説明

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】0℃以下の環境下において固体音の遮音性に優れる合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】2層の保護層の間に中間層が積層されている合わせガラス用中間膜であって、前記中間層は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤を50重量部以上含有し、前記ポリビニルアセタール樹脂は、炭素数2〜4のアルデヒド(A)によりアセタール化されたアセタール基(A)と、炭素数5〜12のアルデヒド(B)によりアセタール化されたアセタール基(B)とを有し、前記アセタール基(A)によるアセタール化度(A)と、前記アセタール基(B)によるアセタール化度(B)との合計に占める前記アセタール化度(A)の割合が50〜95%である合わせガラス用中間膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0℃以下の環境下において固体音の遮音性に優れる合わせガラス用中間膜に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少ないため、安全性が高い。そのため、自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとして、少なくとも一対のガラス板間に、例えば、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜を介在させ、積層し、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。
【0003】
近年、合わせガラスを軽量化するために、合わせガラスの厚さを薄くすることが検討されている。しかし、合わせガラスの厚さを薄くすると、遮音性が低下するという問題があった。このような遮音性が低下した合わせガラスを自動車等のフロントガラスとして用いた場合、特に風切り音やワイパーの駆動音等の5000Hz程度の音域の遮音性が充分に得られないという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、例えば特許文献1には、複数枚のガラス板と、該複数枚のガラス板間に介在された中間膜とを備えた合わせガラスであって、中間膜は、アセタール化度が60〜85mol%のポリビニルアセタール樹脂と、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と、可塑剤とを含み、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量が30質量部を超え、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量が0.001〜1.0質量部である遮音層を有する合わせガラスが開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている合わせガラスは遮音性に優れるとされている。車の騒音や警笛の音等の空気音と、車のエンジンの振動による音等の固体音とがあるが、特許文献1に記載の合わせガラスは、0℃以下の環境下において固体音の遮音性が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−070200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、0℃以下の環境下において固体音の遮音性に優れる合わせガラス用中間膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、2層の保護層の間に中間層が積層されている合わせガラス用中間膜であって、前記中間層は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤を50重量部以上含有し、前記ポリビニルアセタール樹脂は、炭素数2〜4のアルデヒド(A)によりアセタール化されたアセタール基(A)と、炭素数5〜12のアルデヒド(B)によりアセタール化されたアセタール基(B)とを有し、前記アセタール基(A)によるアセタール化度(A)と前記アセタール基(B)によるアセタール化度(B)との合計に占める前記アセタール化度(A)の割合が50〜95%である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、ポリビニルアセタール樹脂として、炭素数の異なる2種のアルデヒド、炭素数2〜4のアルデヒド(A)と炭素数5〜12のアルデヒド(B)とによってアセタール化されたポリビニルアセタール樹脂であって、アルデヒド(A)によってアセタール化されたアセタール基(A)の割合が一定範囲であるポリビニルアセタール樹脂は合成収率に優れ、該ポリビニルアセタール樹脂を用いれば大量の可塑剤を含有しなくとも中間層のガラス転移温度を充分に低くすることができ、0℃以下の環境下における固体音の遮音性にも優れる合わせガラス用中間膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜は、2層の保護層の間に中間層が積層されている。即ち、保護層、中間層、保護層とがこの順で積層されている。上記保護層と上記中間層とは直接接するように積層されていてもよく、上記保護層と上記中間層との間に他の層が積層されていてもよい。上記他の層は、例えば、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層、ポリエチレンテレフタレートを含有する層、熱線反射機能を有する遮熱層等が挙げられる。
【0011】
上記中間層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂X」ともいう。)を含有する。
上記ポリビニルアセタール樹脂Xは、炭素数2〜4のアルデヒド(A)によりアセタール化されたアセタール基(A)と、炭素数5〜12のアルデヒド(B)によりアセタール化されたアセタール基(B)とを有する。
【0012】
一般に、ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数を多くすると、得られるポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度はより低下する傾向にある。従って、炭素数の多いアルデヒドを用いてアセタール化したポリビニルアセタール樹脂を用いれば、比較的少ない可塑剤の配合量でも常温域における充分な遮音性を発揮させることができ、0℃以下の環境下における固体音の遮音性をも向上させることができる。しかしながら、炭素数が多いアルデヒドのみを用いてアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を製造しようとしても、ポリビニルアセタール樹脂の合成収率が低下してしまう。
本願発明においては、炭素数2〜4のアルデヒド(A)と炭素数5〜12のアルデヒド(B)とを併用してアセタール化したポリビニルアセタール樹脂Xを用いて中間層を形成することにより、高い合成収率と高い遮音性とを両立する。
【0013】
上記アルデヒド(A)の炭素数の下限は2、上限は4である。上記アルデヒド(A)の炭素数が4を超えると、ポリビニルアセタール樹脂Xの合成収率が低下する。
