合成層状フィロケイ酸ナノ粒子が分配された金属マトリックスから構成される複合材料
本発明は、層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料であって、層状フィロケイ酸鉱物粒子が、合成フィロケイ酸ナノ粒子(6)と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属粒子であることを特徴とする複合材料に関する。本発明は、かかる材料から形成される潤滑コーティングを担持する基板及び電解析出による調製方法に及ぶ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、金属潤滑コーティングとしてのその使用、及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば輸送、コネクタ技術、兵器のような多数の産業分野において、接触する部品が互いに動く機械アセンブリを使用する。多数の場合において、接触する部品の表面に、その基本的性質の他に、高温に対して安定した潤滑性を与え、表面が接触する機械アセンブリの寿命及び信頼性を向上させるために、表面を処理することが望ましい。
【0003】
化学的方法(無電解法)にせよ、電気化学的方法にせよ、電解法により複合潤滑コーティングを析出させることが知られている。基板上への「無電解」と呼ばれる共析出法は、触媒的酸化還元により金属又は合金成長プロセス中に粒子を組み入れることからなる方法である。電気化学的方法による共析出法は、電解セル中の電解質から、コーティングする基板上での金属又は合金成長プロセス中に粒子を組み入れることからなる。
【0004】
例えば、ニッケル前駆物質溶液中のPTFE懸濁液からの「無電解」法によるニッケルを主成分とする金属マトリックス中のPTFE潤滑コーティングの析出は、X.Huら(Plating and surface finishing,1997年3月)によって知られている。しかし、PTFEが、300℃を超える温度で破壊されるので、この種のコーティングは安定していない。「無電解」法によるフラーレン−WS2の鉱物ナノ粒子を含む減摩NiP析出の作製は、特にW.X.Chenら、Advanced Engineering Materials,vol.4,no9,2002年9月]によって記載されている。「無電解」法により、NiP−B4C潤滑コーティングも析出できる[J.P.Geら、Plating and surface finishing,1998年10月参照]。
【0005】
更に、Ni−BNhコーティングが、M.Pushpavanamらによって記載され[(Metal Finishing,1995年6月)]、MoS2を含むニッケル複合コーティングが、Yu−Chi Changらによって記載されている[Electrochimica Acta,vol.43,Issues 3−4,1998,p.315−324]。いずれの場合においても、コーティングは電気化学的方法によって得ることができる。しかしながら、窒化ホウ素は、酸性及び塩基性媒体に対して非常に低い耐薬品性を有する。
【0006】
その上、WO2004/063428は、15μm未満の平均寸法を有し、かつ電解質を形成する水性媒体中で注意を払うことなく懸濁液の形成を可能にする、(当然に高度に疎水性である)タルクに親水性を与えるように、ヒドロキシル基の全部又は一部を置換することによってセルロース誘導化合物がその表面に固定された天然タルク粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料を記載している。
【0007】
それにもかかわらず、この複合材料が、種々の短所を有することは明瞭である。
【0008】
最初に、改質された天然タルク粒子は、粒子の周辺端部のレベルに本質的に位置する親水性領域を有する房の一般的な形状をしており、これらの粒子の主要面は、疎水性を保っている。したがって、(化学的又は電気化学的)電解析出による複合材料の作製の際に、タルク粒子は主に、コーティングする基板表面に垂直な方向に沿ってその主要面が伸長するように自然に配向する。この配向は、反対に層が基板表面に主に平行に配向することが望ましい、求められている潤滑性に対しては不利である。更にそれは、以下に言及する第2の短所と同時に、互いに滑動可能な、接触した表面を有する金属潤滑コーティングを求める用途と一般的に相容れない、高い表面粗度を引き起こす。したがって、この粗度を防ぐために、製造された金属コーティングの研磨ステップを後に行うことが必要である。しかし、このステップは費用がかかるのみならず、特に突き出たタルク粒子の移動又は除去を引き起こすときに、コーティングを構成する複合材料中、特に金属マトリックスの表面に傷を発生させる結果にもなる。
【0009】
更に、天然タルクの粒度(粉末粒子の細かさ及び粒度分布)は本質的に、用いられる機械破砕技術及び材料によって決まる。天然タルクから、機械破砕によって得られる粉末は、一般的に約数マイクロメートルから数百マイクロメートルの粒度を有する。
【0010】
粒子の粒度分布の無視できない変動に加えて、機械破砕は、タルクの漸進的かつ著しい構造劣化、及びその結晶構造中での多数の傷の出現を引き起こす。破砕が細かいほど、初期結晶構造が変化する。
【0011】
このように、得ることができる最も細かい層状天然タルク粒子は、常に1μmを超える平均寸法を有し、かつ制御しにくく、多くの場合、多峰型の、非対称かつ高分散の粒度分布を有する。したがって、複合材料は、サイズの比較的大きい、あらゆる場合に電解析出によって形成される金属細粒とほぼ同じ又はそれよりも大きい天然タルク粒子を含む。これらの比較的大きなタルク粒子は、金属析出の成長、並びに析出中に生じる酸化還元及び/又は電気化学的現象に著しく影響を及ぼす。
【0012】
更に、天然タルク組成物は100%純粋ではない。実際に、100%純粋である天然タルクのいかなる分割固体組成物も現在、存在しない。天然タルク粒子は、化学式Si4Mg3O10(OH)2に完全には対応せず、したがって、化学式は、非常に理論的であるにすぎない。天然タルクの純度の程度(方解石、緑泥石、黄鉄鉱等のような他の鉱物との鉱物学的結合がないこと)及び不純物の性質(多少の含有量のFe、Al、F及び微量のMn、Ti、Cr、Ni、Ca、Na及び/又はK)は、元の鉱脈によって決まる。
【0013】
その結果、実際、特に金属潤滑コーティングとして使用し得るためには、不十分な品質の複合材料が得られることになる。
【0014】
平均寸法がより小さく、改良された粒度分布を有する天然タルクのある種の組成物が記載されたことに注目すべきである。にもかかわらず、天然タルク粒子は、1μm未満の寸法に破砕される際に、消失するその層状特性に関連したその性質を失う。実際に、この寸法未満では、破砕は、粒子の径方向平均寸法の減少より大きくはないにせよ、おそらくは同じくらいの層分離をもたらす。したがって、天然タルクのかかるナノ粒子は、層状でなく、したがって、潤滑性を有する複合材料の製造に適さない。その上、天然タルクのかかる粒子に対するセルロース誘導体のグラフト法の実施は、問題を生じる。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、上述の短所を有することなく、WO2004/063428によって記載された複合材料の利点を有する複合材料を提案し、これらの短所を防ぐことを目的とする。
【0016】
したがって、本発明は、機械アセンブリ中で互いに接触し、かつ移動する機械部品に従来、要求される表面状態、均質性、硬度、及び耐摩耗性の性質、及び研磨ステップを必要とすることなく、高温、例えば約800℃で安定した潤滑性を有する、金属潤滑コーティングを形成できる複合材料を提供することを目的とする。
【0017】
特には、本発明は、機械的性質が、本質的にそれを構成する金属マトリックスの機械的性質であるが、動摩擦係数が非常に低下し、移動摩擦係数が制限されたかかる複合材料を提案することを目的とする。換言すれば、本発明は、トライボロジー的特性は改良される(摩擦係数、摩耗率等)が、他の機械的性質(抵抗、弾性率、硬度等)が保たれ、その金属マトリックスの特性に少なくとも著しく対応する、かかる複合材料を提案することを目的とする。
【0018】
それ故、本発明は、複合材料、基板の自己潤滑コーティングとしてのその使用、及びその作製方法を対象とする。
【0019】
したがって、本発明は、層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料であって、層状フィロケイ酸鉱物粒子が、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属粒子であることを特徴とする複合材料に関する。
【0020】
特には、本発明による複合材料は、層状かつ親水性である合成フィロケイ酸ナノ粒子が分配された金属マトリックスからなる。
【0021】
本発明による複合材料の合成フィロケイ酸ナノ粒子は、層状で親水性であり、かつその作製方法に適合するので、様々な用途の対象となり得る。本発明による複合材料において、ナノ粒子は、実際は、金属マトリックスの金属細粒中に埋め込まれ、かつこの金属マトリックスの品質及び均質性を著しく害さない。
【0022】
本発明者らは特に、これらの性質を有し、かつ典型的には約700℃〜800℃の高温まで安定した状態に留まり、かつ単分散及び単峰性の粒度分布で得ることができる合成フィロケイ酸ナノ粒子を得ることに成功した。したがって、これらの合成フィロケイ酸ナノ粒子は、金属潤滑コーティングとして使用できる本発明による複合材料を形成することに特に適している。
【0023】
このように、好適には、第1の変形形態において、本発明による複合材料は、合成フィロケイ酸ナノ粒子として、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子と呼ばれる、式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−(式中、
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、かつ式Mgy(1)Coy(2)Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
【0024】
のような間隔[0;1]の実数であり、
−xは、間隔[0;1]の実数である)のナノ粒子を含み、
−前記鉱物合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に関して、約9.40〜9.68Åの距離に位置するピーク、
−面(020)に関して、4.50〜4.75Åに位置するピーク、
−面(003)に関して、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に関して、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図が得られる。
【0025】
これらの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、結晶及び層状構造を有する。
【0026】
y(i)は、比[考慮される金属カチオン(i)によって占められる八面体部位の数]/[八面体部位の総数]を指す。
【0027】
xは、次の比:
カチオンSi4+によって占められる四面体部位の数/四面体部位の総数
に対応する。
【0028】
第1の調製方法
本発明による、かかる合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の第1の調製方法は、液体状態での式−(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O−のケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を特徴とする。
【0029】
ゲルの調製
第1のステップにおいて、メタケイ酸ナトリウム溶液と塩化マグネシウム(又はニッケル)溶液との間の反応により初期共沈物を形成させる。その場合、高度に水和された、ゼラチン状粘稠度の化学式:Si4Mg3O11,n’H2O(又はSi4Ni3O11,n’H2O)を有するケイ素金属ゲルが得られる。一連の遠心分離及び蒸留水での洗浄により、共沈反応により形成されるNaClをこのケイ素金属ゲルから取り除くことができる。n’は、水和ゲル中に捕捉された水分子数を指す。直接熱水処理にかける出発ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、ゼラチン状粘稠度を有する高度に水和された物質の形状を呈する。このゲルは、そのチキソトロピー挙動により、機械的撹拌だけで液化させることができる。
【0030】
特定の実施形態によれば、
−メタケイ酸ナトリウム(Na2OSiO2)溶液及びメタゲルマン酸ナトリウム(Na2OGeO2)溶液から選択される少なくとも1つの塩の溶液を含み、これら2つの溶液のそれぞれの量が、次のモル濃度比:
を有する液体組成物を得るように選択される液体組成物と、
−塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化コバルト(CoCl2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化銅(CuCl2)、塩化マンガン(MnCl2)、塩化鉄(FeCl2)、塩化クロム(CrCl2)から選択された少なくとも1つの二価金属塩化物を含み、
となる前記金属塩化物の各々のモル濃度比を有する金属塩化物(MCl2)溶液との間の、
−塩酸溶液の存在下での
共沈反応により出発ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを調製する。
【0031】
そのようにして、次の化学反応:
[m、n’及び(m−n’+1)は、正の整数である]を行う。
【0032】
このタイプのゲルの調製は、周知であり、かつ例として、Decarreauら、1989(“Synthese et stabilite des stevensites kerolites et talcs,magnesiens et nickeliferes,entre 80 et 240℃”−R.Acad.Scie.Paris−,t.308,serie II,p.301−306)の出版物に記載の指示に従うことができる。
【0033】
好適には、かつ実務上、式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2Oのケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを製造するために、次のステップ:
−塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化コバルト(CoCl2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化銅(CuCl2)、塩化マンガン(MnCl2)、塩化鉄(FeCl2)、塩化クロム(CrCl2)から選択された少なくとも1つの金属塩化物の適切な量の吸湿結晶を大量の水中に溶解させて、金属塩化物の酸性組成物(MCl2,nH2O)を調製し、次にそこに塩酸(HCl)を添加するステップ、
−ある量のメタケイ酸ナトリウム及びメタゲルマン酸ナトリウムから選択された少なくとも1つを、適切な量の水中に溶解させて、液体組成物を調製するステップ、
−2つの水性組成物を選択された比率(タルクの化学量比(Si−Ge)4/M3)で混合して、共沈ゲルを形成するステップを順次実行する。
【0034】
様々な反応体の使用量は、共沈反応の結果、Na+及びCl−イオンが等モル量で存在するように選択される。このようにして形成された塩溶液(Na+、Cl−)は、液体/固体分離により簡単に除去できる。
【0035】
共沈が生じたら、本発明に従った熱水処理を受けさせるために、例えば遠心分離又は濾過によってケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを回収する。この共沈ゲルをこのように回収して、そこから合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の良好な結晶化に特に有害なNa+及びCl−イオンを同時に除去する。
【0036】
好適には、共沈ゲルを回収したら、特に反応イオンNa+及びCl−を全てそこから除去するために、蒸留水で少なくとも1回のその洗浄を実行する。この洗浄は、浸透水、又は単に水道水によっても行うことができる。
【0037】
熱水処理
前記第1の方法において、調製する合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子に望まれる粒度及び構造安定性に応じて選択された期間、300℃〜500℃の温度で前記熱水処理を実行する。
【0038】
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を実施するために、好ましくは固体画分(出発ゲル、最終生成物、場合により生じる中間生成物)のか焼を防止するための水の補足的添加を考慮することができる。か焼を回避するためのこの水添加の必要性及び添加する最少の水の量は、本質的に初期ゲルの水和度、処理温度、及びこの処理の期間によって決まる。
【0039】
1日から数日に及び得る熱水処理の期間は、特に最後に得られる合成鉱物の結晶化度に対して大きな影響力を有する。
【0040】
合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のこの第1の調製方法は、次の本質的かつ驚くべき確認:
−一方で、300℃〜500℃の(1989年のDecarreauらによる出版物で勧奨された110〜240℃に対して)比較的高い温度で実行された熱水処理が、天然タルクの構造特性に非常に類似した構造特性(特に層状性、結晶化度)、及び優れた熱安定性を有する鉱物合成粒子の形成に至らせること、
−他方で、この第1の調製方法は、特に温度の選択に応じて、安定し、かつ純粋な、かつ非常に正確に定義され、かつ予見可能な結晶特性及びサイズの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を合成することを極めて簡単に可能にすることに由来する。
【0041】
好適には、オートクレーブにより前記ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を行う。好ましくは、チタン又はステンレス鋼で内部を被覆した鋼製オートクレーブを使用する。
【0042】
好適には、処理温度としたこのオートクレーブ内部に飽和蒸気雰囲気を作るために少なくとも十分な量の水(好ましくは蒸留水)を、前記ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルと共にオートクレーブ中に添加する。
【0043】
好適には、かつこの第1の調製方法の実施変形形態によれば、前記熱水処理を約16バールの制御された圧力で実行する。
【0044】
好適には、約0.83の液体/固体比を有する液化したケイ素/ゲルマニウム金属ゲルにより熱水処理を実行するが、ここで、液体の量はcm3で、固体の量はグラムで表現される。場合により必要ならば、前記液化ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルに、この比に達するために適切な量の水を添加する。
【0045】
好適には、かつ本発明によれば、熱水処理を撹拌下で実行する。このために、例えばオートクレーブ内部に磁化格子を配置できる。
【0046】
この第1の調製方法に従った熱水処理の終了時に、前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を内包するコロイド溶液の形状を呈する組成物を得る。水中に溶解したこれらの鉱物合成ナノ粒子は、互いに個別化した状態にあってもよい。これらのナノ素粒子の粒度は、300℃〜500℃から選択される温度である適用される熱水処理の温度に応じて、10nm〜1μmの値を取り得る。好ましくは、熱水処理の温度は、400℃未満である。
【0047】
後処理
熱水処理の結果、コロイド組成物を回収する。本発明の第1の変形形態において、このコロイド組成物を、本発明による複合材料中に組み入れるために、特にかかる複合材料からなるコーティングの基板上への電解析出方法の枠内で、直接使用する。
【0048】
もう1つの変形形態において、完全に個別化された合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を含むタルク組成物を得るために、前記コロイド組成物を、機械破砕ステップが続く、乾燥ステップにかける。組成物中に含まれる凝集体となり得るものは、このようにして個別化された要素ナノ粒子に戻される。しかしながら、この機械破砕ステップが、ナノ粒子のサイズを減少させる効果を有さず、調製方法から生じた場合により凝集体となり得るものを専ら解離させる効果を有することに注目すべきであるしたがって、機械破砕ステップは、ナノ粒子の層状性及び結晶化度を少しも害さない。得られたこれらの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ素粒子の粒度分布は、ほぼ単峰性で単分散である。
【0049】
好適には、乾燥は、乾燥炉により、例えば約60℃の温度で、少なくとも1〜2日間、実行できる。破砕は、好適には機械的に、例えばタルク組成物が汚染するあらゆる危険を回避するために好ましくはメノウ製の乳鉢により実行される。
【0050】
好適には、熱水処理を約300℃の温度で、例えば約3日の期間中、実行する。その場合、例えば、粒度が20nm〜100nmの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ素粒子を最後に得ることができる。
【0051】
第1の調製方法によって得られた組成物
特に、この第1の調製方法が、全部が同じ化学実体を有する合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の組成物を得ることを可能にすることに注目すべきである。この場合、以上に示したような式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2に対応する合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が問題である。
【0052】
この化学式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2中、Si及びGeは、結晶格子の四面体部位を占めるケイ素イオン及び/又はゲルマニウムイオンを指す。Mは、八面体部位の二価金属カチオン(例えばMg2+、Co2+、Mn2+、Zn2+、Cu2+、Fe2+、Ni2+及び/又はCr2+)を記号で表す。
【0053】
特に、この第1の調製方法は、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子として、化学式Si4Mg3O10(OH)2に対応する鉱物ナノ粒子を得ることを可能にする。その場合、天然タルクと同一の化学構造の「合成タルクナノ粒子」と形容できるが、層状で、結晶質の、純粋な、単分散及び単峰性の粒度の、10nm〜1μmであり得る平均寸法を有するナノ粒子が問題である。
【0054】
X線回折及び赤外線分光法で実行される分析により、化学式Si4Mg3O11,n’H2O[すなわち化学式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O(式中、xは1に等しく、かつMは、マグネシウムを指す)のケイ素/ゲルマニウム金属ゲル]のケイ素金属ゲルに直接適用した、本発明に従った熱水処理により、特に結晶化度及び層状性の次元で懸濁粒子が高い類似性を示す合成タルクコロイド組成物を得られることを実際に証明できた(特に中赤外線中の伝送、及び近赤外線中で拡散反射で実行されたスペクトルからなされた確認)。
【0055】
しかしながら、第1の調製方法に従って調製された[すなわち式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2(式中、xは1に等しく、かつMは、マグネシウムを指す)の]合成タルクナノ粒子組成物に関しては、この組成物が、特にその純度によって天然タルク組成物と区別されることに注目するであろう。特に、合成タルクナノ粒子は、専ら化学式Si4Mg3O10(OH)2の粒子である。しかるに、現時点で100%純粋である天然タルクから調製されたいかなる粉末組成物も存在しない。
【0056】
特に、X線回折で、これらの合成タルクナノ粒子に対応する回折図は、約9.40〜9.70Åの距離に位置し、かつ面(001)に対応する特徴的回折ピークを有する。天然タルクに関して、対応する回折ピークは、約9.35Åの距離に位置する。
【0057】
同様に、合成タルクナノ粒子は、良質の結晶化度、及び10nm〜1μmであり得る極めて微細な粒度を同時に有する。しかるに、破砕技術の現状において、天然タルクから、かかる細かさの粒子は、生成物の厳格な「アモルファス化」(結晶化度の減少)によってしか得られない。X線回折で、このアモルファス化は、特に面(001)に関して9.35Å、面(020)に関して4.55Å、面(003)に関して3.14Å、及び面(060)に関して1.52Åに位置するピークである、特徴的回折ピークの強度の減少によって特に現れる。
【0058】
これらの分析により、前記第1の調製方法が、化学式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2Oに対応するケイ素/ゲルマニウム金属ゲル全体に一般化できることも確認できた。この第1の調製方法は、このようにして大きな構造類似性を天然タルクと同様に共有する、式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を含む組成物の合成を可能にする。
【0059】
これらの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、実際に重ね合わされた層状のナノメートル組織を有し、各層は、(Si4+及び/又はGe4+イオンによって占められる)2つの倒立四面体層間に挿入された(二価金属イオン:Mg2+、Co2+、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Fe2+及び/又はNi2+によって占められる)八面体層から構成される結晶構造を有する。
【0060】
したがって、第1の調製方法は、タルク組成物とよく似た組成物、例えば「ゲルマニウム含有(germaniferes)」と呼ばれる組成物、すなわちタルクの結晶構造を想起させる結晶構造のナノ粒子を含むが、四面体部位のカチオンSi4+が少なくとも部分的にカチオンGe4+によって置換された組成物を得ることを可能にする。同様に、例えば天然タルクのナノ粒子に対して改良された物理的、特に光学及び/又は電気的性質で、ナノ粒子を得るために、八面体部位のマグネシウムイオンが、可変比率で他の二価カチオンによって置換されたとき、「誘導化された」と呼ばれる又は「官能化された」と呼ばれる組成物が問題であり得る。
【0061】
X線回折法に加えて、赤外線分析は、天然タルクに対してのみならず、例えばケロライト、ステベンサイト、スメクタイトのような他の既知のフィロケイ酸塩に対しても、このようにして得られた合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を区別することも可能にする。
【0062】
合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、X線回折分析が以上に述べた特徴的回折ピークを有する回折図を得ることを可能にする、その結晶及び層状構造を特徴とする。
【0063】
好適には、本発明により得られ、かつ複合材料中に組み込まれる合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、約9.55〜9.65Åの距離に位置する面(001)の回折ピークを有する。
【0064】
合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、二価金属カチオン(Mg2+、Co2+、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Fe2+、Ni2+、Cr2+)の性質及び結晶格子中のその比率によって決まる、多少際立った着色した色調を有し得ると言う特殊性も有する。
【0065】
例えば、カチオンNi2+が、結晶格子の八面体部位を占めるために(従来のタルクの)カチオンMg2+よりも少なくとも部分的に好まれる時、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、際立った緑色又は薄い緑色である。
【0066】
同様に、結晶格子の八面体部位が、次のカチオンによって少なくとも部分的に占められるとき以下の通りである:
−Co2+のとき、タルク組成物は、ある程度鮮明なバラ色であり、
−Cu2+のとき、タルク組成物は、ある程度鮮明な青色であり、
−Mn2+のとき、タルク組成物は、チョコレート色であり、
−Fe2+のとき、タルク組成物は、灰色及び赤茶色の間を変動する色を有し、
−Zn2+のとき、タルク組成物は、白色であり、
−Cr2+のとき、タルク組成物は、緑色から青色に変動する色を有する。
【0067】
この理由で、岩石形状の天然タルクが種々の色(緑色、バラ色、蜂蜜色等)を有し得るとしても、それらの微粒子への破砕は、常に白い粉末生成物の形成に至らせることに注目すべきである。実際、天然タルクブロックの色は、物質の化学組成物に固有の着色した中心に因らず、タルク粒子の互いに対する特殊な配置に因り、その微粒子への破砕は、全体を均一化し、かつ着色の消失に至らせる。
【0068】
したがって、第1の調製方法は、その高度な細かさにかかわらず、着色された合成フィロケイ酸ナノ粒子を得ることを可能にする。したがって、本発明による複合材料は、以上に述べた性質を保ちながら着色していてもよい。
【0069】
