説明

可溶性デンプンベース熱可塑性組成物およびこのような組成物を調製する方法

本発明の主題は、(a)少なくとも45重量%の少なくとも1つの可溶性デンプン、(b)最大で55重量%の少なくとも1つの非生分解性非デンプンポリマー、および(c)活性水素を含む官能基を保有する分子と反応できる少なくとも2つの官能基を保有する結合剤を含む新規なデンプンベース組成物であり、これらの量は固形分を基準にして表わされ、(a)および(b)の合計に対するものである。本発明はまた、このようなデンプンベース組成物を調製する方法、およびこのような組成物の加熱によって調製される熱可塑性組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なデンプンベース組成物およびそれから得られる熱可塑性デンプン質組成物に関し、またこれらの組成物を調製する方法にも関する。
【0002】
「熱可塑性組成物」という表現は、本発明中で、可逆的に、熱の作用下で軟化し、冷却によって硬化する組成物を意味するものと理解される。それは少なくとも1つのガラス転移温度(Tg)を有し、その温度未満では組成物の非晶質画分は脆いガラス質状態にあり、その温度を超えると組成物が可逆的塑性変形を被るかもしれない。本発明のデンプンベース熱可塑性組成物のガラス転移温度、またはガラス転移温度の少なくとも1つは、好ましくは−50℃〜150℃である。このデンプンベース組成物は当然ながら、プラスチック加工において従来法で使用される方法(押出し、射出成形、型込め、吹込み成形、カレンダー掛けなど)によって成形されてもよい。100℃〜200℃の温度で測定されるその粘度は、一般に10〜10Pa.sである。
【0003】
好ましくは前記組成物は「熱溶融性」であり、すなわちそれは高剪断力をかけることなく、すなわち溶融材料の単純な流し塗りまたは単純なプレスによって成形できる。100℃〜200℃の温度で測定されるその粘度は、一般に10〜10Pa.sである。
【0004】
本発明の意義の範囲内で、「可溶性デンプン」という表現は、脱塩水、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、グルタル酸ジメチル、クエン酸トリエチル、二塩基エステル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイソソルビド、グリセリルトリアセテート、二酢酸イソソルビド、ジオレイン酸イソソルビド、および植物油のエチルエステルから選択される溶媒中で、20℃で少なくとも5重量%に等しい可溶性の画分を有する、あらゆるデンプン由来多糖材料を意味するものと理解される。この可溶性画分は、好ましくは20重量%を超え、特に50重量%を超える。当然ながら、可溶性デンプンは、上で示した1つ以上の溶媒に完全に可溶性であってもよい(可溶性画分=100%)。
【0005】
可溶性デンプンは、本発明に従って、固体で、好ましくは本質的に無水形態で使用され、すなわちそれは水性または有機溶媒に溶解されていない。したがって続く説明全体を通じて、用語「可溶性」と用語「溶解された」を混同しないことが重要である。
【0006】
「デンプンの可塑剤」という表現は、20〜200℃の温度での加工熱処理を通じてデンプン中に組み込まれた際に、このデンプンのガラス転移温度の低下および/または結晶化度の減少をもたらす、低分子量の、すなわち好ましくは5000未満、特に1000未満の分子量を有する好ましくは有機分子であるあらゆる分子を意味するものと理解される。一般に結晶性に劣る本発明の意義の範囲内での可溶性デンプンの場合、可塑剤の組み込みは可能な残留結晶度の消失をもたらして、完全な非晶質状態が得られる。可塑剤は、好ましくは水を含まない。
【0007】
「非生分解性非デンプン質ポリマー」という表現は、EN 13432、ASTM D6400、およびASTM 6868基準の意義の範囲内で、非生分解性またはコンポスト化不可能であると見なされる、デンプンまたはデンプン誘導体以外のあらゆる有機ポリマーを意味するものと理解される。
【0008】
この非生分解性非デンプン質ポリマーは、特に植物、動物組織または微生物から抽出される天然ポリマーや、ポリビニルアルコール、およびポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、特にポリヒドロキシ酪酸(PHB)およびポリヒドロキシ酪酸−コ−ヒドロキシ吉草酸(PHBV)などの生分解性ポリエステルを含まない。
【0009】
好ましくは非生分解性非デンプン質ポリマーは、活性水素を有する官能基、すなわちこの水素原子を保有する原子と別の反応性官能基との化学反応が起きれば置換できる少なくとも1つの水素原子を有する官能基を保有する。活性水素を有する官能基は、例えばヒドロキシル、プロトン酸、尿素、ウレタン、アミド、アミンまたはチオール官能基である。この定義はまた、本発明では、特に加水分解を通じて、このような活性水素を有する官能基を与えることができる官能基を保有する、あらゆる非生分解性非デンプン質ポリマーも包含する。特に加水分解を通じてこのような活性水素を有する官能基を与えることができる官能基は、例えばアルコキシ官能基、特にアルコキシシラン、または塩化アシル、酸無水物、エポキシドまたはエステル官能基である。
【0010】
「カップリング剤」という表現は、特にデンプン巨大分子などの活性水素を有する官能基を保有する分子と反応できる、少なくとも2つの遊離またはマスク官能基を保有する、あらゆる分子を意味すると理解される。その結果このカップリング剤は、共有結合を形成することで、可溶性デンプン巨大分子の少なくとも一部が互いに、および任意に組成物中に存在する非生分解性非デンプン質ポリマーと架橋できるようにする。組成物が活性水素を有する官能基を保有する可塑剤を含有する場合、カップリング剤は、デンプンおよび/または非生分解性非デンプン質ポリマーに付着するために、有利にはこの可塑剤と反応できる。接着剤、物理的相溶化剤またはグラフト剤は、単に弱い結合(非共有結合)を作り、または単に単一反応性官能基を保有するかのどちらかであるということによって、カップリング剤はそれらとは異なる。
【背景技術】
【0011】
温室効果および地球温暖化に起因する気候変動、化石原料コスト、特にそれにプラスチックに由来する油コストの上昇傾向、持続可能な発展やより自然でクリーンであり、より健康的でよりエネルギー効率の良い製品を求める世論動向、そして規制および課税の変更という現行の状況においては、特にプラスチック分野において適切で、同時に競争力があり、環境に対してわずかまたは皆無の悪影響を有するように最初からデザインされ、技術的に化石起源原料から調製されるポリマーと同じように高性能である、再生可能資源に由来する新規な組成物を提供することが必要である。
【0012】
デンプンは、再生可能かつ生分解性であり、現行のプラスチック原料として使用される油およびガスと比較して、経済的に有利な価格で大量に入手できるという利点を有する原料である。
【0013】
デンプンの生分解性の性質は、プラスチックの製造において、2つの主要な技術的解決法に従って既に活用されている。
【0014】
最初のデンプンベース組成物は、およそ30年前に開発された。当時デンプンは、充填材として天然顆粒形態で、ポリエチレンなどの合成ポリマーとの混合物の形態で使用された。マトリックス、または連続相を構成する合成ポリマー中への分散前に、天然デンプンは、その親水性の性質を低下させるために、好ましくは1重量%未満の水分含量に乾燥される。これと同一目的で、それはまた脂肪性物質(脂肪酸、シリコーン、シリコネート)で被覆されてもよく、またはシロキサンまたはイソシアネートにより粒子表面で変性されてもよい。
【0015】
このようにして得られた材料は、一般におよそ10重量%、非常に多くの場合20重量%の顆粒デンプンを含有していた。この値を超えると、得られる複合材の機械的特性が不完全になり過ぎ、マトリックスを形成する合成ポリマーの機械的特性と比較して低くなるためである。さらにこのようなポリエチレンベースの組成物は、単に生細分化性(biofragmentable)であって、期待されたように生分解性でないようだったので、これらの組成物に期待された人気沸騰は起きなかった。生分解性の欠如を克服するために、従来のポリエチレンを酸化分解性ポリエチレンで、またはポリヒドロキシ酪酸−コ−ヒドロキシ吉草酸(PHBV)またはポリ乳酸(PLA)などの生分解性ポリエステルで単に置き換えることによる以外は同一原理に沿って、引き続いて開発がまた行われた。ここでもまた、顆粒デンプンとの混合によって得られるこのような複合材の機械的特性は、不十分であることが判明した。必要であれば、優れた書籍「La Chimie Verte」[Green Chemistry],Paul Colonna,Editions TEC & DOC,2006年1月の「Materiaux a base d’amidons et de leurs derives」[Materials based on starches and on their derivatives]と題された、Denis Lourdin およびPaul Colonnaによる第6章、161〜166頁を参照されたい。
