来の剥離式シールでは、シールが剥離式または破断式の何れであろうとも、作動の際全長に沿って不完全に剥離して離れる一定の可能性あることが注目された。このため、液体希釈液、液体薬剤または混合薬物の何れかがかなりの量、開いていないシール線部分に捕らえられて残ることがある。さらに、従来の剥離式シールの場合、ユーザによる作動のために必要な力が増大すると、不完全なシール開放の可能性も増大することが注目された。二元医用容器を実際に使用するには、剥離式シールが製品の寿命期間内において様々な衝撃を乗り切ることが必要である。しかし、その後の製品作動によって剥離式シールが断裂しやすい大きな衝撃の事象が発生することがある。予期しない作動の危険を低減するため、有効な二元医用容器を、大部分の不注意による衝撃に抵抗する十分な強さでありつつ、意図的な操作の圧力には完全に降伏する剥離式シールを有するように構成する必要がある。
【0063】
従って、図9に示される選択剥離式シール80及び82は、シールがどの2つのコンパートメントの間に挿入されるかに応じて異なった幅を有することで相反する性能要求を解決する。図1及び図2に関連して上記で説明され、図9に示されたように、剥離式シール80及び82はコンパートメントに水平にわたり、容器の両側面の永久シールの間を接続するのに十分な長さを有して容器をコンパートメントへと分割する。シールは一般に直線からなるC形ヒートシール・ダイによって形成されるが、この長い腕がコンパートメントの間のシール80及び82を形成し、またこれには、一般に83で示され、第1シール80の1つの端から第2シール82の対応する端まで延びる基礎部分が含まれる。C形ヒートシール・ダイと特に基礎部分83とはそのように構成されるので、剥離式シールが形成される範囲が永久周辺シール16の上に延びそれを覆うことが保証される。これは剥離式シールと永久シール16の交差(すなわち、角)での完全な剥離式シールの形成を促進するためのものである。
【0064】
図9に示されるように、第1剥離式シール80は一般に矩形の形状で、希釈液コンパートメント18を形成し、液体薬剤コンパートメント20から分離するように形成される。第1優先剥離式シール80の幅寸法(W )は約3〜10mm(1/8インチ〜3/8インチ)であり、好適には6mm(1/8インチ)である。
【0065】
第2剥離式シール82は、液体薬剤コンパートメント20を形成し、出口コンパートメント22から分離する領域に形成される。第1優先剥離式シール80と同様、第2剥離式シールは一般に矩形だが、約7〜12mm、優先的には約10mm(3/8インチ)の幅(W )を有する。
第2シール82の大きな幅寸法は、剥離開放するために第1優先剥離式シール80よりはるかに大きな力を必要とすることが理解されるだろう。さらに、図9から分かるように、液体薬剤コンパートメント20の面積は、希釈液コンパートメント18の液体面積よりかなり小さい。従って、容器は薬剤よりかなり大きな量の液体希釈液を収容することができる。希釈液の量が大きいということの意味は、容器が操作される場合、薬剤が第2剥離式シール82に対して発生する力よりも大きな力を、希釈液が第1剥離式シール80に対して行使するということである。第1剥離式シール80が必要とする作動エネルギーは第2剥離式シール82より低いので、第1シール80が第2剥離式シール82に優先して剥離開放することが理解される。
【0066】
希釈液および薬剤のコンパートメントの間の第1剥離式シール80が剥離開放すると、液体希釈液と液体薬剤とは、薬剤塊形成の危険なしに混合する。成分が十分に混合されると、第2剥離式シール82に対して十分な力を発生し、それによってシールを断裂し、希釈液/薬剤の液体を最終的に投薬するため出口コンパートメント22に入れるよう操作できる十分な液量が存在する。
【0067】
第1及び第2剥離式シール80及び82の幅は、希釈液及び薬剤コンパートメント(それぞれ18及び20)に収容された液体の質量と共同で、どのような操作力または圧力が容器に加えられようとも、薬剤と出口のコンパートメントとの間のシール82より前に希釈液と薬剤のコンパートメントの間の第1シール80が優先的に剥離開放することを保証する。操作力または圧力が薬剤コンパートメントに加えられると、第2シール82と対照的に開くために必要な作動エネルギーまたは力が低い第1剥離式シール80は優先的に断裂する。第1及び第2剥離式シール80及び82の個々の幅(W 及びW )はもちろん、シールの長さ(容器の寸法)、薬剤及び希釈液コンパートメントに収容される流体質量、及び、不注意による衝撃の予想強さを含む、二元容器が置かれる個々の適用業務によって変化する。しかし、個々のシール幅は、一般的なビーム理論を使用し、各シールについて望ましい開放圧力を適切に決定することで当業者によって適切に計算される。さらに、以下さらに詳細に説明される方法では、図9の各シール80及び82は操作圧力に対する均一な抵抗特性を示すので、一度断裂が開始されると、C形シール・ヘッド・ダイが使用される場合、シールは少なくとも基礎部分83との交差の直交点まで長さ部分に沿って完全に剥離開放する。
【0068】
