説明

可撓導体および可撓導体の製造方法

【課題】積層体の薄板がめくれ上がるのを防止しながら、積層体が動いた際に薄板が切れてしまう現象を防止でき、長期にわたって使用できる可撓導体および可撓導体の製造方法を提供する。
【解決手段】可撓導体1は、複数枚の薄板20を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体10と、積層体10の両端部に設けられた端子部11,12と、端子部11,12と積層体10の接合部分に配置されて薄板20がめくれ上がるのを防止する保護板31,32,33,34と、を備え、積層体10と端子部11,12が、摩擦撹拌接合により接合され、保護板の端部の薄板31,32,33,34に面する側に曲面部31R、32R、33R、34Rが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓導体および可撓導体の製造方法に関し、特に複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体と、積層体の両端部に設けられた端子部とを接合することで得られる可撓導体および可撓導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓導体はコーペル等とも呼ばれており、図10に示すように、可撓導体300は、積層体301と、この積層体301の両端部に設けられた端子部302,303とを接合することで得られる。積層体301は、複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する。端子部302,303は、積層体301の一端部と他端部にそれぞれ接合されている。
【0003】
このような可撓導体300の一方の端子部302は一方の電気接続対象物に対して電気的に機械的または熱的に接続され、他方の端子部303は他方の電気接続対象物に対して電気的に機械的または熱的に接続される。積層体301が破線で湾曲して示すように可撓性を有している。このため、可撓導体300は、スイッチング動作を行う電気的接続部分における位置の移動の吸収、電気的接続部分における振動の吸収、熱による膨張収縮の吸収、あるいは一方の電気接続対象物と他方の電気接続対象物の取り付け位置が多少ずれても対応できるように電気的接続の取り付け位置のフレキシブル化を行う場合に、適用することができる。
【0004】
この種の可撓導体では、例えば一方の端子部302と他方の端子部303は、薄板で形成されており、これらの一方の端子部302と他方の端子部303がそれぞれ積層体301の端部を挟んだ状態で、はんだを塗布して固定する形式の物がある。また、一方の端子部302と他方の端子部303は、リベットを用いてそれぞれ積層体301の端部に固定する形式の物もある。
【0005】
さらに、一方の端子部302と他方の端子部303は、TIG(Tungsten Insert Gas)溶接やMIG(Metal Insert Gas)溶接、あるいは電子ビーム溶接を用いてそれぞれ積層体301の端部に固定することもある。
ところで、積層した金属箔と基材とを摩擦撹拌溶接(FSW:Friction Stir Welding)することが接続する技術が、特許文献1に開示されている。摩擦攪拌溶接とは摩擦攪拌接合とも呼ばれ、先端に突起のある円筒状の工具を回転させながら強い力で押し付けることで突起部を接合させる部材(母材)の接合部に貫入させ、これによって摩擦熱を発生させて母材を軟化させるとともに、工具の回転力によって接合部周辺を塑性流動させて練り混ぜることで複数の部材を一体化させる接合法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−118877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述したはんだを塗布して固定する可撓導体の場合には、環境問題の観点から鉛フリーのはんだを用いる必要があり、積層体の各薄板同士の接続にははんだが介在することで、電気的抵抗や熱伝達抵抗が増加する。両端部の幅は積層体の幅以上にすることができない。
【0008】
リベットを用いて固定する可撓導体の場合には、リベットを固定するために、両端子部には新たに補強用の上下の板部材を追加する必要があり、材料費の増加や加工費の増加があり、積層体の各薄板は単に接触しているだけであるので、電気的抵抗や熱伝達抵抗が増加する。両端部の幅は積層体の幅以上にすることができない。
【0009】
