説明

可視光応答型光触媒およびその製造方法

【課題】可視光領域で高い活性を有する酸化チタン光触媒およびその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化チタン粒子の内部および表面に、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素が分散している可視光応答型光触媒を調製した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光が照射されることで光触媒作用を示す、可視光応答型光触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の酸化チタン光触媒は、応答する光の波長が紫外線領域であるため、可視光を利用できないという欠点があった。そのため、戸外であれば太陽光に含まれる紫外線を利用できるが、室内では蛍光灯等の紫外線が非常に弱い。そのため、室内で酸化チタン光触媒を働かせる為には、紫外線の強度が強いブラックライトなどを使う必要があった。
【0003】
近年、可視光領域の光でも応答する酸化チタン光触媒の開発がなされている。例えば、マグネトロンスパッタ蒸着法により、酸化チタン光触媒にCr、Vなどの遷移金属イオンを極微量注入する方法(特許文献1参照)、酸化チタン光触媒表面にCr、V、Fe、Mn等の陽イオンを含む媒体を接触させて、陽イオンを含有させる方法(特許文献2参照)がある。
【0004】
また、酸化チタンに窒素をドープする方法(特許文献3、4参照)、酸化チタンに硫黄をドープする方法(特許文献5参照)により、可視光領域でも応答する酸化チタン光触媒が開発されている。
【0005】
さらに、酸化チタン微粒子に金属化合物の共存下で金属微粒子を担持させる方法(特許文献6参照)、酸化チタン微粒子を、白金化合物共存下で熱処理して白金化合物を担持する方法(特許文献7参照)により、可視光領域でも応答する酸化チタン光触媒が提案されている。
【0006】
さらに、酸化チタン化合物に金属化合物を混合して、酸化チタン粒子を製造することにより、酸化チタン粒子の内部に鉄イオン、クロムイオンやコバルトイオンを含有させる方法により、可視光領域でも応答する酸化チタン光触媒が提案されている(特許文献8、9、10参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平9−262482号公報
【特許文献2】特開2000−237598号公報
【特許文献3】特開2001−205094号公報
【特許文献4】特開2002−255554号公報
【特許文献5】特開2004−143032号公報
【特許文献6】特開2000−262906号公報
【特許文献7】特開2004−143032号公報
【特許文献8】特開2002−60221号公報
【特許文献9】特開平11−255514号公報
【特許文献10】特開2000−70727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者らの検討によると、これまで開発された従来の技術に係る酸化チタン光触媒は、可視光領域の光の下で応答するとはいっても、その活性が低いのが現状である。
【0009】
本発明の課題は、かかる現状に鑑み、可視光領域で高い活性を有する酸化チタン光触媒およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明者らが研究をおこなった結果、酸化チタン光触媒に可視光領域の光で高い活性を発揮させるためには、酸化チタン粒子に含有させる物質の種類を選び、含有させる量を制御する必要があること、さらに酸化チタン光触媒の粒径を小さくして、表面積を大きくすることが肝要であることに想到し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
酸化チタン粒子の内部および表面に、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素が分散していることを特徴とする可視光応答型光触媒である。
【0012】
第2の発明は、
前記元素が、当該元素の金属微粒子として分散していることを特徴とする第1の発明に記載の可視光応答型光触媒である。
【0013】
第3の発明は、
前記元素が、当該元素を含む化合物として分散していることを特徴とする第1の発明に記載の可視光応答型光触媒である。
【0014】
第4の発明は、
前記元素が、酸化チタン粒子の内部では当該元素の金属微粒子として分散しており、酸化チタン粒子の表面では当該元素を含む化合物として分散していることを特徴とする第1の発明に記載の可視光応答型光触媒である。
【0015】
第5の発明は、
チタン化合物の溶液を加水分解、または、チタン化合物の溶液へアルカリを加えて水酸化チタンを沈殿させる第1の工程と、当該水酸化チタンを焼結して酸化チタン粒子を得る第2の工程とを有し、
前記第1の工程、または、第1と第2の工程の間において、銅、白金、銀、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含む物質を加え、
前記第2の工程において、水酸化チタンと前記化合物との混合物を焼結し、酸化チタン粒子の内部および表面に、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を分散させたことを特徴とする可視光応答型光触媒の製造方法である。
【0016】
第6の発明は、
前記酸化チタン化合物として、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、チタニウムテトライソプロポキシドを用いたことを特徴とする、第5の発明に記載の可視光応答型光触媒の製造方法である。
【0017】
第7の発明は、
前記物質を、前記元素の金属微粒子として分散させたことを特徴とする、第5の発明に記載の可視光応答型光触媒の製造方法である。
【0018】
第8の発明は、
前記物質を、前記元素を含む化合物として分散させたことを特徴とする、第5の発明に
記載の可視光応答型光触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る酸化チタンの可視光応答型光触媒(以下、本発明において、「光触媒」と略記する場合がある。)は、従来の可視光領域で活性を有する光触媒と比較して、小さい粒径の粒子が得られた。その結果、従来の可視光領域で活性を有する光触媒比較して、活性が高い。
【0020】
また、本発明に係る酸化チタンの可視光応答型光触媒の製造には、スパッタリング装置などの高価な装置は不要であり、可視光領域の光の照射によって高い活性を示す光触媒を安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは、従来の技術に係る可視光応答型光触媒が、可視光領域の光の下で応答するとはいっても、その活性が低い理由を研究、考察した。
その結果、酸化チタン粒子に含有させる物質により、可視光応答型光触媒が可視光を吸収できても、光触媒活性が向上しないことを見出した。その原因は、可視光を吸収した物質の電子伝達速度が遅い為、電子伝達の途中で再結合が起こり、光触媒作用を示さなくなるためであると考えた。
【0022】
一方、白金や銀などの金属は金属光沢があるが、これらを微粒子にすると着色することが知られている。微粒子になった白金や銀は黒色や茶色に着色し、可視光を吸収するようになる。しかし、金属微粒子を酸化チタン粒子表面にだけ担持させる方法では、金属微粒子の量が少ないため、可視光を十分吸収できず、可視光下での光触媒活性が低いという問題点があった。
【0023】
ここで本発明者らは、電子伝達速度が速い、所定の金属微粒子に着目し、当該金属微粒子を用いて酸化チタン粒子の高い光触媒活性を向上する方法を考案した。さらに、当該金属微粒子を酸化チタン粒子表面だけでなく、粒子内部にも含有させることにより、可視光を十分に吸収させることに想到した。
さらに本発明者らは、着色した所定の金属化合物にも着目した。当該金属化合物を用いて酸化チタン粒子の高い光触媒活性を向上する方法を考案した。さらに、当該金属化合物を酸化チタン粒子表面だけでなく、粒子内部にも含有させることにより、可視光を十分に吸収させることに想到した。
【0024】
以下、本発明に係る酸化チタン粒子の可視光応答型光触媒について、酸化チタン粒子、添加する金属元素の順で説明する。
【0025】
(酸化チタン粒子)
本発明に係る酸化チタン粒子の製造過程は、いくつかある。
