説明

合成樹脂成形品とその射出成形方法

【課題】 本発明は、成形品の表面を、均一な光沢および外観とすることにより、良好な外観体裁を確実に得ることを目的とする。
【解決手段】 肉厚板状に射出成形された本体部2の裏面に凹部3を設け、この凹部3に近接した本体部2の周端面箇所にサイドゲート方式のゲート痕を位置させ、本体部2の表面を斑のない均一な光沢および外観を有するものとすることにより、ジェティングやウエルドの影響の無い、高い装飾効果を安定して発揮する成形品1の良好な外観体裁を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂により肉厚板状に成形された本体部を有する成形品と、その射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示用のサンプル製品の収納容器の蓋体や、コンパクト容器の蓋体の装飾体等のように、外観体裁が重要視される成形品として、肉厚板状に射出成形されたものが利用されている。この成形品は、射出のゲート痕が、成形品の外観体裁を損なうことがないように、このゲート痕が目立たない、もしくは隠される箇所に位置させることができるように、成形品の成形空間であるキャビティに対してゲートを、サイドゲート方式で形成している。
【0003】
このように、外観体裁が重要視される射出成形品にあっては、その肉厚板状に成形された本体部はサイドゲート方式で射出成形されるのが一般的であるが、このサイドゲート方式で本体部を射出成形する際に、キャビティ内に最初に射出される溶融樹脂の飛び散りにより、不良成形であるジェッティングが発生し、このジェッティングによる線模様が成形品表面に現出して、成形品の外観体裁を劣化させると云う不都合を生じている。
【0004】
この不都合を解消する従来技術として、特開平11−192644号公報(特許文献1)に開示された技術は、サイドゲート方式のゲートに対向させて、キャビティ内に、ゲートから射出される溶融樹脂が衝突する突起を設け、ゲートから勢い良くキャビティに射出された溶融樹脂を、この突起に衝突させるようにしたものである。
【0005】
この特許文献1に示された従来技術にあっては、ゲートからキャビティ内に射出された溶融樹脂を突起に衝突させ、この衝突により射出溶融樹脂の勢いを低下させて飛び散りの発生を阻止し、もってジェッティングの発生を防止し、溶融樹脂のキャビティ内への射出充填が、ゲートに近い箇所から順に達成されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−192644号公報
【0007】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、キャビティ内に勢い良く射出された溶融樹脂の突起に対する衝突により、確かにジェッティングの発生を防止することができるのであるが、突起に衝突して突起の手前に溜まった状態となった溶融樹脂が、この突起を越えてキャビティに充填流動する際に、溶融樹脂は分流して突起を越えることになるので、突起を越えて合流する際に、合流痕であるウエルドが突起の下流側に発生し、このウエルドが成形品の外観体裁を著しく害する、と云う問題があった。
【0008】
特に、成形品を光透過性の高い合成樹脂で成形した場合、ジェッティングおよびウエルドが傷として視覚される状態となるだけではなく、このジェッティングおよびウエルドが、成形品を透過する光に対して歪みを与えることになり、外観体裁に不快な歪みを生じることになる。
【0009】
また、特許文献1に示された従来技術により、光透過性の高い合成樹脂で成形された成形品1(以下、図8参照)の本体部2を偏光式歪検査装置で観察すると、本体部2の全域に歪発生部分13が発生している。これは、キャビティ内に射出充填される溶融樹脂が、ゲートから射出された後、突起を越えて順次キャビティに流動充填される途中で、突起を越える際にその流線が乱される状態となり、この流線の乱れがそのまま歪発生部分13を生じさせていると思われる。
【0010】
この歪発生部分13は、成形品1を透過する光線に歪みを生じさせ、これが光透過性の高い合成樹脂が発揮する光学的装飾効果を劣化させることになり、また経時変化や、熱変化さらには圧力変化等の外部からの物理的な力の作用変化により、変形や光透過性の劣化等が生じ、このため例えば本体部2の表面の光沢や外観に斑が発生し、外観体裁が劣化する、と云う問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべき創案されたもので、成形品の表面を、均一な光沢および外観とすることを技術的課題とし、もって良好な外観体裁を確実に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術的課題を解決するための本発明の第1の主たる構成は、