さらに、溶接により固定する可撓導体の場合には、製造時の製品温度が高温になるため、可撓導体が銅により作られていると、製品自体が軟化したり、焼けによる変色が発生する。この変色を取るのに多大な労力が必要になる。
また、溶接部分の通電性能は通常の純銅や純アルミニウムよりも劣る。電子ビーム溶接により固定する可撓導体の場合には、加熱は瞬時であり、軟化部分は少なく焼けも発生しないが、設備の関係上バッチ処理となり生産性において問題になる。
【0010】
さらに、特許文献1の記載の摩擦撹拌溶接技術を可撓導体の製造に用いて、積層体と端子部の接合部に摩擦撹拌溶接を施すと、摩擦撹拌作用により積層体の薄板がめくれ上がり、健全な接合ができない場合がある。また、可撓導体を実際に使用して積層体が可動すると、端子部付近で積層体の薄板が切れてしまうおそれがあるので、長期にわたって使用できない。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、積層体の薄板がめくれ上がるのを防止しながら、積層体が動いた際に薄板が切れてしまう現象を防止でき、長期にわたって使用できる可撓導体および可撓導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解消するために、本発明の可撓導体は、複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体と、前記積層体の両端部に設けられた端子部と、前記端子部と前記積層体の接合部分に配置されて前記薄板がめくれ上がるのを防止する保護板と、を備え、前記積層体と前記端子部が、摩擦撹拌接合により接合され、前記保護板の端部の前記薄板に面する側に面取り部または逃げ部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の可撓導体では、前記保護板は、前記端子部の第1面側と前記第1面とは反対の第2面側の内の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする。
本発明の可撓導体では、前記端子部の第1面側の前記保護板は、前記端子部とは別部材であり、前記端子部の第2面側の前記保護板は、前記端子部と一体に形成されていることを特徴とする。
本発明の可撓導体では、前記摩擦撹拌接合は、前記端子部と前記保護板の接合部に沿って形成されていることを特徴とする。また、摩擦攪拌接合部とは、前記摩擦攪拌接合により一体化された部分を意味する。
【0013】
また、本発明の可撓導体の製造方法は、複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体と前記積層体の両端部に設けられた端子部とを接合して可撓導体の製造する製造方法であって、前記積層体と前記端子部との接合部分に、前記薄板がめくれ上がるのを防止する保護板を配置し、前記保護板の端部の前記薄板に面する側には面取り部あるいは逃げ部が形成されており、前記積層体と前記端子部を、摩擦撹拌接合により接合することを特徴とする。
ここでいう面取り部または逃げ部とは保護板の薄板に面する側の端部を曲面形状または斜面形状に加工した部分、あるいは保護板の薄板に面する側が曲面形状または斜面形状になるように折り曲げ加工した部分をあらわす。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、積層体の薄板がめくれ上がるのを防止しながら、積層体が動いた際に薄板が切れてしまう現象を防止でき、長期にわたって使用できる可撓導体および可撓導体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の可撓導体の好ましい実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す可撓導体の一部を省略した側面図である。
【図3】摩擦撹拌接合装置の好ましい例を示す図である。
【図4】摩擦撹拌接合を行う前の状態を示す斜視図である。
【図5】摩擦撹拌接合を開始する状態を示す図である。
【図6】摩擦撹拌接合の途中の状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図10】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の可撓導体の好ましい実施の形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す可撓導体の一部を省略した側面図である。
図1に示す可撓導体1は、積層体10と、第1端子部11と第2端子部12と、第1保護板31、32と、第2保護板33,34を備えている。