本発明による優先剥離式シールの追加実施形態が図10に半概略形態で示される。図9の実施形態の場合と同様、図10の実施形態には第1及び第2剥離式シール84及び86が含まれ、第1剥離式シール84は薬剤コンパートメント20を形成し、希釈液コンパートメント18から分離する構成である。第2剥離式シール86は薬剤コンパートメント20を形成し、出口コンパートメント22から分離するように構成されている。さらに、第1及び第2剥離式シール84及び86は容器にわたり、容器の外部境界を画定する永久シール16の間に延びる構成である。図9の実施形態と同様の方法で、シールは等角ヒートシール・ダイ、好適には単一部材のヒートシール・ダイによって形成されるが、その長い腕はコンパートメント間のシール84及び86を形成し、かつこれには、一般に85で示され、第1シール84の1つの端から第2シール86の対応する端まで延びる基礎部分が含まれる。ヒートシール・ダイ、特に基礎部分85は、剥離式シールが形成される範囲が容器の何れかの側まで永久周辺シール16の上に延びそれを覆うことを保証するよう構成される。剥離式シールを永久シールと重ね合わせることで剥離式シールと永久シール16の間の交差(すなわち、角)での完全な剥離式シールの形成が促進される。
【0069】
図10に示されるように、薬剤コンパートメント20と出口コンパートメント22の間の第2剥離式シール86は一般に図9に示される第2剥離式シール82と同様である。すなわち、第2剥離式シール86は一般に矩形の形状で、薬剤コンパートメント20を形成し出口コンパートメント22から分離するように形成される。幅寸法(W )または代替的には薬剤コンパートメント20と出口コンパートメント22との間のシール距離は、約4〜8mm(3/16〜5/16インチ)、好適には6mmすなわち1/4インチである。
【0070】
第1優先剥離式シール84は、約1.59mm(1/16インチ)〜約4.7mm(3/16インチ)、好適には約3mmすなわち1/8インチの幅寸法(W )または代替的には希釈液コンパートメント18と薬剤コンパートメント20との間のシール距離を有する。
図9の実施形態とは対照的に、図10の第1優先剥離式シール84は従来の矩形形状を有していない。本発明の原理の実行によれば、第1優先剥離式シール84は正弦曲線または蛇状の形状に形成され、87で示される少なくとも1つの応力ライザが希釈液チャンバ18に突出し、偏位点は希釈液チャンバを操作することによって発生する予想圧力面の方向を向いている。
【0071】
曲線形に形成されているが、第1優先剥離式シール84は全長に沿って均一なシール幅W を備えている。このシールは、以下さらに詳細に説明されるような方法で機能する少なくとも1つの応力ライザ87を伴って形成されているにもかかわらず、第2優先剥離式シール86より幅が狭いという事実が意味するように、第1シール84は、例えば強い衝撃によって薬剤コンパートメント20に発生する予想しない圧力面に際して優先的に剥離開放する。
【0072】
従って、少なくともその程度には、第1優先シール84は圧力事象に応答して、第2剥離式シール86に対して優先的に剥離開放するので、液体希釈液は常に、容器の成分が出口コンパートメント22に入る前に、液体薬剤と混合する。
希釈液コンパートメントの方向を向いた屈曲点を有する応力ライザ87に加えて、図10の第1選択剥離式シール84には、薬剤コンパートメント20の方向を向いた屈曲点を有する2つの追加応力ライザ88及び89が含まれるのが分かる。当業者によく理解される方法で、各応力ライザ屈曲点は剥離開始点を画定し、そこで剥離式シールは、開始点の向きにあるコンパートメントでの圧力事象に応答して剥離開放し始める。動作の際、屈曲点、または開始点の凸状先端エッジは希釈液または液体薬剤の何れかのコンパートメントが圧搾されるとき、その何れかの薬剤の流体圧に対する複合抵抗特性を示す。図10の曲線第1優先剥離式シール84のような非直線障壁に対して発生する圧力面の数学的有限要素分析が示すところによれば、ΔPによる力は、屈曲点が圧力面の方向に延びる、応力ライザの最大屈曲の領域に集中する。ΔPによるこの集中された力は、屈曲点で優先的にシールの断裂を開始しようとする。さらに、こうしたシールは、シールが均一な直線の構成である場合より、低いわずかな操作圧力で剥離プロセスを開始しようとする。
【0073】
従って、その幅寸法が小さいにもかかわらず、薬剤コンパートメント20内の液体薬剤に圧力が印加された場合、第1優先剥離式シール84は、薬剤と出口のコンパートメントとの間の第2剥離式シール86から容易に断裂する。図10に見られるように、第1シール84には2つの開始点88及び89が含まれており、これらは薬剤コンパートメントの方向を向き、内部で発生した圧力事象に応答して優先的なシールの開放作用を促進する。これらの2つの開始点88及び89は、希釈液コンパートメントの方向を向いた開始点87と組み合わされて、第1剥離式シール84が容器のどこで発生した流体圧に対しても優先的に開くことを保証する。すなわち、第1シール84を剥離開放するか、または希釈液が第1シールを剥離開放することでまず希釈液と混合することなしに、液体薬剤が第2剥離式シール86を剥離開放し、出口コンパートメントに入ることはない。
【0074】
