説明

同期電動機駆動システム

【課題】複数の三相インバータ間の電流位相制御にバラツキが生じることによる、トルク脈動の増大を抑制することが可能な同期電動機駆動システムを提供する。
【解決手段】周方向に等間隔に配置された複数の磁極を有する回転子と周方向に等間隔に配置された複数の固定子ティース113を有する固定子を含む同期電動機と、当該同期電動機に互いに位相のずれた複数の三相交流を供給する複数の三相インバータとを備え、固定子ティース113には1種類以上のサブ巻線114Ua,114Ub等が集中巻に巻回されており、各サブ巻線は三相インバータのいずれかの相に接続されており、隣接関係にある一対の固定子ティース113は、いずれも、少なくとも一方の固定子ティース113に2種類以上のサブ巻線が巻回されており、これらのサブ巻線が互いに異なる三相インバータに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期電動機と同期電動機に互いに位相のずれた複数の三相交流を供給する複数の三相インバータとを備える同期電動機駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンプレッサ、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等の種々の機器には、同期電動機駆動システムが組み込まれている。このような同期電動機駆動システムとして、同期電動機と、同期電動機に互いに位相のずれた複数の三相交流電力を供給する複数の三相インバータとを備えるものがある(例えば、特許文献1)。
図19は、特許文献1に係る同期電動機900の基本構成を示す図である。同期電動機900は、回転子901と固定子902を含む。回転子901は周方向に等間隔に配置された8個の磁極(永久磁石)905を有し、固定子902は、周方向に等間隔に配置された9個の固定子ティース903を有する。固定子ティース903の各々には、固定子巻線904U,904V,904W,904U’,904V’,904W’,904U,904V,904Wが集中巻に巻回されている。
【0003】
上記9種の固定子巻線のうち、固定子巻線904U,904V,904W,904U’,904V’,904W’の6つの巻線は、第1の三相インバータから電力供給を受けている。一方、固定子巻線904U,904V,904Wの3つの巻線は、第1の三相インバータとは別の第2の三相インバータから電力供給を受けている(特許文献1の図13参照)。第1の三相インバータと第2の三相インバータとは、互いに位相のずれた複数の三相交流を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−115068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような同期電動機システムには、低振動、低騒音の要請から、低トルク脈動であることが求められる。しかしながら、特許文献1のように、隣接関係にある固定子ティースに巻回されている巻線が互いに異なる三相インバータに接続されている場合には、トルク脈動が増大するという課題がある。
複数の三相インバータは、これらの間で所定の位相差を保つように電流位相制御される必要があるところ、製造誤差や外部からのノイズの影響等の理由により、三相インバータにおける電流位相制御にバラツキが生じる場合がある。そうすると、この電流位相のバラツキの影響が各固定子ティースに作用するトルクのバラツキとなって現れる。このトルクのバラツキにより、トルク脈動が増大してしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の三相インバータ間の電流位相制御にバラツキが生じることによる、トルク脈動の増大を抑制することが可能な同期電動機駆動システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る同期電動機駆動システムは、周方向に等間隔に配置された複数の磁極を有する回転子と、周方向に等間隔に配置された複数の固定子ティースを有する固定子と、を含む同期電動機と、前記同期電動機に互いに位相のずれた複数の三相交流を供給する、複数の三相インバータと、を備える同期電動機駆動システムであって、各固定子ティースには、1または2種類以上の巻線が集中巻に巻回されており、各固定子ティースに巻回された各巻線は、それぞれ前記複数の三相インバータのいずれかの相に接続されており、隣接関係にある一対の固定子ティースは、いずれも、少なくとも一方の固定子ティースに2種類以上の巻線が巻回されており、これらの巻線が互いに異なる三相インバータに接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の同期電動機駆動システムによれば、各固定子ティースには、1または2種類以上の巻線が、隣接関係にある固定子ティース間の電気角位相差が各固定子ティース間で等しくなるように集中巻に巻回されている。このときに、本発明では、隣接関係にある一対の固定子ティースで見ると、いずれも、少なくとも一方の固定子ティースに2種類以上の巻線が巻回されており、これらの巻線が互いに異なる三相インバータに接続されるようにしている。このような構成とすることで、複数の三相インバータのうちの1台における電流位相が理想的な位相からαだけずれた場合であっても、2種類以上の巻線が巻回された固定子ティースに発生する磁界の位相に与える影響はαそのものではなく、2種類以上の巻線の巻数比に応じて、αから幾らか減じたものとなる。したがって、電流位相制御のバラツキの影響が現れる箇所がないため、従来と比較してトルク脈動の低減を図ることができる。
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、複数の三相インバータ間の電流位相制御にバラツキが生じることによる、トルク脈動の増加を抑制することが可能な同期電動機駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る同期電動機駆動システム1000の全体構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る同期電動機100の全体構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る同期電動機100の詳細図である。
【図4】第1の実施形態に係る各固定子巻線114の固定子106における配置を示す図である。
【図5】(a)第1の実施形態の同期電動機100に係るトルク変化をシミュレーションした結果を示す図と、(b)特許文献1の同期電動機900に係るトルク変化をシミュレーションした結果を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る同期電動機駆動システム2000の全体構成を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る同期電動機200の全体構成を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る同期電動機200の詳細図である。
