説明

台紙レスラベル発行装置

【課題】装置が大きくなることなく、切断刃にオイルを効果的に塗布することができ、切断刃に糊や切り滓等が付着するのを防止できる台紙レスラベル発行装置を提供する。
【解決手段】帯状用紙9の一方の面に粘着層が形成された台紙レスラベル用紙9’を、刃体5aにより枚葉状に切断する台紙レスラベル発行装置Aにおいて、前記刃体5aと対向してオイル含浸体6を配置し、前記オイル含浸体6を押圧手段7で前記刃体5aの側面に接離自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一方の面に粘着層が形成された帯状の連続用紙を用い、枚葉状の用紙を切断発行する台紙レスラベル発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のラベルプリンタとして、長尺帯状の台紙にラベルが貼着されたラベル用紙を、ラベルを台紙に貼着したまま該台紙を切断してラベルを発行するものがある。そして、前記台紙を切断する切断ユニット(可動刃と固定刃)の可動刃は、台紙を切断する毎に、オイルを含浸したスポンジと接触するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
このものは、可動刃が台紙を切断する毎にオイルを含浸したスポンジ(オイル含浸体)に接触するので、該可動刃にオイルが付着(塗布)され、それにより可動刃に糊や切断時に発生する切り滓(紙粉)が付着するのを防止している。
【0003】
しかし、前記引用文献1に記載のものは、可動刃の動作の度にスポンジに接触してオイルを染み出させるため、スポンジに含浸されたオイルの消耗が早いという問題がある。尚、前記問題を解消する方法として、例えば、オイル含浸体を大きくする、或いはオイル含浸体にオイルを供給するタンクを設ける方法などが考えられるが、いずれの方法も装置が大きくなる、また、コストアップになる等の問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−1899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、装置が大きくなることなく、切断刃にオイルを効果的に塗布することができ、切断刃に糊や切り滓等が付着するのを防止できる台紙レスラベル発行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の台紙レスラベル発行装置は、帯状用紙の一方の面に粘着層が形成された台紙レスラベル用紙を、刃体により枚葉状に切断する台紙レスラベル発行装置において、前記刃体と対向してオイル含浸体を配置し、前記オイル含浸体を押圧手段で前記刃体の側面に接離自在としたことを特徴とする。
前記台紙レス用紙を切断する方法として、一対の刃体にてせん断作用にて切断することが考えられるが、その他、一つの刃体で、該刃体が用紙の幅方向に移動しながら用紙を切断する刃体であってもよい。また、鋭利な山と谷とが連続した刃先を有する一つの刃体を、展張した用紙に対し駆動させ、該用紙を切断する刃体であってもよい。また、特に、一つの刃体で用紙を切断する場合は、用紙を完全切断するタイプの切断手段の他、用紙の一部に非切断部が残り、該部分から用紙を引き離してラベルとして使用する刃体を備える場合であってもよい。
前記オイル含浸体としては、例えば、連続気泡発泡体のスポンジ、或いはフェルト、海綿体等の多孔性で吸水性を有する弾性含浸体が挙げられる。
前記オイル含浸体を刃体に接離させる押圧手段は、前記オイル含浸体を直接移動させる直接移動方式、或いは他の部材の動きに連係して移動する間接移動方式の何れでもよく、また、手動、電動の何れでもよい。
前記粘着層は予め帯状用紙の一方の面に設けられている用紙でも、或いは、ラベル用紙発行の際に該用紙の所定箇所を加熱用のサーマルヘッドにより加熱することで粘着層が生成される用紙など、何れであってもよい。
【0007】