第1優先剥離式シール84は、開始点87、88及び89が凸状曲線によって画定されるような正弦曲線または蛇状構造を有するものとして説明されたが、第1優先剥離式シール84の形状は特定の規則性によって画定される必要はない。実際、数学的有限要素分析の応用が示すところによれば、剥離開始は屈曲点が鋭角になるに連れて向上する。有限要素分析が示すところによれば、鋸歯形状の場合のように開始点が実際に点になるまで先細になると、剥離開始は最大になる。しかし、こうした状況では、剥離を開始するために必要な力は非常に低いので、日常の容器取扱いの普通の応力でも第1シール84が不意に剥離開放することになる。それと対照的に、様々な屈曲点の曲率半径を過度に大きくすると、第1シール84の形状は従来の直線シールに似てくるので、強化開始点の利益をほとんど捨てることになる。従って、第1剥離式シール84の個々の形状、曲率半径、及びコードの深さは、設計上の選択の問題であり、シールの長さ、及び、不注意による衝撃の予想強度を含む、二元容器の個々の用途によって変化する。個々のシール形状は、ビーム理論を使用しシールの望ましい開放圧力を適切に計算することで、当業者によって適切に計算される。図10の例示実施形態では、第1剥離式シール84は一般に正弦曲線形状で、好適には3つの屈曲点を含み、その曲率半径は約3.18mm(1/8インチ)〜約9.53mm(3/8インチ)、好適には約6.35mm(1/4インチ)である。
【0075】
ここで図11を参照すると、液体薬剤及び液体希釈液を含む二元成分の貯蔵、混合及び供給のために構成された医用容器の第3例示実施形態が半概略形態で例示される。本容器は、液体薬剤コンパートメント20を希釈液コンパートメント18から分離する配置および構成の第1及び第2選択剥離式シール90及び92を備えている。図11の例示実施形態から見られるように、第1及び第2剥離式シール90及び92の配置と構造は、図10に例示される実施形態の選択剥離式シール84及び86と一般に同様である。すなわち、第1選択剥離式シール90は、3つの屈曲点93、94及び95を備える正弦曲線または蛇状形状を持って構成される。第1及び第3屈曲点93及び95はそれらの凸面が薬剤コンパートメント20の方向を向くよう構成されるが、第2屈曲点94は、その凸面が希釈液コンパートメント18の方向を向くよう構成される。曲線ではあるが、第1選択剥離式シール90の幅(W )は、少なくともW がシールの曲率に対して接線方向に評価される場合、シールの長さ部分に沿って均一である。上記で説明された最初の2つの実施形態の場合と同様、第1優先剥離式シール90の幅寸法は約2〜5mm(1/16〜約3/16インチ)の範囲で変化するが、好適には幅約3mm(1/8インチ)である。
【0076】
第2選択剥離式シール92は一般に矩形の形状で約4〜8mm(3/16〜約5/16インチ)の幅寸法W を有するが、好適には幅約6mm(1/4インチ)である。第1選択剥離式シール90が液体薬剤コンパートメント20の4つの側面の1つを形成している場合、第2選択剥離式シール92は、第1シール90が形成する側面に向かい合う第2側面を形成する。薬剤コンパートメント20の第3側面は容器の周辺永久シール16によって画定される。選択剥離式シールが形成される時、第1及び第2シール90及び92両方のシール長さ部分の一部が、永久シール16によって画定されるこの第3端の方向に延び、永久シールと重なり合って、永久シールとの交差部で剥離式シールの完全性を保証する。
【0077】
薬剤コンパートメント20の残る第4側面は剥離式シール96によって画定されるが、これは第1剥離式シール90から第2剥離式シール92まで延びるものの、容器の永久周辺シール16から間隔が開いているので、希釈液コンパートメント18および、薬剤コンパートメント20と出口ポート30との間に配置された出口範囲22の間の流通を可能にするよう構成された、接続圧力等化チャネル98を残している。
【0078】
圧力等化チャネル98は希釈液コンパートメント18と出口範囲22との間の流通を可能にするので、出口範囲22はもはやコンパートメントではなく、希釈液コンパートメント18の延長と考えられることが理解されるだろう。同様に、図11で18として特定された範囲を希釈液コンパートメントと呼ぶことも、このコンパートメント自体が18として特定された領域と出口範囲22との両方を含んでいるためもはや適切ではない。しかし、本発明の様々な実施形態間の一貫性を維持するため、図11で18として特定される範囲は希釈液コンパートメントと呼び、図11で22として特定される範囲は出口範囲と呼ぶ。
【0079】
動作の際、図11の例示実施形態の容器は、図10に関連して説明された実施形態と一般に同様の方法で機能する。第1選択剥離式シール90は第2選択剥離式シール92より狭くなっており、W <W である。従って、薬剤コンパートメント20内に圧力事象が発生すると、第2シール92に優先して第1シール90が剥離開放される。さらに、第1選択剥離式シール90は、前に言及した屈曲点93、94及び95で応力ライザを提供する形状である。図10の実施形態の場合と同様、応力ライザは希釈液及び薬剤コンパートメントへの偏位の最大点に優先剥離開始点を画定するよう機能する。希釈液または薬剤何れかのコンパートメントで発生した圧力事象によってこうした開始点で優先的にシールの断裂が開始され、この理由と、幅が狭いことのため、第1優先剥離式シール90はあらゆる種類の圧力事象に応答して第2シール92に優先して断裂する。
【0080】
第2剥離式シール92の完全性はさらに、希釈液コンパートメント18を出口範囲22と接続する圧力等化チャネル98を通じてシールにかかる流体圧力を等化することで維持される。圧力等化チャネル98は希釈液コンパートメントと出口範囲との間のΔPを等化された状態に維持するので、シール90または92の状態が何であれ、流体が容器から投薬される前に液体薬剤は希釈液と混合される。この特定の機能の有用性は、一時的に図9で例示された実施形態に戻ることで明らかになるだろう。図9の第1剥離式シール80の優先的な性質にもかかわらず、容器が使用される直前に出口コンパートメント22に液体薬剤塊が形成される可能性がある。十分な力が希釈液コンパートメント18に行使されると、結果として生じる圧力面は第1優先剥離式シール80を断裂し、液体薬剤によって第2優先剥離式シール82に伝達される。(十分に大きい圧力面を発生するのに)十分に大きな力は2つのシールを連続して非常に急速に断裂するので、希釈液と薬剤とが混合する十分な時間はない。希釈液は液体薬剤を塊として出口コンパートメント22に押し出すことになる。この塊をIVセットにアクセスさせ、塊を患者に投薬することは極めて危険である。
