説明

可溶化インターロイキン18レセプター及び医薬組成物並びに疾患の診断方法

【課題】天然型の可溶化IL-18レセプターα,天然型の可溶化IL-18レセプターβ,これらの複合体等の、生体内での挙動を突き止めることによって、より副作用の少なく、しかもIL-18抑制効果に優れた新規な医薬有効成分を提供すること。
【解決手段】天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ,又はその1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつ天然型可溶化インターロイキン18レセプターβと同じ活性を有するタンパク質,及びそれを有効成分として用いる医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)インターロイキン18レセプターの作用解明,(2)間質性肺炎や肺線維症等の肺障害,関節リウマチ,関節炎,あるいは骨粗鬆症等の自己免疫疾患,皮膚炎,脱毛,掻痒,気道性過敏,肺気腫,慢性気管支炎,慢性閉塞性肺疾患,肺胞蛋白症,クローン病、潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患等の治療薬等に使用することが期待される可溶化インターロイキン18レセプター,(3)それを用いた医薬組成物,及び(4)リュウマチ等の自己免疫疾患の診断方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
[IL-18]
インタ−ロイキン18(以下、IL-18と記載する。)は、マクロファ−ジの産性するインタ−フェロンγ(IFN-γ)誘導因子として1995年に発見された最も新しいサイトカインである[Nature 378,88-91(1995)]。IL-18は、前駆体(proIL-18)として合成された後、インタ−ロイキン1β変換酵素[カスパ−ゼ1(caspase-1)]等により切断されて活性型(mature IL-18)となる。
【0003】
マウスIL-18の前駆体は192個のアミノ酸よりなり、その活性型は157個のアミノ酸よりなる。また、ヒトIL-18の前駆体は194個のアミノ酸よりなり、その活性型は158個のアミノ酸よりなる。
【0004】
[IL-18受容体]
IL-18の受容体(以下「IL-18R」と記載することがある。)は、IL-1受容体ファミリ−に属し、IL-18RαとIL-18Rβとが知られている。
【0005】
[IL-18の性質]
IL-18は、1型ヘルパ−T細胞(Th1)やナチュラルキラ−細胞(NK細胞)に作用してIFN−γの産性を誘導するほか、細胞傷害性T細胞活性を増強させることにより細胞傷害活性を増強することが知られており、Th1応答をもたらす炎症性サイトカインと考えられている。
【0006】
[IL-18と疾病との関係]
これらのことからTh1過剰反応が原因であるインシュリン依存性糖尿病や多発性硬化症およびクロ−ン病等とIL-18との関連が注目されてきた。
【0007】
本発明者等は、IL-18の過剰供給が、下記の様々な疾患の原因となることを突き止めた。例えば、間質性肺炎や肺線維症等の肺障害(WO 001/080891),関節リウマチ,関節炎,あるいは骨粗鬆症(WO 02/66063)等の自己免疫疾患,皮膚炎,脱毛,あるいは掻痒(特開2004-340921),肺気腫,慢性気管支炎,あるいは両者の併存により、進行性の閉塞性換気障害を特徴とする慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD),肺胞蛋白症,心不全・肝不全等の循環不全に代表される循環器疾患(特願2004-69835号)等である。
【0008】
[IL-18抑制剤の探索]
そこで本発明者は、IL-18と、IL-18レセプター間の相互作用を制御することによって、過剰発現したIL-18に起因する疾病の予防又は治療に役立つのではないかとの仮説をたてた。
【0009】
[リコンビナント可溶化IL-18レセプターα,β]
従来、IL-18に関しては、人工的に作成した可溶化ヒトIL-18レセプターαとIL-18βの組合せが、IL-18によるIFN-γの産生を阻害することが報告されている。
【非特許文献1】The Combination of Soluble IL-18Rα and IL-18Rβ Chains Inhibits IL-18-Induced IFN-γ(Journal of Interferon and cytokine research 22:P.593-601,2002,Mary and Liebert,Inc.)
