説明

合成樹脂製ローラ

【課題】重量物の搬送に際し撓んで破損しない合成樹脂製のローラを提供する。
【解決手段】合成樹脂製の端パイプ1と、この端パイプの成形の際不回転状態に外輪を拘束して内蔵したベアリング3とで構成した対の端軸受ユニットBと、この端軸受ユニットのパイプと同径で前記端軸受ユニット間に介在する合成樹脂製の中間パイプCとからなり、上記端軸受ユニットのパイプと中間パイプとの対向端を圧着接合し、上記片方の端軸受ユニットのベアリングから上記中間パイプ内をへてもう片方の上記軸受ユニットのベアリングにシャフト6を貫通させた構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルトコンベヤのベルトを支承するローラや並列状に並べて搬送路を形成する際などに用いる合成樹脂製のローラに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような用途に使用するローラは、通常金属製のパイプと、このパイプの両端内に嵌入して上記パイプの端縁に固持させた金属製の軸受端板と、この軸受端板内に嵌入して外輪を不回転状態に保持したベアリングと、この両側のベアリングの内輪に両端部を貫通させたシャフトとで構成している。
【0003】
ところが金属製のため、過大な重量や耐錆性などに難があるとのことで、合成樹脂製のローラが提案された(特許文献1及び2)。
【特許文献1】実公昭42−12754号公報
【特許文献2】特開平6−200925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のローラは、胴体の両端内周面に周溝を設けて、この周溝に軸受を構成する内側板と外側板とを嵌入したのち、胴体の端部を内方に折曲して外側板の周縁部を固持するので、固持加工に手数がかかり、又胴体の軸長を長くすると、シャフトに対する胴体の中間部分の支持がないため、搬送物が鉱物などの重量物であると、胴体が重量物により撓んで破損するなどの問題が発生した。
【0005】
また、特許文献2のローラにあっても、筒状のローラの両端内にベアリングを抱持したベアリングケースを嵌入し、ローラに対するベアリングケースの回転方向のスリップを噛み合う係合関係により阻止するようにしている。
【0006】
このような構成により回転方向のスリップを阻止する係合関係の構造を成形によって設けるので、構造が複雑になって成形部品のコストが大幅にアップすると共に、係合関係の噛み合う嵌合に細心の注意をはらうなどのため手間がかかる。
【0007】
特に、ローラの中間部分のシャフトに対する支持がないため、前述の特許文献1と同様の問題が発生する。すなわち、特許文献1及び2のローラによる軸長を長くすることができず、軸長に制約を受ける問題が発生した。
【0008】
そこで、この発明の課題は、上述の問題を解消した合成樹脂製のローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、合成樹脂製の端パイプと、この端パイプの成形の際不回転状態に外輪を拘束して内蔵したベアリングとで構成した対の端軸受ユニットと、この端軸受ユニットのパイプと同径で前記端軸受ユニット間に介在する合成樹脂製の中間パイプとからなり、上記端軸受ユニットのパイプと中間パイプとの対向端を圧着接合し、上記片方の端軸受ユニットのベアリングから上記中間パイプ内をへてもう片方の上記軸受ユニットのベアリングにシャフトを貫通させた構成を採用する。
【0010】
また合成樹脂製の端パイプと、この端パイプの成形の際不回転状態に外輪を拘束して内蔵したベアリングとで構成した対の端軸受ユニットと、この端パイプと同径の合成樹脂製の中継ぎパイプと、この中継ぎパイプの成形の際不回転状態に外輪を拘束して内蔵したベアリングとで構成した中継ぎ中間軸受ユニットと、端パイプと同径の合成樹脂中間パイプとからなり、上記端軸受ユニット間に少なくとも1本の中間パイプ、この中間パイプ間に中継ぎ中間軸受ユニットを介在して直列状に並べると共に、上記端パイプと中間パイプとの対向軸及び上記中間パイプと中継ぎパイプとの対向端を圧着接合し、上記片方の端軸受ユニットのベアリングから中間パイプ内、中継ぎ中間軸受ユニットのベアリング、中間パイプ内をへてもう片方の端軸受ユニットのベアリングにシャフトを貫通させた構成を採用する。
【0011】
すると、合成樹脂製のベルト支承用のローラや搬送路用などのローラが得られる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明の合成樹脂製のローラによれば、端軸受ユニットの端パイプの成形の際に外輪を不回転状態に拘束してベアリングを内蔵してあるので、シャフトの軸承ベアリングの手間のかかる組み込み作業が不要になり、又、端軸受ユニットの端パイプと中間パイプとの対向端を圧着接合するので、ジョイント作業が極めて簡単に行なうことができると共に、ジョイントに接着剤を用いないため、塗布接着剤がはみ出し、はみ出した接着剤の除去などが不要になる。
【0013】
また、端軸受ユニット間に中間パイプ、中間パイプ間に中継ぎ中間軸受ユニットを介在して、端パイプと中間パイプとの対向端及び中間パイプと中継ぎパイプとの対向端を圧着接合するので、中間パイプ及び中継ぎ中間軸受ユニットの使用数によってローラの軸長の長短を自由に設定することができると共に、端軸受ユニット及び中継ぎ中間軸受ユニットの成形の際ベアリングを内蔵してあるため、手間のかかるベアリングの組み込み作業が不要になる。
【0014】
