説明

同期信号検出回路およびディスク再生装置

【課題】数種のディスクに対しても同期信号の検出を円滑かつ適正に行える同期信号検出回路およびそれを採用するディスク再生装置を提供する。
【解決手段】スライスレベルの設定時には、まず、ディスク判別回路110により再生対象ディスクが判別され、さらに、ディスクを起動しながら、ピーク検出回路109にて再生RF信号のピークレベルが検出される。しかる後、スライスレベルコントローラ111の内蔵メモリから、再生対象ディスクに応じた比率γが読み出され、上記の如く、再生RF信号のピークレベルに比率γを乗じてスライスレベルが設定される。スライスレベルが再生対象ディスクの種別に応じて設定されるため、それぞれのディスクに適した信号レベルを用いて同期信号の検出を行うことができる。よって、各ディスクに対する同期信号の検出を、円滑かつ適正に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期信号検出回路およびディスク再生装置に関し、特に、数種のディスクを再生する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
DVDドライブや次世代DVDドライブ等のディスク再生装置には、再生信号から同期信号を検出するための同期信号検出回路が配されている。一般に、同期信号は、再生信号を所定の信号レベルでスライスしたときの信号幅に基づいて検出される。たとえば、予め設定された信号レベルで再生信号をスライスして得られる信号幅のうち最長の信号幅の期間が同期信号期間として検出される。なお、同期信号検出回路として、以下の特許文献1、2に記載の発明が知られている。
【特許文献1】特開平7−326139号公報
【特許文献2】特開平8−138328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、光ディスクの多様化が進み、DVDの他、HDDVD(High Definition DVD)やBD(ブルーレイディスク)等の高密度光ディスクが商品化されている。これに伴い、ドライブ側では、異なるフォーマットの光ディスクへの対応が求められている。しかし、このように、採用される信号フォーマットが相違すると、ディスク毎に再生信号波形の状態が異なるため、同期信号の検出が難しくなる。
【0004】
図7および図8は、再生信号処理方式として、PR(1,2,2,2,1)のPRML(Partial Response Maximum Likelihood)を採用するディスクと、PR(1,2,2,1)のPRMLを採用するディスクの再生信号波形を示す図である。ここでは、同期信号の検出のために、プラス側とマイナス側に2つの信号レベルL1、L2が設定されている。この場合、図7に示す再生信号波形については、T1−T2の期間が同期信号期間として誤検出されないが、図8に示す再生信号波形では、T1−T2の期間が同期信号期間として誤検出されてしまう。
【0005】
このように、信号レベルL1、L2を一意に設定すると、あるディスクについては適正に同期信号を検出できるが、他のディスクについては同期信号の検出精度が劣化するとの問題が生じる。信号レベルL1、L2は、同期信号の誤検出を抑制するためには再生信号波形のセンターレベルから離すのが良く、逆に、同期信号期間の検出精度を高めるにはセンターレベルに近付けるのが良い。このように、信号レベルL1、L2の設定は、同期信号の誤検出抑制と同期信号期間の検出精度向上の、互いにトレードオフの関係にある2つのファクターを考慮して行わなければならない。このため、数種のディスクについて、一意に好ましい信号レベルを設定するのは極めて困難である。
【0006】
この問題は、再生対象とされるディスクの種別が増加するほど顕著となる。たとえば、HDとBDでは、図7および図8に示す如く、同期信号検出のためにプラス側とマイナス側に2つの信号レベルL1、L2が設定され、DVDでは、通常、再生信号波形のセンターレベル付近に一つの信号レベルのみが設定される。したがって、HD、BDの他、DVDをも互換再生する場合には、信号レベルの設定方法の相違により、同期信号検出のための信号レベルを一意に設定するのが益々困難となる。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、数種のディスクに対しても同期信号の検出を円滑かつ適正に行える同期信号検出回路およびそれを採用するディスク再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み本発明は、以下の特徴を有する。
【0009】
