説明

可撓性頚椎前方プレート

【課題】動的なプレートのいくつかは隣接する椎間板のスペースに侵入する。更に、これらの動的なプレートシステムのいくつかにおける部品の多様性は複雑な組立工程を必要とする。
【解決手段】側方湾曲するように構成された頚椎前方プレート。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
周知の多くの理由のため、骨固定装置は外傷、腫瘍成長もしくは変性椎間板疾患によって引き起こされる負傷もしくは損傷した椎骨部分の適切な治療を促進するのに有益である。外固定装置は損傷した骨の間の新しい骨組織の適切な成長を確保するため、損傷した骨の分節を固定する。多くの場合、外固定装置のこれらのタイプには、変形もしくは不安定さのない損傷領域の効果的な治療を容易にするため、固定化を最小限にして患者の術後処置の間の脊柱を安定させるための内部ブレーシングおよび器具類を含む。
【0002】
このような1つの装置は骨接合術のプレートであり、より一般的に言えば、骨などの近くの骨格部分を固定するために使用する骨固定プレートである。典型的に固定プレートは、互いに固定を必要とする骨もしくは骨の分節を補うように位置決めされた堅い金属もしくは高分子のプレートである。通常このプレートは骨スクリューで各骨を固定するので、プレートは骨と接触したまま所望の位置で骨を固定する。骨プレートは適切な位置で椎骨体部を保つために必要な機械的支持を提供することに役立ち、椎間板、椎体もしくは骨片を削除した場合のような弱くなった、もしくは損傷した領域を橋渡しする。
【0003】
このようなプレートは脊柱の椎体を含む多種の骨を固定するために使用されている。これらの骨プレートは通常、複数のスクリューの開口部を持つ柔軟性のない骨プレートを含む。この開口部は、スクリューの動きを自由にする穴もしくはスロットのいずれかである。骨プレートは損傷した椎骨に対して配置され、骨スクリューは通常、椎体にねじ込まれるスクリューと共に脊椎にプレートを固定するために使用される。上記に説明したような模範的なシステムとしては、ロゴジンスキー(Rogozinski)の米国特許第6,159,213号、リケルソフ(Richelsoph)の米国特許第6,017,345号、オクスランド他(Oxland et al.)の米国特許第5,676,666号、ヤップ他(Yapp et al.)の米国特許第5,616,144号、ヤップ他(Yapp et al.)の米国特許第5,549,612号、ワーデン他(Warden et al.)の米国特許第5,261,910号、ステフィー(Steffee)の米国特許第4,696,290号に見ることができる。
【0004】
脊椎頚部の固定が望ましい場合、固定プレートは大抵、頚椎の前方部分に固定する。前方に配置された頚部のプレートは一般的に、装置が、ある1つの椎体における、隣接する椎体に対する骨スクリューの動きを制限する方法によって分類される。概して、この装置は剛体(完全に動きを許容しない)、半剛体(スクリューのトグルの動きのみ許容する)、もしくは動的(脊柱軸に沿った動きの制限はない)な、3分類のうちの1つに適合する。通常、外科医は患者の特定のニーズに基づいて、これら3分類の1つから装置を選択する。
【0005】
頚部の痛みの1つの原因は、腰椎の椎間板の断裂もしくは変性による。頚痛は椎骨の間の損傷した椎間板による脊髄神経根の圧迫によって引き起こされる。この問題に対処する従来の方法の1つは、問題のある椎間板を移動させるか、もしくは、隣接する椎骨に癒着させることである。一般的に癒着は、細胞間質分子(matrix molecules)や癒着を容易にする骨芽細胞などの生体細胞を含む(骨粉などのような)自家骨グラフトで椎間板のスペースを充填させることによって容易になる。しかしながら、グラフトを介した装填頒布の失敗は、癒着不能の発生率の増加と関連している。
【0006】
動的な頚部プレートはこの装填の問題に対処し、ある量のグラフトの沈降が起こったとしても、椎体間のグラフトの継続的な装填に効果をもたらす。ファリス(Farris)の米国特許第6,669,700号は、中央のネジ穴と重なる剛体の頚椎前方プレートを開示している。しかしながら、このようなプレートの剛性は継続的なグラフト装填に適してはいない。
【0007】