上記炭素数2〜4のアルデヒド(A)は、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等が挙げられる。なかでも、炭素数4のアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒド(A)は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記アルデヒド(B)の炭素数の下限は5、上限は12である。上記アルデヒド(B)の炭素数が5未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度が充分に低下せず、0℃以下の環境下における固体音の遮音性を発揮させるために大量の可塑剤を配合しなくてはならなくなる。上記アルデヒド(B)の炭素数が12を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の合成収率が極端に低下して、工業的にポリビニルアセタール樹脂を合成することは困難となる。
上記炭素数5〜12のアルデヒド(B)は、例えば、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、n−ウンデシルアルデヒド、n−ドデシルアルデヒド、n−ラウリルアルデヒド等が挙げられる。なかでも、炭素数6〜12のアルデヒドが好ましく、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ラウリルアルデヒド等がより好ましい。上記アルデヒド(B)は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xは、上記アセタール基(A)によるアセタール化度(A)と上記アセタール基(B)によるアセタール化度(B)との合計に占める上記アセタール化度(A)の割合の下限が50%、上限が95%である。上記アセタール化度(A)の割合が50%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂Xの合成収率が低下し、95%を超えると、0℃以下の環境下における固体音の遮音性を発揮させるために大量の可塑剤を配合しなくてはならなくなる。上記アセタール化度(A)の割合が75〜95%である場合には、可塑剤の含有量を制御することにより、例えば、6300Hz付近の高周波領域における遮音性を改善することもができる。上記アセタール化度(A)の割合の好ましい下限は51%、好ましい上限は93%であり、より好ましい下限は54%、より好ましい上限は91%であり、更に好ましい下限は56%、更に好ましい上限は89%であり、特に好ましい下限は58%、特に好ましい上限は87%である。
【0016】
上記アセタール化度(A)の割合は、アセタール化度(A)とアセタール化度(B)(いずれもmol%)の値から、以下の式にて算出することができる。
アセタール化度(A)の割合=(アセタール化度(A))/(アセタール化度(A)とアセタール化度(B)との合計)×100
【0017】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除して求めたモル分率を百分率で表した値である。
【0018】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセタール化度、即ち、上記アセタール化度(A)と上記アセタール化度(B)との合計の好ましい下限は60mol%、好ましい上限は75mol%である。上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセタール化度が60mol%未満であると、上記中間層の疎水性が低下し、白化することがあり、75mol%を超えると、工業的にポリビニルアセタール樹脂Xを合成することが困難になることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセタール化度のより好ましい下限は63mol%、より好ましい上限は73mol%である。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセタール化度(A)の好ましい下限は30mol%、好ましい上限は75mol%である。上記アセタール化度(A)が30mol%未満であると、上記中間層の疎水性が低下し、白化することがあり、75mol%を超えると、工業的にポリビニルアセタール樹脂を合成することが困難になることがある。上記アセタール化度(A)のより好ましい下限は35mol%、より好ましい上限は70mol%である。
【0020】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xの上記アセタール化度(B)の好ましい下限は5mol%、好ましい上限は40mol%である。上記アセタール化度(B)が5mol%未満であると、0℃以下の環境下における固体音の遮音性を発揮させるために大量の可塑剤を配合しなくてはならなくなることがあり、40mol%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂Xの合成収率が低下することがある。上記アセタール化度(B)のより好ましい下限は7mol%、より好ましい上限は38mol%である。
【0021】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xの水酸基量の好ましい上限は25mol%である。上記ポリビニルアセタール樹脂Xの水酸基量が25mol%を超えると、可塑剤とポリビニルアセタール樹脂Xとの相溶性が低く、可塑剤がブリードアウトすることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Xの水酸基量の下限は特にないが、実質的な下限は10mol%である。上記水酸基量のより好ましい上限は24mol%である。
上記水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除して求めたモル分率を百分率で表した値である。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセタール化度(A)及びアセタール化度(B)は、水の存在下、酸性条件で脱離させたアルデヒドを定量することで得られる。具体的には例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂X1gが溶解しているメタノール・水混合溶液(重量比で1:1)100gに、35重量%塩酸水溶液10gを加えた混合液を加熱し、50℃で5時間反応させる。反応後の混合液に含まれるアルデヒド(A)及びアルデヒド(B)を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量することにより、上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセタール化度(A)及びアセタール化度(B)を定量することができる。例えば、カラムとして、ジーエルサイエンス社製「Inertsil CX分析カラム」を用いることができる。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂Xの水酸基量及びアセチル基量はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」又はASTM D1396−92に準拠した方法により測定された結果から算出できる。なかでも、ASTMに準拠した方法により測定することが好ましい。
