説明

可視光型光触媒機能を有する壁紙、及び該壁紙の製造方法。

【課題】可視光領域の光照射により、大気中のアルデヒド等の揮発性有機化合物を分解する等の可視光型光触媒活性を有する壁紙を提供する。
【解決手段】少なくとも発泡オレフィン系樹脂層11に非発泡オレフィン系樹脂層12が積層された壁紙基材に、更に非発泡オレフィン系樹脂層11上に可視光型光触媒層13が形成されている、可視光型光触媒機能を有する壁紙10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域において大気中のアルデヒド等の有機揮発性物質を分解する機能を有する、可視光型光触媒機能を有する壁紙を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
住宅内装材等においては、住宅部材から発生するホルムアルデヒド等の有機ガスによるシックハウスの問題、ペット臭、及び生活臭等の問題から揮発性有機化合物(VOC)を分解する光触媒機能を有するに建築用内装材のニーズが高まってきている。
これまで、光触媒機能を有する建築用内装材について種々検討されてきているが、光触媒は、紫外光領域で光触媒活性を有するものが多く、このような紫外光領域のみで触媒活性を有する光触媒を住宅内装材に使用した場合には、室内の微弱な紫外光では光触媒の活性が十分に発揮されないという問題点があった。
【0003】
上述のようなニーズから、近年、室内での可視光にも応答する光活性機能を有する可視光型光触媒、及び該触媒薄膜が注目され、開発が進められている(特許文献1〜3)。
揮発性有機化合物の分解を考慮する場合には、壁材、天井材、床材、そして家具用等の建材に塗布することで光触媒機能を付与させることができるが、内装部材として最も大きな面積を有する壁面に機能を持たせることが有効と考えられる。
しかしながら光触媒が内装部材表面層に形成された分散剤や樹脂成分等のバインダー等の成分で覆われて固定化されている場合には、光触媒が表面十分に露出していないので光触媒機能が十分に発現しない場合がある。このような問題点を解決するために、バインダー成分を分解して光触媒材料を表面に露出させる方法も検討されている(特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−197512号公報
【特許文献2】特開2002−146200号公報
【特許文献3】特開2004−161573号公報
【特許文献4】特開2007−092335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
壁面内装材としては、従来から壁紙が一般的に使用されており、この壁紙の主たる材料としては、ポリ塩化ビニル系の壁紙が用いられている。
しかし従来は、ポリ塩化ビニル発泡層上に直接光触媒層を設けられているため、発泡工程において発生する発泡剤からのガス等の影響により光触媒機能が十分に発揮されないという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点を解決して可視光領域の光照射により、大気中のアルデヒド等の揮発性有機化合物を分解する等の光触媒活性を有する壁紙を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、発泡オレフィン系樹脂層上に非発泡オレフィン系樹脂層を積層させて、該非発泡オレフィン系樹脂層上に可視光型光触媒と無機バインダーからなる可視光型光触媒層を形成することにより、上記課題を解決が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の(1)ないし(6)に記載する発明を要旨とする。
(1)少なくとも発泡オレフィン系樹脂層(A)に非発泡オレフィン系樹脂層(B)が積層された壁紙基材(C)に、更に非発泡オレフィン系樹脂層(B)上に可視光型光触媒層(D)が形成されていることを特徴とする、可視光型光触媒機能を有する壁紙(以下、第1の態様ということがある)。
(2)前記可視光型光触媒層(D)中の可視光型光触媒成分に酸化チタン触媒が含有されていることを特徴とする、前記(1)に記載の可視光型光触媒機能を有する壁紙。
(3)前記可視光型光触媒層(D)が可視光型光触媒と無機物バインダーから形成された層であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の可視光型光触媒機能を有する壁紙。
(4)非発泡オレフィン系樹脂層(B)と可視光型光触媒層(D)の間に絵柄模様層(E)が設けられていることを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれか1に記載の可視光型光触媒機能を有する壁紙。
(5)少なくとも発泡オレフィン系樹脂層(A)、非発泡オレフィン系樹脂層(B)、及び可視光型光触媒層(D)がこの順に積層された可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法であって、
前記発泡オレフィン系樹脂層(A)形成用の未発泡オレフィン系樹脂層(A')と、非発泡オレフィン系樹脂層(B)とからなる壁紙基材(C')を形成し、次に非発泡オレフィン系樹脂層(B)上に可視光型光触媒分散液を塗付、乾燥後、加熱により未発泡オレフィン系樹脂層(A')を発泡させて発泡オレフィン系樹脂層(A)を形成することを特徴とする、可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法(以下、第2の態様ということがある)。