従来の動的なプレートは適切に継続的な装填を可能とするが、従来の動的なプレートに関する多くの問題がある。これらのシステムには多くの部品による特徴があり、動力が、2つの軸上に配置されたロッドの上部の部品のスライドによって生じるものである。他のシステムは、このロッドについて、関連する骨固定スクリューを平行移動させて切り替えることを可能にするスロットを有するプレートによって特徴付けられる。しかしながら、これらの動的なプレートのいくつかは隣接する椎間板のスペースに侵入する。更に、これらの動的なプレートシステムのいくつかにおける部品の多様性は複雑な組立工程を必要とする。
【0008】
コーエン(Cohen)の米国特許第6,206,882号は、側面に沿って伸長するスロットを有する頚部プレートを開示し、これによって術中に外科医が容易にこのプレートを曲げることができるので、患者の生体構造に適合させることが可能である。このスロットは、完全に横断状もしくは対角線状でありプレートの側端面に開口部があるので、コーエンのプレートは容易に捻ったり曲げたりできる。しかしながら、コーエンのプレートは軸に沿った転位を提供するものではない。
【0009】
セブレイン(Sevrain)の米国特許出願第2003/0229348号は、少なくとも2つの隣接する椎骨をくっつけるための接続装置を開示している。図1、1a〜1c、はそれぞれ頂点22を有するジョイント16を有する装置を開示している。このジョイントは自然の屈曲および伸長に応じたバネの動作をする。しかしながら、セブレインは、この装置が癒着装置としてではなく椎間板の人工器官として使用するように構成することを更に開示している。癒着器具(例えば図7〜10)として用いるセブレインの装置は、柔軟性のある部分を持たないことは明らかである。
【0010】
〔発明の概要〕
本発明者は、上記の様々な事項に対処する頚椎前方プレートを開発した。
【0011】
本発明のいくつかの実施例において、継続的なグラフトの装填を行うため、隣接する椎間板に支障を来たさない1つのプレート部品だけ(スクリューやロック機構を除く)を必要とする、動的な頚椎前方プレートを提供する。
【0012】
特に本発明は、軸方向の負荷に応じて軸方向および側面方向に屈曲する、中間部に位置する細長い部分を有する頚椎前方プレートに関する。この中間部の軸方向の屈曲作用は、隣接する椎骨にプレートを介して固定された上部および下部の骨スクリュー間の距離を縮める効果があり、これによって本装置を機能的な脊髄ユニットの装填時の変化に適切に対応させることができる。この中間部の側面方向の屈曲作用は、本装置が前方に突き出し重大な器官へ、または、後方に突き出しグラフトへ、入り込まないことを確かにする。
【0013】
したがって、本発明によれば、上部および下部の頚部椎骨の動的な固定化が可能な頚椎プレートが提供され、このプレートは横軸を画定する対向した内側および外側の面および長手方向の縦軸を画定する対向した上部および下部の面を備え、
a)上部横方向の貫通穴を有する上部と、
b)下部横方向の貫通穴を有する下部と、
c)これらの間にある長手方向に細長い中間部と、を含み、
この細長い部分は長手方向軸の負荷がある場合に側面に沿って屈曲するように構成されている。
【0014】
〔発明の詳細な説明〕
図1を参照すると、上部および下部の頚椎の動的な安定性をもたらす頚椎プレート1が示され、このプレートは横軸を画定する対向する内側の面(図示せず)および外側の面5、長手方向の軸Lを画定する対向した上部面7および下部面9を備え、
a)一対の上部横方向の貫通穴13を有する上部11と、
b)一対の下部横方向の貫通穴17を有する下部15と、
c)これらの間にある長手方向に細長い中間部19と、を有し、
この細長い中間部は、
i)側面に沿って軸方向に伸びる一対の支柱部材21および23であって、各部材は上部から下部へと延び、この支柱部材中に複数の軸方向に延在する閉鎖スロット25を有し、このスロットは軸方向に伸びる支柱部材のそれぞれの内部において複数の軸方向に伸びる細い部材を画定する、支柱部材と、
ii)グラフトの窓を画定する大きな横方向の穴27と、を含む。
【0015】
プレート部品は薄い部材が物理的な軸方向の負荷がある場合に屈曲するように向きを合わせた、少なくとも1つの薄い部材を有する通常平坦な金属部品を含む。この部材の屈曲はプレートの各穴間の距離を縮め、これによって癒着用グラフトの継続的な装填が可能になる。この特定の場合、図1の中間部は側面に沿って外側に屈曲する。
【0016】
