説明

合成膜アンカー

本発明は、脂質二重層(細胞膜が含まれる)に自発的且つ安定に組み込まれる合成分子に関する。詳細には、本発明は、細胞表面抗原の発現を定性的および定量的に変化させるための合成膜アンカーまたは合成分子構築物としてこれらの分子の使用に関するが、これに限らない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自発的かつ安定に、細胞膜を含む脂質二重層に取り込まれる合成分子に関する。特に、排他的ではないが、本発明はこれらの分子を細胞表面抗原の発現に定性的および定量的変化を生じさせる合成膜アンカーまたは合成分子構築物としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞表面抗原は細胞とその環境との間の種々の相互作用を媒介する。これらの相互作用には細胞−細胞相互作用、細胞−表面相互作用および細胞−溶質相互作用が含まれる。細胞表面抗原は細胞内シグナル伝達も媒介する。
細胞は発現している表面抗原の定性的および定量的相違によって特徴づけられる。発現している表面抗原の定性的および定量的変化は細胞機能(作用機序)(function)および細胞作用(提供される作用)(functionality)の両方を変化させる。
細胞によって発現されている表面抗原に定性的および/または定量的変化を生じさせることができれば、診断および治療的価値がある。細胞によって発現されている表面抗原に定性的および/または定量的変化を生じさせるトランスジェニックおよび非トランスジェニック手法が知られている。
【0003】
プロテインペインティングは細胞によって発現される表面抗原を定性的および/または定量的に変化させるための非トランスジェニック方法である。この方法はGPI結合タンパク質がその脂質尾部を介して細胞膜に自発的に係留される能力を利用する。国際出願PCT/US98/15124(WO 99/05255)の明細書に記載されたこの方法は生物学的供給源から単離されたGPI結合タンパク質を膜に挿入する工程を含む。単離されたGPI-結合タンパク質は細胞表面膜と再統合する異常な能力を有していると述べられている。
細胞は水性環境中に存在している。細胞膜は細胞の細胞質とこの水性環境との間の半透過性障壁として役割を果たす脂質二重層である。細胞表面への抗原の局在化は膜アンカーとしての糖脂質の使用によっても達成され得る。
PCT/NZ02/00214(WO 03/034074)の明細書に記載の方法には制御された量の糖脂質を膜に挿入する工程を含む。挿入する糖脂質の量は所望のレベルの抗原発現を細胞に与えるよう制御される。
PCT/NZ03/00059(WO 03/087346)の明細書に記載の方法は、改変した糖脂質を「膜アンカー」として膜に挿入する工程を含む。前記改変した糖脂質は抗原を細胞の表面または多細胞構造物の表面へ局在化させる。これによって細胞または多細胞構造物に新たな特徴が与えられる。
【0004】
これらの方法は典型的には生物学的供給源からの糖脂質または糖脂質結合抗原の単離を含む。生物学的供給源からの糖脂質または糖脂質結合抗原の単離は費用がかかり、変動しやすい単離可能な量は限られている。動物供給源から得られた物質の治療的使用は問題が起きやすく、特にその物質又はその由来生成物がヒト患者に投与される場合は問題である。
動物病原体の混入というリスクが除去され得る合成分子が好ましい。天然に存在する糖脂質の合成対応物および合成の新糖脂質が報告されている。しかしながら膜アンカーとして使用すべき合成糖脂質については水性環境から脂質二重層へ自発的かつ安定に取り込まれ得る必要性がある。診断又は治療用途における合成糖脂質の有用性は生理食塩水中で用的を構成するであろう合成糖脂質に更に限定される。
糖脂質の生理食塩水中の溶解を容易にするために使用する溶媒および/または界面活性剤は生体共存性でなければならない。溶媒または界面活性剤は、ある種の細胞膜を損傷し得るので、除外されるか迅速に除去されなければならない。そのような調製物からの溶媒または界面活性剤の除去は問題が多い。
【0005】
細胞膜への損傷は避けなければならず、特に細胞または多細胞構造物の供給が制限されている場合(例えば胚)、または細胞が特に撹乱に感受性である場合(例えば肝細胞)は避けなければならない。
細胞膜を含む脂質二重層へ自発的かつ安定に取り込まれる能力という点で天然に存在する糖脂質および糖脂質結合抗原に機能的に透過である水溶性合成分子が望まれている。
そのような合成分子を提供することは生物学的供給源から単離される糖脂質および糖脂質結合抗原の限界を取り除き、細胞によって発現される表面抗原の定性的および/または定量的変化を生じさせることを容易にするであろう。
【0006】
そのような合成分子およびそれらを調製する方法を提供することは本発明の目的の一つである。診断及び治療用途に使用するためにそれらの合成分子を提供することは本発明のさらなる目的の一つである。これらの目的は公衆に有用な選択肢を提供するという目的とは分離して理解されるべきである。
【発明の開示】
【0007】
本発明の第1の側面において本発明は、合成膜アンカーとして使用するまたは合成分子構築物の調製に使用するためのR-S2-Lなる構造の分子である。R-S2-Lの式中、
Rは化学的に反応性の官能基;
S2はRをLに結合させるスペーサー;
Lは、グリセロリン脂質を含むジアシル-グリセロ脂質およびジアルキル-グリセロ脂質、および、セラミドを含むスフィンゴシン由来ジアシル-脂質およびジアルキル-脂質を含む群より選ばれる脂質である。
好ましくはRは、ビス(N-ヒドロキシスクシンイミジル)、ビス(4-ニトロフェニル)、ビス(ペンタフルオロフェニル)、ビス(ペンタクロロフェニル)からなる群より選ばれる。
好ましくはS2は、-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート(Ad))、および-CO(CH2)5CO-を含む群より選ばれる。
好ましくはRとS2はエステル結合している。
【0008】
好ましくは、Lはグリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質からなる群から選択される。さらに好ましくは、Lは、1つまたは複数のtrans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9−オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸、またはcis-13-ドコセン酸に由来するジアシルグリセロ脂質、ホスファチデート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールおよびジホスファチジルグリセロールからなる群より選ばれる。より好ましくは、脂質は、1つまたは複数のcis-不飽和脂肪酸に由来する。最も好ましくは、Lは、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、およびrac-1,2-ジオレオイルグリセロール(DOG)からなる群から選択される。
【0009】
好ましくは、Lはグリセロリン脂質であって、前記分子は以下の基礎構造を含む:

(式中、n=3〜5であって*はHではない。好ましくは、nは3である。)
【0010】
特定の態様では前記分子はAd-Dopeと命名される以下の構造を有する:

または、sp1-Ad-DOPEと命名される以下の構造を有する:

または、Ad-DSPEと命名される以下の構造を有する:

【0011】
Mは典型的にはHであるが、Na+、K+またはNH4+のような一価の他のカチオンに置換することができる。
【0012】
第2の側面において本発明は、
F-S1-S2-L
(式中、Fは、炭水化物、タンパク質、脂質、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群から選択される抗原であり、
S1-S2はFとLとを結合させるスペーサーであり、
Lは、グリセロリン脂質が含まれるジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質ならびにセラミドが含まれるスフィンゴシン由来のジアシル脂質およびジアルキル脂質からなる群から選択される脂質である)という構造を有する合成分子である。
好ましくは前記分子は水溶性である。
【0013】
好ましくは、この分子はその溶液が脂質二重層と接触した場合にその脂質二重層に自発的に取り込まれる。より好ましくは、この分子は脂質二重層に安定に取り込まれる。
好ましくは、F、S1、S2およびLは共有結合している。
好ましくはFは天然に存在するまたは合成グリコトープ、抗体(免疫グロブリン)、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群から選ばれる。より好ましくは、Fは天然に存在するまたは合成されたグリコトープおよび抗体(免疫グロブリン)からなる群より選ばれる。
【0014】
好ましくは、Lはグリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質からなる群から選ばれる脂質である。より好ましくは、Lは1つまたは複数のtrans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9−オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸、またはcis-13-ドコセン酸に由来するジアシルグリセロ脂質、ホスファチデート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールおよびジホスファチジルグリセロールからなる群より選ばれる。より好ましくは、脂質は、1つまたは複数のcis-不飽和脂肪酸に由来する。最も好ましくは、Lは、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、およびrac-1,2-ジオレオイルグリセロール(DOG)からなる群から選択される。
【0015】
好ましくは、Lがグリセロリン脂質であり、前記分子は以下の基礎構造を含む:

(式中、n=3〜5、XはHまたはCであり、*はH以外である。好ましくは、nは3である。)
【0016】
S1-S2は水溶性合成分子構築物を生じるように選ばれる。
【0017】
第1の態様では、Fは、天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである。好ましくは、Fは、3つ(トリサッカリド)またはそれ以上の糖単位からなる天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである。より好ましくは、Fは、一連のラクト−ネオ−テトラオシル、ラクトテトラオシル、ラクト−ノル−ヘキサオシル、ラクト−イソ−オクタオシル(-octaosyl)、グロボテトラオシル(globoteraosyl)、グロボ−ネオ−テトラオシル、グロボペンタオシル(globopentaosyl)、ガングリオテトラオシル、ガングリオトリアオシル、ガングリオペンタオシル(gangliopentaosyl)、イソグロボトリアオシル、イソグロボテトラオシル、ムコトリアオシル(mucotriaosyl)、およびムコテトラオシル(mucotetraosyl)オリゴ糖からなる群から選択されるグリコトープである。最も好ましくは、Fは以下の末端糖を含むグリコトープからなる群より選ばれる:GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ;Galα1-3Galβ;Galβ;Galα1-3(Fucα1-2)Galβ;NeuAcα2-3Galβ;NeuAcα2-6Galβ;Fucα1-2Galβ;Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;またはGalNAcβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc。
Fがグリコトープである場合、Lはグリセロリン脂質であり、S2は-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート)、-CO(CH2)5CO-、および-CO(CH2)5NHCO(CH2)5CO-を含む群から選択され、好ましくは、S1は、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、または5-アミノペンチルからなる群から選択されるC3-5アミノアルキルである。より好ましくは、S1は3-アミノプロピルである。
【0018】
第2の態様において、Fは細胞−細胞相互作用または細胞−表面相互作用を媒介する分子である。好ましくは、Fは標的細胞または表面上で発現している構成成分に対して親和性を有する炭水化物、タンパク質または脂質である。より好ましくは、Fは、上皮細胞または細胞外基質上に発現した成分に親和性を有する。さらにより好ましくは、Fは、子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した成分に親和性を有する。最も好ましくは、子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分は、天然に発現する成分または外来的に組み込まれた成分であり得る。
【0019】
第3の態様において、Fは細胞−溶質相互作用を媒介する分子である。好ましくは、Fは結合分子のリガンドであって、前記結合分子の存在は病的状態の指標である。より好ましくは、Fは抗体(免疫グロブリン)に対するリガンドである。
特定の実施態様において、この水溶性合成分子構築物は、
Atri-sp-Ad-DOPE(I)と命名される以下の構造:


【0020】
Atri-spsp1-Ad-DOPE(II)と命名される以下の構造:


【0021】
Atri-sp-Ad-DSPE(III)と命名される以下の構造:


【0022】
Btri-sp-Ad-DOPE(VI)と命名される以下の構造:


【0023】
Htri-sp-Ad-DOPE(VII)と命名される以下の構造:


【0024】
Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII)と命名される以下の構造:


【0025】
Galβi-sp-Ad-DOPE(IX)と命名される以下の構造:


【0026】
Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII)と命名される以下の構造:


【0027】
または、Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)と命名される以下の構造:

【0028】
を有する。
Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、NH4+のような他の一価のカチオンで置換することができる。
【0029】
第3の側面において本発明は、以下の工程を含む、構造F-S1-S2-Lの合成分子を調製する方法である:
1.活性化因子(A)と脂質(L)とを反応させて活性化脂質(A-L)を得る工程;
2.抗原(F)を誘導体化して抗原誘導体(F-S1)を提供する工程;
3.A-LとF-S1とを縮合して分子を得る工程であって、
Aが、カルボジオン酸(carbodioic acid)(C3〜C7)のbis(N-ヒドロキシスクシンイミジル)エステル、bis(4-ニトロフェニル)エステル、bis(ペンタフルオロフェニル)エステル、bis(ペンタクロロフェニル)エステルを含む群から選択される活性化因子であり;
Lが、グリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質、およびセラミドを含むスフィンゴシン由来ジアシル脂質およびジアルキル脂質からなる群より選ばれる脂質であり;
Fが、炭水化物、タンパク質、脂質、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群より選ばれる抗原であり;
S1-S2は、FとLとを結合させるスペーサーであって、S1は第一級アミノアルキル、第二級脂肪族アミノアルキル、および第一級芳香族アミンを含む群から選ばれ、S2は存在しないか、または-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート)、および-CO(CH2)5CO-を含む群から選ばれる。
好ましくは、前記分子は水溶性である。
好ましくは、この分子は、前記分子溶液が脂質二重層と接触した場合に、自発的に脂質二重層に組み込まれる。より好ましくは、前記分子は、脂質二重層に安定に組み込まれる。
好ましくは、F、S1、S2、およびLは共有結合している。
好ましくは、Fは、天然に存在するまたは合成グリコトープ、抗体(免疫グロブリン)、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群から選択される。最も好ましくは、Fは天然に存在するグリコトープ、合成されたグリコトープ、および抗体(免疫グロブリン)からなる群より選ばれる。
【0030】
好ましくは、Lはグリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質を含む群から選ばれる。より好ましくは、Lは1つまたは複数のtrans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9−オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸、またはcis-13-ドコセン酸(docsenoic acid)に由来するジアシルグリセロ脂質、ホスファチデート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールおよびジホスファチジルグリセロールからなる群より選ばれる。より好ましくは、脂質は、1つまたは複数のcis-不飽和脂肪酸に由来する。最も好ましくは、Lは、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、およびrac-1,2-ジオレオイルグリセロール(DOG)からなる群から選ばれる。
【0031】
好ましくは、Lがグリセロリン脂質であって、前記分子は以下の基礎構造を含む:

