説明

可撓性ホース

【課題】 低密度ポリエチレンを樹脂フィルムに用いる利点を生かしながら、ホース壁の主体となる不織布層の性能を低下させない可撓性ホースを提供する。
【解決手段】 不織布テープを螺旋状に捲回して形成した不織布層と、この不織布
層の少なくとも片面に樹脂フィルムを螺旋状に捲回して形成した空気遮断層とでホース壁
を構成する。ホース壁を保形補強する螺旋補強体を設ける。上記不織布テープを、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂からなる芯部とこの芯部より低融点のポリエチレン樹脂からなる鞘部とを備える芯鞘型複合繊維で構成し、上記樹脂フィルムを低密度ポリエチレンで構成する。硬質樹脂製の螺旋補強体を熱溶融状態で、隣接する不織布テープの側縁同士間および/または隣接する樹脂フィルムの側縁同士間に跨って捲回することにより、上記不織布テープの側縁同士および/または上記樹脂フィルムの側縁同士を融着して連結一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やビルの空調設備に接続される空調用のダクトホースや汎用の送排気用のダクトホースとして用いられる可捷性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で、伸縮性の優れた脱塩ビのホースとして、例えば下記特許文献1に記載されているように、ポリプロピレン繊維からなる不織布テープを螺旋状に捲回して形成した不織布層と、ポリプロピレンからなる帯状の樹脂フィルムを螺旋状に捲回して形成した空気遮断層とから構成されるホース壁に、熱溶融状態の硬質ポリプロピレン樹脂製の螺旋補強体を添着した構造のものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特許第3304049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホース壁の素材であるポリプロピレンはしなやかさに欠けてパリパリとした音がする不具合があり、ポリプロピレンの代わりに、柔軟性に優れた低密度ポリエチレンを樹脂フィルムに用いることが検討されたが、これに熱溶着可能な不織布の繊維材料を選択する必要性が生じた。そこで、樹脂フィルムと同じ材料のポリエチレン繊維からなる不織布を選択しようとしたが、不織布自体の強度が十分でないほか、ポリエチレン繊維の融点が比較的低いため、その一部が螺旋補強体や樹脂フィルム層と熱溶着する際に溶融してしまい、不織布自体が本来有する柔軟性や強度が損なわれて、ホースの性能に悪影響を及ぼす問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解消して、低密度ポリエチレンを樹脂フィルムに用いる利点を生かしながら、ホース壁の主体となる不織布層の性能を低下させない可撓性ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる可撓性ホースは、ホース壁を形成する不織布テープを特異な材料で構成し、その内外面に低密度ポリエチレンからなる樹脂フィルムを接着可能にすることを手段とするものである。
すなわち、ホース壁を不織布テープを螺旋状に捲回して形成した不織布層とこの不織布層の少なくとも片面に樹脂フィルムを螺旋状に捲回して形成した空気遮断層とで構成し、このホース壁を保形補強する螺旋補強体を備えるホースであって、上記不織布テープが、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂からなる芯部とこの芯部より低融点のポリエチレン樹脂からなる鞘部とを備える芯鞘型複合繊維で構成されるとともに、上記樹脂フィルムが低密度ポリエチレンで構成されるようにしたものである(請求項1)。
【0007】
上記螺旋補強体を硬質樹脂で形成しホース壁の外側または内側に添着する場合には、上記螺旋補強体を熱溶融状態で、隣接する不織布テープの側縁同士間および/または隣接する樹脂フィルムの側縁同士間に跨って捲回することにより、上記不織布テープの側縁同士および/または上記樹脂フィルムの側縁同士を融着して連結一体化した可撓性ホースに構成できる(請求項2)。ホース壁は、不織布テープと樹脂フィルムをラミネートした複合帯状体を螺旋状に捲回して形成できる(請求項3)。好ましくは、上記螺旋補強体を、高密度ポリエチレンで形成し(請求項4)、ホース壁と熱溶着可能なバインダー樹脂を介して、ポリプロピレンで形成することができる(請求項5)。
【0008】