いくつかの(図2のような)実施例において、細長い中間部は、装置の上部から下部へと延びる少なくとも2つの可撓性部材を含む。
【0017】
図2を参照すると、頚部椎骨上部および下部の動的な安定性を備えた頚椎プレート31が示されており、このプレートは、横軸を画定する対向した内側面(図示せず)および外側面35および長手方向の軸を画定する対向した上部面37および下部面39を有し、
a)上部横方向の貫通穴43を有する上部41と、
b)下部横方向の貫通穴47を有する下部45と、
c)これらの間にある長手方向に細長い中間部49と、を含み、
この細長い中間部分は、
i)側面に沿って軸方向に伸びる一対の細い部材51であって、上部から下部へと延び、各部材は直線部52および所定の曲線部53を有する、細い部材と、
ii)嵌合止め部(telescoping portion)55と、を備えている。
【0018】
図3を参照すると、上部椎骨VBUおよび下部椎骨VBLの間に固定された図2の装置と実質的に同様の装置の側面図が示されている。この固定はグラフトGを置く椎間板のスペースを作り出す。細い部材の側面に沿った屈曲は、装置の前方および後方への侵入を防ぐ。
【0019】
いくつかの実施例において、細長い中間部は、装置の上部から下部へと延びる複数の可撓性部材を画定する、軸方向に延在する多くのスロットを含む。好ましくは、装置のスロット形成は偶数の可撓性部材を作り出し、これによって装置の側面に沿った屈曲を均一にする。いくつかの実施例では、図1のように、このスロット形成が側面ごとに4つの細長い部材28を作り出す。いくつかの実施例において、細い部材はプレートの中間部の幅の約10%〜30%を含む全体幅を有する。
【0020】
いくつかの実施例では、この細い部材は通常、同一の長方形の断面を有する。いくつかの好ましい実施例においては、図5bを参照すると、細い部材の長辺LEは前後方向に伸長し、一方細い部材の短辺SEは中央から側面の方向に伸長する。この好ましい実施例においては、軸方向の動きは比較的容易であるが、屈曲/伸長およびねじれの負荷において歪みを起こすことは困難である。
【0021】
再度図2を参照すると、いくつかの実施例では、細い可撓性部材が曲線部53に沿って軸方向に伸びている(負荷のない状態において)。実質的に直線の細い部材は好ましくは座屈を起こすに十分な力が加えられるまで曲がらず、このため好ましくない非線形力の変位によるカーブを生じる。図2の予め曲がっている細い部材は、軸方向の力に対応して実質的には直線的に動き、これによってグラフトの癒着に適した負荷の継続性を与える。
【0022】
側面に沿った屈曲によって細い部材を、食道のようなあらゆる柔かい生体組織に接触させない点で、側面に沿った屈曲は、前方の屈曲よりも利点を有する。
【0023】
図4を参照すると、上部および下部の頚部椎骨の動的な安定性をもたらす頚椎プレート81が示され、このプレートは、横軸を画定する対向した内側面(図示せず)および外側面85、ならびに、長手方向の軸を画定する対向した上部面87および下部面89を備え、
a)上部横方向の貫通穴93を有する上部91と、
b)下部横方向の貫通穴97を有する下部95と、
c)これらの間にある長手方向に細長い中間部99と、を含み、
この細長い中間部分は、
i)側面に沿って軸方向に伸びる一対の支柱部材101であって、各部材は、上部から下部へと延び、上部の厚い断面部102、下部の厚い断面部103およびその間の薄い断面部104を持つ、支柱部材と、
ii)中央に位置する嵌合部(telescoping portion)105と、を備えている。
【0024】
いくつかの実施例では、軸方向の可撓性は伸長された中間部内で減少した断面の部分をもって成される。この部分は屈曲領域を作り出す。屈曲領域はこの屈曲領域がある程度の塑性変形を提供し、よじれ状態となる点で好ましい。
【0025】
本発明のプレートは、ある量のダイナミズムがグラフトの連続的な装填を可能にする点で利点があるが、このようなプレートの一般的な目標は、その後も極端な沈降を防ぎ、好ましい椎骨間距離を維持するように、グラフトの領域に適度な安定性をもたらすことである。したがって、本発明のいくつかの実施例において、このプレートは、穴間距離が所定の値を割ることを防ぐ停止機構を更に備える。好ましくは、この停止によってプレートの動的状況で生じる動作を、椎間板の高さなどの臨床上意義のある値に制限する。
【0026】
これらの実施例において、更に図4を参照すると、本発明のプレートは嵌合部105を有し、