【0081】
ここで図11の例示実施形態を参照すると、この可能性は、圧力等化チャネル98によって出口範囲22を希釈液コンパートメント18と流通させることでほぼ除去される。
本発明の原理の実行によって提供される容器と優先剥離式シールの追加実施形態とが図12に半概略形態で例示される。図12に例示される容器の実施形態は図11の実施形態と本質的に同じ優先剥離式シールの構造および配置を備えているが、優先剥離式シールと出口ポート30との間に配置された追加剥離式シール、すなわち安全シールを備えている。図12および図11の実施形態の間の優先剥離式シールの構造および配置が相似しているため、開始点等を含む優先剥離式シールは同一の参照符号で特定される。しかし、出口範囲(図11の22)はここでは、一般に矩形の形状で容器にわたり、両側で永久周辺シール16と重なり合う安全シール100によって二分されている。安全シール100は出口範囲(図11の22)を、安全シール100と第2優先剥離式シール92との間に配置された圧力チャンバ102と、安全シール100と出口ポート30との間に配置された出口チャンバ104とにさらに分割する。
【0082】
動作の際、図12の容器の実施形態は図11で示された実施形態とほぼ同様に機能するが、安全シール100は、薬剤コンパートメント20から出口コンパートメント104への活性液体薬剤の作動放出に対する保証の度合いを追加する。図11の実施形態の場合と同様、圧力チャンバ102は、圧力等化チャネル98及び希釈液コンパートメント18と共に、圧力チャンバと希釈液コンパートメントとの間のΔPを等化された状態に維持するよう機能するので、第1優先剥離式シール90が剥離開放し液体薬剤が希釈液と混合されない限り、またそれまでは第2優先剥離式シール92は断裂することができない。圧力チャンバ102はΔPの等化作用を保証するが、チャンバの容積が十分ではないので、第2剥離式シール92を剥離開放する十分な強さの断裂力を発生することはできない。液体希釈液が第1優先剥離式シール90を断裂すると、希釈液と薬剤とが混合され、結合された容積によって十分な力が発生し、次に第2優先剥離式シール92とひいては安全シール100を断裂する。
【0083】
従って、本発明による二元成分医用容器は、従来の容器に一般に関連する欠陥のない、二元液体成分の複合貯蔵及び投与に適したものと見られる。様々な構成の選択剥離式シールは希釈液及び薬剤コンパートメントを形成してそれらを画定し、さらに複合薬物が患者に投与される前に液体薬剤と希釈液とを確実に混合する。この形式の容器の選択剥離式シールは、容易かつ費用効果的に製造されると共に、二元成分投与の安全を大きく改善する。
【0084】
シールの形成
理論にしばられることなく、シールの剥離性は、時間、圧力及び温度を、後部シートの中間及び外部層より低い溶融温度を有する、容器の前部及び後部シートの内部層の間の境界を溶解する程度に制限することで達成されると考えられる。溶解ゾーンの内部層の構造変化の深さが制限され、それによって剥離する性質がシールに付与される一方、容器の正常な取扱時の破損を防止する十分な強度が提供される。好適には、本発明の容器の作動力は、極端な取扱い条件で容器の完全性を提供する一方で、全てのユーザにとって作動が容易であるように厳しく管理される。作動労力または力は、各シールの形状、幅Wまたはその機能(第1優先剥離式シール、第2優先剥離式シール、または安全シール)によって必然的に変化するが、好適には個々のシールに関して±6.89Pa(±1ポンド/平方インチ(psi))程度まで均一な破裂圧力を特徴とする。
【0085】
破裂圧力のこうした均一性を達成するため、管理しなければならない重要なパラメータは温度であることが判明した。均一な破裂圧力応答は、シール温度を摂氏−18.88度から摂氏−16.66度(±2°F)以内に管理することで達成される。市販の生産用ヒートシール装置はヒートシール温度の変動性をこの望ましい範囲内に管理することができない。しかし、シール時間は非常に正確に管理することができる。従って、時間が制御パラメータとして選択され、ヒートシール温度の変動性を補償するよう調整される。シールヘッドの時間と圧力が許容可能な範囲内にあるよう監視され、ヒートシール時間がしかるべく調整される。接触圧力は好適には約1585.79Pa(230psi)〜約2344.21Pa(340psi)であるが、当業者が認識するように、生産用ヒートシール機械のパラメータを設定する便宜のために、この範囲内の低めの数字(約1585.79Pa(230psi))が提供される。容器材料に対してヒートシール・バーが行使する圧力が、材料シール層を望ましいシールの表面範囲の上に接触させる十分なものである限り、適当な温度と時間とを与えれば剥離式シールが形成される。実際、本発明によって考察されたものを越えるヒートシール温度および時間の変化があると、シールは望ましい均一な抵抗特性を示さないだけでなく、シールの長さ部分に沿って完全に断裂しないものになることが実験的に判明している。不完全なシール断裂の結果、例えば、剥離式シールが容器の永久周辺シールと接触する90°の角に残余希釈液または薬剤が捕らえられて残ることが多い。従って、希釈液/薬剤の混合比は意図されたものではなくなり、望ましいものより高濃度の薬品が供給されることになる。