積層体10は、複数枚の薄板20を積層することで形成されており、導電性と可撓性を有する。各薄板20は、帯状の部材であり、導電性を有する金属、例えば銅やアルミニウムにより作られている。
【0017】
図1に示す第1端子部11は、積層体10の第1端部10Bに対して電気的に熱的に機械的に接続して固定されている。第2端子部12は、積層体10の第2端部10Cに対して電気的に熱的に機械的に接続して固定されている。第1端子部11と第2端子部12は、導電性を有する金属、例えば銅やアルミニウムにより作られている。第1端子部11と第2端子部12には、例えばそれぞれ接続対象物に対して取り付けるためのネジ穴11H、12Hが、1つ以上形成されている。
【0018】
図1に示す第1保護板31,32は、第1端子部11の一方の面11Bと他方の面11Cに対してそれぞれ接続されている。同様にして、第2保護板33,34は、第2端子部12の一方の面12Bと他方の面12Cに対してそれぞれ接続されている。第1保護板31、32と、第2保護板33,34は、第1端子部11と第2端子部12と同じ材質であり、導電性を有する金属、例えば銅やアルミニウムにより作られている。
【0019】
図1と図2に示すように、第1保護板31は、第1端子部11の一方の面11Bと積層体10の第1端部10Bの接合部分41上に配置されており、接合部分41付近の積層体10の薄板20がめくれ上がるのを防止するための追加部材である。
同様にして、第1保護板32は、第1端子部11の他方の面11Cと積層体10の第1端部10Bの接合部分42上に配置されており、接合部分42付近の積層体10の薄板20がめくれ上がるのを防止するための追加部材である。
【0020】
また、図1と図2に示すように、第2保護板33は、第2端子部12の一方の面12Bと積層体10の第2端部10Cの接合部分43に配置されており、接合部分43付近の積層体10の薄板20がめくれ上がるのを防止するための追加部材である。
同様にして、第2保護板34は、第2端子部12の他方の面12Cと積層体10の第2端部10Cの接合部分44に配置されており、接合部分44付近の積層体10の薄板20がめくれ上がるのを防止するための追加部材である。
【0021】
図2に示すように、第1端子部11の一方の面11Bの端部15Bと、第1保護板31の端部31Bと、積層体10の第1端部10Bとは、摩擦撹拌接合部分51により電気的に熱的にしかも機械的に接続して固定されている。第1端子部11の他方の面11Cの端部15Cと、第1保護板32の端部32Bと、積層体10の第1端部10Bとは、摩擦撹拌接合部分52により電気的に熱的に機械的に接続して固定されている。
【0022】
図2に示すように、第2端子部12の一方の面12Bの端部16Bと、第2保護板33の端部33Bと、積層体10の第2端部10Cとは、摩擦撹拌接合部分53により電気的にかつ熱的にしかも機械的に接続して固定されている。第2端子部12の他方の面12Cの端部16Cと、第2保護板34の端部34Bと、積層体10の第2端部10Cとは、摩擦撹拌接合部分54により電気的にかつ熱的に機械的に接続して固定されている。
【0023】
図1と図2に示すように、第1保護板31の内端部には、薄板20に面する側に曲面部31Rが形成されている。第1保護板32の内端部には、薄板20に面する側に曲面部32Rが形成されている。第2保護板33の内端部には、薄板20に面する側に曲面部33Rが形成されている。第2保護板34の内端部には、薄板20に面する側に曲面部34Rが形成されている。これらの曲面部31R〜34Rは、面取り部または逃げ部の一例であり、図2に示すように、例えば1/4円周部分形状である。
【0024】
図1と図2に示すように、第1保護板31、32と第2保護板33,34が用いられることにより、次のようなメリットがある。
既に説明したように、第1保護板31、32と第2保護板33,34は、積層された薄板20を押さえ付けることで、積層体10と第1端子部11の接合部と積層体10と第2端子部12の接合部に対して摩擦撹拌溶接を施す際に、積層された薄板20がめくれ上がるのを防止できる。第1保護板31、32と第2保護板33,34が積層された薄板20を押さえ付けるので、複数枚の薄板20間に微細な空隙が形成されることを防止でき、第1端子部11と積層体10の第1端部10Bとの接合部分の品質と、第2端子部12と積層体10の第2端部10Cとの接合部分の品質が向上する。
【0025】
