説明

吊荷下方の監視システム及び監視方法

【課題】吊荷の搬入作業において作業員数を削減でき、かつ、吊荷と障害物の位置関係を明確にした画像を生成することができる吊荷下方の監視システム及び監視方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の吊荷下方の監視システム10は、吊荷12の周辺をセンシングする測域センサー20と、前記吊荷12の下方を撮像する撮像手段30と、前記測域センサー20の測定領域から前記吊荷12の干渉物17を認識する認識領域を設定するセンサー制御ユニット50と、前記撮像手段30の撮像画像に吊荷モデルを形成し、前記測域センサー20の測定値に基づいて、前記吊荷モデル上に前記障害物の位置又は/及び距離情報を生成する画像処理ユニット60と、前記画像処理ユニット60で生成された処理画像を表示する表示手段70と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高所における狭隘な架構内へ吊荷を搬入する吊荷下方の監視システム及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高所かつ狭隘な架構内へ吊荷を吊り込む作業がある。このような架構は、複数の柱及び梁を多段に組み上げた構造物であり、柱又は梁には設備機器部品などの干渉物が取り付けられているため内部は狭隘な構造物となる。従来、このような架構内へ吊荷を吊り込む場合、クレーンなどの搬入手段を操縦する操縦者と、架構内で吊荷位置や干渉物を監視する作業員と、操縦者及び作業員に吊荷を吊り込む指示を送る指揮者の共同作業によって行われている。具体的に吊り込み作業は、搬入手段の操縦者が吊荷を吊り降ろす際に、架構内の各階に干渉物を監視する作業員、及び吊荷の旋回を調整する作業員が指揮者との間で声を掛け合いながら指揮者が操縦者に指示を出し吊荷が架構又は干渉物と接触しないように行っている。
【0003】
従来このような搬入手段を用いた吊荷を吊り込む作業の際、吊荷監視装置を用いる特許文献1及び2が開示されている。
特許文献1は、クレーンのトップブームに取り付けられた吊荷監視カメラが吊荷の移動に応じて吊荷を自動的に追従、すなわちブームの起伏角度の変化に対応してカメラの吊荷監視角度を可変制御できるようにしたクレーンの吊荷監視装置が開示されている。
【0004】
特許文献2は、ブームの先端部から吊り下げられた吊荷を監視するカメラのズーム倍率を調整するスイッチを設けて、フックの昇降によるカメラと吊荷との間の距離の変化に係らず、モニターに映し出される吊荷の映像の大きさを一定に保持することができるクレーンの吊荷監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−53290号公報
【特許文献2】特開2001−2369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の吊荷搬入作業は、高所となる狭隘な架構内の各階層に干渉物の監視と、吊荷を旋回させるため、複数の作業員を配置させなければならず危険な作業を伴っていた。また指揮者は搬入手段から吊り下げられた吊荷を撮像した映像が表示された手元のモニターを見ながら、作業者、操縦者に吊り込みの指示を出しているが、モニターに映し出された画像は、吊荷の周辺の状況がわかり難い場合があった。従って吊り込み作業の作業効率が悪く、高所作業者の安全性を十分に確保することができなかった。
【0007】
また特許文献1及び2は、クレーンにカメラを取り付け吊荷の上方から撮像する構成であり、吊荷下方の干渉物は死角となってしまう。またモニターに表示される画像はカメラの撮像画像をそのまま表示するのみであり、画像上で干渉物を特定するなどの処理は全くなされていない。
【0008】
そこで上記従来技術の問題点を解決するため、本発明は吊荷の搬入作業において作業員数を削減でき、かつ、吊荷と障害物の位置関係を明確にした画像を生成することができる吊荷下方の監視システム及び監視方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吊荷下方の監視システムは、吊荷の周辺をセンシングする測域センサーと、前記吊荷の下方を撮像する撮像手段と、前記測域センサーの測定領域から前記吊荷の干渉物を認識する認識領域を設定するセンサー制御ユニットと、前記撮像手段の撮像画像に吊荷モデルを形成し、前記測域センサーの測定値に基づいて、前記吊荷モデル上に前記干渉物の位置又は/及び距離情報を生成する画像処理ユニットと、前記画像処理ユニットで生成された処理画像を表示する表示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