また、硬質樹脂製の螺旋補強体の内部に硬鋼線を埋設するようにしてもよい(請求項6)。この硬鋼線はコイル状にプレフォーミングされたもので、そのコイルピッチを螺旋補強体のピッチとほぼ同一にしてもよいが、広いピッチにプレフォーミングしたり、狭いピッチにプレフォーミングすることができる。広いピッチの場合にはホースに縮み癖がつかず、狭いピッチの場合には、自然状態で収縮するホースとなる。
【0009】
螺旋補強体自体を硬鋼線で形成してもよく(請求項7)、この硬鋼線は上記と同様にコイル状にプレフォーミングされたものを使用できる。この場合、硬鋼線は、複合帯状体の隣接する側縁同士をオーバーラップさせて螺旋状に捲回するとともに、このオーバーラップ間に挟持させて可撓性ホースを構成できる(請求項8)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の可撓性ホースでは、その不織布層が、強固で融点が高いポリプロピレン繊維またはポリエステル繊維を芯とし、芯の周囲にコーティングした融点が低いポリエチレン繊維を鞘とした芯鞘型の複合繊維を素材とした不織布テープによって構成されているので、芯成分により不織布の柔軟性や強固性を保持しつつ、鞘成分により低密度ポリエチレンフィルムとの熱融着性を損なうことがない。
【0011】
また、螺旋補強体として、ホース壁に直接熱融着できる硬質樹脂を採用できるほか、バインダー樹脂を介してより剛性の高い硬質樹脂を採用してホースの強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る可撓性ホースは、住宅やビルの空調設備に接続される空調用のダクトホースとして用いられるものである。
【0013】
図1は本発明の可撓性ホース1を示し、不織布テープ2の片面に低密度ポリエチレン製のフィルム3をラミネートして積層した複合帯状体4を螺旋状に捲回して(本実施例では不織布テープ2がホース内面を形成するように)、不織布層2と空気遮断層3とからなるホース壁5を構成し、ホース壁5の外層を形成する空気遮断層3の外面に硬質のポリエチレン製の樹脂コイル6を螺旋状に捲回してホース壁5に熱融着して一体化させている。なお、複合帯状体4は、不織布テープ2がホース外面を形成するように構成してもよいし、不織布テープ2をサンドイッチにしてフィルム3がホース内外面を形成するように構成してもよい。また、不織布テープ2とフィルム3をあらかじめラミネートせずに、両者を個別に螺旋状に捲回するようにしてもよい。
【0014】
図2は不織布テープ2の素材である樹脂繊維を示すもので、低融点のポリエチレン繊維からなる鞘部7と、高融点のポリプロピレン繊維からなる芯部8とを備えた芯鞘型の複合繊維Pにより不織布層2が構成されている。なお、複合繊維Pの芯部8は、ポリプロピレン繊維に代えてポリエステル繊維で構成されたものでもよい。
【0015】
上記の可撓性ホース1は、あらかじめ積層成形した複合帯状体4と押出成形した直後の樹脂コイル6を同時に図示しないホース成形軸に螺旋状に捲回して成形され、複合帯状体4はその隣接する側縁同士4a,4bがほぼ当接するように捲回され、やや幅広の底面6aを有する熱溶融状態の樹脂コイル6が隣接する側縁同士4a,4b間に跨る状態でフィルム3の外面に添着されており、複合帯状体4の隣接する側縁同士4a,4bはそれ自身直接的に接合されるのではなく、各側縁がそれぞれ樹脂コイル6と熱融着することを介して接合一体化されている。なお、この場合、図3に示すように、複合帯状体4の隣接する側縁同士間に跨る状態で不織布テープ2の内面に、樹脂コイル6と同材質の補強用の硬質螺旋樹脂帯9を添着して、ホース壁5を内外両面からサンドイッチ状に挟着するようにしてもよい。
【0016】
図4は他の実施例を示す一部拡大断面図で、不織布テープ2の内側にフィルム3をラミネートして積層した複合帯状体4をその隣接する側縁同士をオーバーラップさせて螺旋状に捲回してホース壁5を構成するとともに、複合帯状体4のオーバーラップした部分の外面に熱溶融状態の樹脂コイル6を熱融着させたものである。この場合、図5に示すように、樹脂コイル6を複合帯状体4のオーバーラップした部分の内面に熱融着させてもよい。
【0017】
図6は他の実施例を示す一部拡大断面図で、樹脂コイル6として硬質のポリプロピレンを用い、これをバインダーとなる例えばポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)からなる樹脂テープ10を介してホース壁5に熱融着させたものである。
【0018】
