説明

合成樹脂製の球状継手とその製造方法並びに製造装置

【課題】建築物や仮設構造物、園芸施設用の大型ハウスなどを立体トラスで製作するに当たり、ラチスバーの連結に使用される樹脂製球状継手に関し、継手の大量使用に適するように少ない材料で軽量化でき、かつ充分な強度を確保できると共に、安定した成型が可能な樹脂製球状継手とその製造方法並びに製造装置を実現する。
【解決手段】球状の継手において、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置とその片方の半球に集中させることによって、片方の金型は固定し、他方の金型のみを可動構造にできるので成型装置が簡易化できる。また、赤道の他方の半球は、極点の位置に取付け孔を設けることで、各種備品の取付けに利用できる。しかも、この取付け孔を中心に放射状にリブを設けてあるので、球状継手全体の強度低下を来すことなしに、材料の節減と軽量化、表面からの肉厚の均一化、均質で堅牢な製品を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物や仮設構造物、スポーツ施設や園芸施設用の大型ハウスなどを立体トラスで製作するに当たり、ラチスバー(弦材)の連結に使用される、軽量でかつ強度に優れた合成樹脂製の球状継手とその製造方法並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の施設園芸は大型化が進んでいる。H形鋼を主骨材とした間口14.0m 程度、軒高6.0mの大型ハウスも頻繁に見られるようになってきた。また、これらの大型施設を複数棟並べた大規模営農体系も全国的に広がりつつある。そのような中、昨今の頻発する台風被害の現状から、施設の大型化に加えて、耐風性への配慮も園芸施設には求められている。
【0003】
現在、最も強度に優れた園芸施設はH形鋼プラスチックハウスと言われており、最大瞬間風速60m/s に耐えられる。しかし、この施設も近年の大型台風の来襲により倒壊した事例が発生している。従って、大型でありながらも既存の施設よりもさらに耐風性に優れた施設が必要となっている。耐風性、大型化、施設内部に大きな柱を入れることを好まない等、これらのニーズに対応できる各種施設を検討するに当たり、柱無しで大空間を確保できるトラス構造が最適との結論に至った。
【0004】
トラス構造では、材軸方向の主材間に挿入されるラチスバーをジグザグ状に設置し、ラチスバーにせん断力を負担させることで、大空間の屋根を形成することができる。しかし、ラチスバーの量が多いため、主材とラチスバーの接合作業の改善が望まれてきた。溶接では作業時間がかかる上、強度にムラができる可能性がある。一方、鋼管の先端をつぶし、ボルト等で固定する方法もあるが、強度に難があると考えられる。このような事情から、実開平7−19403のように、鉄やステンレスでできた球状の結合継手が、強度や安全性に優れた結合部材として、体育館やドーム球場などの大型建築物に利用されている。
【0005】
しかし、これらの結合継手は農業施設や仮設構造物で使用するには高価すぎるという問題も残っている。これに対し、特開平11−50531のように、樹脂を利用した建築資材として、FRPパイプをトラス部材として用いる技術が開発されている。
【特許文献1】実開平7−19403
【特許文献2】特開平11−50531
【特許文献3】特願2005−295507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、農業法人となった大規模経営体を構成する生産者の増加に伴い、農業施設の大型化が進んでいる。大規模な空間を有する施設構造には、トラス構造が最も有効と考えられるが、前記のような従来の建築用に用いられている鉄又はステンレス製のボールジョイントは重量が重く、農業施設を製作するには高価である。また、迅速に組み立て作業を行う必要のある仮設構造物では、より軽量な資材が求められている。
【0007】
以上のように、従来の球状の継手部材は、鉄やステンレスなどの金属を利用していて高価となるので、本発明の発明者らは、特願2005−295507号において、大規模空間を要する各種大型施設や仮設構造物を製作するのに好適な球状継手として、トラス構造に用いる球状継手を鉄やステンレスよりも軽量な樹脂材で製造でき、しかも沖縄のような台風襲来が多くかつ紫外線による過酷な環境下で用いる簡易構造物を製作する際の作業性や耐風性、耐候性を効果的に向上可能とする合成樹脂製の球状継手を提案した。
【0008】
この球状継手は、ガラス繊維強化樹脂で成型する際にほぼ放射方向に複数のネジ穴を形成してなり、その少なくとも球状継手表面がニッケルクロム等を用いたハードクロム処理され、樹脂製材料では最も懸念される耐候性による劣化の問題を解消したものである。球状継手を製造する際は、ラチスバーを螺入するメネジ孔を形成するために、金型内に予め複数本のオネジコアを配設し、モータードライブにより短時間で一斉に各オネジコアを取り外す手法を採用している。