(6)前記加熱により未発泡オレフィン系樹脂層(A')を発泡させて発泡オレフィン系樹脂層(A)を形成すると共に、塗布された可視光型光触媒分散液を乾燥させて可視光型光触媒層(D)を形成することを特徴とする、前記(5)に記載の可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の態様である「可視光型光触媒機能を有する壁紙」は、可視光領域において光触媒機能を有しているので、室内中のアルデヒド等の揮発性有機化合物等を分解する等の光活性機能以外に、ペット臭の除去、更に光触媒による防汚性、抗菌性、消臭性等の機能を付与することも可能である。
又、発泡オレフィン系樹脂層(A)と可視光型光触媒層(D)との間に非発泡オレフィン系樹脂層(B)があることで、未発泡オレフィン系樹脂層(A')の発泡工程で発生する発泡ガス等の揮発成分による可視光型光触媒機能の低下、具体的には、可視光型光触媒機能を発揮する酸化チタンなどの粒子への悪影響を防止できる。
本発明の第2の態様である「可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法」の採用により、可視光型光触媒分散液の塗布後、可視光型光触媒層(D)の乾燥工程と未発泡オレフィン系樹脂層(A')の発泡工程を同時に行なえることで製造工程が少なくなり、コストを低減できる。又、発泡工程後に、絵柄模様層(E)や可視光型光触媒層(D)を形成した場合、発泡層の凹凸の影響により、前記層を綺麗に塗付することが難しかったが、発泡工程前に前記層を形成可能となったため綺麗に塗付することが可能となる。
可視光型光触媒分散液塗布後、可視光型光触媒層(D)形成のための乾燥と未発泡オレフィン系樹脂層(A')の発泡を同時に行なえることが可能となり、製造工程が少なくなり、コストを低減できる。
発泡後に、絵柄層や光触媒層を形成する場合、発泡層の凹凸の影響により、前記層を綺麗に塗付することが難しかったが、発泡工程前に絵柄模様層(E)を形成可能となったため綺麗に塗付可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の可視光型光触媒機能を有する壁紙、及び該壁紙の製造方法について説明する。
本発明の「可視光型光触媒機能を有する壁紙(以下、本発明の壁紙ということがある。)」は、非発泡オレフィン系樹脂層(B)と可視光型光触媒層(D)との間に絵柄模様層(E)を形成することが可能である。また、発泡オレフィン系樹脂層(A)の裏面に非発泡オレフィン系樹脂層(F)や裏打ち紙層(G)を形成、或いは非発泡オレフィン系樹脂層(F)を介して裏打ち紙層(G)を形成することができる。
【0010】
〔1〕本発明の第1の態様である「可視光型光触媒機能を有する壁紙」について
上述したように本発明の第1の態様に係る「可視光型光触媒機能を有する壁紙」は、少なくとも発泡オレフィン系樹脂層(A)に非発泡オレフィン系樹脂層(B)が積層された壁紙基材(C)に、更に非発泡オレフィン系樹脂層(B)上に可視光型光触媒層(D)が形成されていることを特徴とする。
以下本発明の、少なくとも発泡オレフィン系樹脂層(A)に非発泡オレフィン系樹脂層(B)が積層された壁紙基材(C)、可視光型光触媒層(D)について説明する。
【0011】
(1)壁紙基材(C)
(1−1)発泡オレフィン系樹脂層(A)
発泡オレフィン樹脂層(A)は、発泡剤含有オレフィン樹脂層が発泡することにより形成された層である。発泡剤含有樹脂層は、化学発泡剤又は物理発泡剤の作用により発泡するもの(例えば加熱された際に発泡するもの)であれば特に制限されるものではないが、エチレン系樹脂であることが好ましい。
エチレン系樹脂としては例えば、エチレン単独重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、炭素原子数3〜5のエチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等のエチレン系共重合体樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。これらの樹脂は、後述する電離放射線を照射することにより、容易に樹脂架橋させることでき、その照射により優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等、表面強度などが向上させることができる。これらの樹脂に中で、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等、表面強度が優れる点で、EVA樹脂、EMAA樹脂が好ましく、特にEMAA樹脂が好ましい。
例えば、EVA樹脂、EMAA樹脂、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として用いることができる。
発泡オレフィン系樹脂層(A)の厚みは特に限定されるものではないが、20〜200μm程度が好ましく、50〜120μm程度がより好ましい。
【0012】
