説明

可溶性共役ポリマーを含む方法及びデバイス

可溶性共役ポリマーに関する方法、組成物及び製品を提供する。前記共役ポリマーは、該ポリマーを極性媒体(例えば、水及び/またはメタノール)中に可溶性とするのに十分な密度の極性置換基を有する。望ましくは、前記共役ポリマーはその導電性を変化させるモノマーを含み得る。幾つかの実施形態で、本発明者らは、極性媒体中に可溶性の導電性共役ポリマーを生じさせるベく可溶化基及び導電性基の両方を含むカチオン性共役ポリマー(CCP)を提供した。これらのポリマーの溶解性の違いにより、多層フォーマットで他の共役ポリマーと共に溶液で堆積し得る。異なる溶解特性を有する共役ポリマーの層を複数含む製品も提供する。本発明の実施形態は本明細書中に更に記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性共役ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
多様な電子、光学及び光電子材料及びデバイス中にポリマー半導体が組み込まれている。半導体ポリマーを含む製造プロセスにおける制限は多層材料を作製し難いことである。溶液加工は、興味深い共役ポリマーの層を堆積するための最も簡単で、最も経済的で且つ最も制御可能な方法の1つである。しかしながら、多くの共役ポリマーは有機及び/または非極性媒体中に溶解するので、1つの共役ポリマーの溶液を既に堆積させた別の共役ポリマーからなる層上に堆積させるとその層が可溶化し、界面混合が生じ得る。こうなると、所望のデバイス配向/構造/形状が破壊され、プロセスの再現性がなくなり、得られたデバイスの効率が低下する恐れがある。したがって従来の多層デバイスの作製方法は、通常ポリマーを堆積させるために溶液加工ステップを1回しか含まず、残りの層は、コストがかかり、且つ制御しにくいより問題ある方法(例えば、スパッタリング、熱蒸着及び化学蒸着方法)によって堆積させている。
【0003】
当技術分野では、異なる物理的特性を有する共役ポリマー、前記ポリマーの製造及び使用方法、並びにそのような化合物を含む組成物、製品及び機械が要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可溶性共役ポリマーを含む方法、組成物及び製品を提供する。前記共役ポリマーは、該ポリマーを極性媒体(例えば、水及び/またはメタノール)中に可溶性とするのに十分な密度の極性置換基を有する。望ましくは、前記共役ポリマーはその導電性を変化させるモノマーを含み得る。幾つかの実施形態で、本発明者らは、極性媒体中に可溶性の導電性共役ポリマーを生じさせるべく可溶化基及び導電性基の両方を含むカチオン性共役ポリマー(CCP)を提供した。これらのポリマーの溶解性の違いにより、多層フォーマットで他の共役ポリマーとの溶液での堆積を可能にする。異なる溶解特性を有する共役ポリマー層を複数含む製品も提供する。本発明の実施形態は本明細書中に更に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは所望の特性を有する共役ポリマーを提供した。この共役ポリマーは、該ポリマーを極性媒体中で可溶性とするのに十分な密度の極性置換基を有する。したがって、前記ポリマーは、複数の溶液加工ステップを含む方法において異なる溶解度を有するポリマーと共に使用できる望ましい溶解特性を有している。これらのポリマーの異なる溶解特性により、他の共役ポリマーと共に多層フォーマットで溶液により堆積できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
幾つかの実施形態では、極性置換基は荷電基、例えばカチオン性またはアニオン性基であり得る。共役ポリマーは、該ポリマーを高極性溶媒(例えば、水及び/またはメタノール)中に可溶性とするのに十分な密度の可溶化極性基を有し得る。このことは、新規な溶液加工方法により多層ポリマーデバイスを作製するのに特に有利となり得る。
【0007】
望ましくは、共役ポリマーはその導電性を変化させるモノマーを含み得る。共役ポリマーは、このポリマーの電子を注入及び/または伝達させる能力を改善するモノマーを含み得る。共役ポリマーは、このポリマーの正孔を注入及び/または伝達させる能力を改善するモノマーを含み得る。そのようなポリマーの導電性は、電子デバイスにおける特定の他の材料と適合するように選択され得る使用モノマーの種類及び/または量によりコントロールされ得る。ポリマーの組成は特定種の導電性を防ぐようにも選択され得る。例えば、ポリマーの組成は特定のデバイス構成(例えば、ポリマー発光ダイオード(PLED))において望ましいとされ得る正孔ブロッキング特性を有するように選択され得る。
【0008】
幾つかの実施形態では、本発明者らは、極性媒体中に導電性共役ポリマーが可溶性となるように、可溶化基及び導電性基の両方を含むカチオン性共役ポリマー(CCP)を提供した。これらの導電性ポリマーが水及び/または低級アルコール、特にメタノール中に可溶性であることが望ましい。
【0009】
幾つかの実施形態では、CCPはポリマーの硬質ロッド構造を形成する能力を乱して広範囲の3次元構造を形成させるモノマーを含み得る。前記モノマーは、直鎖から約25°以上の角度を形成するポリマーの隣接サブユニットに対する結合点を有する芳香族分子である。このモノマーは共役ポリマー中に捻れツイストを導入し、これによりポリマーの硬質ロッド構造を形成する能力を乱すことができる。
【0010】
異なる溶解特性を有する共役ポリマーの層を複数含む製品も提供する。本明細書に記載されている方法により作製した複数のポリマー層は、各種の製品及び装置に組み込むことができる。
【0011】
本発明の実施形態は多様なフォーマットを含み得る。例えば、複数の異なるLEDがディスプレーフォーマット中に同時に使用され得る。多様な実施形態は、本明細書に記載されている1つ以上の実施形態により提供される2、3、4、5、10、15、20、25、50、100、200、400、1000、5000、10000、50000、200000、100万以上の別個の製品を使用し得る。本発明の他の態様を更に説明する。
【0012】
本発明を更に詳細に説明する前に、方法、製品、組成または装置は当然改変可能であるので、本発明は記載されている具体的な方法、製品、組成または装置に限定されないことを理解すべきである。また、本明細書中で使用されている専門用語は具体的実施形態を説明する目的のためであって、本発明の範囲を限定する意図はないことも理解すべきである。
【0013】
単数形“a”、“an”及び“the”の使用は、別途明確に指示しない限り複数の言及を含む。したがって、例えば“単数の共役ポリマー”の言及は複数の共役ポリマーも含み、“単数の溶媒”の言及は複数のそのような溶媒も含み、“単数のLED”の言及は複数のLEDを含む等である。加えて、特定の複数形、例えば“2”、“3”等の使用は別途明確に指示しない限り同一のものが多数あることと理解される。単に接続詞として本明細書中で使用される場合の用語“または”は別段の記載がない限り“及び/または”を意味する。本明細書中で使用される場合、用語“含む(including)”及び関連用語(例えば、includes)は、具体的に列挙される要素に限定されず、それに加えて他の要素が存在することを許容する。
【0014】
“接続(connected)”、“結合(attached)”及び“連結(linked)”のような用語は本明細書中で互換可能に使用され、別段の方法で明確に記載されない限り直接または間接的な接続、結合、連結または共役を包含する。
【0015】
値の範囲が記載されているとき、記載されているその範囲の上限及び下限の間のそれぞれ中間の整数及びその端数も、そのような値の間の部分的なそれぞれの範囲と共に具体的に開示されている。任意の範囲の上限及び下限は、独立してその範囲に含まれるかまたは排除され、そのような範囲は全て本発明の範囲に包含される。記載されている値が固有の限界を有しているとき、例えば成分が0〜100%の濃度で存在し得る場合、または水溶液のpHが1〜14の範囲となり得る場合には、その固有の限界は固有限界に基づく範囲として具体的に開示されている。値が明白に記載されているとき、本明細書に記載されている他の値もこれに基づく範囲であるように、記載されている値とほぼ同じ量である値も本発明の範囲内であることは理解すべきである。