同様に、結晶格子の八面体部位を占めるための二価カチオンの選択に応じて、他の二価カチオンによるカチオンMg2+のこの同じ置換原理に対して、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、その電気及び/又は熱伝導性のレベルで、天然タルク粒子と著しく異なり得る。
【0070】
したがって、本発明による複合材料の電気及び/又は熱伝導性は、合成フィロケイ酸ナノ粒子のそれに応じて、少なくとも部分的に調整できる。
【0071】
第2の調製方法
変形形態において、以上に述べたような、かつ合成フィロケイ酸ナノ粒子として本発明による複合材料中に組み込むことができる合成タルクナノ粒子は、第2の調製方法により調製できる。
【0072】
この第2の調製方法において、ケロライト組成物を5バール未満の圧力で、(特に数時間から数日に及ぶ)ある期間中、かつ300℃を超える処理温度で行われる無水熱処理にかける。無水熱処理の期間及び温度は、熱的に安定し、かつ式Si4Mg3O10(OH)2の合成タルク粒子を得るように選択される。
【0073】
この第2の調製方法は、少なくとも300℃を超える温度で実行される無水熱処理が、ケロライト組成物を合成タルクナノ粒子組成物に変換することを極めて簡単に可能にし、この組成物が安定し、かつ純粋であり、非常に正確に定義され、かつ予見可能な特性であるという、本質的かつ驚くべき確認に由来する。
【0074】
特には、発明者らは、無水熱処理が、結晶格子の間隙、及び層間空間中に捕獲された水分子の弛緩を減少させて、ケロライトの「擬似結晶質かつ水和」層状構造の漸進的再組織化を誘発する効果を有することを明瞭にした。
【0075】
300℃で実行された無水熱処理によって、合成タルクナノ粒子が得られるケロライト構造に対する注目に値する改質(特に赤外線及びX線回折分析方法により明らかにされ得る改質)を誘発することを実際に可能にする。
【0076】
したがって、好適には、かつ本発明によれば、無水熱処理を約500〜550℃の温度で実行する。かかる温度で、合成タルクナノ粒子を約5時間で得る。好適には、かつ本発明によれば、熱的に安定した合成タルクナノ粒子を得るために、処理期間は、5時間を超える。
【0077】
好適には、かつ本発明によれば、無水熱処理を周囲空気で、例えばセラミック又は処理温度に適した他のあらゆる材料製の坩堝内部で実行する。
【0078】
無水熱処理の結果直接的に、白色固体の、かつ互いに凝集した合成タルクナノ素粒子から形成された多少粗い凝集体に対応する未加工物質を回収する。好適には、無水熱処理の結果、個別化された合成タルクナノ素粒子のこれらの凝集体を解放し、かつ粉末組成物をこのようにして得るために、機械破砕が予定される。これら合成タルクナノ素粒子の寸法分布は、ほぼ単峰性かつ単分散である。
【0079】
好適な実施態様によれば、適切な熱水処理により化学式Si4Mg3O11,n’H2Oのケイ素金属ゲルから予め調製されたケロライト組成物を使用する。
【0080】
この場合に、第2の調製方法は、先に述べたような無水熱処理に後にかける、ケロライト組成物を調製する予備ステップを同様に、かつ好適には含む。
【0081】
好適には、飽和水圧、100℃〜240℃の温度で、1日から数ヶ月の期間中、熱水処理を受けさせた式Si4Mg3O11,n’H2Oのケイ素金属ゲルから前記ケロライト組成物を調製する。
【0082】
前記熱水処理のパラメータ、特に温度及び期間の選択は、最終的に得られる合成タルク粒子の粒度に対する、ある種の制御を可能にする。選択されたパラメータにより、最後に得られる合成タルクナノ粒子は、10nm〜1μmの値を取り得る粒度を有し、粒度分布は、ほぼ単峰性かつ単分散である。
【0083】
好適には、反応:
[m、n’及び(m−n’+1)は、正の整数である]により、第1の調製方法を参照して、以上に示したような共沈によりケイ素金属ゲルを調製する。
【0084】
好適には、前記ケイ素金属ゲルの熱水処理から直接生じたケロライト組成物は、乾燥させ、次に前記無水熱処理を受けさせる前に粉末組成物を得るために破砕させる。そのために、乾燥は、乾燥炉により、例えば約60℃の温度で、少なくとも1〜2日間、実行できる。破砕は、好適には機械的に、例えばケロライト組成物が汚染するあらゆる危険を回避するために好ましくはメノウ製の乳鉢により実行される。
【0085】
この第2の調製方法に従って得られた合成タルクナノ粒子と天然タルクとの間に存在する構造類似性も、X線回折分析方法及び赤外線吸収によって明瞭にされた。
【0086】
例えば、X線回折で、合成タルクナノ粒子と天然タルクとの間の区別は、特に面(001)に対応する回折ピークの位置に現れる。第2の調製方法により得られた合成タルクナノ粒子に関して、この回折ピークは、天然タルクでの9.35Åの代わりに、9.40Å〜9.68Åの距離にある。
【0087】
特には、第2の調製方法により得られた合成タルクナノ粒子は、次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に対応する、9.40〜9.68Åに位置するピーク、
−面(020)に対応する、4.50〜4.60Åに位置するピーク、
−面(003)に対応する、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に対応する、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図に至らせるX線回折分析により特徴付けられる。
【0088】
好適には、面(001)に対応する回折ピークは、約9.40〜9.43Åの距離に位置する。
【0089】
好適には、第2の調製方法は、500nm未満の、特に20nm〜100nmの粒度を有する合成タルクナノ粒子を得ることを可能にする。これらの合成タルクナノ粒子は、更にほぼ単峰性かつ単分散の粒度分布を有する。
【0090】
第2の変形形態において、本発明による複合材料は、合成フィロケイ酸ナノ粒子として:
−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプで、化学式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−の基本層の積層から形成される、少なくとも1つの非膨張鉱物相と、
−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプの基本層の積層及び連続した2つの基本層の間の少なくとも1つの層間空間から形成される、少なくとも1つの膨張鉱物相と、の間の相互層化から形成される、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子と呼ばれる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子であって、前記膨張鉱物相が、化学式−(SixGe1−x)4M3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−
[前記化学式中:
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、式Mgy(1)Coy(2Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
のような間隔[0;1]の実数を表し、
−xは、間隔[0;1]の実数であり、
−ε及びε’は、膨張相の基本層のカチオン欠損、及び層間空間中に存在するカチオンにそれぞれに関係する]を有し、
−回折図の獲得に至らせる前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−前記膨張鉱物相を表す、約14〜15Åの距離に位置する面(001)、
−前記非膨張鉱物相を表す面:
−約9.60〜10.50Åの距離に位置する、面(001)、
−4.50〜4.60Åに位置する、面(020)、
−3.10〜3.20Åに位置する、面(003)、
−1.50〜1.55Åに位置する、面(060)
を有する回折図が得られる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子を含む。
【0091】
非膨張鉱物相及び膨張鉱物相を表す化学式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−及び−(SixGe1−x)4M3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−中、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子、Si及びGeは、結晶格子の四面体部位を占めるケイ素イオン及び/又はゲルマニウムイオンを指す。Mは、八面体部位の二価金属カチオン(例えばMg2+、Co2+、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Fe2+、Ni2+及び/又はCr2+)を記号で表す。
【0092】
スメクタイトは、2/1粘土鉱物の最も多様化した群に対応する。その構造に鑑みて、それらは膨張(四面体−八面体−四面体)タイプと形容される。
【0093】
それらは実際、数が数単位から数十単位の値を取る、結晶構造の基本層の不規則な積層からなり、各基本層は、八面体層の両側に位置する2つの四面体相の会合からなる。
【0094】
スメクタイトの八面体層は、O2−及びOH−イオン(2:1のO2−/OH−モル比で)の2つの面から構成される。この中間層の両側に、頂点の1つが八面体層の酸素によって占められ、他方で3つの他の頂点がほぼ同一面上の酸素によって占められる、四面体の二次元格子が配置されるようになる。天然スメクタイトにおいて、四面体部位は、一般的にSi4+又はAl3+イオンによって占められ、かつ八面体部位は、たいていの場合Mg2+、Fe2+、Al3+及び/又はFe3+カチオンによって占められる。低い比率の八面体及び/又は四面体部位は、占められず、かつ基本層を形成する結晶格子のカチオン欠損の原因である。
【0095】
スメクタイトは、水及びカチオンを内包し、かつ鉱物の膨張相を形成する層間空間の、基本層間での存在によって同様に特徴付けられる。天然スメクタイトにおいて、これらの層間カチオンは、一般的にMg2+、Ca2+及び/又はNa+イオンである。
【0096】
この特殊な構造は、水、並びに層間空間に挿入されるグリセロール及びエチレングリコールのような多数の有機分子により層状錯体を容易に形成し得る特殊性をスメクタイトに与える。同様に、層間カチオンは、格子の残部に弱く結合され、かつ従って他のカチオンと多少、容易に交換される可能性がある。鉱物のカチオン交換能力を論じている。
【0097】
前述の膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、天然スメクタイトの構造及びカチオン交換能力を想起させる、構造及びカチオン交換能力を有するが、その調製の際に適用される特殊なパラメータに鑑みて、結晶化度及び膨張相/非膨張鉱物相−比のような構造特性が、予見可能及び/又は比較的良好に定義され得る鉱物ナノ粒子である。
【0098】
これらの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子よりも更に親水性であり、更により大きい、到達可能な表面を有し、以下に記載するような複合材料の形成の際に金属マトリックスの前駆物質の懸濁液中の分散、及び金属成長中に、この金属成長を妨げることなく金属細粒に対するナノ粒子の吸着を促進する。
【0099】
第3の調製方法
前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、液体状態で化学式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2Oのケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を実行し、前記熱水処理を、調製する前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子に望まれる構造特性に応じて選択された期間で、かつ150℃〜300℃の温度で実行し、前記熱水処理を約16バールの制御された圧力で、かつ撹拌下で実行し、所定の熱水処理の温度及び期間に関して、調製する膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子に望まれる体積比−膨張鉱物相/非膨張鉱物相−に応じて、処理するケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを主成分とする反応混合物を表す水/固体比を調整するように前記ケイ素/ゲルマニウム−ケイ素ゲルに水の補足的添加を実行することを特徴とする第3の調製方法により調製される。
【0100】
A.Decarreauらによる「synthese et stabilite des stevensites et talcs,magnesiens et nickeliferes,entre 80 et 240℃」、XP008075903の発表では、様々な鉱物、ステベンサイト、ケロライト及びタルクを得ることを可能にし、各鉱物の形成が温度によって厳格に決まる方法が記載されていることに注目されるべきである。この方法により得られた鉱物のいずれも、約14〜15オングストロームの距離に位置する、膨張鉱物相を表す面(001)に関する回折ピークを含む回折図を有さない。この文献では、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化組成物も、かかる組成物を得ることを可能にする方法も記載されていない。
【0101】
第3の調製方法において、直接、熱水処理にかける、出発ケイ素/ゲルマニウム金属生成物は、ゲル、すなわちゼラチン状粘稠度を有する高度に水和された物質の形状を呈する。このゲルは、チキソトロピー挙動を有し、簡単な機械的撹拌によって液化される。この第3の調製方法において、好適には、第1の調製方法を参照して以上に記載したように、共沈反応によって出発ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを調製する。
【0102】
第3の調製方法において、水の補足的添加は、固体留分(出発ゲル、最終生成物、場合により生じる中間生成物)のか焼を防止することも可能にする。この水添加の必要性、及びか焼を予防するために添加する最少の水の量は、本質的に初期ゲルの水和度、処理温度、及びこの処理の期間によって決まる。それにもかかわらず、熱水処理を行うために選択された水/固体比は、軽微でなく、最後に得られる膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の物理化学的、及び構造的性質の幾つかに影響を及ぼす。特に、この比率は、生成物の結晶化度及び比率−膨張鉱物相/非膨張鉱物相−に対して、かつ従って結局は、特に得られた生成物のカチオン交換能力、並びに種々の分子及び物質で充填されるその能力に対して著しく影響を及ぼす。
【0103】
1日から数日に及び得る熱水処理の期間は、特に最後に得られる合成鉱物の結晶化度に関して大きな影響を及ぼす。
【0104】
好適には第3の調製方法において、前記ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理をオートクレーブにより行う。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、チタン又はステンレス鋼製の内部被覆を有する鋼製オートクレーブを使用する。
【0105】
好適には、前記熱水処理を約220℃の温度で、約15日間実行する。実施変形形態によれば、前記熱水処理を約300℃の温度で、約5時間実行する。
【0106】
熱水処理を撹拌下で実行するために、例えばオートクレーブ内部に磁化格子を配置できる。
【0107】
この熱水処理の終了時に、前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を内包するコロイド溶液形状を呈する合成鉱物組成物を得る。水に溶解したこれらの鉱物合成ナノ粒子は、互いに多少個別化した状態にあってもよいか、互いに凝集した、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ素粒子から形成された多少粗い凝集体に組織される。
【0108】
好適には、熱水処理の結果、そのままで使用できるか、又は変形形態において個別化された膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を含む固体組成物を得るために、第1の調製方法を参照して以上に示したように、機械破砕ステップが後に続く乾燥ステップを受けさせることができる、コロイド組成物を回収する。
【0109】
第3の調製方法によって得られる組成物
この第3の調製方法によって得られ、かつ本発明による複合材料中で使用できる膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物の中で、鉱物ナノ粒子が:
−非膨張鉱物相を形成する式−Si4Mg3O10(OH)2−のタルク層積層、及び
−膨張鉱物相を形成する式−(Si4Mg3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−のステベンサイトタイプの層積層の間の相互層化を形成する、合成タルク−ステベンサイト相互層化組成物を特殊な例として挙げることができる。
【0110】
同様に、第3の調製方法は、タルク−ステベンサイト相互層化組成物とよく似た組成物、例えば四面体部位のカチオンSi4+の少なくとも一部がカチオンGe4+によって置換される、「ゲルマニウム含有(germaniferes)」と呼ばれる組成物の膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物を得ることを可能にする。同様に、例えば天然タルクの粒子に対して改良された物理的、特に光学及び/又は電気及び/又は磁気的性質で、粒子を得るために、八面体部位のカチオンMg2+が、可変比率で他の二価カチオンによって置換される時、「誘導」と呼ばれる又は「官能化」と呼ばれる組成物が問題であり得る。
【0111】
特にX線回折で実行される分析は、発明者らが、得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の鉱物学的相を特徴付けることを可能にし、かつ化学式−Si4Mg3O11,n’H2O−[すなわち、化学式−(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O−(式中、xは1に等しく、かつMはマグネシウムを指す)のケイ素/ゲルマニウム金属ゲル]のケイ素金属ゲルに対して直接適用される熱水処理が、タルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を含むコロイド組成物の獲得に至らせることを確認する。
【0112】
他方で、これらの分析は、調製された合成鉱物中の膨張相比率に対する、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを主成分とする反応混合物を表す水/固体比の影響を証明することを可能にした。所与の熱水処理の温度及び時間に関して、この比が増加するほど、膨張相に対応する部分が減少する。
【0113】
このように、好適には、本発明による複合材料の合成フィロケイ酸ナノ粒子は:
1)以上に定義したような合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子、特に以上に定義したような合成タルクナノ粒子、
2)以上に定義したような膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子から形成される群から選択される。
【0114】
本発明は、前記合成フィロケイ酸ナノ粒子が、以上に述べた第1の調製方法、第2の調製方法及び第3の調製方法から選択される調製方法によって得られることを特徴とする複合材料にも及ぶ。
【0115】
好適には、かつ本発明によれば、複合材料は、20%未満の(かつ0%を超える)合成フィロケイ酸ナノ粒子の体積比率を含む。
【0116】
本発明による材料において、合成フィロケイ酸ナノ粒子は、金属マトリックス中で、特には金属マトリックス細粒中に分配され、個別化され、分散される。
【0117】
好適には、かつ本発明によれば、金属マトリックスはFe、Co、Ni、Mn、Cr、Cu、W、Mo、Zn、Au、Ag、Pt、Snから選択される金属、前述の金属から選択される幾つかの金属の合金若しくは金属間化合物、又は半金属との1つ以上の前記金属の合金からなる。
【0118】
金属マトリックスは、単独の、又は金属間化合物、又は幾つかの金属の合金、又は半金属との合金の形状で前述の金属から選択された金属からなることができる。マトリックスがニッケル、他の金属とのニッケルの金属合金、又は半金属とのニッケルの合金(例えばNiP)である複合材料が、特に興味深い。
【0119】
本発明による複合材料からなるコーティングは、処理する基板上に電解により析出できる。
【0120】
本発明による複合材料からなるコーティングの基板上への析出方法は、コーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液を使用して、電解析出を行うことからなる。この方法は、前駆物質溶液が、合成フィロケイ酸ナノ粒子を更に含むことを特徴とする。
【0121】
このようにして、本発明は、層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料からなるコーティングの基板上への析出方法であって、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液を使用して電解析出を行うことからなることを特徴とする方法に及ぶ。
【0122】
実施態様において、析出方法は、コーティングする基板表面を、金属マトリックスの前駆物質、合成フィロケイ酸ナノ粒子、及びコーティングの金属マトリックスの前駆物質の酸化還元のための触媒として作用する化合物を含む溶液と接触させることによって、化学的方法により実施される。好適には、かつ本発明によれば、前記触媒は、基板に予め析出させる。
【0123】
もう1つの実施形態において、析出方法は、コーティングする前記基板が陰極を構成し、かつ電解質が合成フィロケイ酸ナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液である電気化学セル中で電気化学的方法により実施される。好適には、かつ本発明によれば、電気化学セルの陽極は、マトリックス又は不溶性陽極を形成する金属からなる。
【0124】
本発明による析出方法において、好適には、金属マトリックスの前駆物質は、錯体を形成される、又は形成されない、化学的方法又は電子の供給によって溶液中で還元できるイオン性化合物から選択される。例として、塩化物、硫酸塩、スルファミン酸塩などの塩、並びにクエン酸塩及び酢酸塩などの錯塩を挙げることができる。
【0125】
前駆物質溶液は、pHを所望の値に調整することを可能にする1つ以上の化合物、及び改質タルク粒子を更に含む。
【0126】
ニッケルマトリックスを含むコーティングを電気化学的方法で析出させる場合、電解質は、硫酸ニッケル及び塩化ニッケルから選択されるニッケルの少なくとも1つの塩、pH調節剤、及び支持電解質を含む溶液である。特に好ましいpH調節剤は、ホウ酸であり、pH4.5で、H+を放出してニッケルと錯塩を形成し、かつこのようにして陰極でH+イオンの還元を補う。支持電解質の例として、例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び臭化ナトリウムを挙げることができる。
【0127】
ニッケル−リンマトリックスを含むコーティングを電気化学的方法によって析出させる場合、硫酸及び塩化ニッケルから選択されるニッケルの少なくとも1つの塩、pH調節剤、リン前駆物質、及び支持電解質を含む電解質を使用できる。H3PO3が、好適には選択されるリン前駆物質である。pH調節剤は、H3PO4及びH3BO3から選択でき、H3PO4が特に好ましい。支持電解質の例として、例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び臭化ナトリウムを挙げることができる。
【0128】
亜鉛−ニッケルマトリックスを含むコーティングを電気化学的方法によって析出させる場合、硫酸及び塩化ニッケルから選択されるニッケルの少なくとも1つの塩、少なくとも1つの酸化亜鉛、又は塩化亜鉛のような亜鉛の塩、アミンタイプの錯化剤、及び例えばKClのような支持電解質を含む塩基性又は酸性電解質を使用できる。
【0129】
この方法は、電気化学析出の通常の条件において実施される。電解期間は、特にコーティングに望む厚さによって決まる。電気化学セル中の温度は、好適には、0℃〜90℃であり、かつセルに適用される電流密度は、0.1〜10A.dm−2である。好ましくは、陽極が、析出する金属からなる可溶性陽極タイプである電気化学セルを使用する。
【0130】
その上、本発明による析出方法において好適には、得られたコーティング中の合成フィロケイ酸ナノ粒子の体積比率が、20%未満である(かつ当然に0%を超える)ような合成フィロケイ酸ナノ粒子の比率を使用する。
【0131】
基板は、塊状態で、又は任意の担体上のコーティングの形状で使用される、本質的に導電性の材料(例えば金属又は合金)からなってもよい。基板は更に、処理する表面が予備金属化ステップによって導電性にされた、絶縁又は半導体材料(例えばポリマー又はセラミック)からなってもよい。
【0132】
複合コーティングの機械的性質は、(抑制体を構成する)スラグが1000Hvの硬度を有する鋼球100C6であるスラグ−ディスクタイプの摩擦計によってテストした。ニッケルのみからなるディスクを使用する場合、鋼に対するニッケルの接着は、鋼球の高い摩擦係数及び大きな摩耗率によって示される。使用されるディスクが、ニッケルマトリックス及び本発明による合成フィロケイ酸ナノ粒子を含む複合材料からなる場合、摩擦係数及び摩耗率は著しく減少する。
【0133】
本発明は、以上又は以下に述べる特徴の全部又は一部によって一緒に特徴付けられる、複合材料、基板、潤滑コーティング及び析出方法にも関する。
【0134】
本発明の特徴を示す他の目的、利点は、非限定的に与えられ、かつ添付図面を参照する以下に続く説明及び実施例を読めば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】先行技術に従った複合材料から形成されるコーティングを示す図である。
【図2】中赤外線において記録された、本発明による複合材料中に組み入れ得る3つの異なる合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物に対応する得3つの吸収スペクトルを示す。
【図3】3850cm−1〜3500cm−1の領域レベルでの、先のスペクトルの拡大に対応する。
【図4】図1の3つの組成物に対応する、近赤外線において記録された3つの吸収スペクトルの6000cm−1〜8000cm−1の領域を示す。
【図5】図2の3つの組成物に対応するX線回折図を示す。
【図6】合成フィロケイ酸ナノ粒子の第4の特殊な組成物に対応するX線回折図を示す。
【図7a】本発に従う複合材料中に組み入れ得る合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物の走査型電子顕微鏡検査法によって撮られた顕微鏡写真を表す。
【図7b】本発に従う複合材料中に組み入れ得る合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物の走査型電子顕微鏡検査法によって撮られた顕微鏡写真を表す。
【図7c】本発に従う複合材料中に組み入れ得る合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物の走査型電子顕微鏡検査法によって撮られた顕微鏡写真を表す。
【図8】3つの特殊な組成物の合成フィロケイ酸ナノ粒子の、ナノメートルサイズ及びほぼ単峰性かつ単分散分布を示す、透過電子顕微鏡検査法で撮られた顕微鏡写真に対応する。
【図9】3つの特定の組成物の合成フィロケイ酸ナノ粒子の、ナノメートルサイズの、ほぼ単峰性かつ単分散分布を示す、透過電子顕微鏡検査法で撮られた顕微鏡写真に対応する。
【図10】熱水処理の際の、異なる水/固体比率を有する第3の調製方法により調製された膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の4つの組成物に対して実施したX線回折分析に対応する回折図を示す。
【図11a】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図11b】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先の別の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図11c】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先のまた別の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図11d】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先のまた別の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図12】中赤外線において記録された、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の3つの特定の組成物に対応する、3つの吸収スペクトルを示す。
【図13a】特定の領域のレベルで実行された図1のスペクトルの拡大に対応する。
【図13b】特定の領域のレベルで実行された図1のスペクトルの拡大に対応する。
【図14】近赤外線で記録された、本発明による膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物の無水熱処理による、合成タルクナノ粒子組成物への変換を示す吸収スペクトルに対応する。