a)上部から延び、第1の端部108を有するロッド107と、
b)下部から延び、ボア111および閉鎖端面113を有する受け入れチューブ109と、を備える。
【0027】
屈曲が許容範囲にある間は、ロッドは受け入れチューブ内にただ平行移動し、軸方向の動きの制限に影響しない。しかしながら、軸方向の負荷が過度の場合は、ロッドの端部108は受け入れチューブの閉鎖端面113と接触し、これによって更なる軸方向の移動を防ぎ、椎間板の高さを維持する。
【0028】
図4の嵌合部は、過度の動きに対して停止するよう構成されている、他の実施例では、この嵌合部は部品の相対的なスライドのみするように構成されており、停止部を設けない。
【0029】
留め具が骨に固定された横方向の穴(図4の穴115など)は、複数のファスナープレートの接合部116を形成する。如何なる従来のファスナープレートの接合部も本発明に合わせて使用可能である。ある実施例(図4に示すように)において、この接合部116はスナップリングスクリューの係合を形成する。いくつかの実施例で、接合部は、ここに参照して本明細書にその全てを組み入れる米国特許第4,493,317号と実質的に同様な形をとる。
【0030】
いくつかの実施例において、この装置は輪郭領域を備える。この輪郭領域によって、外科医は脊椎頚部の脊柱前彎部に適合するよう本装置を屈曲させることができる。いくつかの実施例では、この輪郭領域は単に、上部もしくは下部と中間部との間にある細い部分である。
【0031】
図5aおよび5bを参照すると、上部および下部の頚椎の動的な安定性を与える頚椎プレート61が示されており、このプレートは、横方向の軸を画定する対向した内側面(図示せず)および外側面65と、長手方向の軸を画定する対向した上部面67および下部面69と、を備え、
a)1つの上部横方向の貫通穴73を有する上部71と、
b)1つの下部横方向の貫通穴77を有する下部75と、
c)これらの間にある長手方向に細長い中間部79と、
d)上部と中間部との間にある上部輪郭領域81と、
e)下部と中間部との間にある下部輪郭領域83と、を含む。
【0032】
いくつかの実施例では、このプレートの細長い中間部は大きな横方向の貫通穴85を持つ。この穴は、グラフトの窓として働き、これによってプレートの処置の間中、グラフトの視覚化を可能にする。いくつかの実施例において、グラフトの窓の幅は、支柱部材が合計でプレート中間部の全幅Wの約10%〜40%を含むような幅である。またいくつかの実施例では、グラフトの窓の幅は、長手方向に細長い中間部の全幅Wの少なくとも30%を含む。
【0033】
図6aを参照すると、上部および下部の頚部椎骨において動的な安定性をもたらす頚椎プレート101が示されている。このプレートは、側面の軸方向に伸びる支柱部材103が内側(図1の装置にあるような外側ではない)に曲げられる以外は、実質的に図1に示すプレートと同様である。この特定の場合において、図6aの装置が軸方向の負荷の影響下にあるとき、この支柱部材は(図6bに示すように)側面に沿って内側に屈曲する。好ましい実施例では、図6aの装置は、過度の負荷がかかる場合に、内側へ屈曲する、軸方向に伸びる支柱部材103の側方向内側の動きにおいて(図6bに示すように)互いに接触するように設計され、これによって過度の動きに対して効果的な抑止をもたらす。
【0034】
ネジスクリューやアンカーを含む、従来のいずれの骨固定具も本発明で使用可能である。(図2〜5bのような)いくつかの実施例では、プレートに対する必要な骨の固定を与えるために、1つのスクリューがプレート上部および下部の横方向における各1つの穴によって受け入れられる。(図1のような)他の実施例では、プレートの上部および下部のそれぞれに一対の横方向の穴があり、これによって固定のための4つのネジが必要となる。
【0035】
図で説明した各実施例は、単一レベルの椎間板切除術もしくは椎体切除術へ利用するように構成された構図として示したが、本発明の範囲は複数の椎間板切除術もしくは椎体切除術へ利用するように構成された構図も含む。好ましい実施例において、この装置は、長手方向に細長い複数の中間部を含むよう設計されるので、各長手方向に細長い複数の中間部はそれぞれのレベルで独立した動きを行うように構成されている。
【0036】