【0016】
要素の群または組み合わせが開示されている場合、これら要素の各部分集合も具体的に開示されており、本発明の範囲内である。逆に、異なる要素または要素の群が開示されているときにはその組み合わせも開示されている。
【0017】
本発明の要素が複数の選択肢を有するものとして開示されている場合、各選択肢が単独でまたは他の選択肢との組み合わせで除外される本発明の例もこれによって開示されている。本発明の1以上の要素はそのような除外を有し得、前記除外を有する全ての要素の組み合わせがこれによって開示されている。
【0018】
別の方法で定義されていたり、別の方法で明確に指示されない限り、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は本発明が属する技術分野における当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法及び材料が、本発明を実施または試験する際に使用可能であるが、好ましい方法及び材料をここでは記載している。
【0019】
本明細書に挙げた文献はすべて、参考文献が引用している特定の材料及び方法を開示及び記載する目的で参照により本明細書に組み入れる。本明細書中で検討した刊行物は本出願の出願日前の開示内容だけを与える。先発明である理由で本発明がその開示内容に先行しないと認められるようには決して解釈されない。
【0020】
定義
本発明を説明する際、以下の用語が使用され、下記のように定義されることを意図する。
【0021】
“アルキル”は、場合により1つ以上の位置が置換されている、1〜24個の炭素原子を有する分枝鎖、非分枝鎖または環状飽和炭化水素を指し、多環式化合物も含まれる。アルキル基の例には、場合により置換されているメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、ヘキシルオクチル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等;並びにシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル及びノルボルニルが含まれる。用語“低級アルキル”は1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を指す。置換アルキル基上の置換基の例には、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシ、=O、=S、-NO、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、カルボキシアルキル、アミン、アミド、チオエーテル及び-SHが含まれる。
【0022】
“アルコキシ”は、-Oアルキル基(ここで、アルキルは上に定義した通りである)を指す。“低級アルコキシ”基は1〜6個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基を意図する。
【0023】
“アルケニル”は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み、場合により1つ以上の位置が置換されている、2〜24個の炭素原子を有する分枝鎖、非分枝鎖または環状不飽和炭化水素基を指す。アルケニル基の例には、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、1-メチルビニル、シクロプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、1,4-ブタジエニル、シクロブテニル、1-メチルブト-2-エニル、2-メチルブト-2-エン-4-イル、プレニル、ペント-1-エニル、ペント-3-エニル、1,1-ジメチルアリル、シクロペンテニル、ヘキス-2-エニル、1-メチル-1-エチルアリル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニル等が含まれる。本発明において好ましいアルケニル基は2〜12個の炭素原子を有する。用語“低級アルケニル”は2〜6個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子を有するアルケニル基を意図する。用語“シクロアルケニル”は3〜8個、好ましくは5または6個の炭素原子を有する環状アルケニル基を意図する。置換アルケニル基上の置換基の例には、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシ、=O、=S、-NO、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アミン、チオエーテル及び-SHが含まれる。
【0024】
“アルケニルオキシ”は、-Oアルケニル基(ここで、アルケニルは上に定義した通りである)を指す。
【0025】
“アルキルアリール”は、アリール基に共有結合しているアルキル基を指す。好ましくは、そのアルキルは低級アルキルである。アルキルアリール基の例には、ベンジル、フェネチル、フェノプロピル、1-ベンジルエチル、フェノブチル、2-ベンジルプロピル等が含まれる。
【0026】
“アルキルアリールオキシ”は、-Oアルキルアリール基(ここで、アルキルアリールは上に定義した通りである)を指す。
【0027】
“アルキニル”は、少なくとも1個の-C≡C-三重結合を含み、場合により1つ以上の位置が置換されている、2〜24個の炭素原子を有する分枝鎖または非分枝鎖の不飽和炭化水素基を指す。アルキニル基の例には、エチニル、n-プロピニル、イソプロピニル、プロパルギル、ブト-2-イニル、3-メチルブと-1-イニル、オクチニル、デシニル等が含まれる。本発明において好ましいアルキニル基は2〜12個の炭素原子を含む。用語“低級アルキニル”は2〜6個、好ましくは2〜4個の炭素原子及び1個の-C≡C-三重結合を含むアルキニル基を意図する。置換アルキニル基上の置換基の例には、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシ、=O、=S、-NO、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アミン、チオエーテル及び-SHが含まれる。
【0028】
“アミド”は、-C(O)NR’R”基(ここで、R’及びR”は独立して水素、アルキル、アリール及びアルキルアリールから選択される)を指す。
【0029】
“アミン”は、-N(R’)R”基(ここで、R’及びR”は独立して水素、アルキル、アリール及びアルキルアリールから選択される)を指す。
【0030】
“アリール”は、共役π電子系を有する環を少なくとも1個有する芳香族基を指し、炭素環式、ヘテロ環式、架橋及び/または多環式アリール基が含まれ、場合により1つ以上の位置が置換されていてもよい。典型的なアリール基は1〜5個の芳香環を含み、前記環は縮合されていても連結されていてもよい。アリール基の例には、フェニル、フラニル、アゾリル、チオフラニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、ビフェニル、インデニル、ベンゾフラニル、インドリル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ピリドピリジニル、ピロロピリジニル、プリニル、テトラリニル等が含まれる。場合により置換されているアリール基上の置換基の例には、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルカルボキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、縮合飽和または不飽和の場合により置換されている環、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、-S(O)R、スルホニル、-SOR、-SR、-NO、-NRR’、-OH、-CN、-C(O)R、-OC(O)R、-NHC(O)R、-(CHCORまたは-(CHCONRR’(ここで、nは0-4であり、R及びR’は独立してH、アルキル、アリールまたはアルキルアリールである)が含まれる。