樹脂成分としてEVA樹脂を用いる場合、EVA樹脂中の酢酸ビニル単位(共重合比率)は特に限定されるものではないが、5〜30重量%程度であることが好ましく、10〜20重量%程度がより好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は特に限定されないが、5〜75g/10分程度が好ましく、40〜70g/10分程度がより好ましい。なお、本明細書においてMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」を採用したものである。発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は特に限定されず、発泡壁紙の種類、用途等に応じて適宜設計することができる。
また、樹脂成分として、EMAA樹脂を用いる場合は、EMAA樹脂中のメタクリル酸単位(共重合比率)は、4〜20重量%程度であることが好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値(JIS K 7210、190℃、2.16kg)は、用いる重合体の種類等によるが、通常は60〜200g/10分とすることが好ましい。特に、100〜200g/10分という高い範囲でも、良好な発泡状態を維持できるという点で有利である。
【0013】
本発明で使用する発泡剤は、上記した発泡剤の中でも化学発泡剤が好ましく、化学発泡剤の中でも熱分解型発泡剤が好ましい。熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の配合量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率は、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であることから、熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して、1〜20重量部程度とすることが好ましい。また、物理発泡剤としては、熱膨張型マイクロカプセルが挙げられ、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性液体膨張剤を塩化ビニリデン−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー、メタアクリレート−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー等の熱可塑性高分子重合体殻中に内包したマイクロカプセルであって、平均直径が1〜100μmの範囲にあるようなものが利用可能である。
【0014】
発泡オレフィン系樹脂層(A)中には、以下に記載する添加剤を配合することができる。
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して、0.3〜10重量部程度が好ましく、1〜5重量部程度がより好ましい。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。該無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。該無機充填剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。該顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10〜50重量部程度が好ましく、15〜30重量部程度がより好ましい。発泡剤含有オレフィン系樹脂層の発泡方法としては、後記の製造方法に記載された方法等に従って実施することができる。
【0015】
(1−2)非発泡オレフィン系樹脂層(B)
非発泡オレフィン系樹脂層(B)は、主として発泡オレフィン系樹脂層(A)を保護すると共に、発泡オレフィン系樹脂層(A)を形成する際の発泡工程で発泡ガス等の揮発分成分による可視光型光触媒機能の低下を防止する機能を有する。非発泡オレフィン系樹脂層(B)を形成する樹脂として、発泡オレフィン系樹脂層(A)に使用したのと同様のオレフィン系樹脂を使用することができる。尚、非発泡オレフィン系樹脂層(B)に使用する樹脂は、発泡オレフィン系樹脂層(A)に使用する樹脂種と同一でも良く、異なるものであってもよいが、非発泡オレフィン系樹脂層(B)と発泡オレフィン系樹脂層(A)との間の密着性を向上するために、同種類の樹脂もしくは樹脂組成物、また、原料モノマーと物性が近似しているものを使用することが望ましい。
【0016】
前記樹脂成分としては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組合せにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、エチレン−メタクリル酸共重合体及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0017】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は4〜15重量%程度であることが好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。非発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
前記樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。尚、メルトフローレート値(MFR)の測定条件は、発泡オレフィン系樹脂層(A)の項に記載したのと同様である。
【0018】
(1−3)その他
本発明の壁紙基材(C)には、以下に記載する任意の層を積層することができる。
(i)絵柄模様層(E)