合成樹脂により肉厚板状に射出成形された本体部の裏面側の周端部に、少なくとも一つの凹部を設けること、
この凹部に近接した本体部の周端面箇所にサイドゲート方式のゲート痕を位置させること、
本体部の表面を、斑のない均一な光沢および外観を有するものとしたこと、
にある。
【0013】
この本発明の第1の主たる構成にあっては、本体部の表面の光沢および外観が均一であるので、均一でないことにより斑を生じることがなく、これにより色の濃淡の斑とか、表面の光沢の斑などによる、外観体裁の劣化を生じることがない。
【0014】
本発明の別の構成は、上記した第1の主たる構成において、本体部を成形する合成樹脂を、光透過性の高いものとした、ものである。
【0015】
光透過性の高い合成樹脂により本体部を成形するものにあっては、本体部の内部に、この本体部の表面に光沢および外観の斑を生じさせる歪発生部分の生成が少ないので、この歪発生部分による透過光線の不都合な歪程度が小さくなり、これにより成形品が発揮する光学的な装飾効果を劣化させることが少ない。
【0016】
本発明の第2の主たる構成は、
合成樹脂により肉厚板状の本体部を成形し、この本体部の周端部に凹部を設けた成形品の射出成形方法であること、
成形品の本体部の成形空間であるキャビティの周端部に、凹部成形用の成形ピンを厚さ方向に進退自在に組付けると共に、キャビティ内の成形ピンに間近に対向するゲートをサイドゲート方式で設けること、
ゲートからキャビティ内に射出された溶融樹脂が、成形ピンに衝突してその勢いが低減するタイミングに合せて、成形ピンをキャビティ内から後退させること、
キャビティ内に溶融樹脂が満たされる直前に、成形ピンをキャビティ内に前進させること、
にある。
【0017】
この本発明の第2の主たる構成にあっては、成形品の本体部の射出成形の当初では、ゲートからキャビティ内に射出された溶融樹脂は、キャビティ内に飛散することなく、キャビティ内に前進位置している成形ピンに衝突して塊状となる。この塊状となった溶融樹脂には、後続して射出される溶融樹脂が飛散することなく合流する。
【0018】
それゆえ、最初にキャビティに射出された溶融樹脂が成形ピンに衝突して、その勢いが低減して塊状となったタイミングで、成形ピンをキャビティ内から後退させても、キャビティに引き続き射出される溶融樹脂は、この塊状の溶融樹脂に飛散することなく合流する。
【0019】
この、溶融樹脂のキャビティ内における充填方向への流動は、成形ピンが既にキャビティ内から後退退避しているので、分流して合流するものとならず、これによりウエルドの発生がなく、またこの成形ピンによる流動に対する邪魔のない状態で達成される。
【0020】
キャビティ内に対する溶融樹脂の充填が進み、キャビティ内に溶融樹脂が満たされる直前、すなわちキャビティ内に溶融樹脂がまだ充填されていないわずかな空所が存在するタイミングで、成形ピンをキャビティ内に前進復帰させることにより凹部を成形する。
【0021】
この際、成形ピンの前進によりキャビティ内の溶融樹脂の一部が押し退けられることになるが、キャビティ内には、まだわずかな空所が存在する状態であるので、押し退けられた溶融樹脂の増大変化分は、この空所により吸収されることになり、成形ピンの前進による凹部の成形には、何ら支障を生じることはない。
【0022】
本発明の別の構成は、上記した第2の主たる構成において、成形ピンの後退タイミングを、成形品を成形する溶融樹脂の5重量%が射出された時点の付近とし、成形ピンの前進タイミングを、成形品を成形する溶融樹脂の95重量%が射出された時点の付近とした、ものである。
【0023】
成形ピンの後退タイミングを、溶融樹脂の5重量%が射出された時点の付近とし、成形ピンの前進タイミングを、溶融樹脂の95重量%が射出された時点の付近としたものにあっては、成形ピンの後退タイミングを、溶融樹脂の5重量%が射出された時点の付近とすることにより、キャビティ内のゲートと成形ピンの間に形成される塊状の溶融樹脂部分を、後続して射出される溶融樹脂が、飛散することなく安定して合流することのできる大きさとすることができ、また成形ピンの前進タイミングを、溶融樹脂の95重量%が射出された時点の付近とすることにより、成形ピンによる凹部の成形を安定的に可能とすると共に、前進した成形ピンによる溶融樹脂の流線の乱れの発生を、極力小さくすることができる。
【0024】
また、本発明の別の構成は、上記した第2の主たる構成において、光透過性の高い合成樹脂により成形品を成形した、ものである。
【0025】
