説明

可撓性包袋容器及びこれからなる包装体

【課題】 接着剤等の流動性の極性化合物等の充填及び吐出に用いた場合に、デラミネーションや内容物の外部への透過による漏洩等がない可撓性包袋容器を提供する。
【解決手段】 内層フィルムと外層フィルムとが空気層を介して互いに接する二重構造を備えた可撓性包袋容器であって、前記内層フィルムは、複数の層が熱接着により積層されたガスバリア性の複合フィルムであり、前記外層フィルムは、前記内容フィルムより高いガスバリア性を有する複合フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、シーリング材、コーキング材、練り歯磨きその他の流動性物質を内部に充填し、これらの流動性物質を吐出口から外部に排出して使用するのに適した流動性物質用軟質容器に関する。さらには、塩基性または酸性物質等極性物質に対する耐化学薬品性に優れたバリアー性ラミネートフィルムを用いた可撓性包袋容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流動性物質を入れるための容器には、(1)二方シール型、三方シール型、ピローシール型、四方シール型、ガゼット貼り型、スタンディングパウチ型等の袋状の包装容器、(2)一端が開口した円筒状のラミネートフィルム本体と、この本体の開口部を閉じる蓋部材(閉鎖手段)とから構成されるもの、(3)両端が開口した円筒状のラミネートフィルム本体と、該本体の両端開口部をそれぞれ閉じる二つの底部材(閉鎖手段)とから構成されるもの、或いは、(4)円筒状のラミネートフィルムの両端がクリップ留めされたもの等があり、内部には接着剤等の流動性物質が収容されている。
【0003】
これらの容器に使用されるフィルムは、その強度の確保、外界から本体内への気体の流通、及び内容物の浸出漏洩を防ぐために、複数のフィルムを積層してなるラミネート体によって構成されるのが通常である。そして、このラミネート体のフィルムが筒状とされて本体となり、その端部の開口部に閉鎖部材を固定することにより、本体の開口部が閉じられるとともに、容器全体の保形性が確保されている。
【0004】
従来、容器を構成する材料としては、容器内容物を使いきった後の廃棄物の嵩高量を低減するための柔軟性、酸素や水蒸気等の透過による内容物の変質を防いだり、内容物の透過を防ぐためのガスバリアー性、輸送時の振動や落下衝撃等に耐える耐衝撃性、筒状体に加工するための熱シール性等の要求特性を満たす必要性から、複数の膜体を接着剤で接着して積層したドライラミネートフィルムが用いられてきた。特に、外界からの気体、内容物の透過等の流通を確実に遮断するためのガスバリアー性膜体としてアルミニウム箔が用いられた積層フィルム、例えば、ポリエチレン/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/ポリエステル等の層構成を有するラミネートフィルムを用いることが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
ところが、容器に収容される内容物には種々の化学薬品、例えば、極性が高く、強塩基性、あるいは強酸性の物質もあり、内容物の保護や漏洩の点で問題が発生している。例えば、接着剤の硬化剤として使用される変性ポリアミン等の場合は、その容器に上記のように接着剤で貼り合せたラミネートフィルムを用いると、接着されたフィルム界面の剥離(デラミネーション)が生じやすい。特に、ウレタン系の接着剤等を用いたドライラミネートフィルムでは著しい剥離現象が発生し易い。そして、界面が剥離すると、剥離部分を通じて内容物が漏洩するに至り易い。
【0006】
具体的には、上記ラミネートフィルムが内容物と直接接触する内面側には、熱シール性が求められるためポリエチレン等がもっぱら使用されているのであるが、内容物である極性化合物はこれらポリエチレン層を比較的容易に透過してしまう。そして、非透過性のアルミニウム界面に至って完全に遮断されるのであるが、その結果、アルミニウム界面に極性化合物が滞留して経時的に蓄積するために、その界面における接着剤の接着機能が損なわれることになりやすい。その結果としてのデラミネーションが発生すると、内容物が漏洩することが考えられる。このような理由から、極性化合物に対しては、柔軟性のある収容筒からなる軟質容器が実用に至ってないのが現状である。