請求項1の発明は、所定の信号レベルにて信号波形をスライスしたときの信号幅に基づいて同期信号を検出する同期信号検出回路において、再生対象とされるディスクの種類を判別するディスク判別部と、前記ディスク判別部による判別結果に基づいて前記信号波形をスライスする前記信号レベルを設定するスライスレベル設定部とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の同期信号検出回路において、前記スライスレベル設定部は、前記信号レベルを前記ディスク種別に対応付けて記憶する記憶部を備え、前記ディスク判別部による判別結果に対応する信号レベルを前記記憶部から取得して、前記信号波形をスライスするための前記信号レベルに設定することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載の同期信号検出回路において、前記信号波形のピークレベルを検出するピーク検出部をさらに備え、前記スライスレベル設定部は、前記ディスク判別部による判別結果と前記ピーク検出部による検出結果に基づいて前記信号レベルを設定することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の同期信号検出回路において、前記スライスレベル設定部は、前記ピークレベルから前記信号レベルを算出するためのパラメータ値を前記ディスク種別に対応付けて記憶する記憶部を備え、前記ディスク判別部による判別結果に対応する前記パラメータ値を前記記憶部から取得し、取得したパラメータ値と前記ピーク検出部によって検出されたピークレベルから前記信号波形をスライスするための前記信号レベルを算出することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載の同期信号検出回路において、前記パラメータ値は、前記ピークレベルに対する前記信号レベルの比率であることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れか一項に記載の同期信号検出回路において、前記同期信号の検出率を判別する検出率判別部と、前記スライスレベル設定部によって設定された信号レベルを前記検出率判別部による検出結果に基づいて調整するスライスレベル調整部をさらに有することを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の同期信号検出回路において、前記スライスレベル調整部は、前記検出率判別部による前記検出率が閾値以上となるように前記信号レベルを調整することを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項7に記載の同期信号検出回路において、前記スライスレベル調整部は、前記スライスレベル設定部によって設定された信号レベルを一定レベルだけ加減しつつ前記検出率を監視し、前記検出率が前記閾値以上となったときの信号レベルを、前記信号波形をスライスするための信号レベルとして設定する、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項1ないし8の何れか一項に記載の同期信号検出回路を有するディスク再生装置である。
【0018】
なお、上記に示す「スライスレベル設定部」と「スライスレベル調整部」は、以下の実施形態では、共に、スライスレベルコントローラ111に含まれている。また、上記に示す「検出率判別部」は、以下の実施形態では、Sync検出回路112に含まれている。さらに、上記に示す「同期信号の検出率」は、以下の実施形態では、同期信号の内挿補間率として表されている。
【0019】
ただし、以下の実施形態は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同期信号検出のための信号レベルがディスク種別の判別結果に応じて設定されるため、それぞれのディスクに適した信号レベルを用いて同期信号の検出を行うことができる。よって、各ディスクに対する同期信号の検出を、円滑かつ適正に行うことができる。
【0021】
また、請求項2の発明のように、記憶部から信号レベルを取得するようにすれば、信号レベルの設定を迅速に行うことができる。
【0022】
また、請求項3ないし5の発明のように、同期信号の検出に用いる信号レベルを信号波形のピークレベルをもとに設定するようにすれば、当該ディスクの信号波形の状態に応じて信号レベルを適応的に変化させることができる。よって、同期信号の検出精度をさらに高めることができる。
【0023】
さらに、請求項6ないし8の発明のように、同期信号の検出に用いる信号レベルをさらに調整するようにすれば、同期信号の検出を、同一ディスク上における記録状態の変化や環境変化等に追随させることができる。
【0024】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。
【0025】
ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に、実施の形態に係るディスク再生装置の構成を示す。なお、本実施の形態は、HD、BDおよびDVDを互換再生可能なディスク再生装置に本発明を適用したものである。
【0027】
