説明

合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラス

【課題】高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させ、淡い黄色に色調を制御することが可能であり、耐光性に優れた合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と、可塑剤と、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤とを含有する合わせガラス用中間膜であって、前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記光吸収剤の含有量が0.003〜0.007重量部である合わせガラス用中間膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させ、淡い黄色に色調を制御することが可能であり、耐光性に優れた合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスは、少なくとも一対のガラス間に、例えば、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール等のポリビニルアセタールからなる合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させた合わせガラスが挙げられる。
【0003】
このような合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全である。自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラスとして使用された場合、合わせガラスは太陽光に含まれる紫外線が照射される環境で使用される。従来の合わせガラス用中間膜は、紫外線を遮蔽するために紫外線吸収剤を含有しているが、波長域が380nm以下の紫外線のみを遮蔽していたため、波長域が380nmを越える紫外線を充分に遮蔽することができなかった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献1には合成樹脂と、紫外線吸収剤と、380〜450nmの波長域の光線を吸収することができる黄色染料とを含有する合わせガラス用中間膜が開示されている。特許文献1に開示されている合わせガラス用中間膜は、採光性を保持しつつ、450nm以下の波長域の光線を遮蔽することができるとされている。
しかしながら、特許文献1では、黄色染料を合わせガラス用中間膜に均一に分散させる方法は何ら検討されておらず、高い可視光線透過率を有する合わせガラス用中間膜を得ることはできなかった。さらに、特許文献1に開示されている合わせガラス用中間膜は、波長域が380nmを越える紫外線を充分に遮蔽することができないという問題もあった。更に、黄色みが強い合わせガラス用中間膜は劣化を連想させるため好ましいとはいえなかった。
【0005】
また、特許文献2には2枚のガラスの間に合わせガラス用中間膜を介在させた合わせガラスにおいて、合わせガラス用中間膜は有機系光吸収剤が添加された合成樹脂原料からなる合わせガラスが開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示されている有機系光吸収剤は、紫外線が照射されることで劣化しやすいという問題があった。そのため、特許文献2の合わせガラス用中間膜は、紫外線が照射される環境で使用されると、時間の経過とともに波長域が380nmを越える光線を遮蔽する効果が低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2000−300149号公報
【特許文献2】特開2007−290923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させ、淡い黄色に色調を制御することが可能であり、耐光性に優れた合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤とを含有する合わせガラス用中間膜であって、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記光吸収剤の含有量が0.003〜0.007重量部である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、合わせガラス用中間膜中に特定の光吸収剤を、特定の割合で含有させることにより、高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させ、淡い黄色に色調を制御することが可能となるということ、及び、耐光性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含有する。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、硫黄元素を含有するポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。なかでも、可塑剤と併用するとガラスに対して優れた接着性を発揮する合わせガラス用中間膜が得られることから、ポリビニルアセタール樹脂が好適に用いられる。
【0010】
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0011】
上記ポリビニルアセタール樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、水酸基量の好ましい下限は15モル%、好ましい上限は35モル%である。
水酸基量が15モル%未満であると、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下したり、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下したりすることがある。水酸基量が35モル%を超えると、得られる合わせガラス用中間膜が硬くなることがある。
【0012】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は3000である。上記重合度が200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。上記重合度が3000を超えると、合わせガラス用中間膜の成形が困難となることがある。上記重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は2000である。
【0013】
上記アルデヒドとしては特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。
これらのアルデヒドは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
本発明の合わせガラス用中間膜は可塑剤を含有する。
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル系可塑剤、有機リン酸系可塑剤、有機亜リン酸系可塑剤等のリン酸系可塑剤等が挙げられ、上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコール系エステル化合物又はテトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと上記有機酸とのエステル化合物等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等のトリエチレングリコールジアルキル酸エステルが好適である。