【0009】
ところが、新たな問題として、球形状のため金型内で各部の樹脂の受ける条件が一定せず、その結果、充分な強度が確保できない。重量が大き過ぎて材料費がアップすると共に大型施設のように継手を大量に使用する場合には不適当である。成型時の二次収縮により球状継手自体の形状やメネジ孔が歪むという障害が発生した。調査したところ、ゲート口( 射出成形の際、樹脂が金型内に流れ込む注入口) 付近での収縮が大きかった。本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、継手の大量使用に適するように少ない材料で軽量化でき、かつ充分な強度を確保できると共に、安定した成型が可能な樹脂製球状継手とその製造方法並びに製造装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、ほぼ球状の継手において、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と赤道の片方の半球に集中させ、他方の半球は、各種用途の取付け孔を極点に設けると共に、この取付け孔を中心とする放射状のリブを設けてなることを特徴とする合成樹脂製の球状継手である。他方の半球の取付け孔は貫通孔も含むものとする。
【0011】
従来のように、球状継手の全周に放射状のメネジ孔を有する形状は、表面からの肉厚が不均一なため均質な製品が製造困難で、かつ高価な材料を多量に要する。ところが、球状継手の全周に放射状にラチスバーを取付け固定するケースは少ないので、請求項1のように、ほぼ球状の継手において、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置とその片方の半球に集中させることによって、片方の金型は固定し、他方の金型のみを可動構造にできるので成型装置が簡易化できる。そして、赤道の他方の半球は、極点すなわち北極点又は南極点の位置に取付け孔を設けることで、各種備品の取付けに利用できる。しかも、この取付け孔を中心に放射状にリブを設けてあるので、球状継手全体の強度低下を来すことなしに、材料の節減と軽量化、表面からの肉厚の均一化、均質で堅牢な製品を実現できる。
【0012】
請求項2は、前記のラチスバー螺入用のメネジ孔を取り巻く筒状部を有し、各筒状部の間は、前記片方の半球の極点側から型抜きできるような抜き代が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製の球状継手である。このように、前記のラチスバー螺入用のメネジ孔を取り巻く筒状部を残し、各筒状部の間は、前記片方の半球の極点側から型抜きできるような抜き代が形成されているので、筒状部によってメネジ孔を堅牢に形成可能となり、各筒状部の間は、抜き代を形成することで、型抜きに支障を来さない範囲で、肉取りして凹状に形成され、軽量化と材料の節減、肉厚の均一化が可能となる。
【0013】
請求項3は、前記の赤道位置において、隣接するメネジ孔の中間位置で樹脂が注入されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製の球状継手である。このように、前記の赤道位置において、隣接するメネジ孔の中間位置で樹脂が注入されているため、樹脂の注入部から最も離れた位置にメネジ孔が形成されるので、樹脂の注入成型時の歪みや変形などの悪影響を最小限に抑制できる。
【0014】
請求項4は、前記の2以上のラチスバー螺入用のメネジ孔に立体トラスのラチスバーを螺入固定すると共に、前記他方の半球の極点の取付け孔を用いて各種製品を吊り下げ支持してなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の合成樹脂製の球状継手である。このように、前記の2以上のラチスバー螺入用のメネジ孔に立体トラスのラチスバーを螺入固定してあるため、球状継手を用いることで立体トラスの構築が容易になり、また他方の半球の極点の取付け孔を用いて各種製品を吊り下げ支持してあるため、仮設構築物や各種施設における各種装備が容易になる。
【0015】
請求項5は、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と赤道の片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する装置において、前記の赤道位置で分割できる固定金型と可動金型を用い、前記固定金型側に前記の集中しているメネジ孔を形成するためのネジコアを回転するモータドライブを2以上設けてなることを特徴とする球状継手の成型装置である。
【0016】