図示の如く、本実施の形態に係るディスク再生装置は、光ピックアップ101と、増幅回路102と、AD変換回路103と、オフセット調整回路104と、デジタルPLL105と、イコライザ106と、ビタビ復号器107と、復調回路108と、ピーク検出回路109と、ディスク判別回路110と、スライスレベルコントローラ111と、Sync検出回路112と、周波数エラー検出回路113と、サーボ回路114と、スピンドルモータ115を備えている。なお、デジタルPLL105、イコライザ106、ビタビ復号器107および復調回路108は、HD、BDおよびDVDに対応して、それぞれ3系統配されている。
【0028】
光ピックアップ101は、ディスクにレーザ光を照射するとともに、ディスクからの反射光を受光してデータの読み取りを行う。増幅回路102は、光ピックアップ101から供給される再生RF信号を増幅してAD変換回路103に出力する。AD変換回路103は、非同期クロックに応じたタイミングにて再生RF信号をサンプリングし、サンプル値をデジタルデータに変換してオフセット調整回路104に出力する。オフセット調整回路104は、再生RF信号に含まれるDCオフセットを検出してこれを除去し、オフセットのない再生RF信号(デジタルデータ)を出力する。
【0029】
デジタルPLL105は、AD変換回路103にてサンプリングされたデータを補間して、正規のサンプリングタイミングにおけるデータを生成する。イコライザ106は、デジタルPLL105から供給されるデータに対して波形等化処理を施してビタビ復号器107に出力する。ビタビ復号器107は、イコライザ106から入力されるデジタルデータにビタビ復号処理を施して1、0の2値化データを生成出力する。復調回路108は、ビタビ復号器107から出力される2値化データを復調して、再生データを生成する。
【0030】
ピーク検出回路109は、オフセット調整回路104から供給されるデジタルデータに基づいて、オフセット除去後の再生RF信号のピークレベルを検出する。
【0031】
ディスク判別回路110は、再生対象ディスクの種類を判別する。ここで、ディスクの種類判別は、たとえば、光ピックアップ101から出力される各種信号を参照して行われる。たとえば、HD用対物レンズを用いてディスクにレーザ光を照射した場合、各ディスクの層材料や基板厚の相違あるいは各ディスクに設定された開口数の相違等に起因して、光ピックアップ101内の光検出器によって受光される光量が、ディスク毎に相違する。このため、フォーカス引き込み時におけるフォーカスエラー信号の振幅や光検出器から出力される信号の和信号の振幅がディスク毎に相違するようになる。よって、これらの信号を、予めディスク毎に設定した信号レンジと比較することにより、再生対象ディスクの種類を判別できる。
【0032】
この他、再生対象ディスクから物理情報を読み取ることにより当該ディスクの種類を判別するようにすることもできる。ただし、この場合には、使用する対物レンズとレーザ光を切り替えながらディスクに対するレーザ光のフォーカス引き込みとトラッキング引き込みを行う必要があるため、上記に比べ、ディスク判別に要する時間が長くなる。
【0033】
スライスレベルコントローラ111は、ピーク検出回路109から供給される再生RF信号のピークレベルと、ディスク判別回路110から供給されるディスク種類の判別結果に基づいて、同期信号検出に用いる信号レベル(以下、「スライスレベル」という)を設定する。スライスレベルコントローラ111は、ピークレベルに対するスライスレベルの比率をディスク種別に対応付けて、内部メモリに保持している。
【0034】
ここで、ディスク判別回路110における判別結果がHDであれば、内部メモリからHD用の比率γ1が読み出され、ピーク検出回路109で検出されたプラス側およびマイナス側のピークレベルにそれぞれ比率γ1を乗算して、プラス側およびマイナス側のスライスレベルL1、L2が設定される。また、ディスク判別回路110における判別結果がBDであれば、内部メモリからBD用の比率γ2が読み出され、ピーク検出回路109で検出されたプラス側およびマイナス側のピークレベルにそれぞれ比率γ2を乗算して、プラス側およびマイナス側のスライスレベルL1、L2が設定される。なお、ディスク判別回路110における判別結果がDVDであれば、再生RF信号のセンターレベルにスライスレベルが設定される。
【0035】
スライスレベルコントローラ111は、このようにして設定したスライスレベルを、Sync検出回路112における同期信号の検出率に応じて調整する。なお、スライスレベルの調整方法については、追って、図4を参照して説明する。
【0036】
Sync検出回路112は、スライスレベルコントローラ111によって設定されたスライスレベルを用いて同期信号を検出する。ここで、再生対象ディスクがHDまたはBDである場合には、以下のようにして、同期信号期間の検出が行われる。
【0037】