光透過性の高い合成樹脂により成形品を成形するものにあっては、溶融樹脂のキャビティ内への充填流動の流線の乱れが小さいので、生成される歪発生部分を充分に少なくすることができ、これにより透過光線に対して歪を与えることが少なく、もって光透過性の高い合成樹脂が発揮する、クリスタル効果等の光学的作用による優れた装飾効果を得ることができる。
【0026】
また、本発明の別の構成は、上記した第2の主たる構成において、硬質な合成樹脂により成形品を成形した、ものである。
【0027】
硬質な合成樹脂により成形品を成形したものにあっては、表面の平滑性および光沢性に優れた成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の第1の主たる構成にあっては、成形品の表面に色の濃淡の斑とか、表面の光沢の斑などによる、外観体裁の劣化を生じることがなく、これにより外観体裁の良い製品を確実に得ることができる。
【0029】
第1の主たる構成において、光透過性の高い合成樹脂により本体部を成形するものにあっては、成形品が発揮する光学的な装飾効果を劣化させることが少ないので、高い光透過性が発揮するクリスタル効果等の優れた光学的な装飾効果を有効に発揮することができる
【0030】
本発明の第2の主たる構成にあっては、成形品の肉厚板状に成形された本体部に、ジェッティングおよびウエルドの発生を確実に防止することができるので、ジェッティングおよびウエルドによる不良成形の発生を確実に阻止することができ、外観体裁の優れた成形品を得ることができる。
【0031】
また、成形操作は、タイミングを見計らった成形ピンの進退制御であるので、その実施が容易であると共に簡単であり、既存の金型装置を利用して簡単に実施することが可能である。
【0032】
さらに、溶融樹脂のキャビティ内への充填は、成形ピン等の邪魔するもののない状態で達成されるので、歪発生部分の発生が少なく、これにより成形時の良好で優れた外観体裁を安定して維持することができる。
【0033】
第2の主たる構成において、成形ピンの後退タイミングを、溶融樹脂の5重量%が射出された時点の付近とし、成形ピンの前進タイミングを、溶融樹脂の95重量%が射出された時点の付近としたものにあっては、成形ピンの後退タイミングを、溶融樹脂の5重量%が射出された時点の付近とすることにより、キャビティ内のゲートと成形ピンの間に形成される塊状の溶融樹脂部分を、後続して射出される溶融樹脂が、飛散することなく安定して合流することのできる大きさとすることができるので、安定した成形動作を得ることができ、また成形ピンの前進タイミングを、溶融樹脂の95重量%が射出された時点の付近とすることにより、成形ピンによる凹部の成形を安定的に可能とすると共に、前進した成形ピンによる溶融樹脂の流線の乱れの発生を、極力小さくすることができるので、凹部を良好に成形できると共に、成形ピンの前進による歪発生部分の生成を充分に抑制することができる。
【0034】
第2の主たる構成において、光透過性の高い合成樹脂により成形品を成形するものにあっては、クリスタル効果等の光学的作用による優れた装飾効果を得ることができるので、立体感および深みのある光学的な装飾効果を得ることができる。
【0035】
第2の主たる構成において、硬質な合成樹脂により成形品を成形したものにあっては、表面の平滑性および光沢性に優れた成形品を得ることができるので、高級感に富んだ成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による成形品の一構造例を示す、一部破断した斜視図である。
【図2】図1の構造例の成形当初の状態を示す、縦断図示した説明図である。
【図3】図2中、A−A線に沿って切断矢視した、説明図である。
【図4】成形完了直前の状態を示す、縦断図示した説明図である。
【図5】図4中、B−B線に沿って切断矢視した、説明図である。
【図6】成形が完了した状態を示す、縦断図示した説明図である。
【図7】本発明により成形された成形品の偏光歪検査結果の写真を、図面化した説明図である。
【図8】従来技術により成形された成形品の偏光歪検査結果の写真を、図面化した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態例の成形品1の一構造例を示すもので、成形品1は、光透過性の高い硬質な合成樹脂により射出成形されたもので、その本体部2は肉厚板状となっていて、その裏面の周端部の一部に凹部3が形成されている。
【0038】