例えば、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルを水に溶解して溶液とし、当該溶液へ炭酸ナトリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を添加すると、水酸化チタンが沈殿として得られる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を加える。但し、塩化チタンを水に溶解するときに白煙をあげ、発熱するので注意して行う。さらに、塩化チタン等を溶解した水溶液へ、炭酸ナトリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を加えると発熱するので、冷却しながら行う。
得られた沈殿を濾過し、当該沈殿に含まれる塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムを取り除くため純水で5〜6回洗浄した後、乾燥させ水酸化チタンを得る。得られた水酸化チタンを380℃程度で焼結し、粒塊を粉砕して粉末にすると光触媒作用を示す酸化チタン粒子
が得られる。
【0026】
チタン原料として、塩化チタンを使う場合は、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)
のいずれを使うこともできる。尤も、取り扱いやすい四塩化チタン水溶液を使うと便利である。塩化チタンを使う場合に、溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を加える理由は、酸化チタンの当電点がpH6付近にあることに関係している。塩化チタンを使う場合、pHが10以上の条件では、酸化チタンを負に帯電させた粒子を作ることができ、色素を吸着させやすくなるためである。
【0027】
チタン原料として、チタニウムテトライソプロポキシドを用いる場合は、当該チタニウムテトライソプロポキシドへ水を加えて加水分解し、水酸化チタンを沈殿させる。当該水酸化チタンを乾燥させた後、例えば380℃で焼結し、粒塊を粉砕して粉末にすると光触媒作用を示す酸化チタン粒子が得られる。
【0028】
例えば、塩化チタン水溶液に、塩化銅、塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化鉄、塩化マンガン、塩化クロム、塩化パラジウムから選択される1種以上の塩を混合して溶液とする。当該水溶液へ、アルカリを加えて、水酸化チタンと、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化鉄、水酸化マンガン、水酸化クロム、水酸化パラジウムから選択される1種以上を沈殿させた。溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加えた。当該沈殿物を、乾燥後、例えば380℃で焼結して、内部および表面に銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、パラジウムから選択される1種以上の成分を均一に含む酸化チタン粉末を作ることができた。アルカリとしては、炭酸ナトリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液が使用できる。
【0029】
また例えば、硫酸チタンやチタニウムテトライソプロポキシドに硝酸銀を加える場合は、焼結温度を380℃程度にすると、灰紫色の粉末が得られた。可視光の領域で光触媒活性を調べた結果、従来知られている触媒と比べ、高い活性を示した。さらに、硝酸銀の分解温度より低い380℃で焼結しても灰色の粉末が得られた。
【0030】
さらに例えば、チタン原料としてチタニウムテトライソプロポキシドを用い、さらに、銅、白金、銀、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛から選択される1種以上の化合物を混合する場合、これらの化合物を予めエタノールに溶解させても良いし、水酸化チタンが沈殿した後に、これらの化合物をエタノールに溶かして水酸化チタンと混合してもよい。
チタン原料とこれらの化合物との混合物からエタノールを蒸発させ、残差物を350〜800℃で焼結し、粉末にする方法でも、酸化チタン粒子の内部および表面に銅、白金、銀、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛の成分が均一に含まれた物質が得られる。当該酸化チタン粒子の内部および表面に銅、白金、銀、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛の成分が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0031】
(添加する金属元素)
〈白金〉
白金は、遷移金属でイオン化傾向が低い金属であり、着色した金属微粒子が得られる。
チタン原料と白金の化合物とを混合する場合、当該白金の化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、白金の化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を350〜800℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、銀や白金の金属超微粒子が均一に
含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、銀や白金の金属超微粒子が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0032】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへ白金の化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面に銀や白金の金属超微粒子が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0033】
白金の化合物としては、塩化白金酸を水に溶かして用いればよい。この他、塩化白金酸アンモニウム、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸ナトリウム、水酸化白金、白金酸ナトリウム、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、臭化白金、硫酸白金、酸化白金(IV)、酸化白金(II)、白金粉末を使うこともできる。
【0034】
例えば、塩化白金酸は370℃で分解する。酸化チタン粒子製造過程で、塩化白金酸を混合して、380℃で焼結して、内部および表面に、金属の白金を均一に含む茶色に着色した酸化チタン粉末を作ることができた。可視光の領域で光触媒活性を調べた結果、従来知られている触媒と比べ、高い活性を示した。さらに焼結温度を600℃にすると、灰色の粉末が得られた。当該灰色の粉末は、可視光の領域で光触媒活性を調べた結果、従来知られている触媒と比べ、同程度の活性であった。
【0035】
〈銀〉
銀は、遷移金属でイオン化傾向が低い金属であり、着色した金属微粒子が得られる。
チタン原料と、銀の化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該銀の化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、銀の化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、銀の金属超微粒子が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、銀の金属超微粒子が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0036】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへ銀の化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面に銀の金属超微粒子が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0037】
銀の化合物としては、硝酸銀を水に溶かして用いればよい。この他、銀原料として、フッ化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、メタリン酸銀、酢酸銀、亜硝酸銀、亜硫酸銀、塩素酸銀、シアン化銀、炭酸銀、チオ硫酸銀、硫化銀、リン酸銀、リン酸二水素銀、リン酸水素二銀、酸化銀、銀粉末を使うこともできる。
【0038】
例えば、硝酸銀は分解温度が444℃、酸化銀の分解温度は300℃である。酸化チタン粒子製造過程で、塩化チタンを原料にして、アルカリを加えると、水酸化チタンが沈殿する。硝酸銀を水に溶かし、水酸化チタンの沈殿を混合後、乾燥させ、380℃で焼結すると、内部および表面に、金属の銀を均一に含む酸化チタン粉末を作ることができた。および表面に含まれる金属の銀が超微粒子の状態で含まれるため、作成した粉末は灰紫色で可視光を吸収できる。
