説明

可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する方法および装置

【課題】可撓性を有する検査対象物の表面の状態について、一度に広い範囲を検査すること。
【解決手段】可撓性を有する検査対象物WKの表面の状態を検査する装置1であって、検査対象物を、断面が1つまたは複数の焦点STを持った凹状の曲面KMを描くように変形させる主ローラ21と、検査対象物の凹状の曲面KMを描いた表面を照明する照明部12と、検査対象物の表面による正反射光を受光するために焦点STに対応する位置に配置された画像センサ26と、画像センサ26の出力に基づいて検査対象物の表面の状態を検出する制御部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真プロセスを有した複写機またはMFP(Multi Function Peripherals)などのカラーの画像形成装置では、中間転写ベルト上でYMCKの各色のトナー像が合成され、これが用紙に転写される。中間転写ベルトとして、射出成型によってシート状に形成されたものが用いられることがある。中間転写ベルトは、通常、その表面が鏡面に形成されるものであり、表面に傷がないかどうかを検査する必要がある。
【0003】
従来より、シート状または紙状などの可撓性の対象物について、その表面の傷の有無の検査をインラインで行って生産の歩留まりを上げたいという要望がある。その検査において、対象物が鏡面性の表面である場合には検査が難しいが、いくつかの方法が提案されている。鏡面性の表面の傷を検出する方法には大きく分けて次の2通りがある。
(1) 対象物の傷なしの部分の正反射光を捉えるように照明光源およびカメラを配置し、正反射光のない低輝度部分を傷として検出する
(2) 対象物の傷の正反射光を捉えるよう照明光源およびカメラを配置し、正反射光のある高輝度部分を傷として検出する
また、カメラの周囲に配置したリング状のライトガイドを用いて平面状の検査物を照明し、検査物の周辺の傾き部分からの正反射によって検査物の存在を検出する装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、拡散照明を用いて様々な方向から対象物を照明するとともに、対象物の表面の正反射光がカメラに入射しないように構成した傷検査装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−71934
【特許文献2】特開2007−218889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記(2)の方法による場合には、傷の形状は様々であり、傷の形状によって照明光源とカメラとの最適な位置関係が異なるので、様々な形状の傷に対応しようとすると様々な方向への反射光を捉える必要がある。このため、カメラを数多く配置しなければならないなど、構成が複雑になる欠点がある。
【0007】
また、特許文献1の装置では、特殊なライトガイドを用いる必要があり、また一度に検出できる範囲が狭いという欠点がある。
【0008】
また、特許文献2の装置では、傷の形状などによっては正反射光がカメラに入射しないため、傷の検出漏れが生じる率が高い。これを防ぐためには、多数のカメラを設置する必要があり、装置が複雑になるという欠点がある。
【0009】
また、上記(1)の方法による場合には、対象物への入射光およびカメラへの入射光がいずれも平行光に近い必要がある。つまり、照明のために例えば点光源を用いた場合には、点光源による正反射光がカメラに入光するような対象物の表面の範囲が狭くなってしまう。そのため、一度に検査できる範囲が狭いという問題がある。
【0010】
本発明は、可撓性を有する検査対象物の表面の状態について、一度に広い範囲を検査することのできる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る方法は、可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する方法であって、検査対象物を、断面が1つまたは複数の焦点を持った凹状の曲面を描くように変形させるステップと、検査対象物の凹状の曲面を描いた表面に照明光を当て、その正反射光を前記焦点に対応する位置に配置した受光センサにより受光するステップと、前記受光センサの出力に基づいて検査対象物の表面の状態を検出するステップと、を有する。
【0012】