まず、再生RF信号が正負2つのスライスレベルL1、L2にてスライスされ、各スライス時における信号期間(信号幅D)が検出される。すなわち、正のスライスレベルL1にてスライスされる場合は、再生RF信号の振幅値がL1以上となってからL1未満となるまでの期間が信号幅Dとして検出され、負のスライスレベルL2にてスライスされる場合は、再生信号の振幅値がL2以下となってからL2を越えるまでの期間が信号幅Dとして検出される。具体的には、その期間内に含まれるシステムクロックの個数がカウントされ、そのカウント数が信号幅Dとされる。そして、予め設定された期間(最大幅検出期間)において取得される複数の信号幅Dの長さが比較され、そのうち、プラス側にて最長の信号幅Dが当該最大幅検出期間におけるプラス側の最大信号幅MAX−D1として取得される。同様に、マイナス側にて最長の信号幅Dが当該最大幅検出期間におけるマイナス側の最大信号幅MAX−D2として取得される。
【0038】
このように取得された最大信号幅MAX−D1、MAX−D2は、基準同期信号幅W1、W2をマージンα、βで調整した信号幅W1±α、W2±βと比較される。ここで、基準同期信号幅W1、W2は、正負2つのスライスレベルL1、L2にて再生RF信号をスライスして得た信号幅Dを、予め設定された基準同期信号幅検出期間において比較し、そのうち、プラス側とマイナス側にて最大となる信号幅Dをそれぞれ基準同期信号幅W1とW2とすることにより設定される。
【0039】
最大信号幅MAX−D1がW1−αからW1+αの範囲内にある場合は、最大信号幅MAX−D1が同期信号期間とされ、W1−αからW1+αの範囲内にない場合は、最大信号幅MAX−D1は同期信号期間とはされない。同様に、最大信号幅MAX−D2がW2−βからW2+βの範囲内にある場合は、最大信号幅MAX−D2が同期信号期間とされ、W2−βからW2+βの範囲内にない場合は、最大信号幅MAX−D2は同期信号期間とはされない。
【0040】
再生対象ディスクがDVDである場合には、一つのスライスレベルを用いて上記と同様の処理が行われ、同期信号期間が検出される。すなわち、再生RF信号の振幅値がスライスレベルL以上となってからL未満となるまでの期間が信号幅Dとして検出され、予め設定された期間(最大幅検出期間)において取得される複数の信号幅Dの長さが比較され、そのうち、最長の信号幅Dが当該最大幅検出期間におけるプラ最大信号幅MAX−Dとして取得される。そして、このように取得された最大信号幅MAX−Dが、基準同期信号幅Wをマージンαで調整した信号幅W±αと比較され、最大信号幅MAX−DがW−αからW+αの範囲内にある場合は、最大信号幅MAX−Dが同期信号期間とされ、W−αからW+αの範囲内にない場合は、最大信号幅MAX−Dは同期信号期間とされない。
【0041】
Sync検出回路112は、同期信号期間と同じ周期で一定幅の検出窓を設定し、各検出窓内において、上記の如くして同期信号期間を検出できたときには、同期信号期間の検出に応じて検出信号を出力する。また、各検出窓内において同期信号期間を検出できない場合には、それまでの同期信号期間の周期に応じたタイミングにて擬似の同期信号期間の検出信号を出力する。Sync検出回路112は、このようにして出力された擬似の検出信号の割合(内挿補間率)を逐次算出し、これをスライスレベルコントローラ111に出力する。スライスレベルコントローラ111は、Sync検出回路112から供給される内挿補間率に基づいて、Sync検出回路112に供給するスライスレベルを調整する。
【0042】
周波数エラー検出回路113は、Sync検出回路112から供給される同期信号期間の検出信号から同期信号の周波数を検出し、この周波数と基準周波数との間の差分ΔFを周波数ずれデータとしてデジタルPLL105に出力する。デジタルPLL105は、この差分ΔFをゼロに近付けるよう補間タイミングを調整する。
【0043】
サーボ回路114は、Sync検出回路112から供給される検出信号の周波数を目標値に近づけるためのサーボ信号を生成し、これをスピンドルモータ115に出力する。スピンドルモータ115は、サーボ回路114から供給されるサーボ信号に応じてディスクを回転駆動する。
【0044】
図2(a)は、スライスレベルの設定時の処理フローチャートである。
【0045】
スライスレベルの設定時には、まず、ディスク判別回路110により再生対象ディスクが判別され(S101)、さらに、ディスクを起動しながら、ピーク検出回路109にて再生RF信号のピークレベルが検出される(S102)。しかる後、スライスレベルコントローラ111の内蔵メモリから、再生対象ディスクに応じた比率γが読み出され、上記の如く、再生RF信号のピークレベルに比率γを乗じてスライスレベルが設定される(S103)。
【0046】
図3は、スライスレベル調整時の処理フローチャートである。
【0047】
スライスレベルの調整処理は、スライスレベルが不適正となったときに実行される。スライスレベルの適否は、たとえば、Sync検出回路112からスライスレベルコントローラ111に供給される同期信号の内挿補間率をもとに判別される。具体的には、同期信号の内挿補間率が予め設定された閾値以上となったとき、スライスレベルコントローラ111は、スライスレベルの調整処理を行う。
【0048】