図7はさらに他の実施例を示す一部拡大断面図で、複合帯状体4を螺旋状に捲回して形成されたホース壁5の外周に、プレフォーミングした硬鋼線11が埋設された樹脂コイル6を螺旋状に捲回し熱融着させたものである。樹脂コイル6は、外側部61と内側部62に2分割されて構成され、硬鋼線11が内側部62外面に設置された後、外側部61が硬鋼線11を覆うように内側部62に熱融着し一体化される。硬鋼線11は樹脂などで被覆したものを用いることもできる。また、硬鋼線11は樹脂コイル6のピッチと変えて埋設することでホースの伸縮性を調整することができる。例えば、硬鋼線11のピッチを樹脂コイル6のピッチより広くすることで縮み癖がつかないホースを形成することができる。
【0019】
図8は螺旋補強体自身を硬鋼線で形成する実施例を示す一部拡大断面図で、複合帯状体4をその隣接する側縁同士をオーバーラップさせて螺旋状に捲回し、そのオーバーラップした部分の間にプレフォーミングした硬鋼線11を挟持して埋設させたものである。なお、オーバーラップさせた複合帯状体4,4同士は熱溶着させて連結一体化されている。
【0020】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、例えば、樹脂コイルのピッチ間に、断面略円形の断面積の小さい硬質樹脂製の補助螺旋補強体を単数または複数、ホース壁に熱融着させるなど、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る可撓性ホースの一部断面側面図である。
【図2】不織布の素材である複合繊維を示す斜視図である。
【図3】可撓性ホースの他の実施例を示す一部断面図である。
【図4】可撓性ホースの他の実施例を示す一部断面図である。
【図5】可撓性ホースの他の実施例を示す一部断面図である。
【図6】可撓性ホースの他の実施例を示す一部断面図である。
【図7】可撓性ホースの他の実施例を示す一部断面図である。
【図8】可撓性ホースの他の実施例を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 可撓性ホース
2 不織布テープ(不織布層)
3 フィルム(空気遮断層)
4 複合帯状体
5 ホース壁
6 樹脂コイル
7 鞘部
8 芯部
9 硬質螺旋樹脂帯
10 樹脂テープ
11 硬鋼線
61 外側部
62 内側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布テープを螺旋状に捲回して形成した不織布層と、この不織布層の少なくとも片面
に樹脂フィルムを螺旋状に捲回して形成した空気遮断層とで構成されるホース壁と、この
ホース壁を保形補強する螺旋補強体とからなるホースであって、上記不織布テープが、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂からなる芯部とこの芯部より低融点のポリエチレン樹脂からなる鞘部とを備える芯鞘型複合繊維で構成されるとともに、上記樹脂フィルムが低密度ポリエチレンで構成されるようにしたことを特徴とする可撓性ホース。
【請求項2】
螺旋補強体を硬質樹脂で形成するとともにホース壁の外側または内側に添着したホースであって、上記螺旋補強体を熱溶融状態で、隣接する不織布テープの側縁同士間および/または隣接する樹脂フィルムの側縁同士間に跨って捲回することにより、上記不織布テープの側縁同士および/または上記樹脂フィルムの側縁同士を融着して連結一体化するようにした請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項3】
不織布テープと樹脂フィルムをラミネートした複合帯状体を螺旋状に捲回してホース壁を形成した請求項1または2に記載の可撓性ホース。
【請求項4】
螺旋補強体を高密度ポリエチレンで形成した請求項2に記載の可撓性ホース。
【請求項5】
螺旋補強体を、ホース壁と熱溶着可能なバインダー樹脂を介して、ポリプロピレンで形成した請求項2に記載の可撓性ホース。
【請求項6】
螺旋補強体の内部に硬鋼線を埋設した請求項2に記載の可撓性ホース。
【請求項7】
螺旋補強体を硬鋼線で形成した請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項8】
複合帯状体の隣接する側縁同士をオーバーラップさせて螺旋状に捲回するとともに、オーバーラップ間に硬鋼線を挟持させた請求項7に記載の可撓性ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−182051(P2007−182051A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119954(P2006−119954)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】