また、本発明に係る装置は、可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置であって、検査対象物を、断面が1つまたは複数の焦点を持った凹状の曲面を描くように変形させる変形手段と、検査対象物の凹状の曲面を描いた表面を照明する照明手段と、検査対象物の表面による正反射光を受光するために前記焦点に対応する位置に配置された受光センサと、前記受光センサの出力に基づいて検査対象物の表面の状態を検出する検出手段と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、可撓性を有する検査対象物の表面の状態について、一度に広い範囲を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る検査装置の構成を示す図である。
【図2】図1の検査装置において搬送ローラの軸心に沿った方向の反射光の状態を示す図である。
【図3】画像に現れた傷の例を示す図である。
【図4】検査装置における処理手順の概略を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る検査装置の構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態の検査装置の光学系の配置を示す図である。
【図7】第2の実施形態の検査装置における区分された検査範囲を説明する図である。
【図8】本発明の変形例の検査装置の構成を示す図である。
【図9】変形例の検査装置によって得られる画像の領域の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、シート状の検査対象物WKの表面の傷を検査する検査装置の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
まず、第1の実施形態の検査装置1について説明する。
【0016】
検査装置1における検査対象物WKは、可撓性を有したシート状で帯状のものである。検査対象物WKは、その表面が金属光沢物などのような鏡面性を有している。つまり、検査対象物WKの表面での反射光は、乱反射成分に比較して正反射成分が極めて大きい。検査対象物WKの表面に傷がある場合に、傷の部分では正反射とはならない。その場合に、傷の形状または深さなどに応じて、通常の正反射の方向とは異なった方向に局部的な正反射が起こったり、また乱反射などが起こる。
【0017】
図1において、検査装置1は、変形搬送部11、照明部12、撮像部13、および制御部14などを備える。
【0018】
変形搬送部11は、検査対象物WKを、断面が1つの焦点を持った凹状の曲面KMを描くように変形させながら搬送する。
【0019】
すなわち、変形搬送部11は、ガイドの役割を果たす透明の円筒状の主ローラ21、補助ローラ22a,22b、および図示しない回転駆動装置などを備える。主ローラ21は、ガラスまたは合成樹脂などによって形成される。回転駆動装置によって補助ローラ22a,22bが一定の速度で回転駆動され、補助ローラ22a,22bに接して載置された主ローラ21が回転する。
【0020】
回転する主ローラ21の外周面に沿って、検査対象物WKが矢印X1の方向に一定の速度で搬送される。検査対象物WKは、主ローラ21に接している間において、その表面が円筒面状の曲面KMを描く。
【0021】
つまり、検査対象物WKのその部分の断面は円弧状であり、円弧の中心が焦点STである。曲面KMは、搬送方向X1に対して直角であって焦点STを通る中心軸TJを持った円筒面の一部である。円筒面は図の下方に凹となっている。
【0022】
照明部12は、光源KG、遮光箱121、および遮光板122などを備える。光源KGは点光源であり、曲面KMの中心である焦点ST、つまり中心軸TJ上の一箇所に配置される。光源KGから照射された光は、主ローラ21を半径方向、つまり主ローラ21の厚さ方向に透過し、検査対象物WKの曲面KMの内側の表面を照明する。その反射光も主ローラ21を透過する。
【0023】
遮光箱121は、光源KGが曲面KMの所定の範囲のみを照明するよう、つまり所定の範囲以外には照明光がいかないよう、光源KGを囲う。また、遮光板122は、光源KGから出た光が主ローラ21の内部で多重反射など不要な反射を行わないように遮光する。つまり、遮光板122は、例えば、ハーフミラー24で反射した光が他の場所で反射して測定範囲を照射するのを防ぐ。
【0024】
図1には、遮光箱121および遮光板122の形状および位置の一例が示されているのみであるので、それらと異なった種々の形状および配置とすることが可能である。特に遮光板122については、複数の遮光板122を必要な箇所に配置すればよい。
【0025】
撮像部13は、光源KGによる照明光の光路中に配置されたハーフミラー24、レンズ25、および複数の画像センサ(受光センサ)26などを備える。