【図9】第2の実施形態に係る各固定子巻線214の固定子206における配置を示す図である。
【図10】第3の実施形態に係る同期電動機駆動システム3000の全体構成を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る各固定子巻線の固定子106における配置を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係る同期電動機駆動システム4000の全体構成を示す図である。
【図13】第4の実施形態に係る各固定子巻線の固定子206における配置を示す図である。
【図14】K=6、L=2の場合における、各固定子ティースとそれに巻回されている固定子巻線を示す表である。
【図15】K=6、L=3の場合における、各固定子ティースとそれに巻回されている固定子巻線を示す表である。
【図16】K=6、L=3の場合における、各固定子ティースとそれに巻回されている固定子巻線を示す表である。
【図17】K=7、L=2の場合における、各固定子ティースとそれに巻回されている固定子巻線を示す表である。
【図18】インナーロータ型の同期電動機700の全体構成を示す図である。
【図19】特許文献1に係る同期電動機900の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪第1の実施形態≫
<構成>
図1は、第1の実施形態に係る同期電動機駆動システム1000の全体構成を示す図である。
同期電動機駆動システム1000は、同期電動機100と、同期電動機100に電力を供給する第1の三相インバータ101,第2の三相インバータ102からなる。
【0012】
直流電源BAは、電源系統を整流して得られる直流電源、または、バッテリタイプ(代表的には、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池)の直流電源である。
第1の三相インバータ101,第2の三相インバータ102は、直流電源BAから供給される直流電力を、位相が各々120[°](電気角で2π/3[rad])ずれたU相,V相,W相の三相交流に変換し、その三相交流を同期電動機100に供給する。U相の出力電流U1,U2はそれぞれU相アーム103u,104uから出力され、V相の出力電流V1,V2はそれぞれV相アーム103v,104vから出力され、W相の出力電流W1,W2はそれぞれW相アーム103w,104wから出力される。
【0013】
図2は、第1の実施形態に係る同期電動機100の全体構成を示す図であり、図3は、同期電動機100の詳細図である。
同期電動機100は、回転子105、固定子106から構成される。
回転子105は、回転子コア107および複数の永久磁石108を含み、永久磁石108は回転子コア107に回転子の周方向に等間隔に配置されている。永久磁石108によって構成される磁極109は、固定子106に対してN極、S極が交互に配置された磁極対を構成している。磁極対N極、S極は電気角で2π[rad]となり、隣り合う磁極の配置間隔は電気角でπ[rad]となる。本実施形態では、回転子105の磁極が22極なので、機械角に対して電気角が11倍の関係となっている。
【0014】
回転子105の磁極間110、111は、回転子105に配置された永久磁石で構成された磁極Nと磁極Sとの間の磁気中立点の位置を意味する。ここでは、機械的にも磁石と磁石との間の位置となっている。磁極間110は、反時計方向にみてN極からS極に変わる磁極間であり、磁極間111は、反時計方向にみてS極からN極に変わる磁極間である。なお、磁極間111’は、磁極間11に対して電気角では同じ位置であるが機械角では異なる位置にある。
【0015】
固定子106は、環状の固定子ヨーク112および固定子ヨーク112に周方向に等間隔に配置された複数の固定子ティース113を有する。各固定子ティース113には、固定子巻線114が集中巻に巻回されている。
回転子105の磁極109は周方向に等間隔で22個並べられており、機械角で360/22=16.4[°]の間隔となる。一方、固定子ティース113は、周方向に等間隔で24個並べられており、機械角で360/24=15[°]の間隔となる。このように、各固定子ティース113は、磁極109の配置間隔と異なる配置間隔で併設されており、磁極109と固定子ティース113とが半周当たり11/12だけずれて配置されている。また、各固定子ティース113の配置間隔は11π/12[rad]であり、電気角で165[°]である。
【0016】
本実施の形態においては、固定子ティース113の数を6Kとした場合、磁極109の数は6K±2で表される。同期電動機100は、固定子ティース113の数が24、磁極109の数が22あるので、K=4の場合について説明していることになる。固定子ティース113の数に対し、磁極109の数を上記のような関係とすることで、永久磁石108の磁束を有効に使うことができる。
【0017】
固定子巻線114は、その接続先で区別すると、図1の114U,114U’,114V,114V’,114W,114W’,114U,114U’,114V,114V’,114W,114W’で示すように12種ある。以下、各固定子巻線を区別しない場合には、単に固定子巻線114と記載することとする。
固定子巻線114U,114U’は第1の三相インバータ101のU相アーム103uに、固定子巻線114V,114V’は第1の三相インバータ101のV相アーム103vに、固定子巻線114W,114W’は第1の三相インバータ101のW相アーム103wに、それぞれ接続されている。同様に、固定子巻線114U,114U’は第2の三相インバータ102のU相アーム104uに、固定子巻線114V,114V’は第2の三相インバータ102のV相アーム104vに、固定子巻線114W,114W’は第2の三相インバータ102のW相アーム104wに、それぞれ接続されている。このように、各固定子巻線は、それぞれ第1および第2の三相インバータ101,102のいずれかの相に接続されている。
【0018】
図1に示す出力電流U1と出力電流U2との位相差は、同期電動機駆動システム1000に含まれる三相インバータの個数をL個とした場合に、上記のKを用いてL/K×(π/3[rad])で表される。本実施形態の場合、K=4、L=2であるから、出力電流U1と出力電流U2との位相差はπ/6[rad]である。したがって、固定子巻線114U,114Uには、互いに位相がπ/6[rad]ずれた電力が供給されることになる。このことは、出力電流V1と出力電流V2との間、出力電流W1と出力電流W2との間でも同様である。
【0019】
また、図1に示すように、固定子巻線114Uと114U’は巻回方向が互いに逆である。固定子巻線114U,114U’には共に出力電流U1が供給されるが、これらの巻線は互いに巻回方向が逆であるため、固定子巻線114Uおよび固定子巻線114U’により生じる磁界の位相差はπ[rad]となる。固定子巻線114Vと114V’、固定子巻線114Wと114W’においても同様の関係となっている。この関係は、第2の三相インバータ102から電力供給を受ける固定子巻線についても同様である。ここで、固定子巻線114Uと114U’等の巻回方向が互いに逆である場合について示したが、これに代えて、固定子巻線114Uと114U’等の巻回方向が同じであって、入力端子と中性点端子の接続を互いに逆にしてもよい。