【図15】図12、13a、13b及び14の対象である鉱物組成物のX線回折分析に対応する3つの回折図を示し、かつその観察を確認する。
【図16】第3の調製方法により得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の無水熱処理による変換後に得られた合成タルクナノ粒子の結晶組織を示す略図である。
【図17】第3の調製方法により得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶組織を示す略図である。
【図18】中赤外線において記録された、合成タルクナノ粒子の3つの特殊な鉱物組成物に対応する、3つの吸収スペクトルを示す。
【図19a】特定の領域のレベルでの図18のスペクトルの拡大に対応する。
【図19b】特定の領域のレベルでの図18のスペクトルの拡大に対応する。
【図20】近赤外線で記録された、合成タルクナノ粒子のこれら3つの鉱物組成物に対応する、3つの吸収スペクトルを示す。
【図21】合成タルクナノ粒子の3つの特定の他の鉱物組成物に対して行われたX線回折分析に対応する回折図を示す。
【図22】第2の調製方法により調製された合成タルクナノ粒子組成物と、同様にナノメートルサイズであるが、強力な機械破砕によって得られた天然タルク試料との間の比較回折図を示す。
【図23】本発明による複合材料から形成されるコーティングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0136】
図1は、細粒3から形成された金属マトリックス中に組み込まれた改質天然タルク粒子2を含むWO2004/063428に従った複合材料から形成されたコーティングを表し、この金属マトリックスは、基板4上に析出される。図に見られるように、粒子2は、基板4の表面にほぼ垂直な方向に沿って伸長し、かつこれら粒子2のサイズは、金属細粒3のサイズと同じ次元の大きさである。したがって、天然タルクの粒子2は、細粒間に挿入され、析出中に金属細粒の成長を妨げ、かつコーティングの自由表面で突き出して伸長し、析出ステップ後に、コーティングの高い粗度を引き起こす。更に、天然タルクの組み込みは、不純物のそれを誘発する。
【実施例1】
【0137】
第1の調製方法による合成ケイ素/ゲルマニウム金属(フィロケイ酸)ナノ粒子の調製
A/−合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の組成物の第1の調製方法の一般プロトコル
1/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、次の反応式:
による共沈によって調製される。
【0138】
この共沈反応は、化学量論量の天然タルク(3Mに対して4Si/Ge)を有する水和ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを得ることを可能にする。反応は:
1.メタケイ酸ナトリウム五水和物水溶液若しくはメタゲルマン酸ナトリウム水溶液、又はモル比x:(1−x)でのこれら2つの溶液の混合物、
2.蒸留水中で希釈された(吸湿性結晶の形状での)1種又は複数の金属塩により調製された金属塩化物溶液、及び
3.塩酸溶液IN
から実施される。
【0139】
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製は、次のプロトコル:
1.塩酸溶液及び金属塩化物溶液を混合する、
2.この混合物をメタケイ酸及び/又はメタゲルマン酸ナトリウム溶液に添加すると、共沈ゲルが、即座に形成される、
3.遠心分離(少なくとも毎分30000〜7000回転、15分間)及び上清(形成された塩化ナトリウム溶液)の除去後にゲルを回収する、
4.蒸留水若しくは浸透水、又は水道水によってゲルを洗浄する(少なくとも2つの洗浄/遠心分離サイクルが必要である)、に従って実行される。
【0140】
この第1段階の結果、高度に水和され、かつゼラチン状粘稠度を有するケイ素/ゲルマニウム金属ゲル(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O)が得られる。このゲルは、チキソトロピー挙動を有し、すなわち撹拌されるときに粘性状態から液体状態に移り、次に一定の休止時間後にその初期状態を取り戻す。
【0141】
2/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理
先に得られたようなケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、300℃〜500℃の温度で熱水処理を受けさせる。
【0142】
そのために:
1.反応器/オートクレーブ中に液化形状のゲルを置き、場合により液体/固体比を約0.83の値に調整し(液体量はcm3で、かつ固体量はグラムで表現される)、
2.反応器/オートクレーブは、(300℃〜500℃に定められた)反応温度で、処理期間中を通して乾燥炉内部に置かれる。
【0143】
発明者らは、熱水処理の温度が粒子の粒度によって決まることを確認できた。この温度が低いほど、合成粒子は小さい(300℃で約10ナノメートル、約500℃の温度に関して1μmまで)。
【0144】
同様に、発明者らは、処理期間が合成粒子の結晶化度及び熱安定性によって本質的に決まることに気付くことができた。熱水処理は、結晶化し、熱的に安定した初期ゼラチン状塊の固体材料への変換を可能にするために十分な期間であるべきである。
【0145】
熱水処理中、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、結晶化度が時間と共に増加する特殊な結晶構造を採用するために、そのゼラチン状粘稠度を次第に失う。物質のこの漸進的結晶化は、X線回折分析によって確認でき、かつ処理期間を通して細くなり、かつ強まる特徴的ピークの出現によって対応する回折図上に現れる。
【0146】
この熱水処理の結果、水中に懸濁した純粋な結晶質の、合成層状フィロケイ酸(ケイ素/ゲルマニウム金属)ナノ粒子を含む合成コロイド組成物を得る。この熱水処理の終了時に、直接得られたコロイド組成物を使用することができるか、又は変形形態では特に:
3.反応器の中身が濾過され、そこから固相を回収する、
4.固体組成物を60℃の乾燥炉で、1日間乾燥させる、
5.一旦乾燥すると、固体組成物は、メノウ製の乳鉢で破砕される、という後処理を実行できる。
【0147】
このようにして、色が、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製に使用される金属塩化物の性質(及び同様に、必要な場合、これら金属塩化物のそれぞれの比率)に応じて決まる分割固体組成物を最後に得る。
【0148】
B/−得られたナノ粒子の分析及び構造の特徴付け
先に説明したプロトコルに従って得られた様々な合成組成物の分析結果を以下に報告する。これらの結果は、第1の調製方法が、天然タルクの構造特性に非常に類似した構造特性(特に層状性及び結晶化度)を有する合成層状鉱物(フィロケイ酸)ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の実際の形成を可能にすることを確認するのみではない。結果は、特に実施する温度及び期間の選択によって、第1の調製方法が、規定の予見可能な結晶特性及びサイズを有し、したがって、特に、潤滑コーティングを形成できる本発明による複合材料の組成物中に組み入ることに適し得る安定して純粋な合成層状フィロケイ酸(ケイ素/ゲルマニウム金属)鉱物ナノ粒子を極めて簡単に合成することを可能にすることも示す。
【0149】
分析は、特にX線回折及び電子顕微鏡観測による透過赤外線分光法によって実行された。収集されたデータは、添付の図2から図8に示し、かつ以下に注釈を付す。
【0150】
1/−赤外線分析
赤外線で、参考として、天然タルクの特徴を示す振動帯が、以下の通りであることが知られている(4cm−1の分解能による):
−3678cm−1:結合Mg3−OHの振動、
−1018cm−1:結合Si−O−Siの振動、
−669cm−1:結合Mg−O−Siの振動、
−7185cm−1:結合Mg3−OHの振動、
【0151】
図2〜図4は、次の3つの合成組成物:
−第1の調製方法(八面体カチオンとしてMg2+)により、3日間、300℃の熱水処理によって調製された、式Si4Mg3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物(図では、この組成物は、PS Mg 300℃で表示される)、
−第1の調製方法(八面体カチオンとしてNi2+)により、3日間、300℃の熱水処理によって調製された、式Si4Ni3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物(図では、この組成物は、PS Ni 300℃で表示される)、
−第1の調製方法(八面体カチオンとして等モル比率でのCo2Ni2+)により、3日間、300℃の熱水処理によって調製された、式Si4(Co0.5Ni0.5)3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物(図では、この組成物は、PS Co Ni 300℃で表示される)、に対して、中赤外線及び近赤外線でそれぞれ実行された分析結果を示す。
【0152】
赤外線スペクトルの取得は、4000〜400cm−1の範囲に対する分光計Nicolet 510−FTIRによって実行された。
【0153】
中赤外線において得られたスペクトル(図1及び図2)は、合成組成物−PS Mg 300℃−が、天然タルクに構造的に非常に類似した鉱物組成物であることを示す。特に、このことは、結合Mg3−OH(3678cm−1)、Si−O−Si(1018cm−1)、及びMg−O−Si(669cm−1)の振動を表すピークの存在によって現れる。
【0154】
近赤外線中で拡散反射で行われる測定から得られ、かつ図4が8000cm−1〜6000cm−1のその領域の拡大を示す結果は、7185cm−1で特に強烈なピークの存在を確認することも可能にする。7185cm−1に位置するこのピークは、天然タルクの4つの参照ピークの一部もなす。
【0155】
この参照ピークの近傍に位置する7265cm−1のピークは、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の軽い水和を反映する。
同様に例で与えられる他の2つの合成組成物(PS Ni 300℃/PS Co Ni 300℃)に関して、赤外線でのその吸収スペクトルは、天然タルクの4つの参照ピークのすぐ近傍にあるか又は重なる、4つのピークの存在を手始めに、合成組成物PS Mg 300℃と多数の類似性を有する。
【0156】
赤外線スペクトルのこの類似性は、第1の調製方法により得られた合成組成物の合成層状(ケイ素/ゲルマニウム金属)フィロケイ酸鉱物ナノ粒子と、天然タルクとの間に存在する大きな構造類似性を示す。幾つかのピークに関して観察できる、(例えば7300cm−1〜7000cm−1の領域のレベルでの)差異となり得るものは、本質的に、結晶格子の八面体カチオン間のサイズの差から生じる。
【0157】
2/−X線回折分析
X線回折で、天然タルクは、4つの特徴的回折ピーク:
−面(001)に関して、9.35Åの距離に位置するピーク、
−面(020)に関して、4.55Åに位置するピーク、
−面(003)に関して、3.14Åに位置するピーク、
−面(060)に関して、1.52Åに位置するピーク、を有することが知られている。
【0158】
X線回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)に登録された。
【0159】
測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0160】
図5は、先に言及したものと同じ3つの組成物:
−PS Mg 300℃で表示されるSi4Mg3O10(OH)2、
−PS Ni 300℃で表示されるSi4Ni3O10(OH)2、
−PS Co Ni 300℃で表示されるSi4(Co0.5Ni0.5)3O10(OH)2、に対して実行された分析の結果を示す。
【0161】
同様に、図6は、第1の調製方法に従って調製された式Ge4Fe3O10(OH)2のナノ粒子組成物のX線回折図を示す。
【0162】
これらの分析は、赤外線分光法で観察されたことを確認する。以上に示したような、得られた合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子と、天然タルク粒子との間には、大きな構造類似性が存在する。
【0163】
特に、面(020)、(003)及び(060)に対応する回折ピークは、天然タルクに関する参照回折ピークと完全に一致する位置を有する。
【0164】
面(001)の回折ピークの位置のみが、参照ピークの位置と僅かに異なる(9.35Åの代わりに9.57〜9.64Å)。この値の偏差は:
−天然タルクのサイズに反して、合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のナノメートル粒度サイズ、
−合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の非常に僅かな残留水和、及び
−場合により結晶格子の八面体カチオンの性質、によって本質的に説明される。
【0165】
しかしながら、残留水和から生じる偏差が、より長い反応時間、及びより高度な乾燥によって減少することに注目せねばならない。
【0166】
最後に、面(001)、(020)、(003)及び(060)のピークの途中の高さでの幅は、合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の良好な結晶化度を表している。
【0167】
その上、得られた合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、親水性であることにより天然タルクと異なり、このことは、ナノ粒子を水と単に接触させることにより、視覚的に確認される。
【0168】
ナノ粒子Ge4Fe3O10(OH)2(図6)を表すX線回折図に関して、面(003)に対応する回折ピークの高い強度は、酸化ゲルマニウムによる汚染に一部起因することに注目すべきである。
【0169】
3/−合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の粒度の顕微鏡観察及び評価:
このようにして得られた合成組成物を構成し得る粉末が極めて微細であることを考慮して、それらを構成する合成層状(フィロケイ酸)ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の粒度分布及びサイズは、走査及び電界効果電子顕微鏡検査法、並びに透過電子顕微鏡検査法の観察によって評価された。図7a、図7b、図7c、図8及び図9に示した顕微鏡写真は、これらの観察の幾つかの際に撮られた。
【0170】
図7a、図7b及び図7cは、式Si4Mg3O10(OH)2の3日間の300℃の熱水処理によって調製された、合成タルクナノ粒子と形容できる、合成(フィロケイ酸)ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物の観察に関係する。
【0171】
図8は、式Si4Ni3O10(OH)2の3日間の300℃の熱水処理によって調製された、合成ケイ素金属ナノ粒子組成物の観察に関係する。
【0172】
ナノ粒子が、完全に層状で、純粋であり、かつナノ素粒子の粒度が、20nm〜100nmの値を取ることが確認される。
【0173】
図7a及び図8の写真は、ナノ粒子の密度が高いために、ナノ粒子が互いに凝集していると見間違える概観を呈している。実際は、ナノ素粒子は、個性化された状態にある。場合により幾らかの残留湿度が、これらのナノ粒子間の幾らかの凝集力の可能性を説明し得るであろう。
【0174】
図9は、30日間の400℃の熱水処理後に得られた式Si4Mg3O10(OH)2の合成ケイ素金属ナノ粒子組成物の観察に関係する。
【0175】
対応する顕微鏡写真の観察は、合成層状(ケイ素/ゲルマニウム金属)フィロケイ酸ナノ粒子が、マイクロメートルの次元の平均寸法を有することを示す。
【実施例2】
【0176】
第3の調製方法による膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の調製、次にこれらの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子からの合成タルクナノ粒子の調製。
A/−第3の調製方法による膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化組成物合成の一般プロトコル
1/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、実施例1で以上に述べたような共沈によって調製される。
【0177】
2/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理
先に得られたようなケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、150℃〜300℃の温度で熱水処理を受けさせる。
【0178】
そのために:
1.(40mlの)反応器中に液化形状のゲルを置き、特に固体留分のか焼を防止するために、場合により水/固体比を調整し、反応器のあらゆる漏出の問題を回避するために、反応器はその容積の2/3を充填し、
2.反応器は、(150℃〜300℃に定められた)反応温度で、処理期間を通して乾燥炉内部に置かれる。
【0179】
熱水処理中、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、結晶化度が時間と共に増加する特定の固体組成物になるために、その初期粘稠度を次第に失う。物質のこの漸進的結晶化は、X線回折分析によって確認でき、かつ処理中を通して細くなり、かつ強まる特徴的ピークの出現によって対応する回折図上に現れる。
【0180】
この熱水処理の結果、水中に溶解した膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を含むコロイド組成物を得る。この熱水処理の終了時に、直接得られたコロイド組成物を使用することができるか、又は変形形態では次の後処理:
3.反応器の中身を濾過し、そこから固体濾過物質を回収する、
4.濾過物質を乾燥炉で60℃、1日間乾燥させる、
5.乾燥したら、濾過物質をメノウ製の乳鉢で破砕する
を実行できる。
【0181】
このようにして、色が、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製に使用される金属塩化物の性質(及び同様に、必要な場合、これら金属塩化物のそれぞれの比率)に応じて決まる、分割固体組成物を最後に得る。
【0182】
例えば、次のタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子:
−Si4Mg3O10(OH)2/Si4Mg3−εO10(OH)2,(Mg2+)ε’・nH2Oは、白色であり、
−Si4Ni3O10(OH)2/Si4Ni3−εO10(OH)2,(Ni2+)ε’・nH2Oは、緑色であり、
−Si4Co3O10(OH)2/Si4Co3−εO10(OH)2,(Co2+)ε’・nH2Oは、バラ色であり、
−Si4Cu3O10(OH)2/Si4Cu3−εO10(OH)2,(Cu2+)ε’・nH2Oは、青色であり、
−Si4Mn3O10(OH)2/Si4Mn3−εO10(OH)2,(Mn2+)ε’・nH2Oは、チョコレート色であり、
−Si4Fe3O10(OH)2/Si4Fe3−εO10(OH)2,(Fe2+)ε’・nH2Oは、灰色から赤茶色であり、
−Si4Zn3O10(OH)2/Si4Zn3−εO10(OH)2,(Zn2+)ε’・nH2Oは、白色である。
【0183】
B/−分析及び構造の特徴付け
先に説明したプロトコルに従って得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の様々な組成物が、特にX線回折で分析された。
【0184】
収集した結果は、以下に示し、かつ注釈を付す。結果は、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の4つの特殊な組成物に関する。この場合、220℃、16バールで、かつ21日間、熱水処理によって調製されたタルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の組成物が問題である。
【0185】
これら4つの組成物は、ケイ素金属ゲル−Si4Mg3O11,n’H2O−の熱水処理の際に使用された水/固体比率によって互いに区別される。
【0186】
これらの組成物は、使用された水/固体比率を参照して、R100、R50、R25及びR10と指定される(水量はリットルで、かつ固体量はkgで表現される)。
【0187】
特に、これらの比率は、次の混合物:
−組成物R100:300mgの固体(ゲルの固体留分)に対して30mlの水、
−組成物R50:400mgの固体に対して20mlの水、
−組成物R25:800mgの固体に対して20mlの水、
−組成物R10:1000mgの固体に対して10mlの水
によって得られた。
【0188】
1/−X線回折分析
図1は、先の4つの組成物により得られたX線回折で実行された分析の結果を示す。
【0189】
回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)に登録された。測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0190】
得られたX線回折図は、面(020)、(003)及び(060)において位置が天然タルクの特徴を示す回折ピークのそれに非常に近い回折ピークを有する:
−面(020)に関して、4.52〜4.55Åの距離に位置するピーク(天然タルクに関して4.55Å)、
−面(003)に関して、3.14〜3.18Åに位置するピーク(天然タルクに関して3.12Å)、
−面(060)に関して、1.52〜1.53Åに位置するピーク(天然タルクに関して1.53Å)。
【0191】
面(001)に関して、対応する回折ピークの位置は、9.71Å〜10.32Åの値を取る距離に位置する。この距離は、天然タルクの面(001)を表す9.35Åと著しく異なる。
【0192】
面(001)に対応するこのピークの差異、及び約14〜15Å、特に14.6Åの距離で突き出たピークの存在は、膨張鉱物相を形成する他の鉱物相、ステベンサイトとの非膨張タルク鉱物相の相互層化を反映する。
【0193】
一方で、鉱物粒子中でステベンサイトの相対量が多いほど、面(001)の回折ピークが小さい回折角に向かって移動する点が確認により確かめられた。他方でX線回折分析は、タルク−ステベンサイトタイプの相互層化の存在を確認するために、配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和したブレードに対して同様に実行された。
【0194】
配向されたブレードは、次のプロトコル:
1.1.25mlのエッペンドルフ中に、15mgの試料を置き、1NCaCl2溶液を添加する。混合物を約30秒間渦状に撹拌し、次に約1時間、静止状態に置く、
2.混合物を、15分間、7000回転/分で遠心分離にかけ、次に上清を除去し、
3.残渣を、1NCaCl2溶液中で再度懸濁し、混合物を、約30秒間渦状に撹拌し、次に約12時間、静止させておく、
4.混合物を、15分間、7000回転/分で遠心分離し、次に上清を除去する、
5.残渣を、浸透水で洗浄する:浸透水の添加後、混合物を、渦状に撹拌し、10秒間、超音波をかけ、次に上清を除去するために、15分間、7000回転/分で遠心分離する前に、約1時間、静止させておき、この洗浄を、5回繰り返す、
6.洗浄後、カルシウムで飽和した生成物に対応する残渣を、浸透水に戻し、混合物を、30秒間渦状に撹拌し、10秒間、超音波をかける、
7.このように調製した溶液を、ピペットを用いて取り出し、かつそれをガラスブレード上に付着させる、
8.ブレードが乾燥したら、その上でエチレングリコールを粉砕し、5分間作用させておき、このブレードは、カルシウム及びエチレングリコールで今度は飽和され、かつ分析の準備が整っている
により調製された。
【0195】
図11a〜図11dは、得られたX線回折図を示す。以下の表1は、そのデータを要約する。
【0196】
回折ピークの面積が大きいほど、このピークにより表される鉱物相が、試料中に大量にある。
【0197】
図11a〜図11dで目印を付けたピーク1、2及び3は、それぞれステベンサイト成分、相互層化を表す成分、及びタルク成分に対応する。これら3つの成分は、タルク−ステベンサイト相互層を形成する。
【0198】
表1
【0199】
同様に、図10に示すX線回折図を参照して、非膨張鉱物相に対する面(001)、(020)、(003)及び(060)に対応するピークの途中の高さでの幅の測定は、結晶化度の変動に対する水/固体比の効果を評価することを可能にする。所与の熱水処理温度及び期間に関して、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶化度は、水/固体比により増加する。
【0200】
c/−タルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物の、合成タルクナノ粒子組成物への熱変換の一般プロトコル
前記のように、第3の調製方法により調製された膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物は、乾燥及び破砕後に、無水熱処理を受けさせる。そのために、組成物は、白金の坩堝中に置かれ、次に加熱される。セラミック又は他のあらゆる適した材料の坩堝も使用できる。反応は、5バール未満の低圧で−特に大気圧で−実行される。
【0201】
1/−分析及び特徴付け
膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶及び層状構造、並びに得られた合成タルクナノ粒子の結晶及び層状構造は、赤外線分光法により、かつX線回折で特徴付けられた。収集されたデータの幾つかのみが図12、図13a、図13b、図14及び図15に示され、かつ以下に注釈を付す。
【0202】
a)赤外線分析
図12は:
−次の特殊な条件:熱水処理が220℃で24時間、0.83の蒸留水/ゲル比により(166cm3の水に対して200gの粉末組成物)実行される、において、先に説明した第3の調製方法の熱水処理の一般プロトコルに従って調製したタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃−5h)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)から、かつ5時間の、500℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 500℃−5h)、に対して透過中赤外線で実行された分析の結果を示す。
赤外線スペクトルの取得は、4000〜400cm−1の範囲に対する分光計NICOLET 510−FTIRによって実行された。
【0203】
その上、図13a及び13bは、振動帯が3678cm−1、1018cm−1、及び669cm−1に局地化される、領域の拡大を示す。
【0204】
測定は、7185cm−1で突き出たMg3−OH結合の振動を視覚化するために、近赤外線中で拡散反射で同様に行われた。図14は、6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大を示す。
【0205】
6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大(図12)は、7185cm−1での参照ピークの近傍に、7265cm−1でのピークを出現させる。この結合の存在は、得られたナノ粒子の僅かな水和を表す。水分子はまた、タルク構造に対応する層間に挿入される。
【0206】
これらの結果は、無水熱処理が、タルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物を、合成タルクナノ粒子組成物に変換することを実際に可能にすることを示す。この変換は、細かさが、本質的に鉱物の結晶化度を反映する、タルクの特徴を示す4つの振動帯の存在によって特に現れる。これら4つの帯の細かさ、及び従って鉱物の結晶化度は、無水熱処理中、かつ処理期間によって次第に増加する。
【0207】
それにもかかわらず、約300℃の温度のみで実行される無水熱処理では、天然タルクと類似した水和度の獲得に、長時間がかかる。
【0208】
反対に、約500℃の温度での無水熱処理では、処理された鉱物組成物は、比較的短時間で(約5時間の処理から)天然タルクに極めて匹敵する結晶化度及び水和率を取得する。
【0209】
2/−X線回折分析
図15は:
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物から、かつ5時間の、550℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 550℃)、に対して実行された分析の結果を示す。
【0210】
図15に示したX線回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)によって実行された。測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0211】
これらの分析は、赤外線分光法で観察されたことを確認する。
【0212】
タルクの特徴を示すピークは、550℃でも300℃でも無水熱処理により強まり、かつこの強度は、処理期間により増加する。
【0213】
5時間のみの550℃の無水熱処理後、タルクの特徴を示す回折ピークは、細くなる。特に、面(001)の回折ピークは、9.64Åの位置から9.50Åに移動し、天然タルクの特徴を示す9.35Åの値に非常に接近する。この値の偏差は、タルクの構造に対応する層間に挿入された水分子の存在のために(001)の格子間距離を増加させる合成タルクナノ粒子の僅かな残留水和及び/又は非常に小さなナノ粒子のサイズ(ナノメートルサイズ)を反映し得る。しかしながら、この水和が、より長い無水熱処理の期間により次第に目立たなくなることに注目すべきである。
