説明

合成樹脂製操作パネル及びその製造方法

【課題】 合成樹脂製操作パネル及びその製造方法において、製造工程を短縮して製造コストの削減を図ると共に、操作パネルを家電製品等の本来のスイッチの上に設けて使用する際に、水分が内側に浸透して故障及び誤動作を引き起こす問題を回避することが可能であり、メンブレンスイッチ部を押したときに満足な操作感得ることができる操作パネル及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 軟質性の合成樹脂であるエラストマー樹脂を用いて操作パネル1の成形を行う際に、インモールド転写装置10の固定型7と可動型8とを対接させて、該固定型7及び可動型8の成形凹部7a,8aで形成されるキャビティ内でメンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bを含む操作パネル1全体の一体成形を行うと同時に該操作パネル1の表側の面に対して印刷層の転写を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品等に適用される合成樹脂製操作パネル及びその製造方法に関し、合成樹脂成形の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炊飯器等の家電製品には、薄膜状で表側に突出したボタン状のメンブレンスイッチ部を有する操作パネルが用いられることがある。このメンブレンスイッチ部はその突出部を押し下げることにより、その内側に配設された本来のスイッチがオン又はオフ状態となる。
【0003】
前記メンブレンスイッチ部を有する操作パネルは、金型に合成樹脂を流し込んで操作パネルの成形を行い、スクリーン印刷等の手段により予め図柄の印刷を行ったシートを操作パネル本体の上に接合することで作製される。
【0004】
この操作パネルを作製する方法として、代表的なものが2つあり、第1の方法は、金型内に溶融状の合成樹脂を流し込んでパネル本体を成形した後に、予め図柄を印刷したシートを両面テープにより該パネル本体の上に貼り付ける方法である。
【0005】
この方法の一例として、メンブレンスイッチ部の位置に穴部を設けたパネル本体の上に、予め図柄が印刷され、かつ所定箇所をメンブレンスイッチ部の形に加工したシートを両面テープにより貼り付けた後に、メンブレンスイッチ部に柔軟性をもたせるために、穴部の上側部分とシートとの間に形成される空間に或いはシートの上面に、エラストマー樹脂層を設けてメンブレンスイッチ部を形成する方法が特許文献1に開示されている。
【0006】
次に、第2の方法は、予め図柄を印刷し、かつ所定箇所をメンブレンスイッチ部の形に加工したシートを金型の中に挿入した上で、該金型内に溶融状の合成樹脂を流し込み、パネル本体の成形を行うと同時に、成形時の合成樹脂の熱圧で該パネル本体とシートとを一体化させるものであり、シートインサート法と呼ばれる方法である。
【0007】
いずれの方法によっても、操作パネルの押し下げ操作部が薄膜状のメンブレンスイッチ部となるため、その押し下げ操作部に柔軟性をもたせることが可能となる。
【0008】
特に、前記第2の方法で操作パネルを作製すると、パネル本体の表側を覆うシートがパネル本体に隙間なく密着した状態で該パネル本体と一体化するため、操作パネルを家電製品等の本来のスイッチの上に設けて使用する際に、水分が該操作パネルの本体とシートとの隙間から内部に浸透することが防止されて、スイッチの故障や誤作動等の発生を回避することが可能となる。
【0009】
【特許文献1】特開平8−45380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記2種類の方法のうち、第1の方法で操作パネルを作製する場合、予め図柄を印刷すると共に所定箇所をメンブレンスイッチ部の形に加工してシートを作製する工程と、金型内に溶融状の合成樹脂を流し込んでメンブレンスイッチ部の位置に穴部を有するパネル本体を成形する工程と、両面テープで貼り付けることでシートとパネル本体とを接合する工程との3つの工程が必要となり、該操作パネルの製造工程の数が多くなり、製造コストが高騰するという不具合が生じる。
【0011】
また、第2の方法のように溶融状の合成樹脂の熱圧を利用して密着した状態で一体化させる場合と比較して、シートとパネル本体との間の密着が弱く、両者間に隙間が生じてしまい、該操作パネルを家電製品等の本来のスイッチの上に設けて使用する際に、該隙間から水分が浸透してスイッチの故障や誤作動を引き起こすおそれがある。
【0012】