【0016】
引き続いて、デンプンは本質的に非晶質の熱可塑性状態で使用された。この状態は、一般に顆粒デンプンに対して15〜25%の量でデンプンに組み込まれた適切な可塑剤によって、および機械的および熱エネルギーを供給することで、デンプンを可塑化して得られる。Warner Lambertらに付与された米国特許第5095054号明細書および本出願人らに付与された欧州特許第0497706B1号明細書は、特に結晶化度が低下しまたは不在であるこの構造破壊状態、およびこのような熱可塑性デンプンを得る手段について述べている。
【0017】
しかしこのようにして得られた材料は、高温(120℃〜170℃)であっても依然として非常に高度に粘稠であり、低温、すなわちガラス転移温度未満または最高ガラス転移温度未満では、非常に壊れやすく脆すぎて非常に硬く、それほど膜を形成しないので、熱可塑性デンプンの機械的特性は、デンプンおよび可塑剤の選択、そして後者の使用レベルによってある程度まで調節できるが、それらは総体的に極めて凡庸である。
【0018】
したがってこのような熱可塑性デンプンの破断点伸びは非常に低く、ほぼ30%程度の非常に高い可塑剤含量があってさえも、常におよそ10%未満である。比較として、低密度ポリエチレンの破断点伸びは、一般に100〜1000%である。
【0019】
さらに熱可塑性デンプンの最大引張り強さは、可塑剤レベルが増大すると非常に大きく低下する。これは10〜25%の可塑剤含量では、ほぼ15〜60MPa程度の許容可能な値を有するが、30%を超えると許容できない様式で低下する。
【0020】
したがってこれらの熱可塑性デンプンは、これらの熱可塑性デンプンと、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレン/ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの油起源のポリマーや、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリブチレンサクシネートアジペート(PBS)などの生分解性ポリエステル;またはポリ乳酸(PLA)などの再生可能起源のポリエステルまたは微生物性ポリヒドロキシアルカノアート(PHA、PHB、およびPHBV);のどちらかとの物理的混合によって、または植物または動物組織から抽出される天然ポリマーとの物理的混合によって、より良い機械的特性を有する生分解性および/または水溶性調合物の開発を目指す、多数の調査研究の対象である。ここでもまた、書籍「La Chimie Verte」[Green Chemistry],Paul Colonna,Editions TEC & DOC,161〜166頁を参照されたいが、熱可塑性デンプンを含有する組成物について述べている、例えば本出願人に付与された特許欧州特許第0579546B1号明細書、欧州特許第0735104B1号明細書、およびFR2697259号明細書も参照されたい。
【0021】
顕微鏡下ではこれらの生分解性樹脂は非常に不均一であり、合成ポリマー連続相中に可塑化デンプンの大島を有するように見える。これは熱可塑性デンプンが非常に親水性であり、したがって合成ポリマーとはあまり相溶性でないという事実に起因する。この結果、例えばエチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、あるいはシクロデキストリンまたはオルガノシランなどの疎水性単位および親水性単位を交互に含む共重合体などの相溶化剤の添加があってさえも、このような混合物の機械的特性は極めて限られたままである。
【0022】
一例としてY等級の市販品MATER−BIは、その製造業者による情報によれば、27%の破断点伸びおよび26MPaの最大引張り強さを有する。結果的にこれらの複合材は、今日、限定的用途を有し、すなわち用途は本質的に、生分解性の上包み、ゴミ袋、レジ袋、および特定の硬質でかさ高い物品用の袋のセクターのみに限定される。
【0023】
熱可塑性非晶質デンプンを得るためのデンプンの半晶質天然顆粒状態の構造破壊は、辛うじて水和した媒体中で押出し加工を通じて実施できる。デンプン顆粒から溶融相を得ることは、機械的エネルギーおよび熱エネルギーの大量供給だけでなく、可塑剤の存在もまた必要とし、さもなければデンプンが炭化する危険性がある。
【0024】
このような可塑剤は、糖、ポリオールまたはその他の低分子量有機分子であってもよい。
【0025】
デンプンを可塑化させるために供給されるエネルギー量は、有利には可塑剤の量を増大させることで低下させてもよい。しかし実際には、デンプンと比較して高レベルでの可塑剤の使用は様々な技術的問題をもたらし、その中では次が挙げられる。
・製造終了時、または保存期間中の可塑化マトリックスからの可塑剤の放出。これにより、所望される程度に高い可塑剤の量を保持することが、ひいては十分に可撓性のフィルム形成材料を得ることが不可能である。
・その含水量が低下または増大した際に、大気中水分に応じて、それぞれ硬化または軟化する可塑化デンプンの機械的特性の大きな不安定性。
・例えばキシリトールの場合など、高用量で使用される可塑剤の結晶化による組成物表面の白化または不透明化。
・例えばグリセロールの場合のように、表面の粘着性または油性性質。
・可塑剤含量が高い場合にはさらに問題である、非常に不良な耐水性。水中では物理的完全性の損失が観察されるので、可塑化デンプンは製造の終わりに従来のポリマーのように水浴中に浸漬して冷却できない。したがってその用途は非常に制限される。その使用可能性を拡大するために、それを大量の、一般に60%以上のポリエステルまたはその他の別の高価なポリマーと混合することが必要である。
・場合によって熱可塑性デンプンと関連する、ポリエステル(PLA、PBAT、PCL、PET)の早発性加水分解の可能性。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第5095054号明細書
【特許文献2】欧州特許第0497706B1号明細書
【特許文献3】欧州特許第0579546B1号明細書
【特許文献4】欧州特許第0735104B1号明細書
【特許文献5】FR2697259号明細書
【特許文献6】国際公開第97/03120号パンフレット
【特許文献7】FR2640274号明細書
【特許文献8】国際公開第2004/005365号パンフレット
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】「La Chimie Verte」[Green Chemistry]、Paul Colonna、Editions TEC & DOC、2006年1月、第6章、161〜166頁
【非特許文献2】「Green Polymeric Blends and Composites from Renewable Resources」、Yuら、Macromol.Sym.2007年、249〜250頁、535〜539頁
【非特許文献3】「Initiation a la chimie et a la physico−chimie macromoleculaires」[Introduction to macromolecular chemistry and physical chemistry]、第II章、初版2000年、第13巻、41〜86頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上述の問題の効果的な解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の1つの主題は、第1に、
(a)少なくとも45重量%の少なくとも1つの可溶性デンプン、
(b)最大で55重量%の少なくとも1つの非生分解性非デンプン質ポリマー、および
(c)活性水素を有する官能基を保有する分子と反応できる少なくとも2つの官能基を保有するカップリング剤
を含み、これらの量が乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するものである、デンプンベース組成物である。
【0030】
本発明の別の主題は、上述のようなデンプンベース組成物を調製する方法である。この方法は、
(i)少なくとも1つの可溶性デンプン(a)を選択するステップと、
(ii)この可溶性デンプン(a)に、可溶性デンプン(a)が少なくとも45重量%に相当し、非生分解性非デンプン質ポリマー(b)が最大で55重量%に相当するような量で、非生分解性非デンプン質ポリマー(b)を組み込むステップと、
(iii)このようにして得られた組成物に、活性水素を有する官能基を保有する分子と反応できる少なくとも2つの官能基を保有する少なくとも1つのカップリング剤を組み込むステップと
を含み、これらの量は乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するものであり、ステップ(ii)はステップ(iii)の前、最中または後に、すなわちこれらのステップのいずれかの終わりに得られる組成物の中間貯蔵後に実施できる。
【0031】