【0010】
しかしながら、これらの可溶化レセプターは、IL-18レセプターの細胞外ドメインを可溶化フォームと仮定した上で、それにシグナルペプチド等の配列を人為的に付加したものであり、天然型の可溶化レセプターそのものではない。また、ガン細胞株で発現しているため、その立体構造や糖鎖構造も人間の産生するものと異なる可能性がある。そのため、副作用が無いとは言えない。
【0011】
そこで本発明者は、新たな測定方法の確立をきっかけに、ヒト及びマウスにおいて、生体中に存在することが未だ確認されていなかったIL-18レセプターαタンパク質の天然型可溶化フォームの抽出に成功し、更に天然型可溶化IL-18レセプターαを有効成分として含む、例えばIL-18に起因する肺障害等を予防・治療し得る医薬組成物を開発した(PCT/JP2004/10621)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、天然型の可溶化IL-18レセプターαの実体について、更に検討を進めてきたところ、驚くべきことに、天然型の可溶化IL-18レセプターβまでもが存在していること、及び当該天然型の可溶化IL-18レセプターβが、血清等の人体中において、天然型の可溶化IL-18レセプターαと共存(天然型可溶化IL-18レセプター)していること、更にはこの天然型可溶化IL-18レセプターが、IL-18との複合体を形成していることを見出し、本発明を完成するに至ったものであって、本発明の目的とするところは、天然型の可溶化IL-18レセプターα,天然型の可溶化IL-18レセプターβ,これらの複合体等の、生体内での挙動を突き止めることによって、より副作用の少なく、しかもIL-18抑制効果に優れた新規な医薬有効成分を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、以下の発明によって達成される。
(第1の発明)
天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ,又はその1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつ天然型可溶化インターロイキン18レセプターβと同じ活性を有するタンパク質。
(第2の発明)
下記の(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種を構成成分として含むことを特徴とする、可溶化インターロイキン18レセプター。
(X1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα
(X2)X1のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつX1と同じ活性を有するタンパク質
(Y1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Y2)Y1のアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつY1と同じ活性を有するタンパク質
(第3の発明)
下記の(1)及び(2)を含むことを特徴とするタンパク質複合体。
(1)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(第4の発明)
下記の(1)乃至(3)を含むことを特徴とするタンパク質複合体。
(1)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(3)インターロイキン18結合タンパク質(IL-18BP)
(第5の発明)
下記(I)〜(IV)に記載のいずれかのタンパク質から選択される少なくとも一種以上を有効成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
(I)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(II)下記の(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種を構成成分として含むことを特徴とする、可溶化インターロイキン18レセプター
(X1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα
(X2)X1のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつX1と同じ活性を有するタンパク質
(Y1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Y2)Y1のアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつY1と同じ活性を有するタンパク質
(III)下記の(1)及び(2)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(IV)下記の(1)乃至(3)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化ヒトインターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(3)インターロイキン18結合タンパク質
(第6の発明)
下記(I)〜(IV)に記載のいずれかのタンパク質から選択される少なくとも一種以上を有効成分として含むことを特徴とする、インターロイキン18に起因する疾患の予防又は治療剤。
(I)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(II)下記の(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種を構成成分として含むことを特徴とする、可溶化インターロイキン18レセプター
(X1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα
(X2)X1のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつX1と同じ活性を有するタンパク質
(Y1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Y2)Y1のアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつY1と同じ活性を有するタンパク質
(III)下記の(1)及び(2)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(IV)下記の(1)乃至(3)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(3)インターロイキン18結合タンパク質
(第7の発明)
(A)請求項1記載のタンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一種以上を有効成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
(第8の発明)
下記の(A)及び(B)を含むことを特徴とする医薬組成物。
(A)請求項1記載のタンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一種以上
(B)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα,又はその1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつ天然型可溶化インターロイキン18レセプターαと同じ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子から選択される少なくとも一種以上
(第9の発明)
下記の(O)〜(R)に記載のタンパク質から選択される少なくとも一種以上を指標として用いることを特徴とする、疾患の診断方法。
(O)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(P)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Q)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプターと、インターロイキン18の単量体又は二量体を含む、タンパク質複合体