【0214】
面(001)、(020)、(003)及び(060)のピークの途中の高さでの幅の測定は、結晶化度の変動を示し、かつ300℃を超える処理温度に関して、合成時間が増加するほど、合成タルクナノ粒子の結晶化度が改良されることを確認する(途中の高さでの幅は、処理時間により減少する)。
【0215】
図15に示したX線回折図は、塩化ナトリウム(NaCl)の特徴を示す回折ピークの存在も出現させる。これらのピークの存在は、熱水処理に先立つケイ素金属ゲルの不十分な洗浄及びすすぎを表す。この場合に、3つの分析される組成物は、ケイ素金属ゲルの1回の洗浄サイクルのみにより調製された。
【0216】
D/−得られた合成ナノ粒子の理論構造
結晶構造を概略的に示す図16及び図17を参照すると、合成タルクナノ粒子及び得られたタルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、重なった基本層1に顕微鏡的組織を有する。各層1は、二価金属カチオン、この場合にMg2+によって占められる八面体層4から構成された結晶構造を有する。
【0217】
これらの八面体層の各々は、2つの四面体相3の間に挿入される。
【0218】
合成タルクナノ粒子に対して、タルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶構造は、基本層1の幾つかの八面体部位のレベルで金属カチオンでの間隙5の存在によって特徴付けられる。これらのカチオン間隙は、特にX線回折図に関して観察される低い結晶化度を説明する。
【0219】
合成タルクナノ粒子に対して、タルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶構造は、基本層1の不規則な積層、並びに水分子及び水和カチオンが浸透するレベルである層間空間2の存在によって同様に特徴付けられる。層間空間2中に浸透したこれらのカチオンは、間隙5による充填の損失を、鉱物相レベルのカチオンで補うことを可能にする。このようにして結晶構築物は、比較的中性の状態に留まる。
【0220】
層間カチオンは、格子の残部に弱く結合され、かつそのために他のカチオンと交換される可能性がある。同様に層間空間2は、多少拡張可能である。これらの層間空間2内部に、種々の物質が導入できる。
【0221】
タルク−ステベンサイトタイプの合成膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の無水熱処理のテストは、この合成鉱物の合成タルクナノ粒子への変換に至らせた。特に、層1の結晶化度の改良を表す面(001)、(020)、(003)及び(060)のレベルで特徴的X線回折ピークが徐々に細くなることが観察される。徐々に、間隙5は、層間空間2のカチオンによって埋められる。かつ付随して、層間空間は、薄くなり(12Åから約9.4〜9.6Åの値に移る)、面(001)において、特徴的回折ピークは、距離9.35Åに接近する。
【実施例3】
【0222】
第2の調製方法による合成タルクナノ粒子の調製
A/−合成タルクナノ粒子組成物の合成プロトコル
合成タルクナノ粒子は、ケロライト組成物の無水熱処理からなる第2の調製方法により調製される。この無水熱処理は、5バール未満の低圧で(例えば大気圧で)、かつ300℃を超える温度で実行される。
【0223】
この無水熱処理は、ケロライトから、完全に結晶化され、熱的に安定した合成タルクナノ粒子への変換を可能にする。これらの合成タルクナノ粒子の粒度は、出発ケロライトの特性、及びこのケロライトの調製方法に応じて決定及び調整できる。
【0224】
1/−ケイ素金属ゲルの調製
ケイ素金属ゲルは、次式:
による共沈反応によって調製される。
【0225】
この共沈反応は、タルクの化学量(3Mgに対して4Si)を有する水和ケイ素金属ゲルを得ることを可能にする。反応は:
1.250cm−3の蒸留水中に0.1モルのメタケイ酸ナトリウムを希釈して調製したメタケイ酸ナトリウム五水和物水溶液、
2.50cm−3の蒸留水中に(吸湿結晶の形状での)0.075モルの塩化マグネシウムを希釈して調製した塩化マグネシウム溶液、及び
3.50cm−3の1N塩酸
から実施される。
【0226】
ケイ素金属ゲルの調製は、次のプロトコル:
1.塩酸及び塩化マグネシウム溶液を混合する、
2.この混合物をメタケイ酸ナトリウム溶液に添加すると、共沈ゲルが即座に形成される、
3.遠心分離(15分間、毎分7000回転)及び上清(形成された塩化ナトリウム溶液)の除去後にゲルを回収する、
4.水、例えば蒸留水、浸透水、又は単に水道水によってゲルを洗浄する(少なくとも2つの洗浄/遠心分離サイクル)、によって実行される。
【0227】
この第1段階の結果、白色の、かつ高度に水和された、ケイ素金属ゲルSi4Mg3O11,n’H2O、を得る。その粘稠度は、ゼラチン状である。
【0228】
2/−ケロライト組成物を得るためのケイ素金属ゲルの処理
ケロライト組成物を得るためにこのケイ素金属ゲルに熱水処理を受けさせる前に、ゼラチン質のケイ素金属ゲルは、乾燥炉で60℃、2日間、乾燥される。比較的長いこの乾燥時間は、遠心分離後に収集されるゲルの高い水和によって説明される。
【0229】
得られたケイ素金属凝集体は、均質な粉末を得るまで、メノウ製の乳鉢によって破砕される。
【0230】
この粉末ケイ素金属組成物は、ケロライト組成物を得るために、次に熱水処理を受けさせる。そのために:
1.粉末ケイ素金属組成物を、蒸留水と共に、0.83の液体/固体比率で反応器(オートクレーブ)中に置く(例えば166cm3の水に対して200gの粉末組成物)、
2.約220℃の温度で、かつ1日以上の処理期間で乾燥炉中に反応器を置く、
3.この熱水処理の終了時に、反応媒体の固体物質は、濾過され、次に乾燥される。
【0231】
合成ケロライト組成物に対応する白色の分割固体組成物を最後に得る。
【0232】
3/−ケロライト組成物の無水熱処理
予め調製されたケロライト組成物は、次に無水熱処理を受けさせる。そのために、組成物は、白金の坩堝中に置かれ、次に加熱される。セラミック又は処理温度に適した他のあらゆる材料の坩堝も使用できる。前記組成物の加熱は、大気圧で実行される。
【0233】
B/−得られたナノ粒子の分析及び構造の特徴付け
ケロライトナノ粒子及び得られた合成タルクナノ粒子の結晶及び層状構造は、透過及び拡散反射赤外線分光法、及びX線回折によって特徴付けされた。収集されたデータは、図18、図19a、図19b、図20、図21及び図22に示され、かつ以下に注釈を付す。
【0234】
1/−赤外線分析
図18は:
−先に記載した方法により調製されたケロライト組成物(Ker.)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃−5h)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、550℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 550℃−5h)、に対して中赤外線で実行された分析の結果を示す。
【0235】
赤外線スペクトルの取得は、4000〜400cm−1の範囲に対する分光計Nicolet 510−FTIRによって実行された。
【0236】
その上、図19a及び19bは、振動帯が3678cm−1、1018cm−1、及び669cm−1に局地化される、領域の拡大を示す。
【0237】
測定は、7185cm−1で突き出たMg3−OH結合の振動を視覚化するために、近赤外線中で拡散反射で同様に行われた。図20は、6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大を示す。
【0238】
これらの結果は、無水熱処理が、合成ケロライト組成物の合成タルクナノ粒子組成物への変形を可能にし得ることを示す。この変形は、細かさが、本質的に鉱物の結晶化度を反映する、タルク構造の特徴を示す4つの振動帯の出現によって特に現れる。
【0239】
発明者らは、これら4つの帯の細かさ、及び従って処理される鉱物の結晶化度が、無水熱処理中に、かつこの処理の期間により徐々に増加することを同様に確認した。
【0240】
それにもかかわらず、6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大(図20)が、7185cm−1での参照ピークの近傍に、7265cm−1でのピークを出現させることに注目すべきである。この結合の存在は、得られた生成物の僅かな水和を表す。水分子は、タルク構造に対応する層間に挿入される。
【0241】
先の分析は、特に300℃又は500℃での無水熱処理が、ケロライト組成物を、合成タルクナノ粒子組成物に変形できるようにすることを確認する。それにもかかわらず、約300℃の温度のみで実行される無水熱処理では、天然タルクと類似した水和度の獲得に、長時間がかかる。
【0242】
反対に、約500℃の温度での無水熱処理では、処理された鉱物組成物は、比較的短時間で(約5時間の処理から)天然タルクに極めて匹敵する結晶化度及び水和率を取得する。
【0243】
2/−X線回折分析
図21は:
−先に記載した共沈方法により調製された合成ケロライト組成物(Ker.)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、550℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 550℃)、に対して実行された分析の結果を示す。
【0244】
図21に示した回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)で実行された。
【0245】
測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0246】
これらの分析は、赤外線分光法で観察されたことを確認する。
【0247】
タルク構造の特徴を示すピークは、550℃でも300℃でも無水熱処理により強まり、かつこの強度は、処理期間により増加する。
【0248】
5時間のみの550℃の無水熱処理後、タルク構造の特徴を示す回折ピークは、細くなる。特に、面(001)に対応する回折ピークは、9.64Åの部位から9.50Åに移動し、天然タルクの特徴を示す9.35Åの値に非常に接近する。この値の偏差は、合成タルクナノ粒子の非常に僅かな残留水和及び/又は非常に小さなナノ粒子のサイズ(ナノメートルサイズ)を反映する。しかしながら、無水熱処理の期間が増加する時、水和が次第に目立たなくなることに注目すべきである。
【0249】
面(001)、(020)、(003)及び(060)のピークの途中の高さでの幅の測定は、結晶化度の変動を示し、かつ300℃を超える処理温度に関して、合成時間が増加するほど、ナノ粒子の結晶化度が改良されることを確認する(途中の高さでの幅は、処理時間により減少する)。
【0250】
図21に示した回折図は、塩化ナトリウム(NaCl)の特徴を示す回折ピークの存在も出現させる。これらのピークの存在は、熱水処理に先立つケイ素金属ゲルの不十分な洗浄及びすすぎを表す。この場合に、3つの分析される組成物は、ケイ素金属ゲルの1回の洗浄サイクルのみにより調製された。
【0251】
図22は、比較のために、ナノメートルサイズの20〜100nmの合成タルクナノ粒子(Talc synth.)試料、及び約70〜120nmの粒度を有する粒子を得るまで機械的に破砕された、先行技術に従った天然タルク(Talc nat.)試料のX線回折図を示す。
【0252】
天然タルクと、合成タルクナノ粒子の間の第1の差は、面(001)及び(003)に対応する回折ピークの位置に現れる:
−面(001)に関して:天然タルクに関する9.36Åの代わりに、合成タルクナノ粒子に関して9.43Å、
−面(003)に関して:天然タルクに関する3.12Åの代わりに、合成タルクナノ粒子に関して3.16Å。
【0253】
ナノメートルの天然タルク(Talc nat.)は、遙かに低い、これらの回折ピークの強度により、合成タルクナノ粒子(Talc synth.)から同様に区別される。
【0254】
その上、ナノメートルサイズの合成タルクナノ粒子に対して、天然ナノメートルタルクは、(同じ調製及び同一の計算時間に関して)途中の高さでの幅がより大きな、回折ピークを示す。このデータは、合成タルクナノ粒子に関するより良好な結晶化度を表す。ナノメートルサイズのタルクを得るための天然タルクの強度の破砕は、生成物の著しいアモルファス化を引き起こす。
【0255】
C/−本発明により得られた合成ケロライト粒子の理論構造
合成タルクナノ粒子及び合成ケロライトナノ粒子は、数が、数単位から数十単位の値を取る、図16及び図17に表したものに類似する、重なった基本層で顕微鏡的組織を有する。
【0256】
合成タルクナノ粒子でも、合成ケロライトナノ粒子でも、基本層の結晶構造は、八面体層の両側に位置する2つの四面体層の会合からなる。
【0257】
八面体層は、2つのO2−及びOH−イオン面から(2:1のO2−/OH−モル比率で)形成される。この中間層の両側に、頂点の1つが、四面体層及び八面体層に共通の酸素によって占められ、他方で3つの他の頂点が、四面体層に属するほぼ同一面上の酸素によって占められる、四面体の三次元格子が配置されるようになる。
【0258】
四面体空洞は、Si4+イオンによって占められ、かつ八面体空洞は、Mg2+カチオンによって占められる。
【0259】
合成タルクナノ粒子とは異なり、合成ケロライトナノ粒子の結晶格子は、間隙を有し、少ない割合の八面体部位は、占められない。その結果、カチオン欠損が生じる。このカチオン欠損は、大部分が層間空間を占める、補償カチオンと呼ばれるカチオンの存在によって埋められる。高度に水和されたこれらの層間空間は、純粋なタルクに対してケロライトの結晶構造の特有の特性を同様に形成する。
【0260】
これらの間隙は、特にX線回折図に関して観察される低い結晶化度を説明する。
【0261】
合成ケロライト組成物の無水熱処理のテストは、これらの組成物の合成タルクナノ粒子組成物への変換を示した。特に、層の結晶化度の改良を表す面(001)、(020)、(003)及び(060)のレベルで特徴的X線回折ピークが徐々に細くなることが観察される。徐々に、間隙は、層間空間のカチオンによって埋められる。かつ付随して、層間空間は、薄くなり(12Åから約9.4〜9.6Åの値に移る)、面(001)において、特徴的回折ピークは、天然タルクの特徴を示す距離9.35Åに接近する。
【実施例4】
【0262】
ニッケルを主成分とする複合コーティング
実施例1〜3で得られた合成ナノ粒子は、親水性の合成層状フィロケイ酸ナノ粒子であり、これらのナノ粒子が内部に分散した金属マトリックスを含む電解析出による潤滑複合コーティングを製作するために使用できる。
【0263】
実施例4において、コーティングは、4cm2のニッケル陽極、及び析出が行われる1.762cm2の銅陰極からなる電気化学セル中で調製された。
【0264】
電気化学セルは、4.5のpH及び次の組成物:
−NiSO4,6H2O:280g.l−1
−NiCl2,6H2O:30g.l−1
−H3BO3 :45g.l−1
−Na2SO4 :50g.l−1
−350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子、を有する電解質を含む。
【0265】
析出は、電解質を55℃の温度に維持し、2.5A.dm2の電流密度で、1時間30分の間行われる。
【0266】
得られたコーティングの構造を、図23に概略的に示す。確認されるように、コーティングを形成する複合材料は、合成タルクナノ粒子6が組み込まれた金属細粒5を含む。金属細粒の平均寸法よりも遙かに小さいサイズの、これらのナノ粒子は、コーティングの表面状態を改質せず、かつ金属析出の実行を少しも妨げない。
【0267】
WO2004/063428による天然タルクでの先行技術に従うコーティングの調製方法において、タルク粒子の疎水面上の水素蓄積により安定した大量の泡の出現が確認されることに注目すべきである。反対に、本発明によるコーティングの調製方法において、いかなる泡の出現も確認されない。
【実施例5】
【0268】
NiPを主成分とする複合コーティング
実施例4に使用されたものと同様の電気化学セル中に、次の組成物:
・NiSO4,6H2O 210g.l−1
・NiCl2,6H2O 60g.l−1
・H3PO4 45g.l−1
・H3PO3 0〜15g.l−1
・Na2SO4 50g.l−1
・350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子、を有する、pH=2の電解質を導入した。
【0269】
析出は、電解質を80℃の温度に維持し、45分間行った。
【0270】
電流密度を変動させて、幾つもの試料が、このようにして調製された。以下の表は、適用された電流密度に応じて(得られる析出の厚さに直接関連する)確認された析出速度を示す。
表2
【実施例6】
【0271】
ZnNi/合成タルクナノ粒子を主成分とする複合コーティング
実施例4に使用されたものと同様の電気化学セル中に、次の組成物:
・ZnCl2 93.7g.l−1
・NiCl2,6H2O 9.3g.l−1
・KCl 200g.l−1
・350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子を有する、pH=2の電解質を導入した。
【0272】
析出は、電解質を55℃の温度に維持し、5A.dm−2の電流密度で、12分間行われた。
【0273】
実施例4の電気化学析出の代わりに、化学タイプの電解析出によって、本発明による複合コーティングを製作できる。
【実施例7】
【0274】
化学的方法による複合コーティング、NiP/合成タルクナノ粒子(無電解)
コーティングは、1ミクロンのニッケル層で予め被覆された、1.8cm2の鋼基板を含むセル中で調製された。セルは、4.5のpH及び次の組成物:
・NiSO4,6H2O 280g.l−1
・NiCl2,6H2O 30g.l−1
・NaH2PO2 1〜30g.l−1
・350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子を有する電解質を含む。
【実施例8】
【0275】
Ni−Coを主成分とする複合コーティング:
この実施例において、コーティングは、実施例4で使用されたものと同様の電気化学セル中に、次の組成物:
・Co(CH3CO2),nH2O 10g.l−1
・Ni(CH3CO2),nH2O 100g.l−1
・NiCl2 40g.l−1
・H3BO3 40g.l−1
を有する電解質によって調製された。
【0276】
ニッケル−コバルトマトリックスの複合コーティングは、実施例1に記載されたような、第1の調製方法により調製された合成タルクナノ粒子から作製された。
【0277】
2つの方法が研究された:一方で合成タルクナノ粒子は、熱水反応器の出口で乾燥され、次に破砕され、かつ電解質中で懸濁され、他方で反応器から直接出た合成タルクナノ粒子は、(乾燥も破砕もなしに)合成水中で分散させる。後者の方法は、一方で方法の2つのステップを削除でき、かつナノメートル粉末を扱うことを回避できるようにする。その上、その懸濁安定性(低い沈殿速度)は、乾燥した粉末の安定性よりも遙かに高い。熱水反応器出口でのこれらの粉末の分散状態は、したがって、乾燥、破砕された合成タルクナノ粒子粉末の場合よりも遙かに満足できる。
【0278】
乾燥有り又は無しで、熱水処理の条件は、以下の通りであった:300℃、90.105Pa、6時間又は15日間。
【0279】
電解質中に分散したナノ粒子の存在が、電気化学析出の微細構造を細くすること及びその改質を生じさせることが示された。乾燥ステップ無しに反応器から直接出され、次に電解質中に分散させる、合成タルクナノ粒子を含む懸濁液から実行した析出は、乾燥、破砕された合成タルクナノ粒子粉末の場合よりも2.5倍高い粒子濃度に関して、より滑らかなコーティング及び興味深いトライボロジー的性質を得ることを可能にし、TEM顕微鏡(x40000)ではっきりと見える、細粒間に分散した合成タルクナノ粒子を組み込む。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、金属潤滑コーティングとしてのその使用、及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば輸送、コネクタ技術、兵器のような多数の産業分野において、接触する部品が互いに動く機械アセンブリを使用する。多数の場合において、接触する部品の表面に、その基本的性質の他に、高温に対して安定した潤滑性を与え、表面が接触する機械アセンブリの寿命及び信頼性を向上させるために、表面を処理することが望ましい。
【0003】
化学的方法(無電解法)にせよ、電気化学的方法にせよ、電解法により複合潤滑コーティングを析出させることが知られている。基板上への「無電解」と呼ばれる共析出法は、触媒的酸化還元により金属又は合金成長プロセス中に粒子を組み入れることからなる方法である。電気化学的方法による共析出法は、電解セル中の電解質から、コーティングする基板上での金属又は合金成長プロセス中に粒子を組み入れることからなる。
【0004】
例えば、ニッケル前駆物質溶液中のPTFE懸濁液からの「無電解」法によるニッケルを主成分とする金属マトリックス中のPTFE潤滑コーティングの析出は、X.Huら(Plating and surface finishing,1997年3月)によって知られている。しかし、PTFEが、300℃を超える温度で破壊されるので、この種のコーティングは安定していない。「無電解」法によるフラーレン−WS2の鉱物ナノ粒子を含む減摩NiP析出の作製は、特にW.X.Chenら、Advanced Engineering Materials,vol.4,no9,2002年9月]によって記載されている。「無電解」法により、NiP−B4C潤滑コーティングも析出できる[J.P.Geら、Plating and surface finishing,1998年10月参照]。
【0005】
更に、Ni−BNhコーティングが、M.Pushpavanamらによって記載され[(Metal Finishing,1995年6月)]、MoS2を含むニッケル複合コーティングが、Yu−Chi Changらによって記載されている[Electrochimica Acta,vol.43,Issues 3−4,1998,p.315−324]。いずれの場合においても、コーティングは電気化学的方法によって得ることができる。しかしながら、窒化ホウ素は、酸性及び塩基性媒体に対して非常に低い耐薬品性を有する。
【0006】
その上、WO2004/063428は、15μm未満の平均寸法を有し、かつ電解質を形成する水性媒体中で注意を払うことなく懸濁液の形成を可能にする、(当然に高度に疎水性である)タルクに親水性を与えるように、ヒドロキシル基の全部又は一部を置換することによってセルロース誘導化合物がその表面に固定された天然タルク粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料を記載している。
【0007】
それにもかかわらず、この複合材料が、種々の短所を有することは明瞭である。
【0008】
最初に、改質された天然タルク粒子は、粒子の周辺端部のレベルに本質的に位置する親水性領域を有する房の一般的な形状をしており、これらの粒子の主要面は、疎水性を保っている。したがって、(化学的又は電気化学的)電解析出による複合材料の作製の際に、タルク粒子は主に、コーティングする基板表面に垂直な方向に沿ってその主要面が伸長するように自然に配向する。この配向は、反対に層が基板表面に主に平行に配向することが望ましい、求められている潤滑性に対しては不利である。更にそれは、以下に言及する第2の短所と同時に、互いに滑動可能な、接触した表面を有する金属潤滑コーティングを求める用途と一般的に相容れない、高い表面粗度を引き起こす。したがって、この粗度を防ぐために、製造された金属コーティングの研磨ステップを後に行うことが必要である。しかし、このステップは費用がかかるのみならず、特に突き出たタルク粒子の移動又は除去を引き起こすときに、コーティングを構成する複合材料中、特に金属マトリックスの表面に傷を発生させる結果にもなる。
【0009】
更に、天然タルクの粒度(粉末粒子の細かさ及び粒度分布)は本質的に、用いられる機械破砕技術及び材料によって決まる。天然タルクから、機械破砕によって得られる粉末は、一般的に約数マイクロメートルから数百マイクロメートルの粒度を有する。
【0010】
粒子の粒度分布の無視できない変動に加えて、機械破砕は、タルクの漸進的かつ著しい構造劣化、及びその結晶構造中での多数の傷の出現を引き起こす。破砕が細かいほど、初期結晶構造が変化する。
【0011】
このように、得ることができる最も細かい層状天然タルク粒子は、常に1μmを超える平均寸法を有し、かつ制御しにくく、多くの場合、多峰型の、非対称かつ高分散の粒度分布を有する。したがって、複合材料は、サイズの比較的大きい、あらゆる場合に電解析出によって形成される金属細粒とほぼ同じ又はそれよりも大きい天然タルク粒子を含む。これらの比較的大きなタルク粒子は、金属析出の成長、並びに析出中に生じる酸化還元及び/又は電気化学的現象に著しく影響を及ぼす。
【0012】
更に、天然タルク組成物は100%純粋ではない。実際に、100%純粋である天然タルクのいかなる分割固体組成物も現在、存在しない。天然タルク粒子は、化学式Si4Mg3O10(OH)2に完全には対応せず、したがって、化学式は、非常に理論的であるにすぎない。天然タルクの純度の程度(方解石、緑泥石、黄鉄鉱等のような他の鉱物との鉱物学的結合がないこと)及び不純物の性質(多少の含有量のFe、Al、F及び微量のMn、Ti、Cr、Ni、Ca、Na及び/又はK)は、元の鉱脈によって決まる。
【0013】
その結果、実際、特に金属潤滑コーティングとして使用し得るためには、不十分な品質の複合材料が得られることになる。
【0014】
平均寸法がより小さく、改良された粒度分布を有する天然タルクのある種の組成物が記載されたことに注目すべきである。にもかかわらず、天然タルク粒子は、1μm未満の寸法に破砕される際に、消失するその層状特性に関連したその性質を失う。実際に、この寸法未満では、破砕は、粒子の径方向平均寸法の減少より大きくはないにせよ、おそらくは同じくらいの層分離をもたらす。したがって、天然タルクのかかるナノ粒子は、層状でなく、したがって、潤滑性を有する複合材料の製造に適さない。その上、天然タルクのかかる粒子に対するセルロース誘導体のグラフト法の実施は、問題を生じる。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、上述の短所を有することなく、WO2004/063428によって記載された複合材料の利点を有する複合材料を提案し、これらの短所を防ぐことを目的とする。
【0016】
したがって、本発明は、機械アセンブリ中で互いに接触し、かつ移動する機械部品に従来、要求される表面状態、均質性、硬度、及び耐摩耗性の性質、及び研磨ステップを必要とすることなく、高温、例えば約800℃で安定した潤滑性を有する、金属潤滑コーティングを形成できる複合材料を提供することを目的とする。
【0017】
特には、本発明は、機械的性質が、本質的にそれを構成する金属マトリックスの機械的性質であるが、動摩擦係数が非常に低下し、移動摩擦係数が制限されたかかる複合材料を提案することを目的とする。換言すれば、本発明は、トライボロジー的特性は改良される(摩擦係数、摩耗率等)が、他の機械的性質(抵抗、弾性率、硬度等)が保たれ、その金属マトリックスの特性に少なくとも著しく対応する、かかる複合材料を提案することを目的とする。
【0018】
それ故、本発明は、複合材料、基板の自己潤滑コーティングとしてのその使用、及びその作製方法を対象とする。
【0019】
したがって、本発明は、層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料であって、層状フィロケイ酸鉱物粒子が、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属粒子であることを特徴とする複合材料に関する。
【0020】
特には、本発明による複合材料は、層状かつ親水性である合成フィロケイ酸ナノ粒子が分配された金属マトリックスからなる。
【0021】
本発明による複合材料の合成フィロケイ酸ナノ粒子は、層状で親水性であり、かつその作製方法に適合するので、様々な用途の対象となり得る。本発明による複合材料において、ナノ粒子は、実際は、金属マトリックスの金属細粒中に埋め込まれ、かつこの金属マトリックスの品質及び均質性を著しく害さない。
【0022】
本発明者らは特に、これらの性質を有し、かつ典型的には約700℃〜800℃の高温まで安定した状態に留まり、かつ単分散及び単峰性の粒度分布で得ることができる合成フィロケイ酸ナノ粒子を得ることに成功した。したがって、これらの合成フィロケイ酸ナノ粒子は、金属潤滑コーティングとして使用できる本発明による複合材料を形成することに特に適している。
【0023】
このように、好適には、第1の変形形態において、本発明による複合材料は、合成フィロケイ酸ナノ粒子として、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子と呼ばれる、式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−(式中、
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、かつ式Mgy(1)Coy(2)Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
【0024】
のような間隔[0;1]の実数であり、
−xは、間隔[0;1]の実数である)のナノ粒子を含み、
−前記鉱物合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に関して、約9.40〜9.68Åの距離に位置するピーク、
−面(020)に関して、4.50〜4.75Åに位置するピーク、