【0086】
約±6.89Pa(1psi)の破裂圧力均一性を有する例示実施形態の80:20フィルムの剥離式シールを形成する個々の時間、温度及び圧力設定の例には、圧力=1620.26Pa(235psi)、温度=摂氏125度(257°F)、時間=1.9秒、及び圧力=1620.26Pa(235psi)、温度=摂氏126.66度(260°F)、時間=1.75秒が含まれる。周辺永久ヒートシール及び出口ポート・シールを提供するにはさらに高い温度と関連する圧力及び時間が使用され、シール層の大きな割合、すなわち深さに対して構造変更作用を生じる。こうしたシールは約2秒間、摂氏143.33度(290°F)の温度と1378.95Pa(200psi)との間の圧力によって形成される。当業者は、本発明の容器を構成する際、永久及び剥離式両方のシールを形成する様々な技術が使用されることを認識するだろう。すなわち、シール温度を管理する度合いが(約摂氏−18.88度から摂氏−16.66度(±2°F)以内まで)大きくても、均一な破裂圧力を有する剥離式シールの製造が可能であることが明らかである。さらに、シール形成の制御パラメータとして時間が選択されるのは、正確な管理が可能だからである。温度、圧力またはこれら両方を正確に管理しても同様な結果が得られるだろう。
【0087】
図9〜図12(必要に応じて図12の安全シール100)に例示される容器の実施形態を構成する優先剥離式シールは、二重シール・バー構成を有するヒートシール・ヘッドを伴う構成のモジュール式・ヒートシール・ステーションを使用して作成されるが、そこでは二重バーの一端が横向きシール・バーによって接続され、一般に細長いU形を描く。細長いU形は必然的にシールが図9〜図12で示される時のシールのフットプリントをたどる。モジュール式・ヒートシール・ステーションは、本発明の譲受人によって共通に所有され、その開示全体を特に参照することで本明細書の記載に代える、1997年4月11日出願の同時係属出願第08/837927号で説明されているようなモジュール式容器製造装置に組み込まれている。そのモジュール式にされた性質のため、従来の剥離式シール形成ステーションは容器製造装置から単に取り外され、図9〜図12で例示された何れか1つの実施形態によるフットプリントを有する優先剥離式シールを提供する形状および構成のヒートシール・ヘッドを備える優先剥離式シール形成ステーションに置き換えられる。容器製造装置のモジュール性と、特にヒートシール・ステーションのモジュール式性質のため、容器の様々な実施形態を同じ装置で製造することが可能である。貯蔵及び投与されることが望ましい液体薬剤と希釈液との正確な組合せに応じて、個々の選択剥離式シールを伴う容器が専用に構成される。従って、本発明によるモジュール式容器製造装置は、広範な寸法および広範なシール構成を有する広範な医用容器の製造に適したものであることが分かる。このように製造された容器は全て、液体/液体二元成分だけでなく、望ましい場合液体希釈液と粉末薬剤とを含む二元成分にも適していることが分かる。
【0088】
頭隙を縮小した容器
特に液体の動きや乱流の影響を受けやすい乳剤、リポソーム等の複合貯蔵及び投与に適した医用容器の追加実施形態が図13に例示される。一般に110で示される容器は表面的には前に説明した実施形態と同様であるが、この容器は活性成分、好適には液体を収容する単一コンパートメント112を備えていることが注目される。成分コンパートメント112は、容器にわたり、容器を構成する前部及び後部シートを結合する永久周辺シール16と重なり合う一般に直線の矩形剥離式シール116によって空の出口コンパートメント114から分離される。出口ポート30は容器の一端に提供され、出口コンパートメント114と流通する。動作の際、容器112を圧搾して操作すると、成分コンパートメント112内に剥離式シール116を断裂する流体圧力が発生し、投与のために出口ポート30を通じて液体成分が利用できるようにする。
【0089】
以下さらに詳細に説明される理由のため、出口コンパートメント114は好適には空気チャンバとして構成され、最小量の濾過無菌空気を収容する。成分コンパートメント112は適切には、液体によって成分コンパートメント112の中に含まれる頭隙(残余空気またはガス)がほとんどなくなるような形でコンパートメント内に導入されたある量の液体を含んでいる。
【0090】
この容器110は適切には上記で説明された単一層熱可塑性フィルムおよびその積層物を含む前部及び後部シートから製造される。前部及び後部シートは、本発明の譲受人によって共通に所有され、その開示全体を特に参照することによって本明細書の記載に代える、1997年4月11日出願の同時係属出願第08/837927号で開示されているようなモジュール式容器製造装置でフィルム・ウェブから結合される。前部及び後部シート・フィルムが結合され、図13に例示されるような容器の一般的な外形を形成する。さらに、製造された容器には犠牲ストリップが含まれるが、この犠牲ストリップは、やはり成分コンパートメント112の内部と流通する犠牲充填ポートおよび充填チャネルを含む容器の1つの側面から延びこの側面に配置されている。上記の参考文献で説明されているように、犠牲ストリップおよび犠牲ポートは容器の充填処理の際有用であり、充填が完了して容器を顧客に出荷する準備ができると切り取られる。