【0015】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0016】
上記有機エステル系可塑剤としては特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,2−ブチレングリコールジ−2−エチレンブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールビス−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルの混合物、アジピン酸エステル、C〜Cアルキルアルコール及び環状C〜C10アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等のC〜Cアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0017】
上記有機リン酸系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0018】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種は、接着力調整剤として炭素数5又は6のカルボン酸の金属塩を含有させることによって、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力の経時変化を防止することができる。
さらに、上記可塑剤は、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)であることが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)であることがより好ましい。
【0019】
本発明の合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量としては特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましい下限が30重量部、好ましい上限が70重量部である。上記可塑剤の含有量が30重量部未満であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が高くなり、合わせガラス製造時の脱気性が低下することがある。上記可塑剤の含有量が70重量部を超えると、合わせガラス用中間膜から可塑剤がブリードアウトを起こすことがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は35重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0020】
本発明の合わせガラス用中間膜は、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を含有する。
【0021】
本発明の合わせガラス用中間膜は、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を含有するため、高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させることができる。さらに、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤は紫外線が照射されても劣化しにくいため、耐光性に優れた合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0022】
上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤は、少なくとも1個以上のチオフェニル基を有すればよく、2個以上のチオフェニル基を有することが好ましい。例えば、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤は、下記化学式(1)で表される1,8−ビス(フェニルチオ)−9,10−アントラキノン等が挙げられる。なかでも、高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させ、淡い黄色に色調を調整でき、耐光性に優れていることから、1,8−ビス(フェニルチオ)−9,10−アントラキノンを用いることが好ましい。
なお、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
【化1】

【0024】
本発明の合わせガラス用中間膜における上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の含有量の下限は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して0.003重量部、上限は0.007重量部である。上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の含有量が0.003重量部未満であると、紫外線透過率を充分に低下させることができないことがあり、0.007重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜を淡い黄色に色調を調整することが困難となる。上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の含有量の好ましい下限は0.0035重量部、好ましい上限は0.0067重量部である。
【0025】
本発明の合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0026】
上記赤外線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されないが、本発明では、錫ドープ酸化インジウム微粒子、アンチモンドープ酸化錫微粒子、金属元素がドープされた酸化亜鉛微粒子、六ホウ化ランタン微粒子、アンチモン酸亜鉛微粒子及びフタロシアニン構造を有する赤外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0027】
上記赤外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記赤外線吸収剤の含有量の好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が5重量部である。上記赤外線吸収剤の含有量が0.001重量部未満であると、合わせガラス用中間膜が赤外線を遮蔽することができないことがある。上記赤外線吸収剤の含有量が5重量部を超えると、合わせガラスの透明性が低下することがある。
【0028】
本発明の合わせガラス用中間膜の厚さは特に限定されないが、好ましい下限が0.1mm、好ましい上限が3mmである。合わせガラス用中間膜の厚さが0.1mm未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。合わせガラス用中間膜の厚さが3mmを超えると、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が低下することがある。合わせガラス用中間膜の厚さのより好ましい下限は0.25mm、より好ましい上限は1.5mmである。
【0029】