【0039】
〈銅〉
銅は、遷移金属でイオン化傾向が低い金属であり、着色した金属微粒子が得られる。
チタン原料と、銅の化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該銅の化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、銅の化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、銅の酸化物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、銅の酸化物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0040】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへ銅の化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面に銅の酸化物が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0041】
銅の化合物としては、塩化銅(II)を水に溶かして用いればよい。この他、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、硝酸銅(II)、水酸化銅(II)、フッ化銅(II)、硫化銅(II)、酸化銅(II)を使うこともできる。さらに、1価の塩化銅(I)、水酸化銅(I)、フッ化銅(I)、硫化銅(I)、酸化銅(I)、銅粉末を使うこともできる。
【0042】
例えば、塩化銅(II)は498℃で分解する。水酸化銅(II)は360℃で酸化銅に分解する。塩化チタンに、塩化銅(II)を混合して、アルカリを加えると、水酸化チタンと水酸化銅の混合物が共殿する。この沈殿物を380℃で焼結して、内部および表面に酸化銅を均一に含む酸化チタン粉末を作ることができた。
【0043】
可視光の領域で光触媒活性を調べた結果、塩化チタンに塩化銅(II)を混合し、水酸化チタンと水酸化銅の混合物を350〜800℃で焼結した場合に、可視光領域で活性を示した。
【0044】
また例えば、チタニウムテトライソプロポキシドに、塩化銅(II)を混合して、550℃で焼結して、内部および表面に銅の化合物を均一に含む酸化チタン粉末を作ることができた。可視光の領域で光触媒活性を調べた結果、700℃で焼結した場合に、酸化チタン粉末の内部および表面に銅の化合物が均一に分散した薄緑色の粉末が得られ、可視光領域で、高い活性を示した。
【0045】
〈ニッケル〉
チタン原料と、ニッケルの化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該ニッケルの化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、ニッケルの化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、ニッケルの化合物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、ニッケルの化合物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0046】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへニッケルの化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面
にニッケルの化合物が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0047】
ニッケルの化合物としては、塩化ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(II)、ニッケル粉末を使うことができる。
【0048】
例えば、水酸化ニッケルは230℃で分解して酸化ニッケルになる。塩化チタンに塩化ニッケルを混合して、アルカリを加えて水酸化チタンと水酸化ニッケルを沈殿させ、塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。380℃で焼結して、内部および表面に酸化ニッケルを均一に含む酸化チタン粉末を作ることができた。当該酸化ニッケルを均一に含む酸化チタン粉末は、可視光領域で高い活性を示した。
【0049】
〈コバルト〉
チタン原料と、コバルトの化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該コバルトの化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、コバルトの化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、コバルトの金属超微粒子が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、コバルトの金属超微粒子が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0050】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへコバルトの化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面にコバルトの化合物が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0051】
コバルトの化合物としては、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(III)、硝酸コバルト(II)、水酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II)、酸化コバ
ルト(III)、コバルト粉末を使うことができる。
【0052】
〈鉄〉
チタン原料と、鉄の化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該鉄の化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、鉄の化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、鉄の化合物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、鉄の化合物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0053】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへ鉄の化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面に鉄の化合物が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0054】
鉄の化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化
鉄(III)、鉄粉末を使うことができる。
【0055】
例えば、塩化鉄(III)は、300℃が融点であり、水酸化鉄(III)は350℃〜400℃で酸化鉄(III)に分解する。塩化チタンに塩化鉄(III)を混合して、アルカリを加えて水酸化チタンと水酸化鉄(III)を沈殿させ、380℃で焼結して、内部および表面
に酸化鉄(III)を均一に含む酸化チタン粉末を作ることができた。当該酸化チタン粉末
は、可視光領域で高い触媒活性を示す。
【0056】
〈マンガン〉
チタン原料と、マンガンの化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該マンガンの化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、マンガンの化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、マンガンの化合物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、マンガンの化合物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0057】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへマンガンの化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面にマンガンの化合物が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0058】