本発明の壁紙基材(C)は、必要に応じて非発泡オレフィン系樹脂層(B)の表側面に絵柄模様層(E)を形成することができる。
絵柄模様層(E)は、壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様層(E)の絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。該絵柄模様は、本発明の壁紙の種類に応じて選択できる。絵柄模様層(E)は、例えば、非発泡オレフィン系樹脂層(B)の表側面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層(E)を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0019】
前記着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。バインダー樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0020】
前記溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。絵柄模様層(E)の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0021】
(ii)非発泡オレフィン系樹脂層(F)、裏打ち紙層(G)
本発明の壁紙基材(C)の裏面には、裏打ち紙層(G)を積層させることもがき、又、必要に応じて発泡オレフィン系樹脂層(A)と裏打ち紙層(G)との間に接着機能を有する非発泡オレフィン系樹脂層(F)を設けることもできる。特に、本発明の裏側面に裏打ち紙層(G)を設ける場合に、発泡オレフィン系樹脂層(A)と裏打ち紙層(G)との間に設けられる非発泡オレフィン系樹脂層(F)が接着剤層として形成される場合は、優れた密着性を得ることができる。非発泡オレフィン系樹脂層(F)としては、発泡オレフィン系樹脂層(A)に使用したのと同様のオレフィン系樹脂を使用することができるが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を好適に用いることができる。非発泡オレフィン系樹脂層(F)は樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。
【0022】
(2)可視光型光触媒層(D)
(2−1)可視光型光触媒
可視光型光触媒層(D)に使用する可視光型光触媒としては、可視光線により光触媒作用を奏する化合物であれば特に制限なく使用可能であり、例えば可視光応答製を有する酸化チタン粒子の製造法として特開2001−278625号公報、特開2001−302241号公報、特開2003−275600号公報等に開示されているものを使用することができる。
また、可視光型光触媒としては、特開2007−268523号公報に開示されているように、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh,Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の1種又は2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物なども使用することができる。これらの中でもアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好ましく、可視光線ないし蛍光灯の照射で触媒活性を示すものとしてアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
【0023】
また、上記可視光型光触媒には、必要に応じて、各種添加剤を分散体として含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、非晶質シリカ、シリカゾルのような珪素酸化物、非晶質アルミナ、アルミナゾルのようなアルミニウムの酸化物や水酸化物、ゼオライト、カオリナイトのようなアルミノ珪酸塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、ならびにTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の水酸化物およびこれらの金属元素の非晶質酸化物などが挙げられる。これら添加物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明における可視光型光触媒は、蛍光灯による光照射に対して光触媒活性を示すものであることが好ましい。詳しくは、波長約430nm〜約830nmの光照射に対して光触媒活性を示す光触媒が好ましい。
【0024】
(2−2)可視光型光触媒層(D)
本発明の可視光型光触媒層(D)は、例えば、前記した可視光型光触媒と無機バインダーを溶媒に分散させた分散液を、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート、又はハケ塗りなどの方法により壁紙基材(C)上に塗布し、その後、分散液中の溶媒を除去しうる温度で加熱する方法が挙げられるが
本発明は該方法に限定されるものではない。
無機バインダーとしては、例えば、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
【0025】