この場合において、前記測域センサーは、前記吊荷の底面に対して鉛直方向又は水平方向をセンシングするとよい。
また前記認識領域は、前記吊荷の底面から下方に予め定めた離間距離であって、かつ、前記吊荷の底面を下方へ鉛直に投影して囲んだ領域であるとよい。
【0011】
また前記画像処理ユニットは、前記吊荷モデル上に、前記吊荷と前記障害物の距離別に警告を表示させるとよい。
また前記吊荷の旋回に伴う旋回角度を測定するジャイロセンサーを備え、前記画像処理ユニットは、前記旋回角度に基づいて、背景画像を前記旋回角度に対して逆回転させて固定し、前記吊荷モデルを前記旋回角度に基づいて回転させる処理画像を生成するとよい。
【0012】
本発明の吊荷下方の監視方法は、吊荷を架構の上部開口から内部に吊り込む吊荷下方の監視方法において、前記吊荷を前記架構の上部に配置して、前記吊荷の底面下方の画像を撮像し、前記吊荷の周辺の干渉物をセンシングして、前記吊荷から前記障害物までの距離又は前記障害物の位置を計測し、前記画像上に吊荷モデルを形成して、前記吊荷モデル上に前記障害物の距離又は/及び位置情報を組み込んだ処理画像を生成してモニターに表示し、前記処理画像に基づいて前記吊荷を吊り込むことを特徴としている。
この場合において、前記吊荷の底面に対して鉛直方向又は水平方向をセンシングするとよい。
【0013】
また前記障害物との距離別に警告表示し、又はアラームを発生させるとよい。
また前記吊荷を旋回させて旋回角度を測定し、前記旋回角度に基づいて、前記処理画像の背景画像を前記旋回角度に対して逆回転させて固定し、前記吊荷モデルを前記旋回角度に基づいて回転させるとよい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成による本発明の吊荷下方の監視システム及び監視方法によれば、吊荷搬入作業における作業者及び操縦者に指示を出す指揮者が吊荷下方の障害物の状況を手元のモニターに映し出された映像によって容易に視認することが可能となる。また架構の干渉物の位置を画像上で特定できるため、従来干渉物を監視していた高所の作業員を配置する必要が無く、作業員数を削減することができるため、吊荷搬入作業の安全性を格段に向上させることができる。
【0015】
また吊荷の下方又は/及び水平方向の障害物を確認することができるため、安全な吊荷の吊り込み作業を行うことができる。
また測域センサーの測定領域から障害物を認識する領域を吊荷の底面形状に合わせて特定することができる。従って表示画像上で干渉物の位置及び距離を正確に確認することができる。
【0016】
また吊り込み作業の際、吊荷の障害となる障害物に対して、吊荷と障害物との距離別に画面上に警告表示又はアラームを発生させているので、指揮者は吊荷と障害物との位置関係を容易に把握することができる。
【0017】
さらに背景画像が固定されて、吊荷モデルのみが旋回することにより、吊荷からの目線でなく、架構周辺で作業するクレーン作業者の目線で処理画像を生成することができ、指揮者が作業者又は操縦者へ吊荷の吊り込みの指示を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の吊荷下方の監視システムを用いた吊荷を架構へ吊り込む説明図である。
【図2】本発明の吊荷下方の監視システムのブロック図である。
【図3】測域センサーの計測範囲の説明図である。
【図4】測域センサーによる障害物の認識領域の説明図である。
【図5】吊荷下方の監視方法の処理フロー図である。
【図6】吊荷と架構の説明図である。
【図7】画像処理ユニットによる処理画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の吊荷下方の監視システム及び監視方法の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1は本発明の吊荷下方の監視システムを用いた吊荷を架構へ吊り込む説明図である。
【0020】
図示のように本発明の吊荷下方の監視システム10は、一例として吊荷12を架構14の上部開口15から搬送用モノレールや天井クレーン等の搬入手段16を用いて搬入する際に適用するものである。架構14は複数の柱及び梁を多段に積み上げて複数の階層を形成した構造物であり、梁には後工程で用いる配管等の複数の干渉物17が固定又は仮止めされた狭隘な構造物である。
【0021】