【0026】
光源KGから照射された光は、検査対象物WKの表面で反射する。検査対象物WKの表面が傷のない通常の表面である場合には、反射光は正反射光となる。図1において、反射光は焦点STに向かうが、その途中でハーフミラー24で反射され、焦点STと光学的に等価な位置に複数配置された画像センサ26のいずれかに入光する。
【0027】
すなわち、図1に示されるように、円筒面の中心軸TJに直交する平面内で見ると、光源KGから出た光は検査対象物WKの表面までは放射状に拡がる。しかし、検査対象物WKの表面が凹の円弧状に曲がっているため、それによる正反射光は、円弧状の中心にある光源KGに向かう方向の狭い範囲に集光される。正反射光は、さらにハーフミラー24で反射され、画像センサ26に入光する。
【0028】
このことにより、検査対象物WKを曲げない場合と比べて、検査対象物WKの表面によるより広い範囲の正反射光を、1つの画像センサ26で捉えることができる。
【0029】
他方、検査対象物WKBの表面に傷がある場合には、傷の部分については正反射光とはならず、その部分の正反射光の量が他の部分よりも少なくなる。したがって、その分だけ画像センサ26に入射する光の輝度が低下する。輝度の低下した部分を検出することによって、傷を検出することが可能である。
【0030】
なお、図2(A)に示されるように、光源KGから出る光のうち、中心軸TJに対して直角でない光、つまり中心軸TJに沿う方向の成分を持った光は、検査対象物WKの表面で反射された後、中心軸TJの沿った外側の方向に拡がる。
【0031】
画像センサ26は、本実施形態ではCCDなどの2次元の撮像領域を持つ撮像素子である。複数の画像センサ26は、図2(B)に示すように、円筒面の中心軸TJに平行であって、ハーフミラー24を介して光源KGつまり焦点STと光学的に等価な位置を通る直線TJT上に並ぶように配置されている。これによって、中心軸TJの方向についての検査範囲の拡大が図られている。
【0032】
なお、図2(B)に示すように、画像センサ26の光軸は、放射状となるよう傾けてあり、その放射の中心は、ハーフミラー24による反射と検査対象物WKの表面による反射とを介して光源KGと光学的に等価な位置である。
【0033】
しかし、画像センサ26の光軸は放射状でなくてもよい。つまり、例えば図2(C)に示すように、画像センサ26を検査対象物WKの表面に対して平行に配置し、レンズ25の光軸と画像センサ26の中心とをズラした形式のもの、つまりシフトレンズ形式としてもよい。シフトレンズ形式とすることによって、検査対象物WKの表面のいずれの位置に対してもピントが合うようになる。
【0034】
制御部14は、撮像部13により得られた画像Gに基づいて、検査対象物WKの表面の状態、つまりここでは検査対象物WKの表面の傷の有無、を検出するための演算などを行う。制御部14はまた、検査装置1の全体を制御する。このような制御部14は、ハードウエア回路によって構成し、または、CPU、ROM、RAM、周辺回路素子、その他のハードウエア回路を用いたコンピュータなどとして構成することも可能である。
【0035】
以下、さらに詳しく説明する。
【0036】
図1において、検査対象物WKは、主ローラ21に沿って円弧状に曲げられ、一定の速度VでX1方向に搬送される。検査対象物WKの表面は、照明部12によって照明され、その反射光がハーフミラー24で反射され、撮像部13に入射する。
【0037】
撮像部13による撮像は、予め定められた一定の時間間隔Δtで連続的に行われる。その時間間隔Δtは、撮像する範囲に相当する角度を搬送の角速度で除した値とすることができる。これにより、検査対象物WKの表面は、重複することなく、また隙間が空くことなく連続して、撮像される。
【0038】
なお、検査対象物WKの表面を多少重複するように撮像してもよい。その場合に、重複した部分については、重複する2つの画像Gのうち、予め定められた方の画像を優先的に検査に使用するようにしてもよい。また、重複した分については平均化を行ってノイズ低減を図ってもよい。
【0039】
撮像部13により撮像された画像Gは、基準となる時刻、例えば検査対象物WKの基準位置通過時からの経過時間とともに、順次取り込まれる。取り込まれた画像Gは、制御部14に設けられたメモリまたは外部の適当なメモリに保存される。例えば、画像Gは制御部14に接続されたパ−ソナルコンピュータPCに転送され、そこでメモリMMに保存される。
【0040】
このとき、取り込まれた各画像Gは、円筒形状を引き延ばして平面にしたものに相当する画像GWに変換される。この画像GWの1画素に対応する検査対象物WKの表面領域の大きさ(Δx,Δy)を予め求めておく。