本発明の方法は、好ましくは、ステップ(ii)で得られた組成物をカップリング剤の組み込み前に、5%未満、好ましくは1%未満、特に0.1重量%未満の残留水分含量に乾燥するステップを含む。除去する水の量次第で、この乾燥ステップは、製法過程においてバッチでまたは連続的に実施してもよい。
【0032】
この方法によって得られるデンプンベース組成物は、互いに密接混合された様々な成分、すなわちデンプン、非生分解性非デンプン質ポリマー、カップリング剤、および任意に可塑剤を含む。これらの組成物中では、カップリング剤は原則として、活性水素を有する官能基を保有するその他の成分とは未だ反応していない。
【0033】
次にこれらのデンプンベース組成物を使用して、その中でカップリング剤の少なくとも一部分が、デンプンおよび/または非生分解性非デンプン質ポリマー、および任意に可塑剤と反応している組成物を調製する。この様々な成分のカップリングが、本発明の熱可塑性デンプン質組成物に、引き続いて明確に述べる有利な特性を与える。
【0034】
本出願人は、ここで本発明の(カップリング剤反応前後の)2つのタイプの組成物は、デンプンを含み、熱可塑性性質を有するが、カップリング剤反応前の組成物は、下で規則正しく「デンプンベース組成物」と称されるのに対し、加熱によって得られるカップリング剤、デンプンおよび/または非生分解性非デンプン質ポリマー、および任意に可塑剤を含む組成物は、「熱可塑性組成物」または「熱可塑性デンプン質組成物」と称されることを強調したい。
【0035】
したがって本発明の別の主題は、カップリング剤を可溶性デンプン(a)および/または非生分解性非デンプン質ポリマー(b)と反応させるのに十分な時間にわたり十分な温度で、上で定義されるデンプンベース組成物を加熱するステップを含む、このような「熱可塑性デンプン質組成物」を調製する方法、およびこのような方法によって得られる熱可塑性デンプン質組成物である。
【0036】
上述の2タイプの組成物(カップリング剤反応前後の)は、「固体分散」型構造を有する。換言すれば、本発明の組成物はそれらの高デンプン含量にもかかわらず、このデンプンを連続のポリマーマトリックス内に分散されたドメインの形態で含む。この分散型構造は、特に、デンプンおよび非デンプン質ポリマーが完全に混和性でありまたは互いに相溶する構造、または組成物がデンプンとポリマーの2つの相互連続網状組織を含有する構造とは区別されるべきである。本発明の目的は、実際には生分解性材料を調製することではなく、優れた流動学的および機械的特性を有する高デンプン含量のバイオ起源プラスチックを調製することである。
【0037】
本出願人が知る限りでは、このような可溶性デンプンは、それ自体としては熱可塑性組成物を開発するための顕著な研究の対象でなく、または極めて少数である。これは、その機械的特性およびその耐水性が必然的に特に凡庸であるという、好ましくない偏見が広がっているためである。
【0038】
好ましくはデンプンベース組成物は、少なくとも49重量%の少なくとも1つの可溶性デンプン(a)、および最大で51重量%の少なくとも1つの非生分解性非デンプン質ポリマー(b)を含む。
【0039】
可溶性デンプン(a)の量は乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するものであり、有利には51重量%〜99.8重量%、好ましくは55重量%〜99.5重量%、特に60重量%〜99重量%、理想的にはさらにより大きい量であり、70重量%にすら達する可能性もある。
【0040】
下で詳細に説明する充填材およびその他の添加剤は、本発明のデンプンベース組成物に組み込まれてもよい。これらの追加的成分の比率は極めて高くあることができるが、乾燥物質で表されるデンプンベース組成物の可溶性デンプン(a)および非生分解性非デンプン質ポリマー(b)の合計の総量は、その乾燥物質の少なくとも25%に等しく、好ましくは少なくとも30%に等しく、より好ましくは少なくとも40重量%に等しい。
【0041】
非生分解性非デンプン質ポリマー(b)の総量は、好ましくは0.1%〜49%、特に0.2%〜45%、なおもより好ましくは1%〜40%であり、これらの量は乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するものである。
【0042】
多数の研究後に本出願人は、意外にもカップリング剤の存在が、有利には熱可塑性組成物特性を改善し、さらに予期に反して、カップリング剤使用により、得られた最終熱可塑性組成物が、本発明の意義の範囲内で十分な可撓性および真の熱可塑性を保ちながら、非常に良好な水および蒸気抵抗性を有したことを観察したことに留意されたい。
【0043】
カップリング剤の量は、特に使用される可溶性デンプンのタイプに左右される。乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するものであるこの量は、好ましくは0.1重量%〜15重量%、好ましくは0.1重量%〜12重量%、なおもより好ましくは0.2重量%〜9重量%、特に0.5重量%〜5重量%である。カップリング剤のこの量は、例えば、0.5重量%〜3重量%である。
【0044】
カップリング剤の分子量は、好ましくは5000未満および特に1000未満である。実際、低分子量のカップリング剤は、可塑剤により可塑化されたデンプン組成物中へのその迅速で容易な組み込みに有利である。好ましくはカップリング剤は、50〜500、特に90〜300の分子量を有する。
【0045】
予期に反して、非常に少量のカップリング剤によって、本発明に従って得られる最終熱可塑性デンプン質組成物の水および蒸気への感受性を相当に低下できるようになり、特にこの組成物を製造の終わりに水中浸漬によって迅速に冷却できるようになり、これは可溶性デンプン分子間、およびこれらと非デンプン質ポリマー間に結合を形成できるカップリング剤の使用なしには、不可能である。
【0046】
カップリング剤は、例えばイソシアネート、カルバモイルカプロラクタム、エポキシド、ハロゲン、プロトン酸、酸無水物、ハロゲン化アシル、酸塩化物、トリメタホスフェート、およびアルコキシシラン官能基から選択される、少なくとも2つの同一であるかまたは異なる遊離またはマスク官能基を保有する化合物から選択されてもよい。それは有利には次の化合物であってもよい。
−ジイソシアネートおよびポリイソシアネート、好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびリジンジイソシアネート(LDI)、
−ジカルバモイルカプロラクタム、好ましくは1,1’−カルボニルビスカプロラクタム、
−ジエポキシド、
−エポキシド官能基およびハロゲン官能基、好ましくはエピクロロヒドリンを含む化合物(=ハロヒドリン)、
−有機二酸、好ましくはコハク酸、アジピン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸および対応する無水物、
−酸塩化物、好ましくはオキシ塩化リン、
−トリメタホスフェート、好ましくはナトリウムトリメタホスフェート、
−アルコキシシラン、好ましくはテトラエトキシシラン、
およびこれらの化合物の任意の混合物。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の好ましい一実施態様では、カップリング剤はジイソシアネート、特にメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、および4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)である。
【0048】
デンプンおよび非デンプン質ポリマーの存在下でのジイソシアネートの使用については、確かに既に述べられているが、条件および目的が本発明のものとは非常に異なる。非デンプン質ポリマーは一般に生分解性ポリマーであり、それは高デンプン含量で本発明のものと同一性能を有する熱可塑性組成物を得ることを可能にしなかった。
【0049】
国際出願の国際公開第97/03120号パンフレットは、ジイソシアネートを介した生分解性ポリエステル(ポリ乳酸およびポリカプロラクトン)のグラフトによる、デンプン誘導体の調製について述べている。得られた生分解性組成物は完全に単相組成物であり、デンプンはグラフト化された生分解性ポリエステルに完全に相溶する。
【0050】
「Green Polymeric Blends and Composites from Renewable Resources」と題されたYuらによる論文、Macromol.Sym.2007年、249〜250頁、535〜539頁は、デンプンとの混合物または生分解性ポリエステルとの混合物のどちらかとして導入される、ゼラチン化デンプンと、メチレンジイソシアネートを含有する生分解性ポリエステル(PLA、PCL、およびPBSA)との混合物の押出しによる生分解性材料の調製を開示する。組成物のデンプン比率は、本発明の組成物よりも顕著に低い。
【0051】