マンガンの化合物としては、マンガン原料は塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸マンガン(III)硝酸マンガン(II)、水酸化マンガン(II)、酸化マンガン(II
)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、マンガン粉末を使うことができる。
【0059】
〈クロム〉
チタン原料と、クロムの化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該クロムの化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、クロムの化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で2〜3回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、クロムの化合物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、クロムの化合物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0060】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへクロムの化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面にクロムの化合物が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0061】
クロムの化合物としては、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、硫酸クロム(II)
、硫酸クロム(III)、硝酸クロム(III)、水酸化クロム(II)、水酸化クロム(III)
、酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、クロム粉末を使うことができる。
【0062】
〈バナジウム〉
チタン原料と、バナジウムの化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程にお
いて、当該バナジウムの化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、バナジウムの化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、バナジウムの化合物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、バナジウムの化合物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0063】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへバナジウムの化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面にバナジウムの化合物が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0064】
バナジウムの化合物としては、塩化バナジウム(III)、メタバナジン酸ナトリウム、
五酸化バナジウム、バナジウム粉末を使うことができる。
【0065】
〈パラジウム〉
チタン原料と、パラジウムの化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該パラジウムの化合物と、塩化チタン、硫酸チタンとを混合しておくことで、パラジウムの化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、パラジウムの化合物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、パラジウムの化合物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0066】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへパラジウムの化合物の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面にパラジウムの金属超微粒子が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0067】
パラジウムの化合物としては、塩化パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、酸化パラジウム(II)、パラジウム粉末を使うことができる。
【0068】
〈モリブデン〉
チタン原料と、モリブデンの化合物とを混合する場合、酸化チタン粒子の製造過程において、当該モリブデンの化合物と、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルとを混合しておくことで、モリブデンの化合物と水酸化チタンとを共沈させることができる。塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。得られた沈殿を濾過し、含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを取り除くため、純水で5〜6回洗浄したのち、乾燥させる。乾燥後の沈殿を300〜800℃で焼結し粉末にすることで、当該粉末の内部および表面に、モリブデンの化合物が均一に含まれた物質ができる。当該粉末の内部および表面に、モリブデンの化合物が均一に含まれた物質は、可視光領域で光触媒活性を示す。
【0069】
また、一旦、水酸化チタンを生成させた後に、当該水酸化チタンへモリブデンの化合物
の水溶液を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法も好ましい。当該方法によっても、粉末の内部および表面にモリブデンの金属超微粒子が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0070】
モリブデンの化合物としては、塩化モリブデン(V)、酸化モリブデン(IV)、酸化モ
リブデン(VI)、モリブデン酸(VI)、七モリブデン酸六アンモニウム、モリブデン酸(IV)二ナトリウム、硫化モリブデン(IV)、炭化モリブデン、モリブデン粉末を使うことができる。
【0071】
〈亜鉛〉
亜鉛は、イオン化傾向が大きく酸化されやすい金属である。
亜鉛の化合物は白色で可視光を吸収しない。一方、亜鉛粉末は灰色であり、可視光を吸収する。そこで、水酸化チタンを生成させた後に、塩化チタンを使う場合は、溶液のpHが10以上になるまでアルカリを加える。当該水酸化チタンへ亜鉛を加え、よく混合して乾燥させ、300〜800℃、より好ましくは300〜400℃で焼結し、粉末にする方法が好ましい。当該方法により、粉末の内部に亜鉛の超微粒子が均一に含まれ、可視光領域で光触媒活性を示す物質が得られる。
【0072】
亜鉛としては、亜鉛粉末を使うことができる。
例えば、酸化チタン粒子製造過程で、亜鉛粉末を混合して、380℃で焼結して、内部に金属の亜鉛を均一に含む灰色に着色した酸化チタン粉末を作ることができた。可視光の領域で光触媒活性を調べた結果、従来知られている触媒と比べ、高い活性を示した。
【0073】
酸化チタン粒子に対する、上記、銅、白金、銀、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛の混合比は、0.1〜10重量%の範囲が好ましい。さらに、酸化チタン粒子に対する、これら銅、白金、銀、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛の混合比は、1〜5重量%であることが更に好ましい。一方、酸化チタン粒子に対する鉄の混合比は5〜20重量%が最適である。
【0074】
以上説明したように、酸化チタン粒子製造過程で金属化合物を混合すると、酸化チタン粒子の内部に金属化合物を含むことになる。最終的に焼結すると、表面だけでなく、内部に金属微粒子が含有された酸化チタン粒子ができ、可視光を十分に吸収できるようになり、活性を高めることが出来た。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
(試料の調製)