【0023】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセチル基量の好ましい下限は5mol%である。上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセチル基量が5mol%未満であると、可塑剤とポリビニルアセタール樹脂Xとの相溶性が低く、可塑剤がブリードアウトすることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセチル基量の上限は特にないが、実質的な上限は30mol%である。上記ポリビニルアセタール樹脂Xのアセチル基量が30mol%を超えると、上記ポリビニルアルコールとアルデヒドとの反応性が著しく低下することからポリビニルアセタール樹脂Xの製造が困難になることがある。上記アセチル基量のより好ましい下限は7mol%、より好ましい上限は27mol%であり、更に好ましい下限は9mol%、更に好ましい上限は25mol%である。
【0024】
上記ポリビニルアセタール樹脂Xは、例えば、ポリビニルアルコールを炭素数2〜4のアルデヒド(A)と炭素数5〜12のアルデヒド(B)との混合物を用いてアセタール化することにより製造することができる。このとき、混合物におけるアルデヒド(A)とアルデヒド(B)との混合比を調整することにより、得られるポリビニルアセタール樹脂Xにおけるアセタール化度(A)とアセタール化度(B)とを制御することができる。
【0025】
上記ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールの鹸化度の好ましい下限は70mol%、好ましい上限は99.8mol%、より好ましい下限は80mol%、より好ましい上限は95mol%である。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は1500、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度が1500未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下したり、得られる合わせガラスを立てかけた状態で高温環境下に保管したときに板ズレが発生したりすることがある。上記ポリビニルアルコールの平均重合度が5000を超えると、合わせガラス用中間膜の成形が困難になることがある。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は2000、より好ましい上限は3500、更に好ましい下限は2600、更に好ましい上限は3200である。
【0026】
上記中間層は、可塑剤を含有する。
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
【0027】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。
【0028】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。
【0029】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、例えば、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,2−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0030】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0031】
上記可塑剤は、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)等のジエステル化合物がより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)が更に好ましい。
【0032】
上記中間層において、上記ポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対する可塑剤の含有量の下限は50重量部である。可塑剤の含有量が50重量部未満であると、充分な遮音性を発揮することができない。上記可塑剤の含有量の好ましい下限は55重量部、より好ましい下限は60重量部である。本発明では、上記中間層を構成する樹脂として上記ポリビニルアセタール樹脂Xを用いる。これにより、大量の可塑剤を含有しなくとも、中間層のガラス転移温度を充分に低くすることができる。上記ポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対する可塑剤の含有量の好ましい上限は80重量部である。上記可塑剤の含有量が80重量部を超えると、合わせガラスの耐貫通性が低下したり、得られる合わせガラスを立てかけた状態で高温環境下に保管したときに板ズレが発生したりすることがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい上限は75重量部、更に好ましい上限は70重量部である。
【0033】
合わせガラス用中間膜を構成する材料として、一般的に用いられているポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、可塑剤を50重量部含有したとしても、0℃以下の環境下において固体音の遮音性に優れる合わせガラス用中間膜を得ることができない。一方で、上記中間層は、上記ポリビニルアセタール樹脂Xを用いているため、上記ポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して、可塑剤を50重量部以上含有することにより、0℃以下の環境下において固体音の遮音性に優れる合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0034】
上記中間層の厚さの好ましい下限は20μm、好ましい上限は1800μmである。上記中間層の厚さが20μm未満であると、充分な遮音性を発揮できないことがあり、1800μmを超えると、合わせガラス用中間膜全体の厚さが厚くなってしまい実用的ではないことがある。上記中間層の厚さのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は500μmである。
【0035】
上記保護層は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有することがより好ましい。上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂Y」ともいう。)が挙げられる。
【0036】
上記ポリビニルアセタール樹脂Yは、炭素数が3又は4のアルデヒドによってアセタール化されたポリビニルアセタール樹脂が好適である。