【0031】
“アリールオキシ”は、-Oアリール基(ここで、アリールは上に定義した通りである)を指す。
【0032】
“炭素環式”は、すべての環原子が炭素である環を少なくとも1個含み、場合により置換されている化合物を指し、飽和でも不飽和でもよい。
【0033】
“炭素環式アリール”は、場合により置換されているアリール基であって環原子が炭素であるものを指す。
【0034】
“ハロ”または“ハロゲン”は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指す。“ハライドはハロゲンのアニオン形態を指す。
【0035】
“ハロアルキル”は、1つ以上の位置がハロゲンで置換されているアルキル基を指し、1種のみのハロゲン原子で置換されているアルキル基、並びに複数の種類のハロゲン原子の混合物で置換されているアルキル基が含まれる。ハロアルキルの例には、トリハロメチル基(例:トリフルオロメチル)が含まれる。
【0036】
“ヘテロアルキル”は、1個以上の炭素原子及び結合水素原子が場合により置換されているヘテロ原子で置換されているアルキル基を指し、1種のみのヘテロ原子で置換されているアルキル基、並びに複数の種類のヘテロ原子の混合物で置換されているアルキル基が含まれる。ヘテロ原子には酸素、硫黄及び窒素が含まれる。本明細書中で使用する場合、窒素ヘテロ原子及び硫黄ヘテロ原子には窒素及び硫黄の酸化形態、並びにプロトン化及びアルキル化形態を含めた4つの共有結合を有する窒素の任意の形態が含まれる。場合により置換されているヘテロ原子は、1個以上の結合水素が場合によりアルキル、アリール、アルキルアリール及び/またはヒドロキシルで置換されているヘテロ原子を指す。
【0037】
“ヘテロ環式”は、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、場合により1つ以上の位置が置換されている飽和または不飽和環を少なくとも1個含む化合物を指す。典型的なヘテロ環式基は1〜5個の環を含み、前記環は縮合されていても及び/または連結されていてもよく、各環は5〜6個の原子を含む。ヘテロ環式基の例には、ピペリジニル、モルホリニル及びピロリジニルが含まれる。場合により置換されているヘテロ環式基の置換基の例は、アルキル及びアリールの環炭素原子での置換基、並びにヘテロアルキルのヘテロ原子での置換基と同様である。
【0038】
“ヘテロ環式アリール”は、少なくとも1つの芳香族環に少なくとも1個のヘテロ原子を有するアリール基を指す。ヘテロ環式アリール基の例には、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリダジニル、ピロリル、N-低級アルキル-ピロロ、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ビピリジル、トリピリジル、テトラピリジル、フェナジニル、フェナントロリニル、プリニル等が含まれる。
【0039】
“ヒドロカルビル”は、分枝鎖、非分枝鎖または環状で飽和及び不飽和の種類を含む、1〜約20個の炭素原子を有するヒドロカルビル置換基、例えばアルキル基、アルキリデニル基、アルケニル基、アルキルアリール基、アリール基等を指す。用語“低級ヒドロカルビル”は1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を意図する。
【0040】
“置換基”は、炭素または窒素に結合している1個以上の水素を置換する基を指す。置換基の例には、アルキル、アルキリデニル、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アルケニル、アルケニルカルボキシ、アルケニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、-OH、アミド、カルボキサミド、カルボキシ、スルホニル、=O、=S、-NO、ハロゲン、ハロアルキル、縮合飽和もしくは不飽和の場合により置換されている環、-S(O)R、-SOR、-SR、-NRR’、-OH、-CN、-C(O)R、-OC(O)R、-NHC(O)R、-(CHCORまたは-(CHCONRR’(ここで、nは0〜4であり、R及びR’は独立してH、アルキル、アリールまたはアルキルアリールである)が含まれる。置換基はまた、炭素原子及び1個以上の結合水素原子の、場合により置換されているヘテロ原子での置換も含む。
【0041】
“スルホニル”は、-S(O)R(ここで、Rはアルキル、アリール、-C(CN)=C-アリール、-CHCN、アルキルアリールまたはアミンである)を指す。
【0042】
“チオアミド”は、-C(S)NR’R”(ここで、R’及びR”は独立して水素、アルキル、アリール及びアルキルアリールから選択される)を指す。
【0043】
“チオエーテル”は、-SR(ここで、Rはアルキル、アリールまたはアルキルアリールである)を指す。
【0044】
本明細書中、“多重”は、複数のアナライトを同時にアッセイすることができるアッセイまたは他の分析方法を指す。
【0045】
“任意の”または“場合により”は、続いて記載される事象または状況が生じることも生じないこともあること、及び前記事象または状況が1回または複数回生じる場合及び全く生じない場合が含まれることを意味する。例えば、“場合により置換されているアルキル”とは、アルキル部分が置換されていても置換されていなくてもよいことを意味し、その記載には未置換、モノ置換及びポリ置換アルキルが含まれる。
【0046】
ポリマー媒体に可溶性である共役ポリマー
極性媒体中に可溶性である共役ポリマー(CP)が提供され、本明細書に記載されている実施形態において使用され得る。CPは、極性媒体中でのポリマー溶解度を高めるためにポリマーサブユニットに連結させる可溶化官能基として極性基を含む。CPのサブユニットのいずれかまたは全てが1つ以上のペンダント可溶化基を含み得る。極性基の例には、CPに対して1つ以上の双極子モーメントを導入するもの、例えばハライド、ヒドロキシル、アミン、アミド、シアノ、カルボン酸及びチオールが含まれる。
【0047】
極性基は好ましくは荷電基、より好ましくはカチオン性基である。任意の適切なカチオン性基をCCPに導入し得る。導入され得るカチオン性基の例には、アンモニウム基、グアニジニウム基、ヒスチジン、ポリアミン、ピリジニウム基及びスルホニウム基が含まれる。
【0048】
可溶化官能基はリンカー、好ましくは非共役リンカー(例えば、アルキル基、ポリエーテル、アルキルアミン及び/またはポリアミン)により共役ポリマー骨格に連結され得る。
【0049】
共役ポリマーに荷電基を導入するための1つの合成方法は以下の通りである。まず、1つ以上のビス-(または、トリス-等)ボロン酸置換モノマーを、芳香族環位置上に少なくとも2つの臭素置換を有する1つ以上のモノマーとスズキカップリングすることにより、中性ポリマーを形成する。臭素基はリンカーを介していずれかまたは全てのモノマーに結合している。ペンダント臭素をアンモニウム基で置換する縮合トリエチルアミンを添加することによりカチオン性水溶性ポリマーに変換される。
【0050】
幾つかの実施形態では、共役ポリマーは望ましくはポリマー全体の導電性を変化させて電子種を伝達させる能力を高める導電性モノマーを含み得る。例えば、共役ポリマーは電子を注入及び/または伝達する能力を改善するモノマーを含み得る。共役ポリマーは正孔を注入及び/または伝達する能力を改善するモノマーを含み得る。共役ポリマーに2種以上の導電性モノマーを導入させ得る。そのようなポリマーの導電性は、使用するモノマーの種類及び/または量によりコントロールすることができ、このモノマーは所定の電子デバイス中の他の特定の材料と適合し得る電子配置を与えるように選択され得る。
【0051】
