説明

合成パルプ、その製造方法及び合成パルプを含む不織布

【課題】
耐熱性にすぐれる合成パルプ及びその製造方法に関する。さらには、その合成パルプを用いた不織布に関する。
【解決手段】
メチルペンテン系重合体及びエチレン系重合体を主たる成分として含有する合成パルプである。さらには、樹脂成分が、メチルペンテン系重合体が90〜5重量%、ポリエチレン系重合体が10〜95重量%である。また、これらの合成パルプがフラッシュ法により得られる合成パルプの製造方法である。更には、これらの合成パルプを含む不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルペンテン系重合体及びポリエチレン系重合体を主たる樹脂成分として含有する合成パルプ、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維からなるシート状物は、種々の用途に用いられており、用途によっては耐熱性が要求されている。例えば電池用セパレータでは、電解液の保持性を有し且つ通過するイオンを通過させることが必要であるために多孔質のシートが用いられるが、使用中にセパレータが溶融して孔を塞がないことが必要であり、耐熱性を有するものが考えられた(例えば、特許文献1)。しかしながら、引用文献1では、セパレータの原料としてフッ素系樹脂を用いており、フッ素原子が電解液に悪影響を及ぼす虞がある。
そこで、繊維を構成する樹脂の融点が高いものが求められ、複数の種類の樹脂成分からなる極細繊維を主体とする不織布であって当該樹脂成分の一方がポリメチルペンテン系樹脂であるものが考えられた(例えば、特許文献2参照及び特許文献3参照)。特許文献2の極細繊維は、島成分をポリメチルペンテンとし海成分をこれより低融点の樹脂を用いた繊維であり、特許文献3の極細繊維はポリエチレンとポリプロピレンとポリメチルペンテンとを混合した繊維である。これらの繊維からなるシート状物は、ある程度の耐熱性はあるが、高温にすると低融点の樹脂が溶融して孔が塞がる虞がある。
【0003】
【特許文献1】特開平4−286863号公報
【特許文献2】特開2000−192335号公報
【特許文献3】特開2004−285509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐熱性にすぐれる合成パルプ、その製造方法及び用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、メチルペンテン系重合体及びエチレン系重合体を主たる成分として含有する合成パルプが高い耐熱性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、以下の構成のよりなる。
[1]メチルペンテン系重合体及びポリエチレン系重合体を主たる樹脂成分として含有する合成パルプ、
[2] 樹脂成分が、メチルペンテン系重合体が90〜5重量%、ポリエチレン系重合体が10〜95重量%である[1]に記載の合成パルプ、
[3]メチルペンテン系重合体が、4−メチル−1−ペンテンからなる[1]又は[2]に記載の合成パルプ、
[4]ポリエチレン系重合体の密度が0.93〜0.97g/cmである[1]〜[3]のいずれかに記載の合成パルプ、
[5]フラッシュ法により得られることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の合成パルプの製造方法、
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の合成パルプを含有する不織布。
【発明の効果】
【0007】
本発明における合成パルプ及び、当該合成パルプを含有する不織布は、耐熱性に優れるものである。本発明の合成パルプを不織布にしたものに熱をかけても、不織布中の孔が閉塞することが無く、合成パルプを構成する繊維がある程度のその繊維形状を維持している。したがって、種々の用途に使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔合成パルプ〕
本発明の合成パルプは、メチルペンテン系重合体及びポリエチレン系樹脂を主たる樹脂成分として含有してなる。
【0009】
メチルペンテン系重合体
本発明に係るメチルペンテン系重合体は、融点が高い樹脂であるので好ましい。メチルペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のペンテン化合物の単独重合体あるいは共重合体である。共重合体としてはペンテン系化合物とα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、α−オレフィンは炭素数2〜20であることが好ましい。本発明に係るメチルペンテン系重合体は、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等との共重合体で、4−メチル−1−ペンテンを主成分とする重合体が挙げられる。また、これらのメチルペンテン系重合体は、異なる種類のメチルペンテン系重合体が複数であっても良い。本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体は、公知の種々の方法、例えば、立体特異性触媒を使用して製造し得る。
【0010】
本発明に係るメチルペンテン系重合体としては、耐熱性の面から、融点が210〜280℃、好ましくは230〜250℃、ビカット軟化点(ASTM1525)が140℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上の範囲にある重合体が望ましい。4−メチル−1−ペンテン共重合体の融点或いはビカット軟化点がこのような範囲にあると、耐熱性を必要とする用途に好ましく用いることが出来る。