(式中、n=3〜5、XはHまたはCであり、*はH以外である。好ましくは、nは3である。)
好ましくは、A(R-S2)およびS1は、水溶性合成分子構築物を生じさせるように選ばれる。
【0032】
第1の態様において、Fは、天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである。好ましくは、Fは、3つ(トリサッカリド)またはそれ以上の糖単位からなる天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである。より好ましくは、Fは、一連のラクト−ネオ−テトラオシル、ラクトテトラオシル、ラクト−ノル−ヘキサオシル、ラクト−イソ−オクタオシル(-octaosyl)、グロボテトラオシル(globoteraosyl)、グロボ−ネオ−テトラオシル、グロボペンタオシル(globopentaosyl)、ガングリオテトラオシル、ガングリオトリアオシル、ガングリオペンタオシル(gangliopentaosyl)、イソグロボトリアオシル、イソグロボテトラオシル、ムコトリアオシル(mucotriaosyl)、およびムコテトラオシル(mucotetraosyl)オリゴ糖からなる群から選択されるグリコトープである。最も好ましくは、Fは以下の末端糖を含むグリコトープからなる群より選ばれる:GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ;Galα1-3Galβ;Galβ;Galα1-3(Fucα1-2)Galβ;NeuAcα2-3Galβ;NeuAcα2-6Galβ;Fucα1-2Galβ;Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;またはGalNAcβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc。
Fがグリコープである場合、Lはグリセロリン脂質であり、S2は-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート)、-CO(CH2)5CO-、および-CO(CH2)5NHCO(CH2)5CO-からなる群から選択され(例えば、Aがbis(N-ヒドロキシスクシンイミジルアジペートである)、好ましくは、S1は、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、または5-アミノペンチルからなる群から選択されるC3-5アミノアルキルである。より好ましくは、S1は3-アミノプロピルである。
【0033】
第2の態様において、Fは細胞−細胞相互作用または細胞−表面相互作用を媒介する分子である。好ましくは、Fは標的細胞または表面上で発現している構成成分に対して親和性を有する炭水化物、タンパク質または脂質である。より好ましくは、Fは、上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分に親和性を有する。さらにより好ましくは、Fは、子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分に親和性を示す。最も好ましくは、子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分は、天然に発現する成分または外来的に組み込まれた成分であり得る。
【0034】
第3の態様において、Fは細胞−溶質相互作用を媒介する分子である。好ましくは、Fは結合分子のリガンドであって、前記結合分子の存在が病的状態の指標である。より好ましくは、Fは抗体(免疫グロブリン)に対するリガンドである。
特定の実施態様において、この水溶性合成分子構築物は、
Atri-sp-Ad-DOPE(I)と命名される以下の構造:


【0035】
Atri-spsp1-Ad-DOPE(II)と命名される以下の構造:


【0036】
Atri-sp-Ad-DSPE(III)と命名される以下の構造:


【0037】
Btri-sp-Ad-DOPE(VI)と命名される以下の構造:


【0038】
Htri-sp-Ad-DOPE(VII)と命名される以下の構造:


【0039】
Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII)と命名される以下の構造:


【0040】
Galβi-sp-Ad-DOPE(IX)と命名される以下の構造:


【0041】
Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII)と命名される以下の構造:


【0042】
または、Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)と命名される以下の構造:

【0043】
を有する。
Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、NH4+のような他の一価のカチオンで置換することができる。
【0044】
第4の側面において本発明は、本発明の第3の側面の方法によって調製された水溶性合成分子構築物である。
第5の側面において本発明は、
1.細胞または多細胞構造物の懸濁物を本発明の第2又は第4の側面の合成分子構築物と、前記細胞または多細胞構造物によって発現される表面抗原に定性的および/または定量的変化を生じさせるのに十分な時間および温度で接触させる工程を含む、細胞または多細胞構造物によって発現される表面抗原に定性的および/または定量的変化を生じさせる方法である。
好ましくは前記細胞または多細胞構造物はヒト起源またはマウス起源である。
好ましくは、前記懸濁物中の水溶性合成分子構築物の濃度は、0.1〜10mg/mLの範囲である。
好ましくは、前記温度は2〜37℃の範囲である。より好ましくは、前記温度は2〜25℃の範囲である。最も好ましくは、前記温度は2〜4℃の範囲である。
第1の態様において、前記細胞は赤血球細胞である。
【0045】
この態様において、Fは好ましくは以下の末端糖を含むグリコトープの群より選ばれる:GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ;Galα1-3Galβ;Galβ;Galα1-3(Fucα1-2)Galβ;NeuAcα2-3Galβ;NeuAcα2-6Galβ;Fucα1-2Galβ;Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;またはGalNAcβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc。より好ましくは、Fはオリゴ糖、GalNAcα1-3(Fucα1-2)GalβおよびGalα1-3(Fucα1-2)Galβからなる群より選ばれる。
好ましくはこの合成分子は、以下を含む群より選ばれる:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【0046】
第2の態様において、前記多細胞構造物は胚である。
この態様では、Fは接着分子であり、前記接着分子は子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分に親和性を有する。
子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した前記構成成分は天然に発現する構成成分または外来的に組み込まれた構成成分であり得る。
好ましくは前記合成分子構築物は、以下を含む群より選ばれる:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【0047】
第3の態様において、前記細胞は赤血球細胞である。
この態様において、好ましくは、Fは結合分子に対するリガンドであって、前記結合分子の存在は病的状態の診断指標である。より好ましくはFは抗体(免疫グロブリン)に対するリガンドである。
【0048】
本発明の第6の側面は、本発明の第2または第4の側面による水溶性合成分子構築物を取り込んだ細胞または多細胞構造物である。
好ましくは前記細胞または多細胞構造物はヒトまたはマウス起源である。
第1の態様において、前記細胞は以下を含む群より選ばれる水溶性合成分子構築物を取り込んだ赤血球細胞である:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
第2の態様において、前記多細胞構造物は以下からなる群より選ばれる水溶性合成分子構築物を取り込んだ胚である:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【0049】
本発明の第7の側面は、本発明の第1の側面による分子の乾燥調製物若しくは溶液を含むキット、または、本発明の第2の側面または第4の側面による水溶性合成分子構築物の乾燥調製物若しくは溶液を含むキットである。
好ましくは本発明の第1の側面による分子はAd-DOPE;sp1-Ad-DOPEおよびA-DSPEからなる群より選ばれる。
好ましくは本発明の第2の側面または第4の側面による水溶性合成分子構築物は以下からなる群より選ばれる:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【0050】
本発明の第8の側面は、懸濁溶液中に本発明の第6の側面の細胞または多細胞構造物の懸濁物を含むキットである。
好ましくは、前記懸濁溶液は実質的に脂質を含まない。
好ましくは、前記細胞または多細胞構造物はヒトまたはマウス起源である。
好ましくは前記細胞は天然にはA-抗原またはB-抗原を発現せず、以下からなる群より選ばれる水溶性合成分子構築物を取り込んだ赤血球細胞である:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。より好ましくは、前記細胞は感受性コントロールである。
【0051】
本発明の第9の側面は、本発明の第2または第5の水溶性合成分子構築物の乾燥調製物または溶液を含む医薬調製物である。
好ましくは前記医薬調製物は吸入投与用の形態である。
好ましくは前記医薬調製物は注射投与用の形態である。
【0052】
本発明の第10の側面は、本発明の第6の側面の細胞または多細胞構造物を含む医薬調製物である。
前記細胞または多細胞構造物はヒトまたはマウス起源である。
好ましくは前記医薬調製物は吸入投与用の形態である。
好ましくは前記医薬調製物は注射投与用の形態である。
【0053】
(詳細な記載)
本発明の合成分子構築物は、その分子の溶液が脂質二重層と接触した場合に、自発的且つ安定に膜などの脂質二重層に組み込まれる。理論に拘束されることを望まないが、脂質(L)の脂質尾部の膜への挿入が熱力学的に好まれると考えられる。その後の脂質膜からの合成分子構築物の解離は、熱力学的に好ましくないと考えられる。驚いたことに、本明細書中で同定された合成分子は水溶性であることも見出された。
本発明の合成分子構築物は、細胞を形質転換し、発現した表面抗原を定性的および/または定量的に変化させるために使用される。本発明の細胞の形質転換は遺伝子操作による細胞の形質転換と区別されると認識される。本発明は、遺伝的形質転換を行わない、表現型の形質転換を提供する。
この説明の文脈では、細胞に関する用語「形質転換」を、外来的に調製された合成分子構築物の細胞膜への挿入または組み込みとそれによる細胞によって発現される細胞表面抗原の定性的および定量的変化をいうために使用する。
【0054】
本発明の合成分子構築物は、スペーサー(S1-S2)を介して脂質部分(または成分)に結合した抗原(F)を含む。合成分子構築物を、抗原の第一級アミノアルキル誘導体、第二級脂肪族アミノアルキル誘導体、または第一級芳香族アミン誘導体と活性化脂質との縮合によって調製することができる。ネオ複合糖の調製方法は概説されている(Bovin,N.Biochem.Soc.Symp.,69,143-160)。
望ましい表現型形質転換は、1工程法または2工程法において本発明の合成分子構築物を使用して行うことができる。1工程法では、水溶性合成分子構築物(F-S1-S2-L)は、Fとして表面抗原を含む。
2工程法では、合成分子構築物(F-S1-S2-L)は、膜への合成分子構築物の挿入後に表面抗原を結合することができる官能基としての役割を果たす抗原(F)を含む。この官能基は、レクチン、アビジン、またはビオチンなどの基であり得る。2工程法で使用される場合、合成分子構築物は、合成膜アンカーとして作用する。
本発明によれば、第一級アミノアルキル、第二級脂肪族アミノアルキル、または第一級芳香族アミン、および脂質の活性化因子を、水溶性を示し、且つ合成分子構築物溶液を脂質二重層と接触させた場合に脂質二重層に自発的且つ安定に組み込まれる合成分子構築物が得られるように選択する。
【0055】
この説明の文脈では、用語「水溶性」は、合成分子構築物を、有機溶媒または界面活性剤の非存在下で水または生理食塩水(PBSなど)と接触させた場合に安定な単相系を形成することを意味し、用語「溶液」は対応する意味を有する。
この説明の文脈では、句「安定に組み込まれる」は、合成分子構築物が脂質二重層または膜に組み込まれ、その後の前記脂質二重層または膜と前記脂質二重層または膜の外部水生環境との間の交換が最小であることを意味する。
第一級アミノアルキル、第二級脂肪族アミノアルキル、または第一級芳香族アミン、および活性化因子の選択は、脂質(L)に結合すべき抗原(F)の物理化学的性質に依存する。
ジアシルグリセロ脂質またはジアルキルグリセロ脂質と膜との間の相互作用などの非特異的相互作用について、天然に存在する脂質の構造異性体または立体異性体は機能的に等価であり得ることが当業者に理解される。例えば、本発明者らは、ホスファチデート(ジアシルグリセロール3-ホスフェート)をジアシルグリセロール2-フォスフェートに置換することができることを意図する。さらに、本発明者らは、ホスファチジン酸の絶対配置がR配置またはS配置のどちらでもよいことを意図する。
本発明者らは、抗原(F)がABO血液型のA抗原、B抗原、およびH抗原のグリコトープ群から選択される本発明の合成分子構築物を調製するために、第一級アミノアルキル、第二級脂肪族アミノアルキル、または第一級芳香族アミン、および活性化因子を、以下の1つの構造を有するスペーサー(S1-S2)が得られるように選択すべきであると判断した。
【0056】

【0057】
一旦所与の種類の抗原についてスペーサー(S1-S2)が決定されると、同一のスペーサー構造を、類似の物理化学的性質を有する他の種類の抗原の合成分子構築物を調製するために採用することができると当業者に理解される。
例えば、FがABO血液型のA抗原、B抗原、またはH抗原のグリコトープである合成分子構築物(F-S1-S2-L)のスペーサーの構造は、ABO血液型のA抗原、B抗原、およびH抗原のグリコトープに類似の物理化学的性質を有する他の抗原の合成分子構築物を調製するために選択したスペーサーの構造であり得る。
原理上、広範な血液型関連糖脂質または糖タンパク質のグリコトープが、合成分子構築物F-S1-S2-L(式中、S1-S2-Lは、Atri-sp-Ad-DOPE(I)、Atri-spsp1-Ad-DOPE(II)、Atri-sp-Ad-DSPE(III)、Btri-sp-Ad-DOPE(VI)、Htri-sp-Ad-DOPE(VII)、Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII)、Galβ-sp-Ad-DOPE(IX)、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Gaβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII)、およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)と命名された合成分子構築物の対応部分と同一であるか等価である)の抗原(F)であり得る。
【0058】
公知の血液型関連糖脂質および糖タンパク質の構造(引例を参照のこと)を、以下のリストに示す。
【0059】
糖脂質*
(*一般には、A-抗原のほとんど全ての例について末端のA糖GalNAcはB糖Galで置換することができる。更に、AおよびB決定基のいずれも無い場合は等価なH決定基が形成される)
A-6-1

A-6-2

A-7-2 (ALey)

A-7-1 (ALeb)

A-7-4

【0060】
A-8-2

A-9-3

A-12-2

A-14-2

A-16-2

【0061】
ラクトシルセラミド

ヘマトシド/GM3

ラクトトリアオシルセラミド

グロボトリアオシルセラミド/PK

グロボシド/P

パラグロボシド/ネオラクトテトラオシルセラミド

Lec-4/ラクトテトラオシルセラミド

【0062】
シアロイルパラグロボシド/シアロイルネオラクトテトラオシルセラミド

H-5-1

Lex-5

H-5-2

Lea-5

【0063】
シアリルLex

シアリルLea-6/胃腸癌抗原(GICAまたはCa 19-9)

ジシアロイルLea-7

Leb-6

Ley-6

【0064】
P-様

フォルスマン抗原

Cad赤血球

Cad 肝臓がん抗原

P1

LKE/'GL 7/SSEA-4

【0065】
B-6-1

H-6-4

B-6-2

BLeb-7

BLey-7

【0066】
i抗原/ラクト-N-ノル-ヘキサオシルセラミド

シアリル-ノル-ヘキサオシルセラミド/シアロイル-ラクト-N-ノル-ヘキサオシルセラミド

Lex-7

H-8-3

Lex-8

Leb-8

Lea-11

【0067】
B-8-2

I抗原

Lec-9(フコシル化骨格)

Lec-9(フコシル化分枝)