しかも、第1保護板31、32と第2保護板33,34を使用することで、接合部分の補強となり、可撓導体1を実際に使用して積層体10が大きく多数回動く場合には、特に製品寿命の向上が図れる。すなわち、既に説明したように、第1保護板31の内端部と第1保護板32の内端部と、第2保護板33の内端部と第2保護板34の内端部には、それぞれ薄板20側に向けて曲面部31R〜34Rがそれぞれ形成されている。このため、本発明の実施形態では、このように曲面部31R〜34Rがそれぞれ形成されているので、これらの内端部が角張っている形状を採用している比較例の場合に比べて、薄板20にはストレスが加わらず、薄板20が切れてしまう現象を防止できる。曲面部31R〜34Rは、面取り部または逃げ部の一例である。ここで、面取り部とは保護板の薄板に面する側をR面またはC面に加工、逃げ部とは保護板を薄板に面する側と反対側へ曲面または斜面形状に加工部をあらわす。
【0026】
図1に示す摩擦撹拌接合部分51は、回転ツールを回転させながら、被接合材料である第1端子部11の一方の面11Bの端部15Bと、第1保護板31の端部31Bに対して所定の深さまで挿入して、接合線Lに沿ってこの回転ツールを移動することで形成されている。
図1に示す摩擦撹拌接合部分52は、回転ツールを回転させながら、被接合材料である第1端子部11の他方の面11Cの端部15Cと、第1保護板32の端部32Bに対して所定の深さまで挿入して、接合線Lに沿ってこの回転ツールを移動することで形成されている。
【0027】
図1に示す摩擦撹拌接合部分53は、回転ツールを回転させながら、被接合材料である第2端子部12の一方の面12Bの端部16Bと、第2保護板33の端部33Bに対して所定の深さまで挿入して、接合線Lに沿ってこの回転ツールを移動することで形成されている。
図1に示す摩擦撹拌接合部分54は、回転ツールを回転させながら、被接合材料である第2端子部12の他方の面12Cの端部16Cと、第2保護板34の端部34Bに対して所定の深さまで挿入して、接合線Lに沿ってこの回転ツールを移動することで形成されている。
【0028】
図1に示すと図2に示すこれらの摩擦撹拌接合部分51〜54は、摩擦撹拌接合により得られる。摩擦撹拌接合では、回転ツールの近傍の材料が、回転ツールと被接合材料との間で発生する摩擦熱と加工熱により昇温されて被接合材料が軟化し、この軟化した被接合材料は回転ツールの回転により塑性流動させて練り混ぜることで、回転ツールが通過した後方で固相接合される。
【0029】
図3は、摩擦撹拌接合装置の好ましい例を示している。
図3に示す摩擦撹拌接合装置100は、ベース101と、ワークテーブル102と、ヘッド装置103と、コラム104と、制御部105を有している。
ワークテーブル102は、ベース101の上に搭載されており、コラム104はベース101に対してZ方向に立てて固定されている。コラム104は、ヘッド装置103とアクチュエータ106を保持している。
【0030】
図3に示すヘッド装置103は、回転ツール200のチャック装置107とチャック装置107を連続回転させるためのモータ108を有している。制御部105がモータ108に指令を送ることで、モータ108はチャック装置107の回転ツール200をR方向に連続回転させることができる。
アクチュエータ106は、ヘッド装置103をZ方向に沿って昇降させるために設けられており、例えばエアシリンダである。制御部105がアクチュエータ106に指令を送ることで、チャック装置107の回転ツール200をワークテーブル102上の可撓導体1に対して押し付けることができる。
【0031】
図3に示すワークテーブル102は、スライド部111とスライド部112を有している。モータ114の送りネジ115が回転することで、スライド部111は、レール113にガイドされながらY方向(図3の紙面左右方向)に沿って直線移動して位置決め可能である。同様にして、モータ118の送りネジ119が回転することで、スライド部112は、レール117にガイドされながらスライド部111上をX方向(図3の紙面垂直方向)に沿って直線移動して位置決め可能である。モータ114,118は、制御部105の指令により動作される。スライド部112の搭載面には、ワークである可撓導体1が着脱可能に固定される。
【0032】
次に、図3と図4〜図7を参照して、図1に示すように、可撓導体1に対して摩擦撹拌接合部分51〜54を形成することで、可撓導体1を製造する方法を説明する。
図4と図3に示すように、回転ツール200は、ショルダ部201と、ピン部202を有している。ショルダ部201は円柱状の金属部材であり、ピン部202は、このショルダ部201の先端部から突出して形成されている。ピン部202の直径はショルダ部201の直径よりも小さい。