【0011】
本発明に係るメチルペンテン系重合体は、メチルペンテン化合物が80〜99.9重量%、好ましくは90〜99.9重量%、共重合成分であるα-オレフィンの含有量が20〜0.1重量%、好ましくは10〜0.1重量%のものが好ましい。
【0012】
本発明に係るメチルペンテン系重合体としては、温度260℃、5kg荷重で測定したメルトフローレートが100〜1000g/10分、好ましくは150〜500g/10分の範囲の重合体が望ましい。この範囲にあれば、本発明の繊維の集合体を用いた不織布等に成形性、他の用途への加工性又は機械的強度等に好ましく用いることが出来る。
【0013】
エチレン系重合体
本発明に係るエチレン系重合体は、エチレン単独重合体又はエチレン共重合体であっても良い。
エチレン単独重合体として、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.1〜500g/10分、さらに好ましくは1〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。MFRが上記のような範囲にあるエチレン単独重合体を用いると、高度に分岐し、相互の絡み合いが良好な合成パルプが得られる。
【0014】
エチレン共重合体として、エチレンを主成分とする共重合体であり、共重合するものとしては、α−オレフィン、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられる。その中でもエチレンとα−オレフィンとの共重合体が好ましく、更にはエチレンと炭素数炭素原子数3〜20のα- オレフィンとの共重合体が好ましい。プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1− ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数3〜20のα-オレフィンなどが例示できる。
【0015】
エチレン共重合体の密度(ASTM D 1505)が0.93〜0.97g/cm3 、好ましくは0.96〜0.97g/cm3 の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重)が0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは1〜20g/10分の範囲にあることが望ましい。密度およびMFRが上記のような範囲にあるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いると、高度に分岐し、相互の絡み合いが良好な合成パルプが得られる。
【0016】
上記エチレン−α−オレフィン共重合体におけるエチレン含量は、通常50モル%以上100モル%未満、好ましくは80.0〜99.5モル%、さらに好ましくは90.0〜99.0モル%である。
【0017】
本発明に係るエチレン系重合体は、線状低密度ポリエチレン、エラストマー(エチレン−α−オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレンが挙げられる。その中でも、高密度ポリエチレンがより細い繊維をつくる為ためには好ましい。これらのエチレン系重合体は、いずれの方法で得られたものであっても良い。
【0018】
樹脂成分
本発明の合成パルプは、前記メチルペンテン系重合体及びエチレン系重合体を主に樹脂成分として含む。当該樹脂成分としては、メチルペンテン系重合体が通常90〜5重量%でエチレン系重合体10〜95重量%である。合成パルプおよび当該合成パルプを含有する不織布の耐熱性を高める観点からは、メチルペンテン系重合体の比率が高い方が好ましいが、メチルペンテン系重合体のみでは、合成パルプを作成できるが、シート状に成形することができないので好ましくない。また、メチルペンテン系重合体の配合比が5重量%未満では、本発明の目的である高い耐熱性は得られず、合成パルプを含有する不織布中の孔が閉塞してしまう。一方、合成パルプを含有する不織布シートの成形性を高める観点からは、エチレン系重合体の比率が高い方が好ましい。エチレン系重合体の配合比率が10重量%未満では、合成パルプを作製できるがシート状に成形することはできない。従って、メチルペンテン系重合体とエチレン系重合体の配合比を調整することにより、所望の用途に求められる耐熱性と成形性を有した合成パルプおよび当該合成パルプを含有する有孔の不織布シートを得ることができる。好ましくはメチルペンテン系重合体が90〜30重量%でエチレン系重合体10〜70重量%、更には好ましくメチルペンテン系重合体が90〜50重量%でエチレン系重合体10〜50重量%、特にメチルペンテン系重合体が90〜80重量%でエチレン系重合体10〜20重量%が好ましい。
【0019】
本発明に係る合成パルプは、上記のメチルペンテン系重合体及びエチレン系重合体の他に、本発明の目的を損なわない範囲で他の樹脂や他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤及び抗菌剤等が挙げられる。
【0020】
本発明に係る合成パルプは、合成パルプを構成する繊維の最長部分の長さの平均値(以下、「平均繊維長」という。)が通常0.05〜50mmであり、好ましくは0.05〜10mmであり、更に好ましくは0.1〜5mmである。平均繊維長が上記範囲内にあることにより、当該合成パルプとしたときに、種々の用途に好ましく使用することができる。
【0021】