スライスレベルの調整時には、調整処理開始直前のスライスレベルLsがスライスレベルLnに設定され(S201)、変数Nに1がセットされる(S202)。しかる後、スライスレベルLnがΔLだけゼロレベルに近付けられ(S203)、そのときの内挿補間率Rが取得される。このように取得された内挿補間率Rが、予め設定された閾値R0と比較され(S204)、R<R0であれば(S204:NO)、スライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S205)。一方、R≧R0であれば(S204:YES)、変数Nに1が加算され(S206)、加算後の変数NがNaを超えたかが判別される(S207)。加算後の変数NがNaを超えていなければ(S207:NO)、S203に戻り、スライスレベルLnがさらにΔLだけゼロレベルに近付けられ、以後、同様の処理が繰り返される。
【0049】
スライスレベルLnをNa回ゼロレベルに近付ける間に内挿補間率Rが閾値R0未満となれば(S204:NO)、そのときのスライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S205)。
【0050】
スライスレベルLnをNa回ゼロレベルに近付けても内挿補間率Rが閾値R0未満とならなければ(S207:YES)、スライスレベルLnが、再度、調整処理開始直前のスライスレベルLsに戻され(S208)、同時に、変数NがN=1に戻される(S209)。しかる後、スライスレベルLnがΔLだけゼロレベルから離され(S210)、そのときの内挿補間率Rが取得される。このように取得された内挿補間率Rが、予め設定された閾値R0と比較され(S211)、R<R0であれば(S211:NO)、スライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S212)。一方、R≧R0であれば(S211:YES)、変数Nに1が加算され(S213)、加算後の変数NがNbを超えたかが判別される(S214)。加算後の変数NがNbを超えていなければ(S214:NO)、S210に戻り、スライスレベルLnがさらにΔLだけゼロレベルから離され、以後、同様の処理が繰り返される。
【0051】
スライスレベルLnをNb回ゼロレベルから離間させる間に内挿補間率Rが閾値R0未満となれば(S211:NO)、そのときのスライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S212)。スライスレベルLnをNb回ゼロレベルから離間させても内挿補間率Rが閾値R0未満とならなければ(S214:YES)、本ルーチンではスライスレベルを適正化できないとして処理が終了される。
【0052】
以上、本実施の形態によれば、スライスレベルが再生対象ディスクの種別に応じて設定されるため、それぞれのディスクに適した信号レベルを用いて同期信号の検出を行うことができる。よって、各ディスクに対する同期信号の検出を、円滑かつ適正に行うことができる。
【0053】
また、再生RF信号のピークレベルをもとにスライスレベルが設定されるため、再生対象ディスクの信号状態に応じてスライスレベルを適応的に変化させることができる。よって、同期信号の検出精度をさらに高めることができる。
【0054】
さらに、同期信号の検出率の低下に応じてスライスレベルが調整されるため、同期信号の検出を、同一ディスク上における記録状態の変化や環境変化等に追随させることができる。
【0055】
なお、図3の処理フローでは、スライスレベルLnをLsからΔLずつNa回ゼロレベルに接近させた後、LsからΔLずつNb回ゼロレベルから離間させるようにしたが、スライスレベルLnをLsからΔLだけゼロレベルに接近させて内挿補間率Rと閾値R0を比較する工程と、スライスレベルLnをLsからΔLだけゼロレベルから離間させて内挿補間率Rと閾値R0を比較する工程を交互に繰り返し、スライスレベルLnをスライスレベルLSからプラス方向とマイナス方向にΔLずつ交互に離間させながら、内挿補間率Rが閾値R0未満となるスライスレベルLnを取得するようにしても良い。
【0056】
また、図3の処理フローでは、スライスレベルの初期値として調整処理開始直前のスライスレベルLsを用いて、スライスレベルLnをスライスレベルLsからΔLずつ変化させるようにしたが、図2(a)の処理フローにて設定されたスライスレベルL0を保持しておき、スライスレベル調整時の初期値として、このスライスレベルL0を用いるようにしても良い。
【0057】
図4は、この場合の処理フローチャートである。
【0058】
スライスレベルの調整時には、図2(a)の処理フローにて設定されたスライスレベルの初期値L0がスライスレベルLnに設定され(S221)、変数Nに1がセットされる(S222)。しかる後、S221で設定されたスライスレベルにて内挿補間率Rが取得され、取得された内挿補間率Rが、予め設定された閾値R0と比較される(S223)。ここで、R<R0であれば(S223:NO)、スライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S224)。一方、R≧R0であれば(S223:YES)、スライスレベルLnがΔLだけゼロレベルに近付けられた後(S225)、変数Nに1が加算され(S226)、加算後の変数NがNaを超えたかが判別される(S227)。加算後の変数NがNaを超えていなければ(S227:NO)、S223に戻り、以後、同様の処理が繰り返される。