特許出願FR2640274号明細書は、ポリビニルアルコールとデンプンのフィルムの調製について述べている。フィルムの調製中に、デンプンのおよびPVAの水酸基と反応できる2つの官能基を含む架橋剤が、組成物に添加されてもよい。しかし生分解性ポリマーPVAは、本発明の流動学的特性や水に対する高安定性を有する材料を得られるようにはしない。
【0052】
国際出願の国際公開第2004/005365号パンフレットは、芳香族ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート、2000未満の分子量を有する炭水化物、および発泡剤を含有する組成物を反応させて得られる、硬質ポリイソシアヌレートフォームについて述べている。可溶性デンプンを使用した唯一の応用例は、その中でマルトデキストリン(Maltrin M150)がわずか数%の量で使用される実施例11である。
【0053】
上の文献のいずれも、かなりの割合の可溶性デンプンと非生分解性非デンプン質ポリマーと含む組成物中に、反応性で少なくとも二官能性のカップリング剤を含み、本発明に匹敵する流動学的および機械的特性、さらには耐水性を有する、本発明のものと同様の熱可塑性組成物について述べておらず、提案してもいない。
【0054】
本発明に従った可溶性デンプンは、物理的、化学的および/または酵素的性質の可溶化処理によって、デンプンから、特に顆粒デンプンから誘導される多糖類材料である。天然状態では、すなわち天然で高等植物の貯蔵組織および器管内に存在する状態では、デンプンはその半晶質の顆粒構造のために、実質的に水および有機溶媒に溶けない形態である。実際、脱塩水または有機溶媒中のその可溶性物質含量は、常に5%をかなり下回る。デンプン顆粒内の半晶質の状態は本質的にアミロペクチンに起因し、本質的にデンプンの植物起源に応じて結晶化度は一般に15〜45%で変動する。偏光の下に置かれた未変性顆粒デンプンは、顕微鏡下で、結晶性顆粒状態に典型的な「マルタ十字」として知られている特徴的な黒い十字を有する。顆粒デンプンのより詳細な説明については、必要であれば、著作物「Initiation a la chimie et a la physico−chimie macromoleculaires」[Introduction to macromolecular chemistry and physical chemistry]のS.Perezによる「Structure et morphologie du grain d’amidon」[Structure and morphology of the starch grain]と題された第II章、初版2000年、第13巻、41〜86頁、Groupe Francais d’Etudes et d’Application des Polymeres[French Group of Polymer Studies and Applications]を参照されたい。
【0055】
デンプンの可溶化処理は、通常、アミロペクチンに起因する結晶化度の顕著な低下を伴う。したがって可溶性デンプンは本発明の意義の範囲内で顆粒形態であってもよいが、顆粒は偏光下で目に見えるマルタ十字を有さない。したがっていずれの場合も、可溶性デンプンのアミロペクチンの結晶化度は常に15%未満であり、好ましくは0%近傍である。
【0056】
さらにこの可溶性デンプンは、一般には重量平均分子量500〜10ダルトン、好ましくは800〜500000ダルトン、特に2000〜500000ダルトンを有する。
【0057】
本発明に従った可溶性デンプンは、あらゆる植物起源に由来してもよい。それは小麦、トウモロコシ、大麦、ライ小麦、ソルガムまたは米などの穀物用植物、ジャガイモまたはキャッサバなどの塊茎、またはエンドウマメまたはダイズなどのマメ科植物の顆粒状天然デンプン、およびこのようなデンプンの混合物を物理的、化学的または酵素的に処理して得られるデンプンであってもよい。
【0058】
1つの好ましい変形によれば、この可溶性デンプンは、酸、酸化または酵素的加水分解、酸化、化学変性、特にエステル化および/またはエーテル化、アセチル化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化、架橋、リン酸化またはスクシニル化、または低温の水媒体中での処理(アニーリング処理)を受けたデンプンから、またはこのようなデンプンの混合物から得られる。
【0059】
これは、特に流動化デンプン、酸化デンプン、物理化学的経路によって変性されたデンプン、白色デキストリン、およびそれらの混合物から選択される顆粒デンプンから得られる可溶性デンプンであってもよい。
【0060】
それは、上に列挙した処理の組み合わせによって変性されたデンプンから、またはこれらの天然デンプン、加水分解によって変性されたデンプン、酸化によって変性されたデンプン、および物理化学的経路によって変性されたデンプンのあらゆる混合物から最終的に得られてもよい。好ましくは、可溶性デンプンは、天然または変性された小麦またはエンドウマメデンプンの誘導体である。
【0061】
本発明に従った可溶性デンプンは、ドラム上の予備ゼラチン化、噴霧乾燥、熱水調理、または化学官能基付与処理の適用によって可溶性にしてもよい。
【0062】
水または有機溶媒可溶性のこのデンプンは、好ましくは予備ゼラチン化デンプン、通常、黄色デキストリンとしても知られている高度転化デキストリン、マルトデキストリン、高度官能基付与デンプン、またはこれらのデンプンの混合物であってもよい。
【0063】
予備ゼラチン化デンプンは、天然デンプンまたは変性デンプンのゼラチン化のための熱水処理によって、特に蒸気調理、ジェットクッカー調理、ドラム上の調理、混練機−押し出し機システム内での調理によって得てもよく、次に例えばオーブン内で、流動床上の熱風によって、回転ドラム上で、噴霧乾燥によって、押出しによって、または凍結乾燥法によって乾燥させる。このようなデンプンは、通常20℃において脱塩水中で5%を超え、より一般的には10〜100%の溶解度を有する。一例として本出願人により製造され、商標PREGEFLO(登録商標)の下に販売される、10%未満および一般に4〜8%の含水量を有する製品が挙げられる。
【0064】
デキストリンは、辛うじて水和した酸性媒体中でのデキストリン化によって、天然デンプンまたは変性デンプンから調製されもよい。それらは特に、可溶性白色デキストリンまたは黄色デキストリンであってもよい。一例として、本出願人により製造され販売される製品STABILYS(登録商標)A053またはTACKIDEX(登録商標)C072が挙げられる。このようなデキストリンは、20℃の脱塩水中で通常10〜95%の溶解度を有する。
【0065】
マルトデキストリンは、水媒体中におけるデンプンの酸、酸化または酵素的加水分解によって得られてもよい。それらは特に0.5〜40、好ましくは0.5〜20、なおもより好ましくは2〜19のデキストロース当量を有してもよい。このようなマルトデキストリンは、例えば本出願人により商品名GLUCIDEX(登録商標)の下に製造販売される。それらは、20℃の脱塩水中で一般に90%を超え、または100%に近くさえある溶解度を有する。
【0066】
高度官能基付与デンプンは、天然または変性デンプンから得られてもよい。高度官能基付与は、上に定義された意義の範囲内で可溶性にするのに十分に高いレベルのエステル化またはエーテル化によって実施してもよい。このような官能基付与デンプンは、20℃で脱塩水中において、または例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、グルタル酸ジメチル、クエン酸トリエチル、二塩基エステル(DBE)、ジメチルイソソルビド、グリセロールトリアセテートまたは二酢酸イソソルビド、ジオレイン酸イソソルビド、および植物油メチルエステルなどの有機溶媒中において、5%を超え、好ましくは10%を超え、なおもより好ましくは50%を超える溶解度を有し、理想的には完全に可溶性である。
【0067】
高度官能基付与は、特に無水酢酸および酢酸溶剤相中でのアセチル化;例えば酸無水物、混合無水物、脂肪酸塩化物、カプロラクトンまたはラクチドのオリゴマーの使用によるグラフト;接着相中でのヒドロキシプロピル化、乾燥相または接着相中でのカチオン化、乾燥相または接着相中でのアニオン化;リン酸化またはスクシニル化によって得られてもよい。これらの高度官能基付与デンプンは水溶性であってもよく、したがって0.1〜3、なおもより好ましくは0.25〜3の置換度を有する。
【0068】
デンプンの、デキストリンのまたはマルトデキストリンの酢酸エステルなどの有機可溶性高度官能基付与デンプンの場合、置換度は通常より高く、0.1を超え、好ましくは0.2〜3、なおもより好ましくは0.80〜2.80、理想的には1.5〜2.7である。
【0069】
好ましくはデンプンの変性または官能基付与のための反応物質は、再生可能起源である。
【0070】
好ましくは可溶性デンプンは、10%未満、特に8%未満、なおもより好ましくは5%未満、理想的には2%未満、可能ならば0.5%未満、または0.2%未満でさえある低含水量を有する。
【0071】