上記手段によれば、刃体の切断動作と関係なく、オイルを刃体の側面に塗布することができる。例えば、オペレータが装置の刃体を目視確認し、切れ味が悪くなった時、押圧手段を操作して刃体にオイルを塗布することができる。これにより、オイルの塗布が用紙を切断する度に行われることはなく、従って、オイルを沢山含浸できる大きなオイル含浸体や、大きなオイルタンクなどを備える必要がない。
また、前記刃体はせん断により用紙を切断する一対の刃体で、刃体が互いに擦れ合う側の側面にオイル含浸体が塗布されることがより効果的である。一対の刃体が擦れ合って粘着層を有する用紙が切断されるので、その擦れ合う面に糊等が付着し易くなるが、その箇所にオイルを塗布することで、糊等が付着しにくくなる。
【0008】
前記オイル含浸体は、一対の刃体で該刃体の側面と対向して配置されるが、刃体に対するオイル塗布の目的からすれば、台紙レスラベル用紙の粘着層と対向する刃体に押圧されるように配置するのが効果的である。即ち、刃体が可動するときは粘着面に向けて可動するようになるので、必然的に刃体の側面には糊等が付き易くなるが、その刃体に向けてオイルが塗布されるようになるので、より効果的にオイルを塗布することができる。
【0009】
また、前記刃体におけるラベル用紙搬送方向の上流側に印字部を備え、前記オイル含浸体は前記印字部と前記台紙レスラベル用紙を挟む対向する位置に配置する。
前記印字部はラベル発行装置として必要不可欠の機構であり、用紙を挟んだ印字部と対向する位置には印字部を設けることで生じる空間を利用してオイル含浸体を設けることができるので、前記空間を有効活用でき、装置が大型化するのを抑えてオイル含浸体を備えることができる。つまり、通常は用紙の上方に印字部を設け、下方を通過する用紙に対して印字部にて印字するようになるが、このような構造の場合には、印字部の略下方にオイル含浸体が位置するようになるので、印字部の下方の領域を利用することができ、前記のように大型化するのを抑えてオイル含浸体を備えることができる。また、粘着面より下方に可動刃が位置している場合は、該刃体に糊等が付き易くなるが、その場合であっても、オイル含浸体が印字部の略下方に位置することで、装置の前に飛び出さずコンパクトな装置にて、該可動刃にオイルを塗布することができるようになる。
【0010】
前記オイル含浸体を刃体に接離させる押圧手段の間接移動方式としては、例えば、台紙レスラベル用紙を収容する収容部のカバー部の開動に関連する動作にて前記刃体に接するよう押動する構造が挙げられる。そして、関連する動作とは、カバー部の開放そのものにリンクしてオイル含浸体が刃体に接触するようにしても良いし、その他、カバー部を開放するために、カバー部のロック機構を開放する操作によって、オイル含浸体が刃体に接触するようしてもよい。
【0011】
上記の場合、カバー部の開動に関連する動作に伴いオイル含浸体が刃体に接するようになるので、通常、カバー部を開動する場合は、一つの例えばロール状の用紙を使い切り別のロール状の用紙を入れることが考えられるので、台紙レスラベル用紙を交換する度に押圧手段が押動される。即ち、1つの連続した用紙を使い切る毎に刃体にオイルを塗布することができるため、オイル塗布の管理を楽に行うことができる。また、一つの連続した用紙を使い切る毎にオイルが塗布されるので、塗布される量を少なく抑えることができる。
【0012】
また、前記一対の刃体は、せん断により用紙を切断する構成であれば前記刃体の形態は問わない。例えば、前記一対の刃体のうち、少なくとも一方は正面視略V字形の刃体とし、前記オイル含浸体を前記正面視略V字形の刃体の最深部近傍に押圧されるように配置することで、ラベル用紙の粘着層の糊が最も付着しやすいV字形刃体の最深部近傍にオイルを塗布することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の台紙レスラベル発行装置は、通常のラベルを発行するための刃体の切断動作と関係なく、オイルを刃体に押圧し塗布することができる。従って、塗布される回数を少なくすることができるのでオイルを沢山含浸できる大きなオイル含浸体や、大きなオイルタンクなどを備える必要がなく、オイル塗布手段を備えてもラベル発行装置が大型化することはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る台紙レスラベル発行装置の概略を示す側面図。