(R)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプターと、インターロイキン18の単量体又は二量体と、インターロイキン18結合タンパク質を含むタンパク質複合体
(第10の発明)
疾患が、リウマチ、腸炎、感染症、間質性肺炎等の肺疾患,又は自己免疫疾患であることを特徴とする、請求項9記載の疾患の診断方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可溶化IL-18レセプターβや可溶化IL-18レセプター,タンパク質複合体は、IL-18及びIL-18レセプターシグナルの作用解明に役立ち、またそれらを有効成分として含む医薬組成物は、間質性肺炎や肺線維症等の肺障害,関節リウマチ,関節炎,あるいは骨粗鬆症等の自己免疫疾患,皮膚炎,脱毛,あるいは掻痒,肺気腫,慢性気管支炎,あるいは両者の併存により、進行性の閉塞性換気障害を特徴とする慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD ),肺胞蛋白症,心不全・肝不全等の循環不全に代表される循環器疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患等の治療薬等に使用することが期待される。また、本発明の診断方法によって、リウマチ等の自己免疫疾患の診断が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[用語の定義]
尚、以下の明細書の記載において、下記の通り、略記することがある。
「ヒトIL-18レセプター」:「hIL-18R」
「ヒトIL-18レセプターα」:「hIL-18Rα」
「ヒトIL-18レセプターβ」:「hIL-18Rβ」
「可溶化(soluble)IL-18レセプター」:「sIL-18R」
「可溶化(soluble)IL-18レセプターα」:「sIL-18Rα」
「可溶化(soluble)IL-18レセプターβ」:「sIL-18Rβ」
「可溶化(soluble)ヒトIL-18レセプター」:「shIL-18R」
「可溶化(soluble)ヒトIL-18レセプターα」:「shIL-18Rα」
「可溶化(soluble)ヒトIL-18レセプターβ」:「shIL-18Rβ」
【0016】
また、本発明において、可溶化IL-18レセプター(可溶化IL-18R)と言う場合には、特に断りのない限り、可溶化IL-18Rαと可溶化IL-18Rβとを共に構成成分として含むものを意味する。具体的にはこれらが共存状態にあるものを意味する。共存状態とは、直接結合する場合のみならず、他の物質を介して結合している場合をも意味する。
【0017】
本発明において、天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ(天然型sIL-18Rβ)とは、ヒトやマウス等の哺乳動物に代表される動物の血清や組織等の中に存在するタンパク質である。
【0018】
その分子量は、例えば、ヒトの天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ(天然型shIL-18Rβ)の場合、後述する図7その他の実験結果から、10-20,50-60kDa程度と思われる。この10-20,50-60kDaと言うのは、各々サブユニットの可能性もあるが、一つのユニットが分離・精製時に切断されて分かれて検出されたものと思われる。
【0019】
本発明においては、天然型sIL-18Rβの1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつ天然型sIL-18Rβと同じ活性を有するタンパク質も利用可能である。
【0020】
本発明において、「天然型sIL-18Rβと同じ活性」とは、血清等の生体内溶液に対して溶解することが可能で、天然型sIL-18Rαとともに、sIL-18Rを形成し、かつIL-18と複合体を形成することができる能力を言う。
【0021】
本発明において、天然型可溶化インターロイキン18レセプターα(天然型sIL-18Rα)とは、ヒトやマウス等の哺乳動物に代表される動物の血清や組織等の中に存在するタンパク質である。
【0022】
その分子量は、例えば、ヒトの天然型可溶化インターロイキン18レセプターα(天然型shIL-18Rα)の場合、実験結果等から、30,50-60,80-100kDa程度と思われる。各々サブユニットの可能性もあるが、一つのユニットが分離・精製時に切断されて分かれて検出されたものと思われる。
【0023】
天然型shIL-18Rαは、IL-18の他、H44マウス抗hIL-18Rαモノクローナル抗体の様な、抗hIL-18Rαモノクローナル抗体,及び抗hIL-18Rαポリクローナル抗体との結合能を有するものである。
【0024】
また、天然型sIL-18Rαは、PCT/JP2004/10621明細書に記載の方法によって、検出可能である。
【0025】
本発明においては、天然型sIL-18Rαの1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつ天然型sIL-18Rαと同じ活性を有するタンパク質も利用可能である。
【0026】
本発明において、「天然型sIL-18Rαと同じ活性」とは、血清等の生体内溶液に対して溶解することが可能で、天然型sIL-18Rβとともに、sIL-18Rを形成し、かつIL-18と複合体を形成することができる能力を言う。
【0027】
具体的には、sIL-18Rαの活性ドメイン以外のアミノ酸配列を欠失,置換,付加等をすることが可能である。
【0028】
sIL-18Rαのアミノ酸配列は、sIL-18Rαの遺伝子配列である、GENE BANK ACCESSION# U43672のORF 1626bpにおいて、58bp-986bp(20-329の310アミノ酸)に相当する部分であると考えられる。そして、その活性ドメイン(IL-18結合部位)は、212-329番目のアミノ酸であるドメイン3と言うことが最近の研究で明らかとなってきた(The Journal of Immunology、P.6574-P.6580,2003 by The American Association of Immunologists, Inc.)従って、ドメイン3以外の箇所を欠失,置換,付加等をすることが可能である。
【0029】
本発明において、可溶化インターロイキン18レセプター(sIL-18R)とは、下記の(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種を構成成分として含むものである。
(X1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα
(X2)X1のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつX1と同じ活性を有するタンパク質
(Y1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Y2)Y1のアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつY1と同じ活性を有するタンパク質
【0030】
具体的には(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種とが、共存状態にあるものを意味する。共存状態とは、直接結合する場合のみならず、他の物質を介して結合している場合をも意味する。
【0031】
sIL-18Rは、天然にも存在するため、血清等の生体材料から抽出して用いることもできるが、上記(X1)〜(Y2)ポリペプチドまたはそのフラグメントを用意し、適当な手段によって上記(X1)〜(Y2)間を共有結合していてよいしまたは非共有結合していてよい。このような手段には、架橋試薬、ポリペプチドリンカーによる、およびジスルフィド結合によるまたはロイシンジッパーの使用によるような結合が含まれる。本発明の一つの実施態様において、受容体は、組換えDNA技術や生理食塩水,緩衝液等の入った試験管内で撹拌する,あるいは生体材料中にそれらを挿入すること等によって、人為的に製造することもできる。
【0032】
本発明において、タンパク質複合体とは、上述の本発明におけるsIL-18Rと、IL-18単量体又は二量体を含むものである。
【0033】
本発明において、タンパク質複合体としては、IL-18結合タンパク質を更に含むものもある。
【0034】