【特許文献1】特開2000−309355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、接着剤、シーリング材、コーキング材、練り歯磨き、その他の流動性物質の充填及び、吐出口からの押圧による流出や、粘稠流動性物質では吐出ガン等の吐出装置を用いての外部吐出等に適する流動性物質用容器を提供することを課題とする。具体的には、塩基性物質または酸性物質等の極性化合物を充填する場合に、デラミネーションや内容物の外部への透過による漏洩等がなく、さらに使用後の廃棄物量を低減することができる流動性物質用軟質容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内層フィルムと外層フィルムとが空気層を介して互いに接する二重構造を備えた可撓性包袋容器であって、前記内層フィルムは、複数の層が熱接着により積層されたガスバリア性の複合フィルムであり、前記外層フィルムは、前記内容フィルムより高いガスバリア性を有する複合フィルムであることを特徴とする可撓性包袋容器である。
【0009】
ここで、前記内層フィルムは、両面にポリオレフィン系樹脂層を有するガスバリア性基材フィルムと、溶融押出樹脂層と、ヒートシール層とがこの順に積層されていると共に、酸素透過性が10ml/m2/D/MPa以上で150ml/m2/D/MPa以下の複合フィルムであり、前記外層フィルムは、保護フィルム、ガス遮断性フィルム、ヒートシール層が接着剤又は溶融押出樹脂層を介してこの順に積層されてなる複合フィルムであることは好ましい。また、前記の、ポリオレフィン系樹脂層、溶融押出樹脂層、ヒートシール層、保護フィルムのいずれもが、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなることは好ましい。
【0010】
また、上記の可撓性包袋容器に、極性の流動性物質が充填密封された包装体とすることは好ましい。または、上記の可撓性包袋容器に、変性ポリアミン系樹脂硬化剤が充填密封された包装体とすることは好ましい。または、上記の可撓性包袋容器の端部開口が、硬質の成形部材、クリップまたはヒートシールのいずれかの閉鎖手段により閉鎖されている包装体とするのは好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可撓性包袋容器またはそれに内容物を充填した包装体は、酸素ガス等のガスバリアー性に優れ、成分の揮発や化学反応による内容物の変質を防止できる。特に、塩基性や酸性等の極性化合物の内容物に対しても、デラミネーシヨンや透過等による内容物の漏洩事故を防ぐことができる。従って、内容物の化学組成を長期にわたって一定に保持でき、品質の安定性を確保できる。また、使用後の廃棄物量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、以下、図面を用いて具体的に説明する。本発明の可撓性包袋容器は少なくとも一端が開口した容器であり、この容器に内容物を充填し、開口部をヒートシールまたは閉鎖部材で閉じることにより包装体10が構成される。包装体10の例の斜視図を図1〜3に示す。容器本体部分の両端の閉鎖部材としては円板状の成形部材21、22やクリップ20等があり、容器端部において挟持固定、接着固定あるいはヒートシール部24を設けるなどの方法で固定されることで開口が閉鎖される。閉鎖部材には開口可能な吐出口23を有するようにするのが好ましい。
【0013】
可撓性包袋容器の内容物を充填する本体部分は、容器の内側に位置する内層フィルム16と外側に位置する外層フィルム11とが、その間に空気層30を介して接するように重ねられることで、二重円筒状になるように形成されている。これを図4に示す。図4は、可撓性包袋容器の筒形状の軸に沿って見た場合の断面図の例である。この二重円筒の最内側の格納部31に内容物が充填される。
【0014】
ここで、空気層30を介するとは、内層フィルム16も外層フィルム11のいずれも、容器を包袋に保つための接合部11a,16a等の容器を形成するために必要な部分を除く大部分は、接着剤や溶融樹脂層を介して接着されておらず、内層フィルム16と外層フィルム11とが、単に重ねられている状態にあることをいう。また、包袋とは、断面が丸型である場合のみならず、側面に折り線を有した袋状であるものも含む。また前記容器は、一端側から他端側へ向かって漸次小径になるようにテーパ状に形成されていても、またはその外径を全長にわたって一定になるようにしてもよい。さらには、一部をテーパー状にし、他の部分を外径が一定になるようにしても良い。
【0015】
次に、可撓性包袋容器の本体部分を構成するフィルムの層構造の概念図を図5に示す。図5に向かって上側が容器の外側であり、下側が容器の内側、つまり内容物を充填する格納部31である。内層フィルム16の外側に、空気層30を介して外層フィルム11が重ねられている。
【0016】
まず、内側の円筒を形成する内層フィルム16の構成について説明する。内層フィルム16は、熱接着によって複数の層が接着されて構成されたガスバリア性を有する複合フィルムであり、好ましくは、ガスバリアー性基材フィルム17、溶融樹脂層18、ヒートシール層19が容器外側からこの順に積層される。
【0017】