吊荷12は建設工期を短縮化するために予め設備機器部品を設置位置に取り付けたモジュール構造物である。本実施形態の吊荷12は一例として箱状フレームに複数の設備機器部品を取り付けた構成で以下説明する。なお吊荷12は、底面の形状が矩形(箱状フレームの場合)のほか、多角形、楕円、円などの場合もある。ここで本実施形態の吊荷12の吊り込み作業は、搬入手段16の操縦者と、架構の各階層で吊荷12の吊上げ位置を微調整する作業者と、操縦者と作業者に指示を出し吊荷12の吊り込みを監督する指揮者によって行われる。吊荷12には作業員が牽引する介錯ロープ18が取り付けられている。介錯ロープ18は、作業員が吊荷12の下方から指揮者の誘導により吊荷12を旋回、移動、停止させる際に用いられるものである。なお本実施形態では吊荷12を吊り込む際に障害となる干渉物17及び架構14を障害物として以下説明する。
【0022】
図2は本発明の吊荷下方の監視システムのブロック図である。図示のように本発明の吊荷下方の監視システム10は、測域センサー20と、撮像手段30と、ジャイロセンサー40と、センサー制御ユニット50と、画像処理ユニット60と、表示手段70を主な構成要件としている。
【0023】
測域センサー20は、一例としてラインレーザースキャナーを用いることができ、受光面からレーザーを照射して干渉物17や架構14などの障害物に当たって跳ね返った光を検出して測距するものである。図1に示すように本実施形態の測域センサー20は、具体的に箱状フレームの吊荷12の矩形底面の4つの側辺となる東西南北の位置に取り付けている。測域センサー20は吊荷12の底面に対して鉛直方向の障害物を検出する鉛直センサー24と、吊荷12の底面に対して水平方向の干渉物17又は架構14を検出する水平センサー22から構成することができる。なお測域センサー20は吊荷12の下方の障害物を認識することができる鉛直センサー24を少なくとも備える構成であれば良い。鉛直センサー24は各側面に必要となる。一方、水平センサー22は、各側面に取り付ける構成のほかに、少なくとも吊荷12の底面に1つ取り付け、360°旋回させることにより底面の水平方向をセンシングする構成とすることもできる。また測域センサー20は、底面矩形の場合、各側面から突出した設備機器部品がある場合には、この突出部品の先端部分に設けることが望ましい。さらに測域センサー20は、吊荷12の底面の形状に合わせて設置箇所を変更することができ、多角形の場合には、各側面に設ける構成とし、楕円又は円の場合には、吊荷12の底面を下方に投影した領域を少なくともカバーできる位置に設けることが望ましい。測域センサー20は後述するセンサー制御ユニット50と電気的に接続しており、測定データを出力するように構成されている。
【0024】
撮像手段30は、吊荷12の下方状況を撮像するカメラである。撮像手段30は、吊荷12の下方の架構14及び干渉物17などの障害物を撮像できればよく、一例として吊荷12の底面の中心に撮像範囲が広域となる広角カメラを取り付けた構成とすることができる。この他撮像手段30は、吊荷12の底面に複数、例えば、対向する側面に一対など互いの死角領域を補間できる関係に取り付けて撮像された複数の撮像画像、又は複数の撮像画像を合成した合成画像とすることもできる。
【0025】
ジャイロセンサー40は、吊荷12に取り付けられ、搬入手段16のクレーンフックから吊り下げられた吊荷12を作業員が介錯ロープ18を用いて旋回させたときなど、吊荷12が旋回したときの旋回角度を測定するものである。なおジャイロセンサー40の取り付け位置は、搬入手段16のクレーンフックの直下など、少なくとも搬入手段16の吊り下げ点を通る鉛直方向上に設けることが望ましい。ジャイロセンサー40は、後述する画像処理ユニット60と電気的に接続しており、測定データ(旋回角度データ)を出力するように構成されている。
【0026】
センサー制御ユニット50は、測域センサー20と電気的に接続している。具体的にセンサー制御ユニット50は、吊荷12の4つの側面に設置した複数の測域センサー20の測定領域から障害物を認識する領域を設定制御するユニットである。
【0027】
図3は測域センサーの計測範囲の説明図である。図示のように測域センサー20は、吊荷12の底面に対して水平方向又は鉛直方向に存在する障害物までの直線距離を測定することができ、受光面からレーザーを任意の角度で旋回させながら照射した場合、受光面を中心とした扇状の範囲が測定領域Aとなる。
センサー制御ユニット50は、測域センサー20の測定領域Aに対して、障害物を認識する認識領域B(図3の点線枠)を設定している。
【0028】
次に認識領域Bの設定について以下説明する。本実施形態では一例として測域センサーの旋回角が0°〜270°で、角度分解能が0.36°を用いた場合の認識領域について説明する。認識領域の高さをaとし、幅をb(又はc)と任意に指定する。なお認識領域の高さaは、吊荷の吊り下げ量に応じて任意に設定変更することができる。また認識領域の幅b(c)は吊荷の底面幅に合わせて任意に設定変更することができる。
【0029】
測域センサーの旋回角のステップ番号Yは、
【数1】