可視光型光触媒層(D)のバインダーに樹脂組成物を使用すると、可視光型光触媒は樹脂組成物中に分散するか、樹脂によりコートされた状態で存在するので、可視光型光触媒が十分に露出しておらず、可視光型光触媒機能が十分に発現しないおそれがある。
従って、本発明においては、可視光型光触媒のバインダーとして有機物バインダーを使用するよりは無機物バインダーを使用して、多孔質層として、可視光型光触媒を可視光型光触媒層(D)の表面に多く露出させることが望ましい。
可視光型光触媒層(D)形成の具体例としては、特開2007−185556号公報に記載されているように、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ、及び無機バインダーを溶媒に混合した水又は有機溶媒中で混合して可視光型光触媒分散液を得ることができる。該可視光型光触媒分散液は、非発泡オレフィン系樹脂層(B)上に直接塗布しても良く、光触媒層転写フィルムを作製して転写法によって転写することも可能である。塗布する手段は、例えば、前述した通りのグラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。コート液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。
その後、溶媒を除去しうる程度の温度で加熱乾燥して溶媒を除去する。乾燥が完了した後、30〜60℃程度の温度で所要時間エージングを行うこともできる。これにより、コーティングした可視光型光触媒層(D)の剥離強度を向上させることができる。
可視光型光触媒層(D)の厚さは、目的、用途等により0.01μm〜1μm程度の範囲で任意に選択して使用することができる。
【0026】
〔2〕本発明の第2の態様である「可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法」について
「可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法」は、少なくとも発泡オレフィン樹脂層(A)、非発泡オレフィン系樹脂層(B)、及び可視光型光触媒層(D)がこの順に積層された可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法であって、
前記発泡オレフィン系樹脂層(A)形成用の未発泡オレフィン系樹脂層(A')と、非発泡オレフィン系樹脂層(B)とからなる壁紙基材(C')を形成し、次に非発泡オレフィン系樹脂層(B)上に可視光型光触媒分散液を塗布、乾燥後、加熱により未発泡オレフィン系樹脂層(A')を発泡させて発泡オレフィン系樹脂層(A)を形成することを特徴とする。
【0027】
(i)壁紙基材(C)の形成
壁紙基材(C)の製造方法は特に限定されない。例えば、Tダイ押出し機による未発泡オレフィン系樹脂層(A')と非発泡オレフィン系樹脂層(B)との同時押出しが好適である。2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。この方法では、同時押出し積層体は、紙質基材上に同時積層(成膜)する。紙質基材上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため紙質基材と接着される。
尚、予め2種2層を同時成膜した積層体を用意して、それを紙質基材上に載せて、熱ラミネートすることにより壁紙基材(C)と接着してもよい。
これらの2種2層に使用される発泡オレフィン系樹脂層(A)/非発泡オレフィン系樹脂層(B)としての好ましい組合せは、EVA樹脂/EVA樹脂、EMAA樹脂/EVA樹脂、EVA樹脂/EMAA樹脂、EMAA樹脂/EMAA樹脂が挙げられ、耐スクラッチ性、耐摩耗性等が優れる点で、EMAA樹脂/EVA樹脂、EVA樹脂/EMAA樹脂、EMAA樹脂/EMAA樹脂が好ましく、特にEMAA樹脂/EMAA樹脂が好ましい。
【0028】
更に上記に加えて非発泡オレフィン系樹脂層(F)を形成する場合は、非発泡オレフィン系樹脂層(B)、未発泡オレフィン系樹脂層(A')、及び非発泡オレフィン系樹脂層(F)がこの順に積層された3層を形成するのに、3種3層を同時に押出し成膜・積層することもできる。3層同時押出しすることにより、非発泡オレフィン系樹脂層(B)を表面特性向上に寄与する層とし、非発泡オレフィン系樹脂層(F)を密着性向上に寄与する層とすることにより、発泡壁紙の特性も向上する点で好ましい。なお3種3層に使用される非発泡オレフィン系樹脂層(F)としては、上記の2種2層に使用される発泡オレフィン系樹脂樹脂(A)/非発泡オレフィン系樹脂層(B)の組合せに加えて、非発泡オレフィン系樹脂層(F)としてEVA樹脂が使用することが、密着性を向上する点で好ましい。
【0029】
未発泡オレフィン系樹脂層(A')を形成する樹脂組成物に無機充填剤を含むときに、発泡剤含有樹脂層を押出し成形により形成する場合には、押出し成形機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これがシート表面の異物となり易い。そのため、未発泡オレフィン系樹脂層(A')に無機充填剤が含まれる場合には、上記非発泡オレフィン系樹脂層(B)及び非発泡オレフィン系樹脂層(F)をそれぞれ形成する樹脂組成物を、未発泡オレフィン系樹脂層(A')を形成する樹脂組成物と共に同時押出し成形することが好ましい。同時押出し成形は、例えば、マルチマニホールドタイプのTダイを用いることにより行える。このように未発泡オレフィン系樹脂層(A')を2つの非発泡オレフィン系樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し成形することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0030】