溶融樹脂層18は、ガスバリアー性基材フィルム17とヒートシール層19とを、押出ラミネーションにより接着するために設けられる層である。溶融押出樹脂層18には、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる他、さらに接着性のよい樹脂であるエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレンマレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂等をも使用することができる。ヒートシール層19と同種のモノマーからなる樹脂を使用することがより好ましい。押出加工性の点からMFRが4〜10g/10分の樹脂を用い、その樹脂層の厚みとしては5〜30μmとすることが好ましい。
【0018】
次に、ガスバリアー性基材フィルム17は、内層フィルムにガスバリア性を付与するためのフィルムであるが、ガスバリアー性樹脂を中間層17bとし、該層の表裏面の両方にポリオレフィン系樹脂層17a、17cを有する3層以上の共押出フィルムとするのがよい。ここで、ポリオレフィン系樹脂層17aは、円容器を形成する際にフィルム端部をより良好に熱接着させるために設けられる。また、ポリオレフィン系樹脂層17cは、溶融押出樹脂層18の押出ラミネーションによってフィルム17とヒートシール層19とをより良好に熱接着させるために設けられる。そのため、ポリオレフィン系樹脂層17a、17cは、押出ラミネート層18やヒートシール層19と同種のモノマーからなる樹脂(ポリエチレン系樹脂どうし、もしくはポリプロピレン系樹脂どうし)、好ましくは同一のポリオレフィン系樹脂で構成されるのがよい。
【0019】
ガスバリアー性基材フィルム17の中間層17bは、容器内部に充填される化学物質を適度に透過させるが、容器の外部に流出することは防げるように、適度なガスバリアー性を持たせる。
【0020】
ガスバリア性の付与には、内容物の透過性を完全に遮断するアルミニウム箔等の金属膜の使用も考えられるが、金属膜はガス遮断性が極めて高く、格納部31からヒートシール層19を透過してきた内容物が金属膜完全に遮断されるため、金属膜とヒートシール層19の界面で滞留し、経時的に蓄積することになる。蓄積滞留の結果として、金属膜に隣接するヒートシール層19のような樹脂膜界面との接着性を物理的に阻害し、デラミネーションが進行して層間剥離し、内容物の漏洩に至ることになってしまう。金属膜とヒートシール層とが接着剤によるドライラミネーションにより積層された場合や、内容物が塩基性や酸性等の極性化合物の場合であれば、デラミネーションの進行はより著しいものとなる。
【0021】
しかし、内層のラミネートフィルム16を透過しようとする内容物を、中間層17bである程度は遮断するが完全には遮断することなく適度に透過させること、また、ガスバリアー性基材フィルム積層17、溶融押出樹脂層18、およびヒートシール層19の各層間が一般的に耐化学薬品性の優れるポリオレフィン系樹脂によって十分に熱接着され、各層間が剥離することのない構成とすることで解決できる。
【0022】
上記の特性を満足させることのできる中間層17bのガスバリアー性樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、MXDナイロン6(メタキシリレンジアミンとアジピン酸の共重合体)、MXDナイロン樹脂とナイロン6、ナイロン66、ナイロン66等の各種ポリアミド系樹脂との混合物等、塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が好ましく用いられる。中でも、極性基を有する有機化合物のバリアー性の点からエチレン−ビニルアルコール共重合体、またはMXDナイロン6と上記ナイロンとの共押出しからなる多層積層フィルムが高いガスバリアー性を有し、更に透明性、耐衝撃性、耐ピンホール性、耐薬品性に優れるため、より好ましいものである。各層の厚みとしては、例えば、ナイロン樹脂の場合は、5〜100μmが望ましく、エチレン・ビニルアルコール共重合体層、あるいは、MXDナイロン樹脂の場合は、1〜50μmくらいが望ましい。
【0023】
この中間層17bの両面に、上述のように、溶融押出樹脂層18、ヒートシール層19と同種のモノマーからなる樹脂(ポリエチレン系樹脂どうし、もしくはポリプロピレン系樹脂どうし)、好ましくは同種のポリオレフィン系樹脂を積層させるとよい。好適なポリエチレン系樹脂としては、後述のヒートシール層と同様の樹脂が挙げられる。同種のポリマーを積層させることにより、ガスバリア性基材積層フィルム層17と溶融押出樹脂層18の層間接着、およびガスバリア性基材積層フィルム層17表面とヒートシール層19を包袋に丸めて端部を熱融着させる場合のヒートシール強度がより十分となる点で好適である。最も好ましくは、ポリオレフィン樹脂層、溶融押出樹脂層、ヒートシール層の全てを直鎖状低密度ポリエチレンにしたものである。ガスバリアー性基材フィルム層17の厚みとしては、10〜200μmくらい、好ましくは10〜50μmくらいが好ましい。