インターロイキン18結合タンパク質(IL-18BP)とは、下記の文献に記載された蛋白質及びそのサブクラス[Immunity,10,127-136(1999) ],すなわち当該文献のP.136末尾に記載されたGenBank accession number AF110798で表される遺伝子がコードするIL-18結合蛋白質またはそのサブクラスを意味する。サブクラスとしては、例えば当該文献記載のGenBank accession number AF110799,AF110800,AF110801,AF110802,AF110803,AF110460等で表される遺伝子がコードする蛋白質が挙げられる。
【0035】
このように、sIL-18Rは、IL-18に結合することによりIL-18を直接阻害するのみならず、上記のタンパク質複合体の形で細胞膜上のIL-18Rに結合することによって、他のIL-18がIL-18Rに結合することも阻害している可能性が見出された。つまり、ワンセットのsIL-18Rで、2つのIL-18を阻害しているのである。これは、IL-18阻害剤としての新しい形態を示唆するものであり、従来のIL-18阻害剤よりも、阻害効果が高いと言える。
【0036】
タンパク質複合体は、天然にも存在するため、血清等の生体材料から抽出して用いることもできるが、上述の通り、sIL-18Rの構成成分である上記(X1)〜(Y2)ポリペプチドまたはそのフラグメントを用意し、適当な手段によって上記(X1)〜(Y2)ポリペプチドに共有結合していてよいしまたは非共有結合していてよい。このような手段には、架橋試薬、ポリペプチドリンカーによる、およびジスルフィド結合によるまたはロイシンジッパーの使用によるような結合が含まれる。本発明の一つの実施態様において、受容体は、組換えDNA技術や生理食塩水,緩衝液等の入った試験管内で撹拌する,あるいは生体材料中にそれらを挿入すること等によって、人為的に製造することもできる。
【0037】
本発明において、医薬組成物とは、上記のsIL-18Rβ,sIL-18R,タンパク質複合体,それらをコードする遺伝子等を有効成分として含むものである。
【0038】
尚、本発明のsIL-18RβやsIL-18Rは、生体内で、それ自体が二量体として存在している可能性がある。従って、本発明の医薬組成物の有効成分としてsIL-18Rβ,sIL-18Rと言う際には、二量体の場合も含むものとする。その際の製造方法は、上記の人為的な製法においては、(X1)〜(Y1)を複数用意し、マルチマー受容体ポリペプチドとして用いると良い。
【0039】
遺伝子としては、DNA,RNA等のポリヌクレオチドがあり、一本鎖でも二本鎖でも良い。
【0040】
対象となる疾患としては、例えば、間質性肺炎や肺線維症等の肺障害(WO 001/080891),関節リウマチ,関節炎,あるいは骨粗鬆症等の自己免疫疾患,皮膚炎,脱毛,あるいは掻痒,肺気腫,慢性気管支炎,あるいは両者の併存により、進行性の閉塞性換気障害を特徴とする慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD),肺胞蛋白症,心不全・肝不全等の循環不全に代表される循環器疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患等、IL-18の過剰供給が原因の疾患が主として挙げられる。
【0041】
本発明の医薬組成物は、適宜、経口投与用製剤、注射剤または吸入剤等種々の製剤形態で患者に投与することができる。
【0042】
また、本発明の医薬組成物は、適宜、ステロイド剤等、他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。更に、本発明の医薬組成物の有効成分を適宜2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0043】
本発明の医薬組成物の各種製剤は、常法により製造することができる。
【0044】
例えば、経口投与のための剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤および散剤等があり、これらの製剤は、本発明の医薬組成物に用いられる有効成分の少なくとも1種または2種以上と、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、タルク等の通常の医薬品添加物とを適宜混合し、常法により製造される。
【0045】
注射剤は、常法によって製造することができ、適宜、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビット、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース等の等張化剤、亜硫酸ナトリウム、アルブミン等の安定化剤、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル等の保存剤等を製剤中に添加することができる。
【0046】
注射剤は、用時溶解用の凍結乾燥製剤とすることもできる。凍結乾燥製剤は、常法によって製造することができ、適宜、上記、等張化剤、安定化剤、保存剤等を製剤中に添加することができる。
【0047】
吸入剤は、常法によって製造することができ、本発明に用いられる医薬組成物有効成分の少なくとも1種または2種を生理食塩液に溶解または懸濁させ、適宜、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビット、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース等の等張化剤、亜硫酸ナトリウム、アルブミン等の安定化剤、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル等の保存剤等を添加して調製される。
【0048】
本発明の医薬組成物の投与量は、本発明に用いられる有効成分の種類、投与経路、患者の病態、年齢、体重などによってもそれぞれ異なるが、通常、1日当たり0.01mgから1,000mgであり、これを1度にまたは2〜3回に分けて適宜投与する。
【0049】
本発明において、自己免疫疾患の診断方法とは、下記の(O)〜(R)に記載のタンパク質から選択される少なくとも一種以上を指標として用いることを特徴とする、診断方法である。
(O)請求項2記載のsIL-18R
(P)天然型sIL-18Rβ
(Q)請求項2記載のsIL-18Rと、IL-18の単量体又は二量体を含む、タンパク質複合体
(R)請求項2記載のsIL-18Rと、IL-18の単量体又は二量体と、IL-18BPを含むタンパク質複合体
【0050】
(O)〜(R)を検出する方法としては、例えばPCT/JP2004/10621明細書に記載されている天然型sIL-18Rαを検出する方法等に代表されるように、(O)〜(R)の抗原決定基に対する抗体を用いる方法がある。例えば、H44マウス抗hIL-18Rαモノクローナル抗体の様な、抗hIL-18Rαモノクローナル抗体,及び抗hIL-18Rαポリクローナル抗体によって、(O)や(Q),(R)中の天然型sIL-18Rαに結合することによって、これらを検出することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、それに先立ち、実施例で用いた方法について説明する。
IL-18Rαを細胞膜に強発現させる場合には、下記の文献記載の方法に準じて行った。
1.Kitasato Y, Hoshino T, Okamoto M, Kato S, Koda Y, Nagata N, Kinoshita M, Koga H, Yoon DY, Asao H, Ohmoto H, Koga T, Rikimaru T, Aizawa H. Enhanced expression of interleukin-18 and its receptor in idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Cell Mol Biol 2004;31:619-625.
2.Kim SH, Reznikov LL, Stuyt RJ, Selzman CH, Fantuzzi G, Hoshino T, Young HA, Dinarello CA. Functional reconstitution and regulation of IL-18 activity by the IL-18Rβ chain. J Immunol 2001;166:148-154.