【図2】要部の拡大図で、(a)は一部切欠正面図、(b)は同縦断側面図。
【図3】オイル含浸体を刃部材に接離する押圧手段を示し、(a)は平面図、(b)は一部切欠側面図。
【図4】押圧手段を操作した状態を示し、(a)は平面図、(b)は一部切欠側面図。
【図5】押圧手段がカバー部の開閉動作に連係して動作する他の例を示す側面図
【図6】カバー部を開動した状態を示す同側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る台紙レスラベル発行装置の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1は台紙レスラベル発行装置Aの概略を示し、ケース1内にロール装填部2が設けられ、そのロール装填部2にセットされる台紙レスラベルロールのラベル用紙の繰り出し方向前方位置に、ラベル用紙の送出手段3と、印字部4と、印字された台紙レスラベル用紙をせん断により所定長さに切断する一対の刃体からなる切断手段5が配置され、該切断手段5より台紙レスラベル用紙の搬送方向上流側にはオイル含浸体6が設けられ、更に、前記オイル含浸体6を前記切断手段5の一方の刃体に接触させる押圧手段7と、前記切断手段5より前方には切断送出された台紙レスラベルLを一時的に保持するラベル保持部8が設けられている。そして、前記ロール装填部2には台紙レスラベルロール9が回転可能に支持されている。
【0016】
台紙レスラベルロール9からラベル用紙9’を送出する送出手段3は、ケース1の周壁に開設したラベル送出口10の上流側近傍に配置した上下一対のローラからなる下流側の用紙送出手段3bと、その用紙送出手段3bより上流側に所定間隔をおいて配置した印字部4を兼ねた上流側の用紙送出手段3aとからなる。
【0017】
印字部4を兼ねた上流側の用紙送出手段3aは、ラベル用紙9’の下方(粘着層側)に位置するプラテンローラ4aと、ラベル用紙9’の上方(印字面側)に位置するサーマルヘッド4bとで構成され、前記プラテンローラ4aと下流側の用紙送出手段3bにおける下側のローラはモータによって駆動回転するように構成されている。そして、ラベル用紙9’の上方に位置するサーマルヘッド4bと下流側の用紙送出手段3bにおける上側のローラはそれぞれラベル用紙9’を下側のローラ(用紙送出手段3bにおける下側のローラ、プラテンローラ4a)とで挾着するように下方に付勢され、それにより前記ラベル用紙9’を安定して送出し得るように構成されている。
【0018】
また、前記印字部4のプラテンローラ4aと下流側の用紙送出手段3bにおける下側のローラは、それぞれの表面に剥離剤がコーティングされており、ラベル用紙9’の印字面とは反対側面に塗着されている粘着剤が付着しないようにしてあり、それによってラベル用紙9’の送出が円滑に行われるようになっている。尚、ラベル用紙9’の粘着層が前記ローラに付着しにくくする構成は、上記構成に限らず、前記ローラ自体又はローラの最外周部分を易剥離性の部材で構成してもよい。
【0019】
前記印字部4で商品情報が印字され、ラベル送出口10に向けて送出されるラベル用紙9’をせん断により所定長さの枚葉状に切断する切断手段5は、ラベル送出口10より水平状に送出されるラベル用紙9’を挟むように配置した上下一対の片刃の刃体、可動刃5aと固定刃5bとで構成されている。
【0020】
ラベル用紙9’の粘着層側(下方)に配置される可動刃5aは刃部が正面視略V字形に形成され、ラベル用紙9’の印字面側(上方)に配置される固定刃5bは刃部が同一幅で直線状に形成された帯刃で形成され、前記可動刃5aが前記固定刃5bに対して進退することによりラベル用紙9’がせん断作用によって切断されるようになっている。前記可動刃5aはモータによって進退動作するように構成されている。
【0021】