【0091】
容器が液体成分を充填することを準備する製造段階に入ると、容器はまず紫外線放射または電子ビーム(Eビーム)に露出され滅菌される。滅菌処置が完了すると、滅菌された医用容器は無菌充填設備に移送され、容器は、図14に示される例示した処理フローシートに関連して説明されるように本発明の実行によって無菌的に充填される。
【0092】
容器の充填は、医療産業で次第に一般的になりつつある集積回路製造に関連して開発された製造技術を利用する。この技術は一般に、クラス100無菌環境での従来の容器充填から離れ、環境が無菌である「隔離装置」ユニット内での容器充填に移行することを伴っている。クラス100無菌環境と「隔離装置」との主要な相違は、作業員が環境から分離されていることである。隔離装置は本質的に、隣接する機械と容器充填操作部とを管理された空間内に密閉する「小さな環境」である。作業員はこの空間から分離され、グローブポート及び/または「ハーフスーツ」を通じて材料に干渉する。先行する処置では作業員は通常主要な生物学的汚染の発生源であるので、作業員を環境から分離することで小さな無菌環境を形成し維持することが可能である。
【0093】
無菌充填は、本発明の譲受人によって共通に所有され、その開示全体を特に参照することによって本明細書の記載に代える、1997年4月11日出願の同時係属出願第08/837927号で開示されたモジュール式無菌充填装置及び方法によって行われる。上記の参考文献に示されているように、容器はこの目的で容器の犠牲ポートに提供されている接点フランジと嵌合する移送機構によって充填隔離装置に導入されそれを通過する。移送機構は、初期重量判定、非ブロック化、無菌充填、最終重量判定等といった処理を含む様々な処理ステーションを通じて容器を割り出し、移動させる。
【0094】
すなわち、図14の例示処理フローシートによれば、容器は液体充填隔離装置に導入され、液体充填処理の各工程を通じて容器の割り出しをする連続ループ式移送帯の上に配置される。各容器は充填ステーションに割り出しされるが、そこではロボットアームが円弧を描いて移動し、コンパートメントの犠牲ポートから安全キャップを取り外して、ポートと、ひいては成分コンパートメント112とに液体が進入するようにする。次に成分コンパートメント112は0.2マイクロメートル(0.2ミクロン)濾過窒素または空気で非ブロック化され、成分コンパートメント112が液体を受け入れるよう準備する。コンパートメント112を非ブロック化することは前部及び後部シートを互いに分離してコンパートメントを袋状の形状にする役目を果たすが、そこに注意深く管理された投与量の液体が投薬される。次にコンパートメントの犠牲ポートが液体充填機械の投薬ノズルの下に配置される。リポソーム溶液、活性乳剤等といったあらかじめ決定された量の液体が、注意深く管理された投与量で犠牲ポートを通じて容器に投薬される。当業者は、液体が単一投薬工程で容器に導入されることを理解するだろう。また、二重投薬工程または多数投薬工程処置が使用されることもあり、その場合容器は2つかそれ以上の連続して配置された投薬ノズルを通過するよう割り出しされる。多数投薬工程処置は、乱流の影響を極度に受けやすく、注意深く管理された投与量で提供しなければならない液体により容器を充填する場合特に有益である。
【0095】
投薬工程に続いて、容器はヒートシール・ステーションに割り出しされるが、そこではまず成分コンパートメントの頭隙が0.2マイクロメートル(0.2ミクロン)濾過原子ヘリウム(He)の噴射で調整される。ヒートシール・ステーションは裏当て板に向かい合うヒートシール・プラテンを備えているが、これらは容器の上で閉じ、犠牲ポートと成分コンパートメント112の間の流通チャネルを密封する。実際には、ヒートシールは永久周辺シールを継続するので、容器の周囲全体が閉じられる。
【0096】
ここで充填された容器は隔離装置から出て、外面から残余液体を取り除くために洗浄及び乾燥され、犠牲ポートを含む容器の大きすぎる犠牲部分を取り除くことで最終寸法になる。容器の製造及び充填はこれで完了する。
当業者が理解するように、充填処理終了時の頭隙調整工程は一定の量のヘリウム・ガスを容器の成分コンパートメントに導入し、容器内の初期頭隙を画定する。ここで図13を参照すると、ヘリウムの噴射によって画定された初期頭隙はV で示され、成分コンパートメントに提供される初期頭隙容積を表す。
【0097】
しかし、容器110を構成するために使用される熱可塑性フィルムは膜の特性を有するので、相対的透過性の物理的法則に従うことがすぐに認識されるだろう。例えば、容器110の前部シートを構成する80:20フィルムは、酸素(O )について特に透過性を有するものとして上記で説明されている。容器のフィルムを透過性膜として認識することに加えて、フィックの法則による膜を越える濃度による拡散が検討対象のシステムにも適用されることを認識することも重要である。ヘリウムが最初に容器に導入される時、ヘリウムの量V は公称約0.1MPa(1気圧)である。しかし、この量は純粋な原子ヘリウムを含むので、普通の空気中のヘリウムより必然的に高濃度である。膜を越える物質の拡散は膜をはさむ物質の濃度勾配に比例するので、ヘリウムは容器を構成する材料を通じて拡散(透過)し、頭隙容積V から大気に通過する。同様に、空気(80%のN と20%のO )も大気から容器の頭隙への同じ濃度勾配拡散の対象になるが、ヘリウムに対する空気の交換率は1よりかなり小さい。