導電性モノマーは、電子不足なモノマーまたは電子豊富なモノマーであり得る。電子不足モノマーは、ポリマーの電子を注入及び/または伝達させる能力を高めるため及び電子輸送層として機能し得る能力を改善するために使用され得る。電子不足モノマーには、電子吸引基で適切に置換された不飽和及び/または芳香族基が含まれる。多数の電子不足モノマーが当技術分野において公知である。電子不足モノマーの例には、ベンゾチアジアゾール、オキサジアゾール、キノキサリン、シアノ置換オレフィン、スクアリン酸及びマレイミドが含まれる。
【0052】
電子豊富モノマーは、正孔を注入及び/または伝達させるポリマーの能力を高めるため及びポリマーの正孔輸送層として機能し得る能力を改善するために使用され得る。電子豊富モノマーには、電子供与基(例えば、アルキル基)で適切に置換された不飽和及び/または芳香族基が含まれる。多数の電子豊富なモノマーが当技術分野において公知である。電子豊富モノマーの例には、9,9-ジアルキルフルオレン、2,5-ジメチル-1,4-フェニリデン、2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニリデン及びターチオフェンが含まれる。
【0053】
ポリマーの組成は、特定の種の導電性を防ぐようにも選択され得る。例えば、ポリマーの組成は、特定のデバイス構成(例えば、ポリマー発光ダイオード(PLED))において望ましいとされ得る正孔ブロッキング特性を有するように選択され得る。
【0054】
幾つかの実施形態では、ポリマーは、ポリマーの硬質ロッド構造を形成する能力を妨害し、より広範囲な三次元構造を有し得るようにする置換パターン(または、位置化学)と共にアングルドリンカー(angled linker)を含み得る。ポリマーは、内部及び末端の単位であり得る少なくとも1つのアングルドリンカーと共に少なくとも3個のサブユニットを含み得、少なくとも4、5、6、8、10、15、20、25またはそれ以上のサブユニットを含み得る。ポリマーは最高約100、200、300、500、1000、2000、5000、10000、20000、50000またはそれ以上のサブユニットを含み得る。
【0055】
アングルドリンカーは、ポリマーの伸びた硬質ロッド構造(この構造を表す有意な領域が残っていてもよい)を形成する全体的な能力を破壊して相互に角度を形成し得る他のポリマー成分(例えば、モノマー、ブロックポリマー、末端基)に対して少なくとも2つの別々の結合を有する、場合により置換されている芳香族分子である。アングルドリンカーは二価または多価であり得る。
【0056】
アングルドリンカーがポリマー構造に付与し得る角度は次のように測定される。他のポリマー成分に対する2つの結合が同一平面上にあるときには、これらの結合を表す線を交点まで延ばし、その後その間の角度を測定することにより角度が測定され得る。他のポリマー成分に対する2つの結合が同一平面上にないときには、角度は次のように測定され得る。これらの結合が結合している2つの環原子間に第1ラインを引く。2つの結合ラインを引き、1つは各環原子からそれぞれの結合の方向へそれが結合している他のポリマー成分まで延びている。各結合ラインと第1ライン間の角度を固定する。次いで、第1ラインをゼロ長さに縮めることにより2つの環原子を単一ポイントに統合させる。そして2つの結合ライン間で生ずる角度が、アングルドリンカーがポリマーに付与する角度である。
【0057】
アングルドリンカーがポリマーに付与し得る角度は通常約155°未満であり、約150°未満、約145°未満、約140°未満、約135°未満、約130°未満、約125°未満、約120°未満、約115°未満、約110°未満、約105°未満、約100°未満、約95°未満、約90°未満、約85°未満、約80°未満、約75°未満、約70°未満、約65°未満、約60°未満、約55°未満、または約50°未満であり得る。アングルドリンカーは隣接するポリマー単位に対して約25°、30°、35°、40°、45°、50°、60°、またはそれ以上の角度を形成し得る。アングルドリンカーは共役ポリマーに捻れツイストを導入し得、それにより硬質ロッド構造を形成するポリマーの能力を更に破壊することができる。ポリ置換ビフェニルのような内部回転可能な結合を有するアングルドリンカーの場合、アングルドリンカーは少なくとも1方向で約155°未満の角度を付与し得なければならない。
【0058】
6員環の場合、前記角度はポリマーに対するオルトまたはメタ結合により達成することができる。5員環の場合、隣接する残りの結合はこの範囲に入る。8員環の場合、隣接する環原子から、(環原子1個分だけ離れている)交互環原子から、及び2個の他の環原子だけ離れている環原子から延びる結合がこの範囲に入る。8個以上の環原子を含む環系を使用してもよい。多環式構造の場合、より多様な連結角度が得られ得る。
【0059】
上記限定を満たす結合単位の例には、1,2または1,3-位置でポリマー中に導入されるベンゼン誘導体;1,2-,1,3-,1,6-,1,7-,1,8-位置でポリマー中に導入されるナフタレン誘導体;1,2-,1,3-,1,6-,1,7-,1,8-及び1,9-位置でポリマー中に導入されるアントラセン誘導体;2,3-,2,4-,2,6-,3,3’-,3,4-,3,5-,2,2’-,2,3’-,2,4’-及び3,4’-位置でポリマー中に導入されるビフェニル誘導体;及び対応するヘテロ環が含まれる。位置の数字は未置換の炭素ベース環を参照して示しているが、置換された環及び/またはヘテロ環においてに置換基の配置が環のナンバリングを変えてもポリマー中に導入される同一の相対位置が包含される。
【0060】
CPはコポリマーであり得、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーまたはその両方であり得る。可溶化官能基、導電性サブユニット及び/またはアングルドリンカーはCP中にランダムに、交互に、周期的に及び/またはブロック状に導入され得る。
【0061】
本発明の化合物の骨格を形成し得るポリマーの例には、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリフェニレン-ビニレン、ポリチオフェン、ポリイソチアナフタレン、ポリアニリン、ポリ-p-フェニレン及びそのコポリマーが含まれる。ポリマーサブユニット及び繰り返し単位の他の例を下表に示す。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0062】
CPは、ポリマー全体を極性媒体中で可溶性とするのに十分な密度の可溶化官能基を含む。好ましくは、CPは少なくとも1つの可溶化官能基で置換されたモノマーを少なくとも約0.01モル%含み、少なくとも約0.02モル%、少なくとも約0.05モル%、少なくとも約0.1モル%、少なくとも約0.2モル%、少なくとも約0.5モル%、少なくとも約1モル%、少なくとも約2モル%、少なくとも約5モル%、少なくとも約10モル%、少なくとも約20モル%、または少なくとも約30モル%含み得る。CPは最高100モル%の可溶化官能基を含み得、約99モル%以下、約90モル%以下、約80モル%以下、約70モル%以下、約60モル%以下、約50モル%以下、または約40モル%以下含み得る。
【0063】
好ましくは、CPは少なくとも約0.01モル%の導電性モノマーを含み、少なくとも約0.02モル%、少なくとも約0.05モル%、少なくとも約0.1モル%、少なくとも約0.2モル%、少なくとも約0.5モル%、少なくとも約1モル%、少なくとも約2モル%、少なくとも約5モル%、少なくとも約10モル%、少なくとも約20モル%、または少なくとも約30モル%含み得る。CPは最高100モル%の導電性モノマーを含み得、約99モル%以下、約90モル%以下、約80モル%以下、約70モル%以下、約60モル%以下、約50モル%以下、または約40モル%以下含み得る。
【0064】
ポリマーは少なくとも約0.01モル%のアングルドリンカーを含み得、少なくとも約0.02モル%、少なくとも約0.05モル%、少なくとも約0.1モル%、少なくとも約0.2モル%、少なくとも約0.5モル%、少なくとも約1モル%、少なくとも約2モル%、少なくとも約5モル%、少なくとも約10モル%、少なくとも約20モル%、または少なくとも約30モル%含み得る。ポリマーは最高100モル%のアングルドリンカーを含み得、約99モル%以下、約90モル%以下、約80モル%以下、約70モル%以下、約60モル%以下、約50モル%以下、または約40モル%以下含み得る。