VIM-2

赤血球FI抗原

【0068】
Lex-11

B-12-2

B-14-2

B-16-2

I-活性ポリグリコシルセラミド

【0069】
O-結合糖タンパク質
モノシアロ三糖

ジシアロ四糖

ジシアロイル型オリゴ糖

【0070】
H-活性三糖

シアル化H-活性四糖

Cad オリゴ糖

【0071】
GlcNAcオリゴ糖

ムチンオリゴ糖/A-活性糖タンパク質

卵巣嚢腫A-活性糖タンパク質-6a

卵巣嚢腫A-活性糖タンパク質-6b

卵巣嚢腫Lea-活性糖タンパク質-7

卵巣嚢腫Lea-活性糖タンパク質-10

卵巣嚢腫A-活性糖タンパク質-18

【0072】
N-結合糖タンパク質
複合型/アルカリ-安定鎖

ハイブリッド型

タム−ホースフォール糖タンパク質

【0073】
高マンノース型

ジシアル胎児赤血球抗原

トリシアロイル胎児赤血球抗原(分枝上にジシアロイル基)

モノフコシル-モノシアリル胎児赤血球抗原(フコシル化骨格)

モノフコシル-モノシアリル胎児赤血球抗原(フコシル化分枝)

【0074】
モノフコシル-ジシアリル胎児赤血球抗原(分枝上にジシアリル基)

ジフコシル胎児赤血球抗原

胎児ラクトサミノグリカン

成人ラクトサミノグリカン

モノフコシル-モノシアロイル成人赤血球抗原

モノフコシル-モノシアロイル成人赤血球抗原

ジフコシル成人赤血球抗原

キー:Gl=D-Gal、Gc=D-Glc、GcN=D-GlcNAc、M=D-Man、F=L-Fuc、NA=NeuAc
【0075】
Fがオリゴ糖である場合の本発明の合成分子構築物(F-S1-S2-L)を「合成糖脂質」として使用することができ、生物(植物または動物)源から得た糖脂質の代わりにすることができると当業者に理解される。
本発明のこの説明の文脈では、用語「糖脂質」は、両親媒性の脂質含有炭水化物(グリコシル化ホスホグリセリドおよびグリコシルグリセリドなどのグリコシル化グリセロ脂質、グリコシルセラミドまたはセレブロシドなどのグリコシル化スフィンゴ脂質(中性糖脂質)、ならびにガングリオシド(酸性糖脂質)が含まれる)を意味する。
本発明のこの説明の文脈では、句「糖脂質結合抗原」は、抗原(例えば、タンパク質)が分子の炭水化物部分を介して糖脂質に結合した脂質含有炭水化物を意味する。糖脂質結合抗原の例には、GPI-結合タンパク質が含まれる。
【0076】
糖脂質自体が抗原であると当業者に理解される。用語および句「糖脂質」および「糖脂質結合抗原」を、抗原が糖脂質である天然に存在する分子と抗原が糖脂質の炭水化物部分を介して糖脂質に結合している天然に存在する分子とを区別するために使用する。同様に、抗原自体が合成糖脂質であるのか合成糖脂質に付着しているのかという範囲で、本発明の合成分子構築物を、「合成糖脂質」および合成膜アンカーと記載することができる。
国際出願番号PCT/NZ2003/00059(WO03087346として公開)に添付の明細書中に記載の方法によって糖脂質の炭水化物部分を修飾し、他の抗原に結合させることができると当業者に理解される。
本発明のこの説明の文脈では、用語「グリコトープ」は、糖脂質の炭水化物部分上に存在する抗原決定基をいうために使用する。血液型血清試験における糖脂質抗原の分類は、糖脂質の炭水化物部分の構造に基づく。
【0077】
血液型血清試験では、A抗原のグリコトープの末端糖がGalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβであり、B抗原のグリコトープの末端糖がGalα1-3(Fucα1-2)Galβであることが公知である。FがGalNAcα1-3(Fucα1-2)GalβまたはGalα1-3(Fucα1-2)Galβである本発明の水溶性合成分子構築物をRBCの膜への組み込むことにより、それぞれA抗原またはB抗原発現RBCと血清学的に等価なRBCが得られる。
天然に存在するA抗原またはB抗原の炭水化物部分の3つの末端糖は、AおよびB血液型判定の決定基である。天然に存在するA抗原の炭水化物部分の4つの末端糖または5つの末端糖は、A1型、A2型などのA血液型の下位集団判定(subgrouping)の決定基である。したがって、本発明の合成分子構築物を組み込んだRBCを使用して、特異性の異なる血液型分類試薬(抗体)を特徴づけ、識別することができる。
【0078】
本発明者らは、炭水化物部分を除外した本発明の水溶性合成分子構築物を意図する。炭水化物またはオリゴ糖以外であるが、類似の物理化学的性質を有する抗原を、記載の「合成糖脂質」中のFの代わりにすることができる。
本発明者らは、炭水化物またはオリゴ糖と異なる物理化学的性質を有する抗原(F)を含む本発明の合成分子構築物も意図する。これらの抗原を含む水溶性合成分子構築物を、異なるスペーサーの選択によって調製することができる。
国際出願番号PCT/N02/00212(WO03/034074として公開)およびPCT/NZ03/00059(WO03087346として公開)の明細書に記載の発明の実施で使用した場合、本発明の合成分子構築物によって提供される利点が得られる。これらの出願に添付された明細書は、本明細書中で引用により援用される。
【0079】
合成分子構築物により、これらの発明の実施における天然糖脂質の多くの制限が克服される。合成分子構築物の特定の利点は、その優れた性能および低温(例えば、4℃)で細胞の形質転換に使用することが可能なことである。
本明細書中に記載のように、全てのスペーサー構造(S1-S2)から水溶性の、細胞膜などの脂質二重層に自発的且つ安定に組み込まれる合成分子構造(F-S1-S2-L)が得られるわけではない。Atri-sp-脂質(IV)およびAtri-PAA-DOPE(V)と命名された合成分子構築物は、水溶性でない、および/または細胞膜などの脂質二重層に自発的かつ安定に組み込むことができないことが分かった。
【0080】

Atri-sp-脂質(IV)
【0081】

Atri-PAA-DOPE(V)(式中、x, y=0.05〜0.2)
【0082】
ここで、本発明を、以下の限定的でない実施例および添付の図面を参照して説明する。
比較例
比較例は、特許請求の範囲に記載の本発明の一部を形成しない。比較例は、天然糖脂質による赤血球細胞の形質変換を記載する。
【0083】
比較例1−天然糖脂質の調製
HPLCによる精製
第1の段階では、各運転前にカラムに乾燥シリカ(15〜25μm)を充填した。理論的に高レベルの不可逆的に結合した夾雑物と共にシリカを破棄することができるので、比較的汚れたサンプルをHPLCで使用することができる。
糖脂質をシリカゲル上で極性を増加させる移動相を使用して調製した。100%クロロホルム−メタノール−水の80:20:1(v/v)から開始し、100%クロロホルム−メタノール−水の40:40:12(v/v)で終了する直線勾配のプログラムとした。
使用したHPLC装置は、プログラミングされた比率で4つの個別の溶媒をポンピングおよび混合することができるShimadzuシステムであった。クロロホルム、メタノール、および水が異なる速度で蒸発するので、HPLCに入る前に溶媒成分を混合しないプログラムが開発された。
Shimadzu HPLCは、4つの各ボトルからの順繰りの「ショット」によって4つの異なる液体を混合する。クロロホルムおよび水の「ショット」がライン中で互いに直接連続して行われることにより、混和性に関する問題が生じ得る。メタノールを、これら2つの不混和性成分の間に挟む。さらに、混和性に伴う問題をさらに回避するために、水をメタノールと1:1の比率で予め混合した。
【0084】
比較例2−天然糖脂質による赤血球細胞の形質転換
凝集
赤血球細胞の形質転換を、従来のチューブ血清試験(tube serology)の使用に加えて、Diamed-ID Micro Typing Systemを使用した凝集によって評価した。Diamed ABO分類カードは使用しなかった。使用したカードは、いかなる抗血清または他の試薬も予め装荷していないNaCl、酵素試験、および冷凝集素カードとした。これにより、両方法で特異的抗血清を使用することが可能になる。
【0085】
表1.ゲル-カード

【0086】
2つのシステムの性能を確立するために、チューブ血清試験とDiamedシステムとの間の比較試験を行った。細胞を25℃で4時間形質転換した。Seraclone抗AおよびAlba-clone抗Aを使用して、同等性(equivalency)を評価した。結果を以下の表3に示す。
【0087】
表2.Diamedシステムによるチューブ血清学的試験の比較に使用した抗血清

【0088】
表3.Diamedシステムによるチューブ血清学的試験を比較する凝集結果

【0089】
この実験では、Diamedシステムは、Seraclone抗Aを使用したチューブ血清試験よりも弱い反応に対してより感度が高いがAlbacloneではそうではないことが証明された。これらの試薬は異なって処方されたので、全く同じに機能することは予想されない。しかし、Seraclone抗Aチューブ血清試験の組み合わせが陽性に検出されなかったという事実は、おそらく、オペレーターの解釈による。より弱い反応は、正確にスコアリングすることが困難であることが周知であり、1+と0との間の相違をチューブ中で識別することは困難であり得る。
【0090】
最適化
糖脂質濃度、インキュベーション温度、インキュベーションの持続時間、希釈剤、および保存溶液のばらつきという変数を、細胞の健康に及ぼすその影響について試験した。形質転換の効率および安定性を、関連抗原を使用した凝集によって評価した。
【0091】
表4.種々の時間および温度にわたる、天然の糖脂質Aで形質転換された細胞のチューブ血清試験による凝集

【0092】
糖脂質濃度
高精製(HPLC)Leb糖脂質サンプルおよび低純度の血液型Aの糖脂質サンプルを使用して、最初の形質転換実験を行った。37℃で1.5時間形質転換を行った。
A糖脂質サンプルは、他の脂質夾雑物を含み、それにより、等価な濃度(w/v)のLeb糖脂質サンプルよりも血液型A分子の重量が比較的小さかった。これにより、等価な凝集スコアを得るためにLebよりも高濃度のA糖脂質が必要であるという事実が裏付けられるようである(表6を参照のこと)。
A糖脂質サンプル中の夾雑物レベルはまた、62日間のわたる安定性の低さに寄与し得る−最も高い濃度(最も大量の夾雑物を投与した)でA形質転換細胞は「死滅した」。
【0093】
表5.天然痘脂質形質転換の初期試験で使用した抗-Aおよび抗-Leb

【0094】
表6.62日間にわたるチューブ血清試験による凝集によって評価した、天然のA糖脂質およびLeb糖脂質で形質転換したRBCの安定性

【0095】
上記細胞を溶血について評価し、結果を以下の表7に示す。
【0096】
表7.目視による溶血アッセイ。第1日−形質転換後の1回目の洗浄の上清中;第25日および62日−保存後に細胞を再懸濁する前の細胞保存溶液中。スコアのスケールは凝集スケールの4+から0と同様:hhhh−劇的に溶血した、hhh-非常に溶血した、hh-中程度に溶血した、h-若干溶血した、w-僅かに溶血した、0-溶血は見られなかった

【0097】
これらの結果は、細胞溶血は、高濃度の糖脂質を使用した形質転換に関連することを示し得る。これの基礎をなす機構が大量の挿入糖脂質による原形質膜の破壊であるか、その挿入速度であるのか不明であり、あるいは、おそらく関連する夾雑物の量に起因するのかもしれない。しかし、62日目のLebの結果は、第1の説明を支持するようである。
Lebサンプルは高度に精製した。これは溶解前は純白の粉末であり、したがって、溶血が夾雑物の悪影響によるということはありそうにない。62日目で、溶血の発生量は糖脂質濃度の減少と一致して減少していることが明らかである。
【0098】
インキュベーション温度
挿入工程中のRBC溶血の他の可能な減少機構を調査するために実験を行った。以前の実験により、溶血は、低濃度よりも高濃度の糖脂質でより激しくなることが示され、溶血は糖脂質の挿入速度にも関連し得ると考えられる。温度は挿入速度に影響を与えると考えられるので、37℃における形質転換と室温(RT;25℃)における形質転換とを比較する実験を行った。
速度は温度の低下に伴って減速すると予想されるので、RT実験のためのインキュベーション時間は4時間とした。挿入後に溶血を視覚的に評価し、スコアリングした。細胞に対しても血清試験を行った。結果を表8に示す。
【0099】
表8.RBC膜への糖脂質挿入の際のインキュベーション温度の溶血および凝集に対する影響

【0100】
インキュベーション持続時間
37℃で1時間および2時間インキュベートし、細胞の健全性および形質転換に及ぼす影響を関連抗原による凝集によって評価した。
【0101】
表9.インキュベーション継続試験に使用した抗血清

【0102】
表10.天然の糖脂質で形質転換した細胞の凝集に対するインキュベーション時間の効果

【0103】
これらの結果は、天然糖脂質挿入時のインキュベーション持続時間の増加により、凝集が増加しないことを示す。実際、2時間のインキュベーション後の凝集スコアは減少している。これは、膜の不安定化または糖脂質の溶液への逆戻り交換に起因し得る。
【0104】
希釈剤
糖脂質希釈液の変化によって溶血が減少し得るかどうかを判断するための実験も行った。使用強度(working strength)のPBSを、2xPBSと2%牛血清アルブミン(BSA)を含む作業PBSと比較した。細胞を37℃で1.5時間インキュベートした。結果を、表11に示す。
【0105】
表11.RBC膜への糖脂質の挿入の際に糖脂質希釈溶液を変えることによる溶血に対する効果の検討

【0106】
安定性
AおよびB血液型糖脂質が許容可能なレベルにHPLC精製されたなら、安定性についての適切な濃度を見出すための実験を行った。
【0107】
表12.天然のA糖脂質で形質転換した細胞の初期安定性試験

【0108】
表13.安定性試験に使用した抗血清(表14および15)

【0109】
表14.安定性試験のための適切な濃度を決定するための、A糖脂質で形質転換したO RBCのチューブ血清学的試験

1&2 25℃にて4時間形質転換
【0110】
表15.安定性試験のための適切な濃度を決定するための、B糖脂質で形質転換したO RBCのチューブ血清学的試験

1&2 25℃にて4時間形質転換
【0111】
二組の細胞を、異なる濃度の天然A糖脂質で形質転換した。形質転換は25℃で行った。1組の細胞を長期間試験し、1組の細胞を凝集について毎週試験した。チューブ血清試験およびDiamedによる凝集の結果を、以下の表16に示す。全細胞をCellstab(商標)を含む平底のボトル中で保存した。細胞は、常に最小の溶血を示すか、まったく溶血を示さなかった。
【0112】
表16.天然のA糖脂質の種々の濃度で形質転換された細胞に関する凝集実験結果。結果はAlbaclone抗-Aを用いて得られた。