【0020】
なお、本実施形態のように磁極数を2で割った値(すなわち、極対数)が奇数の場合、換言するとKが偶数の場合、機械角で180[°]対称の位置にある固定子ティースに巻回されている固定子巻線同士は、巻回方向が逆となっている。
図3は、固定子巻線114Uが巻回されている固定子ティース113,113,113付近の拡大図である。なお、固定子巻線114と同様に、各固定子ティースを区別しない場合には、単に固定子ティース113と記載することとする。
【0021】
固定子ティース113は、固定子ティース113に対して機械角で−15[°]の位置(電気角では、π[rad]からさらに−π/12[rad]ずれた位置)に配置されている。また、固定子ティース113は、固定子ティース113に対して機械角で+15[°]の位置(電気角では、π[rad]からさらに+π/12[[rad]]ずれた位置)に配置されている。
【0022】
本実施形態は、各固定子巻線114の巻き方に特徴を有する。以下、各固定子巻線114の巻き方について、各固定子巻線114の構造も含めて説明する。
まず、図3に示すように、固定子巻線114Uは、固定子ティース113に巻回されたサブ巻線114Uaと、固定子ティース113に巻回されたサブ巻線114Ubと、固定子ティース113に巻回されたサブ巻線114Ucとからなる。すなわち、サブ巻線114Ua、114Ub、114Ucが、固定子ティース113、113、113に亘って直列に接続されていることにより接続先が同一の固定子巻線114Uを構成している。図3で図示されていない他の固定子巻線においても同様の構成となっている。各固定子巻線を構成している各サブ巻線は、本発明の巻線に相当する。
【0023】
また、図3に示すように、固定子ティース113には、固定子巻線114Uのみが巻回されている。一方、固定子ティース113には、固定子巻線114Uと固定子巻線114W’の2つの固定子巻線が巻回されており、固定子ティース113には、固定子巻線114Uと固定子巻線114Uの2つの固定子巻線が巻回されている。このように、固定子巻線114Uは、複数の固定子ティース113に亘って巻回されている。
【0024】
図4は、第1の実施形態に係る各固定子巻線114の固定子106における配置を示す図である。図4中の複数の長尺状の四角は、その1つ1つが各固定子巻線114を示している。本実施形態においては、固定子巻線114Uと同様に、各固定子巻線114に3つのサブ巻線が含まれている。また、図4に示すように、固定子巻線114U以外の固定子巻線114についても、固定子巻線114Uと同様に複数の固定子ティース113に亘って巻回されている。
【0025】
固定子106全体で見ると、固定子ティース113,113,113,…,11322,11324のように1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース113が複数個毎に配置されている。図4に示す例においては、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース113が2個毎にある。このように、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース113が含まれるような巻き方とすることで、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースが含まれない場合と比較して、各固定子ティースに巻回するサブ巻線の巻数を削減することができる。
【0026】
そして、1種類のサブ巻線のみが巻回されている一対の固定子ティースの間に存在する固定子ティースには、当該一対の固定子ティースの一方に巻回されているサブ巻線と接続先が同一のサブ巻線と、他方に巻回されているサブ巻線と接続先が同一のサブ巻線とが巻回されている。具体的に、固定子ティース113,113を例に挙げて図3を用いて説明する。サブ巻線114Ubのみが巻回されている固定子ティース113とサブ巻線114Ubのみが巻回されている固定子ティース113の間に存在する固定子ティース113には,サブ巻線114Ubと接続先(ここでの接続先は第1の三相インバータ101のU相アーム103uである。)が同一のサブ巻線114Ucと、サブ巻線114Ubと接続先(ここでの接続先は第2の三相インバータ102のU相アーム104uである。)が同一のサブ巻線114Uaとが巻回されている。
【0027】
このような巻き方を各固定子巻線114についてすることで、隣接関係にある一対の固定子ティース113で見ると、いずれも、少なくとも一方の固定子ティース113に2以上のサブ巻線が巻回されており、これらのサブ巻線が互いに異なる三相インバータに接続されるようになっている。つまり、互いに接続先が異なるサブ巻線1つのみが巻回されている固定子ティース113同士が、隣り合うことはない。
【0028】
各固定子ティース113に巻回された1以上のサブ巻線の巻数比は、隣接関係にある固定子ティース113間の電気角位相差が各固定子ティース間で等しくなるように調整されている。具体的に図3で説明すると、サブ巻線114Ubの巻数をN1、サブ巻線114Uaおよび114Ucの巻数をN2とした場合、次の関係が満たされている。
N2=N1/2(cos(π/3/K))
本実施形態においては、K=4であるので、
N2=N1/2(cos(π/12))
の関係を満たしていることになる。例えば、N1=50とした場合、N2=25.8≒26である。
【0029】
図3において、固定子巻線114Uが巻回されている固定子ティース113,113,113からなる固定子ティース群において、隣接関係にある固定子ティースに巻回されているサブ巻線は、互いに巻回方向が逆である。具体的には、固定子ティース113に巻回されているサブ巻線114Uaと、固定子ティース113に巻回されているサブ巻線114Ubは互いに巻回方向が逆である。また、固定子ティース113に巻回されているサブ巻線114Ubと、固定子ティース113に巻回されているサブ巻線114Ucは互いに巻回方向が逆である。
【0030】
<効果>
各固定子巻線(各サブ巻線)を上記のような巻き方とすることで、例えば、第1の三相インバータ101に接続されているサブ巻線のみが巻回された第1の固定子ティースに隣接する固定子ティース(1種類のサブ巻線のみが巻回された固定子ティースの両隣りの固定子ティース)のうち、少なくとも一方の第2の固定子ティースには2以上のサブ巻線が巻回されていることになる。換言すると、第2の固定子ティースには、第1の三相インバータ101に接続されているサブ巻線と、第2の三相インバータ102に接続されているサブ巻線の両方が必ず巻回されていることになる。このため、第1の三相インバータ101,第2の三相インバータ102における電流位相制御にバラツキが生じた場合であっても、第2の固定子ティースに第2の三相インバータ102と接続されているサブ巻線のみが巻回されている場合(特許文献1の場合)と比較して、バラツキの影響が各固定子ティースに作用するトルクのバラツキとして現れにくい。
【0031】