上記炭素数が3又は4のアルデヒドは、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等が挙げられる。なかでも、炭素数4のアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記ポリビニルアセタール樹脂Yのアセタール化度の好ましい下限は60mol%であり、好ましい上限は85mol%である。上記アセタール化度が60mol%未満であると、保護層の耐湿性が低下することがあり、85mol%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂Yのアセタール化反応が進みにくくなることがある。上記アセタール化度のより好ましい下限は65mol%であり、より好ましい上限は80mol%である。
【0038】
上記ポリビニルアセタール樹脂Yの水酸基量の好ましい上限は35mol%である。上記ポリビニルアセタール樹脂Yの水酸基量が35mol%を超えると、可塑剤とポリビニルアセタール樹脂Yとの相溶性が低く、可塑剤がブリードアウトすることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Yの水酸基量の下限は特にないが、実質的な下限は10mol%である。
【0039】
上記ポリビニルアセタール樹脂Yのアセチル基量の好ましい上限は10mol%である。上記アセチル基量が10mol%を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の強度が低下することがある。また、アセチル基量が10mol%以下であるポリビニルアセタール樹脂は可塑剤との相溶性が低い傾向にある。可塑剤との相溶性が低いポリビニルアセタール樹脂Yを含有する保護層を用いることにより、上記中間層に含まれる可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタール樹脂Yのアセチル基量のより好ましい上限は2.5mol%である。
【0040】
上記ポリビニルアセタール樹脂Yは、ポリビニルアルコールを炭素数が3又は4のアルデヒドを用いてアセタール化することにより製造することができる。
上記ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールの鹸化度の好ましい下限は90mol%、好ましい上限は99.8mol%である。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は1500、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度が1500未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下したり、得られる合わせガラスを立てかけた状態で高温環境下に保管したときに板ズレが発生したりすることがある。上記ポリビニルアルコールの平均重合度が5000を超えると、合わせガラス用中間膜の成形が困難になることがある。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は2000、より好ましい上限は3500、更に好ましい下限は2600、更に好ましい上限は3200である。
【0041】
上記保護層に用いる可塑剤は、上述した可塑剤を用いることができる。上記保護層に用いる可塑剤は、上記遮音層に用いる可塑剤と同一であってもよく、異なってもよい。
【0042】
上記保護層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタール樹脂Y100重量部に対して好ましい下限が25重量部、好ましい上限が50重量部である。上記可塑剤の含有量が25重量部未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下することがあり、50重量部を超えると、上記保護層から可塑剤がブリードアウトすることにより、合わせガラス用中間膜の透明性が低下することがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は45重量部である。
【0043】
上記保護層の厚さの好ましい下限は100μm、好ましい上限は1000μmである。上記保護層の厚さが100μm未満であると、常温域における固体音の遮音性が低下したり、上記遮音層から可塑剤がブリードアウトしたりすることがある。上記保護層の厚さが1000μmを超えると、合わせガラス用中間膜全体の厚さが厚くなってしまい実用的ではないことがある。上記保護層の厚さのより好ましい下限は200μm、より好ましい上限は500μmである。
【0044】
上記中間層及び上記保護層は、必要に応じて分散助剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、蛍光増白剤、青色顔料等の添加剤を含有してもよい。
【0045】
本発明の合わせガラス用中間膜の厚さの好ましい下限は300μm、好ましい上限は2000μmである。本発明の合わせガラス用中間膜の厚さが300μm未満であると、充分な固体音の遮音性や耐貫通性が得られないことがある。本発明の合わせガラス用中間膜の厚さが2000μmを超えると、実用化されている合わせガラスの厚みを超えてしまうことがある。本発明の合わせガラス用中間膜の厚さのより好ましい下限は400μm、より好ましい上限は1200μmである。
【0046】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂Xと上記可塑剤とを含有する中間層を形成するための樹脂組成物と、上記ポリビニルアセタール樹脂Yと上記可塑剤とを含有する保護層を形成するための樹脂組成物とをそれぞれ調製した後、共押出する方法や、それぞれを押出やプレス成形によりシート化した後に積層し一体化させる方法等が挙げられる。
【0047】
本発明の合わせガラス用中間膜を製造するために、2層の保護層の間に中間層が積層されている合わせガラス用中間膜の製造方法であって、ポリビニルアルコール、炭素数2〜4のアルデヒド(A)及び炭素数5〜12のアルデヒド(B)とを含有し、上記炭素数2〜4のアルデヒド(A)と上記炭素数5〜12のアルデヒド(B)との合計に占める上記炭素数2〜4のアルデヒド(A)の割合が50〜95%である混合物を用いて上記ポリビニルアルコールをアセタール化し、ポリビニルアセタール樹脂を合成する工程1と、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して可塑剤を50重量部以上含有する中間層形成用樹脂組成物と、熱可塑性樹脂を含有する保護層形成用樹脂組成物とを用いて合わせガラス用中間膜を形成する工程2とを有する合わせガラス用中間膜の製造方法を用いてもよい。
【0048】
上記合わせガラス用中間膜の製造方法は、ポリビニルアルコール、炭素数2〜4のアルデヒド(A)及び炭素数5〜12のアルデヒド(B)とを含有し、上記炭素数2〜4のアルデヒド(A)と上記炭素数5〜12のアルデヒド(B)との合計に占める上記炭素数2〜4のアルデヒド(A)の割合が50〜95%である混合物を用いて上記ポリビニルアルコールをアセタール化し、ポリビニルアセタール樹脂を合成する工程1を有する。
上記工程1にて、上記ポリビニルアセタール樹脂Xを合成する。
上記混合物はポリビニルアルコール、炭素数2〜4のアルデヒド(A)及び炭素数5〜12のアルデヒド(B)とを含有する。上記混合物は更に水を含有してもよい。
上記アセタール化度(A)の割合が50%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂Xの合成収率が低下し、95%を超えると、0℃以下の環境下における固体音の遮音性を発揮させるために大量の可塑剤を配合しなくてはならなくなる。