有利な1つの変形によれば、可溶性デンプンは、低い還元糖含量、すなわち0.5未満、好ましくは0.2未満のデキストロース当量(DE)を有する。この低い還元糖含量は、可溶性デンプンの還元によって、例えば接触水素付加によって、または水素化ホウ素ナトリウムでの処理によって、既知の様式で得られてもよい。このような水素化または還元可溶性デンプンは、有利にはより良好な熱安定性を有する。
【0072】
本発明のデンプンベース組成物の1つの変形によれば、可溶性デンプン(a)は、天然デンプン、流動化デンプン、酸化デンプン、化学変性を受けたデンプン、白色デキストリン、およびこれらのデンプンの混合物から選択される顆粒デンプンと、この顆粒デンプンの可塑剤との熱機械的混合によって得られる、デンプンおよびその可塑剤からなる、可塑化デンプン質組成物によって部分的に置換される。
【0073】
可溶性デンプンそれ自体が、可塑剤によって可塑化されてもよい。したがってデンプンベース組成物は、可溶性および不溶性のデンプンとその可塑剤との任意の混合物であってもよい。
【0074】
可塑剤は、好ましくはグリセロール、ポリグリセロール、イソソルビド、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、水素化グルコースシロップなどのジオールとトリオールとポリオール;乳酸ナトリウムなどの有機酸塩;酪酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸またはグルタル酸などの有機酸のメチル、エチルまたは脂肪酸エステル;エタノール、ジエチレングリコール、グリセロールまたはソルビトールなどのモノアルコール、ジオール、トリオールまたはポリオールの酢酸または脂肪酸エステル;およびこれらの生成物の混合物から選択される。
【0075】
可溶性デンプンが有機可溶性の高度官能基付与デンプンである場合、可塑剤は好ましくは、酪酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸またはグルタル酸などの有機酸のメチル、エチルまたは脂肪酸エステル;またはエタノール、ジエチレングリコール、グリセロールまたはソルビトールなどのモノアルコール、ジオール、トリオールまたはポリオールの酢酸または脂肪酸エステルから選択される。一例としてはグリセロールジアセテート(ジアセチン)、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、イソソルビドジアセテート、ジオクタン酸イソソルビド、ジオレイン酸イソソルビド、およびDBEが挙げられる。
【0076】
可塑剤は、有利には5000未満、好ましくは1000未満、特に400未満の分子量を有する。可塑剤は好ましくは18を超える分子量を有し、換言すればそれは好ましくは水を含まない。
【0077】
可塑剤中は、好ましくは1/100〜150/100、好ましくは5/100〜120/100、なおもより好ましくは10/100〜60/100の可塑剤と可溶性デンプンとの乾燥ベース重量比で、デンプンに組み込まれる。
【0078】
本発明の文脈で使用される可塑剤の量は、特に流動化可溶性デンプン、デキストリンまたはマルトデキストリンの使用時には、ゼロまたは低量であってもよい。
【0079】
非生分解性非デンプン質ポリマーはあらゆる性質であってもよく、ポリマー配合物であってもよい。
【0080】
それは有利には活性水素を有する官能基を保有する、および/または特に加水分解を通じて活性水素を有する官能基を与える官能基を保有する、官能性ポリマーである。
【0081】
それは化石起源のモノマーから得られる合成ポリマーであってもよいが、また好ましくは生物学的起源モノマー(バイオ起源モノマー)である。これらの合成ポリマーは、好ましくはポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、フルオロ、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルホン、シリコーン、およびエポキシタイプである。
【0082】
この非生分解性非デンプン質ポリマーは、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、官能基付与ポリオレフィン、官能基付与スチレン、官能基付与ビニル、官能基付与フルオロ、官能基付与ポリスルホン、官能基付与ポリフェニレンエーテル、官能基付与ポリフェニレンスルフィド、官能基付与シリコーン、および官能基付与ポリエーテルタイプの合成ポリマーから選択されてもよい。
【0083】
一例として、PET、ポリアミドPA−6、PA−6,6、PA−6,10、PA−6,12、PA−11、およびPA−12、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、エチレン/酢酸ビニル(EVA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリオキシメチレン(POM)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート共重合体(ASA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、例えばシラン、アクリルまたは無水マレイン酸単位によって官能基付与されたポリエチレンまたはポリプロピレン、および例えば無水マレイン酸単位で官能基付与されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、およびこれらのポリマーの混合物が挙げられる。
【0084】
好ましくは官能基付与された非生分解性非デンプン質ポリマーは、有利にはバイオ起源モノマー、すなわち植物、微生物またはガスなどの短期再生可能天然資源に由来する、特に糖、グリセロール、油、または単官能性、二官能性または多官能性であるアルコールまたは酸などのそれらの誘導体などからのモノマーを使用して、部分的にまたは完全に合成されまたは官能基付与されたポリマーである。
【0085】
それは特にバイオ−エタノール由来ポリエチレン;バイオ−プロパンジオール由来ポリプロピレン;バイオ起源乳酸またはコハク酸ベースの非生分解性ポリエステル;バイオ起源ブタンジオール、イソソルビドまたはコハク酸ベースの非生分解性ポリエステル;バイオ起源1,3−プロパンジオールベースのSORONA(登録商標)タイプのポリエステル;イソソルビドを含有するポリカーボネート;バイオ−エチレングリコールベースのポリエチレングリコール;ヒマシ油または植物ポリオールベースのポリアミド;および植物または動物脂肪性物質、グリセロール、イソソルビド、ソルビトールまたはショ糖に由来するジオールまたは二酸ベースのポリウレタンであってもよい。
【0086】
非生分解性非デンプン質ポリマーはまた、植物、藻類、微生物または動物組織からの抽出によって直接得られ、それらの生分解性をなくするために変性または官能基付与された天然起源ポリマーから選択されてもよい。これらは、特にタンパク質、セルロースまたはリグノセルロースポリマー、またはキトサンおよび天然ゴムタイプのポリマーであってもよい。
【0087】
このような変性または官能基付与された非生分解性非デンプン質ポリマーは、穀物粉;変性タンパク質;特にカルボキシメチル化、エトキシ化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化、アセチル化またはアルキル化によって変性されたセルロース;ヘミセルロース;リグニンおよび変性グアー;キチンおよびキトサン;天然ゴム、ロジン、シェラック、およびテルペン樹脂などの天然樹脂およびガム;アルギネートおよびカラゲナンなどの藻類から抽出される多糖類;変性キサンタンまたは変性PHAなどの細菌起源の多糖類;亜麻、麻、サイザルアサ、コイアまたは茅繊維などのリグノセルロース繊維から選択されてもよい。
【0088】
好ましくは非生分解性非デンプン質ポリマーは、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、シラン、アクリルまたは無水マレイン酸単位で官能基付与されたポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、無水マレイン酸単位で官能基付与されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、バイオ起源モノマーから得られる合成ポリマー、および天然資源(植物、動物組織および微生物からの分泌物または抽出物)から抽出される変性または官能基付与ポリマー、およびそれらの混合物から選択される。
【0089】
本発明で使用できる特に好ましい非生分解性非デンプン質ポリマーの例としては、好ましくは官能基付与されたポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、トリブロックスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、および非晶質ポリエチレンテレフタレート(PETG)が挙げられる。
【0090】