また、本発明によれば、本発明の装置を植え込む新規な方法を提供する。この好ましい方法において、骨スクリューの挿入および固定の間、本装置は伸長モード(例えば軸方向のテンションの負荷など)とされる。一旦骨スクリューがプレートを介して確実に固定されると、このテンションは解放される。本装置は塑性変形を防ぐように設計されるので、本装置の穴間の距離は負荷のかからない値に戻る。この穴間の距離の減少もまたグラフト領域の好ましい継続的な圧縮負荷を生じ、これによって癒着を支援する。
【0037】
したがって、本発明によれば、隣接する椎骨間の頚椎前方プレートを植え込む方法が提供され、
a)本発明のプレートを準備する工程と、
b)伸長した装置の長さを与えるために本装置に軸方向のテンションをかける工程と、
c)隣接する一対の椎骨に本装置を固定する工程と、
d)本装置からテンションを解放する工程と、を備える。
【0038】
本装置の伸長は、本装置にわたって適切な軸方向のテンションを生じさせる従来の様々な方法によって達成可能である。このような方法は、(例えば側面から中央への力など)可撓性領域の側面を互いに締め付ける器具、あるいは(例えば軸方向のテンションの力など)穴間のスペースを引き離す器具の利用を含む。別の実施例では、本装置がマルテンサイト相の間の比較的短い全長およびオーステナイト相における比較的長い全長を有する形状記憶合金から作られることができた。この実施例の装置は、長い全長のマルテンサイト相で植え込まれる。この実施例の装置の温度が体温まで上昇すると記憶合金はオーステナイト相に変化し、これによってプレートの全長を縮めてグラフトに圧縮負荷を与える。
【0039】
したがって、隣接する椎骨の間に頚椎前方プレートを植え込む方法が提供され、その工程は、
a)本発明のプレートを準備する工程であって、プレートはマルテンサイト相の間の比較的長い全長およびオーステナイト相における比較的短い全長を有する記憶合金で作られる、工程と、
b)マルテンサイト相でプレートを植え込む工程と、を有し、
オーステナイト相に変化させるため、プレートの温度を上げ、これによってプレートの全長を縮めてグラフトに圧縮負荷を与える工程と、を備える。
【0040】
いくつかの方法において、本発明の装置は、チタン合金、コバルトクロム合金もしくはステンレス鋼のような生体適合性金属で作られる。しかしながら、他の実施例では、別の非金属材料を採用してもよい。いくつかの実施例では、プラスチックを構成材料として用いることができる。プラスチックは一般的に金属より柔らかいので破損しにくい。いくつかの実施例において、再吸収可能なポリマーを構成材料として利用可能であり、これによって、癒着が行われた後、プレートを身体に再吸収させることができる。いくつかの実施例では、繊維相を有する複合材料を構成材料として利用することができる。この複合材料は異方性の特性を有し、本装置の歪み特性を強化する好ましい順応をする。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 上部および下部の頚部椎骨の動的な固定化を与える頚椎プレートであって、前記プレートは、横軸を画定する対向した内側および外側の面、ならびに、長手方向の縦軸を画定する対向した上部および下部の面、を備える、プレートにおいて。
a)上部横方向の貫通穴を有する上部と、
b)下部横方向の貫通穴を有する下部と、
c)これら上部と下部との間にある長手方向の細長い中間部と、を含み、
前記細長い中間部は前記長手方向の軸の負荷がある場合に側面に沿って屈曲するように構成されている、
プレート。
(2) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は曲線部を有する、プレート。
(3) 実施態様(2)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は少なくとも2つの曲線部を有する、プレート。
(4) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記上部および下部の頚部椎骨の癒着を促進するのに適した堅さを有する、プレート。
(5) 実施態様(2)に記載のプレートにおいて、
前記曲線部は側面に沿って湾曲する、プレート。
(6) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は、側面に沿って軸方向に伸びる少なくとも2つの細い部材を備え、側面に沿って軸方向に伸びる細い部材のそれぞれは、前記上部から前記下部へと延び、かつ、直線部分および所定の曲線部を有する、プレート。