【0049】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は、上記ポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して可塑剤を50重量部以上含有する中間層形成用樹脂組成物と、熱可塑性樹脂を含有する保護層形成用樹脂組成物とを用いて合わせガラス用中間膜を形成する工程2を有する。
上記中間層形成用樹脂組成物は、上記ポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して可塑剤を50重量部以上含有する。上記中間層は上記中間層形成用樹脂組成物を用いて、従来公知の方法で成形することができる。
上記保護層形成用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有する。上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。上記保護層形成用樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有することが好ましい。
【0050】
本発明の合わせガラス用中間膜が、2枚の透明板の間に挟み込まれている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
本発明の合わせガラスの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
【0051】
上記透明板は特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。具体的には例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、グリーンガラス等の無機ガラス等が挙げられる。また、ポリカーボネートやポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
【0052】
上記2枚の透明板は、同種の透明板であってもよいし、異種の透明板であってもよい。異種の透明板の組み合わせは、例えば、透明フロート板ガラスとグリーンガラスのような着色された板ガラスとの組み合わせや、無機ガラスと有機プラスチックス板との組み合わせ等が挙げられる。
【0053】
本発明の合わせガラスは、自動車用ガラスとして使用する場合は、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス、パノラマガラスとして用いることができる。また、本発明の合わせガラスをペアガラスの一部として用いてもよい。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、0℃以下の環境下において固体音の遮音性に優れる合わせガラス用中間膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
(1)ポリビニルアセタール樹脂Xの合成
純水3000gに、平均重合度2300、ケン化度87モル%のポリビニルアルコール300gを溶解させて溶液を得た。この溶液を16℃に調節し、26重量%塩酸106g、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加え、混合物を得た(工程A)。
【0057】
得られた混合物の溶液を8℃に調節し、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加え、充分に混合し、40分間保持した。更に、26重量%塩酸380gを30分かけて溶液に滴下した。その後、混合物を50℃に調整し、3時間保持して反応を完了させ、固形分を水洗し、乾燥して、ポリビニルアセタール樹脂Xを得た(工程B)。
得られたポリビニルアセタール樹脂Xのアセタール化度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認したところ、アセタール化度(A)は37mol%、アセタール化度(B)は33mol%であった。
得られたポリビニルアセタール樹脂X1gが溶解しているメタノール・水混合溶液(重量比で1:1)100gに、35重量%塩酸水溶液10gを加えた混合液を加熱し、50℃で5時間反応させた。反応後の混合液に含まれるアルデヒド(A)及びアルデヒド(B)を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量した。カラムはジーエルサイエンス社製「Inertsil CX分析カラム」を用いて測定した。
【0058】
(2)中間層を形成するための樹脂組成物の調製
得られたポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート60重量部を混合し、ミキシングロールを用いて充分に攪拌し、中間層を形成するための樹脂組成物を調製した。
【0059】
(3)保護層を形成するための樹脂組成物の調製
ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、ブチラール化度65mol%、アセチル基量1mol%)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート40重量部を混合し、ミキシングロールを用いて充分に攪拌し、保護層を形成するための樹脂組成物を調製した。
【0060】
(4)合わせガラス用中間膜の製造
中間層を形成するための樹脂組成物と、保護層を形成するための樹脂組成物とを共押出し、保護層と中間層と保護層とがこの順で積層された合わせガラス用中間膜を製造した。保護層の厚さは350μmであり、中間層の厚さは100μmであり、合わせガラス用中間膜の厚さは800μmであった。
【0061】
(実施例2)
工程Bにおいて、「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド46molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド24molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0062】
(実施例3)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(B)としてn−オクチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド48molと、アルデヒド(B)としてn−オクチルアルデヒド24molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0063】
(実施例4)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(B)としてラウリルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド72molと、アルデヒド(B)としてラウリルアルデヒド9molとを加え、かつ、中間層を形成するための樹脂組成物の調製においてポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート50重量部を混合した以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0064】