【0041】
画像GWの1画素のサイズ(Δx,Δy)は、例えば、検査対象物WKに代えてサイズの分かった格子状のチャートを撮像することによって求めてもよい。
【0042】
保存された画像GWを解析することにより、例えば入射した光の強さ(輝度)に応じて、画像中のいずれの部分またはいずれの画素が傷の部分であるか、または傷の候補部分であるかが判断される。
【0043】
すなわち、例えば、検査対象物WKについて、予め、傷がない場合の画像に基づく各画素の輝度値(定常輝度値)を測定しておく。そして、検査時に撮像され保存された画像GWに対して、輝度値が定常輝度値未満である画素を特定する。そのような画素が連続したものを、傷の候補部分(傷候補画素)として抽出する。
【0044】
図3(A)には、検査対象物WKを示す画像GWにおいて、傷候補画素またはそれが連続したものが、傷候補画像KKGとして示されている。
【0045】
図3(B)に示すように、傷候補画像KKGの長さL1および太さL2を計測する。計測した傷候補画像KKGの長さL1および太さL2が、所定の長さLL1以上であり、かつ所定の太さLL2以上である場合に、それを傷Kとして検出する。なお、傷候補画像KKGの単純な大きさに基づいて傷Kを検出するようにしてもよい。
【0046】
傷Kが検出された場合には、その検査対象物WKは傷Kがあって不良品である旨の表示または警報を出力する。また、必要に応じて、その傷Kの画像を図示しない表示装置の表示面に表示する。また、傷Kの画像を検査対象物WKにおける位置情報とともにメモリなどに記録する。
【0047】
例えば、検出された傷Kについて、その重心位置(x,y)を検査対象物WKにおける座標に変換し、検査対象物WKにおける傷Kの位置を特定する。そして、特定された傷Kの位置を、その傷Kの局所画像および撮像時間とともにメモリに記録する。
【0048】
なお、検査対象物WKにおける座標(X,Y)は、検査対象物WKの検査開始時の最初に撮像された画像の始点を原点(0,0)とし、検査対象物WKの搬送方向とは逆の方向をX、それに直交する方向をYとすればよい(図3参照)。
【0049】
なお、検査対象物WKの検査開始時の最初に撮像された画像の中心に対応する位置を原点としてもよい。
【0050】
また、検査開始からk番目に撮影された画像の座標(x,y)から、検査対象物WKにおける座標(X,Y)への変換は、次のようにして行うことができる。
【0051】
X=(k・Sx+x)・Δx
Y=y・Δy
ここで、距離Sxは、各画像Gのシフト量であり、画像G上の画素数で表すことができる。つまり、シフト量(画素数)Sxは、検査対象物WKの搬送速度V、画像Gにおける搬送方向X1に沿った1画素のサイズΔxを用いて、次の式で表すことができる。
【0052】
Sx=V・Δt/Δx
搬送速度Vに代えて主ローラ21の角速度θを用いた場合には、次の式で表すことができる。
【0053】
Sx=π・θ・Δt/Δx
なお、検査対象物WKの画像GWにおいて、X方向は検査対象物WKの搬送方向X1と逆の方向である。また、画像GWにおいて、右上端が座標の原点(0,0)であり、原点(0,0)から下方へY方向、原点(0,0)から左方へX方向となる。
【0054】
次に、検査装置1による検査対象物WKの傷Kの検査手順を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0055】
図4において、撮像部13から複数の画像Gを取り込んでパ−ソナルコンピュータなどの処理装置に転送する(#11)。検査対象物WKの画像GWを作成し、画像GWに基づいて傷Kを検出する(#12)。その際に、例えば、まず傷候補画素または傷候補画像を抽出し、それがしきい値よりも大きい場合に傷Kであると判定してもよい。
【0056】
検出された傷Kについて、その局所画像および座標位置などを表示装置の画面に表示し、またメモリに記録する(#13)。
【0057】
これらの処理を、全ての検査対象物WKについての検査が終わるまで繰り返す(#14)。
【0058】
このように、本実施形態の検査装置1によると、可撓性を有するシート状の検査対象物WKの表面の傷Kについて、簡単な構成にもかかわらず一度に広い範囲を検査することができ、検査を短時間で行うことができる。したがって、検査対象物WKの傷Kの検査を、速い送り速度であってもインラインで容易に行うことができる。
【0059】
また、主ローラ21によって検査対象物WKを搬送しながら曲面KMを形成するので、平面状の通常のシート状のものを容易に検査することができる。
【0060】