(ii)可視光型光触媒分散液の塗布、乾燥
本発明の可視光型光触媒分散液中に存在する可視光型光触媒は、粒子状でも繊維状でもよい。粒子状の場合の平均一次粒子径通常500nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下であるのが好ましく、また、その平均二次粒子径は通常15μm以下であるのが好ましい。
本発明の可視光型光触媒分散液中に占める可視光型光触媒の含有量は、用途に応じて適宜設定すればよく特に制限されないが、通常、下限は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、上限は30重量%以下になるように設定される。なお、可視光型光触媒の含有量(すなわち分散液中の粉末の量)が多くなるほど、後述する混合(特に初期混合)を効率的に行うことができる。このことを考慮して、仕込み時には可視光型光触媒の含有量が所定量よりも多くなるような設定にしておき、後工程で溶媒を添加して希釈することにより所望の含有量となるようにすることもできる。
本発明における水系溶媒は、水を主成分とし、後述するリン酸アンモニウム塩を溶解するものであればよく、例えば、水;エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類と水との混合溶媒のような水性媒体;などが挙げられる。これらの中でも特に、水が好ましい。
【0031】
本発明の可視光型光触媒分散液を得るに際しては、前記混合で得られた混合物に、さらに必要に応じて、粗大粒子の除去、可視光型光触媒含有量の調整(希釈等)、pH調整などの操作を施すことができる。これら操作の具体的手法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用すればよい。
本発明の可視光型光触媒分散液を保管する際には、光が当たらない条件下で保管することが好ましく、例えば、暗室内に保管するか、もしくは、紫外線および可視光線の透過率が各々10%以下の遮光性容器に入れて保管することが好ましい。
本発明の可視光型光触媒分散液を用いて塗膜を形成するに際しては、例えば、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード、スプレーまたはハケ塗りなど従来公知の方法により分散液を塗布し、その後、分散液中の水系溶媒を除去しうる温度で加熱する等すればよい。本発明の可視光型光触媒分散液による塗膜形成は、例えば、硝子、プラスチック、金属、陶磁器、コンクリートなど、あらゆる基材に対して行なうことができる。
【0032】
(iii)未発泡オレフィン系樹脂層(A')の発泡
必要に応じて裏打ち紙層(G)上に未発泡オレフィン系樹脂層(A')/非発泡オレフィン系樹脂層(B)、又は非発泡オレフィン系樹脂層(F)/未発泡オレフィン系樹脂層(A')/非発泡オレフィン系樹脂層(B)をこの順に積層後、未発泡オレフィン樹脂層(A')を加熱することにより発泡オレフィン系樹脂層(A)を形成する。加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡オレフィン系樹脂層(A)が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
前記加熱処理の前に、電子線照射を行ってもよい。電子線照射より樹脂成分を架橋できるため、壁紙の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤ともいう。)を用いて実施することもできる。
【0033】
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよい。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋剤は、樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部程度とすることが好ましく、特に1〜4重量部とすることがより好ましい。
【0034】
本発明の第2の態様である「可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法」の採用により、可視光型光触媒分散液の塗布後、可視光型光触媒層(D)を形成するための乾燥工程と未発泡オレフィン系樹脂層(A')の発泡を同時に行なえることで製造工程が少なくなり、コストを低減できる。又、前記発泡後に、絵柄模様層(E)や可視光型光触媒層(D)を形成した場合、発泡オレフィン系樹脂層(A)の凹凸の影響により、前記層を綺麗に塗付することが難しかったが、発泡前に前記層を形成可能となったため綺麗に塗付することが可能となる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下に記載する方法になんら限定されるものではない。
[実施例1]
(1)可視光型光触媒機能を有する壁紙の作製
以下の(i)から(iii)に記載する工程により、図1(A)に示す可視光型光触媒機能を有する壁紙を作製した。
(i)壁紙基材の作製