本発明に係る合成パルプを構成する繊維は、直径(以下、「繊維径」という。)の最小値が0.5μm程度であることが好ましく、繊維径の最大値が50μm程度であることが好ましい。繊維径が上記範囲内にあることにより、当該合成パルプを、種々の用途に好ましく使用することができる。
【0022】
ここで、上記平均繊維長および繊維径の測定方法について説明する。
(1)平均繊維長
フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)を使用し、12000〜13000本の繊維について繊維長を測定し、繊維長0.05mm刻みで分級した各級の数平均繊維長ならびに繊維本数を下記の式に代入して得られる値を平均繊維長とする。
【0023】
平均繊維長(mm)=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Ln:各級の数平均繊維長(mm)
Nn:各級の繊維本数
ここで、各級の平均繊維長Lnは、次式で求められる。
Ln=ΣL/N
L:1つの級における一本一本の実測繊維長
N:1つの級における繊維本数
【0024】
なお、繊維長は以下のようにして測定する。
繊維を希薄な濃度で水に分散し、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析する事で測定する。より具体的には、繊維を0.02重量%の水に分散させ、フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)を使用し、12000〜13000本の繊維について測定する。繊維長は0.05mm刻みで測定され、繊維長と各繊維長に該当する繊維の存在率(%)の両方の測定結果が得られる。
【0025】
(2)繊維径
繊維径は、1本、1本の繊維を光学顕微鏡あるいは、電子顕微鏡で観察することで測定する。具体的に、繊維径の最大値および最小値は、次のようにして測定する。
最大値:キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて倍率100倍で観察し、10μm以上の部分につき無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最大値とする。
最小値:日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM6480にて倍率3000倍で観察し、
10μm未満の部分につき、無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最小値とする。
【0026】
本発明に係る合成パルプを構成する繊維は、分岐構造を有する。分岐構造とは、繊維状物質が乱雑に分岐した形状をいい、例えば図1に示すような形態が例示される。繊維の分岐は光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察することにより確認する。なお、図1は、分岐構造の繊維の集合体を、キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて75倍で観察した写真である。
【0027】
本発明の合成パルプの形態としては、特に限定されるものではなく、不織布の他、織物、編物等が挙げられる。本発明の合成パルプの目付は、用途に応じて適宜選択すれば良い。本発明の合成パルプから得られる不織布は、合成パルプを構成する繊維が分岐構造を有するので、当該繊維同士が物理的な絡み合いによって結合することにより強度に優れる。更には、熱をかけたときに高温に耐えることができる。本発明の合成パルプにより得られる不織布は、溶融紡糸により得られる単繊維を用いた不織布よりも耐熱性が高く、熱をかけても孔が閉塞することが無い。その理由は、明確には分からないが、フラッシュ法により得られた繊維は、ペンテン系重合体とエチレン系重合体が適宜分散しているのでエチレン系重合体が先に溶融し始めてもペンテン系重合体があるために繊維全体が溶融しにくいものと考えられる。繊維が分岐構造をとることがその効果は顕著となると思われる。
【0028】
合成パルプの製造方法
本発明の合成パルプの製造方法は、合成パルプを構成する繊維が分岐構造を有する方法となれば種々公知の方法を挙げることができ、その一実施形態としてフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法は、高圧で溶媒に溶解した樹脂を減圧することで溶媒を揮散させ、さらに必要に応じワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて繊維を切断および叩解することで不織布を製造する方法である。具体的には、以下の方法によることが好ましい。
【0029】
前記のメチルペンテン系樹脂及びエチレン系重合体からなる樹脂を、該樹脂を溶解可能な溶剤に溶解し、水及び懸濁剤等を加えてエマルションとする。
【0030】
溶媒は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭素類等の中から、原料樹脂を溶解せしめ、且つ、フラッシュ時に揮発し得られた繊維の集合体に残存しにくいものを適宜選択する。
【0031】