次に、第2の方法で操作パネルの成形を行う場合、金型内でパネル本体の成形を行うと同時に、溶融状の合成樹脂の熱圧を利用してパネル本体とシートとを一体化させるため、前記第1の方法と比較して製造工程を短縮することが可能である。しかし、シートを予め作製する工程に加えて、これを金型内に作業者の手作業により挿入して該シートの位置合せを行う工程が必要となり、そのため操作パネルの製造工程の数が多くなると共に人件費のコストがかかってしまい、製造コストが高騰するという不具合が生じる。
【0013】
また、前記第1、第2のいずれの方法においても、メンブレンスイッチ部は、パネル本体に接合されたシートによって構成されることになるが、このシートの材料としては比較的硬質のものが使用されるのが通例であり、このためエラストマー樹脂層を設けた特許文献1のものでも、メンブレンスイッチ部の柔軟性が十分ではなく、その操作感は必ずしも満足のいくものではなかった。
【0014】
そこで、本発明は、合成樹脂製操作パネル及びその製造方法において、製造工程を短縮して製造コストの削減を図ると共に、操作パネルを家電製品等の本来のスイッチの上に設けて使用する際に、水分が内側に浸透して故障及び誤動作を引き起こす問題を回避することが可能であり、しかもメンブレンスイッチ部を押したときに満足な操作感を得ることができる操作パネル及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0016】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、薄肉状のメンブレンスイッチ部を有する合成樹脂製操作パネルであって、前記メンブレンスイッチ部を含むパネル全体が軟質性の合成樹脂により一体成形されていると共に、表側及び裏側の少なくとも一方の面に、インモールド転写法により成形と同時に転写フィルムからの印刷層の転写が施されていることを特徴とする。
【0017】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、操作パネルの表側及び裏側の少なくとも一方の面に施されている印刷層は、操作パネル上に設けられた図柄を構成する図柄層と、該図柄層の上に設けられた表面保護層とからなることを特徴とする。
【0018】
そして、請求項3に記載の発明は、薄肉状のメンブレンスイッチ部を有する合成樹脂製操作パネルの製造方法であって、軟質性の合成樹脂を用いて前記メンブレンスイッチ部を含むパネル全体の一体成形を行うと共に、表側或いは裏側の少なくとも一方の面に、インモールド転写法により成形と同時に転写フィルムからの印刷層の転写を施すことを特徴とする。
【0019】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、ベースフィルム層の上に剥離層が設けられ、該剥離層の上に表面保護層が設けられ、該表面保護層の上に図柄を構成する図柄層が設けられてなる転写フィルムを用いて操作パネル上に印刷層の転写を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように構成したことにより、まず、請求項1に記載の発明によれば、金型を用いて、前記メンブレンスイッチ部を含む操作パネルの全体を一体成形すると同時に、該操作パネルに対する印刷層の転写を行うことで得られる操作パネルであるから、パネル本体に予め作製したシートを両面テープで貼り付けたものや、該シートを金型内に挿入してパネル本体とシートとを一体化させたものと比較して、シートを予め作る手間を省くことができると共に、該シートを作業者の手作業によりパネル本体に貼り付けたり、金型内に挿入して位置合せを行ったりする必要がなくなり、製造工程の数が削減されて、製造コストが低減されることになる。
【0021】
そして、メンブレンスイッチ部を含む操作パネルの全体が一体成形されているから、操作パネルを製品の本来のスイッチの上に設けて使用する際に、従来のようにシートとパネル本体との隙間から水分が内側に浸透して製品の故障及び誤作動を引き起こすといった問題が回避され、また、軟質性の合成樹脂で成形されているので、メンブレンスイッチ部に柔軟性をもたせ、満足な操作感を得ることが可能となる。
【0022】
次に、請求項2に記載の発明によれば、操作パネルの図柄を構成する図柄層の上に表面保護層が設けられているから、該表面保護層により、外部から摩擦等の衝撃を受けたときに、図柄層が磨耗して図柄の見栄えが悪くなることが回避される。
【0023】
そして、請求項3に記載の発明によれば、金型を用いて、前記メンブレンスイッチ部を含む操作パネルの全体の成形及び該操作パネルに対する印刷層の転写を同時に行うようにしたから、パネル本体に予め作製したシートを両面テープで貼り付けたものや、該シートを金型内に挿入してパネル本体とシートとを一体化させたものと比較して、シートを予め作る手間を省くことができると共に、該シートを作業者の手作業によりパネル本体に貼り付けたり、金型内に挿入して位置合せを行ったりする必要がなくなり、製造工程の数が削減されて、この種の操作パネルが低コストで製造されることになる。