【数2】

で表すことができる。なお1ステップは0.36°(270°/768)とする。
【0030】
次に認識領域BをラインL1、L2、L3、L4と便宜上分けて、それぞれケース1〜4とする。ケース1〜4の場合のそれぞれの距離xは以下のように求めることができる。
【0031】
ケース1の場合、ステップ番号は128〜Yであり、
【数3】

【数4】

と表すことができる。
【0032】
ケース2の場合、ステップ番号はY+1〜384であり、
【数5】

【数6】

と表すことができる。
【0033】
ケース3の場合、ステップ番号は385〜768−Yであり、
【数7】

【数8】

と表すことができる。
【0034】
ケース4の場合、ステップ番号は768−Y+1〜640であり、
【数9】

【数10】

と表すことができる。
【0035】
このようなセンサー制御ユニット50の設定により測定領域Aと認識領域Bが重なる以外の範囲について、実際は障害物が存在する場合であっても、存在しないと判断することができる。そして認識領域Bで障害物が認識されると、障害物までの距離及び障害物の位置を特定することができる。
【0036】
図4は測域センサーによる障害物の認識領域の説明図である。測域センサー20を構成する水平センサー22及び鉛直センサー24は、それぞれ図3で求めた認識領域Bにより、図4に示すような領域として表すことができる。水平センサー22による認識領域は吊荷12の底面の4つの側辺となる東西南北の位置から水平方向(吊荷12の外側向き)に展開された領域となり、各領域はそれぞれ高さaを底面からの距離別にa,b,cと区分けすることができる。a,b,cは一例としてそれぞれ吊り込みに十分な距離を確保できている安全領域、吊り込みに注意を要する注意領域、吊荷が障害物と接触する可能性がある危険領域と区分することができる。
【0037】
鉛直センサー24の認識領域は吊荷12の底面の4つの側辺から下方へ鉛直方向に投影されて囲まれた領域となり、各領域は、水平センサー22の認識領域と同様に、それぞれ高さaを底面からの距離別にa,b,cと区分けすることができる。
【0038】
画像処理ユニット60は、撮像手段30と、ジャイロセンサー40と、センサー制御ユニット50と電気的に接続している。画像処理ユニット60は、撮像手段30で撮像された撮像画像と、測域センサー20の測定値を組み合わせた画像処理を行うユニットである。具体的に画像処理ユニット60は、撮像画像上に、吊荷12の仮想モデルとなる吊荷モデルを形成している。吊荷モデルは吊荷12の底面形状に沿って枠体で囲った形状であり、吊荷モデル上に干渉物17又は架構14などの障害物の位置又は/及び距離情報を生成している。画像処理ユニット60は、測域センサー20の吊荷12と障害物との距離の測定値に基づいて、障害物の距離別に衝突の危険度を判定している。なお障害物の距離別の区分けは、前述のa(安全領域),b(注意領域),c(危険領域)に分けることができ、画像処理ユニット60は、吊荷12と障害物との距離の測定値がa,b,cのどの領域に属するかで危険度を判定している。さらにこのとき、距離別に警告音を発生するように構成することもできる。
【0039】
また画像処理ユニット60は、撮像画像と、ジャイロセンサー40の測定データに基づいて吊荷を旋回させたときの処理画像を生成することができる。画像処理ユニット60は、吊荷12を旋回させた旋回角度が入力されると、背景画像を旋回角度に対して逆回転させて画面上に固定し、吊荷モデルを旋回角度に基づいて回転させる処理画像を生成する。なお本実施形態ではジャイロセンサー40とセンサー制御ユニット50と画像処理ユニット60を制御盤62内に取り付け、制御盤62を搬入手段16のクレーンフックから吊荷12と共に吊り下げた構成としている。
【0040】
表示手段70は、センサー制御ユニット50と画像処理ユニット60と無線を介して接続した、少なくともモニターを備え、一例としてパーソナルコンピューター(PC)を用いることができる。表示手段70は、画像処理ユニット60で生成した処理画像をモニター上に表示する構成としている。また表示手段70は、センサー制御ユニット50による測域センサー20の認識領域を設定する指令信号をセンサー制御ユニット50へ出力することができる。
【0041】
上記構成による本発明の吊荷下方の監視システムを用いた監視方法について以下説明する。