本発明の合わせガラス用中間膜は、厚さを760μmとし、厚さ2.5mmのクリアガラスで挟持して、JIS R 3106に準拠した方法で測定した可視光線透過率Tvが60%以上であることが好ましい。可視光線透過率Tvが60%未満であると、本発明の合わせガラス用中間膜を用いて得られる合わせガラスの透明性が低下する。上記可視光線透過率Tvは70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、さらに85%以上であることがより好ましい。
なお、上記可視光線透過率Tvを測定する装置は特に限定されず、例えば、分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)等が挙げられる。
【0030】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を、特定の割合で含有しているため、耐光性に優れた合わせガラス用中間膜を得ることができる。本発明において耐光性に優れるとは、紫外線が照射される環境で使用されても、時間の経過とともに波長域が380〜410nmの光線透過率が増加することを抑制できることを意味する。
本発明における耐光性の評価は、紫外線照射装置(スガ試験機社製「HLG−2S」)等を用いて、JIS R 3205に準拠して、得られた合わせガラスに紫外線を2000時間照射し、紫外線照射前後における、合わせガラスの410nmにおける光線透過率の変化度(ΔT(410nm))を下記式で算出して評価する。なお、410nmにおける光線透過率を測定する装置は特に限定されず、例えば、分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)等が挙げられる。
ΔT(410nm)=(紫外線照射後の光線透過率(410nm))−(紫外線照射前の光線透過率(410nm))
【0031】
上記変化度(ΔT(410nm))は特に限定されないが、2.5以下であることが好ましい。上記変化度(ΔT(410nm))が2.5を超えると、本発明の合わせガラス用中間膜を用いて得られる合わせガラスの耐光性が充分に得られないことがある。上記変化度(ΔT(410nm))は2.3以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
【0032】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を、特定の割合で含有しているため、合わせガラスの色調を淡い黄色に制御することができる。合わせガラスの色調は、黄色度(イエローインデックス)で評価することができる。
上記黄色度は、本発明の合わせガラス用中間膜を、厚さを760μmとし、厚さを2.5mmのクリアガラスで挟持して、JIS K 7105に準拠した方法で測定することで、透過法による黄色度を測定することができる。なお、上記黄色度を測定する装置は特に限定されず、例えば、分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)等が挙げられる。
【0033】
上記黄色度は特に限定されないが、18以下であることが好ましい。上記黄色度が18を超えると、本発明の合わせガラス用中間膜を用いて得られる合わせガラスの色調が、淡い黄色とならないことがあり、合わせガラス用中間膜の劣化が連想されることがある。上記黄色度は17以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法としては、可塑剤に、上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を含有させ、必要に応じて配合する添加剤を加えた組成物と、ポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂とを充分に混練し、合わせガラス用中間膜を成形する方法等が挙げられる。
特に、可塑剤にチオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を溶解させた組成物を作製する工程、及び、該組成物とポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂とを混練する工程を有することが好ましい。
なお、可塑剤にチオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を溶解させた組成物を作製する工程において、光吸収剤を溶解させるために組成物を加熱することが好ましい。
【0035】
上記組成物と上記熱可塑性樹脂とを混練する方法は特に限定されず、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー、カレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適することから、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。
【0036】
本発明の合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスもまた、本発明の1つである。本発明の合わせガラスに用いられる板ガラスとしては特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができ、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ポリカーボネートやポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
【0037】
上記板ガラスとしては、2種以上の板ガラスを用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色された板ガラスとで、本発明の合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスが挙げられる。
本発明の合わせガラスは、自動車用ガラスとして使用する場合は、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス、パノラマガラスとして用いることができる。
また、本発明の合わせガラスの製造方法としては特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させ、淡い黄色に色調を制御することが可能であり、耐光性に優れた合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0040】
(実施例1)
(1)合わせガラス用中間膜の作製
可塑剤としてトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)39.3重量部に、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.2重量部と、紫外線吸収剤(共同薬品社製「バイオソーブ550」)0.2重量部と、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤として1,8−ビス(フェニルチオ)−9,10−アントラキノン0.0035重量部とを添加し、80℃にて、攪拌機を用いて30分間攪拌し、可塑剤溶液を得た。
次いで、得られた可塑剤溶液を室温まで冷却した後、予め錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を30重量%の濃度にて分散させたトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)溶液(以下、ITO溶液ともいう)を1重量部添加し、攪拌機を用いて10分間攪拌し、混合液を得た。
得られた混合液をポリビニルブチラール樹脂(PVB)100重量部と充分に混合し、二軸異方押出機を用いて製膜し、膜厚が760μmの合わせガラス用中間膜を作製した。