【0033】
通常の溶接により接合部分の溶接を行うと、接合部分の金属組織が結晶粒の粗大化により、他の部分よりも強度が低くなる。これに対して、摩擦撹拌接合を用いて接合部分の接合を行うと、接合部分の金属組織は微細結晶組織であるために、接合強度が通常の溶接に比べて大きくなる。しかし、積層された複数枚の薄板20には、摩擦撹拌接合を施した場合にはめくれ上がる現象が生じるので、健全な接合ができない場合があるので、上述した第1保護板31、32と第2保護板33,34が接合部分51〜54に対して用いられている。
【0034】
まず、図3に示すワークテーブル102のスライド部111とスライド部112が移動して、可撓導体1が回転ツール200の下部に位置決めされるとともに、回転ツール200が下がる。
【0035】
これにより、図4に示すように、回転ツール200の中心軸CLが、第1端子部11の一方の面11Bの端部15Bと第1保護板31の端部31Bの接合線Lの端部に位置決めされる。そして、図4から図5(A)と図5(B)に示すように、回転ツール200が回転しながらZ1方向に押し下げられて、例えば回転ツール200のピン部202の先端部203が反対側の第2保護板32側まで達する。
【0036】
次に、図6に示すように、回転ツール200は、相対的にX1方向に沿って直線移動されることで、回転ツール200の近傍の材料が、回転ツール200と第1端子部11の一方の面11Bの端部15Bと第1保護板31の端部31Bとの間で発生する摩擦熱と加工熱により昇温されて、第1端子部11の一方の面11Bの端部15Bと第1保護板31の端部31Bが軟化する。
【0037】
この軟化した第1端子部11の一方の面11Bの端部15Bと第1保護板31の端部31Bは回転ツール200の回転により塑性流動させて練り混ぜることで、回転ツール200が通過した後方で固相部分となって摩擦撹拌接合部分51が得られる。
このようにして、第1端子部11の一方の面11Bの端部15Bと第1保護板31の端部31Bと積層体20が、電気的にかつ熱的にしかも機械的に接合して固定される。このような摩擦撹拌接合部分51と同様なやりかたで、図1と図2に示す他の摩擦撹拌接合部分52〜54も得られる。
【0038】
次に、本発明の別の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本発明の別の実施の形態について、図1〜図6に示す実施の形態と同様の箇所には、同じ符号を記してその説明を省略する。
【0039】
図7は、本発明のさらに別の実施の形態を示す一部を省略した側面図である。
図7に示す実施の形態の可撓導体1Bでは、第1端子部11と第1保護板31は別部材であるが、第1端子部11と第1保護板32は一体物である。同様にして、第2端子部12と第2保護板33は別部材であるが、第2端子部12と第2保護板34は一体物である。これにより、部品点数を減らすことができ、摩擦撹拌接合部分51,53だけを形成すればよいので、作業効率が向上する。
【0040】
図8は、本発明のさらに別の実施の形態を示す一部を省略した側面図である。
図8に示す可撓導体1Cでは、積層体10がほぼ90度曲げて配置される。この場合には、第1保護板31と第2保護板33には曲面部31R、33Rが形成されているが、反対側の第1保護板32と第2保護板34には曲面部の形成は不要である。これは、第1保護板32と第2保護板34では、薄板20にストレスが生じにくく切れてしまう現象が生じにくいからである。
【0041】
本発明の可撓導体は、複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体と、積層体の両端部に設けられた端子部と、端子部と積層体の接合部分に配置されて薄板がめくれ上がるのを防止する保護板と、を備え、積層体と端子部が、摩擦撹拌接合により接合され、保護板の端部の薄板に面する側に面取り部または逃げ部が形成されていることを特徴とする。これにより、積層体の薄板がめくれ上がるのを防止しながら、積層体が動いた際に薄板が切れてしまう現象を防止でき、可撓導体は長期にわたって使用できる。
【0042】
本発明の可撓導体では、保護板は、端子部の第1面側と第1面とは反対の第2面側の内の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする。これにより、積層体の薄板がめくれ上がるのを防止することができる。
【0043】