(7) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は、
i)側面に沿って軸方向に伸びる一対の支柱部材であって、各前記支柱部材は前記上部から前記下部へと延び、かつ、前記支柱部材に少なくとも1つの軸方向に延在する閉鎖スロットを有し、前記スロットは軸方向に伸びる複数の細い部材を軸方向に伸びる各前記支柱部材の内部に画定する、支柱部材、
を備えた、プレート。
(8) 実施態様(7)に記載のプレートにおいて、
前記上部から前記下部へと延びる各前記支柱部材は、軸方向に延在する複数の閉鎖スロットを各前記支柱部材の内部に有し、前記複数のスロットは、少なくとも3つの軸方向に伸びる細い部材を軸方向に伸びる各前記支柱部材の内部に画定する、プレート。
(9) 実施態様(7)に記載のプレートにおいて、
前記細い部材は前記プレートの前記中間部の幅の10%〜40%を含む、プレート。
(10) 実施態様(7)に記載のプレートにおいて、
少なくとも1つの細い部材は、長辺および短辺を有し、前記細い部材の前記長辺は前後方向に伸長し、前記細い部材の前記短辺は、側面中央の方向に伸長する、プレート。
(11) 実施態様(7)に記載のプレートにおいて、
少なくとも1つの支柱部材は、第1の断面部を有する上部、第2の断面部を有する下部、およびこれら第1の断面部と第2の断面部との間にある第3の断面部を備え、前記第3の断面部は縮小された断面を有する、プレート。
(12) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は、ある幅を有し、かつ、
i)側面に沿った軸方向に伸びる一対の支柱部材であって、各前記支柱部材は前記上部から前記下部へと延び、これら上部と下部との間にグラフトの窓を画定し、前記グラフトの窓は前記細長い中間部の幅の少なくとも30%を含む幅を有する、支柱部材、を備えた、
プレート。
(13) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は嵌合部(telescope unit)を含む、プレート。
(14) 実施態様(13)に記載のプレートにおいて、
前記嵌合部は、
a)前記上部から延び、第1の端部を有するロッドと、
b)前記下部へ延び、ボアおよび閉鎖端面を有する受け入れチューブと、
を備え、
前記ロッドは前記ボアに受け入れられる、
プレート。
(15) 実施態様(14)に記載のプレートにおいて、
前記嵌合部は中央に位置する、プレート。
(16) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
c)前記プレートの前記上部および下部の少なくとも1つと、前記長手方向に細長い中間部と、の間に位置する輪郭領域、
を更に備えた、プレート。
(17) 実施態様(16)に記載のプレートにおいて、
前記輪郭領域は、前記プレートの前記上部または下部の少なくとも1つと、前記長手方向に細長い中間部と、の間に位置する、薄い部分を備えた、プレート。
(18) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は停止部を有する、プレート。
(19) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は側面に沿って内側に屈曲する、プレート。
(20) 実施態様(1)に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は側面に沿って外側に屈曲する、プレート。
(21) 隣接する椎骨間に頚椎前方プレートを植え込む方法において、
a)前記頚椎プレートを準備する工程と、
b)前記プレート長を伸長させるように前記装置に軸方向のテンションをかける工程と、
c)前記装置を一対の隣接する椎骨に固定する工程と、
d)前記テンションを前記装置から解放する工程と、
を有する、方法。
(22) 実施態様(21)に記載の方法において、
前記軸方向にテンションをかける工程は、長手方向に細長い中間部を側面に沿って圧縮する工程を含む、方法。
(23) 実施態様(21)に記載の方法において、
前記軸方向にテンションをかける工程は、前記プレートの前記上部および前記下部を反対方向へ引っ張る工程を含む、方法。
(24) 隣接する椎骨間に頚椎前方プレートを植え込む方法において、