【0041】
(2)合わせガラスの作製
得られた合わせガラス用中間膜を2枚のクリアガラス(縦300mm×横300mm×厚さ2.5mm)で挟持し、積層体とした。得られた積層体を、真空バッグに設置し、常温で933.2hPaの減圧度にて真空バッグ内の脱気を行った。次いで、脱気状態を維持しながら、真空バッグ内を100℃まで昇温させ、100℃に到達した後20分間脱気状態を保持した。その後、真空バッグを自然冷却させ、仮圧着された合わせガラスを得た。仮圧着された合わせガラスを、オートクレーブを用いて135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着し、合わせガラスを作製した。
【0042】
(実施例2)
チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の含有量を0.0067重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様に合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを得た。
【0043】
(比較例1)
チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを得た。
【0044】
(比較例2)
チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の含有量を0.008重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様に合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを得た。
【0045】
(比較例3)
チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤0.0035重量部の代わりに、光吸収剤A(カヤセットイエローA−G「日本化薬社製」)0.0035重量部と、光吸収剤B(Plast Yellow 8000「有本化学社製」)1重量部とを用いたこと以外は、実施例1と同様に合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを得た。
【0046】
(比較例4)
チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の代わりに、光吸収剤B(Plast Yellow 8000「有本化学社製」)を用いたこと以外は、実施例1と同様に合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを得た。
【0047】
<評価>
実施例、及び、比較例で得られた合わせガラスについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0048】
(1)透過率の測定
分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)を用いて、JIS R 3106(1998)に準拠して、得られた合わせガラス(縦300mm×横300mm)の可視光線透過率Tvを求めた。また、得られた合わせガラスの300〜2500nmの波長域における日射透過率Tsを求めた。
更に、分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)を用いて、370nm、380nm、390nm、400nm及び410nmの各波長における合わせガラスの光線透過率(T(370nm)、T(380nm)、T(390nm)、T(400nm)、T(410nm))を測定した。
【0049】
(2)ヘーズ値の測定
得られた合わせガラス(縦300mm×横300mm)を、縦50mm×横50mmの大きさに切断した。次いで、ヘーズメーター(東京電色社製「TC−H3PP型」)を用いて、JIS K 7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して、得られた合わせガラス(縦50mm×横50mm)のヘーズ値を測定した。
【0050】
(3)黄色度の測定
分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)を用いて、JIS K 7105に準拠して、得られた合わせガラス(縦300mm×横300mm)の透過法による黄色度(イエローインデックス)を測定した。
【0051】
(4)耐光性評価
紫外線照射装置(スガ試験機社製「HLG−2S」)を用いて、JIS R 3205に準拠して、得られた合わせガラス(縦50mm×横50mm)に紫外線(石英ガラス水銀灯(750W))を2000時間照射した。紫外線照射前後の合わせガラスの410nmにおける光線透過率の変化度(ΔT(410nm))を下記式で算出した。なお、410nmにおける光線透過率は分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)で測定した。
ΔT(410nm)=(紫外線照射後の光線透過率(410nm))−(紫外線照射前の光線透過率(410nm))
【0052】
【表1】

【0053】
実施例1、2で得られた合わせガラスは、高い可視光線透過率を保持しながら、特に400nm以下の波長域の紫外線透過率を低下させることができた。また、本発明の合わせガラスは、上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の含有量を特定の割合とすることで、合わせガラスの色調を淡い黄色に制御することができた。さらに、本発明の合わせガラスは、耐光性評価で示されているように、優れた耐光性を有していた。
一方で、比較例1では、400nm以下の波長域の紫外線透過率を充分に低下させることができなかった。なお、比較例1の耐光性評価結果は、ポリビニルブチラール樹脂の劣化が原因と考えられる。比較例2では、上記チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤の含有量が過剰だったため、合わせガラスの色調が非常に強い黄色となってしまった。比較例3では、他の光吸収剤を使用したため、合わせガラスの色調が非常に強い黄色となってしまった。また、比較例4では、可視光線透過率を保持し、紫外線透過率を低下させることができたが、耐光性評価後に410nmの光線透過率が増加することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、高い可視光線透過率を保持しながら、紫外線透過率を低下させ、淡い黄色に色調を制御することが可能であり、耐光性に優れた合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、可塑剤と、チオフェニル基を有するアントラキノン構造を有する光吸収剤とを含有する合わせガラス用中間膜であって、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記光吸収剤の含有量が0.003〜0.007重量部である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
請求項1記載の合わせガラス用中間膜を用いてなることを特徴とする合わせガラス。

【公開番号】特開2009−179531(P2009−179531A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21468(P2008−21468)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】