有利には非生分解性非デンプン質ポリマーは、8500〜10000000ダルトン、特に15000〜1000000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0091】
本発明に従ったデンプンベース組成物はまた、様々なその他の追加的生成物を含んでいてもよい。これらは、その物理化学的特性、特にその加工挙動およびその耐久性、またはその機械的、熱的、伝導性、粘着性または官能的特性の改善を目指した生成物であってもよい。
【0092】
追加的生成物は、特に滑石などの成核剤からのミネラル、塩、および有機物質;界面活性剤などの相溶化剤;ケイ酸カルシウムなどの衝撃強度またはすりきず抵抗性を改善する作用物質;ケイ酸マグネシウムなどの収縮制御剤;水、酸、触媒、金属、酸素、赤外線放射線またはUV放射線を捕捉または不活性化する作用物質;油および脂肪などの疎水性剤;ペンタエリトリトールなどの吸湿性剤;ハロゲン化誘導体などの防炎剤および難燃剤、防煙剤;粘土、カーボンブラック、滑石、植物繊維、ガラス繊維、ポリアクリロニトリルまたはKevlarなどの無機または有機強化充填材から選択される、機械的または熱特性を改善または調整する作用物質であってもよい。
【0093】
追加的生成物はまた、特にミネラル、塩および有機物質から、特に滑石などの成核剤から選択される、電気または熱に関して伝導/導電性または絶縁/断熱性を改善または調節し、例えば空気、水、ガス、溶剤、脂肪性物質、ガソリン、芳香および香料に対する不透過性を改善または調節する作用物質;界面活性剤などの相溶化剤;水、酸、触媒、金属、酸素、または赤外線放射線を捕捉または不活性化する作用物質;油および脂肪などの疎水性剤;ビーディング剤;ペンタエリトリトールなどの吸湿性剤;金属粉末、黒鉛および塩などの熱を伝導または散逸する作用物質;および粘土およびカーボンブラックなどのミクロメトリック強化充填材であってもよい。
【0094】
追加的生成物はまた、特に以下の官能特性を改善する作用物質であってもよい。
−臭気特性(香料または臭気マスキング剤)、
−光学的特性(光沢剤、二酸化チタンなどの白化剤、染料、顔料、促染剤、乳白剤、炭酸カルシウムなどの艶消し剤、感温変色剤、リン光および蛍光剤、鍍金または大理石模様付け剤、およびくもり止め剤)、
−音響特性(硫酸バリウムおよび重晶石)、および
−触覚特性(脂肪性物質)。
【0095】
追加的生成物はまた、特に松脂、ロジン、エチレン/ビニルアルコール共重合体、脂肪アミン、潤滑剤、型出し剤、帯電防止剤、およびアンチブロッキング剤などの接着剤特性、特に紙または木材などのセルロース材料、アルミニウムおよび鋼などの金属材料、ガラスまたはセラミック材料、テキスタイル材料、および無機材料にする接着を改善または調節する作用物質であってもよい。
【0096】
最後に、追加的生成物は、特に油および脂肪などの疎水性剤と、抗腐蝕剤と、Ag、Cu、およびZnなどの抗菌剤と、オキソ触媒などの分解触媒と、アミラーゼなどの酵素とから選択される、材料の耐久性を改善する作用物質、またはその(生)分解性を調節する作用物質であってもよい。
【0097】
熱可塑性組成物中へのカップリング剤の組み込み、およびデンプンおよび/または官能性ポリマーとの反応は、好ましくは温度60〜200℃、なおもより好ましくは100〜160℃での高温混練によって実施される。
【0098】
好ましくは可溶性デンプンと任意の可塑剤との熱機械的混合は、好ましくは例えば生地混合/混練によってバッチ様式で、または例えば押出しによって連続的に、60〜200℃、より好ましくは100〜160℃の温度において、高温で実施される。この混合の持続時間は、使用する混合法に応じて数秒間から数時間の範囲に及んでもよい。
【0099】
同様に、ステップ(ii)またはステップ(iii)における非デンプン質ポリマーまたはカップリング剤の組成物への組み込みは、熱機械的混合によって、バッチ様式または連続的におよび特にインラインで反応性押出しによって実施されてもよい。この場合、混合時間は数秒間から数分間のように短くてもよい。
【0100】
先に説明したように、本発明は加熱による反応前に方法に従って得ることができるデンプンベース組成物と、加熱による反応後に得ることができる熱可塑性組成物の双方を目的とする。
【0101】
当然ながら、本発明の熱可塑性組成物の最も有利な特性は、カップリング剤とデンプンおよび/または非デンプン質ポリマーとを反応させるのに十分な温度での加熱後に得られる、組成物の特性である。
【0102】
本出願人は本発明に従った熱可塑性デンプン質組成物が、水に対して先行技術の可塑化デンプンよりもさらに低い感受性を有することを観察した。水に対して非常に感応性である後者は、必然的に空気中で冷却されなくてはならず、それは水中での冷却よりもはるかにより長い時間を要する。さらにこの水安定性の特徴は、本発明に従った熱可塑性デンプン質組成物に多数の新しい潜在的使用可能性を開く。
【0103】
本発明に従った組成物は上で特定した意義の範囲内で熱可塑性であり、したがって有利には、PHYSICA MCR 501タイプのレオメータまたは同等物上での測定で、温度100〜および200℃で10〜10Pa.sの複素粘性率を有する。射出成形用途では、例えばこれらの温度におけるその粘度はかなり低くあってもよく、組成物は好ましくは上で特定した意義の範囲内で熱溶融性である。
【0104】
本発明に従ったこれらの熱可塑性組成物はあまり水溶性でなく、または好ましくは水不溶性で水和が困難であり、水への浸漬後に良好な物理的完全性を保つ利点を有する。20℃の水中で24時間後のそれらの不溶性物質含量は、好ましくは72%を超え、特に80%を超え、なおもより好ましくは90%を超える。非常に有利には、それは92%を超え、特に95%を超えてもよい。理想的にはこの不溶性物質含量は、少なくとも98%に等しく、特に100%に近くてもよい。
【0105】
さらに本発明に従った熱可塑性組成物の膨潤度は、20℃の水中で24時間の浸漬後に、好ましくは20%未満、特に12%未満、なおもより好ましくは6%未満である。非常に有利には、それは5%未満、特に3%未満であってもよい。理想的には、この膨潤度は最大で2%に等しく、および特に0%に近くてもよい。
【0106】
熱可塑性デンプン含量が高い先行技術の組成物とは異なり、本発明に従った熱可塑性組成物は、有利には、脆性材料になく、延性材料に特徴的な応力歪曲線を有する。本発明の組成物について測定される破断点伸びは、40%を超え、好ましくは80%を超え、なおもより好ましくは100%を超える。この破断点伸びは、有利には少なくとも95%に等しく、特に少なくとも120%に等しくてもよい。それは180%にさえ達しまたはそれを上回り、または250%でさえあってもよい。一般にこれは適度に500%未満である。
【0107】
本発明の組成物の最大引張り強さは、一般に4MPaを超え、好ましくは6MPaを超え、なおもより好ましくは10MPaを超える。それは15MPaにさえ達しまたはそれを上回り、または20MPaでさえあってもよい。一般にこれは適度に80MPa未満である。
【0108】
本発明の熱可塑性組成物はまた、本質的に再生可能な原料(可溶性デンプン)からなり、調合物の調節後に、多様なプラスチック加工用途またはその他の分野で有用な以下の特性を示す利点も有する。
−従来法で標準的合成ポリマーのために使用される既存の産業設備による具現を可能にする、一般的なポリマーについて知られている標準値範囲(−50℃〜150℃のTg)内の適切な熱可塑性、溶融粘度、およびガラス転移温度、
−市販されるまたは開発中の化石起源または再生可能起源の多種多様なポリマーとの十分な混和性、
−使用条件で満足のいく物理化学的安定性、
−水および蒸気に対する低感受性、
−先行技術の熱可塑性デンプン組成物と比較して、非常に顕著に改善された機械的性能(可撓性、破断点伸び、最大引張り強さ)、
−水、蒸気、酸素、二酸化炭素、UV放射線、脂肪性物質、芳香、ガソリン、燃料に対する良好なバリア効果、
−用途に応じて調節できる不透明性、半透明性または透明性、
−特に水性インクおよび塗料による良好な印刷適性および塗装可能性、
−制御可能な収縮性、
−十分な時間にわたる安定性、および
−調節可能なリサイクル可能性。
【0109】
かなり著しいことに、本発明のデンプンベース熱可塑性組成物は特に、次を同時に有してもよい。
−少なくとも98%に等しい不溶性物質含量、
−少なくとも100%に等しく、好ましくは少なくとも200%に等しい破断点伸び、および
−10MPaを超える最大引張り強さ。
【0110】
本発明に従った熱可塑性デンプン質組成物はそのまま、または生分解性または非生分解性の合成ポリマー、人工ポリマーまたは天然起源ポリマーとの配合物として使用してもよい。
【0111】
本発明に従った組成物は、好ましくはEN 13432、ASTM D6400、およびASTM 6868基準の意義の範囲内で生分解性でもコンポスト化可能でもなく、例えば高度に官能基付与、架橋またはエーテル化された既知の合成ポリマーまたはデンプンまたは抽出ポリマーを含む。材料として予期される用途に適するように、そして寿命の終わりに想定される再利用法のために、本発明に従った組成物の有効寿命および安定性、特にその水親和性を調節することが可能である。