*- Albaclone、他は全てSeracloneの抗-A使用
【0113】
保存液
改変RBCを支持する相対的能力を試験するために、2つの細胞保存液Celpresol(商標)およびCellstab(商標)を比較した。
2つの異なる細胞保存液Cellstab(商標)およびAlservers(商標)に保存した場合の種々の濃度の血液型AおよびB抗原で形質転換したRBCの安定性を試験した。
2つの異なる供給源由来のAおよびB抗血清を血清試験で使用した。
42日目までの標準的なチューブ血清試験のプラットフォームを使用して全細胞を試験したが、42日目で細胞凝集反応を手作業でスコアリングすることは非常に困難になった(Aの結果については表17を参照。Bの結果については表18を参照)。
Diamedゲルカード試験を、Alservers保存細胞については56日目まで行ったが、真菌汚染のために63日目で中断した(しかし、依然として正のスコアを返していた)。Cellstab(商標)保存細胞については70日目まで継続し、この時点でも依然として生存していた(Aの結果については図1を参照。Bの結果については図2を参照)。
安定性試験で使用した試薬を、表13に示してある。
【0114】
表17.種々の濃度のA糖脂質で形質転換し、Cellstab(商標)またはAlsevers(商標)のいずれかで保存した細胞の安定試験のチューブ血清学的試験の結果

* -インキュベーション後、形質転換液(糖脂質を含む)を洗い流さず、一晩放置し、翌日に洗い流した。
** -陽性のセルボタンであるが、細胞は陰性に落ちる(スコアの割り当て不可能)。
【0115】
表18.B糖脂質の濃度を変えて形質転換し、CellstabTMまたはAlseversTM中に保存した細胞の安定性試験の血清学的結果

*−インキュベーション後、形質転換溶液(糖脂質を含む)は洗浄せず、一晩放置し、翌日洗い流した。
**−陽性のセルボタンであるが、細胞は陰性に落ちる(スコアの帰属不可能)
【0116】
脂質挿入のFACS分析
ヒトLe(a-b-)赤血球細胞の形質転換を、3つの形質転換温度(37℃、22℃、および4℃)にて天然Leb-6糖脂質で行った(図3)。天然Leb-6糖脂質を血漿に溶解し、これを使用して、RBCを最終濃度2mg/mLにて10%の最終懸濁物で形質転換した。
ガンマ抗Lebを使用したFACS分析によって反応性を測定した。(血清学的検出濃度は約102分子である。4℃、8時間にて、天然糖脂質の挿入は抗体による凝集によっては検出できなかった。)FACS分析由来の挿入速度曲線から予測して、4℃における挿入速度は24時間以内に凝集検出レベルに到達しないであろうことが示された。
【0117】
低温インキュベーション
天然AまたはB糖脂質でのRBCの形質転換を37℃で1時間および2℃で種々の間隔にて行った。細胞を、Bioclone抗AまたはBioclone抗Bで凝集させた。結果を、表19および20に示す。
【0118】
表19.37℃にて1時間、および2℃にて種々の時間、天然のA糖脂質によって形質転換した場合のDiamedの比較結果

【0119】
表20.37℃にて1時間、および2℃にて種々の時間、天然のB糖脂質によって形質転換した場合のDiamedの比較結果

【0120】
負の凝集スコアによって実証されるように、2℃における1時間の形質転換速度は天然A糖脂質および天然B糖脂質の両方で遅かった。37℃においてはこの時間間隔においてかなりの挿入が実証された。
2℃における天然A糖脂質の挿入には、37℃での形質転換で得ることができる挿入レベルに到達するために48時間必要であった。この時間以降は、さらなる挿入は認められなかった。同様に、2℃における天然B糖脂質の挿入は、37℃での形質転換ほど迅速でなかった。凝集スコアは、連続インキュベーションにより改善されていないので、これらの濃度についてこの時点で最大挿入に到達したようである。
【0121】
実施例
本実施例では、本発明の合成分子構築物による赤血球細胞の形質転換を記載する。これらの実施例との関係では、用語「合成糖脂質」はこれらの構築物をいうために使用する。

実施例1.合成糖脂質の調製
材料と方法
TLC解析をシリカゲル60 F254プレート(Merk)上で行い、化合物は8%リン酸水溶液と続く200℃を越える加熱による染色で検出した。カラムクロマトグラフィーはシリカゲル60(0.2-0.063mm、Merk)またはセファデックスLH-20(Amersham)上で行った。1H NMRはBruker DRX-500スペクトロメーターで得た。化学シフトはCD3ODに対するppm(δ)で示す。
【0122】
活性化1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)および1,2-O-ジステレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)(グリセロリン脂質)の合成
bis(N-ヒドロキシスクシンイミジル)アジペート(A)(70mg、205μmol)の乾燥N,N-ジメチルホルムアミド溶液(1.5ml)にDOPEまたはDSPE(L)(40μmol)のクロロホルム溶液(1.5ml)を加え、続いてトリエチルアミン(7μl)を加えた。この混合物を室温で2時間放置し、次に酢酸で中和し、真空中で部分的に濃縮した。
残留物のカラムクロマトグラフィー(セファデックスLH-20、1:1クロロホルム−メタノール、0.2%酢酸)により活性化脂質(A-L)(37mg、95%)が無色のシロップとして得られた;TLC(クロロホルム-メタノール-水、6:3:0:5):Rf=0.5(DOPE-A)、Rf=(DSPE-A)。
【0123】
1H NMR (CDCl3/CD3OD, 2:1), δ:

DOPE-A - 5.5 (m, 4H, 2x(-CH=CH-), 5.39 (m, 1H, -OCH2-CHO-CH2O-), 4.58 (dd, 1H, J=3.67, J=11.98, -CCOOHCH-CHO-CH2O-), 4.34 (dd, 1H, J=6.61, J=11.98, -CCOOHCH-CHO-CH2O-), 4.26 (m, 2H, PO-CH2-CH2-NH2), 4.18 (m, 2H, -CH2-OP), 3,62 (m, 2H, PO-CH2-CH2-NH2), 3.00 (s, 4H, ONSuc), 2.8 (m, 2H, -CH2-CO (Ad), 2.50 (m, 4H, 2x(-CH2-CO), 2.42 (m, 2H, -CH2-CO (Ad), 2.17 (m, 8H, 2x(-CH2-CH=CH-CH2-), 1.93 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 1.78 (m, 4H, 2x(COCH2CH2-), 1,43, 1.47 (2 bs, 40H, 20 CH2), 1.04 (m, 6H, 2 CH3).

DSPE-A - 5.39 (m, 1H, -OCH2-CHO-CH2O-), 4.53 (dd, 1H, J=3.42, J=11.98, -CCOOHCH-CHO-CH2O-), 4.33 (dd, 1H, J=6.87, J=11.98, -CCOOHCH-CHO-CH2O-), 4.23 (m, 2H, PO-CH2-CH2-NH2), 4.15 (m, 2H, -CH2-OP), 3,61 (m, 2H, PO-CH2-CH2-NH2), 3.00 (s, 4H, ONSuc), 2.81 (m, 2H, -CH2-CO (Ad), 2.48 (m, 4H, 2x(-CH2-CO), 2.42 (m, 2H, -CH2-CO (Ad), 1.93 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 1.78 (m, 4H, 2x(COCH2CH2-), 1,43, 1.47 (2 bs, 40H, 20 CH2), 1.04 (m, 6H, 2 CH3).
【0124】
活性化DOPE(またはDSPE)とアミノプロピルグリコシドとの縮合
活性化DOPE(またはDSPE)(A-L)(33μmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(1ml)溶液に30μmolのSug-S1-NH2(F-S1-NH2)および5μlのトリエチルアミンを添加した。例えば、前記SugはGalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ三糖(A-グリコトープ)(F)またはGalα1-3(Fucα1-2)Galβ三糖(B-グリコトープ)(F)のアミノプロピルグリコシド(F-S1-NH2)であってよい。
この混合物を室温にて2時間撹拌した。この混合物のカラムクロマトグラフィー(1:1クロロホルム−メタノールのセファデックスLH-20に続く酢酸エチル−イソプロパノール−水4:3:1(v/v/v)のシリカゲル)により、典型的には合成分子構築物、たとえば、Atri-sp-Ad-DOPE(I)またはBtri-sp-Ad-DOPE(VI)が収率85-90%で得られた。
【0125】
1H NMR (CDCl3/CD3OD, 1:1), δ:

Atri-sp-Ad-DOPE (I) - 5.5 (m, 4H, 2x(-CH=CH-), 5.43-5,37 (m, 2H, H-1 (GalNHAc) および -OCH2-CHO-CH2O-), 5.32 (d, 1H, H-1, J=3.5 H-1 Fuc), 2.50 (m, 4H, 2x(-CH2-CO), 2.40 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 2.20 (m, 8H, 2x(-CH2-CH=CH-CH2-), 2.1 (s, 3H, NHAc), 1.92 (m, 2H, O-CH2CH2CH2-NH), 1.8 (m, 8H, COCH2CH2CH2CH2CO および 2x(COCH2CH2-), 1,43, 1.47 (2 bs, 40H, 20 CH2), 1.40 (d, 3H, J= 6.6, CH3 Fuc), 1.05 (m, 6H, 2 CH3).

Atri-spsp1-Ad-DOPE (II) - 5.5 (m, 4H, 2x(-CH=CH-), 5.43-5,37 [m, 2H, H-1 (GalNHAc) and -OCH2-CHO-CH2O-], 5.32 (d, 1H, H-1, J=3.6 H-1 Fuc), 2.50 (m, 4H, 2x(-CH2-CO), 2.40- 2.32 (m, 6H, COCH2CH2CH2CH2CO および COCH2- (sp1), 2.18 [m, 8H, 2x(-CH2-CH=CH-CH2-)], 2.1 (s, 3H, NHAc), 1.95(m, 2H, O-CH2CH2CH2-NH), 1.8 [m, 10H, COCH2CH2CH2CH2CO, 2x(COCH2CH2-...), -COCH2CH2 (CH2)3NH-], 1.68 (m, 2H, CO(CH2)3CH2CH2NH-), 1,43, 1.47 (2 bs, 42H, 22 CH2), 1.37 (d, 3H, J=5.6, CH3 Fuc), 1.05 (m, 6H, 2 CH3).

Atri-sp-Ad-DSPE (III) - 5.42-5.38 (m, 2H, H-1 (GalNHAc) および -OCH2-CHO-CH2O-), 5.31 (d, 1H, H-1, J=3.5 H-1 Fuc), 2.48 [m, 4H, 2x(-CH2-CO)], 2.42 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 2.18 (s, 3H, NHAc), 1.95 (m, 2H, O-CH2CH2CH2-NH), 1.8 [m, 8H, COCH2CH2CH2CH2CO および 2x(COCH2CH2-)], 1,43, 1.47 (2 bs, 56H, 28 CH2), 1.38 (d, 3H, J=6.6, CH3 Fuc), 1.05 (m, 6H, 2 CH3).

Btri-sp-Ad-DOPE (VI) - 5.5 (m, 4H, 2x(-CH=CH-), 5.42-5,38 [m, 2H, H-1 (Gal) および -OCH2-CHO-CH2O-], 5.31 (d, 1H, H-1, J=3.7, H-1 Fuc), 2.48 [m, 4H, 2x(-CH2-CO)], 2.39 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 2.18 [m, 8H, 2x(-CH2-CH=CH-CH2-)], 1.93 (m, 2H, O-CH2CH2CH2-NH), 1.8 [m, 8H, COCH2CH2CH2CH2CO および 2x(COCH2CH2-)], 1,43, 1.47 (2 bs, 40H, 20 CH2), 1.36 (d, 3H, J=6.6, CH3 Fuc), 1.05 (m, 6H, 2 CH3).

Htri-sp-Ad-DOPE (VII) - 5.5 [m, 4H, 2x(-CH=CH-)], 5.4 (m, 1H, -OCH2-CHO-CH2O-), 5.35 (d, 1H, H-1, J=3.2, H-1 Fuc), 4.65, 4.54 (2d, J=7.4, J=8.6, H-1 Gal, H-1 GlcNHAc), 4.46 (dd, 1H J=3.18, J=12, -CCOOHCH-CHO-CH2O-), 4.38-4.28 (m, 2H, H-5 Fuc, CCOOHCH-CHO-CH2O- ), 2.48 [m, 4H, 2x(-CH2-CO)], 2.40 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 2.18 [m, 8H, 2x(-CH2-CH=CH-CH2-)], 2.08 (s, 3H,NHAc), 1.92 (m, 2H, O-CH2CH2CH2-NH), 1.82-1.72 [m, 8H, COCH2CH2CH2CH2CO および 2x(COCH2CH2-)], 1,48, 1.45 (2 bs, 40H, 20 CH2), 1.39 (d, 3H, J=6.5, CH3 Fuc), 1.05 (m, 6H, 2 CH3).

Hdi-sp-Ad-DOPE (VIII) - 5.49 (m, 4H, 2x(-CH=CH-), 5.37 (m, 1H, -OCH2-CHO-CH2O-), 5.24 (d, 1H, H-1, J=2.95, H-1 Fuc), 4.46 (d, J=7.34, H-1 Gal), 2.48 [m, 4H, 2x(-CH2-CO)], 2.42-2.35 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 2.17 [m, 8H, 2x(-CH2-CH=CH-CH2-)], 1.95 (m, 2H, O-CH2CH2CH2-NH), 1.81-1.74 [m, 8H, COCH2CH2CH2CH2CO および 2x(COCH2CH2-)], 1,45, 1.41 (2 bs, 40H, 20 CH2), 1.39 (d, 3H, J=6.5, CH3 Fuc), 1.03 (m, 6H, 2 CH3).