公知のTダイ押出機を用いて、いずれもエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用して、非発泡オレフィン系樹脂層形成樹脂組成物/未発泡オレフィン系樹脂層形成樹脂組成物/非発泡オレフィン系樹脂層樹脂組成物の順に、各層の厚みが15μm/100μm/10μmになるように製膜して3層から成る積層体Aを得た。このとき、非発泡オレフィン系樹脂層のシリンダー温度は160℃とし、未発泡オレフィン系樹脂層のシリンダー温度は120℃とし、いずれもダイス温度は120℃とした。
非発泡オレフィン系樹脂層と、未発泡オレフィン系樹脂層に用いた樹脂と樹脂組成物は以下の通りである。
(a)非発泡オレフィン系樹脂:エチレン−酢酸ビニル系共重合体:住友化学(株)製、商品名:スミテートCV5053:100質量部
(b)未発泡オレフィン系層樹脂組成物:エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:スミテートCV5053):100質量部
・発泡剤(永和化成製、商品名:ADCA#3):4質量部
・炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH):30質量部
・二酸化チタン(顔料)(デュポン製、商品名:タイピュアR−108):20質量部
・光安定材((株)ADEKA製、商品名:OF−101):1質量部
・架橋剤(JSR(株)製、商品名:オブスターJVA−702):1質量部
【0036】
(ii)壁紙基材に裏打ち紙層の積層
次に、前記積層体Aの非発泡層樹脂(10μm)面に裏打ち紙層(米秤量60g/m 興人(株)製、WK−FKKD)を積層して積層体Bを得た。
その後、該積層体Aの表面強度の向上を図る目的で、積層体Bに対して200kV、5Mradにて電子線照射を行なった。
(iii)非発泡オレフィン系樹脂層(15μm)上に、プライマー層、絵柄模様層、及び可視光型光触媒層の形成
次いで、グラビア印刷により、積層体Bの非発泡オレフィン系樹脂層(15μm)の表面にEVA系水性エマルジョンを2g/m塗布して、乾燥させ、プライマー層を形成し、積層体Cを得た。
積層体Cのプライマー層上に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様(絵柄模様層)を印刷し、更にその上に可視光型光触媒コーティング液(住友化学(株)製、酸化チタン光触媒コーティング剤(無機バインダー入))を乾燥後の重量が1g/mとなるように塗工して積層体Dを得た。
その後、該積層体Dを加熱発熱炉内で、230℃で発泡剤が含有されている未発泡オレフィン系樹脂層を発泡させ、次に発泡層の表側にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、図1(A)に示す壁紙を得た。
【0037】
(2)可視光型光触媒機能を有する壁紙の評価
(i)紫外光照射によるアセトアルデヒドの分解試験
前記壁紙試験片(5cm×10cm)を、内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入し、5Lの合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕をテドラーバック内に送り込み、ブラックライト2mW/cmで16時間初期化処理をした。
その後、テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度が20ppmとなるように1体積%のアセトアルデヒド0.94mlをテドラーバック内に送り込み、ブラックライト1mW/cmを照射して、アセトアルデヒドの分解試験を実施した。テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度の経時変化はガスクロマトグラフィーにより測定した。測定結果を図2に示す。
(ii)可視光照射によるアセトアルデヒドの分解試験
上記壁紙試験片(5cm×10cm)を内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入し、469ミリリットル(mL)の合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕を送り込み、ブラックライト2mW/cmで32時間初期化処理を施した。
その後、テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度が20ppmとなるように1体積%のアセトアルデヒド0.94mlをテドラーバック内に送り込み、蛍光灯6000lxを照射して、アセトアルデヒドの分解試験を実施した。テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度の経時変化はガスクロマトグラフィーにより測定した。測定結果を図3に示す。
(iii)考察
実施例1で作製した壁紙は、ブラックライト、及び蛍光灯のいずれにおいても光活性を有していることが確認された。
【0038】
[比較例1]
(1)壁紙の作製
(i)壁紙基材の作製
基材として壁紙用裏打紙(興人(株)製、商品名:WK−FKKD、米秤量60g/m)上に、コンマコーター法を用い、下記組成の発泡樹脂組成物を100μmの厚みとなるように積層壁紙基材を得た。
・塩化ビニル樹脂(東ソー(株)製、商品名:R-720):100重量部
・二酸化チタン(顔料 デュポン製、商品名:タイピュアR−108):17重量部
・炭酸カルシウム:白石工業製、商品名:ホワイトンH):100重量部