【0112】
本発明に従った組成物は、通常、組成物の総炭素含量に対して少なくとも33%、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも60%、なおもより好ましくは少なくとも70%、またはなおも80%を超える、ASTM D6852基準の意義の範囲内で再生可能起源の炭素を含有する。この再生可能起源炭素が、本質的に、本発明に従った組成物中に不可避的に存在するデンプンを構成するものであるが、有利にはまた、組成物構成物の選択を適切に選択することによって、例えばグリセロールまたはソルビトールの場合のように、デンプンの可塑剤中に存在するものであってもよいが、またそれらが上で優先的に定義されるものなどの再生可能な天然資源に由来すれば、非デンプン質ポリマーまたは熱可塑性組成物のあらゆるその他の構成物中に存在するものであってもよい。
【0113】
本発明に従ったデンプンベース熱可塑性組成物を、特に食品包装分野において、単独で、または同時押し出しの技術によって得られる多層構造中で、酸素、二酸化炭素、芳香、燃料、および/または脂肪性物質に対するバリアフィルムとして使用することが想定できる。
【0114】
本発明の組成物はまた、例えばメンブレン、フィルムまたは印刷可能電子ラベル、紡績繊維、容器またはタンクの製造の文脈内で、合成ポリマーの親水性性質、電気伝導適性、水および/または蒸気透過度、または有機溶媒および/または燃料への抵抗性を増大させるのに、または親水性担体上の合成熱溶融性フィルムの接着特性を改善するのに使用されてもよい。
【0115】
本発明に従った熱可塑性組成物の親水性の性質は、生体中で、したがって食物連鎖中でも脂肪組織中の生物濃縮リスクを相当に低下させることに留意されたい。
【0116】
本発明に従った組成物は、微粉形態、顆粒形態またはビーズの形態であってもよく、バイオ起源または非バイオ起源マトリックス中で希釈できる、マスターバッチのマトリックスを構成してもよい。
【0117】
本発明はまた、本発明の熱可塑性組成物またはこの組成物から得られる完成品または半完成品を含む、可塑性またはエラストマー材料にも関する。
【実施例】
【0118】
先行技術に従った(カップリング剤なし)および本発明に従った(カップリング剤あり)水溶性マルトデキストリンベースのデンプン質組成物の比較
これらの実施例では以下を使用する。
−可溶性デンプンとして、本出願人によってGLUCIDEX 1、GLUCIDEX 2、GLUCIDEX 6、GLUCIDEX 12、およびGLUCIDEX 19の名称の下に販売される、およそ4%の含水量を有する様々なマルトデキストリン。これらのマルトデキストリンは、20℃で100%近い水溶性画分を有する、
−非生分解性非デンプン質ポリマーとして、LubrisolによってESTANE 58300の名称の下に販売される熱可塑性ポリウレタン(TPU)、および
−カップリング剤として、HuntsmanによってSuprasec 1400の名称の下に販売されるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)。
【0119】
TSA銘柄の二軸スクリュー押し出し機(直径(D)26mm、長さ56D)に、15kg/hの総材料処理能力で50/50マルトデキストリン(未乾燥)/TPU混合物を供給する。
【0120】
押出し条件は以下の通りである。
−温度プロフィール(10個の加熱ゾーン、Z1〜Z10):160℃
−スクリュー速度:400rpm。
【0121】
押し出し機の出口において、いかなる場合でもこれらの条件下で得られる組成物は弱く親水性であり、表面がわずかに粘着性になるが、冷水タンク内で冷却できることが観察された。
【0122】
この表面粘着性をなくすために、押し出され冷却されたロッドをオーブン内において、真空下80℃で24時間乾燥させ、次に造粒する。
【0123】
これらの顆粒化デンプン質組成物に、前回と同一条件下で、
−カップリング剤不在下(比較例の組成物)、または
−100部の顆粒当たり1部のMDI(phr)存在下(本発明に従った組成物)
のいずれかで、2回目の押出しを行った。
【0124】
水安定性試験:
試験を実施して、これらの同一組成物の水および蒸気感受性を測定した。これらの試験は、このようにして調製された組成物の親水性または疎水性性質のかなり正確な評価を可能にする。
【0125】
水取り込み試験:
1ヶ月間保存した後に、上の比較例の組成物および本発明に従った組成物の質量を乾燥前(Mh)、および真空下80℃で24時間の乾燥後(Ms)に測定して、水取り込みの程度を判定する。水分含量(%で表される)は次式から計算される:
水分含量(%)=(1−M/M)×100
【0126】
不溶性物質含量および膨潤度:
以下のプロトコルに従って、得られる組成物の水不溶性物質含量および膨潤度を測定する。
(i)特性解析するサンプルを乾燥する(真空下80℃で12時間)。
(ii)精密天秤でサンプル質量を測定する(=Ms1)。
(iii)サンプルを20℃で水(サンプルのグラム質量の100倍に等しい容積の水)に浸漬する。
(iv)サンプルを数時間の規定時間後に取り出す。
(v)吸収紙によって表面の過剰な水をできる限り迅速に除去する。
(vi)サンプルを精密天秤に載せ、2分間にわたり質量損失をモニタリングする(質量を20秒毎に測定する)。
(vii)時間に応じた先行する測定値のグラフ表示、および質量のt=0(=Mg)への外挿を通じて、膨潤サンプルの質量を判定する。
(viii)サンプルを乾燥する(真空下80℃で24時間)。乾燥サンプルの質量を測定する(=Ms2)。
(ix)式Ms2/Ms1に従って%で表わされる不溶性物質含量を計算する。
(x)式(Mg−Ms1)/Ms1に従って、膨潤度を%で計算する。
【0127】
得られた結果を下の表1に要約する。
【0128】
【表1】

【0129】
1phrのMDIを含有する本発明に従ったGLUCIDEX/TPU 58300組成物(結果を太字で示す)が事実上水に溶けず(95%を超える不溶性物質含量)疎水性であるのに対し、MDIを含まない先行技術に従った組成物は非常に親水性であり崩壊することが観察される。
【0130】
機械的特性:
Lloyd Instruments LR5K試験ベンチ、引張速度300mm/分、およびH2タイプの標準化供試体を使用して、NF T51−034基準(引張特性の測定)に従って、様々なサンプルの引張における機械的特性を測定する。
【0131】
【表2】

【0132】
これらの結果は、二官能性カップリング剤(MDI)の使用が、対応するMDIを含まない組成物と比較して、およそ50%の引張り強さの増大をもたらすことを示す。MDIの存在下で調製された全ての組成物の破断点伸びは、200%を超える。これらの値は、低密度ポリエチレンで得られる値に等しい。
【0133】
さらに質量分析法による分析は、本発明に従ってカップリング剤(MDI)を使用して調製された組成物が、使用されたマルトデキストリン中に含有されるデンプン質鎖相互のカップリング剤を通じた結合を証明する、特定の実体を含むことを示した。
【0134】
マルトデキストリンGlucidex 12およびGlucidex 19の使用は、特に有利な機械的特性を有するデンプン質組成物を与える。これらの2種のマルトデキストリンは800〜1600の重量平均分子量を有し、これはその他の3種のデキストリンの3000〜20000よりも低い。
【0135】
これらの結果は、水分および水に対する安定性改善、および機械的特性改善の観点から、マルトデキストリンなどの可溶性デンプン質材料ベースの熱可塑性組成物の調製中にカップリング剤を使用することの非常に有益な効果を明らかに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも45%、好ましくは少なくとも49重量%の少なくとも1つの可溶性デンプン、
(b)最大で55%、好ましくは最大で51重量%の少なくとも1つの非生分解性非デンプン質ポリマー、および
(c)活性水素を有する官能基を保有する分子と反応できる少なくとも2つの官能基を保有するカップリング剤
を含み、これらの量が乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するものである、デンプンベース組成物。
【請求項2】
可溶性デンプンが、物理的、化学的または酵素的処理によって、天然デンプン;酸、酸化または酵素的加水分解、酸化または化学変性、特にアセチル化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化、架橋、リン酸化またはスクシニル化を受けたデンプン;低温の水媒体中で処理されたデンプン(「アニール化」デンプン);およびこれらのデンプンの混合物から選択される顆粒デンプンから得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
可溶性デンプンが、流動化デンプン、酸化デンプン、物理化学的経路によって変性されたデンプン、白色デキストリン、およびこれらの生成物の混合物から選択される顆粒デンプンから得られることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