そして、前記ラベル用紙9’の粘着層と対向する可動刃5aが配置された側で、且つ前記可動刃5aにおけるラベル用紙搬送方向上流側の直前位置で、印字部4を構成するサーマルヘッド4b、プラテンローラ4aの略下方にオイル含浸体6が配置されている。具体的には、前記印字部4におけるプラテンローラ4aと前記可動刃5aとの間に配置され、更に前記オイル含浸体6を前記可動刃5aに接触させる押圧手段7が該オイル含浸体6の上流側直近に配置されている。即ち、押圧手段7の操作によってオイル含浸体6が前方に押し出されて前記可動刃5aに接触し、該可動刃5aの刃部にオイルが塗布され、それにより、可動刃5aにラベル用紙9’の粘着剤やラベル用紙9’の切断によって生じる紙粉等が付着しないようにしてある。また、印字部4を構成するサーマルヘッド4b、プラテンローラ4aの略下方に位置していることで、印字のために必要な機構の下方の領域を効率よく使用することができる。また、可動刃5aを駆動させるためのモータ等(不図示)が、オイル含浸体6の下方に位置している。可動刃5aを駆動させるためのモータ等の機構は、可動刃5aよりも下方に位置するようになり、そのモータ等と、プラテンローラ4a等の印字部4との間には空間が生じるので、該空間を利用することで、オイル含浸体6を設けるだけの空間を特別に設けることなくオイル含浸体6を配置させることができる。
【0022】
前記オイル含浸体6は、連続気泡発泡体のスポンジ等の弾性体6aに、人体に触れるなどしても人体に悪影響を及ぼさない食品添加物であるシリコーン100%のオイル6bを含浸させたもので、前記弾性体6aは箱体6cに収容されて押圧手段7に組み付けられている。
具体的には、前記オイル含浸体6は帯板状の弾性体6aを略U字状に湾曲形成し、その湾曲部を可動刃5aとの接触部とし、更に湾曲した前記帯板の一方端は箱体6cに収容したオイル6bに浸漬し、毛細管作用によりオイル6bが前記弾性体の他方端に吸い上げられるようになっている。前記弾性体6aの湾曲部は箱体6cの表面より外方に向けて突出され、可動刃5aの裏面(固定刃と摺接する面)に弾性的に押し付けられるようになっている。
【0023】
前記オイル含浸体6を可動刃5aに対して接離させる押圧手段7は、図3に示すように、前記オイル含浸体6の箱体6cを載承支持する載せ台7aと、該載せ台7aに支持したオイル含浸体6(箱体6c)を対向する可動刃5aに向けて移動させる操作レバー7bと、前記操作レバー7bの押動を解除した時前記オイル含浸体6を可動刃5aより離反させるスプリング7cとで構成されている。そして、前記オイル含浸体6の箱体6cは載せ台7aに摺動可能に支持されると共に、摺動量(移動量)を規制し、且つ、スムーズな摺動を確保するために、前記箱体6cの側面に案内突起11が突設され、その案内突起11は載せ台7aに形成した案内孔12に嵌合されている。
また、前記操作レバー7bは基端部が前記載せ台7aに軸13で回動可能に軸支され、該操作レバー7bの長さ方向の中程位置が前記オイル含浸体6の箱体6c後面(弾性体6aが突出された側と反対側)に形成した受圧部(膨出部)14に当接されて突出配置されている。それにより、該操作レバー7bの開放端に設けた操作部15に指を掛けて矢印方向に回動することで、図4に示すように、前記オイル含浸体6を可動刃5aに押し付けることができ、オイル6bを可動刃5aに塗布することができる。尚、前記操作レバー7bの操作部15を、ケース1を貫通して外方に突出させた場合は、ケース1を外すことなく操作レバー7bを直接操作することが可能となり、オイル塗布の作業を容易に行うことができる。なお、操作部15は、装置の正面視側部から突出するよう位置しているので、装置を操作するオペレータは気が付き易く、オイルの塗布作業を容易にすることができる。
前記スプリング7cは載せ台7aとオイル含浸体6の箱体6cとの間に弾圧装着され、オイル含浸体6を可動刃5aに対して離反方向に付勢している。
【0024】