空気とヘリウムとの平衡交換は容器材料の空気透過性に対する容器材料のヘリウム透過性の比によって決定される。ヘリウム・ガスは原子ガスである、すなわち、ヘリウム分子でなくヘリウム原子から構成されているので、その物質断面は空気の成分よりかなり小さく、ヘリウムは容器のフィルムを構成する成分の分子間を移動するのが容易である。例えば、ヘリウム原子の原子半径は0.0001マイクロメートル(1オングストローム)未満であるが、酸素または窒素分子の原子半径は約0.0003マイクロメートル〜約0.0004マイクロメートル(3〜4オングストローム)である。従って、他の全てのことを考慮しなければヘリウムは空気の約4倍の拡散率を示すので、ヘリウムは容器の材料を通じて透過して空気と置換され、最終頭隙容積は平衡状態では初期頭隙容積の少なくともわずか1/4になることが予想される。これは図14の実施形態ではV として示される範囲として示されている。
【0098】
ヘリウムと空気の相対透過性は、もちろん、原子と分子との断面の差以外の様々な他の要素の影響を受けやすい。例えば、容器のフィルムを構成する分子鎖の配置および構成は2つのガスの相対拡散率に対する影響を有する。比較的稠密な材料は容易にヘリウムを通過するが、空気のような大きい分子に対しては比較的不透過性であることは明らかである。その場合、濃度による拡散は事実上全てのヘリウムを成分コンパートメントから出すので、頭隙はほぼ完全に除去される。濃度勾配拡散と膜透過性の原理を理解することから、成分コンパートメント頭隙の最終容積V をさらに正確に画定するために、連続技術を使用することが考えられる。例えば、頭隙を最初ヘリウムで形成した後容器を純粋な窒素(N )で充填したチャンバ内に配置する。上記で説明されたようなフィックの法則の作用によってある量の窒素がある量のヘリウムに置換されるが、最終容積はヘリウムの初期容積よりかなり小さく、事実上ゼロであることが十分ありうる。次にこの容器を窒素環境から取り出し普通の室内の大気中に導入すると、そこでは濃度勾配による拡散によって、最終頭隙容積を構成する窒素の一部が、膜を越えて頭隙空間内に拡散する空気に競合して、容器の材料を通じて空気中に透過する。空気は80%の窒素を含んでいるので、容器のフィルム(膜)をはさむ濃度勾配は比較的小さく、平衡率交換を考慮すると頭隙容積の変化は最小であろう。
【0099】
この容器から液体が投薬される際、その目的で容器に提供された目盛と比較することで、注入作用の進行を評価するのが望ましいことが多い。これを行うためには、液体にメニスカスが存在しなければならない。図14の容器110の出口チャンバ114が0.2マイクロメートル(0.2ミクロン)濾過空気で満たされているのはそのためである。容器が操作され剥離式シール116が断裂すると、出口コンパートメント内の空気は液体の表面上にメニスカスを形成する。すなわち、成分コンパートメント112内の液体はコンパートメントの頭隙を除去することで液体の動き及び/または乱流から保護されるが、液体には適切なメニスカスが形成されるので、注入作用の進行を視覚的に評価することができる。
【0100】
当業者が認識するように、優先剥離式シールの様々な実施形態と関連する液体希釈液及び薬剤を含む実施形態の基本的な議論は本発明の範囲を制限するものではない。粉末及び液体薬剤を様々な希釈液と混合するために、中間コンパートメントまたは複数のコンパートメント内で粉末薬剤を使用することも、本発明を使用して利用される。さらに、様々な例示実施形態に関連して説明された優先剥離式シールの個々の形状および構成も、容器の個々の適用業務に適合するため変更されることがある。シールの厚さとシールが容器の永久周辺シールに重なり合う度合いも全て個々の製造業務に合わせて調整されることがあり、また様々な開始点の鋭さも個々の剥離式シール設計の断裂特性に合わせて調整されることがある。
【0101】
さらに、頭隙除去は必ずしも、初期犠牲頭隙容積を形成するヘリウム・ガスの使用だけに依存するものではない。空気に対して容器材料を越える優先透過性及び/または拡散率を有するならば他のガスも容器の初期充填で使用するのに適している。初期頭隙容積が、空気に対して強い濃度による拡散率とフィルム材料を越える有利な透過率を有するガスで満たされる限りにおいて、代替ガスには酸素またはネオンまたさらにはアルゴンが含まれる。
【0102】
可撓無菌性容器の例示実施形態の上記の説明は例示を目的とする。当業者に明らかな変形のため、本発明は上記で説明された特定の実施形態に制限されることを意図するものではない。これらの変形と他の修正及び変更は、特許請求の範囲で説明される本発明の範囲および目的に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10 可撓容器
18、20、22 コンパートメント
24、26 優先剥離式シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱流の影響を受けやすい液体薬剤の複合貯蔵及び投与のための可撓容器を充填する充填方法において、
可撓透明前部シートを提供し、
可撓後部シートを提供し、前記前部及び後部シートが共通周辺エッジに沿って互いに
封され、
さらに、
隣接する表面の加熱された部分を互いに溶融させるために第1特定範囲で前記前部及び後部シートを加熱し、それによって前記共通周辺エッジの2つの側面の間に延びる剥離式シールを形成し、前記剥離式シールが、液体収容コンパートメントと出口コンパートメントとを形成するために前記前部及び後部シートを分離式に接合し、