【0024】
ガスバリアー性基材フィルム層17の具体的な層構成としては、ポリエチレン/EVOH/ポリエチレン、ポリエチレン/ナイロン/EVOH/ポリエチレン、ポリエチレン/ナイロン/EVOH/ナイロン/ポリエチレン、ポリエチレン/PETG/ナイロン/EVOH/ポリエチレン、ポリエチレン/EVOH/ナイロン/ポリエチレン、ポリエチレン/MXDナイロン6/ポリエチレン、ポリエチレン/ナイロン/モサシナイロン6/ナイロン/ポリエチレン、ポリプロピレン/EVOH/ナイロン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ナイロン/EVOH/ナイロン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/MXDナイロン6/ポリプロピレン等がある。
【0025】
内層フィルム16の最内層であるヒートシール層19は、加熱によって溶融し相互に融着し得るヒートシール性を有するものであって、基材フィルムより低い融点を有するフィルムないしシートであればいずれのものでも使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、等のポリオレフィン系樹脂を製膜したフィルムを使用することが好ましい。中でも特にヒートシール強度、耐ストレスクラック性、耐衝撃性、低温特性など多くの特性に優れた直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが好ましく用いられる。中でも上述のガスバリアー性基材フィルムの中間層にエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用する場合は、湿潤状態でのガスバリアー性の劣化を防止でき、より高いヒートシール性が得られる点で密度が0.915ないし0.945g/cm3、MFRが1〜6g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましく、ヒートシール層19の厚みは、10〜200μmが好ましく、15〜80μmがより好ましい。
【0026】
なお、内容物が容器外に逸散する量をより低レベルに抑制する目的で、内層フィルム16全体の酸素透過性が、10ml/m2/D(Day)/MPa以上で150ml/m2/D/MPa以下とするのがよい。10ml/m2/D/MPa以上であることにより、ガスバリア基材層17と隣接層19とのラミネート界面へ内容物の滞留蓄積がより起こりにくく、デラミネーション、あるいはフィルム端部からの内容物の浸出漏洩が観測される可能性がより小さくなる。また、150ml/m2/D/MPaを超えると内容物が内層フィルム16を透過しての漏洩が著しくなる。10ml/m2/D/MPa〜100ml/m2/D/MPaとするのがより好ましく、さらに好ましくは、10ml/m2/D/MPa〜60ml/m2/D/MPaである。このような酸素バリア性を達成するためには、上述のガスバリアー性基材フィルム17の中間層17bに用いる樹脂の種類とその厚みとを適宜調整すればよい。なお、ここにいう酸素バリア性は、ASTM D−3985に準拠し、20℃、相対湿度65%の条件下での酸素透過度を測定することにより求められたものである。
【0027】
次に、容器外側の筒状体を形成する外層フィルム11は、内容物のガスが容器外部に漏洩しないように、また、外部の酸素や水蒸気が容器内部に透過しないように、ほぼ完全に遮断するためのフィルムであり、内層フィルムより高いガスバリア性を有する。具体的には、図5に記載のように、保護フィルム12、酸素透過性が実質的にゼロであるガス遮断性フィルム13、およびヒートシール層14としてのポリオレフィン系樹脂フィルムから構成するのがよい。これらの接着方法は、ドライラミネートであっても、共押出しや熱ラミネーションによるものであってもよいが、工程の簡素さやコスト、接着性などの点から、ドライラミネートが優位な場合がある。図5は、ドライラミネーションにより接着剤層15を介して接着された例を示している。
【0028】
保護フィルム12は、上述のガス遮断性フィルム13のハンドリングによる傷つきや破れ等を防いで保護し、また印刷を施すためのものである。これらの性能が満足されれば、特に材質、厚みなどは限定されるものではない。例えば、ヒートシール層14、19と同種のモノマーからなるポリオレフィン系樹脂フィルムや、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等があげられる。印刷性の点からはポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等が好ましい。また、内層フィルム16と外層フィルム11を各々筒状にしてから筒を重ねて二重容器とする場合、保護層12の外周側面とヒートシール層14のヒートシール性を良好にする点からは、ヒートシール層と同種のポリオレフィン系樹脂とすることが好ましい。