上に述べた例では、照明部12の光源KGが1つの点光源である場合について説明したが、複数の光源KGを中心軸TJに沿って配置してもよい。また、光源KGとして線状に延びる線光源を用いてもよい。いずれにしても、検査対象物WKに対し、その幅方向つまり中心軸TJに沿った方向の全部を画像センサ26によって同時に撮像できるようにしておくことが望ましい。
【0061】
上に述べた例では、検査対象物WKを連続的に搬送したが、画像センサ26を1つのみとし、検査対象物WKを所定距離搬送した時点で搬送を一旦停止し、画像センサ26を移動させて複数回の撮像を行ってもよい。
【0062】
上に述べた例では、画像センサ26は、CCDなどの2次元センサ(エリアセンサ)を用いたが、画像内の位置を特定することなく、画像内に傷が含まれるか否かのみを判定したい場合には、フォトダイオードなどを用いて強度レベルの変化を検知することでもよい。
【0063】
上に述べた例では、透明な円筒状の主ローラ21を用い、主ローラ21によって検査対象物WKが隠れてしまうのを防いだが、検査対象物WKの両端縁のみを主ローラで支持するようにしてもよい。その場合に、主ローラとして不透明のものを用いても、検査対象物WKは両端縁のみが隠れるのみであり、両端縁以外の内側は空いているので直接に検査を行うことができる。このようにすると、主ローラ21による光の反射および埃の付着などを避けることができる。ただし、検査対象物WKの位置が不安定となることがあるため、被写界深度を深くするような光学系を用いることが望ましい。例えば、F値の大きい光学系を用いたり、EDOF(Extended Depth of Field )の光学系と画像処理とを組み合わせたりすればよい。
【0064】
なお、画像センサ26と光源KGの配置について、種々のバリエーションが可能である。例えば、画像センサ26と光源KGの位置を入れ替えてもよい。また、ハーフミラー24を用いることなく、点光源である光源KGと画像センサ26とを中心軸TJ上に交互に所定の間隔で配置してもよい。
【0065】
なお、円弧方向に広い範囲を一度に画像センサ26で捉えようとすると、奥行きの範囲が大きくなり、部分的に焦点がぼける可能性がある。その場合には、絞りを絞ったりまたはF値の大きな光学系を用いることにより、被写界深度を大きくすることで対処可能である。
【0066】
または、像面湾曲の大きなシリンドリカルレンズを、検査対象物WKとの間に中心軸TJと平行に配置することにより、画像端でのボケを軽減するようにしてもよい。または、検査対象物WKの各部までのおおよその距離が分かっているので、レンズの設計値計算によってぼけ関数をデコンボリューションしてもよい。
【0067】
また、円筒を平面に投影することにより、位置座標の補正が必要である。このような補正は、上に述べたような格子状のチャート、または目盛りの入った検査対象物WKを撮像することによって行うことが可能である。
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態の検査装置1Bについて説明する。
【0068】
検査装置1Bについての検査対象物WKBは、第1の実施形態における検査対象物WKを無端状(ループ状)としたものである。
【0069】
すなわち、図5において、検査対象物WKBは、可撓性を有したシート状であってかつベルト状のものである。検査対象物WKBは、その表面が金属光沢物などのような鏡面性を有している。
【0070】
検査対象物WKBは、射出成形または押出成形などの工程を経て製作される。検査対象物WKBは、例えば、円筒のシート状体として成形機から一定の速度で下方に押し出され、所定の長さにカッティングされることによってベルト状の検査対象物WKBとなる。
【0071】
図5に示されるように、検査対象物WKBは、その搬送経路に配置された4組のガイドローラ41a〜d、42a〜d、43a〜d、44a〜dからなる2つの変形搬送部31a,31bによって、円筒の中心軸(円筒軸)TJBを中心とした楕円形となるように2回にわたって変形される。
【0072】
すなわち、円筒状に成形されて搬送されてきた検査対象物WKBは、まず、2組のガイドローラ41a〜d、42a〜dによって、下方へ搬送されつつ、図5(B)に示されるような楕円形に変形される。検査対象物WKBは、2組のガイドローラ41(41a〜d)、42(42a〜d)を通過した後に円筒形に戻るが、さらに、次の2組のガイドローラ43(43a〜d)、44(44a〜d)によって、下方へ搬送されつつ、図5(C)に示されるような楕円形に変形される。
【0073】
このように、検査対象物WKBは、4組のガイドローラ41〜44によって、長軸方向が互いに直交する2つの楕円形KMD1,2となるように連続的に変形される。そして、それぞれの楕円形KMD1,2の内側において、検査対象物WKBの内側の表面の検査が行われる。