この理由は以下のように説明することができる。まず、従来例(図19)における固定子巻線904Vが巻回された固定子ティース903と、固定子巻線904Wが巻回された固定子ティース903に注目する。固定子巻線904Wが巻回された固定子ティース903には、この固定子巻線904Wのみが巻回されている。そのため、第2の三相インバータにおける電流位相制御が、理想的な位相からα[rad]だけずれたとした場合、固定子巻線904Wが巻回された固定子ティース903に発生する磁界の位相に与える影響は、α[rad]そのものとなる。
【0032】
一方、本実施形態(図3)における固定子巻線114Uが巻回された固定子ティース113と、固定子巻線114Uが巻回された固定子ティース113に注目する。上述したように、固定子ティース113における巻数が50である場合、固定子ティース113における巻数は26である。したがって、第2の三相インバータ102における電流位相制御が、理想的な位相からα[rad]ずれた場合、固定子ティース113に発生する磁界の位相に与える影響はα×26/50[rad]=α×0.52[rad]となり、従来例と比較して半減する。つまり、第2の三相インバータにおける電流位相制御がずれたとしても、その影響が半減される。
【0033】
図5(a)は、第1の実施形態の同期電動機100に係るトルク変化をシミュレーションした結果を示す図であり、図5(b)は、特許文献1の同期電動機900に係るトルク変化をシミュレーションした結果を示す図である。各図において、横軸は回転角度(電気角)[°]、縦軸はトルク[p.u]である。実線は、第1および第2の三相インバータにおける電流位相制御において位相のずれがない場合の結果であり、破線は、第1および第2の三相インバータのいずれか一方における電流位相制御が電気角で20[°]ずれた場合の結果を示している。
【0034】
図5(a)と図5(b)との比較により明らかなように、本実施形態の構成によれば、三相インバータに電流位相制御にずれがない場合(実線)、ずれがある場合(破線)ともに、トルク脈動が低減されていることが見て取れる。
以上説明したように、複数の三相インバータ間における電流位相制御にバラツキが生じた場合であっても、それによる電気角位相のずれ量を、従来と比較して減少させることができる結果、トルク脈動の増大を抑制することが可能である。
【0035】
また、本実施の形態に係るサブ巻線の巻き方によれば、各固定子巻線を複数本の固定子ティースに亘って巻回しているため、同期電動機に対し三相交流を供給するのに必要な三相インバータの個数を削減することができる。本実施形態では、各固定子巻線を3本の固定子ティースに亘って巻回することで、図1で示したように、三相インバータ2台で駆動させることができる。三相インバータの個数を削減することで、同期電動機駆動システムの小型化および低コスト化を図ることができる。この構成は、本実施形態のように磁極および固定子ティースの個数が比較的多い、いわゆる多極の同期電動機を備える同期電動機駆動システムの場合に特に有効である。なお、本発明者は、三相インバータの個数を削減することによるトルクの減少はなく、三相インバータ2台で駆動させた場合と同等のトルク特性を得られることを確認している。
【0036】
≪第2の実施形態≫
<構成>
図6は、第2の実施形態に係る同期電動機駆動システム2000の全体構成を示す図である。
同期電動機駆動システム2000は、第1の実施形態に係る同期電動機駆動システム1000における同期電動機100が同期電動機200に変わったものである。
【0037】
図7は、第2の実施形態に係る同期電動機200の全体構成を示す図であり、図8は、同期電動機200の詳細図である。
同期電動機200は、回転子205、固定子206から構成される。
本実施形態では回転子205に含まれる永久磁石208は28極である。したがって、機械角に対して電気角が14倍の関係となっている。また、固定子206は、周方向に等間隔に配置された30個の固定子ティース213を有する。各固定子ティース213には、固定子巻線214が集中巻に巻回されている。
【0038】
回転子205の磁極209は周方向に等間隔で28個並べられており、機械角で360/28≒12.9[°]の間隔となる。一方、固定子ティース213は、周方向に等間隔で30個並べられており、機械角で360/30=12[°]の間隔となる。このように、各固定子ティース213は、磁極209の配置間隔と異なる配置間隔で併設されており、磁極209と固定子ティース213とが半周当たり14/15だけずれて配置されている。また、各固定子ティース213の配置間隔は14π/15[rad]であり、電気角で168[°]である。
【0039】
同期電動機200は固定子ティース213の数が30、磁極209の数が28であるので、本実施形態においても固定子ティース213の数を6Kとした場合、磁極209の数が6K±2であるという関係を満たしている。したがって、同期電動機200においても、永久磁石208の磁束を有効に使うことができる配置となっている。本実施形態においては、K=5の場合について説明している。
【0040】
固定子巻線214は、その接続先で区別すると、図1の214U,214U’,214V,214V’,214W,214W’,214U,214U’,214V,214V’,214W,214W’で示すように12種ある。各々の接続先は、第1の実施形態における114U,114U’,…114W,114W’と同様である。
【0041】
図6に示す出力電流U1と出力電流U2との位相差は、第1の実施形態の場合と同様に、同期電動機駆動システム2000に含まれる三相インバータの個数をL個とした場合に、上記のKを用いてL/K×(π/3[rad])で表される。本実施形態の場合、K=5、L=2であるから、出力電流U1と出力電流U2との位相差は2π/15[rad]である。したがって、固定子巻線214U,214Uには、互いに位相が2π/15[rad]ずれた電力が供給されることになる。このことは、出力電流V1と出力電流V2との間、出力電流W1と出力電流W2との間でも同様である。
【0042】
また、図6に示す固定子巻線214Uと214U’は巻回方向が同じである。固定子巻線214Vと214V’、固定子巻線214Wと214W’においても同様の関係となっている。この関係は、第2の三相インバータ102から電力供給を受ける固定子巻線についても同様である。なお、本実施形態のように磁極数を2で割った値(すなわち、極対数)が偶数の場合、換言するとKが奇数の場合、機械角で180[°]対称の位置にある固定子ティースに巻回されている固定子巻線同士は、巻回方向が同じとなっている。
【0043】
図8は、第2の実施形態に係る固定子巻線214Uが巻回されている固定子ティース213,213,213,213付近の拡大図である。固定子ティース213は、固定子ティース213に対して機械角で−12[°]の位置(電気角では、(π−π/15)[rad]ずれた位置)に配置されている。また、固定子ティース213は、固定子ティース213に対して機械角で+12[°]の位置(電気角では、(π−π/15)[rad]ずれた位置)に配置されている。
【0044】
次に、各固定子巻線214の巻き方について、各固定子巻線214の構造も含めて説明する。