このように、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置とその片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する装置において、前記の赤道位置で2分割できる固定金型と可動金型を用い、前記固定金型側に前記の集中しているメネジ孔を形成するためのネジコアを回転するモータドライブ手段を2以上設けてあるため、可動金型側にはモータドライブ機構を全く設ける必要がなく、2分割した片側の金型を容易に開閉可能となり、成型装置をより簡易化できる。
【0017】
請求項6は、前記の固定金型と可動金型との分割面において、隣接するメネジ孔形成部の中間位置に樹脂注入孔を設けてあることを特徴とする請求項5に記載の球状継手の成型装置である。このように、前記の固定金型と可動金型との分割面に樹脂注入孔を設けてあるため、両方の半球に均等に均一の圧力で樹脂を充填可能となり、しかも隣接するメネジ孔形成部の中間位置で樹脂が注入されるので、樹脂注入部から最も離れた位置にメネジ孔が形成されることになり、樹脂の注入成型時の変形などの悪影響を最小限に抑制できる。
【0018】
請求項7は、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と赤道の片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する際に、前記の赤道位置で分割できる固定金型と可動金型で成型し、金型から取り出した球状継手を水中に入れて急冷することを特徴とする球状継手の成型方法である。このように、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置とその片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する際に、前記の赤道位置で分割できる固定金型と可動金型で成型し、金型から取り出した球状継手を水中に入れて急冷するため、金型から取り出された球状継手は、その内部熱が効果的に放熱される。その結果、従来のように球状継手の表面温度が上昇して、成型品である球状継手が二次収縮し、変形するという問題を解消できる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1のように、ほぼ球状の継手において、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と赤道の片方の半球に集中させることによって、片方の金型は固定し、他方の金型のみを可動構造にできるので成型装置が簡易化できる。そして、他方の半球は、極点の位置に取付け孔を設けることで、各種備品の取付けに利用できる。しかも、この取付け孔を中心に放射状にリブを設けてあるので、球状継手全体の強度低下を来すことなしに、表面からの肉厚の均一化と、均質で堅牢な製品を実現できる。
【0020】
請求項2のように、前記のラチスバー螺入用のメネジ孔を取り巻く筒状部を残し、各筒状部の間は、前記片方の半球の極点側から型抜きできるような抜き代が形成されているので、筒状部によってメネジ孔を堅牢に形成可能となり、各筒状部の間は、抜き代を形成することで、型抜きに支障を来さない範囲で、肉取りして凹状に形成され、軽量化と材料の節減、肉厚の均一化が可能となる。
【0021】
請求項3のように、前記の赤道位置において、隣接するメネジ孔の中間位置で樹脂が注入されているため、樹脂の注入部から最も離れた位置にメネジ孔が形成されるので、樹脂の注入成型時の歪みや変形などの悪影響を最小限に抑制できる。
【0022】
請求項4のように、前記の2以上のラチスバー螺入用のメネジ孔に立体トラスのラチスバーを螺入固定してあるため、球状継手を用いることで立体トラスの構築が容易になり、また他方の半球の極点の取付け孔を用いて各種製品を吊り下げ支持してあるため、仮設構築物や各種施設における各種装備が容易になる。
【0023】
請求項5のように、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置とその片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する装置において、前記の赤道位置で2分割できる固定金型と可動金型を用い、前記固定金型側に前記の集中しているメネジ孔を形成するためのネジコアを回転するモータドライブ手段を2以上設けてあるため、可動金型側にはモータドライブ機構を全く設ける必要がなく、2分割した片側の金型を容易に開閉可能となり、成型装置をより簡易化できる。
【0024】
請求項6のように、前記の固定金型と可動金型との分割面に樹脂注入孔を設けてあるため、両方の半球に均等に均一の圧力で樹脂を充填可能となり、しかも隣接するメネジ孔形成部の中間位置で樹脂が注入されるので、樹脂注入部から最も離れた位置にメネジ孔が形成されることになり、樹脂の注入成型時の変形などの悪影響を最小限に抑制できる。
【0025】