【0024】
さらに、この方法で製造された操作パネルは、メンブレンスイッチ部を含む操作パネルの全体が一体成形されているから、前述のように、シートとパネル本体との隙間から水分が内側に浸透して製品の故障及び誤作動を引き起こすといった問題がなく、また、軟質性の合成樹脂で成形されているから、メンブレンスイッチ部に柔軟性をもたせ、満足な操作感を得ることができる。
【0025】
そして、請求項4に記載の発明によれば、ベースフィルム層の上に剥離層が設けられ、該剥離層の上に表面保護層が設けられ、該表面保護層の上に図柄を構成する図柄層が設けられてなる転写フィルムを用いて操作パネルに図柄の転写を行うから、図柄層が表面保護層で覆われた操作パネルが得られて、該図柄層の摩擦等の外部からの衝撃に対する耐久性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の合成樹脂を用いてなる操作パネルの実施形態について図面に基いて説明する。
【0027】
図1〜図3は、本実施形態に係る操作パネル1の正面図、及び同図のア−ア線及びイ−イ線による断面図をそれぞれ示しており、該操作パネル1は、周辺部2と、押し下げ操作部を形成する複数のメンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bと、各種の表示を行う表示窓部4a,4b…4bとを備えている。
【0028】
前記メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3b及び表示窓部4a,4b…4bは、軟質性の合成樹脂を用いて前記周辺部2と一体に成形されており、該メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bは、周辺部2の中央部付近の箇所及び下側部分の箇所を、薄膜状に加工すると共に、該操作パネル1の表側に向けて突出させた状態に形成されている。
【0029】
また、表示窓部4a,4b…4bは、操作パネル1の上側部分の箇所を、前記周辺部2よりは薄いが、前記メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bよりは厚目に加工され、突出しない平面状に形成されている。
【0030】
そして、本実施形態では、該操作パネル1は、軟質性の合成樹脂としてエラストマー樹脂を用いて、その成形が行われると同時に、表面への印刷層の転写が行われている。
【0031】
つまり、図4に示すように、メンブレンスイッチ部3a…3aは、その場合に、柔軟なエラストマー樹脂で薄膜状に加工すると共に、操作パネル1の表側に向けて突出させた状態に形成されているから、ソフトなタッチの操作感が得られる。
【0032】
また、操作パネル1の表側の面上には、印刷層の転写が行われており、該印刷層は、操作パネル1の表側の面状に設けられた所定の図柄を形成する図柄層P1と、該図柄層P1の上に設けられた表面保護層P2とから構成されている。
【0033】
そして、該操作パネル1を、メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bの内側に家電製品等の本来のスイッチが位置するように、家電製品等に取り付ければ、前記メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bを押すと、該メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bが押し下げられて、この内側に存在する本来のスイッチがオンまたはオフ状態に設定されることになる。
【0034】
また、メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bは、軟質性の合成樹脂であるエラストマー樹脂で薄膜状に加工されると共に、操作パネル1の表側に突出した状態に形成されているから、ソフトなタッチの操作感が得られることになる。
【0035】
そして、本実施形態の操作パネル1は、メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bを含む操作パネル1の全体が一体成形されているから、操作パネル1を家電製品等の本来のスイッチ取り付ける際に、従来のようにシートとパネル本体との隙間から水分が内側に浸透して製品の故障及び誤作動を引き起こすといった問題が回避される。
【0036】