2Lビーカーに水1.5Lを入れ、塩化チタン(IV)5mLを除々に投入れする。次に、ここへ、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液90mLを少しずつ加え、水酸化チタンを沈殿させた。塩化チタンを使うので、溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液を加えた。尚、塩化チタン(IV)を水で希釈する際は、激しく発煙し発熱する。ここへ、炭酸ナトリウム水溶液を加えると、さらに発熱する。そこで、当該添加操作は、ドラフト中において溶液を氷水で冷却し、溶液を撹拌しながら除々に行った。生成した沈殿を、吸引ロートを使って濾過し、得られた水酸化チタン沈殿に純水を加えてよく撹拌し、再度吸引濾過した。この操作を6度繰り返し、水酸化チタン沈殿中の塩化ナトリウムを除去した。
【0076】
硝酸銀0.06gを水20mLに溶かし、ここへ塩化ナトリウムを除去した水酸化チタンの沈殿を加えて撹拌した。次に、当該攪拌物を90℃で15時間放置し、水を完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査物を380℃で4時間焼結して粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、灰色に着色した粉末(試料A)が得られた。
【0077】
(色素溶液の分解実験)
試料Aの光触媒作用を調べるために、試料Aによる色素溶液の分解実験を行った。ここで、色素としてのメチレンブルーは664nmに吸光度を持ち、色素濃度を測定できる為、当該色素溶液の分解実験に用いた。
【0078】
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、試料Aを30mg入れ、マグネチックスターラーで30分間光を照射しないで撹拌し、分解実験用試料とした。
ここで、比較の為、市販品(石原産業(株)製の可視光応答の酸化チタン光触媒(MPT−623):以下、市販品と記載する。)の酸化チタン光触媒粉末30mgを準備し、試料Aと同様にメチレンブルーを混合し、マグネチックスターラーで30分間光を照射しないで攪拌し、分解実験用試料とした。攪拌開始時(照射前30分間)、攪拌10分間後(照射前20分間)、攪拌30分間後(照射0分間)に、実験用試料溶液の一部分取し、小型遠心分離器(FB−4000)を用いて12000回転で4分間遠心分離し、固体分を分離除去した。遠心分離後の実験用試料溶液の664nmの吸光度を測定した。
一方、光源として、150Wキセノンランプの光を、紫外線カットフィルターL−42と熱線をカットする水フィルターに通した可視光を準備した。
分解実験用試料に90分間、当該可視光を照射した。そして、照射30分間後、60分間後、90分間後に、分解実験用試料溶液の一部分取し、小型遠心分離器(FB−4000)を用いて12000回転で4分間遠心分離し、固体分を分離除去した。遠心分離後の分解実験用試料溶液に対し、664nmの吸光度を測定した。実験結果を表1に示す。
【0079】
ここで、酸化チタン触媒は、色素を分解するだけでなく吸着もする為、当該吸着分を明確化する為、可視光を照射しない以外は、同様の操作を行う暗実験も行った。
当該実験結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
試料A、市販品とも、照射前20分間にメチレンブルー色素濃度が急速に減少している。これは、酸化チタン粉末によるメチレンブルー色素吸着の結果であると考えられる。当該、照射前20分間のメチレンブルー色素濃度に関し、試料Aの方が市販品より下がって
いる。
【0082】
ここで、図1は、試料Aと市販品とについて、横軸に光の照射時間(暗実験においては経過時間)をとり、縦軸にはメチレンブルーの濃度をとり、縦軸を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析した。メチレンブルーが0.8mg/Lの濃度になる時間は、試料Aで30分間以内であるが、市販品は90分間以上必要である。試料Aの性能は、吸着性能と分解性能とを総合的に判断すると、市販品より上回っていることがわかった。暗実験試験の90分間後の溶液は、吸着が起こっただけで、色は薄くなったが、メチレンブルーの青色のままであった。光照射試験の90分間後の溶液は、メチレンブルーが分解するため青紫色に変色した。当該変色は、波長664nmの吸収より600nm付近の吸収の寄与が大きいメチレンブルーの分解生成物であるアズールBやアズールA等の有色の反応中間体の(以下、単に「反応中間体」と記載する場合がある。)影響である。吸収スペクトルの測定により、吸収の波形の変化から確認できた。
さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Aを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、分解が起きていることが確認できた。対照実験として、可視光応答型光触媒でないST―01(石原産業(株)製)を使い、同様に実験してメチレンブルーの色が消えないことを確認した。
さらに、図1において、当該実施例に係る試料の光照射試験結果は●と実線にて示し、暗実験試験結果は◆と長破線にて示し、市販品の光照射試験結果は■と短破線にて示し、暗実験試験結果は▲と一点鎖線にて示した。以下、図2〜図14においても同様である。
【0083】
[実施例2]
(試料の調製)
500mLビーカーを使い、硝酸銀0.6gをエタノール200mLに溶かし溶液とした。当該溶液へ、チタニウムテトライソプロポキシドを25mL加え、マグネチックスターラーで撹拌した。当該攪拌物へ、水を少しずつ1mL加えると水酸化チタンが沈殿した。この後、当該沈殿物を70℃で12時間放置し、エタノールを完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査を380℃で4時間焼結した後、さらに500℃で1時間焼結し粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、灰紫色に着色した粉末(試料B)を得た。
【0084】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、試料Bを30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
試料B、市販品とも、照射前20分間にメチレンブルーの色素濃度が急速に減少するのは、実施例1と同様に、酸化チタン粉末による吸着の結果であると考えられる。そして、当該照射前20分間に、内部に銀の成分を含有した試料Bの方が、市販品よりメチレンブルーの濃度を下げている。
【0087】
90分間後の結果は、試料Bの方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図2は、試料Bと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きからメチレンブルーの分解速度を解析し、吸着性能と分解性能とを総合的に判断すると、試料Bの性能は、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Bを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0088】
[実施例3]
(試料の調製)
実施例1と同様にして、塩化ナトリウムを除去した水酸化チタンの沈殿を調製した。
塩化白金酸0.05gを水20mLに溶かし溶液とした。この塩化白金酸溶液に、調製した塩化ナトリウムを除去した水酸化チタンの沈殿を加えて撹拌した。次に、当該沈殿物を90℃で15時間放置し、水を完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査物を380℃で4時間焼結して粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、茶色に着色した粉末(試料C)を得た。
【0089】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、試料Cを30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
試料C、市販品とも、照射前20分間にメチレンブルーの色素濃度が急速に減少するのは、実施例1と同様に、酸化チタン粉末による吸着の結果であると考えられる。
【0092】