【0029】
前記の保護フィルム12としては、少なくとも表裏面の一方がポリオレフィン系樹脂からなる多層の共押出フィルムも使用できる。すなわち、保護の機能を有する層12b以外に、円筒を形成するための熱接着を可能とするために少なくとも容器表面側となる面に、ヒートシール層19と同種のモノマーからなるポリオレフィン系樹脂からなる層12aを有することが好ましい。図5は、このような層を設けた場合の例を示している。また、保護フィルム12は、ガス遮断性フィルム13と積層するために、ガス遮断性フィルム13に接する側にもポリオレフィン系樹脂フィルム、好ましくはシーラント層14,19と同種のモノマーからなるポリオレフィン系樹脂フィルム層を有することが好ましい。保護フィルム12の具体的な層構成としては、例えば、ポリエチレン/ナイロン/ポリエチレン、ポリプロピレン/ナイロン/ポリプロピレン等がある。なお、ガスバリアー性基材フィルム17と同様のフィルムも使用できる。
【0030】
ガス遮断性フィルム13は外界からの酸素や水蒸気をほぼ遮断し、内容物の変質等を防ぐと共に、内層のラミネートフィルムからの内容物の透過逸散をほぼ遮断する機能を有する。酸素透過性が10ml/m2/D/MPa未満であることが好ましく、より好ましくは1.5/m2/D/MPa以下である。さらに好ましくは、実質的にゼロであるのがよい。このようなガス遮断性フィルム13としては、アルミニウム箔等の金属膜が好ましく使用される。その他にも、鉄等の金属箔、アルミニウム金属蒸着膜、アルミニウム酸化物や酸化ケイ素等金属酸化物の蒸着膜などが挙げられる。
【0031】
ガス遮断性フィルム13と保護フィルム12およびヒートシール層14は、上述の溶融樹脂層18で例示した樹脂や、公知の接着剤で貼り合わせることにより外層フィルム11とする。なお、外層フィルム11のヒートシール層14には、内層フィルム16のヒートシール層19と同じ特性のものを用いればよい。
【0032】
上記のように構成されたラミネート内外層フィルム11、16は、外層フィルム11の内側に内層フィルム16をヒートシール層19が内側となるように配置し、端部を単にシールして筒状や袋状としてもよい。また、例えば、図4に示すように、外層フィルム11を1回巻回したあと両端部を重ね合わせ、重ね合わされた一方の端部の内周側面(ヒートシール層14)と、他方の端部の外周側面(保護層12)とを互いにヒートシールして接着面11aを構成し、筒状体10aを形成するようにしてもよい。このとき、端部のヒートシール幅や重ね合わせ幅は、5〜10mm程度とすると良い。内層フィルム16に付いても同様である。
【0033】
二重円筒状の成形体は、内層フィルム16、及び外層フィルム11のそれぞれについてヒートシール層14、19が包袋の内側を向くように配置させ、巻回して円筒状を形成し両者を重ね合わせて、所望の容器形成に必要な端部を接着固定することにより、二重の円筒状の容器とする。
【0034】
このような成形体は、内層フィルムが熱接着により接着されているため、内容物が極性化合物であってもその影響を受けにくく、しかも、ある程度はガスバリアを発揮するために、外層フィルムに極性化合物のガスが到達するのを防止するか、またはその到達量を軽減することができる。さらに、内層フィルムと外層フィルムの間には空気層を介しているから、内容物の吐出の際に用いられる吐出ガン等の吐出装置における引っかかりが生じにくい上、内層フィルムを透過した極性化合物のガスが空気層で希釈されるから、これによっても、極性化合物のガスが外層フィルムの接着剤に影響しにくくなる。外層フィルムでは、極性化合物等の内容物のガスや容器外部からの酸素や水蒸気を完全に遮断することができるから、容器外部に内容物が漏洩したり内容物が変質したりすることがない。さらに、外層フィルムが直接に内容物に接することがなく、内層フィルムである程度は透過を妨げられ、かつ空気層で希釈された状態で内容物のガスに接するにすぎないから、外層フィルムで接着剤を用いたとしてもデラミネーションや内容物の漏洩が生じるおそれが、従来より格段に軽減される。
【0035】
次に、可撓性包袋容器を形成する方法について説明する。まず、内外層フィルム11,16を用いて互いに直径がやや異なるようにして筒状体を作成し、内層の筒状体を外層の筒状体に挿入して図4に記載のように重ね合わせる。しかるのち、必要により筒状体の一方の端部を熱接着、または接着剤で接着固定し、二重構造の可撓性包袋容器とする。この容器に内容物を充填して封止することにより、包装体が得られる。