また、オイル含浸体6を構成するオイル6bを含浸するスポンジ等の弾性体6の箱体6aは、可動刃5aが正面視略V字形の刃部からなる刃体である場合、せん断作用により切断されるラベル用紙9’の粘着剤は略V字形の刃部のV部最深部(谷部分)に寄せられる。その為、ラベル用紙9’の粘着剤は可動刃5aの正面視略V字形のV部最深部近傍に付着し易くなる為、前記オイル含浸体6の弾性体6aは可動刃5aの刃幅と略同幅とすることなく、例えば、可動刃5aの正面視略V字形の刃部のV部最深部近傍部分と対応する小幅の弾性体としてもよい(図2(a)参照)。
【0025】
図1乃至図4に示した実施の形態は、押圧手段7を直接、手動操作してオイル含浸体6を可動刃5aに押し付け、オイル6bを塗布する例であるが、可動刃5a(刃体)に対してオイル含浸体6を接離する押圧手段7は、他物の動作に連係して作動するようにしてもよい。以下、その例を図5及び図6に基づいて説明する。
図5に示す台紙レスラベル発行装置A’は卓上型のラベル発行装置で、ケース16内に前示実施の形態で示したと同じようにロール紙収容部17が設けられ、そのロール紙収容部17にセットされる台紙レスラベルロール18のラベル用紙18’の繰り出し方向前方位置に、印字部19(印字ヘッド19a,プラテンローラ19b)と、印字された台紙レスラベル用紙をせん断により所定長さに切断する一対の刃体からなる切断手段20(可動刃20a,固定刃20b)が配置され、前記ケース16の上面開口部にはカバー部21が上下回動可能に取り付けられている。
また、前記切断手段20より台紙レスラベル用紙の搬送方向上流側にはオイル含浸体22を取り付けた支持アーム23が回動可能に取り付けられ、該支持アーム23はスプリング26で前記切断手段20と当接する方向に付勢されている。そして、前記支持アーム23は前記カバー部21の開閉動に連係して作動し、前記オイル含浸体22が前記切断手段20の可動刃20aに接離するように構成されている。
【0026】
前記カバー部21の開閉動に連係して前記支持アーム23が回動する構成は、前記カバー部21に設けた係止ピン24にケース16側に取り付けた掛け止め片25を係脱自在とし、その掛け止め片25の係脱は該掛け止め片25に設けた操作部25’を下方に押し下げることで、掛け止め片25が回動して係止ピン24から外れ、カバー部21は開動可能となる。また、前記掛け止め片25はスプリング27で前記係止ピン24と係合する方向に付勢され、更に前記掛け止め片25の下部に前記支持アーム23が係着されて、スプリング26の作用で前方に回動しようとする支持アーム23の動きが拘束されている。
それにより、前記掛け止め片25の操作部25’を押し下げると、該掛け止め片25の係止部は後方に移動して係止ピン24から外れ、前記係止部と反対側の端部(支持アーム23と係着する部分)は前方に移動し、支持アーム23の前方への回動(傾動)を規制していた拘束を解除する。これにより、前記支持アーム23はスプリング26の付勢力で前方に回動(傾動)する。そして、支持アーム23に取り付けられたオイル含浸体22は前方に配置された切断手段20の可動刃20aに押し付けられ、可動刃20aにオイルを塗布することができる。尚、切断手段20の可動刃20aに対するオイル含浸体22の押し付けは、前記掛け止め片25の操作部25’を押し下げている間維持され、操作部25’の押し下げを開放すると該掛け止め片25はスプリング27の引っ張り力で係止ピン24と係合する方向に回動される。そして、前記掛け止め片25の回動時、前方に回動(傾動)していた支持アーム23を引っ掛けて後方に回動する。それにより、支持アーム23のオイル含浸体22は切断手段20の可動刃20aから離れる。
また、ロール紙収容部17に新しい台紙レスラベルロール18をセットしてカバー部21を閉じると、前記掛け止め片25はスプリング27の引っ張り力で係止ピン24と係合する方向に付勢され、掛け止め片25は支持アーム23を切断手段20から離反する方向に移動させる。