90分間後の結果は、試料Cの方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図3は、試料Cと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析し、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、試料Cの性能は、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Cを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0093】
[実施例4]
(試料の調製)
500mLビーカーを使い、塩化白金酸0.36gをエタノール200mLに溶かし溶液とした。この後は、実施例2と同様の操作を行い、得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、茶色に着色した粉末(試料D)を得た。
【0094】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、試料Dを30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表4に示す。ここで、比較の為、市販品の酸化チタン光触媒粉末30mgを準備し、試料Dと同様にメチレンブルーを混合し、攪拌し、分解実験用試料とした。
【0095】
【表4】

【0096】
試料D、市販品とも、照射前20分間にメチレンブルーの色素濃度が急速に減少するのは、実施例1と同様に、酸化チタン粉末による吸着の結果であると考えられる。内部および表面に白金を含有した試料Dと、市販品とで照射前20分間、ほぼ同じ結果が得られた。
【0097】
90分間後の結果は、試料Dの方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図4は、試料Dと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析し、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、試料Dの性能は、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Dを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0098】
[実施例5]
(試料の調製)
500mLビーカーを使い、塩化銅(II)0.27gをエタノール200mLに溶かし溶液とした。当該溶液へ、チタニウムテトライソプロポキシドを25mL加え、マグネチックスターラーで撹拌した。当該攪拌物へ、水を少しずつ1mL加えると水酸化チタンが沈殿した。この後、当該沈殿物を70℃で12時間放置し、エタノールを完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査を380℃で4時間焼結した後、さらに500℃で1時間焼結し粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、灰紫色に着色した粉末(試料E)を得た。
【0099】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度10mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、薄緑に着色した試料Eを10mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表5に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
試料E、市販品とも、照射前20分間にメチレンブルーの色素濃度が急速に減少するのは、実施例1と同様に、酸化チタン粉末による吸着の結果であると考えられる。
【0102】
90分間後の結果は、試料Eの方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図5は、試料Eと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析すると、試料Eの性能は、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Eを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0103】
[実施例6]
(試料の調製)
2Lビーカーに水1.5Lを入れ、塩化銅(II)0.06gを投入し溶解して溶液とした。当該溶液へ、塩化チタン(IV)5mLを除々に投入した。次に、当該溶液へ、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液90mLを少しずつ加え、水酸化チタンを沈殿させた。溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液を加えた。尚、塩化チタン(IV)を水で希釈する際は、激しく発煙し発熱する。ここへ、炭酸ナトリウム水溶液を加えると、さらに発熱する。そこで、当該添加操作は、ドラフト中において溶液を氷水で冷却し、溶液を撹拌しながら除々に行った。生成した沈殿を、吸引ロートを使って濾過し、得られた水酸化チタン沈殿に純水を加えてよく撹拌し、再度吸引濾過した。この操作を7度繰り返し、水酸化チタン沈殿中の塩化ナトリウムを除去した。
【0104】
次に、当該沈殿物を90℃で10時間放置し、水を完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査物を380℃で4時間焼結して粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、薄緑色に着色した粉末(試料F)が得られた。
【0105】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度10mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、薄緑に着色した試料Fを10mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表6に示す。
【0106】
【表6】

【0107】
試料F、市販品とも、照射前20分間にメチレンブルーの色素濃度が急速に減少するのは、実施例1と同様に、酸化チタン粉末による吸着の結果であると考えられる。そして、当該照射前20分間に、内部に銅の化合物を含有した試料Fの方が、市販品よりメチレンブルーの濃度を下げている。
【0108】
90分間後の結果は、試料Fの方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図6は、試料Fと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析し、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、試料Fの性能は、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Fを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0109】
[実施例7]、[実施例8]
(試料の調製)
2Lビーカーに水1.5Lを入れ、塩化ニッケル(II)[実施例7]、または、塩化コバルト(II)[実施例8]0.0.6gを投入し溶解して溶液とした。当該溶液へ、塩化チタン(IV)5mLを除々に投入した。次に、当該溶液へ、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液90mLを少しずつ加え、水酸化チタンを沈殿させた。溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液を加えた。尚、塩化チタン(IV)を水で希釈する際は、激しく発煙し発熱する。ここへ、炭酸ナトリウム水溶液を加えると、さらに発熱する。そこで、当該添加操作は、ドラフト中において溶液を氷水で冷却し、溶液を撹拌しながら除々に行った。生成した沈殿を、吸引ロートを使って濾過し、得られた水酸化チタン沈殿に純水を加えてよく撹拌し、再度吸引濾過した。この操作を7度繰り返し、水酸化チタン沈殿中の塩化ナトリウムを除去した。
【0110】
次に、当該沈殿物を90℃で10時間放置し、水を完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査物を380℃で4時間焼結して粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、薄緑色に着色した粉末(試料G)[実施例7]、または、薄青に着色した粉末(試料H)[実施例8]が得られた。