懸濁剤は、溶媒、水及び樹脂とを均一に混合するのに用いられる。懸濁剤としては、種々公知のものを用いることが出来る。例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸塩、ゼラチン、トラガカントゴム、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを使用することができる。また、それらの親水性ポリマーと、一般的なノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤とを併用することもできる。その中でも、特にポリビニルアルコール系の親水性ポリマーが好ましく、ポリビニルアルコールは重合度200〜1000のものが好ましい。懸濁剤の繊維集合体中の含有量は、通常0.1〜5質量%であり、好ましくは0.3〜3質量%である。懸濁剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られる合成パルプは繊維が分岐状に分散する。製造過程において、添加した懸濁剤の一部が抜けるような操作をする場合は多めに添加する等、適宜調整し添加する。添加量の目安としては、原料の樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である。懸濁剤を添加することにより、エマルションを安定化することができるとともに、フラッシュ後の繊維切断を水中で安定的に行うことができる。
【0032】
次に、得られたエマルションを、100〜200℃、好ましくは130〜150℃に加熱し、圧力0.1〜5MPa、好ましくは圧力0.5〜1.5MPaの加圧状態にし、ノズルより減圧下へ噴出(フラッシュ)すると同時に溶剤を気化させる。減圧の条件は、圧力1kPa〜95kPaとすることが好ましく、噴出先は窒素雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。本明細書において、圧力とは絶対圧力のことを示す。
【0033】
上記のようにフラッシュすることにより、分岐構造を有する不定長の繊維が得られるが、この繊維をさらにワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて切断及び叩解して、所望の長さにすることが好ましい。そのとき、繊維を0.5〜5g/リットル濃度の水スラリーとして上記切断及び叩解処理を行うことが好ましい。乾燥後、所望によりミキサー等によって開綿してもよい。
【0034】
以上説明した方法によれば、分岐構造を有する繊維の集合体、特に本発明の合成パルプを好ましく製造することができる。
【0035】
合成パルプの用途
本発明の合成パルプは、公知の種々の用途に使用することができる。本発明の合成パルプは種々の形状に成形することができ、例えば、不織布状として使用することができる。本発明の合成パルプは、耐熱性に優れるので耐熱性を有する用途にも好ましく使用することができる。本発明の例えば、不織布に成形することにより、ティーバッグ紙、コーヒーバッグ紙、だしパック紙、エアフィルタ、マスク、浄水用フィルタ、ワインフィルタ、ビールフィルタ、ジュースフィルタ等などのフィルタ類;食品包装紙、脱酸素材包装紙、医療用包装紙、防虫包装紙等の包装材;壁紙、透湿防水シート、耐熱ボード、ふすま紙、障子紙、グリーティングカード、パンフレット、名刺、ブックカバー、封筒、ランプシェード、ラベル用紙、印刷用紙、ポスター用紙等のカード・シート・ラベル類;セメント粒子捕捉材、チクソ性付与材等の住宅用資材;使い捨てのオムツ・ナプキン・シーツのトップシートや吸収体バインダー繊維、使い捨てのおしぼり・ワイパー・ティッシュのバインダー繊維、脂取り紙、滅菌紙等の衛生材料;加湿器用水蒸気揮散材、芳香剤芯材等の揮散材;および食品トレー・文具用品・大型部品緩衝材・自動車ドアパネルのバインダー用繊維等の多岐に渡って好適に使用することが出来る。
なお、上記用途においては、本発明の合成パルプのみから構成してもよいし、本発明の合成パルプに他の繊維が混繊していてもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。樹脂の混合割合及び、評価結果は、表1に示した。また、繊維の集合体の樹脂成分は、以下のものを用いた。表1中、繊維を構成する樹脂の4−メチル−1−ペンテン共重合体、高密度ポリエチレン及びホモポリプロピレンの重量比を%で示す。
【0037】
4−メチル−1−ペンテン共重合体:
商品名:TPX RT−18、三井化学(株)製、融点;240℃、メルトフローレート26g/10分(ASTM D1238)、ビカット軟化点176℃(ASTM D1525)
高密度ポリエチレン:
商品名:ハイゼックス 2200J、(株)プライムポリマー製、融点135℃(ASTM D3418)、メルトフローレート5.2g/10分(ISO1133)、ビカット軟化点130℃(ASTM D1525)
ホモポリプロピレン:
商品名:プライムポリプロ J107J、(株)プライムポリマー製、融点161℃(ASTM D3418)、メルトフローレート30g/10分(ISO1133)、ビカット軟化点155℃(ASTM D1525)
【0038】
評価方法
(繊維の形状)
得られた繊維状物を、光学顕微鏡(キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000)にて倍率100倍で観察し、図1のように繊維が分岐している合成パルプの形状であるものを“○”、樹脂の小塊で良好な繊維形状にないものを“×”とした。
(熱による繊維形状の保持または消失)
得られた繊維状物を190℃のオーブン中にて10分間加熱をする前後での状態変化を観察した。光学顕微鏡(キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000)にて倍率100倍で観察し、加熱時の樹脂溶融によって、加熱前の繊維の形状が消失したものを“×、繊維形状の消失が認められなかったものを“○”とした。
【0039】
〔実施例1〕
[繊維の集合体の製造]