−面(003)に関して、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に関して、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図が得られる。
【0025】
これらの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、結晶及び層状構造を有する。
【0026】
y(i)は、比[考慮される金属カチオン(i)によって占められる八面体部位の数]/[八面体部位の総数]を指す。
【0027】
xは、次の比:
カチオンSi4+によって占められる四面体部位の数/四面体部位の総数
に対応する。
【0028】
第1の調製方法
本発明による、かかる合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の第1の調製方法は、液体状態での式−(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O−のケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を特徴とする。
【0029】
ゲルの調製
第1のステップにおいて、メタケイ酸ナトリウム溶液と塩化マグネシウム(又はニッケル)溶液との間の反応により初期共沈物を形成させる。その場合、高度に水和された、ゼラチン状粘稠度の化学式:Si4Mg3O11,n’H2O(又はSi4Ni3O11,n’H2O)を有するケイ素金属ゲルが得られる。一連の遠心分離及び蒸留水での洗浄により、共沈反応により形成されるNaClをこのケイ素金属ゲルから取り除くことができる。n’は、水和ゲル中に捕捉された水分子数を指す。直接熱水処理にかける出発ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、ゼラチン状粘稠度を有する高度に水和された物質の形状を呈する。このゲルは、そのチキソトロピー挙動により、機械的撹拌だけで液化させることができる。
【0030】
特定の実施形態によれば、
−メタケイ酸ナトリウム(Na2OSiO2)溶液及びメタゲルマン酸ナトリウム(Na2OGeO2)溶液から選択される少なくとも1つの塩の溶液を含み、これら2つの溶液のそれぞれの量が、次のモル濃度比:
を有する液体組成物を得るように選択される液体組成物と、
−塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化コバルト(CoCl2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化銅(CuCl2)、塩化マンガン(MnCl2)、塩化鉄(FeCl2)、塩化クロム(CrCl2)から選択された少なくとも1つの二価金属塩化物を含み、
となる前記金属塩化物の各々のモル濃度比を有する金属塩化物(MCl2)溶液との間の、
−塩酸溶液の存在下での
共沈反応により出発ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを調製する。
【0031】
そのようにして、次の化学反応:
[m、n’及び(m−n’+1)は、正の整数である]を行う。
【0032】
このタイプのゲルの調製は、周知であり、かつ例として、Decarreauら、1989(“Synthese et stabilite des stevensites kerolites et talcs,magnesiens et nickeliferes,entre 80 et 240℃”−R.Acad.Scie.Paris−,t.308,serie II,p.301−306)の出版物に記載の指示に従うことができる。
【0033】
好適には、かつ実務上、式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2Oのケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを製造するために、次のステップ:
−塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化コバルト(CoCl2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化銅(CuCl2)、塩化マンガン(MnCl2)、塩化鉄(FeCl2)、塩化クロム(CrCl2)から選択された少なくとも1つの金属塩化物の適切な量の吸湿結晶を大量の水中に溶解させて、金属塩化物の酸性組成物(MCl2,nH2O)を調製し、次にそこに塩酸(HCl)を添加するステップ、
−ある量のメタケイ酸ナトリウム及びメタゲルマン酸ナトリウムから選択された少なくとも1つを、適切な量の水中に溶解させて、液体組成物を調製するステップ、
−2つの水性組成物を選択された比率(タルクの化学量比(Si−Ge)4/M3)で混合して、共沈ゲルを形成するステップを順次実行する。
【0034】
様々な反応体の使用量は、共沈反応の結果、Na+及びCl−イオンが等モル量で存在するように選択される。このようにして形成された塩溶液(Na+、Cl−)は、液体/固体分離により簡単に除去できる。
【0035】
共沈が生じたら、本発明に従った熱水処理を受けさせるために、例えば遠心分離又は濾過によってケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを回収する。この共沈ゲルをこのように回収して、そこから合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の良好な結晶化に特に有害なNa+及びCl−イオンを同時に除去する。
【0036】
好適には、共沈ゲルを回収したら、特に反応イオンNa+及びCl−を全てそこから除去するために、蒸留水で少なくとも1回のその洗浄を実行する。この洗浄は、浸透水、又は単に水道水によっても行うことができる。
【0037】
熱水処理
前記第1の方法において、調製する合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子に望まれる粒度及び構造安定性に応じて選択された期間、300℃〜500℃の温度で前記熱水処理を実行する。
【0038】
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を実施するために、好ましくは固体画分(出発ゲル、最終生成物、場合により生じる中間生成物)のか焼を防止するための水の補足的添加を考慮することができる。か焼を回避するためのこの水添加の必要性及び添加する最少の水の量は、本質的に初期ゲルの水和度、処理温度、及びこの処理の期間によって決まる。
【0039】
1日から数日に及び得る熱水処理の期間は、特に最後に得られる合成鉱物の結晶化度に対して大きな影響力を有する。
【0040】
合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のこの第1の調製方法は、次の本質的かつ驚くべき確認:
−一方で、300℃〜500℃の(1989年のDecarreauらによる出版物で勧奨された110〜240℃に対して)比較的高い温度で実行された熱水処理が、天然タルクの構造特性に非常に類似した構造特性(特に層状性、結晶化度)、及び優れた熱安定性を有する鉱物合成粒子の形成に至らせること、
−他方で、この第1の調製方法は、特に温度の選択に応じて、安定し、かつ純粋な、かつ非常に正確に定義され、かつ予見可能な結晶特性及びサイズの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を合成することを極めて簡単に可能にすることに由来する。
【0041】
好適には、オートクレーブにより前記ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を行う。好ましくは、チタン又はステンレス鋼で内部を被覆した鋼製オートクレーブを使用する。
【0042】
好適には、処理温度としたこのオートクレーブ内部に飽和蒸気雰囲気を作るために少なくとも十分な量の水(好ましくは蒸留水)を、前記ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルと共にオートクレーブ中に添加する。
【0043】
好適には、かつこの第1の調製方法の実施変形形態によれば、前記熱水処理を約16バールの制御された圧力で実行する。
【0044】
好適には、約0.83の液体/固体比を有する液化したケイ素/ゲルマニウム金属ゲルにより熱水処理を実行するが、ここで、液体の量はcm3で、固体の量はグラムで表現される。場合により必要ならば、前記液化ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルに、この比に達するために適切な量の水を添加する。
【0045】
好適には、かつ本発明によれば、熱水処理を撹拌下で実行する。このために、例えばオートクレーブ内部に磁化格子を配置できる。
【0046】
この第1の調製方法に従った熱水処理の終了時に、前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を内包するコロイド溶液の形状を呈する組成物を得る。水中に溶解したこれらの鉱物合成ナノ粒子は、互いに個別化した状態にあってもよい。これらのナノ素粒子の粒度は、300℃〜500℃から選択される温度である適用される熱水処理の温度に応じて、10nm〜1μmの値を取り得る。好ましくは、熱水処理の温度は、400℃未満である。
【0047】
後処理
熱水処理の結果、コロイド組成物を回収する。本発明の第1の変形形態において、このコロイド組成物を、本発明による複合材料中に組み入れるために、特にかかる複合材料からなるコーティングの基板上への電解析出方法の枠内で、直接使用する。
【0048】
もう1つの変形形態において、完全に個別化された合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を含むタルク組成物を得るために、前記コロイド組成物を、機械破砕ステップが続く、乾燥ステップにかける。組成物中に含まれる凝集体となり得るものは、このようにして個別化された要素ナノ粒子に戻される。しかしながら、この機械破砕ステップが、ナノ粒子のサイズを減少させる効果を有さず、調製方法から生じた場合により凝集体となり得るものを専ら解離させる効果を有することに注目すべきであるしたがって、機械破砕ステップは、ナノ粒子の層状性及び結晶化度を少しも害さない。得られたこれらの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ素粒子の粒度分布は、ほぼ単峰性で単分散である。
【0049】
好適には、乾燥は、乾燥炉により、例えば約60℃の温度で、少なくとも1〜2日間、実行できる。破砕は、好適には機械的に、例えばタルク組成物が汚染するあらゆる危険を回避するために好ましくはメノウ製の乳鉢により実行される。
【0050】
好適には、熱水処理を約300℃の温度で、例えば約3日の期間中、実行する。その場合、例えば、粒度が20nm〜100nmの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ素粒子を最後に得ることができる。
【0051】
第1の調製方法によって得られた組成物
特に、この第1の調製方法が、全部が同じ化学実体を有する合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の組成物を得ることを可能にすることに注目すべきである。この場合、以上に示したような式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2に対応する合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が問題である。
【0052】
この化学式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2中、Si及びGeは、結晶格子の四面体部位を占めるケイ素イオン及び/又はゲルマニウムイオンを指す。Mは、八面体部位の二価金属カチオン(例えばMg2+、Co2+、Mn2+、Zn2+、Cu2+、Fe2+、Ni2+及び/又はCr2+)を記号で表す。
【0053】
特に、この第1の調製方法は、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子として、化学式Si4Mg3O10(OH)2に対応する鉱物ナノ粒子を得ることを可能にする。その場合、天然タルクと同一の化学構造の「合成タルクナノ粒子」と形容できるが、層状で、結晶質の、純粋な、単分散及び単峰性の粒度の、10nm〜1μmであり得る平均寸法を有するナノ粒子が問題である。
【0054】
X線回折及び赤外線分光法で実行される分析により、化学式Si4Mg3O11,n’H2O[すなわち化学式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O(式中、xは1に等しく、かつMは、マグネシウムを指す)のケイ素/ゲルマニウム金属ゲル]のケイ素金属ゲルに直接適用した、本発明に従った熱水処理により、特に結晶化度及び層状性の次元で懸濁粒子が高い類似性を示す合成タルクコロイド組成物を得られることを実際に証明できた(特に中赤外線中の伝送、及び近赤外線中で拡散反射で実行されたスペクトルからなされた確認)。
【0055】
しかしながら、第1の調製方法に従って調製された[すなわち式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2(式中、xは1に等しく、かつMは、マグネシウムを指す)の]合成タルクナノ粒子組成物に関しては、この組成物が、特にその純度によって天然タルク組成物と区別されることに注目するであろう。特に、合成タルクナノ粒子は、専ら化学式Si4Mg3O10(OH)2の粒子である。しかるに、現時点で100%純粋である天然タルクから調製されたいかなる粉末組成物も存在しない。
【0056】
特に、X線回折で、これらの合成タルクナノ粒子に対応する回折図は、約9.40〜9.70Åの距離に位置し、かつ面(001)に対応する特徴的回折ピークを有する。天然タルクに関して、対応する回折ピークは、約9.35Åの距離に位置する。
【0057】
同様に、合成タルクナノ粒子は、良質の結晶化度、及び10nm〜1μmであり得る極めて微細な粒度を同時に有する。しかるに、破砕技術の現状において、天然タルクから、かかる細かさの粒子は、生成物の厳格な「アモルファス化」(結晶化度の減少)によってしか得られない。X線回折で、このアモルファス化は、特に面(001)に関して9.35Å、面(020)に関して4.55Å、面(003)に関して3.14Å、及び面(060)に関して1.52Åに位置するピークである、特徴的回折ピークの強度の減少によって特に現れる。
【0058】
これらの分析により、前記第1の調製方法が、化学式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2Oに対応するケイ素/ゲルマニウム金属ゲル全体に一般化できることも確認できた。この第1の調製方法は、このようにして大きな構造類似性を天然タルクと同様に共有する、式(SixGe1−x)4M3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を含む組成物の合成を可能にする。
【0059】
これらの合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、実際に重ね合わされた層状のナノメートル組織を有し、各層は、(Si4+及び/又はGe4+イオンによって占められる)2つの倒立四面体層間に挿入された(二価金属イオン:Mg2+、Co2+、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Fe2+及び/又はNi2+によって占められる)八面体層から構成される結晶構造を有する。
【0060】
したがって、第1の調製方法は、タルク組成物とよく似た組成物、例えば「ゲルマニウム含有(germaniferes)」と呼ばれる組成物、すなわちタルクの結晶構造を想起させる結晶構造のナノ粒子を含むが、四面体部位のカチオンSi4+が少なくとも部分的にカチオンGe4+によって置換された組成物を得ることを可能にする。同様に、例えば天然タルクのナノ粒子に対して改良された物理的、特に光学及び/又は電気的性質で、ナノ粒子を得るために、八面体部位のマグネシウムイオンが、可変比率で他の二価カチオンによって置換されたとき、「誘導化された」と呼ばれる又は「官能化された」と呼ばれる組成物が問題であり得る。
【0061】
X線回折法に加えて、赤外線分析は、天然タルクに対してのみならず、例えばケロライト、ステベンサイト、スメクタイトのような他の既知のフィロケイ酸塩に対しても、このようにして得られた合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を区別することも可能にする。
【0062】
合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、X線回折分析が以上に述べた特徴的回折ピークを有する回折図を得ることを可能にする、その結晶及び層状構造を特徴とする。
【0063】
好適には、本発明により得られ、かつ複合材料中に組み込まれる合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、約9.55〜9.65Åの距離に位置する面(001)の回折ピークを有する。
【0064】
合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、二価金属カチオン(Mg2+、Co2+、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Fe2+、Ni2+、Cr2+)の性質及び結晶格子中のその比率によって決まる、多少際立った着色した色調を有し得ると言う特殊性も有する。
【0065】
例えば、カチオンNi2+が、結晶格子の八面体部位を占めるために(従来のタルクの)カチオンMg2+よりも少なくとも部分的に好まれる時、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、際立った緑色又は薄い緑色である。
【0066】
同様に、結晶格子の八面体部位が、次のカチオンによって少なくとも部分的に占められるとき以下の通りである:
−Co2+のとき、タルク組成物は、ある程度鮮明なバラ色であり、
−Cu2+のとき、タルク組成物は、ある程度鮮明な青色であり、
−Mn2+のとき、タルク組成物は、チョコレート色であり、
−Fe2+のとき、タルク組成物は、灰色及び赤茶色の間を変動する色を有し、
−Zn2+のとき、タルク組成物は、白色であり、
−Cr2+のとき、タルク組成物は、緑色から青色に変動する色を有する。
【0067】
この理由で、岩石形状の天然タルクが種々の色(緑色、バラ色、蜂蜜色等)を有し得るとしても、それらの微粒子への破砕は、常に白い粉末生成物の形成に至らせることに注目すべきである。実際、天然タルクブロックの色は、物質の化学組成物に固有の着色した中心に因らず、タルク粒子の互いに対する特殊な配置に因り、その微粒子への破砕は、全体を均一化し、かつ着色の消失に至らせる。
【0068】
したがって、第1の調製方法は、その高度な細かさにかかわらず、着色された合成フィロケイ酸ナノ粒子を得ることを可能にする。したがって、本発明による複合材料は、以上に述べた性質を保ちながら着色していてもよい。
【0069】
同様に、結晶格子の八面体部位を占めるための二価カチオンの選択に応じて、他の二価カチオンによるカチオンMg2+のこの同じ置換原理に対して、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、その電気及び/又は熱伝導性のレベルで、天然タルク粒子と著しく異なり得る。
【0070】
したがって、本発明による複合材料の電気及び/又は熱伝導性は、合成フィロケイ酸ナノ粒子のそれに応じて、少なくとも部分的に調整できる。
【0071】
第2の調製方法
変形形態において、以上に述べたような、かつ合成フィロケイ酸ナノ粒子として本発明による複合材料中に組み込むことができる合成タルクナノ粒子は、第2の調製方法により調製できる。
【0072】
この第2の調製方法において、ケロライト組成物を5バール未満の圧力で、(特に数時間から数日に及ぶ)ある期間中、かつ300℃を超える処理温度で行われる無水熱処理にかける。無水熱処理の期間及び温度は、熱的に安定し、かつ式Si4Mg3O10(OH)2の合成タルク粒子を得るように選択される。
【0073】
この第2の調製方法は、少なくとも300℃を超える温度で実行される無水熱処理が、ケロライト組成物を合成タルクナノ粒子組成物に変換することを極めて簡単に可能にし、この組成物が安定し、かつ純粋であり、非常に正確に定義され、かつ予見可能な特性であるという、本質的かつ驚くべき確認に由来する。
【0074】
特には、発明者らは、無水熱処理が、結晶格子の間隙、及び層間空間中に捕獲された水分子の弛緩を減少させて、ケロライトの「擬似結晶質かつ水和」層状構造の漸進的再組織化を誘発する効果を有することを明瞭にした。
【0075】
300℃で実行された無水熱処理によって、合成タルクナノ粒子が得られるケロライト構造に対する注目に値する改質(特に赤外線及びX線回折分析方法により明らかにされ得る改質)を誘発することを実際に可能にする。
【0076】
したがって、好適には、かつ本発明によれば、無水熱処理を約500〜550℃の温度で実行する。かかる温度で、合成タルクナノ粒子を約5時間で得る。好適には、かつ本発明によれば、熱的に安定した合成タルクナノ粒子を得るために、処理期間は、5時間を超える。
【0077】
好適には、かつ本発明によれば、無水熱処理を周囲空気で、例えばセラミック又は処理温度に適した他のあらゆる材料製の坩堝内部で実行する。
【0078】
無水熱処理の結果直接的に、白色固体の、かつ互いに凝集した合成タルクナノ素粒子から形成された多少粗い凝集体に対応する未加工物質を回収する。好適には、無水熱処理の結果、個別化された合成タルクナノ素粒子のこれらの凝集体を解放し、かつ粉末組成物をこのようにして得るために、機械破砕が予定される。これら合成タルクナノ素粒子の寸法分布は、ほぼ単峰性かつ単分散である。
【0079】
好適な実施態様によれば、適切な熱水処理により化学式Si4Mg3O11,n’H2Oのケイ素金属ゲルから予め調製されたケロライト組成物を使用する。
【0080】
この場合に、第2の調製方法は、先に述べたような無水熱処理に後にかける、ケロライト組成物を調製する予備ステップを同様に、かつ好適には含む。
【0081】
好適には、飽和水圧、100℃〜240℃の温度で、1日から数ヶ月の期間中、熱水処理を受けさせた式Si4Mg3O11,n’H2Oのケイ素金属ゲルから前記ケロライト組成物を調製する。
【0082】
前記熱水処理のパラメータ、特に温度及び期間の選択は、最終的に得られる合成タルク粒子の粒度に対する、ある種の制御を可能にする。選択されたパラメータにより、最後に得られる合成タルクナノ粒子は、10nm〜1μmの値を取り得る粒度を有し、粒度分布は、ほぼ単峰性かつ単分散である。
【0083】
好適には、反応:
[m、n’及び(m−n’+1)は、正の整数である]により、第1の調製方法を参照して、以上に示したような共沈によりケイ素金属ゲルを調製する。
【0084】
好適には、前記ケイ素金属ゲルの熱水処理から直接生じたケロライト組成物は、乾燥させ、次に前記無水熱処理を受けさせる前に粉末組成物を得るために破砕させる。そのために、乾燥は、乾燥炉により、例えば約60℃の温度で、少なくとも1〜2日間、実行できる。破砕は、好適には機械的に、例えばケロライト組成物が汚染するあらゆる危険を回避するために好ましくはメノウ製の乳鉢により実行される。
【0085】
この第2の調製方法に従って得られた合成タルクナノ粒子と天然タルクとの間に存在する構造類似性も、X線回折分析方法及び赤外線吸収によって明瞭にされた。
【0086】
例えば、X線回折で、合成タルクナノ粒子と天然タルクとの間の区別は、特に面(001)に対応する回折ピークの位置に現れる。第2の調製方法により得られた合成タルクナノ粒子に関して、この回折ピークは、天然タルクでの9.35Åの代わりに、9.40Å〜9.68Åの距離にある。
【0087】
特には、第2の調製方法により得られた合成タルクナノ粒子は、次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に対応する、9.40〜9.68Åに位置するピーク、
−面(020)に対応する、4.50〜4.60Åに位置するピーク、
−面(003)に対応する、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に対応する、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図に至らせるX線回折分析により特徴付けられる。
【0088】
好適には、面(001)に対応する回折ピークは、約9.40〜9.43Åの距離に位置する。
【0089】
好適には、第2の調製方法は、500nm未満の、特に20nm〜100nmの粒度を有する合成タルクナノ粒子を得ることを可能にする。これらの合成タルクナノ粒子は、更にほぼ単峰性かつ単分散の粒度分布を有する。
【0090】
第2の変形形態において、本発明による複合材料は、合成フィロケイ酸ナノ粒子として:
−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプで、化学式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−の基本層の積層から形成される、少なくとも1つの非膨張鉱物相と、
−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプの基本層の積層及び連続した2つの基本層の間の少なくとも1つの層間空間から形成される、少なくとも1つの膨張鉱物相と、の間の相互層化から形成される、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子と呼ばれる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子であって、前記膨張鉱物相が、化学式−(SixGe1−x)4M3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−
[前記化学式中:
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、式Mgy(1)Coy(2Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
のような間隔[0;1]の実数を表し、
−xは、間隔[0;1]の実数であり、
−ε及びε’は、膨張相の基本層のカチオン欠損、及び層間空間中に存在するカチオンにそれぞれに関係する]を有し、
−回折図の獲得に至らせる前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−前記膨張鉱物相を表す、約14〜15Åの距離に位置する面(001)、
−前記非膨張鉱物相を表す面:
−約9.60〜10.50Åの距離に位置する、面(001)、
−4.50〜4.60Åに位置する、面(020)、
−3.10〜3.20Åに位置する、面(003)、
−1.50〜1.55Åに位置する、面(060)
を有する回折図が得られる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子を含む。
【0091】
非膨張鉱物相及び膨張鉱物相を表す化学式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−及び−(SixGe1−x)4M3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−中、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子、Si及びGeは、結晶格子の四面体部位を占めるケイ素イオン及び/又はゲルマニウムイオンを指す。Mは、八面体部位の二価金属カチオン(例えばMg2+、Co2+、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Fe2+、Ni2+及び/又はCr2+)を記号で表す。
【0092】
スメクタイトは、2/1粘土鉱物の最も多様化した群に対応する。その構造に鑑みて、それらは膨張(四面体−八面体−四面体)タイプと形容される。
【0093】
それらは実際、数が数単位から数十単位の値を取る、結晶構造の基本層の不規則な積層からなり、各基本層は、八面体層の両側に位置する2つの四面体相の会合からなる。
【0094】
スメクタイトの八面体層は、O2−及びOH−イオン(2:1のO2−/OH−モル比で)の2つの面から構成される。この中間層の両側に、頂点の1つが八面体層の酸素によって占められ、他方で3つの他の頂点がほぼ同一面上の酸素によって占められる、四面体の二次元格子が配置されるようになる。天然スメクタイトにおいて、四面体部位は、一般的にSi4+又はAl3+イオンによって占められ、かつ八面体部位は、たいていの場合Mg2+、Fe2+、Al3+及び/又はFe3+カチオンによって占められる。低い比率の八面体及び/又は四面体部位は、占められず、かつ基本層を形成する結晶格子のカチオン欠損の原因である。
【0095】
スメクタイトは、水及びカチオンを内包し、かつ鉱物の膨張相を形成する層間空間の、基本層間での存在によって同様に特徴付けられる。天然スメクタイトにおいて、これらの層間カチオンは、一般的にMg2+、Ca2+及び/又はNa+イオンである。
【0096】
この特殊な構造は、水、並びに層間空間に挿入されるグリセロール及びエチレングリコールのような多数の有機分子により層状錯体を容易に形成し得る特殊性をスメクタイトに与える。同様に、層間カチオンは、格子の残部に弱く結合され、かつ従って他のカチオンと多少、容易に交換される可能性がある。鉱物のカチオン交換能力を論じている。
【0097】