【0111】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、薄黄緑に着色した試料G[実施例7]、または、薄青に着色した試料H[実施例8]を30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表7および表8に示す。
【0112】
【表7】

【0113】
【表8】

【0114】
18分間後の結果は、試料G[実施例7]、試料H[実施例8]の方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図7は、試料Gと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフであり、図8は、試料Hと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析し、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、試料G[実施例7]の性能は、市販品より上回っていること、試料H[実施例8]の分解性能は、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを2本の30mLガラス製サンプル管に入れ、試料G[実施例7]、試料H[実施例8]を各々40mg入れ、マグネチックスターラー攪拌しながらで60分間可視光を照射すると、試料G[実施例7]、試料H[実施例8]とも完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0115】
[実施例9]
(試料の調製)
2Lビーカーに水1.5L入れ、塩化鉄(III)を0.6g溶解して溶液とした。次に
、当該溶液へ、塩化チタン(IV)5mLを除々に投入し、さらに、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液90mLを少しずつ投入し水酸化チタンを沈殿させた。溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液を加えた。塩化チタン(IV)を水で希釈する際には、激しく発煙し発熱し、さらに、炭酸ナトリウム水溶液を加えると発熱する。そこで、当該操作は、ドラフト中で溶液を氷水で冷却し、撹拌しながら除々行った。
生成した沈殿を、吸引ロートを使って濾過し、得られた水酸化チタン沈殿に純水を加えてよく撹拌し、再度吸引濾過した。この操作を6度繰り返し、水酸化チタン沈殿中の塩化ナトリウムを除去した。
【0116】
次に、当該沈殿物を90℃で10時間放置し、水を完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査物を380℃で4時間焼結して粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、薄赤褐色に着色した粉末(試料J)が得られた。
【0117】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、薄赤褐色に着色した試料Jを30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表9に示す。
【0118】
【表9】

【0119】
18分間後の結果は、試料Jの方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図9は、試料Jと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析すると、試料Jの性能は、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Jを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0120】
[実施例10]、[実施例11]
(試料の調製)
2Lビーカーに水1.5Lを入れ、塩化マンガン(II)[実施例10]、または、塩化クロム(III)[実施例11]0.06gを投入し溶解して溶液とした。当該溶液へ、塩
化チタン(IV)5mLを除々に投入した。次に、当該溶液へ、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液90mLを少しずつ加え、水酸化チタンを沈殿させた。溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液を加えた。尚、塩化チタン(IV)を水で希釈する際は、激しく発煙し発熱する。ここへ、炭酸ナトリウム水溶液を加えると、さらに発熱する。そこで、当該添加操作は、ドラフト中において溶液を氷水で冷却し、溶液を撹拌しながら除々に行った。生成した沈殿を、吸引ロートを使って濾過し、得られた水酸化チタン沈殿に純水を加えてよく撹拌し、再度吸引濾過した。この操作を6度繰り返し、水酸化チタン沈殿中の塩化ナトリウムを除去した。
【0121】
次に、当該沈殿物を90℃で10時間放置し、水を完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査物を380℃で4時間焼結して粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、薄黄色に着色した粉末(試料K)[実施例10]、または、薄青緑色に着色した(試料L)[実施例11]が得られた。
【0122】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、薄黄色に着色した試料K[実施例10]、または、薄青緑色に着色した試料L[実施例11]をそれぞれ別々に試料K[実施例10]は20mg、試料L[実施例11]は30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表10および表11に示す。
【0123】
【表10】

【0124】
【表11】

【0125】
18分間後の結果は、試料K[実施例10]、試料L[実施例11]の方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図10は、試料Kと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフであり、図11は、試料Lと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析すると、試料K[実施例10]の分解性能は、市販品より上回っていること、試料L[実施例11]の性能は、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料K[実施例10]、試料L[実施例11]を40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0126】
[実施例12]
(試料の調製)
実施例1と同様にして、塩化ナトリウムを除去した水酸化チタンの沈殿を調製した。
得られた水酸化チタンに亜鉛粉末0.08gを加えてよく混合し、90℃で10時間放置し、水を完全に蒸発させた。380℃で4時間焼結した。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、灰色に着色した粉末(試料M)を得た。
【0127】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、灰色に着色した試料Mを30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表12に示す。
【0128】
【表12】

【0129】
18分間後の結果は、試料Mの方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図12は、試料Mと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きから、メチレンブルーの分解速度を解析すると、試料Lの分解性能は、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料Mを40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら90分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0130】
[実施例13]、[実施例14]
(試料の調製)