80リットル攪拌機付きオートクレーブ中に、4−メチル−1−ペンテン共重合体200g、高密度ポリエチレン800g、n−ヘキサン20リットル(23℃)を投入し、窒素置換後145℃にて2時間攪拌して共重合体を溶解した(4−メチル−1−ペンテン共重合体:高密度ポリエチレン=20:80(重量%))。その溶液に、水20リットル(23℃)、ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製 ゴーセノールNL-05)30gを投入し、145℃で30分間攪拌してエマルションを得た。
次いで、このエマルションを、オートクレーブに取り付けられた直径3mm、長さ20mmのノズルより窒素雰囲気で圧力53kPaの圧力下にあるドラム内に噴出(フラッシュ)させて繊維状物を得た。
次いで、繊維状物を10g/リットル濃度の水スラリーとした後、直径12インチのディスク型リファイナーで叩解を行い、繊維を水中に分散させた。この水中に分散させた繊維を、熱風循環式乾燥機にて50℃で24時間乾燥し、2L家庭用ミキサーにて開綿することで綿状の合成パルプを得た。
【0040】
得られた合成パルプは図1に示すような繊維構造が分岐構造を有している。尚、図1は乾燥後の合成パルプを、キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて75倍で観察した際の写真である。
この合成パルプは、繊維径が、最小値1μm、最大値40μm、平均繊維長1.1mmであった。
得られた合成パルプについて、熱による繊維形状の保持または消失を観察したところ、加熱により、繊維の形状は消失しなかった。
【0041】
〔実施例2〕
合成パルプの樹脂成分として、4−メチル−1−ペンテン共重合体500g及び高密度ポリエチレン500gを用いた以外は実施例1と同様にして合成パルプを得た(4−メチル−1−ペンテン共重合体:高密度ポリエチレン=50:50(重量%))。この合成パルプは、繊維径が、最小値1μm、最大値40μm、繊維長0.9mmであった。
【0042】
〔実施例3〕
合成パルプを樹脂成分として、4−メチル−1−ペンテン共重合体800g及び高密度ポリエチレン200gを用いた以外は実施例1と同様にして合成パルプを得た(4−メチル−1−ペンテン共重合体:高密度ポリエチレン=80:20(重量%))。この合成パルプは、繊維径が、最小値1μm、最大値40μm、平均繊維長0.8mmであった。
【0043】
〔比較例1〕
合成パルプの樹脂成分として、高密度ポリエチレン100重量%を用いた以外は実施例1と同様にして合成パルプを得た。この合成パルプは、繊維径が、最小値1μm、最大値40μm、平均繊維長1.0mmであった。
得られた合成パルプは図1に示すような繊維構造が分岐構造を有している。熱による繊維形状の保持または消失を観察したところ、加熱により、繊維が溶融して、繊維の形状が消失した。
【0044】
〔比較例2〕
合成パルプの樹脂成分として、ホモポリプロピレン100重量%を用いた以外は実施例1と同様にして合成パルプを得た。この合成パルプは、繊維径が、最小値1μm、最大値40μm、平均繊維長0.9mmであった。
得られた合成パルプは図1に示すような繊維構造が分岐構造を有している。熱による繊維形状の保持または消失を観察したところ、加熱により、繊維が溶融して、繊維の形状が消失した。
【0045】
〔比較例3〕
合成パルプの樹脂成分として、4−メチル−1−ペンテン重合体100重量%を用いた以外は実施例1と同様にして合成パルプの製造を試みたが、得られたものはところどころ樹脂の小塊があり、繊維のような形状はあるが図1のような分岐構造の繊維を得ることができなかった。熱による繊維形状の保持または消失を観察したところ、加熱により、繊維は加熱前と同じ形状をしていた。
【0046】
〔比較例4〕
合成パルプを樹脂成分として、4−メチル−1−ペンテン重合体50重量%及びホモポリプロピレン50重量%を用いた以外は実施例1と同様にして合成パルプの製造を試みたが、得られたものはところどころ樹脂の小塊があり、繊維のような形状はあるが図1のような分岐構造の繊維を得ることができなかった。熱による繊維形状の保持または消失を観察したところ、加熱により、繊維が溶融して、繊維の形状が消失した。
【0047】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】合成パルプの顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルペンテン系重合体及びポリエチレン系重合体を主たる樹脂成分として含有する合成パルプ。
【請求項2】
樹脂成分が、メチルペンテン系重合体が90〜5重量%、ポリエチレン系重合体が10〜95重量%である請求項1に記載の合成パルプ。
【請求項3】
メチルペンテン系重合体が、4−メチル−1−ペンテンからなる請求項1又は2に記載の合成パルプ。
【請求項4】
ポリエチレン系重合体の密度が0.93〜0.97g/cmである請求項1〜3のいずれかに記載の合成パルプ。
【請求項5】
フラッシュ法により得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合成パルプの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の合成パルプを含有する不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2008−190089(P2008−190089A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27486(P2007−27486)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】