請求項7のように、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置とその片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する際に、前記の赤道位置で分割できる固定金型と可動金型で成型し、金型から取り出した球状継手を水中に入れて急冷するため、金型から取り出された球状継手は、その内部熱が効果的に放熱される。その結果、従来のように球状継手の表面温度が上昇して、成型品である球状継手が二次収縮し、変形するという問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明による合成樹脂製の球状継手とその製造方法並びに製造装置が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1〜図4は本発明によるほぼ球状の継手の外観で、図1は上方から見た斜視図、図2は平面図、図3は下方から見た斜視図、図4は底面図である。図5はこの球状継手の使用状態を示す斜視図である。h…はメネジ孔で、図5の立体トラスにおける各ラチスバーb…の先端を螺入するものである。
【0027】
各ラチスバーb…を強固に固定する必要があるので、メネジ孔h…を形成する筒状部c…の肉厚t1を充分に確保する必要がある。ただし、完全な球体にメネジ孔h…を形成すると、空気と触れる外面と球体の各内部間の肉厚が不均一となり、合成樹脂の収縮変形が一定せず、品質や強度の低下要因となる。そこで、強度上必要最小限の肉厚t1を確保した上で、各筒状部c…間を肉取りして凹状部sとすることで、材料の節減と軽量化を図っている。なお、平面図における中心部には、取付け孔1を形成してあるが、底部の中心には各種備品を吊り下げ支持する場合などに適用する多用途型の取付け孔2を形成してある。前記の取付け孔1、2のサイズは自由で、メネジも形成できる。
【0028】
本発明の球状継手を地球儀に例えると、赤道に相当する位置に例えば90度間隔にメネジ孔h…を形成してあり、赤道上の各メネジ孔h・hの筒状部c・c間は、リブ状3に形成されている。そして、赤道に対し上側の半球すなわち赤道上の各メネジ孔…と前記の極上の取付け孔1との間に、例えば4個のメネジ孔h…が放射状に形成されている。
【0029】
図3、図4からも明らかなように、赤道に対し他方の極上の多用途の取付け孔2と赤道上の各メネジ孔h…との間には、ラチスバー用などのメネジ孔は形成されておらず、取付け孔2を中心とする放射状のリブ4…が形成されている。一部のリブ4…は、前記の赤道上の筒状部cと連続することによってメネジ孔h…を補強しており、他のリブ4…は、前記の赤道上のリブ3と連続することで、球状継手の下半分全体を補強している。このような強度上必要なリブ4…の間は、肉取りして窪みsとし、材料の節減と軽量化を図っている。その結果、従来の球状継手の重量は900g/個であるのに対し、本発明の球状継手は630g/個であり、30%の軽量化と材料費の節減が実現できた。
【0030】
このような球状継手製造時に使用する樹脂量の低減は、金型内の樹脂の密度を安定化させ、ガラス材の均一な分散に寄与すると考えられる。静的引張試験を実施した結果、最大荷重は72kN台で安定した。また、初期クラック音も発生しなかったので、樹脂内部も安定し、かつ均質であると言え、強度の安定化が実現できた。
【0031】
赤道上のリブ3を境にして上半分と下半分は、別々の金型で成型されるが、上半分は上金型から型抜きできるように、図1、図2の各筒状部c…間の窪みsは抜き代が形成されている。下半分は下金型から型抜きできるように、図3、図4の放射状リブ4…の側壁に抜き代が形成されている。樹脂の充填は、赤道上のリブ3上において、隣接する筒状部c・cの中間位置pから行われるので、上型と下型との分割面に樹脂充填孔が形成されている。
【0032】
以上のように、赤道位置に対し片側の半球だけにメネジ孔h…が集中しているため、図5のように、球状継手5の赤道位置を含む片側半分だけにラチスバーb…を螺入することで、立体トラスを組み立てている。このように組み立てた立体トラスを用いて各種の施設を構築した際に、各種の備品を吊り下げ支持するには、前記の多用途型の極部の取付け孔2を使用する。なお、他方の半球の極部にも取付け孔1が開いているので、この取付け孔1も利用できることは言うまでもない。
【0033】
図6は、成型装置の縦断面図で、型割り面L−Lの上半分が上金型u、下半分が下金型dである。上金型uと下金型dとの型割り面に前記球状継手5を形成するための半球状の空洞Vu、Vdが形成されている。上金型uの半球状の空洞Vu中には、前記球状継手5の上半分に集中している各メネジ孔h…を形成するためのネジコア6が挿入配置されている。ネジコア6は、モータドライブMdの駆動軸7と一体となっていて、モータドライブMdを駆動することで、ネジコア6と一緒に前進後退する。なお、モータドライブMdと駆動軸7は、1組だけ図示し、他はネジコア6のみを図示してある。赤道位置上のメネジ孔h…を形成するネジコア6は、想像線で斜めの状態で示してある。