本発明の可撓導体では、端子部の第1面側の保護板は、端子部とは別部材であり、端子部の第2面側の保護板は、端子部と一体に形成されていることを特徴とする。これにより、端子部の第2面側の保護板が端子部と一体に形成されていれば、部品点数を減らすことができる。
【0044】
本発明の可撓導体では、摩擦撹拌接合は、端子部と保護板の接合部に沿って形成されていることを特徴とする。これにより、端子部と保護板と積層体は、摩擦撹拌接合により確実に接合できる。
【0045】
また、本発明の可撓導体の製造方法は、複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体と積層体の両端部に設けられた端子部とを接合して可撓導体の製造する製造方法であって、積層体と端子部との接合部分に、薄板がめくれ上がるのを防止する保護板を配置し、保護板の端部の薄板に面する側には面取り部または逃げ部が形成されており、積層体と端子部を、摩擦撹拌接合により接合することを特徴とする。これにより、積層体の薄板がめくれ上がるのを防止しながら、積層体が動いた際に薄板が切れてしまう現象を防止でき、可撓導体は長期にわたって使用できる。
【0046】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、曲面部31R〜34Rは、図2に示すように、例えば1/4円周部分形状であるが、これに限らず他の形状を採用することもでき、特に形状に限定されない。
【0047】
上述した本発明の実施形態では、面取り部または逃げ部の一例として曲面部31R〜34Rが形成されているが、これに限らず、面取り部または逃げ部は、例えば図9(A)と図9(B)に示すような形状であっても良い。図9(A)の例では、面取り部または逃げ部131R〜134Rは、2段階の傾斜面を有している。図9(B)の例では、面取り部または逃げ部231R〜234Rは、単純な形状の傾斜面になっている。面取り部または逃げ部の形状は、これらの例以外にも、任意の形状が採用でき、特に限定されない。さらに、図9(C)に示すように、逃げ部331R〜334Rを設けるようにしても良い。これらの逃げ部331R〜334Rは、積層体10の表面から離れる方向に反るようにして形成されている。
【符号の説明】
【0048】
1 可撓導体
10 積層体
11 第1端子部
12 第2端子部
20 薄板
31,32 第1保護板
33,34 第2保護板
41,42,43,44 接合部分
51,52,53,54 摩擦撹拌接合部分
31R、32R、33R、34R 曲面部(面取りまたは逃げ部の一例)
100 摩擦撹拌接合装置
200 回転ツール
201 ショルダ部
202 ピン部
CL 回転ツールの中心線
L 接合線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体と、
前記積層体の両端部に設けられた端子部と、
前記端子部と前記積層体の接合部分に配置されて前記薄板がめくれ上がるのを防止する保護板と、を備え、
前記積層体と前記端子部が、摩擦撹拌接合部により接合され、前記保護板の端部の前記薄板に面する側に面取り部または逃げ部が形成されていることを特徴とする可撓導体。
【請求項2】
前記保護板は、前記端子部の第1面側と前記第1面とは反対の第2面側の内の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の可撓導体。
【請求項3】
前記端子部の第1面側の前記保護板は、前記端子部とは別部材であり、前記端子部の第2面側の前記保護板は、前記端子部と一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の可撓導体。
【請求項4】
前記摩擦撹拌接合部は、前記端子部と前記保護板の接合部に沿って形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の可撓導体。
【請求項5】
複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する積層体と前記積層体の両端部に設けられた端子部とを接合して可撓導体の製造する製造方法であって、
前記積層体と前記端子部との接合部分に、前記薄板がめくれ上がるのを防止する保護板を配置し、前記保護板の端部の前記薄板に面する側には面取り部または逃げ部が形成されており、前記積層体と前記端子部を、摩擦撹拌接合により接合することを特徴とする可撓導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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