【0059】
スライスレベルLnを初期値L0からNa回ゼロレベルに近付ける間に内挿補間率Rが閾値R0未満となれば(S223:NO)、そのときのスライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S224)。
【0060】
スライスレベルLnを初期値L0からNa回ゼロレベルに近付けても内挿補間率Rが閾値R0未満とならなければ(S227:YES)、スライスレベルLnが、再度、初期値L0に戻され(S228)、同時に、変数NがN=1に戻される(S229)。しかる後、スライスレベルLnがΔLだけゼロレベルから離され(S230)、そのときの内挿補間率Rが取得される。このように取得された内挿補間率Rが、予め設定された閾値R0と比較され(S231)、R<R0であれば(S231:NO)、スライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S232)。一方、R≧R0であれば(S231:YES)、変数Nに1が加算され(S233)、加算後の変数NがNaを超えたかが判別される(S234)。加算後の変数NがNbを超えていなければ(S234:NO)、S230に戻り、スライスレベルLnがさらにΔLだけゼロレベルから離され、以後、同様の処理が繰り返される。
【0061】
スライスレベルLnを初期値L0からNb回ゼロレベルに対して離間させる間に内挿補間率Rが閾値R0未満となれば(S231:NO)、そのときのスライスレベルLnが新たなスライスレベルとして設定される(S232)。スライスレベルLnを初期値L0からNb回ゼロレベルに対して離間させても内挿補間率Rが閾値R0未満とならなければ(S234:YES)、本ルーチンではスライスレベルを適正化できないとして処理が終了される。
【0062】
なお、図4の処理フローチャートにおいても図3の場合と同様、スライスレベルLnをL0からΔLだけゼロレベルに接近させて内挿補間率Rと閾値R0を比較する工程と、スライスレベルLnをL0からΔLだけゼロレベルから離間させて内挿補間率Rと閾値R0を比較する工程を交互に繰り返すようにしても良い。
【0063】
また、上記実施の形態では、再生RF信号のピークレベルをもとにスライスレベルを設定したが、ディスク種別のみからスライスレベルを設定するようにしても良い。この場合、図5に示す如く、ピーク検出回路109が省略される。また、スライスレベルコントローラ111は、内部メモリに、ディスク種別に対応付けてスライスレベルを保持している。
【0064】
この場合、スライスレベルの設定は、図2(b)のフローチャートに従って行われる。スライスレベル設定時には、まず、ディスク判別回路110により再生対象ディスクが判別される(S111)。そして、スライスレベルコントローラ111の内蔵メモリから、再生対象ディスクに応じたスライスレベルが読み出され、読み出されたスライスレベルが同期信号検出用のスライスレベルとして設定される(S112)。なお、HDとBDに対しては、上記の如く、プラス側とマイナス側の2つのスライスレベルが設定される。また、DVDに対しては、スライスレベルがゼロレベルに設定される。
【0065】
なお、このようにして設定されたスライスレベルは、上記図1の場合と同様、その後の再生処理動作時に適宜調整される。この調整処理は、図3または図4の処理フローに従って行われる。
【0066】
図5に示す構成例によれば、スライスレベルコントローラ111の内部メモリからスライスレベルを取得するのみで済むため、スライスレベルの設定を迅速に行うことができる。
【0067】
また、上記実施の形態では、Sync検出回路109から供給される内挿補間率Rに基づいてスライスレベルを調整するようにしたが、内挿補間率Rに基づくスライスレベル調整を省略することもできる。
【0068】
図6に、この場合の構成例を示す。この構成例では、Sync検出回路112からスライスレベルコントローラ111に内挿補間率Rは供給されず、再生RF信号のピークレベルとディスク判別結果のみからスライスレベルが設定される。この場合、スライスレベルを初期設定時のレベルに固定しても良いが、好ましくは、再生動作時におけるピークレベルの変動に応じて、スライスレベルを変化させるようにすると良い。具体的には、再生動作時に、再生RF信号のピークレベルを随時取得し、取得したピークレベルに、当該ディスクに対応する比率γを乗じて、新たなスライスレベルを取得する。そして、取得した新たなスライスレベルを随時Sync検出回路112に設定する。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではない。