【0034】
図7は、以上の上金型uを平面図で示してあり、前記空洞Vu中に球状継手5が残っている状態である。赤道位置上のメネジ孔h…を形成するネジコア6用の駆動軸7とそのモータドライブMdを実線で図示してある。図6の斜めのモータドライブMdは想像線で示してあり、同モータドライブMdで形成されるメネジ孔h…が実線で示してある。図8は、前記の下金型dの底面図で、赤道位置上のメネジ孔h…を形成するモータドライブMdの位置を実線で図示してある。また、前記の放射状リブ4…が実線で示されている。P1〜P4は、樹脂の充填位置である。
【0035】
図6において、上金型uの極中心に、上半分の極上の小径取付け孔1を形成するためのコア8を設け、半球状空洞Vu中に挿入してある。また、下金型dの極中心に、下半分の極上の前記大径取付け孔2を形成するためのコア9を設け、半球状空洞Vd中に挿入してある。10は冷却水の水流孔である。P2、P4は樹脂の充填孔で、上金型uと下金型dとの型割り面に形成されていて、下金型d中から樹脂が供給される。樹脂の充填孔を平面図で示すと、図8のように、赤道上のリブ3上において、隣接するメネジ孔h・h間にP1〜P4のように配置されている。その結果、図1〜図4におけるP位置に樹脂の充填後の臍が残ることになる。なお、充填後の臍は研磨除去してもよい。
【0036】
前記の上金型uと下金型dにおいて、モータドライブMd…が集中している上金型u側を固定として、モータドライブMd…を要しない下金型dを上下動することによって、樹脂の充填成型と型抜きを繰り返し行なう。上金型uと下金型dから取り出された球状継手5は、その内部熱の放熱によって製品5の表面温度が上昇し、この熱により、成型品5が二次変形するのを防ぐため、水槽中の例えば20℃前後の冷却水中に約30分放置して急冷することによって、二次変形を防いでいる。
【0037】
本発明の樹脂製球状継手5は、例えば、面−面間8〜20cm程度の大きさに成型する。母材は主にナイロンを用いるが、鉄の比重7.9kgf/cm 3 対し、使用するナイロンの比重は1.02〜1.50kgf/cm3 であり、鉄に比べて1/5 以下と軽量化が図れる。また、強度を確認するために、樹脂製供試体を製作した。供試体には深さ3cmのメネジ孔hを形成し、直径16mmのラチスバーのオネジ部で取り付けた。引張試験を行ったところ、最大荷重(供試体が破壊する時の荷重)49.2kNを得ることができた。これは構造物の骨組みを構成する材料として利用できる強度である。さらに、樹脂は内部にガラス繊維などの強化積層を作製し、FRPとすることで増強を図ることができるため、必要に応じて強度をコントロール可能な結合部材となる。
【0038】
ラチスバーbのオネジと球状継手5のメネジ孔h…のネジ形状については、TR16×4(ピッチ4mm 、山高2mm )を基本とした台形ネジが望ましい。各種の3タイプのネジ形状について、引張試験を行った結果、オネジ、メネジ共台形ネジ(TR16×2)が最も大きな抵抗力(52kN)を確保できた。ネジの強度はネジ山の深さを変えることでコントロールできるので、必要な強度に応じて、ネジの山高を2〜4mmの範囲で任意に設定できる。
【0039】
樹脂製品は、耐候性、特に紫外線に対して弱いのが弱点と言われているが、本発明では、樹脂製品の耐候性、特に紫外線対策として、球状継手5の外表面とメネジ孔h…にハードクロム処理を施した。樹脂製の球状継手に求められる耐用年数は15年である。屋外で直接紫外線に曝されるため、ナイロンのみでは劣化が生じる可能性が高い。ガラス繊維を配合することにより、紫外線劣化の速度を低下させることは可能であるが、紫外線による15年後の影響を推測することは困難である。そこで、ニッケルクロム等を用いたハードクロム処理を行うこととした。これにより、樹脂製球状継手5でも、最も懸念される耐候性による劣化の問題を解消できた。
【0040】
前記の取付け孔1を形成する場合は、テーパ状の抜き代の有る鉄筋状のコアを上下両方の極点に挿入するだけで足りる。赤道に対し上半球の中心孔と下半球の中心孔の径が異なる場合は、太さの異なるコア8とコア9を両方の極点にそれぞれ挿入しておく。メネジ孔を形成する必要がある場合は、穴あけ後にバイトでネジ切りすることもできるが、メネジ孔h…が集中している側の極の場合は、可動側の上金型uにモータドライブを取付けてもよい。このように両極の中心孔の内径や深さ、貫通させるかどうか、メネジを形成するかどうかなど、用途に応じた構成が可能である。
【0041】