【0074】
すなわち、検査装置1Bは、図5(A)における上側の楕円形KMD1の部分に配置された第1検査部SB1、および下側の楕円形KMD2の部分に配置された第2検査部SB2を有する。
【0075】
図6(A)(B)において、第1検査部SB1には、上に述べた変形搬送部31aの他に、照明部32aおよび撮像部33a,33bが設けられる。
【0076】
照明部32aは、光源KG1、遮光箱321,323、および遮光板322,324などを備える。光源KG1は点光源であり、楕円形KMD1の1つの焦点ST11に配置される。
【0077】
撮像部33a,33bは、上下方向つまり中心軸TJBに沿った方向に互いに並べて配置され、かつ、いずれも楕円形KMD1の他の1つの焦点ST12に配置される。
【0078】
すなわち、撮像部33a,33bは、焦点ST12に配置されたレンズ45a,45b、および画像センサ46a,46bなどを備える。画像センサ46a,46bは、いずれもCCDなどの2次元の撮像領域を持つ撮像素子である。
【0079】
光源KG1から照射された光は、楕円形KMD1の内側の表面の2ヵ所の領域(KMD1A,B)を照明する。照明された領域に傷がない場合に、反射光は正反射光となり、レンズ45a,45bを介して画像センサ46a,46bに入光する。検査対象物WKBの表面に傷がある場合には、傷の部分については正反射光とはならず、したがって画像センサ46a,46bに入射する光の輝度が低下する。
【0080】
図6(C)(D)において、第2検査部SB2には、上に述べた変形搬送部31bの他に、照明部32bおよび撮像部33c,33dが設けられる。
【0081】
照明部32bは、光源KG2、遮光箱325,327、および遮光板326,328などを備える。光源KG2は点光源であり、楕円形KMD2の1つの焦点ST21に配置される。
【0082】
撮像部33c,33dは、上下方向つまり中心軸TJBに沿った方向に互いに並べて配置され、かつ、いずれも楕円形KMD2の他の1つの焦点ST22に配置される。
【0083】
すなわち、撮像部33c,33dは、焦点ST22に配置されたレンズ45c,45d、および画像センサ46c,46dなどを備える。画像センサ46c,46dは、いずれもCCDなどの2次元の撮像領域を持つ撮像素子である。
【0084】
光源KG2から照射された光は、楕円形KMD2の内側の表面の2ヵ所の領域(KMD2A,B)を照明する。照明された領域に傷がない場合に、反射光は正反射光となり、レンズ45c,45dを介して画像センサ46c,46dに入光する。検査対象物WKBの表面に傷がある場合には、傷の部分については正反射光とはならず、したがって画像センサ46c,46dに入射する光の輝度が低下する。
【0085】
すなわち、図7に示すように、検査対象物WKBの内側の表面の1周分を4つの領域KMD1A,1B,2A,2Bに区画し、その4つの領域を第1検査部SB1および第2検査部SB2によって別個に撮像し、4つの画像Gを得る。得られた4つの画像Gを、例えば制御部に接続されたパ−ソナルコンピュータPC(図1参照)に転送し、そこで検査対象物WKBの内側の表面の全体を引き延ばして平面にしたものに相当する画像GWに変換(合成)する。
【0086】
なお、画像GWへの変換に際しては、4つの画像Gを、検査対象物WKBの搬送速度および撮像時刻などに基づいて、検査対象物WKBの同じ円周上にある画素列を抽出し、楕円形KMDを引き延ばした画像として合成する。
【0087】
なお、画像の合成における座標変換を行うに当たっては、校正用の楕円筒チャートを使用し、合成後の画像GWのX方向における座標位置に対応する各画像G中における位置を予め求めておき、予め定められた方の画像G中の対応画素を、合成後の画像GWの画素とすればよい。校正用の楕円筒チャートとして、例えば、内側に格子が印刷されたものを用いればよい。
【0088】
上に述べたように、第2の実施形態の検査装置1Bによると、可撓性を有するベルト状の検査対象物WKBの表面の傷Kについて、簡単な構成にもかかわらず一度に広い範囲を検査することができ、検査を短時間で行うことができる。したがって、検査対象物WKの傷Kの検査を、速い送り速度であってもインラインで容易に行うことができる。
【0089】
特に、検査対象物WKBを楕円形に変形し、その2つの焦点STに光源KGと画像センサとを配置するので、簡単な構成であるにもかかわらず、光源KGからでた光の正反射光を画像センサによって容易に集光することができる。
【0090】