【0070】
上記実施の形態では、HD、BDおよびDVDの互換型ディスク再生装置を示したが、さらにCDをも含めた互換型ディスク再生装置に本発明を適用することもできる。また、再生対象のディスクはこれらに限定されるものではなく、これ以外のディスクを再生対象ディスクとすることもできる。さらに、上記実施の形態では、デジタルPLL回路を用いてデータのサンプリングを行ったが、ADC103に入力するサンプリングクロックの周期を調整するアナログPLL回路を用いてデータのサンプリングを行うようにすることもできる。
【0071】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施の形態に係るディスク再生装置の構成を示す図
【図2】実施の形態に係るスライスレベル設定時の処理フローチャート
【図3】実施の形態に係るスライスレベル調整時の処理フローチャート
【図4】実施の形態に係るスライスレベル調整時の処理フローチャート
【図5】実施の形態に係るディスク再生装置の構成を示す図
【図6】実施の形態に係るディスク再生装置の構成を示す図
【図7】スライスレベルを固定した場合の問題点を説明する図
【図8】スライスレベルを固定した場合の問題点を説明する図
【符号の説明】
【0073】
109 ピークレベル検出回路
110 ディスク判別回路
111 スライスレベルコントローラ
112 Sync検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の信号レベルにて信号波形をスライスしたときの信号幅に基づいて同期信号を検出する同期信号検出回路において、
再生対象とされるディスクの種類を判別するディスク判別部と、
前記ディスク判別部による判別結果に基づいて前記信号波形をスライスする前記信号レベルを設定するスライスレベル設定部とを有する、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記スライスレベル設定部は、前記信号レベルを前記ディスク種別に対応付けて記憶する記憶部を備え、前記ディスク判別部による判別結果に対応する信号レベルを前記記憶部から取得して、前記信号波形をスライスするための前記信号レベルに設定する、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記信号波形のピークレベルを検出するピーク検出部をさらに備え、
前記スライスレベル設定部は、前記ディスク判別部による判別結果と前記ピーク検出部による検出結果に基づいて前記信号レベルを設定する、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記スライスレベル設定部は、前記ピークレベルから前記信号レベルを算出するためのパラメータ値を前記ディスク種別に対応付けて記憶する記憶部を備え、前記ディスク判別部による判別結果に対応する前記パラメータ値を前記記憶部から取得し、取得したパラメータ値と前記ピーク検出部によって検出されたピークレベルから前記信号波形をスライスするための前記信号レベルを算出する、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項5】
請求項4において、
前記パラメータ値は、前記ピークレベルに対する前記信号レベルの比率である、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項において、
前記同期信号の検出率を判別する検出率判別部と、
前記スライスレベル設定部によって設定された信号レベルを前記検出率判別部による検出結果に基づいて調整するスライスレベル調整部をさらに有する、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記スライスレベル調整部は、前記検出率判別部による前記検出率が閾値以上となるように前記信号レベルを調整する、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項8】
請求項7において、
前記スライスレベル調整部は、前記スライスレベル設定部によって設定された信号レベルを一定レベルだけ加減しつつ前記検出率を監視し、前記検出率が前記閾値以上となったときの信号レベルを、前記信号波形をスライスするための信号レベルとして設定する、
ことを特徴とする同期信号検出回路。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の同期信号検出回路を有するディスク再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−52785(P2008−52785A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226033(P2006−226033)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】