(実施例5)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(B)として2−エチルヘキシルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド42molと、アルデヒド(B)として2−エチルヘキシルアルデヒド32molとを加え、かつ、中間層を形成するための樹脂組成物の調製においてポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート50重量部を混合した以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0065】
(実施例6)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(B)としてラウリルアルデヒド5molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド80molを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0066】
(実施例7)
工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド72molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド4molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0067】
(実施例8)
工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド72molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド14molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0068】
(実施例9)
工程において「ケン化度87モル%のポリビニルアルコール」に代えて、ケン化度91モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0069】
(実施例10)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド36molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド42molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0070】
(実施例11)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド42molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド30molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0071】
(実施例12)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド38molと、アルデヒド(B)としてn−オクチルアルデヒド30molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0072】
(実施例13)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド64molと、アルデヒド(B)としてラウリルアルデヒド15molとを加え、かつ、中間層を形成するための樹脂組成物の調製においてポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート50重量部を混合した以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0073】
(実施例14)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド34molと、アルデヒド(B)として2−エチルヘキシルアルデヒド38molとを加え、かつ、中間層を形成するための樹脂組成物の調製においてポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート50重量部を混合した以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0074】
(実施例15)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド72molと、アルデヒド(B)としてラウリルアルデヒド5molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0075】
(実施例16)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド64molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド10molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0076】
(実施例17)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加え、工程Bにおいて「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド40molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド36molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド64molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド20molとを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0077】
(実施例18)
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成において、平均重合度2300、ケン化度87モル%のポリビニルアルコールに代えて、平均重合度2300、ケン化度91モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例10と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0078】
(実施例19)
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成において、平均重合度2300、ケン化度87モル%のポリビニルアルコールに代えて、平均重合度2300、ケン化度90モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例10と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0079】
(実施例20)