【0036】
図1に示した包装体の容器は、可撓性包袋容器の両端開口部を絞りワイヤー等でクリップ固定しケーシング容器としたものである。図2に示す包装体の容器は、一端に吐出口を有する硬質樹脂を成形してなる封止部材21に上記筒状体の開口部を熱接着または接着剤で接着固定し、他端を熱シールにより封止して密封端24を形成し、容器としたものである。図3に示す包装体の容器は、可撓性包袋容器の両端開口部を熱シールにより封止して密封端24を形成し、容器としたものである。
【0037】
上述の可撓性包袋容器に適する流動性物質としては、接着剤、シーリング材、コーキング材、練り歯磨き、その他の流動性物質がある。容器に適する接着剤としては、熱可塑性接着剤である酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、アクリルエマルジョン接着剤、ポリビニルアルコール接着剤等があげられ、また、熱硬化型接着剤であるユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、フェノール系樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリウレタン接着剤等の主剤と硬化剤などがあげられる。同様に、容器に適するシーリング材としては、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、SBR系樹脂等の主剤と硬化剤、変性ポリアミンなどの樹脂硬化剤があげられる。
【0038】
特に、この可撓性包袋容器は、耐化学薬品性に優れたバリアー性ラミネートフィルム構成を持つため、塩基性、または酸性物質等の極性物質に対して好適に使用できる。具体的には、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の硬化剤として多用されるアミン化合物、即ち、エチレンアミン族、N−アミノエチルピペラジン、メタキシリレンジアミン、ポリアミド等の脂肪族アミン、パラメンタンジアミン、イソホロンジアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール等脂環族アミン、メタフェニレンジアミン、ジシアンジアミド、4−4−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミン等に対して漏洩等のない容器として好適に使用し得る。
【0039】
以下、実施例等を用いて本発明をより具体的に説明する。なお、酸素透過度の測定方法はASTM D−3985に準拠し、20℃、相対湿度65%の条件下での測定とした。
【実施例1】
【0040】
図5に記載の層構成と同じ層構成を有する可撓性で筒型の包袋容器を作成した。まず、内層フィルムのガスバリアー性基材フィルム層として、直鎖状低密度ポリエチレン(6μm)/ナイロン6(5μm)/エチレン−ビニルアルコール共重合体(3μm)/ナイロン6(5μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(6μm)の3種5層からなる厚さ25μmの共押出フィルム(グンセ株式会社製BH25)を使用し、ヒートシール層19として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(50μm、出光ユニテック社製LS700C、密度0.931g/cm3、MFR2.8g/10分)とを対向させ、厚さ25μmの直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製UZ20100C、密度0.916g/cm3、MFR8.5g/10分)による溶融押出樹脂層18を介して押出コート・ラミネーションして内層フィルムを得た。得られた内層フィルムの酸素透過度は19.6ml/m2/D/MPaであった。
【0041】
次に、外層フィルムの保護フィルムとして、直鎖状ポリエチレン(10μm)/ナイロン6(10μm)/直鎖状ポリエチレン(10μm)(グンゼ株式会社製B)の2種3層からなる厚さ30μmの共押出フィルムを用意した。その片面にポリウレタン系接着剤を塗布し、酸素透過性が実質的にゼロであるガス遮断性フィルムとしてアルミニウム箔(7μm)を用意して、両者をドライラミネーション法によりラミネートし積層フィルムを作成した。さらに、ヒートシール層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(30μm、出光ユニテック社製LS700C)を、同じようにガス遮断性フィルムにドライラミネーション法により順次積層し、層構成が、共押出フィルム/アルミニウム箔/直鎖状低密度ポリエチレンとなる外層フィルムを得た。得られた外層フィルムの酸素透過性は測定不可で実質的にゼロであった。