また、前記操作パネル1の表側の面上には印刷層の転写が行われているが、該印刷層は、操作パネル1の表側の面上に設けられた所定の図柄を構成する図柄層P1と、該図柄層P1の上に設けられた表面保護層P2とから構成されているから、該表面保護層P2により、外部から摩擦等の衝撃を受けたときに、前記図柄層P1が磨耗して操作パネル1の図柄の見栄えが悪くなることが回避される。
【0037】
次に、本実施形態に係る操作パネル1の製造に用いるインモールド転写装置10について説明する。
【0038】
まず、図5は、インモールド転写装置10の断面図を示しており、該インモールド転写装置10は、複数のガイドロッド4…4に支持されて互いに対向して配置された固定側ベース5及び可動側ベース6と、前記固定側ベース5に固定された固定型7と、該固定型7に対向するように可動側ベース6に固定された可動型8とを備えている。
【0039】
そして、前記固定型7は、前記操作パネル1の形状に相当する成形凹部7aを備えていると共に、固定側ベース5に固定された取付ブロック9に、支持ブロック11を介して支持されている。
【0040】
また、溶融状の合成樹脂を注入する射出ノズル12は、前記取付ブロック9に設けられた第1の通路13を介して、取付ブロック9と支持ブロック11との合わせ目に設けられた面状に広がる第2の通路14に接続されている。そして、該第2の通路14は、支持ブロック11に設けられた複数の第3の通路15…15を介して、前記成形凹部7aに開口した複数の射出ゲート16…16に連通されている。
【0041】
さらに、複数のエジェクトピン17…17(一本のみ図示)が、前記固定側ベース5、取付ブロック9、支持ブロック11、及び固定型7に挿通されている。そして、これらのエジェクトピン17…17の基端部は、図示しない駆動機構に取り付けられており、該駆動機構の作動により、成形後の操作パネル1を前記固定型7から突き出して取り出せるようになっている。
【0042】
一方、可動側ベース6の上方箇所には、転写フィルムFの供給手段18が、また下方箇所には、転写フィルムFの巻き取り手段19がそれぞれ装備され、これらの手段18,19により、前記可動型8の成形凹部8aに転写フィルムFを供給することができるようになっている。
【0043】
そして、前記可動型ベース6は、図示しない基台に支持されたシリンダ20により、ガイドロッド4…4を介して前記固定側ベース5に対接離反可能に設けられている。
【0044】
次に、図6は、前記固定型7及び可動型8近傍の拡大断面図を示しており、該固定型7の成形凹部7aの内部の中央及び下側には、前記固定型7から可動型8の方向へ突出したメンブレンスイッチ部成形部7b…7bが設けられていると共に、上側には、同じく固定型7から可動型8の方向へ突出した表示窓部成形部7c…7cが設けられている。そして、前記可動型8の成形凹部8aの内部には、前記メンブレンスイッチ部成形部7bの先端の形に対応するメンブレンスイッチ部成形凹部8bが設けられている。
【0045】
また、図7は、前記インモールド転写装置10に用いる転写フィルムFの断面図を示しており、該転写フィルムFは、ベースフィルム層21の一方の面に剥離層22、表面保護層23、図柄層24及び接着層25がこの順番に積層されている。
【0046】
次に、図5のインモールド転写装置10を用いて操作パネル1を成形する方法について説明する。
【0047】
まず、固定型7に対して可動型8が離反された状態で、転写フィルムFが、転写するべき図柄Pが所定位置に配置されるよう可動型8の成形凹部8aに送り込まれる。
【0048】
次に、シリンダ20の作動により、所定位置に配置された転写フィルムFを固定した上で、可動型8を固定型7に対接するように可動側ベース6を固定側ベース5に接近移動させて型締めが行われる。そして、成形凹部7a,8aで形成されるキャビティ内に溶融状の合成樹脂が射出され、その際の熱と圧力とにより、転写フィルムFが可動型8の成形凹部8aに完全密着し、前記キャビティが溶融状の合成樹脂で充満されて操作パネル1が成形されると同時に、該操作パネル1の可動型8の側の面、すなわち表側の面に転写フィルムFから印刷層の転写が行われる。
【0049】
そして、成形終了後に、可動側ベース6を固定側ベース5から離反させると共に、エジェクトピン17…17が操作パネル1の平面部を突き出して剥離層22を転写フィルムFから剥離させることによって、ベースフィルム層21が除去された操作パネル1が固定型7から取り出されることになる。
【0050】