【0052】
[天然型sIL-18Rβの存在の確認と、IL-18抑制効果]
1.抗IL-18Rα抗体H44を用いたアフィニティーカラムを作製しヒト血清から可溶化IL-18受容体を分離し、一次元SDS PAGEで解析したところ。分子量約10から100Kdaの複数のバンドが見られた(図 1)。このことから可溶化IL-18受容体は複数のタンパク質とコンプレックスを作り一部は糖鎖で修飾されている可能性がある。
【0053】
2.80−100Kda、50Kda,30Kdaのところに 可溶化したIL-18Rαが存在していた(図 2-4)。これは3つの違う抗体(ラビット抗IL-18R抗体、瀬谷先生より供与;clone 70625, R&D製;H44抗体、星野作製[Am J Respir Cell Mol Biol 2004;31:619-625])で確認した。
【0054】
3.この精製した可溶化IL-18受容体はリコンビナント可溶化IL-18受容体α(R&D社製)に比べ(図 5A、◆)ヒトNK細胞株NK0のヒトIL-18による刺激によるIFN-g産生を用量依存性に抑制した(図 5B、◆)。
【0055】
[図5Aの場合]
リコンビナントヒトIL-18(MBL社製)50 ng/mLをリコンビナント可溶化IL-18受容体α(R&D社製)0.1から10 μg/mLの濃度で室温で15分混ぜた。そしてリコンビナントヒトIL-2(Roche社製)50 IU/mL及びリコンビナント可溶化IL-18受容体β(R&D社製、5 μg/mL、□)の存在下でヒトNK細胞株NK0(5x105 cells/mL)を24時間培養した。IFN-g産生をELISA kit (R&D社製)測定し、リコンビナント可溶化IL-18受容体αのIL-18の抑制効果を測定した。
【0056】
[図5Aの結果]
リコンビナント可溶化IL-18受容体αはリコンビナント可溶化IL-18受容体β(R&D社製、5 μg/mL、□)の存在下でリコンビナント可溶化IL-18受容体α単独(◆)より比較的強いIL-18の抑制効果を示した。
【0057】
[図5Bの場合]
リコンビナントヒトIL-18(MBL社製)50ng/mLを可溶化IL-18受容体αと0.003から10μg/mLの濃度で室温で15分混ぜた。そしてリコンビナントヒトIL-2(Roche社製)50IU/mL及びリコンビナント可溶化IL-18受容体β(R&D社製、5 μg/mL、□)の存在下でヒトNK細胞株NK0(5x105 cells/mL)を24時間培養した。IFN-g産生をELISA kit (R&D社製)測定し、可溶化IL-18受容体αのIL-18の抑制効果を測定した。
【0058】
[図5Bの結果]
可溶化IL-18受容体αはリコンビナント可溶化IL-18受容体α(R&D社製)より強いIL-18の抑制効果を示した(◆)。一方、可溶化IL-18受容体はリコンビナント可溶化IL-18受容体β(R&D社製、5μg/mL)の存在下でもIL-18の抑制効果に可溶化IL-18受容体単独と有意に差がなかった(図 5B, □)
【0059】
[図5Aと図5Bの比較]
具体的には可溶化IL-18受容体は10μg/mLで63%の抑制効果、1μg/mLでも約40%の抑制効果を有し、0.3 μg/mLの容量までヒトIL-18とIL-2による刺激によるNK0からのIFN-g産生抑制効果があった。一方リコンビナント可溶化IL-18受容体αは10 μg/mLで34%程度の弱い抑制効果で1 μg/mLではすでにIFN-g産生抑制効果がない。
【0060】
4.もともとリコンビナント可溶化IL-18受容体αのIL-18の抑制効果は弱いと考えられていた。報告通りにリコンビナント可溶化IL-18受容体αはリコンビナント可溶化IL-18受容体β(R&D社製、5 μg/mL)の存在下でリコンビナント可溶化IL-18受容体α単独より比較的強いIL-18の抑制効果を示した(図 5A, □)。一方、可溶化IL-18受容体はリコンビナント可溶化IL-18受容体β(R&D社製、5 μg/mL)の存在下でもIL-18の抑制効果に可溶化IL-18受容体単独と有意に差がなかった(図 5B, □)。
【0061】
これら「3.」「4.」の事実は、次の2点のことを示唆するものである。
【0062】
一つは、IL-18受容体βが可溶化し、可溶化IL-18受容体αとコンプレックスを作っているということである。それゆえ、敢えてリコンビナント可溶化IL-18受容体βを併用しなくても、IL-18の抑制効果を発揮し得たものと考えられる。
【0063】
もう一つは、天然型の可溶化IL-18Rαが、リコンビナントの可溶化IL-18Rαより抑制効果があると考えられる点である。1μg/mLの抑制効果の点で天然型が優位であることがその理由である。しかも、この検討における被験物の量は、天然型の場合には、可溶化IL-18受容体αと可溶化IL-18受容体βを含んだTotalの量であることを考えると、リコンビナントと天然型とで、同量の可溶化IL-18受容体αで比べた場合に、天然型の方が、非常に抑制効果が高いことは明らかである。
【0064】
抑制効果に差がある理由としては、リコンビナントと天然型とでは、可溶化の位置(全長IL-18受容体α鎖全長の、どこで切断されているか),立体構造,糖鎖構造等において、何らかの異なる点があるからではないかと推察される。
尚、天然型の方には、リコンビナントより副作用の心配がないという利点もある。
【0065】
5.次に、リコンビナントマウスIL-18(MBL社製)50 ng/mLを可溶化IL-18受容体αと0.003から10 μg/mLの濃度で室温で15分混ぜた。そしてマウス胸腺腫細胞株7(3)H(1x106 cells/mL)を24時間培養した。IFN-g産生をELISA kit (R&D社製)測定し、可溶化IL-18受容体αのマウスIL-18の抑制効果を測定した。同時に図5のようにNK0でも測定した(□)。
【0066】
現時点では天然型の可溶化IL-18Rαが、リコンビナントの可溶化IL-18Rαより抑制効果があるか天然型は、最初から天然型の可溶化βと対になっていたからの両方の可能性あり7(3)HはマウスIL-18に反応しIFN-g産生するマウス胸腺細胞株(米国NIAIDのW. E. Paul博士より供与)である。この7(3)HはヒトIL-18には反応しない。そこでヒトの可溶化IL-18受容体がマウスIL-18の刺激による7(3)HからのIFN-g産生を抑制するか実験した。驚いたことにヒトIL-18とIL-2による刺激によるNK0からのIFN-g産生抑制効果ほどではないが有意にマウスIL-18の刺激による7(3)HからのIFN-g産生を抑制した(図 6)。この事実はヒトの可溶化IL-18受容体はマウスIL-18と結合するだけでなくマウスIL-18R(受容体)に結合しマウスIL-18の刺激による7(3)HからのIFN-g産生を抑制すると考えられた。また、別の種(例えば豚、牛やマウス)の可溶化IL-18受容体はヒトIL-18と結合しIL-18の刺激を抑制すると考えられた。