【0065】
本明細書に記載されているCPは水溶液及び他の高極性溶媒中に可溶性であることが望ましく、水溶性であることが好ましい。“水溶性”とは、溶液に他の物質(バッファー、ブロッキング剤、共溶媒、塩、金属イオン及び界面活性剤を含むが、限定されない)が含まれていてもよいが、50容量%以上の水を含む主に水性の溶液中に、材料が溶解性を示すことを意味する。
【0066】
1実施形態において、CCPの例は式A:
【化6】

【0067】
で表される。上記式中、CP、CP、CP及びCPは場合により置換されている共役ポリマーセグメントまたはオリゴマー構造であり、相互に同一でも異なっていてもよい。CP、CP、CP及びCPは芳香族繰り返し単位であり得、それぞれ場合により置換されていてもよいベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、チオフェン、フラン、ピリジン及びオキサジアゾールからなる群から選択され得る。典型的な芳香族繰り返し単位を下表1に示し、代表的なポリマーセグメント及びオリゴマー構造を表2に示す。CP〜CPの1つ以上は電子注入及び/または伝達特性或いは正孔注入及び/または伝達特性を有する導電性モノマーであり得る。導電性モノマーはポリマー主鎖に沿って均一に分布していてもまたはランダムに分布していてもよい。
【0068】
ポリマーは全体として複数のカチオン性基で置換されていなければならないという条件で、CP、CP、CP及びCPの各々は、場合により1つ以上の位置で-R-A、-R-B、-R-C及び-R-Dから選択される1個以上の基で置換されており、前記した基は架橋官能基-E-及び-F-を介して結合してもよい。
【0069】
、R、R及びRは独立して、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、並びにそれぞれ場合により置換され、場合により1個以上のヘテロ原子を含むアリール、アルキルアリール、アリールアルキル及びポリアルキレンオキシドから選択され、或いは存在していなくてもよい。R、R、R及びRは独立して、C1-22アルキル、C1-22アルコキシ、C1-22エステル、1〜約22個の炭素原子を有するポリアルキレンオキシド及び1〜約22個の炭素原子を有する環状クラウンエーテルから選択することができ、或いは存在していなくてもよい。好ましくは、R、R、R及びRは1〜約12個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基または1〜約12個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択され得る。2個以上の官能基が式中に示した環に対し1個以上の位置で付加され得ることは理解されよう。
【0070】
A、B、C及びDは独立して、H、-SiR’R”R”’、-NR’R”R”’、グアニジニウム基、ヒスチジン、ポリアミン、ピリジニウム基及びスルホニウム基から選択される。R’、R”及びR”’は独立して、水素、C1-12アルキル、C1-12アルコキシ及びC3-10シクロアルキルからなる群から選択される。R’、R”及びR”’は低級アルキルまたは低級アルコキシ基であることが好ましい。
【0071】
E及びFは独立して、不存在、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(R)(R’)-、-N(R’)-及び-Si(R’)(R”)(ここで、R’及びR”は上に定義した通りである)から選択される。
【0072】
XはO、S、Se、-N(R’)-または-C(R’)(R”)-であり、Y及びZは独立して-C(R)=及び-N=(ここで、R’、R”及びR”’は上に定義した通りである)から選択される。
【0073】
m及びnは独立して0〜約10,000であり、ただしm+n>1である。好ましくは、m及びnはそれぞれ独立して独立して0〜約20、より好ましくは0〜約10である。m及びnの繰り返しはそれぞれ他方の繰り返しと同一でも異なっていてもよい。
【0074】
a、b、c及びdは独立して0〜約250である。a、b、c及びdの少なくとも1つは1以上でなければならない。
【0075】
G及びGはキャッピング単位であり、同一でも異なっていてもよい。キャッピング単位はポリマー鎖を延長させるための更なる化学反応を可能にする活性化単位であり得、または非活性化した停止単位であり得る。G及びGは独立して、水素、場合により置換されているアリール、ハロゲン置換アリール、ボロン酸置換アリール及びボロネート基置換アリールから選択することができる。
【0076】
共役ポリマーは精製形態でも提供され得る。精製するために任意の利用可能な方法及び方法の組み合わせが使用され得る。方法の例には沈殿、抽出及び昇華が含まれる。CPの溶液も提供される。溶液は任意の適切な形態の容器に入れて提供され得る。溶液は、溶液加工装置(例えば、プリンター)中に装入するように設計された容器中に包装され得る。幾つかの実施形態では、溶液はインクジェットプリンターで使用されるように設計されたインクジェットカートリッジに入れて提供され得る。
【0077】
極性溶媒
共役ポリマーは、少なくとも1つの極性溶媒を含む極性媒体中に可溶性である。“極性”とは、正味の双極子モーメントを有することを意味する。極性溶媒の例には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ギ酸、酢酸、酢酸エチル、水、アルコール及びポリアルコール、特に低級アルコール(C1-4)、具体的にはメタノールが含まれる。好ましくは、極性溶媒は少なくともエタノールまたは酢酸エチルの極性を有する。幾つかの実施形態では、CPを溶解させるために使用される極性溶媒は、CPを堆積させようとする第2共役ポリマーを溶解できない能力に基づいて選択される。
【0078】
ある実施形態における極性溶媒及び幾つかの実施形態における前記溶媒から形成した溶液は、堆積させたときに通常表面上に均一且つ均等に流れ、好ましくは厚さをコントロールできるように、適用する表面上を濡らすことができる。溶媒の組み合わせを使用してもよい。溶媒は、堆積させたときに溶液が適切に広がるよう十分に基板を濡らすことができることが好ましい。表面を濡らす能力を向上させるため及び/または表面張力を低下させるために1つ以上の湿潤剤を溶液中に配合することができる。例えば、水を含む溶液はアルコール、界面活性剤、または添加されて湿潤剤として機能する材料の組み合わせを有し得る。
【0079】
使用方法
本明細書に記載されているCPは各種方法で使用され得る。特に興味深い方法には、電子デバイス、特に複数の共役ポリマー層を含むデバイスへのCPの堆積が含まれる。所定のデバイスにおいて任意の各種堆積方法が使用され得るが、この方法には真空スパッタリング(RFまたはマグネトロン)、電子ビーム蒸発、熱蒸着、化学析出、昇華及び溶液加工方法が含まれるが、これらに限定されない。本発明の可溶性極性ポリマーを堆積させるためには当技術分野で公知または発見され得る任意の堆積方法が使用され得るが、溶液方法が現在好ましい。
【0080】
これらの層は通常スピンコーティング、液滴キャスティング、連続スピンキャスティング、ラングミュア・ブロジェット膜の形成または静電吸着法[28]により堆積される。ポリマー層を段階的に堆積させることにより製品が作製され得る。本発明で提供する可撓性CPの水溶性により、溶解度の異なる各種材料の層を連続堆積させることができ、材料の薄層の堆積を含む製造中に一定の効果をもたらす。
【0081】
特定の実施形態では、製品中にCPを組み込むために溶液加工法が使用され得る。有利には、CPを堆積するために印刷技術(例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷等)が使用され得る。
【0082】