さらに、
前記液体収容コンパートメントに薬剤液体を充填し、
前記液体収容コンパートメントの頭隙を調整するために第1ガスを前記コンパートメントに導入し、
前記液体薬剤及び第1ガスを密閉するために前記容器の共通周辺エッジに沿って前記シールを仕上げ、
前記第1ガスが空気の少なくとも4倍の割合で前記容器の前部及び後部シートを通じて透過性である充填方法。
【請求項2】
前記第1ガスがヘリウム、水素、アルゴン及びネオンからなるグループから選択される、請求項1に記載の充填方法。
【請求項3】
前記剥離式シールが、約1.5秒〜約2.5秒の範囲内の時間、約摂氏118.33度(245°F)〜摂氏129.44度(265°F)の範囲内のヒートシール温度を維持する一方で、約1585.79Pa(230psi)〜約2344.21Pa(340psi)の圧力を加えることで形成される、請求項2に記載の充填方法。
【請求項4】
前記前部及び後部シートが、前記シールの領域で互いに連結する、スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン・エラストマーと混合されたポリプロピレン−ポリエチレン共重合体の少なくとも1つのフィルム層を備える、請求項3に記載の充填方法。
【請求項5】
前記前部及び後部シートの前記ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体が約80%/20%の重量比でスチレン・エチレン−ブチレン・スチレン・エラストマーと混合される、請求項4に記載の充填方法。
【請求項6】
さらに、ある量の第2ガスを前記出口コンパートメントに導入する、請求項5に記載の充填方法。
【請求項7】
前記第1ガスと空気との間の異なる透過性によって、前記液体薬剤の上の前記頭隙がほぼ除去される、請求項6に記載の充填方法。
【請求項8】
投与のために前記剥離式シールを断裂し前記液体薬剤が前記出口コンパートメントにアクセスするように前記容器が操作される時、前記第2ガスが前記液体薬剤の上にメニスカスを形成する、請求項7に記載の充填方法。
【請求項9】
液体薬剤の複合貯蔵及び投与のための可撓容器であって、
可撓後部シートと、
共通周辺エッジに沿って前記後部シートに密封された可撓前部シートと、
出口コンパートメントと液体薬剤を収容するコンパートメントとを画定するために、前記共通周辺エッジの2つの側面の間に延び、前記前部及び後部シートを分離式に接合する剥離式シールであって、前記薬剤コンパートメントが、前記コンパートメント内にガス頭隙がないように液体薬剤でほぼ完全に充填される剥離式シールと、
前記容器と一体の、前記容器がIV投与のためにアクセスされる時、前記液体薬剤の上にメニスカスを確立する手段とを備える可撓容器。
【請求項10】
前記剥離式シールが前記容器の操作によって発生する前記シールにかかる流体圧に対して均一な抵抗特性を提供するよう構成され、前記均一な抵抗特性が±13.78Pa(2psi)以内にまで均一な所定の印加圧力で前記シールを剥離開放する、請求項9に記載の可撓容器。
【請求項11】
前記出口コンパートメントがある量の空気を収容し、前記ある量の空気が、前記容器の操作によって発生する前記剥離式シールの断裂の際前記液体薬剤の上にメニスカスを形成する、請求項10に記載の可撓容器。
【請求項12】
前記可撓前部シートが、スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン・エラストマーと混合されたポリプロピレン−ポリエチレン共重合体の単一層フィルムから構成される、請求項11に記載の可撓容器。
【請求項13】
前記可撓後部シートが、スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン・エラストマーと混合されたポリプロピレン−ポリエチレン共重合体の単一層フィルムから構成される、請求項12に記載の可撓容器。
【請求項14】
前記可撓後部シートが、スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン・エラストマーと混合されたポリプロピレン−ポリエチレン共重合体の内部層を含む多層積層物から構成される、請求項12に記載の可撓容器。
【請求項15】
前記多層積層後部シートがさらに、不透明高障壁中間層と外部高温抵抗性モールド・リリース層とを含む、請求項14に記載の可撓容器。
【請求項16】
前記前部及び後部シートの前記ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体が約80%/20%の重量比でスチレン・エチレン−ブチレン・スチレン・エラストマーと混合される、請求項15に記載の可撓容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−26012(P2011−26012A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242206(P2010−242206)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【分割の表示】特願2000−520171(P2000−520171)の分割
【原出願日】平成10年10月1日(1998.10.1)
【出願人】(500216204)ビー.ブラウン メディカル,インコーポレイティド (20)
【Fターム(参考)】