まず、図8に示すように、固定子巻線214Uは、固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214Uaと、固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214Ubと、固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214Ucと、固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214Udとからなる。サブ巻線214Ua、214Ub、214Uc、214Udが、固定子ティース213、213、213、213に亘って直列に接続されていることにより接続先が同一の固定子巻線214Uを構成している。図8で図示されていない他の固定子巻線においても同様の構成となっている。
【0045】
また、図8に示すように、固定子ティース213には、固定子巻線214Uのみが巻回されている。一方、固定子ティース213,213には、固定子巻線214Uと固定子巻線214W’の2つの固定子巻線が巻回されており、固定子ティース213には、固定子巻線214Uと固定子巻線214Uの2つの固定子巻線が巻回されている。このように、固定子巻線214Uは、複数の固定子ティース213に亘って巻回されている。
【0046】
図9は、第2の実施形態に係る各固定子巻線214の固定子206における配置を示す図である。図9中の複数の長尺状の四角は、その1つ1つが各固定子巻線214を示している。本実施形態においては、固定子巻線214Uと同様に、各固定子巻線214に4つのサブ巻線が含まれている。また、図9に示すように、固定子巻線214U以外の固定子巻線214についても、固定子巻線214Uと同様に複数の固定子ティース213に亘って巻回されている。
【0047】
固定子206全体で見ると、固定子ティース213,213,213,…,21328,21330のように1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース213が複数個毎に配置されている。図9に示す例においては、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース213が2個毎に配置されている箇所と3個毎に配置されている箇所とがある。
【0048】
本実施形態においても、1種類のサブ巻線のみが巻回されている一対の固定子ティースの間に存在する固定子ティースには、当該一対の固定子ティースの一方に巻回されているサブ巻線と接続先が同一のサブ巻線と、他方に巻回されているサブ巻線と接続先が同一のサブ巻線とが巻回されている。具体的に図8を用いて説明すると、サブ巻線214Ucのみが巻回されている固定子ティース213とサブ巻線214W’bのみが巻回されている固定子ティース21330の間には、固定子ティース213,213が存在する。固定子ティース213には,サブ巻線214Ucと接続先が同一のサブ巻線214Uaと、サブ巻線214W’bと接続先が同一のサブ巻線214W’cとが巻回されている。また、固定子ティース213には,サブ巻線214Ucと接続先が同一のサブ巻線214Ubと、サブ巻線214W’bと接続先が同一のサブ巻線214W’dとが巻回されている。
【0049】
このような巻き方を各固定子巻線214についてすることで、第1の実施形態と同様に、互いに接続先が異なるサブ巻線1つのみが巻回されている固定子ティース213同士が、隣り合うことはない。
1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース213間に1本の固定子ティース213のみが配置されている場合、その固定子ティース213に巻回された1以上のサブ巻線の巻数比は、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース213、例えば固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214Ucの巻数をN1、2種類のサブ巻線が巻回されている固定子ティース213、例えば固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214Udの巻数をN2とした場合、次の関係が満たされている。
【0050】
N2=N1/2(cos(π/3/K))
本実施形態においては、K=5であるので、
N2=N1/2(cos(π/15))
の関係を満たしていることになる。例えば、N1=50とした場合、N2=24.45≒24である。
【0051】
一方、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース213間に2本の固定子ティース213が配置されている場合、それらの固定子ティース213に巻回された1以上のサブ巻線の巻数比は、以下のようになる。
2種類のサブ巻線が巻回されている固定子ティース213、例えば固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214のうち、1種類のサブ巻線のみが巻回されている隣接する固定子ティース213である、固定子ティース213に巻回されたサブ巻線214Ucと同じ種類のサブ巻線214Ubの巻数をN3とし、他方のサブ巻線214W’dの巻数をN4とした場合、次の関係が満たされている。
【0052】
N3=N1×sin(2x)/sin(3x)
N4=N1×sin(x)/sin(3x)
但し、x=(π/3/K)である。
図8において、固定子巻線214Uが巻回されている固定子ティース213,213,213,213からなる固定子ティース群において、隣接関係にある固定子ティースに巻回されているサブ巻線は、互いに巻回方向が逆である。具体的には、サブ巻線214Uaとサブ巻線214Ub、サブ巻線214Ubとサブ巻線214Uc、サブ巻線214Ucとサブ巻線214Udは互いに巻回方向が逆である。
【0053】
<効果>
本実施形態においても、隣接関係にある一対の固定子ティース213は、いずれも、少なくとも一方の固定子ティース213に2以上のサブ巻線が巻回されており、これらのサブ巻線が互いに異なる三相インバータに接続されるようになっている。したがって、本実施形態においても、第1の実施形態と同等のトルク脈動低減効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態のように、各固定子巻線を4本の固定子ティースに亘って巻回することで、図6で示したように、三相インバータ2台で駆動させることができる。したがって、本実施形態においても、同期電動機駆動システムの小型化および低コスト化を図ることができる。
≪第3の実施形態≫
第1および第2の実施形態においては、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースが含まれるような巻き方としていたが、本発明はこれに限定されない。本実施形態においては、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースが含まれない例について説明する。
【0055】
図10は、第3の実施形態に係る同期電動機駆動システム3000の全体構成を示す図である。