a)前記頚椎プレートを準備する工程であって、前記プレートはマルテンサイト相の間の比較的長い全長とオーステナイト相における比較的短い全長とを有する記憶合金で作られる、工程と、
b)前記プレートを前記マルテンサイト相において植え込む工程と、
c)前記オーステナイト相に変化させるため前記プレートの温度を上げ、これによって前記プレートの前記全長を縮め、グラフトに圧縮負荷を与える工程と、
を備えた、方法。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】細長い中間部の軸方向に延在する複数のスロットによって軸方向の可撓性を備えた、本発明の第1の実施例における斜視図である。
【図2】細長い中間部が一対の側方可撓性部材を有する、本発明の第2の実施例における斜視図である。
【図3】2つの椎骨間に植え込まれた図2の装置の側面図である。
【図4】嵌合止めおよび複数の屈曲領域を有する、本発明の第3の実施例における平面図である。
【図5a】輪郭領域を有する、本発明の第4の実施例における平面図である。
【図5b】図5aの中央横断面である。
【図6a】側面内側へ屈曲するように構成された本発明の実施例における上面図である。
【図6b】側面内側へ屈曲するように構成された本発明の実施例における上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部および下部の頚部椎骨の動的な固定化を与える頚椎プレートであって、前記プレートは、横軸を画定する対向した内側および外側の面、ならびに、長手方向の縦軸を画定する対向した上部および下部の面、を備える、プレートにおいて、
a)上部横方向の貫通穴を有する上部と、
b)下部横方向の貫通穴を有する下部と、
c)これら上部と下部との間にある長手方向の細長い中間部と、
を含み、
前記細長い中間部は前記長手方向の軸の負荷がある場合に側面に沿って屈曲するように構成されている、
プレート。
【請求項2】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は曲線部を有する、プレート。
【請求項3】
請求項2に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は少なくとも2つの曲線部を有する、プレート。
【請求項4】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記上部および下部の頚部椎骨の癒着を促進するのに適した堅さを有する、プレート。
【請求項5】
請求項2に記載のプレートにおいて、
前記曲線部は側面に沿って湾曲する、プレート。
【請求項6】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は、側面に沿って軸方向に伸びる少なくとも2つの細い部材を備え、側面に沿って軸方向に伸びる細い部材のそれぞれは、前記上部から前記下部へと延び、かつ、直線部分および所定の曲線部を有する、プレート。
【請求項7】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は、
i)側面に沿って軸方向に伸びる一対の支柱部材であって、各前記支柱部材は前記上部から前記下部へと延び、かつ、前記支柱部材に少なくとも1つの軸方向に延在する閉鎖スロットを有し、前記スロットは軸方向に伸びる複数の細い部材を軸方向に伸びる各前記支柱部材の内部に画定する、支柱部材、
を備えた、
プレート。
【請求項8】
請求項7に記載のプレートにおいて、
前記上部から前記下部へと延びる各前記支柱部材は、軸方向に延在する複数の閉鎖スロットを各前記支柱部材の内部に有し、前記複数のスロットは、少なくとも3つの軸方向に伸びる細い部材を軸方向に伸びる各前記支柱部材の内部に画定する、プレート。
【請求項9】
請求項7に記載のプレートにおいて、
前記細い部材は前記プレートの前記中間部の幅の10%〜40%を含む、プレート。
【請求項10】
請求項7に記載のプレートにおいて、
少なくとも1つの細い部材は、長辺および短辺を有し、前記細い部材の前記長辺は前後方向に伸長し、前記細い部材の前記短辺は、側面中央の方向に伸長する、プレート。
【請求項11】
請求項7に記載のプレートにおいて、
少なくとも1つの支柱部材は、第1の断面部を有する上部、第2の断面部を有する下部、およびこれら第1の断面部と第2の断面部との間にある第3の断面部を備え、前記第3の断面部は縮小された断面を有する、プレート。