図5は吊荷下方の監視方法の処理フロー図である。図6は吊荷と架構の説明図である。図7は画像処理ユニットによる処理画像の説明図である。
【0042】
まず、センサー制御ユニット50による測域センサー20の障害物を認識する領域の設定を行う(ステップ100)。具体的には表示手段70となるPCを用いて認識領域の高さa及び幅b(c)について任意に設定した設定値を入力する。この設定値が入力されたセンサー制御ユニット50では、測域センサー20を構成する鉛直センサー24又は水平センサー22の測定領域Aから認識領域Bを設定する。
【0043】
次に図6に示すように搬入手段16によって吊荷12を架構14の上部開口15上まで移動して停止させる。この状態で撮像手段30によって吊荷12の下方の架構14及び干渉物17を撮像する。撮像画像は画像処理ユニット60へ入力される(ステップ110)。
【0044】
また測域センサーを構成する鉛直センサー24又は水平センサー22の測定データがセンサー制御ユニット50を介して画像処理ユニット60へ入力される(ステップ120)。
【0045】
画像処理ユニット60では、撮像手段30の撮像画像と、測域センサー20の測定データに基づいて、画像処理を行う。具体的には、図7(A)に示すように撮像画像上に、吊荷12の仮想モデルとなる吊荷モデル80を形成する。吊荷モデル80は吊荷12の底面形状に沿って形成した枠体であり、吊荷の底面形状又は大きさに応じて、枠の形状又は大きさを任意に設定変更することができる。そして吊荷モデル80上に干渉物17又は架構14などの障害物の位置又は距離情報を組み合わせた処理画像を生成する画像処理を行う(ステップ130)。
【0046】
画像処理ユニット60で生成した処理画像を表示手段70のモニター上に画像表示する(ステップ140)。
次に処理画像上に障害物があるか否かを判断する(ステップ150)。
【0047】
障害物がある場合、処理画像上に障害物の距離および位置が表示される。このとき画面上には、画像処理ユニット60による吊荷と障害物の距離別に衝突の危険度を判定した判定結果に基づいて、底面から障害物までの距離別に色分けした位置表示がなされ、又は警告音が発生する(ステップ160)。図7(A)では吊荷モデル80上に2つの障害物の距離および位置情報が表示されている。すなわち障害物の位置情報として吊荷12の東西の2箇所に干渉物17が存在し、また吊荷12から干渉物17までの距離はそれぞれ850mmであると表示されている。障害物の位置情報及び距離は、測域センサー20の測定データに基づいて、センサー制御ユニット50による認識領域のケース1〜4のどの範囲に属するデータであるかを認定することにより特定することができる。
【0048】
図7(A)に示すように処理画像上に障害物がある場合には、障害物との衝突を回避するように吊荷12を旋回させる。例えば、図6の矢印aに示すように吊荷12を反時計周りに90°旋回させる場合には、ジャイロセンサー40による吊荷12の旋回角度の旋回データを画像処理ユニット60へ入力する(ステップ170)。
【0049】
画像処理ユニット60では旋回画像処理を行う(ステップ180)。画像処理ユニット60は、図7(B)に示すように、吊荷12を旋回させた旋回角度が入力されると、吊荷12の背景画像となる架構14や干渉物17を旋回角度に対して逆回転させて画面上に固定させて、吊荷モデル80を旋回角度に基づいて回転させる処理画像を生成する。図7(B)では吊荷12を旋回させる途中において、停止位置では測定されなかった、架構14の柱の先端部19が水平センサー22により検出される。このとき吊荷モデル80には4つの側面となる東西南北の位置に距離300mmが表示される。
【0050】
旋回画像処理を行い、処理画像をモニターに表示させて、再度ステップ150の障害物の有無の判断を行う。図7(C)に示すように吊荷12の停止位置から90°旋回させて、吊荷12の吊り込み作業で障害となる障害物が存在しないと表示され、障害物がないと判断した場合には、設定範囲で吊荷12の吊り降ろし作業を行う(ステップ190)。
【0051】
吊荷12を設定範囲まで吊り降ろした後、吊荷12が接地したか否かの判断を行う(ステップ200)。
吊荷12が接地した場合には、作業を終了する。吊荷12が未だ接地していない場合には、再度ステップ100の測域センサー20の認識領域の設定作業以降を吊荷12が接地するまで繰り返す。
【0052】