可溶性デンプンが、予備ゼラチン化デンプン、高度転化デキストリン、マルトデキストリン、高度官能基付与デンプン、およびこれらの生成物の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
可溶性デンプン(a)が、天然デンプン、流動化デンプン、酸化デンプン、化学変性を受けたデンプン、白色デキストリン、およびこれらのデンプンの混合物から選択される顆粒デンプンと、この顆粒デンプンの可塑剤との熱機械的混合によって得られる、デンプンおよびその可塑剤からなる、可塑化デンプン質組成物によって部分的に置換されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
グリセロール、ポリグリセロール、イソソルビド、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、水素化グルコースシロップ、乳酸ナトリウム;酪酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸またはグルタル酸などの有機酸のメチル、エチルまたは脂肪酸エステル;またはエタノール、ジエチレングリコール、グリセロールまたはソルビトールなどのモノアルコール、ジオール、トリオールまたはポリオールの酢酸または脂肪酸エステル;およびこれらの生成物の混合物から選択される可塑剤もまた含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
可溶性デンプンに対する可塑剤重量比が1/100〜150/100、好ましくは5/100〜120/100であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対する可溶性デンプン(a)の量が、51重量%〜99.8重量%、好ましくは55重量%〜99.5重量%、特に60重量%〜99重量%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
カップリング剤が、イソシアネート、カルバモイルカプロラクタム、エポキシド、ハロゲン、プロトン酸、酸無水物、ハロゲン化アシル、酸塩化物、トリメタホスフェート、およびアルコキシシラン官能基、およびそれらの混合物から選択される少なくとも2つの同一であるかまたは異なる、遊離またはマスク官能基を有する化合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
カップリング剤が、以下の化合物:
−ジイソシアネートおよびポリイソシアネート、好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびリジンジイソシアネート(LDI)、
−ジカルバモイルカプロラクタム、好ましくは1,1’−カルボニルビスカプロラクタム、
−ジエポキシド、
−エポキシド官能基とハロゲン官能基とを含む化合物、好ましくはエピクロロヒドリン、
−有機二酸、好ましくはコハク酸、アジピン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、および対応する無水物、
−酸塩化物、好ましくはオキシ塩化リン、
−トリメタホスフェート、好ましくはナトリウムトリメタホスフェート、
−アルコキシシラン、好ましくはテトラエトキシシラン、
およびこれらの化合物の混合物から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
カップリング剤がジイソシアネート、好ましくはメチレンジフェニルジイソシアネートであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するカップリング剤の量が、0.1〜15重量%、好ましくは0.1〜12重量%、なおもより好ましくは0.2〜9重量%、特に0.5〜5重量%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
非生分解性非デンプン質ポリマーが、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、シラン単位、アクリル単位または無水マレイン酸単位で官能基付与されたポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、無水マレイン酸単位で官能基付与されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、バイオ起源モノマーを使用して得られる非生分解性合成ポリマー、および天然資源から抽出されて変性されまたは官能基付与されたポリマー、およびこれらのポリマーの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ASTM D6852基準の意義の範囲内で少なくとも33%の再生可能起源炭素を含有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(i)少なくとも1つの可溶性デンプン(a)を選択するステップと、
(ii)この可溶性デンプン(a)に、可溶性デンプン(a)が少なくとも45重量%に相当し、非生分解性非デンプン質ポリマー(b)が最大で55重量%に相当するような量で、非生分解性非デンプン質ポリマー(b)を組み込むステップと、
(iii)このようにして得られた組成物に、活性水素を有する官能基を保有する分子と反応できる少なくとも2つの官能基を保有する少なくとも1つのカップリング剤を組み込むステップと
を含み、これらの量は乾燥物質として表され、(a)および(b)の合計に対するものであり、ステップ(ii)がステップ(iii)の前、最中または後に実施できることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のデンプンベース組成物を調製する方法。
【請求項16】
カップリング剤の組み込み前に、ステップ(ii)で得られた組成物を5%未満、好ましくは1%未満、特に0.1重量%未満の残留水分含量に乾燥するステップもまた含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のデンプンベース組成物をカップリング剤と可溶性デンプン(a)および/または非生分解性非デンプン質ポリマー(b)とを反応させるのに十分な温度で十分な時間にわたり加熱するステップを含む、熱可塑性組成物を調製する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法に従って得ることができる、熱可塑性組成物。
【請求項19】
40%を超え、好ましくは80%を超え、特に100%を超える破断点伸びを有することを特徴とする、請求項18に記載の熱可塑性組成物。
【請求項20】
4MPaを超え、好ましくは6MPaを超え、特に10MPaを超える最大引張り強さを有することを特徴とする、請求項18または19に記載の熱可塑性組成物。
【請求項21】
20℃で24時間の水中浸漬後に、少なくとも90%に等しい、好ましくは少なくとも95重量%に等しい、特に少なくとも98重量%に等しい、不溶性物質含量を有することを特徴とする、請求項18〜20のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項22】
20℃で24時間の水中での浸漬後に、20%未満、好ましくは12%未満、なおもより好ましくは6%未満の膨潤度を有することを特徴とする、請求項18〜21のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項23】
−少なくとも98%に等しい不溶性物質含量、
−少なくとも100%に等しい破断点伸び、および
−10MPaを超える最大引張り強さ
を有することを特徴とする、請求項18〜22のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項24】
EN 13432、ASTM D6400、およびASTM 6868基準の意義の範囲内で生分解性でなくコンポスト化もできないことを特徴とする、請求項18〜23のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項25】
ASTM D6852基準の意義の範囲内で少なくとも33%の再生可能起源炭素を含有することを特徴とする、請求項18〜24のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。

【公表番号】特表2011−511119(P2011−511119A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544761(P2010−544761)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050130
【国際公開番号】WO2009/095617
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】