従って、ロール紙収容部17にセットした1個の台紙レスラベルロール18を使い切り、新しいロール紙に交換するためにカバー部21を開動する掛け止め片25の操作部25’を押し下げることでケース16の上面が開放され、ロール紙収容部17にセットされた台紙レスラベルロール18の交換が可能となり、且つ、切断手段20の可動刃20aにオイルを塗布することができる。よって、ロール紙を交換する度に切断手段20の可動刃20aにオイルを塗布することができる。つまり、一つのラベルロールを使い切るということは、刃体が一定の量の用紙を切断したことになり、その一定の量の切断毎に確実にオイルが刃体に塗布されるようになるので、オイルの使用量を抑えて、糊等が刃体に付くのを防止できる。
【0027】
オイル含浸体を、切断手段の一方の刃体に対して接離させる押圧手段が、他物の動作に連係して作動する例として、ロール紙収容部の上方を覆うカバー部の開閉動作に連係して作動する構成を示したが、この他に、ラベル用紙の先端位置合わせに連係して前記押圧手段が押動/開放される構成としてもよい。
一般的に、この種台紙レスラベル発行装置では、新しいロール紙をセットした時、或いは印字用紙にジャムが発生してリセットする時、ラベル用紙の先端を印字部より下流側の所定位置まで繰り出して位置合わせ(用紙セットアップ)する。そこで、このラベル用紙の先端位置合わせ(用紙セットアップ)の動作、即ち、ラベル用紙を送り出す送出手段(送出ローラ、又はプラテンローラ等)の回転動作を利用して、前記押圧手段を作動させ、それによってオイル含浸体が刃体に押し付けられ、オイルが刃体に塗布されるようにする。尚、押圧手段を連係作動させる動作は、ラベル用紙の先端位置合わせ(用紙セットアップ)時のみ行われるようにし、通常のラベル発行のための用紙送りの時は連係しないよう切り替えられるようにする。
また、通常の用紙を発行するための発行キーの他に、前記のようにロール紙をセットしたときに印字位置まで用紙を送るよう制御するキーを設け、該キーが押され、所定位置まで移動した後に、例えば1回だけ押圧手段によりオイル含浸体が刃体に押し付けられ、その後、オイル含浸体が刃体から離れるようにしてもよい。この場合は、オイル含浸体を例えばソレノイド等により駆動させるようにしてもよいが、用紙をセットするときのみに駆動されるので、通常のラベルが発行される毎にオイル含浸体が押圧されることに比べ、その回数を少なくすることができる。また、前記のように用紙を所定位置まで搬送し、一度刃体を作動させ用紙を切断した後であってもよい。この場合であっても、前記と同様、用紙セットしたとき作動される切断動作後だけにオイル含浸体が押圧されるようになるので、前記と同様、通常のラベルが発行される毎にオイル含浸体が押圧されることに比べ、その回数を少なくすることができる。
これにより、ラベル用紙の先端位置合わせ(用紙セットアップ)毎に、切断手段の刃体にオイルを自動的に塗布することができる。
【0028】
本発明の台紙レスラベル発行装置は図示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、押圧手段を適時に手動操作してオイル含浸体を刃体に押し付け、オイルを塗布する例を示したが、これに限らず、例えば、切断手段の駆動回数を記憶しておき、駆動回数があらかじめ設定した回数に達した時、電動で作動する駆動機構等で前記押圧手段が作動され、オイル含浸体が刃体に押し付けられるようにしてもよい。
(2)実施の形態では、台紙レスラベル発行装置として、発行されたラベルをオペレータが手で取るタイプの装置を示したが、これに限定されず、発行されたラベルがラベル保持部に位置し、そのラベルが自動貼付機構のアプリケータで吸着保持されて対象物に貼付する自動貼付装置と組み合わせてもよい。
(3)実施の形態では、オイル含浸体を構成する弾性体(スポンジ)は、正面視略V字形の可動刃(刃体)の谷部近傍と対応する幅のものを示したが、これに限らず、可動刃の刃幅と略同じ幅を有した単一体、或いは幅方向が複数に分割された分割タイプ等、何れでもよい。
(4)実施の形態では、オイル含浸体が接触する位置を可動刃の裏面(固定刃の裏面と摺接する面)とした例を示したが、これに限らず、例えば、固定刃の裏面(可動刃の裏面が摺接する面)にオイル含浸体を押し付けるようにしてもよい。また、可動刃と固定刃の天地が逆であってもよい。