【請求項12】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は、ある幅を有し、かつ、
i)側面に沿った軸方向に伸びる一対の支柱部材であって、各前記支柱部材は前記上部から前記下部へと延び、これら上部と下部との間にグラフトの窓を画定し、前記グラフトの窓は前記細長い中間部の幅の少なくとも30%を含む幅を有する、支柱部材、を備えた、
プレート。
【請求項13】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は嵌合部(telescope unit)を含む、プレート。
【請求項14】
請求項13に記載のプレートにおいて、
前記嵌合部は、
a)前記上部から延び、第1の端部を有するロッドと、
b)前記下部へ延び、ボアおよび閉鎖端面を有する受け入れチューブと、
を備え、
前記ロッドは前記ボアに受け入れられる、
プレート。
【請求項15】
請求項14に記載のプレートにおいて、
前記嵌合部は中央に位置する、プレート。
【請求項16】
請求項1に記載のプレートにおいて、
c)前記プレートの前記上部および下部の少なくとも1つと、前記長手方向に細長い中間部と、の間に位置する輪郭領域、
を更に備えた、プレート。
【請求項17】
請求項16に記載のプレートにおいて、
前記輪郭領域は、前記プレートの前記上部または下部の少なくとも1つと、前記長手方向に細長い中間部と、の間に位置する、薄い部分を備えた、プレート。
【請求項18】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は停止部を有する、プレート。
【請求項19】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は側面に沿って内側に屈曲する、プレート。
【請求項20】
請求項1に記載のプレートにおいて、
前記細長い中間部は側面に沿って外側に屈曲する、プレート。
【請求項21】
隣接する椎骨間に頚椎前方プレートを植え込む方法において、
a)前記頚椎プレートを準備する工程と、
b)前記プレート長を伸長させるように前記装置に軸方向のテンションをかける工程と、
c)前記装置を一対の隣接する椎骨に固定する工程と、
d)前記テンションを前記装置から解放する工程と、
を有する、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
前記軸方向にテンションをかける工程は、長手方向に細長い中間部を側面に沿って圧縮する工程を含む、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、
前記軸方向にテンションをかける工程は、前記プレートの前記上部および前記下部を反対方向へ引っ張る工程を含む、方法。
【請求項24】
隣接する椎骨間に頚椎前方プレートを植え込む方法において、
a)前記頚椎プレートを準備する工程であって、前記プレートはマルテンサイト相の間の比較的長い全長とオーステナイト相における比較的短い全長とを有する記憶合金で作られる、工程と、
b)前記プレートを前記マルテンサイト相において植え込む工程と、
c)前記オーステナイト相に変化させるため前記プレートの温度を上げ、これによって前記プレートの前記全長を縮め、グラフトに圧縮負荷を与える工程と、
を備えた、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2007−527749(P2007−527749A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502024(P2007−502024)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/007135
【国際公開番号】WO2005/086708
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(504003396)デピュイ・スパイン・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Spine,Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive,Raynham,MA 02767,U.S.A.
【Fターム(参考)】