Galβ-sp-Ad-DOPE (IX) - 5.51 [m, 4H, 2x(-CH=CH-)], 5.4 (m, 1H, -OCH2-CHO-CH2O-), 4.61 (dd, 1H J=3.18, J=12, -CCOOHCH-CHO-CH2O-), 4.41 (d, J=7.8, H-1 Gal), 4.37 (dd, 1H, J=6.6, J=12, -CCOOHCH-CHO-CH2O-), 2.50 [m, 4H, 2x(-CH2-CO)], 2.40 (m, 4H, COCH2CH2CH2CH2CO), 2.20 [m, 8H, 2x(-CH2-CH=CH-CH2-)], 1.97 (m, 2H, O-CH2CH2CH2-NH), 1.82-1.72 [m, 8H, COCH2CH2CH2CH2CO および 2x(COCH2CH2-)], 1,48, 1.45 (2 bs, 40H, 20 CH2), 1.05 (m, 6H, 2 CH3).
【0126】
実施例2.合成糖脂質の溶解性
細胞の形質転換に使用するために合成糖脂質が満足すべき第一の基準は合成糖脂質が水性溶媒、たとえばリン酸緩衝生理食塩水に可溶であることである。最初、熱および/または音波処理を含む多くの技術をテストした合成糖脂質の溶解度を最大にするために使用した(表21)。
【0127】
合成糖脂質はまた、膜に挿入され、形質転換が凝集によって検出されるように適切な抗体に認識されることが可能でなければならない。分子に対する最初の試験は、可溶性を確立し、それにより、細胞の形質転換での使用に不適切な分子を排除することであった。
これらの最初の試験の結果を、表22に示す。
【0128】
表21.テストした合成糖脂質分子の範囲

【0129】
表22.熱PBS中の合成糖脂質の溶解性および形質転換能

【0130】
Galβ-sp-Ad-DOPE(IX)およびHdi-sp-Ad-DOPE(VIII)の形質転換の検出が不可能であることは、抗体がこれらの合成分子のグリコトープを認識する能力がないことに起因すると考えられた。Atri-sp-脂質(IV)はジアシル尾部ではなく単一尾部を有しており、膜二重層にこの合成分子が挿入しなかったことが提唱された。
【0131】
実施例3.Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)合成糖脂質によるRBCの低温での形質転換
RBCは、4℃で保存すると、より健全であり、同様に、4℃で形質転換した場合、より健全であると考えられる。本発明者らの以前の研究(比較例を参照のこと)および他の研究(Schwarzmann,2000)によって合成糖脂質の有意な挿入速度は4℃で起こるとは考えられなかった。これらの研究は、天然等脂質を使用して行われた。驚いたことに、これらの研究は、本発明の合成糖脂質の挙動を予想していなかった。
理論に拘束されることを望まないが、Schwarzmannの研究では、天然脂質の挿入の則k殿遅さは、天然糖脂質尾部(スフィンゴ脂質および脂肪酸)の物理化学的性質に起因するのであろう。
糖脂質のジアシル尾部は、挿入速度の決定で重要であり得る。一定のジアシル尾部は、低温において、より高い流動性を保持することができる。あるいは、これらの糖脂質のジアシル尾部が挿入される原形質膜のドメインは、このより高い流動性を保持することができる。
天然糖脂質集団のスフィンゴ脂質尾部は強固なドメインに集まっており、これらのドメインのため低温では糖脂質をさらに挿入できないかもしれないことが知られている。cis-不飽和ジアシル尾部を有する合成糖脂質の使用が好まれ得る。
異種々の脂質尾部を有する合成糖脂質でのRBCの形質転換を最初に評価した(表22および24)。
【0132】
表23.表24から27に示した結果を得るために使用した抗血清

【0133】
表24.関連する抗血清との凝集による、種々の脂質尾部挿入の評価

* - スプラッター.
【0134】
次いで、4℃において合成糖脂質(Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI))によるRBCの形質転換を評価した(表25〜28)。低レベルのA、B、またはAおよびBグリコトープを発現する細胞(「弱い(weak)A、B、およびAB細胞」)の調製に向けてこれらの形質転換を行った。
弱いA細胞およびB細胞の調製物について、形質転換液(20μL、0.08、0.05、および0.03mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)および0.6、0.3、0.15、0.08、0.05、および0.03mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI))を含む1xPBSを、洗浄し、パックしたO型RBC(60μL)と混合した。
弱いAB細胞の調製のために、形質転換液(1xPBS中に20μLの、0.07、0.06、および0.05mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)並びに0.3および0.2mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を含む)を、ブロックタイター(block titre)中で、洗浄し、パックしたO型RBC(60μL)と混合した。組み合わせは以下であった:0.07mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)+0.3mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI);0.07mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)+0.2mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI);0.06mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)+0.3mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI);0.06mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)+0.2mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI);0.05mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)+0.3mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI);および0.05mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)+0.2mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI)。
【0135】
細胞および形質転換液を、4℃の冷蔵庫内に置いた。ピペットで周期的に混合した。関連抗血清に対して試験するために細胞を周期的に取り出し、洗浄状態および非洗浄状態(すなわち、洗浄サンプルは形質転換液を取り除いた)の両方において試験した。
48時間後、細胞:非細胞の最終比が3.5(v/v)になるようにCelpresol(商標)を細胞に添加した。細胞を周期的に試験し続けた。細胞が褐色になったので、10日後に試験を中断した。
この変色は、多数の要因(形質転換時の細胞が既に21日目であったこと、48時間の形質転換をCelpresol(商標)中ではなくPBS中で行ったので、その間に細胞にストレスが与えられたこと、および形質転換と試験室との間の輸送中に細胞の取り扱いを誤ったこと)が寄与し得る。PBSと対照的にCelpresol(商標)中での細胞の形質転換によってこれを軽減することができる。
【0136】
表25.4℃にて形質転換した弱いA RBCの抗-Aに対するDiamedの結果

【0137】
表26.4℃にて形質転換した弱いB RBCの抗-Bに対するDiamedの結果

【0138】
表27.4℃にてブロックタイター中で形質転換した弱いAB RBCの抗-Aに対するDiamedの結果

【0139】
表28.4℃にてブロックタイター中で形質転換した弱いAB RBCの抗-Bに対するDiamedの結果

【0140】
実施例4.Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)合成糖脂質によるRBC形質転換の挿入効率
形質転換後の上清(0.08mg/mL、0.05mg/mL、および0.03mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)および0.6mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI)、20μL)を、洗浄し、パックしたRBC(60μL)の原液および2倍希釈液に添加した。チューブを37℃の水浴中で1時間、15分毎に混合しながらインキュベートした。
形質転換されたRBCを、PBSで3回洗浄し、Cellstab(商標)で血清試験に適切な濃度に希釈した。
【0141】
表29.チューブ 血清学的試験

【0142】
形質転換後の上清(0.08mg/mLのプレ形質転換液由来)から得られたスコアは、最初のパス(W+)における0.03mg/mLの形質転換液のスコアですらない。これらの結果は、75%を超える分子が最初のパスでRBC膜に挿入されることを示す。
さらに、形質転換後の溶液を20倍に濃縮し、並行して既知の濃度の形質転換液と比較した。0.08mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)溶液および0.6mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI)溶液由来の形質転換後溶液のみを試験した。
形質転換後溶液(20μL)を、脱イオン水に対して2日間透析した(孔サイズは500Da)。サンプルをドラフトチャンバーで10日間乾燥させた。その後、サンプルをロータリーエバポレーター用フラスコに移し、ロータリーエバポレーターにセットし、加熱せずに一晩真空下で回転させた。
サンプルを40℃の水浴中で乾燥させ、クロロホルム−メタノール(2:1)を含むより小さな容器中で洗浄し、かなりの量の乾燥細胞材料が得られた。クロロホルム−メタノール(2:1)洗浄物を乾燥させ、チューブの中でクロロホルム−メタノール(2:1)にて再度洗浄し、乾燥させた。これらのサンプルを、1mLの1xPBSに再溶解し、形質転換実験に使用した。フラスコの底にある細胞材料を、別のチューブに水で洗い落とした。
形質転換後溶液(0.08mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)溶液および0.6mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI)(20μL)由来)を、洗浄してパックしたRBC(60μL)に添加した。並行して、形質転換液(0.08mg/mL、0.05mg/mL、および0.03mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)溶液および0.6mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI)(20μL))を、洗浄してパックしたRBC(60μL)に添加した。
チューブを37℃の水浴中で1時間、15分毎に混合しながらインキュベートした。形質転換されたRBCを、PBSで3回洗浄し、Cellstab(商標)で血清試験に適切な濃度に希釈した。
【0143】
表30.Diamed 血清試験

【0144】
これらの結果により、20倍に濃縮した場合でさえも、血清試験による検出に十分な分子が形質転換後溶液中には存在しないことが示唆される。
【0145】
実施例5.Htri-sp-Ad-DOPE(VII)合成糖脂質によるマウスRBCの形質転換
マウス細胞を、37℃で1時間形質転換した。
【0146】
表31.表32および33の結果に使用した抗-H試薬

【0147】
表32.チューブ 血清試験

【0148】
表33.Diamed

【0149】
実施例6.濾過Atri-sp-Ad-DOPE(I)合成糖脂質によるRBCの形質転換
いくつかのAtri-sp-Ad-DOPE(I)を、0.2μmフィルターで濾過滅菌した。この生成物を使用した形質転換が同一であるかどうかを調査するために比較試験を行った。
【0150】
表34.表35に示した結果のために使用した抗-A

【0151】
表35.種々の濃度の滅菌ろ過Atri-spAd-DOPE(I)と未ろ過Atri-spAd-DOPE(I)で形質転換したA RBCのカラム凝集

【0152】
これらの結果から2つのAtri-sp-Ad-DOPE(I)調製物間に有意な相違は示されず、0.2μMフィルターによる濾過では分子が除去されないか、形質転換が影響を受ける程度までこの流動物の組成または性質が変化しないことが示唆される。
【0153】
実施例7.形質転換細胞の保存
4℃または37℃での保存によって凝集の結果が変化するかどうかを調査するために、それぞれ「Syn-A」および「Nat-A」と示した、Atri-sp-Ad-DOPE(I)および天然A糖脂質で形質変換したO型RBCを2つに分け、Cellstab(商標)中で5%に懸濁した。
水浴中で、細胞の一方の組を4℃で保存し他方の組を37℃で保存した。保存した形質転換細胞の凝集を評価した(表36)。
【0154】
表36.

【0155】
実施例8.種々の非炭水化物構造を有するAおよびB抗原合成糖脂質によるRBCの形質転換
Atri-sp-Ad-DOPE(I)、Atri-sp1sp2-Ad-DOPE(II)、Atri-sp-Ad-DSPE(III)、およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)と命名された水溶性合成糖脂質を、必要に応じて修正した実施例1に記載の方法にしたがって調製した。
洗浄してパックしたO型赤血球細胞(RBC)(3体積部)および合成糖脂質溶液(1体積部、種々の濃度)を、エッペンドルフチューブに添加した。チューブを、37℃の水浴中で1時間、15分毎に混合しながらインキュベートした。形質転換されたRBCを、PBSで3回洗浄し、Cellstab(商標)で血清試験に適切な濃度に希釈した。
異なる合成分子構築物で形質転換したRBCについてのチューブ血清試験およびDiamedゲル−カードの結果を表38に示す。異なる濃度の種々の合成分子構築物で形質転換されたRBCの安定性についての結果を、表39〜44に示す。
【0156】
表37.表38から44までに示した結果のために使用した抗血清

【0157】
表38.種々の濃度のA-抗原合成糖脂質を用いたRBC形質転換の比較

略号:n.d. 未測定
【0158】
表39.高濃度(1mg/ml、0.5mg/mlおよび0.25mg/ml)のAtri-sp-Ad-DOPE(I)で形質転換したRBCの安定性試験。手動チューブ血清試験による凝集

* スプラッター
【0159】
表40.低濃度(0.1mg/ml、0.05mg/mlおよび0.025mg/ml)のAtri-sp-Ad-DOPE(I)で形質転換したRBCの安定性試験。手動チューブ血清試験による凝集

略号: n.d. 未測定
* スプラッター
【0160】
表41.高濃度(1mg/ml、0.5mg/mlおよび0.25mg/ml)のAtri-sp-Ad-DOPE(I)で形質転換したRBCの安定性試験。Diamed ゲルカードによる凝集

テスト用に十分な細胞が無い場合は空欄のままにした。
【0161】
表42.低濃度(0.1mg/ml、0.05mg/mlおよび0.025mg/ml)のAtri-sp-Ad-DOPE(I)で形質転換したRBCの安定性試験。Diamed ゲルカードによる凝集

テスト用に十分な細胞が無い場合は空欄のままにした。
【0162】
表43.高濃度(1mg/ml、0.5mg/mlおよび0.25mg/ml)のBtri-sp-Ad-DOPE(VI)で形質転換したRBCの安定性試験。手動チューブ血清試験による凝集

略号:* スプラッター
【0163】
表44.高濃度(1mg/ml、0.5mg/mlおよび0.25mg/ml)のBtri-sp-Ad-DOPE(VI)で形質転換したRBCの安定性試験。Diamed ゲルカードによる凝集

テスト用に十分な細胞がない場合は、空欄のままにした。
【0164】
実施例9.H抗原合成糖脂質による赤血球細胞の形質転換
Htri-sp-Ad-DOPE(VII)、Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII)、およびGalβ-sp-Ad-DOPE(IX)と命名された水溶性合成糖脂質を、必要に応じて修正した実施例1に記載の方法にしたがって調製した。
洗浄してパックしたマウスRBC(3体積部)および合成糖脂質溶液(種々の濃度の1体積部)をエッペンドルフチューブに添加した。チューブを、37℃の水浴中で1時間、15分毎に混合しながらインキュベートした。形質転換されたRBCをPBSで3回洗浄し、Cellstab(商標)で血清試験に適切な濃度に希釈した。
種々の合成分子構築物で形質転換したRBCについてのチューブ血清試験およびDiamedゲル−カードの結果を表46に示す。結果は、少なくとも使用した試薬、抗H IgMによる検出には三糖(Htri)が必要であることを示す。
【0165】
表45.表46に示した結果のために使用した抗血清

【0166】
表46.種々の濃度の調製した種々のグリコトープを有するH-抗原合成糖脂質を用いたRBCの形質転換の比較

略号:n.d. 未測定
【0167】
実施例10.マウス赤血球細胞へのHdi-sp-Ad-DOPE(VIII)およびGalβ-sp-Ad-DOPE(IX)合成糖脂質の挿入
Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII)およびGalβ-sp-Ad-DOPE(IX)と命名された水溶性合成糖脂質を、必要に応じて修正した実施例1に記載の方法にしたがって調製した。
マウスRBCを、1xPBSで3回洗浄した。30μlのパックしたRBCを、30μlのHdi-sp-Ad-DOPE(VIII)と組み合わせ、30μlのパックしたRBCを、30μlのGalβ-sp-Ad-DOPE(IX)とそれぞれ組み合わせた。どちらの合成分子構築物の濃度も1.0mg/mlとした。コントロール群として作用させるために、30μlの1xPBSを、30μlのパックしたRBCに添加した。細胞を、37℃の震盪水浴中で90分間インキュベートした。RBCを、1xPBSで3回洗浄した。
3つのパックしたRBC群を、同体積のレクチンUEA-1と室温で30分間インキュベートした。レクチンは1xPBS中で0.1mg/mlの濃度に調製した。50μlの3%細胞懸濁物を、免疫遠心管(immunofuge)中にて低速で15秒間スピンした。結果を、チューブ血清試験によって読み取った。結果を、表48に示す。結果は、抗H IgMおよびUEA-1のいずれによっても二糖(Hdi)が検出されないことを示す。
【0168】
表47.表48に示した結果のために使用した抗血清