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成において、平均重合度2300、ケン化度87モル%のポリビニルアルコールに代えて、平均重合度2300、ケン化度80モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例10と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0080】
(実施例21)
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成において、平均重合度2300、ケン化度87モル%のポリビニルアルコールに代えて、平均重合度2300、ケン化度99モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例10と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0081】
(実施例22)
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成において、平均重合度2300、ケン化度87モル%のポリビニルアルコールに代えて、平均重合度2300、ケン化度95モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例10と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0082】
(実施例23)
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成において、平均重合度2300、ケン化度87モル%のポリビニルアルコールに代えて、平均重合度2300、ケン化度93モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例10と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0083】
(比較例1)
中間層を形成するための樹脂組成物の調製において、ポリビニルアセタール樹脂X100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート40重量部を混合した以外は、実施例1と同様に合わせガラス用中間膜を製造した。
【0084】
(比較例2)
工程Aにおいて「アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド6molを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド6molを加えるのと、工程Bにおいて、「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド36molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド42molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド72molを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成し、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0085】
(比較例3)
工程Bにおいて、「アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド36molと、アルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド42molとを加えた」のに代えて、アルデヒド(A)としてn−ブチルアルデヒド32molを加えアルデヒド(B)としてn−ヘキシルアルデヒド44molを加えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂Xを合成したが、反応途中でゲル化してしまった。
【0086】
(評価)
実施例及び比較例で得られた、合わせガラス用中間膜について以下の評価を行った。結果を表1〜4に示した。
【0087】
(Loss factor評価)
得られた合わせガラス用中間膜を縦30mm×横320mmに切り出し、2枚の透明なフロートガラス(縦25mm×横305mm×厚さ2.0mm)で挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で、30分保持し、真空プレスした。ガラスからはみ出た合わせガラス用中間膜を切り落とし、評価用サンプルを作製した。
得られた評価用サンプルについて、測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて0℃の条件下で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の1次モード(100Hz近傍)の損失係数を評価した。更に、実施例1〜9及び比較例1、2においては、20℃の条件下においても測定し、0℃と20℃の損失係数の平均値を算出した。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、0℃以下の環境下において固体音の遮音性に優れる合わせガラス用中間膜を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層の保護層の間に中間層が積層されている合わせガラス用中間膜であって、
前記中間層は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤を50重量部以上含有し、前記ポリビニルアセタール樹脂は、炭素数2〜4のアルデヒド(A)によりアセタール化されたアセタール基(A)と、炭素数5〜12のアルデヒド(B)によりアセタール化されたアセタール基(B)とを有し、前記アセタール基(A)によるアセタール化度(A)と、前記アセタール基(B)によるアセタール化度(B)との合計に占める前記アセタール化度(A)の割合が50〜95%である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
アルデヒド(A)は炭素数4のアルデヒドであり、かつ、アルデヒド(B)は炭素数6〜12のアルデヒドであることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
中間層は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤を50〜80重量部含有することを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
保護層は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤を25〜50重量部含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜が、2枚の透明板の間に挟み込まれていることを特徴とする合わせガラス。

【公開番号】特開2011−225432(P2011−225432A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72874(P2011−72874)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】