【0067】
尚、本発明者は、PCT/JP2004/10621で下記の通り、マウスでも可溶化IL-18Rαの存在を確認している。
“[0059][可溶化IL-18Rαによる治療効果の確認](動物モデルにおける、可溶化IL-18Rαの過剰発現誘導)図2の様にVA-hCD2 vector(Zhumabekov, Journal of Immunological Methods, 185 (1995), 133-140)のSnaBIサイトにマウスIL-18RαのcDNA 1.6Kbを挿入し、KpnI/NotIで切り出しC57BL/6(B6)マウスの受精卵に常道に従い注入した。トランスジェニック(TG)マウスをNo. 17, 27, 51, 56の4ライン樹立した。この4ラインの10週齢のTGマウスとコントロールwild type(WT) B6マウス(WT#1, WT#2)から脾細胞を取り出し2x106個/mLの細胞密度で10%FCSを加えたRPMI-1640で浮遊した。抗マウスCD3抗体(1 μg/mL), ヒトIL-2 (200 U/mL), マウスIL-18 (200 ng/mL), ヒトIL-2 (200 U/mL)プラスマウスIL-18 (200 ng/mL)の存在下で18時間培養しIFN-γをELISAキット(R&D社製)で測定した。図3に示すようにWTに比べTGマウスの脾細胞は著明にヒトIL-2 (200 U/mL)プラスマウスIL-18 (200 ng/mL)に反応しIFN-γを産生した。また抗IL-18Rα抗体を用いた膜表面抗原解析でTGマウスはWTマウスに比べリンパ球上にIL-18Rαを強く発現した。可溶性IL-18Rα受容体を、我々が樹立したELISA法で測定すると、WTマウスの血清では、限界希釈法(limiting dilution method)で測定しても検出限界以下であった。一方、TGマウスの血清を限界希釈法ではx4希釈以上で測定すると、可溶性IL-18Rα受容体の検出が可能であった。つまり、可溶性 IL-18 α受容体はTGマウスの血清中に大量に存在していた。”
【0068】
また、当該可溶性IL-18Rα受容体による肺障害の治療効果についても、下記の通り確認している。
“[0062](可溶化IL-18Rαによる抗ガン剤の副作用に対する予防・治療効果の確認)6週齢の雌のTGマウス(CD2-IL-18Rα#51)及びコントロールwild type B6マウス各5匹にBLM (ブレオマイシン,bleomycin)2mgをday 1に腹腔内投与した。更にBLM 2mgをday 8に腹腔内投与した。Day28でマウスの肺を20%ホルマリンで還流し固定した。作製したパラフィンブロックはHE染色を行った。WTマウス(図5,左)に比べTGマウス(図5,右)は、BLMによる肺障害(間質性肺炎、肺線維症)を顕著に抑制した。この結果は、過剰の可溶性 IL-18 受容体は肺障害に対し治療効果を持つことを示している。”
【0069】
このことと、上記のヒト血清中に可溶化IL-18R(αとβ)の存在を考え併せると、マウスにおいても、天然型の可溶化IL-18Rαは、天然型可溶化IL-18βとともに、IL-18と複合体タンパク質を形成し、それによって肺障害を抑制していたものと思われる。
【0070】
6.Western blot解析でIL-18受容体βは可溶化し可溶化IL-18受容体αとコンプレックスを作っていることが判明した(図 7)。つまり、可溶化IL-18受容体βが天然に存在していることが証明された。
【0071】
7.Western blot解析で、可溶化IL-18受容体α と可溶化IL-18受容体βは、同時にIL-18とも結合して、タンパク質複合体を作っていることが判明した(図 8)。IL-18単体の分子量は14Kdaであるから、血清中のIL-18は2量体として、可溶化IL-18受容体α 及び可溶化IL-18受容体βとともに、タンパク質複合体を作ることで不活化されていることが示唆された。
【0072】
8.Western blot解析でIL-18BPが60kDa以上の分子量で検出された。つまり可溶化IL-18受容体α 鎖及び可溶化IL-18受容体β鎖は、IL-18だけでは無く同時にIL-18BPとタンパク質複合体を作っていることが判明した(図 9)。
【0073】
9.Biacore社によるBiacore解析による精製した可溶化IL-18受容体蛋白とビオチン化ヒトIL-18Rα鎖リコンビナント蛋白(R&D社製)の相互作用解析のグラフ(各濃度のプロットは実測値n=2と解析fittingのplotの計3本が重なっている)を示す。kinetic parametersの結果は図. 10の通り。各濃度はn=2で測定を行っている。センサグラムの再現性は非常に良好だった。アナライト(ヒトIL-18Rα鎖リコンビナント蛋白)の固定化表面に対する最大量がモノマーの場合の約2倍となっており、ヒトIL-18Rα鎖リコンビナント蛋白(R&D社製)はS-Sダイマーと一致することからビオチン化ヒトIL-18Rα鎖リコンビナント蛋白の解析データからダイマーで固定化されていると考えらた。また解離定数(KD値)は9.48 e-8つまり94.8 nMであり、ヒト血清から分離した可溶化IL-18受容体はヒトIL-18Rα鎖リコンビナント蛋白と強く結合することが判明した。一方、血清中から分離した可溶化IL-18受容体は、既にヒトIL-18と結合していることから、ヒトIL-18リコンビナント蛋白及びマウスIL-18リコンビナント蛋白とは結合しなかった。
【0074】
10.ヒトIL-18Rα鎖を強く発現するヒトNK細胞株NK0細胞(図 11)及びヒトIL-18Rα鎖cDNA遺伝子を強く発現するP815マウス細胞株(図 12)に対し可溶化IL-18受容体は細胞膜表面のヒトIL-18Rα鎖蛋白と強く結合することが判明した。
【0075】
[図11の場合]
ヒトIL-18Rα鎖を強く発現するヒトNK細胞株NK0細胞において可溶化IL-18受容体は細胞膜表面のヒトIL-18Rα鎖蛋白と強く結合することが判明した。
A: biotion標識-control mouse IgG1 2μg
B: biotion標識-抗IL-18Rα抗体H44 2μg
C: biotion標識-可溶化IL-18受容体40μg
D: 未標識可溶化IL-18受容体80μgを室温で30分間混ぜて biotion標識-可溶化IL-18受容体40μg(A−Dを別々に)4℃で30分間反応させてPBSで1回洗い、Streptavidin-PEを加え4℃で20分間反応させてflow cytometry(FACScan)