上に述べた例では、円筒状の検査対象物WKBを楕円形に変形させたが、第1の実施形態のように円筒状のまま搬送し、ハーフミラーを用いて光源KGと画像センサとを配置する構成としてもよい。
【0091】
ただし、その場合に、第1検査部SB1または第2検査部SB2のように検査を行う位置において円形状を保持できるよう、ガイドローラを配置するなどの円形状保持機構を用いることが望ましい。次に、そのような変形例について説明する。
【0092】
図8において、円筒状の検査対象物WKCの内部に、照明部52および撮像部53が設けられる。照明部52は、光源KGC、ハーフミラー24C、および遮光板521などを備える。
【0093】
光源KGCは点光源であり、円筒形KMEの中心である焦点STC、つまり中心軸TJC上の一箇所に配置される。ハーフミラー24Cは、円錐面状であり、その中心軸が中心軸TJCと一致するように配置されている。
【0094】
撮像部53は、中心軸が中心軸TJCと一致するように配置されたレンズ61、および画像センサ62などを備える。画像センサ62は、CCDなどの2次元の撮像領域を持つ撮像素子である。
【0095】
光源KGCから照射された半径方向の光は、ハーフミラー24Cを透過して検査対象物WKの内側の表面を照明する。その反射光は、同じ経路に沿って戻り、ハーフミラー24Cの外周面で反射し、レンズ61を介して画像センサ62に入光する。
【0096】
したがって、画像センサ62によって、ハーフミラー24Cの光軸(中心軸TJ)の周りに映し出される同心円状の画像Gが撮像される。この画像Gは、検査対象物WKの内側の表面の輪切り画像である。
【0097】
検査対象物WKの表面に傷がない場合に、反射光は正反射光となり、画像G1は、図9(A)に示される円筒状の領域KME1に対応して、図9(B)に示されるようにドーナツ状となる。検査対象物WKが搬送方向X1に移動することによって、検査対象物WKの表面上の領域KME1が移動し、それぞれの領域KME1についての画像Gが順次得られる。
【0098】
得られた画像Gを、例えば制御部に接続されたパ−ソナルコンピュータPC(図1参照)に転送し、そこで検査対象物WKCの内側の表面の全体を引き延ばして平面にしたものに相当する画像GW(図示せず)に変換(合成)する。
【0099】
なお、画像GWへの変換は、校正用の円筒チャートを使用して予め撮像しておき、その対応関係を求めておくことで容易に可能である。また、ハーフミラー24Cを円錐面形状としたが、球面形状、双曲面形状、放物面形状など、種々の形状とすることも可能である。
【0100】
上に述べた実施形態においては、撮像部13,33,53で得られた画像Gをパ−ソナルコンピュータPCに転送し、そこで画像GWに変換して傷Kを検出したが、例えば制御部14の内部において、そのような処理を行って傷Kを検出してもよい。
【0101】
上に述べた実施形態において、画像Gを取り込むための処理、画像GWに変換するための処理、また傷Kを検出するための処理などは、上に述べた以外の種々の処理または方法とすることが可能である。
【0102】
その他、光源KG、照明部12,32,52、撮像部13,33,53、制御部14、または検査装置1,1B,1Cの各部または全体の構成、構造、回路、形状、個数、配置などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0103】
1,1B,1C 検査装置(検査対象物の表面の状態を検査する装置)
12,32,52 照明部(照明手段)
13,33,53 撮像部
14 制御部(検出手段)
21 主ローラ(変形手段)
22a,22b 補助ローラ
26 画像センサ(受光センサ)
32a 照明部(第1の照明手段)
32b 照明部(第2の照明手段)
41〜42 ガイドローラ(ローラ、変形手段、移動手段、第1のローラ群)
43〜44 ガイドローラ(ローラ、変形手段、移動手段、第2のローラ群)
46a,46b 画像センサ(第1の撮像センサ)
46c,46d 画像センサ(第2の撮像センサ)
PC パ−ソナルコンピュータ(検出手段)
WK 検査対象物
KM 曲面
KMD 楕円形(楕円筒面)
KMD1 楕円形(第1の楕円筒面)
KMD2 楕円形(第2の楕円筒面)
KME 円筒面
TJ 中心軸
ST 焦点
K 傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する方法であって、
検査対象物を、断面が1つまたは複数の焦点を持った凹状の曲面を描くように変形させるステップと、
検査対象物の凹状の曲面を描いた表面に照明光を当て、その正反射光を前記焦点に対応する位置に配置した受光センサにより受光するステップと、
前記受光センサの出力に基づいて検査対象物の表面の状態を検出するステップと、