・可塑剤(三建加工製、DOP):55重量部
・発泡剤(永和化成製、商品名:ADCA#3):4重量部
・光安定材((株)ADEKA製、商品名:OF−101):1重量部
・セル調整剤(共同薬品製、商品名:KF-110A-6):1重量部
【0039】
(ii)絵柄模様層、触媒層の形成
前記壁紙基材上に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて、布目模様(絵柄模様層)を印刷した。
次に、上記絵柄層の上に可視光型光触媒コーティング液(住友化学(株)製、酸化チタン光触媒コーティング剤(無機バインダー入))を乾燥後の重量が1g/mとなるように塗工して積層体を得た。該積層体を加熱発泡炉を用いて230℃で発泡させて発泡樹脂層を形成した後、発泡体の表側にエンボス加工を施して、布目パターンを賦型して、図1(B)に示す壁紙を得た。
(2)壁紙の評価
実施例1に記載したと同様に、ブラックライト、及び蛍光灯によるアセトアルデヒドの分解試験を実施した。結果を図2、3に示す。
比較例1で作製した壁紙は、ブラックライト、及び蛍光灯のいずれにおいてもアセトアルデヒドの分解は殆ど観察されず、光活性を有していなかった。
【0040】
[比較例2]
(1)壁紙の作製
前記実施例1に記載の壁紙において、絵柄模様層の上に、可視光型光触媒コーティング液の代わりに、水系アクリルコート液(日信化学工業(株)製、商品名:ビニブラン)を乾燥後の塗布重量が1g/mとなるように塗工し、乾燥して、図1(C)に示す壁紙を得た。
(2)壁紙の評価
実施例1に記載したと同様に、ブラックライト、及び蛍光灯によるアセトアルデヒドの解試験を実施した。結果を表1と図2、3に示す。
比較例2で作製した壁紙は、ブラックライト、及び蛍光灯のいずれにおいてもアセトアルデヒドの分解は殆ど観察されず、光活性を有していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1(A)は実施例1、図1(B)は比較例1、図1(A)は比較例2、でそれぞれ作製した壁紙である。
【図2】図2は実施例1と、比較例1、2における紫外光照射条件下でのアセトアルデヒド分解試験結果を示すグラフである。
【図3】図3は実施例1と、比較例1、2における可視光照射条件下でのアセトアルデヒド分解試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
10 壁紙
11 発泡オレフィン系樹脂層(A)
12 非発泡オレフィン系樹脂層(B)
13 可視光型光触媒層(D)
14 絵柄模様相(E)
15 裏打ち紙層(G)
16 非発泡オレフィン系樹脂層(F)
20 比較例1で形成した壁紙
21 塩化ビニル樹脂発泡層
30 比較例2で形成した壁紙
31 アクリルコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発泡オレフィン系樹脂層(A)に非発泡オレフィン系樹脂層(B)が積層された壁紙基材(C)に、更に非発泡オレフィン系樹脂層(B)上に可視光型光触媒層(D)が形成されていることを特徴とする、可視光型光触媒機能を有する壁紙。
【請求項2】
前記可視光型光触媒層(D)中の可視光型光触媒成分に酸化チタン触媒が含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の可視光型光触媒機能有する壁紙。
【請求項3】
前記可視光型光触媒層(D)が可視光型光触媒と無機物バインダーから形成された層であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の可視光型光触媒機能を有する壁紙。
【請求項4】
非発泡オレフィン系樹脂層(B)と可視光型光触媒層(D)の間に絵柄模様層(E)が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の可視光型光触媒機能を有する壁紙。
【請求項5】
少なくとも発泡オレフィン系樹脂層(A)、非発泡オレフィン系樹脂層(B)、及び可視光型光触媒層(D)がこの順に積層された可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法であって、
前記発泡オレフィン系樹脂層(A)形成用の未発泡オレフィン系樹脂層(A')と、非発泡オレフィン系樹脂層(B)とからなる壁紙基材(C')を形成し、次に非発泡オレフィン系樹脂層(B)上に可視光型光触媒分散液を塗付、乾燥後、加熱により未発泡オレフィン系樹脂層(A')を発泡させて発泡オレフィン系樹脂層(A)を形成することを特徴とする、可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法。
【請求項6】
前記加熱により未発泡オレフィン系樹脂層(A')を発泡させて発泡オレフィン系樹脂層(A)を形成すると共に、塗布された可視光型光触媒分散液を乾燥させて可視光型光触媒層(D)を形成することを特徴とする、請求項5に記載の可視光型光触媒機能を有する壁紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−84448(P2010−84448A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255731(P2008−255731)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】