同期電動機駆動システム3000は、同期電動機300と、同期電動機300に電力を供給する第1の三相インバータ301,第2の三相インバータ302,第3の三相インバータ303からなる。
【0056】
同期電動機300は、第1の実施形態に係る同期電動機100(図2)と同じ回転子105と固定子106を備えている。同期電動機300と同期電動機100との異なる点は、固定子巻線の数および各固定子巻線の巻き方である。
同期電動機300は、図10に示すように、314U,314U’,314V,314V’,314W,314W’,314U,314U’,314V,314V’,314W,314W’,314U,314U’,314V,314V’,314W,314W’で示す18種の固定子巻線を有する。
【0057】
固定子巻線314U,314U’は第1の三相インバータ301のU相アーム304uに、固定子巻線314V,314V’は第1の三相インバータ301のV相アーム304vに、固定子巻線314W,314W’は第1の三相インバータ301のW相アーム304wに、それぞれ接続されている。特に説明しないが、固定子巻線314U,314U’,314V,314V’,314W,314W’,314U,314U’,314V,314V’,314W,314W’についても同様の接続関係となっている。
【0058】
図10に示す出力電流U1と出力電流U2との位相差、および出力電流U2と出力電流U3との位相差は、上記のKを用いて(π/3[rad])/Kで表される。本実施形態の場合、K=4であるから、出力電流U1と出力電流U2との位相差、および出力電流U2と出力電流U3との位相差は、π/12[rad]である。したがって、固定子巻線314U,314Uには、互いに位相がπ/12[rad]ずれた電力が供給され、固定子巻線314U,314Uには、互いに位相がπ/12[rad]ずれた電力が供給されることになる。このことは、出力電流V1と出力電流V2との間、出力電流V2と出力電流V3との間、出力電流W1と出力電流W2との間、および出力電流W2と出力電流W3でも同様である。
【0059】
図11は、第3の実施形態に係る各固定子巻線の固定子106における配置を示す図である。
本実施形態では、各固定子巻線を3本の固定子ティース113に亘って巻回するようにしている。さらに、いずれの固定子ティース113においても2以上のサブ巻線が巻回されるようにしており、固定子ティース113,113,11311,11315,11319,11323にあっては、3のサブ巻線が巻回されている。このような巻き方である結果、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース113は存在しない。
【0060】
本実施形態のような巻き方であっても、隣接関係にある一対の固定子ティース113は、いずれも、少なくとも一方の固定子ティース113に2以上のサブ巻線が巻回されており、これらのサブ巻線が互いに異なる三相インバータに接続されるようになっている。したがって、従来と比較してトルク脈動を抑制することが可能である。
また、本実施形態では、各固定子巻線を3本の固定子ティース113に亘って巻回するようにしている。したがって、本実施形態によれば、図10に示すように、必要な三相インバータの台数を3台にすることが可能である。よって、本実施形態においても、同期電動機駆動システムの小型化および低コスト化を図ることができる。
【0061】
≪第4の実施形態≫
本実施形態においても、第3の実施形態と同様に1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースが含まれない例について説明する。
図12は、第4の実施形態に係る同期電動機駆動システム4000の全体構成を示す図である。
【0062】
同期電動機駆動システム4000は、第3の実施形態に係る同期電動機駆動システム3000における同期電動機300が同期電動機400に変わったものである。
同期電動機400は、第2の実施形態に係る同期電動機200(図7)と同じ回転子205と固定子206を備えている。同期電動機400と同期電動機200との異なる点は、固定子巻線の数および各固定子巻線の巻き方である。
【0063】
同期電動機400は、図12に示すように、414U〜414U,414U’〜414U’,414V〜414V,414V’〜414V’,414W〜414W,414W’〜414W’の18種の固定子巻線を有する。各固定子巻線の接続関係は、第3の実施形態におけるものと略同様である。但し、第3の実施形態と異なり、固定子巻線414Uと414U’は巻回方向が同じである。
【0064】
図12に示す出力電流U1と出力電流U2との位相差、および出力電流U2と出力電流U3との位相差は、上記の実施形態の場合と同様に、上記のKを用いて(π/3[rad])/Kで表される。本実施形態の場合、K=5であるから、出力電流U1と出力電流U2との位相差、および出力電流U2と出力電流U3との位相差は、π/15[rad]である。したがって、固定子巻線414U,414Uには、互いに位相がπ/15[rad]ずれた電力が供給され、固定子巻線414U,414Uには、互いに位相がπ/15[rad]ずれた電力が供給されることになる。このことは、出力電流V1と出力電流V2との間、出力電流V2と出力電流V3との間、出力電流W1と出力電流W2との間、および出力電流W2と出力電流W3でも同様である。
【0065】
図13は、第4の実施形態に係る各固定子巻線の固定子206における配置を示す図である。
本実施形態では、各固定子巻線を4本の固定子ティース213に亘って巻回するようにしている。さらに、いずれの固定子ティース213においても2以上のサブ巻線が巻回されるようにしており、固定子ティース213,213,213,213,21312,21314,21317,21319,21322,21324,21327,21329にあっては、3種類のサブ巻線が巻回されている。このような巻き方である結果、第3の実施形態と同様に、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティース213は存在しない。したがって、従来と比較してトルク脈動を抑制することが可能である。
【0066】
本実施形態のように、各固定子巻線を4本の固定子ティース213に亘って巻回するようにした場合には、図12に示すように、必要な三相インバータの台数を3台にすることが可能である。したがって、本実施形態においても、同期電動機駆動システムの小型化および低コスト化を図ることができる。
≪変形例・その他≫
以上、第1〜第4の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られない。例えば、以下のような変形例等が考えられる。
【0067】
(1)上記の実施形態においては、K=4およびK=5の場合について説明したが、本発明においては、Kの数値は特に限定されない。ここでは、K=6およびK=7の場合における各固定子巻線の巻き方について簡単に説明する。