で膜表面の発現を解析した。
【0076】
[図11の結果]
A:コントロールの抗体を反応させたのに比べ
NK0細胞はほぼ100%ヒトIL-18Rα鎖を強く発現していた(B)。
このNK0細胞はほぼ100%強く可溶化IL-18受容体が結合した(C)。
過剰な未標識可溶化IL-18受容体で前処置することでほぼ完全に可溶化IL-18受容体が細胞膜表面のヒトIL-18Rα鎖蛋白との結合を抑制した(D)。
つまり、Cの反応は特異的であることが証明された。
【0077】
[図12の場合]
ヒトIL-18Rα鎖cDNA遺伝子を強く発現するP815マウス細胞株において可溶化IL-18受容体は細胞膜表面のヒトIL-18Rα鎖蛋白と強く結合することが判明した。
A: biotion標識-control mouse IgG1 2μg
B: biotion標識-抗IL-18Rα抗体H44 2μg
C: biotion標識-可溶化IL-18受容体40μg
D: 未標識可溶化IL-18受容体80μg
を室温で30分間混ぜて biotion標識-可溶化IL-18受容体40μg反応させた
(A−Dを別々に)4℃で30分間反応させてPBSで1回洗い、Streptavidin-PEを加え4℃で20分間反応させてflow cytometry(FACScan)で膜表面の発現を解析した。
【0078】
[図12の結果]
結果:A:コントロールの抗体を反応させたのに比べヒトIL-18Rα鎖cDNA遺伝子を強く発現するP815マウス細胞株はほぼ100%ヒトIL-18Rα鎖を強く発現していた(B).この細胞はほぼ100%強く可溶化IL-18受容体が結合した(C).過剰な未標識可溶化IL-18受容体で前処置することでほぼ完全に可溶化IL-18受容体が細胞膜表面のヒトIL-18Rα鎖蛋白との結合を抑制した(D).つまり、Cの反応は特異的であることが証明された。
【0079】
一方、ヒトIL-18Rα鎖cDNA遺伝子を発現させていないP815マウス細胞株に対し可溶化IL-18受容体は、細胞膜表面のヒトIL-18Rα鎖蛋白と結合しない(細胞膜表面には存在しないため)ことが判明した。
【0080】
つまり、1.膜表面に発現したIL-18受容体は生体特に血清中で可溶化され、2.この可溶化IL-18受容体はおそらく一部はIL-18と結合する。3.可溶化IL-18受容体は膜表面に発現したIL-18受容体自身に強く結合しIL-18受容体とIL-18の結合を阻害すると考えられる。
一方リコンビナントIL-18Rα鎖蛋白は膜表面に発現したIL-18受容体自身に全く結合しなかった(data not shown)。
【0081】
[sIL-18Rの製造]
Balb/c nudeマウスにプレステン0.5mLをday 1, 3, 7に腹腔内投与後、Day 8にヒトIL-18Rα鎖を強く発現するヒトNK細胞株NK0細胞を約2 x 107個を腹腔に投与した。約三週間後に腹水を回収した。抗IL-18Rα抗体H44を用いたアフィニティーカラムを作製しこの腹水から可溶化IL-18受容体を分離した。腹水1mLから可溶化IL-18受容体が約300μg回収された。ヒト血清1mLから可溶化IL-18受容体が約2-10μg回収されたのでこの方法の場合、効率よくsIL-18Rを回収することが出来た。
【0082】
実施例1
注射剤: sIL-18Rβが溶解しているPBS(1mg/ml)を濾過滅菌した後、1アンプルに5mlずつ分注することにより、sIL-18Rを含有する注射剤(5mg/アンプル)が調製される。
【0083】
実施例2
注射剤: sIL-18Rα及びsIL-18Rβを含むsIL-18Rが溶解しているPBS(1mg/ml)を濾過滅菌した後、1アンプルに5mlずつ分注することにより、sIL-18Rを含有する注射剤(5mg/アンプル)が調製される。
【0084】
実施例3
注射剤: sIL-18Rα及びsIL-18Rβ,IL-18を含むタンパク質複合体が溶解しているPBS(1mg/ml)を濾過滅菌した後、1アンプルに5mlずつ分注することにより、タンパク質複合体を含有する注射剤(5mg/アンプル)が調製される。
【0085】
実施例4
注射剤: sIL-18Rα及びsIL-18Rβ,IL-18,IL-18BPを含むタンパク質複合体が溶解しているPBS(1mg/ml)を濾過滅菌した後、1アンプルに5mlずつ分注することにより、タンパク質複合体を含有する注射剤(5mg/アンプル)が調製される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】クーマシーブルーによるsIL-18Rの染色結果を表す図である。
【図2】anti-IL-18Rαを用いた、ウェスタン・ブロッティングの結果を表す図である。
【図3】rabbit 抗-IL-18Rα モノクローナル抗体を用いた、ウェスタン・ブロッティングの結果を表す図である。
【図4】mouse抗-IL-18Rα モノクローナル抗体(H44,10μg/mL)を用いた、ウェスタン・ブロッティングの結果を表す図である。
【図5】(A)rIL-18RのIL-18抑制効果を表す図である。(B)天然型sIL-18RのIL-18抑制効果を表す図である。
【図6】天然型sIL-18RのマウスIL-18抑制効果を表す図である。
【図7】mouse抗-IL-18Rβ モノクローナル抗体を用いた、ウェスタン・ブロッティングの結果を表す図である。
【図8】mouse抗-IL-18モノクローナル抗体を用いた、ウェスタン・ブロッティングの結果を表す図である。
【図9】ヤギ抗-IL-18BP抗体を用いた、ウェスタン・ブロッティングの結果を表す図である。
【図10】Biacore解析(Biacore社による解析)による精製した可溶化IL-18受容体蛋白とビオチン化ヒトIL-18Rα鎖リコンビナント蛋白(R&D社製)の相互作用解析のグラフである。
【図11】ヒトNK細胞株NK0細胞において、flow cytometry(FACScan)で膜表面の発現を解析した図である。
【図12】ヒトIL-18Rα鎖cDNA遺伝子を強く発現するP815マウス細胞株において、flow cytometry(FACScan)で膜表面の発現を解析した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ,又はその1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつ天然型可溶化インターロイキン18レセプターβと同じ活性を有するタンパク質。
【請求項2】
下記の(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種を構成成分として含むことを特徴とする、可溶化インターロイキン18レセプター。