【0169】
表48.凝集によって評価した、Galβ-sp-Ad-DOPEまたはHdi-sp-Ad-DOPEで形質転換したマウスRBC

略号: n.d. 未測定
【0170】
実施例11.感受性コントロールの調製
本発明の合成糖脂質を、国際出願番号PCT/NZ02/00214(WO03/034074)に添付の明細書中に記載の「感受性コントロール」(「品質管理(quality control)細胞」、「血清コントロール」、または「プロセスコントロール」とも呼ばれる)の調製において使用することができる。合成糖脂質により、低濃度でRBCを形質転換することができるという利点が得られる。
【0171】
RBC形質転換液
以下の2つのストック溶液を使用する:
溶液1:Celpresol(商標)溶液に懸濁した1mg/mL Atri-sp-Ad-DOPE(I)。
溶液2:Celpresol(商標)溶液に懸濁した5mg/mL Btri-sp-Ad-DOPE(VI)。
糖脂質は白色乾燥粉末として製造されている。この形態(制御温度下で密封容器に封入されている形態)の糖脂質は、無期限に安定である。形質転換液を処方するために、糖脂質を溶液(例えば、Celpresol(商標))中に懸濁する。
形質転換液がCSLで受け入れられると、形質転換液は無菌状態で濾過される(MILLEX(登録商標)−GV0.22μlフィルター単位による)。
【0172】
RBCの処理
RBC供与物(donation)を、無菌状態で連続フロー遠心分離洗浄機を使用して処理する。RBC供与物を、緩衝化生理食塩水続いてCelpresol(商標)溶液で洗浄する。RBC供与物のPCVを、Beckman Coulter AcT分析器で測定する。供与物を、Celpresol(商標)溶液を添加して50%のパック細胞容積(PCV)に調整する。
【0173】
「弱いAB細胞」を得るためのRBCの形質転換
RBCを、緩衝化生理食塩水およびCelpresol(商標)溶液で洗浄する。細胞を、50%を超えるPCVになるようにCelpresol(商標)溶液にて懸濁する。赤血球細胞のPCVを、Beckman Coulter AcT Diffを使用して測定する。赤血球細胞溶液の質量を秤量する。
形質転換に必要なAtri-sp-Ad-DOPE(I)、Btri-sp-Ad-DOPE(VI)、およびCelpresol(商標)の量を、以下の式を使用して計算する。
【0174】
a = (P x F)/S
b=(P x F)/S
c=P−(1−P)−a−b
(式中、
a=赤血球細胞1mLあたりに添加すべきAtri-sp-Ad-DOPE(I)の量(mL)、
b=赤血球細胞1mLあたりに添加すべきBtri-sp-Ad-DOPE (VI)の量(mL)、
c=細胞を50%PCVに希釈するために赤血球細胞1mLあたりに添加すべきCelpresol(商標)の量(mL)、
P=赤血球細胞溶液のPCV
F=糖脂質の所望の最終濃度
S=ストック糖脂質溶液の濃度)
【0175】
赤血球細胞のバルクサンプルに添加すべき糖脂質およびCelpresol(商標)の量を決定するために、a、b、およびcのそれぞれに赤血球細胞の容積を掛ける。赤血球細胞バルクサンプルにAtri-sp-Ad-DOPE(I)、Btri-sp-Ad-DOPE(VI)、およびCelpresol(商標)を無菌的に添加する。
制御温度条件下で穏やかに撹拌しながらサンプルを20℃で3時間インキュベートする。3時間後、赤血球細胞サンプルを無菌的に取り出し、RBCの形質転換を確認するためにサンプルを試験する。チューブ、タイル、およびカラム凝集テクノロジー(CAT)技術を使用して、血液型判定を行う。
制御温度条件下で、サンプルを2〜8℃で3時間インキュベートし、18時間継続的に穏やかに撹拌する。3時間後、赤血球サンプルを無菌的に取り出し、赤血球細胞の形質転換を確認するためにサンプルを試験する。チューブ、タイル、およびCAT技術を使用して、血液型判定を行う。
形質転換された赤血球細胞を、Celpresol(商標)溶液を使用した連続フロー遠心分離洗浄機を使用して無菌状態で洗浄する。洗浄した赤血球細胞のPCVを測定し、Celpresol(商標)溶液の添加によって50%PCVに調整する。
【0176】
処方および分注
一定体積の形質転換されたRBCを一定体積の人工血漿希釈物(SPD)と無菌的に組み合わせる。血漿は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含み得る。所望の感受性コントロールの特徴にしたがって抗体を選択する。血漿は、タートラジンおよび牛血清アルブミンをさらに含み得る。
チューブ、タイル、およびCAT技術を使用して、バルクサンプルについて血液型判定および抗体スクリーニングを行う。次いで、形質転換されたRBC-SPDブレンドを、BDVacutainerチューブに無菌的に分注し、チューブにラベルを貼る。
【0177】
評価試験
合成糖脂質の使用によって産生された弱いAB細胞(表51〜53でAwBwと命名した)を使用して、天然に存在する弱いA細胞、弱いB細胞、および弱いAB細胞を用いて試験プラットフォームの範囲を並行して評価した。
【0178】
表49.評価テストに使用した試薬およびカード

【0179】
表50.評価テストのためのテストプラットフォーム方法論

【0180】
表51.抗-Aに対する全ての方法にわたる評価結果

【0181】
表52.抗-Bに対する全ての方法にわたる評価結果

【0182】
表53.抗-ABに対する全ての方法にわたる評価結果

【0183】
実施例12.形質転換された子宮内膜細胞への改変された胚の付着
RBC以外の細胞型によって発現された細胞表面抗原の定性的および定量的な相違を生じさせる能力を調査した。子宮内膜細胞への胚の接着を増強させる能力をモデル系として採用した。
合成膜アンカーおよび/または合成分子構築物として本合成分子を使用することができる。したがって、これらを、国際出願番号PCT/NZ2003/000059(WO03/087346として公開)(参考として援用される)に添付の明細書中に記載の胚増強方法で使用することができる。
【0184】
子宮内膜細胞の形質転換
水溶性合成分子構築物の挿入
子宮内膜上皮細胞の単一細胞懸濁物を調製した。子宮内膜細胞を、CMF HBSSへの再懸濁および2000rpmで3分間の遠心分離によって3回洗浄した。洗浄した細胞調製物を、50μlのM2に再懸濁した。
50μlの5M/ml子宮内膜細胞をそれぞれ含む微量遠心管を調製した。子宮内膜細胞のチューブを分けるため、50μlの合成糖脂質(Atri-sp-Ad-DOPE(I)またはBtri-sp-Ad-DOPE A(VI))またはコントロール細胞には50μlのM2を添加した。細胞を、ミキサーにて37℃で90分間インキュベートした。CMF HBSS培地への再懸濁および2000rpmで3分間の遠心分離によって3回洗浄した。洗浄した細胞調製物を、50μlのM2に再懸濁した。
【0185】
蛍光プローブを使用した挿入試験
50μlの対応する一次マウスモノクローナル抗体を各チューブに添加した。各チューブを、室温で10分間インキュベートした。細胞を、M2培地で3回洗浄した。10μlのマウス抗IgG FITCを各チューブに添加した。チューブを、暗所にて室温で10分間インキュベートした。子宮内膜細胞をガラススライド上にマウントし、蛍光顕微鏡で観察した。
【0186】
直接凝集試験
5μlの各細胞群を個別の顕微鏡スライド上に置いた。各5μlの細胞の液滴に、5μlの対応する抗体を添加した。細胞を、スライド上で2分間穏やかに混合した。顕微鏡下で凝集を視覚化した。結果を、表55に示す。
【0187】
表54.表55に示した結果のために使用した抗血清

【0188】
表55.蛍光を利用して視覚化した、Atri-sp-Ad-DOPE(I)またはBtri-sp-Ad-DOPE A(VI)で形質転換した子宮内膜細胞

【0189】
胚の改変
水溶性合成分子構築物の挿入
胚を37℃のオーブン中で6分間または全ての透明帯が除去されるまで0.5%プロナーゼで処理して胚透明帯を除去した。45μlのM2培地の液滴へ1mg/mLの濃度の5μlの合成糖脂質(Atri-sp-Ad-DOPE(I)またはBtri-sp-Ad-DOPEA(VI))を添加し、鉱物油を重層してマイクロドロップ(micro-drops)を調製した。全胚群を、50μlのマイクロドロップ中にて37℃で1時間インキュベートした。実験群およびコントロール群由来の胚を、M2培地で3回洗浄した。
【0190】
挿入試験
実験群およびコントロール群由来の胚を、対応する抗体のマイクロドロップ中に置き、37℃で30分間インキュベートした。実験群およびコントロール群由来の胚を、M2培地で3回洗浄した。
実験群およびコントロール群由来の胚を、抗マウスIg FITCのマイクロドロップ(抗マウスIg FITCのM2による50倍希釈物)中に置き、37℃で30分間インキュベートした。実験群およびコントロール群由来の胚を、M2培地で3回洗浄した。5μlのM2の液滴中の胚を顕微鏡スライド上にマウントし、その液滴に鉱物油を重層した。
スライドを蛍光顕微鏡下で観察した。結果を、表56および57に示す。Btri-sp-Ad-DOPE (VI)での形質転換についての負の結果は、1°抗体の感受性の欠如に寄与する。
【0191】
表56.蛍光を用いて視覚化した、Atri-sp-Ad-DOPE(I)で形質転換した胚

【0192】
表57.蛍光を用いて視覚化した、Atri-sp-Ad-DOPE(I)またはBtri-sp-Ad-DOPE(VI)で形質転換した胚

略号:n.d. 未測定
【0193】
形質転換された子宮内膜細胞の改変された胚への結合の増強
改変された胚(BioG-Avidin-BioIgGBおよびBioG-Avidin-BioIgMA)を、国際出願番号PCT/NZ2003/00059(WO03/087346として公開)に添付の明細書中に記載の方法にしたがって調製した。
2つの凹型ガラススライドを調製し、2つのウェルうちの一方では、子宮内膜細胞に合成糖脂質Atri-sp-Ad-DOPE(I)を挿入し、2つのウェルのうちの他方では、子宮内膜細胞に合成糖脂質Btri-sp-Ad-DOPEA(VI)を挿入した。
2つの胚群を、以下の各凹型ガラススライドに移した。
スライド1 Atri/IgGB
Atri/IgMA

スライド2 Btri/IgGB
Btri/IgMA
【0194】
胚周囲を子宮内膜細胞が取り囲んでいた。ウェルを鉱物油で被覆し、37℃で15分間インキュベートした。内径の大きな処理ピペットを使用して、各胚群を、新鮮なM2培地の液滴に慎重に移した。肺を穏やかに洗浄した。胚を、印をつけた顕微鏡スライド上の2μLのM2培地に静かに移した。各液滴に鉱物油を重層した。
オリンパス顕微鏡の焦点の中心平面下で、各群中の胚に接着した子宮内膜細胞数を評価した。各胚に接着した細胞数を記録した。結果を表58に示す。
【0195】
表58.Atri-sp-Ad-DOPE(I)またはBtri-sp-Ad-DOPE(VI)で形質転換した子宮内膜細胞、およびBioG-Avidin-BilIgGBまたはBioG-Avidin-BioIgMAで改変した胚。子宮内膜細胞の胚への接着による評価。

【0196】
上記説明において、公知の等価物を有する整数または構成要素に言及している場合、このような等価物は個別に記載されているかのように本明細書中で援用される。
本発明は、例示によって、且つ可能な実施形態を参照しつつ記載されているが、本発明の範囲または精神を逸脱することなくその改良形態および/または修正形態を得ることができると認識すべきである。
【0197】
参考文献
Abe K, McKibbin JM & Hakomori SI. (1983) The monoclonal antibody directed to difucosylated type 2 chain (Fucα1→2Galβ1→4[Fucα1→3]GlcNAc; Y determinant). J. Biol. Chem. 258: 11793-11797.

Adamany AM, Blumenfeld OO, Sabo B & McCreary J. (1983) A carbohydrate structural variant of MM glycoprotein (glycophorin A). J. Biol. Chem. 258: 11537-11545.

Blanchard D, Cartron JP, Fournet B, Mountreuil J, van Halbeek H & Vliegenthart JFG. (1983) Primary structure of the oligosaccharide determinant of blood group Cad specificity. J. Biol. Chem. 258: 7691-7695.

Fukuda M, Dell A & Fukuda M. (1984a) Structure of fetal lactosaminoglycan. The carbohydrate moiety of band 3 isolated from human umbilical cord erythrocytes. J. Biol. Chem. 259: 4782-4791.

Fukuda M, Dell A, Oates JE & Fukuda M. (1984b) Structure of branched lactosaminoglycan, the carbohydrate moiety of band 3 isolated from adult human erythrocytes. J. Biol. Chem. 259: 8260-8273.

Fukuda M, Lauffenberger M, Sasaki H, Rogers ME & Dell A. (1987) Structures of novel sialylated O-linked oligosaccharides isolated from human erythrocyte glycophorins. J. Biol. Chem. 262: 11952-11957.

Fukuda MN, Dell A, Oates JE, Wu P, Klock JC & Fukuda M. (1985) Structures of glycosphingolipids isolated from human granulocytes. The presence of a series of linear poly-N-acetyllactosaminylceramide and its significance in glycolipids of whole blood cells. J. Biol. Chem. 260: 1067-1082.

Gillard BK, Blanchard D, Bouhours JF, Cartron JP, van Kuik JA, Kamerling JP, Vliegenthart JFG & Marcus DM. (1988) Structure of a ganglioside with Cad blood group antigen activity. Biochemistry. 27: 4601-4604.

Hakomori SI, Nudelman E, Levery SB & Kannagi R. (1984) Novel fucolipids accumulating in human adenocarcinoma. I. Glycilipids with di- or trifucosylated type 2 chain. J. Biol. Chem. 259: 4672-4680

Hanfland P. (1975) Characterisation of B and H blood group active glycosphingolipids from human B erythrocyte membranes. Chem. Phys. Lipids. 15: 105-124.