このような本発明の吊荷下方の監視システム及び監視方法によれば、吊荷搬入作業における作業者及び操縦者に指示を出す指揮者が吊荷下方の障害物の状況を手元のモニターに映し出された映像によって容易に視認することが可能となり、また架構の干渉物の位置を画像上で特定できるため、従来干渉物を監視していた高所の作業員を配置する必要が無く、作業員数を削減することができるため、吊荷搬入作業の安全性を格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0053】
10………吊荷下方の監視システム、12………吊荷、14………架構、15………上部開口、16………搬入手段、17………干渉物、18………介錯ロープ、20………測域センサー、22………水平センサー、24………鉛直センサー、30………撮像手段、40………ジャイロセンサー、50………センサー制御ユニット、60………画像処理ユニット、62………制御盤、70………表示手段、80………吊荷モデル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷の周辺をセンシングする測域センサーと、
前記吊荷の下方を撮像する撮像手段と、
前記測域センサーの測定領域から前記吊荷の障害物を認識する認識領域を設定するセンサー制御ユニットと、
前記撮像手段の撮像画像に吊荷モデルを形成し、前記測域センサーの測定値に基づいて、前記吊荷モデル上に前記障害物の距離又は/及び位置情報を生成する画像処理ユニットと、
前記画像処理ユニットで生成された処理画像を表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする吊荷下方の監視システム。
【請求項2】
前記測域センサーは、前記吊荷の底面に対して鉛直方向又は水平方向をセンシングすることを特徴とする請求項1に記載の吊荷下方の監視システム。
【請求項3】
前記認識領域は、前記吊荷の底面から下方に予め定めた離間距離であって、かつ、前記吊荷の底面を下方へ鉛直に投影して囲んだ領域であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊荷下方の監視システム。
【請求項4】
前記画像処理ユニットは、前記吊荷モデル上に、前記吊荷と前記障害物の距離別に警告を表示させたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の吊荷下方の監視システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の吊荷下方の監視システムにおいて、
前記吊荷の旋回に伴う旋回角度を測定するジャイロセンサーを備え、
前記画像処理ユニットは、前記旋回角度に基づいて、背景画像を前記旋回角度に対して逆回転させて固定し、前記吊荷モデルを前記旋回角度に基づいて回転させる処理画像を生成することを特徴とする吊荷下方の監視システム。
【請求項6】
吊荷を架構の上部開口から内部に吊り込む吊荷下方の監視方法において、
前記吊荷を前記架構の上部に配置して、
前記吊荷の底面下方の画像を撮像し、
前記吊荷の周辺の障害物をセンシングして、
前記吊荷から前記障害物までの距離又は前記干渉物の位置を計測し、
前記画像上に吊荷モデルを形成して、前記吊荷モデル上に前記障害物の距離又は/及び位置情報を組み込んだ処理画像を生成してモニターに表示し、
前記処理画像に基づいて前記吊荷を吊り込むことを特徴とする吊荷下方の監視方法。
【請求項7】
前記吊荷の底面に対して鉛直方向又は水平方向をセンシングすることを特徴とする請求項6に記載の吊荷下方の監視方法。
【請求項8】
前記障害物との距離別に警告表示し、又はアラームを発生させることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の吊荷下方の監視方法。
【請求項9】
前記吊荷を旋回させて旋回角度を測定し、前記旋回角度に基づいて、前記処理画像の背景画像を前記旋回角度に対して逆回転させて固定し、前記吊荷モデルを前記旋回角度に基づいて回転させることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の吊荷下方の監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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