(X1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα
(X2)X1のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつX1と同じ活性を有するタンパク質
(Y1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Y2)Y1のアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつY1と同じ活性を有するタンパク質
【請求項3】
下記の(1)及び(2)を含むことを特徴とするタンパク質複合体。
(1)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
【請求項4】
下記の(1)乃至(3)を含むことを特徴とするタンパク質複合体。
(1)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(3)インターロイキン18結合タンパク質(IL-18BP)
【請求項5】
下記(I)〜(IV)に記載のいずれかのタンパク質から選択される少なくとも一種以上を有効成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
(I)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(II)下記の(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種を構成成分として含むことを特徴とする、可溶化インターロイキン18レセプター
(X1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα
(X2)X1のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつX1と同じ活性を有するタンパク質
(Y1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Y2)Y1のアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつY1と同じ活性を有するタンパク質
(III)下記の(1)及び(2)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(IV)下記の(1)乃至(3)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化ヒトインターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(3)インターロイキン18結合タンパク質
【請求項6】
下記(I)〜(IV)に記載のいずれかのタンパク質から選択される少なくとも一種以上を有効成分として含むことを特徴とする、インターロイキン18に起因する疾患の予防又は治療剤。
(I)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(II)下記の(X1)又は(X2)のうちの一種と、(Y1)又は(Y2)のうちの一種を構成成分として含むことを特徴とする、可溶化インターロイキン18レセプター
(X1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα
(X2)X1のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつX1と同じ活性を有するタンパク質
(Y1)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Y2)Y1のアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつY1と同じ活性を有するタンパク質
(III)下記の(1)及び(2)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(IV)下記の(1)乃至(3)を含むことを特徴とするタンパク質複合体
(1)上記(II)記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(2)インターロイキン18単量体又は二量体
(3)インターロイキン18結合タンパク質
【請求項7】
(A)請求項1記載のタンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一種以上を有効成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
下記の(A)及び(B)を含むことを特徴とする医薬組成物。
(A)請求項1記載のタンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一種以上
(B)天然型可溶化インターロイキン18レセプターα,又はその1若しくは数個のアミノ酸が欠失,置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつ天然型可溶化インターロイキン18レセプターαと同じ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子から選択される少なくとも一種以上
【請求項9】
下記の(O)〜(R)に記載のタンパク質から選択される少なくとも一種以上を指標として用いることを特徴とする、疾患の診断方法。
(O)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプター
(P)天然型可溶化インターロイキン18レセプターβ
(Q)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプターと、インターロイキン18の単量体又は二量体を含む、タンパク質複合体
(R)請求項2記載の可溶化インターロイキン18レセプターと、インターロイキン18の単量体又は二量体と、インターロイキン18結合タンパク質を含むタンパク質複合体
【請求項10】
疾患が、リウマチ、腸炎、感染症、間質性肺炎等の肺疾患,又は自己免疫疾患であることを特徴とする、請求項9記載の疾患の診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−206524(P2006−206524A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22003(P2005−22003)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【Fターム(参考)】