前述の膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、天然スメクタイトの構造及びカチオン交換能力を想起させる、構造及びカチオン交換能力を有するが、その調製の際に適用される特殊なパラメータに鑑みて、結晶化度及び膨張相/非膨張鉱物相−比のような構造特性が、予見可能及び/又は比較的良好に定義され得る鉱物ナノ粒子である。
【0098】
これらの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子よりも更に親水性であり、更により大きい、到達可能な表面を有し、以下に記載するような複合材料の形成の際に金属マトリックスの前駆物質の懸濁液中の分散、及び金属成長中に、この金属成長を妨げることなく金属細粒に対するナノ粒子の吸着を促進する。
【0099】
第3の調製方法
前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、液体状態で化学式(SixGe1−x)4M3O11,n’H2Oのケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理を実行し、前記熱水処理を、調製する前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子に望まれる構造特性に応じて選択された期間で、かつ150℃〜300℃の温度で実行し、前記熱水処理を約16バールの制御された圧力で、かつ撹拌下で実行し、所定の熱水処理の温度及び期間に関して、調製する膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子に望まれる体積比−膨張鉱物相/非膨張鉱物相−に応じて、処理するケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを主成分とする反応混合物を表す水/固体比を調整するように前記ケイ素/ゲルマニウム−ケイ素ゲルに水の補足的添加を実行することを特徴とする第3の調製方法により調製される。
【0100】
A.Decarreauらによる「synthese et stabilite des stevensites et talcs,magnesiens et nickeliferes,entre 80 et 240℃」、XP008075903の発表では、様々な鉱物、ステベンサイト、ケロライト及びタルクを得ることを可能にし、各鉱物の形成が温度によって厳格に決まる方法が記載されていることに注目されるべきである。この方法により得られた鉱物のいずれも、約14〜15オングストロームの距離に位置する、膨張鉱物相を表す面(001)に関する回折ピークを含む回折図を有さない。この文献では、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化組成物も、かかる組成物を得ることを可能にする方法も記載されていない。
【0101】
第3の調製方法において、直接、熱水処理にかける、出発ケイ素/ゲルマニウム金属生成物は、ゲル、すなわちゼラチン状粘稠度を有する高度に水和された物質の形状を呈する。このゲルは、チキソトロピー挙動を有し、簡単な機械的撹拌によって液化される。この第3の調製方法において、好適には、第1の調製方法を参照して以上に記載したように、共沈反応によって出発ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを調製する。
【0102】
第3の調製方法において、水の補足的添加は、固体留分(出発ゲル、最終生成物、場合により生じる中間生成物)のか焼を防止することも可能にする。この水添加の必要性、及びか焼を予防するために添加する最少の水の量は、本質的に初期ゲルの水和度、処理温度、及びこの処理の期間によって決まる。それにもかかわらず、熱水処理を行うために選択された水/固体比は、軽微でなく、最後に得られる膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の物理化学的、及び構造的性質の幾つかに影響を及ぼす。特に、この比率は、生成物の結晶化度及び比率−膨張鉱物相/非膨張鉱物相−に対して、かつ従って結局は、特に得られた生成物のカチオン交換能力、並びに種々の分子及び物質で充填されるその能力に対して著しく影響を及ぼす。
【0103】
1日から数日に及び得る熱水処理の期間は、特に最後に得られる合成鉱物の結晶化度に関して大きな影響を及ぼす。
【0104】
好適には第3の調製方法において、前記ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理をオートクレーブにより行う。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、チタン又はステンレス鋼製の内部被覆を有する鋼製オートクレーブを使用する。
【0105】
好適には、前記熱水処理を約220℃の温度で、約15日間実行する。実施変形形態によれば、前記熱水処理を約300℃の温度で、約5時間実行する。
【0106】
熱水処理を撹拌下で実行するために、例えばオートクレーブ内部に磁化格子を配置できる。
【0107】
この熱水処理の終了時に、前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を内包するコロイド溶液形状を呈する合成鉱物組成物を得る。水に溶解したこれらの鉱物合成ナノ粒子は、互いに多少個別化した状態にあってもよいか、互いに凝集した、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ素粒子から形成された多少粗い凝集体に組織される。
【0108】
好適には、熱水処理の結果、そのままで使用できるか、又は変形形態において個別化された膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を含む固体組成物を得るために、第1の調製方法を参照して以上に示したように、機械破砕ステップが後に続く乾燥ステップを受けさせることができる、コロイド組成物を回収する。
【0109】
第3の調製方法によって得られる組成物
この第3の調製方法によって得られ、かつ本発明による複合材料中で使用できる膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物の中で、鉱物ナノ粒子が:
−非膨張鉱物相を形成する式−Si4Mg3O10(OH)2−のタルク層積層、及び
−膨張鉱物相を形成する式−(Si4Mg3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−のステベンサイトタイプの層積層の間の相互層化を形成する、合成タルク−ステベンサイト相互層化組成物を特殊な例として挙げることができる。
【0110】
同様に、第3の調製方法は、タルク−ステベンサイト相互層化組成物とよく似た組成物、例えば四面体部位のカチオンSi4+の少なくとも一部がカチオンGe4+によって置換される、「ゲルマニウム含有(germaniferes)」と呼ばれる組成物の膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物を得ることを可能にする。同様に、例えば天然タルクの粒子に対して改良された物理的、特に光学及び/又は電気及び/又は磁気的性質で、粒子を得るために、八面体部位のカチオンMg2+が、可変比率で他の二価カチオンによって置換される時、「誘導」と呼ばれる又は「官能化」と呼ばれる組成物が問題であり得る。
【0111】
特にX線回折で実行される分析は、発明者らが、得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の鉱物学的相を特徴付けることを可能にし、かつ化学式−Si4Mg3O11,n’H2O−[すなわち、化学式−(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O−(式中、xは1に等しく、かつMはマグネシウムを指す)のケイ素/ゲルマニウム金属ゲル]のケイ素金属ゲルに対して直接適用される熱水処理が、タルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を含むコロイド組成物の獲得に至らせることを確認する。
【0112】
他方で、これらの分析は、調製された合成鉱物中の膨張相比率に対する、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを主成分とする反応混合物を表す水/固体比の影響を証明することを可能にした。所与の熱水処理の温度及び時間に関して、この比が増加するほど、膨張相に対応する部分が減少する。
【0113】
このように、好適には、本発明による複合材料の合成フィロケイ酸ナノ粒子は:
1)以上に定義したような合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子、特に以上に定義したような合成タルクナノ粒子、
2)以上に定義したような膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子から形成される群から選択される。
【0114】
本発明は、前記合成フィロケイ酸ナノ粒子が、以上に述べた第1の調製方法、第2の調製方法及び第3の調製方法から選択される調製方法によって得られることを特徴とする複合材料にも及ぶ。
【0115】
好適には、かつ本発明によれば、複合材料は、20%未満の(かつ0%を超える)合成フィロケイ酸ナノ粒子の体積比率を含む。
【0116】
本発明による材料において、合成フィロケイ酸ナノ粒子は、金属マトリックス中で、特には金属マトリックス細粒中に分配され、個別化され、分散される。
【0117】
好適には、かつ本発明によれば、金属マトリックスはFe、Co、Ni、Mn、Cr、Cu、W、Mo、Zn、Au、Ag、Pt、Snから選択される金属、前述の金属から選択される幾つかの金属の合金若しくは金属間化合物、又は半金属との1つ以上の前記金属の合金からなる。
【0118】
金属マトリックスは、単独の、又は金属間化合物、又は幾つかの金属の合金、又は半金属との合金の形状で前述の金属から選択された金属からなることができる。マトリックスがニッケル、他の金属とのニッケルの金属合金、又は半金属とのニッケルの合金(例えばNiP)である複合材料が、特に興味深い。
【0119】
本発明による複合材料からなるコーティングは、処理する基板上に電解により析出できる。
【0120】
本発明による複合材料からなるコーティングの基板上への析出方法は、コーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液を使用して、電解析出を行うことからなる。この方法は、前駆物質溶液が、合成フィロケイ酸ナノ粒子を更に含むことを特徴とする。
【0121】
このようにして、本発明は、層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料からなるコーティングの基板上への析出方法であって、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液を使用して電解析出を行うことからなることを特徴とする方法に及ぶ。
【0122】
実施態様において、析出方法は、コーティングする基板表面を、金属マトリックスの前駆物質、合成フィロケイ酸ナノ粒子、及びコーティングの金属マトリックスの前駆物質の酸化還元のための触媒として作用する化合物を含む溶液と接触させることによって、化学的方法により実施される。好適には、かつ本発明によれば、前記触媒は、基板に予め析出させる。
【0123】
もう1つの実施形態において、析出方法は、コーティングする前記基板が陰極を構成し、かつ電解質が合成フィロケイ酸ナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液である電気化学セル中で電気化学的方法により実施される。好適には、かつ本発明によれば、電気化学セルの陽極は、マトリックス又は不溶性陽極を形成する金属からなる。
【0124】
本発明による析出方法において、好適には、金属マトリックスの前駆物質は、錯体を形成される、又は形成されない、化学的方法又は電子の供給によって溶液中で還元できるイオン性化合物から選択される。例として、塩化物、硫酸塩、スルファミン酸塩などの塩、並びにクエン酸塩及び酢酸塩などの錯塩を挙げることができる。
【0125】
前駆物質溶液は、pHを所望の値に調整することを可能にする1つ以上の化合物、及び改質タルク粒子を更に含む。
【0126】
ニッケルマトリックスを含むコーティングを電気化学的方法で析出させる場合、電解質は、硫酸ニッケル及び塩化ニッケルから選択されるニッケルの少なくとも1つの塩、pH調節剤、及び支持電解質を含む溶液である。特に好ましいpH調節剤は、ホウ酸であり、pH4.5で、H+を放出してニッケルと錯塩を形成し、かつこのようにして陰極でH+イオンの還元を補う。支持電解質の例として、例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び臭化ナトリウムを挙げることができる。
【0127】
ニッケル−リンマトリックスを含むコーティングを電気化学的方法によって析出させる場合、硫酸及び塩化ニッケルから選択されるニッケルの少なくとも1つの塩、pH調節剤、リン前駆物質、及び支持電解質を含む電解質を使用できる。H3PO3が、好適には選択されるリン前駆物質である。pH調節剤は、H3PO4及びH3BO3から選択でき、H3PO4が特に好ましい。支持電解質の例として、例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び臭化ナトリウムを挙げることができる。
【0128】
亜鉛−ニッケルマトリックスを含むコーティングを電気化学的方法によって析出させる場合、硫酸及び塩化ニッケルから選択されるニッケルの少なくとも1つの塩、少なくとも1つの酸化亜鉛、又は塩化亜鉛のような亜鉛の塩、アミンタイプの錯化剤、及び例えばKClのような支持電解質を含む塩基性又は酸性電解質を使用できる。
【0129】
この方法は、電気化学析出の通常の条件において実施される。電解期間は、特にコーティングに望む厚さによって決まる。電気化学セル中の温度は、好適には、0℃〜90℃であり、かつセルに適用される電流密度は、0.1〜10A.dm−2である。好ましくは、陽極が、析出する金属からなる可溶性陽極タイプである電気化学セルを使用する。
【0130】
その上、本発明による析出方法において好適には、得られたコーティング中の合成フィロケイ酸ナノ粒子の体積比率が、20%未満である(かつ当然に0%を超える)ような合成フィロケイ酸ナノ粒子の比率を使用する。
【0131】
基板は、塊状態で、又は任意の担体上のコーティングの形状で使用される、本質的に導電性の材料(例えば金属又は合金)からなってもよい。基板は更に、処理する表面が予備金属化ステップによって導電性にされた、絶縁又は半導体材料(例えばポリマー又はセラミック)からなってもよい。
【0132】
複合コーティングの機械的性質は、(抑制体を構成する)スラグが1000Hvの硬度を有する鋼球100C6であるスラグ−ディスクタイプの摩擦計によってテストした。ニッケルのみからなるディスクを使用する場合、鋼に対するニッケルの接着は、鋼球の高い摩擦係数及び大きな摩耗率によって示される。使用されるディスクが、ニッケルマトリックス及び本発明による合成フィロケイ酸ナノ粒子を含む複合材料からなる場合、摩擦係数及び摩耗率は著しく減少する。
【0133】
本発明は、以上又は以下に述べる特徴の全部又は一部によって一緒に特徴付けられる、複合材料、基板、潤滑コーティング及び析出方法にも関する。
【0134】
本発明の特徴を示す他の目的、利点は、非限定的に与えられ、かつ添付図面を参照する以下に続く説明及び実施例を読めば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】先行技術に従った複合材料から形成されるコーティングを示す図である。
【図2】中赤外線において記録された、本発明による複合材料中に組み入れ得る3つの異なる合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物に対応する得3つの吸収スペクトルを示す。
【図3】3850cm−1〜3500cm−1の領域レベルでの、先のスペクトルの拡大に対応する。
【図4】図1の3つの組成物に対応する、近赤外線において記録された3つの吸収スペクトルの6000cm−1〜8000cm−1の領域を示す。
【図5】図2の3つの組成物に対応するX線回折図を示す。
【図6】合成フィロケイ酸ナノ粒子の第4の特殊な組成物に対応するX線回折図を示す。
【図7a】本発に従う複合材料中に組み入れ得る合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物の走査型電子顕微鏡検査法によって撮られた顕微鏡写真を表す。
【図7b】本発に従う複合材料中に組み入れ得る合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物の走査型電子顕微鏡検査法によって撮られた顕微鏡写真を表す。
【図7c】本発に従う複合材料中に組み入れ得る合成フィロケイ酸ナノ粒子組成物の走査型電子顕微鏡検査法によって撮られた顕微鏡写真を表す。
【図8】3つの特殊な組成物の合成フィロケイ酸ナノ粒子の、ナノメートルサイズ及びほぼ単峰性かつ単分散分布を示す、透過電子顕微鏡検査法で撮られた顕微鏡写真に対応する。
【図9】3つの特定の組成物の合成フィロケイ酸ナノ粒子の、ナノメートルサイズの、ほぼ単峰性かつ単分散分布を示す、透過電子顕微鏡検査法で撮られた顕微鏡写真に対応する。
【図10】熱水処理の際の、異なる水/固体比率を有する第3の調製方法により調製された膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の4つの組成物に対して実施したX線回折分析に対応する回折図を示す。
【図11a】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図11b】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先の別の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図11c】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先のまた別の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図11d】配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和し、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の先のまた別の組成物によって調製されたブレードに対して実施したX線回折分析に対応する。
【図12】中赤外線において記録された、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の3つの特定の組成物に対応する、3つの吸収スペクトルを示す。
【図13a】特定の領域のレベルで実行された図1のスペクトルの拡大に対応する。
【図13b】特定の領域のレベルで実行された図1のスペクトルの拡大に対応する。
【図14】近赤外線で記録された、本発明による膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物の無水熱処理による、合成タルクナノ粒子組成物への変換を示す吸収スペクトルに対応する。
【図15】図12、13a、13b及び14の対象である鉱物組成物のX線回折分析に対応する3つの回折図を示し、かつその観察を確認する。
【図16】第3の調製方法により得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の無水熱処理による変換後に得られた合成タルクナノ粒子の結晶組織を示す略図である。
【図17】第3の調製方法により得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶組織を示す略図である。
【図18】中赤外線において記録された、合成タルクナノ粒子の3つの特殊な鉱物組成物に対応する、3つの吸収スペクトルを示す。
【図19a】特定の領域のレベルでの図18のスペクトルの拡大に対応する。
【図19b】特定の領域のレベルでの図18のスペクトルの拡大に対応する。
【図20】近赤外線で記録された、合成タルクナノ粒子のこれら3つの鉱物組成物に対応する、3つの吸収スペクトルを示す。
【図21】合成タルクナノ粒子の3つの特定の他の鉱物組成物に対して行われたX線回折分析に対応する回折図を示す。
【図22】第2の調製方法により調製された合成タルクナノ粒子組成物と、同様にナノメートルサイズであるが、強力な機械破砕によって得られた天然タルク試料との間の比較回折図を示す。
【図23】本発明による複合材料から形成されるコーティングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0136】
図1は、細粒3から形成された金属マトリックス中に組み込まれた改質天然タルク粒子2を含むWO2004/063428に従った複合材料から形成されたコーティングを表し、この金属マトリックスは、基板4上に析出される。図に見られるように、粒子2は、基板4の表面にほぼ垂直な方向に沿って伸長し、かつこれら粒子2のサイズは、金属細粒3のサイズと同じ次元の大きさである。したがって、天然タルクの粒子2は、細粒間に挿入され、析出中に金属細粒の成長を妨げ、かつコーティングの自由表面で突き出して伸長し、析出ステップ後に、コーティングの高い粗度を引き起こす。更に、天然タルクの組み込みは、不純物のそれを誘発する。
【実施例1】
【0137】
第1の調製方法による合成ケイ素/ゲルマニウム金属(フィロケイ酸)ナノ粒子の調製
A/−合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の組成物の第1の調製方法の一般プロトコル
1/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、次の反応式:
による共沈によって調製される。
【0138】
この共沈反応は、化学量論量の天然タルク(3Mに対して4Si/Ge)を有する水和ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルを得ることを可能にする。反応は:
1.メタケイ酸ナトリウム五水和物水溶液若しくはメタゲルマン酸ナトリウム水溶液、又はモル比x:(1−x)でのこれら2つの溶液の混合物、
2.蒸留水中で希釈された(吸湿性結晶の形状での)1種又は複数の金属塩により調製された金属塩化物溶液、及び
3.塩酸溶液IN
から実施される。
【0139】
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製は、次のプロトコル:
1.塩酸溶液及び金属塩化物溶液を混合する、
2.この混合物をメタケイ酸及び/又はメタゲルマン酸ナトリウム溶液に添加すると、共沈ゲルが、即座に形成される、
3.遠心分離(少なくとも毎分30000〜7000回転、15分間)及び上清(形成された塩化ナトリウム溶液)の除去後にゲルを回収する、
4.蒸留水若しくは浸透水、又は水道水によってゲルを洗浄する(少なくとも2つの洗浄/遠心分離サイクルが必要である)、に従って実行される。
【0140】
この第1段階の結果、高度に水和され、かつゼラチン状粘稠度を有するケイ素/ゲルマニウム金属ゲル(SixGe1−x)4M3O11,n’H2O)が得られる。このゲルは、チキソトロピー挙動を有し、すなわち撹拌されるときに粘性状態から液体状態に移り、次に一定の休止時間後にその初期状態を取り戻す。
【0141】
2/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理
先に得られたようなケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、300℃〜500℃の温度で熱水処理を受けさせる。
【0142】
そのために:
1.反応器/オートクレーブ中に液化形状のゲルを置き、場合により液体/固体比を約0.83の値に調整し(液体量はcm3で、かつ固体量はグラムで表現される)、
2.反応器/オートクレーブは、(300℃〜500℃に定められた)反応温度で、処理期間中を通して乾燥炉内部に置かれる。
【0143】
発明者らは、熱水処理の温度が粒子の粒度によって決まることを確認できた。この温度が低いほど、合成粒子は小さい(300℃で約10ナノメートル、約500℃の温度に関して1μmまで)。
【0144】
同様に、発明者らは、処理期間が合成粒子の結晶化度及び熱安定性によって本質的に決まることに気付くことができた。熱水処理は、結晶化し、熱的に安定した初期ゼラチン状塊の固体材料への変換を可能にするために十分な期間であるべきである。
【0145】
熱水処理中、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、結晶化度が時間と共に増加する特殊な結晶構造を採用するために、そのゼラチン状粘稠度を次第に失う。物質のこの漸進的結晶化は、X線回折分析によって確認でき、かつ処理期間を通して細くなり、かつ強まる特徴的ピークの出現によって対応する回折図上に現れる。
【0146】
この熱水処理の結果、水中に懸濁した純粋な結晶質の、合成層状フィロケイ酸(ケイ素/ゲルマニウム金属)ナノ粒子を含む合成コロイド組成物を得る。この熱水処理の終了時に、直接得られたコロイド組成物を使用することができるか、又は変形形態では特に:
3.反応器の中身が濾過され、そこから固相を回収する、
4.固体組成物を60℃の乾燥炉で、1日間乾燥させる、
5.一旦乾燥すると、固体組成物は、メノウ製の乳鉢で破砕される、という後処理を実行できる。
【0147】
このようにして、色が、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製に使用される金属塩化物の性質(及び同様に、必要な場合、これら金属塩化物のそれぞれの比率)に応じて決まる分割固体組成物を最後に得る。
【0148】
B/−得られたナノ粒子の分析及び構造の特徴付け
先に説明したプロトコルに従って得られた様々な合成組成物の分析結果を以下に報告する。これらの結果は、第1の調製方法が、天然タルクの構造特性に非常に類似した構造特性(特に層状性及び結晶化度)を有する合成層状鉱物(フィロケイ酸)ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の実際の形成を可能にすることを確認するのみではない。結果は、特に実施する温度及び期間の選択によって、第1の調製方法が、規定の予見可能な結晶特性及びサイズを有し、したがって、特に、潤滑コーティングを形成できる本発明による複合材料の組成物中に組み入ることに適し得る安定して純粋な合成層状フィロケイ酸(ケイ素/ゲルマニウム金属)鉱物ナノ粒子を極めて簡単に合成することを可能にすることも示す。
【0149】
分析は、特にX線回折及び電子顕微鏡観測による透過赤外線分光法によって実行された。収集されたデータは、添付の図2から図8に示し、かつ以下に注釈を付す。
【0150】
1/−赤外線分析
赤外線で、参考として、天然タルクの特徴を示す振動帯が、以下の通りであることが知られている(4cm−1の分解能による):
−3678cm−1:結合Mg3−OHの振動、
−1018cm−1:結合Si−O−Siの振動、
−669cm−1:結合Mg−O−Siの振動、
−7185cm−1:結合Mg3−OHの振動、
【0151】
図2〜図4は、次の3つの合成組成物:
−第1の調製方法(八面体カチオンとしてMg2+)により、3日間、300℃の熱水処理によって調製された、式Si4Mg3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物(図では、この組成物は、PS Mg 300℃で表示される)、
−第1の調製方法(八面体カチオンとしてNi2+)により、3日間、300℃の熱水処理によって調製された、式Si4Ni3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物(図では、この組成物は、PS Ni 300℃で表示される)、
−第1の調製方法(八面体カチオンとして等モル比率でのCo2Ni2+)により、3日間、300℃の熱水処理によって調製された、式Si4(Co0.5Ni0.5)3O10(OH)2の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物(図では、この組成物は、PS Co Ni 300℃で表示される)、に対して、中赤外線及び近赤外線でそれぞれ実行された分析結果を示す。
【0152】
赤外線スペクトルの取得は、4000〜400cm−1の範囲に対する分光計Nicolet 510−FTIRによって実行された。
【0153】
中赤外線において得られたスペクトル(図1及び図2)は、合成組成物−PS Mg 300℃−が、天然タルクに構造的に非常に類似した鉱物組成物であることを示す。特に、このことは、結合Mg3−OH(3678cm−1)、Si−O−Si(1018cm−1)、及びMg−O−Si(669cm−1)の振動を表すピークの存在によって現れる。
【0154】
近赤外線中で拡散反射で行われる測定から得られ、かつ図4が8000cm−1〜6000cm−1のその領域の拡大を示す結果は、7185cm−1で特に強烈なピークの存在を確認することも可能にする。7185cm−1に位置するこのピークは、天然タルクの4つの参照ピークの一部もなす。
【0155】
この参照ピークの近傍に位置する7265cm−1のピークは、合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の軽い水和を反映する。
同様に例で与えられる他の2つの合成組成物(PS Ni 300℃/PS Co Ni 300℃)に関して、赤外線でのその吸収スペクトルは、天然タルクの4つの参照ピークのすぐ近傍にあるか又は重なる、4つのピークの存在を手始めに、合成組成物PS Mg 300℃と多数の類似性を有する。
【0156】