(5)実施の形態では、切断手段を構成する一対の刃体を正面視略V字形の刃体と、帯刃とからなる例を示したが、これに限らず、例えば、両方の刃体を正面視略V字形の刃体で構成する、或いは、両方の刃体を帯刃で構成するなど何れでもよい。
(6)実施の形態では、オイル含浸体に含浸させるオイルとしてシリコーンオイルを挙げたがこれに限定されず、オイルの種類は問わないが、特に食品に貼付するラベルや、食品をトレイに詰め包装した包装体に貼付するラベルを発行する場合には、食品添加物であるオイルが食の安全面からも好ましい。
(7)実施の形態では、可動刃5aの側面にオイル含浸体6が押圧される例で示したが、側面のみならず、可動刃5aの側面から刃先までを包み込む形状のオイル含浸体を形成し、該オイル含浸体にて押圧するようにしても良い。これにより刃先にもオイルが塗布されるようになるので、刃先にも粘着剤が付き難くなる。
(8)実施の形態では、カバー部21を開放するために、掛け止め片25の操作部25’を押し下げると、支持アーム23に取り付けられたオイル含浸体22は前方に配置された切断手段20の可動刃20aに押し付け、掛け止め片25の操作部25’の押し下げを開放すると、オイル含浸体22が切断手段20の可動刃20aから離れる例で説明したが、これに限らず、係止ピン24等を有さず、カバー部21の回転軸と支持アーム23とをリンク機構等により接続し、カバー部21を開く動作によりオイル含浸体22が可動刃5aと接触し、カバー部21を閉じる動作により、オイル含浸体22が可動刃5aから離れるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
A、A’…台紙レスラベル発行装置 4…印字部
5…切断手段 6…オイル含浸体
7…押圧手段 9…台紙レスラベルロール
9’…ラベル用紙 20…切断手段
21…カバー部 22…オイル含浸体
23…支持アーム(押圧手段) 25…掛け止め片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状用紙の一方の面に粘着層が形成された台紙レスラベル用紙を、刃体により枚葉状に切断する台紙レスラベル発行装置において、
前記刃体と対向してオイル含浸体を配置し、前記オイル含浸体を押圧手段で前記刃体の側面に接離自在としたことを特徴とする台紙レスラベル発行装置。
【請求項2】
前記刃体はせん断により前記台紙レスラベル用紙を切断する一対の刃体で、
前記オイル含浸体が接離される刃体の側面とは、前記刃体が互いに擦れ合う面であることを特徴とする請求項1記載の台紙レスラベル発行装置。
【請求項3】
前記オイル含浸体は、前記刃体のうち、前記台紙レスラベル用紙の粘着層と対向する刃体に押圧されるよう配置されていることを特徴とする請求項2記載の台紙レスラベル発行装置。
【請求項4】
前記刃体におけるラベル用紙搬送方向の上流側に印字部を備え、前記オイル含浸体は前記印字部と前記ラベル用紙を挟む対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の台紙レスラベル発行装置。
【請求項5】
前記押圧手段は、前記台紙レスラベル用紙を収容する収容部のカバー部の開動に関連する動作にて、前記オイル含浸体を前記刃体に押動することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の台紙レスラベル発行装置。
【請求項6】
前記刃体は少なくとも一方が正面視略V字形の刃体であり、前記オイル含浸体は該正面視略V字形の刃体の最深部近傍に押圧されることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項記載の台紙レスラベル発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−250718(P2012−250718A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122681(P2011−122681)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【Fターム(参考)】