を有することを特徴とする可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する方法。
【請求項2】
前記受光センサが受光すべき正反射光の量が他より少ない部分がある場合に、それによって検査対象物の表面に傷があることを検出する、
請求項1記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する方法。
【請求項3】
可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置であって、
検査対象物を、断面が1つまたは複数の焦点を持った凹状の曲面を描くように変形させる変形手段と、
検査対象物の凹状の曲面を描いた表面を照明する照明手段と、
検査対象物の表面による正反射光を受光するために前記焦点に対応する位置に配置された受光センサと、
前記受光センサの出力に基づいて検査対象物の表面の状態を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記受光センサが受光すべき正反射光の量が他より少ない部分がある場合に、それによって検査対象物の表面に傷があることを検出する、
請求項3記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。
【請求項5】
前記変形手段は、検査対象物をその表面が円筒面を描くように変形させるものであり、
前記照明手段および前記受光センサは、いずれも前記円筒面の中心軸上の位置またはそれと等価な位置に配置される、
請求項3または4記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。
【請求項6】
前記変形手段は、その外周面に沿って検査対象物を変形させる透明の円筒状のローラである、
請求項5記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。
【請求項7】
前記変形手段は、検査対象物をその表面が楕円筒面を描くように変形させるものであり、
前記照明手段は、前記楕円筒面の1つの中心軸上の位置またはそれと等価な位置に配置され、
前記受光センサは、前記楕円筒面の他の1つの中心軸上の位置またはそれと等価な位置に配置される、
請求項3または4記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。
【請求項8】
検査対象物と前記受光センサとを前記中心軸の方向に相対的に移動させる移動手段を備える、
請求項3ないし7のいずれかに記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。
【請求項9】
前記受光センサは、前記中心軸に沿って複数個配置されている、
請求項3ないし7のいずれかに記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。
【請求項10】
前記変形手段は、
無端ベルト状の検査対象物をその表面が第1の楕円筒面を描くように変形させかつ検査対象物の幅方向に搬送する第1のローラ群と、
前記第1のローラ群の下流に配置され、検査対象物をその表面が前記第1の楕円筒面と長軸が直交する第2の楕円筒面を描くように変形させかつ検査対象物の幅方向に搬送する第2のローラ群と、を含み、
前記照明手段は、
前記第1の楕円筒面の1つの中心軸上の位置またはそれと等価な位置に配置された第1の照明手段と、
前記第2の楕円筒面の1つの中心軸上の位置またはそれと等価な位置に配置された第2の照明手段と、を含み、
前記受光センサは、
前記第1の楕円筒面の他の1つの中心軸上の位置またはそれと等価な位置に配置され、前記第1の楕円筒面の長軸と対向する両側の面を撮像する第1の撮像センサと、
前記第2の楕円筒面の他の1つの中心軸上の位置またはそれと等価な位置に配置され、前記第2の楕円筒面の長軸と対向する両側の面を撮像する第2の撮像センサと、を含み、
前記検出手段は、前記第1の撮像センサおよび前記第2の撮像センサの出力に基づいて検査対象物の内側の表面の状態を検出する、
請求項3または4記載の可撓性を有する検査対象物の表面の状態を検査する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−169676(P2011−169676A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32288(P2010−32288)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】