赤外線スペクトルのこの類似性は、第1の調製方法により得られた合成組成物の合成層状(ケイ素/ゲルマニウム金属)フィロケイ酸鉱物ナノ粒子と、天然タルクとの間に存在する大きな構造類似性を示す。幾つかのピークに関して観察できる、(例えば7300cm−1〜7000cm−1の領域のレベルでの)差異となり得るものは、本質的に、結晶格子の八面体カチオン間のサイズの差から生じる。
【0157】
2/−X線回折分析
X線回折で、天然タルクは、4つの特徴的回折ピーク:
−面(001)に関して、9.35Åの距離に位置するピーク、
−面(020)に関して、4.55Åに位置するピーク、
−面(003)に関して、3.14Åに位置するピーク、
−面(060)に関して、1.52Åに位置するピーク、を有することが知られている。
【0158】
X線回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)に登録された。
【0159】
測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0160】
図5は、先に言及したものと同じ3つの組成物:
−PS Mg 300℃で表示されるSi4Mg3O10(OH)2、
−PS Ni 300℃で表示されるSi4Ni3O10(OH)2、
−PS Co Ni 300℃で表示されるSi4(Co0.5Ni0.5)3O10(OH)2、に対して実行された分析の結果を示す。
【0161】
同様に、図6は、第1の調製方法に従って調製された式Ge4Fe3O10(OH)2のナノ粒子組成物のX線回折図を示す。
【0162】
これらの分析は、赤外線分光法で観察されたことを確認する。以上に示したような、得られた合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子と、天然タルク粒子との間には、大きな構造類似性が存在する。
【0163】
特に、面(020)、(003)及び(060)に対応する回折ピークは、天然タルクに関する参照回折ピークと完全に一致する位置を有する。
【0164】
面(001)の回折ピークの位置のみが、参照ピークの位置と僅かに異なる(9.35Åの代わりに9.57〜9.64Å)。この値の偏差は:
−天然タルクのサイズに反して、合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のナノメートル粒度サイズ、
−合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の非常に僅かな残留水和、及び
−場合により結晶格子の八面体カチオンの性質、によって本質的に説明される。
【0165】
しかしながら、残留水和から生じる偏差が、より長い反応時間、及びより高度な乾燥によって減少することに注目せねばならない。
【0166】
最後に、面(001)、(020)、(003)及び(060)のピークの途中の高さでの幅は、合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の良好な結晶化度を表している。
【0167】
その上、得られた合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子は、親水性であることにより天然タルクと異なり、このことは、ナノ粒子を水と単に接触させることにより、視覚的に確認される。
【0168】
ナノ粒子Ge4Fe3O10(OH)2(図6)を表すX線回折図に関して、面(003)に対応する回折ピークの高い強度は、酸化ゲルマニウムによる汚染に一部起因することに注目すべきである。
【0169】
3/−合成層状ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の粒度の顕微鏡観察及び評価:
このようにして得られた合成組成物を構成し得る粉末が極めて微細であることを考慮して、それらを構成する合成層状(フィロケイ酸)ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子の粒度分布及びサイズは、走査及び電界効果電子顕微鏡検査法、並びに透過電子顕微鏡検査法の観察によって評価された。図7a、図7b、図7c、図8及び図9に示した顕微鏡写真は、これらの観察の幾つかの際に撮られた。
【0170】
図7a、図7b及び図7cは、式Si4Mg3O10(OH)2の3日間の300℃の熱水処理によって調製された、合成タルクナノ粒子と形容できる、合成(フィロケイ酸)ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子組成物の観察に関係する。
【0171】
図8は、式Si4Ni3O10(OH)2の3日間の300℃の熱水処理によって調製された、合成ケイ素金属ナノ粒子組成物の観察に関係する。
【0172】
ナノ粒子が、完全に層状で、純粋であり、かつナノ素粒子の粒度が、20nm〜100nmの値を取ることが確認される。
【0173】
図7a及び図8の写真は、ナノ粒子の密度が高いために、ナノ粒子が互いに凝集していると見間違える概観を呈している。実際は、ナノ素粒子は、個性化された状態にある。場合により幾らかの残留湿度が、これらのナノ粒子間の幾らかの凝集力の可能性を説明し得るであろう。
【0174】
図9は、30日間の400℃の熱水処理後に得られた式Si4Mg3O10(OH)2の合成ケイ素金属ナノ粒子組成物の観察に関係する。
【0175】
対応する顕微鏡写真の観察は、合成層状(ケイ素/ゲルマニウム金属)フィロケイ酸ナノ粒子が、マイクロメートルの次元の平均寸法を有することを示す。
【実施例2】
【0176】
第3の調製方法による膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の調製、次にこれらの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子からの合成タルクナノ粒子の調製。
A/−第3の調製方法による膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化組成物合成の一般プロトコル
1/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製
ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、実施例1で以上に述べたような共沈によって調製される。
【0177】
2/−ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの熱水処理
先に得られたようなケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、150℃〜300℃の温度で熱水処理を受けさせる。
【0178】
そのために:
1.(40mlの)反応器中に液化形状のゲルを置き、特に固体留分のか焼を防止するために、場合により水/固体比を調整し、反応器のあらゆる漏出の問題を回避するために、反応器はその容積の2/3を充填し、
2.反応器は、(150℃〜300℃に定められた)反応温度で、処理期間を通して乾燥炉内部に置かれる。
【0179】
熱水処理中、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルは、結晶化度が時間と共に増加する特定の固体組成物になるために、その初期粘稠度を次第に失う。物質のこの漸進的結晶化は、X線回折分析によって確認でき、かつ処理中を通して細くなり、かつ強まる特徴的ピークの出現によって対応する回折図上に現れる。
【0180】
この熱水処理の結果、水中に溶解した膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子を含むコロイド組成物を得る。この熱水処理の終了時に、直接得られたコロイド組成物を使用することができるか、又は変形形態では次の後処理:
3.反応器の中身を濾過し、そこから固体濾過物質を回収する、
4.濾過物質を乾燥炉で60℃、1日間乾燥させる、
5.乾燥したら、濾過物質をメノウ製の乳鉢で破砕する
を実行できる。
【0181】
このようにして、色が、ケイ素/ゲルマニウム金属ゲルの調製に使用される金属塩化物の性質(及び同様に、必要な場合、これら金属塩化物のそれぞれの比率)に応じて決まる、分割固体組成物を最後に得る。
【0182】
例えば、次のタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子:
−Si4Mg3O10(OH)2/Si4Mg3−εO10(OH)2,(Mg2+)ε’・nH2Oは、白色であり、
−Si4Ni3O10(OH)2/Si4Ni3−εO10(OH)2,(Ni2+)ε’・nH2Oは、緑色であり、
−Si4Co3O10(OH)2/Si4Co3−εO10(OH)2,(Co2+)ε’・nH2Oは、バラ色であり、
−Si4Cu3O10(OH)2/Si4Cu3−εO10(OH)2,(Cu2+)ε’・nH2Oは、青色であり、
−Si4Mn3O10(OH)2/Si4Mn3−εO10(OH)2,(Mn2+)ε’・nH2Oは、チョコレート色であり、
−Si4Fe3O10(OH)2/Si4Fe3−εO10(OH)2,(Fe2+)ε’・nH2Oは、灰色から赤茶色であり、
−Si4Zn3O10(OH)2/Si4Zn3−εO10(OH)2,(Zn2+)ε’・nH2Oは、白色である。
【0183】
B/−分析及び構造の特徴付け
先に説明したプロトコルに従って得られた膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の様々な組成物が、特にX線回折で分析された。
【0184】
収集した結果は、以下に示し、かつ注釈を付す。結果は、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の4つの特殊な組成物に関する。この場合、220℃、16バールで、かつ21日間、熱水処理によって調製されたタルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の組成物が問題である。
【0185】
これら4つの組成物は、ケイ素金属ゲル−Si4Mg3O11,n’H2O−の熱水処理の際に使用された水/固体比率によって互いに区別される。
【0186】
これらの組成物は、使用された水/固体比率を参照して、R100、R50、R25及びR10と指定される(水量はリットルで、かつ固体量はkgで表現される)。
【0187】
特に、これらの比率は、次の混合物:
−組成物R100:300mgの固体(ゲルの固体留分)に対して30mlの水、
−組成物R50:400mgの固体に対して20mlの水、
−組成物R25:800mgの固体に対して20mlの水、
−組成物R10:1000mgの固体に対して10mlの水
によって得られた。
【0188】
1/−X線回折分析
図1は、先の4つの組成物により得られたX線回折で実行された分析の結果を示す。
【0189】
回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)に登録された。測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0190】
得られたX線回折図は、面(020)、(003)及び(060)において位置が天然タルクの特徴を示す回折ピークのそれに非常に近い回折ピークを有する:
−面(020)に関して、4.52〜4.55Åの距離に位置するピーク(天然タルクに関して4.55Å)、
−面(003)に関して、3.14〜3.18Åに位置するピーク(天然タルクに関して3.12Å)、
−面(060)に関して、1.52〜1.53Åに位置するピーク(天然タルクに関して1.53Å)。
【0191】
面(001)に関して、対応する回折ピークの位置は、9.71Å〜10.32Åの値を取る距離に位置する。この距離は、天然タルクの面(001)を表す9.35Åと著しく異なる。
【0192】
面(001)に対応するこのピークの差異、及び約14〜15Å、特に14.6Åの距離で突き出たピークの存在は、膨張鉱物相を形成する他の鉱物相、ステベンサイトとの非膨張タルク鉱物相の相互層化を反映する。
【0193】
一方で、鉱物粒子中でステベンサイトの相対量が多いほど、面(001)の回折ピークが小さい回折角に向かって移動する点が確認により確かめられた。他方でX線回折分析は、タルク−ステベンサイトタイプの相互層化の存在を確認するために、配向され、エチレングリコール及びカルシウムで飽和したブレードに対して同様に実行された。
【0194】
配向されたブレードは、次のプロトコル:
1.1.25mlのエッペンドルフ中に、15mgの試料を置き、1NCaCl2溶液を添加する。混合物を約30秒間渦状に撹拌し、次に約1時間、静止状態に置く、
2.混合物を、15分間、7000回転/分で遠心分離にかけ、次に上清を除去し、
3.残渣を、1NCaCl2溶液中で再度懸濁し、混合物を、約30秒間渦状に撹拌し、次に約12時間、静止させておく、
4.混合物を、15分間、7000回転/分で遠心分離し、次に上清を除去する、
5.残渣を、浸透水で洗浄する:浸透水の添加後、混合物を、渦状に撹拌し、10秒間、超音波をかけ、次に上清を除去するために、15分間、7000回転/分で遠心分離する前に、約1時間、静止させておき、この洗浄を、5回繰り返す、
6.洗浄後、カルシウムで飽和した生成物に対応する残渣を、浸透水に戻し、混合物を、30秒間渦状に撹拌し、10秒間、超音波をかける、
7.このように調製した溶液を、ピペットを用いて取り出し、かつそれをガラスブレード上に付着させる、
8.ブレードが乾燥したら、その上でエチレングリコールを粉砕し、5分間作用させておき、このブレードは、カルシウム及びエチレングリコールで今度は飽和され、かつ分析の準備が整っている
により調製された。
【0195】
図11a〜図11dは、得られたX線回折図を示す。以下の表1は、そのデータを要約する。
【0196】
回折ピークの面積が大きいほど、このピークにより表される鉱物相が、試料中に大量にある。
【0197】
図11a〜図11dで目印を付けたピーク1、2及び3は、それぞれステベンサイト成分、相互層化を表す成分、及びタルク成分に対応する。これら3つの成分は、タルク−ステベンサイト相互層を形成する。
【0198】
表1
【0199】
同様に、図10に示すX線回折図を参照して、非膨張鉱物相に対する面(001)、(020)、(003)及び(060)に対応するピークの途中の高さでの幅の測定は、結晶化度の変動に対する水/固体比の効果を評価することを可能にする。所与の熱水処理温度及び期間に関して、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶化度は、水/固体比により増加する。
【0200】
c/−タルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物の、合成タルクナノ粒子組成物への熱変換の一般プロトコル
前記のように、第3の調製方法により調製された膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物は、乾燥及び破砕後に、無水熱処理を受けさせる。そのために、組成物は、白金の坩堝中に置かれ、次に加熱される。セラミック又は他のあらゆる適した材料の坩堝も使用できる。反応は、5バール未満の低圧で−特に大気圧で−実行される。
【0201】
1/−分析及び特徴付け
膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶及び層状構造、並びに得られた合成タルクナノ粒子の結晶及び層状構造は、赤外線分光法により、かつX線回折で特徴付けられた。収集されたデータの幾つかのみが図12、図13a、図13b、図14及び図15に示され、かつ以下に注釈を付す。
【0202】
a)赤外線分析
図12は:
−次の特殊な条件:熱水処理が220℃で24時間、0.83の蒸留水/ゲル比により(166cm3の水に対して200gの粉末組成物)実行される、において、先に説明した第3の調製方法の熱水処理の一般プロトコルに従って調製したタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃−5h)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)から、かつ5時間の、500℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 500℃−5h)、に対して透過中赤外線で実行された分析の結果を示す。
赤外線スペクトルの取得は、4000〜400cm−1の範囲に対する分光計NICOLET 510−FTIRによって実行された。
【0203】
その上、図13a及び13bは、振動帯が3678cm−1、1018cm−1、及び669cm−1に局地化される、領域の拡大を示す。
【0204】
測定は、7185cm−1で突き出たMg3−OH結合の振動を視覚化するために、近赤外線中で拡散反射で同様に行われた。図14は、6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大を示す。
【0205】
6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大(図12)は、7185cm−1での参照ピークの近傍に、7265cm−1でのピークを出現させる。この結合の存在は、得られたナノ粒子の僅かな水和を表す。水分子はまた、タルク構造に対応する層間に挿入される。
【0206】
これらの結果は、無水熱処理が、タルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物を、合成タルクナノ粒子組成物に変換することを実際に可能にすることを示す。この変換は、細かさが、本質的に鉱物の結晶化度を反映する、タルクの特徴を示す4つの振動帯の存在によって特に現れる。これら4つの帯の細かさ、及び従って鉱物の結晶化度は、無水熱処理中、かつ処理期間によって次第に増加する。
【0207】
それにもかかわらず、約300℃の温度のみで実行される無水熱処理では、天然タルクと類似した水和度の獲得に、長時間がかかる。
【0208】
反対に、約500℃の温度での無水熱処理では、処理された鉱物組成物は、比較的短時間で(約5時間の処理から)天然タルクに極めて匹敵する結晶化度及び水和率を取得する。
【0209】
2/−X線回折分析
図15は:
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物(I.t.s.)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃)、
−先のタルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子組成物から、かつ5時間の、550℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 550℃)、に対して実行された分析の結果を示す。
【0210】
図15に示したX線回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)によって実行された。測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0211】
これらの分析は、赤外線分光法で観察されたことを確認する。
【0212】
タルクの特徴を示すピークは、550℃でも300℃でも無水熱処理により強まり、かつこの強度は、処理期間により増加する。
【0213】
5時間のみの550℃の無水熱処理後、タルクの特徴を示す回折ピークは、細くなる。特に、面(001)の回折ピークは、9.64Åの位置から9.50Åに移動し、天然タルクの特徴を示す9.35Åの値に非常に接近する。この値の偏差は、タルクの構造に対応する層間に挿入された水分子の存在のために(001)の格子間距離を増加させる合成タルクナノ粒子の僅かな残留水和及び/又は非常に小さなナノ粒子のサイズ(ナノメートルサイズ)を反映し得る。しかしながら、この水和が、より長い無水熱処理の期間により次第に目立たなくなることに注目すべきである。
【0214】
面(001)、(020)、(003)及び(060)のピークの途中の高さでの幅の測定は、結晶化度の変動を示し、かつ300℃を超える処理温度に関して、合成時間が増加するほど、合成タルクナノ粒子の結晶化度が改良されることを確認する(途中の高さでの幅は、処理時間により減少する)。
【0215】
図15に示したX線回折図は、塩化ナトリウム(NaCl)の特徴を示す回折ピークの存在も出現させる。これらのピークの存在は、熱水処理に先立つケイ素金属ゲルの不十分な洗浄及びすすぎを表す。この場合に、3つの分析される組成物は、ケイ素金属ゲルの1回の洗浄サイクルのみにより調製された。
【0216】
D/−得られた合成ナノ粒子の理論構造
結晶構造を概略的に示す図16及び図17を参照すると、合成タルクナノ粒子及び得られたタルク−ステベンサイトタイプの膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子は、重なった基本層1に顕微鏡的組織を有する。各層1は、二価金属カチオン、この場合にMg2+によって占められる八面体層4から構成された結晶構造を有する。
【0217】
これらの八面体層の各々は、2つの四面体相3の間に挿入される。
【0218】
合成タルクナノ粒子に対して、タルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶構造は、基本層1の幾つかの八面体部位のレベルで金属カチオンでの間隙5の存在によって特徴付けられる。これらのカチオン間隙は、特にX線回折図に関して観察される低い結晶化度を説明する。
【0219】
合成タルクナノ粒子に対して、タルク−ステベンサイト膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の結晶構造は、基本層1の不規則な積層、並びに水分子及び水和カチオンが浸透するレベルである層間空間2の存在によって同様に特徴付けられる。層間空間2中に浸透したこれらのカチオンは、間隙5による充填の損失を、鉱物相レベルのカチオンで補うことを可能にする。このようにして結晶構築物は、比較的中性の状態に留まる。
【0220】
層間カチオンは、格子の残部に弱く結合され、かつそのために他のカチオンと交換される可能性がある。同様に層間空間2は、多少拡張可能である。これらの層間空間2内部に、種々の物質が導入できる。
【0221】
タルク−ステベンサイトタイプの合成膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子の無水熱処理のテストは、この合成鉱物の合成タルクナノ粒子への変換に至らせた。特に、層1の結晶化度の改良を表す面(001)、(020)、(003)及び(060)のレベルで特徴的X線回折ピークが徐々に細くなることが観察される。徐々に、間隙5は、層間空間2のカチオンによって埋められる。かつ付随して、層間空間は、薄くなり(12Åから約9.4〜9.6Åの値に移る)、面(001)において、特徴的回折ピークは、距離9.35Åに接近する。
【実施例3】
【0222】
第2の調製方法による合成タルクナノ粒子の調製
A/−合成タルクナノ粒子組成物の合成プロトコル
合成タルクナノ粒子は、ケロライト組成物の無水熱処理からなる第2の調製方法により調製される。この無水熱処理は、5バール未満の低圧で(例えば大気圧で)、かつ300℃を超える温度で実行される。
【0223】
この無水熱処理は、ケロライトから、完全に結晶化され、熱的に安定した合成タルクナノ粒子への変換を可能にする。これらの合成タルクナノ粒子の粒度は、出発ケロライトの特性、及びこのケロライトの調製方法に応じて決定及び調整できる。
【0224】
1/−ケイ素金属ゲルの調製
ケイ素金属ゲルは、次式:
による共沈反応によって調製される。
【0225】
この共沈反応は、タルクの化学量(3Mgに対して4Si)を有する水和ケイ素金属ゲルを得ることを可能にする。反応は:
1.250cm−3の蒸留水中に0.1モルのメタケイ酸ナトリウムを希釈して調製したメタケイ酸ナトリウム五水和物水溶液、
2.50cm−3の蒸留水中に(吸湿結晶の形状での)0.075モルの塩化マグネシウムを希釈して調製した塩化マグネシウム溶液、及び
3.50cm−3の1N塩酸
から実施される。
【0226】
ケイ素金属ゲルの調製は、次のプロトコル:
1.塩酸及び塩化マグネシウム溶液を混合する、
2.この混合物をメタケイ酸ナトリウム溶液に添加すると、共沈ゲルが即座に形成される、
3.遠心分離(15分間、毎分7000回転)及び上清(形成された塩化ナトリウム溶液)の除去後にゲルを回収する、
4.水、例えば蒸留水、浸透水、又は単に水道水によってゲルを洗浄する(少なくとも2つの洗浄/遠心分離サイクル)、によって実行される。
【0227】
この第1段階の結果、白色の、かつ高度に水和された、ケイ素金属ゲルSi4Mg3O11,n’H2O、を得る。その粘稠度は、ゼラチン状である。
【0228】
2/−ケロライト組成物を得るためのケイ素金属ゲルの処理
ケロライト組成物を得るためにこのケイ素金属ゲルに熱水処理を受けさせる前に、ゼラチン質のケイ素金属ゲルは、乾燥炉で60℃、2日間、乾燥される。比較的長いこの乾燥時間は、遠心分離後に収集されるゲルの高い水和によって説明される。
【0229】
得られたケイ素金属凝集体は、均質な粉末を得るまで、メノウ製の乳鉢によって破砕される。
【0230】
この粉末ケイ素金属組成物は、ケロライト組成物を得るために、次に熱水処理を受けさせる。そのために:
1.粉末ケイ素金属組成物を、蒸留水と共に、0.83の液体/固体比率で反応器(オートクレーブ)中に置く(例えば166cm3の水に対して200gの粉末組成物)、
2.約220℃の温度で、かつ1日以上の処理期間で乾燥炉中に反応器を置く、
3.この熱水処理の終了時に、反応媒体の固体物質は、濾過され、次に乾燥される。
【0231】
合成ケロライト組成物に対応する白色の分割固体組成物を最後に得る。
【0232】
3/−ケロライト組成物の無水熱処理
予め調製されたケロライト組成物は、次に無水熱処理を受けさせる。そのために、組成物は、白金の坩堝中に置かれ、次に加熱される。セラミック又は処理温度に適した他のあらゆる材料の坩堝も使用できる。前記組成物の加熱は、大気圧で実行される。
【0233】
B/−得られたナノ粒子の分析及び構造の特徴付け
ケロライトナノ粒子及び得られた合成タルクナノ粒子の結晶及び層状構造は、透過及び拡散反射赤外線分光法、及びX線回折によって特徴付けされた。収集されたデータは、図18、図19a、図19b、図20、図21及び図22に示され、かつ以下に注釈を付す。
【0234】
1/−赤外線分析
図18は:
−先に記載した方法により調製されたケロライト組成物(Ker.)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃−5h)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、550℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 550℃−5h)、に対して中赤外線で実行された分析の結果を示す。
【0235】
赤外線スペクトルの取得は、4000〜400cm−1の範囲に対する分光計Nicolet 510−FTIRによって実行された。
【0236】
その上、図19a及び19bは、振動帯が3678cm−1、1018cm−1、及び669cm−1に局地化される、領域の拡大を示す。
【0237】
測定は、7185cm−1で突き出たMg3−OH結合の振動を視覚化するために、近赤外線中で拡散反射で同様に行われた。図20は、6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大を示す。
【0238】
これらの結果は、無水熱処理が、合成ケロライト組成物の合成タルクナノ粒子組成物への変形を可能にし得ることを示す。この変形は、細かさが、本質的に鉱物の結晶化度を反映する、タルク構造の特徴を示す4つの振動帯の出現によって特に現れる。
【0239】
発明者らは、これら4つの帯の細かさ、及び従って処理される鉱物の結晶化度が、無水熱処理中に、かつこの処理の期間により徐々に増加することを同様に確認した。
【0240】
それにもかかわらず、6000cm−1〜8000cm−1の領域の拡大(図20)が、7185cm−1での参照ピークの近傍に、7265cm−1でのピークを出現させることに注目すべきである。この結合の存在は、得られた生成物の僅かな水和を表す。水分子は、タルク構造に対応する層間に挿入される。
【0241】
先の分析は、特に300℃又は500℃での無水熱処理が、ケロライト組成物を、合成タルクナノ粒子組成物に変形できるようにすることを確認する。それにもかかわらず、約300℃の温度のみで実行される無水熱処理では、天然タルクと類似した水和度の獲得に、長時間がかかる。
【0242】
反対に、約500℃の温度での無水熱処理では、処理された鉱物組成物は、比較的短時間で(約5時間の処理から)天然タルクに極めて匹敵する結晶化度及び水和率を取得する。
【0243】
2/−X線回折分析
図21は:
−先に記載した共沈方法により調製された合成ケロライト組成物(Ker.)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、300℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第1の組成物(Ts 300℃)、
−先のケロライト組成物から、かつ5時間の、550℃の無水熱処理によって得られた合成タルクナノ粒子の第2の組成物(Ts 550℃)、に対して実行された分析の結果を示す。
【0244】
図21に示した回折図は、装置XPERT−MPD(PanAnalytical)で実行された。
【0245】
測定ピッチ2θは、0.01°であり、蓄積時間は、2秒/ピッチである。加速電圧は、40kVであり、強度は55mAである。構造的等距離を与えるブラッグの関係は:dhkl=0.7703/sinθである。
【0246】
これらの分析は、赤外線分光法で観察されたことを確認する。
【0247】
タルク構造の特徴を示すピークは、550℃でも300℃でも無水熱処理により強まり、かつこの強度は、処理期間により増加する。