CPを複数の共役ポリマー層からなる多層デバイス中で使用する場合、これらの層の1つ以上が特定の極性媒体中に溶解し得ない非極性共役ポリマーを含み得る。これらの例には、MEH-PPV、P3AT[ポリ(3-アルキルチオフェン)(ここで、アルキルは6〜16個の炭素原子からなる)]、例えばポリ(2,5-ジメトキシ-p-フェニレンビニレン)、すなわち“PDMPV”及びポリ(2,5-チエニレンビニレン);ポリ(フェニレンビニレン)、すなわち“PPV”及びそのアルコキシ誘導体;PFO、PFO-BT及びポリアニリンが含まれる。非極性共役ポリマーは任意の適切な方法で堆積され得る。幾つかの実施形態では、非極性共役ポリマーは直接溶液から堆積またはキャストされる。典型的には、有機溶媒であって通常低極性のものが使用される。有機溶媒の例には、ハロ炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム及び四塩化炭素;芳香族炭化水素、例えばキシレン、ベンゼン、トルエン;及び他の炭化水素、例えばデカリンが含まれる。
【0083】
混合溶媒を使用することもできる。非極性ポリマー及び極性ポリマーの溶解性の違いから、製造を簡素化し、コストを抑えることができる溶液加工法により複数のポリマー層を堆積させることができる。本明細書に記載されている水溶性ポリマーにより、溶解度の異なるポリマーの層を交互に溶液堆積させて二層または多層のデバイスを形成させ得る。
【0084】
基板上に共役ポリマーを堆積する場合、溶液は0.1〜20%(w/w)のような比較的低濃度、特に0.2〜5%(w)の濃度とすることができる。幾つかの実施形態では、フィルム厚さは少なくとも約50、100または200nmであり得る。幾つかの実施形態では、約400、200または100nm未満のフィルム厚さを使用し得る。
【0085】
所望ならば、ポリマー溶液を任意の適切な方法(例えば、押し出し)により特定の形、例えば繊維、フィルム等に形成し得る。
【0086】
共役ポリマーを含む溶液を堆積後、溶媒を除去する。溶媒を除去するために任意の利用可能なー方法または方法の組み合わせが使用され得る。溶媒除去方法の例には、蒸発、加熱、抽出及び溶液を真空下におくことが含まれる。
【0087】
幾つかの実施形態では、共役ポリマーを基板上に堆積させ得る。前記基板は広範囲の生物性または非生物性の有機または無機材料、またはその任意の組み合わせから構成され得る。幾つかの実施形態では、基板は透明であり得る。基板は硬質材料、例えば硬質プラスチックまたは硬質無機酸化物であり得る。基板は可撓性材料、例えば透明有機ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレートまたは可撓性ポリカーボネート)であり得る。基板は導電性でも非導電性でもよい。
【0088】
CPは基板上に任意の各種フォーマットで堆積され得る。例えば、基板は重合化ラングミュア・ブロジェット膜、官能化ガラス、Si、Ge、GaAs、インジウムドープGaN、GaP、SiC(Nature,430:1009(2004))、SiO、SiN、半導体ナノ結晶、修飾シリコン、または任意の各種ゲルまたはポリマー、例えば(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフロリド、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド-コグリコリド)、ポリ無水物、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリシロキサン、ポリマーシリカ、ラテックス、デキストランポリマー、エポキシ、ポリカーボネート、アガロース、ポリ(アクリルアミド)またはその組み合わせであり得る。導電性ポリマー及び光伝導性材料が使用され得る。基板はフォトダイオード、光電子センサー(例えば、光電子半導体チップまたは光電子薄膜半導体)またはバイオチップの形態をとり得る。
【0089】
CPは、CPを興味深い任意の特性で選別する方法において使用され得る。例えば、CPは、標的への結合について;発色団へのエネルギー伝達について;増加した蛍光効率について;減少した自己消光について;吸光波長、発光波長、導電性、電子を注入及び/または伝達する能力、正孔をブロックする能力、正孔を注入及び/または伝達する能力、及び/または仕事関数等について試験され得る。
【0090】
製品
CPは、光電子または電子デバイス、バイオセンサー、ダイオード(フォトダイオード及び発光ダイオード(LED)を含む)、光電子半導体チップ、半導体薄膜及びチップを含めた任意の各種製品に組み込まれ得、アレイまたはマイクロアレイの形態で使用され得る。ポリマーはポリマーフォトスイッチに組み込まれ得る。ポリマーは光信号を電気インパルスに変換するためのオプチカルインターコネクトまたはトランスデューサーに組み込まれ得る。CPは液晶材料として機能し得る。CPは電気化学セル中の電極として、エレクトロクロミックディスプレー中の導電層として、電解効果トランジスターとして、及びショットキーダイオードとして使用され得る。
【0091】
CPはレージング材料として使用され得る。従来の色素レーザーと同様に、適切な溶媒の希溶液におけるMEH-PPVからの光学的にポンピングしたレーザー発光が報告されている[D. Moses, Appl. Phys. Lett., 60, 3215(1992);米国特許第5,237,582号明細書]。滑らかな不希釈フィルムの形態の半導体ポリマーは固体レーザー中の活性な発光材料として記載されている[F. Hide, M. A. Diaz-Garcia, B. J. Schwartz, M. R. Andersson, Q. Pei and A. J. Heeger, Science, 273, 1833(1996); N. Tessler, G. J. Denton, and R. H. Friend, Nature, 382, 695(1996)]。固体レーザー用材料として半導体ポリマーを使用することは、Diaz-Garciaらに1999年3月9日に発行された米国特許第5,881,083号明細書(発明の名称“Conjugated Polymers as Materials for Solid State Lasers”)に開示されている。半導体ポリマーでは、分子内及び分子間エネルギー伝達から生ずる有意な吸収(ストークスシフト)の発現よりも長い波長で発光が生ずる。したがって、発光放射線の自己吸収は最低であり[F.Hide et al., Science, 273, 1833(1996)]、自己吸収により材料が損失しない。更に、吸収及び発光はスペクトル的に区別されているので、πからπの遷移を介する励起状態のポンピングは発光を刺激せず、比較的低いポンプ力で反転分布を得ることができる。
【0092】
発光ダイオードは、導電層として機能し得るCP層を1つ以上組み込んで作製され得る。光は各種方法で、例えば発生した光をデバイスから発光させ得るように1つ以上の透明または半透明電極を用いて発光され得る。
【0093】
ポリマーLEDの動作メカニズムでは、電極を半導体ポリマーの電子構造に整合させることによりキャリア注入を最適化し、平衡にすることが必要となる。最適注入のためには、アノードの仕事関数は価電子帯E(π帯、もしくは最高被占有分子軌道(HOMO))のほぼ最高点になければならず、カソードの仕事関数は伝導帯E(π帯、もしくは最低空分子軌道(LUMO))のほぼ最低点になければならない。
【0094】
LEDの実施形態は正孔注入性電極及び電子注入性電極を含む。仕事関数が高い材料(約4.5eV)から作製した導電層が正孔注入性電極として使用され得る。高仕事関数材料の例には、電気陰性金属(例えば、金または銀)及び金属-金属酸化物混合物(例えば、インジウム-錫酸化物)が含まれる。電子注入性電極は、低仕事関数(通常、4.3以下の仕事関数)の金属または合金から作製され得る。低仕事関数材料の例には、インジウム、カルシウム、バリウム及びマグネシウムが含まれる。電極は任意の適切な方法で適用され得る。多数の方法(例えば、蒸着、スパッタリングまたは電子ビーム蒸着)が当技術分野で公知である。
【0095】