図14は、K=6、L=2の場合における、各固定子ティースとそれに巻回されている固定子巻線を示す表である。図14に示す各表の上方には固定子ティースの番号を示している。本例ではK=6であるので、固定子ティースは1〜36番まである。図14に示す各表の左側には固定子巻線の種類を示している。本例ではL=2であるので、第1および第2の実施形態と同様に12種ある。例えば、「U1」は、第1のインバータのU相アームに接続されていることを示しており、「U2」は、第2のインバータのU相アームに接続されていることを示している。また、「U1’」は「U1」と同様に第1のインバータのU相アームに接続されているが、「U1」とは巻回方向が逆である。また、各固定子巻線は、この表で丸が付されている固定子ティースに巻回されている。例えば、「U1」は、1番〜5番の固定子ティースに巻回されていることを示している。
【0068】
図14に示すように、各固定子巻線は、5本の固定子ティースに亘って巻回されている。つまり、各固定子巻線は5つのサブ巻線から構成されていることになる。1つのサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースは、3番,6番,9番,…,30番,33番,36番であり、固定子ティース3個毎に1個存在する。3番の固定子ティースと6番の固定子ティースの間に存在する4番,5番の固定子ティースに着目すると、当該各固定子ティースには、3番の固定子ティースに巻回されている固定子巻線(U1)と接続先が同一のサブ巻線と、6番の固定子ティースに巻回されている固定子巻線(U2)と接続先が同一のサブ巻線とが巻回されている。
【0069】
図15、16は、K=6、L=3の場合における、各固定子ティースとそれに巻回されている固定子巻線を示す表である。本例ではK=6なので、固定子ティースは1〜36番まである。また、本例ではL=3なので、固定子巻線は18種である。図15、16に示すように、各固定子巻線は3本の固定子ティースに亘って巻回されているため、各固定子巻線は3つのサブ巻線から構成されていることになる。1つのサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースは、2番,4番,6番,…,32番,34番,36番であり、固定子ティース2個毎に1個存在する。2番の固定子ティースと4番の固定子ティースの間に存在する3番の固定子ティースに着目すると、2番の固定子ティースに巻回されている固定子巻線(U1)と接続先が同一のサブ巻線と、4番の固定子ティースに巻回されている固定子巻線(U2)と接続先が同一のサブ巻線とが巻回されている。
【0070】
図17は、K=7、L=2の場合における、各固定子ティースとそれに巻回されている固定子巻線を示す表である。本例ではK=7なので、固定子ティースは1〜42番まである。また、本例ではL=2なので、固定子巻線は12種である。図17に示すように、各固定子巻線は6本の固定子ティースに亘って巻回されているため、各固定子巻線は6つのサブ巻線から構成されていることになる。1つのサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースは、4番,7番,11番,14番,…,32番,35番,39番,42番であり、固定子ティース3個毎に1個存在する箇所と、4個毎に1個存在する箇所とがある。4番の固定子ティースと7番の固定子ティースの間に存在する5番,6番の固定子ティースに着目すると、当該各固定子ティースには、4番の固定子ティースに巻回されている固定子巻線(U1)と接続先が同一のサブ巻線と、7番の固定子ティースに巻回されている固定子巻線(U2)と接続先が同一のサブ巻線とが巻回されている。
【0071】
このように、図14〜17に示した例では、隣接関係にある一対の固定子ティースは、いずれも、少なくとも一方の固定子ティースに2以上のサブ巻線が巻回されており、これらのサブ巻線が互いに異なる三相インバータに接続されるようにすることができる。したがって、従来と比較して、トルク脈動を抑制することが可能である。
(2)第1および第2の実施形態、図14〜17に示した例のように、三相インバータの個数を2/K以下のL個(但し、Lは2以上の整数)とすることで、1種類のサブ巻線のみが巻回されている固定子ティースを存在させることが可能である。したがって、三相インバータの個数を2/K以下のL個とすることで、各固定子ティースに巻回するサブ巻線の巻数を削減することができる。
【0072】
(3)第1〜第4の実施形態においては、固定子ティースの数を6Kとした場合に、磁極の数が6K±2で表されることとしたが、これは単なる一例であり、必ずしもこの関係を満たしている必要はない。この関係を満たしていない同期電動機を含む同期電動機駆動システムであっても、当該同期電動機が複数の三相インバータから三相交流の供給を受けるものであれば、本発明を適用することが可能である。なお、6Kの固定子ティースと6K±2の磁極とを備える同期電動機は、全て2台の三相インバータで駆動することが可能である。
【0073】
(4)上述したようにKの数値は特に限定されないが、Kは4〜6とすることが望ましい。Kが4〜6であって、「固定子ティースの数を6Kとした場合に、磁極の数が6K±2で表される」という関係を満たしている場合、磁極数が22、26、28、32、34、38の多極電動機とすることができるため、高トルク化に有効である。
さらに、Kを4〜6とすることで次のような利点もある。例えば、電気自動車のタイヤを直接的に駆動するインホイールモータでは、最大回転数が1200〜1500[r/min]程度である。ここで、三相インバータのU相アーム、V相アーム、W相アームの各アームは、直列接続されたスイッチング素子で構成されている。スイッチング素子には、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor,IGBT)に代表されるパワー半導体素子が用いられており、このパワー半導体素子はパルス幅変調方式(PWM方式)に基づき駆動制御される。このパワー半導体素子を用いたPWM方式に基づき生成される、電動機の駆動電流波形の周波数は、現状では400[Hz]程度が実用の上限となっている。この条件を満たす電動機の極数は、32極〜40極程度となる。したがって、Kを4〜6とすることで実用的かつ高性能な電動機を構成することができる。
【0074】
(5)第1〜第4の実施形態および図14〜19に示した各固定子巻線の巻き方は本発明の単なる一例である。各固定子ティースに巻回された1以上の巻線は、隣接関係にある一対の固定子ティースは、いずれも、少なくとも一方の固定子ティースに2以上のサブ巻線が巻回されており、これらのサブ巻線が互いに異なる三相インバータに接続されるようになっていれば、上記の巻き方には限定されない。
【0075】
(6)第1の実施形態で述べたように、当該第1の実施形態にように磁極数を2で割った値(すなわち、極対数)が奇数の場合、換言するとKが偶数の場合、機械角で180[°]対称の位置にある固定子ティースに巻回されている固定子巻線同士は、巻回方向が逆となっている。これは、第1の実施形態だけでなく、Kが偶数である第3の実施形態および図14〜16の場合でも当てはまることである。
【0076】
また、第2の実施形態で述べたように、当該第2の実施形態にように磁極数を2で割った値(すなわち、極対数)が偶数の場合、換言するとKが奇数の場合、機械角で180[°]対称の位置にある固定子ティースに巻回されている固定子巻線同士は、巻回方向が同じとなっている。これは、第2の実施形態だけでなく、Kが奇数である第4の実施形態および図17の場合でも当てはまることである。