【0248】
5時間のみの550℃の無水熱処理後、タルク構造の特徴を示す回折ピークは、細くなる。特に、面(001)に対応する回折ピークは、9.64Åの部位から9.50Åに移動し、天然タルクの特徴を示す9.35Åの値に非常に接近する。この値の偏差は、合成タルクナノ粒子の非常に僅かな残留水和及び/又は非常に小さなナノ粒子のサイズ(ナノメートルサイズ)を反映する。しかしながら、無水熱処理の期間が増加する時、水和が次第に目立たなくなることに注目すべきである。
【0249】
面(001)、(020)、(003)及び(060)のピークの途中の高さでの幅の測定は、結晶化度の変動を示し、かつ300℃を超える処理温度に関して、合成時間が増加するほど、ナノ粒子の結晶化度が改良されることを確認する(途中の高さでの幅は、処理時間により減少する)。
【0250】
図21に示した回折図は、塩化ナトリウム(NaCl)の特徴を示す回折ピークの存在も出現させる。これらのピークの存在は、熱水処理に先立つケイ素金属ゲルの不十分な洗浄及びすすぎを表す。この場合に、3つの分析される組成物は、ケイ素金属ゲルの1回の洗浄サイクルのみにより調製された。
【0251】
図22は、比較のために、ナノメートルサイズの20〜100nmの合成タルクナノ粒子(Talc synth.)試料、及び約70〜120nmの粒度を有する粒子を得るまで機械的に破砕された、先行技術に従った天然タルク(Talc nat.)試料のX線回折図を示す。
【0252】
天然タルクと、合成タルクナノ粒子の間の第1の差は、面(001)及び(003)に対応する回折ピークの位置に現れる:
−面(001)に関して:天然タルクに関する9.36Åの代わりに、合成タルクナノ粒子に関して9.43Å、
−面(003)に関して:天然タルクに関する3.12Åの代わりに、合成タルクナノ粒子に関して3.16Å。
【0253】
ナノメートルの天然タルク(Talc nat.)は、遙かに低い、これらの回折ピークの強度により、合成タルクナノ粒子(Talc synth.)から同様に区別される。
【0254】
その上、ナノメートルサイズの合成タルクナノ粒子に対して、天然ナノメートルタルクは、(同じ調製及び同一の計算時間に関して)途中の高さでの幅がより大きな、回折ピークを示す。このデータは、合成タルクナノ粒子に関するより良好な結晶化度を表す。ナノメートルサイズのタルクを得るための天然タルクの強度の破砕は、生成物の著しいアモルファス化を引き起こす。
【0255】
C/−本発明により得られた合成ケロライト粒子の理論構造
合成タルクナノ粒子及び合成ケロライトナノ粒子は、数が、数単位から数十単位の値を取る、図16及び図17に表したものに類似する、重なった基本層で顕微鏡的組織を有する。
【0256】
合成タルクナノ粒子でも、合成ケロライトナノ粒子でも、基本層の結晶構造は、八面体層の両側に位置する2つの四面体層の会合からなる。
【0257】
八面体層は、2つのO2−及びOH−イオン面から(2:1のO2−/OH−モル比率で)形成される。この中間層の両側に、頂点の1つが、四面体層及び八面体層に共通の酸素によって占められ、他方で3つの他の頂点が、四面体層に属するほぼ同一面上の酸素によって占められる、四面体の三次元格子が配置されるようになる。
【0258】
四面体空洞は、Si4+イオンによって占められ、かつ八面体空洞は、Mg2+カチオンによって占められる。
【0259】
合成タルクナノ粒子とは異なり、合成ケロライトナノ粒子の結晶格子は、間隙を有し、少ない割合の八面体部位は、占められない。その結果、カチオン欠損が生じる。このカチオン欠損は、大部分が層間空間を占める、補償カチオンと呼ばれるカチオンの存在によって埋められる。高度に水和されたこれらの層間空間は、純粋なタルクに対してケロライトの結晶構造の特有の特性を同様に形成する。
【0260】
これらの間隙は、特にX線回折図に関して観察される低い結晶化度を説明する。
【0261】
合成ケロライト組成物の無水熱処理のテストは、これらの組成物の合成タルクナノ粒子組成物への変換を示した。特に、層の結晶化度の改良を表す面(001)、(020)、(003)及び(060)のレベルで特徴的X線回折ピークが徐々に細くなることが観察される。徐々に、間隙は、層間空間のカチオンによって埋められる。かつ付随して、層間空間は、薄くなり(12Åから約9.4〜9.6Åの値に移る)、面(001)において、特徴的回折ピークは、天然タルクの特徴を示す距離9.35Åに接近する。
【実施例4】
【0262】
ニッケルを主成分とする複合コーティング
実施例1〜3で得られた合成ナノ粒子は、親水性の合成層状フィロケイ酸ナノ粒子であり、これらのナノ粒子が内部に分散した金属マトリックスを含む電解析出による潤滑複合コーティングを製作するために使用できる。
【0263】
実施例4において、コーティングは、4cm2のニッケル陽極、及び析出が行われる1.762cm2の銅陰極からなる電気化学セル中で調製された。
【0264】
電気化学セルは、4.5のpH及び次の組成物:
−NiSO4,6H2O:280g.l−1
−NiCl2,6H2O:30g.l−1
−H3BO3 :45g.l−1
−Na2SO4 :50g.l−1
−350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子、を有する電解質を含む。
【0265】
析出は、電解質を55℃の温度に維持し、2.5A.dm2の電流密度で、1時間30分の間行われる。
【0266】
得られたコーティングの構造を、図23に概略的に示す。確認されるように、コーティングを形成する複合材料は、合成タルクナノ粒子6が組み込まれた金属細粒5を含む。金属細粒の平均寸法よりも遙かに小さいサイズの、これらのナノ粒子は、コーティングの表面状態を改質せず、かつ金属析出の実行を少しも妨げない。
【0267】
WO2004/063428による天然タルクでの先行技術に従うコーティングの調製方法において、タルク粒子の疎水面上の水素蓄積により安定した大量の泡の出現が確認されることに注目すべきである。反対に、本発明によるコーティングの調製方法において、いかなる泡の出現も確認されない。
【実施例5】
【0268】
NiPを主成分とする複合コーティング
実施例4に使用されたものと同様の電気化学セル中に、次の組成物:
・NiSO4,6H2O 210g.l−1
・NiCl2,6H2O 60g.l−1
・H3PO4 45g.l−1
・H3PO3 0〜15g.l−1
・Na2SO4 50g.l−1
・350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子、を有する、pH=2の電解質を導入した。
【0269】
析出は、電解質を80℃の温度に維持し、45分間行った。
【0270】
電流密度を変動させて、幾つもの試料が、このようにして調製された。以下の表は、適用された電流密度に応じて(得られる析出の厚さに直接関連する)確認された析出速度を示す。
表2
【実施例6】
【0271】
ZnNi/合成タルクナノ粒子を主成分とする複合コーティング
実施例4に使用されたものと同様の電気化学セル中に、次の組成物:
・ZnCl2 93.7g.l−1
・NiCl2,6H2O 9.3g.l−1
・KCl 200g.l−1
・350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子を有する、pH=2の電解質を導入した。
【0272】
析出は、電解質を55℃の温度に維持し、5A.dm−2の電流密度で、12分間行われた。
【0273】
実施例4の電気化学析出の代わりに、化学タイプの電解析出によって、本発明による複合コーティングを製作できる。
【実施例7】
【0274】
化学的方法による複合コーティング、NiP/合成タルクナノ粒子(無電解)
コーティングは、1ミクロンのニッケル層で予め被覆された、1.8cm2の鋼基板を含むセル中で調製された。セルは、4.5のpH及び次の組成物:
・NiSO4,6H2O 280g.l−1
・NiCl2,6H2O 30g.l−1
・NaH2PO2 1〜30g.l−1
・350℃での熱水処理及び550℃でのその後の熱処理を有する、第2の調製方法による、実施例3に記載されたように調製された約100nmの平均寸法の50g.l−1の合成タルクナノ粒子を有する電解質を含む。
【実施例8】
【0275】
Ni−Coを主成分とする複合コーティング:
この実施例において、コーティングは、実施例4で使用されたものと同様の電気化学セル中に、次の組成物:
・Co(CH3CO2),nH2O 10g.l−1
・Ni(CH3CO2),nH2O 100g.l−1
・NiCl2 40g.l−1
・H3BO3 40g.l−1
を有する電解質によって調製された。
【0276】
ニッケル−コバルトマトリックスの複合コーティングは、実施例1に記載されたような、第1の調製方法により調製された合成タルクナノ粒子から作製された。
【0277】
2つの方法が研究された:一方で合成タルクナノ粒子は、熱水反応器の出口で乾燥され、次に破砕され、かつ電解質中で懸濁され、他方で反応器から直接出た合成タルクナノ粒子は、(乾燥も破砕もなしに)合成水中で分散させる。後者の方法は、一方で方法の2つのステップを削除でき、かつナノメートル粉末を扱うことを回避できるようにする。その上、その懸濁安定性(低い沈殿速度)は、乾燥した粉末の安定性よりも遙かに高い。熱水反応器出口でのこれらの粉末の分散状態は、したがって、乾燥、破砕された合成タルクナノ粒子粉末の場合よりも遙かに満足できる。
【0278】
乾燥有り又は無しで、熱水処理の条件は、以下の通りであった:300℃、90.105Pa、6時間又は15日間。
【0279】
電解質中に分散したナノ粒子の存在が、電気化学析出の微細構造を細くすること及びその改質を生じさせることが示された。乾燥ステップ無しに反応器から直接出され、次に電解質中に分散させる、合成タルクナノ粒子を含む懸濁液から実行した析出は、乾燥、破砕された合成タルクナノ粒子粉末の場合よりも2.5倍高い粒子濃度に関して、より滑らかなコーティング及び興味深いトライボロジー的性質を得ることを可能にし、TEM顕微鏡(x40000)ではっきりと見える、細粒間に分散した合成タルクナノ粒子を組み込む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料であって、前記層状フィロケイ酸鉱物粒子が、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属粒子であることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子は、
1)式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−(式中:
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、式Mgy(1)Coy(2)Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
のような間隔[0;1]の実数であり、
−xは、間隔[0;1]の実数である)の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子と呼ばれるナノ粒子であって、
−前記鉱物合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に関して、約9.40〜9.68Åの距離に位置するピーク、
−面(020)に関して、4.50〜4.75Åに位置するピーク、
−面(003)に関して、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に関して、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図が得られる、ナノ粒子、
2)−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプで、化学式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−の基本層の積層から形成される、少なくとも1つの非膨張鉱物相と、
−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプの基本層の積層及び連続した2つの基本層間の少なくとも1つの層間空間から形成される、少なくとも1つの膨張鉱物相と
の間の相互層化から形成される、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子と呼ばれる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子であって、前記膨張鉱物相が、化学式−(SixGe1−x)4M3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−
[前記化学式中:
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、式Mgy(1)Coy(2Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
のような間隔[0;1]の実数を表し、
−xは、間隔[0;1]の実数であり、
−ε及びε’は、膨張相の基本層のカチオン欠損、及び層間空間中に存在するカチオンにそれぞれに関係する]を有し、
−前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−前記膨張鉱物相を表す、約14〜15Åの距離に位置する、面(001)、
−前記非膨張鉱物相を表す面:
−約9.60〜10.50Åの距離に位置する、面(001)、
−4.50〜4.60Åに位置する、面(020)、
−3.10〜3.20Åに位置する、面(003)、
−1.50〜1.55Åに位置する、面(060)
を有する回折図が得られる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子
から形成される群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が、約9.55〜9.65Åの距離に位置する面(001)に対応する回折ピークを有することを特徴とする、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が、式Si4Mg3O10(OH)2のナノ粒子から形成される群から選択され、かつ前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のX線回折分析により次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に対応する、9.40〜9.68Åに位置するピーク、
−面(020)に対応する、4.50〜4.60Åに位置するピーク、
−面(003)に対応する、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に対応する、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図が得られることを特徴とすることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記鉱物合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が、約9.40〜9.43Åの距離に位置する面(001)に対応する回折ピークを有することを特徴とする、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子が、単峰性分散かつ単分散の粒度を有することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子が、500nm未満、特に20nm〜100nmの平均寸法を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子を、前記金属マトリックス中に分配し、個別化し、分散させることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記金属マトリックスが、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Cu、W、Mo、Zn、Au、Ag、Pt、Snから選択される金属、前記金属から選択される複数の金属の合金若しくは金属間化合物、又は半金属との1つ又は複数の前記金属の合金からなることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
前記金属マトリックスが、ニッケル、他の金属とのニッケルの金属合金、又は半金属とのニッケルの合金からなることを特徴とする、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
20%未満の体積比率の合成フィロケイ酸ナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
潤滑コーティングを担持する基板であって、前記コーティングが、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の複合材料からなることを特徴とする、基板。
【請求項13】
本質的に導電性の材料からなることを特徴とする請求項12に記載の基板。
【請求項14】
処理する表面が予備金属化ステップによって導電性にされている絶縁又は半導体材料からなることを特徴とする請求項12に記載の基板。
【請求項15】
層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料からなるコーティングの基板上への析出方法であって、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属のナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液を使用して電解析出を行うことからなることを特徴とする方法。
【請求項16】
コーティングする基板表面を、金属マトリックスの前駆物質、合成フィロケイ酸ナノ粒子、及びコーティングの金属マトリックスの前駆物質の酸化還元のための触媒として作用する化合物を含む溶液と接触させることによって、化学的方法により実施されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コーティングする前記基板が陰極を構成し、電解質が合成フィロケイ酸ナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液である、電気化学セル中で電気化学的方法により実施されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電気化学セルの陽極が、マトリックス又は不溶性陽極を形成する金属からなることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属マトリックスの前駆物質が、錯体形成する又は形成しない、化学的方法又は電子供給によって溶液中で還元できるイオン性化合物から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
得られたコーティング中の合成フィロケイ酸ナノ粒子の体積比率が20%未満であるような合成フィロケイ酸ナノ粒子の比率を使用することを特徴とする、請求項15ないし19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料であって、前記層状フィロケイ酸鉱物粒子が、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属粒子であることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子は、
1)式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−(式中:
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、式Mgy(1)Coy(2)Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
のような間隔[0;1]の実数であり、
−xは、間隔[0;1]の実数である)の合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子と呼ばれるナノ粒子であって、
−前記鉱物合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に関して、約9.40〜9.68Åの距離に位置するピーク、
−面(020)に関して、4.50〜4.75Åに位置するピーク、
−面(003)に関して、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に関して、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図が得られる、ナノ粒子、
2)−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプで、化学式−(SixGe1−x)4M3O10(OH)2−の基本層の積層から形成される、少なくとも1つの非膨張鉱物相と、
−2/1フィロゲルマニウムケイ酸タイプの基本層の積層及び連続した2つの基本層間の少なくとも1つの層間空間から形成される、少なくとも1つの膨張鉱物相と
の間の相互層化から形成される、膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子と呼ばれる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子であって、前記膨張鉱物相が、化学式−(SixGe1−x)4M3−εO10(OH)2,(M2+)ε’・nH2O−
[前記化学式中:
−Mは、少なくとも1つの二価金属を指し、式Mgy(1)Coy(2Zny(3)Cuy(4)Mny(5)Fey(6)Niy(7)Cry(8)を有し、各y(i)は、
のような間隔[0;1]の実数を表し、
−xは、間隔[0;1]の実数であり、
−ε及びε’は、膨張相の基本層のカチオン欠損、及び層間空間中に存在するカチオンにそれぞれに関係する]を有し、
−前記膨張T.O.T.−T.O.T.相互層化ナノ粒子のX線回折分析により、次の特徴的回折ピーク:
−前記膨張鉱物相を表す、約14〜15Åの距離に位置する、面(001)、
−前記非膨張鉱物相を表す面:
−約9.60〜10.50Åの距離に位置する、面(001)、
−4.50〜4.60Åに位置する、面(020)、
−3.10〜3.20Åに位置する、面(003)、
−1.50〜1.55Åに位置する、面(060)
を有する回折図が得られる、合成層状フィロケイ酸鉱物ナノ粒子
から形成される群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が、約9.55〜9.65Åの距離に位置する面(001)に対応する回折ピークを有することを特徴とする、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が、式Si4Mg3O10(OH)2のナノ粒子から形成される群から選択され、かつ前記合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子のX線回折分析により次の特徴的回折ピーク:
−面(001)に対応する、9.40〜9.68Åに位置するピーク、
−面(020)に対応する、4.50〜4.60Åに位置するピーク、
−面(003)に対応する、3.10〜3.20Åに位置するピーク、
−面(060)に対応する、1.50〜1.55Åに位置するピーク
を有する回折図が得られることを特徴とすることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記鉱物合成ケイ素/ゲルマニウム金属ナノ粒子が、約9.40〜9.43Åの距離に位置する面(001)に対応する回折ピークを有することを特徴とする、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子が、単峰性分散かつ単分散の粒度を有することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子が、500nm未満、特に20nm〜100nmの平均寸法を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記合成フィロケイ酸ナノ粒子を、前記金属マトリックス中に分配し、個別化し、分散させることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記金属マトリックスが、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Cu、W、Mo、Zn、Au、Ag、Pt、Snから選択される金属、前記金属から選択される複数の金属の合金若しくは金属間化合物、又は半金属との1つ又は複数の前記金属の合金からなることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
前記金属マトリックスが、ニッケル、他の金属とのニッケルの金属合金、又は半金属とのニッケルの合金からなることを特徴とする、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
20%未満の体積比率の合成フィロケイ酸ナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
潤滑コーティングを担持する基板であって、前記コーティングが、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の複合材料からなることを特徴とする、基板。
【請求項13】
本質的に導電性の材料からなることを特徴とする請求項12に記載の基板。
【請求項14】
処理する表面が予備金属化ステップによって導電性にされている絶縁又は半導体材料からなることを特徴とする請求項12に記載の基板。
【請求項15】
層状フィロケイ酸鉱物粒子が分配された金属マトリックスを含む複合材料からなるコーティングの基板上への析出方法であって、合成フィロケイ酸ナノ粒子と呼ばれる、10nm〜1μmの平均寸法を有する親水性の合成層状鉱物ケイ素/ゲルマニウム金属のナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液を使用して電解析出を行うことからなることを特徴とする方法。
【請求項16】
コーティングする基板表面を、金属マトリックスの前駆物質、合成フィロケイ酸ナノ粒子、及びコーティングの金属マトリックスの前駆物質の酸化還元のための触媒として作用する化合物を含む溶液と接触させることによって、化学的方法により実施されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コーティングする前記基板が陰極を構成し、電解質が合成フィロケイ酸ナノ粒子を更に含むコーティングの金属マトリックスの前駆物質溶液である、電気化学セル中で電気化学的方法により実施されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電気化学セルの陽極が、マトリックス又は不溶性陽極を形成する金属からなることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属マトリックスの前駆物質が、錯体形成する又は形成しない、化学的方法又は電子供給によって溶液中で還元できるイオン性化合物から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
得られたコーティング中の合成フィロケイ酸ナノ粒子の体積比率が20%未満であるような合成フィロケイ酸ナノ粒子の比率を使用することを特徴とする、請求項15ないし19のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19a】
【図19b】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19a】
【図19b】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2011−510164(P2011−510164A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538867(P2010−538867)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/052351
【国際公開番号】WO2009/081046
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(509017457)
【出願人】(506002731)ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PAUL SABATIER TOULOUSE III
【出願人】(509016944)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.) (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/052351
【国際公開番号】WO2009/081046
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(509017457)
【出願人】(506002731)ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PAUL SABATIER TOULOUSE III
【出願人】(509016944)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.) (5)
【Fターム(参考)】
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