以上のようにして、固定型7及び可動型8を用いて、前記メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bを含む操作パネル1の全体の成形及び該操作パネル1に対する印刷層の転写を同時に行うようにしたから、パネル本体に予め作製したシートを両面テープで貼り付けたものや、該シートを金型内に挿入してパネル本体とシートとを一体化させたものと比較して、シートを予め作る手間を省くことができると共に、該シートを作業者の手作業によりパネル本体に貼り付けたり、金型内に挿入して位置合せを行ったりする必要がなくなり、製造工程の数が削減されて、図1〜図3で説明した操作パネル1が低コストで製造されることになる。
【0051】
そして、インモールド転写装置10を用いて製造された操作パネル1は、前記メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bを含む操作パネル1の全体が一体成形されているから、前述のようにシートとパネル本体との隙間から水分が内側に浸透して製品の故障及び誤作動を引き起こすといった問題がなく、また、軟質性の合成樹脂で成形されているから、メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bに柔軟性をもたせ、ソフトなタッチの操作感を得ることができる。
【0052】
また、図7で説明した構成の転写フィルムFを用いて操作パネル1に印刷層の転写を行うから、図柄層24が表面保護層23で覆われた操作パネル1が得られて、該図柄層24の摩擦等の外部からの衝撃に対する耐久性を向上させることが可能となる。
【0053】
次に、前記図5で説明したインモールド転写装置10と同じ構成のインモールド転写装置で、前記操作パネル1の製造を行う際に、2つの転写フィルムを用いて、該操作パネル1の表と裏との両側の面に対して図柄の転写を行う場合について説明する。なお、前記インモールド転写装置10と重複する部分についての説明は省略する。
【0054】
まず、図8は、メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3b及び表示窓部4a,4b…4bを含む操作パネル1の全体を一体成形すると同時に該操作パネル1の表と裏との両側の面に対して印刷層の転写を行うためのインモールド転写装置50の断面図を示しており、可動側ベース6の上方箇所には、第1転写フィルムF1の第1供給手段18aが、また下方箇所には、第1転写フィルムF1の第1巻き取り手段19aが装備され、固定側ベース5の上方箇所には、第2転写フィルムF2の第2第供給手段18bが、また下方箇所には、第2転写フィルムF2の第2巻き取り手段19bがそれぞれ装備されている。
【0055】
そして、これらの手段18a,18b,19a,19bにより、前記可動型8の成形凹部8aに第1転写フィルムF1を供給し、前記固定型7の成形凹部7aに第2転写フィルムF2を供給することができるようになっている。また、溶融状の合成樹脂を供給する射出ゲート16…16が、その先端の供給口(図示せず)を支持ブロック11の側方に一旦退避させてから第2転写フィルムF2と成形凹部7aとの間の空間に向けた状態で設けられている。
【0056】
次に、前記インモールド転写装置50を用いて表と裏との両側の面に印刷層の転写が施された操作パネルを製造する方法について説明する。
【0057】
前記可動型8を固定型7に対接するように可動側ベース6を固定側ベース5に接近移動させて型締めを行う際に、前記射出ゲート16…16の図示しない供給口により、固定型7及び可動型8の成形凹部7a,8aで形成されるキャビティ内における前記第1、第2転写フィルムF1,F2の間の空間に溶融状の合成樹脂を供給すると共に、その際の合成樹脂の熱と圧力により、第1、第2転写フィルムF1,F2がそれぞれ可動型8の成形凹部8a及び固定型7の成形凹部7aに完全密着する。そして、前記キャビティ内に溶融状の合成樹脂が充満されて操作パネルが成形されると同時に、該操作パネルの可動型8の側の面(すなわち表側の面)と固定型側7の面(すなわち裏側の面)に第1、第2転写フィルムF1,F2から印刷層の転写が行われる。
【0058】
以上のようにして、インモールド転写装置50により、操作パネルの表と裏との両側の面に対して印刷層の転写を行うことで、該操作パネルを表側から見たときに、表側の面の図柄に加え、裏側の面の図柄が透明の樹脂からなる操作パネルの本体を介して見えるため、前記操作パネル1の外観に立体感と深み感をもたせて、操作パネルの表側の面のみに図柄の転写を行う場合と比較して該操作パネル1の意匠性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、前記第1、第2転写フィルムF1,F2は、図6で説明した転写フィルムFと同じ構成のフィルムであるため、前記操作パネル1の表側の面の図柄の図柄層は、表面保護層により、摩擦等の衝撃に対する耐久性が向上しており、裏側の面の図柄の図柄層は、前記操作パネル1を家電製品等の本来のスイッチに取り付ける際に、該操作パネル1と製品との間の位置に存在することになり、外部から摩擦等の衝撃を受けて該図柄層が磨耗したり、剥離したりする問題は生じない。