凹部3に近接した成形品1の周端面箇所にはサイドゲート方式のゲート痕が位置するように、すなわち図2に示すように、金型装置8の固定金型9と移動金型10を型合せすることにより形成される、本体部2の成形空間であるキャビティ12の周端部箇所に凹部3成形用の成形ピン11を配置し、この成形ピン11の間近で、かつ成形ピン11に対向するように、ランナー6とゲート5を有するサイドゲート方式のゲート5を開口形成している。
【0039】
成形ピン11は、ゲート5からキャビティ12内に射出された溶融樹脂7が飛散することなく衝突するように移動金型10側に配置されているが、必要に応じてキャビティ12内に対して進退移動可能に組付けられている。すなわち、成形ピン11は、キャビティ12内に射出された溶融樹脂7が衝突する位置と、キャビティ12内に射出された溶融樹脂7の流動に影響を与えない位置との間で移動可能となっているのである。
【0040】
金型装置8を型締めし、成形ピン11をキャビティ12内に前進させた状態で、ゲート5から溶融樹脂7をキャビティ12内に射出すると、射出された溶融樹脂7は飛散することなく成形ピン11に衝突して、その勢いが低下して塊状となる(図2参照)が、この射出された溶融樹脂7が成形ピン11に衝突するタイミングに合せて成形ピン11をキャビティ12内から後退(図2の下向き矢印参照)させる。
【0041】
この成形ピン11のキャビティ12内からの後退移動のタイミングは、上記したように、最初に射出された溶融樹脂7が成形ピン11に衝突して塊状となるタイミングであって、図3に示すように、成形ピン11とゲート5との間に塊状の溶融樹脂7が位置しているタイミングであり、このように成形ピン11とゲート5との間に塊状の溶融樹脂7が位置していることにより、後続して射出される溶融樹脂7が、飛散することなく塊状の溶融樹脂7にその勢いを吸収されながら合流する。
【0042】
この成形ピン11のキャビティ12内からの後退移動のタイミングとしては、成形品1を成形するのに要する樹脂材料の5重量パーセントを、キャビティ12内に射出したタイミングが好ましく、このタイミングで成形ピン11を後退させることにより、射出された溶融樹脂7は、成形ピン11を越える前に確実に塊状となり、後続する溶融樹脂7の適正な合流動作を得ることができる。
【0043】
成形ピン11がキャビティ12内から後退した状態(図4参照)で、溶融樹脂7のキャビティ12内への射出は継続されるので、キャビティ12内では溶融樹脂7のキャビティ12に対する充填流動動作が継続される。この溶融樹脂7の充填流動動作は、成形ピン11がキャビティ12内から後退した状態で行われるので、溶融樹脂7は成形ピン11に邪魔されることなく充填流動することができ、このため乱れの少ない流線を保ちながらキャビティ12内に充填される。
【0044】
キャビティ12に対する溶融樹脂7の充填動作が進んで、溶融樹脂7がキャビティ12に満たされる直前に、成形ピン11を前進(図4の上向き矢印参照)させて凹部3を成形する。この成形ピン11のキャビティ12内への前進により、キャビティ12内の溶融樹脂7の一部が強引に押し退けられることになるが、このタイミングでは、キャビティ12内にわずかな空所が残っている(図5参照)ので、押し退けられた溶融樹脂7に相当する樹脂部分が、この空所に速やかに吸収される。
【0045】
この成形ピン11のキャビティ12内への前進移動のタイミングとしては、成形品1を成形するのに要する樹脂材料の95重量パーセントを、キャビティ12内に射出したタイミングが好ましく、このタイミングで成形ピン11を前進させることにより、キャビティ12内には確実にわずかな空所を残すことができ、成形ピン11の支障のない前進動作を得ることができる。
【0046】
成形ピン11のキャビティ12内への前進移動が完了しても、溶融樹脂7のキャビティ12内への射出は、キャビティ12内に溶融樹脂7が満たされる(図6参照)まで継続され、満たされた時点で成形品1の射出成形が完了する。この場合、成形ピン11がキャビティ12内に前進した後は、キャビティ12内に射出される溶融樹脂7の量はきわめて少なく、それゆえキャビティ12内に射出された溶融樹脂7の流線が成形ピン11により乱されることは殆どない。
【0047】
前記したように、本体部2の大部分は、キャビティ12内から成形ピン11が後退した状態で成形されるので、キャビティ12内に充填される溶融樹脂7が成形ピン11を乗り越える動作が発生せず、このためウエルドの発生は皆無となる。同様に、本体部2の大部分は、成形ピン11により充填流線を乱されることなく成形されるので、歪発生部分13が殆ど成形されることがない。
【0048】
それゆえ、成形品1を偏光式歪検査装置で観察すると、図7に示すように、図8に示した従来例に比べて歪発生部分13が殆ど発生しておらず、これにより成形品1の表面は、斑のない均一な光沢と外観を現出することになり、また成形品1は、透過光線に歪の少ない優れた光学的装飾効果を現出することになる。