以上のような構成では、上金型uと下金型dで成型するため、各メネジ孔h…の個数や角度は金型の構造に左右される。メネジ孔h…の角度が僅かに異なる球状継手が必要な場合は、ネジコア6を挿入しない状態で筒状部cや放射状リブ4や赤道上のリブ3などを成型しておき、型抜きした状態でドリルで孔開けしてからバイトでメネジを形成することも可能である。特殊な用途として、金型では対応できない、任意の位置に任意の角度のメネジ孔を形成したい場合は、まず球状体を成型しておき、後から任意の位置に任意の角度にドリルで孔あけし、バイトでメネジ加工することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明による合成樹脂製の球状継手は、ほぼ球状の継手において、ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を開けると共に、この極点孔を中心とする放射状のリブを設けてあるため、大量使用に適するように少ない材料で軽量化でき、かつ充分な強度を確保できると共に、均質で安定した成型品が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による球状継手を上方から見た斜視図である。
【図2】図1の球状継手の平面図である。
【図3】図1の球状継手を下方から見た斜視図である。
【図4】図1の球状継手の底面図である。
【図5】図1の球状継手の使用状態を示す斜視図である。
【図6】図1の球状継手を製造する成型装置の縦断面図である。
【図7】図6の上金型の平面図である。
【図8】図6の下金型の底面図である。
【符号の説明】
【0044】
h メネジ孔
b ラチスバー
c 筒状部
1 貫通孔(中心孔)
2 取付け孔(中心孔)
3 赤道上のリブ
4 放射状のリブ
s 肉取りした窪み
5 球状継手
u 上金型
d 下金型
Vu・Vd 半球状の空洞
6 ネジコア
Md モータドライブ
7 駆動軸
P・P1〜P4 樹脂の充填位置
8 取付け孔形成用のコア
9 取付け孔形成用のコア
10 冷却水流孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ球状の継手において、
ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と赤道の片方の半球に集中させ、
他方の半球は、各種用途の取付け孔を極点に設けると共に、この取付け孔を中心とする放射状のリブを設けてなることを特徴とする合成樹脂製の球状継手。
【請求項2】
前記のラチスバー螺入用のメネジ孔を取り巻く筒状部を有し、各筒状部の間は、前記片方の半球の極点側から型抜きできるような抜き代が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製の球状継手。
【請求項3】
前記の赤道位置において、隣接するメネジ孔の中間位置で樹脂が注入されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製の球状継手。
【請求項4】
前記の2以上のラチスバー螺入用のメネジ孔に立体トラスのラチスバーを螺入固定すると共に、前記他方の半球の極点の取付け孔を用いて各種製品を吊り下げ支持してなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の合成樹脂製の球状継手。
【請求項5】
ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と赤道の片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する装置において、
前記の赤道位置で分割できる固定金型と可動金型を用い、前記固定金型側に前記の集中しているメネジ孔を形成するためのネジコアを回転するモータドライブを2以上設けてなることを特徴とする球状継手の成型装置。
【請求項6】
前記の固定金型と可動金型との分割面において、隣接するメネジ孔形成部の中間位置に樹脂注入孔を設けてあることを特徴とする請求項5に記載の球状継手の成型装置。
【請求項7】
ラチスバーを螺入固定するメネジ孔を、地球儀における赤道位置と赤道の片方の半球に集中させ、他方の半球は、極点に各種用途の取付け孔を設けると共に、この極点取付け孔を中心とする放射状のリブを有するほぼ球状の継手を成型する際に、
前記の赤道位置で分割できる固定金型と可動金型で成型し、金型から取り出した球状継手を水中に入れて急冷することを特徴とする球状継手の成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−156823(P2008−156823A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343586(P2006−343586)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(595102178)沖縄県 (36)
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【出願人】(504130887)拓南伸線株式会社 (3)
【出願人】(505419844)株式会社国建 (2)
【Fターム(参考)】