幾つかの実施形態では、ポリマー発光ダイオードは、ITO(酸化錫インジウム)/PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/発光ポリマー/ETL/Ba/Alのデバイス構成において、発光層として有機溶媒中の溶液からキャストした半導体ポリマーを、電子輸送層(ETL)として水溶性(またはメタノール可溶性)共役コポリマーを用いて作製した。本発明者らは、発光層として有機溶媒中の溶液からキャストした半導体ポリマー(赤色、緑色または青色発光)、電子輸送層として水溶性(またはメタノール可溶性)カチオン性共役コポリマーを用いて多層PLEDを作製することに成功した。結果は、ETLを含むデバイスは有意に低いターンオン電圧、高い輝度及び向上した発光効率を有することを立証している。
【0096】
実施例は可溶性導電性ポリマーから形成した電子輸送層の使用を説明しているが、任意の形態の導電層が使用され得る。したがって、本明細書に記載されているようなモノマーを慎重に選択すると、正孔注入性及び/または伝達性を有するポリマー及び電子注入性及び/または伝達性を有するポリマーを得ることができる。デバイスの幾何配置及び堆積順序は使用する導電性ポリマーの種類に基づいて選択され得る。同一の多層デバイス中に2種以上の導電性ポリマーを使用し得る。多層デバイスは、2つ以上の電子注入性共役ポリマー層、2つ以上の正孔注入性共役ポリマー層、または少なくとも1つの正孔注入性ポリマー層と少なくとも1つの電子注入性共役ポリマー層を含み得る。
【0097】
PLEDでは、再結合領域が通常カソードの近くに配置されているので[20]、デバイス効率はカソードクエンチングにより低下する。ETLを付加すると、再結合領域はカソードから離れ、よってカソードクエンチングが解消される。加えて、ETLは金属原子(例えば、バリウム及びカルシウム)の拡散をブロックするように働き得、よってカソード堆積プロセス中にクエンチング中心[20]が生成するのが防止される。
【0098】
幾つかの実施形態において、可溶性共役ポリマーをポリマー発光ダイオード(PLED)中の電子輸送層(ETL)として使用する際の原則基準は、以下の通りである:
(1)ETLの最低空分子軌道(LUMO)は、(電子が注入され得るように)発光半導体ポリマーのπ帯に近いかまたはそのπ帯に等しいエネルギーでなければならない;そして
(2)電子注入材料をキャスティングするのに使用される溶媒は下にある発光ポリマーを溶解してはならない。
【0099】
同様に、ポリマー発光ダイオード(PLED)中で使用するためのポリマーベースの正孔輸送層(HTL)に関する原則基準は、HTLの最高被占有分子軌道(HOMO)が発光半導体ポリマーの価電子帯に近いかまたはその価電子帯に等しいエネルギーでなければならないことである。
【0100】
溶解特性は、所望のデバイス構成を生ずるように使用される特定のCP及び溶媒の堆積順序を指定し得る。異なる溶解度を有するCPの複数の層が上記技術を用いることにより溶液加工で堆積され得る。
【0101】
本明細書に記載されているCPを含むPLEDは、フルカラーLEDディスプレー、携帯電話ディスプレー、PDA(携帯情報端末)、複数の機能(電話/PDA/カメラ/等)を果たす携帯型複合デバイス、テレビまたはモニターを含めたフラットパネルディスプレー、コンピューターモニター、ラップトップコンピューター、コンピューターノートパッド及び集中コンピューター-モニターシステムを含む、任意の利用可能なディスプレーデバイスに組み込まれ得る。PLEDをアクティブまたはパッシブマトリクスに組み込んでもよい。
【実施例】
【0102】
下記実施例は、当業者に対して本発明をどのように作製し、使用するかの完全な説明を与えるが、発明と見なされる範囲を限定するものではない。使用する数値(例えば、量、温度等)に関して正確さを保証するよう努めたが、若干の実験誤差及び偏差を考慮すべきである。別段の記載がない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力であり、材料は全て市販のものである。
【0103】
(実験)
1実施形態では、ITO/PEDOT/発光ポリマー/ETL/Ba/Alのデバイス構成において、発光層として有機溶媒中の溶液からキャストした半導体ポリマーを、電子輸送層(ETL)として水溶性(または、メタノール可溶性)共役コポリマーを用いてポリマー発光ダイオード(PLED)を作製した。その結果、ETLを含むデバイスは、有意に低いターンオン電圧と、より高い輝度及び向上した発光効率を示した。図面参照。
【0104】
(実施例1)
PLEDの作製
水溶性共役コポリマーのポリ{[9,9-ビス(6’-(N,N,N-トリメチルアンモニウム)ヘキシル)-フッ素-2,7-ジイル]-alt-[2,5-ビス(p-フェニレン)-1,3,4-オキサジアゾール]}(PFON(CH--PBD)をパラジウム触媒スズキカップリング反応を用いて合成し[13,14]、電子輸送層(ETL)として使用した。ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレン-コ-ベンゾチアジアゾール)(PFO-BT)もスズキカップリング反応を用いて合成した[15]。ポリ(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)(PFO)及びポリ[2-メトキシ-5-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)はカナダに所在のAmerican Dye Source,Inc.から購入した。PFO、PFO-BT、MEH-PPV及びPFON(CH--PBDの分子構造を以下に示す。
【化7】

【0105】
HOMO(最高被占有分子軌道)及びLUMOエネルギーレベルを図1に示す(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)及びバリウムの仕事関数も比較のために示す)。インジウム錫酸化物(ITO)上のPEDOT:PSSを正孔注入性二層電極として使用した。PLEDSを、ETL層を用いてまたはETL層を用いずに、以下のデバイス構造、すなわち(ITO)/PEDOT:PSS/発光ポリマー/Ba/Al及び(ITO)/PEDOT:PSS/発光ポリマー/ETL/Ba/Alのデバイス構造で作製した。デバイス作製及び試験の詳細は他で報告されている。全ての作製ステップは窒素雰囲気下の制御大気乾燥ボックスの内部で実施した[16,17]。ETLをメタノール溶液(0.6%wt-%)からスピンキャスティングにより発光層の上に堆積させて、厚さが約30nmのPFON(CH--PBD層を形成し、その後残留溶媒を除去するために90℃で2時間アニーリングした。十分に画定された多層を維持しながら層間をよく濡らすために、(水よりもむしろ)親水性メタノールを溶媒として使用した。用語“発光ポリマー/ETL”はETLを含むデバイスを指すために使用される。
【0106】
(実施例2)
水溶性CCPを含むPLEDのキャラクタリゼーション
PFO及びPFO/ETLを用いて作製したデバイスの電流密度対電圧、及び輝度対電圧特性を図2に示す。PFO/ETLデバイスは〜3Vでオンになった(ターンオン電圧は0.1cd/mの輝度での電圧と規定される)が、ETLなしで作製したPFOデバイス[18]の場合のターンオン電圧は〜5Vであった。6Vで、PFO/ETLデバイスから得られる輝度(L)はL=3450cd/mであり、ETLなしのデバイスの場合L=30cd/mである。
【0107】
緑色及び赤色発光共役ポリマーを用いて作製したデバイスでも同様の向上が観察された。MEH-PPV/ETLデバイスについては5VでL=5600cd/mであり、ETLなしで作製した同様のデバイスについてはL=3550cd/mである。従って、ETLを付加すると、ターンオン電圧は低下し、輝度は向上する。
【0108】
輝度の劇的向上及びターンオン電圧の低下は、改善された電子注入(ETLのLUMOと発光ポリマーのπ帯が良好に整合している)及びETLの正孔ブロッキング能力(真空に対して-6.24eVのLUMOエネルギー)によるものである。
【0109】
ETLを有するデバイス及び有さないデバイスについての発光効率(LE,単位cd/A)対電流密度(J,単位mA/cm)を図3a、3b及び3cに示す。図3に示すように、ETLを有するデバイスは所定の電圧でより高い発光効率、より高い電力効率、及びそれ対応してより高い輝度を有する。