【0049】
成形ピン11のキャビティ12に対する進退移動は、例えば専用のエアシリンダーを設け、このエアシリンダーの駆動制御により達成することが可能であるが、成形ピン11としてエジェクターピンを利用し、エジェクターピンの動作を利用して行うことも可能である。
【0050】
なお、図示構造例の成形品1に成形された凹部3は、成形品1を他の構造物に軸体を介して組付けるための組付け機能部を形成する部分であるので、この凹部3の開口縁部分の機械的強度を補強するために、凹部3の開口縁部には、補強用の補強肉厚部4が球弧状に膨出成形されているが、凹部3は組付け機能部を形成するものに限定されることはなく、例えば成形品1の裏面に成形された凹凸模様の一部で構成してもよい。
【0051】
また、成形品1を成形する合成樹脂は、光透過性の高い合成樹脂に特定されることはなく、光透過性の低いまたは無い合成樹脂を使用することもでき、同様に硬質合成樹脂以外の合成樹脂を使用することも可能である。高い光透過性を有すると共に、適当な硬度を確保できる樹脂としては、AS樹脂を挙げることができるが、もちろんこれに限定されることはなく、他の適当な樹脂を選択することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明は、ジェッティング発生防止のためにキャビティ内に設けた成形ピンの、キャビティ内に射出充填されて充填流動する溶融樹脂に対する悪影響を、殆ど皆無とすることができるので、外観体裁を重要視する射出成形品に対する幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0053】
1 ;成形品
2 ;本体部
3 ;凹部
4 ;補強肉厚部
5 ;ゲート
6 ;ランナー
7 ;溶融樹脂
8 ;金型装置
9 ;固定金型
10;移動金型
11;成形ピン
12;キャビティ
13;歪発生部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂により肉厚板状に射出成形された本体部(2)の裏面側の周端部に、少なくとも一つの凹部(3)を設け、該凹部(3)に近接した本体部(2)の周端面箇所にサイドゲート方式のゲート痕を位置させ、前記本体部(2)の表面を、斑のない均一な光沢および外観を有するものとした合成樹脂成形品。
【請求項2】
本体部(2)を成形する合成樹脂を、光透過性の高いものとした請求項1に記載の合成樹脂成形品。
【請求項3】
合成樹脂により肉厚板状の本体部(2)を成形し、該本体部(2)の周端部に凹部(3)を設けた成形品(1)の射出成形方法であって、前記本体部(2)の成形空間であるキャビティ(12)の周端部に、前記凹部(3)成形用の成形ピン(11)を厚さ方向に進退自在に組付けると共に、前記キャビティ(12)内の成形ピン(11)に間近に対向するゲート(5)をサイドゲート方式で設け、該ゲート(5)からキャビティ(12)内に射出された溶融樹脂(7)が、前記成形ピン(11)に衝突してその勢いが低減するタイミングに合せて、前記成形ピン(11)をキャビティ(12)内から後退させ、前記キャビティ(12)内に溶融樹脂(7)が満たされる直前に、前記成形ピン(11)をキャビティ(12)内に前進させる合成樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項4】
成形ピン(11)の後退タイミングを、成形品(1)を成形する溶融樹脂(7)の5重量%が射出された時点の付近とし、前記成形ピン(11)の前進タイミングを、前記成形品(1)を成形する溶融樹脂(7)の95重量%が射出された時点の付近とした請求項1に記載の合成樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項5】
光透過性の高い合成樹脂により成形品(1)を成形した請求項1または2に記載の合成樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項6】
硬質な合成樹脂により成形品(1)を成形した請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂成形品の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116038(P2012−116038A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266307(P2010−266307)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】