特に、シャフトの中間を軸承する中継ぎ中間軸受の使用によって荷重による撓み(変形)をなくして、安定した外観を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明の第一の実施形態では、図1から図5に示すように、Aはベルトコンベヤのベルトを支承したり、或いは搬送路を形成する用途などに使用する合成樹脂製のローラである。
【0016】
上記のローラAは、合成樹脂製の端パイプ1と、この端パイプ1の成形の際不回転状態に外輪2を拘束して内蔵したベアリング3とで構成された対の端軸受ユニットBと、この両端軸受ユニットB、B間に介在する合成樹脂製の中間パイプCとからなり、端パイプ1と中間パイプCの対向端を圧着接合したジョイント部4により連結する。
【0017】
上記の圧着接合は、既知の方法を採用して行なうもので、例えば、圧着しようとする周囲に電磁石を複数個配置し、さらにこの電磁石のそれぞれの対向する位置に所定の間隔を存して、複数個の電磁石を配置し、これら電磁石の極性を順次変化させることによって端パイプ1と中間パイプCとの対向端面を振動させ、この振動により端面を摩擦させ、これによって発生する摩擦熱により端面を溶融接合(例えば特開平9−39097号公報参照)する。勿論、端パイプ1と中間パイプCの外径は、同一径になるようにする。
【0018】
そして、片方の端軸受ユニットBのベアリング3の内輪5から中間パイプC内の軸芯をへてもう片方の端軸受ユニットBのベアリング3の内輪5にシャフト6を打ち込みなどで貫通させる。
【0019】
なお、図3に示すように中間パイプCの内面軸承方向に多数条の補助リブ7を設け、又、図4及び図5に示すように端パイプ1と内側のベアリング3の包持筒8とを放射状のリブ9で連結して荷重条件を満たすようにするとよい。
【0020】
又、図示のように、塵埃や水滴の侵入(ベアリング3に向う)を防止するシール手段10を施したり、シャフト6の抜け止めリング11を施す。
【0021】
この発明の第2の実施形態では、図6に示すように、第1の実施形態の中間パイプCの数を複数本直列状に並べると共に、中間パイプCの間に中間軸受ユニットDを介在する。
【0022】
上記の中間軸受ユニットDは、中間パイプCと同径の合成樹脂製の中継ぎパイプ21の成形の際、シャフト6の軸承ベアリング3の外輪2を中継ぎパイプ21の中心部の包持筒8により抱き込んで不回転に拘束して内蔵する。なお、包持筒8は、放射状のリブ9を介し中継ぎパイプ21と一体に成形してある。
【0023】
そして、端軸受ユニットB、中間パイプC、中間軸受ユニットD、中間パイプC、端軸受ユニットBを直列状に(中間パイプCの数は、適宜決定し、中間パイプCの本数に応じて中間パイプC間に中間軸受ユニットDを介在する)並べ、端パイプ1と中間パイプCの対向端、中間パイプCと中継ぎパイプ21の対向端を第1の実施形態と同様に圧着接合したジョイント部4により連結する。
【0024】
そして、片方の端軸受ユニットBのベアリング3の内輪5から中間パイプCの軸芯、中間軸受ユニットDのベアリング3の内輪5、中間パイプC、端軸受ユニットBのベアリング3の内輪5にシャフト6を貫通させて、ローラAを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1のローラを示す縦断正面図。
【図2】同上の要部を示す縦断拡大正面図。
【図3】中間パイプの縦断側面図。
【図4】端パイプの縦断側面図。
【図5】端パイプの他の部分の縦断側面図。
【図6】第2の実施形態のローラを示す縦断正面図。
【符号の説明】
【0026】
A ローラ
B 端軸受ユニット
C 中間パイプ
D 中間軸受ユニット
1 端パイプ
2 外輪
3 ベアリング
4 ジョイント部
5 内輪
6 シャフト
7、9 リブ
8 包持筒
10 シール手段
21 中継ぎパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の端パイプと、この端パイプの成形の際不回転状態に外輪を拘束して内蔵したベアリングとで構成した対の端軸受ユニットと、この端軸受ユニットのパイプと同径で前記端軸受ユニット間に介在する合成樹脂製の中間パイプとからなり、上記端軸受ユニットのパイプと中間パイプとの対向端を圧着接合し、上記片方の端軸受ユニットのベアリングから上記中間パイプ内をへてもう片方の上記軸受ユニットのベアリングにシャフトを貫通させたことを特徴とする合成樹脂製ローラ。
【請求項2】
合成樹脂製の端パイプと、この端パイプの成形の際不回転状態に外輪を拘束して内蔵したベアリングとで構成した対の端軸受ユニットと、この端パイプと同径の合成樹脂製の中継ぎパイプと、この中継ぎパイプの成形の際不回転状態に外輪を拘束して内蔵したベアリングとで構成した中継ぎ中間軸受ユニットと、端パイプと同径の合成樹脂中間パイプとからなり、上記端軸受ユニット間に少なくとも1本の中間パイプ、この中間パイプ間に中継ぎ中間軸受ユニットを介在して直列状に並べると共に、上記端パイプと中間パイプとの対向軸及び上記中間パイプと中継ぎパイプとの対向端を圧着接合し、上記片方の端軸受ユニットのベアリングから中間パイプ内、中継ぎ中間軸受ユニットのベアリング、中間パイプ内をへてもう片方の端軸受ユニットのベアリングにシャフトを貫通させたことを特徴とする合成樹脂製ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−121559(P2009−121559A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294694(P2007−294694)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(504385982)株式会社JRC (17)
【Fターム(参考)】