【0042】
次いで、上記で製造した内層フィルムと外層フィルムとをそれぞれ2枚ずつ用意し、内層と外層を図5のように重ねたものを2組作成し、その2組の内層フィルムのヒートシール層の面を対向して重ね合わせ、その外周周辺の端部5mm幅のところで三方にヒートシールして、三方にヒートシール部が形成されると共に一方が開口部となる100mm×100mmの二重構造の平袋を製造した。その二重構造の平袋に、エポキシ樹脂の硬化剤である変性ポリアミン(旭化成社製 EX−400)10.0gを正確に秤量して、その開口部から格納部に注入した後、開口部をヒートシールして密封して、本発明の容器を用いた包装体とした。
【0043】
この包装体を40℃に温調された恒温槽に入れ、2ヶ月間エージングを行った。その後、恒温槽から取り出し、重量変化を確認したが、変化はまったく無く10.0gを維持し、内容物の漏洩等の外観変化もなく正常であった。また、内容物を取り出して洗浄後、内部の状態を観察すると、内層および外層のラミネートフィルムにおける層間剥離等のデラミネーションも無いことが確認された。結果を表1に示す。
【比較例1】
【0044】
厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)の片面にポリウレタン系接着剤を塗布し、これに二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET 12μm)をドライラミネーション法によりラミネートして積層フィルムを作成し、さらにアルミニウム箔(AL 9μm)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 50μm)をドライラミネーション法により順次積層し、層構成がCPP/接着剤/PET/接着剤/AL/接着剤/LLDPEであるラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムを2枚準備し、実施例1と同様にして100mm×100mmの三方シール袋を作成し、エポキシ樹脂用硬化剤である変性ポリアミンを封入して密封した後、同様にして、40℃の雰囲気下で2ヶ月のエージング処理を行った。
【0045】
エージング完了後の容器の外観観測では、ヒートシールされた端部から内容物の漏洩が観測され、空気中の炭酸ガスを吸収してアミンの炭酸塩が析出していることが観測された。内容物の重量を測定したところ、9.2gと減少していた。また、内容物を取り出した後、洗浄後内部を観察すると、内容物の漏洩が観測された端部近傍にアルミニウム箔とシーラント層間が剥離しているデラミネーションが確認された。以上の結果を表1に示す。
【実施例2】
【0046】
ガスバリアー性基材フィルムとして、LLDPE(6μm)/Ny(5μm)/EVOH(8μm)/Ny(5μm)/LLDPE(6μm)の層構成を有する共押出フィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして4種の内層フィルムを得た。得られた内層フィルムの酸素透過度は、それぞれ10.8ml/m2/D/MPaであった。なお、上記の略記号の意味は以下の通りである。LLDPEは直鎖状低密度ポリエチレンを、Nyはナイロン6を、EVOHはエチレン−ビニルアルコール共重合体を、MXDNyはMXDナイロン6を、それぞれ意味する。
【0047】
次いで、上記で製造した3種の内層フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして包装体を作成し、実施例1と同様のエージング処理を行った後、やはり実施例1と同様の評価を行った。内層フィルムからなる袋の表面には内容物が透過して浸出し、空気中の炭酸ガスと反応して白色の炭酸塩として析出する現象が観察されたが、これら析出物を溶剤で洗浄して除去した後、内容物の重量を測定して減少量を測定すると、上記の順番に0.1g未満、0.1g未満、0.11g、および0.13gという少ない結果になった。また、容器を開封して内容物を洗浄除去した後、袋内面を観察したところ、4種の容器共に層間剥離等のデラミネーションの現象は観察されなかった。以上の結果を表1に示す。
【実施例3】
【0048】
ガスバリアー性基材フィルムとして、LLDPE(5μm)/Ny(5.5μm)/MXDNy(4μm)/Ny(5.5μm)/LLDPE(5μm)の層構成を有する共押出フィルムを使用した以外は、実施例2と同様にしてエージング評価を行った。結果を表1に示す。なお、用いた内層フィルムの酸素透過度は、56.8ml/m2/D/MPaであった。
【実施例4】
【0049】
ガスバリアー性基材フィルムとして、LLDPE(30μm)/EVOH(15μm)/LLDPE(30μm)の層構成を有する共押出フィルムを使用した以外は、実施例2と同様にしてエージング評価を行った。結果を表1に示す。なお、用いた内層フィルムの酸素透過度は、105ml/m2/D/MPaであった。