Hanfland P, Kordowicz M, Niermann H, Egge H, Dabrowski U, Peter-Katalinic J & Dabrowski J. (1984) Purification and structures of branched blood-group-B-active glycosphingolipids from human erythrocyte membranes. Eur. J. Biochem. 145: 531-542.

Hanfland P, Kordowicz M, Peter-Katalinic J, Pfannschmidt G, Crawford RJ, Graham HA & Egge H. (1986) Immunochemistry of the Lewis blood-group system: isolation and structures of Lewis-c active and related glycosphingolipids from the plasma of blood-group O Le(a-b-) nonsecretors. Arch. Biochem. Biophys. 246: 655-672.

Hiraiwa N, Tsuyuoka K, Li YT, Tanaka M, Seno T, Okubo Y, Fukuda Y, Imura H & Kannagi R. (1990) Gangliosides and sialoglycoproteins carrying a rare blood group antigen determinant, Cad, associated with human cancers as detected by specific monoclonal antibodies. Cancer Res. 50: 5497-5503.

Kannagi R , Nudelman E, Levery SB, & Hakomori SI. (1982) A series of human erythrocytes glycosphingolipids reacting to the monoclonal antibody directed to a developmentally regulated antigen, SSEA-1. J. Biol. Chem. 257: 14865-14874.

Kewitz S, Groβ HJ, Kosa R & Roelcke D. (1995) Anti=Pr cold agglutinins recognise immunodominant a2,3- or a2,6-sialyl groups on glycophorins. Glycocon. J. 12: 714-720.

Koscielak J, Miller-Podraza H, Krauze R & Piasek A. (1976) Isolation and characterisation of poly(glycosyl)ceramides (megaloglycolipids) with A, H, and I blood group activities. Eur. J. Biochem. 71: 9-18.

Laine RA. (1994) Invited commentary. Glycobiol 4: 759-767

Lidowska E, Duk M & Dahr W. (1980) Comparison of alkali-labile oligosaccharide chains of M and N blood-group glycopeptides from human erythrocyte membrane. Carbohydr. Res. 79: 103-113.

Lloyd KO & Kabat EA. (1968) Immunochemical studies on blood groups. XLI. Proposed structures for the carbohydrate portions of blood group A, B, H, Lewisa, and Lewisb substances. Proc. Natl. Acad. Sci USA. 61: 1470-1477.

Lundblad A. (1977) Urinary glycoproteins, glycopeptides, and oligosaccharides. In: The Glycoconjugates Eds Horowitz MI & Pigman W. Vol 1: 441-458.

Magnani JL, Nilsson B, Brockhaus M, Zopf D, Steplewski Z, Koprowski H & Ginsburg V. (1986) A monoclonal antibody-defined antigen associated with gastrointestinal cancer is a ganglioside containing sialylated lacto-N-fucopentaose II. J. Biol. Chem. 257: 14365-14369.

Nudelman E, Fukushi Y, Levery SB, Higuchi T & Hakomori SI. (1986) Novel fucolipids of human adenocarcinoma: disialoyl Lea antigen (III4FucIII6NeuAcIV3NeuAcLc4) of human colonic adenocarcinoma and the monoclonal antibody (FH7) defining this structure. J. Biol. Chem. 261: 5487-5495.

Slomiany A, Zdebska E & Slomiany BL. (1984) Structures of the neutral oligosaccharides isolated from A-active human gastric mucin. J. Biol. Chem. 259: 14743-14749.

Takasaki S, Yamashita K & Kobata A. (1978) The sugar chain structures of ABO blood group active glycoproteins obtained from human erythrocyte membrane. J. Biol. Chem. 253: 6086-6091.

Tanaka M, Dube VE & Anderson B. (1984) Structures of oligosaccharides cleaved by base-borohydride from an I, H, and Lea active ovarian cyst glycoprotein. Biochim. Biophys. Acta. 798: 283-290.

Thomas DB & Winzler RJ. (1969) Structural studies on human erythrocytes glycoprotein. Alkali-labile oligosaccharides. J. Biol. Chem. 244: 5943-5946.

Watkins WM. (1966) Blood group substances. Science. 152: 172-181.

Yoshima H, Furthmayr H & Kobata A. (1980) Structures of the asparagine-linked sugar chains of glycophorin A. J. Biol. Chem. 255: 9713-9718.
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】(左から右)10mg/mL、5mg/mL、2mg/mL、2mg/mL*、および1mg/mLの天然のA糖脂質形質転換液によって形質転換されたCellstab(商標)保存細胞のDiamedの結果を示す図である。使用した抗血清は、Albaclone(上)およびBioclone(下)である。(*−形質転換液(糖脂質を含む)をインキュベーション後に洗い流さず、一晩放置し、翌日(2日目)に洗い流した。)
【図2】(左から右)10mg/mL、5mg/mL、2mg/mL、2mg/mL*、および1mg/mLの天然のB糖脂質形質転換液によって形質転換されたCellstab(商標)保存細胞のDiamedの結果を示す図である。使用した抗血清は、Albaclone(上)およびBioclone(下)である。(*−形質転換液(糖脂質を含む)をインキュベーション後に洗い流さず、一晩放置し、翌日(2日目)に洗い流した。)
【図3】長期にわたる3つの形質転換温度(37℃(上)、22℃(中央)、および4℃(下))における天然Leb-6糖脂質によるヒトLe(a-b-)赤血球細胞のin vitro形質転換後のFACS分析を示す図である。
【図4】Atri-sp-Ad-DOPE(I)形質転換液による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を示す図である:(左から右)0.08mg/mL(洗浄)、0.08mg/mL(非洗浄)、0.05mg/mL(洗浄)、0.05mg/mL(非洗浄)、0.03mg/mL(洗浄)、および0.03mg/mL(非洗浄)。使用した抗血清は、Bioclone抗Aであった。
【図5】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。(左から右)0.08mg/mL、0.05mg/mL、および0.03mg/mLのAtri-sp-Ad-DOPE(I)形質転換液による4℃にて形質転換した細胞のDiamedの結果。
【図6】(左から右)0.6mg/mL(洗浄)、0.6mg/mL(非洗浄)、0.3mg/mL(洗浄)、0.3mg/mL(非洗浄)、0.15mg/mL(洗浄)、および0.15mg/mL(非洗浄)のBtri-sp-Ad-DOPE(VI)形質転換液による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を左の列に、(左から右)0.08mg/mL(洗浄)、0.08mg/mL(非洗浄)、0.05mg/mL(洗浄)、0.05mg/mL(非洗浄)、0.03mg/mL(洗浄)、および0.03mg/mL(非洗浄)のBtri-sp-Ad-DOPE(VI)形質転換液による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を右の列に示す図である。使用した抗血清は、Bioclone抗Bであった。
【図7】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。(左から右)0.6mg/mL、0.3mg/mL、および0.15mg/mLのBtri-sp-Ad-DOPE(VI)形質転換液による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果。
【図8】Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を示す図である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.07mg/mL+B 0.3mg/mL(洗浄)を含む。ウェル3および4は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.07mg/mL+B 0.3mg/mL(非洗浄)を含む。
【図9】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.07mg/mL+B 0.3mg/mL(非洗浄)を含む。
【図10】Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を示す図である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.07mg/mL+B 0.2mg/mL(洗浄)を含む。ウェル3および4は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.07mg/mL+B 0.2mg/mL(非洗浄)を含む。
【図11】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.07mg/mL+B 0.2mg/mL(非洗浄)を含む。
【図12】Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を示す図である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.06mg/mL+B 0.3mg/mL(洗浄)を含む。ウェル3および4は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.06mg/mL+B 0.3mg/mL(非洗浄)を含む。
【図13】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.06mg/mL+B 0.3mg/mL(非洗浄)を含む。
【図14】Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を示す図である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.06mg/mL+B 0.2mg/mL(洗浄)を含む。ウェル3および4は、抗Aおよび抗Bに対してA0.06mg/mL+B0.2mg/mL(非洗浄)を含む。
【図15】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.06mg/mL+B 0.2mg/mL(非洗浄)を含む。
【図16】Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を示す図である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.05mg/mL+B 0.3mg/mL(洗浄)を含む。ウェル3および4は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.05mg/mL+B 0.3mg/mL(非洗浄)を含む。
【図17】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.05mg/mL+B 0.3mg/mL(非洗浄)を含む。
【図18】Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果を示す図である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.05mg/mL+B 0.2mg/mL(洗浄)を含む。ウェル3および4は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.05mg/mL+B 0.2mg/mL(非洗浄)を含む。
【図19】試験前に洗浄しなかった細胞を示す図である。Atri-sp-Ad-DOPE(I)およびBtri-sp-Ad-DOPE(VI)を用いた並行形質転換による4℃で形質転換した細胞のDiamedの結果である。ウェル1および2(左から右)は、抗Aおよび抗Bに対してA 0.05mg/mL+B 0.2mg/mL(非洗浄)を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-S2-Lなる構造(式中、
Rは化学的に反応性の官能基;
S2はRをLに結合させるスペーサー;
Lは、グリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質、並びに、セラミドを含むスフィンゴシン由来ジアシル脂質およびジアルキル脂質を含む群より選ばれる脂質)の、合成膜アンカーとしてまたは合成分子構築物の調製に使用する分子。
【請求項2】
Rがbis(N-ヒドロキシスクシンイミジル)、bis(4-ニトロフェニル)、bis(ペンタフルオロフェニル)、bis(ペンタクロロフェニル)からなる群より選ばれる、請求項1記載の分子。
【請求項3】
S2が、-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート(Ad))、および-CO(CH2)5CO-を含む群より選ばれる請求項1または2記載の分子。
【請求項4】
RとS2がエステル結合している請求項1〜3のいずれか1項記載の分子。
【請求項5】
Lが、グリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質からなる群より選ばれる脂質である、請求項1〜4のいずれか1項記載の分子。
【請求項6】
Lが、1以上のtrans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9−オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸、またはcis-13-ドコセン酸に由来するジアシルグリセロ脂質、ホスファチデート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールおよびジホスファチジルグリセロールからなる群より選ばれる、請求項5記載の分子。
【請求項7】
脂質が、1以上のcis-不飽和脂肪酸に由来する、請求項6記載の分子。
【請求項8】
Lが、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、およびrac-1,2-ジオレオイルグリセロール(DOG)からなる群から選ばれる、請求項7記載の分子。
【請求項9】
Lがグリセロリン脂質であり、分子が以下の基礎構造を有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の分子:

(式中、n=3〜5、*はHではない)
【請求項10】
nが3である、請求項9記載の分子。
【請求項11】
Ad-DOPEと称される以下の構造を有する請求項1記載の分子(式中Mは典型的にはH、ただしNa+、K+、NH4+のような一価のカチオンで置換されていてもよい):

【請求項12】
sp1-Ad-DOPEと称される以下の構造を有する請求項1記載の分子(式中Mは典型的にはH、ただしNa+、K+、NH4+のような一価のカチオンで置換されていてもよい):

【請求項13】
Ad-DSPEと称される以下の構造を有する請求項1記載の分子(式中Mは典型的にはH、ただしNa+、K+、NH4+のような一価のカチオンで置換されていてもよい):

【請求項14】
F-S1-S2-Lなる構造
(式中、
Fは、炭水化物、タンパク質、脂質、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群から選択される抗原であり;
S1-S2はFとLとを結合させるスペーサーであり;
Lは、グリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質ならびにセラミドを含むスフィンゴシン由来のジアシル脂質およびジアルキル脂質からなる群から選択される脂質)の合成分子構築物。
【請求項15】
水溶性である、請求項14記載の合成分子構築物。
【請求項16】
請求項14または15記載の合成分子構築物であって、前記合成分子構築物の溶液が脂質二重層と接触した場合に前記合成分子構築物が前記脂質二重層に自発的に取り込まれる、前記合成分子構築物。
【請求項17】
脂質二重層に安定に組み込まれる、請求項16に記載の合成分子構築物。
【請求項18】
F、S1、S2およびLが共有結合している、請求項14〜17のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項19】
Fが、天然に存在するグリコトープ、合成グリコトープ、抗体(免疫グロブリン)、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群から選ばれる、請求項14〜18のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項20】
Fが、天然に存在するグリコトープ、合成グリコトープおよび抗体(免疫グロブリン)からなる群より選ばれる、請求項19記載の合成分子構築物。
【請求項21】
Lが、グリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質からなる群より選ばれる脂質である、請求項14〜20のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項22】
Lが、1以上のtrans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9−オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸、またはcis-13-ドコセン酸に由来するジアシルグリセロ脂質、ホスファチデート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールおよびジホスファチジルグリセロールからなる群より選ばれる、請求項21記載の合成分子構築物。
【請求項23】
脂質が1以上のcis-不飽和脂肪酸に由来する、請求項22記載の合成分子構築物。
【請求項24】
Lが、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、およびrac-1,2-ジオレオイルグリセロール(DOG)からなる群から選ばれる、請求項23記載の合成分子構築物。
【請求項25】
Lがグリセロリン脂質であって、合成分子構築物が以下の基礎構造を有する、請求項14〜24のいずれか1項記載の合成分子構築物:

(式中、n=3〜5、XはHまたはCであり、*はHではない)
【請求項26】
nが3である、請求項25記載の合成分子構築物。
【請求項27】
S1-S2が水溶性合成分子構築物を生じるように選ばれる、請求項14〜24のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項28】
Fが、天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである請求項14〜27のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項29】
Fが、3つ(トリサッカリド)またはそれ以上の糖単位からなる天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである、請求項28記載の合成分子構築物。
【請求項30】
Fが、ラクト−ネオ−テトラオシル、ラクトテトラオシル、ラクト−ノル−ヘキサオシル、ラクト−イソ−オクタオシル、グロボテトラオシル、グロボ−ネオ−テトラオシル、グロボペンタオシル、ガングリオテトラオシル、ガングリオトリアオシル、ガングリオペンタオシル、イソグロボトリアオシル、イソグロボテトラオシル、ムコトリアオシル、およびムコテトラオシルオリゴ糖からなる群から選択されるグリコトープである、請求項28記載の合成分子構築物。
【請求項31】
Fが、以下の末端糖を含むグリコトープからなる群より選ばれる、請求項28記載の合成分子構築物:GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ;Galα1-3Galβ;Galβ;Galα1-3(Fucα1-2)Galβ;NeuAcα2-3Galβ;NeuAcα2-6Galβ;Fucα1-2Galβ;Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;またはGalNAcβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc。
【請求項32】
Fがグリコトープである場合、Lはグリセロリン脂質であって、S2が-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート)、-CO(CH2)5CO-、および-CO(CH2)5NHCO(CH2)5CO-を含む群から選択される、請求項14〜31のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項33】
S1が、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、または5-アミノペンチルからなる群から選択されるC3-5アミノアルキルである、請求項14〜32のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項34】
S1が、3-アミノプロピルである、請求項33記載の合成分子構築物。
【請求項35】
Fが細胞−細胞相互作用または細胞−表面相互作用を媒介する、請求項14〜27のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項36】
Fが標的細胞または表面上で発現している構成成分に対して親和性を有する炭水化物、タンパク質、脂質、レクチン、アビジンまたはビオチンである、請求項35記載の合成分子構築物。
【請求項37】
Fが上皮細胞または細胞外基質上に発現した成分に親和性を有する、請求項36記載の合成分子構築物。
【請求項38】
Fが子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した成分に親和性を有する、請求項37記載の合成分子構築物。
【請求項39】
子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分が、天然に発現する成分または外来的に組み込まれた成分であり得る、請求項38記載の合成分子構築物。
【請求項40】
Fが細胞−溶質相互作用を媒介する、請求項14〜27のいずれか1項記載の合成分子構築物。
【請求項41】
Fが結合分子のリガンドであって、前記結合分子の存在が病的状態の指標である、請求項40記載の合成分子構築物。
【請求項42】
Fが抗体(免疫グロブリン)に対するリガンドである、請求項41記載の合成分子構築物。
【請求項43】
Atri-sp-Ad-DOPE(I)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項44】
Atri-spsp1-Ad-DOPE(II)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項45】
Atri-sp-Ad-DSPE(III)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項46】
Btri-sp-Ad-DOPE(VI)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項47】
Htri-sp-Ad-DOPE(VII)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項48】
Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項49】
Galβi-sp-Ad-DOPE(IX)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項50】
Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項51】
Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)と命名される以下の構造を有する、請求項14記載の合成分子構築物:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの他の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項52】
構造F-S1-S2-Lの合成分子構築物を調製する方法であって、
活性化因子(A)と脂質(L)とを反応させて活性化脂質(A-L)を得る工程;
抗原(F)を誘導体化して抗原誘導体(F-S1)を提供する工程;
A-LとF-S1とを縮合して構築物を得る工程、を含み、
Aが、カルボジオン酸(C3〜C7)のbis(N-ヒドロキシスクシンイミジル)エステル、bis(4-ニトロフェニル)エステル、bis(ペンタフルオロフェニル)エステル、bis(ペンタクロロフェニル)エステルを含む群から選択される活性化因子であり;
Lが、グリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質、およびセラミドを含むスフィンゴシン由来ジアシル脂質およびジアルキル脂質からなる群より選ばれる脂質であり;
Fが、炭水化物、タンパク質、脂質、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群より選ばれる抗原であり;
S1-S2は、FとLとを結合させるスペーサーであって、S1は第一級アミノアルキル、第二級脂肪族アミノアルキル、および第一級芳香族アミンを含む群から選ばれ、S2は存在しないか、または-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート)、および-CO(CH2)5CO-を含む群から選ばれる、前記方法。
【請求項53】
合成分子構築物が水溶性である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
合成分子構築物が、前記合成分子構築物の溶液が脂質二重層と接触した場合に自発的に脂質二重層に組み込まれるものである、請求項51または52記載の方法。
【請求項55】
合成分子構築物が安定に脂質二重層に取り込まれるものである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
F、S1、S2、およびLが共有結合している、請求項52〜55のいずれか1項記載の方法。
【請求項57】
Fが、天然に存在するグリコトープ、合成グリコトープ、抗体(免疫グロブリン)、レクチン、アビジンおよびビオチンからなる群から選択される、請求項52〜56記載の方法。
【請求項58】
Fが、天然に存在するグリコトープ、合成されたグリコトープ、および抗体(免疫グロブリン)からなる群より選ばれる、請求項57記載の方法。
【請求項59】
Lが、グリセロリン脂質を含むジアシルグリセロ脂質およびジアルキルグリセロ脂質を含む群から選ばれる、請求項52〜58記載の方法。
【請求項60】
Lが1以上のtrans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9−オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸、またはcis-13-ドコセン酸に由来するジアシルグリセロ脂質、ホスファチデート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールおよびジホスファチジルグリセロールからなる群より選ばれる、請求項59記載の方法。
【請求項61】
脂質が1以上のcis-不飽和脂肪酸に由来する、請求項60記載の方法。
【請求項62】
Lが、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、およびrac-1,2-ジオレオイルグリセロール(DOG)からなる群から選ばれる、請求項61記載の方法。
【請求項63】
Lがグリセロリン脂質であって、合成分子構築物が以下の基礎構造を含む、請求項52〜62のいずれか1項記載の方法:

(式中、n=3〜5、XはHまたはCであり、*はH以外である。好ましくは、nは3である。)
【請求項64】
nが3である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
AおよびS1が水溶性合成分子構築物を生じさせるように選ばれる、請求項52〜62のいずれか1項記載の方法。
【請求項66】
Fが天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである、請求項52〜65記載の方法。
【請求項67】
Fが、3つ(トリサッカリド)またはそれ以上の糖単位からなる天然に存在するグリコトープまたは合成グリコトープである、請求項66記載の方法。
【請求項68】
Fが、ラクト−ネオ−テトラオシル、ラクトテトラオシル、ラクト−ノル−ヘキサオシル、ラクト−イソ−オクタオシル、グロボテトラオシル、グロボ−ネオ−テトラオシル、グロボペンタオシル、ガングリオテトラオシル、ガングリオトリアオシル、ガングリオペンタオシル、イソグロボトリアオシル、イソグロボテトラオシル、ムコトリアオシル、およびムコテトラオシルオリゴ糖からなる群から選択されるグリコトープである、請求項66記載の方法。
【請求項69】
Fが、以下の末端糖を含むグリコトープからなる群より選ばれる、請求項66記載の方法:GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ;Galα1-3Galβ;Galβ;Galα1-3(Fucα1-2)Galβ;NeuAcα2-3Galβ;NeuAcα2-6Galβ;Fucα1-2Galβ;Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;またはGalNAcβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc。
【請求項70】
Fがグリコトープである場合、Lがグリセロリン脂質であり、S2が-CO(CH2)3CO-、-CO(CH2)4CO-(アジペート)、-CO(CH2)5CO-、および-CO(CH2)5NHCO(CH2)5CO-からなる群から選ばれる、請求項52〜69のいずれか1項記載の方法。
【請求項71】
S1が、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、または5-アミノペンチルからなる群から選択されるC3-5アミノアルキルである、請求項52〜70のいずれか1項記載の方法。
【請求項72】
S1が、3-アミノプロピルである、請求項71記載の方法。
【請求項73】
Fが、細胞−細胞相互作用または細胞−表面相互作用を媒介する合成分子構築物である、請求項52〜65のいずれか1項記載の方法。
【請求項74】
Fが、標的細胞または表面上で発現している構成成分に対して親和性を有する炭水化物、タンパク質または脂質である、請求項73記載の方法。
【請求項75】
Fが、皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分に親和性を有する、請求項74記載の方法。
【請求項76】
Fが、子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分に親和性を有する、請求項75記載の方法。
【請求項77】
子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分が、天然に発現する成分または外来的に組み込まれた成分であり得る、請求項76記載の方法。
【請求項78】
Fが細胞−溶質相互作用を媒介する合成分子構築物である、請求項52〜65のいずれか1項記載の方法。
【請求項79】
Fが結合分子のリガンドであって、前記結合分子の存在が病的状態の指標である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
Fが抗体(免疫グロブリン)に対するリガンドである、請求項79記載の方法。
【請求項81】
水溶性合成分子構築物がAtri-sp-Ad-DOPE(I)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項82】
水溶性合成分子構築物がAtri-spsp1-Ad-DOPE(II)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項83】
水溶性合成分子構築物がAtri-sp-Ad-DSPE(III)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項84】
水溶性合成分子構築物が、Btri-sp-Ad-DOPE(VI)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項85】
水溶性合成分子構築物がHtri-sp-Ad-DOPE(VII)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項86】
水溶性合成分子構築物がHdi-sp-Ad-DOPE(VIII)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項87】
水溶性合成分子構築物がGalβi-sp-Ad-DOPE(IX)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項88】
水溶性合成分子構築物がFucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項89】
水溶性合成分子構築物がFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)と命名される以下の構造を有する、請求項52記載の方法:

(式中、Mは典型的にはHであるが、Na+、K+、またはNH4+などの別の1価のカチオンに置換されていてもよい)
【請求項90】
請求項52〜89のいずれか1項記載の方法によって調製される水溶性合成分子構築物。
【請求項91】
細胞または多細胞構造物の懸濁物を請求項14〜51いずれか1項または請求項90に記載の水溶性合成分子構築物と、前記細胞または多細胞構造物によって発現される表面抗原に定性的および/または定量的変化を生じさせるのに十分な時間および温度で接触させる工程を含む、細胞または多細胞構造物によって発現される表面抗原に定性的および/または定量的変化を生じさせる方法。
【請求項92】
細胞または多細胞構造物がヒト起源またはマウス起源である、請求項91記載の方法。
【請求項93】
懸濁物中の水溶性合成分子構築物の濃度が0.1〜10mg/mLである、請求項91または92記載の方法。
【請求項94】
細胞または多細胞構造物の懸濁物を2〜37℃の範囲の温度で水溶性合成分子構築物と接触させる、請求項91〜93のいずれか1項記載の方法。
【請求項95】
細胞または多細胞構造物の懸濁物を2〜25℃の範囲の温度で水溶性合成分子構築物と接触させる、請求項94のいずれか1項記載の方法。
【請求項96】
細胞または多細胞構造物の懸濁物を2〜4℃の範囲の温度で水溶性合成分子構築物と接触させる、請求項95のいずれか1項記載の方法。
【請求項97】
Fが以下の末端糖を含むグリコトープの群より選ばれる、請求項91〜96のいずれか1項記載の方法:GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ;Galα1-3Galβ;Galβ;Galα1-3(Fucα1-2)Galβ;NeuAcα2-3Galβ;NeuAcα2-6Galβ;Fucα1-2Galβ;Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6(NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3)Galβ;Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc;またはGalNAcβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc。
【請求項98】
Fが、オリゴ糖GalNAcα1-3(Fucα1-2)GalβおよびGalα1-3(Fucα1-2)Galβからなるグリコトープ群より選ばれる、請求項97記載の方法。
【請求項99】
合成分子構築物が以下を含む群より選ばれる、請求項91〜96のいずれか1項記載の方法:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【請求項100】
細胞または多細胞構造物が胚である、請求項91〜99のいずれか1項記載の方法。
【請求項101】
Fが接着分子であって、子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分に親和性を有する、請求項100記載の方法。
【請求項102】
子宮内膜の上皮細胞または細胞外基質上に発現した構成成分が、天然に発現する構成成分または外来的に組み込まれた構成成分であり得る、請求項101記載の方法。
【請求項103】
細胞または多細胞構造物が赤血球細胞である、請求項91〜99のいずれか1項記載の方法。
【請求項104】
Fが結合分子に対するリガンドであって、前記結合分子の存在が病的状態の診断指標である、請求項103記載の方法。
【請求項105】
Fが抗体(免疫グロブリン)に対するリガンドである、請求項104記載の方法。
【請求項106】
請求項14〜51のいずれか1項または請求項90記載の水溶性合成分子構築物が取り込まれた細胞または多細胞構造物。
【請求項107】
ヒトまたはマウス起源である、請求項106記載の細胞または多細胞構造物。
【請求項108】
以下を含む群より選ばれる水溶性合成分子構築物を取り込んだ赤血球細胞である、請求項106または107記載の細胞または多細胞構造物:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【請求項109】
以下を含む群より選ばれる水溶性合成分子構築物を取り込んだ胚である、請求項106または107記載の細胞または多細胞構造物:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【請求項110】
請求項1〜13のいずれか1項記載の分子の調製物、または請求項14〜51のいずれか1項または請求項90記載の水溶性合成分子構築物の乾燥調製物または溶液を含むキット。
【請求項111】
請求項1〜13のいずれか1項記載の分子がAd-DOPE;sp1-Ad-DOPEおよびA-DSPEからなる群より選ばれる、請求項110記載のキット。
【請求項112】
請求項14〜51のいずれか1項または請求項90記載の水溶性合成分子構築物が、以下からなる群より選ばれる請求項1記載のキット:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【請求項113】
懸濁溶液中に請求項106〜109のいずれか1項記載の細胞または多細胞構造物の懸濁物を含むキット。
【請求項114】
懸濁溶液が実質的に脂質を含まない、請求項113記載のキット。
【請求項115】
細胞または多細胞構造物がヒト又はマウス起源である、請求項113または114記載のキット。
【請求項116】
細胞が天然にはA-抗原またはB-抗原を発現せず、以下からなる群より選ばれる水溶性合成分子構築物を取り込んだ赤血球細胞である、請求項113〜115のいずれか1項記載のキット:Atri-sp-Ad-DOPE(I);Atri-spsp1-Ad-DOPE(II);Atri-sp-Ad-DSPE(III);Btri-sp-Ad-DOPE(VI);Htri-sp-Ad-DOPE(VII);Hdi-sp-Ad-DOPE(VIII);Galβi-sp-Ad-DOPE(IX);Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XII);およびFucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc-sp-Ad-DOPE(XIII)。
【請求項117】
懸濁溶液がさらに1以上の抗体を含む、請求項116記載のキット。
【請求項118】
細胞が感受性コントロールである、請求項117記載のキット。
【請求項119】
請求項14〜51のいずれか1項または請求項90記載の水溶性合成分子構築物の乾燥調製物または溶液を含む医薬調製物。
【請求項120】
吸入投与用の形態である、請求項119記載の医薬調製物。
【請求項121】
注射投与用形態である、請求項120記載の医薬調製物。
【請求項122】
請求項106〜109のいずれか1項記載の細胞または多細胞構造物を含む医薬調製物。
【請求項123】
細胞構造物または多細胞構造物がヒトまたはマウス起源である、請求項122記載の薬学的組成物。
【請求項124】
吸入投与用形態である、請求項122または123記載の医薬調製物。
【請求項125】
注射投与用形態である、請求項122または123に記載の医薬調製物。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2007−530532(P2007−530532A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504907(P2007−504907)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/NZ2005/000052
【国際公開番号】WO2005/090368
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506320761)コード バイオテック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】