2Lビーカーに水1.5Lを入れ、メタバナジン酸ナトリウム[実施例13]、または、七モリブデン酸六アンモニウム[実施例14]0.06gを投入し溶解して溶液とした。当該溶液へ、塩化チタン(IV)5mLを除々に投入した。次に、当該溶液へ、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液90mLを少しずつ加え、水酸化チタンを沈殿させた。溶液のpHが10以上になるまで炭酸ナトリウム水溶液を加えた。尚、塩化チタン(IV)を水で希釈する際は、激しく発煙し発熱する。ここへ、炭酸ナトリウム水溶液を加えると、さらに発熱する。そこで、当該添加操作は、ドラフト中において溶液を氷水で冷却し、溶液を撹拌しながら除々に行った。生成した沈殿を、吸引ロートを使って濾過し、得られた水酸化チタン沈殿に純水を加えてよく撹拌し、再度吸引濾過した。この操作を6度繰り返し、水酸化チタン沈殿中の塩化ナトリウムを除去した。
【0131】
次に、当該沈殿物を90℃で10時間放置し、水を完全に蒸発させて残査物を得た。当該残査物を380℃で4時間焼結して粒塊を得た。得られた粒塊を乳鉢で粉砕し、微黄色に着色した粉末(試料N)[実施例13]、または、微黄色に着色した(試料O)[実施例14]が得られた。
【0132】
(色素溶液の分解実験)
初期濃度5mg/Lのメチレンブルー40mLをガラス製サンプル管に入れ、微黄色に着色した試料N[実施例13]、または、微黄色に着色した試料O[実施例14]をそれぞれ別々に30mg入れ、マグネチックスターラーで撹拌し、分解実験用試料とした。この後は、実施例1と同様の実験を行った。当該実験結果を表13および表14に示す。
【0133】
【表13】

【0134】
【表14】

【0135】
90分間後の結果は、試料N[実施例13]、試料O[実施例14]の方が、市販品の性能を上回っている。
ここで、図13は、試料Nと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフであり、図14は、試料Oと市販品とについて、照射時間とメチレンブルーの濃度との関係を対数プロットしたグラフである。当該グラフの傾きからメチレンブルーの分解速度を解析し、吸着性能と分解性能を総合的に判断すると、試料N[実施例13]の性能は、市販品より上回っていること、試料O[実施例14]の分解性能は、市販品より上回っていることがわかった。光照射試験の90分間後の溶液は、青紫色に変化した。さらに、初期濃度2mg/Lのメチレンブルー15mLを30mLガラス製サンプル管に入れ、試料N[実施例13]、試料O[実施例14]を40mg入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら60分間可視光を照射すると、完全に白くなったことから、メチレンブルーが分解され、さらに、有色のメチレンブルーの反応中間体の分解が起きていることが確認できた。
【0136】
ここで示した実施例は、酸化チタン粒子の内部および表面に、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる1種類の元素を分散させた可視光応答型光触媒を示した。さらに本発明者らの検討によると、酸化チタン粒子の内部および表面に、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マ
ンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる2種類以上の組み合わせの元素を分散させた場合も、可視光応答型光触媒が得られることがわかった。
【0137】
さらに本発明者らの検討によると、本発明に係る光触媒は、空気試験の結果、可視光だけで、アセトアルデヒドも分解できることもわかった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明に係る光触媒は、可視光線だけで光触媒作用を示すため、紫外線を多く含まない室内の蛍光灯などの照明を利用した空間で、脱臭や防汚、殺菌、脱色などの環境改善に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】実施例1に係る試料Aと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図2】実施例2に係る試料Bと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図3】実施例3に係る試料Cと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図4】実施例4に係る試料Dと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図5】実施例5に係る試料Eと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図6】実施例6に係る試料Fと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図7】実施例7に係る試料Gと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図8】実施例8に係る試料Hと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図9】実施例9に係る試料Jと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図10】実施例10に係る試料Kと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図11】実施例11に係る試料Lと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図12】実施例12に係る試料Mと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図13】実施例13に係る試料Nと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。
【図14】実施例14に係る試料Oと市販品とのメチレンブルー分解速度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子の内部および表面に、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素が分散していることを特徴とする可視光応答型光触媒。
【請求項2】
前記元素が、当該元素の金属微粒子として分散していることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項3】
前記元素が、当該元素を含む化合物として分散していることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項4】
前記元素が、酸化チタン粒子の内部では当該元素の金属微粒子として分散しており、酸化チタン粒子の表面では当該元素を含む化合物として分散していることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項5】
チタン化合物の溶液を加水分解、または、チタン化合物の溶液へアルカリを加えて水酸化チタンを沈殿させる第1の工程と、当該水酸化チタンを焼結して酸化チタン粒子を得る第2の工程とを有し、
前記第1の工程、または、第1と第2の工程の間において、銅、白金、銀、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含む物質を加え、
前記第2の工程において、水酸化チタンと前記化合物との混合物を焼結し、酸化チタン粒子の内部および表面に、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を分散させたことを特徴とする可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項6】
前記酸化チタン化合物として、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、チタニウムテトライソプロポキシドを用いたことを特徴とする、請求項5に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項7】
前記物質を、前記元素の金属微粒子として分散させたことを特徴とする、請求項5に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項8】
前記物質を、前記元素を含む化合物として分散させたことを特徴とする、請求項5に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−78264(P2009−78264A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225776(P2008−225776)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(591270682)
【出願人】(501132572)
【Fターム(参考)】