【0060】
なお、前記実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の修正・変更が可能であることはいうまでもない。
【0061】
本実施形態では、軟質性の合成樹脂の一例としてエラストマー樹脂を用いて操作パネルの成形を行う場合について説明してきたが、エラストマー樹脂として例えばポリウレタン系の樹脂等が使用可能であり、エラストマー樹脂以外でも合成樹脂として例えばPET系の樹脂等が使用可能である。
【0062】
また、メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bの操作感については、使用する合成樹脂の種類を変えたり、該メンブレンスイッチ部3a…3a,3b…3bの肉厚を変えることにより容易に調整を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明によれば、合成樹脂製操作パネル及びその製造方法において、製造工程を短縮して製造コストの削減を図ると共に、操作パネルを家電製品等の本来のスイッチの上に設けて使用する際に、水分が内側に浸透して故障及び誤動作を引き起こす問題を回避することが可能であり、しかもメンブレンスイッチ部を押したときに満足な操作感得ることができる操作パネル及びその製造方法を提供することが可能となり、合成樹脂成形の技術分野に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る操作パネルの正面図である。
【図2】図1のア−ア線による断面図である。
【図3】図1のイ−イ線による断面図である。
【図4】図3の拡大図である。
【図5】本実施形態で用いるインモールド転写装置の断面図である。
【図6】図5の可動型及び固定型近傍の拡大図である。
【図7】図5の装置に用いる転写フィルムの断面図である。
【図8】2つの転写フィルムを用いて操作パネルの表と裏との両側の面に印刷層の転写を行うときに用いるインモールド転写装置の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 操作パネル
2 周辺部
3a,3b メンブレンスイッチ部
4a,4b 表示窓部
21 ベースフィルム層
22 剥離層
23 表面保護層
24 図柄層
25 接着層
F,F1,F2 転写フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉状のメンブレンスイッチ部を有する合成樹脂製操作パネルであって、
前記メンブレンスイッチ部を含むパネル全体が軟質性の合成樹脂により一体成形されていると共に、表側及び裏側の少なくとも一方の面に、インモールド転写法により成形と同時に転写フィルムからの印刷層の転写が施されていることを特徴とする合成樹脂製操作パネル。
【請求項2】
前記請求項1に記載の合成樹脂製操作パネルにおいて、
操作パネルの表側及び裏側の少なくとも一方の面に施されている印刷層は、操作パネル上に設けられた図柄を構成する図柄層と、
該図柄層の上に設けられた表面保護層とからなることを特徴とする合成樹脂製操作パネル。
【請求項3】
薄肉状のメンブレンスイッチ部を有する合成樹脂製操作パネルの製造方法であって、
軟質性の合成樹脂を用いて前記メンブレンスイッチ部を含むパネル全体の一体成形を行うと共に、表側或いは裏側の少なくとも一方の面に、インモールド転写法により成形と同時に転写フィルムからの印刷層の転写を施すことを特徴とする合成樹脂製操作パネルの製造方法。
【請求項4】
前記請求項3に記載の合成樹脂製操作パネルの製造方法において、
ベースフィルム層の上に剥離層が設けられ、
該剥離層の上に表面保護層が設けられ、
該表面保護層の上に図柄を構成する図柄層が設けられてなる転写フィルムを用いて操作パネル上に印刷層の転写を施すことを特徴とする合成樹脂製操作パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−212965(P2006−212965A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29079(P2005−29079)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(596044446)エヌアイエス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】