【0077】
(7)第3の実施形態において(K=4、L=3)、第1の三相インバータにおける電流位相を0[rad]とした場合に、第2の三相インバータにおける電流位相をπ/12[rad]、第3の三相インバータにおける電流位相をπ/6[rad]とする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。0[rad],(π/3)/K×1[rad],(π/3)/K×2[rad],(π/3)/K×3[rad]の4つの電流位相の中から、任意に3つの電流位相を選択することができる。なお、第3の実施形態においては、0[rad],(π/3)/K×1[rad],(π/3)/K×2[rad]を選択した例を示した。
【0078】
(8)第1〜第4の実施形態では固定子巻線は固定子ティースに巻回されているが、本発明はこれに限らず、固定子ティースのない、いわゆるコアレスモータにも適用可能である。
(9)第1〜第4の実施形態では特に挙げていないが、固定子ティースが回転子の軸方向に進むほど周方向に最大で固定子ティースの配置間隔だけずれていくスキュー配置を施すこととしてもよい。
【0079】
(10)第1〜第4の実施形態では、回転子が固定子の外側に配置されたアウターロータ型の同期電動機で説明しているが、回転子を固定子の内側に配置したインナーロータ型の同期電動機に対しても適用することが可能である。図18は、インナーロータ型の同期電動機700の全体構成を示す図である。同期電動機700は、回転子705と固定子706を含む。回転子705には永久磁石708が周方向に等間隔に配置されている。固定子706には、永久磁石708に対向するように、固定子ティース713が周方向に等間隔に配置されている。固定子ティース713には、固定子巻線714が巻回されている。
【0080】
本発明は、さらに、インナーロータ型の同期電動機だけでなく、回転子と固定子とが軸方向に空隙を持って配置された、いわゆる面対向のアキシャルギャップ式同期電動機や、これらを複数組み合わせた構造の同期電動機でも同じ効果が得られる。
(11)第1〜第4の実施形態では、回転子の磁極を永久磁石により構成したが、磁気抵抗の差で構成したリラクタンストルクを利用した同期電動機、回転子に両者を組み合わせた同期電動機でも適用可能である。
【0081】
(12)本発明は、同期回転機に限らず、同期発電機、また、直動駆動されるリニア同期電動機、リニア同期発電機にも適用できる。
(13)各図は、本発明が理解できる程度に配置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は図示例に限定されるものではない。また、図を分かり易くするために、一部省略した部分がある。
【0082】
(14)上記の実施形態および変形例は単なる好適例に過ぎず、何らこれに限定されない。また、これらの実施形態および変形例に挙げた構成を適宜好適に組み合わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、低振動性および低騒音性が要求される、コンプレッサ用、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等の同期電動機駆動システムに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
100、200、300,400、700、900 同期電動機
101、301 第1の三相インバータ
102、302 第2の三相インバータ
103u、304u U相アーム
103v、304v V相アーム
103w、304w W相アーム
104u U相アーム
104v V相アーム
104w W相アーム
105、205、705、901 回転子
106、206、706、806、902 固定子
107 回転子コア
108、208、708 永久磁石
109、209、905 磁極
110、111 回転子磁極間
112 固定子ヨーク
113、213、713、813、903 固定子ティース
114、214、314、414、714、904U、904V、904W、904U’、904V’、904W’、904U、904V、904W 固定子巻線
303 第3の三相インバータ
1000、2000、3000、4000 同期電動機駆動システム
BA 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に等間隔に配置された複数の磁極を有する回転子と、周方向に等間隔に配置された複数の固定子ティースを有する固定子と、を含む同期電動機と、
前記同期電動機に互いに位相のずれた複数の三相交流を供給する、複数の三相インバータと、を備える同期電動機駆動システムであって、
各固定子ティースには、1または2種類以上の巻線が集中巻に巻回されており、
各固定子ティースに巻回された各巻線は、それぞれ前記複数の三相インバータのいずれかの相に接続されており、
隣接関係にある一対の固定子ティースは、いずれも、
少なくとも一方の固定子ティースに2種類以上の巻線が巻回されており、これらの巻線が互いに異なる三相インバータに接続されている、
同期電動機駆動システム。
【請求項2】
1種類の巻線のみが巻回されている固定子ティースが複数個毎に配置されており、
1種類の巻線のみが巻回されている一対の固定子ティースの間に存在する固定子ティースには、当該一対の固定子ティースの一方に巻回されている巻線と接続先が同一の巻線と、他方に巻回されている巻線と接続先が同一の巻線とが巻回されている、
請求項1に記載の同期電動機駆動システム。
【請求項3】
前記複数の磁極の個数は、6K±2であり、
前記複数の固定子ティースの個数は6Kである、
請求項2に記載の同期電動機駆動システム。
【請求項4】
前記複数の三相インバータの個数は、K/2以下のL個(但し、Lは2以上の整数)である、
請求項3に記載の同期電動機駆動システム。
【請求項5】
隣接する複数の固定子ティースに巻回された巻線が互いに直列に接続されていることで、接続先が同一となっており、当該接続先が同一である複数の巻線が巻回されている固定子ティースからなる固定子ティース群において、
隣接関係にある固定子ティースに巻回されている巻線は、互いに巻回方向が逆である、
請求項2に記載の同期電動機駆動システム。
【請求項6】
各固定子ティースに巻回された各巻線の巻数比は、隣接関係にある固定子ティース間の電気角位相差が各固定子ティース間で等しくなるように調整されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の同期電動機駆動システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−85381(P2013−85381A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223867(P2011−223867)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】