【0110】
LE及びPE(電力効率)の向上は、発光ポリマーのLUMOエネルギーレベルを、PFON(CH--PBDのLUMOエネルギーレベル及びバリウムの仕事関数(図1参照)と比較することにより詳細に理解され得る。PFOのLUMOとバリウムの仕事関数との間のエネルギー障壁は〜0.6eVである。従って、ETLとしてPFON(CH--PBD層を付加することにより、電子注入が強化される。
【0111】
PFO-BT及びMEH-PPVの場合、電子注入に関してエネルギー障壁はない。しかしながら、PFON(CH--PBD層の正孔ブロッキング特性により、電子流及び正孔流の平衡がうまくとれる。加えて、高い電子注入は正孔注入を促進し得る[21]。従って、ETLを有するデバイスでは、より大きく、ほとんど平衡のとれた電子流及び正孔流により発光効率が高くなる。
【0112】
界面エネルギーが有機LEDの発光特性において重要な役割を果たすことが知られている[22][23]。ETLをカソードと発光ポリマーの間に付加すると、両界面の接触が改善される。原子間力顕微鏡(AFM)像は、ETLの表面が発光ポリマーの表面よりも粗いことを示している。図4参照。その結果、端的に言えばETLとカソード間の接触面積が多くなるという理由でより効率的な電子注入が達成される。
【0113】
(結論)
多層PLED中の電子輸送層として、水溶性及びメタノール可溶性の共役ポリマー、すなわちPFON(CH--PBDを使用した。メタノールの溶液からETLをキャストし、有機溶媒の溶液から発光層をキャストすることにより、界面混合が避けられた。発光層として青色、緑色または赤色発光半導体ポリマー、ETLとしてPFON(CH--PBDを用いて、性能の有意な向上が立証された。より重要なことは、我々の結果は多層PLEDが複数の溶液を堆積させることにより作製され得ることを示している。
【0114】
本発明を好ましい実施形態を参照してある程度詳しく説明してきたが、当業者は、本明細書の教示に照らして本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく一定の変更及び修飾をなし得ることを理解するであろう。従って、本発明は請求の範囲のみに限定される。
【0115】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】Baの仕事関数と比較した、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)(PFO)、ポリ(9,9-ジヘキシル-フルオレン-コ-ベンゾチアジアゾール)(PFO-BT)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)及びポリ{[9,9-ビス(6’-(N,N,N-トリメチルアンモニウム)ヘキシル)-フッ素-2,7-ジイル]-alt-[2,5-ビス(p-フェニレン)-1,3,4-オキサジアゾール]}(PFON(CH--PBD)のHOMO(最高被占有分子軌道)及びLUMO(最低空分子軌道)エネルギーレベル(すべて真空に関して示す)を示す。
【図2】電子輸送層(ETL)としてのPFON(CH--PBDを有しまたは有さない青色発光PFOを用いて作製したデバイスについての、電流密度(mA/cm)対印加電圧(V)、及び輝度(cd/m)対印加電圧(V)を示す。
【図3a】ETLを有しまたは有さないPFOを用いて作製したデバイスについての、発光効率(cd/A)対電流密度(mA/cm)を示す。挿入図は、ETLを有しまたは有さないPFOより作製したデバイスについての電力効率(lm/W)対バイアス(V)を示す。
【図3b】ETLを有しまたは有さないPFO-BTを用いて作製したデバイスについての、発光効率(cd/A)対電流密度(mA/cm)を示す。挿入図は、ETLを有しまたは有さないPFO-BTより作製したデバイスについての輝度(cd/m)対電流密度(mA/cm)を示す。
【図3c】ETLを有しまたは有さないMEH-PPVを用いて作製したデバイスについての、発光効率(cd/A)対電流密度(mA/cm)を示す。挿入図は、ETLを有しまたは有さないMEH-PPVより作製したデバイスについての輝度(cd/m)対電流密度(mA/cm)を示す。
【図4】(a)及び(b)はETLの表面及び発光ポリマーの表面を示す原子間力顕微鏡(AFM)像である。ETL層は、図示したスケールで多くの特徴を有し、端的に言えばETLとカソード間の接触面積が広いためにより効率的な電子注入が達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性カチオン性共役ポリマーである第1材料及び第1溶媒からなる第1溶液を用意し、第2材料及び第2溶媒からなる第2溶液を用意し、基板上に前記第1及び第2溶液の一方の第1層を堆積させ、前記第1層上に前記第1及び第2溶液の他方の第2層を堆積させることを含む、基板上に材料の隣接層を形成する方法であって、第1層に堆積させた材料が第2層に堆積させた溶媒中に溶解しない前記方法。
【請求項2】
第1溶媒が水からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1溶液が界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基板上への第1溶液の堆積がスピンキャスティングを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基板がフィルムである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カチオン性水溶性共役ポリマーを溶媒中に含む第1溶液を用意し、前記溶媒に溶解しない材料からなる基板を用意し、前記基板上に前記第1溶液を堆積させることを含む、基板へのポリマー層の付加方法。
【請求項7】
溶媒が水からなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基板上への第1溶液の堆積がスピンキャスティングを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
基板がフィルムである請求項6に記載の方法。
【請求項10】
水溶性カチオン性共役ポリマーの層を含む多層電子デバイス。
【請求項11】
基板が硬質である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基板が硬質である請求項6に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により作製したポリマー層を含む基板。
【請求項14】
請求項13に記載の基板を含む電気部品。
【請求項15】
部品がレーザー、フォトダイオード、発光ダイオード(LED)、オプチカルインターコネクト、トランスデューサー、半導体チップ、半導体薄膜及びポリマーフォトスイッチからなる群から選択される請求項14に記載の電気部品。
【請求項16】
部品がフォトダイオードである請求項15に記載の電気部品。
【請求項17】
部品が発光ダイオード(LED)である請求項15に記載の電気部品。
【請求項18】
部品がレーザーである請求項15に記載の電気部品。
【請求項19】
部品がトランスデューサーである請求項15に記載の電気部品。
【請求項20】
部品がポリマーフォトスイッチである請求項15に記載の電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506283(P2007−506283A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527071(P2006−527071)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030566
【国際公開番号】WO2005/056628
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(398051143)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (21)
【Fターム(参考)】