【実施例5】
【0050】
ガスバリアー性基材フィルムとして、LLDPE(10μm)/Ny(60μm)/LLDPE(10μm)の層構成を有する共押出フィルムを使用した以外は、実施例2と同様にしてエージング評価を行った。結果を表1に示す。なお、用いた内層フィルムの酸素透過度は、150ml/m2/D/MPaであった。
【比較例2】
【0051】
ガスバリアー性基材フィルムとして、厚さ20μmのLLDPE(5μm)/Ny(10μm)/LLDPE(5μm)の層構成を有する共押出フィルムとする以外は実施例1と同様にして、ラミネートされた内層フィルムを得た。得られた内層フィルムの酸素透過度は、760ml/m2/D/MPaであった。次いで、上記で製造した内層フィルムについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。内容物の重量を測定して減少量を測定すると、0.5gと大きい結果となった。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】可撓性包袋容器の開口部をクリップ固定したケーシング容器の包装体の概略正面図である。
【図2】可撓性包袋容器の二つの開口部を成形部材とヒートシールでそれぞれ閉鎖した包装体の概略斜視図である。
【図3】可撓性包袋容器の二つの開口部をヒートシールで閉鎖した包装体の概略斜視図である。
【図4】可撓性包袋容器の二重構造を示す断面図である。
【図5】可撓性包袋容器を構成する内層及び外層フィルムの層構成の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0054】
10 包装体
11 外層フィルム
11a 外層フィルムの貼り合わせ部(外側)
12 保護フィルム層
12a ポリオレフィン系樹脂からなる層
12b 保護フィルム層
13 ガス遮断性フィルム
14 ヒートシール層
15 接着剤層
16 内層フィルム
16a 内層フィルムの貼り合わせ部(内側)
17 ガスバリアー性基材フィルム
17a ポリオレフィン系樹脂層
17b 中間層
17c ポリオレフィン系樹脂層
18 溶融押出し樹脂層
19 ヒートシール層
20 クリップ
21 吐出口を有する成形部材
22 成形部材
23 吐出口
24 密封端
30 空気層
31 内容物の格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層フィルムと外層フィルムとが空気層を介して互いに接する二重構造を備えた可撓性包袋容器であって、前記内層フィルムは、複数の層が熱接着により積層されたガスバリア性の複合フィルムであり、前記外層フィルムは、前記内容フィルムより高いガスバリア性を有する複合フィルムであることを特徴とする可撓性包袋容器。
【請求項2】
前記内層フィルムは、両面にポリオレフィン系樹脂層を有するガスバリア性基材フィルムと、溶融押出樹脂層と、ヒートシール層とがこの順に積層されていると共に、酸素透過性が10ml/m2/D/MPa以上で150ml/m2/D/MPa以下の複合フィルムであり、前記外層フィルムは、保護フィルム、ガス遮断性フィルム、ヒートシール層が接着剤又は溶融押出樹脂層を介してこの順に積層されてなる複合フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の可撓性包袋容器。
【請求項3】
前記の、ポリオレフィン系樹脂層、溶融押出樹脂層、ヒートシール層、保護フィルムのいずれもが、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の可撓性包袋容器。
【請求項4】
請求項1または3に記載の可撓性包袋容器に、極性の流動性物質が充填密封された包装体。
【請求項5】
請求項1または3に記載の可撓性包袋容器に、変性ポリアミン系樹脂硬化剤が充填密封された包装体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれに記載の可撓性包袋容器の端部開口が、硬質の成形部材、クリップまたはヒートシールのいずれかの閉鎖手段により閉鎖されていることを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−219179(P2006−219179A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36426(P2005−36426)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【出願人】(391052781)株式会社ポリマーシステムズ (27)
【Fターム(参考)】